説明

光半導体装置用硬化性組成物、光半導体装置用成形体及び光半導体装置

【課題】ポットライフが長く、更に光の反射率が良好な成形体を得ることができる光半導体装置用硬化性組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、光半導体装置1において、光半導体素子3が搭載されるプリント配線板上又はリードフレーム2上に配置される成形体4を得るために用いられる光半導体装置用硬化性組成物に関する。本発明に係る光半導体装置用硬化性組成物は、環状エーテル基を有する化合物と、硬化剤と、酸化チタンとを含む。上記硬化剤はジシアンジアミドである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体装置において、光半導体素子が搭載されるプリント配線板上又はリードフレーム上に配置される成形体を得るために用いられる光半導体装置用硬化性組成物、並びに該光半導体装置用硬化性組成物を用いた成形体及び光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)装置などの光半導体装置の消費電力は低く、かつ寿命は長い。また、光半導体装置は、過酷な環境下でも使用され得る。従って、光半導体装置は、携帯電話用バックライト、液晶テレビ用バックライト、自動車用ランプ、照明器具及び看板などの幅広い用途で使用されている。
【0003】
光半導体装置に用いられている発光素子である光半導体素子(例えばLED)が大気と直接触れると、大気中の水分又は浮遊するごみ等により、光半導体素子の発光特性が急速に低下する。このため、上記光半導体素子は、通常、光半導体装置用封止剤により封止されている。また、該封止剤を充填するために、上記光半導体素子が搭載されるプリント配線板上又はリードフレーム上に、枠状の成形体が配置されている。該枠状の成形体の内側に、上記封止剤が充填されている。該成形体は、リフレクター又はハウジングと呼ばれることがある。
【0004】
上記成形体を形成するための組成物の一例として、下記の特許文献1には、エポキシ樹脂と硬化剤と白色顔料とを含む硬化性組成物が開示されている。この硬化性組成物は、上記エポキシ樹脂として、上記硬化剤と互いに相溶であり、ポリオルガノシロキサン骨格と2つ以上のエポキシ基とを有する化合物を少なくとも含む。また、特許文献1では、上記硬化剤として、酸無水物硬化剤、イソシアヌル酸誘導体及びフェノール系硬化剤が挙げられており、実施例ではメチルヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸とが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−254919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のような従来の硬化性組成物では、ポットライフが短いことがある。従って、上記硬化性組成物を成形して成形体を得る際に、成形性が安定しないことがある。成形性を安定化させ、良好な成形体を得るために、上記硬化性組成物のポットライフは長いことが望ましい。
【0007】
また、上記成形体の内面は、光半導体素子から発せられた光を反射するために、光の反射率が高いことが望ましい。さらに、光半導体装置は使用時などに高温下に晒されることが多いので、上記成形体の耐熱性は高いことが望ましい。
【0008】
しかしながら、従来の硬化性組成物を硬化させた成形体では、該成形体の光の反射率及び耐熱性が低いことがある。成形体の光の反射率が低いと、光半導体素子から発せられた光が成形体の表面に到達したときに、光が充分に反射されず、光半導体装置から取り出される光の明るさが低くなる。
【0009】
本発明の目的は、ポットライフが長く、更に光の反射率が良好な成形体を得ることができる光半導体装置用硬化性組成物、並びに該光半導体装置用硬化性組成物を用いた成形体及び光半導体装置を提供することである。
【0010】
本発明の限定的な目的は、耐熱性が高い成形体を得ることができる光半導体装置用硬化性組成物、並びに該光半導体装置用硬化性組成物を用いた成形体及び光半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の広い局面によれば、光半導体装置において、光半導体素子が搭載されるプリント配線板上又はリードフレーム上に配置される成形体を得るために用いられる光半導体装置用硬化性組成物であって、環状エーテル基を有する化合物と、硬化剤と、酸化チタンとを含み、上記硬化剤がジシアンジアミドである、光半導体装置用硬化性組成物が提供される。
【0012】
本発明に係る光半導体装置用硬化性組成物のある特定の局面では、硬化促進剤がさらに含まれている。該硬化促進剤は、ウレア化合物又はオニウム塩化合物であることが好ましい。
【0013】
