光学シート及びその製造方法、光学シートを用いたEL素子及びそれを備えた照明装置
【課題】複雑かつ微細な表面形状や平坦な表面形状、或いは、それらが複合された表面形状の母型を用いて転写成形する場合に、転写率や外観良好で版離れの調整が可能である。
【解決手段】光学シート3は、透光性基材12の表面に互いに直交する方向に大きさの異なるプリズムレンズ15A、15Bからなるレンズ群14を配列した。レンズ群14は、活性エネルギー線硬化性樹脂に硬化収縮率と離型性を調整する微粒子状の成形補助剤が添加されたものを硬化して形成する。活性エネルギー線硬化性樹脂及び成形補助剤の体積Vに対する成形補助剤の体積をfとし、f/V=Eは0.5%≦E≦31%の範囲に設定した。成形補助剤は、平均粒子径rの微粒子であり、レンズ群14の最も微小なプリズムレンズ15Bの高さをhとした場合、1/50≦r/h≦1/2とした。
【解決手段】光学シート3は、透光性基材12の表面に互いに直交する方向に大きさの異なるプリズムレンズ15A、15Bからなるレンズ群14を配列した。レンズ群14は、活性エネルギー線硬化性樹脂に硬化収縮率と離型性を調整する微粒子状の成形補助剤が添加されたものを硬化して形成する。活性エネルギー線硬化性樹脂及び成形補助剤の体積Vに対する成形補助剤の体積をfとし、f/V=Eは0.5%≦E≦31%の範囲に設定した。成形補助剤は、平均粒子径rの微粒子であり、レンズ群14の最も微小なプリズムレンズ15Bの高さをhとした場合、1/50≦r/h≦1/2とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイ、液晶用バックライト、照明用光源、電飾、サイン用光源等に用いられるEL素子(エレクトロルミネッセンス素子)及びEL素子を用いた表示装置、ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置等に用いられる光学シート及びその製造方法、そして光学シートを用いたEL素子及びそれを備えた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、フラットパネルディスプレイ、液晶用バックライト、照明用光源、電飾、サイン用光源等に用いられる光源としてのEL素子、そしてEL素子を用いた各種の表示装置、ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置等の照明装置では、光源から射出される光を拡散や集光等するための光学シートが備えられている。この光学シートは、透光性基材上に特定の透光性の凹凸パターン(レンズパターン)を付与することで作製されている。
【0003】
このような透光性の凹凸パターンを製作するためには、シリンダー状や板状の金型に旋盤切削方式を代表とする彫刻や腐食を用いてパターニングして母型とし、透光性基材の表面に母型のパターンを転写して形成する。或いは、母型から基材上にパターンを転写したシートを母型の金型として透光性基材に再転写する。もしくは、微粒子を透光性基材の表面に敷くことで凹凸パターンを付与するなどの製法が用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−211205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、光学シートの製法において、上述した母型を用いた手法では、ディスプレイ装置においては水平方向と垂直方向の光学特性の調整、照明装置においては光取り出し効率の向上や表面の耐擦傷性能の向上、更には活性エネルギー線硬化性樹脂を用いた転写における使用樹脂量を減らすことでのコストダウンなどを目的にして、母型の形状の複雑化や微細形状化が進んでいる。
しかしながら、このような製造方法で光学シートを製造した場合、切削や腐食等の手法を用いて母型の表面に凹凸パターン形状を付与する段階において錆などを含む表面面質の悪化が生じることがある。すると、母型の表面面質が悪化することに起因して、転写時に母型から凹凸パターン製品を離型させる際、版離れが悪く成形性が低下する等の問題が生じている。
【0006】
また、版離れの悪化を抑えるために、成形時に使用する樹脂に離型剤などを添加する方法も提案されてはいるが、そうすると、略平坦部を有するようなパターン形状の製品においては表面形状部分が母型からの離型性が高いために成形樹脂の硬化前に剥がれてしまうデラミといった現象が発生し、製品の外観不良を生じるという問題もある。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みて、複雑かつ微細な表面形状や平坦な表面形状を転写成形し、或いは、それらが複合された表面形状を転写成形する場合に、転写率や外観形状が良好で版離れの調整が可能な光学シート及びその製法、この光学シートを用いたEL素子及びそれを備えた照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による光学シートは、透光性基材の一方の表面に、少なくとも1または2種類以上の異なる形状の単位レンズからなるレンズ群が部分的もしくは全面に一次元方向または二次元方向に配列されており、レンズ群は、活性エネルギー線硬化性樹脂に硬化収縮率と離型性を調整できる成形補助剤が添加されたもので形成されていることを特徴とする。
本発明による光学シートは、レンズ群の素材である活性エネルギー線硬化性樹脂に、硬化収縮率と離型性を調整できる成形補助剤を予め添加することで、これらの素材を母型に相対的に圧着してレンズ群を硬化させて成形する際、硬化収縮に際して成形樹脂が硬化前に母型から離れるデラミ現象を防ぎ、母型に樹脂が残ったりせず樹脂取られを生じないから、転写率が良好で成形の安定性が高い光学シートが得られる。
【0009】
また、レンズ群を形成する活性エネルギー線硬化性樹脂及び成形補助剤の総体積Vに対する成形補助剤の総体積をfとした場合、総体積Vに対する成形補助剤の体積fの割合f/V=Eは次式の範囲に設定することが好ましい。
0.5%≦E≦31%
従って、活性エネルギー線硬化性樹脂及び成形補助剤の総体積Vに対する成形補助剤の総体積をfの割合E(=f/V)が0.5%≦E≦31%の範囲内であれば、成形補助剤を添加しない場合と比較して、成形補助剤の微粒子が表面に露出するために硬化した活性エネルギー線硬化性樹脂と母型との密着力が低下して離型性が向上する。しかも、硬化した上記樹脂と透光性基材との密着力が顕著に高くて製品の信頼性が向上すると共に、母型の細かいパターンに上記樹脂が入り込んで転写性が良好である。
【0010】
また、成形補助剤は、その平均粒子径をrとした微粒子であり、レンズ群の最も微小な単位レンズの高さをhとした場合、1/50≦r/h≦1/2であることが好ましい。
従って、r/hを上述の範囲に設定することで、活性エネルギー線硬化性樹脂の粘度を適度に抑えて転写率を確保すると共に、レンズ形状が微粒子によって変形することなく良好な光学特性を確保して母型からの離型時に活性エネルギー線硬化性樹脂の離型性が良好で離型時に母型側に樹脂が残存してしまう樹脂取られという現象を生じないという利点がある。
なお、活性エネルギー線硬化性樹脂に添加する成形補助剤の平均粒子径rは0.5μm〜12μmの範囲が良好であり、この範囲を外れると特に成形安定性を損なう割合が高い。
【0011】
本発明による光学シートの製造方法は、透光性基材の一方の表面に少なくとも1種類または2種類以上の異なる形状の単位レンズからなるレンズ群を配列してなる光学シートの製造方法において、レンズ群を形成するための活性エネルギー線硬化性樹脂に硬化収縮率と離型性を調整できる成形補助剤を予め添加する工程と、
成形補助剤を添加した活性エネルギー線硬化性樹脂をレンズ群の母型によって圧着することで母型の形状を転写して成形し、透光性基材の一方の表面に部分的もしくは全面的に且つ一次元方向または二次元方向に単位レンズを配列させてレンズ群を形成する工程と、を有することを特徴とする。
本発明による光学シートの製造方法によれば、レンズ群の素材である活性エネルギー線硬化性樹脂に、硬化収縮率と離型性を調整できる成形補助剤を予め添加することで、これらの素材を母型等に圧着してレンズ群を硬化させて成形する際、硬化収縮に際して成形樹脂が硬化前に母型から離れるデラミ現象を防ぎ、母型に樹脂が残ったりせず樹脂取られを生じないから、転写率が良好で成形の安定性が高い光学シートが得られる。
【0012】
また、レンズ群の凹凸パターンが転写して形成された金型をレンズ群の母型として、レンズ群は母型の形状を転写することによって透光性基材上に形成されていることが好ましい。
レンズ群の素材である活性エネルギー線硬化性樹脂に成形補助剤を予め添加したものを、母型に圧着してレンズ群を硬化させて転写成形することで、透光性基材上にレンズ群が転写して形成され、成形樹脂が硬化前に母型から離れるデラミ現象や母型に離型時に樹脂が残る樹脂取られを生じないから、転写率が良好で成形の安定性が高い光学シートが得られる。
【0013】
また、レンズ群を形成するための活性エネルギー線硬化性樹脂及び成形補助剤の総体積Vに対する成形補助剤の総体積をfとした場合、レンズ群の総体積Vに対する成形補助剤の体積fの割合f/V=Eは0.5%≦E≦31%の範囲に設定することが好ましい。
また、成形補助剤は、その平均粒子径をrとした微粒子であり、レンズ群の最も微小なレンズパターンの前記透光性基材からの高さをhとした場合、1/50≦r/h≦1/2であることが好ましい。
【0014】
また、レンズ群の母型を形成する活性エネルギー線硬化性樹脂にも、成形補助剤が予め添加されていてもよい。
これによって、レンズ群の母型を形成する際にも、成形樹脂が硬化前に母型から離れるデラミ現象を防ぐと共に母型に樹脂が残ったりせず樹脂取られを生じないという特性が得られる。
【0015】
本発明によるEL素子は、上述した光学シートが、透光性の第1基板とその背面側の第2基板の間に発光構造体が配設されてなるELパネルの光射出側の最表面に積層されてなることを特徴とする。
EL素子の光射出側に積層した光学シートは、活性エネルギー線硬化性樹脂に予め成形補助剤が添加されて硬化成形されているため、成形安定性がよく転写率が良好であり、しかも成形補充剤の微粒子を分散させたことで光の拡散性が向上する。
【0016】
本発明による照明装置は、上述したEL素子を発光手段として備えたことを特徴とする。
これによって、光学シートの成形時にデラミ現象や樹脂取られを生じないから、成形性と転写性と光拡散性が良好であり、EL素子から射出された光の光学特性が均一で良好な照明装置が得られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明による光学シートとその製造方法によれば、光学シートが複雑かつ微細な表面形状や平坦な表面形状等の様々な表面形状を有していたり、それらの表面形状が複合されてなる母型を用いた転写成形において、成形補助剤の添加によって、樹脂選定が容易で転写率や外観形状が良好であり、版離れの調整ができる。特に、レンズ群を硬化させて成形する際、硬化収縮に際して成形樹脂が硬化前に母型から離れるデラミ現象を防ぐと共に母型に樹脂が残ったりせず樹脂取られを生じない特性が高まるから、一層、転写率が良好で成形の安定性が高い光学シートが得られる。
また、そのような製法で製造された光学シートを用いたEL素子や照明装置によって、発光性が良好で輝度の高い照明が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一実施形態による光学シートを含むEL照明素子の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1に示す光学シートの斜視図である。
【図3】図2に示す光学シートの縦断面図である。
【図4】第一実施形態による光学シートの製造方法を示す模式図である。
【図5】第二実施形態による光学シートの製造方法を示す模式図である。
