説明

光可変フィルタアレイ装置

【課題】複数チャンネルのWDM光から所望のチャンネルの所望の波長を選択することができる光可変フィルタアレイ装置を提供すること。
【解決手段】光ファイバ11−1〜11−mからの波長λ1〜λnから成るmチャンネルのWDM信号光を凹面鏡16を介して波長分散素子17に入射する。波長分散素子17は入射光をその波長に応じて異なった方向に分散させ凹面鏡18に加える。凹面鏡18では光の各チャンネルの光を帯状に平行とすることによりチャンネルと波長に応じてxy平面に展開する。波長選択素子19は格子状に形成された画素構造であり、選択すべき各チャンネルと波長に応じた位置の画素を反射状態とする。波長選択素子19で反射した光は同一の経路を介して光ファイバ15−1〜15−mより出射される。波長選択素子19の反射特性を各画素毎に変化させることによって、任意のWDM光の任意の波長を選択することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はWDM信号を選択するのに適した光可変フィルタアレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在WDM通信のROADM(Reconfigurable Optical Add Drop−multiplexing)ノードではアド・ドロップ機能のカラーレス化、即ち任意の周波数の光信号を分離したり加えたりできる機能を有することが求められている。カラーレス化の方法として入力WDM信号から複数の入力信号を選択する波長可変フィルタアレイ(TFA)を使用する構成が知られている。従来の波長可変フィルタアレイ構成として、特許文献1及び2では液晶素子の電界効果によるキャビティ長変化を利用した光可変フィルタが提案されている。又特許文献3,4にはMEMSの機械的変化によってキャビティ長を変化させ、選択波長を変化させる波長可変フィルタが提案されている。
【0003】
又特許文献5には、導波路の熱光学効果(TO効果)を用いて導波路上に多数のフィルタを集積するものが提案されている。
【0004】
更に非特許文献1には回折格子とMEMSとを組み合わせたチューナブルフィルタも報告されている。この場合MEMSと入出力光ファイバをアレイ化することでTFAとして利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−23891号公報
【特許文献2】特開平5−196910号公報
【特許文献3】特開2000−28931号公報
【特許文献4】US 6,449,410
【特許文献5】US 2009/0263142 A1
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J. Berger. F. Ilkov, D. King, A. Tselikov and D. Anthon, OFC2003, TuN2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
WDM変調信号はスペクトル成分が周波数軸上に広がりを有しているため、フィルタ形状としては信号スペクトル成分を包含しつつ隣接チャンネルのクロストークが高いフラットトップ型のスペクトル波形が望ましい。しかしファブリペロー干渉系のフィルタ形状はローレンツ型であるため、選択した波長のピークが狭くなりすぎて、WDM信号の特定波長を選択するフィルタとしては不向きであった。又特許文献5のフィルタではTO効果を用いているため、アレイ化のために消費電力が増加するという問題点があった。更に非特許文献1においてはフィルタ形状はガウシアン波形状であり、特許文献1〜4と同様にWDM信号のフィルタとして適していないという問題点があった。
【0008】
本発明はこのような従来の欠点に鑑みてなされたものであって、複数のチャンネルのWDM信号を入力とし、任意のチャンネルについて任意の波長を選択でき、光学系を小型化することができる光可変フィルタアレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、本発明の光可変フィルタアレイ装置は、y軸に沿って配列され、夫々が多数の波長の光から成る第1〜第mチャンネルのWDM信号光を入射し、各チャンネルについて選択された波長の光信号を出射する複数のチャンネル分の入出射部と、前記各チャンネルのWDM信号光を集光する第1の集光素子と、前記第1の集光素子によって集光されたWDM光をその波長に応じて空間的に分散させる波長分散素子と、前記波長分散素子によって分散した各チャンネルのWDM光を集光する第2の集光素子と、波長に応じてx軸方向に配列され、更にmチャンネル分のWDM光が夫々y軸の異なった位置に配列されてxy平面に展開された入射光を受光する位置に配置され、xy平面に格子状に配列された多数の画素を有し、2次元の各画素の反射特性を切換えることにより任意のチャンネルのWDM信号について任意の波長帯の光を選択する波長選択素子と、前記波長選択素子のxy方向に配列された各画素の電極を駆動することによってx軸及びy軸方向の所定の位置の画素の光反射特性を制御する波長選択素子駆動部と、を具備し、前記第1,第2の集光素子の少なくとも一方を凹面鏡としたものである。
