説明

光学フィルム、及び画像表示装置

【課題】 本発明は、位相差が短波長側ほど小さい波長分散を示し、比較的薄く形成することもできる光学フィルムを提供する。
【解決手段】 下記一般式(I)で表されるポリイミド系ポリマーを含む光学フィルム。
【化1】


式(I)に於いて、mは、40モル%以上100モル%以下である。また、R及びRは、炭素−炭素二重結合若しくは三重結合を有する置換基である。A、A’、B、B’、E、G及びHは、置換基を表し、対応するアルファベット小文字は、その置換数を表す。X及びYは、共有結合などの結合手を表す。R及びRの炭素−炭素二重結合若しくは三重結合を有する置換基としては、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のビニル基、又は置換若しくは無置換のエチニル基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差が短波長側ほど小さい波長分散を示す光学フィルム及び該光学フィルムを備える画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
位相差板は、例えば液晶表示装置の広視野角化等を実現するために利用される、液晶セル等を補償する光学フィルムである。位相差板の位相差は、波長に依存しており、その位相差の波長分散は、大別して次の3種類に分けられる。1つ目は、位相差が短波長側ほど大きい波長分散(以下、「正分散」という)を示す位相差板、2つ目は、位相差が短波長側から長波長側に亘って殆ど変わらない波長分散(以下、「フラット分散」という)を示す位相差板、3つ目は、位相差が短波長側ほど小さい波長分散(以下、「逆分散」という)を示す位相差板、である。
【0003】
位相差板は、広い波長帯域において所定の位相差(λ/2やλ/4など)を得ることができる点で、逆分散のものが求められる。
しかしながら、通常の樹脂フィルムから形成される位相差板の多くは、正分散を示すものである。
【0004】
従来、フルオレン骨格を有するポリカーボネートの延伸フィルムから形成された位相差板が知られている(特許文献1)。
しかしながら、この位相差板は、延伸処理によって位相差が発現するが、上記フルオレン骨格を有するポリカーボネートは非常に高いガラス転移点を有しているので、延伸温度を極めて高温に設定しなければならない。
【0005】
一方、ポリイミドは、基材上にコーティングすることによって所定の位相差を示すことが知られている(特許文献2)。このため、ポリイミドを含む位相差板は、比較的薄く形成することができる。しかしながら、ポリイミドを含むフィルムは、通常、正分散を示すため、これを用いた位相差板は、逆分散とはならない。
【特許文献1】特開2002−221622号公報
【特許文献2】特表2000−511296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、位相差の波長分散が逆分散を示し、さらに、比較的薄く形成することもできる光学フィルム、及びこれを用いた画像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、下記一般式(I)で表されるポリイミド系ポリマーを含む光学フィルムを提供する。
【0008】
【化1】

ただし、式(I)に於いて、mは、40モル%以上100モル%以下である(m+n≦100モル%)。また、式(I)に於いて、A、A’、B及びB’は、それぞれ置換基を表し、a及びa’は、対応するA及びA’の置換数(0〜4までの整数)を、b及びb’は、対応するB及びB’の置換数(0〜3までの整数)を表す。A、A’、B及びB’は、それぞれ独立して、ハロゲン又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、複数の場合、それぞれ同一又は異なる。R及びRは、それぞれ独立して、炭素−炭素二重結合若しくは三重結合を有する置換基を表す。X及びYは、それぞれ独立して、共有結合、又は、CH基、C(CH基、C(CZ基(ここで、Zは、ハロゲンである。)、CO基、O原子、S原子、SO基、Si(CHCH基、及び、N(CH)基からなる群から選択される原子又は基を表す。Eは、置換基であり、eは、その置換数(0〜3までの整数)を表す。Eは、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基、フェニル基、又は、置換フェニル基であり、複数の場合、それぞれ同一又は異なる。G及びHは、置換基であり、gは、Gの置換数(0〜4までの整数)を、hは、Hの置換数(0〜4までの整数)を表す。G及びHは、それぞれ独立して、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、置換アリール基、アルキルエステル基、及び置換アルキルエステル基からなる群から選択される原子又は基を表し、複数の場合、それぞれ同一又は異なる。q1は、0〜3までの整数を、q2は、1〜3までの整数を表す。
【0009】
上記式(I)で表されるポリイミド系ポリマーは、ジエチニルフルオレン骨格の共役系が、そのエチニル基に結合した炭素−炭素二重結合若しくは三重結合を有する置換基(R及びR)によって大きく拡がっている。かかるジエチニルフルオレン骨格を有する繰り返し単位が40モル%以上含まれている、式(I)のポリイミド系ポリマーを製膜した光学フィルムは、位相差の波長分散が逆分散を示す。
さらに、上記ポリイミド系ポリマーは、溶液状にして塗工することにより製膜できるので、光学フィルムの厚みを比較的薄く形成することもできる。
上記式(I)に於ける炭素−炭素二重結合若しくは三重結合を有する置換基としては、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のビニル基、または置換若しくは無置換のエチニル基が含まれる。
【0010】
また、本発明は、下記一般式(I’)で表されるポリイミド系ポリマーを含む光学フィルムを提供する。
【0011】
【化2】