本発明に係る光半導体装置用硬化性組成物は、光半導体装置において、光半導体素子が搭載されるプリント配線板上又はリードフレーム上にかつ上記光半導体素子の側方に配置され、上記光半導体素子から発せられた光を反射する光反射部を有する成形体を得るために用いられる光半導体装置用硬化性組成物であることが好ましい。
【0014】
本発明に係る光半導体装置用成形体は、上述した光半導体装置用硬化性組成物を硬化させることにより得られる。
【0015】
本発明に係る光半導体装置は、プリント配線板又はリードフレームと、該プリント配線板上又は該リードフレーム上に搭載された光半導体素子と、上記プリント配線板上又は上記リードフレーム上に配置された成形体とを備え、該成形体が、上述した光半導体装置用硬化性組成物を硬化させることにより得られる。
【0016】
本発明に係る光半導体装置のある特定の局面では、上記成形体は、上記光半導体素子の側方に配置されており、上記成形体の内面が上記光半導体素子から発せられた光を反射する光反射部である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る光半導体装置用硬化性組成物は、環状エーテル基を有する化合物と硬化剤であるジシアンジアミドと酸化チタンとを含むので、ポットライフが長い。
【0018】
さらに、本発明に係る光半導体装置用硬化性組成物を硬化させることにより得られる成形体の光の反射率を高めることができる。従って、本発明に係る光半導体装置用硬化性組成物を用いた成形体を、光半導体素子が搭載されるプリント配線板上又はリードフレーム上に配置することにより、光半導体装置から発せられる光の明るさを明るくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る光半導体装置用硬化性組成物を用いた成形体を備える光半導体装置の一例を模式的に示す断面図及び斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
(光半導体装置用硬化性組成物)
本発明は、光半導体装置において、光半導体素子が搭載されるプリント配線板上又はリードフレーム上に配置される成形体を得るために用いられる光半導体装置用硬化性組成物である。上記成形体は、所定の形状に成形された硬化物である。本発明に係る光半導体装置用硬化性組成物は、環状エーテル基を有する化合物(A)と、硬化剤(B)と、酸化チタン(C)とを含む。本発明に係る光半導体装置用硬化性組成物では、上記硬化剤(B)はジシアンジアミドである。
【0022】
本発明に係る光半導体装置用硬化性組成物における上記組成の採用によって、硬化性組成物のポットライフを長くすることができる。このため、本発明に係る光半導体装置用硬化性組成物は成形性に優れており、均質なかつ良好な形状を有する成形体を容易に得ることができる。
【0023】
また、本発明に係る光半導体装置用硬化性組成物における上記組成の採用によって、光半導体装置用硬化性組成物を硬化させることにより得られる成形体の光の反射率を高めることができる。得られる成形体は、光の反射率が高いので、光半導体素子から発せられる光が成形体に到達したときに光を効果的に反射させる。このため、光半導体装置から取り出される光の明るさを明るくすることができる。
【0024】
さらに、本発明に係る光半導体装置用硬化性組成物における上記組成の採用によって、上記成形体の耐熱性も高めることができる。また、上記成形体は、耐熱性が高いので高温下に晒されても変色し難い。このため、光半導体装置の耐熱信頼性を高めることができ、高温下に晒されたときの光半導体装置から取り出される光の明るさの低下を抑制できる。
【0025】
上記硬化性組成物の硬化性を高くし、更に上記成形体の耐熱性をより一層高める観点からは、上記光半導体装置用硬化性組成物は、硬化促進剤を含むことが好ましく、該硬化促進剤は、ウレア化合物又はオニウム塩化合物であることが好ましい。
【0026】
以下、本発明に係る光半導体装置用硬化性組成物に含まれている各成分の詳細を説明する。
【0027】
[環状エーテル基を有する化合物(A)]
上記光半導体装置用硬化性組成物は、熱の付与によって硬化可能であるように、環状エーテル基を有する化合物(A)を含む。また、熱硬化性化合物として環状エーテル基を有する化合物(A)を用いることにより、成形体の耐熱性及び絶縁信頼性が高くなる。環状エーテル基を有する化合物(A)は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0028】
環状エーテル基を有する化合物(A)は、環状エーテル基を有していれば特に限定されない。化合物(A)における環状エーテル基としては、エポキシ基及びオキセタニル基等が挙げられる。なかでも、硬化性を高め、かつ耐熱性及び絶縁信頼性により一層優れた成形体を得る観点からは、上記環状エーテル基はエポキシ基であることが好ましい。環状エーテル基を有する化合物(A)は、環状エーテル基を2個以上有することが好ましい。
【0029】
