説明

光半導体封止用硬化性組成物及びこれを用いた光半導体装置

【課題】 良好な透明性を有する硬化物を与える光半導体封止用硬化性組成物、及び該光半導体封止用硬化性組成物を硬化して得られる硬化物により光半導体素子が封止された光半導体装置を提供する。
【解決手段】 (A)直鎖状ポリフルオロ化合物、(B)SiH基及び含フッ素有機基を有する環状オルガノシロキサン、(C)白金族金属系触媒、(D)SiH基、含フッ素有機基及びエポキシ基を有する環状オルガノシロキサン、(E)SiH基、含フッ素有機基及び環状無水カルボン酸残基を有する環状オルガノシロキサンを含有する光半導体封止用硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体封止用硬化性組成物及びこれを用いた光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状フルオロポリエーテル化合物、1分子中にケイ素原子に直結した水素原子を2個以上有する含フッ素オルガノ水素シロキサン及び白金族化合物からなる組成物から、耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性、離型性、撥水性、撥油性、低温特性等の性質がバランスよく優れた硬化物を得ることが提案されている(特許文献1)。
【0003】
そして、該組成物に、ヒドロシリル基とエポキシ基及び/又はトリアルコキシシリル基とを有するオルガノポリシロキサンを添加することにより、金属やプラスチック基材に対して自己接着性を付与した組成物が提案されている(特許文献2)。
【0004】
さらに、該組成物に、環状無水カルボン酸残基を有するオルガノシロキサンを添加することにより、各種基材、特にポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂に対する接着性を向上させた組成物が提案されている(特許文献3)。
【0005】
しかし、これら従来技術で実際に調製された組成物を硬化して得られる硬化物を発光ダイオード(以下、特に断りのない限り「LED」という)の封止材として使用すると、その硬化物に濁りが生じてしまい透明性を損なうという問題があった。該封止材の透明性が損なわれると、LEDから発せられた光を外部に取り出せる効率(以下、「光取り出し効率」と表記する)が低下してしまい、その結果該LEDを光源とした光半導体装置の明るさも低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2990646号公報
【特許文献2】特許第3239717号公報
【特許文献3】特許第3562578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、良好な透明性を有する硬化物を与える光半導体封止用硬化性組成物、及び該光半導体封止用硬化性組成物を硬化して得られる硬化物により光半導体素子が封止された光半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明によれば、
(A)下記一般式(1)
CH=CH−(X)−Rf−(X’)−CH=CH (1)
[式中、Xは−CH−、−CHO−、−CHOCH−、及び−Y−NR−CO−(Yは−CH−又は下記構造式(2)
【化1】

で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基、Rは水素原子、又は非置換もしくは置換の1価炭化水素基)のいずれかで表される基、X’は−CH−、−OCH−、−CHOCH−、及び−CO−NR−Y’−(Y’は−CH−又は下記構造式(3)
【化2】

で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基、Rは上記と同じ基である。)のいずれかで表される基であり、aは独立に0又は1である。Rfは下記一般式(4)又は(5)
【化3】

(式中、p及びqはそれぞれ1〜150の整数であって、かつpとqの和の平均は2〜300である。また、rは0〜6の整数、tは2又は3である。)
【化4】

(式中、uは1〜300の整数、sは1〜80の整数、tは上記と同じである。)
で表される2価のパーフルオロポリエーテル基である。]
で表される直鎖状ポリフルオロ化合物:100質量部、
(B)下記一般式(6)で表される、一分子中にケイ素原子に直結した水素原子と、酸素原子又は窒素原子を含んでも良い2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合した一価のパーフルオロアルキル基又は一価のパーフルオロオキシアルキル基とを有する環状オルガノポリシロキサン:(A)成分のアルケニル基1モルに対してケイ素原子に直結した水素原子が0.5〜2.0モルとなる量、
【化5】

(式中、aは3〜6の整数、bは1〜4の整数、a+bは4〜10の整数、Rは置換又は非置換の一価炭化水素基、Aは酸素原子又は窒素原子を含んでも良い2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合した一価のパーフルオロアルキル基又は一価のパーフルオロオキシアルキル基である。)
(C)白金族金属系触媒:白金族金属原子換算で0.1〜500ppm、
(D)下記一般式(7)で表される、一分子中にケイ素原子に直結した水素原子と、酸素原子又は窒素原子を含んでも良い2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合した一価のパーフルオロアルキル基又は一価のパーフルオロオキシアルキル基と、酸素原子を含んでも良い2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合したエポキシ基とを有する環状オルガノポリシロキサン:0.1〜10.0質量部、
【化6】

(式中、iは1〜6の整数、jは1〜4の整数、kは1〜4の整数、i+j+kは4〜10の整数、Rは置換又は非置換の一価炭化水素基、Lは酸素原子又は窒素原子を含んでも良い2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合した一価のパーフルオロアルキル基又は一価のパーフルオロオキシアルキル基、Mは酸素原子を含んでも良い2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合したエポキシ基である。)
(E)下記一般式(8)で表される、一分子中にケイ素原子に直結した水素原子と、酸素原子又は窒素原子を含んでも良い2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合した一価のパーフルオロアルキル基又は一価のパーフルオロオキシアルキル基と、2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合した環状無水カルボン酸残基とを有する環状オルガノポリシロキサン:0.01〜5.0質量部、
【化7】

