説明

光信号再生装置

【課題】パラメトリック過程を利用した光信号再生装置において、光ネットワーク環境下でダイナミックに変化する光信号のチャープ、遅延、ASEなどの雑音をインラインで補償・抑制する。
【解決手段】光信号の位相を保持しつつ搬送波の周波数を可変に変換する光導波路のパラメトリック過程を利用する位相保持型波長変換器において、分散スロープS、分散値がゼロとなる波長λ0、3次の非線形定数γを有する光導波路を用意し、入力波長をパラメトリック利得の短波長のピーク波長λSの近傍又はパラメトリック利得の長波長のピーク波長λLの近傍に、出力波長をパラメトリック利得の長波長のピーク波長λLの近傍又はパラメトリック利得の短波長のピーク波長λSの近傍にそれぞれ配置できるような関係式を求め、その関係式より、ポンプ光の波長λpと位相保持型波長変換器のポンプ光の瞬時強度Ppを決定する位相保持型波長変換器を備えた光信号再生装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信分野おいて、光信号の受ける自然放出光雑音、群速度分散、遅延揺らぎという光信号の劣化要因を抑制ないし補償し信号波形を再生する光信号再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
情報通信ネットワークのトラフィックは年々増大し、今後も増大し続けると予想される。このような状況において、懸念されるのが電子ルータの消費電力の増大である。今後、超高精細映像のような大容量コンテンツを配信するサービスが普及する中で、電子ルータより電力効率が数ケタ高い光スイッチを活用した光ネットワークの実現が望まれている。
【0003】
光スイッチと光ファイバでネットワークを構築するには、光スイッチによる回線切り替えに対して、かならず、任意の2ユーザの間で光伝送の品質が保証されなければならない。ところが、光スイッチによる回線切り替えを行うと光伝送経路が変化するために、2点間の群速度分散、遅延、そして、中継にある光増幅器によって発生する自然放出高雑音(ASE雑音)や光スイッチでの多重経路干渉雑音(MPI雑音)などの伝送を妨げる要因の累積度も変化してしまう。その結果、光スイッチによる経路の選び方によっては光伝送ができたりできなかったりする問題が生じネットワーク運用に弊害が生じる。
【0004】
そこで、光スイッチノードや伝送路中に、群速度分散・遅延を補償し、ASE雑音・MPI雑音を除去・抑制する仕組みが希求されている。特に、光ネットワークで用いるためには、伝送帯域に制限を与えるようなものは極力使いたくない。広帯域で動作する、可変分散・遅延補償、光信号再生装置が必要である。さらに、光ネットワークでは様々な変調フォーマットによる光信号が行き交うことが予想されるために、できるだけ変調フォーマットに依存しない装置が望ましい。その点、パラメトリック過程では、入力光信号の位相情報が保持されるため、変調フォーマット無依存な動作が容易に実現できるため、これを用いた光信号処理装置は比類ない利点を有するといえる。
【0005】
パラメトリック過程を用いた光信号再生装置(P-OR)はすでに公知である(非特許文献1参照)。ところが、光信号再生装置を適切に動作させるためには、入力信号のチャープを適切に制御する必要がある。また、リタイミングを含む光3R型の信号再生においては、入力信号のタイミング遅延と局所クロックを確実に同期させる必要がある。
殊に、光ネットワークのように、伝送経路がダイナミックに切り替わりその都度光信号のチャープと遅延が大きく変化するような環境では、ダイナミックな分散と遅延のフレキシブルな制御は不可欠な機能である。入力信号のチャープは可変分散補償によって制御できるが、十分に広い帯域を有し十分に高速動作する可変分散補償技術は従来難しかった。
【0006】
これに対し、パラメトリック可変分散補償器(P-TDC)及びパラメトリック遅延分散チューナ(PDDT)(特許文献1、非特許文献2〜3参照)が発明され、光ネットワーク環境下で十分動作できる可変分散補償及び遅延制御が可能となった。
しかしながら、光ネットワーク環境下で適切に動作することを想定して、パラメトリック光信号再生装置(P-OR)とP-TDC・PDDTとを組み合わせて、光信号の劣化要因を包括的に抑えるような技術については、これまで検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−65570号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】K.Inoue,“Optical level equalization based on gain saturation in fiber optical parametric amplifier,”Electron.Lett.,36,1016-1017(2000).
