光学フィルムの膜厚測定方法、及び光学フィルムの製造方法
【課題】基材上にハードコート層及び光学干渉層を有する光学フィルムのハードコート層及び光学干渉層の両方の膜厚を高速で測定する。
【解決手段】基材Bと、該基材B上に形成されたハードコート層1と、該ハードコート層1上に形成された少なくとも1層の光学干渉層2とを有する光学フィルム3の膜厚測定方法であって、該光学フィルムに、第一の光を照射した時の第1反射光強度(I1)を検出する第1検出工程と、該光学フィルムに、第二の光を照射した時の第2反射光強度(I2)を検出する第2検出工程と、該第1反射光強度(I1)と、該第2反射光強度(I2)と、該第1の光の基準反射光強度(Istd1)及び該第2の光の基準反射光強度(Istd2)とに基づいて、該ハードコート層及び該光学干渉層のうち少なくとも一方で膜厚の変化が発生しているか否かを判別する厚み変化検出工程と、を有する。
【解決手段】基材Bと、該基材B上に形成されたハードコート層1と、該ハードコート層1上に形成された少なくとも1層の光学干渉層2とを有する光学フィルム3の膜厚測定方法であって、該光学フィルムに、第一の光を照射した時の第1反射光強度(I1)を検出する第1検出工程と、該光学フィルムに、第二の光を照射した時の第2反射光強度(I2)を検出する第2検出工程と、該第1反射光強度(I1)と、該第2反射光強度(I2)と、該第1の光の基準反射光強度(Istd1)及び該第2の光の基準反射光強度(Istd2)とに基づいて、該ハードコート層及び該光学干渉層のうち少なくとも一方で膜厚の変化が発生しているか否かを判別する厚み変化検出工程と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムの膜厚測定方法、及び光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、蛍光表示ディスプレイ(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)や液晶表示装置(LCD)のような画像表示装置では、表示面への傷付きを防止するため、及び表示面での外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、透明基材上にハードコート層及び低屈折率層若しくは高屈折率層、低屈折率層が交互に積層された光学干渉層を有し、反射防止機能を持たせた光学フィルムを設けることが好適である。
【0003】
また自動車や家などの窓ガラスには、表面への傷付きを防止するため、及び車内や室内の温度上昇を防ぐために、透明基材上にハードコート層及び高屈折率層若しくは低屈折率層、高屈折率層が交互に積層された光学干渉層を有し、赤外反射機能若しくは紫外反射機能を持たせた光学フィルムを設けることが好適である。
【0004】
これらハードコート層及び光学干渉層を有する光学フィルムは基材上にハードコート層及び光学干渉層を塗布法や蒸着法などにより形成することで製造されるが、各層の膜厚が変化すると明るさや色味が変わる。また局所的に膜厚が変化するとスジ等の欠陥となる。
したがって、膜厚を精度良く、しかも高速に測定する手法があれば、製造中の膜厚変動をオンラインで検出し、厚みを決定する機構に対してフィードバックすることができる。また局所的な膜厚変化を検出することで、良品不良品の峻別を容易に行うことができる。
【0005】
例えば、非特許文献1には、屈折率の異なる薄層の積層物に対して、その反射スペクトルを予測する手法が記載されている。この予測法と最小二乗法などの逆演算法を組み合わせることで、反射率から薄層積層物の各層の厚みを推定することができる。
しかしながら、この方法では多数の波長の反射率値を取得する必要があるため、膜厚推定に時間が掛かり、製造ライン上(オンライン)での膜厚検出には適さない。
【0006】
特許文献1では、線幅が狭い光源を用いた反射率測定と透過率測定を組み合わせることで、2つの値から膜厚推定を行う方法が提案されている。これにより高速に膜厚推定を行うことができるが、この手法で検出できる膜厚変化はハードコート層、又は光学干渉層のいずれかであり、両方の膜厚変化を検出することはできない。
【0007】
特許文献2及び3では、紫外線を使うことで基材フィルムの裏面からの反射を除去し、表面の膜厚変化を感度良く検出する手法が提案されている。
しかしながら、これらの方法でも検出できる膜厚変化はハードコート層、又は光学干渉層のいずれかであり、両方の膜厚変化を検出することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−221401号公報
【特許文献2】特開2000−241127号公報
【特許文献3】特開2006−38728号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】応用物理工学選書3薄膜、P.165−192 吉田貞史著 培風館
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、基材上にハードコート層及び光学干渉層を有する光学フィルムの膜厚測定方法であって、ハードコート層及び光学干渉層の両方の膜厚を高速で測定する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1.
