光信号処理器
【課題】偏波モード分散を低減し、高品位な光信号を出力可能な光信号処理器を提供すること。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る光信号処理器は、入力導波路101、102が接続された光分波器111と、該光分波器111に接続された二本の光導波路131、132と、該二本の光導波路131、132のそれぞれに接続され、出力導波路103、104が接続された光合波器121と、光分波器111および光合波器121に形成された溝201、203と、該溝201、203に挿入された偏光変換手段301、303とを備えている。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る光信号処理器は、入力導波路101、102が接続された光分波器111と、該光分波器111に接続された二本の光導波路131、132と、該二本の光導波路131、132のそれぞれに接続され、出力導波路103、104が接続された光合波器121と、光分波器111および光合波器121に形成された溝201、203と、該溝201、203に挿入された偏光変換手段301、303とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号処理器に関し、より詳細には、偏波モード分散を抑え、高速光通信システムにも対応した光信号処理器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、音声情報や動画情報などの大容量な情報を伝送可能な通信システムが望まれており、そのような通信システムとして光通信システムが注目されている。この光通信システムの高速大容量化を実現する方法として、波長分割多重方式が開発されている。
【0003】
波長分割多重システムでは、入力した光信号を目的に応じて変化させることのできる光信号処理器が用いられている。図1(a)に、光通信システムで用いられている従来の光信号処理器の構成例を示す。この光信号処理器は、光を分波する光分波器1111と、光を合波する光合波器1121と、光分波器1111と光合波器1121に挟まれた二本の光導波路1131および1132とを備えている。そして光分波器1111には入力導波路1101、1102が接続され、光合波器1121には出力導波路1103、1104が接続されている。
【0004】
光分波器1111と光合波器1121とには、二本の光導波路を近接させた方向性結合器や、多モード干渉型結合器が用いられている。そして光分波器より二本の光導波路に均等に光信号が分波され、二本の光導波路より光合波器に均等に光信号が合波されるよう、光分波器111の光分波率と光合波器1121の光合波率とがそれぞれ50%に設定されている。二本の光導波路1131と1132とは、光ファイバ、または基板上に形成された平面導波路により形成している。光導波路1131と1132との光路長の差は、この光信号処理器の周波数周期が100GHzになるよう設定されている。
【0005】
光信号処理器の入力導波路1101に光を入力し、出力導波路1103と1104とより出力されるTEモードとTMモードとの透過スペクトルの周波数依存性を図2(a)に示す。光信号処理器の透過スペクトルは周波数に対し100GHzの周期性を有する。しかし、光導波路1131と1132とは偏波依存性を有するため、図2(a)に示されるように、TEモードとTMモードとの透過スペクトルに20GHz程度の中心周波数ずれが生じている。
【0006】
そこで、特許文献1では、この偏波依存性による中心周波数ずれを解消するため、光分波器と光合波器との間の光導波路に偏光変換手段を設けている。図1(b)に、二本の光導波路1131と1132との長手方向に対し垂直に偏光変換手段1301を設けた、特許文献1に記載の従来の光信号処理器の構成例を示す。偏光変換手段1301としては、例えばポリイミド膜により構成された1/2波長板が用いられている。二本の光導波路1131と1132とに偏光変換手段1301を挿入した後に、光信号処理器の入力導波路1101に光を入力し、出力導波路1103と1104とより出力されるTEモードとTMモードの透過スペクトルの周波数依存性を図2(b)に示す。
【0007】
偏光変換手段1301にTM光が入力されるとTE光に変換され、逆にTE光が入力されるとTM光に変換されて出力される。よって、偏光変換手段1301を光導波路1131および1132の中間点に設ければ、光路長差は、入力された偏光が感じる屈折率および偏光変換手段により変換された、上記偏光と垂直方向の偏光が感じる屈折率の平均と、導波路の長さとの積となる。従って、光導波路1131、1132に入力される光がTM光、TE光に関らず、光路長差を一定にすることができるので、偏波無依存を実現できる。このように、特許文献1では、光導波路1131と1132との偏波依存性を解消したことにより、TEモードとTMモードの透過スペクトルの中心周波数ずれの問題を解決している。
【0008】
【特許文献1】特許第3501235号明細書
【特許文献2】特許第3423297号明細書
【特許文献3】特許第3429277号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上から明らかなように、光信号処理器において、偏光変換手段を用いる方式が有力である。しかしながら、この偏光変換手段を用いる方式であっても、現在求められる高品位な出力を得るためには、以下のような、まだ改善しなければならない課題が残されている。
【0010】
特許文献1では、光信号処理器の二本の光導波路に偏光変換手段を設けることにより、偏波依存性による透過スペクトルの中心周波数ずれを解消することができた。しかし、近年の高速光通信システムでは、偏波モード分散による光信号の劣化が大きな問題となってきており、下記に示すように、光信号処理器の二本の光導波路に偏光変換手段を設けるだけでは解決できない。
【0011】
図2(c)に従来の光信号処理器の偏波モード分散の周波数依存性を示す。また、図2(d)に光信号処理器の二本の光導波路に偏光変換手段を設けた後の偏波モード分散の周波数依存性を示す。
【0012】
図2(c)に示すように、入力導波路1101から光信号を入力し、出力導波路1104から光信号を出力した時(1101⇒1104)は、偏波モード分散は生じない。しかし、入力導波路1101から光信号を入力し、出力導波路1103から光信号を出力した時(1101⇒1103)は、中心周波数から±5GHzの範囲内で1.3psの偏波モード分散が生じる。
【0013】
一方、図2(d)に示すように偏光変換手段を設ける場合では、入力導波路1101から光信号を入力し、出力導波路1103から光信号を出力した時(1101⇒1103)の偏波モード分散は解消された。しかしその反面、入力導波路1101から光信号を入力し、出力導波路1104から光信号を出力した時(1101⇒1104)は、中心周波数から±5GHzの範囲内で1.3psの偏波モード分散が生じた。
【0014】
このように、二本の光導波路に偏光変換手段を設けたとしても偏波モード分散が生じる出力導波路が入れ替わるだけで、偏波モード分散は残ったままである。この分散は、光信号を歪ませる原因となり、特に近年の高速光通信システムでは大きな問題となっている。
【0015】
本発明は、このような問題を鑑みてなされたもので、その目的とするところは、偏波モード分散を低減し、高品位な光信号を出力可能な光信号処理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1記載の発明は、一つ以上の入力を二つの出力に分波する光分波手段と、該光分波手段に接続された二本の光導波路と、該二本の光導波路のそれぞれに接続され、二つの入力を一つ以上の出力に合波する光合波手段とを備える光信号処理器であって、前記光分波手段、または前記光合波手段の少なくとも一方に設けられた、入力された光の偏光を90°回転して出力する偏光変換手段を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項2記載の発明は、一つ以上の入力を二つの出力に分波する光分波手段と、該光分波手段に接続された二本の光導波路と、該二本の光導波路のそれぞれに接続され、二つの入力を一つ以上の出力に合波する光合波手段とを備える光信号処理器であって、前記光分波手段、または前記光合波手段の少なくとも一方に含まれる光導波路の複屈折を局所的に変化させる手段を備えることを特徴とする。
【0018】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記偏光変換手段は、前記光分波手段、または前記光合波手段の少なくとも一方に形成された溝に挿入されていることを特徴とする。
【0019】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記溝の長手方向は、前記偏光変換手段が設けられる、前記光分波手段および前記光合波器の少なくとも一方の長手方向に対して概ね垂直であることを特徴とする。
【0020】
請求項5記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記溝の長手方向と、前記偏光変換手段が設けられる、前記光分波手段および前記光合波器の少なくとも一方の長手方向とのなす角度は、90°(垂直)から0°よりも大きく概ね10°以下の角度だけ傾けた角度であることを特徴とする。
【0021】
請求項6記載の発明は、請求項3乃至5のいずれかに記載の発明において、前記二本の光導波路の各々に溝が形成されており、前記溝に前記偏光変換手段が挿入されていることを特徴とする。
【0022】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記光分波手段に前記溝が形成されており、前記光導波路に設けられた偏光変換手段は、前記光分波手段に形成された溝から出射される漏れ光の開き角の範囲外に設けられていることを特徴とする。
【0023】
請求項8記載の発明は、請求項6または7記載の発明において、前記光合波手段に前記溝が形成されており、前記光合波手段に設けられた偏光変換手段は、前記光導波路に形成された溝から出射される漏れ光の開き角の範囲外に設けられていることを特徴とする。
【0024】
請求項9記載の発明は、請求項6乃至8のいずれかに記載の発明において、前記光分波手段および前記光合波手段の少なくとも一方に形成された溝、および前記光導波路に形成された溝は同一方向を向いていることを特徴とする。
【0025】
請求項10記載の発明は、請求項3乃至9のいずれかに記載の発明において、前記光分波手段および前記光合波手段に前記溝が形成され、該溝が共通の溝であることを特徴とする。
【0026】
請求項11記載の発明は、請求項1乃至10のいずれかに記載の発明において、前記光分波手段に接続された前記入力と、前記光合波手段に接続された前記出力が同一基板端面に位置することを特徴とする。
【0027】
請求項12記載の発明は、請求項1乃至11のいずれかに記載の発明において、前記光分波手段および光合波手段は、共に多モード干渉計であるか、もしくは共に方向性結合器であることを特徴とする。
【0028】
請求項13記載の発明は、請求項1乃至12のいずれかに記載の発明において、前記光信号処理器は基板上に形成され、前記光導波路は、前記基板上に形成されたリッジを有する下部クラッドを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本発明によれば、光分波手段および光合波手段の少なくとも一方に、偏光変換手段または局所的に屈折率を変化させる手段を設けているので、偏波モード分散を低減することが可能となり、高品位な光信号を出力することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、発明の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0031】
本発明の一実施形態は光分波手段の光分波率と、光合波手段の光合波率との少なくともいずれか一方を偏光によらずに一定にすることで、偏波モード分散の小さい光信号処理器を実現している。
発明者は、従来の光信号処理器の偏波モード分散の発生要因を調べた。分析の結果、偏波モード分散は主に光分波手段と光合波手段との偏波依存性によるものであることが明らかになった。すなわち、光信号処理器の光分波手段の光分波率と光合波手段の光合波率とを50%に設定したとしても、光分波手段や光合波手段に偏波依存性があれば、偏波ごとに光分波率と光合波率とは50%からずれる。この偏波依存性によるずれ量(光分波率および光合波率の設定値からのずれ量)が大きいほど偏波モード分散は大きくなった。
【0032】
そこで、本発明の一実施形態では、光分波手段と光合波手段との少なくとも一方に、偏光変換手段を設けている。これにより、偏波依存性による上記ずれ量を低減することができる。よって、光分波手段と光合波手段との偏波依存性が大きく低減され、光信号処理器の偏波モード分散を低減することができる。
【0033】
すなわち、本発明の一実施形態では、1つ以上の入力を2つ以上の出力に分波する手段としての光分波器と、2つの入力を1つ以上の出力に合波する手段としての光合波器の少なくとも一方に溝を形成し、該溝に偏光変換手段を挿入している。なお、本発明の一実施形態では、偏光変換手段を、光分波器(入力側)および光合波器(出力側)の少なくとも一方に設けられていれば良いが、少なくとも光合波器に偏光変換手段を設けることがより好ましい形態である。すなわち、出力側である光合波器に偏光変換手段を設けることにより、光合波器の光合波率がほぼ一定にできるので、光信号処理器の透過スペクトルの偏波依存中心波長シフトをさらに抑制できる。よって、少なくとも光合波器に偏光変換手段を設けることはより好ましいのである。
【0034】
なお、本発明の一実施形態において、偏光変換手段は、1/2波長板(半波長板)などのように、入力された光の偏光を90°回転(偏波回転量が90°)させることができるものであればいずれであっても良い。すなわち、偏光変換手段は、TMモードをTEモードに、またTEモードをTMモードに変換する手段であれば良いのである。
【0035】
偏光変換手段として1/2波長板を用いる場合、該1/2波長板を導波路に対して45°傾けると、1/2波長板に入射した光は、TMモードである場合はTEモードに、またTEモードである場合はTMモードに変換されて、1/2波長板から出射する。
【0036】
また、本発明の一実施形態では、光導波路をリッジ構造により形成し、および/または光分波手段と光合波手段とに挟まれた二本の光導波路に偏光変換手段を設け、光導波路の複屈折を低減することにより、光分波手段の光分波率、もしくは、光合波手段の光合波率のずれ量に対し、偏波モード分散をさらに抑制することができる。
【0037】
(第一実施形態)
図3に本発明の第一実施形態における光信号処理器の構成を示す。
本実施形態の光信号処理器は、基板161上に形成され、光を分波する光分波器111と、光を合波する光合波器121と、光分波器111と光合波器121とに挟まれた二本の光導波路131および132と、光分波器111の入力側に接続された入力導波路101、102と、光合波器121の出力側に接続された出力導波路103、104とを備えている。そして、光分波器111および光合波器121には、光分波器111と光合波器121との長手方向に対し概ね垂直に、それぞれ溝201と203とが形成されている。溝201および溝203にはそれぞれ、入力された光の偏光を90°回転させる手段としての偏光変換手段301と303とが挿入されている。すなわち、偏光変換手段301と303とは、自身を透過する光の偏光を90°回転させるように設定されている。よって、偏光変換手段301(303)に入力された光がTM光(TE光)である場合は、偏光変換手段301(303)にて偏光が90°回転されて、TE光(TM光)として出力される。
【0038】
なお、光分波器111の光分波率および光合波器121の光合波器のそれぞれを、概ね50%に設定している。また、光導波路131、132の光路長の差は、この光信号処理器の周波数周期が100GHzになるよう設定されている。