【0010】
ここで前記第1,第2の集光素子は1つの凹面鏡としてもよい。
【0011】
ここで前記第1の集光素子は、集光レンズと光の経路を折り返す光路変換素子とを有するようにしてもよい。
【0012】
ここで前記第2の集光素子は、集光レンズと光の経路を折り返す光路変換素子とを有するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上詳細に説明したように本発明によれば、波長選択素子の反射特性や透過特性を種々変更することによって、多数チャンネルのWDM信号の夫々について任意の波長の光を選択することができる。又第1,第2の集光素子のうち少なくとも一方を凹面鏡とすることにより光学系を小型化することができる。更に各波長帯について複数の画素を有する波長選択素子を用いれば、波長選択特性を自由に変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】図1Aは本発明の第1の実施の形態による反射型光可変フィルタアレイ装置のy軸方向から見た光学的な配置を示す図である。
【図1B】図1Bは第1の実施の形態による反射型光可変フィルタアレイ装置の入出射部を示すx軸方向からの図である。
【図1C】図1Cは各素子の正面から見た図である。
【図2A】図2Aはコリメートレンズと第1の集光素子の間の光ビームを示すx軸方向からの図である。
【図2B】図2Bは第1の集光素子から波長分散素子への光を示すx軸方向からの図である。
【図2C】図2Cは波長分散素子から第2の集光素子への光を示すx軸方向からの図である。
【図2D】図2Dは第2の集光素子から波長選択素子への光を示すx軸方向からの図である。
【図3】図3は本発明の第2の実施の形態による反射型光可変フィルタアレイ装置のy軸方向から見た光学的な配置を示す図である。
【図4】図4は本発明の第3の実施の形態による反射型光可変フィルタアレイ装置のy軸方向から見た光学的な配置を示す図である。
【図5】図5は本発明の第4の実施の形態による反射型光可変フィルタアレイ装置のy軸方向から見た光学的な配置を示す図である。
【図6】図6は本発明の第1〜第4の実施の形態による光可変フィルタアレイ装置に用いられるLCOS素子を示す図である。
【図7A】図7Aは本発明の第1,第2の実施の形態に用いられるLCOS素子の変調方式の一例を示す図である。
【図7B】図7Bは本発明の第1,第2の実施の形態に用いられるLCOS素子の変調方式の他の例を示す図である。
【図8】図8はLCOS素子の駆動状態を示す図である。
【図9】図9はLCOS素子の駆動状態に対応するフィルタの選択特性を示す図である。
【図10】図10は本発明の第1,第2の実施の形態による2D電極アレイの一例を示す図である。
【図11】図11は本発明の第1,第2の実施の形態によるMEMS素子の一例を示す図である。
【図12】図12は本実施の形態によるMEMS素子の1画素を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施の形態)
図1Aは本発明の第1の実施の形態による反射型の光可変フィルタアレイ装置の光学素子の構成を示すy軸方向から見た側面図、図1Bはその入出射部のx軸方向から見た側面図、図1Cは各素子を正面から見た図である。入射光はmチャンネル分のWDM信号光であり、各チャンネルのWDM光は夫々波長λ1〜λnの光信号が多重化されたものである。ここではそのmを7として図示している。第1〜第mチャンネルのWDM光は夫々光ファイバ11−1〜11−mを介してサーキュレータ12−1〜12−mに与えられる。入射光は光ファイバ11−1〜11−mを介してサーキュレータ12−1〜12−mに入力してもよく、又直接入力してもよい。サーキュレータ12−1〜12−mは入射光を光ファイバ13−1〜13−mを介してコリメートレンズ14−1〜14−mに出射すると共に、光ファイバ13−1〜13−mから入射された光を光ファイバ15−1〜15−mに出射するものである。図1Cの(a)はy軸に沿って配置されたコリメートレンズ14−1〜14−mから出射する光を示している。又光ファイバ13−1〜13−mを介してコリメートレンズ14−1〜14−mから出射された光はz軸方向に向けた光軸を有し、y軸に沿って互いに平行である。
