説明

光学フィルムとその製造プロセス

【課題】光学性能、破損抵抗、引裂き抵抗、寸法安定性、加工性が改善された光学フィルム、特に光学的偏光フィルムの提供。
【解決手段】第2のポリマー材料の連続相と光学的に結合された第1のポリマー材料の分散相のブレンドを有する光学的偏光フィルムであって、前記第2のポリマー材料は、前記フィルムの第1の軸を基準として実質的な分子配向を有するとともに、前記フィルムの第2の軸に関しては前記第1の軸に関する前記配向と比較して弱い分子配向を有し、前記第1および第2のポリマー材料は、第1の偏光状態の光を実質的に透過するように十分に一致している屈折率を前記フィルムの前記第1および第2の軸の一方に沿って有し、且つ第2の偏光状態の光を実質的に反射するように十分に異なっている屈折率を前記フィルムの前記第1および第2の軸の他方に沿って有しているフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には光学フィルムとその製造方法に関し、特に、フィルム中の材料の特性を利用して加工中の材料の応答を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過去数年にわたって、高品質の光学フィルムの生産にポリマーフィルムを使用する研究が行われている。研究対象のポリマー光学フィルムは、一般に、多層フィルムの層間の屈折率の違いを利用するものである。例えば、多層光学フィルムは、高屈折率のポリマー層と低屈折率のポリマー層とを交互することによって作製できる。隣接する2つの層を、それぞれの屈折率の不一致度が比較的大きくなるように構成すると、2層の境界面において特定の波長の光が反射する。反射光の波長は、隣接する層の光学的厚さに依存する。光学フィルムは、ブレンドの種々の相の相対屈折率の関係を利用することにより、ポリマーブレンドから作ることもできる。
【0003】
あるタイプの多層光学フィルムは、隣接する屈折率を不一致にさせるために、複屈折ポリマーを使用している。そのようなフィルムでは、多層フィルムは、フィルムの面内の1軸にのみ沿った方向に1軸延伸されるか、または、フィルムの面内の直交する2軸に沿った方向に二軸延伸される。延伸の結果、2つの隣接層の一方の内部の分子は、延伸の方向に配向させられる。分子配向により、影響層の屈折率が延伸方向に変化する。
【0004】
フィルムの複数層のうちの一層が複屈折を呈する多層フィルムの延伸は、延伸方向に沿った2つの隣接層の屈折率の不一致を得るために利用できる。2層の屈折率が、面内の非延伸方向に一致している場合、この多層フィルムは、一方の偏光の光を反射させ他方の偏光の光を透過させるために利用できる。そのようなフィルムは、例えば、反射偏光子として利用できる。影響層が面内の直交2軸方向に配向させられるように多層フィルムを延伸すると、両方向に屈折率の不一致が得られる。そのようなフィルムは、両方の偏光の光を反射させるために(例えば、光のそれぞれの波長に対する鏡として)利用できる。
【0005】
前述したように、ポリマー光学フィルムに使用される1種類以上の材料は、材料の延伸に伴って変化する光学的特性を有している。これらの特性は、材料の延伸方向に依存する、指向性の分子配向を呈する傾向がある。そのような光学フィルムは、互いに直交する3軸、すなわち、面内の2軸xとy、および厚さの軸zによって表すことができる。そのような光学フィルムの光学的性質は、一般に各材料のx、y、およびz軸方向の屈折率n、n、およびnに依存している。したがって、使用材料の光学的性質に対して正確な制御を行えるように光学フィルムを加工することが望ましい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
本発明は、広義には、光学フィルムとその製造法に関する。本発明の一実施態様によれば、少なくとも第1および第2の材料を含む光学フィルムは、少なくとも第1の材料に、フィルムの第1の面内軸に沿って光学的配向を誘発し、該第1の材料に、フィルムの第2の面内軸に沿って、第1の面内軸に沿って誘発された配向よりも実質的に小さい配向を誘発する条件下で、フィルムの第1および第2の面内軸に関してフィルムを加工することによって作られる。第2の材料の屈折率は、フィルムの第1および第2の面内軸の一方に沿って第1の材料の屈折率と一致している。
【0007】
このプロセスは、改良された光学的および/または機械的性能を備えたフィルムを作るために利用してもよい。当該プロセスは、多種類のフィルムを作るために利用してもよい。2種類以上のフィルム材料により、多層光学フィルムの交互層を形成してもよい。2種類の材料を、例えば、材料の連続相と分散相としてブレンドフィルムに構成してもよい。本発明の一実施態様によれば、延伸プロセスの条件に合わせて材料の応答を制御することによって、2種類の材料の分子配向状態について種々の組合せを得ることができる。
【0008】
本発明の前述の概要は、本発明の個々の説明実施態様またはあらゆる実施形態を説明しようとするものではない。以下に記載の図面ならびに詳細な説明により、これらの実施態様を更に詳しく例示する。
【0009】
本発明は、添付図面と関連させた本発明の種々の実施形態に関する以下の詳細な説明を考慮することによって、より完全に理解できるであろう。
【0010】
本発明は、一般に、多種類の光学フィルム、材料、およびプロセスに応用できる。本発明は、加工中にフィルムを延伸するときに、フィルムに使用される材料の粘弾性特性をあるとしても利用して該材料に誘発される分子配向の量を制御する、ポリマー光学フィルムの作製に特に適していると考えられる。以下に説明されるように、光学フィルムは、光学フィルムの生産に用いられる材料の種々の特性に関する考察事項を利用することによって改良できる。この改良は、光学性能の改良、破損抵抗または引裂抵抗の改良、寸法安定性の向上、加工性の向上等の中の1つ以上を含む。本発明の種々の側面は、下記の多種多様な例の考察を通して理解されるだろうが、本発明は、その通りに限定されるものではない。
【0011】
図1を参照しながら、本発明の一特定実施形態による光学フィルムの作製プロセスを説明する。図1に、光学フィルム101の一部を示す。図示の光学フィルム101は、互いに直交する3軸x、y、zを基準として表すことができる。図示の実施形態では、2つの直交軸xとyはフィルム101の面内にあり(面内軸)、第3の軸はフィルムの厚さ方向に延びている。
【0012】
光学フィルム101は、光学的に結びつけられた少なくとも2種類の材料(例えば、反射、散乱、透過等といった光学的効果を生じるように組み合わせた2種類の材料)を含んでいる。2種類の材料の特性を利用することにより、フィルム101の少なくとも1軸に沿った方向に所望の屈折率不一致を与えることができる。一般に、2種類の材料の性質は粘弾性である。材料の少なくとも1つは、ある条件下で複屈折しやすくなる。本発明は、共押出し可能な材料を含むフィルムに特に適している。例えば、共押出多層フィルムおよびポリマーブレンドフィルムは、そのようなフィルムの作製に良く適している。フィルム101が共押出し材料を含むとき、該材料は、共押出しプロセスの要件を満足する類似のレオロジー(例えば、粘弾性)を有していなくてはならない。しかしながら、下に述べるように、フィルムの粘弾性特性は、2種類の材料が選択加工条件に対して別々の反応を示す程度に異なっていてもよい。
【0013】
加工中、フィルム101は少なくとも2方向に延伸される。以下の説明の中で、延伸という用語は、フィルムを伸張または伸長させる実施例と組み合わせて使用される。また、圧縮によって歪が生じる可能性もあることを理解すべきである。一般に、延伸プロセスはいずれかのタイプでありうる。この延伸プロセスは、1種類または複数種類の材料に選択的に分子配向を誘発するために利用してもよい。誘発された分子配向は、例えば、影響材料の屈折率を延伸の方向に変化させて、フィルムの機械的性質を変更するために利用してもよい。延伸によって誘発される分子配向の量は、以下に更に十分に説明するように、フィルムの所望の性質に基づいて制御することができる。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、光学フィルムは、2種類以上の材料を用いて形成される。ある条件下では、延伸中に一方の材料だけが実質的に配向される。別の条件下では、延伸プロセスによって他方のまたは両方の材料が実質的に配向される。この配向により、2種類の材料の屈折率が、一方の面内方向については一致しているが他方の面内方向について実質的に不一致となる場合、このフィルムは光学的偏光フィルムを作製するのに特に適している。このプロセスを利用すると、一方の面内軸方向にのみ実質的な屈折率の不一致を与えるように、直交面内軸の両方の方向にフィルムを延伸することによって偏光フィルムを作ることができる。
【0015】
本発明の種々の実施形態によれば、一方の面内軸に沿った屈折率が実質的に等しく、他方の面内軸に沿った屈折率が実質的に不一致である光学フィルムを作製できる。一致方向は、偏光子の透過(通過)方向を構成し、不一致方向は反射(遮断)方向を構成する。一般に、反射方向の屈折率の不一致度が大きく且つ透過方向の一致度が近いほど、偏光子の性能は良くなる。また、2つの材料の厚さ方向の屈折率を制御する(例えば、一致させる)ことによって、光学フィルムの光学性能を改善することができる。
【0016】
材料の屈折率が波長の関数であること(すなわち、材料が一般に拡散を示すこと)が分かるであろう。したがって、屈折率に関する光学的要件も波長の関数である。光学的に結びつけられた2種類の材料の屈折率の比率を利用して、この2種類の材料の反射強度を計算できる。2種類の材料の屈折率の差をこれらの材料の平均屈折率で割った解の絶対値は、フィルムの光学性能を示す。これを、正規化屈折率差(normalized index difference)と呼ぶ。一致している面内屈折率の正規化差は、あるとしても、一般に、好ましくは約0.05未満、更に好ましくは約0.02未満、最も好ましくは約0.01未満である。同様に、偏光フィルムの厚さ方向の屈折率の正規化差は、好ましくは約0.09未満、更に好ましくは約0.04未満、最も好ましくは約0.02未満であってもよい。ある例では、多層の積重品の隣接する2種類の材料の厚さ方向に、制御された不一致が存在することが好ましい場合がある。そのようなフィルムの光学性能に対する、多層フィルムの2種類の材料のz軸屈折率の影響は、95年10月3日に提出された「光学フィルム(Optical Film)」と題された米国特許出願第08/402,041号、本願明細書と同時に1998年1月13日に提出された「カラーシフト用フィルム(Color Shifting Film)」と題された米国特許出願第09/006,591号、および1998年1月13日に提出された「鮮鋭なバンドエッジを備えた光学フィルム(Optical Film with Sharpened Bandedge)」と題された米国特許出願第09/006,085号に更に詳しく説明されている。
【0017】
偏光子の不一致の面内方向正規化屈折率差は、一般に、好ましくは約0.06、更に好ましくは約0.09より大きく、最も好ましくは約0.11より大きい値である。より概括的には、この差は、光学フィルムの他の性状を著しく劣化させずに出来る限り大きな値であることが好ましい。本発明のいくつかの実施形態によれば、多層対を利用する場合、一次反射を最適にするには層対の各層の光学的厚さは等しくなくてはならない。本願明細書では、光学的厚さとは、物理的な層の厚さと任意の波長における屈折率との積のことを言う。別の実施形態では、もっと高い次数の反射ピークが望ましく、これらの反射を最適化する、等しくない光学的厚さを利用してもよい。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、2種類の共押出ポリマー材料の異なる粘弾性特性を利用して、改良された光学フィルムを作製できる。粘弾性とは、ポリマーの基本特性である。ポリマーの粘弾性特性は、応力に対して粘性液体または弾性固体のように応答するポリマーの傾向を示すために使用できる。高温および/または低歪み速度で延伸されると、ポリマーは殆どまたは全く分子配向せずに粘性液体のように流動する傾向がある。低温および/または高歪み速度では、ポリマーは、付随的に分子配向を生じる固体のように、弾性的に延伸する傾向がある。低温プロセスは一般に非晶質のポリマー材料のガラス転移温度付近であるが、高温プロセスは通常は実質的にガラス転移温度を上回る。
【0019】
ポリマーの粘弾性の挙動は、一般に、ポリマー材料における分子緩和率の結果である。分子緩和率は、平均最長総緩和(すなわち、総分子内転位)時間またはそのような時間の分布によって特徴付けられる。平均最長緩和時間は一般に、温度の低下に伴って増加し、ガラス転移温度付近で、非常に大きな値に近づく。平均最長緩和時間は、一般に利用されている加工時間および温度下で当該最長モードの緩和を実際的な目的のために阻止するポリマー材料の結晶化および/または架橋によって、増大させることもできる。化学組成および化学構造(例えば、分岐)と同様に、分子量および分子分布が最長緩和時間に影響を及ぼす可能性もある。
【0020】
特定のポリマー材料の平均最長緩和時間がプロセスの延伸時間にほぼ等しい、またはこれを超える場合、材料の延伸の方向に実質的な分子配向が生じる。したがって、高速および低速の歪み速度は、それぞれ、平均最長緩和時間よりも短いまたは長い時間にわたって材料を延伸するプロセスに相当する。プロセスの延伸温度、延伸速度、延伸比を制御することによって任意の材料の応答を変更できることが分かるであろう。
【0021】
