説明

光出力装置

【課題】レーザから出力されるレーザ光の波長が目標波長になる前における、光信号の出力を抑止すること。
【解決手段】
駆動回路6は、レーザ4から出力されるレーザ光の波長が目標波長になるようペルチェ素子5の駆動を制御する。増幅制御回路16は、レーザ光の波長が目標波長になったとき以降は、増幅器14による増幅を、増幅量が基準増幅量になるよう制御し、レーザ光の波長が目標波長になるまでは、増幅器14による増幅を、増幅量が基準増幅量よりも少ない増幅量になるよう制御する。また、減衰制御回路20は、レーザ光の波長が目標波長になったとき以降は、光減衰器18による減衰を、光信号の強度が基準強度となるよう制御し、レーザ光の波長が目標波長になるまでは、光減衰器18による減衰を、光信号の強度が基準強度よりも低い強度になるよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の光出力装置から出力される、チャネルが異なる複数の光信号を多重化することによって、多くの情報を伝送する技術(いわゆるWDM(Wavelength Division Multiplexing)方式)が知られている。
【0003】
図5は、光出力装置の簡単な構成を示す図である。
【0004】
光出力装置31には、少なくとも一つのチャネルが割り当てられている。光出力装置31は、これらのチャネルのうちから選択された目標チャネルの光信号を出力する。
【0005】
すなわち、制御部32は、スイッチ33をオンすることにより、電流源34を源とする駆動電流をレーザ35に印加する。
【0006】
また、制御部32は、いわゆるATC(Automatic Temperature Control)制御とAFC(Automatic Frequency Control)制御とを順に行うことにより、レーザ35から出力されるレーザ光の波長が、目標チャネルに予め割り当てられた目標波長になるよう調整する。
【0007】
すなわち、制御部32は、ATC制御において、レーザ35の温度を検知するための検知手段である温度センサ36の検知温度を参照しながら、検知温度が目標チャネルに予め割り当てられた基準温度になるよう、レーザ35の加熱、冷却を行うペルチェ素子37の駆動を制御する。
【0008】
ATC制御により、レーザ光の波長の粗調整が行われる。つまり、レーザ光の波長が、目標チャネルに予め割り当てられた波長範囲(いわゆる、キャプチャレンジ)内に入るよう調整される。
【0009】
なお、レーザ35から出力されたレーザ光は、光を透過光と反射光とに分離するビームスプリッタ38a、38bにより、変調器39、光の強度を検知する光検出器310a、及び透過特性が周期的に変化するエタロンフィルタ311に入力されることとなる。さらに、エタロンフィルタ311を透過したレーザ光は、光の強度を検知する光検出器310bに入力されることとなる。
【0010】
制御部32は、検知温度を監視しており、検知温度が基準温度になった場合、レーザ光の波長を微調整すべく、AFC制御の実行を開始する。
【0011】
すなわち、制御部32は、AFC制御において、光検出器310aにより検知されるレーザ光の強度と、光検出器310bにより検知されるレーザ光の強度と、から算出される透過率が、目標チャネルに予め割り当てられた透過率になるよう、ペルチェ素子37の駆動を制御する。AFC制御により、制御部32は、レーザ光の波長を目標波長に調整し、ロックする。
【0012】
なお、変調器39は制御部32の指示に従ってレーザ光を変調する。その後、増幅器312及び光減衰器313が、それぞれ、制御部32の指示に従ってレーザ光の増幅、減衰を順に行う。こうして、レーザ光の強度が一定強度に調整され、その結果、一定強度を有る、目標チャネルの光信号が、WDM装置へと出力されることとなる。
【0013】
なお、増幅器312としては、例えば特許文献1のように、EDFA(Erbium Doped Fiber Amplifier)が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平5−343784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述の光出力装置では、レーザから出力されるレーザ光の波長を目標波長へと調整するために、実際にレーザを駆動させなければならない。
【0016】