エポキシ基を有する化合物の具体例としては、ビスフェノールS型エポキシ化合物、ジグリシジルフタレート化合物、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ化合物、ビキシレノール型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、テトラグリシジルキシレノイルエタン化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、臭素化ビスフェノールA型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ化合物、キレート型エポキシ化合物、グリオキザール型エポキシ化合物、アミノ基含有エポキシ化合物、ゴム変性エポキシ化合物、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ化合物、シリコーン変性エポキシ化合物及びε−カプロラクトン変性エポキシ化合物等が挙げられる。
【0030】
オキセタニル基を有する化合物は、例えば、特許第3074086号公報に例示されている。
【0031】
上記成形体の耐熱性をより一層高める観点からは、上記環状エーテル骨格を有する化合物(A)は、ビスフェノール骨格又はノボラック骨格を有することが好ましい。さらに、上記光半導体装置用硬化性組成物は、上記環状エーテル骨格を有する化合物(A)として、ビスフェノール骨格又はノボラック骨格を有するエポキシ化合物を含むことが好ましい。
【0032】
環状エーテル基を有する化合物(A)の配合量は、熱の付与により適度に硬化するように適宜調整され、特に限定されない。上記光半導体装置用硬化性組成物100重量%中、環状エーテル基を有する化合物(A)の含有量は好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、更に好ましくは10重量%以上、好ましくは99重量%以下、より好ましくは95重量%以下、更に好ましくは80重量%以下である。化合物(A)の含有量が上記下限以上であると、熱の付与により硬化性組成物がより一層効果的に硬化する。化合物(A)の含有量が上記上限以下であると、成形体の耐熱性がより一層高くなる。
【0033】
[硬化剤(B)]
上記光半導体装置用硬化性組成物は、熱の付与によって効率的に硬化可能であるように、硬化剤(B)を含む。硬化剤(B)は、環状エーテル基を有する化合物(A)を硬化させる。本発明に係る光半導体装置用硬化性組成物では、硬化剤(B)はジシアンジアミドである。ジシアンジアミドの使用は、硬化性組成物のポットライフを長くし、かつ成形体の耐熱性及び光の反射率を高めることに大きく寄与する。
【0034】
環状エーテル基を有する化合物(A)と硬化剤(B)であるジシアンジアミドとの配合比率は特に限定されない。環状エーテル基を有する化合物(A)100重量部に対して、ジシアンジアミドの含有量は、好ましくは0.5重量部以上、より好ましくは1重量部以上、更に好ましくは2重量部以上、好ましくは60重量部以下、より好ましくは50重量部以下、更に好ましくは40重量部以下である。
【0035】
(酸化チタン(C))
上記光半導体装置用硬化性組成物は酸化チタンを含むので、光の反射率が高い成形体を得ることができる。上記光半導体装置用硬化性組成物に含まれている酸化チタン(C)は特に限定されない。酸化チタン(C)は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0036】
上記酸化チタン(C)の使用によって、酸化チタン(C)以外の他の無機フィラーを用いた場合と比較して、光の反射率が高い成形体が得られる。
【0037】
上記酸化チタン(C)は、ルチル型酸化チタン又はアナターゼ型酸化チタンであることが好ましい。ルチル型酸化チタンの使用により、耐熱性により一層優れた成形体が得られる。上記アナターゼ型酸化チタンは、ルチル型酸化チタンよりも、硬度が低い。このため、アナターゼ型酸化チタンの使用により、上記硬化性組成物の成形性がより一層高くなる。
【0038】
上記酸化チタン(C)は、アルミニウム酸化物により表面処理されたルチル型酸化チタンを含むことが好ましい。上記酸化チタン(C)100重量%中、上記アルミニウム酸化物より表面処理されたルチル型酸化チタンの含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、100重量%以下である。上記酸化チタン(C)の全量が、上記アルミニウム酸化物により表面処理されたルチル型酸化チタンであってもよい。上記アルミニウム酸化物により表面処理されたルチル型酸化チタンの使用により、成形体の耐熱性がより一層高くなる。
【0039】
上記アルミニウム酸化物により表面処理されたルチル型酸化チタンとしては、例えば、ルチル塩素法酸化チタンである石原産業社製の品番:CR−58や、ルチル硫酸法酸化チタンである石原産業社製の品番:R−630等が挙げられる。
【0040】