ただし、式(I’)に於いて、mは、70モル%以上100モル%以下である(m+n≦100モル%)。また、式(I’)に於いて、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基、CR(OH)(R及びRは、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基)を表し、A、A’、B、B’、X、Y、Gg、Hh、q1、q2及びEeは、上記式(I)と同じである。
【0012】
上記式(I’)で表される本発明のポリイミド系ポリマーは、ジエチニルフルオレン骨格(側鎖)のエチニル基に結合したR及びRが共役系置換基ではない。このため、上記式(I)のポリイミド系ポリマーに比して、側鎖に於ける共役系の拡がりが小さい。しかし、式(I’)で表されるポリイミド系ポリマーは、ジエチニルフルオレン骨格を有する繰り返し単位を比較的多く(70モル%以上)含んでいることにより、該ポリイミド系ポリマーを製膜した光学フィルムは、位相差の波長分散が逆分散を示す。
この式(I’)で表されるポリイミド系ポリマーも同様に、溶液状にして塗工することにより製膜できるので、光学フィルムの厚みを比較的薄く形成することもできる。
【0013】
本発明の好ましい光学フィルムは、逆分散を示すが、具体的にはRth(450)/Rth(550)≦0.98の関係を満たすものである。
本発明の好ましい光学フィルムは、逆分散を示すが、具体的にはRth(650)/Rth(550)≧1.02の関係を満たすものである。
【0014】
本発明の好ましい光学フィルムは、上記ポリイミド系ポリマーを基材上に塗工して得られたコーティング膜から構成されている。
本発明の好ましい光学フィルムは、厚み20μm以下のものである。
本発明の好ましい光学フィルムは、屈折率楕円体がnx≒ny>nzを示すものである。
本発明の好ましい光学フィルムは、屈折率楕円体がnx>ny>nzを示すものである。
【0015】
さらに、本発明は、上記光学フィルムを有する画像表示装置(好ましくは液晶表示装置)を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光学フィルムは、位相差の波長分散が逆分散となるため、例えば、広い波長帯域において所望の位相差(λ/2やλ/4など)を得ることができる。従って、本発明の光学フィルムは、各波長での偏光の形がほぼ同じとなり、画像表示装置の位相差板として好適に利用できる。
また、本発明の光学フィルムは、塗工によって製膜でき、且つ塗工によって複屈折性を発現するので、比較的薄く形成することもできる。
かかる光学フィルムの具備された画像表示装置は、良好な視野角改善などを行え、又、薄型軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に於いて用いる用語の意味は、次の通りである。
「nx」とは、フィルム面内の屈折率が最大となる方向(X軸方向)に於ける屈折率を表し、「ny」とは、同面内でX軸方向に対して直交する方向(Y軸方向)に於ける屈折率(ただし、nx≧ny)を表し、「nz」とは、X軸及びY軸に直交する方向(厚み方向)に於ける屈折率を、それぞれ表す。
「Δnxz」とは、23℃で波長λ(nm)におけるフィルムの厚み方向の屈折率差をいう。Δnxy(λ)=nx−nzによって求めることができる。
「面内の位相差値(Re(λ))」とは、23℃で波長λ(nm)におけるフィルムの面内の位相差値をいう。Re(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、Re(λ)=(nx−ny)×dによって求めることができる。
「厚み方向の位相差値(Rth(λ)」とは、23℃で波長λ(nm)におけるフィルムの厚み方向の位相差値をいう。Rth(λ)]は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、Rth(λ)=(nx−nz)×dによって求めることができる。
【0018】
本発明者らは、一般式(I)または一般式(I’)で表されるポリイミド系ポリマーを製膜したフィルムは、波長450〜750nmの可視光領域に於ける位相差が逆分散となり得ることを見出した。本発明は、上記ポリマーの性質を専ら利用して、逆分散を示す(位相差が短波長側ほど小さい)光学フィルムを提供するものである。
【0019】
【化3】

ただし、式(I)に於いて、mは、40モル%以上100モル%以下である(m+n≦100モル%)。また、式(I)に於いて、A、A’、B及びB’は、それぞれ置換基を表し、a及びa’は、対応するA及びA’の置換数(0〜4までの整数)を、b及びb’は、対応するB及びB’の置換数(0〜3までの整数)を表す。A、A’、B及びB’は、それぞれ独立して、ハロゲン又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、複数の場合、それぞれ同一又は異なる。R及びRは、それぞれ独立して、炭素−炭素二重結合若しくは三重結合を有する置換基を表す。X及びYは、それぞれ独立して、共有結合、又は、CH基、C(CH基、C(CZ基(ここで、Zは、ハロゲンである。)、CO基、O原子、S原子、SO基、Si(CHCH基、及び、N(CH)基からなる群から選択される原子又は基を表す。Eは、置換基であり、eは、その置換数(0〜3までの整数)を表す。Eは、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基、フェニル基、又は、置換フェニル基であり、複数の場合、それぞれ同一又は異なる。G及びHは、置換基であり、gは、Gの置換数(0〜4までの整数)を、hは、Hの置換数(0〜4までの整数)を表す。G及びHは、それぞれ独立して、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、置換アリール基、アルキルエステル基、及び置換アルキルエステル基からなる群から選択される原子又は基を表し、複数の場合、それぞれ同一又は異なる。q1は、0〜3までの整数を、q2は、1〜3までの整数を表す。
【0020】
【化4】

ただし、式(I’)に於いて、mは、70モル%以上100モル%以下である(m+n≦100モル%)。また、式(I’)に於いて、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基、CR(OH)(R及びRは、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基)を表し、A、A’、B、B’、X、Y、Gg、Hh、q1、q2及びEeは、式(I)と同じである。
【0021】
従来より、ポリイミド系のポリマーを製膜したフィルムは、正分散を示すことが知られている。
この点、上記式(I)で表される本発明のポリイミド系ポリマーは、フルオレン骨格の共役系がエチニル基によって延出された、ジエチニルフルオレン骨格(側鎖)が主鎖の延びる方向に対して略直交状に配向している。また、上記ポリイミド系ポリマーのジエチニルフルオレン骨格の共役系は、前記エチニル基に結合した炭素−炭素二重結合若しくは三重結合を有する置換基(R及びR)によって更に大きく拡がっている。このため、該側鎖が大分散成分となり、上記ジエチニルフルオレン骨格を有する繰り返し単位の導入量が比較的少なくても(m:40モル%以上)、式(I)のポリイミド系ポリマーを含む光学フィルムは、位相差の波長分散が逆分散を有するフィルムとなる。
【0022】
上記式(I)に於いて、R及びRの炭素−炭素二重結合若しくは三重結合を有する置換基としては、例えば、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のビニル基、又は置換若しくは無置換のエチニル基から選択される。ジエチニルフルオレンの共役系をより大きくできることから、R及びRは、好ましくは置換若しくは無置換のアリール基(芳香環を1〜3個有するアリール基)、アリール基を置換基として有するビニル基であり、より好ましくは置換若しくは無置換のアリール基(芳香環を1又は2個有するアリール基)である。
【0023】
また、上記式(I’)で表される本発明のポリイミド系ポリマーは、ジエチニルフルオレン骨格(側鎖)のエチニル基に結合したR及びRが共役系置換基ではないため、上記式(I)のポリイミド系ポリマーに比して、側鎖に於ける共役系の拡がりが小さい。このため、ポリマー全体に占めるジエチニルフルオレン骨格の共役系の作用が小さいが、該ジエチニルフルオレン骨格を有する繰り返し単位を比較的多く導入することにより、位相差の波長分散が逆分散を示す光学フィルムを構成できる。
【0024】
上記式(I)で表されるポリイミド系ポリマーの中でも、下記式(II)で表されるポリマーが好ましい態様である。また、上記式(I’)で表されるポリイミド系ポリマーの中でも、下記式(II’)で表されるポリマーが好ましい態様である。
式(II)及び式(II’)のポリイミド系ポリマーは、フルオレン骨格からジエチニル基の共役系(フルオレン骨格の共役系で形成される面から両側に延出したジエチニル基の共役係)が、主鎖の延びる方向に対して略直交状となり、主鎖の両側に大きく出ているため、逆波長の光学フィルムの形成材料として好適である。
【0025】
【化5】