【図6】本発明の第一変形例による光学シートの斜視図である。
【図7】図6に示す光学シートの縦断面図である。
【図8】第二変形例による光学シートの斜視図である。
【図9】図8に示す光学シートの縦断面図である。
【図10】第三変形例による光学シートの斜視図である。
【図11】図10に示す光学シートの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態による光学シートとその製造方法、そして光学シートを含むEL照明素子及びEL照明素子を含むEL照明装置について添付図面により説明する。
図1乃至図4は本発明の第一実施形態による光学シートとその製造方法、光学シートを備えたEL照明素子(EL素子)を示す図である。このEL照明素子は、例えば発光手段として、EL照明装置、ディスプレイ装置、または液晶素子等の画像表示素子の背面に配設して液晶ディスプレイ装置等の各種のディスプレイ装置を含む照明装置に具備されて使用される。
図1に示すEL照明素子1(EL素子)は、ELパネル2の光射出側の面に第一実施形態による光学シート3が積層されて構成されている。
【0020】
ELパネル2は、光の出射側に配設された透光性の第1基板5と、第1基板5の裏面側に配置された第2基板6と、第1基板5及び第2基板6の間に挟持された発光構造体7とが一体的に積層して形成されている。発光構造体7は、第1基板5の裏面側に配置される陽極8と、第2基板6の表面側に配置される陰極9と、陽極8及び陰極9の間に挟持された発光層10とで構成されている。
発光構造体7は、発光層10が陽極8と陰極9に電圧を印加することにより発光するものであり、従来公知のさまざまな構成を採用することができる。ELパネル2は、陽極8と陰極9の間に電圧を印加して発光層10から光を出射させ、この光が第1基板5を透過して光学シート3に入射し、さらに光学シート3を透過して外部へ出射することになる。
【0021】
図2及び図3に示す光学シート3は、ELパネル2の第1基板5の光射出側の面である上面に積層されており、透光性基材12と、透光性基材12上に積層形成された複数の単位レンズ13が二次元方向に配列されてなるレンズ群14とで形成されている。単位レンズ13は例えば断面略三角形をなすプリズムレンズ15であり、本第一実施形態では、透光性基材12の一方向に比較的大きな断面略三角形の略柱状のプリズムレンズ15Aが平行に配列され、これに略直交する他方向にはプリズムレンズ15Aとは大きさの異なる断面略三角形の略柱状のプリズムレンズ15Bが平行に配列されて構成されている。
【0022】
単位レンズ13の断面形状は上述の三角形に限定されるものではなく、他の適宜の断面形状を採用できる。しかも配列される単位レンズ13の形状は1種類に限定されることはなく、2種類または3種類以上の複数種類の形状のものを組み合わせてレンズ群14を構成してもよい。
また、レンズ群14は、単位レンズ13が一次元方向に配列されて構成されていてもよいが、上述のように二次元方向に配列されて構成されていることが好ましい。単位レンズ13の二次元方向配列とは、一方向に延びるシリンドリカル形状の単位レンズ13が直交する方向に平行に配列された構成だけでなく、単位レンズ13がドット状で互いに直交する方向に配列された構成やハニカム状に配列された構成等が一例として挙げられる。
【0023】
ここで、光学シート3の材質について説明する。
透光性基材12として、例えばポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、シクロオレフィンポリマーやこれらの複合体などの合成樹脂が用いられる。
透光性基材12の少なくとも一方の面に易接着層のような表面処理が施されているものを使用することもできる。このような構成を採用すれば、ELパネル2の第1基板5との接着性やレンズ群14との接着性が高くなる。
【0024】
また、本実施形態では、複数種類の単位レンズ13を有するレンズ群14について、活性エネルギー線硬化性樹脂を使用する。活性エネルギー線硬化性樹脂として、例えば紫外線硬化型フォトポリマーが用いられ、具体的にはアクリル系ポリマー、アクリル系モノマーまたは光開始剤等を含んだ公知のものが用いられる。レンズ群14の材質として活性エネルギー線硬化性樹脂を用いて賦型する際には、活性エネルギー線(例えば紫外線)が照射されたときに硬化して接着性を有するものが使用できる。
レンズ群14を製造するには、活性エネルギー線硬化性樹脂として、例えば紫外線硬化型フォトポリマー、具体的にはアクリル系ポリマー、アクリル系モノマー及び光開始剤等を含んだものを用いて後述する成形補助剤を混入して、透光性基材12上に紫外線硬化型フォトポリマーを塗布する。そして、予めレンズ群14のパターンが賦型された金型の母型(版)を圧着させた状態で硬化させることで、所望のレンズ群14を有する光学シート3を得ることができる。
【0025】
ここで、レンズ群14の材質として活性エネルギー線硬化性樹脂を用いて母型(版)を圧着して成形する場合、単位レンズ13の外観形状において平面部などの樹脂密着性が非常に低い部分があると、活性エネルギー線硬化性樹脂が硬化した際に、この部分では、凹凸形状からなる凹凸部位と比較して母型からの離型が早く、その部分がムラになって視認されてしまう「デラミ」という現象が起こる。
また、レンズ群14の成形方法では、母型の凹凸パターン部(レンズパターン)においても腐食などに起因した表面が錆びた部位や、単位レンズ13の高さと幅の比である高アスペクトの凹凸部位などにおいては、活性線硬化性樹脂が硬化した後の母型からの剥離が困難であり、母型側に樹脂が残ってしまう「樹脂取られ」という現象が発生するおそれがある。
そこで、本発明の第一実施形態では、レンズ群14を形成する活性エネルギー線硬化性樹脂に成形補助剤を予め所定の範囲で添加するようにしてデラミや樹脂取られを抑制するようにした。成形補助剤は活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化収縮率と離型性を調整する機能を発揮できる。
【0026】
成形補助剤は微粒子であり、例えばスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、尿素樹脂、ホルムアルデヒド縮合物などからなる有機系粒子や、ガラスビーズ、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、金属酸化物などからなる無機系微粒子、または気泡や可視光の特定の波長に吸収性を有するような色素顔料なども使用することができ、これら複数種類の微粒子を併用して混合することも可能である。
【0027】
成形補助剤として微粒子を添加することで活性エネルギー線硬化樹脂が硬化する際の硬化収縮率を調整することができて、離型性を調整できると共に成形樹脂が硬化前に母型から剥がれるデラミ現象を防止できる。
また、母型に成形されたレンズ群14の表面に成形補助剤の微粒子による微細な凹凸が形成されることになり、硬化したレンズ群14の母型からの離型が容易となり、母型側に樹脂が残ってしまうといった樹脂取られ現象を防止できる。
また、光学シート3に光の拡散性を付与したい場合には、微粒子の種類を適宜選択して活性エネルギー線硬化性樹脂との屈折率差をつけることでレンズ群14に所望の光拡散性を付与することも可能となる。
【0028】
ここで、光学シート3のレンズ群14を製造する際に使用する材料である活性エネルギー線硬化性樹脂及び添加された成形補助剤の総体積Vに対する成形補助剤の総体積をfとした場合、レンズ群14の総体積Vに対する成形補助剤の体積fの百分率を成形補助剤の含有率Eとすると、成形補助剤の含有率E(=f/V)は次式(1)の範囲に設定する。なお、V、fは硬化前の体積である。
0.5%≦E≦31% …(1)
(1)式の範囲内であれば、成形補助剤を添加しない場合と比較して、成形補助剤の微粒子が表面に露出するために硬化した活性エネルギー線硬化性樹脂と母型との密着力が低下して離型性が向上する。しかも、硬化した上記樹脂と透光性基材12との密着力が顕著に高くて製品の信頼性が向上すると共に、母型の細かいパターンに上記樹脂が入り込んで転写性が良好である。
なお、0.5%≦E≦30%の範囲であれば更に良好である。
【0029】
一方、E<0.5%の場合には、透光性基材12上に活性エネルギー線硬化性樹脂を用いて母型のパターンを転写してレンズ群14を成形する際に、硬化した樹脂と母型との密着力が成形補助剤を添加しない場合に対して変化が無く、離型性の向上につながらない。また、E>31%の場合には、硬化した樹脂と透光性基材12との密着力が顕著に低下し、製品の信頼性が損なわれてしまうとともに、使用樹脂と成形補助剤との組み合わせ次第では樹脂粘度が著しく増加してしまい、母型の細かいパターンに樹脂が入りこまず、転写性が低下してしまうこととなる。
【0030】
また、成形補助剤の含有率E(=f/V)に関し、より望ましくは次式(1)′を満足するものとする。
1%≦E≦25% …(1)′
ここで、(1)′式に関し、25%<E≦31%では樹脂への微粒子の分散状態が悪化し、溶融樹脂の送液時のフィルターの詰まりや母型に微粒子の凝集物が付着することによる母型傷やパターンの目詰まりといった現象を引き起こす可能性があり、レンズ群14に光拡散性を付与したい場合などには1%≦Eであることが望ましい。
従って、1%≦E≦25%の場合においては、活性エネルギー線硬化性樹脂への微粒子の分散混合が比較的容易に行えるため所望のパターン形状や光拡散性能、母型と樹脂との密着性能などの諸物性に併せて微粒子の添加量を適宜選択することが可能となるとともに微粒子や活性エネルギー線硬化性樹脂の選定が簡便となる。
【0031】
次に、成形補助剤としての微粒子の粒径と単位レンズ13の高さとの関係について説明する。
まず、成形補助剤としての微粒子の粒径について説明する。本発明者らの後述する試験により、活性エネルギー線硬化性樹脂に添加する成形補助剤の平均粒子径rは0.5μm〜12μmの範囲が良好であり、この範囲を外れると特に成形安定性を損なう割合が高い。成形補助剤の平均粒子径は0.5μm〜10μmの範囲がより好ましく、2.0μm〜10.0μmの範囲がレンズ群14の成形安定性と転写率の両方が最も好ましかった。
【0032】
また、成形補助剤としての微粒子の粒径を成形される単位レンズ13の高さとの関係で論述すると、以下のように規定できる。
成形補助剤としての微粒子の平均粒径をrとし、光学シート3に形成したレンズ群14のうちで単位レンズ13の最も小さいプリズムレンズ15Bの透光性基材12からの高さをhとする。
この場合、成形補助剤の微粒子の平均粒径rと最小の単位レンズ13の高さhの比r/hは、
1/50≦r/h≦1/2 …(2)
であることが望ましい。
(2)式の範囲内であれば、活性エネルギー線硬化性樹脂の粘度を適度に抑えて転写率を確保すると共に、レンズ形状が微粒子によって変形することなく良好な光学特性を確保して母型からの離型時に活性エネルギー線硬化性樹脂の離型性が良好で離型時に母型側に樹脂が残存してしまう樹脂取られという現象を生じないという利点がある。
【0033】
これに対し、r/h<1/50の場合には、微粒子が小径になって使用可能な微粒子の選択肢が非常に狭くなると共に、活性エネルギー線硬化性樹脂の粘度が著しく増加するため転写率が下がってしまう不具合が生じる。また、r/h>1/2の場合には、微粒子が大径化してレンズ形状を変形させてしまう割合が大きくなり、光学特性を損ねるとともに母型からの離型時に活性エネルギー線硬化性樹脂の樹脂硬化膜が凝集破壊されてしまい母型側に樹脂が残存してしまう樹脂取られといった現象を引き起こしてしまう不具合が生じる。
【0034】
また、(2)式に関し、より望ましくは、成形補助剤の微粒子の平均粒径と最小の単位レンズ13の高さの比は、次式(2)′に設定される。
1/20≦r/h≦1/4 …(2)′