そのため、レーザから出力されるレーザ光の波長が目標波長になる前の段階で、光信号が出力されてしまうという問題があった。
【0017】
本発明の目的は、レーザから出力されるレーザ光の波長が目標波長になる前における、光信号の出力を抑止することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明に係る光出力装置は、レーザ素子を駆動する駆動手段と、前記レーザ素子の加熱又は冷却を行う温度調整手段の駆動を、前記レーザ素子の温度を検知するための検知手段の検知温度が基準温度になるよう制御する第1温度制御手段と、前記検知温度が前記基準温度になった場合に、前記レーザ素子から出力されるレーザ光の波長が目標波長になるよう、前記温度調整手段の駆動を、前記レーザ素子から出力されたレーザ光の強度と透過特性が周期的に変化するフィルタを透過した後の該レーザ光の強度との比較結果に基づいて、制御する第2温度制御手段と、前記レーザ素子から出力されたレーザ光を変調する変調手段と、光増幅手段による、前記変調手段により変調されたレーザ光の増幅を制御する増幅制御手段と、光減衰手段による、前記光増幅手段により増幅されたレーザ光の減衰を制御する減衰制御手段と、を含み、前記光減衰手段により減衰されたレーザ光を光信号として出力する光出力装置であって、前記増幅制御手段は、前記レーザ素子から出力されるレーザ光の波長が前記目標波長になったとき以降は、前記光増幅手段による増幅を、増幅量が基準増幅量になるよう制御し、前記レーザ素子から出力されるレーザ光の波長が前記目標波長になるまでは、前記光増幅手段による増幅を、増幅量が前記基準増幅量よりも少ない増幅量になるよう制御し、前記減衰制御手段は、前記レーザ素子から出力されるレーザ光の波長が前記目標波長になったとき以降は、前記光減衰手段による減衰を、前記光信号の強度が基準強度となるよう制御し、前記レーザ素子から出力されるレーザ光の波長が前記目標波長になるまでは、前記光減衰手段による減衰を、前記光信号の強度が前記基準強度よりも低い強度になるよう制御することを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様では、前記目標波長は、複数の波長のうちから選択され、前記第1温度制御手段は、前記温度調整手段の駆動を、前記検知温度が前記目標波長に対応する前記基準温度になるよう制御し、前記増幅制御手段は、前記目標波長が選択されてから前記レーザ素子から出力されるレーザ光の波長が該目標波長になるまで、前記光増幅手段による増幅を、増幅量が前記基準増幅量よりも小さい増幅量になるよう制御し、前記減衰制御手段は、前記目標波長が選択されてから前記レーザ素子から出力されるレーザ光の波長が該目標波長になるまで、前記光減衰手段による減衰を、前記光信号の強度が前記基準強度よりも低い強度になるよう制御するようにしてもよい。
【0020】
また、本発明の一態様では、前記駆動手段は、前記検知温度が前記基準温度になった場合に、前記レーザ素子の駆動を開始するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る光出力装置の構成を示す図である。
【図2】増幅制御回路及び減衰制御回路の具体的構成を示す図である。
【図3】制御部により行われる処理の一例を示す図である。
【図4】制御部により行われる処理の一例を示す図である。
【図5】光出力装置の簡単な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[光出力装置]
図1は、本発明の実施形態に係る光出力装置1の構成を示す図である。
【0023】
レーザ4は、レーザ光の波長が温度に応じて変化する波長可変レーザである。電流源3を源とする駆動電流が印加されると、レーザ4が駆動し、レーザ光が出力される。図1の破線は、レーザ光の軌道を示す。レーザ4から出力されたレーザ光は、変調部11、増幅器14、及び光減衰器18により変調等がなされ、光信号としてWDM装置へと出力される。
【0024】
スイッチ2は、制御部21の指示に従って動作する。スイッチ2がオン状態にある場合、駆動電流がレーザ4に印加される。
【0025】
ペルチェ素子5(温度調整手段)は、レーザ4を加熱したり冷却したりする。駆動回路6は、ペルチェ素子5に駆動電流を印加することにより、ペルチェ素子を駆動させる。また、駆動回路6は、駆動電流の大きさを制御することにより、ペルチェ素子の駆動を制御する。駆動回路6は、制御部21に接続される。