【化6】

【0026】
式(II)及び式(II’)に於いて、R〜R11は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1〜4のアルキル基(好ましくはメチル基)を表す。式(II)及び式(II’)に於いて、X、Y、Gg、Hh、q1、q2及びEeは、式(I)と同じである。また、式(II)に於いて、R及びRは、式(I)と同じである。式(II’)に於いて、R及びRは、式(I’)と同じである。
【0027】
式(II)及び式(II’)に於いて、R及びRの少なくとも何れか一方がメチル基であり、且つR10及びR11の少なくとも何れか一方がメチル基であるポリイミド系ポリマーが好ましい。なぜなら、該ポリマーは、透明性に優れ、又、溶剤溶解性に優れているからである。
【0028】
上記式(I)又は式(II)で表されるポリイミド系ポリマーに於いて、ジエチニルフルオレン骨格を有する繰り返し単位の導入量(式中「m」で示す)は、ポリマー全体の40モル%以上であり、好ましくは50モル%以上である。式(I)又は式(II)で表されるポリイミド系ポリマーに於いて、mは、100モル%以下である。式(I)又は式(II)で表されるポリイミド系ポリマーに於いて、ジエチニルフルオレン骨格を有する繰り返し単位の導入量を多くすればするほど、得られる光学フィルムは、急峻な逆分散を示す。
また、式(I)又は式(II)で表されるポリイミド系ポリマーに於いて、nは、60モル以下であり、好ましくは50モル以下である。また、同nは、0モル%以上である。
【0029】
上記式(I’)又は式(II’)で表されるポリイミド系ポリマーに於いて、ジエチニルフルオレン骨格を有する繰り返し単位の導入量(式中「m」で示す)は、ポリマー全体の70モル%以上であり、好ましくは75モル%以上である。式(I’)又は式(II’)で表されるポリイミド系ポリマーに於いて、mは、100モル%以下である。式(I’)又は式(II’)で表されるポリイミド系ポリマーに於いて、ジエチニルフルオレン骨格を有する繰り返し単位の導入量を多くすればするほど、得られる光学フィルムは、急峻な逆分散を示す。
また、式(I’)又は式(II’)で表されるポリイミド系ポリマーに於いて、nは、30モル以下であり、好ましくは25モル以下である。また、同nは、0モル%以上である。
【0030】
さらに、上記式(I)及び式(I’)の下記式(a)で示す構成単位は、下記式(b)で表されるものが好ましい態様である。式(b)の構成単位を有するポリイミド系ポリマーは、透明性に優れている。
【0031】
【化7】

【化8】

式(b)に於いて、Eは、式(I)(又は式(I’))と同じであり、好ましくは、塩素などのハロゲンである。
【0032】
さらに、上記式(I)及び式(I’)の下記式(c)で示す構成単位は、下記式(d)で表されるものが好ましい態様である。
【0033】
【化9】

【化10】

式(d)に於いて、G及びHは、式(I)(又は式(I’))と同じであり、好ましくは、CFなどのハロゲン化アルキル基などの置換アルキル基である。
【0034】
上記式(I)で表されるポリイミド系ポリマーのうち、最も好ましい構成例としては、下記一般式(III)で表される。また、上記式(I’)で表されるポリイミド系ポリマーのうち、最も好ましい構成例としては、下記一般式(III’)で表される。
【0035】
【化11】

式(III)に於いて、R、R、E、G及びH、式(I)と同じであり、R〜R11は、式(II)と同じである。
【化12】

式(III’)に於いて、R、R、E、G及びH、式(I’)と同じであり、R〜R11は、式(II’)と同じである。
【0036】
本発明のポリイミド系ポリマーは、上記ジエチニルフルオレン骨格を有する繰り返し単位が所定量(式(I)では40モル%以上、式(I’)では70モル%以上)導入されているものであれば、その他の繰り返し単位を含んでいてもよい。該その他の繰り返し単位としては、例えば下記式(e)で表される繰り返し単位などが挙げられる。
【0037】
【化13】

式(e)に於いて、R12及びR13は、水素、ハロゲン、フェニル基、置換フェニル基、アルキル基、及び置換アルキル基からなる群からそれぞれ選択される原子又は基である。その中でも、R12およびR13は、それぞれ独立に、ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
【0038】
本発明のポリイミド系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、例えば、1,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは、2,000〜500,000の範囲である。重量平均分子量が、これらの範囲内であれば、十分な強度が得られ、フィルム状にした際に、伸縮、歪み等によるクラックが生じにくく、又、溶剤に対する良好な溶解性が得られるからである。
また、本発明のポリイミド系ポリマーのガラス転移温度は、式(I)又は式(I’)の側鎖及び主鎖の種類、各繰り返し単位の導入量などによって異なるが、100℃以上、好ましくは130℃以上であり、光学フィルムとして十分な耐熱性を有するものである。なお、このガラス転移温度は、JIS K 7121(1987)に準じたDSC法によって求められる。
【0039】
上記式(I)又は式(I’)で表されるポリイミド系ポリマーは、ポリイミドに、下記一般式(f)で表されるジエチニルフルオレンを繰り返し単位として導入することにより得ることができる。また、上記式(II)又は式(II’)で表されるポリイミド系ポリマーは、ポリイミドに、下記一般式(g)で表されるジエチニルフルオレンを導入することにより得ることができる
【0040】
【化14】

ただし、式(f)に於いて、D及びD’は、それぞれ独立して、OH基、NHR基(ただし、このRは、水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表す)、COOH基、又はNCO基を表す。
Aa、A’a’、Bb及びB’b’は、式(I)と同じである。R及びRは、対応する式(I)または式(I’)のR及びRと同じである。
【0041】
【化15】

