説明

光半導体装置用リードフレーム、その製造方法および光半導体装置

【課題】特に近紫外領域の反射率特性が良好であり、長期に輝度の低下が生じない光半導体装置用リードフレーム、その製造方法および光半導体装置を提供する。
【解決手段】導電性基体上に銀または銀合金からなる層が形成された光半導体装置用リードフレームであって、最外層として金、金合金、パラジウム、およびパラジウム合金からなる群から選ばれた金属またはその合金からなる表層を有し、該表層と前記銀または銀合金からなる層との間に、前記表層の主成分である金属材料と銀との固溶体層が形成され、前記固溶体層は、前記表層側から濃度分布を有する光半導体装置用リードフレーム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体装置用リードフレーム、その製造方法および光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光半導体装置用リードフレームは、LED(Light Emitting Diode)素子等の光半導体素子である発光素子を光源に利用した各種表示用・照明用光源の構成部材として広く利用されている。その光半導体装置は、例えば基板にリードフレームを配し、そのリードフレーム上に発光素子を搭載した後、熱、湿気、酸化等の外部要因による発光素子やその周辺部位の劣化を防止するため、発光素子とその周囲を樹脂で封止している。
【0003】
ところで、LED素子を照明用光源として用いる場合、リードフレームの反射材には可視光波長(400〜700nm)の全領域において反射率が高い(例えば反射率80%以上)ことが求められる。さらに近年、紫外線を用いる測定・分析機器の光源としてもLED素子が用いられるようになり、その反射材には300nm前後の波長において反射率が高いことが求められる。したがって、照明用光源として用いる場合の光半導体装置では、反射材の反射特性が製品性能を左右する極めて重要な要素となる。
【0004】
このような要求に応じて、LED素子の直下に相当するリードフレーム上には、光反射率(以下、反射率という)の向上を目的として、銀または銀合金からなる層(皮膜)が形成されているものが多い。例えば、銀めっき層を反射面に形成すること(特許文献1)、銀または銀合金皮膜形成後に200℃以上で30秒以上の熱処理を施し、当該皮膜の結晶粒径を0.5μm〜30μmとすること(特許文献2)等が知られている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術のように、銀または銀合金からなる皮膜を単純にリードフレーム上に形成しただけの場合、近紫外領域に相当する波長300nm〜400nm近傍の領域での光の反射率の低下が大きい。なお、純銀はマイグレーションが生じやすいという問題もある。また、特許文献2に記載の技術のように、結晶粒径を0.5μm以上とした場合、可視光領域の光の反射率には若干の改善が見られるものの、近紫外領域の光については、特許文献1に記載の技術と同様に反射率の低下が大きかった。
【0006】
さらに、特許文献1および2に記載のリードフレームを、LED素子を用いた光半導体装置に用いたところ、経時的に輝度が低下することが分かった。これは、LED素子やその周辺を封止した樹脂に微量ながら含有された硫黄成分が、LED素子が発光した際の発熱によって銀を硫化させて黒色化させていることに起因することが分かった。
【0007】
この問題を解決するために、各種貴金属による被覆を施すことにより銀または銀合金からなる皮膜における銀の硫化を防止するという方法がある。例えば、ニッケル下地層上にパラジウム層を0.005〜0.15μm、最表層としてロジウム層を0.003〜0.05μm形成して、反射率を向上させるという方法が提案されている(特許文献3)。しかしながら、このような方法で形成されたリードフレームは、銀または銀合金からなる皮膜を施したリードフレームよりも反射率が劣り、照明用光源として可視光域に要求される反射率80%以上というレベルに到達することが難しい。特にロジウム層には銀層よりも反射率を20%以上も低下してしまう箇所が存在するため、青色系や白色系の光半導体装置において、反射率の要求特性を満たせていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭61−148883号公報
【特許文献2】特開2008−016674号公報
【特許文献3】特開2005−129970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、特に近紫外領域の反射率特性が良好であり、長期に輝度の低下が生じない光半導体装置用リードフレーム、その製造方法および光半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題に鑑み誠意検討を進めた結果、銀または銀合金からなる層の表面に、耐食性に優れた金属またはその合金からなる表層を形成し、その表層の耐食性に優れた金属成分の濃度は表層の最表部において50質量%以上であって、かつその被覆厚を0.001〜0.25μmとし、さらに該表層と前記銀または銀合金からなる層との間に固溶体層を形成させると、近紫外領域の反射特性の長期的安定性に優れた半導体装置用リードフレームが得られることを見出し、この知見に基づき本発明をなすに至った。
【0011】
すなわち、上記課題は以下の手段により解決される。