【0026】
温度センサ7は、レーザ4の温度を検知するために、レーザ4の近傍に配置される。温度センサ7により検知された温度を示す信号は、制御部21や駆動回路6に供給される。
【0027】
ビームスプリッタ8a,8bは、光を透過光と反射光とに分離するハーフミラーである。ビームスプリッタ8a,8bにより、レーザ光は、変調部11、光検出器9a、及び透過特性が周期的に変化するエタロンフィルタ10に供給される。なお、エタロンフィルタ10を透過したレーザ光は、光検出器9bに供給されることとなる。
【0028】
光検出器9a,9bは、例えば、フォトダイオードであり、光の強度を検知する。光検出器9a,9bにより検知された光の強度を示す信号は、駆動回路6及び制御部21に供給される。
【0029】
変調部11(変調手段)は、レーザ光を変調する。本実施形態の場合、変調部11は、強度変調器11aと、位相変調器11bと、により、レーザ光を、RZ−DQPSK方式で変調する。
【0030】
すなわち、この光出力装置1では、第1駆動回路12がクロック信号に基づいて強度変調器11aを駆動させるようになっており、その結果として、強度変調器11aが、レーザ光をクロック信号に同期したパルス光に変調するようになっている。また、この光出力装置1では、第2駆動回路13が2チャネル並列のデータ信号に基づいて位相変調器11bを駆動させるようになっており、その結果として、位相変調器11bが、パルス光を直交位相変調するようになっている。
【0031】
なお、強度変調器11aとしては、例えば、マッハツェンダ−型ニオブ酸リチウム光変調器が用いられる。また、位相変調器11bとしては、いわゆるデュアルパラレル光変調器が用いられる。また、クロック信号及びデータ信号は、図示しないシリアライザICによって生成される。例えば、SFI−5入力インタフェースを有し、21.5GHzのクロック信号と2チャネル並列のデータ信号とを生成するシリアライザICは、21.5GSymbol/sのRZ−DQPSK信号の生成に好適である。
【0032】
図1に示すように、変調部11で変調されたレーザ光(図1の変調光)は、増幅器14に供給される。
【0033】
増幅器14(光増幅手段)は、例えば、エルビウムドープトファイバ(以下、EDF)である。増幅器14には、ポンプレーザ15から励起レーザ光が供給されるようになっており、この励起レーザ光に基づいて変調光を増幅する。
【0034】
ここで、ポンプレーザ15から供給される励起レーザ光は、カプラ17により、フォトダイオードである光検出器9cにも供給されるようになっている。光検出器9cが検知した励起レーザ光の強度を示す信号は、増幅制御回路16に供給される。
【0035】
増幅制御回路16は、ポンプレーザ15に駆動電流を印加することにより、ポンプレーザ15を駆動させる。また増幅制御回路16(増幅制御手段)は、駆動電流の大きさを変えることによって励起レーザ光の強度を変え、ひいては、増幅器14による変調光の増幅を制御する。
【0036】
図2に増幅制御回路16及び減衰制御回路20の具体的構成を示す。同図に示すように、増幅制御回路16は、モニタ回路16aと、差動増幅器16bと、ポンプレーザ駆動回路16cと、インタフェース回路16dと、エミッタが接地されたトランジスタ16eと、抵抗16fと、を含む。
【0037】
モニタ回路16aは、光検出器9cから供給される、励起レーザ光の強度を示す信号を電圧に変換し、差動増幅器16bの第1の入力端(図2において下方に位置する入力端)に入力する。差動増幅器16bは、第1の入力端に入力された電圧と、第2の入力端(図2において上方に位置する入力端)に入力された電圧(以下、増幅基準電圧V1)と、を比較し、両電圧の差をポンプレーザ駆動回路16cに入力する。そして、ポンプレーザ駆動回路16cが、両電圧の差に応じた駆動電流をポンプレーザ15に印加することとなる。
【0038】
上記のモニタ回路16a,差動増幅器16b、ポンプレーザ駆動回路16cによって、励起レーザ光の強度が増幅基準電圧V1に応じた強度に調整される。結果的に、増幅制御回路16は、変調光の増幅率が増幅基準電圧V1に応じた強度となるよう、増幅器14による変調光の増幅を制御することとなる。
【0039】