ただし、式(g)に於いて、D及びD’は、それぞれ独立して、OH基、NHR基(ただし、このRは、水素又は炭素数1〜4のアルキル基を表す)、COOH基、又はNCO基を表す。R〜R11は、式(II)と同じである。R及びRは、対応する式(II)または式(II’)のR及びRと同じである。
【0042】
上記式(f)及び式(g)に於いて、D及びD’は、結合基であり、例えば酸と反応して容易にイミド結合を形成できることから、D及びD’は、NH基であるものが好ましい。
【0043】
ジエチニルフルオレンとしては、例えば、アルキルエチニル基を有するフルオレン;フェニルエチニル基、ビフェニルエチニル基、ナフチルエチニル基、アントリルエチニル基、フェナントリルエチニル基などのアリールエチニル基を有するフルオレン;ビニルエチニル基を有するフルオレンなどが挙げられる。
アルキルエチニル基を有するフルオレンの具体例としては、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−2,7−ジヘキシニルエチニルフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−2,7−ジペンタニルエチニルフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−2,7−ジヘプタニルエチニルフルオレンなどが挙げられる。
アリールエチニル基を有するフルオレンの具体例としては、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−2,7−ビス(フェニルエチニル)フルオレンなどが挙げられる。
その他、ジエチニルフルオレンとしては、9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)−2,7−ビス(2−ヒドロキシ−2−メチル−3−ブチニル)フルオレンなどが挙げられる。
【0044】
上記各ジエチニルフルオレンは、例えば、次の方法によって製造することができる。
例えば、2,7−ジブロモフルオレンを酸触媒下で、アニリン誘導体と反応させる。該中間体を、パラジウム(0)触媒下で、エチニル化合物と反応させることによって、アミノ基を有するジエチニルフルオレンを得ることができる(反応式A)。
【0045】
【化16】