【0039】
このように、光分波器111および光合波器121に偏光変換手段をそれぞれ挿入(配置)しているので、偏光変換手段の前後における偏光依存性を低減することができ、光分波器111の光分波率と光合波器121の光合波率とを偏光によらずに一定にすることができる。さらに、本実施形態のように、光合波器121に偏光変換手段を設け、その光合波率を偏光によらず一定にすることで、光信号の透過スペクトルの偏波依存中心波長シフトをさらに抑えると共に、偏波依存中心波長シフトのポート間変動や波長依存性を低減できるという副次的効果もある。
【0040】
本実施形態では、光信号処理器をシリコン基板上の石英系導波路で形成しているがこれに限定されず、従来の導波路を用いることができる。また、光分波器111および光合波器121として共に二入力二出力の多モード干渉計(マルチモード干渉カプラ)、方向性結合器など、入力された光を適切に合波、分波できるものであればいずれを用いても良い。さらに、偏光変換手段として、ポリイミド波長板など、入力された光の偏光を90°回転することができるものであればいずれを用いても良い。なお、本実施形態では、光分波器111および光合波器121としては共に多モード干渉計を用い、偏光変換手段としてはポリイミド偏光板を用いている。
【0041】
図4(a)に光分波器111と光合波器121の偏波依存性による光分波率と光合波率との設定値からのずれ量に対する偏波モード分散を示す。偏光変換手段301と303とを挿入しない状態では、光分波器111の光分波率と光合波器121の光合波率とは、偏波により40%〜50%の範囲内で変動した。したがって、偏波依存性による光分波率と光合波率との上記ずれ量は最大で10%もあった。この時、入力導波路101から光信号を入力し、出力導波路104から光信号を出力した時(101⇒104)は、偏波依存性による上記ずれ量によらず、偏波モード分散は生じなかった。一方、入力導波路101から光信号を入力し、出力導波路103から光信号を出力した時(101⇒103)は、偏波依存性による上記ずれ量が大きくなるほど、偏波モード分散は増加した。偏波依存性による上記ずれ量が10%の時、1.3psもの大きな偏波モード分散が生じた。
【0042】
ここで、偏光変換手段301と303とを挿入したところ、光分波器111の光分波率と、光合波器121の光合波率の偏波による変動は48%〜50%の範囲内に収まった。そのため、偏波依存性による光分波率と光合波率との上記ずれ量を2%以下に抑え、偏波モード分散を0.3psまで低減した。
【0043】
図4(b)に、光分波器と光合波器との偏波依存性を10%から2%に低減する前後の偏波モード分散(101入力103出力)の周波数依存性を示す。光分波器111と光合波器121とに偏光変換手段301と303とを挿入し、偏波依存性による光分波率と光合波率のずれ量を抑えた結果、偏波モード分散を大きく低減したことがわかる。入力導波路と出力導波路を入れ替えても(102入力104出力)、同様の傾向が見られた。
【0044】
以上、本実施形態では、偏光変換手段を用い、光信号処理回路の光分波器の光分波率と、光合波器の光合波率との偏光による設定値からのずれ量を低減することにより、従来の光信号処理器で問題になっていた偏波モード分散を低減することが可能である。すなわち、偏光変換手段が挿入された、光分波器の光分波率、および光合波器の光合波率の双方を、入力された光の偏光によらず一定にすることが可能である。
【0045】
なお、本実施形態では、光分波器111および光合波器121の双方に偏光変換手段を挿入しているがこれに限定されず、光分波器111および光合波器121のいずれか一方に偏光変換手段を挿入するようにしても良い。このようにすることで、入力された光の偏光がいずれの偏光であっても、偏光変換手段が挿入された光合波器または光分波器の光合波率または分波率の安定性を向上することが可能となり、偏波モード分散を低減した高品位な光信号を出力することが可能である。また、上記副次的効果を考慮すると、少なくとも光合波器121に偏光変換手段を設ける形態がより好ましい形態である。
【0046】
さらに、本実施形態では、図3に示すように、光分波器111(光合波器121)のほぼ中央に偏光変換手段301(303)を挿入することが好ましい。しかしながら、偏光変換手段の挿入位置は上記位置に限定されず、光分波器111(光合波器121)のいずれに挿入しても良い。
【0047】
(第二実施形態)
図5に本発明の第二実施形態における光信号処理器の構成を示す。
本実施形態の光信号処理器は、基板161上に形成され、光分波器111と、光合波器121と、光分波器111と光合波器121とに挟まれた二本の光導波路131および132と、光分波器111の入力側に接続された入力導波路101、102と、光合波器121の出力側に接続された出力導波路103、104とを備えている。そして、光分波器111および光合波器121には、光分波器111と光合波器121との長手方向に対し概ね垂直に、それぞれ溝201と203とが形成されている。溝201および溝203にはそれぞれ、偏光変換手段301と303とが挿入されている。すなわち、偏光変換手段301と303とは、自身を透過する光の偏光を90°回転させるように設定されている。
【0048】
なお、光分波器111の光分波率および光合波器121の光合波器のそれぞれを、概ね50%に設定している。
【0049】
このように、光分波器111および光合波器121に偏光変換手段をそれぞれ挿入(配置)しているので、偏光変換手段の前後における偏光依存性を低減することができ、光分波器111の光分波率と光合波器121の光合波率とを偏光によらずに一定にすることができる。
【0050】
本実施形態では、光導波路の下部クラッドにリッジ構造を形成したリッジ導波路を用いている(特許文献2参照)。また、光分波器111と光合波器121としてそれぞれ、近接した二本の光導波路からなる方向性結合器を用い、偏光変換手段として、ポリイミド波長板を用いている。
【0051】
図5(b)に、図5(a)のA−A′線断面図を示す。図5(b)において、リッジを有する下部クラッドである下部クラッドリッジ168上に光導波路となるコア165が形成されており、リッジ構造を形成している様子が示されている。このような導波路構造を用いることにより、光導波路の複屈折を低減することができる。
【0052】
図6(a)に光分波器111と光合波器121の偏波依存性による光分波率と光合波率との設定値からのずれ量に対する偏波モード分散を示す。比較のため、第一実施形態で示した通常の導波路の偏波モード分散も示す。
図6(a)から分かるように、偏波依存性による光分波率と光合波率との上記ずれ量が同じであっても、本実施形態のようにリッジ導波路を用い、光導波路の複屈折を低減すると、通常の導波路に比べた偏波モード分散を低減できることがわかる。例えば、偏波依存性による上記ずれ量が10%の場合、通常の導波路では101入力103出力の偏波モード分散は1.3psもあるが、リッジ導波路では101入力103出力の偏波モード分散は1.0psである。通常の導波路に比べ、リッジ導波路では偏波モード分散を低減できることがわかる。
【0053】
さらに、光分波器111および光合波器121として方向性結合器を用い、これらの方向性結合器をリッジ導波路で形成すると偏波依存性を低減できるため、偏波モード分散をさらに低減できる。方向性結合器をリッジ導波路で形成することにより、偏波依存性によるずれ量を4%に抑えた。この時の偏波モード分散は0.4psであった。それに加え、本実施形態では、偏光変換手段301と303とを挿入し、光分波器111の光分波率と、光合波器121の光合波率との偏波依存性による上記ずれ量を2%以下に低減した。リッジ導波路を用いた効果、及び偏光変換手段により光分波器111と光合波器121との偏波依存性を低減することにより、偏波モード分散を0.2psに抑えた。
【0054】
本実施形態のように、リッジ導波路を用いて光導波路の複屈折を低減すると、上記光分波器と光合波器との偏波依存性による設定値からのずれに起因する偏波モード分散を低減できるだけでなく、次に示す付加的な効果も得られる。すなわち、偏波モード分散の主な発生要因は、光分波器と光合波器との偏波依存性によるずれであるが、光分波器と光合波器の光分波率と光合波率との絶対値が50%からずれた場合も偏波モード分散の発生要因となる。さらに、光分波器の光分波率と、光合波器の光合波率とが互いに設定値からずれた場合にも、偏波モード分散の発生要因となる。発明者の実験によれば、これらの要因により生じる偏波モード分散は、光導波路の複屈折を低減することにより、抑制することができる。
【0055】
図6(b)に光分波器111と光合波器121との光分波率と光合波率との絶対値の設定値からのずれ量に対する偏波モード分散を示す。図6(c)に光分波器の光分波率と光合波器と光合波率とのずれ量に対する偏波モード分散を示す。通常は、これら二つの要因により、偏波モード分散はさらに増加するが、リッジ構造を形成し、光導波路の複屈折を低減することで、これら二つの要因による偏波モード分散をほぼ皆無にすることができる。それにより偏波モード分散の発生要因を、光分波器と光合波器との偏波依存性によるずれ量に絞ることができ、偏波モード分散の低減が容易になる。また、光分波器と光合波器の光分波率と光合波率の絶対値の設定値からのずれや、光分波器の光分波率と、光合波器の光合波率とが互いにずれても偏波モード分散の主な発生要因にはならないので、製造誤差に強い光信号処理器を実現することができる。
【0056】
すなわち、第一実施形態のように、光分波器および光合波器の少なくとも一方に偏光変換手段を用いることによって、偏波モード分散を十分に低減することができるが、本実施形態のように光導波路をリッジ導波路とすることで、光分波率および光合波率の絶対値の設定値からのずれ、および光分波率と光合波率とのずれの偏波モード分散への影響をほぼ無くすことができる。よって、さらに偏波モード分散を低減することができるので、より高品位な光信号を出力することができる。また、光分波率および光合波率の絶対値の設定値からのずれ、および光分波率と光合波率とのずれがあっても、偏波モード分散への影響はほとんど無いので、製造誤差の影響を低減することができ、コストダウンにも繋がる。
【0057】
ここで、具体的な数値を用いて説明する。製造誤差により光分波器111の光分波率が40%、光合波器121の光合波率が40%である場合、光分波器111と光合波器121との光分波率と光合波率との絶対値の50%(設定値)からのずれ量は10%である。この絶対値の設定値からのずれにより、通常の導波路では、101入力103出力において、0.3psの偏波モード分散が加わる。一方、リッジ導波路の場合、絶対値のずれ量が10%あっても、偏波モード分散の増加は0.02ps以下である。
【0058】
また、製造誤差により光分波器111の光分波率が40%、光合波器121の光合波率が50%である場合、光分波器111の光分波率と光合波器121の光合波率とは互いに10%ずれている。このずれにより、通常の導波路では、入力導波路、出力導波路によらず、0.2psの偏波モード分散が加わる。一方、リッジ導波路の場合、光分波率と光合波率とのずれ量が10%あっても、偏波モード分散の増加は0.01ps以下である。
【0059】
以上で説明したように、本実施形態では、光導波路をリッジ構造により形成することにより、光分波率と光合波率とのずれに対し、偏波モード分散の低減効果をより大きくし、さらに製造誤差に強い光信号処理器を実現することが可能である。
【0060】
(第三実施形態)
図7に本発明の第二実施形態における光信号処理器の構成を示す。
本実施形態の光信号処理器は、基板161上に形成され、光分波器111と、光合波器121と、光分波器111と光合波器121とに挟まれた二本の光導波路131および132と、光分波器111の入力側に接続された入力導波路101、102と、光合波器121の出力側に接続された出力導波路103、104とを備えている。
【0061】
そして、光分波器111および光合波器121には、光分波器111と光合波器121との長手方向に対し概ね垂直に、それぞれ溝201と203が形成されている。光分波器111の光分波率と、光合波器121の光合波率とが偏光によらずにほぼ一定になるよう、溝201と203とに偏光変換手段301、303が設けられている(挿入されている)。さらに、本実施形態では、光導波路131と132とにも、光導波路131、132の長手方向に対して概ね垂直に溝202が形成されている。この溝202には偏光変換手段302が設けられている(挿入されている)。偏光変換手段303は、自身を透過する光の偏光を90°回転させるように設定されている。よって、偏光変換手段302に入力された光がTM光(TE光)である場合は、偏光変換手段302にて偏光が90°回転されて、TE光(TM光)として出力される。この偏光変換手段302により、光導波路131、132の偏波依存性を低減している。
【0062】
本実施形態では、光信号処理器をシリコン基板上の石英系導波路で形成し、光分波器111と光合波器121として共に二入力二出力の多モード干渉計を用いている。また、偏光変換手段として、ポリイミド波長板を用いている。なお、偏光変換手段302についても、ポリイミド波長板に限らず、入力された光の偏光を90°回転することができるものであればいずれを用いても良い。
【0063】
本実施形態では、光導波路131と132とに偏光変換手段302を挿入することにより、光導波路131、132の偏波依存性を低減でき、第二実施形態と同様の偏波モード分散低減効果が得られる。すなわち、光分波器と光合波器との光分波率と光合波率との絶対値のずれや、光分波器の光分波率と光合波器の光合波率とが互いに異なることによる偏波モード分散を緩和できる。
【0064】
図8(a)に光分波器111と光合波器121との偏波依存性による光分波率と光合波率との設定値からのずれ量に対する偏波モード分散を示す。比較のため、第一実施形態で示した、偏光変換手段302が無い、通常の導波路の偏波モード分散も示す。第二実施形態同様に、光導波路の複屈折を低減することで、通常の導波路に比べて偏波モード分散を低減できることがわかる。
【0065】
また、第二実施形態で説明したように、光導波路の複屈折を低減すれば偏波依存性によるずれに起因する偏波モード分散を低減できるだけでなく、製造誤差の影響を低減できるなどの付加的な効果も得られるが、本実施形態でも同様の効果を確認した。
【0066】
図8(b)に光分波器111と光合波器121との光分波率と光合波率との絶対値の設定値からのずれ量に対する偏波モード分散を示す。図8(c)に光分波器の光分波率と光合波器の光合波率とのずれ量に対する偏波モード分散を示す。通常は、これら二つの要因により、偏波モード分散はさらに増加するが、光導波路131と132とに偏光変換手段302を挿入することにより、光導波路131、132の偏波依存性を完全に無くし、光分波率と光合波率との絶対値の設定値からのずれや、光分波器の光分波率と光合波器の光合波率とのずれによる偏波モード分散を完全に無くした。
【0067】
以上で説明したように、本実施形態では、光分波器と光合波器とに挟まれた二本の光導波路に偏光変換手段を設けることにより、光分波率と光合波率とのずれに対し、偏波モード分散の低減効果をより大きくし、さらに製造誤差に強い光信号処理器を実現できる。
【0068】
(第四実施形態)
本実施形態における第1実施例に係る光信号処理器は、基板上に形成された光分波器と、光合波器と、光分波器と光合波器とに挟まれた二本の光導波路を備えている。そして、光分波器および光合波器には、光分波器と光合波器との長手方向に対し概ね垂直に、それぞれ溝が形成されており、該溝にはそれぞれ偏光変換手段が挿入されている。また、二本の光導波路にも溝が形成され、該溝にも偏光変換手段が挿入されている。さらに、本実施形態では、光導波路をリッジ構造で形成している。
【0069】