(式中、xは1〜6の整数、yは1〜4の整数、zは1〜4の整数、x+y+zは4〜10の整数、Rは置換又は非置換の一価炭化水素基、Qは酸素原子又は窒素原子を含んでも良い2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合した一価のパーフルオロアルキル基又は一価のパーフルオロオキシアルキル基、Tは2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合した環状無水カルボン酸残基である。)
を含有するものであることを特徴とする光半導体封止用硬化性組成物を提供する。
【0009】
このような、上記(A)〜(E)成分を全て含有する付加硬化型フルオロポリエーテル系硬化性組成物である光半導体封止用硬化性組成物は、各種基材、特にポリフタル酸アミド(PPA)に対して良好な接着性を示し、且つ良好な透明性を有する硬化物を与える。従って、該光半導体封止用硬化性組成物の硬化物は、光半導体素子の封止材、特に、LEDを保護するための封止材に適する。
【0010】
また、前記光半導体封止用硬化性組成物は、硬化後の2mm厚の硬化物における、波長450nmの直線光の透過率が80%以上であることが好ましい。
【0011】
このように、硬化後の2mm厚の硬化物における波長450nmの直線光の透過率が80%以上である場合、本発明の光半導体封止用硬化性組成物を硬化して得られる硬化物により光半導体素子が封止された光半導体装置の光取り出し効率が低下してしまう恐れがないために好ましい。
【0012】
また、前記光半導体封止用硬化性組成物は、硬化後の硬化物の25℃,589nm(ナトリウムのD線)での屈折率が1.30〜1.39であることが好ましい。
【0013】
該屈折率が、この範囲内であれば、本発明の組成物を硬化して得られる硬化物により上記光半導体素子が封止された光半導体装置の光取り出し効率は、該光半導体装置の設計によって低下してしまうようなこともないために好ましい。
【0014】
また、前記(A)成分の直鎖状ポリフルオロ化合物のアルケニル基含有量が、0.005〜0.100mol/100gであることが好ましい。
【0015】
このように、(A)成分のアルケニル基含有量が0.005mol/100g未満の場合には、架橋度合いが不十分になり硬化不具合が生じる可能性があるため好ましくなく、アルケニル基含有量が0.100mol/100gを超える場合には、この硬化物のゴム弾性体としての機械的特性が損なわれる可能性がある。
【0016】
また、前記(B)成分、(D)成分及び(E)成分の各環状オルガノポリシロキサンが有する、一価のパーフルオロアルキル基又は一価のパーフルオロオキシアルキル基は、それぞれ下記一般式(9)又は一般式(10)で表されるものであることが好ましい。
2f+1− (9)
(式中、fは1〜10の整数である。)
【化8】

(式中、gは1〜10の整数である)
【0017】
このように、一価のパーフルオロアルキル基又は一価のパーフルオロオキシアルキル基は、上記一般式(9)又は上記一般式(10)で表されるものであることが好ましい。
【0018】
また、本発明では、光半導体素子と、該光半導体素子を封止するための、前記光半導体封止用硬化性組成物を硬化して得られる硬化物とを有する光半導体装置を提供する。
【0019】
本発明の光半導体封止用硬化性組成物は、良好な透明性を有する硬化物を与えることができるため、この硬化物により光半導体素子が封止された光半導体装置は、良好な光取り出し効率(該光半導体素子から発せられた光を外部に取り出せる効率)を有する。
【0020】
また、前記光半導体素子は、発光ダイオードであることが好ましい。
【0021】
このように、本発明の光半導体封止用硬化性組成物の硬化物は、特に発光ダイオードを保護するための封止材として適する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の光半導体封止用硬化性組成物は、上記(A)〜(E)成分の組み合わせにより、硬化物が良好な透明性を有し、これにより光半導体素子が封止された光半導体装置は、良好な光取り出し効率(該光半導体素子から発せられた光を外部に取り出せる効率)を有する。更に、該光半導体封止用硬化性組成物は、各種基材、特にポリフタル酸アミド(PPA)に対して良好な接着性を示すため、LEDを保護するための封止材として適するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の光半導体装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の光半導体装置の他の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明をより詳細に説明する。
上記のように、良好な透明性を有する硬化物を与え、かつ、各種基材、特にPPAに対して良好な接着性を有する光半導体封止用硬化性組成物、及び該組成物を硬化して得られる硬化物により光半導体素子が封止された光半導体装置が求められている。
【0025】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、下記(A)〜(E)成分を全て含有する組成物であれば、下記(A)〜(E)成分の組み合わせによる効果として、良好な透明性を有する硬化物を与える光半導体封止用硬化性組成物となることを見出し、本発明を完成させるに至った。以下、本発明について詳細に説明する。
[(A)成分]
本発明の(A)成分は、下記一般式(1)で表される直鎖状ポリフルオロ化合物である。
CH=CH−(X)−Rf−(X’)−CH=CH (1)
[式中、Xは−CH−、−CHO−、−CHOCH−、及び−Y−NR−CO−(Yは−CH−又は下記構造式(2)
【化9】

で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基、Rは水素原子、又は非置換もしくは置換の1価炭化水素基)のいずれかで表される基、X’は−CH−、−OCH−、−CHOCH−、及び−CO−NR−Y’−(Y’は−CH−又は下記構造式(3)
【化10】

で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基、Rは上記と同じ基である。)のいずれかで表される基であり、aは独立に0又は1である。Rfは下記一般式(4)又は(5)
【化11】

(式中、p及びqはそれぞれ1〜150の整数であって、かつpとqの和の平均は2〜300である。また、rは0〜6の整数、tは2又は3である。)
【化12】

(式中、uは1〜300の整数、sは1〜80の整数、tは上記と同じである。)
で表される2価のパーフルオロポリエーテル基である。]
【0026】
ここで、R1としては、水素原子以外の場合、炭素原子数1〜12、特に1〜10の1価炭化水素基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基などや、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素等のハロゲン原子で置換した置換1価炭化水素基などが挙げられる。
【0027】
上記一般式(1)のRfは、下記一般式(4)又は(5)で表される2価のパーフルオロポリエーテル構造である。
【化13】