【0046】
また、上記アニリン誘導体を、フェノール誘導体に代えることによって、水酸基を有するジエチニルフルオレンを得ることができる(反応式B)。
【0047】
上記ポリイミド系ポリマーは、例えば、上記ジエチニルフルオレン、酸二無水物及びジアミンを反応させることで得ることができる。具体的には、ジエチニルフルオレン、酸二無水物及びジアミンを所定のモル比で、適当な溶剤に溶解させながら混合した後、室温で所定時間攪拌してポリアミック酸を生成する。つぎに、無水酢酸及びピリジンを添加し、必要に応じて加熱し、攪拌しながらポリアミック酸をイミド化する。得られたポリイミドを室温まで冷却し、適当な溶剤にて精製する。精製物を洗浄乾燥することにより、本発明のポリイミド系ポリマーを得ることができる。
【0048】
酸二無水物としては、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物があげられる。芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリト酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物、2,2’−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等があげられる。ピロメリト酸二無水物としては、例えば、ピロメリト酸二無水物、3,6−ジフェニルピロメリト酸二無水物、3,6−ビス(トリフルオロメチル)ピロメリト酸二無水物、3,6−ジブロモピロメリト酸二無水物、3,6−ジクロロピロメリト酸二無水物等があげられる。前記ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記ナフタレンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,3,6,7−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロ−ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記2,2’−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,2’−ジブロモ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ジクロロ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等があげられる。
また、芳香族テトラカルボン酸二無水物のその他の例としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,5,6−トリフルオロ−3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−2,2−ジフェニルプロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−[4,4’−イソプロピリデン−ジ(p−フェニレンオキシ)]ビス(フタル酸無水物)、N,N−(3,4−ジカルボキシフェニル)−N−メチルアミン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジエチルシラン二無水物等があげられる。
【0049】
これらの中でも、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましく、より好ましくは、1,1’−ジクロロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。
【0050】
前記ジアミンとしては、例えば、芳香族ジアミンがあげられ、具体例としては、ベンゼンジアミン、ジアミノベンゾフェノン、ナフタレンジアミン、複素環式芳香族ジアミン、およびその他の芳香族ジアミンがあげられる。
ベンゼンジアミンとしては、例えば、o−、m−およびp−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノ−2−メトキシベンゼン、1,4−ジアミノ−2−フェニルベンゼン、1,3−ジアミノ−4−クロロベンゼンなどのベンゼンジアミンから成る群から選択されるジアミン等があげられる。ジアミノベンゾフェノンの例としては、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン等があげられる。ナフタレンジアミンとしては、例えば、1,8−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン等があげられる。複素環式芳香族ジアミンとしては、2,6−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノ−S−トリアジン等があげられる。
また、芳香族ジアミンとしては、これらの他に、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−(9−フルオレニリデン)−ジアニリン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,5,5’−テトラクロロベンジジン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等があげられる。
これらの中でも、ジアミンとしては、例えば、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルなどが好ましい。
【0051】
本発明の光学フィルムは、ポリイミド系ポリマーを含む形成材料を製膜することによって得ることができる。
なお、光学フィルムの形成材料としては、配向性が著しく低下しない範囲で、本発明のポリイミド系ポリマーに加えて、構造の異なる他の樹脂をさらに混合してもよい。このような混合用樹脂としては、例えば、汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等があげられる。汎用樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、アクロルニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂等があげられる。エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド(ナイロン)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等があげられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリイミド、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート、ポリアリレート、液晶ポリマー等があげられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂等があげられる。これらの混合用樹脂を本発明のポリマーに配合する場合、その配合量は、前記ポリマーに対して、例えば、0〜50質量%であり、好ましくは、0〜30質量%である。
また、必要に応じて、前記形成材料には、例えば、安定剤、可塑剤、金属類等を含む種々の添加剤を配合してもよい。
【0052】
本発明の光学フィルムの厚みは、特に限定されず、通常、200μm以下である。中でも、主として画像表示装置の薄型化を図ることから、光学フィルムの厚みは、20μm以下が好ましく、更に、15μm以下が好ましく、特に10μm以下がより好ましい。一方、光学フィルムの厚みの下限は、補償対象の位相差に合わせて適宜設定されるが、通常、1μm以上、好ましくは2μm以上である。本発明のポリイミド系ポリマーは、塗工によって光学的一軸性を示すことから、上記のように薄膜状に形成することもできる。
【0053】
本発明の光学フィルムの製造方法は、特に限定されず、例えば、上記形成材料を製膜し、必要に応じて延伸(又は収縮)することによって作製できる。本発明のポリマーは、溶剤溶解性に優れているので、適宜な溶剤に溶解させて製膜することもできる。
特に、本発明のポリイミド系ポリマーは、該ポリマーを含む形成材料を基材に塗工することによって、負の一軸性(屈折率楕円体がnx≒ny>nz)を示すコーティング膜を形成できる。つまり、本発明のポリイミド系ポリマーは、基材の配向の有無に関わらず、基材に塗工することで光学的一軸性を示す。
なお、「nx≒ny」とは、nxとnyが完全に同一である場合だけでなく、実質的に同一である場合も含まれるという意味である。nxとnyが実質的に同一である場合とは、例えば、Re[590]が−10nm〜10nmであり、好ましくは−5nm〜5nmである。
【0054】
形成材料の塗工の方法としては、例えば、形成材料を加熱溶解して塗工する方法や、形成材料を溶媒に溶解させたポリマー溶液を塗工する方法などがあげられる。製造効率、分子配向制御および光学異方性制御の点等から、ポリマー溶液を塗工する方法が好ましい。
【0055】
上記溶媒としては、本発明のポリイミド系ポリマー等を溶解できるものであれば、特に制限はなく、適宜選択できる。具体的には、溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、パラクロロフェノール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールのようなアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリルのようなニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒;二硫化炭素;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等があげられる。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0056】
上記ポリマー溶液は、塗工しやすい粘度になることから、例えば、溶媒100質量部に対して、形成材料が5〜50質量部の範囲で配合されることが好ましく、より好ましくは10〜40質量部である。
また、塗工方法は、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等の適宜な方法で行うことができる。
【0057】
前記ポリマー溶液を塗工後、基材上のコーティング膜を乾燥しても良い。乾燥は、例えば、自然乾燥、風乾、加熱乾燥等により行うことができる。加熱乾燥の場合、その温度は、特に制限されないが、例えば、25〜250℃であり、好ましくは40〜200℃である。
乾燥処理によって、最終的に得られるフィルムに残存する溶媒量が、1質量%以下に調製されることが好ましく、0.5質量%以下に調製されることがより好ましい。残存溶媒量が少ないフィルムは、寸法安定性に優れ、光学特性の経時的な変化が起こりにくくなるからである。
【0058】
上記形成材料を塗工する基材としては、特に限定されず、例えば、合成樹脂製の基材でもよいし、ガラス基材やシリコンウエハのような無機化合物製の基材でもよい。合成樹脂製基材としては、キャスト法で作製したフィルム基材や、溶融ポリマーを製膜後、延伸処理を施して作製したフィルム基材等があげられる。これらの中でも、精密に塗工できることから、延伸処理を施して機械的強度が増したフィルム基材が好ましい。
また、基材としては、透明性に優れたものが好ましい。透明性に優れた基材を用いることによって、該基材上に形成した光学フィルムを、基材から剥離せず、そのまま光学部材として使用することもできる。