ここで、1/4<r/h≦1/2の場合においては、凹凸パターン部に微粒子が挟まってしまい成形安定性が低下する可能性があり、1/50≦r/h<1/20においては添加する微粒子の個数が増加するため活性エネルギー線硬化性樹脂の粘度が上昇して転写率が低下してしまう可能性がある。
従って、(2)′式の範囲内においては安定な成形条件を決定するのが容易で所望のパターン形状や光の拡散性能、製造時における母型への密着性能などの諸物性に併せて微粒子の添加量を適宜選択することが可能となるとともに微粒子や活性エネルギー線硬化性樹脂の選定が簡便となるため、(2)式の範囲よりも一層好ましい。
【0035】
なお、図1に示すEL照明素子1において、光学シート3はELパネル2の上面に積層され、光学シート3はELパネル2の第1基板5の表面に積層された例えばガラス基板(図示せず)と貼り合わされている。貼り合わせには、粘着剤や接着剤を用いることができ、粘着剤や接着剤はアクリル系やウレタン系のような樹脂系素材のいずれでもよく、透光性基材12や後述する熱可塑性樹脂の材質により適宜選択することができる。より具体的には、アクリル系粘着剤としてはアクリルポリマーを適宜架橋することで耐熱性に優れた粘着剤層が得られる。
【0036】
粘着剤や接着剤による架橋方法の具体的手段として、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物などアクリル系ポリマーに適宜架橋基点として含ませたカルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基などと反応しうる基を有する化合物を添加し反応させるいわゆる架橋剤を用いる方法がある。このうち、イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環式イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネートなどが挙げられる。また、これらに拡散性能やガラス基板との密着力調整を目的に成形補助剤をなす微粒子が添加されていてもよい。
【0037】
凹凸パターンを有する光学シート3を粘着剤や接着剤を介してELパネル2の最表面のガラス基板に貼合することで、光取り出し効率の向上と、成形補助剤として添加する微粒子に光拡散性を付与することで視野角によって色味が異なるといった色ずれという現象の低減、また、成形補助剤により腐食方式などによる半球状のパターンも成形することが可能となるため、プリズムやシリンドリカルレンズと併用することで耐擦傷性能の向上も図ることが可能となるとともに、液晶バックライト用光学シート、ELディスプレイ用光学シートといったフラットパネルディスプレイ用途の光学シートとしても使用することが可能となる。
【0038】
本実施形態による光学シート3は上述の構成を備えており、次にその製造方法について説明する。
図4は本実施形態による光学シート3の製造装置の模式図である。
この光学シート3の製造装置16は、シート状に連続する透光性基材12を透光性基材シート12Aとして繰り出す透光性基材ロール17と、透光性基材シート12Aに予め微粒子の成形補助剤を混入させた活性エネルギー線硬化性樹脂を塗布する樹脂供給ノズル18と、レンズ群14の転写形状が円筒状の表面に形成されている金型をなす金属製シリンダー状母型19と、この母型19に圧着された母型圧着用ロール20と、金属製シリンダー状母型19に塗布された活性エネルギー線硬化性樹脂に紫外線を照射して樹脂を硬化させる紫外線露光装置21と、レンズ群14が成形された透光性基材シート12Aを巻き取る光学シートロール22とを備えている。
【0039】
ここで、金属製シリンダー状母型19は、例えば略シリンダー形状の鉄芯上に他の金属が層状にメッキされて形成されている。ここで言う他の金属とは、例えば銅やニッケルなどであり、母型19へ付与する凹凸パターンの形状によって適宜選択することができると共に、凹凸パターン付与後に防錆や表面の保護を目的にクロムなどの金属メッキを付与することもできる。また、母型19への凹凸パターン付与の方式は旋盤を用いた切削方式やレーザー描画、腐食方式など適宜選択することができ、或いは、これらの方式を適宜組み合わせることによっても母型19を製作できる。
【0040】
次に、この光学シート3の製造装置16を用いた本実施形態による光学シート3の製造方法について説明する。
先ず、透光性基材ロール17から透光性基材12がシート状に連続する透光性基材シート12Aを繰り出し、受けロール23に対向して配置された樹脂供給ノズル18から透光性基材シート12A上に微粒子の成形補助剤を予め添加して均一に分散させた活性エネルギー線硬化性樹脂を塗布する。
【0041】
活性エネルギー線硬化性樹脂が塗布された透光性基材シート12Aは、この活性エネルギー線硬化性樹脂が塗布された面を金属製シリンダー状母型19に対面させてこの母型19と母型圧着用ロール20とで挟持されて圧着され、この活性エネルギー線硬化性樹脂は金属製シリンダー状母型19の凹凸パターンに沿って成形される。
そして、金属製シリンダー状母型19で成形された透光性基材シート12Aは紫外線露光装置21から照射される紫外線等の活性エネルギー線によって硬化させられ、テンションロールを介して光学シートロール22に巻き取られる。その後、透光性基材シート12Aは別工程でレンズ群14が形成された透光性基材12の単位毎に切断されることで光学シート3が得られる。
【0042】
上述のように、本第一実施形態による光学シート3の製造方法及びこの方法で得られた光学シート3によれば、レンズ群14が複雑かつ微細な表面形状や平坦な表面形状等の様々な表面形状を有していたり、それらの表面形状が複合されてなる母型19を用いた転写成形において、活性エネルギー線硬化性樹脂に微粒子の成形補助剤を(1)式及び(2)式の条件で、選定して添加したことで、成形が容易である上に、金属製シリンダー状母型19に対する活性エネルギー線硬化性樹脂の転写率や外観形状が良好であり、しかも母型19からの版離れが確実であり、略平坦部の離型が硬化前に起こるデラミや離型時に母型19に樹脂が残る樹脂取られといった現象を防止できる。
この製法で製作された光学シート3は、デラミや樹脂取られといった現象を生じないで外観形状が良好なものを得られる。
【0043】
また、(1)式及び(2)式という条件によって成形補助剤を活性エネルギー線硬化性樹脂に予め添加することで、作製後に長期時間経過したために腐食工程などを用いずとも表面に錆が発生したような母型19に対しても効果があり、母型19の寿命を通常よりも延ばすことが可能となってコスト低減効果にもつながる。
また、そのような製法で製造された光学シート3を用いてEL照明素子1やこのEL照明素子1を発光装置として用いた照明装置を得られて、発光性が良好で照度の高い照明が得られる。
【0044】
次に本発明の他の実施形態による光学シート3とその製造方法について図5乃至図11により説明するが、上述した実施形態による光学シート3とその製造方法の部品、部材と同一または同様な部品、部材には同一の符号を用いて説明を省略する。
図5は本発明の第二実施形態による光学シート3の製造方法を説明する製造装置24を示す模式図である。
本第二実施形態による光学シート3の製造装置24において、金型となる母型は上述した第一実施形態による金属製シリンダー状母型19とは異なり、レンズ群14の凹凸パターン(レンズパターン)を形成したシートが母型となる母型シート25を用いている。
【0045】
本第二実施形態による光学シート3の製造方法に用いる製造装置24において、第一実施形態による光学シート3の製造装置16との相違点は、金属製シリンダー状母型19に代えて第二母型圧着ロール26を母型圧着ロール20に圧着させて配置させ、シート状母型ロール28から母型シート25を繰り出して透光性基材シート12Aと母型シート25を重ねて母型圧着ロール20と第二母型圧着ロール26とに挟持させる。そして、第二母型圧着ロール26の下流側の分割ロール27で透光性基材シート12Aと母型シート25を分離させ、母型シート25は第二シート状母型ロール29に巻き取り、透光性基材シート12Aは光学シートロール22に巻き取るように構成されている。
【0046】
ここで母型シート25は、第一実施形態による製造方法で作製された透光性基材シート12Aを使用できる。また、母型シート25は、熱可塑性樹脂を用いて溶融樹脂成形などで表面に凹凸パターンが付与された一体型光学シートを用いて熱可塑性樹脂の層に反転転写して形成することもできる。
ここで母型シート25に予め成形補助剤として微粒子を添加することで繰り返し母型シート25を使用することができ、また反転転写についても複数回一体型光学シートに反転させることも可能となる。
凹凸パターンを有する母型シート25を形成する熱可塑性樹脂として、アクリル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルポリスチレン共重合体、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル/スチレン系共重合樹脂等の公知のものを使用することができる。
【0047】
次に、製造装置24を用いた本第二実施形態による光学シート3の製造方法について説明する。
先ず、透光性基材ロール17から透光性基材シート12Aを繰り出し、受けロール23に対向する樹脂供給ノズル18から透光性基材シート12A上に微粒子の成形補助剤を予め均一に分散混入させた活性エネルギー線硬化性樹脂を塗布する。
透光性基材シート12Aの活性エネルギー線硬化性樹脂が塗布された面に、シート状母型ロール28からくり出した母型シート25を重ねて、母型圧着ロール20と第二母型圧着ロール26との間に通して圧着させる。これによって、透光性基材シート12A上の活性エネルギー線硬化性樹脂に母型シート25の凹凸パターンを成形し、紫外線露光装置21から照射される紫外線等の活性エネルギー線によって硬化させる。
その後、分割ロール27で透光性基材シート12Aから母型シート25を分離して第二シート状母型ロール29に巻き取り、レンズ群14が形成された透光性基材シート12Aは光学シートロール22に巻き取られる。
【0048】
上述のように、本第二実施形態による光学シート3の製造方法によれば、第一実施形態による金属製シリンダー状母型19の作成が困難である場合に、その逆パターンを母型として反転転写し、これを元に母型シート25を形成して、成形補助剤を予め分散させた活性エネルギー線硬化性樹脂を透光性基材シート12Aと母型シート25とで挟持して透光性基材シート12A上にレンズ群14を成形するようにしたから、所望のパターンを有する光学シート3を得ることができる。
また、活性線エネルギー硬化性樹脂を用いて作製した光学シート3の母型を1回反転転写させ、これを母型として所望の製品を溶融樹脂成形などで得ることもできる。
【0049】
なお、上述の実施形態による光学シート3の製造方法で製造される光学シート3の変形例について、図6乃至図11により説明する。
図6及び図7に示す第一変形例による光学シート32は、構造層31として透光性基材12の表面に断面略三角形のプリズムレンズ33が互いに直交する方向に交差して配列されており、プリズムレンズ33に重ねて所定間隔を開けてマイクロレンズ34が配列されている。これらプリズムレンズ33とマイクロレンズ34はそれぞれ単位レンズ13を構成し、これらの組合せでレンズ群14を構成する。そして、マイクロレンズ34はプリズムレンズ33よりも高さが大きく形成されている。
【0050】
図8及び図9に示す第二変形例による光学シート36は、構造層31として透光性基材12の表面に断面略半楕円形状または略半円形状のシリンドリカルレンズ37、38が互いに直交する方向に交差して配列されており、一方のシリンドリカルレンズ37は他方のシリンドリカルレンズ38よりも大径に形成されている。これらシリンドリカルレンズ37、38はそれぞれ単位レンズ13を構成し、これらの組合せでレンズ群14を構成する。