本発明の1つの側面によれば、延伸プロセス中の配向度を広範囲にわたって正確に制御できる。ある延伸プロセスでは、フィルムの少なくとも1方向の分子配向量を実際に減少させることが可能である。例えば、フィルムは、一方の方向にのみ引き延ばして、横断方向については寸法的に弛緩させておいてもよい。このプロセスにより、横断方向の初期分子配向を小さくすることができる。このように、当該プロセスは、消極的な配向プロセスであってもよい。延伸プロセスによって誘発された延伸方向の分子配向は、実質的に非配向から、軽微な非光学的配向(例えば、フィルムの光学性能に対して無視できるほどの影響しか及ぼさない配向)、さらには種々の光学的配向度まで、幅がある。
【0022】
光学的配向の相対的な強さは、フィルムの材料と相対屈折率によって決まる。例えば、強い光学的配向は、任意の材料の全固有(正規化)複屈折率と対応していることがある。あるいは、延伸の強度は、任意の延伸プロセス手順の材料の間に実現可能な正規化屈折率の差の全量と関連していることがある。また、特定の分子配向量は、ある状況下で強い光学的配向を示したとしても、別の状況下では弱い光学的配向しか示さない、または、光学的配向を全く示さない場合があると考えられることを認識すべきである。例えば、第1の面内軸に沿った、ある大きさの複屈折率は、第2の面内軸に沿った複屈折率が非常に大きい場合には、無視できる程度のものであってもよい。しかし、第2の面内軸に沿った複屈折率が小さくなるにつれ、第1の面内軸に沿った僅かな配向が次第に光学的に優勢となる。幾らかまたは実質的な光学的分子配向を引き起こす程度の短時間および/または低温で生じるプロセスは、それぞれ、弱いまたは強い光学的配向を誘発する延伸プロセスである。分子配向を殆どまたは全く誘発しない程度の長時間および/または高温で生じるプロセスは、それぞれ、非光学的配向または非配向のプロセスである。
【0023】
プロセス状態に照らして材料の応答(配向/非配向)を考慮しながら材料およびプロセス状態を選択することにより、あるとしても各延伸プロセスの軸に沿った配向量を各材料毎に別々に制御することができる。したがって、結果として、各材料が各軸に沿って種々タイプの前述分子配向を備えているフィルムを作製できる。例えば、第2の面内軸に沿って非光学的配向または非配向であるが第1の面内軸に沿って強くまたは弱く光学的配向を有する第1の材料と、2軸方向に光学的配向を有する(例えば、両方の面内軸に沿って光学的配向を有する)第2の材料とを有するフィルムを製造することができる。2軸方向の光学的配向は、例えば、対称(例えば、両方向とも強くまたは弱く光学的配向させられる)であってもよいし、非対称(例えば、一方向に強く光学的配向させられ、他方向に弱く光学的配向させられる)であってもよい。プロセスによっては、1種類の材料だけに光学的配向を与えることができる。
【0024】
特定の延伸プロセスによって誘発される分子配向の量は、それ自体が必ずしも結果フィルムの分子配向を要求するものではない。第1の延伸プロセスにおける、ある配向量は、ある材料にとって、第2の延伸プロセスにおける別の分子配向の補償または支援を可能にするものであってもよい。例えば、第1の延伸プロセスは、第1の材料に強い光学的配向を与え、第2の材料に光学的配向を与えないものであってもよい。第1の材料については弱い光学的配向をもたらし、第2の材料については強い光学的配向をもたらす、第2の延伸プロセス(例えば、第2の材料の核形成を誘発する第1の延伸プロセスの分子配向の結果として生じる)を利用してもよい。この場合、第1の延伸プロセスによって第1の材料に誘発される配向は、第2の延伸プロセスによって第1の材料に誘発される配向よりも大きい。この例では、結果として得られるフィルム中の第1の材料が第1の延伸の方向に強い光学的配向を有し、第2の材料が第2の延伸の方向に強い光学的配向を有している。
【0025】
さらに別の例では、光学フィルムに使用されている個々の材料の粘弾性を複数の延伸プロセスで利用して、構成材料のうちの1種類が2軸方向に光学的配向(対称または非対称)を有し、他の構成材料が1方向(1軸方向)にのみ光学的配向を有しているフィルムを製造できる。そのような光学フィルムは、第1の材料に光学的配向を与え、第2の材料に配向を与えない(すなわち、光学的配向を与えない)ように第1の延伸プロセスの条件を選択することによって製造してもよい。第2の延伸プロセスの条件は、両方の材料に光学的配向を与えるように選択されてもよい。その結果、第1の材料が第2の方向にのみ光学的配向が与えられ、第2の材料が第1および第2の両方向に光学的配向を与えられているフィルムが得られる。そのようなプロセスの種々の利点を、以下に記載の種々の実施形態、実施例、およびプロセスで説明する。
【0026】
種々の可能材料およびプロセスの実施形態の適応性および範囲は、専用に開発された配向図を作成することによって理解できる。これらの図面を利用することにより、所望数のプロセス段階後の種々の材料の光学的配向状態を示すことができる。配向図は次のように作成する。最初に、材料の面内の屈折率を描写する軸一式を引く。屈折率が必ず正であるため、図面に必要なのは第1象限だけである。第1の面内(延伸)方向の屈折をy軸で表し、第2の面内(延伸)方向の屈折率をx軸で表すことができる。この2つの軸の間に延びる45°の斜線は、実現可能な面内等方状態を表す。一般的なプロセスでは、光学フィルムに使用される材料は最初は等方性のことがあり、当該線上に複数の点で表すことができる。場合によっては、材料が最初から配向状態のこともある。そのような場合の多くは、例えば流延工程などの前段階のプロセス工程がこの配向の源となっている(図面作成は、この前工程から始めてもよい)。配向図は、材料の配向状態を表す。例えば、図2Aは、632.8nmで等方性屈折率が1.625と1.643である初期等方性を備えた2種類のポリマーを示す配向図である。(例えば、70%のPENと30%のPETサブユニットを含むポリエステルcoPEN、およびホモポリマーPEN)である。
【0027】
それだけに限らず実現可能なプロセス工程として、一方の方向にフィルムを延伸して他の面内方向を本質的に一定に保持する工程(例えば、従来のテンターによる延伸)、一方の方向に延伸して他の面内方向を寸法的に緩和させる工程(例えば、従来の縦延伸機(LO)による)、または両方の方向に同等または不等に同時延伸する工程(例えば、同時二軸テンター)などがある。種々のプロセスの変更またはこれらのプロセスの組合せ(例えば、LO/テンター、テンター/LO、二軸テンター/LO、圧縮など)を利用できる。
【0028】
任意の数の任意の工程の後、材料は、第1の延伸の方向への一軸配向(u)、第2の延伸の方向への一軸(横方向)配向(t)、面内での二軸配向(b)(面外の厚さ方向の一方向圧縮は、面内の二軸延伸を構成するので、面内)など、種々の配向状態のうちのいずれかになっていることが分かるであろう。それ以外の配向プロセスも可能である。例えば、面外一軸延伸は、面内の2軸圧縮すなわち2軸延伸の逆に見える。材料は、材料の屈折率が延伸方向に増加するように正の複屈折率(P)であってもよいし、材料の屈折率が延伸方向に減少するように負の複屈折率(N)であってもよい。図2Bに、一軸配向で複屈折率が正である材料201(uP)、横方向一軸配向で複屈折率が正である材料203(tP)、二軸配向で複屈折率が正である材料205(bP)、および複屈折率が負である類似物202、204、206(uN、tN、bN)など、いろいろな材料の種々の状態を示す。屈折率が一致する方向を、異なる延伸軸を示す別々の数字によって指定できる。図2Bにおいて、二軸延伸状態は、第1および第3象限の一般形状をとり、1軸状態(uおよびt)は、第2および第4象限の形状を有する。材料状態図の辺の長さは、等価な等方性状態からの屈折率の変化を表し、各象限図の頂点は等価な等方性状態の屈折率を表している。最初の近似化として、等価な等方性状態は、初期等方性材料の屈折率の状態である。等価な等方性状態からの厚さすなわちzの屈折率の符号変化を示すために、頂点にプラスまたはマイナスの符号(+/−)を使用してもよい。また、図2Cに記載されているように、3次元の配向図を使用してZ軸方向の屈折率をはっきりと示してもよい。最後に、一軸延伸と二軸延伸の間の移行では、1つの辺に対して原延伸方向に図を縮小して、第2の辺を頂点に対して短くしてもよい。
【0029】
配向図を利用することにより、種々のプロセスの選択の結果として生じる光学フィルムを図式化することができる。適切な材料を利用して、2種類の配向状態の任意の組合せを組合せることによって最終物品を製造できる。以下に種々の例を記載して、種々の配向状態の組合せを説明する。しかしながら、本発明は記載実施例に限定されるものではない。図2Dの配向図は、図2Aに記載の等方性状態を備えた材料を一軸延伸した場合を示すものであり、偏光子を作製するために選択された延伸条件および材料により、結果としてuP−uP−2という配向図を得た。図2Eは、一軸延伸の場合に正および負の複屈折を有する材料対(例えば、PENとシンジオクタクチックポリスチレン)を一軸延伸した場合を示すものであり、結果としてuP−uN−2という配向図を得た。前述のケースでは、配向図で、最も高い等価等方性状態を備える材料に関する表示が最初に行われ、それより低い等価等方性状態を備える材料に関する表示が次に行われ、方向の一致(ここでは、第2の非延伸面内軸)に関する表示が最後に行われている。その他の一致状態の表示として、第1の面内延伸方向において一致している場合の”1”、面内方向で一致していない場合の”0”などがある。面外の第1および第2の材料のzの屈折率の条件(一致または相違)を示すために、第2の一致状態識別子”+”、”−”、または”0”を追加してもよい。(図2Dおよび2Eの)両ケースにおいて、結果は、x軸方向に沿った透過(通過)軸とy軸方向に沿った反射(遮断)軸とを備えた偏光子である。
【0030】
配向図で示すと、プロセスの定性効果の違いを見分けることができる。正の複屈折の材料を延伸すると、配向図の絶対長は延伸方向に増加する。延伸中に他の材料の配向プロセス(例えば、結晶化などの相転移)が行われていなければ、一軸延伸により、非延伸方向およびz軸方向の配向図の絶対長は、そのまま維持されるか、減少させられる傾向がある。二軸延伸は、両方の面内軸方向を増加させる傾向があるので、zの屈折率は、透過等方性状態が一定である(例えば、結晶化による高密度化が無い)限り、減少傾向を示す。負の複屈折材料の場合は、逆の変化を生じる。例えば、図2Fは、等方性屈折率が211である正の複屈折材料が、二段階の二軸延伸プロセスに対してどのように応答するかを示したものである。最初に、材料をy軸方向に延伸する。最初の延伸後、材料は、面内屈折率が213および215の一軸配向状態を呈する。x軸方向に残量を延伸すると、第1の軸に沿った屈折率は217まで減少し、材料のx軸に沿った屈折率は219まで増加する。適切な延伸条件と組み合わせてそのようなプロセスを使用することにより、x軸およびy軸のそれぞれに沿った屈折率の正味変化が実質的に同じになるように材料を延伸することが可能である。一般に、他の配向プロセスまたは高密度化プロセスが行われなければ、z屈折率は、それぞれの延伸プロセスのあいだ減少し続ける。
【0031】
複数の材料に対する複数の延伸プロセスの効果を、図2G〜2Iを参照しながら詳しく説明する。図2Gに、2種類の正の複屈折材料の最初の一軸延伸の後の配向図を示す。結果は、第1の材料が強く配向され、第2の材料が弱く配向されたuP−uP−0の図である。図2Hに、第2の方向への延伸中の、uP−tP−2の配向状態図への推移を示す。後者のケースは、所望の最終物品(例えば、最後の延伸方向に沿って、その透過方向を備えている偏光子)であってもよい。最後に、図2Iに、最終的なbP−tP−2の配向状態への推移を示す。繰り返すが、これにより最後の延伸方向(x軸)に沿った透過方向を備えた偏光子がもたらされる。この時点で、第1の材料は強く二軸配向され、第2の材料は強く一軸配向されている。
【0032】
延伸プロセスは、第1の近似状態への材料の配向変化を形成するものであるが、高密度化などの第2のプロセスまたは結晶化などの相転移が配向特性に影響を及ぼす可能性もある。極端な材料相互作用(例えば、自己集合や液晶転移)の場合は、これらの影響が優先されることがある。代表的なケースでは、例えば、ポリマー分子の主鎖が流れと整列する傾向(歪み誘起結晶化などの作用)がある延伸ポリマーでは、配向の特性に対して副次効果のみを与える傾向がある。しかしながら、歪み誘起結晶化などの結晶化は、そのような配向の強度に著しい影響(例えば、弱い配向延伸を強い配向延伸に変えることもある)を有する。
【0033】
一般に、高密度化は、結晶化を伴うと、材料の平均すなわち等価等方性屈折率を増加させる傾向がある。これらの影響は一般には小さいが、加工の進行に伴って配向変化の性質を不明瞭にする可能性がある。例えば、ポリエステルなどの一軸配向の材料は、熱硬化によって結晶性を増すことがある。これにより、面内屈折率の増加のほうが、z屈折率の減少よりも多くなることがある。結果として得られた屈折率は、非晶質の等方性屈折率と比較すると、二軸配向への転化を示唆しているように見えるが、実際の変化は、最終的な半晶質材料の等価等方性状態への変移である。これは、図2Jにおいて、等方線に沿った第1の位置221から第2の位置222までの材料図の移動として示されている。最終材料の等価等方性屈折率は、最終指数を利用して種々の方法で評価することができる。例えば、単純平均を使用してもよい。あるいは、等方性の局所場を仮定して分極率の維持を求める、ローレンツ−ローレンス(クラウジウス−モソッティ)の式の異方性バージョンを使用してもよい。