基材と、該基材上に形成されたハードコート層と、該ハードコート層上に形成された少なくとも1層の光学干渉層とを有する光学フィルムの膜厚測定方法であって、
該ハードコート層の厚みが1μm〜200μmであり、該光学干渉層の厚みが0.001μm〜0.5μmであり、
該光学フィルムに、検出感度のスペクトル幅W1が下記式1を満たす第一の光を照射した時の第1反射光強度(I1)を検出する第1検出工程と、
該光学フィルムに、検出感度のスペクトル幅W2が下記式2を満たす第二の光を照射した時の第2反射光強度(I2)を検出する第2検出工程と、
該第1反射光強度(I1)と、該第2反射光強度(I2)と、該第1の光の基準反射光強度(Istd1)及び該第2の光の基準反射光強度(Istd2)とに基づいて、該ハードコート層及び該光学干渉層のうち少なくとも一方で膜厚の変化が発生しているか否かを判別する厚み変化検出工程と、を有する光学フィルムの膜厚測定方法。
(式1) W1<λ02/(8・nHC・dHC)
(式2) W2>λ02/(2・nHC・dHC)
ここでスペクトル幅は半値全幅を表し、λ0は光源の中心波長[nm]、nHCはハードコート層の光源の中心波長における屈折率、dHCはハードコート層の厚み[nm]を表す。
2.
前記第2反射光強度と前記第2の光の基準反射光強度との差の絶対値|(I2−Istd2)|を閾値(ε2)と比較することで、前記光学干渉層における膜厚の変化の発生の有無を判別する上記1に記載の光学フィルムの膜厚測定方法。
3.
前記第2反射光強度と前記第2の光の基準反射光強度との差と、前記第1反射光強度と前記第1の光の基準反射光強度との差との差の絶対値|{(I2−Istd2)−(I1−Istd1)}|を、閾値(ε)と比較することで、前記ハードコート層における膜厚の変化の発生の有無を判別する上記1又は2に記載の光学フィルムの膜厚測定方法。
4.
前記第1の光、及び前記第2の光のうち少なくともいずれか一方が紫外線である上記1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルムの膜厚測定方法。
5.
基材と、該基材上に形成された厚みが1μm〜200μmのハードコート層と、該ハードコート層上に形成された厚みが0.001μm〜0.5μmの光学干渉層とを有する光学フィルムの膜厚を測定する膜厚測定装置であって、
該光学フィルムに検出感度のスペクトル幅W1が下記式1を満たす第1の光源と、該第1の光源を該光学フィルムに照射した時の光学フィルムからの反射光強度(I1)を検出する第1の検出器からなる第1検出部と、
該光学フィルムに検出感度のスペクトル幅W2が下記式2を満たす第2の光源と、該第2の光源を該光学フィルムに照射した時の該光学フィルムからの反射光強度(I2)を検出する第2の検出器からなる第2検出部と、
該第1の反射光強度(I1)、該第2の反射光強度(I2)、該第1の光の基準反射光強度(Istd1)及び該第2の光の反射光強度(Istd2)とに基づいて、該ハードコート層及び該光学干渉層のうち少なくとも一方で膜厚の変化が発生しているか否かを判別する膜厚測定部と、を有する光学フィルムの膜厚測定装置。
(式1) W1<λ02/(8・nHC・dHC)
(式2) W2>λ02/(2・nHC・dHC)
ここでスペクトル幅は半値全幅を表し、λ0は光源の中心波長[nm]、nHCはハードコート層の光源の中心波長における屈折率、dHCはハードコート層の厚み[nm]を表す。
6.