【0051】
図10及び図11に示す第三変形例による光学シート40は、構造層31として透光性基材12の表面に第一変形例による光学シート32と同様に、断面略三角形のプリズムレンズ33が互いに直交する方向に交差して配列されており、プリズムレンズ33に重ねて所定間隔を開けてマイクロレンズ34が配列されている。これらプリズムレンズ33とマイクロレンズ34はそれぞれ単位レンズ13を構成し、これらの組合せでレンズ群14を構成する。マイクロレンズ34はプリズムレンズ33よりも高さが大きく形成されている。
そして、構造層31は、光学シート40の射出面において、透光性基材12上に形成された単位レンズ13の集合体であるレンズ群14と、色ずれ低減部42とを備えている。
【0052】
色ずれ低減部42は略平坦な板形状を有していて傾斜して配設され、各レンズ33、34と比較して透光性基材12からの出射光に対する全反射角度を増やす機能を有している。すなわち、透光性基材12からの出射光において、色ずれの原因となる光学シート40に対して例えば入射角±40°以上の光線を全反射させ、色ずれ低減機能を発現させるものである。
また、色ズレ低減部42の形状である略平坦とは、表面粗度RmaxをR-hとした場合にR-hの絶対値が3μm以下程度の部位を示している。
【実施例】
【0053】
次に、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
実施例1として、活性エネルギー線硬化性樹脂に対する成形補助剤の添加割合を試験した。実施例1では、図6及び図7に示す光学シート32を、図4に示す金属製シリンダー状母型19を用いた製造方法によって製造した。金属製シリンダー状母型19を製作するに際して、マイクロレンズ34の反転形状を腐食方式で、プリズムレンズ33の反転形状を切削方式で形成した。そして、レンズ群14の材料となる活性エネルギー線硬化性樹脂としてウレタンアクリレート系樹脂を用い、成形補助剤としてPMMA微粒子を用い、樹脂の全体積Vに対して成形補助剤の体積fの含有割合E(%)を、表1に示すように変化させて、それぞれ光学シート32を製造した。
【0054】
光学シート32の各単位レンズ13の製造基準は次の通りである。
(1)プリズムレンズ33について
プリズムレンズ33の頂角90°
プリズムレンズ33のピッチ測定値:50μm
プリズムレンズ33の高さ測定値:25μm
(2)マイクロレンズ34について
マイクロレンズ34の形状:アスペクト40%
マイクロレンズ34の最大直径測定値:100μm
マイクロレンズ34の高さ測定値:40μm
単位レンズの面積比率:プリズムレンズ33/マイクロレンズ34=1
活性エネルギー線硬化性樹脂:ウレタンアクリレート系樹脂
成形補助剤:PMMA微粒子
成形補助剤の平均粒子径r:4μm
【0055】
成形補助剤の含有率Eを表1に示すように変えて製造された各光学シート32について、成形安定性は目視による外観評価して実施し、転写率については走査型レーザー顕微鏡によって測定した。
評価基準は下記通りである。合否の判定基準として、評価に×がなく、最低でも○で、少なくとも一方は◎であることとした。
(1)外観評価
◎:外観不良部無し
○:外観不良部1000m2に10個未満
×:外観不良部1000m2に10個以上
(2)転写率評価
◎:転写率99%以上
○:転写率95%以上99%未満
×:転写率95%未満
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示す結果から、活性エネルギー線硬化性樹脂に対する成形補助剤の添加率(%)は0.5%〜31%の範囲が良好であり、0.5%〜30%の範囲がより良好であった。
【0058】
(実施例2)
実施例2として、成形補助剤としての微粒子の平均粒子径r(μm)について試験した。
実施例2では、実施例1と同様に図6及び図7に示す光学シート32を、図4に示す金属製シリンダー状母型19を用いた製造方法によって製造した。金属製シリンダー状母型19は実施例1と同様に製作し、レンズ群14の材料となる活性エネルギー線硬化性樹脂としてウレタンアクリレート系樹脂を用い、成形補助剤としてPMMA微粒子を用い、成形補助剤の添加率Eは10%に設定した。光学シート32の各単位レンズ13の製造基準も実施例1と同様である。
そして、成形補助剤の平均粒子径(μm)を、表2に示すように変化させて、それぞれ光学シート32を製造した。
【0059】
また、試験結果の評価基準は下記通りであり、成形率安定性評価については目視による外観評価にて実施し、転写率については走査型レーザー顕微鏡にて測定を実施した。
(1)成形安定性評価
◎:外観不良部無し
○:外観不良部1000m2に10個未満
×:外観不良部1000m2に10個以上
(2)転写率評価
◎:転写率99%以上
○:転写率95%以上99%未満
×:転写率95%未満
【0060】
【表2】
【0061】
表2に示す結果から、活性エネルギー線硬化性樹脂に添加する成形補助剤の平均粒子径は0.5μm〜12μmの範囲が良好であり、0.5μm〜10μmの範囲が更に良好であった。また、2.0μm〜10.0μmの範囲は成形安定性と転写率が共に最も良好で好ましかった。
【0062】
(実施例3)
実施例3として、活性エネルギー線硬化性樹脂に対する成形補助剤の添加割合を試験した。
実施例3では、実施例1、2と同様に図6及び図7に示す光学シート32を、図4に示す金属製シリンダー状母型19を用いた製造方法によって製造した。金属製シリンダー状母型19は実施例1と同様に製作し、レンズ群14の材料となる活性エネルギー線硬化性樹脂としてウレタンアクリレート系樹脂を、成形補助剤としてPMMA微粒子を用い、成形補助剤の平均粒子径は4μmとした。光学シート32の各単位レンズ13の製造基準も実施例1と同様である。
そして、成形補助剤の添加率Eを表3に示すように変化させて、それぞれ光学シート32を製造した。
【0063】
また、試験結果の評価基準は下記通りであり、成形安定性評価については目視による外観評価にて実施し、転写率については走査型レーザー顕微鏡にて測定を実施した。
(1)成形安定性評価
◎:外観不良部無し
○:外観不良部1000m2に10個未満
×:外観不良部1000m2に10個以上
(2)転写率評価
◎:転写率99%以上
○:転写率95%以上99%未満
×:転写率95%未満
【0064】
【表3】
【0065】
表3に示す結果から、活性エネルギー線硬化性樹脂に対する成形補助剤の体積添加率(5)は、0.5%〜31%の範囲が良好であり、0.5%〜30%の範囲がより良好であった。
【0066】
(実施例4)
実施例4として、成形補助剤の微粒子の添加率Eと略平面部を含むレンズ群14の硬化収縮率(5)とについて試験した。
実施例4では、実施例1〜3と同様に図6及び図7に示す光学シート32を、図4に示す金属製シリンダー状母型19を用いた製造方法によって製造した。金属製シリンダー状母型19は実施例1と同様に製作し、レンズ群14の材料となる活性エネルギー線硬化性樹脂としてウレタンアクリレート系樹脂を、成形補助剤としてPMMA微粒子を用い、成形補助剤の平均粒子径は4μmとした。光学シート32の各単位レンズ13の製造基準も実施例1と同様である。
また、レンズ群14の表面積とレンズ群14中の略平面部の比率は、レンズ群14/略平面部=4とし、レンズ群14に使用した成形補助剤を含む活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化収縮率は10%を基準とした。
そして、成形補助剤の添加率Eを表4に示すように変化させて、それぞれ光学シート32を製造した。
【0067】
また、試験結果の評価基準は下記通りであり、成形安定性評価については目視による外観評価にて実施し、転写率については走査型レーザー顕微鏡にて測定を実施した。
(1)成形安定性評価
◎:外観不良部無し
○:外観不良部1000m2に10個未満
×:外観不良部1000m2に10個以上
(2)転写率評価
◎:転写率99%以上
○:転写率95%以上99%未満
×:転写率95%未満
【0068】
【表4】
【0069】
表4に示す結果から、活性エネルギー線硬化性樹脂に対する成形補助剤の体積添加率(%)は、0.5%〜31%の範囲が良好であり、0.5%〜30%の範囲がより良好であった。これらの範囲でレンズ群14の硬化収縮率は10%を下回り、良好であった。
【0070】
なお、実施例1、3,4に示す表1、3,4において、活性エネルギー線硬化性樹脂に対する成形補助剤の体積添加率(%)は、1.0%〜25%の範囲が成形安定性と転写率がいずれも最も良好であり、この範囲が最も好ましい範囲であることを確認できた。
成形補助剤の体積添加率は(%)はる。
【符号の説明】
【0071】
1 EL照明素子
2 ELパネル
3 光学シート
12 透光性基材
12A 透光性基材シート
13 単位レンズ
13A、13B プリズムレンズ
14 レンズ群
17 透光性基材母型ロール
18 樹脂供給ノズル
19 金属製シリンダー状母型
20 母型圧着用ロール
21 紫外線露光装置
22 第二シート状母型ロール
25 母型シート
26 第二母型圧着用ロール
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイ、液晶用バックライト、照明用光源、電飾、サイン用光源等に用いられるEL素子(エレクトロルミネッセンス素子)及びEL素子を用いた表示装置、ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置等に用いられる光学シート及びその製造方法、そして光学シートを用いたEL素子及びそれを備えた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、フラットパネルディスプレイ、液晶用バックライト、照明用光源、電飾、サイン用光源等に用いられる光源としてのEL素子、そしてEL素子を用いた各種の表示装置、ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置等の照明装置では、光源から射出される光を拡散や集光等するための光学シートが備えられている。この光学シートは、透光性基材上に特定の透光性の凹凸パターン(レンズパターン)を付与することで作製されている。
【0003】
このような透光性の凹凸パターンを製作するためには、シリンダー状や板状の金型に旋盤切削方式を代表とする彫刻や腐食を用いてパターニングして母型とし、透光性基材の表面に母型のパターンを転写して形成する。或いは、母型から基材上にパターンを転写したシートを母型の金型として透光性基材に再転写する。もしくは、微粒子を透光性基材の表面に敷くことで凹凸パターンを付与するなどの製法が用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−211205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、光学シートの製法において、上述した母型を用いた手法では、ディスプレイ装置においては水平方向と垂直方向の光学特性の調整、照明装置においては光取り出し効率の向上や表面の耐擦傷性能の向上、更には活性エネルギー線硬化性樹脂を用いた転写における使用樹脂量を減らすことでのコストダウンなどを目的にして、母型の形状の複雑化や微細形状化が進んでいる。
しかしながら、このような製造方法で光学シートを製造した場合、切削や腐食等の手法を用いて母型の表面に凹凸パターン形状を付与する段階において錆などを含む表面面質の悪化が生じることがある。すると、母型の表面面質が悪化することに起因して、転写時に母型から凹凸パターン製品を離型させる際、版離れが悪く成形性が低下する等の問題が生じている。
【0006】