【0034】
プロセスによって誘発される結晶化などの相転移が、別の配向効果をもたらすこともある。例えば、PENおよびPETを含む多数のポリエステルの非延伸方向の屈折率は、厚さ方向よりも面内方向のディメンションを優先的に維持する一軸延伸のあいだ、単調変化しない。(結晶の成長率と、芳香環の平面化を結果的に生じる流動下の異方性結晶の回転について十分に幾何学的に考慮する必要があるだろうが)結晶の配列が起こっていると思われる。これにより、z屈折率を犠牲にして非延伸面内屈折率が増加する。したがって、この結晶配列プロセスにより、一軸延伸中に不等な二軸光学的配向を生じる低レベルの横配向を提供できる。結晶の成長を促進させるその後のプロセス工程が、既存の結晶配列による配向プロセスとなることもある。
【0035】
図1Bに、本発明の実施形態によって作製された多層光学フィルム111を示す。図1Bのフィルム111は、複屈折材料115の第2の層と共に共押出しされた複屈折材料113の第1の層を含んでいる。図1Bに記載されているのは2層のみであり、本願明細書では一般的な説明しかしないが、当該プロセスは、任意の他種類の材料から作られた数百層または数千層の多層光学フィルムに応用することもできる。多層光学フィルムに関する概説は、上に引用した、本願と同一の譲受人に譲渡された米国特許出願第08/402,041号、同第09/006,591号、および同第09/006,085号に記載されている。
【0036】
材料は、粘弾性を備えることによって、フィルム111内の2種類の材料113および115の延伸挙動を少なくとも部分的に減結合するように選択してもよい。延伸挙動を減結合することによって材料の屈折率の変化を別々に制御して、2種類の材料の配向状態を種々に組合せることもできる。そのようなプロセスの1つでは、2種類の材料は、共押出多層フィルムの隣接する層を構成している。流延プロセス中に幾らかの配向が共押出フィルムに故意にまたは偶然に取り入れられることがあるものの、共押出層の屈折率は一般に初期等方性を有している(すなわち、屈折率が各軸に沿って同一である)。一例示実施形態において、フィルムは、2種類のうちの材料の一方に光学的配向を与え、他方に光学的配向を与えないまたは配向を与えない条件下で、第1の方向に(例えば、y軸に沿って)延伸してもよい。この方法では、一方の材料が第1の延伸の方向(例えば、y軸方向)に分子配向するが、他方の材料は実質的に等方性を呈する。次に、両方の材料に光学的配向を与えるように選択された条件下で、第2の方向(例えば、x軸に沿った方向)に第2の延伸プロセスを実施してもよい。この例では、一方の材料が第2の延伸の方向(例えばx軸)にのみ実質的な一軸配向を有し、他方の材料が両方向(例えばxおよびy軸)に実質的な二軸配向を有する。
【0037】
前述のプロセスでは、材料の屈折率を制御する融通性が高められている。材料が延伸されると、z軸方向の材料の屈折率が影響を受ける場合がある。ポリマー材料を一方向に延伸すると、延伸されたポリマーの近似非圧縮性(体積保存)により、材料が、残りの2つの直交方向の一方または両方に寸法収縮することがある。延伸条件が一方向の寸法を強要している場合、第3の方向に更に寸法収縮が生じる。例えば従来のテンターを使用して、例えばポリマーフィルムを第1の方向に延伸した場合、製造プロセスは、基本的に、固定された非延伸面内寸法を維持する。これにより、ほとんどすべての寸法収縮が厚さ方向に発生して、z軸の屈折率が変化する。例えば縦延伸機(例えば、種々の速度のローラから成る)を利用して第1の方向にポリマーフィルムを延伸する場合、製造プロセスは基本的に、固定された非延伸面内寸法を維持する、すなわち、この方向に収縮すなわちネックダウンを生じさせる。前述のプロセスを利用すると、材料の相対的z軸屈折率を調整することもできる。以下の説明では、z軸屈折率の調整によって得られる利点を述べる。
【0038】
反射偏光子を形成する方法の1つは、第1の複屈折材料と、延伸プロセス中に不変であり続ける等方性屈折率を有する第2の非複屈折材料とを使用する。第2の材料は、第1の材料の非延伸面内屈折率と一致する等方性屈折率を有するように選択される。そのようなプロセスでは、配向材料の厚さ方向の屈折率が変化した結果として、z軸に沿った2種類の材料の屈折率に不一致が生じることがある。多層フィルムにおけるz軸の重要性は、上に引用した米国特許出願第08/402,041号に記載されている。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、材料および加工条件を選択する際に、厚さ方向(z軸)の屈折率の変化を考慮に入れる。材料の種々の特性を利用することによって、2種類の材料のz軸に沿った屈折率の不一致を、希望通りに低減させたり解消させることができる。また、フィルム延伸時の2種類の材料の応答を減結合することにより、相対的z軸屈折率および面内屈折率を所望レベルに調整することが可能となる。
【0040】
光学的性質の向上に加え、形成されたフィルムの機械的性質の向上のために、光学的配向を与える延伸プロセスと光学的配向を与えない(または配向を与えない)延伸プロセスとを組み合わせを利用することもできる。少なくとも1つの材料が二軸分子配向を呈するとき、一方向にしか延伸されなかったフィルムと比較して、引裂開始抵抗が向上される。このように、本発明の特定の一実施例によれば、光学的偏光フィルムに少なくとも1つの二軸配向材料を与えることによって、フィルムの機械的性質が向上する。このようにして改良される機械的性質として、例えば、偏光子フィルムの巻付き性および加工性の向上などがある。二軸配向材料の存在により、引裂開始抵抗および引裂抵抗を含むフィルムの靱性も改良される傾向にある。
【0041】
少なくともいくつかの材料の二軸配向すなわち交差した一軸配向により、収縮ならびに熱膨張および吸湿膨張を含む寸法安定性も向上できる。寸法安定性は、例えば液晶表示装置などの最終用途で重要であることが多い。面内膨張に関する制約により、例えば、表示装置の有用性を低減または喪失させる面外の反りまたは湾曲を招く可能性がある。本発明の一実施形態による二軸配向の偏光子は、この問題を著しく減少する、または解消するものである。また、種々の機械的性質の指向特性が変わることがあることにも注意すべきである。例えば、最大引裂抵抗または最大熱膨張の方向は、最終延伸方向と一致していてもよいし、直角をなしていてもよい。場合によっては、材料の種類および加工は、光学材料の配向を制御することによって、ならびに、例えば、スキン層(および、多層フィルムの内部保護境界層)の組成物および相対的厚さを制御することによって、これらの方向および大きさに合わせて選択してもよい。
【0042】
フィルムの非光学材料(例えば、保護境界層、スキン層、促進層等)に二軸性特性を与えることによって、光学フィルムに改良された機械的性質を与えることもできる。例えば、交互層に第1の複屈折材料と第2の複屈折等方性材料とを含んでいる多層構造を作製してもよい。このフィルムは、1つ以上の配向可能な保護境界層またはスキン層を含んでいてもよい。そのようなフィルムは、光学層の第1の材料に光学的配向を誘発せずに非光学材料を第1の延伸の方向に配向させる条件下で、第1の方向について加工してもよい。その後、光学層の複屈折材料と非光学材料とを配向させる条件下で、このフィルムを、第2の方向について加工してもよい。結果として得られるフィルムは、フィルムの光学部を形成する、一軸方向に光学的配向された複屈折材料と等方性材料から成る隣接層と、少なくとも1つの二軸配向の非光学層(例えば、保護境界層またはスキン層)とを有している。
【0043】
二軸配向を誘発させた非光学材料を、ブレンド光学フィルムに使用してもよい。例えば、ブレンドの少なくとも光学材料を本質的に一軸配向させる条件下で、1つ以上の促進層(以下に詳述)を、二軸延伸プロセスを利用して二軸配向させてもよい。そのような組立法の1つで、5層フィルムを作ることができる。このフィルムは、A層が非光学促進層でB層が光学的ブレンド層であるときに、ABABAの形態のものであってもよい。そのようなフィルムでは、それぞれの促進層は、同じ構造のものであってもよいし、異なる構造のものであってもよい。同様に、種々の光学的ブレンド層は、同じ構造のものであってもよいし、異なる構造のものであってもよい。そのようなフィルムは、1つ以上の促進層を二軸配向し且つブレンド層の少なくとも1つの材料を一軸配向する条件下で加工してもよい。種々の材料および層を利用して、強いおよび弱い二軸配向および一軸配向の種々の組合せを得ることができる。
【0044】
前述の例で示したように、本発明の一側面によれば、少なくとも2種類の異なる複屈折材料を利用して、そのうちの1種類をフィルムの非光学部に組み込んだ光学フィルムを作ることができる。2種類の材料を共押出しによって光学フィルムに形成し、その後、所望の光学性能が得られるように加工することができる。そのような共押出しフィルムは、フィルムの非光学部の複屈折材料が二軸配向され、フィルムの光学部の複屈折材料が一軸配向されるように加工できる。そのようなフィルムでは、フィルムの光学性能に著しい影響を及ぼさずに、改良された機械的性質を得ることができる。
【0045】
フィルムを二軸延伸することにより、材料の選択の幅も広くなる。従来の一軸延伸偏光子では、一方の材料は、他方の(歪み誘起複屈折)材料の非延伸方向と一致する等方性屈折率を有するように選択されていた。等方性材料として使用できる材料の数を制限する例の中には、延伸された複屈折材料の屈折率が非常に高いことがある。しかし、フィルムが二軸延伸されるので、2種類の歪み誘起複屈折材料を使用してもよい。例えば、延伸されたときに、他の材料の非配向(非光学的配向)の面内屈折率と一致する面内屈折率を有する場合、より低い等方性屈折率を備えたフィルムを利用することができる。言い換えると、(例えば、第2の複屈折材料の厚さ方向の屈折率を、二軸延伸プロセスの結果として減少させることによって)一方の材料の面内屈折率を、他方の材料の非配向の面内屈折率と一致するように上げることができる。更に別の実施形態において、延伸後の面内屈折率が、他方の材料の最高屈折率と一致している第2の材料を使用できる。種々の実施例では、正の複屈折材料について屈折率の説明を行っているが、本願明細書全体に記載されている概念は、負の複屈折材料材料(または、正および負の複屈折材料の組合せ)にも適用可能であることを理解すべきである。
【0046】
以下に記載の特定実施例から分かるように、二軸延伸されるフィルムに使用される特定の材料は、フィルムの熱硬化が可能であるように選択してもよい。前述フィルムの改良された機械的性質ならびにフィルムの熱硬性により、フィルムはコーティングなどの後処理操作および種々の最終用途の機能に特に適したものとなる。フィルムの熱硬化は、多くのそのようなフィルムの光学的性質を向上することもある。
【0047】
フィルムの二軸延伸は、材料の選択の自由を広げるのみならず、最終物品の配置を制御する融通性も向上する。典型的な一段延伸工程では、第2の等方性材料の屈折率を、第1の複屈折材料の、より低い屈折率と一致させる。第1の正の複屈折材料(すなわち、延伸により面内延伸方向に沿って屈折率が増加する材料)の場合、延伸結果と垂直な、より低い第2の面内屈折率と一致させることによって、単一延伸方向に最大屈折率差すなわち最大反射(遮断状態)を呈する偏光軸(polarization axis)を備えた偏光子がもたらされる。第2の等方性材料の屈折率を、第1の複屈折材料の、より高い屈折率と一致させる一段延伸工程を利用することも可能である。これは、例えば、第1の複屈折ポリマーとしてポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルを使用し、第2の等方性ポリマーとして、632.8nmで屈折率が約1.68であるポリビニルナフタレンまたはポリビニルカルバゾールを用いることによって実施できる。そのようなフィルムでは、単一延伸と垂直な方向に最大屈折率差、したがって最大反射(遮断状態)を呈する偏光軸を有する偏光子を作製できる。本発明の前述側面により一段延伸工程を利用することができるが、そのような偏光子を作るために利用できる材料の数は制限される(例えば、光学フィルムに適しているのは、所要の高屈折率を備えた僅かな等方性材料だけである)。
【0048】
第1の負の複屈折材料(例えば、面内延伸方向に沿って屈折率が減少する材料)を使用した別の一段延伸の場合、材料選択の観点からは、より高い第2の面内屈折率と等方性材料とを一致させることの方が簡単である。例えば、シンジオクタクチックポリスチレンと、ナフタレート、テレグラレート、イソフタレートのサブユニットを含むコポリエステルとを利用して、第2の等方性ポリマーとして632.8nmで1.57〜1.64の等方性屈折率を達成することができる。これにより、延伸方向に垂直な透過軸を備えた偏光子が作製される。延伸方向に沿った透過軸を備えた偏光子を作るためには、負の複屈折の延伸ポリマーの低屈折率と一致するように種々のポリマーを選択しなくてはならない。等方性ポリマーが利用できる。あるいは、延伸方向の屈折率を一致させることによって、等方性屈折率が低い正の複屈折材料と組み合わせて等方性屈折率が高い負の複屈折材料を利用することもできる(例えば、種々のポリアクリレートまたはポリオレフィンと組み合わせてシンジオクタクチックポリスチレンを使用することによる)。最後に、前述の方法は適切な負の複屈折材料を必要とする。
【0049】
