光半導体装置及びそれを備えた光ピックアップ装置
【課題】合焦ずれ量を所定値に設定することができ、かつ、ジッタ及びビットエラーレートの悪化を防止でき、さらに、光ピックアップ装置の部品コスト及び組立調整コストが高くなるのを防止できる光半導体装置を提供する。
【解決手段】受光素子6は光電変換するための光入射面を有する。受光素子6上には屈折率可変部7が配置され、受光素子6の光入射面に屈折率可変部7が接している。屈折率可変部7の屈折率を可変することにより、受光素子6の光入射面に入射する光の屈折率可変部7の光路長を調整することができる。
【解決手段】受光素子6は光電変換するための光入射面を有する。受光素子6上には屈折率可変部7が配置され、受光素子6の光入射面に屈折率可変部7が接している。屈折率可変部7の屈折率を可変することにより、受光素子6の光入射面に入射する光の屈折率可変部7の光路長を調整することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号を電気信号に変換する受光部を備えた光半導体装置と、光記録媒体に対して、情報の再生、消去及び記録の少なくとも1つを行う光ピックアップ装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置に搭載された光ピックアップ装置は、CD(コンパクトディスク)やDVD(デジタル万能ディスク)等の光記録媒体へ向けて半導体レーザからレーザ光を出射し、その光記録媒体によって反射されたレーザ光を受光素子で受光する。
【0003】
近年、光ディスク装置の小型化・高性能化に対応するため、光ピックアップ装置の受光素子等を集積化したものが提案されたり、光ディスク装置の組立調整の簡易化に対応するため、光ピックアップ装置の受光素子の表面における光スポットの形状及び位置を調整できる機構を光ピックアップ装置内に設けたものが提案されている。
【0004】
例えば特許文献1(特開平9−162436号公報)では、光電変換信号を処理する回路を内蔵した受光素子が提案されている。また、特許文献2(特開平1−151022号公報)では、上記特許文献1のような受光素子を搭載して小型化及び集積化された光ピックアップ装置が提案されている。そして、特許文献3(特開平6−131689号公報)では、光記録媒体と受光素子との間の光路上に屈折率可変部が配置された光ピックアップ装置が提案されている。
【0005】
従来の光ピックアップ装置としては図10に示すようなものがある(例えば特許文献2参照)。この光ピックアップ装置は、CD及びCD−ROM(読み出し専用コンパクトディク)用の光ピックアップ装置で、半導体レーザ1、回折素子2、コリメートレンズ3、対物レンズ4及び受光素子6を備えている。回折素子2のコリメートレンズ3側の表面には回折格子2aが設けられ、回折素子2の半導体レーザ1側の表面には回折格子2bが設けられている。回折格子2aは受光素子6に向けて復路光(光ディスク5で反射されたレーザ光)を回折するためのもので、回折格子2bは半導体レーザ1から出射された往路光(光ディスク5へ向かうレーザ光)を3ビームに分割するためのものである。半導体レーザ1及び受光素子6は、図示していないステムに搭載され、ステムには図示していないキャップが搭載され、キャップには回折素子2が搭載されている。このステム、キャップ、半導体レーザ1、受光素子6及び回折素子2が一つにユニット化されて光集積ユニットを構成している。
【0006】
半導体レーザ1から出射された往路光は、回折格子2bを通って0次回折光(以下メインビームと称す)及び±1次回折光(以下サブビームと称す)の3ビームに分割される。回折格子2bにより生成された3ビームは全て回折格子2aを通り、コリメートレンズ3に到達する。コリメートレンズ3により3ビームの往路光は平行光となった後、対物レンズ4により光ディスク5の情報記録面へと集光される。これにより、上記往路光は光ディスク5により反射されて復路光となる。この復路光は、対物レンズ4、コリメートレンズ3を通って回折格子2aに入射し、さらに回折格子2aにより回折された+1次光のみ受光素子6へと入射し、光ディスク5の情報信号を受光素子6にて検出できる。
【0007】
図11は、回折格子2a及び受光素子6を上方から見た配置関係を表す平面図である。回折格子2aは、回折格子間隔の異なる2つの領域A、領域Bを備えており、領域毎に復路光の回折角を変えている。領域Aと領域Bとの境界線である分割線Cはほぼラジアル方向(x方向)に平行であり、領域Aと領域Bの格子方向はほぼタンジェンシャル方向(y方向)に平行である。光ディスク5から反射された復路光が回折格子2aに入射する際、復路光のメインビームのほぼ中心軸が分割線Cと交差するように、回折素子2が配置されている。また、回折格子2aの領域A及び領域Bに入射したメインビーム及びサブビームはそれぞれ受光素子6に向けて回折される。
【0008】
受光素子6は、メインビーム及びサブビームが回折格子2aの領域A及び領域Bにより回折された光ビームをそれぞれ受光するために、5つの受光エリア部D1〜D5を有している。領域Aにより回折されたメインビームは、受光エリア部D2と受光エリア部D3との境界線に入射する。領域Bにより回折されたメインビームは、受光エリア部D4に入射する。領域A及び領域Bにより回折されたサブビームはそれぞれ受光エリア部D1,D5に入射する。
【0009】
対物レンズ4は図示しないアクチュエータに搭載され、フォーカス方向(光ディスク5の情報記録面に対して垂直方向)とラジアル方向に移動させることができる。
【0010】
受光素子6の受光エリア部D1〜D5に入射する光信号から得た電気信号をそれぞれS1〜S5とすると、フォーカスエラー信号(以下FESと略す)は、
FES=S2−S3
で与えられ、対物レンズ4から出射されたメインビームの集光スポットを光ディスク5の情報記録面に追随させることができる(以下フォーカスサーボと称す)。
【0011】
一方、ラジアルエラー信号(以下「RES」と略す)は、
RES=S1−S5
で与えられ、対物レンズ4から出射したメインビームの集光スポットを光ディスク5のトラックに追随させることができる(以下ラジアルサーボと略す)。
【0012】
さらに、再生信号(以下RFと略す)は、メインビームによる出力電気信号の総和
RF=S2+S3+S4
で与えられる。これにより、フォーカスサーボ及びラジアルサーボにより対物レンズ4から出射された集光スポットが光ディスク5のトラックを追随することで、光ディスク5の情報信号を再生することができる。
【0013】
また、受光素子6は、温度変化による半導体レーザ1の波長変化、さらに回折素子2の回折角の変化による受光エリア部D2,D3上での復路光スポットの位置の移動により合焦ずれが発生するのを防ぐために、受光エリア部D2と受光エリア部D3との境界線は僅かに傾斜している。
【0014】
上記光ピックアップ装置内の光集積ユニットの組立は、半導体レーザ1、受光素子104は図示しないステムに固定され、図示しないステムの端子部に金線等でワイヤーボンドされ、半導体レーザ1と受光素子104とを図示しないキャップにてシールし、最後にキャップの上方に回折素子2を固定し完成する。但し、上記光集積ユニット内の回折素子2の位置調整は、半導体レーザ1からの出射光が、コリメートレンズ3及び対物レンズ4を通り、光ディスク5により反射し、再度対物レンズ4及びコリメートレンズ3を通って、さらに回折素子2により回折された光を受光素子6により受光し、受光素子6により変換された電気信号をモニターしながら行われる。その際、回折素子2はキャップに常に接して移動するため、回折素子2の移動方向はXY平面内の水平移動と回転移動に限定され、受光素子6から得られる電気信号をモニターしながらより良い特性の信号が得られるように水平移動と回転移動とを繰り返し、受光エリア部D2と受光エリア部D3との境界線上に光スポットが形成されるようにする。
【0015】
次に、上記受光素子6について説明する。この受光素子6としては、光電変換信号を処理する回路を内蔵した回路内蔵受光素子ものがある(例えば特許文献1参照)。
【0016】
図15は、図11のXV−XV線から見た断面図である。より詳しくは、図15は、受光素子6の受光エリア部D2,D3の断面構造を示す断面図である。受光素子6は、P型半導体基板6a、N型エピタキシャル層6b、P型分離拡散層6c、P型埋め込み拡散層6d、N型埋め込み拡散層6e及びP型拡散層6fからなる複数の受光エリア部が形成されている。受光エリア部D1〜D5が形成されている領域では、反射防止膜となる窒化膜6gがP型拡散層6f上に形成されている一方、受光エリア部D1〜D5が形成されていない領域では、図示しない酸化膜がP型拡散層6f上に形成されている。また、図示しないが、窒化膜6g及び上記酸化膜には開口が形成され、この開口を埋めるように電極配線が形成されている。また、窒化膜6g上には遮光膜となる金属膜6hが形成されている。
【0017】
受光素子6は、P型半導体基板6a及びN型エピタキシャル層6bの比抵抗を高くして、受光エリア部D1〜D5に逆バイアスが印加されると、空乏層がN型エピタキシャル層6bとP型拡散層6fとの接合面からN型埋め込み拡散層6eに接する程度に広がり、応答速度が速くなっている。
【0018】
しかし、上記従来の光ピックアップ装置では、受光素子6上の受光エリア部D2と受光エリア部D3との境界線のほぼ中央上に微小な光スポットを形成する必要があるため、各部品の外形寸法や組立調整に高い精度が要求されていた。特に、半導体レーザ1、回折素子2及び受光素子6の配置は、受光素子6の受光エリア部D1〜D5で形成される光スポットの位置及び形状に与える影響が大きいため、外形寸法及び組立調整の公差を極めて小さくする必要があり、部品コスト及び組立調整コストが高くなるといった課題があった。
【0019】
例えば、半導体レーザ1の発光点と受光素子6の表面との間の距離dに公差が入った場合について説明する。この公差は、受光素子6の厚み公差、受光素子6と図示しないステムとの間の接着材の厚み公差、半導体レーザ1のステムへのZ方向ダイボンド位置公差により生じる。
【0020】
図12A,図13A,図14Aは、図10の光ピックアップ装置の半導体レーザ1から回折格子2aに至るまでの模式断面図であり、図12B,図13B,図14Bは、受光素子6の受光エリア部D1〜D5で形成される光スポットを表した受光素子6の上面図であり、図12C,図13C,図14Cは、受光素子6により検出されるFESを表した説明図であり、図12D,図13D,図14Dは、フォーカスオフセットに対するジッタの特性を表した説明図であり、図12E,図13E,図14Eは、フォーカスオフセットに対するビットエラーレート(以下BERと略す)の特性を表した説明図である。また、図12A〜図12E、図13A〜図13E及び図14A〜図14Eでは、公差の無い設計値中心条件(d=d0)を条件1とし、距離dがd0より短くなった時の公差条件(d=d1)を条件2とし、距離dがd0より長くなった時の公差条件(d=d2)を条件3としている。
【0021】
まず、条件1では、図12Aに示すように、上記往路光を光ディスク5の情報記録面に合焦させたとき、図12Bに示すように、受光エリア部D2と受光エリア部D3との境界線の中央上に形成される光スポット15aは最も小さくほぼ点状となる。このとき、図12C示すように、FES曲線16aは正成分と負成分が等しくなる。さらに、図12D及び図12Eに示すように、フォーカスサーボON(オン)状態で得られたフォーカスオフセット―ジッタ特性曲線(以下ジッタ曲線と略す)17aおよびフォーカスオフセット―BER特性曲線(以下BER曲線と略す)18aは、フォーカスオフセット「0」を通る直線に関して左右対称の放物線に近い曲線となる(実際には頂点付近が若干フラットに近い形状の曲線となる)。