【非特許文献2】S.Namiki,“Wide-Band and -Range Tunable Dispersion Compensation Through Parametric Wavelength Conversion and Dispersive Optical Fibers,”J.Lightwave Technol.,26,28-35(2008)
【非特許文献3】S.Namiki and T.Kurosu,“17 ns Tunable Delay for Picosecond Pulses through Simultaneous and Independent Control of Delay and Dispersion Using Cascaded Parametric Processes,”ECOC2008,PDP Th.3.C.3.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、パラメトリック過程を利用した光信号再生装置において、光ネットワーク環境下でダイナミックに変化する光信号のチャープ、遅延、ASEなどの雑音をインラインで補償・抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題は、以下の光信号再生装置によって解決される。
(1)光信号の位相を保持しつつ搬送波の周波数を可変に変換する光導波路のパラメトリック過程を利用する位相保持型波長変換器において、分散スロープS、分散値がゼロとなる波長λ0、3次の非線形定数γを有する光導波路を用意し、入力波長をパラメトリック利得の短波長のピーク波長λSの近傍又はパラメトリック利得の長波長のピーク波長λLの近傍に、出力波長をパラメトリック利得の長波長のピーク波長λLの近傍又はパラメトリック利得の短波長のピーク波長λSの近傍にそれぞれ配置できるような、次の関係式を満たすポンプ光の波長λpと位相保持型波長変換器のポンプ光の瞬時強度Ppを決定することを特徴とする位相保持型波長変換器を備えた光信号再生装置。

ここで、πは円周率、cは真空中の光速である。
(2)上記位相保持型波長変換器の前後にそれぞれ可変光減衰器もしくは光増幅器を配置したことを特徴とする(1)に記載の光信号再生装置。
(3)上記位相保持型波長変換器の前後にそれぞれ可変光減衰器もしくは光増幅器を配置したものを2台縦列に接続し、その接続点での出力波長がλLとなるように構成したことを特徴とする(2)に記載の光信号再生装置。
(4)2台の上記位相保持型波長変換器のそれぞれのポンプ光に光信号から見てちょうど逆位相の位相変調がかかるように構成したことを特徴とする(3)に記載の光信号再生装置。
(5)光信号を伝送する第一の分散媒質と、位相保持型波長変換器と、第二の分散媒質と、上記位相保持型波長変換器とがさらに縦列に接続されたことを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の光信号再生装置。
(6)光信号を伝送する上記第一の分散媒質の前に第三の分散媒質と位相保持型波長変換器とがさらに縦列に接続されたことを特徴とする(5)に記載の光信号再生装置。
(7)上記位相保持型波長変換器に用いられるポンプ光として入力光信号と同期した光パルス列を用いることを特徴とする(1)乃至(6)のいずれかに記載の光信号再生装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光伝送中に光信号の受ける自然放出光雑音、群速度分散、遅延揺らぎという光信号の劣化要因をダイナミックかつフレキシブルに抑制ないし補償し、伝送路の経路切り替えに対応し伝送距離を飛躍的に延伸することができる。
また本発明によれば、来るべき光ネットワークで必要な、帯域に制限されない分散可変量と十分な高速性を実現し、かつ、伝送中に累積する雑音を低減することができ、高効率な光ネットワーク実現に大きく貢献するものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の基本原理図
【図2】ファイバ型光パラメトリック波長変換器の基本構成
【図3】入力パワーと出力パワーの伝達関数(トランスファー・ファンクション)と光信号再生の原理
【図4】非線形ファイバの異常分散領域にポンプ波長がある際のパラメトリック利得による自然放出光の出力スペクトル
【図5】ゼロ分散波長を1542nmに持つ非線形ファイバに対するポンプ波長と最大利得波長の関係
