説明

光増幅器の出力パワー制御方法と光増幅装置

【課題】WDM信号を増幅する光増幅器の出力チャネルパワーの所定値への設定を精度よく行うことを可能とする装置、方法、プログラムの提供。
【解決手段】光増幅器1の出力を光カプラ2で分岐したWDM信号光のチャネルパワー、チャネル波長の光信号対雑音比およびWDM信号光の波長帯域外の光雑音レベルを含む光スペクトラム情報を取得するモニタ手段3と、モニタ手段3で取得された光スペクトラム情報を基に、WDM信号光の波長数、信号光の波長あたりの光パワー、光雑音パワーを考慮して、光増幅器の出力におけるトータル出力パワーに占めるWDM信号光の成分の比率を計算する演算処理部4と、光増幅器1のチャネルパワーが所定の値となるように、出力パワー設定値を決定し光増幅器1の出力パワーに対するフィードバック制御を行う出力パワー制御部5を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光増幅技術に関し、特に、波長分割多重(WDM;Wavelength Division Multiplexing)光ファイバ伝送システムに用いて好適な光増幅器の出力パワー制御と光増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ伝送システムにおいて、良好な信号品質を得るためには、
・信号の光SNR(OSNR;Optical Signal to Noise Ratio;光信号対雑音比)の管理、
・光ファイバ中の非線形効果による伝送品質劣化の回避を目的とした信号波長のレベル管理、
等が重要である。中でも光増幅器の出力パワーの設定は重要なパラメータであり、その制御、管理は重要である。
【0003】
通常、WDM信号光を光増幅器により増幅した場合、光増幅器の出力総パワーには、
・増幅されたWDM信号光成分と、
・光増幅器入力のWDM信号光が含む光雑音、および
・光増幅器から生じる自然放出光(ASE:Amplified Spontaneous Emission)雑音が増幅された光雑音成分
が含まれている。
【0004】
WDM信号光を増幅する光増幅器の出力パワーの調整を行う場合、光増幅器の出力の波長あたりの光パワーが低いと、受信光のSNRの劣化が問題となる。一方、光増幅器の出力の波長あたりの光パワーが高すぎると、伝送路ファイバまたは分散補償ファイバといった光ファイバ中での非線形効果による伝送特性に劣化が生じる。このため、光増幅器の出力パワーの調整を行う場合、WDM信号光の波長あたりの光強度を一定に保つことが、重要である。
【0005】
なお、特許文献1には、光増幅器で増幅された光信号から分岐された光信号の強度を検知し、検知した光強度のピーク値を保持する光スペクトラムアナライザと、保持されたピーク値が基準値以上となるように増幅率を決定し、増幅率を示す増幅率制御信号を生成する増幅率決定器を備えた光増幅装置の構成が開示されている。また特許文献2には、WDM光通信システムにおける波長数や各波長のパワーを検出する光スペクトルアナライザ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−022667号公報
【特許文献2】特開平9−083489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以下に本発明による分析を与える。
【0008】
光増幅器の出力における波長当たりの光パワーが一定となるように、光増幅器の出力パワーの制御を行う場合には、光増幅器の出力における光雑音成分の占める光パワーの影響を考慮する必要がある。
【0009】
WDM信号の波長数、光SNR、光雑音の占める波長帯域等により、光増幅器のトータル出力パワーをしめるWDM信号光成分の光パワーが変化する。
【0010】
このため、光増幅器のトータル出力パワーを、単純に一定とする制御では、波長当たりの光パワー(チャネルパワー)を一定とする制御は実現できない。しかしながら、上記関連技術等には、波長当たりの光パワーが一定となるように制御するにあたり、光雑音成分の占める光パワーの影響を考慮して光増幅器の出力パワーの制御を行うための具体的な手法は提案されていないというのが実情である。
【0011】