【0022】
次に、条件2及び条件3では、図13A,図14Aに示すように、半導体レーザ1の発光点と受光素子6との間の距離d1,d2が設計値d0からずれているため、図13B,図14Bに示すように、受光素子6の受光エリア部D1〜D5で形成される光スポット15b,15cはX方向に位置がずれ、半円状の非集光状態となる。このとき、X方向の位置ずれについては回折素子2の水平移動及び回転移動調整にて補正して合焦ずれの発生を防ぐが、受光素子6の受光エリア部D1〜D5で形成される光スポットが非合焦状態であるために、図13C,図14Cに示すように、FES曲線16b,16cの正成分と負成分とがアンバランスとなる。そのため、図13D,図14Dに示すように、ジッタ曲線17b,17cの頂点でのジッタ値(以下ジッタボトム値と略す)J1,J2は、上記の通り回折素子2の水平移動及び回転移動調整により発生する合焦ずれを補正するため、条件1のジッタボトム値J0よりも大きくなる。また、FES曲線16b,16cの正もしくは負成分のどちらか振幅の小さい方向にフォーカスオフセットを印加したときのジッタの増加率が大きくなるため、ジッタ曲線17b,17cはフォーカスオフセット「0」を通る直線に関して左右非対称となる。同様に、図13E,図14Eに示すように、BER曲線18b,18cの頂点のBER値(以下BERボトム値と略す)EB1,EB2は、条件1のBERボトム値EB0よりも大きくなる。また、BER曲線18b,18cはフォーカスオフセット「0」を通る直線に関して左右非対称となる。このとき、光ピックアップ装置の図示しない後段の信号処理部のビットエラー訂正可能なBERのしきい値ET以下のフォーカスオフセット幅は、条件1の時のf0に比べて狭いf1及びf2となり、フォーカスオフセットの許容量が少なくなる。
【0023】
図12A〜図12E、図13A〜図13E及び図14A〜図14Eで示したことは一例であり、他に回折素子2のZ方向寸法、回折素子2を搭載する図示しないキャップの高さ及び回折素子2とキャップ間の接着材厚み等の公差の発生により上記と同様の現象が現れる場合があり、上述した複数因子の公差が組み合わさることでさらにフォーカスオフセットに対するジッタ及びBERが悪化することになる。
【0024】
また、図12A〜図12E、図13A〜図13E及び図14A〜図14Eでは、合焦ずれが発生しないように回折素子2の位置調整を行った場合について説明を行ったが、実際には他の因子の公差も含むため、受光エリア部D2と受光部エリア部D3との境界線上に形成されるべき光スポットが、その境界線よりも受光エリア部D2もしくは受光エリア部D3のどちらかの方向に偏るために合焦ずれが生じることが多い。特に、合焦ずれに対して影響の大きい回折素子2のXY平面内での回転調整を極めて高精度で行い、合焦ずれの発生を最小限にしている。しかし、各部品の外形寸法誤差及び組立調整誤差を含むために合焦ずれの発生を皆無にすることはできず、合焦ずれが所定値よりも大きくなるものも若干含み、不良品と判定されてしまう。
【0025】
また、合焦ずれが所定値内でも、FES曲線の正及び負成分のバランスが崩れ、ジッタ曲線及びBER曲線が、フォーカスオフセット「0」を通る直線に関して左右非対称となると共に、ジッタボトム値及びBERボトム値が大きくなる等、ジッタ及びBERのフォーカスオフセットに対する許容量が少なくなり、光ピックアップ装置としての、所定の性能が得られないものが発生し、不良品として判定されているものもが生じてしまう。
【0026】
他の従来の光ピックアップ装置としては図16に示すようなものがある(例えば特許文献3参照)。図16は、この光ピックアップ装置の部品構成図である。この光ピックアップ装置は、半導体レーザ101、コリメートレンズ103、対物レンズ104、偏光ビームスプリッタ120、1/4波長板121、受光素子用集光レンズ122、ナイフエッジプリズム123、受光素子124a,124b及び屈折率可変プレート125を備えている。
【0027】
上記構成の光ピックアップ装置によれば、半導体レーザ101が出射した出射光は、コリメートレンズ103により平行光にされ、偏光ビームスプリッタ120と1/4波長板121を通って円偏光となって、対物レンズ104により光ディスク105上に集光される。そして、光ディスク105による上記出射光の反射光は、再び対物レンズ104及び1/4波長板121を通って、直線偏光となって、偏光ビームスプリッタ120により反射され、光路が90°変更される。ビームスプリッタ120で反射された光は、受光素子用集光レンズ122により集光され、さらにナイフエッジプリズム123により2分割される。2分割された光のうちの一方は受光素子124aに入射し、2分割された光のうちの他方は受光素子124bに入射する。これにより、各受光素子124a,124b内の図示していない分割された受光エリア部にて電気信号として光ディスクによる上記反射光を検出することができる。
【0028】
また、上記電気信号からFES及びRESを生成することにより、フォーカスサーボ制御及びラジアルサーボ制御を行え、光ディスク105の情報記録面のトラックに光スポットを追随させることができる。
【0029】
さらに、受光素子用集光レンズ122とナイフエッジプリズム123との間に屈折率可変プレート125が挿入されているから、例えば受光素子用集光レンズ122から受光素子124a,124bまでの距離が所定の距離でない場合、屈折率可変プレートの屈折率を変化させ受光素子124a,124bに集光される光スポット径が所定の大きさになるように調整したり、受光素子124a,124bに集光される光スポットが所定の位置でない場合、屈折率可変プレートの屈折率を変化させて、上記光スポットが所定位置に集光するように調整したりすることができる。
【0030】
しかし、図16の光ピックアップ装置では、図10の光ピックアップ装置と比較しても、部品点数が多いために光ピックアップ装置が大型化するばかりか、搭載した屈折率可変プレート125を独立して配置するためにさらに大型化はもちろん、受光素子124a,124b受光エリア部で形成される光スポットの位置及び光スポット径が光軸に対する屈折率可変プレート125の傾きによる影響が極めて大きく、屈折率可変プレート125の組立調整が極めて難しいといった問題がある。
【特許文献1】特開平9−162436号公報
【特許文献2】特開平1−151022号公報
【特許文献3】特開平6−131689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
そこで、本発明の課題は、合焦ずれ量を所定値に設定することができ、かつ、ジッタ及びBERの悪化を防止でき、さらに、光ピックアップ装置の部品コスト及び組立調整コストが高くなるのを防止できる光半導体装置を提供することにある。
【0032】
また、本発明の他の課題は、そのような光ピックアップ装置を備えた光ピックアップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上記課題を解決するため、第1の発明の光半導体装置は、
光電変換するための光入射面を有する受光部と、
上記光入射面に接するように配置された屈折率可変部と
を備え、
上記屈折率可変部の屈折率を可変することにより、上記光入射面に入射する光の上記屈折率可変部の光路長を調整することを特徴としている。
【0034】
上記構成の光半導体装置と例えば半導体レーザとを光ピックアップ装置に搭載する場合、上記屈折率可変部の屈折率を可変することにより、光入射面に入射する光の屈折率可変部の光路長を調整するから、合焦ずれ量を所定値に設定することができ、ジッタ及びBERの悪化を防止できる。
【0035】
また、上記屈折率可変部を備えていることにより、光半導体装置及び半導体レーザ半導体レーザの外形寸法や組立調整の公差を許容できるので、光ピックアップ装置の部品コスト及び組立調整コストが高くなるのを防止できる。
【0036】
また、上記屈折率可変部を受光部の光入射面に接するように配置するから、光ピックアップ装置を小型化できると共に、屈折率可変部の組立調整を簡単にすることができる。
【0037】
一実施形態の光半導体装置では、上記屈折率可変部は、液晶と、上記液晶を挟む透明基板と、上記液晶に電圧を加えるための透明電極と
を少なくとも有する。
【0038】
一実施形態の光半導体装置では、上記屈折率可変部は、上記透明基板上に配置された偏光板を有する。
【0039】
第2の発明の光ピックアップ装置は、
半導体レーザと、上記半導体レーザが出射した出射光を光記録媒体に集光するための光学系とを少なくとも備えた光ピックアップ装置において、
上記光記録媒体による上記出射光の反射光を受光する上記第1の発明の光半導体装置と、
上記光半導体装置の上記屈折率可変部の屈折率を調整して、ジッタ、ビットエラーレート及び合焦ずれ量を所定値に設定する調整手段とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0040】
本発明の光半導体装置は、受光素子上に接して屈折率可変部を設けることで、部品公差及び組み立て調整公差によりFES振幅の正及び負成分のバランスが崩れて、ジッタ特性、BER特性及び合焦ずれ量が所定範囲を超えるものでも、屈折率可変部の光路長を調整することで、ジッタ特性、BER特性及び合焦ずれ量を補正することができ、安定した光ピックアップ装置を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同じであるため、詳細な説明は繰り返さない。つまり、図1〜図7において、図10〜図15に示したものと同一のものは、図10〜図15におけるものと同一参照番号を付して説明を簡単にするか、または、その説明を省略する。
【0042】
図1は本発明の光ピックアップ装置の断面図である。この光ピックアップ装置は、半導体レーザ1、回折素子2と、コリメートレンズ3、対物レンズ4及び受光部の一例としての受光素子6を備えている。回折素子2は回折格子2aおよび回折格子2bを有している。受光素子6上には、受光素子6の回折素子2側の表面に接するように屈折率可変部7が設けられている。この屈折率可変部7に印加する電圧を変化させることで屈折率可変部7の屈折率を可変できる。さらに図10の従来の光ピックアップ装置と同様、半導体レーザ1及び受光素子6は、ステム9(図2参照)に搭載され、ステムには図示していないキャップが搭載され、キャップに回折素子2が搭載されて、ステム、キャップ、半導体レーザ1、受光素子6及び回折素子2が一つにユニット化されて光集積ユニットを構成している。受光素子6と屈折率可変部7とが光半導体装置の一例を構成している。
【0043】
半導体レーザ1から出射された往路光は、回折格子2bを通って0次回折光(以下メインビームと称す)及び±1次回折光(以下サブビームと称す)の3ビームに分割される。回折格子2bにより生成された3ビームは全て回折格子2aを通り、コリメートレンズ3に到達する。コリメートレンズ3により3ビームの往路光は平行光となった後、対物レンズ4により光ディスク5の情報記録面へと集光される。これにより、上記往路光は光ディスク5により反射されて復路光となる。この復路光は、対物レンズ4、コリメートレンズ3を通って回折格子2aに入射し、さらに回折格子2aにより回折された+1次光のみ受光素子6へと入射し、光ディスク5の情報信号を受光素子6にて検出できる。