【0059】
上記基材としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のアセテート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリノルボルネン樹脂、セルロース樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリル樹脂や、これらの混合物等があげられる。また、液晶ポリマー等も使用できる。さらに、例えば、特開平2001−343529号公報に記載されているような、側鎖に置換イミド基または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換フェニル基または非置換フェニル基とニトリル基とを有する熱可塑性樹脂との混合物等も使用できる。
基材の厚みは、例えば、12μm〜200μmであり、好ましくは20μm〜150μmであり、25μm〜100μmがより好ましい。基材の厚みが12μm以上であれば、十分に精密に塗工でき、200μm以下であれば、液晶パネルに実装した際に、フィルムの歪量をより一層抑制できるからである。
【0060】
本発明のポリイミド系ポリマーを含む形成材料は、上述のように、基材に塗工することによって、光学的一軸性を示すコーティング膜を形成できる。このコーティング膜を本発明の光学フィルムとして使用することにより、薄膜状で且つ光学的一軸性(屈折率楕円体がnx≒ny>nz)の位相差板を提供できる。
さらに、このコーティング膜を延伸又は収縮することによって、屈折率楕円体がnx>ny>nzを示す二軸性の光学フィルムを形成することもできる。
このコーティング膜の延伸方法としては、例えば、フィルムの長手方向に一軸に延伸する自由端縦延伸、フィルムの長手方向は固定しながら幅方向に一軸に延伸する固定端横延伸等が好ましい。その他の延伸方法としては、例えば、長手方向および幅方向の双方に延伸する、逐次または同時二軸延伸等があげられる。また、延伸処理は、コーティング膜の形成された基材が延伸可能な基材である場合、その基材を延伸することによって前記コーティング膜を延伸することが好ましい。この方法によれば、基材が均一に延伸されるので、この延伸に伴ってコーティング膜を間接的に均一延伸することができる。また、この方法は、連続生産工程に適用可能で、製品の量産性が高まる等の点からも好ましい。なお、前記基材とコーティング膜は、ともに延伸してもよい。
【0061】
また、コーティング膜の形成された基材が、収縮しうる基材である場合、基材を収縮させることにより、コーティング膜の収縮を間接的に行うことができる。この際には、延伸機等を利用して収縮率を制御することが好ましい。その制御方法としては、例えば、延伸機のクリップを一時的に開放して、前記基材の移送方向に弛緩させる方法や、延伸機のクリップの間隔を徐々に狭くする方法等があげられる。
【0062】
本発明の光学フィルムに於いて、その厚み方向の位相差値Rth(λ)や、面内方向の位相差値Re(λ)の制御は、例えば、使用するポリマー材料の構造及び分子量、光学フィルムの厚み、延伸(又は収縮)比率などを調整することによって行い得る。
本発明のポリイミド系ポリマーを形成材料として含む光学フィルムは、その波長分散が逆分散となる。具体的には、本発明の光学フィルムは、Rth(450)/Rth(550)≦0.98、Rth(650)/Rth(550)≧1.02の関係を満たしている。特に、本発明のポリマーに於いてジエチニルフルオレンの繰り返し単位の導入量を増やすことによって、Rth(450)/Rth(550)≦0.8のような、より急峻な逆分散を示す光学フィルムを構成できる。
【0063】
本発明の光学フィルムは、0.4≦Rth(450)/Rth(550)≦0.98、好ましくは0.7≦Rth(450)/Rth(550)≦0.97の逆分散を示す。また、本発明の光学フィルムは、1.50≧Rth(650)/Rth(550)≧1.02、好ましくは1.30≧Rth(650)/Rth(550)≧1.10の逆分散を示す。
【0064】
従来公知のポリイミド系ポリマーは、位相差が短波長側ほど大きい波長分散を示し、通常、Rth(450)/Rth(550)>1.06で、Rth(650)/Rth(550)<0.95程度である。これは、繰り返し単位として、ジエチニル基を有しないフルオレン骨格が導入されているポリイミドも同様である。本発明の光学フィルムは、ジエチニル基を有するフルオレン骨格が導入されたポリイミド系ポリマーを用いることにより、波長分散を逆分散とすることができる。このような知見は、本発明者らによって初めて得られたものである。
【0065】
また、本発明の光学フィルムがnx>ny>nzの関係を示す場合、該光学フィルムの面内位相差値についても、Re(450)/Re(550)≦0.98、Re(650)/Re(550)≧1.02の関係を満たしている。
【0066】
本発明の光学フィルムの複屈折率は、ジエチニルフルオレンの繰り返し単位の導入量やポリイミド構成単位の構造などによって適宜設計できるが、本発明の光学フィルムの波長550nmにおける複屈折率(Δnxz(550)=nx−nz)は、0.001以上が好ましく、更に、0.003〜0.070がより好ましく、0.005〜0.055が特に好ましい。
【0067】
本発明の光学フィルムは、任意の適切な用途に用いられ得る。代表的な用途としては、液晶表示装置のλ/4板、λ/2板、視野角拡大フィルム等の位相差板としての用途が挙げられる。この他の用途としては、液晶表示装置、有機ELディスプレイ、及びプラズマディスプレイ等の画像表示装置の反射防止フィルム用途などが挙げられる。
【0068】
本発明の光学フィルムは、他の光学部材を積層した光学積層体の形態で使用することもできる。該光学積層体としては、例えば、本発明の光学フィルムに、保護層を有する偏光子を積層した積層体(偏光板)、本発明の光学フィルムに他の位相差板を積層した積層体などが挙げられる。
これら積層体を構成する光学フィルム等は、通常、公知の接着剤(又は粘着剤)を用いて積層接着される。この接着剤(又は粘着剤)としては、溶剤型接着剤、エマルジョン型接着剤、感圧性接着剤、再湿性接着剤、重縮合型接着剤、無溶剤型接着剤、フィルム状接着剤、ホットメルト型接着剤などが挙げられる。
【0069】
上記偏光子は、自然光又は偏光を直線偏光に変換するものであれば、適宜、適切なものが採用され得る。上記偏光子は、好ましくは、ヨウ素または二色性染料を含有するビニルアルコール系ポリマーを主成分とする延伸フィルムである。偏光子の厚みは、通常、5μm〜50μmである。保護層は、偏光子が収縮や膨張することを防いだり、紫外線による劣化を防いだりするために偏光子に貼着される。保護層としては、好ましくは、セルロース系ポリマーまたはノルボルネン系ポリマーを含有する高分子フィルムである。保護層の厚みは、通常、10μm〜200μmである。なお、上記保護層は、本発明の光学フィルムを形成する際の基材を兼ねていてもよい。
【0070】
本発明の画像表示装置は、本発明の光学フィルムが用いられることを条件として、各種の表示装置を採用し得る。
本発明の画像表示装置は、任意の適切な用途に使用される。その用途は、液晶表示装置の場合には、例えば、パソコンモニター、ノートパソコン、コピー機などのOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機などの携帯機器、ビデオカメラ、電子レンジなどの家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオなどの車載用機器、商業店舗用インフオメーション用モニターなどの展示機器、監視用モニターなどの警備機器、介護用モニター、医療用モニターなどの介護・医療機器等である。
【0071】
本発明の画像表示装置は、液晶表示装置、有機ELディスプレイ、及びプラズマディスプレイ等を含み、その好ましい用途は、テレビである。テレビの画面サイズは、好ましくはワイド17型(373mm×224mm)以上であり、さらに好ましくはワイド23型(499mm×300mm)以上であり、特に好ましくはワイド32型(687mm×412mm)以上である。
【実施例】
【0072】
つぎに本発明の位相差板を以下の実施例に基づいて詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、実施例で用いた各分析方法は、以下の通りである。
【0073】
(化学構造の測定)
核磁気共鳴スペクトルメーター[ブルカ社製、製品名:AVANCEII300](測定溶媒;重クロロホルムあるいは重DMSO、周波数;300MHz、観測核;H、13C、測定温度;25℃)を用いた。
(赤外吸収スペクトルの測定)
赤外分光光度計[日本分光(株)製、製品名:FT/IR−470plus]を用いて行った。
(ガラス転移温度の測定)
示差走査熱量計[セイコー(株)製、製品名:DSC−6200]を用いて、JIS K 7121(1987)(プラスチックの転移温度測定方法)に準じた方法により求めた。具体的には、3mgの粉末サンプルを、窒素雰囲気下(ガスの流量;50mL/分)で昇温(加熱速度;10℃/分)させて2回測定し、2回目のデータを採用した。熱量計は、標準物質(インジウム)を用いて温度補正を行った。
(分子量測定)
重量平均分子量は、各試料を0.1%DMF溶液に調整し、0.45μmメンブレンフィルターにてろ過した後、GPC本体として東ソー社製HLC−8120GPCを用い、検出器としてRI(GPC本体に内蔵)を用いて測定した。具体的には、カラム温度40℃、ポンプ流量0.40mL/分とし、データ処理は、あらかじめ分子量が既知の標準ポリエチレンオキシドの検量線を用いて、ポリエチレンオキシド換算分子量より分子量を得た。尚、使用カラムは、superAWM−H(径6.0mm×15cm)、superAW4000(径6.0mm×15cm)およびsuperAW2500(径6.0mm×15cm)を直列につないだものを用い、移動相としては、10mmolのLiBrと10mmolのリン酸とをメスフラスコに入れ、DMFで全量を1Lとしたものを用いた。
(Δnxz、Re(λ)、Rth(λ)の測定)
王子計測機器(株)製 商品名「KOBRA−WPR」を用いて、波長λで測定した。Rth(λ)は、波長λの光をサンプル法線から40度の角度で入斜させて、測定した値(R40λ)をRth(λ)に換算して求めた。
(屈折率の測定)
アッベ屈折率計(アタゴ(株)製、製品名「DR−M4」)を用いて測定した。
【0074】
<実施例1>
(ジエチニルフルオレンの合成)
0.43gのビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム(II)と0.14gのヨウ化銅(I)とを、窒素雰囲気下、ジオキサン19mLに溶解させた。そこに、トリ(t−ブチルホスフィン)4.70g、ジイソプロピルアミン4.54g、2−メチル−3−ブチン−2−オール3.78g、2,7−ジブロモ−9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)フルオレン10.0gを加え、室温で24時間攪拌した。その後、溶媒を減圧下で除去し、残渣を展開溶媒としてヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒を用いたシリカゲル充填カラムにて精製し、9.80gの化合物を得た。得られた化合物をNMRで測定したところ、下記式(1)に示す9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)−2,7−ビス(2−ヒドロキシ−2−メチル−3−ブチニル)フルオレンであった。
【0075】
【化17】