また、カスケード接続された複数段の光増幅器のそれぞれに対して出力パワー制御を行うにあたり、複数段の光増幅器毎に出力パワー制御手段を実装した場合、構成が複雑化する。
【0012】
したがって、本発明の目的は、WDM信号を増幅する光増幅器の出力チャネルパワーを所定の値に精度よく設定可能とする装置、方法、プログラムを提供することにある。
【0013】
また、本発明は、上記目的を達成するとともに、カスケード接続された複数段の光増幅器に対するチャネルパワーの制御を簡易な構成により実現可能とする装置、方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記した問題の1つ又は複数を解決するため、概略以下の構成とされる。
【0015】
本発明の1つの側面によれば、光増幅器の入力又は出力のWDM信号光の分岐光から、チャネルパワー、光雑音を含む光スペクトラム情報を取得するモニタ手段と、
WDM信号光の光信号対雑音比に応じた、光増幅器のトータル出力パワーとチャネルパワーとの関係、
WDM信号波長数に応じた、光増幅器のトータル出力パワーとチャネルパワーとの関係の一方又は両方に基づき、
チャネルパワーの設定ターゲットに対応した、トータル出力パワー設定値を求め、前記光増幅器に設定する手段と、を備えた光増幅装置が提供される。
【0016】
本発明によれば、光増幅器の入力又は出力のWDM信号光の分岐光から、チャネルパワー、チャネル波長の光信号対雑音比、および、WDM信号光の波長帯域外の光雑音レベルを含む光スペクトラム情報を取得するモニタ手段と、前記光スペクトラム情報を基に、WDM信号光の波長数、信号光の波長当りの光パワー、光雑音パワーを考慮して、光増幅器の出力におけるトータル出力パワーに占めるWDM信号光の成分の比率を計算する演算処理部と、前記光増幅器の出力のチャネルパワーが所定の値となるように、出力パワー設定値を決定し、前記光増幅器の出力パワーのフィードバック制御を行う出力パワー制御部と、を備えた光増幅装置が提供される。
【0017】
本発明の他の側面によれば、カスケード接続された複数段の光増幅器を備え、複数段の前記光増幅器のうちの1つの段の光増幅器に対して、WDM信号光のチャネルパワーと、光雑音を取得するモニタ手段を備え、前記モニタ手段で取得された情報に基づき、1つの段の光増幅器の出力トータルパワーとチャネルパワーの比率を計算し、前記比率を補正係数とし、他の光増幅器の出力パワーの制御に用いる光増幅装置が提供される。
【0018】
本発明によれば、光増幅器の入力又は出力のWDM信号光の分岐光から、チャネルパワー、光雑音を含む光スペクトラム情報を取得し、
WDM信号光の光信号対雑音比に応じた、光増幅器のトータル出力パワーとチャネルパワーとの関係、
WDM信号波長数に応じた、光増幅器のトータル出力パワーとチャネルパワーとの関係の一方又は両方に基づき、チャネルパワーの設定ターゲットに対応した、トータル出力パワー設定値を求め、前記光増幅器に設定する、光増幅器の出力パワー制御方法が提供される。
【0019】
本発明によれば、光増幅器の入力又は出力のWDM信号光の分岐光から、WDM信号光のチャネルパワー、チャネル波長の光信号対雑音比、およびWDM信号光の波長帯域外の光雑音レベルを含む光スペクトラム情報を取得し、
前記光スペクトラム情報を基に、WDM信号光の波長数、信号光の波長当りの光パワー、光雑音パワーを考慮して、光増幅器の出力におけるトータル出力パワーに占めるWDM信号光の成分の比率を計算し、
前記光増幅器のチャネルパワーが所定の値となるように、出力パワー設定値を決定し、前記光増幅器の出力パワーに対するフィードバック制御を行う光増幅器の出力パワー制御方法が提供される。
【0020】
本発明によれば、カスケード接続された複数段の光増幅器のうち1つの段の前記光増幅器の1つに対して、WDM信号光のチャネルパワー、光雑音情報を取得するモニタ手段を1つ用意し、
1つの段の光増幅器の出力トータルパワーとチャネルパワーの比率を計算し、前記比率を補正係数とし、他の光増幅器の出力パワー制御に用いる、光増幅器の出力パワー制御方法が提供される。
【0021】
本発明によれば、WDMチャネルモニタで光スペクトラム情報を取得し、
前記光増幅器のトータル出力パワーPtotalを、