本実施形態では、光分波器、光合波器、および上記二本の光導波路に偏光変換手段を設けたことにより、光分波器の光分波率と光合波器の光合波率とが、入力される光の偏光によらずにほぼ一定になり、偏波モード分散を低減することが可能である。また、光導波路をリッジ構造で形成し、予め光導波路の複屈折を低減し、さらに二本の光導波路に偏光変換手段を挿入しているので、それにより、第二と第三実施形態で説明した偏波モード分散の抑制効果をより大きくすることができる。
【0070】
第四実施形態における光信号処理器の第1実施例では、光信号処理器をシリコン基板上の石英系導波路で形成し、光分波器111と光合波器121として共に二入力二出力の多モード干渉計を用いている。また、偏光変換手段として、ポリイミド波長板を用いている。
【0071】
図9(a)に、光信号処理器を構成する光分波器の光分波率と光合波器の光合波率との偏波依存性による設定値からのずれ量に対する偏波モード分散を示す。図9(a)に示すように、リッジ構造及び偏光変換手段を用いたことにより、偏波依存性によるずれ量を1%以下に低減し、偏波モード分散を0.1ps以下の極めて低い値に抑えた。
【0072】
図9(b)に透過スペクトルの周波数依存性を、図9(c)に偏波モード分散(101入力104出力)の周波数依存性を示す。図9(b)、(c)から分かるように、偏波依存性による中心波長ずれを抑えると同時に、偏波モード分散が小さい光信号処理器を実現した。
【0073】
図10に、第四実施形態における光信号処理器の第2実施例を示す。
本実施形態の光信号処理器は、基板161上に形成され、光分波器111と、光合波器121と、光分波器111と光合波器121とに挟まれた二本の光導波路131および132と、光分波器111の入力側に接続された入力導波路101、102と、光合波器121の出力側に接続された出力導波路103、104とを備えている。光分波器111および光合波器121には、光分波器111と光合波器121との長手方向に対し概ね垂直に溝201、203が形成され、該溝にはそれぞれ偏光変換手段301、303が挿入されている。また、二本の光導波路131、132にも、二本の光導波路131、132の長手方向に対して概ね垂直に溝202が形成され、該溝にも偏光変換手段302が挿入されている。
【0074】
ここで、対応する溝が形成された、光分波器111、光合波器121、光導波路131、132が、光分波器111に形成された溝201、光合波器121に形成された溝203、光導波路131、132に形成された溝202より出射される漏れ光401、402、403、404の開き角の範囲外に配置されている。すなわち、上記溝に光が入射すると、該溝より所定の角度である開き角φの漏れ光が放射されることがある。この漏れ光が他の偏光変換手段を挿入した溝に干渉すると、光信号処理器の特性が変化する。そこで、第2実施例では、この漏れ光の影響を抑制するため、偏光変換手段を挿入した溝の各々を、それ以外の溝から放射された漏れ光の開き角の範囲外に配置している。すなわち、ある溝から放射された漏れ光が、他の溝に挿入された偏光変換手段に入射しないように、各溝を形成し、それぞれの溝に対応する偏光変換手段を挿入している。なお、第2実施例では、光導波路131、132は共に曲げ部分を含む。光導波路に曲げ部分を導入することにより、高次モードを防ぐ効果が得られ、良好な光学特性が得られる。
【0075】
本実施例の特徴を具体的な数値を用いて説明する。
漏れ光がガウスビームであり、開き角φがtan‐1(λ/π・n・w)で近似されると仮定し、波長λ=1.55μm,屈折率n=1.45、フィールド径w=10μmと見積もった場合、開き角φは約2°になる。よって、約2°の開き角φの漏れ光が、他の偏光変換手段に入射しないように、各溝を形成し、偏光変換手段を挿入する必要がある。そこで、ある溝の、光の出射端から開き角φが2°以上になるよう、他の偏光変換手段を挿入した溝を配置すれば良い。
【0076】
光を入力する入力導波路101、102と、光を出力する出力導波路130、104とを結ぶ方向を光信号処理器の長手方向と定義する(図中の水平方向;以下、z方向と記す)。第2実施例では、光分波器111をz方向に対しθ1=60°で配置し、光合波器121をz方向に対し角度θ2=−60°で配置している。そして、光分波器111の長手方向(光の伝搬する方向)に対し概ね垂直に、すなわちz方向に対し概ね150°の方向に溝201を形成し、かつ、光合波器121の長手方向(光が伝搬する方向)に対し垂直に、すなわちz方向に対し概ね30°の方向に溝203を形成し、それぞれに偏光変換手段301、303を挿入している。光導波路131、132に挿入されている偏光変換手段302は、光分波器111に挿入されている偏光変換手段301からの漏れ光401の開き角φの範囲外に配置され、光合波器121に挿入されている偏光変換手段303は、光導波路131、132に挿入されている偏光変換手段302からの漏れ光402、403の開き角φの範囲外に配置されている。
【0077】
なお、出力導波路103、104は、光合波器121に挿入されている偏光変換手段303からのもれ光404を拾わない。また、上記では、光分波器や光合波器と溝との関係を説明するために、光分波器や光合波器のz方向に対する配置角度を用いた。しかしこの角度は一例であり、光分波器や光合波器の面内の位置や、導波路材料などによって容易に変わるものである。すなわち、第2実施例の特徴的な構成は、溝を漏れ光の開き角φの範囲外に配置したことである。
【0078】
図11に偏波モード分散(101入力104出力)の周波数依存性を示す。もれ光の影響により偏波モード分散がばらつく図9(c)に対し、もれ光の影響を低減したことにより偏波モード分散を滑らかにし、特性を改善した。
【0079】
図12に、第四実施形態における光信号処理器の第3実施例を示す。
【0080】
第3実施例では、光分波器111はz方向に対し角度θ1=90°で配置され、光合波器121はz方向に対し角度θ2=90°で配置されている。そして、光分波器111には、光分波器111の長手方向に対し垂直な方向から0°よりも大きく概ね10°以下、もしくは0°よりも小さく概ね−10°以上の角度θで溝201が形成され、該溝201には偏光変換手段301が挿入されている。すなわち、溝201の長手方向と光分波器111の長手方向とのなす角度が、90°(垂直)から0°よりも大きく概ね10°以下の角度だけ傾けた角度となるので、光分波器111の長手方向と偏光変換手段301の長手方向とのなす角度も、90°(垂直)から0°よりも大きく概ね10°以下の角度だけ傾けた角度となる。同様に、光合波器121には、光合波器121の長手方向に対し垂直な方向から0°よりも大きく概ね10°以下、もしくは0°よりも小さく概ね−10°以上の角度θで溝203が形成され、該溝203には偏光変換手段303が挿入されている。すなわち、溝203の長手方向と光合波器121の長手方向とのなす角度が、90°(垂直)から0°よりも大きく概ね10°以下の角度だけ傾けた角度となるので、光合波器121の長手方向と偏光変換手段301の長手方向とのなす角度も、90°から0°よりも大きく概ね10°以下の角度だけ傾けた角度となる。
【0081】
本実施例では、溝201、202、203は光導波路の作成工程にて形成している。上述のように第3実施例では、溝201、203(偏光変換手段301、303)の長手方向を光分波器111、光合波器121とのなす角度が完全に垂直(0°)ではなく、僅かに傾けているのは、偏光変換手段から入力側の光導波路への反射光を抑制するためである(特許文献3参照)。
【0082】
このように、第3実施例では、偏光変換手段からの入力側の光導波路への反射光の影響を低減することが目的なので、偏光変換手段を、基板の面内に垂直な方向(基板の法線方向)から0°よりも大きく概ね10°以下の角度で傾くように、溝に挿入するようにしても良い。
【0083】
図13に、第四実施形態における光信号処理器の第4実施例を示す。
光分波器111はz方向に対し角度θ=95°で配置され、光合波器121はz方向に対し角度θ=85°で配置されている。そして、光分波器111の長手方向に対し約85°に形成された溝と、光合波器121の長手方向に対し約95°に形成された溝が、共通の溝201である。このように、光分波器と光合波器との長手方向に対しわずかに傾けて共通の溝を形成することで、溝の形成工程を減らすことができる。また、この構成では、光分波器111と光合波器121とを、共通の溝201に対し±5°傾けているので、偏光変換手段301、303に対し相対的に±5°傾いている。そのため、偏光変換手段からの入力側の光導波路への反射を抑制することができる。
【0084】
なお、第4実施例では、共通な溝201の長手方向と、光分波器111、光合波器121の長手方向とのなす角度が約5°としているが、この角度に限定されない。第4実施例は、第3実施例と同様に、偏光変換手段から入力側の光導波路への反射光を抑制することが目的であるので、上記角度は、0°よりも大きく概ね10°以下の角度とすることができる。また、光分波器111の長手方向および溝201の長手方向のなす第1の角度と、光合波器121の長手方向および溝201の長手方向のなす第2の角度とは同じである必要は無く、0°よりも大きく概ね10°以下の角度であれば、第1の角度と第2の角度とは異なる角度であっても良い。
【0085】
図14に、第四実施形態における光信号処理器の第5実施例を示す。
光分波器111と光合波器121とは概ね平行に配置され、光分波器111と光合波器121との長手方向に対し概ね垂直に、共通の溝201が形成されている。第5実施例では共通の溝201はブレードを用いて切り出した。また、入力導波路101、102と出力導波路103、104とが同一基板端面に位置するので、光信号処理器を小型にできる。また、ファイバを一括で接続できるので、製造コストを削減できる。さらに、共通の溝201に共通の偏光変換手段301を挿入し、光分波器111と光合波器121の偏光依存性を同時に低減する構成とした。もちろん、光信号処理器を例えばS字型構成にし、光分波器と光合波器と二本の光導波路の溝を全て共通とし、共通の偏光変換手段を一つ挿入してもよい。
【0086】
図15に、第四実施形態における光信号処理器の第6実施例を示す。
光分波器111と光合波器121はz方向に対し角度θ1=5°、θ2=5°で配置されている。また、光導波路131、132はz方向に対し約5°で配置されている。そして、光分波器111の長手方向に対し垂直な方向から概ね10°の角度で溝201が形成され、光合波器121の長手方向に対し垂直な方向から概ね10°の角度で溝203が形成され、光導波路131、132の長手方向に対し垂直な方向から概ね10°の角度で溝202が形成され、それぞれ偏光変換手段301、303、302が挿入されている。溝201、202、203は同一方向を向いている。そのため、溝を容易に形成することができる。
【0087】
また、偏光変換手段が挿入された溝のいずれかより出射される漏れ光401、402、403、404の開き角の範囲外に、他の偏光変換手段が挿入されている。そのため、光信号処理器の特性は、もれ光の干渉を受けない。さらに、偏光変換手段301、302、303は光分波器111と光合波器121と光導波路131、132の長手方向に対し概ね垂直に±10°の角度で挿入されているので、偏光変換手段の反射光を避けることができる。もちろん、基板の垂直方向に対し±10°の角度で挿入しても同様の効果は得られる。なお、本実施形態の光信号処理器も他の実施例と同様に光導波路131、132の光路長の差は、この光信号処理器の周波数周期が100GHzになるよう設定されている。
【0088】
図16に、第四実施形態における光信号処理器の第7実施例を示す。
図16では、新たに光分波器112と、光合波器122と、光分波器112と光合波器122とに挟まれた二本の光導波路133、134とを有する光信号処理回路が形成されている。
このように、光信号処理回路を複数接続することにより、さらに高機能な光信号処理器を実現した。この光信号処理器を用いると、例えば多値位相変調した信号を複数チャネルの強度変調信号に変換可能になる。入力導波路101もしくは102に入力された光は光分波器113により分波され、二つの光信号処理回路に入力される。そしてそれぞれの出力は、4つの出力導波路103、104、105、106より出力される。
【0089】
(第五実施形態)
図17に本発明の第五実施形態における光信号処理器の構成を示す。
本実施形態の光信号処理器は、基板161上に形成され、一つの入力を二つの出力に分波する光分波器111と、この光分波器111に接続された二本の光導波路131、132と、光導波路131、132に接続され、二つの入力を二つの出力に合波する光合波器121とを備えている。そして、光合波器121の長手方向に対し概ね垂直に形成した溝203に偏光変換手段303を挿入し、光合波器121の光合波率を偏光によらずに一定にしている。さらに、光導波路131、132の垂直方向にも溝202を形成し、偏光変換手段302を挿入している。なお、溝201と202とは同一方向に形成されている。
【0090】
本実施形態では、光信号処理器をシリコン基板上の石英系導波路で形成し、光分波器111として、一つの入力を二つの出力に分波するY分岐を用いたが、多モード干渉計を用いても良い。また、光合波器121として二つの入力を二つの出力に合波する多モード干渉計を用いたが、例えば、X分岐もしくは方向性結合器もしくはその他の光合波手段を用いてもよい。また、偏光変換手段として、ポリイミド波長板を用いている。
【0091】
本実施形態では、光合波器121に偏光変換手段を挿入し、偏光依存性によるずれ量を低減することにより、偏波モード分散を低減することができる。また、二本の光導波路131、132にも偏光変換手段302を挿入することにより偏光モード分散の低減効果をより大きくし、さらに製造誤差に強い光信号処理器を実現することができる。
【0092】
なお、本実施形態では、偏光変換手段を光合波器121にのみ設けるようにしているがこれに限らず、偏光変換手段を光分波器111にも設けるようにしても良い。また、偏光変換手段を光分波器111のみに設けるようにしても良い。
【0093】
すなわち、光分波器111および光合波器121の少なくとも一方に偏光変換手段を設ければ良いが、図17のように、少なくとも光合波器121に偏光変換手段を設けることがより好ましい。
【0094】
なお、図17では、光合波器121は、2つの入力を2つの出力に合波する光合波器を用いているが、2つの入力を1つの出力に合波する光合波器を用いても良い。本発明の一実施形態で重要なことは、光合波器および/または光分波器の光合波率および/または光分波率を偏光に依らず一定に保つことであり、そのために、光合波器および光分波器の少なくともいずれか一方に、好ましくは少なくとも光合波器に偏光変換手段を設けている。よって、光分波器および光合波器の入力ポート数および出力ポート数は本質ではなく、光分波器にあっては、1つ以上の入力を2つの出力に分波できればよく、また、光合波器にあっては、2つの入力を1つ以上の出力に合波できれば良いのである。
【0095】
(その他の実施形態)
以上の実施形態では、平面光導波路を用い、光導波路としてはシリコン基板上に形成した石英系導波路を使用した光信号処理器について説明した。これは平面型導波路が集積性に優れ、光信号処理器の小型化、低コスト化に優れるためである。さらにこの組み合わせの光導波路は低損失で安定であり、しかも石英系光ファイバとの整合性に優れているためである。しかしながら本発明の一実施形態はこれらの組み合わせに限定されるものではない。また、光信号処理器の説明は、一般的に広く用いられている二入力二出力を例に取りあげて説明する。しかしながら、本発明の一実施形態はこれに限定されるものではなく、他の構成に関しても同様に適応可能である。
【0096】
以上述べた各実施形態では、光信号処理器をシリコン基板上に形成された石英系導波路を用いて図18に示すように作製することができる。すなわち、シリコン基板161上に火炎堆積法でSiO2を主体にした下部クラッドガラススート162、SiO2にGeO2を添加したコアガラススート163を順に堆積する(図18の(a))。その後、1000℃以上の高温でガラス透明化を行う。この時に、下部クラッドガラス層164、コアガラス165は設計した厚さとなるように、ガラスの堆積を行う(図18の(b))。引き続き、フォトリソグラフィ技術を用いてコアガラス165上にエッチングマスク166を形成し(図18の(c))、反応性イオンエッチングによってコアガラス165のパターン化を行う(図18の(d))。エッチングマスク166を除去した後、上部クラッドガラス167を再度火炎堆積法で形成する。上部クラッドガラス167にはB2O3やP2O5などのドーパントを添加してガラス転位温度を下げ、それぞれのコアガラス165とコアガラス165の狭い隙間にも上部クラッドガラス167が入り込むようにする(図18の(e))。