基材と、該基材上に形成された厚みが1μm〜200μmのハードコート層と、該ハードコート層上に形成された厚みが0.001μm〜0.5μmの光学干渉層とを有する光学フィルムの製造方法であって、
該基材上に、ハードコート層形成用塗布液を塗布しハードコート層を形成する工程と、光学干渉層用塗布液を塗布し光学干渉層を形成する工程と、
該光学フィルムに、検出感度のスペクトル幅W1が下記式1を満たす第一の光を照射した時の第1反射光強度(I1)を検出する第1検出工程と、
該光学フィルムに、検出感度のスペクトル幅W2が下記式2を満たす第二の光を照射した時の第2反射光強度(I2)を検出する第2検出工程と、
該第1反射光強度(I1)と、該第2反射光強度(I2)と、該第1の光の基準反射光強度(Istd1)及び該第2の光の基準反射光強度(Istd2)とに基づいて、該ハードコート層及び該光学干渉層のうち少なくとも一方で膜厚の変化が発生しているか否かを判別する厚み変化検出工程と、
を有する光学フィルムの製造方法。
(式1) W1<λ02/(8・nHC・dHC)
(式2) W2>λ02/(2・nHC・dHC)
ここでスペクトル幅は半値全幅を表し、λ0は光源の中心波長[nm]、nHCはハードコート層の光源の中心波長における屈折率、dHCはハードコート層の厚み[nm]を表す。
7.
基材と、該基材上に形成された厚みが1μm〜200μmのハードコート層と、該ハードコート層上に形成された厚みが0.001μm〜0.5μmの光学干渉層とを有する光学フィルムの製造方法であって、
該基材上に、ハードコート層形成用塗布液を塗布しハードコート層を形成する工程と、光学干渉層用塗布液を塗布し光学干渉層を形成する工程と、
該光学フィルムに、検出感度のスペクトル幅W1が下記式1を満たす第一の光を照射した時の第1反射光強度(I1)を検出する第1検出工程と、
該光学フィルムに、検出感度のスペクトル幅W2が下記式2を満たす第二の光を照射した時の第2反射光強度(I2)を検出する第2検出工程と、
該第1反射光強度(I1)と、該第2反射光強度(I2)と、該第1の光の基準反射光強度(Istd1)及び該第2の光の基準反射光強度(Istd2)とに基づいて、該ハードコート層及び該光学干渉層のうち少なくとも一方で膜厚の変化が発生しているか否かを判別する厚み変化検出工程と、
該第2反射光強度と該第2の光に対する基準反射光強度との差I2−Istd2に基づいて、該光学干渉層における膜厚の変化の変化量を検出し、該変化量に基づいて該光学干渉層用塗布液の塗布量を制御する光学干渉層用塗布液塗布量調整工程と、
該ハードコート層塗布液の塗布量を段階的に増減させて、該第2反射光強度と該第2の光に対する基準反射光強度との差と、該第1反射光強度と該第1の光に対する基準反射光強度との差との差の絶対値|{(I2−Istd2)−(I1−Istd1)}|を、閾値(ε)と比較することで、最適な塗布量を決定し、該ハードコート層塗布液の塗布量を制御するハードコート層塗布液塗布量調整工程と、を有する光学フィルムの製造方法。
(式1) W1<λ02/(8・nHC・dHC)
(式2) W2>λ02/(2・nHC・dHC)
ここでスペクトル幅は半値全幅を表し、λ0は光源の中心波長[nm]、nHCはハードコート層の光源の中心波長における屈折率、dHCはハードコート層の厚み[nm]を表す。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基材上にハードコート層及び光学干渉層を有する光学フィルムの膜厚測定方法であって、ハードコート層及び光学干渉層の両方の膜厚を高速で測定する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】光学干渉層が単層の光学フィルムを示す断面模式図である。
【図2】光学干渉層が多層の光学フィルムを示す断面模式図である。
【図3】光学フィルムの膜厚測定装置を示す模式図である。
【図4】光学フィルムの膜厚測定装置を示す模式図である。
【図5】光学フィルムの膜厚測定装置を示す模式図である。
【図6】光学フィルムの膜厚測定装置を示す模式図である。