上記光半導体装置用硬化性組成物100重量%中、酸化チタン(C)の含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは15重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは75重量%以下、更に好ましくは70重量%以下である。酸化チタン(C)の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、成形体の光の反射率がより一層高くなり、更に成形体の耐熱性が高くなって、成形体が高温に晒されたときに黄変し難くなる。
【0041】
(硬化促進剤)
上記光半導体装置用硬化性組成物は、硬化促進剤を含むことが好ましい。該硬化促進剤の使用により、上記光半導体装置用硬化性組成物の硬化性を高めることができ、更に成形体の耐熱性をより一層高めることができる。
【0042】
上記硬化促進剤としては、例えば、ウレア化合物、イミダゾール化合物、リン化合物、アミン化合物、オニウム塩化合物及び有機金属化合物等が挙げられる。
【0043】
上記ウレア化合物としては、ウレア、脂肪族ウレア化合物及び芳香族ウレア化合物等が挙げられる。上記ウレア化合物の具体例としては、ウレア、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア及びトリ−n−ブチルチオウレア等が挙げられる。これら以外のウレア化合物を用いてもよい。
【0044】
上記イミダゾール化合物としては、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2−フェニル−4−メチル−5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0045】
上記リン化合物は、リンを含有し、リン含有化合物である。上記リン化合物としては、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−テトラフルオロボレート、及びテトラ−n−ブチルホスホニウム−テトラフェニルボレート等が挙げられる。これら以外のリン化合物を用いてもよい。
【0046】
上記アミン化合物としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン及び4,4−ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
【0047】
上記オニウム塩化合物としては、アンモニウム塩、ホスホニウム塩及びスルホニウム塩化合物等が挙げられる。
【0048】
上記有機金属化合物としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)及びトリスアセチルアセトナートコバルト(III)等が挙げられる。
【0049】
上記光半導体装置用硬化性組成物の硬化性をより一層高め、更に成形体の耐熱性をより一層高める観点からは、上記硬化促進剤は、ウレア化合物又はオニウム塩化合物であることが好ましい。上記硬化促進剤は、ウレア化合物であることが好ましく、オニウム塩化合物であることも好ましい。
【0050】
環状エーテル基を有する化合物(A)と硬化促進剤との配合比率は特に限定されない。環状エーテル基を有する化合物(A)100重量部に対して、硬化促進剤の含有量は、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上、更に好ましくは1重量部以上、好ましくは100重量部以下、より好ましくは70重量部以下、更に好ましくは50重量部以下である。
【0051】
(シリカ)
上記光半導体装置用硬化性組成物は、シリカを含むことが好ましい。シリカの使用により、成形体の強靭性がより一層良好になる。
【0052】
上記光半導体装置用硬化性組成物100重量%中、上記シリカの含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。上記シリカの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、成形体の強靭性がより一層良好になる。
【0053】
(他の成分)
上記光半導体装置用硬化性組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、酸化チタン以外の他の充填剤、離型剤、表面処理剤、難燃剤、粘度調節剤、分散剤、分散助剤、表面改質剤、可塑剤、抗菌剤、防黴剤、レベリング剤、安定剤、カップリング剤、タレ防止剤又は蛍光体等を含んでいてもよい。
【0054】
上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0055】