【0097】
また、以上述べた本発明の各実施形態では、主にシリコン基板上の石英系ガラス導波路を用いた例を示したが、その導波路材料がポリイミド、シリコン、半導体、LiNbO3などであってもよい。また、例えばその製造方法が、スピンコート法、ゾルゲル法、スパッタ法、CVD法、イオン拡散法、イオンビーム直接描画法などであっても本発明は適用可能である。また、基板もシリコンに限定するものではない。
【0098】
また、本発明の各実施形態では光導波路の形状にはよらず、正方形、長方形、多角形、円形など任意の形状を用いることができる。例えば、光導波路のコア幅を部分的に変え、屈折率を他の部分と異なる値にすることができる。また、光導波路に応力を付与し、屈折率の値を変化させることもできる。さらに、本回路は石英系導波路を用いたが、異なる材料を透過するようにしても良い。例えば、光導波路中にシリコン樹脂などの材料を含んでも良い。
【0099】
また、各実施形態では、基板上に溝を形成し、その溝に偏光変換手段を挿入する例を示したが、偏光変換手段を設ける方法は、これに限定されない。例えば、レーザ照射などの光照射法や薄膜ヒータなどによる局所加熱法などを用いて、光合波器および光分波器の少なくとも一方に、好ましくは少なくとも光合波器に含まれる光導波路の複屈折を局所的に変化させ、光学的な光路長や光合波手段、光分波手段の結合特性、位相特性を調整することもできる。また、電気光学効果、磁気光学効果などを用いても良い。
【0100】
以上、各実施形態では光合波手段、光分波手段として方向性結合器やマルチモード干渉カプラを用いたが、干渉計型カプラ、X分岐カプラ、Y分岐カプラなど任意の種類のものを用いることができる。
【0101】
以上、各実施形態で説明したように、光分波器もしくは光合波器の少なくとも一方に、好ましくは少なくとも光合波器に偏光変換手段を設け、光分波器の光分波率もしくは光合波器の光合波率を偏光によらずに一定にすることで、偏波モード分散の小さい光信号処理器を実現することができる。
また、光分波器と光合波器とを共に同じ構成とすることにより、光分波器の光分波率と光合波器の光合波率との間のずれを抑制し、偏光モード分散を低減することができる。
また、光導波路の複屈折を低減したことにより、偏光モード分散を低減することができる。さらに、光分波率と光合波率とのずれに対し、偏光モード分散の低減効果をより大きくすることができる。さらにまた、製造誤差に強い光信号処理器を実現することができる。
【0102】
また、偏光変換手段が挿入された溝より出射される漏れ光の開き角φの範囲外に、その他の偏光変換手段が挿入された溝を配置することにより、漏れ光の影響を低減でき、良好な特性が得られる。
また、溝を同一方向とすることにより、溝の加工を容易にできる。
また、溝を共有することで溝の形成工程を減らすことができ、製造コストを削減できる。さらに、一つの偏光変換手段で光分波器と光合波器の偏光依存性を同時に低減することができる。
また、入力導波路と出力導波路を同一基板端面に配置することで光信号処理器を小型にできる。さらに、ファイバを一括で接続できるので、製造コストを削減できる。
【0103】
(さらに他の実施形態)
本実施形態では、その他の実施形態に記載した、光導波路の複屈折を局所的に変化させる形態について説明する。
図19に、本実施形態における光信号処理器の構成を示す。本実施形態の光信号処理器は、基板161上に形成され、光分波器111と、光合波器121と、光分波器111と光合波器121とに挟まれた二本の光導波路131および132と、光分波器111の入力側に接続された入力導波路101、102と、光合波器121の出力側に接続された出力導波路103、104とを備えている。
【0104】
本実施形態では、光分波器111と光合波器121とに含まれる光導波路の複屈折を局所的に変化させることにより、光分波器111の光分波率と光合波器121の光合波率とを偏光によらず一定にしている。
【0105】
より詳しくは、本実施形態において光分波器111および光合波器121は、2つの光結合器191aおよび191bと、これら2つの光結合器191a、191bに挟まれた2本の光導波路192、193とを備えている。そして、光導波路192の一部分の導波路幅を細くし(符号194)、光導波路193の一部分を太くすることにより(符号195)、それぞれの光導波路の複屈折を局所的に変化させている。このように、光導波路の複屈折を局所的に変化させることにより、光合波器111および光分波器121の偏波依存性を低減している。なお、光導波路の幅はテーパ状に徐々に変化させている。
【0106】
さて、2つの光結合器191a、191bと、これら2つの光結合器に挟まれた2本の光導波路194、195を備える光分波器もしくは光合波器は、波長無依存光結合器や可変光結合器の構成要素として用いられているが、光導波路194、195の複屈折を局所的に変化させることにより、光分波器もしくは光合波器全体で見たときの偏光依存性を低減することができる。
【0107】
なお、図19では、光導波路192の一部分を細くし、光導波路193の一部分を太くしているが、この構成に限定されない。本実施形態では、光結合器191bに偏光により異なる位相差を与えることが重要であって、そのために、光導波路192および光導波路193の少なくとも一方について、局所的に複屈折を変化させるのである。すなわち、本実施形態では、光導波路192および光導波路193の少なくとも一方の複屈折を局所的に変化させることができれば良いのである。
【0108】
よって、光導波路192または193のいずれか一方の光導波路幅を局所的に太く、または細くするようにしても良い。また、光導波路192および193の双方の光導波路幅を局所的に太く、または細くしても良い。ただし、光導波路192および193の複屈折を局所的に変化させる領域の幅(長さ)が同じ場合は、光導波路192および193における上記領域の長さ(幅)を異なるように設定すれば良い。すなわち、光導波路192および光導波路193について、複屈折を局所的に変化させる領域の幅および長さの少なくとも一方を相対的に異ならせるようにすれば良いのである。
【0109】
また、図19では、光導波路192および光導波路193の長さは異なっているが、同じであっても良く、例えば、光導波路192および193の長さが同じであることや、光導波路192および193の双方がアーム導波路または直線状の導波路であるなど、光導波路192および光導波路193の形状はいずれであっても良い。
【0110】
なお、本実施形態では、光導波路の複屈折を局所的に変化させる手段として、導波路の幅を変化させる方法を用いたが、これには限定されず、光分波器もしくは光合波器に含まれる光導波路上に膜を形成し、応力を付与する手段、光導波路上に形成した薄膜ヒータによる恒久的な局所的加熱手段、もしくはレーザ照射などによる光照射により、複屈折を調整してもかまわない。
【0111】
また、本実施形態では、光分波器111と光合波器121とはそれぞれ、2つの光結合器191a、191bおよびこれら2つの光結合器に挟まれた2本の光導波路192、193を備えているが、光結合器と光導波路とを含むその他の干渉型の光分波器もしくは光合波器を用いても良い。例えば、N個の光結合器と、これらN個の光結合器に挟まれた複数本の光導波路を備えるようにしても良い。なお、2つの光結合器は、方向性結合器、多モード干渉計、X分岐カプラ、Y分岐カプラなどの光結合器を用いることができる。
【0112】
また、光分波器111や光合波器121として干渉型ではなく、方向性結合器、多モード干渉計、X分岐カプラ、Y分岐カプラなどを用い、これらの光分波器111や光合波器121のうちの一部に、導波路形状を変化させる手段、応力付与膜を形成する手段、薄膜ヒータによる恒久的な局所加熱手段、もしくはレーザ照射などによる光照射手段などの手段を適用し、これら方向性結合器、多モード干渉計、X分岐カプラ、Y分岐カプラの複屈折を調整しても良い。
【0113】
さらに、第一実施形態で示したように、本実施形態の光分波器111と光合波121とに偏光変換手段を挿入してもかまわない。
【0114】
以上、本実施形態では、光分波器および光合波器に含まれる光導波路の複屈折を局所的に変化させ、これら光分波器の光分波率と、光合波器の光合波率との偏光によるずれ量を低減することにより、従来の光信号処理器で問題になっていた偏波モード分散を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】(a)は、従来の光信号処理器の構成例を示す図であり、(b)は、二本の光導波路に偏光変換手段を設けた従来の光信号処理器の構成例を示す図である。
【図2】(a)は、従来の光信号処理器の透過スペクトルを示す図であり、(b)は、二本の光導波路に偏光変換手段を設けた従来の光信号処理器の透過スペクトルを示す図であり、(c)は、従来の光信号処理器の偏波モード分散の周波数依存性を示す図であり、(d)は、二本の光導波路に偏光変換手段を設けた従来の光信号処理器の偏波モード分散の周波数依存性を示す図である。
【図3】第一の実施形態における光信号処理器の構成を示す図である。
【図4】(a)は、第一の実施形態における、光信号処理器を構成する光分波器と光合波器との偏波依存性によるずれ量に対する偏波モード分散を示す図であり、(b)は、第一の実施形態における、光分波器と光合波器との偏波依存性を10%から2%に低減した時の偏波モード分散(101入力103出力)の周波数依存性を示す図である。
【図5】(a)は、第二の実施形態における光信号処理器の構成を示す図であり、(b)は、リッジ構造により形成した光導波路の断面図であって、(a)のA−A‘線断面図である。
【図6】(a)は、第二の実施形態における偏波依存性によるずれ量に対する偏波モード分散を示す図であり、(b)は、光分波器と光合波器との光分波率と光合波率との絶対値のずれ量に対する偏波モード分散を示す図であり、(c)は、光分波器の光分波率と光合波器の光合波率とのずれ量に対する偏波モード分散を示す図である。
【図7】第三の実施形態における光信号処理器の構成を示す図である。
【図8】(a)は、偏波依存性によるずれ量に対する偏波モード分散を示す図であり、(b)は、光分波器と光合波器との光分波率と光合波率との絶対値のずれ量に対する偏波モード分散を示す図であり、(c)は、光分波器の光分波率と光合波器の光合波率とのずれ量に対する偏波モード分散を示す図である。
【図9】(a)は、第四の実施形態における、光信号処理器を構成する光分波器の光分波率と光合波器の光合波率との偏波依存性による設定値からのずれ量に対する偏波モード分散を示す図であり、(b)は、光信号処理器の透過スペクトルの周波数依存性を示す図であり、(c)は、光信号処理器の偏波モード分散(101入力104出力)の周波数依存性を示す図である。
【図10】第四の実施形態の第2実施例における光信号処理器の構成を示す図である。
【図11】第四の実施形態の第2実施例における光信号処理器の偏波モード分散(101入力104出力)の周波数依存性を示す図である。
【図12】第四の実施形態の第3実施例における光信号処理器の構成を示す図である。
【図13】第四の実施形態の第4実施例における光信号処理器の構成を示す図である。
【図14】第四の実施形態の第5実施例における光信号処理器の構成を示す図である。
【図15】第四の実施形態の第6実施例における光信号処理器の構成を示す図である。
【図16】第四の実施形態の第7実施例における光信号処理器の構成を示す図である。
【図17】第五の実施形態における光信号処理器の構成を示す図である。
【図18】(a)〜(e)は、本発明の一実施形態における、平面導波路型光信号処理器の作製工程を説明する模式図である。
【図19】本発明の一実施形態における光信号処理器の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0116】
101、102 入力導波路
103、104、105、106 出力導波路
111、112、113 光分波器
121、122 光合波器
131、132、133、134 光導波路
161 基板
162 下部クラッドガラススート
163 コアガラススート
164 下部クラッドガラス
165 コアガラス
166 エッチングマスク
167 上部クラッドガラス
168 下部クラッドリッジ
201、202、203 溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号処理器に関し、より詳細には、偏波モード分散を抑え、高速光通信システムにも対応した光信号処理器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、音声情報や動画情報などの大容量な情報を伝送可能な通信システムが望まれており、そのような通信システムとして光通信システムが注目されている。この光通信システムの高速大容量化を実現する方法として、波長分割多重方式が開発されている。
【0003】
波長分割多重システムでは、入力した光信号を目的に応じて変化させることのできる光信号処理器が用いられている。図1(a)に、光通信システムで用いられている従来の光信号処理器の構成例を示す。この光信号処理器は、光を分波する光分波器1111と、光を合波する光合波器1121と、光分波器1111と光合波器1121に挟まれた二本の光導波路1131および1132とを備えている。そして光分波器1111には入力導波路1101、1102が接続され、光合波器1121には出力導波路1103、1104が接続されている。
【0004】
光分波器1111と光合波器1121とには、二本の光導波路を近接させた方向性結合器や、多モード干渉型結合器が用いられている。そして光分波器より二本の光導波路に均等に光信号が分波され、二本の光導波路より光合波器に均等に光信号が合波されるよう、光分波器111の光分波率と光合波器1121の光合波率とがそれぞれ50%に設定されている。二本の光導波路1131と1132とは、光ファイバ、または基板上に形成された平面導波路により形成している。光導波路1131と1132との光路長の差は、この光信号処理器の周波数周期が100GHzになるよう設定されている。
【0005】
光信号処理器の入力導波路1101に光を入力し、出力導波路1103と1104とより出力されるTEモードとTMモードとの透過スペクトルの周波数依存性を図2(a)に示す。光信号処理器の透過スペクトルは周波数に対し100GHzの周期性を有する。しかし、光導波路1131と1132とは偏波依存性を有するため、図2(a)に示されるように、TEモードとTMモードとの透過スペクトルに20GHz程度の中心周波数ずれが生じている。
【0006】
そこで、特許文献1では、この偏波依存性による中心周波数ずれを解消するため、光分波器と光合波器との間の光導波路に偏光変換手段を設けている。図1(b)に、二本の光導波路1131と1132との長手方向に対し垂直に偏光変換手段1301を設けた、特許文献1に記載の従来の光信号処理器の構成例を示す。偏光変換手段1301としては、例えばポリイミド膜により構成された1/2波長板が用いられている。二本の光導波路1131と1132とに偏光変換手段1301を挿入した後に、光信号処理器の入力導波路1101に光を入力し、出力導波路1103と1104とより出力されるTEモードとTMモードの透過スペクトルの周波数依存性を図2(b)に示す。
【0007】