【0044】
図2は受光素子6及び屈折率可変部7の模式断面図である。受光素子6は、ステム9の受光素子設置面9aに接着剤11aを介して固定されている。受光素子6上には液晶層8が設けられ、この液晶層8上にはガラス基板10が配置されている。液晶層8は透明電極14a,14b(図3参照)で挟まれており、透明電極14a,14bに印加する電圧を制御する電圧駆動部(図示せず)が受光素子6に設けられている。ステム9には、受光素子6を搭載する受光素子設置面9aから光入射面の一例としての受光素子6表面(受光素子6の回折素子2側の表面)より若干高くなったガラス基板設置面9bが受光素子6の両側に設けられている。ガラス基板設置面9bには金属等の導電性粒子を含む接着材12が塗布され、この接着材12を用いてガラス基板10をガラス基板設置面9bに熱圧着することで、ガラス基板10の電極部(図示せず)とステム9が電気的に接続されると共に、液晶層8の厚みを一定にしている。接着材11a上に接着材11bを設けることにより、液晶層8をシールすると共に、ステム9の受光素子設置面9aに対してガラス板10を固定している。液晶層8は、受光素子6上の少なくとも受光エリア部D1〜D5(図11参照)を覆っていればよい。受光素子6の電極部を含む領域はガラス基板10で覆われておらず、受光素子6の電極部より図示していない金線が図示しないステムリード部まで伸びており、液晶層8の駆動部の電源ライン、受光素子6の電源ライン及び受光素子6の信号出力用の信号線として使用されており、電気的に接続されている。また、受光素子6の電極部上方のガラス基板10で覆われていない箇所の液晶層8のシールにも、接着材11bが使用されている。液晶層8には様々な種類の液晶が利用できるが、本実施形態では液晶層8をネマティック液晶で形成している。このネマティック液晶の液晶分子を配向させるために、あらかじめガラス基板9に図示しないポリイミド膜からなる配向膜を形成して、配向処理を行う。これにより、上記液晶分子の長軸と短軸とが屈折率異方性を示し、長軸方向と平行な直線偏光を持つ単色光にとって、液晶層8は電圧変化に応じて屈折率を変化させることができる。本実施形態では、ガラス基板10と平行な方向となるホモジニアス配向を行っている。ガラス基板10の上部にはあらかじめ偏光板13を貼り付けていて、偏光板13の偏光方向と液晶層8の液晶分子の配向方向とを揃えることで、光ディスク5からの反射光のうちP偏光もしくはS偏光のどちらか一方のみを受光素子6に入射させることができ、光ディスク5からの反射光を、液晶層8の屈折率を可変させることで、受光素子6の表面(光入射面)に形成される光スポットの位置及びスポット径を変更させることが可能である。
【0045】
但し、本実施形態では、受光素子6上の屈折率可変部7の上層部に偏光板13を貼付して一方向の直線偏光のみを受光するものとしたが、半導体レーザ1から光ディスク5の往路光路中に偏光板もしくは偏光ビームスプリッタのように一方向の直線偏光のみを抽出する機構を挿入すれば、受光素子6上の屈折率可変部7の上層部に偏光板13を貼付する必要はない。
【0046】
さらに、本発明では、受光素子6には、受光素子の機能だけを備えたものだけでなく、液晶を駆動させる液晶ドライバを備えることで、よりコンパクトな光ピックアップ装置とすることができる。
【0047】
図3は、受光素子6の受光エリア部D2,D3及び液晶層8の断面をさらに拡大させた断面図である。つまり、図3は図2の要部を拡大した模式断面図である。受光素子6の表面にはITO等の薄膜からなる透明電極14aが設けられている。この透明電極14aと、ガラス基板10上の透明電極14bとの間に生じる電位差で液晶層8の屈折率が変わる。但し、ガラス基板10上には図示しない光反射防止膜を形成されている。受光素子6は、P型半導体基板6a、N型エピタキシャル層6b、P型分離拡散層6c、P型埋め込み拡散層6d、N型埋め込み拡散層6e及びP型拡散層6fを有している。また、受光素子6は、メインビーム及びサブビームが回折格子2aの領域A及び領域Bにより回折された光ビームをそれぞれ受光するために、5つの受光エリア部D1〜D5を有している(図11参照)。受光エリア部D1〜D5が形成されている領域では、反射防止膜となる窒化膜6gがP型拡散層6f上に形成されている一方、受光エリア部D1〜D5が形成されていない領域では、図示しない酸化膜がP型拡散層6f上に形成されている。また、図示しないが、窒化膜6g及び上記酸化膜には開口が形成され、この開口を埋めるように電極配線が形成されている。また、窒化膜6g上には遮光膜となる金属膜6hが形成されている。
【0048】
図4A,図5A,図6Aは、図1の光ピックアップ装置の半導体レーザ1から回折格子2aに至るまでの断面図であり、図4B,図5B,図6Bは、受光素子6の受光エリア部D1〜D5で形成される光スポットを表した受光素子6の上面図であり、図4C,図5C,図6Cは、受光素子6により検出されるFESを表した説明図であり、図4D,図5D,図6Dは、フォーカスオフセットに対するジッタの特性を表した説明図であり、図4E,図5E,図6Eは、フォーカスオフセットに対するBERの特性を表した説明図である。また、図4A〜図4E、図5A〜図5E及び図6A〜図6Eでは、半導体レーザ1の回折素子2側の表面(光出射面)と受光素子6の回折素子2側の表面(光入射面)との間の距離dとし、公差の無い設計値中心条件(d=d10)を条件1とし、距離dがd10より短くなった時の公差条件(d=d11)を条件2とし、距離dがd10より長くなった時の公差条件(d=d12)を条件3としている。
【0049】
液晶層8の厚みt、半導体レーザ1の波長λに対する液晶層8の屈折率をnとすると、液晶層8の光路長Lは、
L=t/n (式1)
となり、液晶層8に印加する電圧に対する光路長は図7のような特性曲線19で表される。曲線19は、印加電圧0(V)から除々に印加電圧を加えていくと、最初は傾きが0であるが、点Pt0を通過後、傾きが大きくなっていき、さらには傾きが再度小さくなりやがて飽和状態に近づく。本発明では、この曲線19の傾きが比較的大きい点Pt1(Vt1,Lt1)から点Pt2(Vt2,Lt2)までの領域の液晶層8の光路長の変化を利用する。Pt1とPt2とを結んだ線上の点Ps(Vs,Ls)を初期点、実際に液晶層8に印加する電圧をVs、そのときの光路長をLs、さらに初期点からの印加電圧及び光路長の変化量を
ΔV=|Vi−Vs| (式2)
ΔL=|Li−Ls| (式3)
とし、半導体レーザ1から受光素子6の表面までの距離dが設計中心値d10に近づくように光路長の調整を行う。より詳しくは、半導体レーザ1の回折素子2側の表面(光出射面)を含む面と、受光素子6の回折素子2側の表面(光入射面)を含む面との間の最短距離が設計中心値d10に近づくように光路長の調整を行う。
【0050】
まず、図4A〜図4Eの条件1について説明する。この条件1では、屈折率可変部7内の液晶層8への印加電圧を初期電圧Vsに設定し、図4Aに示すように、上記往路光を光ディスク5の情報記録面に合焦させたとき、図4Bに示すように、受光エリア部D2と受光エリア部D3との境界線の中央上に形成される光スポット15aは最も小さくほぼ点状となる。このとき、図4Cに示すように、FES曲線16aは正成分と負成分が等しくなる。さらに、図4D及び図4Eに示すように、フォーカスサーボON状態で得られたジッタ曲線17a及びBER曲線18aは、フォーカスオフセット「0」を頂点とする左右対称の放物線に近い曲線となる(実際には頂点付近が若干フラットに近い形状の曲線となる)。
【0051】
次に、図5A〜図5Eの条件2について説明する。この条件2では、屈折率可変部7内の液晶層8への印加電圧が初期電圧Viでは、図5Aに示すように、半導体レーザ1から受光素子6表面までの距離dが設計中心値d10からずれてd11となっているので、図5Bに示すように、受光素子6表面に形成される光スポット15bはX方向に位置ずれ、半円状の非集光状態となる。そこで、液晶層8への印加電圧をVi→Vt1の方向に変化させ、光路長の変化量ΔLが半導体レーザ1から受光素子6表面までの距離dの公差
Δd=d10−d11 (式4)
と同値となるように調整すると、受光素子6表面に形成される光スポットの位置及び形状が15b→15b’に変化し、設計中心時の光スポット位置及び形状の15aとほぼ同一となるため、FES曲線も16b→16b’に変化して設計中心時のFES曲線16aとほぼ同一となり、結果ジッタ曲線も17b→17b’に変化して設計中心時のジッタ曲線17aとほぼ同一となり、さらにはBER曲線も18b→18b’に変化して設計中心時のジッタ曲線18aとほぼ同一となる。したがって、ジッタボトム値,BERボトム値及びBERのしきい値ET以下のフォーカスオフセット幅が設計中心値とほぼ同一になるように補正できる。
【0052】
図6A〜図6Eの条件3でも同様に、液晶層8への印加電圧をVi→Vt2の方向に変化させ,光路長の変化量ΔLが、半導体レーザ1から受光素子6表面までの距離dの公差
Δd=d12−d10 (式5)
と同値となるように調整すると、図6Bに示すように、受光素子6表面に形成される光スポットの位置及び形状が15c→15c’に変化し、設計中心時の光スポット位置及び形状の15aとほぼ同一となるため、図6Cに示すように、FES曲線も16c→16c’に変化して設計中心時のFES曲線16aとほぼ同一となる。その結果、図6Dに示すように、ジッタ曲線も17c→17c’に変化して設計中心時のジッタ曲線17aとほぼ同一となり、図6Eに示すように、さらにはBER曲線も18c→18c’に変化して設計中心時のジッタ曲線18aとほぼ同一となる。したがって、ジッタボトム値,BERボトム値及びBERのしきい値ET以下のフォーカスオフセット幅が設計中心値とほぼ同一になるように補正できる。
【0053】
上述では、半導体レーザ1と受光素子6表面との間の距離dにおいて生じた公差Δdを、液晶層8による光路長調整で完全に補正する場合について説明を行ったが、実際には、液晶層8の屈折率変化量や液晶層8の駆動電圧の上下限の制限等により、公差Δdを液晶層8による光路長調整にて完全に補正できない場合がある。その場合、ジッタボトム値、BERボトム値及びBERしきい値ET以下のフォーカスオフセット許容量、さらには合焦ずれ量が、最良の状態つまり設計中心とほぼ同一状態にはならないが、光ピックアップ装置の所定の性能を満たすための範囲内に入ればよい。
【0054】
続いて、本発明の光ピックアップ装置の調整方法をについて説明する。
【0055】
まず、光ピックアップ装置内の光集積ユニットの組立調整を行う。この光集積ユニットの組立調整では、まず、ステム9に半導体レーザ1,受光素子6を固定した後、半導体レーザ1とステムインナーリードとを金線で接続すると共に、受光素子6とステムインナーリードとを金線で接続する。続いて、受光素子6表面に接するように屈折率可変部7を設置する。屈折率可変部7は、受光素子6表面に液晶を滴下して、熱硬化型接着材11bをその液晶の周囲に塗布した後、ステム9のガラス基板設置面9bに導電性粒子を含む接着材12を塗布して、偏光板13が貼付されたガラス板10をそのガラス基板設置面9bに熱圧着して、キャップをステム9に取り付ける。