【0016】
図2Aはコリメートレンズ14−1〜14−mから凹面鏡16への光を示すx軸方向からの図、図2Bは凹面鏡16から波長分散素子17への光を示すx軸方向から見た図である。図2Cは凹面鏡18に入射される光を示す図であり、図2Dは凹面鏡18と波長選択素子19の間の光を示す図である。尚図2Aでは、光ファイバやサーキュレータについては図示を省略しているが、各チャンネルとも図1Bと同様の構成となっている。全チャンネルのWDM光は図1C(b),図2Bに示すように第1の集光素子である凹面鏡16に入射される。凹面鏡16はこれらのWDM光を焦点の位置で一点に集光するものであり、集光された光は図1C(c)に示すように集光位置に配置された波長分散素子17に入射される。波長分散素子17は光を波長に応じてx軸方向の異なった方向に分散するものである。ここで波長分散素子17としては、回折格子やプリズムであってもよく、又回折格子とプリズムとを組み合わせた構成でもよい。こうして波長分散素子17で分散された光は第2の集光素子である凹面鏡18に与えられる。凹面鏡18は図1C(d),(e)、図2Dに示すように、xy平面上で分散した光をy軸方向に集光する集光素子であって、集光した光は波長選択素子19に入射される。
【0017】
尚ここでは図1Aは第1チャンネルのWDM光の最短波長λ1及び最長波長λnの光を例示しているが、入射光は波長λ1〜λnまでの間で多数のスペクトルを有するWDM信号光であるので、xz平面に沿って展開されたmチャンネル分のWDM信号光が図1C(e)に示すように夫々帯状に波長選択素子19に加わる。波長選択素子19は入射光を選択的に反射するものであり、その反射特性に応じて光フィルタの選択特性が決定されるが、詳細については後述する。波長選択素子19によって反射された光は、同一の経路を通って凹面鏡18に加わり、再び波長分散素子17に加わる。波長分散素子17は反射光に対しては元の入射光と同一方向に集束し、集束した光を凹面鏡16に入射する。凹面鏡16は入射光と同一の経路で光をz軸に平行な光に変換し、コリメートレンズ14−1〜14−mを介して光ファイバ13−1〜13−mに出射する。この光はサーキュレータ12−1〜12−mによって光ファイバ15―1〜15−mに出射される。ここで光ファイバ11−1〜11−m,13−1〜13−m,15―1〜15−mとサーキュレータ12−1〜12−m、コリメートレンズ14−1〜14−m、および凹面鏡16は、mチャンネルのWDM信号光を入射し、選択された光を出射する入出射部を構成している。尚サーキュレータ12−1〜12−mはファイバ型である必要はなく、空間型を用いる場合は光ファイバ13−1〜13−mは不要である。
【0018】
この実施の形態によれば、2つの集光素子として凹面鏡を用いており、これによって凹面鏡の焦点距離に相当する距離があれば光学系を構成することができ、全体を小型化することができるという効果が得られる。
【0019】
(第2の実施の形態)
次に本発明の第2の実施の形態による反射型の光可変フィルタアレイ装置について説明する。図3は本発明の第2の実施の形態による光可変フィルタアレイ装置の光学素子の構成を示すy軸方向から見た側面図であり、第1の実施の形態と同一部分は同一符号を付している。この実施の形態では、第1,第2の集光素子として1つの凹面鏡20を用いたものである。凹面鏡20の機能は第1の実施の形態の凹面鏡16及び18と同様であり、同様の効果を有する。
【0020】
(第3の実施の形態)
次に本発明の第3の実施の形態による反射型の光可変フィルタアレイ装置について説明する。図4は本発明の第3の実施の形態による光可変フィルタアレイ装置の光学素子の構成を示すy軸方向から見た側面図であり、第1の実施の形態と同一部分は同一符号を付している。この実施の形態では第1の集光素子として凹面鏡16に代えて集光レンズ(凸レンズ)21と、光の光軸を−z軸方向に折り返すために光路変換素子22を用いたものであり、その他は前述した第1の実施の形態と同様である。この場合にはレンズを用いても光学系を大きくすることなく、前述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。尚、光路変換素子22は反射ミラーもしくはプリズムで構成してもよい。