また、版離れの悪化を抑えるために、成形時に使用する樹脂に離型剤などを添加する方法も提案されてはいるが、そうすると、略平坦部を有するようなパターン形状の製品においては表面形状部分が母型からの離型性が高いために成形樹脂の硬化前に剥がれてしまうデラミといった現象が発生し、製品の外観不良を生じるという問題もある。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みて、複雑かつ微細な表面形状や平坦な表面形状を転写成形し、或いは、それらが複合された表面形状を転写成形する場合に、転写率や外観形状が良好で版離れの調整が可能な光学シート及びその製法、この光学シートを用いたEL素子及びそれを備えた照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による光学シートは、透光性基材の一方の表面に、少なくとも1または2種類以上の異なる形状の単位レンズからなるレンズ群が部分的もしくは全面に一次元方向または二次元方向に配列されており、レンズ群は、活性エネルギー線硬化性樹脂に硬化収縮率と離型性を調整できる成形補助剤が添加されたもので形成されていることを特徴とする。
本発明による光学シートは、レンズ群の素材である活性エネルギー線硬化性樹脂に、硬化収縮率と離型性を調整できる成形補助剤を予め添加することで、これらの素材を母型に相対的に圧着してレンズ群を硬化させて成形する際、硬化収縮に際して成形樹脂が硬化前に母型から離れるデラミ現象を防ぎ、母型に樹脂が残ったりせず樹脂取られを生じないから、転写率が良好で成形の安定性が高い光学シートが得られる。
【0009】
また、レンズ群を形成する活性エネルギー線硬化性樹脂及び成形補助剤の総体積Vに対する成形補助剤の総体積をfとした場合、総体積Vに対する成形補助剤の体積fの割合f/V=Eは次式の範囲に設定することが好ましい。
0.5%≦E≦31%
従って、活性エネルギー線硬化性樹脂及び成形補助剤の総体積Vに対する成形補助剤の総体積をfの割合E(=f/V)が0.5%≦E≦31%の範囲内であれば、成形補助剤を添加しない場合と比較して、成形補助剤の微粒子が表面に露出するために硬化した活性エネルギー線硬化性樹脂と母型との密着力が低下して離型性が向上する。しかも、硬化した上記樹脂と透光性基材との密着力が顕著に高くて製品の信頼性が向上すると共に、母型の細かいパターンに上記樹脂が入り込んで転写性が良好である。
【0010】
また、成形補助剤は、その平均粒子径をrとした微粒子であり、レンズ群の最も微小な単位レンズの高さをhとした場合、1/50≦r/h≦1/2であることが好ましい。
従って、r/hを上述の範囲に設定することで、活性エネルギー線硬化性樹脂の粘度を適度に抑えて転写率を確保すると共に、レンズ形状が微粒子によって変形することなく良好な光学特性を確保して母型からの離型時に活性エネルギー線硬化性樹脂の離型性が良好で離型時に母型側に樹脂が残存してしまう樹脂取られという現象を生じないという利点がある。
なお、活性エネルギー線硬化性樹脂に添加する成形補助剤の平均粒子径rは0.5μm〜12μmの範囲が良好であり、この範囲を外れると特に成形安定性を損なう割合が高い。
【0011】
本発明による光学シートの製造方法は、透光性基材の一方の表面に少なくとも1種類または2種類以上の異なる形状の単位レンズからなるレンズ群を配列してなる光学シートの製造方法において、レンズ群を形成するための活性エネルギー線硬化性樹脂に硬化収縮率と離型性を調整できる成形補助剤を予め添加する工程と、
成形補助剤を添加した活性エネルギー線硬化性樹脂をレンズ群の母型によって圧着することで母型の形状を転写して成形し、透光性基材の一方の表面に部分的もしくは全面的に且つ一次元方向または二次元方向に単位レンズを配列させてレンズ群を形成する工程と、を有することを特徴とする。
本発明による光学シートの製造方法によれば、レンズ群の素材である活性エネルギー線硬化性樹脂に、硬化収縮率と離型性を調整できる成形補助剤を予め添加することで、これらの素材を母型等に圧着してレンズ群を硬化させて成形する際、硬化収縮に際して成形樹脂が硬化前に母型から離れるデラミ現象を防ぎ、母型に樹脂が残ったりせず樹脂取られを生じないから、転写率が良好で成形の安定性が高い光学シートが得られる。
【0012】
また、レンズ群の凹凸パターンが転写して形成された金型をレンズ群の母型として、レンズ群は母型の形状を転写することによって透光性基材上に形成されていることが好ましい。
レンズ群の素材である活性エネルギー線硬化性樹脂に成形補助剤を予め添加したものを、母型に圧着してレンズ群を硬化させて転写成形することで、透光性基材上にレンズ群が転写して形成され、成形樹脂が硬化前に母型から離れるデラミ現象や母型に離型時に樹脂が残る樹脂取られを生じないから、転写率が良好で成形の安定性が高い光学シートが得られる。
【0013】
また、レンズ群を形成するための活性エネルギー線硬化性樹脂及び成形補助剤の総体積Vに対する成形補助剤の総体積をfとした場合、レンズ群の総体積Vに対する成形補助剤の体積fの割合f/V=Eは0.5%≦E≦31%の範囲に設定することが好ましい。
また、成形補助剤は、その平均粒子径をrとした微粒子であり、レンズ群の最も微小なレンズパターンの前記透光性基材からの高さをhとした場合、1/50≦r/h≦1/2であることが好ましい。
【0014】
また、レンズ群の母型を形成する活性エネルギー線硬化性樹脂にも、成形補助剤が予め添加されていてもよい。
これによって、レンズ群の母型を形成する際にも、成形樹脂が硬化前に母型から離れるデラミ現象を防ぐと共に母型に樹脂が残ったりせず樹脂取られを生じないという特性が得られる。
【0015】
本発明によるEL素子は、上述した光学シートが、透光性の第1基板とその背面側の第2基板の間に発光構造体が配設されてなるELパネルの光射出側の最表面に積層されてなることを特徴とする。
EL素子の光射出側に積層した光学シートは、活性エネルギー線硬化性樹脂に予め成形補助剤が添加されて硬化成形されているため、成形安定性がよく転写率が良好であり、しかも成形補充剤の微粒子を分散させたことで光の拡散性が向上する。
【0016】
本発明による照明装置は、上述したEL素子を発光手段として備えたことを特徴とする。
これによって、光学シートの成形時にデラミ現象や樹脂取られを生じないから、成形性と転写性と光拡散性が良好であり、EL素子から射出された光の光学特性が均一で良好な照明装置が得られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明による光学シートとその製造方法によれば、光学シートが複雑かつ微細な表面形状や平坦な表面形状等の様々な表面形状を有していたり、それらの表面形状が複合されてなる母型を用いた転写成形において、成形補助剤の添加によって、樹脂選定が容易で転写率や外観形状が良好であり、版離れの調整ができる。特に、レンズ群を硬化させて成形する際、硬化収縮に際して成形樹脂が硬化前に母型から離れるデラミ現象を防ぐと共に母型に樹脂が残ったりせず樹脂取られを生じない特性が高まるから、一層、転写率が良好で成形の安定性が高い光学シートが得られる。
また、そのような製法で製造された光学シートを用いたEL素子や照明装置によって、発光性が良好で輝度の高い照明が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一実施形態による光学シートを含むEL照明素子の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1に示す光学シートの斜視図である。
【図3】図2に示す光学シートの縦断面図である。
【図4】第一実施形態による光学シートの製造方法を示す模式図である。
【図5】第二実施形態による光学シートの製造方法を示す模式図である。
【図6】本発明の第一変形例による光学シートの斜視図である。
【図7】図6に示す光学シートの縦断面図である。
【図8】第二変形例による光学シートの斜視図である。
【図9】図8に示す光学シートの縦断面図である。
【図10】第三変形例による光学シートの斜視図である。
【図11】図10に示す光学シートの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態による光学シートとその製造方法、そして光学シートを含むEL照明素子及びEL照明素子を含むEL照明装置について添付図面により説明する。
図1乃至図4は本発明の第一実施形態による光学シートとその製造方法、光学シートを備えたEL照明素子(EL素子)を示す図である。このEL照明素子は、例えば発光手段として、EL照明装置、ディスプレイ装置、または液晶素子等の画像表示素子の背面に配設して液晶ディスプレイ装置等の各種のディスプレイ装置を含む照明装置に具備されて使用される。
図1に示すEL照明素子1(EL素子)は、ELパネル2の光射出側の面に第一実施形態による光学シート3が積層されて構成されている。
【0020】
ELパネル2は、光の出射側に配設された透光性の第1基板5と、第1基板5の裏面側に配置された第2基板6と、第1基板5及び第2基板6の間に挟持された発光構造体7とが一体的に積層して形成されている。発光構造体7は、第1基板5の裏面側に配置される陽極8と、第2基板6の表面側に配置される陰極9と、陽極8及び陰極9の間に挟持された発光層10とで構成されている。
発光構造体7は、発光層10が陽極8と陰極9に電圧を印加することにより発光するものであり、従来公知のさまざまな構成を採用することができる。ELパネル2は、陽極8と陰極9の間に電圧を印加して発光層10から光を出射させ、この光が第1基板5を透過して光学シート3に入射し、さらに光学シート3を透過して外部へ出射することになる。
【0021】
図2及び図3に示す光学シート3は、ELパネル2の第1基板5の光射出側の面である上面に積層されており、透光性基材12と、透光性基材12上に積層形成された複数の単位レンズ13が二次元方向に配列されてなるレンズ群14とで形成されている。単位レンズ13は例えば断面略三角形をなすプリズムレンズ15であり、本第一実施形態では、透光性基材12の一方向に比較的大きな断面略三角形の略柱状のプリズムレンズ15Aが平行に配列され、これに略直交する他方向にはプリズムレンズ15Aとは大きさの異なる断面略三角形の略柱状のプリズムレンズ15Bが平行に配列されて構成されている。
【0022】
単位レンズ13の断面形状は上述の三角形に限定されるものではなく、他の適宜の断面形状を採用できる。しかも配列される単位レンズ13の形状は1種類に限定されることはなく、2種類または3種類以上の複数種類の形状のものを組み合わせてレンズ群14を構成してもよい。
また、レンズ群14は、単位レンズ13が一次元方向に配列されて構成されていてもよいが、上述のように二次元方向に配列されて構成されていることが好ましい。単位レンズ13の二次元方向配列とは、一方向に延びるシリンドリカル形状の単位レンズ13が直交する方向に平行に配列された構成だけでなく、単位レンズ13がドット状で互いに直交する方向に配列された構成やハニカム状に配列された構成等が一例として挙げられる。
【0023】
ここで、光学シート3の材質について説明する。
透光性基材12として、例えばポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、シクロオレフィンポリマーやこれらの複合体などの合成樹脂が用いられる。
透光性基材12の少なくとも一方の面に易接着層のような表面処理が施されているものを使用することもできる。このような構成を採用すれば、ELパネル2の第1基板5との接着性やレンズ群14との接着性が高くなる。
【0024】
また、本実施形態では、複数種類の単位レンズ13を有するレンズ群14について、活性エネルギー線硬化性樹脂を使用する。活性エネルギー線硬化性樹脂として、例えば紫外線硬化型フォトポリマーが用いられ、具体的にはアクリル系ポリマー、アクリル系モノマーまたは光開始剤等を含んだ公知のものが用いられる。レンズ群14の材質として活性エネルギー線硬化性樹脂を用いて賦型する際には、活性エネルギー線(例えば紫外線)が照射されたときに硬化して接着性を有するものが使用できる。