(1)導電性基体上に銀または銀合金からなる層が形成された光半導体装置用リードフレームであって、最外層として耐食性に優れた金属またはその合金からなる表層を有し、その表層の耐食性に優れた金属成分の濃度は、前記表層の最表部において50質量%以上であって、かつその被覆厚が0.001〜0.25μmであり、該表層と前記銀または銀合金からなる層との間には、前記表層の主成分である金属材料と銀との固溶体層が形成され、
前記表層の耐食性に優れた金属またはその合金は、金、金合金、パラジウム、およびパラジウム合金からなる群から選ばれた半導体装置用リードフレームであって、前記固溶体層は、前記表層を形成する主たる金属成分を含み、かつ該金属成分は前記表層側から前記銀または銀合金からなる層側にかけて濃度分布を有し、前記金属成分の前記固溶体層における濃度分布は、前記表層側が高く、該表層と前記銀または銀合金からなる層側が低いことを特徴とする光半導体装置用リードフレーム。
(2)前記導電性基体は、銅、銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなることを特徴とする(1)に記載の光半導体装置用リードフレーム。
(3)前記導電性基体と前記銀または銀合金からなる層との間に、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金、銅、および銅合金からなる群から選ばれた金属または合金からなる中間層が少なくとも1層形成されていることを特徴とする(1)乃至(2)のいずれか一項に記載の光半導体装置用リードフレーム。
(4)前記銀または銀合金からなる層の厚さが0.2〜5.0μmであることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の光半導体装置用リードフレーム。
(5)前記表層は、常温で銀または銀合金と固溶体を形成することが可能な材料で形成されていることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の光半導体装置用リードフレーム。なお、ここで、常温とは25℃を意味するものとする。
(6)(1)乃至(5)のいずれか一項に記載の光半導体装置用リードフレームの製造方法であって、前記銀または銀合金層の表面に、前記表層を形成した後、100℃以上の温度でかつ表層を形成する材料と銀または銀合金と固溶体を形成することが可能な温度を超えない温度範囲において加熱処理を施し、表層を形成する材料を銀または銀合金からなる層の内部に拡散させることを特徴とする光半導体装置用リードフレームの製造方法。
(7)(1)乃至(5)のいずれか一項に記載の光半導体装置用リードフレームの製造方法であって、前記銀または銀合金からなる層を電気めっき法により形成することを特徴とする、光半導体装置用リードフレームの製造方法。
(8)(3)に記載の光半導体装置用リードフレームの製造方法であって、前記銀または銀合金からなる層および前記中間層を電気めっき法により形成することを特徴とする、光半導体装置用リードフレームの製造方法。
(9)少なくとも光半導体素子を搭載する箇所に(1)乃至(5)のいずれか一項に記載の光半導体装置用リードフレームを用いたことを特徴とする光半導体装置。
なお、本発明において「耐食性に優れた金属またはその合金」とは、硫化試験(JIS H8502−1999参照)において、硫化水素(HS)を含有する空気中に24時間保持した後でも、変色が発生しないものをいい、具体的には、硫化水素を3体積%含有する空気中で24時間保持する硫化試験実施後のレイティングナンバー(RN)が9以上である金属、合金をいう。
【発明の効果】
【0012】
本発明のリードフレームは、最外層として、耐食性に優れた金属またはその合金からなる表層が形成され、かつ銀または銀合金からなる層に含まれる銀が金属間化合物を形成せずに固溶体層を形成し、さらにその下層に銀または銀合金として残存することにより、銀または銀合金の良好な反射率特性をもち、密着性に優れ、良好な電気伝導率を確保することができる。これらの効果により長期信頼性の高い光半導体用リードフレームを得ることができる。
【0013】
本発明の上記及び他の特徴及び利点は、適宜添付の図面を参照して、下記の記載からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明に係る光半導体装置用リードフレームの一実施態様の概略断面図である。
【図2】図2は、本発明に係る光半導体装置用リードフレームの別の実施態様の概略断面図である。
【図3】図3は、本発明に係る光半導体装置用リードフレームのさらに別の実施態様の概略断面図である。
【図4】図4は、本発明に係る光半導体装置用リードフレームのさらに別の実施態様の概略断面図である。
【図5】図5は、本発明に係る光半導体装置用リードフレームのさらに別の実施態様の概略断面図である。
【図6】図6は、本発明に係る光半導体装置用リードフレームのさらに別の実施態様の概略断面図である。
【図7】図7は、本発明に係る光半導体装置用リードフレームのさらに別の実施態様の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のリードフレームは、最外層として、銀または銀合金からなる層の表面に、耐食性に優れた金属またはその合金からなる表層が形成されることにより、近紫外領域の光の反射率低下も抑制することができる。特に波長300nm付近の光の反射率は、導電性基体上に銀または銀合金からなる層のみを設けた場合には数%程度と低かったが、銀または銀合金からなる層の表面に耐食性に優れた金属またはその合金からなる表層を形成することにより、数十%にまで向上することができる。
【0016】