本発明の別の側面によれば、加工条件を制御して反射および透過軸を変更させる多層延伸プロセスを利用できる。一実施形態によれば、種々の2軸方向二段階延伸プロセスで同一材料(例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレートなど)を使用して、一方が第2の延伸と共直線の反射軸を有し、他方が第1の延伸と共直線の反射軸を有する種々の多層光学フィルムを形成することができる。以下に記載の実施例で更に詳しく説明される通り、両材料とも歪み誘起複屈折材料にすることができ、二軸配向の第2の材料の面内屈折率は、両方とも、一軸光学的配向の材料の高い面内屈折率と一致させるように上げることができる。この方法により、材料の選択の幅が広がり、反射および透過軸に対する制御が向上する。
【0050】
光学偏光子の反射および透過軸の配向を制御することにより、数多くの利点が提供される。本願明細書に記載されているタイプの反射偏光子301と吸収偏光子303とを図3に記載されているように組み合わせることが望ましいことが多い。そのような組合せにより、良好な総合偏光効率が得られる。本発明の反射偏光子と従来の吸収偏光子とを組み合わせることに伴う利点の1つは、フィルムロール方向を基準とする反射偏光子の反射軸と、吸収偏光子の消光軸とを意図的に一致させることができることである。本発明の一実施例において、一般的な吸収偏光子のものと一致するフィルム巻上げ方向を基準とする反射軸305を有する反射偏光子を作ることができる。個々の反射および消光軸305を、反射偏光子および吸収偏光子のフィルム巻き上げ方向(およびそれぞれの透過軸306)に対して一致させることにより、後加工およびラミネーションが容易になる。例えば、ウェブ横方向(TD)ではなくウェブ縦方向(MD)の反射軸(例えば、二色性偏光子を作るためにヨウ素による着色とホウ酸による定着が行われる一般的なポリビニルアルコール(PVA)の縦延伸フィルムからもたらされる)を備えた反射偏光子のロール間ラミネーションによって2枚のフィルムをラミネートして、ウェブ縦方向(MD)の消光軸を備えた一般的な二色性偏光子を得ることができる。
【0051】
反射偏光子の透過および反射(遮断)方向を制御する能力により、反射偏光子と吸収偏光子とを同時に配向させることもできる。一実施形態において、(例えば、PVAコーティングおよび吸収性染料を使用した)配向可能な吸収偏光子を、第1および第2の配向プロセスのあいだにフィルムに加えてもよい。吸収偏光子は、第2の配向プロセスによって配向させる。そのようなプロセスを利用するとき、ある例では、吸収偏光子の遮断軸と反射偏光子の透過軸とを整列させることがある。本発明では、反射(遮断)軸および透過軸を制御することによって、吸収偏光子と反射偏光子を有効に整列させることができる。
【0052】
はじめに例えば第1の軸に沿ってフィルムを配向させるためにLO延伸プロセスを使用してもよい。その後、フィルムを適切なコーティングで被覆して、次いでテンターで配向させてもよい。テンターによる配向は、吸収偏光子と反射偏光子との両方を、第2の延伸プロセスの軸に沿って延伸するのに役立つ。そのようなプロセスで使用するのに特に適したコーティングプロセスおよび材料は、本願と当時に提出された、「二色性偏光子と多層光学フィルムを備えた光学装置(Optical Device with a Dichroic Polarizer and a Multilayer Optical Film)」と題された代理人番号第53588USA7A号および「二色性偏光フィルムおよびそのフィルムを含む光学偏光子(Dichroic Polarizing Film and Optical Polarizer Containing the Film)」と題された代理人番号第53546USA5A号の米国特許出願明細書に記載されている。
【0053】
更に別の実施形態において、フィルムの1層以上は、1種類以上の染料、ダイクロイック染料、顔料、または1つ以上の偏光を優先的に吸収する他のそのような添加剤を含んでいてもよい。そのようなフィルムは、吸収偏光子と反射偏光子を組み合わせた性能を獲得する。多層フィルムでは、添加剤だけで独立した層を形成してもよいし、少なくともいくつかの層の第1および第2の材料の一方に混合してもよい。添加剤を光学層に混合するときに、ある例では、いずれかの延伸プロセス(例えば、第1の延伸)のときに光学的に配向されない(非配向の)材料に添加剤を混合することが望ましい場合がある。
【0054】
また、添加剤とブレンドフィルムとを組み合わせることが好ましい場合もある。ブレンドフィルムと吸収添加剤を組み込んだ個々の層とを組み合わせることにより、吸収および反射偏光フィルムを得ることもできる。添加剤は、更に、または、あるいは、ブレンドフィルムの2つの層の一方に混合することもできる。例えば、添加剤は、ブレンドフィルムの分散層に組み込んでもよい。ブレンドフィルムは、ブレンド構成の複数の別個の層から構成してもよい。少なくとも1つの層に吸収添加剤を混合し、少なくとも1つの他の相には添加剤を加えずにおいてもよい。出来上がったフィルムは、吸収偏光特性と反射偏光特性の両方を呈する。
【0055】
前述のように、本発明は、ブレンド光学フィルムに適用できる。一般のブレンドフィルムでは、少なくとも2種類の材料から成るブレンドを使用する。特定の軸に沿った複数の材料の屈折率の不一致を利用して、その軸に沿って偏光される入射光を実質的に散乱させ、最終的に大量の反射を生じさせることができる。複数の材料の屈折率と一致させ、軸方向に偏光された入射光はるかに小さい散乱度で透過される。材料の相対的な屈折率を制御することによって、反射偏光子、反射鏡等を含む種々の光学装置を作製できる。ブレンドフィルムは、多数の種々形態が考えるられる。例えば、ブレンドは、連続相内の分散相から形成してもよいし、共連続相(co−continuous phase)から形成してもよい。以下に具体的な例を記載するが、本発明は、種々のタイプのブレンドフィルムに適用できる。種々のブレンドフィルムの一般的な構成および光学的性質は、本願と同様に本願出願人に譲渡された、96年2月29日提出の「第1の複屈折相と第2の相を含んでいる乱反射偏光子偏光素子(Diffusely Reflecting Polarizing Element Including a First Birefringent Phase and a Second Phase)」と題された米国特許出願第08/610,092号、および、97年2月18日提出の「共連続相を備えた光学フィルム(Optical Film with Co−Continuous Phases)」と題された米国特許出願第08/801,329号に詳しく記載されている。
【0056】
図4に、2種類の材料がブレンドに形成されている本発明の実施形態を示す。図4において、光学フィルム401は、第1の材料403の連続(マトリックス)相と、第2の材料405の分散(非連続)相とから形成されている。フィルムの光学的性質を利用して、ブレンド偏光フィルムを形成してもよい。そのようなフィルムでは、連続相および分散相の材料の屈折率は、一方の面内軸に沿って実質的に一致しているが、他方の面内軸に沿って実質的に不一致となっている。
【0057】
次に、本発明の一実施例による、図4記載のタイプの改良された光学フィルムを形成するプロセスを説明する。一般に、材料の一方または両方は、複屈折を持っている。どの材料を選択するかは、光学フィルムの所望の光学的性質によって決まる。図4記載の例の実施形態では、光学偏光子が作製されている。光学ブレンド偏光子の場合、フィルムの一方の面内軸の方向にできる限り近く材料の屈折率を一致させるとともに、他方の面内軸の方向に、できるだけ大きい屈折率不一致を有することが望ましい。
【0058】
所望の結果を達成するためには、少なくとも一方の材料の延伸の方向に光学的配向を誘発しない条件下で、第1の方向にフィルムを延伸する。次に、少なくとも一方の材料に光学的配向を誘発しない条件下で材料を第2の方向に延伸する。一実施例では、同じ材料に、非光学的配向と光学的配向とを起こさせる(例えば、連続相に両方の配向を起こさせる)。別の実施例では、少なくとも第1の延伸の影響を受けない材料に、第2の延伸の光学的配向を起こさせる(例えば、第1の延伸は分散相に影響を及ぼさないが、第2の延伸は分散相に配向を与える)。以下に更に詳しく説明する通り、そのようなプロセスを利用して、光学フィルムの機械的性質と光学的性質と向上させることができる。
【0059】
一実施形態によれば、フィルム401を最初に一方の面内軸方向に延伸する。ブレンドフィルム401に使用されている材料の、前述の粘弾性特性に基づいて、第1の延伸の延伸条件は、延伸によって分散相材料405に光学的配向を与えない(例えば、あるとしても最初の延伸によって第1の材料に誘発される配向が、第1の材料に著しい複屈折を生じさせない程度に小さい状態となる)ように選択してもよい。例えば、ある例では、第1の延伸によって誘発される第1の材料の複屈折率が、第2の延伸によって第1の材料に誘発された複屈折率の約半分未満であることが望ましい場合がある。別の例では、第1の材料の複屈折率が、第2の延伸で誘発される複屈折率の約4分の1未満であることが必要または望ましい場合がある。ある応用例では、第1の材料には、第1の延伸の方向に複屈折率が本質的に誘発されない(例えば、光学的に配向されない、または配向されない)。
【0060】
第1の延伸の延伸条件は、連続相材料403に光学的配向を与えない、または僅かな光学的配向を与えるようにも選択される。以下に更に詳しく説明するように、連続相材料の第1の方向に誘発された配向は、この第1の延伸と垂直をなす第2の延伸によって誘発される別の分子配向と組合わさって、連続相材料403に二軸性特性を有するフィルムを形成する。フィルム401の二軸性質により、フィルムの機械的性質が改良される(例えば、引裂開始抵抗および破損抵抗の向上)。
【0061】
第1の延伸によって誘発される連続相材料403の分子配向は、フィルムの総合的な光学性能に著しい影響を及ぼさずに機械的性質を向上できる程度に大きいことが望ましい。種々の粘弾性(例えば、最長平均緩和時間)を有する材料を使用することにより、第1の延伸工程は、フィルムの光学性能に著しい影響を与えずに(例えば、二軸方向の引裂抵抗を生じることによって)機械的性質を向上するように実施できる。例えば、分散相の材料が複屈折を持っている場合、第1の延伸は、第1の延伸の方向に分散相材料405に著しい複屈折をもたらさずに、連続相材料を第1の延伸の方向に僅かに配向させることによってフィルムの機械的性質を改良するように制御することが可能である。
【0062】
改良された機械的性質に加え、前述の第1の延伸に関する延伸条件を利用することにより、フィルムの光学的特性も向上する。図4に記載されているもののようなブレンドフィルムでは、分散相材料405は形状を有している(例えば、棒状構造物407)。しかしながら、分散相材料405では種々の異なる構造も適切であることを理解されたい。形状にかかわらず、分散相材料405は、厚さ(z軸)方向に比較的に薄いことが一般に望ましい。範囲内で、分散相材料405の厚さを厚さ方向に減少させると、フィルムの光学性能が向上する。例えば、第1の延伸を、図4記載の棒状構造物407の長さ方向に実施すると、棒状構造407の厚さが減少する。これは、縦延伸機(LO)と利用してブレンド材料を縦方向に配向させることによって実施できる。温度、延伸比、および延伸速度は、分散相材料の分子を光学的に配向させることなく、連続相材料に所望の分子配向を与えるように選択される。しかしながら、分散相材料の形状は変化させられる。分散相材料に対して実質的な分子配向を誘発しないといった延伸条件であるので、z軸に沿って分散相の厚さを減少させることによってフィルムの総合的光学性能が向上し、同時に、フィルムの機械的性質が向上する。ある場合には、第1の延伸プロセスで連続相に僅かな光学的配向を与え、この配向に起因するフィルムの光学性能の劣化を、分散相材料の造形によってもたらされる光学性能の向上によって部分的にまたは完全に補償することがある。
【0063】
第1の延伸後、第2の直交面内見区に沿って第2の延伸が実行される。第2の延伸の延伸条件は、少なくとも連続相材料403に、第2の延伸の方向に光学的配向を生じるように選択される。ある例では、同じように分散相材料405にも光学的配向を起こさせることが望ましい(例えば、逆の複屈折材料が使用されている場合)。前述のように、第2の延伸により、連続相材料403に二軸性特性が生じる。分散相材料405の光学的配向により、第2の延伸の軸に沿って分散相材料405に複屈折が生じる。
【0064】
第1の延伸によって生じた連続相材料403の分子配向は、連続相材料に対しては第1の方向に弱い複屈折だけを与える程度に小さく、所望の機械的性質を与える程度に大きいものであってもよい。第2の延伸条件は、第2の延伸の方向に連続相材料403に著しい複屈折を生じるように選択される場合もある。前述のように、このプロセスを使用して、改良された光学的性質および機械的性質を有する光学偏光子を作製してもよい。
【0065】
2種類の材料の光学的効果を向上させながら、ブレンドフィルムを二軸延伸することにより、前述の実施例に加え、他の多数の有益な効果を得ることができる。一実施形態において、平均緩和時間が第1の延伸の時間よりも短い連続相としての第1の正の複屈折材料と、平均緩和時間が第1の延伸の時間と同等または僅かに長い分散相としての第2の正の複屈折材料とを使用してもよい。そのようなフィルムを適切な延伸条件下で第1の方向に延伸すると、実質的な光学的配向が分散相を生じ、極めて僅かな配向または無配向が、緩和により連続相を生じる。フィルムは、連続相よりも分散相の硬度が増加したために延伸によって影響を受けないように、分散相の平均緩和時間が第2の延伸の時間よりも著しく長くなる条件下(例えば、クーラーの温度)で第2の方向に延伸してもよい。そのため配向は、分散相の第1の延伸方向のみ保持される。第2の延伸プロセスの条件は、連続相に配向が誘発され、その結果として第2の延伸の方向に連続相の有効配向が生じるように選択される場合もある。第2の延伸の方向に分散相および連続相の屈折率を一致させ、第1の延伸の方向に不一致を生じさせるように材料および加工条件を選択することによって、連続相にいくらかの二軸性特性を備えた偏光子が得られる。そのようなプロセスは、前述のように十分に異なる粘弾性特性を有する一対の負の複屈折材料に対しても利用できる。