レンズ群14を製造するには、活性エネルギー線硬化性樹脂として、例えば紫外線硬化型フォトポリマー、具体的にはアクリル系ポリマー、アクリル系モノマー及び光開始剤等を含んだものを用いて後述する成形補助剤を混入して、透光性基材12上に紫外線硬化型フォトポリマーを塗布する。そして、予めレンズ群14のパターンが賦型された金型の母型(版)を圧着させた状態で硬化させることで、所望のレンズ群14を有する光学シート3を得ることができる。
【0025】
ここで、レンズ群14の材質として活性エネルギー線硬化性樹脂を用いて母型(版)を圧着して成形する場合、単位レンズ13の外観形状において平面部などの樹脂密着性が非常に低い部分があると、活性エネルギー線硬化性樹脂が硬化した際に、この部分では、凹凸形状からなる凹凸部位と比較して母型からの離型が早く、その部分がムラになって視認されてしまう「デラミ」という現象が起こる。
また、レンズ群14の成形方法では、母型の凹凸パターン部(レンズパターン)においても腐食などに起因した表面が錆びた部位や、単位レンズ13の高さと幅の比である高アスペクトの凹凸部位などにおいては、活性線硬化性樹脂が硬化した後の母型からの剥離が困難であり、母型側に樹脂が残ってしまう「樹脂取られ」という現象が発生するおそれがある。
そこで、本発明の第一実施形態では、レンズ群14を形成する活性エネルギー線硬化性樹脂に成形補助剤を予め所定の範囲で添加するようにしてデラミや樹脂取られを抑制するようにした。成形補助剤は活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化収縮率と離型性を調整する機能を発揮できる。
【0026】
成形補助剤は微粒子であり、例えばスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、尿素樹脂、ホルムアルデヒド縮合物などからなる有機系粒子や、ガラスビーズ、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、金属酸化物などからなる無機系微粒子、または気泡や可視光の特定の波長に吸収性を有するような色素顔料なども使用することができ、これら複数種類の微粒子を併用して混合することも可能である。
【0027】
成形補助剤として微粒子を添加することで活性エネルギー線硬化樹脂が硬化する際の硬化収縮率を調整することができて、離型性を調整できると共に成形樹脂が硬化前に母型から剥がれるデラミ現象を防止できる。
また、母型に成形されたレンズ群14の表面に成形補助剤の微粒子による微細な凹凸が形成されることになり、硬化したレンズ群14の母型からの離型が容易となり、母型側に樹脂が残ってしまうといった樹脂取られ現象を防止できる。
また、光学シート3に光の拡散性を付与したい場合には、微粒子の種類を適宜選択して活性エネルギー線硬化性樹脂との屈折率差をつけることでレンズ群14に所望の光拡散性を付与することも可能となる。
【0028】
ここで、光学シート3のレンズ群14を製造する際に使用する材料である活性エネルギー線硬化性樹脂及び添加された成形補助剤の総体積Vに対する成形補助剤の総体積をfとした場合、レンズ群14の総体積Vに対する成形補助剤の体積fの百分率を成形補助剤の含有率Eとすると、成形補助剤の含有率E(=f/V)は次式(1)の範囲に設定する。なお、V、fは硬化前の体積である。
0.5%≦E≦31% …(1)
(1)式の範囲内であれば、成形補助剤を添加しない場合と比較して、成形補助剤の微粒子が表面に露出するために硬化した活性エネルギー線硬化性樹脂と母型との密着力が低下して離型性が向上する。しかも、硬化した上記樹脂と透光性基材12との密着力が顕著に高くて製品の信頼性が向上すると共に、母型の細かいパターンに上記樹脂が入り込んで転写性が良好である。
なお、0.5%≦E≦30%の範囲であれば更に良好である。
【0029】
一方、E<0.5%の場合には、透光性基材12上に活性エネルギー線硬化性樹脂を用いて母型のパターンを転写してレンズ群14を成形する際に、硬化した樹脂と母型との密着力が成形補助剤を添加しない場合に対して変化が無く、離型性の向上につながらない。また、E>31%の場合には、硬化した樹脂と透光性基材12との密着力が顕著に低下し、製品の信頼性が損なわれてしまうとともに、使用樹脂と成形補助剤との組み合わせ次第では樹脂粘度が著しく増加してしまい、母型の細かいパターンに樹脂が入りこまず、転写性が低下してしまうこととなる。
【0030】
また、成形補助剤の含有率E(=f/V)に関し、より望ましくは次式(1)′を満足するものとする。
1%≦E≦25% …(1)′
ここで、(1)′式に関し、25%<E≦31%では樹脂への微粒子の分散状態が悪化し、溶融樹脂の送液時のフィルターの詰まりや母型に微粒子の凝集物が付着することによる母型傷やパターンの目詰まりといった現象を引き起こす可能性があり、レンズ群14に光拡散性を付与したい場合などには1%≦Eであることが望ましい。
従って、1%≦E≦25%の場合においては、活性エネルギー線硬化性樹脂への微粒子の分散混合が比較的容易に行えるため所望のパターン形状や光拡散性能、母型と樹脂との密着性能などの諸物性に併せて微粒子の添加量を適宜選択することが可能となるとともに微粒子や活性エネルギー線硬化性樹脂の選定が簡便となる。
【0031】
次に、成形補助剤としての微粒子の粒径と単位レンズ13の高さとの関係について説明する。
まず、成形補助剤としての微粒子の粒径について説明する。本発明者らの後述する試験により、活性エネルギー線硬化性樹脂に添加する成形補助剤の平均粒子径rは0.5μm〜12μmの範囲が良好であり、この範囲を外れると特に成形安定性を損なう割合が高い。成形補助剤の平均粒子径は0.5μm〜10μmの範囲がより好ましく、2.0μm〜10.0μmの範囲がレンズ群14の成形安定性と転写率の両方が最も好ましかった。
【0032】
また、成形補助剤としての微粒子の粒径を成形される単位レンズ13の高さとの関係で論述すると、以下のように規定できる。
成形補助剤としての微粒子の平均粒径をrとし、光学シート3に形成したレンズ群14のうちで単位レンズ13の最も小さいプリズムレンズ15Bの透光性基材12からの高さをhとする。
この場合、成形補助剤の微粒子の平均粒径rと最小の単位レンズ13の高さhの比r/hは、
1/50≦r/h≦1/2 …(2)
であることが望ましい。
(2)式の範囲内であれば、活性エネルギー線硬化性樹脂の粘度を適度に抑えて転写率を確保すると共に、レンズ形状が微粒子によって変形することなく良好な光学特性を確保して母型からの離型時に活性エネルギー線硬化性樹脂の離型性が良好で離型時に母型側に樹脂が残存してしまう樹脂取られという現象を生じないという利点がある。
【0033】
これに対し、r/h<1/50の場合には、微粒子が小径になって使用可能な微粒子の選択肢が非常に狭くなると共に、活性エネルギー線硬化性樹脂の粘度が著しく増加するため転写率が下がってしまう不具合が生じる。また、r/h>1/2の場合には、微粒子が大径化してレンズ形状を変形させてしまう割合が大きくなり、光学特性を損ねるとともに母型からの離型時に活性エネルギー線硬化性樹脂の樹脂硬化膜が凝集破壊されてしまい母型側に樹脂が残存してしまう樹脂取られといった現象を引き起こしてしまう不具合が生じる。
【0034】
また、(2)式に関し、より望ましくは、成形補助剤の微粒子の平均粒径と最小の単位レンズ13の高さの比は、次式(2)′に設定される。
1/20≦r/h≦1/4 …(2)′
ここで、1/4<r/h≦1/2の場合においては、凹凸パターン部に微粒子が挟まってしまい成形安定性が低下する可能性があり、1/50≦r/h<1/20においては添加する微粒子の個数が増加するため活性エネルギー線硬化性樹脂の粘度が上昇して転写率が低下してしまう可能性がある。
従って、(2)′式の範囲内においては安定な成形条件を決定するのが容易で所望のパターン形状や光の拡散性能、製造時における母型への密着性能などの諸物性に併せて微粒子の添加量を適宜選択することが可能となるとともに微粒子や活性エネルギー線硬化性樹脂の選定が簡便となるため、(2)式の範囲よりも一層好ましい。
【0035】
なお、図1に示すEL照明素子1において、光学シート3はELパネル2の上面に積層され、光学シート3はELパネル2の第1基板5の表面に積層された例えばガラス基板(図示せず)と貼り合わされている。貼り合わせには、粘着剤や接着剤を用いることができ、粘着剤や接着剤はアクリル系やウレタン系のような樹脂系素材のいずれでもよく、透光性基材12や後述する熱可塑性樹脂の材質により適宜選択することができる。より具体的には、アクリル系粘着剤としてはアクリルポリマーを適宜架橋することで耐熱性に優れた粘着剤層が得られる。
【0036】
粘着剤や接着剤による架橋方法の具体的手段として、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物などアクリル系ポリマーに適宜架橋基点として含ませたカルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基などと反応しうる基を有する化合物を添加し反応させるいわゆる架橋剤を用いる方法がある。このうち、イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環式イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネートなどが挙げられる。また、これらに拡散性能やガラス基板との密着力調整を目的に成形補助剤をなす微粒子が添加されていてもよい。
【0037】
凹凸パターンを有する光学シート3を粘着剤や接着剤を介してELパネル2の最表面のガラス基板に貼合することで、光取り出し効率の向上と、成形補助剤として添加する微粒子に光拡散性を付与することで視野角によって色味が異なるといった色ずれという現象の低減、また、成形補助剤により腐食方式などによる半球状のパターンも成形することが可能となるため、プリズムやシリンドリカルレンズと併用することで耐擦傷性能の向上も図ることが可能となるとともに、液晶バックライト用光学シート、ELディスプレイ用光学シートといったフラットパネルディスプレイ用途の光学シートとしても使用することが可能となる。
【0038】
本実施形態による光学シート3は上述の構成を備えており、次にその製造方法について説明する。
図4は本実施形態による光学シート3の製造装置の模式図である。
この光学シート3の製造装置16は、シート状に連続する透光性基材12を透光性基材シート12Aとして繰り出す透光性基材ロール17と、透光性基材シート12Aに予め微粒子の成形補助剤を混入させた活性エネルギー線硬化性樹脂を塗布する樹脂供給ノズル18と、レンズ群14の転写形状が円筒状の表面に形成されている金型をなす金属製シリンダー状母型19と、この母型19に圧着された母型圧着用ロール20と、金属製シリンダー状母型19に塗布された活性エネルギー線硬化性樹脂に紫外線を照射して樹脂を硬化させる紫外線露光装置21と、レンズ群14が成形された透光性基材シート12Aを巻き取る光学シートロール22とを備えている。
【0039】
ここで、金属製シリンダー状母型19は、例えば略シリンダー形状の鉄芯上に他の金属が層状にメッキされて形成されている。ここで言う他の金属とは、例えば銅やニッケルなどであり、母型19へ付与する凹凸パターンの形状によって適宜選択することができると共に、凹凸パターン付与後に防錆や表面の保護を目的にクロムなどの金属メッキを付与することもできる。また、母型19への凹凸パターン付与の方式は旋盤を用いた切削方式やレーザー描画、腐食方式など適宜選択することができ、或いは、これらの方式を適宜組み合わせることによっても母型19を製作できる。
【0040】