また、本発明のリードフレームは、最外層として、耐食性に優れた金属またはその合金からなる表層が形成されることにより、銀または銀合金からなる層が露出せず、よって湿度等の影響により銀が溶出してマイグレーションを起こし、形成された回路内での短絡事故を起こす可能性が低減する。また、銀または銀合金からなる層の表面に、耐食性に優れた金属またはその合金からなる表層が形成されることにより、銀または銀合金からなる層の硫化を抑制することができ、よって銀または銀合金からなる層の変色が抑制される。これらの作用により、本発明のリードフレームを光半導体素子、例えば、LED素子に用いた場合、光半導体装置を10000時間以上の長期にわたって発光(点灯)させても、当該光半導体装置の輝度低下を数%程度に抑制することが可能である。
【0017】
さらに、表層と銀または銀合金からなる層との間に、表層の主成分である金属材料と銀との固溶体層が形成されていることにより、表層と銀または銀合金からなる層の間の密着力も向上する。これは、前記固溶体層中において、前記表層を形成する主たる金属成分が表層側から前記銀または銀合金からなる層側にかけて濃度分布を有していることにより、表層と銀または銀合金からなる層の間の格子歪が緩和されて整合性が向上し、よって密着性も向上するものである。
すなわち、本発明のリードフレームは、近紫外領域から近赤外領域までの幅広い波長帯の反射率特性が良好で、かつ長期信頼性の高い光半導体装置のリードフレームとして利用できる。
【0018】
ここで、表層を合金で形成する場合、銀または銀合金からなる層と固溶体層を形成することが可能な合金系であれば良く、例えば、表層として錫(Sn)−金(Au)合金を選択することが可能である。この場合、銀または銀合金からなる層の上に錫層を形成し、該錫層上に金層を形成して、適切な加熱処理を行うことにより、表層はSn−Au層、固溶体層はAg−Sn−Auで形成される。
【0019】
また、本発明のリードフレームは、表層に含まれる耐食性に優れた金属の濃度が、表層の最表部において50質量%以上であることにより、銀または銀合金からなる層が硫黄成分と結合して変色することを抑制できる。なお、表層の最表部に含まれる耐食性に優れた金属の濃度は、65質量%以上がさらに好ましい。ここで本発明における最表部とは、表層の表面から内部へ0.0005〜0.001μmまでの部分を示すものとし、この部分の金属濃度は実施例に示すAES測定装置の定量分析により測定することができる。
一方、この耐食性に優れた金属は、以下に述べる固溶体層の形成に関与するが、銀または銀合金層に拡散して固溶体層形成を促進する割合は、被覆された最表層金属量のうち5〜50質量%であることが好ましく、5〜35質量%であることがより好ましく、5〜15質量%がさらに好ましい。なお、形成された固溶体は表層の最表部に存在しなくてもよいので、表層の最表部に含まれる耐食性に優れた金属の濃度は不可避不純物を除き100質量%であってもよい。
【0020】
本発明のリードフレームは、固溶体層が表層を形成する主たる金属成分を含み、かつ該金属成分は前記表層側から該表層と前記銀または銀合金からなる層側にかけて濃度分布を有していることにより、表層と銀または銀合金からなる層の密着性を向上し、よって熱や格子歪などによる内部応力を緩和して耐熱性を向上させることができる。また、濃度分布を持つことで、例えばプレス工程による塑性変形で表層が失われた後の表面や、表層に存在するピンホールを通じて、内部に侵入した硫黄成分が、銀または銀合金と反応して硫化する程度が深さ方向でも低減できるため、より耐食性を向上させることができる。
【0021】
また、本発明のリードフレームは、導電性基体を銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金とすることにより、反射率特性がよくかつその表面に皮膜を形成することが容易であり、かつコストダウンにも寄与することができる。さらに、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金を導電性基体に用いた本発明のリードフレームは、放熱特性に優れており、発光素子が発光する際に発生する発熱(熱エネルギー)を、リードフレームを介してスムーズに外部に放出することができることによるものである。このことにより、発光素子の長寿命化および長期にわたる反射率特性の安定化が見込まれる。
【0022】
また、本発明のリードフレームは、導電性基体と銀または銀合金からなる層との間に、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金、銅、および銅合金からなる群から選ばれた金属または合金からなる中間層が少なくとも1層形成されていることにより、発光素子が発光する際に発生する発熱によって導電性基体を構成する材料が銀または銀合金からなる層へ拡散することによる反射率特性の劣化を防ぎ、反射率特性が長期にわたってより信頼性の高いものとなり、また、基体と銀または銀合金からなる層との密着性も向上する。ここで、当該中間層の厚さは、プレス性、コスト、生産性、耐熱性等を考慮して決定される。通常の条件の場合、当該中間層の総厚は、0.2〜2μmであることが好ましく、さらには0.5〜1μmが好ましい。また、中間層を複数の層で形成することも可能であるが、通常は生産性を考慮し、2層以下とすることが好ましい。
【0023】
また、本発明のリードフレームは、長期信頼性の確保、良好な反射率特性、さらにはプレス性や曲げ加工性を良好とするため、銀または銀合金からなる層の厚さを0.2μm以上5.0μm以下とすることが好ましい。薄すぎると反射特性が不十分となる一方、厚すぎるとプレス時や曲げ加工を行った際に割れが発生しやすくなるためである。
【0024】