(式中、p及びqはそれぞれ1〜150の整数、好ましくは1〜100の整数であって、かつpとqの和の平均は2〜300、好ましくは2〜200、より好ましくは10〜150である。また、rは0〜6の整数、tは2又は3である。)
【化14】

(式中、uは1〜300の整数、好ましくは1〜200の整数、より好ましくは10〜150の整数、sは1〜80の整数、好ましくは1〜50の整数、tは上記と同じである。)
【0028】
Rf1基の好ましい例としては、例えば、下記式(i)〜(iii)で示されるものが挙げられる。更に好ましくは式(i)の構造の2価の基である。
【化15】

【化16】

(上記式(i),(ii)中、p’及びq’はそれぞれ1〜150の整数、好ましくは1〜100の整数、p’+q’(平均)=2〜300、好ましくは2〜200、より好ましくは10〜150である。)
【化17】

(上記式(iii)中、u’は1〜300の整数、好ましくは1〜200の整数、より好ましくは10〜150の整数、s’は1〜80の整数、好ましくは1〜50の整数、より好ましくは1〜30の整数である。)
【0029】
(A)成分の好ましい例として、下記一般式(11)で表される化合物が挙げられる。
【化18】

[式中、X1は−CH2−、−CH2O−、−CH2OCH2−又は−Y−NR1’−CO−(Yは−CH2−又は下記構造式(2)
【化19】

で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基、R’は水素原子、メチル基、フェニル基又はアリル基)で表される基、X’は−CH−、−OCH−、−CHOCH−又は−CO−NR’−Y’−(Y’は−CH−又は下記構造式(3)
【化20】

で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基、R’は上記と同じである。)で表される基であり、aは独立に0又は1、dは2〜6の整数、b及びcはそれぞれ0〜200の整数、好ましくは1〜150の整数、より好ましくは1〜100の整数、b+c(平均)=0〜300、好ましくは2〜200、より好ましくは10〜150である。]
【0030】
上記一般式(11)で表される直鎖状ポリフルオロ化合物の具体例としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【化21】

【化22】

(式中、m1及びn1はそれぞれ1〜150の整数、好ましくは1〜100の整数、m1+n1=2〜300、好ましくは6〜200を満足する整数を示す。)
【0031】
なお、上記一般式(1)で表される直鎖状ポリフルオロ化合物の粘度(23℃)は、JIS K6249に準拠した粘度測定で、100〜100,000mPa・s、より好ましくは500〜50,000mPa・s、更に好ましくは1,000〜20,000mPa・sの範囲内にあることが、本組成物をシール、ポッティング、コーティング、含浸等に使用する際に、硬化物においても適当な物理的特性を有しているので望ましい。当該粘度範囲内で、用途に応じて最も適切な粘度を選択することができる。
【0032】
上記一般式(1)で表される直鎖状ポリフルオロ化合物に含まれるアルケニル基含有量は0.005〜0.100mol/100gが好ましく、更に好ましくは0.008〜0.050mol/100gである。直鎖状フルオロポリエーテル化合物に含まれるアルケニル基含有量が0.005mol/100g以上の場合には、架橋度合いが十分となり硬化不具合が生じる可能性がないため好ましく、アルケニル基含有量が0.100mol/100g以下である場合には、この硬化物のゴム弾性体としての機械的特性が損なわれる恐れがないために好ましい。
【0033】
これらの直鎖状ポリフルオロ化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0034】
[(B)成分]
(B)成分は、下記一般式(6)で表される、一分子中にケイ素原子に直結した水素原子と、酸素原子又は窒素原子を含んでも良い2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合した一価のパーフルオロアルキル基又は一価のパーフルオロオキシアルキル基とを有する環状オルガノポリシロキサンであり、上記(A)成分の架橋剤ないし鎖長延長剤として機能するものである。
【化23】

【0035】
上記一般式(6)中、aは3〜6の整数、好ましくは3〜5の整数、bは1〜4の整数、好ましくは1〜3の整数、a+bは4〜10の整数、好ましくは4〜8の整数である。
【0036】
また、Rは置換又は非置換の一価炭化水素基であり、上述したRの置換又は非置換の一価炭化水素基と同様の基が挙げられる。
【0037】
さらに、Aは酸素原子又は窒素原子を含んでも良い2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合した一価のパーフルオロアルキル基又は一価のパーフルオロオキシアルキル基である。これらは、(A)成分との相溶性、分散性及び硬化後の均一性等の観点から導入される基である。
【0038】
この一価のパーフルオロアルキル基又は一価のパーフルオロオキシアルキル基としては、下記一般式(9)及び(10)で表される基が挙げられる。
2f+1− (9)
(式中、fは1〜10、好ましくは3〜7の整数である。)
【化24】

(式中、gは1〜10の整数、好ましくは2〜8である)
【0039】
また、これら一価のパーフルオロアルキル基又は一価のパーフルオロオキシアルキル基とケイ素原子は、酸素原子又は窒素原子を含んでも良い2価の炭化水素基を介して繋がれており、その2価の連結基としては、炭素原子数が2〜12のアルキレン基、あるいは該基にエーテル結合酸素原子、アミド結合、カルボニル結合等を介在させたものが挙げられ、具体的には、
−CHCH−、
−CHCHCH−、
−CHCHCHOCH−、
−CHCHCH−NH−CO−、
−CHCHCH−N(Ph)−CO−(但し、Phはフェニル基である。)、
−CHCHCH−N(CH)−CO−、
−CHCHCH−O−CO−
等が挙げられる。
【0040】
このような(B)成分としては、例えば下記の化合物が挙げられる。なお、下記式において、Meはメチル基、Phはフェニル基を示す。
【0041】
【化25】