【図6】[数1]式を実験的に検証した結果
【図7】実験で測定された伝達関数
【図8】波長可変光再生器の入出力部にそれぞれ可変光減衰器を配置し減衰値を調整することで得られる均一な伝達関数曲線
【図9】入力信号波長1531nmに対する符号誤り率曲線
【図10】本発明による、パワーペナルティ改善効果(光信号再生効果)と入力信号波長の関係
【図11】実施例1の波長可変光信号再生装置
【図12】実施例2の波長可変光信号再生装置
【図13】実施例3の波長可変光信号再生装置
【図14】実施例4の波長可変光信号再生装置
【図15】実施例5の波長可変光信号再生装置
【図16】実施例6の波長可変光信号再生装置
【図17】実施例7の波長可変光信号再生装置
【図18】実施例8の波長可変光信号再生装置
【図19】実施例9の波長可変光信号再生装置
【図20】実施例10の波長可変光信号再生装置
【図21】実施例11の波長可変光信号再生装置
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本発明の基本原理)
本発明は、光ネットワークを自在に張り巡らせ運用するために、さまざまな光信号に対してダイナミックに可変分散補償、遅延補償、及び、ASEやMPI雑音の除去・抑制を同時に可能とする光信号再生を実現するものである。
本発明の基本原理図を図1に示す。
伝送路で分散や遅延及びASE雑音などで劣化した信号を修復する。前段のP-TDCないしPDDTで入力パルスのチャープを整え遅延を制御し、後段の波長可変光信号再生器で、信号波長を入力波長に戻すと同時に、強度雑音を抑制して光信号のまま出力する。
【0014】
本発明は、インライン型のP-TDC又はPDDTの最後尾に配置される出力光信号波長を入力波長に戻す役割を担う波長変換部に、光信号再生機能を有する可変波長変換器を採用する構成をとる。P-TDCとPDDTをインラインで使用するためには、入力光信号の波長と同じ波長を出力する必要があるが、そのためには、これらデバイスの後ろにパラメトリック可変波長変換器を付加しなければならない。この機能に光信号処理効果を付与するには、任意の波長をある所望の波長(すなわちP-TDC又はPDDTへの入力波長)に変換する可変性を有する光信号再生機能を実現しなければならない。既存のP-OR技術では、どのように波長可変性を実現するかについての検討はなされていなかった。特に、光信号再生効果が、入力波長に依存して変化してしまうと問題である。
以下に、本発明の核である、任意の入力信号波長に対して均一な光信号再生効果を得るための方法について述べる。
【0015】
P-ORでは、おおむね光ファイバの3次の非線形効果に基づいたファイバ型光パラメトリック増幅(FOPA)過程の飽和現象を利用している(非特許文献1参照)。
FOPAの飽和過程を利用するP-ORにおいて、信号光のコピーが四光波混合過程のアイドラ光として異なる波長に生成される。アイドラ光を出力として扱う構成にすると、光信号再生効果を有する波長変換器として機能することになる。飽和現象は、FOPAのポンプ光のエネルギーが入力光信号との相互作用で枯渇する現象であり、入力光信号が大きいほど飽和が起こるため、光強度の大きい光信号は、光強度の小さい光信号に比べると、小さい利得を受けることになる。FOPAでは、通常光信号の波長は不変であるが、ここでは、パラメトリック過程で発生するアイドラ光すなわち波長変換光に着目して話を進める。
基本的なファイバ型光パラメトリック波長変換器の構成を図2に示す。
【0016】
飽和型のパラメトリック波長変換過程において、入力光瞬時強度と出力光瞬時強度(波長変換後)の関係(伝達関数:トランスファー・ファンクション)を示すと、図3に示すようになる。入力光強度が大きくなると出力光強度は飽和し瞬時強度が入力の変化に対して安定する領域が発生する。たとえば、入力信号強度が雑音によって揺らいでも、入力光の平均パワーを伝達関数に対して最適になるように調整すれば、出力する光信号の雑音を入力時よりも小さくすることができる。この現象を利用するのが光信号再生である。
本発明では、この現象をP-TDC/PDDTの最後段の波長変換プロセスに適用するために、どの入力波長に対しても均一な光信号再生効果を実現する方法を開示するものである。つまり、どの入力波長及び変換波長に対しても、図3に示す曲線、すなわち伝達関数を均一に設計する方法を与える。
【0017】