【図7】光学フィルムの膜厚測定装置を示す模式図である。
【図8】光学フィルムの膜厚測定装置を示す模式図である。
【図9】光学フィルムを構成するハードコート層の膜厚と反射スペクトルの関係を示す模式図である。
【図10】光学フィルムを構成するハードコート層の膜厚と反射スペクトルの関係を示す模式図である。
【図11】光学フィルムを構成するハードコート層の膜厚と反射スペクトルの関係を示す模式図である。
【図12】光学フィルムを構成する光学干渉層の膜厚が変化した時の反射スペクトルの変化の模式図である。
【図13】光学フィルムを構成するハードコート層の膜厚が変化した時の反射スペクトルの変化の模式図である。
【図14】膜厚の変化の発生の有無を判別するフローを示す模式図である。
【図15】膜厚の変化に基づいて塗布量を変化させるフローを示す模式図である。
【図16】光学フィルムの製造方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、特定範囲の厚みを有するハードコート層と光学干渉層とを有する光学フィルムに対して、後に詳述する特定の条件を満たすブロードな線幅とシャープな線幅の2種類の光を照射し、それぞれの反射光の強度を検出するものである。更にこの検出値を膜厚変化発生箇所検出のための計算式に代入することで、前記ハードコート層及び光学干渉層における膜厚の変化を両方、かつ高速で検出することを可能としたものである。
本発明の光学フィルムの膜厚測定方法は、基材と、該基材上に形成されたハードコート層と、該ハードコート層上に形成された少なくとも1層の光学干渉層とを有する光学フィルムの膜厚測定方法であって、該ハードコート層の厚みが1μm〜200μmであり、該光学干渉層の厚みが0.001μm〜0.5μmであり、該光学フィルムに、検出感度のスペクトル幅W1が下記式1を満たす第一の光を照射した時の第1反射光強度(I1)を検出する第1検出工程と、該光学フィルムに、検出感度のスペクトル幅W2が下記式2を満たす第二の光を照射した時の第2反射光強度(I2)を検出する第2検出工程と、該第1反射光強度(I1)と、該第2反射光強度(I2)と、該第1の光の基準反射光強度(Istd1)及び該第2の光の基準反射光強度(Istd2)とに基づいて、該ハードコート層及び該光学干渉層のうち少なくとも一方で膜厚の変化が発生しているか否かを判別する厚み変化検出工程と、を有する光学フィルムの膜厚測定方法である。
(式1) W1<λ02/(8・nHC・dHC)
(式2) W2>λ02/(2・nHC・dHC)
ここでスペクトル幅は半値全幅を表し、λ0は光源の中心波長[nm]、nHCはハードコート層の光源の中心波長における屈折率、dHCはハードコート層の厚み[nm]を表す。
【0015】
図1は、光学フィルムの断面を概略的に示す図である。
図1に示される光学フィルム3は、基材B上に、ハードコート層1と、該ハードコート層1上に光学干渉層2とを有する。
ハードコート層1及び光学干渉層2は、いかなる方法により形成されたものでもよい。ハードコート層及び光学干渉層の形成方法としては、例えば、塗布法及び蒸着法などが挙げられるが、製造速度の観点から塗布法が好ましい。塗布法としては、逐次塗布、及び重層塗布などが挙げられる。
図2は、光学干渉層が多層の光学フィルムを示す断面模式図である。図2において2’は多層の光学干渉層であり、例えばハードコート層1側から中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の順に積層する態様などがある。
【0016】
図3は、光学フィルムの膜厚測定装置の一例を概略的に示す図である。
図3に示される反射防止フィルムの膜厚測定装置10は、第1の光源11、第2の光源12、第1の光源11からの光の反射光を検出する検出器13、第2の光源12からの光の反射光を検出する検出器14、及び膜厚推定部15を含んでなる。
検出器13は第1の光源11からの光が光学フィルムで反射した光を検出する。
検出器14は第2の光源12からの光が光学フィルムで反射した光を検出する。