【0042】
【化26】

【0043】
この(B)成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上のものを併用してもよい。
上記(B)成分の配合量は、(A)成分中に含まれるアルケニル基1モルに対して(B)成分中のSiH基(ケイ素原子に直結した水素原子)が0.5〜2.0モル、より好ましくは0.7〜1.5モルとなる量である。SiH基が0.5モルより少ないと、架橋度合が不十分となる結果、硬化物が得られず、また、2.0モルより多いと硬化時に発泡する恐れがある。
【0044】
[(C)成分]
本発明の(C)成分である白金族金属系触媒は、ヒドロシリル化反応触媒である。ヒドロシリル化反応触媒は、組成物中に含有されるアルケニル基、特には(A)成分中のアルケニル基と、組成物中に含有されるSiH基、特には(B)成分中のSiH基との付加反応を促進する触媒である。このヒドロシリル化反応触媒は、一般に貴金属又はその化合物であり、高価格であることから、比較的入手し易い白金又は白金化合物がよく用いられる。
【0045】
白金化合物としては、例えば、塩化白金酸又は塩化白金酸とエチレン等のオレフィンとの錯体、アルコールやビニルシロキサンとの錯体、シリカ、アルミナ、カーボン等に担持した金属白金等を挙げることができる。白金又はその化合物以外の白金族金属系触媒として、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウム系化合物も知られており、例えば、RhCl(PPh33、RhCl(CO)(PPh32、Ru3(CO)12、IrCl(CO)(PPh32、Pd(PPh34等を例示することができる。なお、前記式中、Phはフェニル基である。
【0046】
これらの触媒の使用にあたっては、それが固体触媒であるときには固体状で使用することも可能であるが、より均一な硬化物を得るためには塩化白金酸や錯体を、例えば、トルエンやエタノール等の適切な溶剤に溶解したものを(A)成分の直鎖状ポリフルオロ化合物に相溶させて使用することが好ましい。
【0047】
(C)成分の配合量は、ヒドロシリル化反応触媒としての有効量であり、(A)成分に対して0.1〜500ppm、特に好ましくは0.5〜200ppm(白金族金属原子の質量換算)であるが、希望する硬化速度に応じて適宜増減することができる。
【0048】
[(D)成分]
本発明の(D)成分は、下記一般式(7)で表される、一分子中にケイ素原子に直結した水素原子と、酸素原子又は窒素原子を含んでも良い2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合した一価のパーフルオロアルキル基又は一価のパーフルオロオキシアルキル基と、酸素原子を含んでも良い2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合したエポキシ基とを有する環状オルガノポリシロキサンであり、本発明の組成物に自己接着性を与える接着付与剤である。
【化27】

【0049】
上記一般式(7)中、iは1〜6の整数、好ましくは1〜5の整数、jは1〜4の整数、好ましくは1〜3の整数、kは1〜4の整数、好ましくは1〜3の整数、i+j+kは4〜10の整数、好ましくは4〜8の整数である。
【0050】
また、Rは置換又は非置換の一価炭化水素基であり、上述したRの置換又は非置換の一価炭化水素基と同様の基が挙げられる。
【0051】
さらに、Lは酸素原子又は窒素原子を含んでも良い2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合した一価のパーフルオロアルキル基又は一価のパーフルオロオキシアルキル基であり、上述したAと同様の基が挙げられる。これらは、(A)成分との相溶性、分散性及び硬化後の均一性等の観点から導入される基である。
【0052】
また、Mは酸素原子を含んでも良い2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合したエポキシ基であり、具体的には、下記の基を挙げることができる。
【化28】

(式中、Rは酸素原子が介在してもよい炭素原子数1〜10、特に1〜5の2価炭化水素基で、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等のアルキレン基、シクロへキシレン基等のシクロアルキレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等のオキシアルキレン基などを示す。)
【0053】
Mとして、具体的には、下記に示すものが例示できる。
【化29】

【0054】
このような(D)成分としては、例えば下記の化合物が挙げられる。なお、下記式において、Meはメチル基を示す。
【0055】
【化30】

【化31】

【0056】
この(D)成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上のものを併用してもよい。また、(D)成分の使用量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜10.0質量部、好ましくは0.5〜7.0質量部の範囲である。0.1質量部未満の場合には十分な接着性が得られず、10.0質量部を超えると組成物の流動性が悪くなり、また得られる硬化物の物理的強度が低下する。
【0057】
[(E)成分]
本発明の(E)成分は、下記一般式(8)で表される、一分子中にケイ素原子に直結した水素原子と、酸素原子又は窒素原子を含んでも良い2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合した一価のパーフルオロアルキル基又は一価のパーフルオロオキシアルキル基と、2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合した環状無水カルボン酸残基とを有する環状オルガノポリシロキサンであり、本発明の(D)成分の接着付与能力を向上させて、本発明の組成物の自己接着性発現を促進させるためのものである。
【化32】

【0058】
上記一般式(8)中、xは1〜6の整数、好ましくは1〜5の整数、yは1〜4の整数、好ましくは1〜3の整数、zは1〜4の整数、好ましくは1〜3の整数、x+y+zは4〜10の整数、好ましくは4〜8の整数である。
【0059】
また、Rは置換又は非置換の一価炭化水素基であり、上述したRの置換又は非置換の一価炭化水素基と同様の基が挙げられる。
【0060】
さらに、Qは酸素原子又は窒素原子を含んでも良い2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合した一価のパーフルオロアルキル基又は一価のパーフルオロオキシアルキル基であり、上述したAと同様の基が挙げられる。これらは、(A)成分との相溶性、分散性及び硬化後の均一性等の観点から導入される基である。
【0061】
また、Tは2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合した環状無水カルボン酸残基であり、具体的には、下記に示すものが例示できる。
【化33】