【0021】
(第4の実施の形態)
次に本発明の第4の実施の形態による反射型の光可変フィルタアレイ装置について説明する。図4は本発明の第4の実施の形態による光可変フィルタアレイ装置の光学素子の構成を示すy軸方向から見た側面図であり、第1の実施の形態と同一部分は同一符号を付している。この実施の形態では第2の集光素子として凹面鏡18に代えて集光レンズ23と、集光レンズ23を通過した光の光軸を−z軸方向に折り返すために光路変換素子24を用いたものであり、その他は前述した第1の実施の形態と同様である。この場合にもレンズを用いても光学系を大きくすることなく、前述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。尚、光路変換素子24は反射ミラーもしくはプリズムで構成してもよい。
【0022】
(波長選択素子の構成)
次にここで第1〜第4の実施の形態による反射型光可変フィルタアレイ装置に用いられる波長選択素子19について説明する。波長選択素子19は図6に示すようにマトリックス状に配置された2次元のK×Lドットの画素構造の素子である。又波長選択素子19は設定部32がドライバ33を介して接続されている。設定部32はxy平面の光を反射する画素を選択チャンネルの選択波長に合わせて決定するものである。設定部32とドライバ33は波長選択素子のxy方向に配列された各画素の電極を駆動することによってx軸及びy軸方向の所定の位置の画素の光反射特性を制御する波長選択素子駆動部を構成している。
【0023】
ここで各実施の形態において、第1〜第mチャンネルのWDM光をチャンネルによってy軸方向に分散させると共に、波長によってx軸方向に分散させ、m本の平行な帯状の光として波長選択素子19に入射したとき、第1〜第mチャンネルの入射領域R1〜Rmは図6に示す長方形状の領域であるとする。即ち入射領域R1〜Rmに加わる光は夫々第1〜第mチャンネルのWDM光をチャンネルi(i=1〜m)と波長帯λj(j=1〜n)に応じてxy平面に展開した光である。そして各実施の形態の光可変フィルタアレイ装置では、反射させる画素を選択することによって、任意の波長の光を選択することができる。次に波長選択素子19の詳細な構成について説明する。
【0024】
波長選択素子19としてはLCOS(Liquid Crystal On Silicon)の液晶素子を用いて実現することができる。LCOS素子19Aは各画素の背面に液晶変調ドライバを内蔵しているため、画素数を多くすることができ、例えば1000×1000の多数の格子状の画素から構成することができる。LCOS素子19Aでは各チャンネル毎及び波長毎に異なる位置に各光ビームが入射するので、その位置の画素を反射状態とすればその光信号を選択することができる。
【0025】
ここでLCOS素子19Aにおける変調方式の1つである位相変調方式について説明する。図7AはLCOS素子19Aを示す概略図であり、光が入射する面からz軸に沿って透明電極41,液晶42及び背面反射電極43を積層して構成されている。LCOS素子19Aは1つのチャンネルの1つの波長帯を複数の画素で構成するため、複数画素について屈折率の凹凸を形成し、回折現象を発現することができる。従って透明電極41と背面反射電極43との間に電圧を印加することによって各周波数成分の回折角を独立に制御し、特定波長の入力光をそのまま入射方向に反射させたり、他の波長成分の光を不要な光として回折させ、入射方向とは異なった方向に光を反射させることができる。このため各画素に印加する電圧を制御することによって、必要な画素を回折させずに正反射状態とすることができる。
【0026】
次にLCOS素子19Aの他の変調方式である強度変調方式について説明する。図7Bは強度変調方式による波長選択方法を示す図であり、入出射光の入射する面には偏光子44を配置する。偏光子44は入射光を図中○で示す特定の偏光状態にして反射型のLCOS素子19Aに入射する。この場合にもLCOS素子19Aは透明電極41,液晶42及び背面反射電極43によって構成される。LCOS素子19Aに光を入射すると、電圧の印加状態によって電極間の液晶の複屈折率差を制御することができる。従って印加する電圧の偏光状態を独立に制御することにより反射光の偏光状態を異ならせることができる。ここで液晶分子の配向成分によって電圧を制御したときに偏光面が回転するか保持されるかが決定される。例えば電圧を印加しない場合に偏光面が保持されるとすると、図中○状態で示す光がそのまま反射することとなる。一方電圧を印加すれば偏光面が回転して反射するため、反射光は偏光子44によって遮蔽される。従って画素に加える電圧を制御して入射光を選択することができる。ここで任意数の画素を反射状態とすれば任意の複数のWDM信号光の、任意の複数の波長帯を選択することができる。