また、本発明のリードフレームの表層に用いる耐熱性に優れた金属またはその合金が、金、金合金、インジウム、インジウム合金、パラジウム、パラジウム合金、錫、錫合金からなる群から選ばれることにより、耐食性や生産性を良好とすることができ、好ましい。なお、信頼性の観点からは、表層の厚さを0.001μm以上0.25μm以下とすることにより光の反射率を低下させることなく長期信頼性を確保することができる。これは、表層の厚さが薄すぎると、耐食性や波長300nmにおける反射率向上効果が不十分となり、また、表層の厚さが厚すぎると可視光領域での反射率が不十分になり、かつ曲げ加工性が悪化するためである。
【0025】
また、本発明のリードフレームの製造方法は、銀または銀合金層の表面に、表層を形成した後、100℃以上の温度でかつ表層を形成する材料と純銀との間で固溶体を形成することが可能な温度を超えない温度範囲において加熱処理を施し、表層を形成する材料を最表層にはその表層の耐食性に優れた金属成分を上記濃度で残存させつつ、残りの成分を銀または銀合金からなる層の内部に拡散させることにより、固溶体形成を促進し、溶体化処理を行うものである。熱処理温度は、好ましくは100〜300℃であり、基材が熱処理で軟化や変質しない温度を選択する必要がある。加熱処理時間は0.25〜48時間の範囲で行うことが好適である。また、加熱処理方法は、バッチ処理やインライン等の加熱処理方法を適宜選択することができる。
【0026】
また、加熱処理雰囲気は、酸素濃度が高いほど表層の酸化を促す可能性があるため、好ましくはアルゴンや窒素、一酸化炭素などの不活性や還元雰囲気ガス中で処理するのが望ましい。さらに好ましくは、残留酸素が1000ppm以下の雰囲気とすることが望ましい。しかしながら、加熱処理の際に僅かな残留酸素の影響により最表部が酸化皮膜で覆われてしまう場合は、加熱処理後に還元性の酸(たとえば希硫酸や希塩酸)に浸漬し、カソード電解法により酸化皮膜を除去する等の方法で対処することが望ましい。当該酸化皮膜は数Åレベルであるため、これらの除去処理を行っても特性上に悪影響は生じず、むしろ表面が活性化されてワイヤーボンディング性が向上するという効果を得ることができる。
【0027】
また、本発明のリードフレームの製造方法は、銀または銀合金からなる層を電気めっき法により形成することにより、当該銀または銀合金からなる層の厚さを容易に調整することができる。また、他の形成方法としてはクラッド法やスパッタ法があるが、これらの方法では、厚さの制御が難しくかつコストが高くなる。また、電気めっき法は、形成される銀または銀合金からなる層中に結晶粒界を多数形成できるので、拡散で固溶体層を形成するために有効である。
【0028】
また、本発明の光半導体装置は、少なくとも光半導体素子を搭載する箇所に本発明のリードフレームを用いたことにより、低コストで効果的に反射率特性を得ることができる。これは、光半導体素子の搭載部にのみ表層を形成することで、銀または銀合金からなる層の変質が防止できれば反射率特性に大きく影響を与えないためである。例えば樹脂封止を行う箇所については銀又は銀合金からなる層が表面に露出していても良い。この場合、表層は銀または銀からなる層上に部分的に形成されていてもよく、例えばストライプめっきやスポットめっきなどの部分めっきで形成しても良い。部分的に形成されるリードフレームを製造することは、不要となる部分の金属使用量を削減できるので、環境に易しく低コストである光半導体装置とすることができる。なお、ここで、銀または銀合金からなる層を表面に露出させると容易に半田濡れ性が確保でき、実装時に有用であるという効果を得ることができる。
【0029】
図1は、本発明に係る光半導体装置用リードフレームの一実施態様の概略断面図である。ただし、図1では、リードフレームに光半導体素子5が搭載されている状態で示されている(以下の図2〜8でも同様である)。
図1に示すように、本実施態様のリードフレームは、導電性基体1上に銀または銀合金からなる層2が形成され、最外層として耐食性に優れた金属またはその合金からなる表層4を有し、該表層4と前記銀または銀合金からなる層2との間には、前記表層の主成分である金属材料と銀との固溶体層3が形成されており、表層4の一部の表面上に光半導体素子5が搭載されている。本発明において、本発明のリードフレームは、近紫外可視光域の反射特性に優れ、かつ耐食性および長期信頼性に優れた光半導体装置用リードフレームとなる。
【0030】
前記導電性基体1は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄または鉄合金などを用いることができるが、放熱性に優れた基体としては、好ましくは銅、銅合金、アルミニウム、およびアルミニウム合金からなる群から選ばれた金属または合金である。導電性基体1を銅または銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金とすることで、表層4を形成することが容易となり、コストダウンにも寄与できるリードフレームを提供することができる。また、これらリードフレームは導電率が良好であることと関連した特性である熱伝達率が良いことから放熱特性に優れており、光半導体素子が発光する際に発生する発熱(熱エネルギー)を、リードフレームを介してスムーズに外部に放出することができることによるものである。このことにより、発光素子の長寿命化および長期にわたる反射率特性の安定化が見込まれる。
また、本発明において「反射特性が良好」とは、波長400nm以上の可視光領域において反射率が80%以上、かつ波長400nm未満の近紫外領域において反射率が30%以上となることを意味する。なお、反射特性に関しては、波長400nm以上の可視光領域において反射率が70%以上であれば、用途により許容されることもある。