(式中、Rは炭素原子数が2〜12のアルキレン基である。)
【0062】
このような(E)成分としては、例えば下記の化合物が挙げられる。なお、下記式において、Meはメチル基を示す。
【化34】

【0063】
この(E)成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上のものを併用してもよい。
(E)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.01〜5.0質量部であり、0.05〜2.0質量部であることが好ましい。0.01質量部未満の場合は、十分な接着促進効果が得られず、5.0質量部を超えると組成物の保存性が損なわれ、また、得られる硬化物の物理的強度が低下する。
【0064】
[その他の成分]
本発明の光半導体封止用硬化性組成物においては、その実用性を高めるために、上記の(A)〜(E)成分以外にも、可塑剤、粘度調節剤、可撓性付与剤、無機質充填剤、反応制御剤、接着促進剤等の各種配合剤を必要に応じて添加することができる。これら添加剤の配合量は、本発明の目的を損なわない範囲、並びに組成物の特性及び硬化物の物性を損なわない限りにおいて任意である。
【0065】
可塑剤、粘度調節剤、可撓性付与剤として、下記一般式(13)で表されるポリフルオロモノアルケニル化合物及び/又は下記一般式(14)、(15)で表される直鎖状ポリフルオロ化合物を併用することができる。
Rf2−(X’)aCH=CH2 (13)
[式中、X’、aは上記式(1)で説明したものと同じ、Rf2は、下記一般式(16)で表される基である。
【化35】

(式中、f’は1以上の整数、好ましくは1〜100の整数、より好ましくは1〜50の整数、h’は2又は3であり、かつ上記(A)成分のRf1基に関するp+q(平均)及びuとsの和、並びにb〜dの和のいずれの和よりも小さい。)]
【0066】
D−O−(CF2CF2CF2O)c’−D (14)
(式中、DはCb’2b’+1−(b’は1〜3)で表される基であり、c’は1〜200の整数、好ましくは2〜100の整数であり、かつ、前記(A)成分のRf1基に関するp+q(平均)及びuとsの和、並びにb〜dの和のいずれの和よりも小さい。)
D−O−(CF2O)d’(CF2CF2O)e’−D (15)
(式中、Dは上記と同じであり、d’及びe’はそれぞれ1〜200の整数、好ましくは1〜100の整数であり、かつ、d’とe’の和は、上記(A)成分のRf1基に関するp+q(平均)及びuとsの和、並びにb〜dの和のいずれの和よりも小さい。)
【0067】
上記一般式(13)で表されるポリフルオロモノアルケニル化合物の具体例としては、例えば下記のものが挙げられる(なお、下記式中、m2は上記要件を満足するものである)。
【0068】
【化36】