【0022】
(ただし、
n,iはWDMチャネルモニタでの波長グリッドにおける光雑音パワー、
s,iはWDMチャネルモニタで測定した各チャネルパワー、
ΔλはWDMチャネルモニタの波長グリッド、
はWDMチャネルモニタの分解能、
MはWDMチャネルモニタのモニタ可能な波長グリッド数である)、
により求め、
WDMチャネルモニタで測定したチャネルパワーの平均値Ps,aveを、


【0023】

(ただし、
KはWDM波長数、
s,iはWDMチャネルモニタで測定した各チャネルパワー)
により求め、
前記光増幅器のトータル出力パワーの設定値Ptargetを、


【0024】
(ただし、Psxはチャネルパワーの設定ターゲット値)
により求める処理を、前記光増幅器の出力パワーを制御する演算処理部(コンピュータ)に実行させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、WDM信号を増幅する光増幅器の出力チャネルパワーの所定値への設定を精度よく行うことを可能としている。また、本発明によれば、上記効果を奏するとともに、カスケード接続された複数段の光増幅器に対するチャネルパワーの制御を簡易な構成により実現可能としている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施例における光増幅器出力におけるWDM信号光スペクトラムを示す図である。
【図3】光SNRの違いによる光増幅器出力のトータルパワーとチャネルパワーの関係を比較して示す図である。
【図4】WDM波長数の違いによる光増幅器出力のトータルパワーとチャネルパワーの関係を比較して示す図である。
【図5】本発明の第2の実施例の構成を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施例においてWDMチャネルモニタで測定されるWDM信号光の光スペクトラム情報を説明する図である。
【図7】本発明の第3の実施例の構成を示す図である。
【図8】本発明の第4の実施例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態について説明する。本発明の光伝送システムは、光増幅器の出力の光スペクトラム情報(WDM波長数、信号光パワー、光雑音パワー)を基に、出力パワー設定値を算出し、光増幅器の出力パワーの制御を行う。かかる制御を行うことで、光増幅器の出力チャネルパワーを所定の値に精度よく設定することができる。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態の光増幅器の基本構成を示す図である。図1を参照すると、本実施例の光伝送システムは、光増幅器1、光カプラ2、光スペクトラムモニタ3、演算処理部4、出力パワー制御部5を備えている。光増幅器1は、入力されたWDM信号光を増幅する。光カプラ2は、光増幅器1により増幅されたWDM信号光の一部を分岐し、WDM信号光の光スペクトラム情報を検出する光スペクトラムモニタ3に入射する。演算処理部4は、測定したWDM信号光のチャネルパワー、チャネル波長のOSNR(光信号対雑音比)およびWDM信号光の波長帯域外の光雑音レベルの情報を演算処理し、光増幅器1の出力端でのWDM信号光のチャネルパワーが所定の値となるように、光増幅器の出力パワー設定値を計算する。演算処理部4は出力パワー設定値を計算し、出力パワー制御部5を介して、光増幅器1の出力パワーを調整する。
【0029】
本発明によれば、かかる構成により、光増幅器の出力におけるWDM信号光の波長数、受信光SNR値、WDM信号光波長帯域外の光雑音量によらずに、光増幅器1の出力WDM信号光のチャネルパワーを所定の値に、精度よく設定することを可能としている。その結果、本発明によれば、光増幅器のチャネルパワーの設定ズレに伴う、信号品質の過剰劣化(例えば光増幅器出力におけるチャネルパワーが低下による光SNRの過剰劣化や、光増幅器出力のおけるチャネルパワーの過剰な増加に伴う非線形劣化など)を回避することができる。
【0030】
また、本発明の別の実施の形態によれば、カスケード接続された複数段の光増幅器のうち1つの段の前記光増幅器の1つに対して、WDM信号光のチャネルパワー、光雑音情報を取得するモニタ手段を1つ用意する。そして、1つの段の光増幅器の出力トータルパワーとチャネルパワーの比率を計算し、前記比率を補正係数とし、他の光増幅器の出力パワー制御に用いる。以下実施例に即して説明する。
【実施例】
【0031】
図1を参照して、本発明の第1の実施例を説明する。図1には、本実施例の光伝送システムとして中継器の構成例が示されている。図1を参照すると、この光伝送システムは、光増幅器1と、光増幅器1の出力端でWDM信号光を分岐する光カプラ2と、光カプラ2で分岐されたWDM信号光の光スペクトラム情報を検出する光スペクトラムモニタ3と、演算処理部4と、光増幅器1の出力パワーを制御する出力パワー制御部5とを備えている。