【0056】
上記組立調整の次には回折素子2の固定を行う。この回折素子2の固定では、図8に示すように、まず、液晶層8に初期電圧Viを印加した(ステップS1)後、回折素子2をキャップ上に設置する(ステップS2)。その際、半導体レーザ1からの出射光の光軸と、回折素子2の外形形状から回折素子2の中心位置を推定し、上記光軸と回折素子2の推定中心位置とがほぼ一致するように回折素子2を設置する。続いて、対物レンズ4を揺動した(ステップS3)後、受光素子6の受光エリア部D1,D3の出力から検出するFES振幅の正成分及び負成分が大体等しくなるように回折素子2の回転調整を行う(ステップS4)。そして、フォーカスサーボをかけた(ステップS5)後、受光素子6の受光エリア部D1〜D5から検出される信号をモニターし、設計中心値に近い信号バランスになるように、回折素子2をX方向,Y方向に移動させたり、回折素子2を回転させたりする。(ステップS6)。その際、RFSもしくはRESが最大になるように調整を行うことで、合焦ずれ調整を行う。続いて、フォーカスサーボを切った(ステップS7)後、FES振幅の正成分及び負成分のバランスを測定し、このFES振幅の正成分及び負成分のバランスが仕様値内であるかどうかか否かを判定する(ステップS8)。ステップ8で、上記FES振幅の正成分及び負成分のバランスは仕様値内であると判定すると、回折素子2をキャップに接着材で固定する(ステップ10)。一方、ステップ8で、上記FES振幅の正成分及び負成分のバランスは仕様値内でないと判定すると、FESバランスの値より、液晶層8の補正する光路長の値を算出して液晶層8の駆動電圧Vtmが印加した(ステップ9)後、ステップS4に戻る。
【0057】
上記回折素子2の固定を行った後、光ピックアップ装置の液晶層駆動電圧調整を行う。この光ピックアップ装置の液晶層駆動電圧調整では、まず、図9に示すように、上記光集積ユニットを光ピックアップ装置に組み込んだ後、対物レンズ4を液晶層8の駆動電圧に初期電圧Viを印加した(ステップS11)後、対物レンズ4を揺動させて(ステップS12)、FES振幅の正及び負成分のバランスを測定し、FES振幅の正及び負成分のバランスの仕様値内であるかどうか否かを判定する(ステップS13)。ステップ13で、上記FES振幅の正成分及び負成分のバランスは仕様値内であると判定すると、次のステップ15に進む。一方、ステップ13で、上記FES振幅の正成分及び負成分のバランスが仕様値内でないと判定すると、FESバランスの値より、液晶層8の補正する光路長の値を算出して液晶層8の駆動電圧Vtm1を印加した(ステップ14)後、再度ステップS13を行う。次のステップS15ではフォーカスサーボをかける。続いて、ラジアルサーボをかけた(ステップS16)後、ジッタボトム値,BERボトム値及び合焦ずれ量が所定値内か否かを判定する(ステップS17)。その際、フォーカスオフセットに対するジッタ曲線及びBER曲線を取得して判定を行う。ステップ17で、ジッタボトム値,BERボトム値及び合焦ずれ量は所定値内であると判定すると、合否決定を行う(ステップ19)。一方、ステップ17で、ジッタボトム値,BERボトム値及び合焦ずれ量は所定値内でないと判定すると、例えば合焦ずれを補正する方向に液晶層8の光路長補正を行うために、新たに駆動電圧Vtm2を印加した(ステップS18)後、再びステップ17を行う。ステップS18では、受光素子6上の光スポットの位置及び形状が変化するため、合焦ずれ量も変化することを利用したものである。最終的に合焦ずれ量があっても、図8の方法にて固定を行っているため、FESバランスが所定値範囲外になるものは少ない。
【0058】
上記実施形態の構造は、本発明の一例であり、受光素子6と屈折率可変部7とを一体型とした場合について説明をしたが、それに限定されることなく、例えば屈折率可変部が独立したもので、それを受光素子に貼り合わせる等も可能である。
【0059】
さらに、上記実施形態の構造は、半導体レーザ1、回折素子2、受光素子6及び屈折率可変部7を一体型にした光集積ユニットを組み込んだ光ピックアップ装置を一例として挙げたが、従来例である図16のように各部品が集積されていない構造の光ピックアップ装置であっても同様に適用可能である。
【0060】
以上により、受光素子上部に接して屈折率可変層を設けることで、FES振幅の正及び負成分のバランスの変化させることができ、且つジッタ,BER及び合焦ずれ量の補正を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は本発明の一実施形態の光ピックアップ装置の模式断面図である。
【図2】図2は上記光ピックアップ装置の受光素子及び屈折率可変部の模式断面図である。
【図3】図3は図2の拡大図である。
【図4A】図4Aは上記光ピックアップ装置の要部の模式断面図である。
【図4B】図4Bは上記光ピックアップ装置の受光素子の受光エリア部の光スポットを説明するための図である。
【図4C】図4Cは上記光ピックアップ装置の受光素子により検出されるFESを説明するための図である。
【図4D】図4Dは上記光ピックアップ装置のフォーカスオフセットに対するジッタの特性を説明するための図である。
【図4E】図4Eは上記光ピックアップ装置のフォーカスオフセットに対するビットエラーレートの特性を説明するための図である。
【図5A】図5Aは上記光ピックアップ装置の要部の模式断面図である。
【図5B】図5Bは上記光ピックアップ装置の受光素子の受光エリア部の光スポットを説明するための図である。
【図5C】図5Cは上記光ピックアップ装置の受光素子により検出されるFESを説明するための図である。
【図5D】図5Dは上記光ピックアップ装置のフォーカスオフセットに対するジッタの特性を説明するための図である。
【図5E】図5Eは上記光ピックアップ装置のフォーカスオフセットに対するビットエラーレートの特性を説明するための図である。
【図6A】図6Aは上記光ピックアップ装置の要部の模式断面図である。
【図6B】図6Bは上記光ピックアップ装置の受光素子の受光エリア部の光スポットを説明するための図である。
【図6C】図6Cは上記光ピックアップ装置の受光素子により検出されるFESを説明するための図である。
【図6D】図6Dは上記光ピックアップ装置のフォーカスオフセットに対するジッタの特性を説明するための図である。
【図6E】図6Eは上記光ピックアップ装置のフォーカスオフセットに対するビットエラーレートの特性を説明するための図である。
【図7】図7は上記光ピックアップ装置の液晶層の光路長と上記光ピックアップ装置の液晶層の印加電圧との関係を示すグラフである。
【図8】図8は上記光ピックアップ装置の組立調整を示すフローチャートである。
【図9】図9は上記光ピックアップ装置の液晶層駆動電圧調整を示すフローチャートである。
【図10】図10は従来の光ピックアップ装置の模式断面図である。
【図11】図11は上記従来の光ピックアップ装置の回折格子及びを上方から見た模式図である。
【図12A】図12Aは上記従来の光ピックアップ装置の要部の模式断面図である。
【図12B】図12Bは上記従来の光ピックアップ装置の受光素子の受光エリア部の光スポットを説明するための図である。
【図12C】図12Cは上記従来の光ピックアップ装置の受光素子により検出されるFESを説明するための図である。
【図12D】図12Dは上記従来の光ピックアップ装置のフォーカスオフセットに対するジッタの特性を説明するための図である。
【図12E】図12Eは上記従来の光ピックアップ装置のフォーカスオフセットに対するビットエラーレートの特性を説明するための図である。
【図13A】図13Aは上記従来の光ピックアップ装置の要部の模式断面図である。
【図13B】図13Bは上記従来の光ピックアップ装置の受光素子の受光エリア部の光スポットを説明するための図である。
【図13C】図13Cは上記従来の光ピックアップ装置の受光素子により検出されるFESを説明するための図である。
【図13D】図13Dは上記従来の光ピックアップ装置のフォーカスオフセットに対するジッタの特性を説明するための図である。
【図13E】図13Eは上記従来の光ピックアップ装置のフォーカスオフセットに対するビットエラーレートの特性を説明するための図である。
【図14A】図14Aは上記従来の光ピックアップ装置の要部の模式断面図である。
【図14B】図14Bは上記従来の光ピックアップ装置の受光素子の受光エリア部の光スポットを説明するための図である。
【図14C】図14Cは上記従来の光ピックアップ装置の受光素子により検出されるFESを説明するための図である。
【図14D】図14Dは上記従来の光ピックアップ装置のフォーカスオフセットに対するジッタの特性を説明するための図である。
【図14E】図14Eは上記従来の光ピックアップ装置のフォーカスオフセットに対するビットエラーレートの特性を説明するための図である。
【図15】図15は図11のXV−XV線断面図である。
【図16】図16は他の従来の光ピックアップ装置の模式断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1,101 半導体レーザ
2 回折素子
22b 回折格子
3,103 コリメートレンズ
4,104 対物レンズ
5,105 光ディスク
6,24a,24b 受光素子
6a P型半導体基板
6b N型エピタキシャル層
6c P型分離拡散層
6d P型埋め込み拡散層
6e N型埋め込み拡散層
6f P型拡散層
6g 窒化膜
6h 遮光膜
7 屈折率可変部
8 液晶層
9 ステム
10 ガラス基板
11a,11b 接着材
12 導電性粒子入り接着材
13 偏光板
14a,14b 透明電極
15a,15b,15c 光スポット
16a,16b,16c FES曲線
17a,17b,17c ジッタ特性曲線
18a,18b,18c BER特性曲線
19 液晶層印加電圧―光路長特性曲線
120 偏光ビームスプリッタ
121 1/4波長板
122 集光レンズ
123 ナイフエッジプリズム
124a,124b 受光素子
125 屈折率可変プレート
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号を電気信号に変換する受光部を備えた光半導体装置と、光記録媒体に対して、情報の再生、消去及び記録の少なくとも1つを行う光ピックアップ装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置に搭載された光ピックアップ装置は、CD(コンパクトディスク)やDVD(デジタル万能ディスク)等の光記録媒体へ向けて半導体レーザからレーザ光を出射し、その光記録媒体によって反射されたレーザ光を受光素子で受光する。
【0003】
近年、光ディスク装置の小型化・高性能化に対応するため、光ピックアップ装置の受光素子等を集積化したものが提案されたり、光ディスク装置の組立調整の簡易化に対応するため、光ピックアップ装置の受光素子の表面における光スポットの形状及び位置を調整できる機構を光ピックアップ装置内に設けたものが提案されている。
【0004】
例えば特許文献1(特開平9−162436号公報)では、光電変換信号を処理する回路を内蔵した受光素子が提案されている。また、特許文献2(特開平1−151022号公報)では、上記特許文献1のような受光素子を搭載して小型化及び集積化された光ピックアップ装置が提案されている。そして、特許文献3(特開平6−131689号公報)では、光記録媒体と受光素子との間の光路上に屈折率可変部が配置された光ピックアップ装置が提案されている。