【0027】
第1〜第4の実施の形態では夫々がλ1〜λnのnの波長帯を有するmチャンネルのWDM信号に対して例えば3m×3nの画素を有するLCOS素子19Aを用いるものとする。そうすれば特定のチャンネルのWDM信号の特定波長、例えば図8(a)に示すようにiチャンネルのWDM光のλjの波長帯の信号を選択する場合には、3i〜3i+2,3j〜3j+2の9ドットの画素を正反射状態とすることによってそのチャンネルのその波長を選択することができる。図8(a)では反射状態とする画素を黒く示している。ここでLCOS素子19Aの反射状態とした画素に光が入射すると、入射光はそのまま反射されて出力側に得られる。又選択されていない画素に入射した波長の光は回折又は遮蔽されるため、光ファイバ15−1〜15−mには戻らない。このように特定の波長帯に対応する9画素を選択する場合には、図9(a)に示すようにフィルタ形状として信号スペクトル成分を包含しつつ隣接チャンネルのクロストークが高いフラットトップ型のスペクトル波形を得ることができる。
【0028】
更にLCOS素子19Aにおいてもオンオフさせる画素数を制御することによってフィルタの形状も任意に設定することができる。即ち図8(a)においてそのチャンネルの特定波長帯の3×3の画素のうち一つの画素を選択すれば低いレベルとすることができる。又波長選択素子19のiチャンネルの波長λj帯を選択する9画素のうち一部を選択すれば任意の波長とすることができる。こうすれば光が波長選択素子19に入射すると、反射領域の幅に対応したパスバンドの幅が得られる。即ち図8(b)に示すようにiチャンネルの波長λj帯を選択する9画素のうち中央の3画素を反射状態とすれば、図9(b)に示すようにλj帯の中心部分の波長を選択する幅が狭い選択特性が得られる。
【0029】
又図8(c)に示すようにこれに隣接する中央の画素も同時に反射状態とすれば、図9(c)に示すようにパスバンドの幅を少し広くし、ガウシアン状に近い選択特性とすることができる。
【0030】
更に図8(d)に示すように、波長λjの9画素に加えて隣接する画素の一部も反射状態とすれば、図9(d)に示すようにパスバンドの幅をより広くすることができる。
【0031】
又各LCOS素子19Aの画素は印加する電圧レベルを制御することによって透過率を連続的に変化させることができる。従って電圧を印加する画素とそのレベルを制御することによって種々のフィルタ特性を得ることができる。
【0032】
尚第1,第2の実施の形態ではWDM信号の1つのチャンネルの各波長帯について3×3画素を対応させるようにしているが、更に多数の画素を対応させたり、夫々の画素について電圧レベルを制御すれば、より精密なフィルタ特性の制御が可能となる。
【0033】
またこの波長選択素子19として、LCOS構造ではない2D電極アレイを有する液晶素子19Bを用いることができる。LCOS素子の場合には画素の背面に液晶ドライバが内蔵されているが、2D電極アレイ液晶素子19Bは液晶変調用のドライバ33が素子の外部に装備されており、画素数をLCOSのように多くすることは難しくなる。従って図10に示すように、mチャンネルのWDM光のλ1〜λnのn波長を2次元に展開したm×nに対応するようにm×n構成の画素とすることが好ましい。この場合にはフィルタ形状を変化させることはできないが、mチャンネルのうち任意の複数チャンネルの任意の波長帯を選択することができる。この場合は前述した強度変調方式のみを実現することができる。又画素について電圧レベルを変化させることによって透過レベルを変化させることが可能となる。
【0034】
更に波長選択素子19としてMEMS素子19Cを用いて構成することもできる。この場合には図11に示すように、xy平面上で各チャンネル及び波長毎に異なる位置にMEMS素子からなる多数のMEMSミラーを配置する。そしてMEMSミラーの各画素はWDM信号光の各波長に対して1対1に対応させるものとする。こうすれば図12に示すようにMEMS素子19Cの夫々の画素をx軸又はy軸を中心に回転させることによって不要なWDM信号を消滅させ、必要なWDM信号のみを選択することができる。この場合にも任意の複数チャンネルのWDM光について任意の複数の波長帯を選択することができる。又各画素に印加する電圧レベルのミラーの角度を制御することができ、透過光量を任意に設定することができる。従ってこの場合にも選択する波長帯の光の強度レベルを制御することも可能となる。又MEMSを用いた場合であっても1つの波長帯に対して複数のMEMS素子の画素を対応付けるようにしてもよい。こうすればLCOS素子と同様に、1つの波長帯に対応する画素に印加する電圧を制御することによって種々のフィルタ形状の波長選択特性を得ることができる。