偏光変換手段1301にTM光が入力されるとTE光に変換され、逆にTE光が入力されるとTM光に変換されて出力される。よって、偏光変換手段1301を光導波路1131および1132の中間点に設ければ、光路長差は、入力された偏光が感じる屈折率および偏光変換手段により変換された、上記偏光と垂直方向の偏光が感じる屈折率の平均と、導波路の長さとの積となる。従って、光導波路1131、1132に入力される光がTM光、TE光に関らず、光路長差を一定にすることができるので、偏波無依存を実現できる。このように、特許文献1では、光導波路1131と1132との偏波依存性を解消したことにより、TEモードとTMモードの透過スペクトルの中心周波数ずれの問題を解決している。
【0008】
【特許文献1】特許第3501235号明細書
【特許文献2】特許第3423297号明細書
【特許文献3】特許第3429277号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上から明らかなように、光信号処理器において、偏光変換手段を用いる方式が有力である。しかしながら、この偏光変換手段を用いる方式であっても、現在求められる高品位な出力を得るためには、以下のような、まだ改善しなければならない課題が残されている。
【0010】
特許文献1では、光信号処理器の二本の光導波路に偏光変換手段を設けることにより、偏波依存性による透過スペクトルの中心周波数ずれを解消することができた。しかし、近年の高速光通信システムでは、偏波モード分散による光信号の劣化が大きな問題となってきており、下記に示すように、光信号処理器の二本の光導波路に偏光変換手段を設けるだけでは解決できない。
【0011】
図2(c)に従来の光信号処理器の偏波モード分散の周波数依存性を示す。また、図2(d)に光信号処理器の二本の光導波路に偏光変換手段を設けた後の偏波モード分散の周波数依存性を示す。
【0012】
図2(c)に示すように、入力導波路1101から光信号を入力し、出力導波路1104から光信号を出力した時(1101⇒1104)は、偏波モード分散は生じない。しかし、入力導波路1101から光信号を入力し、出力導波路1103から光信号を出力した時(1101⇒1103)は、中心周波数から±5GHzの範囲内で1.3psの偏波モード分散が生じる。
【0013】
一方、図2(d)に示すように偏光変換手段を設ける場合では、入力導波路1101から光信号を入力し、出力導波路1103から光信号を出力した時(1101⇒1103)の偏波モード分散は解消された。しかしその反面、入力導波路1101から光信号を入力し、出力導波路1104から光信号を出力した時(1101⇒1104)は、中心周波数から±5GHzの範囲内で1.3psの偏波モード分散が生じた。
【0014】
このように、二本の光導波路に偏光変換手段を設けたとしても偏波モード分散が生じる出力導波路が入れ替わるだけで、偏波モード分散は残ったままである。この分散は、光信号を歪ませる原因となり、特に近年の高速光通信システムでは大きな問題となっている。
【0015】
本発明は、このような問題を鑑みてなされたもので、その目的とするところは、偏波モード分散を低減し、高品位な光信号を出力可能な光信号処理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1記載の発明は、一つ以上の入力を二つの出力に分波する光分波手段と、該光分波手段に接続された二本の光導波路と、該二本の光導波路のそれぞれに接続され、二つの入力を一つ以上の出力に合波する光合波手段とを備える光信号処理器であって、前記光分波手段、または前記光合波手段の少なくとも一方に設けられた、入力された光の偏光を90°回転して出力する偏光変換手段を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項2記載の発明は、一つ以上の入力を二つの出力に分波する光分波手段と、該光分波手段に接続された二本の光導波路と、該二本の光導波路のそれぞれに接続され、二つの入力を一つ以上の出力に合波する光合波手段とを備える光信号処理器であって、前記光分波手段、または前記光合波手段の少なくとも一方に含まれる光導波路の複屈折を局所的に変化させる手段を備えることを特徴とする。
【0018】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記偏光変換手段は、前記光分波手段、または前記光合波手段の少なくとも一方に形成された溝に挿入されていることを特徴とする。
【0019】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記溝の長手方向は、前記偏光変換手段が設けられる、前記光分波手段および前記光合波器の少なくとも一方の長手方向に対して概ね垂直であることを特徴とする。
【0020】
請求項5記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記溝の長手方向と、前記偏光変換手段が設けられる、前記光分波手段および前記光合波器の少なくとも一方の長手方向とのなす角度は、90°(垂直)から0°よりも大きく概ね10°以下の角度だけ傾けた角度であることを特徴とする。
【0021】
請求項6記載の発明は、請求項3乃至5のいずれかに記載の発明において、前記二本の光導波路の各々に溝が形成されており、前記溝に前記偏光変換手段が挿入されていることを特徴とする。
【0022】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記光分波手段に前記溝が形成されており、前記光導波路に設けられた偏光変換手段は、前記光分波手段に形成された溝から出射される漏れ光の開き角の範囲外に設けられていることを特徴とする。
【0023】
請求項8記載の発明は、請求項6または7記載の発明において、前記光合波手段に前記溝が形成されており、前記光合波手段に設けられた偏光変換手段は、前記光導波路に形成された溝から出射される漏れ光の開き角の範囲外に設けられていることを特徴とする。
【0024】
請求項9記載の発明は、請求項6乃至8のいずれかに記載の発明において、前記光分波手段および前記光合波手段の少なくとも一方に形成された溝、および前記光導波路に形成された溝は同一方向を向いていることを特徴とする。
【0025】
請求項10記載の発明は、請求項3乃至9のいずれかに記載の発明において、前記光分波手段および前記光合波手段に前記溝が形成され、該溝が共通の溝であることを特徴とする。
【0026】
請求項11記載の発明は、請求項1乃至10のいずれかに記載の発明において、前記光分波手段に接続された前記入力と、前記光合波手段に接続された前記出力が同一基板端面に位置することを特徴とする。
【0027】
請求項12記載の発明は、請求項1乃至11のいずれかに記載の発明において、前記光分波手段および光合波手段は、共に多モード干渉計であるか、もしくは共に方向性結合器であることを特徴とする。
【0028】
請求項13記載の発明は、請求項1乃至12のいずれかに記載の発明において、前記光信号処理器は基板上に形成され、前記光導波路は、前記基板上に形成されたリッジを有する下部クラッドを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本発明によれば、光分波手段および光合波手段の少なくとも一方に、偏光変換手段または局所的に屈折率を変化させる手段を設けているので、偏波モード分散を低減することが可能となり、高品位な光信号を出力することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、発明の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0031】
本発明の一実施形態は光分波手段の光分波率と、光合波手段の光合波率との少なくともいずれか一方を偏光によらずに一定にすることで、偏波モード分散の小さい光信号処理器を実現している。
発明者は、従来の光信号処理器の偏波モード分散の発生要因を調べた。分析の結果、偏波モード分散は主に光分波手段と光合波手段との偏波依存性によるものであることが明らかになった。すなわち、光信号処理器の光分波手段の光分波率と光合波手段の光合波率とを50%に設定したとしても、光分波手段や光合波手段に偏波依存性があれば、偏波ごとに光分波率と光合波率とは50%からずれる。この偏波依存性によるずれ量(光分波率および光合波率の設定値からのずれ量)が大きいほど偏波モード分散は大きくなった。
【0032】
そこで、本発明の一実施形態では、光分波手段と光合波手段との少なくとも一方に、偏光変換手段を設けている。これにより、偏波依存性による上記ずれ量を低減することができる。よって、光分波手段と光合波手段との偏波依存性が大きく低減され、光信号処理器の偏波モード分散を低減することができる。
【0033】
すなわち、本発明の一実施形態では、1つ以上の入力を2つ以上の出力に分波する手段としての光分波器と、2つの入力を1つ以上の出力に合波する手段としての光合波器の少なくとも一方に溝を形成し、該溝に偏光変換手段を挿入している。なお、本発明の一実施形態では、偏光変換手段を、光分波器(入力側)および光合波器(出力側)の少なくとも一方に設けられていれば良いが、少なくとも光合波器に偏光変換手段を設けることがより好ましい形態である。すなわち、出力側である光合波器に偏光変換手段を設けることにより、光合波器の光合波率がほぼ一定にできるので、光信号処理器の透過スペクトルの偏波依存中心波長シフトをさらに抑制できる。よって、少なくとも光合波器に偏光変換手段を設けることはより好ましいのである。
【0034】
なお、本発明の一実施形態において、偏光変換手段は、1/2波長板(半波長板)などのように、入力された光の偏光を90°回転(偏波回転量が90°)させることができるものであればいずれであっても良い。すなわち、偏光変換手段は、TMモードをTEモードに、またTEモードをTMモードに変換する手段であれば良いのである。
【0035】
偏光変換手段として1/2波長板を用いる場合、該1/2波長板を導波路に対して45°傾けると、1/2波長板に入射した光は、TMモードである場合はTEモードに、またTEモードである場合はTMモードに変換されて、1/2波長板から出射する。
【0036】
また、本発明の一実施形態では、光導波路をリッジ構造により形成し、および/または光分波手段と光合波手段とに挟まれた二本の光導波路に偏光変換手段を設け、光導波路の複屈折を低減することにより、光分波手段の光分波率、もしくは、光合波手段の光合波率のずれ量に対し、偏波モード分散をさらに抑制することができる。
【0037】
(第一実施形態)
図3に本発明の第一実施形態における光信号処理器の構成を示す。
本実施形態の光信号処理器は、基板161上に形成され、光を分波する光分波器111と、光を合波する光合波器121と、光分波器111と光合波器121とに挟まれた二本の光導波路131および132と、光分波器111の入力側に接続された入力導波路101、102と、光合波器121の出力側に接続された出力導波路103、104とを備えている。そして、光分波器111および光合波器121には、光分波器111と光合波器121との長手方向に対し概ね垂直に、それぞれ溝201と203とが形成されている。溝201および溝203にはそれぞれ、入力された光の偏光を90°回転させる手段としての偏光変換手段301と303とが挿入されている。すなわち、偏光変換手段301と303とは、自身を透過する光の偏光を90°回転させるように設定されている。よって、偏光変換手段301(303)に入力された光がTM光(TE光)である場合は、偏光変換手段301(303)にて偏光が90°回転されて、TE光(TM光)として出力される。
【0038】
なお、光分波器111の光分波率および光合波器121の光合波器のそれぞれを、概ね50%に設定している。また、光導波路131、132の光路長の差は、この光信号処理器の周波数周期が100GHzになるよう設定されている。
【0039】
このように、光分波器111および光合波器121に偏光変換手段をそれぞれ挿入(配置)しているので、偏光変換手段の前後における偏光依存性を低減することができ、光分波器111の光分波率と光合波器121の光合波率とを偏光によらずに一定にすることができる。さらに、本実施形態のように、光合波器121に偏光変換手段を設け、その光合波率を偏光によらず一定にすることで、光信号の透過スペクトルの偏波依存中心波長シフトをさらに抑えると共に、偏波依存中心波長シフトのポート間変動や波長依存性を低減できるという副次的効果もある。
【0040】
本実施形態では、光信号処理器をシリコン基板上の石英系導波路で形成しているがこれに限定されず、従来の導波路を用いることができる。また、光分波器111および光合波器121として共に二入力二出力の多モード干渉計(マルチモード干渉カプラ)、方向性結合器など、入力された光を適切に合波、分波できるものであればいずれを用いても良い。さらに、偏光変換手段として、ポリイミド波長板など、入力された光の偏光を90°回転することができるものであればいずれを用いても良い。なお、本実施形態では、光分波器111および光合波器121としては共に多モード干渉計を用い、偏光変換手段としてはポリイミド偏光板を用いている。
【0041】
図4(a)に光分波器111と光合波器121の偏波依存性による光分波率と光合波率との設定値からのずれ量に対する偏波モード分散を示す。偏光変換手段301と303とを挿入しない状態では、光分波器111の光分波率と光合波器121の光合波率とは、偏波により40%〜50%の範囲内で変動した。したがって、偏波依存性による光分波率と光合波率との上記ずれ量は最大で10%もあった。この時、入力導波路101から光信号を入力し、出力導波路104から光信号を出力した時(101⇒104)は、偏波依存性による上記ずれ量によらず、偏波モード分散は生じなかった。一方、入力導波路101から光信号を入力し、出力導波路103から光信号を出力した時(101⇒103)は、偏波依存性による上記ずれ量が大きくなるほど、偏波モード分散は増加した。偏波依存性による上記ずれ量が10%の時、1.3psもの大きな偏波モード分散が生じた。
【0042】
ここで、偏光変換手段301と303とを挿入したところ、光分波器111の光分波率と、光合波器121の光合波率の偏波による変動は48%〜50%の範囲内に収まった。そのため、偏波依存性による光分波率と光合波率との上記ずれ量を2%以下に抑え、偏波モード分散を0.3psまで低減した。
【0043】
図4(b)に、光分波器と光合波器との偏波依存性を10%から2%に低減する前後の偏波モード分散(101入力103出力)の周波数依存性を示す。光分波器111と光合波器121とに偏光変換手段301と303とを挿入し、偏波依存性による光分波率と光合波率のずれ量を抑えた結果、偏波モード分散を大きく低減したことがわかる。入力導波路と出力導波路を入れ替えても(102入力104出力)、同様の傾向が見られた。
【0044】
以上、本実施形態では、偏光変換手段を用い、光信号処理回路の光分波器の光分波率と、光合波器の光合波率との偏光による設定値からのずれ量を低減することにより、従来の光信号処理器で問題になっていた偏波モード分散を低減することが可能である。すなわち、偏光変換手段が挿入された、光分波器の光分波率、および光合波器の光合波率の双方を、入力された光の偏光によらず一定にすることが可能である。
【0045】
なお、本実施形態では、光分波器111および光合波器121の双方に偏光変換手段を挿入しているがこれに限定されず、光分波器111および光合波器121のいずれか一方に偏光変換手段を挿入するようにしても良い。このようにすることで、入力された光の偏光がいずれの偏光であっても、偏光変換手段が挿入された光合波器または光分波器の光合波率または分波率の安定性を向上することが可能となり、偏波モード分散を低減した高品位な光信号を出力することが可能である。また、上記副次的効果を考慮すると、少なくとも光合波器121に偏光変換手段を設ける形態がより好ましい形態である。
【0046】
さらに、本実施形態では、図3に示すように、光分波器111(光合波器121)のほぼ中央に偏光変換手段301(303)を挿入することが好ましい。しかしながら、偏光変換手段の挿入位置は上記位置に限定されず、光分波器111(光合波器121)のいずれに挿入しても良い。
【0047】
(第二実施形態)
図5に本発明の第二実施形態における光信号処理器の構成を示す。