第1の光源11と第1の検出器13からなる検出工程1の検出感度のスペクトル幅W1は式1に従う。
第2の光源12と第2の検出器14からまる検出工程2の検出感度のスペクトル幅W2は式2に従う。
(式1) W1<λ02/(8・nHC・dHC)
(式2) W2>λ02/(2・nHC・dHC)
ここでスペクトル幅は半値全幅を表し、λ0は光源の中心波長[nm]、nHCはハードコート層の光源の中心波長における屈折率、dHCはハードコート層の厚み[nm]を表す。
膜厚推定部15は、検出器13及び14で検出した反射光のデータから光学フィルムの膜厚を推定する機能を有する。膜厚推定部15は例えばパーソナルコンピュータ等のデータ処理装置であって、検出器13及び14とデータ通信を行う機能と、入力したデータを処理する機能を有する。これらの機能はデータ処理装置のハードウェアとソフトウェアによって実現することができる。
【0017】
前記の検出感度のスペクトルとは、光源の発光スペクトルと検出器の感度のスペクトルの積で決まる。更に、光源から検出器にいたる光路のいずれかに光学フィルターを挿入することも可能である。透過フィルターとして用いる場合、検出感度のスペクトルは先の積にこの光学フィルターの透過スペクトルが積算される。また反射フィルターとして用いる場合、この光学フィルターの反射スペクトルが積算される。
スペクトル幅の狭い光源を得るためには、スペクトル線を発する光源を用いることが好ましい。例えば水銀ランプなどが好適に用いられる。また屈折率の異なる材料を積層した干渉フィルターを用いることで狭帯域の感度を得ることができる。
またスペクトル幅の広い光源を得るためには、熱的な光源、固体光源を用いることが好ましい。例えばA光源、LED光源、熱ランプなどが好適に用いられる。紫外域に広いスペクトル幅を有する光源としては、紫外LEDが好ましい。
【0018】
膜厚推定部15では、第1の光源の反射光の反射光強度I1と、第2の光源の反射光の反射光強度I2と、第1の光源の反射光の基準反射光強度Istd1、及び第2の光源の反射光の基準反射光強度Istd2とに基づいて、ハードコート層及び光学干渉層で膜厚の変化が発生しているか否かを判別する厚み変化検出工程が行われる。
厚み変化検出工程における処理において、用いる測定値は反射光強度と反射率のどちらでも良い。反射率Rは光源の光強度をIo、反射光の光強度をIとした時にR=I/Ioで定義される。反射光強度を用いる場合、光源の光強度に依存して厚み変化検出工程で用いる閾値の値が変化する。一方、反射率を用いる場合、閾値は光源の光強度に依存しない。
【0019】
より詳細には、図14に示すように、第2の光源の反射光の反射光強度I2と、第2の光源の反射光の基準反射光強度Istd2との差を、あらかじめ設定した閾値(ε2)と比較することで、前記光学干渉層における膜厚の変化の発生の有無を判別することができる。
また、図15に示すように、I2とIstd2との差と、I1とIstd1との差との差を、あらかじめ設定した閾値(ε)と比較することで、前記ハードコート層における膜厚の変化の発生の有無を判別することができる。
【0020】
第1の光源の反射光の基準反射光強度Istd1、及び第2の光源の反射光の基準反射光強度Istd2は、あらかじめ設定することもできるし、測定中に測定値に基づいて設定することもできる。例えば、使用するハードコート層の組成、光学干渉層の組成、設定膜厚などによって、目標とする反射率をあらかじめ決めておき、この値と光源の光強度の積をIstd1、Istd2に設定することができる。これは製造中の膜厚変化を検出し、塗布量にフィードバックして常に安定した膜厚を得たい時に適している。また測定中の値に基づいて設定する方法として、例えばある領域の反射率を平均化し、この値と光源の光強度の積をIstd1、Istd2に設定することができる。これにより周囲の反射率と異なる領域を検出することができるため、スジや点欠陥などの欠陥を検出するのに適している。
【0021】
閾値ε、ε2は対象とする光学フィルムの層構成、測定光源の波長及び検出目標とする厚み変化から測定若しくは計算によって得られる反射率若しくは反射光強度の値を下記式に代入することで算出される。