【0005】
従来の光ピックアップ装置としては図10に示すようなものがある(例えば特許文献2参照)。この光ピックアップ装置は、CD及びCD−ROM(読み出し専用コンパクトディク)用の光ピックアップ装置で、半導体レーザ1、回折素子2、コリメートレンズ3、対物レンズ4及び受光素子6を備えている。回折素子2のコリメートレンズ3側の表面には回折格子2aが設けられ、回折素子2の半導体レーザ1側の表面には回折格子2bが設けられている。回折格子2aは受光素子6に向けて復路光(光ディスク5で反射されたレーザ光)を回折するためのもので、回折格子2bは半導体レーザ1から出射された往路光(光ディスク5へ向かうレーザ光)を3ビームに分割するためのものである。半導体レーザ1及び受光素子6は、図示していないステムに搭載され、ステムには図示していないキャップが搭載され、キャップには回折素子2が搭載されている。このステム、キャップ、半導体レーザ1、受光素子6及び回折素子2が一つにユニット化されて光集積ユニットを構成している。
【0006】
半導体レーザ1から出射された往路光は、回折格子2bを通って0次回折光(以下メインビームと称す)及び±1次回折光(以下サブビームと称す)の3ビームに分割される。回折格子2bにより生成された3ビームは全て回折格子2aを通り、コリメートレンズ3に到達する。コリメートレンズ3により3ビームの往路光は平行光となった後、対物レンズ4により光ディスク5の情報記録面へと集光される。これにより、上記往路光は光ディスク5により反射されて復路光となる。この復路光は、対物レンズ4、コリメートレンズ3を通って回折格子2aに入射し、さらに回折格子2aにより回折された+1次光のみ受光素子6へと入射し、光ディスク5の情報信号を受光素子6にて検出できる。
【0007】
図11は、回折格子2a及び受光素子6を上方から見た配置関係を表す平面図である。回折格子2aは、回折格子間隔の異なる2つの領域A、領域Bを備えており、領域毎に復路光の回折角を変えている。領域Aと領域Bとの境界線である分割線Cはほぼラジアル方向(x方向)に平行であり、領域Aと領域Bの格子方向はほぼタンジェンシャル方向(y方向)に平行である。光ディスク5から反射された復路光が回折格子2aに入射する際、復路光のメインビームのほぼ中心軸が分割線Cと交差するように、回折素子2が配置されている。また、回折格子2aの領域A及び領域Bに入射したメインビーム及びサブビームはそれぞれ受光素子6に向けて回折される。
【0008】
受光素子6は、メインビーム及びサブビームが回折格子2aの領域A及び領域Bにより回折された光ビームをそれぞれ受光するために、5つの受光エリア部D1〜D5を有している。領域Aにより回折されたメインビームは、受光エリア部D2と受光エリア部D3との境界線に入射する。領域Bにより回折されたメインビームは、受光エリア部D4に入射する。領域A及び領域Bにより回折されたサブビームはそれぞれ受光エリア部D1,D5に入射する。
【0009】
対物レンズ4は図示しないアクチュエータに搭載され、フォーカス方向(光ディスク5の情報記録面に対して垂直方向)とラジアル方向に移動させることができる。
【0010】
受光素子6の受光エリア部D1〜D5に入射する光信号から得た電気信号をそれぞれS1〜S5とすると、フォーカスエラー信号(以下FESと略す)は、
FES=S2−S3
で与えられ、対物レンズ4から出射されたメインビームの集光スポットを光ディスク5の情報記録面に追随させることができる(以下フォーカスサーボと称す)。
【0011】
一方、ラジアルエラー信号(以下「RES」と略す)は、
RES=S1−S5
で与えられ、対物レンズ4から出射したメインビームの集光スポットを光ディスク5のトラックに追随させることができる(以下ラジアルサーボと略す)。
【0012】
さらに、再生信号(以下RFと略す)は、メインビームによる出力電気信号の総和
RF=S2+S3+S4
で与えられる。これにより、フォーカスサーボ及びラジアルサーボにより対物レンズ4から出射された集光スポットが光ディスク5のトラックを追随することで、光ディスク5の情報信号を再生することができる。
【0013】
また、受光素子6は、温度変化による半導体レーザ1の波長変化、さらに回折素子2の回折角の変化による受光エリア部D2,D3上での復路光スポットの位置の移動により合焦ずれが発生するのを防ぐために、受光エリア部D2と受光エリア部D3との境界線は僅かに傾斜している。
【0014】
上記光ピックアップ装置内の光集積ユニットの組立は、半導体レーザ1、受光素子104は図示しないステムに固定され、図示しないステムの端子部に金線等でワイヤーボンドされ、半導体レーザ1と受光素子104とを図示しないキャップにてシールし、最後にキャップの上方に回折素子2を固定し完成する。但し、上記光集積ユニット内の回折素子2の位置調整は、半導体レーザ1からの出射光が、コリメートレンズ3及び対物レンズ4を通り、光ディスク5により反射し、再度対物レンズ4及びコリメートレンズ3を通って、さらに回折素子2により回折された光を受光素子6により受光し、受光素子6により変換された電気信号をモニターしながら行われる。その際、回折素子2はキャップに常に接して移動するため、回折素子2の移動方向はXY平面内の水平移動と回転移動に限定され、受光素子6から得られる電気信号をモニターしながらより良い特性の信号が得られるように水平移動と回転移動とを繰り返し、受光エリア部D2と受光エリア部D3との境界線上に光スポットが形成されるようにする。
【0015】
次に、上記受光素子6について説明する。この受光素子6としては、光電変換信号を処理する回路を内蔵した回路内蔵受光素子ものがある(例えば特許文献1参照)。
【0016】
図15は、図11のXV−XV線から見た断面図である。より詳しくは、図15は、受光素子6の受光エリア部D2,D3の断面構造を示す断面図である。受光素子6は、P型半導体基板6a、N型エピタキシャル層6b、P型分離拡散層6c、P型埋め込み拡散層6d、N型埋め込み拡散層6e及びP型拡散層6fからなる複数の受光エリア部が形成されている。受光エリア部D1〜D5が形成されている領域では、反射防止膜となる窒化膜6gがP型拡散層6f上に形成されている一方、受光エリア部D1〜D5が形成されていない領域では、図示しない酸化膜がP型拡散層6f上に形成されている。また、図示しないが、窒化膜6g及び上記酸化膜には開口が形成され、この開口を埋めるように電極配線が形成されている。また、窒化膜6g上には遮光膜となる金属膜6hが形成されている。
【0017】
受光素子6は、P型半導体基板6a及びN型エピタキシャル層6bの比抵抗を高くして、受光エリア部D1〜D5に逆バイアスが印加されると、空乏層がN型エピタキシャル層6bとP型拡散層6fとの接合面からN型埋め込み拡散層6eに接する程度に広がり、応答速度が速くなっている。
【0018】
しかし、上記従来の光ピックアップ装置では、受光素子6上の受光エリア部D2と受光エリア部D3との境界線のほぼ中央上に微小な光スポットを形成する必要があるため、各部品の外形寸法や組立調整に高い精度が要求されていた。特に、半導体レーザ1、回折素子2及び受光素子6の配置は、受光素子6の受光エリア部D1〜D5で形成される光スポットの位置及び形状に与える影響が大きいため、外形寸法及び組立調整の公差を極めて小さくする必要があり、部品コスト及び組立調整コストが高くなるといった課題があった。
【0019】
例えば、半導体レーザ1の発光点と受光素子6の表面との間の距離dに公差が入った場合について説明する。この公差は、受光素子6の厚み公差、受光素子6と図示しないステムとの間の接着材の厚み公差、半導体レーザ1のステムへのZ方向ダイボンド位置公差により生じる。
【0020】
図12A,図13A,図14Aは、図10の光ピックアップ装置の半導体レーザ1から回折格子2aに至るまでの模式断面図であり、図12B,図13B,図14Bは、受光素子6の受光エリア部D1〜D5で形成される光スポットを表した受光素子6の上面図であり、図12C,図13C,図14Cは、受光素子6により検出されるFESを表した説明図であり、図12D,図13D,図14Dは、フォーカスオフセットに対するジッタの特性を表した説明図であり、図12E,図13E,図14Eは、フォーカスオフセットに対するビットエラーレート(以下BERと略す)の特性を表した説明図である。また、図12A〜図12E、図13A〜図13E及び図14A〜図14Eでは、公差の無い設計値中心条件(d=d0)を条件1とし、距離dがd0より短くなった時の公差条件(d=d1)を条件2とし、距離dがd0より長くなった時の公差条件(d=d2)を条件3としている。
【0021】
まず、条件1では、図12Aに示すように、上記往路光を光ディスク5の情報記録面に合焦させたとき、図12Bに示すように、受光エリア部D2と受光エリア部D3との境界線の中央上に形成される光スポット15aは最も小さくほぼ点状となる。このとき、図12C示すように、FES曲線16aは正成分と負成分が等しくなる。さらに、図12D及び図12Eに示すように、フォーカスサーボON(オン)状態で得られたフォーカスオフセット―ジッタ特性曲線(以下ジッタ曲線と略す)17aおよびフォーカスオフセット―BER特性曲線(以下BER曲線と略す)18aは、フォーカスオフセット「0」を通る直線に関して左右対称の放物線に近い曲線となる(実際には頂点付近が若干フラットに近い形状の曲線となる)。
【0022】
次に、条件2及び条件3では、図13A,図14Aに示すように、半導体レーザ1の発光点と受光素子6との間の距離d1,d2が設計値d0からずれているため、図13B,図14Bに示すように、受光素子6の受光エリア部D1〜D5で形成される光スポット15b,15cはX方向に位置がずれ、半円状の非集光状態となる。このとき、X方向の位置ずれについては回折素子2の水平移動及び回転移動調整にて補正して合焦ずれの発生を防ぐが、受光素子6の受光エリア部D1〜D5で形成される光スポットが非合焦状態であるために、図13C,図14Cに示すように、FES曲線16b,16cの正成分と負成分とがアンバランスとなる。そのため、図13D,図14Dに示すように、ジッタ曲線17b,17cの頂点でのジッタ値(以下ジッタボトム値と略す)J1,J2は、上記の通り回折素子2の水平移動及び回転移動調整により発生する合焦ずれを補正するため、条件1のジッタボトム値J0よりも大きくなる。また、FES曲線16b,16cの正もしくは負成分のどちらか振幅の小さい方向にフォーカスオフセットを印加したときのジッタの増加率が大きくなるため、ジッタ曲線17b,17cはフォーカスオフセット「0」を通る直線に関して左右非対称となる。同様に、図13E,図14Eに示すように、BER曲線18b,18cの頂点のBER値(以下BERボトム値と略す)EB1,EB2は、条件1のBERボトム値EB0よりも大きくなる。また、BER曲線18b,18cはフォーカスオフセット「0」を通る直線に関して左右非対称となる。このとき、光ピックアップ装置の図示しない後段の信号処理部のビットエラー訂正可能なBERのしきい値ET以下のフォーカスオフセット幅は、条件1の時のf0に比べて狭いf1及びf2となり、フォーカスオフセットの許容量が少なくなる。
【0023】