【0031】
前記銀または銀合金からなる層2の厚さは、0.2〜5.0μmであることが好ましく、1.0〜3.0μmであることがさらに好ましい。この厚さは銀または銀合金からなる層2の被覆厚さを調整することで実現可能であり、必要以上に貴金属を使用することなく安価に製造することができる。ここで、前記銀または銀合金からなる層2は、厚さが薄すぎると反射率への寄与が十分ではなく、一方、厚すぎると効果が飽和しているため、コスト高になる。
【0032】
前記銀または銀合金からなる層に用いる銀合金は、例えば、銀−錫合金、銀−インジウム合金、銀−ロジウム合金、銀−ルテニウム合金、銀−金合金、銀−パラジウム合金、銀−ニッケル合金、銀−セレン合金、銀−アンチモン合金、銀−銅合金、銀−亜鉛合金、銀−ビスマス合金などがあげられ、銀−錫合金、銀−インジウム合金、銀−ロジウム合金、銀−ルテニウム合金、銀−金合金、銀−パラジウム合金、銀−ニッケル合金、銀−セレン合金、銀−アンチモン合金および銀−銅合金からなる群から選ぶことが好ましい。
【0033】
これらの合金は形成するのに比較的容易であり、また、純銀よりは劣るものの、可視光域で反射率として80%以上を確保できるため、広い波長域の光に対して良好な反射特性を得ることができる。さらに、合金化することによって銀の硫化を生じにくくさせ、より一層の耐食性が維持される。なお、銀合金中の銀含有率が低くなりすぎると反射率が大幅に低下してしまうため、当該銀含有率は80質量%以上であることが好ましい。
【0034】
上記のように、最外層として、耐食性に優れた金属またはその合金からなる表層4を耐食性に優れた金属成分の濃度を最表部において50質量%以上、好ましくは65質量%以上で形成することにより、銀または銀合金の長期信頼性を確保することができる。
【0035】
本発明のリードフレームは、導電性基体1上に銀または銀合金からなる層2を形成したのち、表層4を形成した後、100℃以上の温度でかつ表層4を形成する材料と銀または銀合金と固溶体を形成することが可能な温度を超えない温度範囲において加熱処理を施すことにより製造することができる。なお、前記銀または銀合金からなる層2は電気めっき法により形成することが好ましい。また、光半導体素子5としては、LED素子等の任意の光半導体素子を用いることができる。
【0036】
図2は、本発明に係る光半導体装置用リードフレームの別の実施態様の概略断面図であり、図1に示す態様のリードフレームに対し、導電性基体1および銀または銀合金からなる層2との間に、中間層6が形成されている。
中間層6は、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金、銅、銅合金からなる群から選ばれた金属または合金からなることが好ましい。
導電性基体1および銀または銀合金からなる層2との間に、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金、銅または銅合金からなる中間層6を設けることで、光半導体素子の発熱によって導電性基体を構成する材料が銀または銀合金からなる層へ拡散することによる反射率特性の劣化を防ぎ、長期にわたって信頼性の高い反射率特性を得ることができる。
【0037】
図3は、本発明に係る光半導体装置用リードフレームのさらに別の実施態様の概略断面図であり、光半導体素子5が搭載される部分にのみ表層4、固溶体層3、銀または銀合金からなる層2が形成されている様子を示している。本発明においてはこのように、黒色化してしまうと問題となる部分にのみに表層4、固溶体層3、銀または銀合金からなる層2を形成することも可能である。本実施態様において、中間層6は導電性基体1の全面に形成されているが、導電性基体1と銀または銀合金からなる層2との間に介在する形態であれば、部分的な形成であってもよい。
なお、図3中の説明において、特に言及しない符号については、図1または2における符号と同じ意味を表すこととする(以下の図においても同様である)。
【0038】
図4は、本発明に係る光半導体装置用リードフレームのさらに別の実施態様の概略断面図であり、図3に示す光半導体装置用リードフレームと同様、光半導体素子5が搭載される部分にのみ表層4、固溶体層3、銀または銀合金からなる層2が形成されており、さらに固溶体層3において表層4を構成する主たる金属成分が前記表層4側から前記銀または銀合金からなる層側2にかけて濃度分布を有しているものである。
【0039】
図5は、図2に示す態様と同様の光半導体装置用リードフレームの概略断面図であり、リードフレーム両面に光半導体素子5を搭載している。この態様のように、片面だけでなく両面を使用して光半導体装置を構成することも可能である。
【0040】
図6は、本発明に係る光半導体装置用リードフレームのさらに別の実施態様の概略断面図であり、導電性基体1に凹部を設けてその凹部内側に光半導体素子5を搭載するものである。この実施形態のように、本発明の光半導体装置用リードフレームは、凹部を設けて集光性を向上させたようなリードフレーム形状にも適応することができる。
【0041】
図7は、本発明に係る光半導体装置用リードフレームのさらに別の実施態様の概略断面図であり、導電性基体1に凹部を設けてその凹部内側に光半導体素子5を搭載するものであり、なおかつその凹部にのみ表層4および固溶体層3が形成されている。凹部を有するリードフレームにおいても、このように、光半導体素子の発光する光の反射に寄与する部分にのみ層4および固溶体層3を設けることにより、適宜反射部のみの耐食性を向上させることもできる。