【0066】
別の実施例では、前述の実施例と同様に、分散相を硬化させる別のプロセスを利用することがある。そのような実施形態では、分散相は、分散相の配向特性を維持するために、第1の延伸後に(例えば、温度または放射線などによって)硬化させられる。そのような実施形態では、分散相が硬化されていて、その配向が実質的に維持されるので、分散相を配向させることなく連続相に所望の配向を起こさせるために、更に自由に第2の延伸の加工条件(例えば、温度)を選択できる。
【0067】
更に別の実施形態では、延伸によって分散相が影響を受けず、したがって等方性配向が保持される加工条件下で、第1の方向にフィルムを延伸することができる。連続相の第1の方向に配向を起こさせてもよい。フィルムは、分散相に実質的な配向を生じ、ごく僅かな配向を連続相に誘発する加工条件下で、第2の方向に延伸してもよい。このように、連続相は、その第1の延伸の方向の最初の配向を保持する。
【0068】
更に別の実施形態では、正の複屈折材料が連続相に使用され(例えば、PEN、coPEN等)、負の複屈折材料が分散相に使用されている(例えば、シンジオタクチックポリスチレン(sPS))。フィルムは、配向が殆ど無いか全く無い場合に分散相を生じ、ごく僅かな配向がある場合に連続相を生じる加工条件下で、第1の方向に延伸される。次に、フィルムは、分散相を配向させる加工条件下で、第2の方向に延伸される。加工条件は、連続相に配向が誘発され、その結果として第2の延伸の方向に両方の相の有効配向を生じるように選択される場合もある。2種類の材料の複屈折の符号が逆であることにより、分散相と連続相の第1の延伸の方向の屈折率を一致させ、第2の延伸の方向に不一致にすることができる。このように、いくつかの二軸性特性(例えば、改良された連続相の物理的性質)を有し且つ良好な光学性能を有するブレンド偏光子を作ることができる。
【0069】
本発明の種々の実施形態では、少なくとも1つの材料に、実質的な何らかの光学的配向を誘発しない条件下でフィルムを延伸する1つの延伸プロセスが利用されている。本発明は、特定の実施形態に限定されない。例えば、ある例では、少なくとも1つの特定の材料が、少なくとも1つの延伸の方向に光学的配向を殆どまたは全く有しないことが好ましい場合がある。一実施形態において、いくつかの光学的配向は、材料を延伸することによって最初に誘発させることができる。この場合、配向をもたらさない延伸プロセスは、光学的配向を緩和させる後続の加熱工程を更に含むものであってもよい。この場合、フィルムの2種類の材料は、他の材料の所望の分子配向を著しく損なわない温度までフィルムを加熱することによって光学的配向を選択的に緩和させるに足る十分に異なる特性(例えば、ガラス転移温度、結晶性のレベル等)を有していなくてはならない。加熱工程に用いられる温度ならびにフィルムに使用される材料は、材料の粘弾性特性と材料の応答を減結合する能力とを考慮して選択される。別の実施形態において、後続の加熱工程により、少なくとも1つの材料(例えば、ブレンドの一方の相)の結晶性を変化させて、その材料の複屈折率を上げ、また、光学性能を向上してもよい。
【0070】
分かるだろうが、後続の加熱工程は、1種類の材料の、配向を与えない(すなわち、光学的配向を与えない)延伸プロセスの一部であってもよい。このように、第1の延伸プロセスにより、第1の延伸の軸に沿った光学的配向を持たない第1の材料を有するフィルムが作製される。後続の加熱工程を含む第1の延伸プロセスは、第2の材料の光学的配向延伸プロセス(例えば、このプロセスは、第1の延伸の軸に沿って、第2の材料に光学的配向を与えてもよい)であってもよい。第2の延伸プロセスでは、フィルムは第2の方向に延伸される。第2の延伸プロセスは、第1および第2の材料の一方または両方を光学的に配向させてもよい。この方法では、一方が特定の材料を配向させず、他方が特定の材料を光学的に配向させる、2種類の延伸プロセスが使用される。そのようなプロセスは、所望の光学的および/または機械的性質を有するフィルムを作るために利用してもよい。
【0071】
前述のように、いくつかの実施形態では、非光学的配向の延伸工程のあいだ、第1の材料の分子配向度が低レベルであることが望ましい。この低レベルは、屈折率を目立って変更してはならない。すなわち、正規化差は0.04未満、好ましくは0.02未満でなくてはならない。ある実施形態では、このように配向度が低レベルであることにより、第2の延伸工程中に第1の材料の粘弾性応答を変化させる結晶の核形成が高められる。次に、時として初期分子配向が無ければ光学的配向を与えない条件下で、第2の工程中の予熱により結晶を成長させ、第2の延伸工程が第1の材料の光学的配向をできるようにする緩和を阻止してもよい。第1の延伸工程後のフィルムの厚さ方向にわたるそのような核形成配向の均一性が、第2の延伸の第1の材料応答の均質性に影響をおよぼす傾向がある。均一性は、第1の延伸、加熱、伸張、急冷プロセス中に、フィルムを均質に加熱および急冷したり、フィルムの粘弾性応答のバランスと取ることによって制御できる。
【0072】
前述実施例に記載の種々の延伸プロセスについて順序が含まれているが、この順序は、原理の説明を容易にするために用いられているものであり、限定しようとするものではない。ある例では、後から実施されるプロセスが前に実施されるプロセスに悪影響をおよぼさない限り、プロセスの順序を変更して、同時に実施することができる。例えば、2種類の材料を同時に両方向に延伸してもよい。再び図1を参照すると、光学フィルム101は、両方の面内軸方向に同時に延伸してもよい。前述の種々実施形態でそうであったように、フィルム101は多層フィルムであってもよいし、ブレンドフィルムであってもよいし、それらの組合せであってもよい。当該フィルムは、異なる粘弾性特性を有する少なくとも2種類の材料を含んでいる。フィルムを両方の面内軸に沿って同時に延伸する場合、フィルムの材料に対する延伸温度は同じになる。しかしながら、延伸比および延伸速度は別々に制御してもよい。例えば、フィルムをx軸方向に比較的に速やかに延伸して、y軸方向に比較的にゆっくり延伸してもよい。
【0073】
同時二軸延伸の材料、延伸比および延伸速度は、第1の延伸指示に沿った延伸(例えば、高速延伸)により、第1の延伸軸に沿って一方または両方の材料に光学的配向を与えるが、他方の方向の延伸(例えば、低速延伸)により、第2の延伸方向に沿って2種類の材料の一方に配向を与えない(光学的配向を与えない)ように適切に選択してもよい。このように、各方向の延伸に対する2種類の材料の応答を別々に制御できることが理解されるであろう。そのようなプロセスを利用することによって、光学的性質(例えば、多層光学フィルムの隣接相と一致するz軸の屈折率)および/または機械的性質(例えば、引裂抵抗、防しわ性、剛直性、または、反り、熱および吸湿による膨張と収縮をそれだけに限らず含む寸法安定性)を向上させてもよい。
【0074】
本発明により光学フィルムを作製するために多種類の材料を使用してもよい。それらの材料は、一般に、所望の構造に加工するのに適したものでなくてはならない。例えば、多層フィルムを作製する場合、多層に形成可能な複数の材料を選択しなくてはならない。多層構造と共押出しする場合は、選択される材料は、共押出し可能な材料でなくてはならない。また、この材料は、延伸可能な良好な流延ウェブに形成可能でなくてはらなない。多層フィルムを作製する場合、層間の接着および後加工性も考慮しなくてはならない。延伸プロセス前の材料には、好ましくない配向があってはならない。あるいは、第1の延伸工程に対するプロセス支援として、流延工程中に故意の配向を起こさせることも可能である。例えば、流延工程を第1の延伸工程の一部と考えてもよい。別の実施例において、流延工程は、後続の延伸工程のために第2の材料の緩和特性を変更する結晶化のための各形成工程とすることもできる。多層ウェブの流延に関する一般的な加工条件は、本願明細書と同時に提出された「ポリマー多層光学フィルムの作製法(Process for Making Polymeric Multilayer Optical Films)」と題された代理人番号第51932USA8A号の米国特許出願明細書に記載されている。
【0075】
光学フィルムに使用される材料は、さらに所望の光学的性質(例えば、複屈折)を呈していなくてはならず、また、所望の結果を得るための加工条件を適正に選択できる程度に異なる粘弾性特性を有していなくてはならない。材料の選択に際し、ガラス転移温度、結晶化および架橋挙動、分子量の平均と分布、化学的組成と構造、およびその他の光学的性質(例えば、屈折率、拡散等)を考慮してもよい。
【0076】
本願明細書に記載されている特定実施例の他に、例えば、上に引用された、本願明細書と同時出願の代理人整理番号第51932USA8A号の米国特許出願明細書に記載されている材料などがある。ポリマーブレンドフィルムに適した他の材料として、例えば、上に引用された米国特許出願第08/610,092号、および、1998年1月13日に出願された、同時出願の米国特許出願第09/006,601号明細書に記載されている材料などがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0077】
以下の実施例は、本発明の種々の実施形態による典型的な材料および加工条件を含んでいる。これらの実施例は、本発明を限定するものではなく、本発明を理解しやすくするとともに、前述の種々実施形態で使用するのに特に適した材料の例を提供するものである。
【実施例】
【0078】
実施例1
実施例1は、30℃での固有粘度(IV)(例えば、60%フェノール、40%オルトジクロロベンゼンの溶媒中で測定したときのIV)が0.48のポリエチレンナフタレン(PEN)と、IVが0.6のポリエチレンテレフタレート(PET)との交互層から作製されている多層光学フィルムである。(テンターまたは同様なプロセスを利用した)一軸延伸後のPENの一般的な屈折率は、632.8nmのときに、延伸軸に沿って約1.85、非延伸軸に沿って約1.64、および厚さ方向に沿って約1.49である。二軸延伸、熱硬化状態の場合、PETの屈折率は、632.8nmのときに、第1の方向に約1.65、第2の延伸方向に約1.65、厚さ方向に約1.49である。これら2種類の交互層は、一致したz屈折率およびほぼ一致した第1延伸方向屈折率を有していなくてはならないので、前述の材料は本発明に特に適している。また、PENおよびPETは、延伸された多層構造物において良好な相間接着性を呈する。この実施例は、透過(通過)状態と第1の延伸の方向とが一致している配向状態uP−bP−1の偏光子を示すものでもある。
【0079】
次に、多層PEN:PET偏光フィルムを作製するプロセスについて説明する。PEN層とPET層とから成る多層ウェブを、適切な温度で共押出しし、チルロール上でダイカストすることによって、PENとPETとの交互層対を形成する。層厚および層数は、結果として得られる光学フィルムの所望の光学的性質による。例えば、数百層を流延して所定の厚さに地均しすることによって、所望の波長スペクトルに対応させてもよい。多層構造物を共押出しするための一般的なプロセスおよび考慮事項は、上に引用した米国特許出願明細書第08/402,041号および本願明細書と同時出願の同第09/006,288号に記載されている。
【0080】
流動安定性を与えるために、多層光学積層物とダイ壁面との間にPENの保護スキン層を使用してもよい。PENスキン層は、事前に結晶化させたPET層の分解を防止するために使用してもよい。ある例では、積層物を分割して積み重ねて倍増物にして層数を倍にすることもある。多層光学積層物と倍増物壁面との間に、PENから成る保護境界層を設けてもよい。この要領で流延されるウェブは、PENから成る中央肉厚層と、PENから成る2つの外側スキン層と、スキンと保護境界層との間のPEN:PETから成る2つの多層光学積層物と、を含んでいる。この要領で流延されるウェブは、PENから成る中央肉厚層と、PENから成る2つの外側スキン層と、スキンと保護境界層との間のPEN:PETから成る2つの多層光学積層物と、を含んでいる。
【0081】
PENおよびPETから成るウェブは、2つの倍増工程を利用して前述のように流延され、保護層によって隔てられた4つの多層光学積層物の約800層を有するフィルムを形成する。この事例のウェブでは、僅かな流動不安定が確認された。第1の延伸の前にウェブを加熱して、延伸前にPETを結晶化させた。流延されたウェブを145℃まで50秒間加熱して、室温まで急冷した。次に、ウェブを60秒間100℃まで加熱し、10秒間120℃まで加熱し、20秒間140℃まで加熱し、更に20秒間150℃まで加熱した。その後、ウェブに、約150℃で20秒以上にわたって(公称歪み速度15%/秒で)4×1の延伸を施し、室温まで急冷した。これらの条件下で、PEN層は著しい一軸配向を受けなかったが、結晶PET層は第1の延伸の方向に配向された。第1の延伸後、直接に側的できたPENスキン層の屈折率は、632.8nmの光のときに、第1の延伸、第2の延伸、および厚さ方向に、それぞれ、1.643、1.641、および1.639であった。