上記フェノール系酸化防止剤の市販品としては、IRGANOX 1010、IRGANOX 1035、IRGANOX 1076、IRGANOX 1135、IRGANOX 245、IRGANOX 259、及びIRGANOX 295(以上、いずれもBASF社製)、アデカスタブ AO−30、アデカスタブ AO−40、アデカスタブ AO−50、アデカスタブ AO−60、アデカスタブ AO−70、アデカスタブ AO−80、アデカスタブ AO−90、及びアデカスタブ AO−330(以上、いずれもADEKA社製)、Sumilizer GA−80、Sumilizer MDP−S、Sumilizer BBM−S、Sumilizer GM、Sumilizer GS(F)、及びSumilizer GP(以上、いずれも住友化学工業社製)、HOSTANOX O10、HOSTANOX O16、HOSTANOX O14、及びHOSTANOX O3(以上、いずれもクラリアント社製)、アンテージ BHT、アンテージ W−300、アンテージ W−400、及びアンテージ W500(以上、いずれも川口化学工業社製)、並びにSEENOX 224M、及びSEENOX 326M(以上、いずれもシプロ化成社製)等が挙げられる。
【0056】
上記リン系酸化防止剤としては、シクロヘキシルフォスフィン及びトリフェニルフォスフィン等が挙げられる。上記リン系酸化防止剤の市販品としては、アデアスタブ PEP−4C、アデアスタブ PEP−8、アデアスタブ PEP−24G、アデアスタブ PEP−36、アデアスタブ HP−10、アデアスタブ 2112、アデアスタブ 260、アデアスタブ 522A、アデアスタブ 1178、アデアスタブ 1500、アデアスタブ C、アデアスタブ 135A、アデアスタブ 3010、及びアデアスタブ TPP(以上、いずれもADEKA社製)、サンドスタブ P−EPQ、及びホスタノックス PAR24(以上、いずれもクラリアント社製)、並びにJP−312L、JP−318−0、JPM−308、JPM−313、JPP−613M、JPP−31、JPP−2000PT、及びJPH−3800(以上、いずれも城北化学工業社製)等が挙げられる。
【0057】
上記アミン系酸化防止剤としては、トリエチルアミン、メラミン、エチルジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−トリル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−キシリル−S−トリアジン及び第四級アンモニウム塩誘導体等が挙げられる。
【0058】
上記環状エーテル基を有する化合物(A)100重量部に対して、上記酸化防止剤の含有量は好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは5重量部以上、好ましくは50重量部以下、より好ましくは30重量部以下である。上記酸化防止剤の含有量が上記下限以上及び上限以下であると、耐熱性により一層優れた成形体が得られる。
【0059】
(光半導体装置用硬化性組成物の他の詳細及び光半導体装置用成形体)
本発明に係る光半導体装置用硬化性組成物は、光半導体装置において、光半導体素子が搭載されるプリント配線板上又はリードフレーム上に配置される成形体を得るために用いられる光半導体装置用硬化性組成物である。上記リードフレームは、例えば、光半導体素子を支持しかつ固定し、光半導体素子の電極と外部配線との電気的な接続を果たすための部品である。上記成形体は、光半導体装置用成形体であり、光半導体素子搭載用基板であることが好ましい。
【0060】
光の反射率が高い成形体が得られるので、本発明に係る光半導体装置用硬化性組成物は、半導体装置において、光半導体素子が搭載されるプリント配線板上又はリードフレーム上にかつ上記光半導体素子の側方に配置され、上記光半導体素子から発せられた光を反射する光反射部を有する成形体を得るために用いられる光半導体装置用硬化性組成物であることが好ましい。
【0061】
光の反射率が高い成形体が得られるので、本発明に係る光半導体装置用硬化性組成物は、半導体装置において、光半導体素子が搭載されるプリント配線板上又はリードフレーム上にかつ上記光半導体素子を取り囲むように配置され、上記光半導体素子から発せられた光を反射する光反射部を内面に有する成形体を得るために用いられる光半導体装置用硬化性組成物であることが好ましい。上記成形体は、上記光半導体素子を取り囲む外壁部材であることが好ましく、枠状部材であることが好ましい。なお、上記成形体は、光半導体装置において、光半導体素子を接合(ダイボンディング)するためのダイボンド材とは異なる。
【0062】
上記光半導体装置用硬化性組成物は、環状エーテル基を有する化合物(A)と硬化剤(B)であるジシアンジアミドと酸化チタン(C)と必要応じて配合される他の成分とを、従来公知の方法で混合することにより得られる。
【0063】
本発明に係る光半導体装置用成形体は、上述した光半導体装置用硬化性組成物を硬化させることにより得られる。上記光半導体装置用硬化性組成物は所定の形状に成形される。上記光半導体装置用硬化性組成物を硬化させることにより得られる成形体は、光半導体装置において、光半導体素子から発せられた光を反射するために好適に用いられる。
【0064】