【0069】
上記一般式(14)、(15)で表される直鎖状ポリフルオロ化合物の具体例としては、例えば下記のものが挙げられる(なお、下記n3又はn3とm3の和は、上記要件を満足するものである。)。
CF3O−(CF2CF2CF2O)n3−CF2CF3
CF3−[(OCF2CF2n3(OCF2m3]−O−CF3
(ここで、m3+n3=2〜201、m3=1〜200、n3=1〜200である。)
【0070】
また、上記一般式(13)〜(15)で表されるポリフルオロ化合物の粘度(23℃)は、(A)成分と同様の測定で、5〜100,000mPa・s、特に50〜50,000mPa・sの範囲であることが望ましい。
【0071】
更に、上記一般式(13)〜(15)で表されるポリフルオロ化合物を添加する場合の配合量は、(A)成分100質量部に対して1〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜50質量部である。
【0072】
無機質充填剤としては、例えば、BET法による比表面積が50m2/g以上(通常、50〜400m2/g)、特には100〜350m2/g程度の、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、石英粉末、溶融石英粉末、珪藻土、炭酸カルシウム等の補強性又は準補強性充填剤[(A)成分100質量部に対して0.1〜30質量部、特に1〜20質量部の配合量とすることが好ましい]、酸化チタン、酸化鉄、アルミン酸コバルト等の無機顔料、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック、酸化セリウム、水酸化セリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸マンガン等の耐熱向上剤、アルミナ、窒化硼素、炭化ケイ素、金属粉末等の熱伝導性付与剤等を添加することができる。
【0073】
ヒドロシリル化反応触媒の制御剤の例としては、1−エチニル−1−ヒドロキシシクロヘキサン、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、フェニルブチノール等のアセチレン性アルコールや、上述したAと同様の一価のパーフルオロアルキル基又は一価のパーフルオロオキシアルキル基を有するクロロシランとアセチレン性アルコールとの反応物、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン、トリアリルイソシアヌレート等、あるいはポリビニルシロキサン、有機リン化合物等が挙げられ、その添加により硬化反応性と保存安定性を適度に保つことができる。
【0074】
本発明の光半導体封止用硬化性組成物の製造方法は特に制限されず、上記(A)〜(E)成分及びその他の任意成分を練り合わせることにより製造することができる。その際、必要に応じて、プラネタリーミキサー、ロスミキサー、ホバートミキサー等の混合装置、ニーダー、三本ロール等の混練装置を使用することができる。
【0075】
本発明の光半導体封止用硬化性組成物の構成に関しては、用途に応じて上記(A)〜(E)成分及びその他の任意成分全てを1つの組成物として取り扱う、いわゆる1液タイプとして構成してもよいし、あるいは、2液タイプとし、使用時に両者を混合するようにしてもよい。
【0076】
本発明の光半導体封止用硬化性組成物は、加熱することにより硬化して、高い透明性を備え、且つポリフタル酸アミド(PPA)や液晶ポリマー(LCP)等のパッケージ材料や金属基板に非常によく接着するため、LED、流用ダイオード、LSI、有機EL等の光半導体素子などを保護する封止材として有用である。該光半導体封止用硬化性組成物の硬化温度は特に制限されないが、通常20〜250℃、好ましくは、40〜200℃である。また、その場合の硬化時間は架橋反応及び各種半導体パッケージ材料との接着反応が完了する時間を適宜選択すればよいが、一般的には10分〜10時間が好ましく、30分〜8時間がより好ましい。
【0077】
また、本発明の組成物を2mm厚のシート状に硬化して得られる硬化物における、450nmの直線光の透過率は80%以上であることが好ましく、85%以上がより好ましい。該透過率が80%以上の場合、本発明の組成物を硬化して得られる硬化物により上記光半導体素子が封止された光半導体装置の光取り出し効率が低下してしまう恐れがないために好ましい。
【0078】
さらに、本発明の組成物を硬化して得られる硬化物の、25℃,589nm(ナトリウムのD線)での屈折率は、1.30〜1.39であることが好ましい。該屈折率が、この範囲内である場合、本発明の組成物を硬化して得られる硬化物により上記光半導体素子が封止された光半導体装置の光取り出し効率は、該光半導体装置の設計によって低下してしまう恐れがないために好ましい。
【0079】
なお、本発明の組成物を使用するに当たり、その用途、目的に応じて該組成物を適当なフッ素系溶剤、例えば1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、フロリナート(3M社製)、パーフルオロブチルメチルエーテル、パーフルオロブチルエチルエーテル等に所望の濃度に溶解して使用してもよい。
【0080】
本発明の光半導体封止用硬化性組成物を使用することができる光半導体装置は、特に限定されず、公知の光半導体装置であってよい。本発明の光半導体装置は、光半導体素子と、光半導体素子を封止するための、上記本発明の光半導体封止用硬化性組成物を硬化して得られる硬化物とを有するものであり、代表的な断面構造を図1及び図2に示す。
【0081】
図1の光半導体装置(発光装置)10では、第一のリードフレーム2の先端部2aに、その底面から上方に向かって孔径が徐々に広がるすり鉢状の凹部2’を設け、該凹部2’の底面上にLEDチップ1を銀ペースト等を介してダイボンドにより接続固定し、これによって、第一のリードフレーム2とLEDチップ1底面の一方の電極(図示せず)とを電気的に接続している。また、第二のリードフレーム3の先端部3aと、該LEDチップ1上面の他方の電極(図示せず)とをボンディングワイヤ4を介して電気的に接続して成る。
【0082】
さらに、前記凹部2’において、LEDチップ1は封止部材5により被覆されている。
【0083】
また、LEDチップ1、第一のリードフレーム2の先端部2a及び端子部2bの上端、第二のリードフレーム3の先端部3a及び端子部3bの上端は、先端に凸レンズ部6を有する透光性樹脂部7によって被覆・封止されている。また、第一のリードフレーム2の端子部2bの下端及び第二のリードフレーム3の端子部3bの下端は、透光性樹脂部7の下端部を貫通して外部へ突出されている。
【0084】
図2の光半導体装置(発光装置)10’では、パッケージ基板8の上部に、その底面から上方に向かって孔径が徐々に広がるすり鉢状の凹部8’を設け、該凹部8’の底面上にLEDチップ1をダイボンド材により接着固定し、またLEDチップ1の電極は、ボンディングワイヤ4により、パッケージ基板8に設けられた電極9と電気的に接続されている。
【0085】
さらに、凹部8’において、LEDチップ1は封止部材5により被覆されている。
【0086】
ここで、上記LEDチップ1には、特に限定なく、従来公知のLEDチップに用いられる発光素子を用いることができる。このような発光素子としては、例えば、MOCVD法、HDVPE法、液相成長法といった各種方法によって、必要に応じてGaN、AlN等のバッファー層を設けた基板上に半導体材料を積層して作製したものが挙げられる。この場合の基板としては、各種材料を用いることができるが、例えばサファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO、GaN単結晶等が挙げられる。これらのうち、結晶性の良好なGaNを容易に形成でき、工業的利用価値が高いという観点からは、サファイアを用いることが好ましい。
【0087】
積層される半導体材料としては、GaAs、GaP、GaAlAs、GaAsP、AlGaInP、GaN、InN、AlN、InGaN、InGaAlN、SiC等が挙げられる。これらのうち、高輝度が得られるという観点からは、窒化物系化合物半導体(InxGayAlzN)が好ましい。このような材料には付活剤等が含まれていてもよい。
【0088】
発光素子の構造としては、MIS接合、pn接合、PIN接合を有するホモ接合、ヘテロ接合やダブルへテロ構造等が挙げられる。また、単一あるいは多重量子井戸構造とすることもできる。
【0089】
発光素子にはパッシベーション層を設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0090】
発光素子の発光波長は紫外域から赤外域まで種々のものを用いることができるが、主発光ピーク波長が550nm以下のものを用いた場合に特に本発明の効果が顕著である。
【0091】
用いる発光素子は1種類で単色発光させてもよいし、複数用いて単色あるいは多色発光させてもよい。
【0092】
発光素子には従来知られている方法によって電極を形成することができる。
【0093】
発光素子上の電極は種々の方法でリード端子等と電気接続できる。電気接続部材としては、発光素子の電極とのオーミック性機械的接続性等がよいものが好ましく、例えば、図1及び図2に記載したような、金、銀、銅、白金、アルミニウムやそれらの合金等を用いたボンディングワイヤ4が挙げられる。また、銀、カーボン等の導電性フィラーを樹脂で充填した導電性接着剤等を用いることもできる。これらのうち、作業性が良好であるという観点からは、アルミニウム線あるいは金線を用いることが好ましい。
【0094】
なお、上記第一のリードフレーム2及び第二のリードフレーム3は、銅、銅亜鉛合金、鉄ニッケル合金等により構成される。
【0095】
さらに、上記透光性樹脂部7を形成する材料としては、透光性を有する材料であれば特に限定されるものではないが、主にエポキシ樹脂やシリコーン樹脂が用いられる。
【0096】
また、上記パッケージ基板8は種々の材料を用いて作製することができ、例えば、ポリフタル酸アミド(PPA)、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、ABS樹脂、BTレジン、セラミック等が挙げられる。これらのうち、耐熱性、強度及びコストの観点から、特にポリフタル酸アミド(PPA)が好ましい。さらに、上記パッケージ基板8には、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム等の白色顔料などを混合して、光の反射率を向上させることが好ましい。
【0097】
次に、LEDチップ1を被覆する封止部材5は、上記LEDチップ1からの光を効率よく外部に透過させると共に、外力、埃などから上記LEDチップ1やボンディングワイヤ4などを保護するものである。封止部材5として、本発明の組成物を用いる。封止部材5は、蛍光物質や光拡散部材などを含有してもよい。
【0098】
本発明の光半導体封止用硬化性組成物は、硬化物が良好な透明性を有するため、該組成物を用いて光半導体素子が封止された本発明の光半導体装置10、10’は、良好な光取り出し効率を有する。
【実施例】
【0099】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において部は質量部を示し、Meはメチル基を示す。また、粘度は23℃における測定値を示す(JIS K6249に準拠)。
【0100】
(実施例1)
下記式(16)で示されるポリマー(粘度 4010mPa・s、ビニル基量0.030モル/100g)100部に、下記式(17)で示される環状オルガノポリシロキサン(SiH基量0.00394モル/g)7.6部、下記式(18)で示される環状オルガノポリシロキサン2.0部、下記式(19)で示される環状オルガノポリシロキサン0.50部、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金濃度0.5質量%)0.05部を順次添加し、均一になるように混合した。その後、脱泡操作を行うことにより組成物を調製した。
【化37】