均一な伝達関数を得るためには、原則として、任意の入力波長に対して均一なもしくは高効率なパラメトリック利得を実現すればよい。パラメトリック利得は、飽和領域においては、ポンプ光の非線形位相シフトが無視できなくなる。そこで効率良い利得を得るためには、ポンプ光の波長をパラメトリック過程を発生する非線形ファイバの異常分散領域で動作させるのが効果的である。その際、図4に示すように、光スペクトル上でポンプ光の両側に利得ピークが発生する。
効率的な光信号再生を実現するには、信号波長と変換波長がこの両側の利得ピークにそれぞれほぼ一致するように配置させてやればよい。
図4に非線形ファイバの異常分散領域にポンプ波長がある際のパラメトリック利得による自然放出光の出力スペクトルを示す。
自然放出光のスペクトル形状は、パラメトリック利得のスペクトル形状に対応しており、ポンプ波長の両側にパラメトリック利得のピークが発生する。
この関係が、任意の入力光信号波長に対して成り立つ条件を探せば、入力波長の可変性と高効率な利得飽和すなわち光信号再生効果を得ることができる。この条件を探すために、利得のピーク波長を計算すると、パラメトリック利得の短波長のピーク波長λS及びパラメトリック利得の長波長のピーク波長λLは、次の[数1]で表わされる。
【数1】

ここで、pはポンプ光、λ0は分散値がゼロとなる波長を表す。πは円周率、cは真空中の光速、γはファイバの3次の非線形定数、Ppは、ポンプ光の光瞬時強度である。Sは、光ファイバの分散スロープ(ps/nm2/km)である。
【0018】
分散スロープS、分散値がゼロとなる波長λ0、3次の非線形定数γを有する光ファイバを用意し、それぞれ入力波長をパラメトリック利得の短波長のピーク波長λS、出力波長をパラメトリック利得の長波長のピーク波長λLにそれぞれ配置できるような、[数1]式を満たすポンプ光の波長λpとポンプ光の瞬時強度Ppを決めてやればよい。
ここで重要なのは、入力波長と出力波長は正確にλSかλLに一致させなければ動作しないというわけではない。入力波長と出力波長は、λS、λLの近傍、すなわちパラメトリック利得がλS、λLでの値より3db低下以内にあればよい。
さらに、入力波長をパラメトリック利得の長波長のピーク波長λLの近傍に、また出力波長をパラメトリック利得の短波長のピーク波長λSの近傍にそれぞれ配置することもできる。
【0019】
[数1]式を実際に具体的な数値を入れて計算すると、図5のようになる。
図5は、ゼロ分散波長を1542nmに持つ非線形ファイバに対するポンプ波長と最大利得波長の関係を示す。左図は、分散スロープS=0.026ps/nm2/kmの際に、γPpを4.1(実線)、6.5(点線) and 10.3km-1(破線)と変えたときの曲線を表す。右図は、γPpを10.3km-1と固定した時に、分散スロープSを0.004(実線)、0.013(点線)、0.026ps/nm2/km(破線)と変えたときの曲線を表す。
この図は、ポンプ波長をずらすと、それに応じてパラメトリック利得のピーク波長が動いている様を示している。短波長側のピーク利得波長は比較的大きく変化するのに対して、長波長側のピーク利得波長はほとんど変化しない領域が確認できる。すなわち、たとえば、この短波長側のピーク利得波長線上に信号光を、長波長側の線上に変換光を配置して用いれば、本発明において、常にパラメトリック利得が最大の条件で動作できることになる。
【0020】
図6に、[数1]式を実験的に検証した結果を示す。図6左図は、ポンプ波長を変化させた際のパラメトリック利得によって発生した自然放出光スペクトルを示している。各ポンプ波長における最大利得波長を図6右図に[数1]式の理論曲線とともにプロットする。
実験で使用した非線形ファイバのゼロ分散波長は1542nm、スロープは、0.026ps/nm2/km。γPpは、10.3km-1。左図は、ポンプ波長1542、1544、1546、1548、1550、1552、1554nmにおける非線形ファイバ出力光スペクトルである。右図は、ポンプ波長と最大利得波長の関係であり、○は実験観測値である。曲線は[数1]式による理論値である。
図6より、信号波長1521nmから1543nmまでの連続波長範囲に対して出力波長を1561nmに固定した高効率かつ均一な波長可変光信号再生効果が実現できることがうかがえる。
【0021】
このファイバを用いて、各条件での光出力の伝達関数を測定した結果を図7に示す。変換波長は1561nmに固定した。