【0082】
次に、このフィルムを、約60秒間100℃まで加熱し、40秒間120℃まで加熱し、その後に、120℃で40秒かけて第2の方向に1×4の延伸を施した(すなわち、最終総延伸比4×4)。第2の延伸中に、材料を第2の延伸方向に実質的に配向させた。その後、PENスキン層の屈折率を測定し、632.8nmの光で、第1の延伸方向、第2の延伸方向、および厚さ方向に、1.616、1.828、および1.532を得た。厚さ方向のPETの屈折率は、1.49であると推算された。
【0083】
多層フィルムの光学積層物の個々の層の屈折率は、直接測定することができない。しかしながら、光学積層物の屈折率を測定することはできる。光学積層物の屈折率は、個々の層の屈折率の重みつき平均である。相互拡散効果が小さければ、個々の層の屈折率を推算できる。この場合、より厚いスキン層および内部の保護境界層(PBL)の屈折率は、同一材料の光学層の屈折率と同じであると予想される。線形平均であると仮定することによって、これらのうちの1つの光学材料の屈折率と、外側の厚い層を破壊式に剥離することによって測定された積層物の屈折率とから、その他の屈折率ををとを推算できる。光学フィルムの光学的性質を考えることにより、光学フィルムの種々の層の関係を推定することもできる。例えば、遮断方向および通過方向の透過率により、相対的面内屈折率を示すことができる。オフアングルの(off−angle)屈折率の場合の呈色および性能は、厚さ方向の屈折率の相対的な大きさの示度をなす。光源にグラン・トンプソン偏光プリズムを備え、検出器に積分球を備えているパーキンエルマー社(コネチカット州ノーウォーク)の分光光度計Lambda 19を用いて、前述フィルムの平行透過光度を、測定した。図5Aは、ライン501および503によって、それぞれ反射(遮断)および透過(通過)方向の前述入射光の透過率対波長を示している。図5Aは、ライン505によって、オフアングル60°の光の透過率も示している。オフアングルの測定値が好ましかったので、2cm円形開口から積分球までを5cmに設定した回転ステージにサンプルを取り付けた。一般に、偏光子の反射方向の平行光度は、可視スペクトルで約32.1%であった。透過方向の総光度は、約78.2%であった。反射方向は、第2の延伸方向と一致していた。透過方向は反射方向と直角をなし、第1の延伸方向と一致していた。通過状態の透過率を測定した後、60°(p偏光をサンプリングするために遮断軸を中心として通過状態から60°回転)における平均透過光度は、約72.9%であった。オフアングル色の偏差の測定値は、回転角度における平均透過率からの平均二乗偏差として、対象の可視スペクトル帯域(例えば、420nm〜720nm)の規定スペクトルから計算できる。「オフアングル色」は4.64%であった。同様に、標準アングル色は、1.37%であった。
【0084】
前述の方法で形成されたフィルムの性質により、延伸後にフィルムを熱硬化させることができる。その後、前述の延伸フィルムを、175℃で85秒間にわたって緊張状態で熱硬化させた。PENスキン層の屈折率は632.8nmの時に、第1の延伸、第2の延伸方向、および厚さ方向にそれぞれ、1.643、1.837、および1.500であった。図5Bに、熱硬化フィルムの、反射507、透過509、および60°非正常511入射光に関する透過率対波長のプロットを示す。総反射偏光透過率は、19.6%に減少した。標準および60°の平均透過率は、83.8%と86.3%であった。対象スペクトル帯域に統合される透過偏光の平均透過率からの平均二乗偏差として再び定義される、正常色および非正常色は、それぞれ、1.31%および1.25%を測定した。
【0085】
図5Cの図表では、420〜720nmの範囲の光の熱硬化前531および熱硬化後533の前述フィルムの透過、反射(反射状態で偏光される光の透過光度として記載)、および非正常特性を、比較する。図5Aおよび5Bにスペクトルが記載されている物理的サンプル間の厚さの差が小さいので、多層積層物の厚さ分布形状に対して同一スペクトル帯域のデータを比較することによって最良の直接比較が行われる。使用される基準点は、700nmで4.11%にある図5Bの透過率最小値である。これに対応する図5Aの最小値は、762nmで8.84%である。従って、図5Cの熱硬化前の条件データは、図5Aの帯域482nm〜782nmから導き出される。図5Cから分かるように、熱硬化によって各例のフィルムの性能が向上した。また、熱硬化フィルムは、(透過状態に偏光された光の場合)正常角度の透過率を超える非正常の透過率を呈する。前述のものに同様に加工されたサンプルの場合、熱硬化前のPENおよびPETのz軸屈折率は、632.8nmのときに、それぞれ1.532および1.49と推算される。熱硬化後のPENおよびPETの値は1.50および1.49であると推算される。このように、熱硬化により、実質的にz屈折率の差が減少する。また、透過状態で偏光される光の透過は、熱硬化後の面内の屈折率の一致度を上げることによっても大幅に増加する。
【0086】
前述のように、厚さ方向に屈折率がほぼ一致しており、残留色に対する角度依存性が小さいローカラーフィルムを結果としてもたらすPEN:PET多層を含む偏光子フィルムを作製できる。また、このフィルムは、同様材料の一軸延伸フィルムと比較したときに、強化された引裂開始抵抗を含む改良された機械的安定性を呈する。
【0087】
光学フィルムを形成するために使用されるプロセスパラメータを変化させることにより、種々の所望特性を得ることができる。例えば、IVがより高いPET材料(例えば、約0.7〜0.9)は、粘度が増加して、共押出し中の粘度一致が向上する傾向がある。これは、多層流の欠点を減少させる働きがある。フィルム中の残留散乱は、より高い最終延伸比またはより短時間/より低温の事前結晶化条件を使用することによって減少させられる。残留散乱は、初期結晶サイズを小さくすることによって減少させてもよい。例えば、結晶の大きさを制御して滞留時間を減少させるために、PETに成核剤を添加してクワイエセント結晶化(quiescent crystallization)の速度を上げてもよい。コポリマーを使用することもできる。ホモポリマーからの偏差量は結晶性を減少させることがあるが、前結晶化のための処理時間と温度とを増加させる傾向がある結晶化の速度を減少させることもある。究極的なPETの結晶性は、エチレングリコールの一部をジエチレングリコール(DEG)で置換することによって減少させることができる。これにより吸光度が改善され、延伸率が第1の方向に増加する。
【0088】
前述の特定の加工例では、0.48IV PENを150℃、15%/秒でゆっくりと延伸させる。そのようなフィルムの作製時、従来のフィルム加工ラインに設けられた縦延伸機(LO)を第1の延伸に利用することが好ましい場合もある。LOは、一般に、公称歪み速度300%/秒以上でフィルムを延伸する。そのようなプロセスでは、約165℃の延伸温度が適切である。更に高い、約1000%/秒の延伸速度では、約170℃以上の温度を要する場合がある。温度を上げるよりも、より低いIVのPEN(例えば、より分子量の小さいPEN)を使用すれば、任意温度で緩和時間を減少させることができる。
【0089】
実施例2
実施例2に、実施例1に使用したものと同じ材料であるPENおよびPETを使用して、第1の延伸方向と一致している反射状態と、第2の延伸の軸と一致している透過状態とを備えた偏光子を作るプロセス発明の実用性を説明する。同一材料を使用して実質的に異なる偏光子が得られるとことは、本発明によって提供される、材料選択の融通性を示すものでもある。当該実施例も、bP−uP−2という偏光子の配向状態を示す。
【0090】
実施例2では、0.48IV PENと0.77IV PETとを乾燥後、共押出しして、内部PBLを備えた224層の多層フィードブロックを形成した。この多層積層物を、非対称な倍増物に分割して、幅比1.55:1の2つのストリームを形成し、等幅に伸ばし、再び積み重ねて、内部保護層で隔てられた448層からなる2つのパケット多層積層物を形成した。PBLにはPET(IV0.77)を使用した。PEN(IV0.48)スキンを追加し、全ストリームを、ダイから60℃に設定した急冷ホイール上に流延した。PENスキンおよびPET PBLの屈折率は、流延後、本質的に等方性で、632.8nmで屈折率1.64および1.57をそれぞれ備えている。スキンは、約35%の構造物と、約15%のPBLと、約50%の光学多層積層物パケットとから構成した。流延厚は約0.1cmとした。
【0091】
第1の延伸プロセスでは、従来の縦延伸機(LO)を利用した。120℃に設定した高温ローラでフィルムを予熱して、低速ロールと高速ロールとから成る延伸間隙に送り込み、パワー60%に設定した赤外線ヒータにかけた。赤外線ヒータは、それぞれ約65cmの長さの複数のIRヒータ要素(約5000ワット/要素)の組立体である。IRヒータ要素は、フィルム上方約10cmに配置した。延伸間隙における滞在時間は約4秒とした。5倍に延伸するように高速ロールを設定し、延伸後のフィルムを急冷した。延伸後の幅は、その初期幅の約85%に減少していた。第1の延伸工程終了後、PETの平均面内屈折率は、632.8で1.58未満のままであったが、PENの平均屈折率は、強く配向されて、面内延伸方向y軸(MD)、面内交差方向x軸(TD)、および厚さ(z)(ND)方向に、それぞれ、約1.85、1.59、および1.53となった。次に、このフィルムを、第2の延伸工程において従来のテンターを使用して横方向に約3.3倍に延伸した。テンターは、予熱部を145℃、延伸部を138℃、熱硬化部を227℃、および急冷部を49℃に設定した。約25秒間の予熱、約5秒間の延伸、および約40秒間の熱硬化を実施した。632.8nmのときに、最終的なPENの屈折率は1.82、1.68、および1.49であり、一方、PENの屈折率は約1.56、1.67、および1.56であった。さらに、以下記載の別の波長についても測定を行った。
【0092】
【表1】

【0093】
これらの屈折率から、以下の正規化屈折率差を得た。
【0094】
【表2】

【0095】
このように加工して出来上がったフィルムは、400〜700nmで平均透過率7.4%で偏光を反射する、第1の延伸方向と一致する反射軸を呈し、また、400〜700nmで平均透過率85.7%で偏光を透過する、第2の延伸方向と一致する透過軸を呈した。通過状態に合わせると、透過偏光および厚さ方向で画定される平面でオフアングルで見たときの呈色は最小限の視認度であった。
【0096】
実施例3
実施例3は実施例2の変形形態であり、第1の材料として、標準的なPETではなく、PENとPETとを共押出機内でエステル交換反応させることよって形成したコポリマーを使用する。PEN(IV0.48)と10%/90%PEN(IV0.48)/PET(IV0.77)ブレンドとを乾燥させ、共押出しして、内部PBL(保護境界層)を備えた224層の多層フィードブロックを形成した。この多層積層物を、非対称な倍増物に分割して、幅比1.55:1の2つのストリームを形成し、等幅に伸ばし、再び積み重ねて、内部保護層によって各224層の積層物が隔てられている448層からなる2つのパケット多層積層物を形成した。PBLには、同じ10%/90% PEN/PETブレンドを使用した。PEN(IV0.48)スキンを追加し、全ストリームを、ダイから60℃に設定した急冷ホイール上に流延した。スキンは、約35%の構造物と、約15%のPBLと、約50%の光学多層積層物パケットとから構成した。流延厚は約0.1cmとした。
【0097】
第1の延伸プロセスでは、従来のLOを利用した。120℃に設定した高温ローラでフィルムを予熱して、低速ロールと高速ロールとから成る延伸間隙に送り込み、パワー60%に設定した赤外線ヒータにかけた。滞在時間は約4秒とした。高速ロールを6倍の延伸を行うように設定し、延伸後のフィルムを急冷した。延伸後の幅は、その初期幅の約85%に減少していた。第1の延伸工程終了後、10/90PEN/PETコポリマーの平均面内屈折率は、632.8で1.61未満のままであったが、PENの平均屈折率は、強く配向されて、面内延伸方向y軸(MD)、面内交差方向x軸(TD)、および厚さ(z)方向(ND)に、それぞれ、約1.86、1.60、および1.52となった。次に、このフィルムを、第2の延伸工程において従来のテンターを使用して横方向に約3.0倍に延伸した。テンターは、予熱部で145℃、延伸部で138℃、熱硬化部で204℃、急冷部で49℃に設定した。約25秒間の予熱、約5秒間の延伸、および約40秒間の熱硬化を実施した。632.8nmのときに、最終的なPENの屈折率は1.82、1.69、および1.48であり、一方、コポリマーの屈折率は約1.66、1.67、および1.52あった。いくつかの波長について測定した屈折率を以下に記載する。
【0098】
【表3】

【0099】
これらの屈折率から、以下の正規化屈折率差が得られる。
【0100】
【表4】

【0101】
これにより、出来上がったフィルムは、400〜700nmで平均透過率9.9%で偏光を反射する、第1の延伸方向と一致する反射軸を呈した。また、透過軸は第2の延伸方向と一致しており、400〜700nmで平均透過率85.0%で偏光を透過した。測定サンプルの厚さは67ミクロンであった。フィルム幅方向に高低偏差8.1ミクロンの良好な厚さ均一性が観察された。
【0102】