【0032】
図2は、一般的な光増幅器出力におけるWDM信号光の光スペクトルのイメージを図示したものであり、横軸は波長、縦軸はパワーである。通常、WDM信号光を光増幅器により増幅した場合、光増幅器の出力総パワーには、増幅されたWDM信号光成分と、光増幅器入力のWDM信号光が含む光雑音および光増幅器から生じる自然放出光(ASE:Amplified Spontaneous Emission)雑音が増幅された光雑音成分が含まれている。
【0033】
光増幅器の出力におけるチャネルパワーを精度よく調整するには、
・WDM信号波長数、
・光SNR(OSNR)、
・光雑音の占める波長帯域
等を考慮にいれて、光増幅器1のトータル出力パワーレベルを制御することが必要である。
【0034】
本実施例においては、図1に示すように、光増幅器1の出力側の配置した光カプラ2により、WDM信号光の一部を分岐する。光スペクトラムモニタ3により、分岐したWDM信号光における光スペクトラム情報を取得する。
【0035】
この光スペクトラム情報を基に、演算処理部4において、
・WDM信号光の波長数、
・信号光の波長あたりの光パワー、
・光雑音パワー
を考慮して、光増幅器1の出力におけるトータル光パワーに占める、WDM信号光の成分(チャネルパワー)の比率を計算する。
【0036】
出力パワー制御部5は、チャネルパワーが所定の値となるような出力パワー設定値を決定し、光増幅器1の出力パワーに対するフィードバック制御を行う。
【0037】
光増幅器1の出力におけるチャネルパワーは、
・光増幅器1で増幅されたWDM信号光成分と、
・光増幅器1に入力されるWDM信号光に含まれる光雑音、および、
・光増幅器1から生じる自然放出光(ASE)雑音が増幅された光雑音成分
が含まれている。
【0038】
例えば、単純にターゲット(設定目標)とするチャネルパワーにWDM信号光の信号波長数を乗じた値を、光増幅器1の出力設定パワーとした場合、光雑音成分の影響により、実際には、光増幅器1の出力におけるチャネルパワーは、ターゲット値よりも低い値に設定されてしまう。
【0039】
図3は、4波WDMにおける光増幅器出力において、光SNR=10dB/0.2nmの場合(四角)と、20dB/0.2nmの場合(三角)のトータル出力パワー(横軸)と、チャネルパワー(縦軸)の関係(特性)を示す図である。ここでは、単純に、WDM信号光の各波長毎のパワーは、4波とも均一とし、光雑音の分布する帯域を30nmとしている。
【0040】
図3からも明らかなように、光SNRの条件により、同じトータル出力パワーであってもチャネルパワーは異なることが分かる。
【0041】
図4は、光増幅器1の出力での光SNR条件が、20dB/0.2nmと固定し、信号波長数が4波の場合(四角)と、16波の場合(三角)でのトータル出力パワー(横軸)とチャネルパワー(縦軸)の関係を示す図である。図4の場合も、波長数により、同一トータルパワーに対するチャネルパワーが変化することが分かる。
【0042】
本実施例においては、光増幅器1の出力を制御するにあたり、
・信号波長数と、
・光雑音パワーと、
を考慮にいれて、光増幅器1の出力パワー設定を行う。
【0043】
すなわち、図3において、チャネルパワー0dBmを設定ターゲット(破線)とした場合、光SNR=20dB/0.2nmの時には、光増幅器1のトータル出力パワーをPaに設定する。光SNR=10dB/0.2nmの時には、光増幅器1のトータル出力パワーをPbに設定する。
【0044】
同様に、図4において、チャネルパワー0dBmを設定ターゲット(破線)とした場合、WDM数=16波(16WDM)の時には、光増幅器1のトータル出力パワーをPaに設定する。WDM数=4波(4WDM)の時には、光増幅器1のトータル出力パワーをPbに設定する。
【0045】
このようにトータル出力パワーを設定することで、本実施例によれば、
・光SNR条件、
・光雑音量、
・WDM信号波長数
に影響されずに、光増幅器1の出力におけるチャネルパワーを精度よく調整することが可能となる。この結果、本実施例によれば、光増幅器出力のチャネルパワー設定ズレに伴う、過剰な光SNR劣化や非線形劣化を回避することが可能となる。
【0046】
図1において、光スペクトラムモニタ3の機能を実現する簡易な構成であるWDMチャネルモニタを用いた例を第2の実施例として以下に説明する。図5は、本発明の第2の実施例の構成を示す図である。図5に示すように、本実施例においては、図1の構成の光スペクトラムモニタ3を、WDMチャネルモニタ6で置き換えたものである。
【0047】
WDMチャネルモニタ6を用いる場合には、図6に示したように、WDM信号の全光スペクトラム情報を有しているわけではない。所定の波長グリッド上でサンプリングされた光パワー、光SNRを測定するため、次式(1)〜(3)により、光増幅器1のトータル出力パワーの設定値(Ptarget)の補正を行う。
【0048】