【0035】
尚、波長分散素子の光パワー効率が偏光依存性を持つ場合、波長板、偏光子、ファラデーローレータ等、偏光制御部品から成る偏波制御素子を光の経路上の適切な位置に配置し、波長分散素子の光パワー効率のよい直線偏光として波長分散素子に入射することが好ましい。又波長選択素子として液晶の電気光学効果を用いる場合、電気光学効果は一般的に偏光依存性を有することが知られている。この場合にも波長板、偏光子、ファラデーローレータ等、偏光制御部品からなる偏波制御素子を光の経路上の適切な位置に配置し、電気光学効果が効率よく発現する直線偏光として波長選択素子に入射することが好ましい。又サーキュレータは光ファイバ型に限られず、空間型のサーキュレータを用いてもよい。又集光レンズは非球面レンズであってもよく、球面レンズや色消しレンズ等を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上詳細に説明したように本発明によれば、少なくとも1つの集光素子として凹面鏡を用いることにより光学系を小型化することができる。又波長選択素子の反射特性や透過特性を種々変更することによって、多数チャンネルのWDM信号の夫々について任意の波長の光を選択することができる。又各波長について複数のビットを有する波長選択素子を用いれば、波長選択特性を自由に変化させることができる。これにより光可変フィルタアレイ装置をWDM光のアドドロップ機能を有するノードの主要構成要素として用いることができる。
【符号の説明】
【0037】
11−1〜11−m,13−1〜13−m,15−1〜15−m 光ファイバ
12−1〜12−m 光サーキュレータ
14−1〜14−m,20−1〜20−m,21−1〜21−m コリメートレンズ
16,18,20 凹面鏡
17 波長分散素子
19 波長選択素子
19A LCOS素子
19B 2D電極アレイ液晶素子
19C MEMS素子
21,23 集光レンズ
22,24 光路変換素子
32 設定部
33 ドライバ
41 透明電極
42 液晶
43 反射電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
y軸に沿って配列され、夫々が多数の波長の光から成る第1〜第mチャンネルのWDM信号光を入射し、各チャンネルについて選択された波長の光信号を出射する複数のチャンネル分の入出射部と、
前記各チャンネルのWDM信号光を集光する第1の集光素子と、
前記第1の集光素子によって集光されたWDM光をその波長に応じて空間的に分散させる波長分散素子と、
前記波長分散素子によって分散した各チャンネルのWDM光を集光する第2の集光素子と、
波長に応じてx軸方向に配列され、更にmチャンネル分のWDM光が夫々y軸の異なった位置に配列されてxy平面に展開された入射光を受光する位置に配置され、xy平面に格子状に配列された多数の画素を有し、2次元の各画素の反射特性を切換えることにより任意のチャンネルのWDM信号について任意の波長帯の光を選択する波長選択素子と、
前記波長選択素子のxy方向に配列された各画素の電極を駆動することによってx軸及びy軸方向の所定の位置の画素の光反射特性を制御する波長選択素子駆動部と、を具備し、
前記第1,第2の集光素子の少なくとも一方を凹面鏡とした光可変フィルタアレイ装置。
【請求項2】
前記第1,第2の集光素子は1つの凹面鏡である請求項1記載の光可変フィルタアレイ装置。
【請求項3】
前記第1の集光素子は、集光レンズと光の経路を折り返す光路変換素子とを有する請求項1記載の光可変フィルタアレイ装置。
【請求項4】
前記第2の集光素子は、集光レンズと光の経路を折り返す光路変換素子とを有する請求項1記載の光可変フィルタアレイ装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−248196(P2011−248196A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122689(P2010−122689)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(591102693)サンテック株式会社 (57)
【Fターム(参考)】