次に、この光学シート3の製造装置16を用いた本実施形態による光学シート3の製造方法について説明する。
先ず、透光性基材ロール17から透光性基材12がシート状に連続する透光性基材シート12Aを繰り出し、受けロール23に対向して配置された樹脂供給ノズル18から透光性基材シート12A上に微粒子の成形補助剤を予め添加して均一に分散させた活性エネルギー線硬化性樹脂を塗布する。
【0041】
活性エネルギー線硬化性樹脂が塗布された透光性基材シート12Aは、この活性エネルギー線硬化性樹脂が塗布された面を金属製シリンダー状母型19に対面させてこの母型19と母型圧着用ロール20とで挟持されて圧着され、この活性エネルギー線硬化性樹脂は金属製シリンダー状母型19の凹凸パターンに沿って成形される。
そして、金属製シリンダー状母型19で成形された透光性基材シート12Aは紫外線露光装置21から照射される紫外線等の活性エネルギー線によって硬化させられ、テンションロールを介して光学シートロール22に巻き取られる。その後、透光性基材シート12Aは別工程でレンズ群14が形成された透光性基材12の単位毎に切断されることで光学シート3が得られる。
【0042】
上述のように、本第一実施形態による光学シート3の製造方法及びこの方法で得られた光学シート3によれば、レンズ群14が複雑かつ微細な表面形状や平坦な表面形状等の様々な表面形状を有していたり、それらの表面形状が複合されてなる母型19を用いた転写成形において、活性エネルギー線硬化性樹脂に微粒子の成形補助剤を(1)式及び(2)式の条件で、選定して添加したことで、成形が容易である上に、金属製シリンダー状母型19に対する活性エネルギー線硬化性樹脂の転写率や外観形状が良好であり、しかも母型19からの版離れが確実であり、略平坦部の離型が硬化前に起こるデラミや離型時に母型19に樹脂が残る樹脂取られといった現象を防止できる。
この製法で製作された光学シート3は、デラミや樹脂取られといった現象を生じないで外観形状が良好なものを得られる。
【0043】
また、(1)式及び(2)式という条件によって成形補助剤を活性エネルギー線硬化性樹脂に予め添加することで、作製後に長期時間経過したために腐食工程などを用いずとも表面に錆が発生したような母型19に対しても効果があり、母型19の寿命を通常よりも延ばすことが可能となってコスト低減効果にもつながる。
また、そのような製法で製造された光学シート3を用いてEL照明素子1やこのEL照明素子1を発光装置として用いた照明装置を得られて、発光性が良好で照度の高い照明が得られる。
【0044】
次に本発明の他の実施形態による光学シート3とその製造方法について図5乃至図11により説明するが、上述した実施形態による光学シート3とその製造方法の部品、部材と同一または同様な部品、部材には同一の符号を用いて説明を省略する。
図5は本発明の第二実施形態による光学シート3の製造方法を説明する製造装置24を示す模式図である。
本第二実施形態による光学シート3の製造装置24において、金型となる母型は上述した第一実施形態による金属製シリンダー状母型19とは異なり、レンズ群14の凹凸パターン(レンズパターン)を形成したシートが母型となる母型シート25を用いている。
【0045】
本第二実施形態による光学シート3の製造方法に用いる製造装置24において、第一実施形態による光学シート3の製造装置16との相違点は、金属製シリンダー状母型19に代えて第二母型圧着ロール26を母型圧着ロール20に圧着させて配置させ、シート状母型ロール28から母型シート25を繰り出して透光性基材シート12Aと母型シート25を重ねて母型圧着ロール20と第二母型圧着ロール26とに挟持させる。そして、第二母型圧着ロール26の下流側の分割ロール27で透光性基材シート12Aと母型シート25を分離させ、母型シート25は第二シート状母型ロール29に巻き取り、透光性基材シート12Aは光学シートロール22に巻き取るように構成されている。
【0046】
ここで母型シート25は、第一実施形態による製造方法で作製された透光性基材シート12Aを使用できる。また、母型シート25は、熱可塑性樹脂を用いて溶融樹脂成形などで表面に凹凸パターンが付与された一体型光学シートを用いて熱可塑性樹脂の層に反転転写して形成することもできる。
ここで母型シート25に予め成形補助剤として微粒子を添加することで繰り返し母型シート25を使用することができ、また反転転写についても複数回一体型光学シートに反転させることも可能となる。
凹凸パターンを有する母型シート25を形成する熱可塑性樹脂として、アクリル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルポリスチレン共重合体、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル/スチレン系共重合樹脂等の公知のものを使用することができる。
【0047】
次に、製造装置24を用いた本第二実施形態による光学シート3の製造方法について説明する。
先ず、透光性基材ロール17から透光性基材シート12Aを繰り出し、受けロール23に対向する樹脂供給ノズル18から透光性基材シート12A上に微粒子の成形補助剤を予め均一に分散混入させた活性エネルギー線硬化性樹脂を塗布する。
透光性基材シート12Aの活性エネルギー線硬化性樹脂が塗布された面に、シート状母型ロール28からくり出した母型シート25を重ねて、母型圧着ロール20と第二母型圧着ロール26との間に通して圧着させる。これによって、透光性基材シート12A上の活性エネルギー線硬化性樹脂に母型シート25の凹凸パターンを成形し、紫外線露光装置21から照射される紫外線等の活性エネルギー線によって硬化させる。
その後、分割ロール27で透光性基材シート12Aから母型シート25を分離して第二シート状母型ロール29に巻き取り、レンズ群14が形成された透光性基材シート12Aは光学シートロール22に巻き取られる。
【0048】
上述のように、本第二実施形態による光学シート3の製造方法によれば、第一実施形態による金属製シリンダー状母型19の作成が困難である場合に、その逆パターンを母型として反転転写し、これを元に母型シート25を形成して、成形補助剤を予め分散させた活性エネルギー線硬化性樹脂を透光性基材シート12Aと母型シート25とで挟持して透光性基材シート12A上にレンズ群14を成形するようにしたから、所望のパターンを有する光学シート3を得ることができる。
また、活性線エネルギー硬化性樹脂を用いて作製した光学シート3の母型を1回反転転写させ、これを母型として所望の製品を溶融樹脂成形などで得ることもできる。
【0049】
なお、上述の実施形態による光学シート3の製造方法で製造される光学シート3の変形例について、図6乃至図11により説明する。
図6及び図7に示す第一変形例による光学シート32は、構造層31として透光性基材12の表面に断面略三角形のプリズムレンズ33が互いに直交する方向に交差して配列されており、プリズムレンズ33に重ねて所定間隔を開けてマイクロレンズ34が配列されている。これらプリズムレンズ33とマイクロレンズ34はそれぞれ単位レンズ13を構成し、これらの組合せでレンズ群14を構成する。そして、マイクロレンズ34はプリズムレンズ33よりも高さが大きく形成されている。
【0050】
図8及び図9に示す第二変形例による光学シート36は、構造層31として透光性基材12の表面に断面略半楕円形状または略半円形状のシリンドリカルレンズ37、38が互いに直交する方向に交差して配列されており、一方のシリンドリカルレンズ37は他方のシリンドリカルレンズ38よりも大径に形成されている。これらシリンドリカルレンズ37、38はそれぞれ単位レンズ13を構成し、これらの組合せでレンズ群14を構成する。
【0051】
図10及び図11に示す第三変形例による光学シート40は、構造層31として透光性基材12の表面に第一変形例による光学シート32と同様に、断面略三角形のプリズムレンズ33が互いに直交する方向に交差して配列されており、プリズムレンズ33に重ねて所定間隔を開けてマイクロレンズ34が配列されている。これらプリズムレンズ33とマイクロレンズ34はそれぞれ単位レンズ13を構成し、これらの組合せでレンズ群14を構成する。マイクロレンズ34はプリズムレンズ33よりも高さが大きく形成されている。
そして、構造層31は、光学シート40の射出面において、透光性基材12上に形成された単位レンズ13の集合体であるレンズ群14と、色ずれ低減部42とを備えている。
【0052】
色ずれ低減部42は略平坦な板形状を有していて傾斜して配設され、各レンズ33、34と比較して透光性基材12からの出射光に対する全反射角度を増やす機能を有している。すなわち、透光性基材12からの出射光において、色ずれの原因となる光学シート40に対して例えば入射角±40°以上の光線を全反射させ、色ずれ低減機能を発現させるものである。
また、色ズレ低減部42の形状である略平坦とは、表面粗度RmaxをR-hとした場合にR-hの絶対値が3μm以下程度の部位を示している。
【実施例】
【0053】
次に、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
実施例1として、活性エネルギー線硬化性樹脂に対する成形補助剤の添加割合を試験した。実施例1では、図6及び図7に示す光学シート32を、図4に示す金属製シリンダー状母型19を用いた製造方法によって製造した。金属製シリンダー状母型19を製作するに際して、マイクロレンズ34の反転形状を腐食方式で、プリズムレンズ33の反転形状を切削方式で形成した。そして、レンズ群14の材料となる活性エネルギー線硬化性樹脂としてウレタンアクリレート系樹脂を用い、成形補助剤としてPMMA微粒子を用い、樹脂の全体積Vに対して成形補助剤の体積fの含有割合E(%)を、表1に示すように変化させて、それぞれ光学シート32を製造した。
【0054】
光学シート32の各単位レンズ13の製造基準は次の通りである。
(1)プリズムレンズ33について
プリズムレンズ33の頂角90°
プリズムレンズ33のピッチ測定値:50μm
プリズムレンズ33の高さ測定値:25μm
(2)マイクロレンズ34について
マイクロレンズ34の形状:アスペクト40%
マイクロレンズ34の最大直径測定値:100μm
マイクロレンズ34の高さ測定値:40μm
単位レンズの面積比率:プリズムレンズ33/マイクロレンズ34=1
活性エネルギー線硬化性樹脂:ウレタンアクリレート系樹脂
成形補助剤:PMMA微粒子
成形補助剤の平均粒子径r:4μm
【0055】
成形補助剤の含有率Eを表1に示すように変えて製造された各光学シート32について、成形安定性は目視による外観評価して実施し、転写率については走査型レーザー顕微鏡によって測定した。
評価基準は下記通りである。合否の判定基準として、評価に×がなく、最低でも○で、少なくとも一方は◎であることとした。
(1)外観評価
◎:外観不良部無し
○:外観不良部1000m2に10個未満
×:外観不良部1000m2に10個以上
(2)転写率評価
◎:転写率99%以上
○:転写率95%以上99%未満
×:転写率95%未満
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示す結果から、活性エネルギー線硬化性樹脂に対する成形補助剤の添加率(%)は0.5%〜31%の範囲が良好であり、0.5%〜30%の範囲がより良好であった。
【0058】
(実施例2)
実施例2として、成形補助剤としての微粒子の平均粒子径r(μm)について試験した。
実施例2では、実施例1と同様に図6及び図7に示す光学シート32を、図4に示す金属製シリンダー状母型19を用いた製造方法によって製造した。金属製シリンダー状母型19は実施例1と同様に製作し、レンズ群14の材料となる活性エネルギー線硬化性樹脂としてウレタンアクリレート系樹脂を用い、成形補助剤としてPMMA微粒子を用い、成形補助剤の添加率Eは10%に設定した。光学シート32の各単位レンズ13の製造基準も実施例1と同様である。