前述のフィルムも機械的な靱性を呈した。手による引裂開始は困難であった。引裂も困難であり、フィルムはMD方向に優先的に裂けた。前述のプロセスを利用して、厚さ、すなわちスペクトル有効範囲を維持するように補償率を変更しながら、TD延伸比を20%高くした。フィルムの熱膨張率は、摂氏25℃〜85℃で、MDおよびTD方向にそれぞれ、1.1×10−5と2.2×10−5であった。これらの膨張率は、一段延伸プロセスを利用してPENおよびcoPENから作製された屈折偏光子のMDおよびTDの値、8.5×10−5および3.0×10−5よりもずっと小さい。最大膨張方向は、これらのフィルムの透過(通過)方向のままであった。フィルムを15分間85℃まで加熱した後に二段階延伸したときのMD方向およびTD方向の収縮率は0.118および0.254であり、15分間一段延伸プロセスのフィルムと比較して、二段延伸は収縮度も減少した。
【0103】
上記および以前の実施例の変形形態において、第2の材料として、標準的なPETではなく、PENとPETとを共押出機内でエステル交換反応させることよって形成したのコポリマーを使用する。前述実施例の更に別の変更態様において、スキンおよび/またはPBL層として別の材料を使用してもよい。例えば、85/15の組成などのPENとPETとのコポリマーを使用してもよい。例えば、機械的性質によっては、面内等方層または全等方層が有用なことがある。例えば、スキンに屈折率の低い材料を使用することによって表面反射を減少させるなど、光学的性質を改良するように材料を選択してもよい。
【0104】
実施例4
実施例4は、本発明の別の実施形態により、別の多層光学フィルムを形成する例示プロセスである。この実施例では、PEN(IV0.48)とポリブチレンテレフタレート(PBT)(IV1.4)とから多層フィルムを作製する。PEN:PBTフィルムは、共押出しして、チルローラでダイカストしてもよい。PBTが急速に結晶化するので、流延条件に応じて別々に結晶化する不要な無い。前述の実施例のように、結晶化したPBTがフィルム延伸時に破損しないように保護するために、何らかの形態のスキン層が必要であろう。三層構造(PEN:PBT:PEN)のフィルムを作製した。PENとPBTとを285℃で共押出しして、三層フィードブロックを形成した。PEN材料を2つの外側層として供給し、PBTをコア層として供給した。三層フィルムをチルロールでダイカストして急冷した。PBTは、ダイから流延されるときに結晶化した。このフィルムを、60秒間100℃まで、10秒間120℃まで、20秒間140℃まで、そして20秒かけて150℃まで加熱した。次に、このフィルムを、150℃で20秒をかけて4×1(長さ方向)に延伸し、その後、室温まで急冷した。次に、フィルムを45秒間115℃まで加熱し、1×3のフィルムを最終総延伸比4×3まで延伸することによって第2の延伸工程を実施した。
【0105】
前述のプロセスでは、PEN材料の第2の延伸に第1の延伸よりも低い延伸比を使用した。その後、延伸フィルムを張力がかかった状態で175℃で85秒間にわたって熱硬化させた。以下の表に、光の種々波長における2種類の材料の第1の延伸、第2の延伸およびフィルム厚さ方向の結果屈折率を示す。
【0106】
【表5】

【0107】
上のテーブルに示すように、第1の延伸および厚さ方向と屈折率差は、同一のオフアングル色最小化促進兆候を有する。また、2層の対応屈折率の平均差は、第1の延伸方向が約0.015、厚さ方向が約0.020である。延伸比、延伸速度、およ延伸温度を調節することによって、この差を更に最小化するように屈折率を追加調整できる。
【0108】
実施例5
実施例5に、連続相と分散相とのブレンドを使用して変更フィルムを形成する例示材料およびプロセス条件を示す。三層光学フィルムを使用した。三層フィルムは、コア層と、コア層両側の外側層とを含んでいる。三層フィルムは、1つ以上のブレンド層と組み合わせて共押出しされたときに加工しやすくする、以後、促進材料と呼ぶ材料から成る1つ以上の層を使用している。促進材料は、例えば、機械的強さ、光学的性質、または取扱法の改良といった付加的な特性を提供するものであってもよい。促進材料をコア層または外側層を形成するために使用し、その他の部分を形成するためにブレンド材料を使用してもよい。促進材料は、その層を透過する光の偏光配向に実質的に影響を及ぼさないことが好ましい。この例として、フィルムの外側層を形成するのにブレンド材料を使用した。そして、コア層を形成するのに促進材料を使用した。
【0109】
コア層を形成するために促進材料を使用することにより、例えば三層構造では、促進材料を使って外側層を形成した場合と比べ、加工および性能の融通性が提供されるようである。コア層の形成の方が広範囲な材料を使用できる。これは、その機械的性質(改良された引裂または破損抵抗)により好適な材料の中には、流延シートの外側層を形成するために使用すると加工機器に付着する傾向を有するものがあるからである。
【0110】
流延用ダイの剪断力は、ダイの壁部で最高となり、押出物の中央で最低となる。押出し流延シートの厚さ全体を光学ブレンドが構成する場合は、分散相の粒子が、ダイ壁部で最小となり、中央部で最大となる傾向がある。多層材料、例えば三層フィルムなどの多層材料を共押出しする場合、構造物の外側層を形成するのに光学ブレンド材料を使用すると、分散相の粒子が最小となる。前記とは異なって、例えば三層フィルム構造物の、コア層の形成に促進材料を使用すると、定義によれば、コア層は、押出物の最低剪断力の領域を占め、光学的ブレンド材料の分散相の粒子が、押出物の最高剪断力の領域を優先的に経験する。
【0111】
本発明は、三層のフィルム構造に限定されるものではない。共押出しにより、例えば、光学ブレンド材料、例えば五層フィルム構造物、の分散相の粒子が受ける予想剪断速度を更に正確にするように選択することもできる。この場合、外側層の厚さにより、流延用ダイの中の特にダイの壁部のすぐ隣の領域で分散相粒子をどの程度まで伸長させかを制御できる。例えば、出来上がったフィルムの厚さ方向の分散相粒子直径が光の波長の約1/30未満であるとき光を散乱しないが、それは、ある意味で本発明にとって望ましい。したがって、共押出しプロセスで分散相粒子の寸法を制御することが望ましい。
【0112】
外側層は、配向の前または後で除去してもよいので、犠牲となってもよい。外側層は、このようにして機械的摩擦(すなわち、引掻き)や塵埃およびデブリの堆積から光学ブレンド材料を保護してもよい。このマスキング層の実施形態は、更に別のフィルムを利用して本発明のフィルムをラミネートするよりもはるかに安価であるという利点がある。
【0113】
ブレンド材料を、60%フェノール、40%ジクロロベンゼン中で測定したときにIVが0.57であるcoPENを68.6重量%、ダウケミカル社(Dow Chemical Company)から市販されているQuestra NA 405を29.1重量%、およびノヴァケミカル社(Nova Chemical Company)から市販されているDylark 332−80を2重量%のブレンドとして共押出しした。促進材料は、メチレンクロリド中でIVが0.65のcoPETとした。
【0114】
coPENは、70モル%ナフタレンジカルボキシレートおよび30モル%ジメチルイソフタレートとエチレングリコールとをベースにしたコポリマーとした。coPETは、80モル%ジメチルテレフタレートおよび20モル%ジメチルイソフタレートとエチレングリコールとをベースにしたコポリマーとした。
【0115】
第1のフィルムを作製して、1方向にのみ延伸した。第1のフィルムの流延シートの全厚は810ミクロンであり、この全厚の約3分の1がコア層であり、残りが、それぞれ厚さがほぼ等しい外側層であった。従来のテンターのみを使用して、流延シートを横方向に延伸した。テンターの入口および出口のレール設定により、最終的な横延伸比は約4.3:1とした。延伸温度は132℃とした。熱硬化温度は163℃とした。
【0116】
その後、第1のフィルムの光学的性質を測定した。このフィルムは、フィルムの通過方向と偏光配向とが整列し、400〜700ナノメータにわたる光の波長における平均透過率は83.6%であった。偏光配向とフィルムの遮断方向とが整列している光の平均透過率は13.6%であった。このフィルムは、延伸方向に対して直角をなす方向(すなわち、この実施例では縦方向)に妥当な破損抵抗を呈したが、横方向と一致する方向にフィルムを折り曲げるとフィルムは割れた。
【0117】
ここで、比較のために、ブレンド材料を使用してコア層を形成し、促進材料を使用して外側層を形成する点を除いて当該実施例の第1のフィルムと同様な方法で作成した米国特許出願明細書第No.08/610,092号の三層フィルムの比較例125について言及する。当該実施例の第1のフィルムのように、比較例125は、延伸と直角をなす方向に妥当な破損抵抗を呈し、また、横方向と一致する方向に折り曲げるとフィルムは割れた。
【0118】
127℃で横方向に延伸する前に従来の縦延伸機を使って縦方向に流延シートを延伸する点を除き、当該実施例の第1のフィルムと同じ材料で第2のフィルムを作った。流延シートの全厚は1240ミクロンとした。実施例2で記載したように、流延シートを比1.25:1で縦方向に延伸した。間隙直前のロール温度は82℃であった。赤外線ヒータ要素の設定出力は100%とした。偏光配向と延伸フィルムの通過方向が整列している光の平均透過率は、81.1%であった。また、偏光配向と延伸フィルムの遮断方向が整列している光の平均透過率は、14.8%であった。こうして仕上がったフィルムは、一軸延伸フィルムと比較して、著しく向上した機械的靱性を呈した。縦方向に折り曲げても横方向に折り曲げてもフィルムは割れなかった。
【0119】
さらに別のフィルムを2枚作製して、流延シートを、横方向に延伸する前に縦方向に1.5:1および1.75:1の比で第1の延伸を行った点を除き、前述の第2のフィルムと同じ方法で評価した。測定されたそれぞれの通過方向の透過率の値は、80.2%と78.8%であった。それぞれの遮断方向の透過率の値は、15.6%と17%であった。このフィルムは、縦方向に折り曲げても横方向に折り曲げても割れなかった。
【0120】
前述のフィルムと変わらない方法で更に別のフィルムを作製して評価した。このフィルムは、129℃で横方向に4:1に延伸する前に縦方向に1.35:1で延伸した。測定された通過方向の透過率の値は83.2%であった。遮断方向の透過率の値は15.0%であった。このフィルムは、縦方向に折り曲げても横方向に折り曲げても割れなかった。
【0121】
破損抵抗が著しく向上したことのほかに、本発明によってフィルムを作製したフィルムを積層させた後に、市販のシヤースリッターを使用してせん断作用により切断したときに、特に比較例125により作製したものと比べると、フィルムは破損すること無く美しく切れることが分かった。
【0122】
フィルムの厚さ方向の分散相構造の断面寸法は、好ましくは対象波長以下、更に好ましくは対象波長の約0.5未満であることは公知である。それ故、範囲内で分散相の断面寸法を小さくすることにより、光学装置の光学的性質の改善がもたらされる。更に別の2種類のフィルムを作製して評価を行い、三層構造物のコア層および外側層の一方に光学ブレンド材料を置いたときの効果を実証した。三層構造の外側層を形成するために光学ブレンド材料を使用して、当該実施例の第1のフィルムに基づいて、第1の別フィルムを作製した。三層構造のコア層を形成するために光学ブレンド材料を使用して、比較例125に基づいて、第2の別フィルムを作製した。走査型電子顕微鏡を使用して、延伸前の流延シートの断面を評価した。顕微鏡写真は、特にフィルムの外側層を形成するためにブレンド材料が使用されたときに、ブレンド材料の分散相材料のフィブリル化が増加することをはっきりと示している。分散相材料にフィブリル化が発現すると、フィルムの厚さ方向の断面寸法が減少する。評価方法の1つは、最大粒子があるフィルムの中央付近または中央の分散相の寸法を評価することである。光学ブレンド材料でフィルムの外側層およびコア層を形成した場合、分散相の大きさは、それぞれ0.9マイクロメータおよび1.4マイクロメータであった。フィルム構造物の外面付近の粒子は、構造物の中心付近のものよりも小さいことが分かる。
【0123】
また、本発明のブレンドフィルムは、比較例125のものよりもはるかに大きい表面組織を有していることが確認された。比較例125から約1平方メートルのフィルム片を切断したとき、例えば一方のフィルム片を他方の上に整列させるために、一方のフィルム片を他方の上でスライドさせようとしたが難しかった。本発明の場合、フィルム片は、100枚以上の高さに積み重ねたときでさえ極めて容易に整列した。
【0124】
実施例6
実施例6では、実施例5の第1のフィルムと同様な方法で厚さ515μmのブレンドフィルムを作製した。実験室の伸張器を使用して、流延シートを直交する2方向に同時に伸張させた。フィルムは、一方の方向に歪み速度0.4%/秒、伸張比1.2:1で伸張させ、他方の方向に、歪み速度10%/秒、伸張比5.6:1で伸張させた。結果として得られたフィルムは、通過方向の透過率87.6%、遮断方向の透過率25.3%を呈した。同様のフィルムを、第1の方向への歪み速度を5%/秒に変更して伸張させた。このフィルムは、通過方向の透過率87.9%、遮断方向の透過率27.8%を呈した。これらのフィルムのそれぞれは、一軸方向に伸張させたフィルム(例えば、fractureを行った)と比較して靭性の向上を呈した。
【0125】
以上、種々の実施例を記載したが、本発明は、実施例の詳細に限定されるものではない。本発明は、多数の光学フィルム、材料、およびその製法に応用することができる。例えば、前述の実施例では、2種類の材料について概括的に説明を行っているが、3種類以上の材料を使用することも可能であることを理解されたい。それぞれの材料は、任意の加工条件セットの配向または非配向クラスに該当する。フィルム中の各材料毎に別々の延伸プロセスを利用して、種々の所望応答を得ることもできる。本願明細書を見直すことにより、種々の変更形態、等価なプロセス、ならびに本発明を適用できる多数の材料および製品が分かるであろう。請求項は、そのような変更形態および装置を包含するものである。