図12A〜図12E、図13A〜図13E及び図14A〜図14Eで示したことは一例であり、他に回折素子2のZ方向寸法、回折素子2を搭載する図示しないキャップの高さ及び回折素子2とキャップ間の接着材厚み等の公差の発生により上記と同様の現象が現れる場合があり、上述した複数因子の公差が組み合わさることでさらにフォーカスオフセットに対するジッタ及びBERが悪化することになる。
【0024】
また、図12A〜図12E、図13A〜図13E及び図14A〜図14Eでは、合焦ずれが発生しないように回折素子2の位置調整を行った場合について説明を行ったが、実際には他の因子の公差も含むため、受光エリア部D2と受光部エリア部D3との境界線上に形成されるべき光スポットが、その境界線よりも受光エリア部D2もしくは受光エリア部D3のどちらかの方向に偏るために合焦ずれが生じることが多い。特に、合焦ずれに対して影響の大きい回折素子2のXY平面内での回転調整を極めて高精度で行い、合焦ずれの発生を最小限にしている。しかし、各部品の外形寸法誤差及び組立調整誤差を含むために合焦ずれの発生を皆無にすることはできず、合焦ずれが所定値よりも大きくなるものも若干含み、不良品と判定されてしまう。
【0025】
また、合焦ずれが所定値内でも、FES曲線の正及び負成分のバランスが崩れ、ジッタ曲線及びBER曲線が、フォーカスオフセット「0」を通る直線に関して左右非対称となると共に、ジッタボトム値及びBERボトム値が大きくなる等、ジッタ及びBERのフォーカスオフセットに対する許容量が少なくなり、光ピックアップ装置としての、所定の性能が得られないものが発生し、不良品として判定されているものもが生じてしまう。
【0026】
他の従来の光ピックアップ装置としては図16に示すようなものがある(例えば特許文献3参照)。図16は、この光ピックアップ装置の部品構成図である。この光ピックアップ装置は、半導体レーザ101、コリメートレンズ103、対物レンズ104、偏光ビームスプリッタ120、1/4波長板121、受光素子用集光レンズ122、ナイフエッジプリズム123、受光素子124a,124b及び屈折率可変プレート125を備えている。
【0027】
上記構成の光ピックアップ装置によれば、半導体レーザ101が出射した出射光は、コリメートレンズ103により平行光にされ、偏光ビームスプリッタ120と1/4波長板121を通って円偏光となって、対物レンズ104により光ディスク105上に集光される。そして、光ディスク105による上記出射光の反射光は、再び対物レンズ104及び1/4波長板121を通って、直線偏光となって、偏光ビームスプリッタ120により反射され、光路が90°変更される。ビームスプリッタ120で反射された光は、受光素子用集光レンズ122により集光され、さらにナイフエッジプリズム123により2分割される。2分割された光のうちの一方は受光素子124aに入射し、2分割された光のうちの他方は受光素子124bに入射する。これにより、各受光素子124a,124b内の図示していない分割された受光エリア部にて電気信号として光ディスクによる上記反射光を検出することができる。
【0028】
また、上記電気信号からFES及びRESを生成することにより、フォーカスサーボ制御及びラジアルサーボ制御を行え、光ディスク105の情報記録面のトラックに光スポットを追随させることができる。
【0029】
さらに、受光素子用集光レンズ122とナイフエッジプリズム123との間に屈折率可変プレート125が挿入されているから、例えば受光素子用集光レンズ122から受光素子124a,124bまでの距離が所定の距離でない場合、屈折率可変プレートの屈折率を変化させ受光素子124a,124bに集光される光スポット径が所定の大きさになるように調整したり、受光素子124a,124bに集光される光スポットが所定の位置でない場合、屈折率可変プレートの屈折率を変化させて、上記光スポットが所定位置に集光するように調整したりすることができる。
【0030】
しかし、図16の光ピックアップ装置では、図10の光ピックアップ装置と比較しても、部品点数が多いために光ピックアップ装置が大型化するばかりか、搭載した屈折率可変プレート125を独立して配置するためにさらに大型化はもちろん、受光素子124a,124b受光エリア部で形成される光スポットの位置及び光スポット径が光軸に対する屈折率可変プレート125の傾きによる影響が極めて大きく、屈折率可変プレート125の組立調整が極めて難しいといった問題がある。
【特許文献1】特開平9−162436号公報
【特許文献2】特開平1−151022号公報
【特許文献3】特開平6−131689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
そこで、本発明の課題は、合焦ずれ量を所定値に設定することができ、かつ、ジッタ及びBERの悪化を防止でき、さらに、光ピックアップ装置の部品コスト及び組立調整コストが高くなるのを防止できる光半導体装置を提供することにある。
【0032】
また、本発明の他の課題は、そのような光ピックアップ装置を備えた光ピックアップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上記課題を解決するため、第1の発明の光半導体装置は、
光電変換するための光入射面を有する受光部と、
上記光入射面に接するように配置された屈折率可変部と
を備え、
上記屈折率可変部の屈折率を可変することにより、上記光入射面に入射する光の上記屈折率可変部の光路長を調整することを特徴としている。
【0034】
上記構成の光半導体装置と例えば半導体レーザとを光ピックアップ装置に搭載する場合、上記屈折率可変部の屈折率を可変することにより、光入射面に入射する光の屈折率可変部の光路長を調整するから、合焦ずれ量を所定値に設定することができ、ジッタ及びBERの悪化を防止できる。
【0035】
また、上記屈折率可変部を備えていることにより、光半導体装置及び半導体レーザ半導体レーザの外形寸法や組立調整の公差を許容できるので、光ピックアップ装置の部品コスト及び組立調整コストが高くなるのを防止できる。
【0036】
また、上記屈折率可変部を受光部の光入射面に接するように配置するから、光ピックアップ装置を小型化できると共に、屈折率可変部の組立調整を簡単にすることができる。
【0037】
一実施形態の光半導体装置では、上記屈折率可変部は、液晶と、上記液晶を挟む透明基板と、上記液晶に電圧を加えるための透明電極と
を少なくとも有する。
【0038】
一実施形態の光半導体装置では、上記屈折率可変部は、上記透明基板上に配置された偏光板を有する。
【0039】
第2の発明の光ピックアップ装置は、
半導体レーザと、上記半導体レーザが出射した出射光を光記録媒体に集光するための光学系とを少なくとも備えた光ピックアップ装置において、
上記光記録媒体による上記出射光の反射光を受光する上記第1の発明の光半導体装置と、
上記光半導体装置の上記屈折率可変部の屈折率を調整して、ジッタ、ビットエラーレート及び合焦ずれ量を所定値に設定する調整手段とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0040】
本発明の光半導体装置は、受光素子上に接して屈折率可変部を設けることで、部品公差及び組み立て調整公差によりFES振幅の正及び負成分のバランスが崩れて、ジッタ特性、BER特性及び合焦ずれ量が所定範囲を超えるものでも、屈折率可変部の光路長を調整することで、ジッタ特性、BER特性及び合焦ずれ量を補正することができ、安定した光ピックアップ装置を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同じであるため、詳細な説明は繰り返さない。つまり、図1〜図7において、図10〜図15に示したものと同一のものは、図10〜図15におけるものと同一参照番号を付して説明を簡単にするか、または、その説明を省略する。
【0042】
図1は本発明の光ピックアップ装置の断面図である。この光ピックアップ装置は、半導体レーザ1、回折素子2と、コリメートレンズ3、対物レンズ4及び受光部の一例としての受光素子6を備えている。回折素子2は回折格子2aおよび回折格子2bを有している。受光素子6上には、受光素子6の回折素子2側の表面に接するように屈折率可変部7が設けられている。この屈折率可変部7に印加する電圧を変化させることで屈折率可変部7の屈折率を可変できる。さらに図10の従来の光ピックアップ装置と同様、半導体レーザ1及び受光素子6は、ステム9(図2参照)に搭載され、ステムには図示していないキャップが搭載され、キャップに回折素子2が搭載されて、ステム、キャップ、半導体レーザ1、受光素子6及び回折素子2が一つにユニット化されて光集積ユニットを構成している。受光素子6と屈折率可変部7とが光半導体装置の一例を構成している。
【0043】
半導体レーザ1から出射された往路光は、回折格子2bを通って0次回折光(以下メインビームと称す)及び±1次回折光(以下サブビームと称す)の3ビームに分割される。回折格子2bにより生成された3ビームは全て回折格子2aを通り、コリメートレンズ3に到達する。コリメートレンズ3により3ビームの往路光は平行光となった後、対物レンズ4により光ディスク5の情報記録面へと集光される。これにより、上記往路光は光ディスク5により反射されて復路光となる。この復路光は、対物レンズ4、コリメートレンズ3を通って回折格子2aに入射し、さらに回折格子2aにより回折された+1次光のみ受光素子6へと入射し、光ディスク5の情報信号を受光素子6にて検出できる。
【0044】
図2は受光素子6及び屈折率可変部7の模式断面図である。受光素子6は、ステム9の受光素子設置面9aに接着剤11aを介して固定されている。受光素子6上には液晶層8が設けられ、この液晶層8上にはガラス基板10が配置されている。液晶層8は透明電極14a,14b(図3参照)で挟まれており、透明電極14a,14bに印加する電圧を制御する電圧駆動部(図示せず)が受光素子6に設けられている。ステム9には、受光素子6を搭載する受光素子設置面9aから光入射面の一例としての受光素子6表面(受光素子6の回折素子2側の表面)より若干高くなったガラス基板設置面9bが受光素子6の両側に設けられている。ガラス基板設置面9bには金属等の導電性粒子を含む接着材12が塗布され、この接着材12を用いてガラス基板10をガラス基板設置面9bに熱圧着することで、ガラス基板10の電極部(図示せず)とステム9が電気的に接続されると共に、液晶層8の厚みを一定にしている。接着材11a上に接着材11bを設けることにより、液晶層8をシールすると共に、ステム9の受光素子設置面9aに対してガラス板10を固定している。液晶層8は、受光素子6上の少なくとも受光エリア部D1〜D5(図11参照)を覆っていればよい。受光素子6の電極部を含む領域はガラス基板10で覆われておらず、受光素子6の電極部より図示していない金線が図示しないステムリード部まで伸びており、液晶層8の駆動部の電源ライン、受光素子6の電源ライン及び受光素子6の信号出力用の信号線として使用されており、電気的に接続されている。また、受光素子6の電極部上方のガラス基板10で覆われていない箇所の液晶層8のシールにも、接着材11bが使用されている。液晶層8には様々な種類の液晶が利用できるが、本実施形態では液晶層8をネマティック液晶で形成している。このネマティック液晶の液晶分子を配向させるために、あらかじめガラス基板9に図示しないポリイミド膜からなる配向膜を形成して、配向処理を行う。これにより、上記液晶分子の長軸と短軸とが屈折率異方性を示し、長軸方向と平行な直線偏光を持つ単色光にとって、液晶層8は電圧変化に応じて屈折率を変化させることができる。本実施形態では、ガラス基板10と平行な方向となるホモジニアス配向を行っている。ガラス基板10の上部にはあらかじめ偏光板13を貼り付けていて、偏光板13の偏光方向と液晶層8の液晶分子の配向方向とを揃えることで、光ディスク5からの反射光のうちP偏光もしくはS偏光のどちらか一方のみを受光素子6に入射させることができ、光ディスク5からの反射光を、液晶層8の屈折率を可変させることで、受光素子6の表面(光入射面)に形成される光スポットの位置及びスポット径を変更させることが可能である。