【0076】
(ポリマーの合成)
窒素雰囲気下、0.39gの上記9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)−2,7−ビス(2−ヒドロキシ−2−メチル−3−ブチニル)フルオレン、0.08gの2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、及び0.35gの1,1’−ジクロロビフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物を、1.91gのDMACに溶解させ、室温で7時間攪拌した。
その後、5.46gのDMACを加え、更に、0.18gのピリジン、及び0.24gの無水酢酸を加え、16時間攪拌した。
得られた反応溶液をイソプロピルアルコール(IPA)に滴下し、再沈殿を行った。得られたポリマーをろ過し、IPAで2回洗浄することによって白色のポリマーを0.57g得た。得られたポリマーの組成は、NMRによって、下記式(2)(但し、m:n=72:28)で表されるポリイミドであることが確認された。なお、このポリマーの重量平均分子量は、31,600であり、ガラス転移温度は、177.9℃であった。
【0077】
【化18】

【0078】
(位相差板の作製)
得られたポリマーをシクロヘキサノンに溶解させ、スピンコート法によってガラス上に塗工し、80℃で5分間乾燥した後、更に、150℃で30分乾燥させてポリイミドフィルムを作製した。このフィルムの乾燥厚は、8.39μmであった(厚みの測定機器:SLOAN社製、Dektak)。
得られたフィルムの550nmに於ける複屈折率(Δnxz)は、0.0079であった(表1参照)。
このフィルムの厚み方向位相差の波長分散を測定した。その結果を、図1に示す。
実施例1のRth(450)/Rth(550)=0.95であり、Rth(650)/Rth(550)=1.02であった。なお、表1に於いて、「n」は、ナトリウムD線(589nm)で測定した屈折率を示す(以下、各実施例及び比較例の「n」も同様)。
【0079】
【表1】

【0080】
<実施例2>
実施例1のポリマーの合成において、0.08gの2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルを加えなかったこと以外は、実施例1と同様にしてポリマーを合成した。なお、このポリマーの重量平均分子量は、34,600であり、ガラス転移温度は、176.1℃であった。
得られたポリマーの組成は、NMRによって、前記式(2)(但し、m:n=100:0)で表されるポリイミドであることが確認された。
得られたポリマーを、実施例1と同様にして製膜した(乾燥厚:8.15μm)。得られたフィルムの550nmに於けるΔnxzは、0.002であった。このフィルムの波長分散を測定した。その結果を、図1に示す。
実施例2のRth(450)/Rth(550)=0.50であり、Rth(650)/Rth(550)=1.17であった。
【0081】
<実施例3>
(ジエチニルフルオレンの合成)
0.43gのビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム(II)と0.14gのヨウ化銅(I)を窒素雰囲気下、ジオキサンン19mLに溶解させ、そこにトリ(t−ブチルホスフィン)4.70g、ジイソプロピルアミン4.54g、フェニルアセチレン4.59g、2,7−ジブロモ−9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)フルオレン10.0gを加え、室温で24時間攪拌した。その後、溶媒を減圧下で除去し、残渣を展開溶媒としてヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒を用いたシリカゲル充填カラムにて精製し、8.70gの化合物を得た。得られた化合物をNMRで測定したところ、下記式(3)に示す9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)−2,7−ビス(フェニルエチニル)フルオレンであった。
【0082】
【化19】

【0083】
(ポリマーの合成)
窒素雰囲気下、1.59gの上記9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)−2,7−ビス(フェニルエチニル)フルオレン、0.88gの2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、及び2.00gの1,1’−ジクロロビフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物を、1.91gのDMACに溶解させ、室温で7時間攪拌した。その後、実施例1のポリマーの合成と同様の操作を行いポリマーを合成した。なお、このポリマーの重量平均分子量は、15,300であり、ガラス転移温度は、179.0℃であった。
得られたポリマーの組成は、下記式(4)(但し、m:n=50:50)で表されるポリイミドであることが確認された。
【0084】
【化20】