上記光半導体装置用硬化性組成物を用いて上記光半導体装置用成形体を得る方法としては、圧縮成形法、トランスファー成形法、積層成形法、射出成形法、押出成形法及びブロー成形法等が挙げられる。なかでも、トランスファー成形法が好ましい。
【0065】
トランスファー成形法では、例えば、成形温度100〜200℃、成形圧力5〜20MPa及び成形時間60〜300秒の条件で、上記光半導体装置用硬化性組成物をトランスファー成形することにより、成形体が得られる。
【0066】
(光半導体装置の詳細及び光半導体装置の実施形態)
本発明に係る光半導体装置は、プリント配線板又はリードフレームと、該プリント配線板上又は該リードフレーム上に搭載された光半導体素子と、上記プリント配線板上又は上記リードフレーム上に配置された成形体とを備え、該成形体が、上記光半導体装置用硬化性組成物を硬化させることにより得られる。
【0067】
本発明に係る光半導体装置では、上記成形体は、上記光半導体素子の側方に配置されており、上記成形体の内面が上記光半導体素子から発せられた光を反射する光反射部であることが好ましい。
【0068】
図1(a)及び(b)に、本発明の一実施形態に係る光半導体装置を断面図及び斜視図で示す。
【0069】
本実施形態の光半導体装置1は、リードフレーム2と光半導体素子3と第1の成形体4と第2の成形体5とを有する。光半導体素子3は発光ダイオード(LED)であることが好ましい。リードフレーム2にかえて、プリント配線板を用いてもよい。第1の成形体4と第2の成形体5とは一体的に形成されておらず、別の2つの部材である。第1の成形体4と第2の成形体5とは一体的に形成されていてもよい。
【0070】
リードフレーム2上に、光半導体素子3が搭載され、配置されている。また、リードフレーム2上に、第1の成形体4が配置されている。また、複数のリードフレーム2間とリードフレーム2の下方とには、第2の成形体5が配置されている。第1の成形体4の内側に光半導体素子3が配置されている。光半導体素子3の側方に第1の成形体4が配置されており、光半導体素子3を取り囲むように第1の成形体4が配置されている。第1,第2の成形体4,5は、上述した光半導体装置用硬化性組成物の硬化物であり、上述した光半導体装置用硬化性組成物を硬化させることにより得られる。従って、第1の成形体4は、光反射性を有し、内面4aに光反射部を有する。すなわち、第1の成形体4の内面4aは光反射部である。従って、光半導体素子3の周囲は、第1の成形体4の光反射性を有する内面4aにより囲まれている。
【0071】
第1の成形体4の内面4aは、内面4aの径が開口端に向かうにつれて大きくなるように形成されている。従って、光半導体素子3から発せられた光のうち、内面4aに到達した光Bが内面4aにより反射され、光半導体素子3の前方側に進行する。
【0072】
光半導体素子3は、リードフレーム2上に、ダイボンド材6を用いて接続されている。光半導体素子3に設けられたボンディングパッド(図示せず)とリードフレーム2とが、ボンディングワイヤー7により電気的に接続されている。光半導体素子3及びボンディングワイヤー7を封止するように、第1の成形体4の内面4aで囲まれた領域内には、封止剤8が充填されている。
【0073】
光半導体装置1では、光半導体素子3を駆動すると、破線Aで示すように光が発せられる。光半導体装置1では、光半導体素子3からリードフレーム2の上面とは反対側すなわち上方に照射される光だけでなく、第1の成形体4の内面4aに到達した光が矢印Bで示すように反射される光も存在する。従って、光半導体装置1から取り出される光の明るさは明るい。
【0074】
なお、図1に示す構造は、本発明に係る光半導体装置の一例にすぎず、成形体の構造及び光半導体素子の実装構造等には適宜変形され得る。
【0075】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。本発明は以下の実施例に限定されない。
【0076】
実施例及び比較例では、以下の材料1)〜10)を用いた。
【0077】
1)YD−013(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、新日鐵化学社製)
2)YDCN−704(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、新日鐵化学社製)
3)DICY7(硬化剤、ジシアンジアミド、三菱化学社製)
4)2E4MZ(硬化剤、2−エチル−4−メチルイミダゾール、四国化成社製)
5)U−CAT3512T(硬化促進剤、芳香族ジメチルウレア、サンアプロ社製)
6)U−CATSA603(硬化促進剤、ジアザビシクロウンデセンのギ酸塩、サンアプロ社製)
7)CR−58(酸化チタン、石原産業社製、塩素法により製造されたルチル型酸化チタン)
8)R−630(酸化チタン、石原産業社製、硫酸法により製造されたルチル型酸化チタン)
9)E−220A(シリカ粒子、東ソー社製)
10)FB−301(シリカ粒子、電気化学社製)
【0078】
(実施例1)