【0045】
但し、本実施形態では、受光素子6上の屈折率可変部7の上層部に偏光板13を貼付して一方向の直線偏光のみを受光するものとしたが、半導体レーザ1から光ディスク5の往路光路中に偏光板もしくは偏光ビームスプリッタのように一方向の直線偏光のみを抽出する機構を挿入すれば、受光素子6上の屈折率可変部7の上層部に偏光板13を貼付する必要はない。
【0046】
さらに、本発明では、受光素子6には、受光素子の機能だけを備えたものだけでなく、液晶を駆動させる液晶ドライバを備えることで、よりコンパクトな光ピックアップ装置とすることができる。
【0047】
図3は、受光素子6の受光エリア部D2,D3及び液晶層8の断面をさらに拡大させた断面図である。つまり、図3は図2の要部を拡大した模式断面図である。受光素子6の表面にはITO等の薄膜からなる透明電極14aが設けられている。この透明電極14aと、ガラス基板10上の透明電極14bとの間に生じる電位差で液晶層8の屈折率が変わる。但し、ガラス基板10上には図示しない光反射防止膜を形成されている。受光素子6は、P型半導体基板6a、N型エピタキシャル層6b、P型分離拡散層6c、P型埋め込み拡散層6d、N型埋め込み拡散層6e及びP型拡散層6fを有している。また、受光素子6は、メインビーム及びサブビームが回折格子2aの領域A及び領域Bにより回折された光ビームをそれぞれ受光するために、5つの受光エリア部D1〜D5を有している(図11参照)。受光エリア部D1〜D5が形成されている領域では、反射防止膜となる窒化膜6gがP型拡散層6f上に形成されている一方、受光エリア部D1〜D5が形成されていない領域では、図示しない酸化膜がP型拡散層6f上に形成されている。また、図示しないが、窒化膜6g及び上記酸化膜には開口が形成され、この開口を埋めるように電極配線が形成されている。また、窒化膜6g上には遮光膜となる金属膜6hが形成されている。
【0048】
図4A,図5A,図6Aは、図1の光ピックアップ装置の半導体レーザ1から回折格子2aに至るまでの断面図であり、図4B,図5B,図6Bは、受光素子6の受光エリア部D1〜D5で形成される光スポットを表した受光素子6の上面図であり、図4C,図5C,図6Cは、受光素子6により検出されるFESを表した説明図であり、図4D,図5D,図6Dは、フォーカスオフセットに対するジッタの特性を表した説明図であり、図4E,図5E,図6Eは、フォーカスオフセットに対するBERの特性を表した説明図である。また、図4A〜図4E、図5A〜図5E及び図6A〜図6Eでは、半導体レーザ1の回折素子2側の表面(光出射面)と受光素子6の回折素子2側の表面(光入射面)との間の距離dとし、公差の無い設計値中心条件(d=d10)を条件1とし、距離dがd10より短くなった時の公差条件(d=d11)を条件2とし、距離dがd10より長くなった時の公差条件(d=d12)を条件3としている。
【0049】
液晶層8の厚みt、半導体レーザ1の波長λに対する液晶層8の屈折率をnとすると、液晶層8の光路長Lは、
L=t/n (式1)
となり、液晶層8に印加する電圧に対する光路長は図7のような特性曲線19で表される。曲線19は、印加電圧0(V)から除々に印加電圧を加えていくと、最初は傾きが0であるが、点Pt0を通過後、傾きが大きくなっていき、さらには傾きが再度小さくなりやがて飽和状態に近づく。本発明では、この曲線19の傾きが比較的大きい点Pt1(Vt1,Lt1)から点Pt2(Vt2,Lt2)までの領域の液晶層8の光路長の変化を利用する。Pt1とPt2とを結んだ線上の点Ps(Vs,Ls)を初期点、実際に液晶層8に印加する電圧をVs、そのときの光路長をLs、さらに初期点からの印加電圧及び光路長の変化量を
ΔV=|Vi−Vs| (式2)
ΔL=|Li−Ls| (式3)
とし、半導体レーザ1から受光素子6の表面までの距離dが設計中心値d10に近づくように光路長の調整を行う。より詳しくは、半導体レーザ1の回折素子2側の表面(光出射面)を含む面と、受光素子6の回折素子2側の表面(光入射面)を含む面との間の最短距離が設計中心値d10に近づくように光路長の調整を行う。
【0050】
まず、図4A〜図4Eの条件1について説明する。この条件1では、屈折率可変部7内の液晶層8への印加電圧を初期電圧Vsに設定し、図4Aに示すように、上記往路光を光ディスク5の情報記録面に合焦させたとき、図4Bに示すように、受光エリア部D2と受光エリア部D3との境界線の中央上に形成される光スポット15aは最も小さくほぼ点状となる。このとき、図4Cに示すように、FES曲線16aは正成分と負成分が等しくなる。さらに、図4D及び図4Eに示すように、フォーカスサーボON状態で得られたジッタ曲線17a及びBER曲線18aは、フォーカスオフセット「0」を頂点とする左右対称の放物線に近い曲線となる(実際には頂点付近が若干フラットに近い形状の曲線となる)。
【0051】
次に、図5A〜図5Eの条件2について説明する。この条件2では、屈折率可変部7内の液晶層8への印加電圧が初期電圧Viでは、図5Aに示すように、半導体レーザ1から受光素子6表面までの距離dが設計中心値d10からずれてd11となっているので、図5Bに示すように、受光素子6表面に形成される光スポット15bはX方向に位置ずれ、半円状の非集光状態となる。そこで、液晶層8への印加電圧をVi→Vt1の方向に変化させ、光路長の変化量ΔLが半導体レーザ1から受光素子6表面までの距離dの公差
Δd=d10−d11 (式4)
と同値となるように調整すると、受光素子6表面に形成される光スポットの位置及び形状が15b→15b’に変化し、設計中心時の光スポット位置及び形状の15aとほぼ同一となるため、FES曲線も16b→16b’に変化して設計中心時のFES曲線16aとほぼ同一となり、結果ジッタ曲線も17b→17b’に変化して設計中心時のジッタ曲線17aとほぼ同一となり、さらにはBER曲線も18b→18b’に変化して設計中心時のジッタ曲線18aとほぼ同一となる。したがって、ジッタボトム値,BERボトム値及びBERのしきい値ET以下のフォーカスオフセット幅が設計中心値とほぼ同一になるように補正できる。
【0052】
図6A〜図6Eの条件3でも同様に、液晶層8への印加電圧をVi→Vt2の方向に変化させ,光路長の変化量ΔLが、半導体レーザ1から受光素子6表面までの距離dの公差
Δd=d12−d10 (式5)
と同値となるように調整すると、図6Bに示すように、受光素子6表面に形成される光スポットの位置及び形状が15c→15c’に変化し、設計中心時の光スポット位置及び形状の15aとほぼ同一となるため、図6Cに示すように、FES曲線も16c→16c’に変化して設計中心時のFES曲線16aとほぼ同一となる。その結果、図6Dに示すように、ジッタ曲線も17c→17c’に変化して設計中心時のジッタ曲線17aとほぼ同一となり、図6Eに示すように、さらにはBER曲線も18c→18c’に変化して設計中心時のジッタ曲線18aとほぼ同一となる。したがって、ジッタボトム値,BERボトム値及びBERのしきい値ET以下のフォーカスオフセット幅が設計中心値とほぼ同一になるように補正できる。
【0053】
上述では、半導体レーザ1と受光素子6表面との間の距離dにおいて生じた公差Δdを、液晶層8による光路長調整で完全に補正する場合について説明を行ったが、実際には、液晶層8の屈折率変化量や液晶層8の駆動電圧の上下限の制限等により、公差Δdを液晶層8による光路長調整にて完全に補正できない場合がある。その場合、ジッタボトム値、BERボトム値及びBERしきい値ET以下のフォーカスオフセット許容量、さらには合焦ずれ量が、最良の状態つまり設計中心とほぼ同一状態にはならないが、光ピックアップ装置の所定の性能を満たすための範囲内に入ればよい。
【0054】
続いて、本発明の光ピックアップ装置の調整方法をについて説明する。
【0055】
まず、光ピックアップ装置内の光集積ユニットの組立調整を行う。この光集積ユニットの組立調整では、まず、ステム9に半導体レーザ1,受光素子6を固定した後、半導体レーザ1とステムインナーリードとを金線で接続すると共に、受光素子6とステムインナーリードとを金線で接続する。続いて、受光素子6表面に接するように屈折率可変部7を設置する。屈折率可変部7は、受光素子6表面に液晶を滴下して、熱硬化型接着材11bをその液晶の周囲に塗布した後、ステム9のガラス基板設置面9bに導電性粒子を含む接着材12を塗布して、偏光板13が貼付されたガラス板10をそのガラス基板設置面9bに熱圧着して、キャップをステム9に取り付ける。
【0056】
上記組立調整の次には回折素子2の固定を行う。この回折素子2の固定では、図8に示すように、まず、液晶層8に初期電圧Viを印加した(ステップS1)後、回折素子2をキャップ上に設置する(ステップS2)。その際、半導体レーザ1からの出射光の光軸と、回折素子2の外形形状から回折素子2の中心位置を推定し、上記光軸と回折素子2の推定中心位置とがほぼ一致するように回折素子2を設置する。続いて、対物レンズ4を揺動した(ステップS3)後、受光素子6の受光エリア部D1,D3の出力から検出するFES振幅の正成分及び負成分が大体等しくなるように回折素子2の回転調整を行う(ステップS4)。そして、フォーカスサーボをかけた(ステップS5)後、受光素子6の受光エリア部D1〜D5から検出される信号をモニターし、設計中心値に近い信号バランスになるように、回折素子2をX方向,Y方向に移動させたり、回折素子2を回転させたりする。(ステップS6)。その際、RFSもしくはRESが最大になるように調整を行うことで、合焦ずれ調整を行う。続いて、フォーカスサーボを切った(ステップS7)後、FES振幅の正成分及び負成分のバランスを測定し、このFES振幅の正成分及び負成分のバランスが仕様値内であるかどうかか否かを判定する(ステップS8)。ステップ8で、上記FES振幅の正成分及び負成分のバランスは仕様値内であると判定すると、回折素子2をキャップに接着材で固定する(ステップ10)。一方、ステップ8で、上記FES振幅の正成分及び負成分のバランスは仕様値内でないと判定すると、FESバランスの値より、液晶層8の補正する光路長の値を算出して液晶層8の駆動電圧Vtmが印加した(ステップ9)後、ステップS4に戻る。
【0057】