本実施形態の光信号処理器は、基板161上に形成され、光分波器111と、光合波器121と、光分波器111と光合波器121とに挟まれた二本の光導波路131および132と、光分波器111の入力側に接続された入力導波路101、102と、光合波器121の出力側に接続された出力導波路103、104とを備えている。そして、光分波器111および光合波器121には、光分波器111と光合波器121との長手方向に対し概ね垂直に、それぞれ溝201と203とが形成されている。溝201および溝203にはそれぞれ、偏光変換手段301と303とが挿入されている。すなわち、偏光変換手段301と303とは、自身を透過する光の偏光を90°回転させるように設定されている。
【0048】
なお、光分波器111の光分波率および光合波器121の光合波器のそれぞれを、概ね50%に設定している。
【0049】
このように、光分波器111および光合波器121に偏光変換手段をそれぞれ挿入(配置)しているので、偏光変換手段の前後における偏光依存性を低減することができ、光分波器111の光分波率と光合波器121の光合波率とを偏光によらずに一定にすることができる。
【0050】
本実施形態では、光導波路の下部クラッドにリッジ構造を形成したリッジ導波路を用いている(特許文献2参照)。また、光分波器111と光合波器121としてそれぞれ、近接した二本の光導波路からなる方向性結合器を用い、偏光変換手段として、ポリイミド波長板を用いている。
【0051】
図5(b)に、図5(a)のA−A′線断面図を示す。図5(b)において、リッジを有する下部クラッドである下部クラッドリッジ168上に光導波路となるコア165が形成されており、リッジ構造を形成している様子が示されている。このような導波路構造を用いることにより、光導波路の複屈折を低減することができる。
【0052】
図6(a)に光分波器111と光合波器121の偏波依存性による光分波率と光合波率との設定値からのずれ量に対する偏波モード分散を示す。比較のため、第一実施形態で示した通常の導波路の偏波モード分散も示す。
図6(a)から分かるように、偏波依存性による光分波率と光合波率との上記ずれ量が同じであっても、本実施形態のようにリッジ導波路を用い、光導波路の複屈折を低減すると、通常の導波路に比べた偏波モード分散を低減できることがわかる。例えば、偏波依存性による上記ずれ量が10%の場合、通常の導波路では101入力103出力の偏波モード分散は1.3psもあるが、リッジ導波路では101入力103出力の偏波モード分散は1.0psである。通常の導波路に比べ、リッジ導波路では偏波モード分散を低減できることがわかる。
【0053】
さらに、光分波器111および光合波器121として方向性結合器を用い、これらの方向性結合器をリッジ導波路で形成すると偏波依存性を低減できるため、偏波モード分散をさらに低減できる。方向性結合器をリッジ導波路で形成することにより、偏波依存性によるずれ量を4%に抑えた。この時の偏波モード分散は0.4psであった。それに加え、本実施形態では、偏光変換手段301と303とを挿入し、光分波器111の光分波率と、光合波器121の光合波率との偏波依存性による上記ずれ量を2%以下に低減した。リッジ導波路を用いた効果、及び偏光変換手段により光分波器111と光合波器121との偏波依存性を低減することにより、偏波モード分散を0.2psに抑えた。
【0054】
本実施形態のように、リッジ導波路を用いて光導波路の複屈折を低減すると、上記光分波器と光合波器との偏波依存性による設定値からのずれに起因する偏波モード分散を低減できるだけでなく、次に示す付加的な効果も得られる。すなわち、偏波モード分散の主な発生要因は、光分波器と光合波器との偏波依存性によるずれであるが、光分波器と光合波器の光分波率と光合波率との絶対値が50%からずれた場合も偏波モード分散の発生要因となる。さらに、光分波器の光分波率と、光合波器の光合波率とが互いに設定値からずれた場合にも、偏波モード分散の発生要因となる。発明者の実験によれば、これらの要因により生じる偏波モード分散は、光導波路の複屈折を低減することにより、抑制することができる。
【0055】
図6(b)に光分波器111と光合波器121との光分波率と光合波率との絶対値の設定値からのずれ量に対する偏波モード分散を示す。図6(c)に光分波器の光分波率と光合波器と光合波率とのずれ量に対する偏波モード分散を示す。通常は、これら二つの要因により、偏波モード分散はさらに増加するが、リッジ構造を形成し、光導波路の複屈折を低減することで、これら二つの要因による偏波モード分散をほぼ皆無にすることができる。それにより偏波モード分散の発生要因を、光分波器と光合波器との偏波依存性によるずれ量に絞ることができ、偏波モード分散の低減が容易になる。また、光分波器と光合波器の光分波率と光合波率の絶対値の設定値からのずれや、光分波器の光分波率と、光合波器の光合波率とが互いにずれても偏波モード分散の主な発生要因にはならないので、製造誤差に強い光信号処理器を実現することができる。
【0056】
すなわち、第一実施形態のように、光分波器および光合波器の少なくとも一方に偏光変換手段を用いることによって、偏波モード分散を十分に低減することができるが、本実施形態のように光導波路をリッジ導波路とすることで、光分波率および光合波率の絶対値の設定値からのずれ、および光分波率と光合波率とのずれの偏波モード分散への影響をほぼ無くすことができる。よって、さらに偏波モード分散を低減することができるので、より高品位な光信号を出力することができる。また、光分波率および光合波率の絶対値の設定値からのずれ、および光分波率と光合波率とのずれがあっても、偏波モード分散への影響はほとんど無いので、製造誤差の影響を低減することができ、コストダウンにも繋がる。
【0057】
ここで、具体的な数値を用いて説明する。製造誤差により光分波器111の光分波率が40%、光合波器121の光合波率が40%である場合、光分波器111と光合波器121との光分波率と光合波率との絶対値の50%(設定値)からのずれ量は10%である。この絶対値の設定値からのずれにより、通常の導波路では、101入力103出力において、0.3psの偏波モード分散が加わる。一方、リッジ導波路の場合、絶対値のずれ量が10%あっても、偏波モード分散の増加は0.02ps以下である。
【0058】
また、製造誤差により光分波器111の光分波率が40%、光合波器121の光合波率が50%である場合、光分波器111の光分波率と光合波器121の光合波率とは互いに10%ずれている。このずれにより、通常の導波路では、入力導波路、出力導波路によらず、0.2psの偏波モード分散が加わる。一方、リッジ導波路の場合、光分波率と光合波率とのずれ量が10%あっても、偏波モード分散の増加は0.01ps以下である。
【0059】
以上で説明したように、本実施形態では、光導波路をリッジ構造により形成することにより、光分波率と光合波率とのずれに対し、偏波モード分散の低減効果をより大きくし、さらに製造誤差に強い光信号処理器を実現することが可能である。
【0060】
(第三実施形態)
図7に本発明の第二実施形態における光信号処理器の構成を示す。
本実施形態の光信号処理器は、基板161上に形成され、光分波器111と、光合波器121と、光分波器111と光合波器121とに挟まれた二本の光導波路131および132と、光分波器111の入力側に接続された入力導波路101、102と、光合波器121の出力側に接続された出力導波路103、104とを備えている。
【0061】
そして、光分波器111および光合波器121には、光分波器111と光合波器121との長手方向に対し概ね垂直に、それぞれ溝201と203が形成されている。光分波器111の光分波率と、光合波器121の光合波率とが偏光によらずにほぼ一定になるよう、溝201と203とに偏光変換手段301、303が設けられている(挿入されている)。さらに、本実施形態では、光導波路131と132とにも、光導波路131、132の長手方向に対して概ね垂直に溝202が形成されている。この溝202には偏光変換手段302が設けられている(挿入されている)。偏光変換手段303は、自身を透過する光の偏光を90°回転させるように設定されている。よって、偏光変換手段302に入力された光がTM光(TE光)である場合は、偏光変換手段302にて偏光が90°回転されて、TE光(TM光)として出力される。この偏光変換手段302により、光導波路131、132の偏波依存性を低減している。
【0062】
本実施形態では、光信号処理器をシリコン基板上の石英系導波路で形成し、光分波器111と光合波器121として共に二入力二出力の多モード干渉計を用いている。また、偏光変換手段として、ポリイミド波長板を用いている。なお、偏光変換手段302についても、ポリイミド波長板に限らず、入力された光の偏光を90°回転することができるものであればいずれを用いても良い。
【0063】
本実施形態では、光導波路131と132とに偏光変換手段302を挿入することにより、光導波路131、132の偏波依存性を低減でき、第二実施形態と同様の偏波モード分散低減効果が得られる。すなわち、光分波器と光合波器との光分波率と光合波率との絶対値のずれや、光分波器の光分波率と光合波器の光合波率とが互いに異なることによる偏波モード分散を緩和できる。
【0064】
図8(a)に光分波器111と光合波器121との偏波依存性による光分波率と光合波率との設定値からのずれ量に対する偏波モード分散を示す。比較のため、第一実施形態で示した、偏光変換手段302が無い、通常の導波路の偏波モード分散も示す。第二実施形態同様に、光導波路の複屈折を低減することで、通常の導波路に比べて偏波モード分散を低減できることがわかる。
【0065】
また、第二実施形態で説明したように、光導波路の複屈折を低減すれば偏波依存性によるずれに起因する偏波モード分散を低減できるだけでなく、製造誤差の影響を低減できるなどの付加的な効果も得られるが、本実施形態でも同様の効果を確認した。
【0066】
図8(b)に光分波器111と光合波器121との光分波率と光合波率との絶対値の設定値からのずれ量に対する偏波モード分散を示す。図8(c)に光分波器の光分波率と光合波器の光合波率とのずれ量に対する偏波モード分散を示す。通常は、これら二つの要因により、偏波モード分散はさらに増加するが、光導波路131と132とに偏光変換手段302を挿入することにより、光導波路131、132の偏波依存性を完全に無くし、光分波率と光合波率との絶対値の設定値からのずれや、光分波器の光分波率と光合波器の光合波率とのずれによる偏波モード分散を完全に無くした。
【0067】
以上で説明したように、本実施形態では、光分波器と光合波器とに挟まれた二本の光導波路に偏光変換手段を設けることにより、光分波率と光合波率とのずれに対し、偏波モード分散の低減効果をより大きくし、さらに製造誤差に強い光信号処理器を実現できる。
【0068】
(第四実施形態)
本実施形態における第1実施例に係る光信号処理器は、基板上に形成された光分波器と、光合波器と、光分波器と光合波器とに挟まれた二本の光導波路を備えている。そして、光分波器および光合波器には、光分波器と光合波器との長手方向に対し概ね垂直に、それぞれ溝が形成されており、該溝にはそれぞれ偏光変換手段が挿入されている。また、二本の光導波路にも溝が形成され、該溝にも偏光変換手段が挿入されている。さらに、本実施形態では、光導波路をリッジ構造で形成している。
【0069】
本実施形態では、光分波器、光合波器、および上記二本の光導波路に偏光変換手段を設けたことにより、光分波器の光分波率と光合波器の光合波率とが、入力される光の偏光によらずにほぼ一定になり、偏波モード分散を低減することが可能である。また、光導波路をリッジ構造で形成し、予め光導波路の複屈折を低減し、さらに二本の光導波路に偏光変換手段を挿入しているので、それにより、第二と第三実施形態で説明した偏波モード分散の抑制効果をより大きくすることができる。
【0070】
第四実施形態における光信号処理器の第1実施例では、光信号処理器をシリコン基板上の石英系導波路で形成し、光分波器111と光合波器121として共に二入力二出力の多モード干渉計を用いている。また、偏光変換手段として、ポリイミド波長板を用いている。
【0071】
図9(a)に、光信号処理器を構成する光分波器の光分波率と光合波器の光合波率との偏波依存性による設定値からのずれ量に対する偏波モード分散を示す。図9(a)に示すように、リッジ構造及び偏光変換手段を用いたことにより、偏波依存性によるずれ量を1%以下に低減し、偏波モード分散を0.1ps以下の極めて低い値に抑えた。
【0072】
図9(b)に透過スペクトルの周波数依存性を、図9(c)に偏波モード分散(101入力104出力)の周波数依存性を示す。図9(b)、(c)から分かるように、偏波依存性による中心波長ずれを抑えると同時に、偏波モード分散が小さい光信号処理器を実現した。
【0073】
図10に、第四実施形態における光信号処理器の第2実施例を示す。
本実施形態の光信号処理器は、基板161上に形成され、光分波器111と、光合波器121と、光分波器111と光合波器121とに挟まれた二本の光導波路131および132と、光分波器111の入力側に接続された入力導波路101、102と、光合波器121の出力側に接続された出力導波路103、104とを備えている。光分波器111および光合波器121には、光分波器111と光合波器121との長手方向に対し概ね垂直に溝201、203が形成され、該溝にはそれぞれ偏光変換手段301、303が挿入されている。また、二本の光導波路131、132にも、二本の光導波路131、132の長手方向に対して概ね垂直に溝202が形成され、該溝にも偏光変換手段302が挿入されている。
【0074】
ここで、対応する溝が形成された、光分波器111、光合波器121、光導波路131、132が、光分波器111に形成された溝201、光合波器121に形成された溝203、光導波路131、132に形成された溝202より出射される漏れ光401、402、403、404の開き角の範囲外に配置されている。すなわち、上記溝に光が入射すると、該溝より所定の角度である開き角φの漏れ光が放射されることがある。この漏れ光が他の偏光変換手段を挿入した溝に干渉すると、光信号処理器の特性が変化する。そこで、第2実施例では、この漏れ光の影響を抑制するため、偏光変換手段を挿入した溝の各々を、それ以外の溝から放射された漏れ光の開き角の範囲外に配置している。すなわち、ある溝から放射された漏れ光が、他の溝に挿入された偏光変換手段に入射しないように、各溝を形成し、それぞれの溝に対応する偏光変換手段を挿入している。なお、第2実施例では、光導波路131、132は共に曲げ部分を含む。光導波路に曲げ部分を導入することにより、高次モードを防ぐ効果が得られ、良好な光学特性が得られる。
【0075】
本実施例の特徴を具体的な数値を用いて説明する。
漏れ光がガウスビームであり、開き角φがtan‐1(λ/π・n・w)で近似されると仮定し、波長λ=1.55μm,屈折率n=1.45、フィールド径w=10μmと見積もった場合、開き角φは約2°になる。よって、約2°の開き角φの漏れ光が、他の偏光変換手段に入射しないように、各溝を形成し、偏光変換手段を挿入する必要がある。そこで、ある溝の、光の出射端から開き角φが2°以上になるよう、他の偏光変換手段を挿入した溝を配置すれば良い。
【0076】
光を入力する入力導波路101、102と、光を出力する出力導波路130、104とを結ぶ方向を光信号処理器の長手方向と定義する(図中の水平方向;以下、z方向と記す)。第2実施例では、光分波器111をz方向に対しθ1=60°で配置し、光合波器121をz方向に対し角度θ2=−60°で配置している。そして、光分波器111の長手方向(光の伝搬する方向)に対し概ね垂直に、すなわちz方向に対し概ね150°の方向に溝201を形成し、かつ、光合波器121の長手方向(光が伝搬する方向)に対し垂直に、すなわちz方向に対し概ね30°の方向に溝203を形成し、それぞれに偏光変換手段301、303を挿入している。光導波路131、132に挿入されている偏光変換手段302は、光分波器111に挿入されている偏光変換手段301からの漏れ光401の開き角φの範囲外に配置され、光合波器121に挿入されている偏光変換手段303は、光導波路131、132に挿入されている偏光変換手段302からの漏れ光402、403の開き角φの範囲外に配置されている。