ここで、エミッタが接地されたトランジスタ16eのコレクタは、上記第2の入力端に接続されている。そのため、トランジスタ16eの状態がオン状態である場合には、増幅基準電圧V1が略0ボルトとなり、トランジスタ16eの状態がオフ状態である場合には、増幅基準電圧V1が、制御部21から供給される励起レーザ光制御信号S1(図2参照)に対応する増幅制御電圧となる。その結果、増幅制御回路16は、トランジスタ16eの状態がオフ状態であるときは、変調光の増幅率が増幅制御電圧に応じた基準増幅率(基準増幅量)になるよう増幅を制御し、トランジスタ16eの状態がオン状態であるときは、変調光の増幅率が基準増幅率よりも低い増幅率になるよう増幅を制御することとなる。
【0040】
なお、インタフェース回路16dは、制御部21から遮断開始信号(図2参照)が供給された場合に、トランジスタ16eの状態をオン状態にする。また、インタフェース回路16dは、制御部21から遮断停止信号(図2参照)が供給された場合に、トランジスタ16eの状態をオフ状態にする。遮断開始信号が供給されてから遮断停止信号が供給されるまで、トランジスタ16eの状態がオン状態になる。
【0041】
図1に示すように、増幅器14で増幅された変調光(図1の増幅光)は、光減衰器18に供給される。
【0042】
光減衰器18は、増幅光を減衰させる。光減衰器18により減衰された増幅光(図1の減衰光)が、光信号として、WDM装置へと出力される。
【0043】
ここで、減衰光は、カプラ19により、フォトダイオードである光検出器9dに供給されるようになっている。光検出器9dが検知した減衰光の強度を示す信号は、減衰制御回路20に供給される。
【0044】
減衰制御回路20は、光減衰器18に駆動信号を入力することにより、光減衰器18を駆動させる。また減衰制御回路20(減衰制御手段)は、駆動信号を変えることによって減衰量を変え、ひいては、光減衰器18による増幅光の減衰を制御する。
【0045】
図2に減衰制御回路20の具体的構成を示す。同図に示すように、減衰制御回路20は、モニタ回路20aと、差動増幅器20bと、光減衰器駆動回路20cと、インタフェース回路20dと、エミッタが接地されたトランジスタ20eと、抵抗20fと、を含む。
【0046】
モニタ回路20aは、光検出器9dから供給される、減衰光の強度を示す信号を電圧に変換し、差動増幅器20bの第1の入力端(図2において下方に位置する入力端)に入力する。差動増幅器20bは、第1の入力端に入力された電圧と、第2の入力端(図2において上方に位置する入力端)に入力された電圧(以下、減衰基準電圧V2)と、を比較し、両電圧の差を光減衰器駆動回路20cに入力する。そして、光減衰器駆動回路20cが、両電圧の差を駆動信号として光減衰器18に供給することとなる。
【0047】
上記のモニタ回路20a,差動増幅器20b、光減衰器駆動回路20cによって、減衰光の強度が減衰基準電圧V2に応じた強度に調整される。結果的に、減衰制御回路20は、減衰光(すなわち、光信号)の強度が減衰基準電圧V2に応じた強度となるよう、光減衰器18による増幅光の減衰を制御することとなる。
【0048】
ここで、エミッタが接地されたトランジスタ20eのコレクタは、上記第2の入力端に接続されている。そのため、トランジスタ20eの状態がオン状態である場合には、減衰基準電圧V2が略0ボルトとなり、トランジスタ20eの状態がオフ状態である場合には、減衰基準電圧V2が、制御部21から供給される減衰制御信号S2(図2参照)に対応する減衰制御電圧となる。その結果、減衰制御回路20は、トランジスタ20eの状態がオフ状態であるときは、減衰光(すなわち、光信号)の強度が減衰制御電圧に応じた基準強度になるよう減衰を制御し、トランジスタ20eの状態がオン状態であるときは、減衰光の強度が基準強度よりも低い強度になるよう減衰を制御することとなる。
【0049】
なお、インタフェース回路20dは、制御部21から上述の遮断開始信号が供給された場合に、トランジスタ20eの状態をオン状態にする。また、インタフェース回路20dは、制御部21から上述の遮断停止信号が供給された場合に、トランジスタ20eの状態をオフ状態にする。遮断開始信号が供給されてから遮断停止信号が供給されるまで、トランジスタ20eの状態がオン状態になる。
【0050】
制御部21は、例えば、所定のプログラムに従って動作するマイクロプロセッサやマイクロコントローラである。制御部21(駆動手段)は、スイッチ2をオン状態にすることにより、レーザ4を駆動させる。また、スイッチ2をオフ状態にすることにより、レーザ4の駆動を停止させる。