そして、成形補助剤の平均粒子径(μm)を、表2に示すように変化させて、それぞれ光学シート32を製造した。
【0059】
また、試験結果の評価基準は下記通りであり、成形率安定性評価については目視による外観評価にて実施し、転写率については走査型レーザー顕微鏡にて測定を実施した。
(1)成形安定性評価
◎:外観不良部無し
○:外観不良部1000m2に10個未満
×:外観不良部1000m2に10個以上
(2)転写率評価
◎:転写率99%以上
○:転写率95%以上99%未満
×:転写率95%未満
【0060】
【表2】
【0061】
表2に示す結果から、活性エネルギー線硬化性樹脂に添加する成形補助剤の平均粒子径は0.5μm〜12μmの範囲が良好であり、0.5μm〜10μmの範囲が更に良好であった。また、2.0μm〜10.0μmの範囲は成形安定性と転写率が共に最も良好で好ましかった。
【0062】
(実施例3)
実施例3として、活性エネルギー線硬化性樹脂に対する成形補助剤の添加割合を試験した。
実施例3では、実施例1、2と同様に図6及び図7に示す光学シート32を、図4に示す金属製シリンダー状母型19を用いた製造方法によって製造した。金属製シリンダー状母型19は実施例1と同様に製作し、レンズ群14の材料となる活性エネルギー線硬化性樹脂としてウレタンアクリレート系樹脂を、成形補助剤としてPMMA微粒子を用い、成形補助剤の平均粒子径は4μmとした。光学シート32の各単位レンズ13の製造基準も実施例1と同様である。
そして、成形補助剤の添加率Eを表3に示すように変化させて、それぞれ光学シート32を製造した。
【0063】
また、試験結果の評価基準は下記通りであり、成形安定性評価については目視による外観評価にて実施し、転写率については走査型レーザー顕微鏡にて測定を実施した。
(1)成形安定性評価
◎:外観不良部無し
○:外観不良部1000m2に10個未満
×:外観不良部1000m2に10個以上
(2)転写率評価
◎:転写率99%以上
○:転写率95%以上99%未満
×:転写率95%未満
【0064】
【表3】
【0065】
表3に示す結果から、活性エネルギー線硬化性樹脂に対する成形補助剤の体積添加率(5)は、0.5%〜31%の範囲が良好であり、0.5%〜30%の範囲がより良好であった。
【0066】
(実施例4)
実施例4として、成形補助剤の微粒子の添加率Eと略平面部を含むレンズ群14の硬化収縮率(5)とについて試験した。
実施例4では、実施例1〜3と同様に図6及び図7に示す光学シート32を、図4に示す金属製シリンダー状母型19を用いた製造方法によって製造した。金属製シリンダー状母型19は実施例1と同様に製作し、レンズ群14の材料となる活性エネルギー線硬化性樹脂としてウレタンアクリレート系樹脂を、成形補助剤としてPMMA微粒子を用い、成形補助剤の平均粒子径は4μmとした。光学シート32の各単位レンズ13の製造基準も実施例1と同様である。
また、レンズ群14の表面積とレンズ群14中の略平面部の比率は、レンズ群14/略平面部=4とし、レンズ群14に使用した成形補助剤を含む活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化収縮率は10%を基準とした。
そして、成形補助剤の添加率Eを表4に示すように変化させて、それぞれ光学シート32を製造した。
【0067】
また、試験結果の評価基準は下記通りであり、成形安定性評価については目視による外観評価にて実施し、転写率については走査型レーザー顕微鏡にて測定を実施した。
(1)成形安定性評価
◎:外観不良部無し
○:外観不良部1000m2に10個未満
×:外観不良部1000m2に10個以上
(2)転写率評価
◎:転写率99%以上
○:転写率95%以上99%未満
×:転写率95%未満
【0068】
【表4】
【0069】
表4に示す結果から、活性エネルギー線硬化性樹脂に対する成形補助剤の体積添加率(%)は、0.5%〜31%の範囲が良好であり、0.5%〜30%の範囲がより良好であった。これらの範囲でレンズ群14の硬化収縮率は10%を下回り、良好であった。
【0070】
なお、実施例1、3,4に示す表1、3,4において、活性エネルギー線硬化性樹脂に対する成形補助剤の体積添加率(%)は、1.0%〜25%の範囲が成形安定性と転写率がいずれも最も良好であり、この範囲が最も好ましい範囲であることを確認できた。
成形補助剤の体積添加率は(%)はる。
【符号の説明】
【0071】
1 EL照明素子
2 ELパネル
3 光学シート
12 透光性基材
12A 透光性基材シート
13 単位レンズ
13A、13B プリズムレンズ
14 レンズ群
17 透光性基材母型ロール
18 樹脂供給ノズル
19 金属製シリンダー状母型
20 母型圧着用ロール
21 紫外線露光装置
22 第二シート状母型ロール
25 母型シート
26 第二母型圧着用ロール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基材の一方の表面に、少なくとも1または2種類以上の異なる形状の単位レンズからなるレンズ群が部分的もしくは全面に一次元方向または二次元方向に配列されており、
前記レンズ群は、活性エネルギー線硬化性樹脂に硬化収縮率と離型性を調整できる成形補助剤が添加されたもので形成されていることを特徴とする光学シート。
【請求項2】
前記レンズ群を形成する活性エネルギー線硬化性樹脂及び成形補助剤の総体積Vに対する成形補助剤の総体積をfとした場合、前記総体積Vに対する成形補助剤の体積fの割合f/V=Eは次式の範囲に設定されていることを特徴とする請求項1に記載された光学シート。
0.5%≦E≦31%
【請求項3】
前記成形補助剤は、その平均粒子径をrとした微粒子であり、前記レンズ群の最も微小なレンズパターンの高さをhとした場合、1/50≦r/h≦1/2であることを特徴とする請求項1または2に記載された光学シート。
【請求項4】
透光性基材の一方の表面に少なくとも1種類または2種類以上の異なる形状の単位レンズからなるレンズ群を配列してなる光学シートの製造方法において、
前記レンズ群を形成するための活性エネルギー線硬化性樹脂に硬化収縮率と離型性を調整できる成形補助剤を予め添加する工程と、
前記成形補助剤を添加した前記活性エネルギー線硬化性樹脂を前記レンズ群の母型によって圧着することで前記母型の形状を転写して成形し、前記透光性基材の一方の表面に部分的もしくは全面的に且つ一次元方向または二次元方向に前記単位レンズを配列させて前記レンズ群を形成する工程と、
を有することを特徴とする光学シートの製造方法。
【請求項5】
前記レンズ群のレンズパターンが転写して形成された金型を前記レンズ群の母型として、前記レンズ群は前記母型の形状を転写することによって前記透光性基材上に形成されていることを特徴とする請求項4に記載された光学シートの製造方法。
【請求項6】
前記レンズ群を形成するための活性エネルギー線硬化性樹脂及び成形補助剤の総体積Vに対する成形補助剤の体積をfとした場合、レンズ群の総体積Vに対する成形補助剤の体積fの割合f/V=Eは次式の範囲に設定することを特徴とする請求項4または5に記載された光学シートの製造方法。
0.5%≦E≦31%
【請求項7】
前記成形補助剤は、その平均粒子径をrとした微粒子であり、前記レンズ群の最も微小なレンズパターンの前記透光性基材からの高さをhとした場合、1/50≦r/h≦1/2であることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載された光学シートの製造方法。
【請求項8】
前記レンズ群の母型を形成する活性エネルギー線硬化性樹脂にも、前記成形補助剤が予め添加されていることを特徴とする請求項7に記載された光学シートの製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載された光学シートが、透光性の第1基板とその背面側の第2基板の間に発光構造体が配設されてなるELパネルの光射出側の最表面に積層されてなることを特徴とするEL素子。
【請求項10】
請求項9に記載されたEL素子を発光手段として備えたことを特徴とする照明装置。
【請求項1】
透光性基材の一方の表面に、少なくとも1または2種類以上の異なる形状の単位レンズからなるレンズ群が部分的もしくは全面に一次元方向または二次元方向に配列されており、
前記レンズ群は、活性エネルギー線硬化性樹脂に硬化収縮率と離型性を調整できる成形補助剤が添加されたもので形成されていることを特徴とする光学シート。
【請求項2】
前記レンズ群を形成する活性エネルギー線硬化性樹脂及び成形補助剤の総体積Vに対する成形補助剤の総体積をfとした場合、前記総体積Vに対する成形補助剤の体積fの割合f/V=Eは次式の範囲に設定されていることを特徴とする請求項1に記載された光学シート。
0.5%≦E≦31%
【請求項3】
前記成形補助剤は、その平均粒子径をrとした微粒子であり、前記レンズ群の最も微小なレンズパターンの高さをhとした場合、1/50≦r/h≦1/2であることを特徴とする請求項1または2に記載された光学シート。
【請求項4】
透光性基材の一方の表面に少なくとも1種類または2種類以上の異なる形状の単位レンズからなるレンズ群を配列してなる光学シートの製造方法において、
前記レンズ群を形成するための活性エネルギー線硬化性樹脂に硬化収縮率と離型性を調整できる成形補助剤を予め添加する工程と、
前記成形補助剤を添加した前記活性エネルギー線硬化性樹脂を前記レンズ群の母型によって圧着することで前記母型の形状を転写して成形し、前記透光性基材の一方の表面に部分的もしくは全面的に且つ一次元方向または二次元方向に前記単位レンズを配列させて前記レンズ群を形成する工程と、
を有することを特徴とする光学シートの製造方法。
【請求項5】
前記レンズ群のレンズパターンが転写して形成された金型を前記レンズ群の母型として、前記レンズ群は前記母型の形状を転写することによって前記透光性基材上に形成されていることを特徴とする請求項4に記載された光学シートの製造方法。
【請求項6】
前記レンズ群を形成するための活性エネルギー線硬化性樹脂及び成形補助剤の総体積Vに対する成形補助剤の体積をfとした場合、レンズ群の総体積Vに対する成形補助剤の体積fの割合f/V=Eは次式の範囲に設定することを特徴とする請求項4または5に記載された光学シートの製造方法。
0.5%≦E≦31%
【請求項7】
前記成形補助剤は、その平均粒子径をrとした微粒子であり、前記レンズ群の最も微小なレンズパターンの前記透光性基材からの高さをhとした場合、1/50≦r/h≦1/2であることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載された光学シートの製造方法。
【請求項8】
前記レンズ群の母型を形成する活性エネルギー線硬化性樹脂にも、前記成形補助剤が予め添加されていることを特徴とする請求項7に記載された光学シートの製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載された光学シートが、透光性の第1基板とその背面側の第2基板の間に発光構造体が配設されてなるELパネルの光射出側の最表面に積層されてなることを特徴とするEL素子。
【請求項10】
請求項9に記載されたEL素子を発光手段として備えたことを特徴とする照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−247559(P2012−247559A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118197(P2011−118197)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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