【0126】
本発明の態様と本発明に関連する発明の態様を以下に列挙する。
態様1 フィルムの第1および第2の面内軸の一方に沿って第2の材料の屈折率が第1の材料の屈折率と一致するように、少なくとも第1の材料の光学的配向を前記フィルムの前記第1の面内軸に沿って誘発させるとともに、前記フィルムの面内軸に沿って前記第1の材料に誘発させる配向よりも実質的に小さい前記第1の材料の配向を、前記フィルムの前記第2の面内軸に沿って誘発させる条件下で、前記第1および第2の材料を含むフィルムを前記フィルムの第1および第2の面内軸を基準にして加工する工程を有する、光学フィルム作製方法。
態様2 前記第1および第2の面内軸は、前記フィルムの直交する面内軸を規定する、態様1に記載の方法。
態様3 前記第1の材料が光学的に配向され且つ前記第2の材料が配向されないまたは光学的に配向されないように選択された延伸温度、延伸速度、および延伸比で、前記第1の面内軸に沿って前記フィルムを延伸することによって、前記第1の面内軸を基準として前記フィルムを加工する、態様1に記載の方法。
態様4 前記第1の材料と前記第2の材料との両方を光学的に配向させるように選択された延伸温度、延伸速度、および延伸比で、前記第2の面内軸に沿って前記フィルムを延伸することによって、前記第2の面内軸を基準として前記フィルムを加工する、態様1に記載の方法。
態様5 前記第1および第2の軸を基準とする前記フィルムの加工は、
前記延伸温度と、前記第1の材料を光学的に配向させ且つ前記第2の材料を配向させないまたは光学的に配向させない第1の延伸速度および比とで、前記第1の軸に沿って前記フィルムを延伸する工程と、
それと同時に、前記延伸温度と、前記第1の材料と前記第2の材料との両方を光学的に配向させる第2の延伸速度および比とで、前記第2の軸に沿って前記フィルムを延伸する工程と、を含んでいる、態様1に記載の方法。
態様6 前記フィルムは、第3の材料から成る非光学層を更に有し、前記非光学材料層は、前記加工によって前記第1および第2の軸の両方を基準として配向させられる、態様1に記載の方法。
態様7 前記フィルムは、前記第1の材料と前記第2の材料とが交互になっている複数の層を有する、態様1に記載の方法。
態様8 前記第1の軸に沿った前記第1の材料および前記第2の材料の屈折率は実質的に等しく、前記第2の軸に沿った前記第1の材料および前記第2の材料の屈折率は実質的に不一致であり、前記フィルムは、透過軸を形成する第1の軸と反射軸を形成する第2の軸とを備えた反射偏光子を形成する、態様7に記載の方法。
態様9 前記反射軸が、加工中の前記光学フィルムの縦方向と一致している、態様8に記載の方法。
態様10 前記反射軸が、加工中の前記光学フィルムの横方向と一致している、態様8に記載の方法。
態様11 前記フィルムの厚さ方向の、前記第1の材料と前記第2の材料から成る隣接層の屈折率が実質的に等しい、態様7に記載の方法。
態様12 前記フィルムは、前記第1の材料と前記第2の材料とのブレンドを含む、態様1に記載の方法。
態様13 前記第1の材料が前記ブレンドの連続相を形成し、前記第2の材料が前記ブレンドの分散相を形成する、態様12に記載の方法。
態様14 前記第2の軸を基準とする前記加工は前記分散相の配向を殆どまたは全く誘発しないが、前記第1の軸を基準とする前記加工は前記分散相を光学的に配向させる、態様13に記載の方法。
態様15 前記第1の材料が前記ブレンドの分散相を形成し、前記第2の材料が前記ブレンドの連続相を形成する、態様12に記載の方法。
態様16 前記第1の軸を基準にして前記フィルムを加工する工程は、さらに
前記第1の材料および前記第2の材料の両方に光学的配向を誘発させる条件下で、前記第1の軸に沿って前記フィルムを延伸する工程と、
延伸後に、前記第2の材料の光学配向を実質的に緩和させずに前記第1の材料の誘発光学配向を実質的に緩和する温度まで前記フィルムを加熱する工程とを含む、態様1に記載の方法。
態様17 前記フィルムの第1および第2の面内軸のそれぞれに沿って配向を有する第1の材料と、
前記第1の材料と一緒に押出しされ、前記フィルムの前記第1の面内軸のみに沿って実質的な配向を有する第2の材料とを含み、前記第1および第2の材料の光学的配向は、前記フィルムの前記第1および第2の面内軸の一方に沿って前記第1の材料および前記第2の材料の屈折率が実質的に等しく、且つ前記第1および前記第2の面内軸の他方に沿って前記第1および第2の材料の屈折率間の差を前記第1および第2の材料の平均屈折率で割った絶対値が約0.06より大きくなるようなっている光学フィルム。
態様18 前記フィルムの厚さ方向の前記第1および第2の材料の屈折率が実質的に等しい、態様17に記載の光学フィルム。
態様19 前記第1および第2の材料は、前記第1の材料が材料の連続相を形成し且つ前記第2の材料が材料の分散相を形成する状態で、ブレンドとして共押出しされる、態様17に記載の光学フィルム。
態様20 前記フィルムは、前記第1の材料と前記第2の材料との交互層を有する、態様17に記載の光学フィルム。
態様21 前記フィルムの厚さ方向の前記第1および第2の材料の隣接層の屈折率が実質的に等しい、態様20に記載の光学フィルム。
態様22 前記フィルムは、前記第1および第2の材料のブレンドを含む、態様17に記載の光学フィルム。
態様23 第1の材料と、前記第1の材料と光学的に結合された第2の材料とを含み、前記第1および第2の材料が異なる粘弾性特性を有するフィルムを用意する工程と、
前記第2の材料の光学的配向を誘発させずに第1の方向に前記第1の材料の光学的配向を誘発させるように選択された延伸条件下で、前記フィルムを前記第1の方向に延伸する工程と、
前記第1および前記第2の材料の両方の光学的配向を誘発させるように選択された延伸条件下で、前記フィルムを第2の方向に延伸させる工程と、
を含む、光学フィルム作製方法。
態様24 前記フィルムは、前記第1の材料の第1の層と前記第2の材料の第2の層とを含む、態様23に記載の方法。
態様25 前記フィルムは、前記第1および第2の材料の一方を含む連続相材料と、前記第1および第2の材料の他方を含む分散相材料とを含む、態様23に記載の方法。
態様26 前記第1の方向に前記フィルムを延伸する前記工程と、前記第2の方向に前記フィルムを延伸する前記工程とは、同時に実施される、態様23に記載の方法。
態様27 所望の光学的性質を有するフィルムを作製する方法であって、
(a)第1の材料と、前記第1の材料と光学的に結合された第2の材料とを含み、前記第1および第2の材料が異なる粘弾性特性を有するフィルムを用意する工程と、
(b)前記第2の材料の光学的配向を第1の方向に誘発させずに、前記第1の材料の光学的配向を前記第1の方向に生じさせるように前記フィルムを加工する工程と、
(c)前記第1および前記第2の材料の両方の光学的配向を第2の方向に生じさせるように前記フィルムを加工する工程と、
を含む方法。
態様28 前記フィルムは、前記第1の材料を含む第1の層と前記第2の材料を含むの第2の層とを含んでいる多層フィルムを含む、態様27に記載の方法。
態様29 前記加工工程(b)は、前記第2の層に光学的配向を誘発させずに前記第1の層に光学的配向を誘発するように選択された条件下で、前記多層フィルムを前記第1の方向に延伸する工程を含む、態様28に記載の方法。
態様30 前記第1の層は、前記第2の層の平均緩和時間よりも長い平均緩和時間を有し、前記加工工程(b)は、
前記第1の層の光学的配向を前記第1の方向に誘発するように選択された条件下で、前記多層フィルムを前記第1の方向に延伸する工程と、
前記第1の方向に前記多層フィルムを延伸する工程で誘発された前記第1の方向への前記第2層の任意の光学的配向を緩和させる程度に十分に高く、且つ前記第1の方向に前記第1の層の光学的配向を実質的に維持する程度に十分に低い温度まで、前記多層フィルムを加熱する工程と、を含む、態様28に記載の方法。
態様31 前記加工工程(c)は、前記第1および前記第2の層の光学的配向を前記第2の方向に誘発するように選択された条件下で、前記多層フィルムを前記第2の方向に延伸する段階を含む、態様30に記載の方法。
態様32 角度依存性を低減させた偏光フィルムの製作方法であって、
複屈折材料の第2の層と光学的に結合させた複屈折材料の第1の層を含み、前記第1の層の等方性屈折率と前記第2の層の等方性屈折率とが異なり、前記第1および第2の層の平面を画定する第1および第2の面内軸と、前記第1および第2の層の厚さ方向に沿って前記第1および第2の面内軸と直角をなす第3の軸とを有する多層フィルムを形成する工程と、
前記第1の面内軸と前記第2の面内軸と前記第3の軸とに沿った第1の層の屈折率と、前記第2の軸に沿った第2の層の屈折率とは実質的に無変化のままであるが、前記第1の面内軸に沿った前記第2の層の屈折率が、前記第1の面内軸に沿った前記第1の層の屈折率と実質的に等しい値に変化するように、前記多層フィルムを前記第1の面内軸の方向に延伸する工程と、
前記第3の軸に沿った前記第1および第2の層の屈折率が実質的に等しくなるように、前記第2の面内軸の方向に前記多層フィルムを延伸する工程と、
を含む方法。
態様33 第2のポリマー材料の連続相と光学的に結合された第1のポリマー材料の分散相のブレンドを有する光学的偏光フィルムであって、前記第2のポリマー材料は、前記フィルムの第1の軸を基準として実質的な分子配向を有するとともに、前記フィルムの第2の軸に関しては前記第1の軸に関する前記配向と比較して弱い分子配向を有し、 前記第1および第2のポリマー材料は、第1の偏光状態の光を実質的に透過するように十分に一致している屈折率を前記フィルムの前記第1および第2の軸の一方に沿って有し、且つ第2の偏光状態の光を実質的に反射するように十分に異なっている屈折率を前記フィルムの前記第1および第2の軸の他方に沿って有しているフィルム。
態様34 前記第2のポリマー材料は、前記フィルムの前記第1および第2の軸の一方に関して実質的な分子配向を有しており、前記フィルムの前記第1および第2の軸の他方に関しては分子配向を殆どまたは全く有しない、態様33に記載のフィルム。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1A】本発明の種々の実施形態による光学フィルムを示す。
【図1B】本発明の種々の実施形態による光学フィルムを示す。
【図2A】本発明による種々のプロセスの図を示す。
【図2B】本発明による種々のプロセスの図を示す。
【図2C】本発明による種々のプロセスの図を示す。
【図2D】本発明による種々のプロセスの図を示す。
【図2E】本発明による種々のプロセスの図を示す。
【図2F】本発明による種々のプロセスの図を示す。
【図2G】本発明による種々のプロセスの図を示す。
【図2H】本発明による種々のプロセスの図を示す。
【図2I】本発明による種々のプロセスの図を示す。
【図2J】本発明による種々のプロセスの図を示す。
【図3】本発明の別の実施形態による別の光学フィルムを示す。
【図4】本発明のさらに別の実施形態によるブレンドポリマー光学フィルムを示す。
【図5A】本発明の一実施形態により作製されたフィルムの透過特性を示す。
【図5B】本発明の一実施形態により作製されたフィルムの透過特性を示す。
【図5C】本発明の一実施形態により作製されたフィルムの透過特性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2のポリマー材料の連続相と光学的に結合された第1のポリマー材料の分散相のブレンドを有する光学的偏光フィルムであって、前記第2のポリマー材料は、前記フィルムの第1の軸を基準として実質的な分子配向を有するとともに、前記フィルムの第2の軸に関しては前記第1の軸に関する前記配向と比較して弱い分子配向を有し、前記第1および第2のポリマー材料は、第1の偏光状態の光を実質的に透過するように十分に一致している屈折率を前記フィルムの前記第1および第2の軸の一方に沿って有し、且つ第2の偏光状態の光を実質的に反射するように十分に異なっている屈折率を前記フィルムの前記第1および第2の軸の他方に沿って有しているフィルム。
【請求項2】
前記第2のポリマー材料は、前記フィルムの前記第1および第2の軸の一方に関して実質的な分子配向を有しており、前記フィルムの前記第1および第2の軸の他方に関しては分子配向を殆どまたは全く有しない、請求項1に記載のフィルム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図2I】
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【図2J】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【公開番号】特開2006−99139(P2006−99139A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−357973(P2005−357973)
【出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【分割の表示】特願2000−540466(P2000−540466)の分割
【原出願日】平成10年12月10日(1998.12.10)
【出願人】(590000422)スリーエム カンパニー (144)
【Fターム(参考)】