【0042】
半導体装置用リードフレームの製造は任意の方法を用いることができるが、銀または銀合金からなる層2、表層4および中間層6は電気めっき法により形成することが好ましい。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
実施例1として、厚さ0.3mm、幅50mmの表1に示す導電性基体に以下に示す前処理を行った後、以下に示す電気めっき処理を施すことにより、表1に示す構成の参考例1〜28、本発明例1〜3、従来例1、および比較例1〜2のリードフレームを作成した。
各リードフレームの層構成は、参考例1〜5は導電性基体、銀または銀合金からなる層、固溶体層、表層の順に形成されたものであり、参考例6〜28、本発明例1〜3および比較例1〜2では導電性基体、中間層、銀または銀合金からなる層、固溶体層、表層の順に形成されたものであり、従来例1は導電性基体、中間層、銀または銀合金層の順に形成されたものである。
【0045】
なお、表1に示す、中間層厚、銀または銀合金層厚(「銀層厚」として示した)、表層厚は、平均値(任意の10点の測定値の算術平均)としての厚さである。各層厚は、蛍光X線膜厚測定装置(SFT9400:商品名、SII社製)を用いて測定した。
【0046】
また、導電性基体として用いられた材料のうち、「C19400」、「C11000」、「C26800」、「C52100」、および「C77000」は銅または銅合金基体を表し、Cの後の数値はCDA(Copper Development Association)規格による種類を示す。
また、「A1100」、「A2014」、「A3003」、および「A5052」はアルミニウムまたはアルミニウム合金基体を表し、Aの後の数値はJISによる種類を示す。
また、「SUS304」、および「42アロイ」は鉄系基体を表し、「SUS304」はJIS規定の当該種のステンレス鋼、「42アロイ」は42%Ni含有鉄合金を表す。
【0047】
前処理としては、導電性基体のうち、銅基体、銅合金基体、および鉄系基体については、下記電解脱脂、次いで下記酸洗を行った。また、アルミニウム基体およびアルミニウム合金基体については、以下の電解脱脂、酸洗、亜鉛置換を行った。なお、銀または銀合金めっきを施す前に銀ストライクめっきを厚さ0.01μmで施した。
【0048】
(前処理条件)
[電解脱脂]
脱脂液:NaOH 60g/リットル
脱脂条件:2.5A/dm、温度60℃、脱脂時間60秒
[酸洗]
酸洗液:10%硫酸
酸洗条件:30秒 浸漬、室温
[亜鉛置換]基体がアルミニウムの時に使用
亜鉛置換液:NaOH 500g/リットル、ZnO 100g/リットル、酒石酸(C) 10g/リットル、FeCl 2g/リットル
処理条件:30秒 浸漬、室温
[Agストライクめっき]被覆厚0.01μm
めっき液:KAg(CN) 5g/リットル、KCN 60g/リットル、
めっき条件:電流密度 2A/dm、めっき時間 5秒、温度 25℃
【0049】
実施例1において使用した各めっきのめっき液組成およびめっき条件を以下に示す。
(めっき条件)
[Agめっき]
めっき液:AgCN 50g/リットル、KCN 100g/リットル、KCO 30g/リットル
めっき条件:電流密度 1A/dm、温度 30℃
[Cuめっき]
めっき液:CuSO・5HO 250g/リットル、HSO 50g/リットル、NaCl 0.1g/リットル
めっき条件:電流密度 6A/dm、温度 40℃
[Niめっき]
めっき液:Ni(SONH・4HO 500g/リットル、NiCl 30g/リットル、HBO 30g/リットル
めっき条件:電流密度 5 A/dm、温度 50℃
[Coめっき]
めっき液:Co(SONH・4HO 500g/リットル、CoCl 30g/リットル、HBO 30g/リットル
めっき条件:電流密度 5A/dm、温度 50℃
【0050】
[Auめっき]
めっき液:KAu(CN) 14.6g/リットル、C 150g/リットル、K 180g/リットル
めっき条件:電流密度 1A/dm、温度 40℃
[Au−Coめっき]Au−0.3%Co
めっき液:KAu(CN) 14.6g/リットル、C 150g/リットル、K 180g/リットル、EDTA−Co(II) 3g/リットル、ピペラジン 2g/リットル
めっき条件:電流密度 1A/dm、温度 40℃
【0051】
[Pdめっき]
めっき液:Pd(NHCl 45 g/リットル、NHOH 90ミリリットル/リットル、(NHSO 50g/リットル
めっき条件:電流密度 1A/dm、温度 30℃
[Snめっき]
めっき液:SnSO 80g/リットル、HSO 80g/リットル
めっき条件:電流密度 2A/dm、温度 30℃
[Inめっき]
めっき液:InCl 45 g/リットル、KCN 150g/リットル、KOH 35g/リットル、デキストリン 35g/リットル
めっき条件:電流密度 2A/dm、温度 20℃
【0052】
【表1】

【0053】
(固溶体層形成処理条件)
下記の条件で表1に記載のめっき処理を行った各サンプルに対して、残留酸素濃度100ppm以下のアルゴンガス雰囲気中で、100℃で12時間の加熱処理を行い、固溶体層を形成した。本処理において固溶体を形成後、表層の最表部をAES測定装置において耐食性に優れた金属成分の濃度を確認したところ、耐食性に優れた金属成分の濃度はすべて50質量%以上であった。
【0054】
(評価方法)
得られた、本発明例、比較例、参考例、および従来例のリードフレームについて、下記試験および基準により評価を行った。その結果を表2に示す。