【0051】
また、制御部21は、上述の増幅制御信号S1(図2参照)を増幅制御回路16に送出したり、上述の減衰制御信号S2(図2参照)を減衰制御回路20に送出したりする。また、制御部21は、上述の遮断開始信号や遮断停止信号を増幅制御回路16及び減衰制御回路20に送出する。
【0052】
また、制御部21は、後述するATC(Automatic Temperature Control)駆動の開始を指示するATC信号を駆動回路6に送出する。また、制御部21は、後述するAFC(Auto Frequency Control)駆動の開始を指示するAFC信号を駆動回路6に送出する。
【0053】
なお、図示していないが、光出力装置1は、メモリ等の記憶手段も含む。
【0054】
[ATC駆動及びAFC駆動]
この光出力装置1には、複数のチャネルが割り当てられている。これらのチャネルのうちから一の目標チャネルが選択され、光出力装置1が、基準強度を有する、目標チャネルの光信号を出力するようになっている。
【0055】
上述のように、レーザ4では、出力されるレーザ光の波長がレーザ4の温度に応じて変わる。そこで、光出力装置1では、目標チャネルの光信号の出力のため、レーザ4から出力されるレーザ光の波長が目標チャネルに割り当てられた目標波長になるよう、レーザ4の温度が制御されるようになっている。具体的には、光出力装置1が起動した場合、又は、光出力装置1の起動中に目標チャネルが選択された場合(すなわち、光出力装置1の起動中に目標チャネルが切り替わった場合)に、駆動回路6が上述のATC駆動及びAFC駆動を順に行うようになっている。
【0056】
より詳しくは、光出力装置1が起動した場合、又は、光出力装置1の起動中に目標チャネルが選択された場合に、制御部21が図3に示す処理を行う。
【0057】
すなわち、制御部21は、上述のATC信号を駆動回路6に送出する(S101)。なお、制御部21は、光出力装置1の起動中に目標チャネルが選択された場合にS101の処理を行う場合、ATC信号を駆動回路6に送出するだけでなく、スイッチ2の状態をオフ状態にしてレーザ4の駆動を停止することも行う。
【0058】
ATC信号を受け取った駆動回路6は、ATC駆動を開始する。ATC駆動を行っている間、駆動回路6(第1温度制御手段)は、温度センサ7から供給される信号が示す温度(検知温度)、すなわちレーザ4の温度、が目標チャネルに予め割り当てられた基準温度になるようペルチェ素子5の駆動を制御する。すなわち、駆動回路6は、ATC駆動を行っている間、温度センサ7から供給される信号が示す温度と、基準温度と、の比較結果に応じた駆動電流をペルチェ素子5に供給し続ける。
【0059】
ATC駆動により、レーザ4から出力されるレーザ光の波長が、目標チャネルに予め割り当てられた波長範囲(いわゆる、キャプチャレンジ)内に収まるよう、レーザ4の温度が調整される。
【0060】
制御部21は、温度センサ7から供給される信号が示す温度、すなわちレーザ4の温度が基準温度になったか否かを監視している(S102)。そして、制御部21は、レーザ4の温度が基準温度になった場合(S102のY)、上述のAFC信号を駆動回路6に送出する(S103)。また、制御部21は、S103において、スイッチ2の状態をオン状態にし、レーザ4の駆動を開始させる。
【0061】
AFC信号を受け取った駆動回路6は、ATC駆動を停止し、AFC駆動を開始する。AFC駆動を行っている間、駆動回路6(第2温度制御手段)は、光検出器9aから供給される信号と、光検出器9bから供給される信号と、に基づいてレーザ光がエタロンフィルタ10したときの透過率(比較結果)を算出し、この透過率と目標チャネルに予め割り当てられた基準透過率との差が所定範囲内に収まるよう、ペルチェ素子5の駆動を制御する。すなわち、駆動回路6は、AFC駆動を行っている間、両透過率の差に応じてペルチェ素子5に供給する駆動電流を変化させ続ける。
【0062】
AFC駆動により、レーザ4の温度が調整され続けることとなる。その結果、レーザ4から出力されるレーザ光の波長が目標波長に調整された後、ロックされることとなる。
【0063】
[AFC駆動の特徴]