【0085】
得られたポリマーを、実施例1と同様にして製膜した(乾燥厚:5.37μm)。得られたフィルムの550nmに於けるΔnxzは、0.016であった。このフィルムの波長分散を測定した。その結果を、図2に示す。
実施例3のRth(450)/Rth(550)=0.87であり、Rth(650)/Rth(550)=1.02であった。
【0086】
<実施例4>
実施例3の9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)−2,7−ビス(フェニルエチニル)フルオレンの添加量を「1.19g」に、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルの添加量を「0.22g」に、1,1’−ジクロロビフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物の添加量を「1.00g」に、それぞれ代えた以外は、実施例3と同様にしてポリマーを合成した。なお、このポリマーの重量平均分子量は、14,400であり、ガラス転移温度は、164.3℃であった。
得られたポリマーの組成は、前記式(4)(但し、m:n=75:25)で表されるポリイミドであることが確認された。
得られたポリマーを、実施例1と同様にして製膜した(乾燥厚:3.77μm)。得られたフィルムの550nmに於けるΔnxzは、0.0037であった。このフィルムの波長分散を測定した。その結果を、図2に示す。
実施例4のRth(450)/Rth(550)=0.40であり、Rth(650)/Rth(550)=1.50であった。
【0087】
<比較例1>
実施例1の9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)−2,7−ビス(2−ヒドロキシ−2−メチル−3−ブチニル)フルオレンの添加量を「0.34g」に、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルの添加量を「0.60g」に、1,1’−ジクロロビフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物の添加量を「0.90g」に、それぞれ代えた以外は、実施例1と同様にしてポリマーを合成した。なお、このポリマーの重量平均分子量は、23,100であり、ガラス転移温度は、185.3℃であった。
得られたポリマーの組成は、前記式(2)(但し、m:n=25:75)で表されるポリイミドであることが確認された。
得られたポリマーを、実施例1と同様にして製膜した(乾燥厚:5.6μm)。得られたフィルムの550nmに於けるΔnxzは、0.043であった。このフィルムの波長分散を測定した。その結果を、図1に示す。
比較例1のRth(450)/Rth(550)=1.05であり、Rth(650)/Rth(550)=0.97であった。
【0088】
<比較例2>
実施例3の9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)−2,7−ビス(フェニルエチニル)フルオレンの添加量を「0.79g」に、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルの添加量を「1.32g」に、1,1’−ジクロロビフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物の添加量を「2.00g」に、それぞれ代えた以外は、実施例3と同様にしてポリマーを合成した。
なお、このポリマーの重量平均分子量は、16,000であり、ガラス転移温度は、169.0℃であった。
得られたポリマーの組成は、前記式(4)(但し、m:n=25:75)で表されるポリイミドであることが確認された。
得られたポリマーを、実施例1と同様にして製膜した(乾燥厚:5.12μm)。得られたフィルムの550nmに於けるΔnxzは、0.030であった。このフィルムの波長分散を測定した。その結果を、図2に示す。
比較例2のRth(450)/Rth(550)=1.02であり、Rth(650)/Rth(550)=0.98であった。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】実施例1〜2及び比較例1の波長分散を示すグラフ図。
【図2】実施例3〜4及び比較例2の波長分散を示すグラフ図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるポリイミド系ポリマーを含む光学フィルム。
【化1】

ただし、式(I)に於いて、mは、40モル%以上100モル%以下である(m+n≦100モル%)。また、式(I)に於いて、A、A’、B及びB’は、それぞれ置換基を表し、a及びa’は、対応するA及びA’の置換数(0〜4までの整数)を、b及びb’は、対応するB及びB’の置換数(0〜3までの整数)を表す。A、A’、B及びB’は、それぞれ独立して、ハロゲン又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、複数の場合、それぞれ同一又は異なる。R及びRは、それぞれ独立して、炭素−炭素二重結合若しくは三重結合を有する置換基を表す。X及びYは、それぞれ独立して、共有結合、又は、CH基、C(CH基、C(CZ基(ここで、Zは、ハロゲンである。)、CO基、O原子、S原子、SO基、Si(CHCH基、及び、N(CH)基からなる群から選択される原子又は基を表す。Eは、置換基であり、eは、その置換数(0〜3までの整数)を表す。Eは、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基、フェニル基、又は、置換フェニル基であり、複数の場合、それぞれ同一又は異なる。G及びHは、置換基であり、gは、Gの置換数(0〜4までの整数)を、hは、Hの置換数(0〜4までの整数)を表す。G及びHは、それぞれ独立して、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、置換アリール基、アルキルエステル基、及び置換アルキルエステル基からなる群から選択される原子又は基を表し、複数の場合、それぞれ同一又は異なる。q1は、0〜3までの整数を、q2は、1〜3までの整数を表す。
【請求項2】
下記一般式(I’)で表されるポリイミド系ポリマーを含む光学フィルム。
【化2】

ただし、式(I’)に於いて、mは、70モル%以上100モル%以下である(m+n≦100モル%)。また、式(I’)に於いて、A、A’、B及びB’は、それぞれ置換基を表し、a及びa’は、対応するA及びA’の置換数(0〜4までの整数)を、b及びb’は、対応するB及びB’の置換数(0〜3までの整数)を表す。A、A’、B及びB’は、それぞれ独立して、ハロゲン又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、複数の場合、それぞれ同一又は異なる。R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜10のアルキル基、CR(OH)(R及びRは、それぞれ炭素数1〜4のアルキル基)を表す。X及びYは、それぞれ独立して、共有結合、又は、CH基、C(CH基、C(CZ基(ここで、Zは、ハロゲンである。)、CO基、O原子、S原子、SO基、Si(CHCH基、及び、N(CH)基からなる群から選択される原子又は基を表す。Eは、置換基であり、eは、その置換数(0〜3までの整数)を表す。Eは、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基、フェニル基、又は、置換フェニル基であり、複数の場合、それぞれ同一又は異なる。G及びHは、置換基であり、gは、Gの置換数(0〜4までの整数)を、hは、Hの置換数(0〜4までの整数)を表す。G及びHは、それぞれ独立して、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、置換アリール基、アルキルエステル基、及び置換アルキルエステル基からなる群から選択される原子又は基を表し、複数の場合、それぞれ同一又は異なる。q1は、0〜3までの整数を、q2は、1〜3までの整数を表す。
【請求項3】
前記炭素−炭素二重結合若しくは三重結合を有する置換基が、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のビニル基、又は置換若しくは無置換のエチニル基のいずれかである請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項4】
Rth(450)/Rth(550)≦0.98を示す請求項1〜3のいずれかに記載の光学フィルム。
ただし、Rth(450)及びRth(550)は、波長450nm及び波長550nmに於ける厚み方向位相差値を表す。
【請求項5】
Rth(650)/Rth(550)≧1.02を示す請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルム。
ただし、Rth(550)及びRth(650)は、波長550nm及び波長650nmに於ける厚み方向位相差値を表す。
【請求項6】
前記ポリイミド系ポリマーを基材上に塗工して得られたコーティング膜から構成されている請求項1〜5のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項7】
厚み20μm以下である請求項1〜6のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項8】
nx≒ny>nzを示す請求項1〜7のいずれかに記載の光学フィルム。
但し、nxは、フィルム面内の屈折率が最大となる方向(X軸方向)に於ける屈折率を、nyは、同面内でX軸方向に対して直交する方向(Y軸方向)に於ける屈折率を、nzは、厚み方向に於ける屈折率を、それぞれ表す。
【請求項9】
nx>ny>nzを示す請求項1〜7のいずれかに記載の光学フィルム。
但し、nxは、フィルム面内の屈折率が最大となる方向(X軸方向)に於ける屈折率を、nyは、同面内でX軸方向に対して直交する方向(Y軸方向)に於ける屈折率を、nzは、厚み方向に於ける屈折率を、それぞれ表す。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の光学フィルムを有する画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−268336(P2008−268336A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107991(P2007−107991)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】