【0049】

【0050】

【0051】
ここで、Ptotalは光増幅器のトータル出力パワー、
n,iはWDMチャネルモニタでの波長グリッドにおける光雑音パワー、
s,iはWDMチャネルモニタで測定した各チャネルパワー、
ΔλはWDMチャネルモニタの波長グリッド、
はWDMチャネルモニタの分解能(測定Resolution)、
MはWDMチャネルモニタのモニタ可能な波長グリッド数、
KはWDM波長数、
targetは光増幅器のトータル出力パワーの設定値、
s,aveはWDMチャネルモニタで測定したチャネルパワーの平均値、
sxはチャネルパワーの設定ターゲット値、
である。
【0052】
図6において、WDMチャネルモニタ6のモニタ可能な波長グリッド数M=10、WDM波長数K=4、モニタ帯域幅=Bであり、光増幅器のトータル出力パワーPtotalは、上式(1)よりj=1として、

【0053】
チャネルパワーの平均値Ps,aveは、上式(2)よりj=1として、

【0054】
チャネルパワーの設定ターゲット値をPsxとすると、光増幅器のトータル出力パワーの設定値Ptargetは、


となる。
【0055】
なお、上記(1)〜(3)式の演算は演算処理部4で実行されるプログラムにより求めるようにしてもよい。
【0056】
光増幅器1の出力における光雑音の分布する波長範囲が、WDMチャネルモニタの波長範囲を超えた場合には、出力トータルパワーPtotalの計算に次式(4)のように補正する。
【0057】