【0101】
(実施例2)
上記実施例1において、上記式(17)で示される環状オルガノポリシロキサンの代わりに、下記式(20)で示される環状オルガノポリシロキサン6.0部を添加した以外は実施例1と同様に組成物を調製した。
【化38】

【0102】
(実施例3)
上記実施例1において、上記式(18)で示される環状オルガノポリシロキサンの代わりに、下記式(21)で示される環状オルガノポリシロキサン4.0部を添加した以外は実施例1と同様に組成物を調製した。
【化39】

【0103】
(実施例4)
上記実施例1において、上記式(18)で示される環状オルガノポリシロキサンの代わりに、下記式(22)で示される環状オルガノポリシロキサン3.0部を添加した以外は実施例1と同様に組成物を調製した。
【化40】

【0104】
(実施例5)
上記実施例1において、上記式(18)で示される環状オルガノポリシロキサンの代わりに、下記式(23)で示される環状オルガノポリシロキサン4.0部を添加した以外は実施例1と同様に組成物を調製した。
【化41】

【0105】
(実施例6)
上記実施例1において、上記式(19)で示される環状オルガノポリシロキサンの代わりに、下記式(24)で示される環状オルガノポリシロキサン0.05部を添加した以外は実施例1と同様に組成物を調製した。
【化42】

【0106】
(比較例1)
上記実施例1において、上記式(17)で示される環状オルガノポリシロキサンの代わりに、下記式(25)で示される直鎖状オルガノポリシロキサン(SiH基量0.00727モル/g)4.1部を添加した以外は実施例1と同様に組成物を調製した。
【化43】

【0107】
(比較例2)
上記実施例1において、上記式(18)で示される環状オルガノポリシロキサンの代わりに、下記式(26)で示される直鎖状オルガノポリシロキサン5.0部を添加した以外は実施例1と同様に組成物を調製した。
【化44】

【0108】
(比較例3)
上記実施例1において、上記式(19)で示される環状オルガノポリシロキサンの代わりに、下記式(27)で示される直鎖状オルガノポリシロキサン2.0部を添加した以外は実施例1と同様に組成物を調製した。
【化45】

【0109】
各組成物について、以下の項目の評価を行った。尚、硬化条件は150℃×5時間である。結果を表1に示す。
【0110】
1.外観:2mm厚のシート状硬化物を作製し、その外観を目視観察した。
【0111】
2.光透過率:2mm厚のシート状硬化物を作製し、日立製作所社製U−3310形分光光度計を用いて450nmの直線光の透過率(%)を測定した。
【0112】
3.屈折率:2mm厚のシート状硬化物を作製し、アタゴ社製多波長アッベ屈折計DR−M2/1550を用いて、25℃における589nm(ナトリウムのD線)に対する屈折率を測定した。
【0113】
4.ポリフタル酸アミド(PPA)に対する接着性:PPAの100mm×25mmのテストパネル2枚をそれぞれの端部が10mmずつ重複するように、厚さ80μmの上記で得た各組成物の層を挟んで重ね合わせ、150℃で5時間加熱することにより該組成物を硬化させ、接着試験片を作製した。次いで、この試験片について引張剪断接着試験(引張速度50mm/分)を行い、接着強度(剪断接着力)及び凝集破壊率を評価した。
【0114】
5.光半導体装置の光度:図2の実施の形態と同様の構成を持った光半導体装置において、封止部材5を形成するため上記で得た各組成物を、青色(450nm)発光可能なLEDチップ1が浸漬するように、凹部8’に注入し、150℃にて5時間加熱することにより、LEDチップ1を各組成物の硬化物で封止した光半導体装置を作製した。そして該光半導体装置を定格で点灯させ、光度を測定した。結果を、実施例1の光度を1.00とした相対値で示す。
【0115】
【表1】