YD−013(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、新日鐵化学社製)20重量部と、DICY7(ジシアンジアミド、三菱化学社製)0.8重量部と、CR−58(酸化チタン、石原産業社製)70重量部とを配合し、混合機(ラボプラストミルR−60、東洋精機製作所製)にて15分間混合し、硬化性組成物を得た。
【0079】
(実施例2〜7及び比較例1,2)
使用した材料の種類及び配合量を下記の表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0080】
(評価)
(1)ポットライフ(溶融粘度変化)
熱処理前の硬化性組成物に関して、JIS K7210に記載された高化式フローテスターを用い、1MPaの加圧下、直径1mmのノズルを用い、170℃での粘度η1を測定した。また、硬化性組成物を100℃で2時間熱処理した後、粘度η1と同様にして170℃での粘度η2を測定した。粘度比(η2/η1)が2以下である場合を「○」、粘度比(η2/η1)が2を超える場合を「×」と判定した。
【0081】
(2)光の反射率
トランスファプレスにて金型温度170℃、トランスファー圧力7MPa及び硬化時間120秒の条件で、得られた硬化性組成物を成形して、縦100mm×横100mm×厚み1mmの板状体を得た。得られた板状体を170℃で2時間ポストキュアを行い、硬化物である成形体を得た。
【0082】
色彩・色差計(コニカミノルタ社製、CR−400)を用いて、得られた成形体(熱処理前の成形体)の光反射率のY値を測定した。成形体のY値が80以上である場合を「○」、Y値が80未満である場合を「×」と判定した。
【0083】
(3)耐熱性(耐熱黄変性)
上記(2)光の反射率の評価で得られた成形体を用意した。
【0084】
色彩・色差計(コニカミノルタ社製「CR−400」)を用いて、熱処理前の成形体のL*、a*、b*を測定した。次に、熱処理前の成形体をオーブン内に入れ、270℃で5分間加熱して、熱処理後の成形体を得た。上記色彩・色差計を用いて、熱処理後の成形体のL*、a*、b*を測定した。熱処理前と熱処理後との2つの測定値からΔE*abを求めた。ΔE*abが5以下である場合を「○○」、ΔE*abが5を超え7以下である場合を「○」、ΔE*abが7を超える場合を「×」と判定した。
【0085】
結果を下記の表1に示す。
【0086】
【表1】

【符号の説明】
【0087】
1…光半導体装置
2…リードフレーム
3…光半導体素子
4…第1の成形体
4a…内面
5…第2の成形体
6…ダイボンド材
7…ボンディングワイヤー
8…封止剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光半導体装置において、光半導体素子が搭載されるプリント配線板上又はリードフレーム上に配置される成形体を得るために用いられる光半導体装置用硬化性組成物であって、
環状エーテル基を有する化合物と、硬化剤と、酸化チタンとを含み、
前記硬化剤がジシアンジアミドである、光半導体装置用硬化性組成物。
【請求項2】
硬化促進剤をさらに含む、光半導体装置用硬化性組成物。
【請求項3】
前記硬化促進剤が、ウレア化合物又はオニウム塩化合物である、請求項2に記載の光半導体装置用硬化性組成物。
【請求項4】
光半導体装置において、光半導体素子が搭載されるプリント配線板上又はリードフレーム上にかつ上記光半導体素子の側方に配置され、前記光半導体素子から発せられた光を反射する光反射部を有する成形体を得るために用いられる光半導体装置用硬化性組成物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光半導体装置用硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の光半導体装置用硬化性組成物を硬化させることにより得られる、光半導体装置用成形体。
【請求項6】
プリント配線板又はリードフレームと、
前記プリント配線板上又は前記リードフレーム上に搭載された光半導体素子と、
前記プリント配線板上又は前記リードフレーム上に配置された成形体とを備え、
前記成形体が、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光半導体装置用硬化性組成物を硬化させることにより得られる、光半導体装置。
【請求項7】
前記成形体が、前記光半導体素子の側方に配置されており、前記成形体の内面が前記光半導体素子から発せられた光を反射する光反射部である、請求項6に記載の光半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−236880(P2012−236880A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105407(P2011−105407)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】