(1)反射率測定:分光光度計(U−4100(商品名、株式会社日立ハイテクノロジーズ製))において、全反射率を300nm〜800nmにかけて連続測定を実施した。このうち、300nm、600nm、および800nmにおける反射率(%)を表2に示す。
(2)固溶体層厚:AES測定装置(Model−680(商品名、アルバック・ファイ株式会社製))において、深さ方向分析を実施、スパッタレートを厚さに換算して各層の厚さを算出した。
(3)耐食性:硫化試験(JIS H8502記載)、HS 3ppm、24時間後の腐食状態について、レイティングナンバー(RN)評価を実施した。結果を表2に示す。なお、ここで、レイティングナンバーが9以上の場合は、光半導体素子(LED素子)を10000時間点灯しても輝度の低下が数%程度と小さいことを意味する。
(4)硫化試験後の反射率測定:反射率測定:分光光度計(U−4100(商品名、株式会社日立ハイテクノロジーズ製))において、全反射率を300nm〜800nmにかけて連続測定を実施した。このうち、600nmにおいて、硫化試験前後の反射率を比較した値(%)を表2に示す。
(5)放熱性(熱伝導性):導電性基材の導電率がIACS(International Annealed Copper Standard)で10%以上であるものを放熱性(熱伝導性)が高く、良であるとして「○」印とし、10%未満であるものを放熱性(熱伝導性)が低く、不良であるとして「×」印とし、表2に示した。これは、導電率と熱伝導性はほぼ比例関係にあり、IACSで10%以上の導電率があるものは熱伝導性がよく放熱性も高いと判断されるためである。なお、この項目は参考のために示すものであり、上記(1)〜(4)の各項目の評価を満足すれば、そのサンプルは用途を選択することにより実用上問題ない。
(6)曲げ加工性:作製したリードフレームにおいて、長さ30mm、幅10mmのサンプルを、長さ方向が圧延方向と平行になるように切り出し、プレス機(日本オートマチックマシン株式会社製)で曲げ半径R=0.5mmで曲げ加工性を調べた。加工した試験片の最大曲げ加工部を、マイクロスコープ(株式会社キーエンス製)を用いて175倍に拡大して観察し、曲げ加工性を判定した。最大曲げ加工部を観察した結果、割れが存在しないものを「良」と判定して表に「○」印を付し、シワや軽微な割れが存在するものを「可」と判定して表に「△」印を付し、大きな割れが存在するものを「不良」と判定して表に「×」印を付して、それぞれ表2に示した。曲げ加工性の評価は、「可」以上の評価のものを実用レベルとした。なお、この項目は参考のために示すものであり、上記(1)〜(4)の各項目の評価を満足すれば、そのサンプルは用途を選択することにより実用上問題ない。
【0055】
【表2】

【0056】
これらの結果から明らかなように、本発明例は、従来例よりも可視領域の反射率が若干低下する場合があるものの要求反射率を満足しており、かつ耐食性試験後の安定性が大変優れていることが分かる。特に銅、銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金上に銀または銀合金からなる層を形成し、その上層に特定の被覆層を設けることで、特に300nmでの反射率が、従来の銀または銀合金からなる層のみを設けた場合には初期段階において数%レベルだったものが数十%レベルにまで改善した。このことは、近紫外域の反射率向上によりこれらの波長を利用した光半導体に適用できる。また、硫化試験後の反射率もほとんど低下することなく、耐食性に優れたリードフレーム材が得られていることが分かり、これを光半導体装置用リードフレームに適用すれば、きわめて優れた反射率特性と長期信頼性を示すことは明らかである。
参考例25及び26においては、放熱性において「×」評価であるが、放熱性が大きく必要とされない光半導体用リードフレームについては、適宜利用することが可能である。また、参考例27においては、銀層厚が0.2μm未満であるため、反射率が不十分な箇所が見られるが、耐食性やその他の特性に関しては比較例1と比べても優れており、70%程度の反射率が許容される光半導体用リードフレームについては、適宜利用することが可能である。
また、参考例28においては、銀層厚が5.0μmを超えているため、曲げ加工性において「×」評価であるが、その他の特性に関しては比較例1と比べても優れており、曲げ加工性が重視されない用途の光半導体用リードフレームについては、適宜利用することが可能である。
【0057】
(実施例2)
実施例2として、厚さ0.3mm、幅50mmのC19400からなる銅合金からなる導電性基体に実施例1と同様の前処理および下地層にNiめっき1.0μm、Agストライクめっき0.01μm、Agめっき3.0μmの順にすべての例において処理を行った後、表層として参考例29〜31および比較例3および4は錫(Sn)めっき、参考例32はインジウム(In)めっき、本発明例4および比較例5は金(Au)めっき、本発明例5および比較例6はパラジウム(Pd)めっきで、すべての被覆厚0.02μmで電気めっき処理を行い、参考例29〜32、本発明例4〜5のリードフレームを作成した。なお、実施例2においては固溶体層形成の状態を調整するために、表3に示すように熱処理温度を100〜300℃、加熱処理時間を1〜24時間の間で各々適宜調整した。その後、表層に形成した金属成分の深さ方向における濃度(質量%)の変化を実施例1と同様にAES測定装置において測定した結果を表4に示す。なお、表4において表層金属の濃度が0の部分は、その部分において、表層金属と銀または銀合金の間で固溶体が形成されておらず、銀または銀合金のままの状態であることを示す。また、これらの数値は特定の深さにおける元素の分析濃度検出値であるので、すべての数値の合計が必ずしも100%となる必要はないことはいうまでもない。さらに、これらのサンプルについて行った耐食性の評価結果を表5に示す。