【0058】
ここで、BλSはWDMチャネルモニタ最短波長グリッドより短波長側に分布する光雑音波長帯域幅、
λLはWDMチャネルモニタ最長波長グリッドより長波長側に分布する光雑音波長帯域幅、
a1はWDMチャネルモニタ最短波長グリッドより短波長側に分布する光雑音成分を計算する際の補正係数、
a2はWDMチャネルモニタ最長波長グリッドより長波長側に分布する光雑音成分を計算する際の補正係数
である。
【0059】
なお、上記(4)式の演算は演算処理部4で実行されるプログラムにより求めるようにしてもよい。
【0060】
図7は、本発明の第3の実施例の構成を示す図である。図7には、複数の光増幅器を多段接続(カスケード接続)した場合に、本発明を適用した実施例の構成が示されている。初段の光増幅器1、光カプラ2、光スペクトラムモニタ3、演算処理部4、出力パワー制御部5までは、図1の構成と同一の構成とされ、光カプラ2のメイン側に、分散補償器7、光増幅器8が直列に接続される構成となっている。この分散補償器7および光増幅器8は、繰り返し接続する構成が考えられるため、段数を0〜Nとしている。
【0061】
光増幅器8の出力パワーについても、チャネルパワーを一定とする制御が必要とされる。本実施例では、光増幅器8の出力パワーの制御として、演算処理部4の結果を基に、出力パワー制御部9により制御を行う構成としている。本実施例では、初段の光増幅器1の出力に対して光スペクトラムモニタ3を配置して、光増幅器1の出力トータルパワーとチャネルパワーの比率を計算し、この比率を補正係数とし、2段目以降の光増幅器1の出力パワー制御に使用しているため、各光増幅器1毎にスペクトラムモニタ機能を搭載する必要がなく、簡易な構成により、複数段の全ての光増幅器に対するチャネルパワーの一定制御が可能となる。
【0062】
図8は、本発明の第4の実施例の構成を示す図である。本発明の第4の実施例は、図7に第3の実施例として示した光増幅器の多段接続構成において、光スペクトラムモニタ3の代わりにWDMチャネルモニタ6を使用したものである。
【0063】
本実施例において、WDMチャネルモニタ6を使用した場合の光増幅器出力のトータルパワー(Ptotal)とチャネルパワー(Ps,ave)の比率(Ptotal/Ps,ave)を計算する方法は、図5に示した実施例の場合(上式(1)〜(3)参照)と同様である。また、図1においては、光スペクトラムモニタ手段として、光カプラ2、光スペクトラムモニタ3、演算処理部4を光増幅器1の出力側に配置しているが、光増幅器1の入力側に配置しても、同等な効果が期待できる。
【0064】
また、図5においては、光スペクトラムモニタ手段として、光カプラ2、WDMチャネルモニタ6、演算処理部4を光増幅器1の出力側に配置しているが、光増幅器1の入力側に配置しても同等な効果が期待できる。
【0065】
また、図7では、光スペクトラムモニタ手段として、光カプラ2、光スペクトラムモニタ3、演算処理部4を初段の光増幅器1の出力側に配置しているが、初段の光増幅器1の入力側あるいは2台目以降の光増幅器の入力側、出力側に配置しても同様な効果が期待できる。
【0066】
また、図8では、光スペクトラムモニタ手段として、光カプラ2、WDMチャネルモニタ6、演算処理部4を初段の光増幅器1の出力側に配置しているが、初段の光増幅器1の入力側あるいは2台目以降の光増幅器の入力側、出力側に配置しても同様な効果が期待できる。
【0067】
なお、上記の特許文献、非特許文献の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
1、8 光増幅器
2 光カプラ
3 光スペクトラムモニタ
4 演算処理部
5、9 出力パワー制御部
6 WDMチャネルモニタ
7 分散補償器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光増幅器の入力又は出力のWDM(Wavelength Division Multiplexing)信号光の分岐光から、チャネルパワー、光雑音を含む光スペクトラム情報を取得するモニタ手段と、
WDM信号光の光信号対雑音比に応じた、光増幅器のトータル出力パワーとチャネルパワーとの関係、
WDM信号波長数に応じた、光増幅器のトータル出力パワーとチャネルパワーとの関係の一方又は両方に基づき、
チャネルパワーの設定ターゲットに対応した、トータル出力パワー設定値を求め、前記光増幅器に設定する手段と、
を備えたことを特徴とする光増幅装置。
【請求項2】
光増幅器の入力又は出力のWDM(Wavelength Division Multiplexing)信号光の分岐光から、チャネルパワー、チャネル波長の光信号対雑音比、および、WDM信号光の波長帯域外の光雑音レベルを含む光スペクトラム情報を取得するモニタ手段と、
前記光スペクトラム情報を基に、WDM信号光の波長数、信号光の波長当りの光パワー、光雑音パワーを考慮して、光増幅器の出力におけるトータル出力パワーに占めるWDM信号光の成分の比率を計算する演算処理部と、
前記光増幅器の出力のチャネルパワーが所定の値となるように、出力パワー設定値を決定し、前記光増幅器の出力パワーのフィードバック制御を行う出力パワー制御部と、
を備えたことを特徴とする光増幅装置。
【請求項3】
前記光増幅器を複数段カスケード接続し、複数段の前記光増幅器のうちの1つの段の光増幅器に対して前記モニタ手段を備え、
前記モニタ手段で取得された情報に基づき、前記1つの段の光増幅器の出力トータルパワーとチャネルパワーの比率を計算し、前記比率を補正係数とし、他の光増幅器の出力パワーの制御に用いる、ことを特徴とする請求項1又は2記載の光増幅装置。
【請求項4】
カスケード接続された複数段の光増幅器を備え、
複数段の前記光増幅器のうちの1つの段の光増幅器に対して、WDM(Wavelength Division Multiplexing)信号光のチャネルパワーと、光雑音を取得するモニタ手段を備え、
前記モニタ手段で取得された情報に基づき、1つの段の光増幅器の出力トータルパワーとチャネルパワーの比率を計算し、前記比率を補正係数とし、他の光増幅器の出力パワーの制御に用いる、ことを特徴とする光増幅装置。
【請求項5】
前記モニタ手段は、光スペククトラムアナライザ又は所定の波長グリッド上で光パワーをサンプルするWDMチャネルモニタを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光増幅装置。
【請求項6】
前記モニタ手段として、所定の波長グリッド上で光パワーをサンプルするWDMチャネルモニタを備え、
前記光増幅器のトータル出力パワーPtotalを、