図7では、各伝達関数の曲線は飽和特性を示しており所望の光信号再生効果が期待できることが分かるが、同一の入力パワーに対して均一な出力曲線が得られるようにはならない。そのために、本発明では、この光信号再生装置の入出力に可変光減衰器を配置することで、同一の入力パワーに対して均一な伝達関数が得られる。
図8には、実際に入出力部に可変光減衰器を配置して、各ポンプ波長での伝達関数曲線がほぼ重なることを示す。
こうして、出力波長を1561nmに固定しながら、入力の任意波長に対して均一な光信号再生効果を得ることができる。
【0022】
図9には、実際にこの曲線を活用した10.75Gbit/s Return-to-Zero (RZ)光信号の符号誤り率の測定比較を示す。図9より、強度雑音が付加され伝送ペナルティーが生じた光信号が、光信号再生器を経ることで、伝送ペナルティーも減少したことが確認された。
バック・ツー・バック(●)、波長変換後(▲)、強度雑音が付加された信号のバック・ツー・バック(■)、光信号再生効果を伴う波長変換後(★)。インセットには、それぞれのアイパターン及びそのヒストグラムを示す。強度雑音が光信号再生効果によって抑制されたことが確認される。
【0023】
同様にして異なる入力信号波長に対して得られた、光信号再生効果の結果を図10に示す。入力信号波長20nmの範囲にわたって、伝送特性の改善効果が得られたことが分かる。
以上のとおり、波長可変な光信号再生を実現することができるようになった。本発明では、この部分を図1にあるように、P-TDC、PDDTに組み合わせることにより、ダイナミックな光ネットワークに適用できる光信号再生技術を実現する。
なお光導波路として光ファイバを例示して説明したが本発明は、光ファイバに限らず一般の光導波路も採用可能であることはいうまでもない。
【0024】
以下、本発明の実施例を例示する。
(実施例1)
図11は、ファイバ型光パラメトリック波長変換器の前後に可変光減衰器もしくは光増幅器を配置して光信号再生効果が波長に対して均一となるように調整する機能を有する可変波長型光信号再生装置である。図中BPFは、可変式のバンドパスフィルタである。
【0025】
(実施例2)
図12に示すように、[数1]式を満たすように用意された波長可変型光信号再生装置を2台縦列に接続することで、[数1]式におけるλLを中間波長として、入力波長と出力波長の両方を自在に可変にできる。図中BPFは、可変式のバンドパスフィルタである。
【0026】
(実施例3)
図13に示すように、実施例2の2つのポンプ光に光信号から見て逆位相になるような位相変調を加え、高非線形ファイバで誘導ブリユアン散乱(SBS)の発生を抑制するとともに、光信号の伝送品質を良好に保つことができる。SBSが発生すると光信号の品質がSBSの雑音によって著しく劣化してしまうが、ポンプ光に位相変調を施すことで、SBSの発生を抑制することができる。ただし、ポンプ光に位相変調をかけると光信号光に位相雑音が乗ってしまうが、2段縦列に構成された波長変換過程で互いに逆位相になるようにポンプ光への位相変調を施すことで信号光に付加される位相変調をキャンセルすることができる。図中BPFは、可変式のバンドパスフィルタである。
【0027】
(実施例4)
図14は、実施例3の構成を一つの高非線形ファイバ(HNLF)で実現する双方向型光信号再生装置である。図中TLSは波長可変光源、EDFAはエルビウム添加ファイバ増幅器、VOAは可変光減衰器、PCは偏波制御装置である。
【0028】
(実施例5)
図15に、実施例4の励起光源であるTLSの出力に位相変調を加え、誘導ブリユアン散乱を抑制した構成を示す。二つの位相変調器(PM)は同一RF源で駆動し、変換光が受ける位相変調の影響をキャンセルするようにタイミングを調整する。
【0029】
(実施例6)
図16に、実施例4、5において、ポンプ光を共通にしたものを示す。これによると、入射光信号と常に同一の波長を有する信号が出力される。
【0030】
(実施例7)
図17は、実施例4〜6の光信号再生部分にリタイミングの効果を加え、光3R再生としたものを示す。図中PDは受光素子、CRはクロック抽出器、MLLDはモード同期レーザである。
【0031】
(実施例8)
図18に、可変分散補償・光2R信号再生装置を示す。DCFは分散補償ファイバ、BPFもTLSに連動して波長を制御する。出力波長は必ずしも入力波長と同一である必要はない。
【0032】
(実施例9)