ところで、上述のように、AFC駆動では、光検出器9aから供給される信号と、光検出器9bから供給される信号と、が用いられるので、AFC駆動を行うには、実際にレーザ4を駆動させなければならない。そのため、常にトランジスタ16eの状態やトランジスタ20eの状態がオフ状態である場合、レーザ4から出力されるレーザ光の波長が目標波長になる前の段階で、基準強度を有する光信号がWDM装置へと出力されてしまうという問題がある。
【0064】
この点、この光出力装置1では、レーザ4から出力されるレーザ光の波長が目標波長になるまでは、トランジスタ16eの状態やトランジスタ20eの状態がオン状態になり、レーザ4から出力されるレーザ光の波長が目標波長になったとき以降は、トランジスタ16eの状態やトランジスタ20eの状態がオフ状態になるようになっている(後述の図4参照)。
【0065】
そのため、増幅制御回路16が、レーザ4から出力されるレーザ光の波長が目標波長になったとき以降は、変調光の増幅率が基準増幅率になるよう増幅を制御し、レーザ4から出力されるレーザ光の波長が目標波長になるまでは、変調光の増幅率が基準増幅率よりも低い増幅率になるよう増幅を制御するようになっている。また、減衰制御回路20が、レーザ4から出力されるレーザ光の波長が目標波長になったとき以降は、減衰光(すなわち、光信号)の強度が基準強度になるよう減衰を制御し、レーザ4から出力されるレーザ光の波長が目標波長になるまでは、減衰光の強度が基準強度よりも低い強度になるよう減衰を制御するようになっている。
【0066】
その結果、レーザ4から出力されるレーザ光の波長が目標波長になるまでの期間、光信号の強度が基準強度よりも小さくなり、ひいては、この期間における光信号の出力が抑止されるようになっている。
【0067】
具体的には、、光出力装置1が起動した場合、又は、光出力装置1の起動中に目標チャネルが選択された場合に、制御部21が、図3に示す処理だけでなく、図4に示す処理も行う。
【0068】
すなわち、制御部21は、上述の遮断開始信号を増幅制御回路16及び減衰制御回路20に送出する(S201)。これにより、トランジスタ16eの状態とトランジスタ20eの状態とがオン状態になる。
【0069】
また、制御部21は、レーザ光から出力されるレーザ光の波長が目標波長になったか否かを監視し始める(S202)。すなわち、制御部21は、レーザ光がエタロンフィルタ10を透過したときの透過率と、基準透過率と、の差が所定範囲内に入ったか否かを監視し始める。
【0070】
そして、レーザ光から出力されるレーザ光の波長が目標波長になった場合(S202のY)、上述の遮断停止信号を増幅制御回路16及び減衰制御回路20に送出する(S203)。これにより、トランジスタ16eの状態とトランジスタ20eの状態とがオフ状態になる。その結果、上述のように、レーザ4から出力されるレーザ光の波長が目標波長になるまでは、トランジスタ16eやトランジスタ20eがオン状態になり、レーザ4から出力されるレーザ光の波長が目標波長になったとき以降は、トランジスタ16eやトランジスタ20eがオフ状態になる。
【0071】
[まとめ]
以上の光出力装置1によれば、レーザ4から出力されるレーザ光の波長が目標波長になる前における、光信号の出力が抑止されるようになる。
【0072】
また、光出力装置1では、レーザ4の温度が基準温度になったときに、レーザ4が駆動を開始する。この点からも、レーザ4から出力されるレーザ光の波長が目標波長になる前における、光信号の出力が抑止されるようになる。
【0073】
なお、本発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではない。
【0074】
例えば、駆動回路6、第1駆動回路12,第2駆動回路13、増幅制御回路16、及び減衰制御回路20の役割を、制御部21が担当してもよい。
【0075】
また、例えば、レーザ4は、一のチャネルが割り当てられた単一波長レーザであってもよい。この場合、レーザ4に割り当てられた一のチャネル自体が目標チャネルとなる。また、図3及び図4の処理が、光出力装置1が起動した場合にのみ行われることとなる。
【0076】
また、例えば、制御部21は、S203のステップにおいて、上述の遮断停止信号を、増幅制御回路16及び減衰制御回路20に必ずしも同時に送出する必要はない。例えば、制御部21は、増幅制御回路16に遮断停止信号を送出した後に、減衰制御回路20に遮断停止信号を送出するようにしてもよい。
【0077】
また、強度変調器11aとして、どのような強度変調器を用いてもよいし、位相変調器11bとして、どのような位相変調器を用いてもよい。