(ただし、
n,iはWDMチャネルモニタでの波長グリッドにおける光雑音パワー、
s,iはWDMチャネルモニタで測定した各チャネルパワー、
ΔλはWDMチャネルモニタの波長グリッド、
はWDMチャネルモニタの分解能、
MはWDMチャネルモニタのモニタ可能な波長グリッド数である)、
により求め、
WDMチャネルモニタで測定したチャネルパワーの平均値Ps,aveを、

(ただし、
KはWDM波長数、
s,iはWDMチャネルモニタで測定した各チャネルパワー)
により求め、
前記光増幅器のトータル出力パワーの設定値Ptargetを、

(ただし、Psxはチャネルパワーの設定ターゲット値)
により求める、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光増幅装置。
【請求項7】
前記光増幅器の出力における光雑音の分布する波長範囲が、前記WDMチャネルモニタの波長範囲を超えた場合には、出力トータルパワーPtotalを次式、


(ただし、BλSはWDMチャネルモニタ最短波長グリッドより短波長側に分布する光雑音波長帯域幅、
λLはWDMチャネルモニタ最長波長グリッドより長波長側に分布する光雑音波長帯域幅、
a1はWDMチャネルモニタ最短波長グリッドより短波長側に分布する光雑音成分を計算する際の補正係数
a2はWDMチャネルモニタ最長波長グリッドより長波長側に分布する光雑音成分を計算する際の補正係数である)
により求める、ことを特徴とする請求項6記載の光増幅装置。
【請求項8】
光増幅器の入力又は出力のWDM(Wavelength Division Multiplexing)信号光の分岐光から、チャネルパワー、光雑音を含む光スペクトラム情報を取得し、
WDM信号光の光信号対雑音比に応じた、光増幅器のトータル出力パワーとチャネルパワーとの関係、
WDM信号波長数に応じた、光増幅器のトータル出力パワーとチャネルパワーとの関係の一方又は両方に基づき、
チャネルパワーの設定ターゲットに対応した、トータル出力パワー設定値を求め、前記光増幅器に設定する、ことを特徴とする光増幅器の出力パワー制御方法。
【請求項9】
光増幅器の入力又は出力のWDM(Wavelength Division Multiplexing)信号光の分岐光から、WDM信号光のチャネルパワー、チャネル波長の光信号対雑音比、およびWDM信号光の波長帯域外の光雑音レベルを含む光スペクトラム情報を取得し、
前記光スペクトラム情報を基に、WDM信号光の波長数、信号光の波長当りの光パワー、光雑音パワーを考慮して、光増幅器の出力におけるトータル出力パワーに占めるWDM信号光の成分の比率を計算し、
前記光増幅器のチャネルパワーが所定の値となるように、出力パワー設定値を決定し、前記光増幅器の出力パワーに対するフィードバック制御を行う、ことを特徴とする光増幅器の出力パワー制御方法。
【請求項10】
前記光増幅器を複数段カスケード接続し、複数段の前記光増幅器のうちの1つの段の光増幅器に対して前記モニタ手段を用意し、
前記モニタ手段で取得された情報に基づき、前記1つの段の光増幅器の出力トータルパワーとチャネルパワーの比率を計算し、
前記比率を補正係数とし、他の光増幅器の出力パワーの制御に用いる、ことを特徴とする請求項8又は9記載の光増幅器の出力パワー制御方法。
【請求項11】
カスケード接続された複数段の光増幅器のうち1つの段の前記光増幅器の1つに対して、WDM信号光のチャネルパワー、光雑音情報を取得するモニタ手段を1つ用意し、
前記1つの段の光増幅器の出力トータルパワーとチャネルパワーの比率を計算し、
前記比率を補正係数とし、他の光増幅器の出力パワー制御に用いる、ことを特徴とする請求項光増幅器の出力パワー制御方法。
【請求項12】
前記光スペクトラム情報を、光スペククトラムアナライザ又は所定の波長グリッド上で光パワーをサンプルするWDMチャネルモニタで取得する、ことを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1項に記載の光増幅器の出力パワー制御方法。
【請求項13】
前記光スペクトラム情報を、所定の波長グリッド上で光パワーをサンプルするWDMチャネルモニタで取得し、
前記光増幅器のトータル出力パワーPtotalを、