図19に、可変分散補償・光3R信号再生装置を示す。DCFは分散補償ファイバ、BPFもTLSに連動して波長を制御する。出力波長は必ずしも入力波長と同一である必要はない。図中ISOは光アイソレータ、Polは偏光子、Δτは遅延器である。
【0033】
(実施例10)
図20に、可変遅延分散補償・光3R信号再生装置を示す。DCFは分散補償ファイバ、BPFもTLSに連動して波長を制御する。出力波長は必ずしも入力波長と同一である必要はない。
【0034】
(実施例11)
図21に、可変分散補償・光3R信号再生装置を示す。DCFは分散補償ファイバ、BPFもTLSに連動して波長を制御する。出力波長は必ずしも入力波長と同一である必要はない。図中WCは、波長変換器である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
背景技術で述べたように、本発明の高速且つ帯域制限のない光信号再生装置は、ポイント・ツー・ポイントの光伝送だけでなく、むしろ、光信号がダイナミックにスイッチング・ルーティングされる光ネットワークに不可欠であるため、高速且つ帯域制限のない可変分散補償を必要とする通信容量の増大が進む技術に適用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号の位相を保持しつつ搬送波の周波数を可変に変換する光導波路のパラメトリック過程を利用する位相保持型波長変換器において、分散スロープS、分散値がゼロとなる波長λ0、3次の非線形定数γを有する光導波路を用意し、入力波長をパラメトリック利得の短波長のピーク波長λSの近傍又はパラメトリック利得の長波長のピーク波長λLの近傍に、出力波長をパラメトリック利得の長波長のピーク波長λLの近傍又はパラメトリック利得の短波長のピーク波長λSの近傍にそれぞれ配置できるような、次の関係式を満たすポンプ光の波長λpと位相保持型波長変換器のポンプ光の瞬時強度Ppを決定することを特徴とする位相保持型波長変換器を備えた光信号再生装置。

ここで、πは円周率、cは真空中の光速である。
【請求項2】
上記位相保持型波長変換器の前後にそれぞれ可変光減衰器もしくは光増幅器を配置したことを特徴とする請求項1に記載の光信号再生装置。
【請求項3】
上記位相保持型波長変換器の前後にそれぞれ可変光減衰器もしくは光増幅器を配置したものを2台縦列に接続し、その接続点での出力波長がλLとなるように構成したことを特徴とする請求項2に記載の光信号再生装置。
【請求項4】
2台の上記位相保持型波長変換器のそれぞれのポンプ光に光信号から見てちょうど逆位相の位相変調がかかるように構成したことを特徴とする請求項3に記載の光信号再生装置。
【請求項5】
光信号を伝送する第一の分散媒質と、位相保持型波長変換器と、第二の分散媒質と、上記位相保持型波長変換器とがさらに縦列に接続されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光信号再生装置。
【請求項6】
光信号を伝送する上記第一の分散媒質の前に第三の分散媒質と位相保持型波長変換器とがさらに縦列に接続されたことを特徴とする請求項5項に記載の光信号再生装置。
【請求項7】
上記位相保持型波長変換器に用いられるポンプ光として入力光信号と同期した光パルス列を用いることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光信号再生装置。




【図2】
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【図4】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−48044(P2012−48044A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191103(P2010−191103)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究「グリーンネットワーク・システム技術研究開発プロジェクト(グリーンITプロジェクト)/革新的省エネルギーネットワーク・ルータ技術の研究開発/IT社会を遠望した、情報の流れと情報量の調査研究/社会インフラとしてのネットワークのモデル設計と総合評価」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】