【0077】
なお、出力導波路103、104は、光合波器121に挿入されている偏光変換手段303からのもれ光404を拾わない。また、上記では、光分波器や光合波器と溝との関係を説明するために、光分波器や光合波器のz方向に対する配置角度を用いた。しかしこの角度は一例であり、光分波器や光合波器の面内の位置や、導波路材料などによって容易に変わるものである。すなわち、第2実施例の特徴的な構成は、溝を漏れ光の開き角φの範囲外に配置したことである。
【0078】
図11に偏波モード分散(101入力104出力)の周波数依存性を示す。もれ光の影響により偏波モード分散がばらつく図9(c)に対し、もれ光の影響を低減したことにより偏波モード分散を滑らかにし、特性を改善した。
【0079】
図12に、第四実施形態における光信号処理器の第3実施例を示す。
【0080】
第3実施例では、光分波器111はz方向に対し角度θ1=90°で配置され、光合波器121はz方向に対し角度θ2=90°で配置されている。そして、光分波器111には、光分波器111の長手方向に対し垂直な方向から0°よりも大きく概ね10°以下、もしくは0°よりも小さく概ね−10°以上の角度θで溝201が形成され、該溝201には偏光変換手段301が挿入されている。すなわち、溝201の長手方向と光分波器111の長手方向とのなす角度が、90°(垂直)から0°よりも大きく概ね10°以下の角度だけ傾けた角度となるので、光分波器111の長手方向と偏光変換手段301の長手方向とのなす角度も、90°(垂直)から0°よりも大きく概ね10°以下の角度だけ傾けた角度となる。同様に、光合波器121には、光合波器121の長手方向に対し垂直な方向から0°よりも大きく概ね10°以下、もしくは0°よりも小さく概ね−10°以上の角度θで溝203が形成され、該溝203には偏光変換手段303が挿入されている。すなわち、溝203の長手方向と光合波器121の長手方向とのなす角度が、90°(垂直)から0°よりも大きく概ね10°以下の角度だけ傾けた角度となるので、光合波器121の長手方向と偏光変換手段301の長手方向とのなす角度も、90°から0°よりも大きく概ね10°以下の角度だけ傾けた角度となる。
【0081】
本実施例では、溝201、202、203は光導波路の作成工程にて形成している。上述のように第3実施例では、溝201、203(偏光変換手段301、303)の長手方向を光分波器111、光合波器121とのなす角度が完全に垂直(0°)ではなく、僅かに傾けているのは、偏光変換手段から入力側の光導波路への反射光を抑制するためである(特許文献3参照)。
【0082】
このように、第3実施例では、偏光変換手段からの入力側の光導波路への反射光の影響を低減することが目的なので、偏光変換手段を、基板の面内に垂直な方向(基板の法線方向)から0°よりも大きく概ね10°以下の角度で傾くように、溝に挿入するようにしても良い。
【0083】
図13に、第四実施形態における光信号処理器の第4実施例を示す。
光分波器111はz方向に対し角度θ=95°で配置され、光合波器121はz方向に対し角度θ=85°で配置されている。そして、光分波器111の長手方向に対し約85°に形成された溝と、光合波器121の長手方向に対し約95°に形成された溝が、共通の溝201である。このように、光分波器と光合波器との長手方向に対しわずかに傾けて共通の溝を形成することで、溝の形成工程を減らすことができる。また、この構成では、光分波器111と光合波器121とを、共通の溝201に対し±5°傾けているので、偏光変換手段301、303に対し相対的に±5°傾いている。そのため、偏光変換手段からの入力側の光導波路への反射を抑制することができる。
【0084】
なお、第4実施例では、共通な溝201の長手方向と、光分波器111、光合波器121の長手方向とのなす角度が約5°としているが、この角度に限定されない。第4実施例は、第3実施例と同様に、偏光変換手段から入力側の光導波路への反射光を抑制することが目的であるので、上記角度は、0°よりも大きく概ね10°以下の角度とすることができる。また、光分波器111の長手方向および溝201の長手方向のなす第1の角度と、光合波器121の長手方向および溝201の長手方向のなす第2の角度とは同じである必要は無く、0°よりも大きく概ね10°以下の角度であれば、第1の角度と第2の角度とは異なる角度であっても良い。
【0085】
図14に、第四実施形態における光信号処理器の第5実施例を示す。
光分波器111と光合波器121とは概ね平行に配置され、光分波器111と光合波器121との長手方向に対し概ね垂直に、共通の溝201が形成されている。第5実施例では共通の溝201はブレードを用いて切り出した。また、入力導波路101、102と出力導波路103、104とが同一基板端面に位置するので、光信号処理器を小型にできる。また、ファイバを一括で接続できるので、製造コストを削減できる。さらに、共通の溝201に共通の偏光変換手段301を挿入し、光分波器111と光合波器121の偏光依存性を同時に低減する構成とした。もちろん、光信号処理器を例えばS字型構成にし、光分波器と光合波器と二本の光導波路の溝を全て共通とし、共通の偏光変換手段を一つ挿入してもよい。
【0086】
図15に、第四実施形態における光信号処理器の第6実施例を示す。
光分波器111と光合波器121はz方向に対し角度θ1=5°、θ2=5°で配置されている。また、光導波路131、132はz方向に対し約5°で配置されている。そして、光分波器111の長手方向に対し垂直な方向から概ね10°の角度で溝201が形成され、光合波器121の長手方向に対し垂直な方向から概ね10°の角度で溝203が形成され、光導波路131、132の長手方向に対し垂直な方向から概ね10°の角度で溝202が形成され、それぞれ偏光変換手段301、303、302が挿入されている。溝201、202、203は同一方向を向いている。そのため、溝を容易に形成することができる。
【0087】
また、偏光変換手段が挿入された溝のいずれかより出射される漏れ光401、402、403、404の開き角の範囲外に、他の偏光変換手段が挿入されている。そのため、光信号処理器の特性は、もれ光の干渉を受けない。さらに、偏光変換手段301、302、303は光分波器111と光合波器121と光導波路131、132の長手方向に対し概ね垂直に±10°の角度で挿入されているので、偏光変換手段の反射光を避けることができる。もちろん、基板の垂直方向に対し±10°の角度で挿入しても同様の効果は得られる。なお、本実施形態の光信号処理器も他の実施例と同様に光導波路131、132の光路長の差は、この光信号処理器の周波数周期が100GHzになるよう設定されている。
【0088】
図16に、第四実施形態における光信号処理器の第7実施例を示す。
図16では、新たに光分波器112と、光合波器122と、光分波器112と光合波器122とに挟まれた二本の光導波路133、134とを有する光信号処理回路が形成されている。
このように、光信号処理回路を複数接続することにより、さらに高機能な光信号処理器を実現した。この光信号処理器を用いると、例えば多値位相変調した信号を複数チャネルの強度変調信号に変換可能になる。入力導波路101もしくは102に入力された光は光分波器113により分波され、二つの光信号処理回路に入力される。そしてそれぞれの出力は、4つの出力導波路103、104、105、106より出力される。
【0089】
(第五実施形態)
図17に本発明の第五実施形態における光信号処理器の構成を示す。
本実施形態の光信号処理器は、基板161上に形成され、一つの入力を二つの出力に分波する光分波器111と、この光分波器111に接続された二本の光導波路131、132と、光導波路131、132に接続され、二つの入力を二つの出力に合波する光合波器121とを備えている。そして、光合波器121の長手方向に対し概ね垂直に形成した溝203に偏光変換手段303を挿入し、光合波器121の光合波率を偏光によらずに一定にしている。さらに、光導波路131、132の垂直方向にも溝202を形成し、偏光変換手段302を挿入している。なお、溝201と202とは同一方向に形成されている。
【0090】
本実施形態では、光信号処理器をシリコン基板上の石英系導波路で形成し、光分波器111として、一つの入力を二つの出力に分波するY分岐を用いたが、多モード干渉計を用いても良い。また、光合波器121として二つの入力を二つの出力に合波する多モード干渉計を用いたが、例えば、X分岐もしくは方向性結合器もしくはその他の光合波手段を用いてもよい。また、偏光変換手段として、ポリイミド波長板を用いている。
【0091】
本実施形態では、光合波器121に偏光変換手段を挿入し、偏光依存性によるずれ量を低減することにより、偏波モード分散を低減することができる。また、二本の光導波路131、132にも偏光変換手段302を挿入することにより偏光モード分散の低減効果をより大きくし、さらに製造誤差に強い光信号処理器を実現することができる。
【0092】
なお、本実施形態では、偏光変換手段を光合波器121にのみ設けるようにしているがこれに限らず、偏光変換手段を光分波器111にも設けるようにしても良い。また、偏光変換手段を光分波器111のみに設けるようにしても良い。
【0093】
すなわち、光分波器111および光合波器121の少なくとも一方に偏光変換手段を設ければ良いが、図17のように、少なくとも光合波器121に偏光変換手段を設けることがより好ましい。
【0094】
なお、図17では、光合波器121は、2つの入力を2つの出力に合波する光合波器を用いているが、2つの入力を1つの出力に合波する光合波器を用いても良い。本発明の一実施形態で重要なことは、光合波器および/または光分波器の光合波率および/または光分波率を偏光に依らず一定に保つことであり、そのために、光合波器および光分波器の少なくともいずれか一方に、好ましくは少なくとも光合波器に偏光変換手段を設けている。よって、光分波器および光合波器の入力ポート数および出力ポート数は本質ではなく、光分波器にあっては、1つ以上の入力を2つの出力に分波できればよく、また、光合波器にあっては、2つの入力を1つ以上の出力に合波できれば良いのである。
【0095】
(その他の実施形態)
以上の実施形態では、平面光導波路を用い、光導波路としてはシリコン基板上に形成した石英系導波路を使用した光信号処理器について説明した。これは平面型導波路が集積性に優れ、光信号処理器の小型化、低コスト化に優れるためである。さらにこの組み合わせの光導波路は低損失で安定であり、しかも石英系光ファイバとの整合性に優れているためである。しかしながら本発明の一実施形態はこれらの組み合わせに限定されるものではない。また、光信号処理器の説明は、一般的に広く用いられている二入力二出力を例に取りあげて説明する。しかしながら、本発明の一実施形態はこれに限定されるものではなく、他の構成に関しても同様に適応可能である。
【0096】
以上述べた各実施形態では、光信号処理器をシリコン基板上に形成された石英系導波路を用いて図18に示すように作製することができる。すなわち、シリコン基板161上に火炎堆積法でSiO2を主体にした下部クラッドガラススート162、SiO2にGeO2を添加したコアガラススート163を順に堆積する(図18の(a))。その後、1000℃以上の高温でガラス透明化を行う。この時に、下部クラッドガラス層164、コアガラス165は設計した厚さとなるように、ガラスの堆積を行う(図18の(b))。引き続き、フォトリソグラフィ技術を用いてコアガラス165上にエッチングマスク166を形成し(図18の(c))、反応性イオンエッチングによってコアガラス165のパターン化を行う(図18の(d))。エッチングマスク166を除去した後、上部クラッドガラス167を再度火炎堆積法で形成する。上部クラッドガラス167にはB2O3やP2O5などのドーパントを添加してガラス転位温度を下げ、それぞれのコアガラス165とコアガラス165の狭い隙間にも上部クラッドガラス167が入り込むようにする(図18の(e))。
【0097】
また、以上述べた本発明の各実施形態では、主にシリコン基板上の石英系ガラス導波路を用いた例を示したが、その導波路材料がポリイミド、シリコン、半導体、LiNbO3などであってもよい。また、例えばその製造方法が、スピンコート法、ゾルゲル法、スパッタ法、CVD法、イオン拡散法、イオンビーム直接描画法などであっても本発明は適用可能である。また、基板もシリコンに限定するものではない。
【0098】
また、本発明の各実施形態では光導波路の形状にはよらず、正方形、長方形、多角形、円形など任意の形状を用いることができる。例えば、光導波路のコア幅を部分的に変え、屈折率を他の部分と異なる値にすることができる。また、光導波路に応力を付与し、屈折率の値を変化させることもできる。さらに、本回路は石英系導波路を用いたが、異なる材料を透過するようにしても良い。例えば、光導波路中にシリコン樹脂などの材料を含んでも良い。
【0099】
また、各実施形態では、基板上に溝を形成し、その溝に偏光変換手段を挿入する例を示したが、偏光変換手段を設ける方法は、これに限定されない。例えば、レーザ照射などの光照射法や薄膜ヒータなどによる局所加熱法などを用いて、光合波器および光分波器の少なくとも一方に、好ましくは少なくとも光合波器に含まれる光導波路の複屈折を局所的に変化させ、光学的な光路長や光合波手段、光分波手段の結合特性、位相特性を調整することもできる。また、電気光学効果、磁気光学効果などを用いても良い。
【0100】
以上、各実施形態では光合波手段、光分波手段として方向性結合器やマルチモード干渉カプラを用いたが、干渉計型カプラ、X分岐カプラ、Y分岐カプラなど任意の種類のものを用いることができる。
【0101】
以上、各実施形態で説明したように、光分波器もしくは光合波器の少なくとも一方に、好ましくは少なくとも光合波器に偏光変換手段を設け、光分波器の光分波率もしくは光合波器の光合波率を偏光によらずに一定にすることで、偏波モード分散の小さい光信号処理器を実現することができる。
また、光分波器と光合波器とを共に同じ構成とすることにより、光分波器の光分波率と光合波器の光合波率との間のずれを抑制し、偏光モード分散を低減することができる。
また、光導波路の複屈折を低減したことにより、偏光モード分散を低減することができる。さらに、光分波率と光合波率とのずれに対し、偏光モード分散の低減効果をより大きくすることができる。さらにまた、製造誤差に強い光信号処理器を実現することができる。
【0102】
また、偏光変換手段が挿入された溝より出射される漏れ光の開き角φの範囲外に、その他の偏光変換手段が挿入された溝を配置することにより、漏れ光の影響を低減でき、良好な特性が得られる。
また、溝を同一方向とすることにより、溝の加工を容易にできる。
また、溝を共有することで溝の形成工程を減らすことができ、製造コストを削減できる。さらに、一つの偏光変換手段で光分波器と光合波器の偏光依存性を同時に低減することができる。
また、入力導波路と出力導波路を同一基板端面に配置することで光信号処理器を小型にできる。さらに、ファイバを一括で接続できるので、製造コストを削減できる。
【0103】
(さらに他の実施形態)
本実施形態では、その他の実施形態に記載した、光導波路の複屈折を局所的に変化させる形態について説明する。
図19に、本実施形態における光信号処理器の構成を示す。本実施形態の光信号処理器は、基板161上に形成され、光分波器111と、光合波器121と、光分波器111と光合波器121とに挟まれた二本の光導波路131および132と、光分波器111の入力側に接続された入力導波路101、102と、光合波器121の出力側に接続された出力導波路103、104とを備えている。
【0104】
本実施形態では、光分波器111と光合波器121とに含まれる光導波路の複屈折を局所的に変化させることにより、光分波器111の光分波率と光合波器121の光合波率とを偏光によらず一定にしている。
【0105】