上記回折素子2の固定を行った後、光ピックアップ装置の液晶層駆動電圧調整を行う。この光ピックアップ装置の液晶層駆動電圧調整では、まず、図9に示すように、上記光集積ユニットを光ピックアップ装置に組み込んだ後、対物レンズ4を液晶層8の駆動電圧に初期電圧Viを印加した(ステップS11)後、対物レンズ4を揺動させて(ステップS12)、FES振幅の正及び負成分のバランスを測定し、FES振幅の正及び負成分のバランスの仕様値内であるかどうか否かを判定する(ステップS13)。ステップ13で、上記FES振幅の正成分及び負成分のバランスは仕様値内であると判定すると、次のステップ15に進む。一方、ステップ13で、上記FES振幅の正成分及び負成分のバランスが仕様値内でないと判定すると、FESバランスの値より、液晶層8の補正する光路長の値を算出して液晶層8の駆動電圧Vtm1を印加した(ステップ14)後、再度ステップS13を行う。次のステップS15ではフォーカスサーボをかける。続いて、ラジアルサーボをかけた(ステップS16)後、ジッタボトム値,BERボトム値及び合焦ずれ量が所定値内か否かを判定する(ステップS17)。その際、フォーカスオフセットに対するジッタ曲線及びBER曲線を取得して判定を行う。ステップ17で、ジッタボトム値,BERボトム値及び合焦ずれ量は所定値内であると判定すると、合否決定を行う(ステップ19)。一方、ステップ17で、ジッタボトム値,BERボトム値及び合焦ずれ量は所定値内でないと判定すると、例えば合焦ずれを補正する方向に液晶層8の光路長補正を行うために、新たに駆動電圧Vtm2を印加した(ステップS18)後、再びステップ17を行う。ステップS18では、受光素子6上の光スポットの位置及び形状が変化するため、合焦ずれ量も変化することを利用したものである。最終的に合焦ずれ量があっても、図8の方法にて固定を行っているため、FESバランスが所定値範囲外になるものは少ない。
【0058】
上記実施形態の構造は、本発明の一例であり、受光素子6と屈折率可変部7とを一体型とした場合について説明をしたが、それに限定されることなく、例えば屈折率可変部が独立したもので、それを受光素子に貼り合わせる等も可能である。
【0059】
さらに、上記実施形態の構造は、半導体レーザ1、回折素子2、受光素子6及び屈折率可変部7を一体型にした光集積ユニットを組み込んだ光ピックアップ装置を一例として挙げたが、従来例である図16のように各部品が集積されていない構造の光ピックアップ装置であっても同様に適用可能である。
【0060】
以上により、受光素子上部に接して屈折率可変層を設けることで、FES振幅の正及び負成分のバランスの変化させることができ、且つジッタ,BER及び合焦ずれ量の補正を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は本発明の一実施形態の光ピックアップ装置の模式断面図である。
【図2】図2は上記光ピックアップ装置の受光素子及び屈折率可変部の模式断面図である。
【図3】図3は図2の拡大図である。
【図4A】図4Aは上記光ピックアップ装置の要部の模式断面図である。
【図4B】図4Bは上記光ピックアップ装置の受光素子の受光エリア部の光スポットを説明するための図である。
【図4C】図4Cは上記光ピックアップ装置の受光素子により検出されるFESを説明するための図である。
【図4D】図4Dは上記光ピックアップ装置のフォーカスオフセットに対するジッタの特性を説明するための図である。
【図4E】図4Eは上記光ピックアップ装置のフォーカスオフセットに対するビットエラーレートの特性を説明するための図である。
【図5A】図5Aは上記光ピックアップ装置の要部の模式断面図である。
【図5B】図5Bは上記光ピックアップ装置の受光素子の受光エリア部の光スポットを説明するための図である。
【図5C】図5Cは上記光ピックアップ装置の受光素子により検出されるFESを説明するための図である。
【図5D】図5Dは上記光ピックアップ装置のフォーカスオフセットに対するジッタの特性を説明するための図である。
【図5E】図5Eは上記光ピックアップ装置のフォーカスオフセットに対するビットエラーレートの特性を説明するための図である。
【図6A】図6Aは上記光ピックアップ装置の要部の模式断面図である。
【図6B】図6Bは上記光ピックアップ装置の受光素子の受光エリア部の光スポットを説明するための図である。
【図6C】図6Cは上記光ピックアップ装置の受光素子により検出されるFESを説明するための図である。
【図6D】図6Dは上記光ピックアップ装置のフォーカスオフセットに対するジッタの特性を説明するための図である。
【図6E】図6Eは上記光ピックアップ装置のフォーカスオフセットに対するビットエラーレートの特性を説明するための図である。
【図7】図7は上記光ピックアップ装置の液晶層の光路長と上記光ピックアップ装置の液晶層の印加電圧との関係を示すグラフである。
【図8】図8は上記光ピックアップ装置の組立調整を示すフローチャートである。
【図9】図9は上記光ピックアップ装置の液晶層駆動電圧調整を示すフローチャートである。
【図10】図10は従来の光ピックアップ装置の模式断面図である。
【図11】図11は上記従来の光ピックアップ装置の回折格子及びを上方から見た模式図である。
【図12A】図12Aは上記従来の光ピックアップ装置の要部の模式断面図である。
【図12B】図12Bは上記従来の光ピックアップ装置の受光素子の受光エリア部の光スポットを説明するための図である。
【図12C】図12Cは上記従来の光ピックアップ装置の受光素子により検出されるFESを説明するための図である。
【図12D】図12Dは上記従来の光ピックアップ装置のフォーカスオフセットに対するジッタの特性を説明するための図である。
【図12E】図12Eは上記従来の光ピックアップ装置のフォーカスオフセットに対するビットエラーレートの特性を説明するための図である。
【図13A】図13Aは上記従来の光ピックアップ装置の要部の模式断面図である。
【図13B】図13Bは上記従来の光ピックアップ装置の受光素子の受光エリア部の光スポットを説明するための図である。
【図13C】図13Cは上記従来の光ピックアップ装置の受光素子により検出されるFESを説明するための図である。
【図13D】図13Dは上記従来の光ピックアップ装置のフォーカスオフセットに対するジッタの特性を説明するための図である。
【図13E】図13Eは上記従来の光ピックアップ装置のフォーカスオフセットに対するビットエラーレートの特性を説明するための図である。
【図14A】図14Aは上記従来の光ピックアップ装置の要部の模式断面図である。
【図14B】図14Bは上記従来の光ピックアップ装置の受光素子の受光エリア部の光スポットを説明するための図である。
【図14C】図14Cは上記従来の光ピックアップ装置の受光素子により検出されるFESを説明するための図である。
【図14D】図14Dは上記従来の光ピックアップ装置のフォーカスオフセットに対するジッタの特性を説明するための図である。
【図14E】図14Eは上記従来の光ピックアップ装置のフォーカスオフセットに対するビットエラーレートの特性を説明するための図である。
【図15】図15は図11のXV−XV線断面図である。
【図16】図16は他の従来の光ピックアップ装置の模式断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1,101 半導体レーザ
2 回折素子
22b 回折格子
3,103 コリメートレンズ
4,104 対物レンズ
5,105 光ディスク
6,24a,24b 受光素子
6a P型半導体基板
6b N型エピタキシャル層
6c P型分離拡散層
6d P型埋め込み拡散層
6e N型埋め込み拡散層
6f P型拡散層
6g 窒化膜
6h 遮光膜
7 屈折率可変部
8 液晶層
9 ステム
10 ガラス基板
11a,11b 接着材
12 導電性粒子入り接着材
13 偏光板
14a,14b 透明電極
15a,15b,15c 光スポット
16a,16b,16c FES曲線
17a,17b,17c ジッタ特性曲線
18a,18b,18c BER特性曲線
19 液晶層印加電圧―光路長特性曲線
120 偏光ビームスプリッタ
121 1/4波長板
122 集光レンズ
123 ナイフエッジプリズム
124a,124b 受光素子
125 屈折率可変プレート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換するための光入射面を有する受光部と、
上記光入射面に接するように配置された屈折率可変部と
を備え、
上記屈折率可変部の屈折率を可変することにより、上記光入射面に入射する光の上記屈折率可変部の光路長を調整することを特徴とする光半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光半導体装置において、
上記屈折率可変部は、
液晶と、
上記液晶を挟む透明基板と、
上記液晶に電圧を加えるための透明電極と
を少なくとも有することを特徴とする光半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光半導体装置において、
上記屈折率可変部は、上記透明基板上に配置された偏光板を有することを特徴とする光半導体装置。
【請求項4】
半導体レーザと、上記半導体レーザが出射した出射光を光記録媒体に集光するための光学系とを少なくとも備えた光ピックアップ装置において、
請求項1に記載され、上記光記録媒体による上記出射光の反射光を受光する光半導体装置と、
上記光半導体装置の上記屈折率可変部の屈折率を調整して、ジッタ、ビットエラーレート及び合焦ずれ量を所定値に設定する調整手段とを備えたことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項1】
光電変換するための光入射面を有する受光部と、
上記光入射面に接するように配置された屈折率可変部と
を備え、
上記屈折率可変部の屈折率を可変することにより、上記光入射面に入射する光の上記屈折率可変部の光路長を調整することを特徴とする光半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光半導体装置において、
上記屈折率可変部は、
液晶と、
上記液晶を挟む透明基板と、
上記液晶に電圧を加えるための透明電極と
を少なくとも有することを特徴とする光半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光半導体装置において、
上記屈折率可変部は、上記透明基板上に配置された偏光板を有することを特徴とする光半導体装置。
【請求項4】
半導体レーザと、上記半導体レーザが出射した出射光を光記録媒体に集光するための光学系とを少なくとも備えた光ピックアップ装置において、
請求項1に記載され、上記光記録媒体による上記出射光の反射光を受光する光半導体装置と、
上記光半導体装置の上記屈折率可変部の屈折率を調整して、ジッタ、ビットエラーレート及び合焦ずれ量を所定値に設定する調整手段とを備えたことを特徴とする光ピックアップ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図13E】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図12E】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図13E】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−66543(P2006−66543A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−245802(P2004−245802)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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