(ただし、
n,iはWDMチャネルモニタでの波長グリッドにおける光雑音パワー、
s,iはWDMチャネルモニタで測定した各チャネルパワー、
ΔλはWDMチャネルモニタの波長グリッド、
はWDMチャネルモニタの分解能、
MはWDMチャネルモニタのモニタ可能な波長グリッド数である)、
により求め、
WDMチャネルモニタで測定したチャネルパワーの平均値Ps,aveを、

(ただし、
KはWDM波長数、
s,iはWDMチャネルモニタで測定した各チャネルパワー)
により求め、
前記光増幅器のトータル出力パワーの設定値Ptargetを、

(ただし、Psxはチャネルパワーの設定ターゲット値)
により求める、ことを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1項に記載の光増幅器の出力パワー制御方法。
【請求項14】
前記光増幅器の出力における光雑音の分布する波長範囲が、WDMチャネルモニタの波長範囲を超えた場合には、出力トータルパワーPtotalを次式、

(ただし、BλSはWDMチャネルモニタ最短波長グリッドより短波長側に分布する光雑音波長帯域幅、
λLはWDMチャネルモニタ最長波長グリッドより長波長側に分布する光雑音波長帯域幅、
a1はWDMチャネルモニタ最短波長グリッドより短波長側に分布する光雑音成分を計算する際の補正係数
a2はWDMチャネルモニタ最長波長グリッドより長波長側に分布する光雑音成分を計算する際の補正係数である)
により求める、ことを特徴とする請求項13記載の光増幅器の出力パワー制御方法。
【請求項15】
光増幅器の入力又は出力の分岐光を入力するWDMチャネルモニタで光スペクトラム情報を取得し、
前記光増幅器のトータル出力パワーPtotalを、

(ただし、
n,iはWDMチャネルモニタでの波長グリッドにおける光雑音パワー、
s,iはWDMチャネルモニタで測定した各チャネルパワー、
ΔλはWDMチャネルモニタの波長グリッド、
はWDMチャネルモニタの分解能、
MはWDMチャネルモニタのモニタ可能な波長グリッド数である)、
により求め、
WDMチャネルモニタで測定したチャネルパワーの平均値Ps,aveを、

(ただし、
KはWDM波長数、
s,iはWDMチャネルモニタで測定した各チャネルパワー)
により求め、
前記光増幅器のトータル出力パワーの設定値Ptargetを、

(ただし、Psxはチャネルパワーの設定ターゲット値)
により求める処理を、前記光増幅器の出力パワーを制御するコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項16】
前記光増幅器の出力における光雑音の分布する波長範囲が、WDMチャネルモニタの波長範囲を超えた場合には、出力トータルパワーPtotalを次式、

(ただし、BλSはWDMチャネルモニタ最短波長グリッドより短波長側に分布する光雑音波長帯域幅、
λLはWDMチャネルモニタ最長波長グリッドより長波長側に分布する光雑音波長帯域幅、
a1はWDMチャネルモニタ最短波長グリッドより短波長側に分布する光雑音成分を計算する際の補正係数
a2はWDMチャネルモニタ最長波長グリッドより長波長側に分布する光雑音成分を計算する際の補正係数である)
により求める処理を、前記コンピュータに実行させる請求項15記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−258367(P2010−258367A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109533(P2009−109533)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】