【0078】
また、変調部11の構成は、どのような構成であってもよい。
【0079】
また、増幅器14として、エルビウムドープトファイバ以外の増幅器を用いてもよい。例えば、増幅器14は、半導体光増幅器であってもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 光出力装置、2 スイッチ、3 電流源、4 レーザ、5 ペルチェ素子、6 駆動回路、7 温度センサ、8a,8b ビームスプリッタ、9a,9b,9c,9d 光検出器、10 エタロンフィルタ、11 変調部、11a 強度変調器、11b 位相変調器、12 第1駆動回路、13 第2駆動回路、14 増幅器、15 ポンプレーザ、16 増幅制御回路、16a,20a モニタ回路、16b,20b 差増増幅器、16c ポンプレーザ駆動回路、16d,20d インタフェース回路、16e,20e トランジスタ、16f,20f 抵抗、17,19 カプラ、18 光減衰器、20 減衰制御回路、20c 光減衰器駆動回路、21 制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ素子を駆動する駆動手段と、
前記レーザ素子の加熱又は冷却を行う温度調整手段の駆動を、前記レーザ素子の温度を検知するための検知手段の検知温度が基準温度になるよう制御する第1温度制御手段と、
前記検知温度が前記基準温度になった場合に、前記レーザ素子から出力されるレーザ光の波長が目標波長になるよう、前記温度調整手段の駆動を、前記レーザ素子から出力されたレーザ光の強度と透過特性が周期的に変化するフィルタを透過した後の該レーザ光の強度との比較結果に基づいて、制御する第2温度制御手段と、
前記レーザ素子から出力されたレーザ光を変調する変調手段と、
光増幅手段による、前記変調手段により変調されたレーザ光の増幅を制御する増幅制御手段と、
光減衰手段による、前記光増幅手段により増幅されたレーザ光の減衰を制御する減衰制御手段と、
を含み、
前記光減衰手段により減衰されたレーザ光を光信号として出力する光出力装置において、
前記増幅制御手段は、
前記レーザ素子から出力されるレーザ光の波長が前記目標波長になったとき以降は、前記光増幅手段による増幅を、増幅量が基準増幅量になるよう制御し、前記レーザ素子から出力されるレーザ光の波長が前記目標波長になるまでは、前記光増幅手段による増幅を、増幅量が前記基準増幅量よりも少ない増幅量になるよう制御し、
前記減衰制御手段は、
前記レーザ素子から出力されるレーザ光の波長が前記目標波長になったとき以降は、前記光減衰手段による減衰を、前記光信号の強度が基準強度となるよう制御し、前記レーザ素子から出力されるレーザ光の波長が前記目標波長になるまでは、前記光減衰手段による減衰を、前記光信号の強度が前記基準強度よりも低い強度になるよう制御すること、
を特徴とする光出力装置。
【請求項2】
前記目標波長は、複数の波長のうちから選択され、
前記第1温度制御手段は、
前記温度調整手段の駆動を、前記検知温度が前記目標波長に対応する前記基準温度になるよう制御し、
前記増幅制御手段は、
前記目標波長が選択されてから前記レーザ素子から出力されるレーザ光の波長が該目標波長になるまで、前記光増幅手段による増幅を、増幅量が前記基準増幅量よりも小さい増幅量になるよう制御し、
前記減衰制御手段は、
前記目標波長が選択されてから前記レーザ素子から出力されるレーザ光の波長が該目標波長になるまで、前記光減衰手段による減衰を、前記光信号の強度が前記基準強度よりも低い強度になるよう制御すること、
を特徴とする請求項1に記載の光出力装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、
前記検知温度が前記基準温度になった場合に、前記レーザ素子の駆動を開始すること、
を特徴とする請求項1に記載の光出力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−151210(P2011−151210A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11306(P2010−11306)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(301005371)日本オプネクスト株式会社 (311)
【Fターム(参考)】