【0116】
表1の結果より、上記(A)〜(E)成分を全て含有する本発明の光半導体封止用硬化性組成物(実施例1〜6)を硬化して得られる硬化物は、比較例1〜3に比べて、良好な透明性を有し、これにより光半導体素子が封止された光半導体装置は、良好な光取り出し効率を有することが判った。
【0117】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に含有される。
【符号の説明】
【0118】
1…LEDチップ、 2…第一のリードフレーム、 2a…第一のリードフレームの先端部、 2b…第一のリードフレームの端子部、 2’…凹部、 3…第二のリードフレーム、 3a…第二のリードフレームの先端部、 3b…第二のリードフレームの端子部、 4…ボンディングワイヤ、 5…封止部材、 6…凸レンズ部、 7…透光性樹脂部、 8…パッケージ基板、 8’…凹部、 9…電極、 10、10’…光半導体装置。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)
CH=CH−(X)−Rf−(X’)−CH=CH (1)
[式中、Xは−CH−、−CHO−、−CHOCH−、及び−Y−NR−CO−(Yは−CH−又は下記構造式(2)
【化1】

で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基、Rは水素原子、又は非置換もしくは置換の1価炭化水素基)のいずれかで表される基、X’は−CH−、−OCH−、−CHOCH−、及び−CO−NR−Y’−(Y’は−CH−又は下記構造式(3)
【化2】

で示されるo,m又はp−ジメチルシリルフェニレン基、Rは上記と同じ基である。)のいずれかで表される基であり、aは独立に0又は1である。Rfは下記一般式(4)又は(5)
【化3】

(式中、p及びqはそれぞれ1〜150の整数であって、かつpとqの和の平均は2〜300である。また、rは0〜6の整数、tは2又は3である。)
【化4】

(式中、uは1〜300の整数、sは1〜80の整数、tは上記と同じである。)
で表される2価のパーフルオロポリエーテル基である。]
で表される直鎖状ポリフルオロ化合物:100質量部、
(B)下記一般式(6)で表される、一分子中にケイ素原子に直結した水素原子と、酸素原子又は窒素原子を含んでも良い2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合した一価のパーフルオロアルキル基又は一価のパーフルオロオキシアルキル基とを有する環状オルガノポリシロキサン:(A)成分のアルケニル基1モルに対してケイ素原子に直結した水素原子が0.5〜2.0モルとなる量、
【化5】

(式中、aは3〜6の整数、bは1〜4の整数、a+bは4〜10の整数、Rは置換又は非置換の一価炭化水素基、Aは酸素原子又は窒素原子を含んでも良い2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合した一価のパーフルオロアルキル基又は一価のパーフルオロオキシアルキル基である。)
(C)白金族金属系触媒:白金族金属原子換算で0.1〜500ppm、
(D)下記一般式(7)で表される、一分子中にケイ素原子に直結した水素原子と、酸素原子又は窒素原子を含んでも良い2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合した一価のパーフルオロアルキル基又は一価のパーフルオロオキシアルキル基と、酸素原子を含んでも良い2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合したエポキシ基とを有する環状オルガノポリシロキサン:0.1〜10.0質量部、
【化6】

(式中、iは1〜6の整数、jは1〜4の整数、kは1〜4の整数、i+j+kは4〜10の整数、Rは置換又は非置換の一価炭化水素基、Lは酸素原子又は窒素原子を含んでも良い2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合した一価のパーフルオロアルキル基又は一価のパーフルオロオキシアルキル基、Mは酸素原子を含んでも良い2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合したエポキシ基である。)
(E)下記一般式(8)で表される、一分子中にケイ素原子に直結した水素原子と、酸素原子又は窒素原子を含んでも良い2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合した一価のパーフルオロアルキル基又は一価のパーフルオロオキシアルキル基と、2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合した環状無水カルボン酸残基とを有する環状オルガノポリシロキサン:0.01〜5.0質量部、
【化7】

(式中、xは1〜6の整数、yは1〜4の整数、zは1〜4の整数、x+y+zは4〜10の整数、Rは置換又は非置換の一価炭化水素基、Qは酸素原子又は窒素原子を含んでも良い2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合した一価のパーフルオロアルキル基又は一価のパーフルオロオキシアルキル基、Tは2価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合した環状無水カルボン酸残基である。)
を含有するものであることを特徴とする光半導体封止用硬化性組成物。
【請求項2】
硬化後の2mm厚の硬化物における、波長450nmの直線光の透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1に記載の光半導体封止用硬化性組成物。
【請求項3】
硬化後の硬化物の25℃,589nm(ナトリウムのD線)での屈折率が1.30〜1.39であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光半導体封止用硬化性組成物。
【請求項4】
前記(A)成分の直鎖状ポリフルオロ化合物のアルケニル基含有量が、0.005〜0.100mol/100gであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の光半導体封止用硬化性組成物。
【請求項5】
前記(B)成分、(D)成分及び(E)成分の各環状オルガノポリシロキサンが有する、一価のパーフルオロアルキル基又は一価のパーフルオロオキシアルキル基は、それぞれ下記一般式(9)又は一般式(10)で表されるものであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の光半導体封止用硬化性組成物。
2f+1− (9)
(式中、fは1〜10の整数である。)
【化8】

(式中、gは1〜10の整数である)
【請求項6】
光半導体素子と、該光半導体素子を封止するための、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の光半導体封止用硬化性組成物を硬化して得られる硬化物とを有する光半導体装置。
【請求項7】
前記光半導体素子が、発光ダイオードであることを特徴とする請求項6に記載の光半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−79325(P2013−79325A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219927(P2011−219927)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】