【0058】
【表3】

【0059】
【表4】

【0060】
【表5】

【0061】
この結果から明らかなように、本発明例は表層における耐食性に優れた金属の含有率が本発明で規定する割合を満たすものであるため、耐食性が十分な値を示していることがわかる。これに対し、比較例3では表層における耐食性に優れた金属の含有率が少なすぎるため耐食性が不足していることが分かる。また、さらに表層が消失し、深さ方向の濃度分布を持たないすべて固溶体となっている比較例4〜6も同様に耐食性が劣ることが分かる。この結果から、耐食性に優れた皮膜成分が本発明で規定する特定の割合で残存し、かつ濃度分布を有することで、耐食性に優れた光半導体用リードフレームが提供できることは明白である。
【0062】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0063】
本願は、2008年12月26日に日本国で特許出願された特願2008−332732に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
【符号の説明】
【0064】
1 導電性基体
2 銀または銀合金からなる層
3 固溶体層
4 表層
5 光半導体素子
6 中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体上に銀または銀合金からなる層が形成された光半導体装置用リードフレームであって、最外層として耐食性に優れた金属またはその合金からなる表層を有し、その表層の耐食性に優れた金属成分の濃度は、前記表層の最表部において50質量%以上であって、かつその被覆厚が0.001〜0.25μmであり、該表層と前記銀または銀合金からなる層との間には、前記表層の主成分である金属材料と銀との固溶体層が形成され、
前記表層の耐食性に優れた金属またはその合金は、金、金合金、パラジウム、およびパラジウム合金からなる群から選ばれた半導体装置用リードフレームであって、前記固溶体層は、前記表層を形成する主たる金属成分を含み、かつ該金属成分は前記表層側から前記銀または銀合金からなる層側にかけて濃度分布を有し、前記金属成分の前記固溶体層における濃度分布は、前記表層側が高く、該表層と前記銀または銀合金からなる層側が低いことを特徴とする光半導体装置用リードフレーム。
【請求項2】
前記導電性基体は、銅、銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項1に記載の光半導体装置用リードフレーム。
【請求項3】
前記導電性基体と前記銀または銀合金からなる層との間に、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金、銅、および銅合金からなる群から選ばれた金属または合金からなる中間層が少なくとも1層形成されていることを特徴とする請求項1乃至2のいずれか一項に記載の光半導体装置用リードフレーム。
【請求項4】
前記銀または銀合金からなる層の厚さが0.2〜5.0μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光半導体装置用リードフレーム。
【請求項5】
前記表層は、常温で銀または銀合金と固溶体を形成することが可能な材料で形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光半導体装置用リードフレーム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光半導体装置用リードフレームの製造方法であって、前記銀または銀合金層の表面に、前記表層を形成した後、100℃以上の温度でかつ表層を形成する材料と銀または銀合金と固溶体を形成することが可能な温度を超えない温度範囲において加熱処理を施し、表層を形成する材料を銀または銀合金からなる層の内部に拡散させることを特徴とする光半導体装置用リードフレームの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光半導体装置用リードフレームの製造方法であって、前記銀または銀合金からなる層を電気めっき法により形成することを特徴とする、光半導体装置用リードフレームの製造方法。
【請求項8】
請求項3に記載の光半導体装置用リードフレームの製造方法であって、前記銀または銀合金からなる層および前記中間層を電気めっき法により形成することを特徴とする、光半導体装置用リードフレームの製造方法。
【請求項9】
少なくとも光半導体素子を搭載する箇所に請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光半導体装置用リードフレームを用いたことを特徴とする光半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−146741(P2011−146741A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87432(P2011−87432)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【分割の表示】特願2010−544137(P2010−544137)の分割
【原出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】