より詳しくは、本実施形態において光分波器111および光合波器121は、2つの光結合器191aおよび191bと、これら2つの光結合器191a、191bに挟まれた2本の光導波路192、193とを備えている。そして、光導波路192の一部分の導波路幅を細くし(符号194)、光導波路193の一部分を太くすることにより(符号195)、それぞれの光導波路の複屈折を局所的に変化させている。このように、光導波路の複屈折を局所的に変化させることにより、光合波器111および光分波器121の偏波依存性を低減している。なお、光導波路の幅はテーパ状に徐々に変化させている。
【0106】
さて、2つの光結合器191a、191bと、これら2つの光結合器に挟まれた2本の光導波路194、195を備える光分波器もしくは光合波器は、波長無依存光結合器や可変光結合器の構成要素として用いられているが、光導波路194、195の複屈折を局所的に変化させることにより、光分波器もしくは光合波器全体で見たときの偏光依存性を低減することができる。
【0107】
なお、図19では、光導波路192の一部分を細くし、光導波路193の一部分を太くしているが、この構成に限定されない。本実施形態では、光結合器191bに偏光により異なる位相差を与えることが重要であって、そのために、光導波路192および光導波路193の少なくとも一方について、局所的に複屈折を変化させるのである。すなわち、本実施形態では、光導波路192および光導波路193の少なくとも一方の複屈折を局所的に変化させることができれば良いのである。
【0108】
よって、光導波路192または193のいずれか一方の光導波路幅を局所的に太く、または細くするようにしても良い。また、光導波路192および193の双方の光導波路幅を局所的に太く、または細くしても良い。ただし、光導波路192および193の複屈折を局所的に変化させる領域の幅(長さ)が同じ場合は、光導波路192および193における上記領域の長さ(幅)を異なるように設定すれば良い。すなわち、光導波路192および光導波路193について、複屈折を局所的に変化させる領域の幅および長さの少なくとも一方を相対的に異ならせるようにすれば良いのである。
【0109】
また、図19では、光導波路192および光導波路193の長さは異なっているが、同じであっても良く、例えば、光導波路192および193の長さが同じであることや、光導波路192および193の双方がアーム導波路または直線状の導波路であるなど、光導波路192および光導波路193の形状はいずれであっても良い。
【0110】
なお、本実施形態では、光導波路の複屈折を局所的に変化させる手段として、導波路の幅を変化させる方法を用いたが、これには限定されず、光分波器もしくは光合波器に含まれる光導波路上に膜を形成し、応力を付与する手段、光導波路上に形成した薄膜ヒータによる恒久的な局所的加熱手段、もしくはレーザ照射などによる光照射により、複屈折を調整してもかまわない。
【0111】
また、本実施形態では、光分波器111と光合波器121とはそれぞれ、2つの光結合器191a、191bおよびこれら2つの光結合器に挟まれた2本の光導波路192、193を備えているが、光結合器と光導波路とを含むその他の干渉型の光分波器もしくは光合波器を用いても良い。例えば、N個の光結合器と、これらN個の光結合器に挟まれた複数本の光導波路を備えるようにしても良い。なお、2つの光結合器は、方向性結合器、多モード干渉計、X分岐カプラ、Y分岐カプラなどの光結合器を用いることができる。
【0112】
また、光分波器111や光合波器121として干渉型ではなく、方向性結合器、多モード干渉計、X分岐カプラ、Y分岐カプラなどを用い、これらの光分波器111や光合波器121のうちの一部に、導波路形状を変化させる手段、応力付与膜を形成する手段、薄膜ヒータによる恒久的な局所加熱手段、もしくはレーザ照射などによる光照射手段などの手段を適用し、これら方向性結合器、多モード干渉計、X分岐カプラ、Y分岐カプラの複屈折を調整しても良い。
【0113】
さらに、第一実施形態で示したように、本実施形態の光分波器111と光合波121とに偏光変換手段を挿入してもかまわない。
【0114】
以上、本実施形態では、光分波器および光合波器に含まれる光導波路の複屈折を局所的に変化させ、これら光分波器の光分波率と、光合波器の光合波率との偏光によるずれ量を低減することにより、従来の光信号処理器で問題になっていた偏波モード分散を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】(a)は、従来の光信号処理器の構成例を示す図であり、(b)は、二本の光導波路に偏光変換手段を設けた従来の光信号処理器の構成例を示す図である。
【図2】(a)は、従来の光信号処理器の透過スペクトルを示す図であり、(b)は、二本の光導波路に偏光変換手段を設けた従来の光信号処理器の透過スペクトルを示す図であり、(c)は、従来の光信号処理器の偏波モード分散の周波数依存性を示す図であり、(d)は、二本の光導波路に偏光変換手段を設けた従来の光信号処理器の偏波モード分散の周波数依存性を示す図である。
【図3】第一の実施形態における光信号処理器の構成を示す図である。
【図4】(a)は、第一の実施形態における、光信号処理器を構成する光分波器と光合波器との偏波依存性によるずれ量に対する偏波モード分散を示す図であり、(b)は、第一の実施形態における、光分波器と光合波器との偏波依存性を10%から2%に低減した時の偏波モード分散(101入力103出力)の周波数依存性を示す図である。
【図5】(a)は、第二の実施形態における光信号処理器の構成を示す図であり、(b)は、リッジ構造により形成した光導波路の断面図であって、(a)のA−A‘線断面図である。
【図6】(a)は、第二の実施形態における偏波依存性によるずれ量に対する偏波モード分散を示す図であり、(b)は、光分波器と光合波器との光分波率と光合波率との絶対値のずれ量に対する偏波モード分散を示す図であり、(c)は、光分波器の光分波率と光合波器の光合波率とのずれ量に対する偏波モード分散を示す図である。
【図7】第三の実施形態における光信号処理器の構成を示す図である。
【図8】(a)は、偏波依存性によるずれ量に対する偏波モード分散を示す図であり、(b)は、光分波器と光合波器との光分波率と光合波率との絶対値のずれ量に対する偏波モード分散を示す図であり、(c)は、光分波器の光分波率と光合波器の光合波率とのずれ量に対する偏波モード分散を示す図である。
【図9】(a)は、第四の実施形態における、光信号処理器を構成する光分波器の光分波率と光合波器の光合波率との偏波依存性による設定値からのずれ量に対する偏波モード分散を示す図であり、(b)は、光信号処理器の透過スペクトルの周波数依存性を示す図であり、(c)は、光信号処理器の偏波モード分散(101入力104出力)の周波数依存性を示す図である。
【図10】第四の実施形態の第2実施例における光信号処理器の構成を示す図である。
【図11】第四の実施形態の第2実施例における光信号処理器の偏波モード分散(101入力104出力)の周波数依存性を示す図である。
【図12】第四の実施形態の第3実施例における光信号処理器の構成を示す図である。
【図13】第四の実施形態の第4実施例における光信号処理器の構成を示す図である。
【図14】第四の実施形態の第5実施例における光信号処理器の構成を示す図である。
【図15】第四の実施形態の第6実施例における光信号処理器の構成を示す図である。
【図16】第四の実施形態の第7実施例における光信号処理器の構成を示す図である。
【図17】第五の実施形態における光信号処理器の構成を示す図である。
【図18】(a)〜(e)は、本発明の一実施形態における、平面導波路型光信号処理器の作製工程を説明する模式図である。
【図19】本発明の一実施形態における光信号処理器の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0116】
101、102 入力導波路
103、104、105、106 出力導波路
111、112、113 光分波器
121、122 光合波器
131、132、133、134 光導波路
161 基板
162 下部クラッドガラススート
163 コアガラススート
164 下部クラッドガラス
165 コアガラス
166 エッチングマスク
167 上部クラッドガラス
168 下部クラッドリッジ
201、202、203 溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ以上の入力を二つの出力に分波する光分波手段と、該光分波手段に接続された二本の光導波路と、該二本の光導波路のそれぞれに接続され、二つの入力を一つ以上の出力に合波する光合波手段とを備える光信号処理器であって、
前記光分波手段、または前記光合波手段の少なくとも一方に設けられた、入力された光の偏光を90°回転して出力する偏光変換手段を備えることを特徴とする光信号処理器。
【請求項2】
一つ以上の入力を二つの出力に分波する光分波手段と、該光分波手段に接続された二本の光導波路と、該二本の光導波路のそれぞれに接続され、二つの入力を一つ以上の出力に合波する光合波手段とを備える光信号処理器であって、
前記光分波手段、または前記光合波手段の少なくとも一方に含まれる光導波路の複屈折を局所的に変化させる手段を備えることを特徴とする光信号処理器。
【請求項3】
前記偏光変換手段は、前記光分波手段、または前記光合波手段の少なくとも一方に形成された溝に挿入されていることを特徴とする請求項1に記載の光信号処理器。
【請求項4】
前記溝の長手方向は、前記偏光変換手段が設けられる、前記光分波手段および前記光合波器の少なくとも一方の長手方向に対して概ね垂直であることを特徴とする請求項3記載の光信号処理器。
【請求項5】
前記溝の長手方向と、前記偏光変換手段が設けられる、前記光分波手段および前記光合波器の少なくとも一方の長手方向とのなす角度は、90°(垂直)から0°よりも大きく概ね10°以下の角度だけ傾けた角度であることを特徴とする請求項3記載の光信号処理器。
【請求項6】
前記二本の光導波路の各々に溝が形成されており、前記溝に前記偏光変換手段が挿入されていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の光信号処理器。
【請求項7】
前記光分波手段に前記溝が形成されており、前記光導波路に設けられた偏光変換手段は、前記光分波手段に形成された溝から出射される漏れ光の開き角の範囲外に設けられていることを特徴とする請求項6記載の光信号処理器。
【請求項8】
前記光合波手段に前記溝が形成されており、前記光合波手段に設けられた偏光変換手段は、前記光導波路に形成された溝から出射される漏れ光の開き角の範囲外に設けられていることを特徴とする請求項6または7記載の光信号処理器。
【請求項9】
前記光分波手段および前記光合波手段の少なくとも一方に形成された溝、および前記光導波路に形成された溝は同一方向を向いていることを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の光信号処理器。
【請求項10】
前記光分波手段および前記光合波手段に前記溝が形成され、該溝が共通の溝であることを特徴とする3乃至9のいずれかに記載の光信号処理器。
【請求項11】
前記光分波手段に接続された前記入力と、前記光合波手段に接続された前記出力が同一基板端面に位置することを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の光信号処理器。
【請求項12】
前記光分波手段および光合波手段は、共に多モード干渉計であるか、もしくは共に方向性結合器であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の光信号処理器。
【請求項13】
前記光信号処理器は基板上に形成され、
前記光導波路は、前記基板上に形成されたリッジを有する下部クラッドを有することを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の光信号処理器。
【請求項1】
一つ以上の入力を二つの出力に分波する光分波手段と、該光分波手段に接続された二本の光導波路と、該二本の光導波路のそれぞれに接続され、二つの入力を一つ以上の出力に合波する光合波手段とを備える光信号処理器であって、
前記光分波手段、または前記光合波手段の少なくとも一方に設けられた、入力された光の偏光を90°回転して出力する偏光変換手段を備えることを特徴とする光信号処理器。
【請求項2】
一つ以上の入力を二つの出力に分波する光分波手段と、該光分波手段に接続された二本の光導波路と、該二本の光導波路のそれぞれに接続され、二つの入力を一つ以上の出力に合波する光合波手段とを備える光信号処理器であって、
前記光分波手段、または前記光合波手段の少なくとも一方に含まれる光導波路の複屈折を局所的に変化させる手段を備えることを特徴とする光信号処理器。
【請求項3】
前記偏光変換手段は、前記光分波手段、または前記光合波手段の少なくとも一方に形成された溝に挿入されていることを特徴とする請求項1に記載の光信号処理器。
【請求項4】
前記溝の長手方向は、前記偏光変換手段が設けられる、前記光分波手段および前記光合波器の少なくとも一方の長手方向に対して概ね垂直であることを特徴とする請求項3記載の光信号処理器。
【請求項5】
前記溝の長手方向と、前記偏光変換手段が設けられる、前記光分波手段および前記光合波器の少なくとも一方の長手方向とのなす角度は、90°(垂直)から0°よりも大きく概ね10°以下の角度だけ傾けた角度であることを特徴とする請求項3記載の光信号処理器。
【請求項6】
前記二本の光導波路の各々に溝が形成されており、前記溝に前記偏光変換手段が挿入されていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の光信号処理器。
【請求項7】
前記光分波手段に前記溝が形成されており、前記光導波路に設けられた偏光変換手段は、前記光分波手段に形成された溝から出射される漏れ光の開き角の範囲外に設けられていることを特徴とする請求項6記載の光信号処理器。
【請求項8】
前記光合波手段に前記溝が形成されており、前記光合波手段に設けられた偏光変換手段は、前記光導波路に形成された溝から出射される漏れ光の開き角の範囲外に設けられていることを特徴とする請求項6または7記載の光信号処理器。
【請求項9】
前記光分波手段および前記光合波手段の少なくとも一方に形成された溝、および前記光導波路に形成された溝は同一方向を向いていることを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の光信号処理器。
【請求項10】
前記光分波手段および前記光合波手段に前記溝が形成され、該溝が共通の溝であることを特徴とする3乃至9のいずれかに記載の光信号処理器。
【請求項11】
前記光分波手段に接続された前記入力と、前記光合波手段に接続された前記出力が同一基板端面に位置することを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の光信号処理器。
【請求項12】
前記光分波手段および光合波手段は、共に多モード干渉計であるか、もしくは共に方向性結合器であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の光信号処理器。
【請求項13】
前記光信号処理器は基板上に形成され、
前記光導波路は、前記基板上に形成されたリッジを有する下部クラッドを有することを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の光信号処理器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2007−188002(P2007−188002A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7743(P2006−7743)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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