ε=|{(I2−Istd2)−(I1−Istd1)}|
ε2=|(I2−Istd2)|
ここでIstd1、Istd2は標準サンプルを光源1、光源2で測定したときの反射光強度若しくは反射率、I1、I2は検出目標レベルだけ膜厚が変化したサンプルを光源1、光源2で測定したときの反射光強度若しくは反射率を表す。閾値ε、ε2は測定データから算出して設定しても良いし、光学薄膜干渉の理論計算を用いて算出しても良い。測定データから算出する場合、標準サンプルと標準サンプルから検出目標レベルだけ膜厚が変化したサンプルを用意し、それぞれの反射率測定値若しくは反射光強度測定値から下記式を用いて算出する。また光学薄膜干渉の理論計算を用いて算出する場合、設計目標である屈折率と膜厚から膜厚変化に対する反射率変化を予測し、これに基づいて上記の測定データから算出する場合と同様に閾値を算出する。層構成から反射率を予測する光学薄膜干渉の理論計算は様々な方法が知られているが、例えば非特許文献1(応用物理工学選書3薄膜、P.165−192 吉田貞史著)に記載の計算手法を用いることができる。
【0022】
本発明の光学フィルムの膜厚測定方法において、ハードコート層と光学干渉層の両方の膜厚の変化を推定する機構は、光学干渉層の反射スペクトルが波長に対してゆるやかに変化するのに対し、ハードコート層の反射スペクトルが波長に対して細かく変化する特性を利用したものである。光学干渉層とハードコート層を有する光学フィルムにおいて、様々な厚さを有するハードコート層の厚さを様々に変えた時の反射スペクトルの様子を図9〜11に示す。これらの図に示すようにハードコート層と光学干渉層を有する光学フィルムからの反射スペクトルはゆるやかに変化する成分と細かく変化する成分を重畳したものとして現れる。ここでゆるやかに変化する成分とは、可視域内の山の数が3つ以下のものを指す。一方細かく変化する成分とは可視域内の山の数が5つ以上のものを指す。光学フィルムの反射スペクトルはこれら二つの成分が加算されたものとなる。
ゆるやかに変化する成分の形状は光学フィルムを構成する部材の屈折率と光学干渉層と膜厚によって決まる。また細かく変化する成分の形状は光学フィルムを構成する部材の屈折率とハードコート層の膜厚によって決まる。
図12及び13に光学干渉層の膜厚、ハードコート層の膜厚それぞれが変化した時の反射スペクトルの変化を示す。光学干渉層の膜厚が変化した場合(図12)、スペクトル中の細かく変化する成分の山谷の位置はほとんど変化せず、ゆるやかに変化する成分のスペクトル形状が変化する。これを測定した場合、スペクトル幅の広い光源を用いてもスペクトル幅の狭い光源を用いても反射率が同程度変化して検出される。
一方、ハードコート層の膜厚が変化した場合(図13)、スペクトル中の細かく変化する成分の山谷の位置は変化するが、ゆるやかに変化する成分のスペクトル形状は変化しない。これをスペクトル幅の広い光源で測定した場合、細かく変化する成分は平均化されるため、反射率の変化として検出されない。一方スペクトル幅の狭い光源で測定した場合は、細かく変化する成分の山谷の変化を反射率の変化として検出する。
すなわち光学干渉層の膜厚変化は本発明における前記光源1及び前記光源2を用いた反射率に影響を与え、その大きさは同程度である。一方、ハードコート層の膜厚変化は本発明における前記光源1を用いた反射率のみに影響を与え、前記光源2を用いた反射率には影響を与えない。
これより前記光源2で検出される反射率変化は光学干渉層の膜厚変化に起因することが分かる。また光学干渉層の膜厚のみが変化した場合、(I2−Istd2)と(I1−Istd1)の値が同程度となるため、その差分である|{(I2−Istd2)−(I1−Istd1)}|はほぼ0(<ε)となる。これより|{(I2−Istd2)−(I1−Istd1)}|>εとなる場合は、ハードコート層に膜厚変化が生じている場合と特定することができる。
このように本発明における前記光源1で検出される反射率変化と前記光源2で検出される反射率変化を比較することで、ハードコート層、光学干渉層それぞれの膜厚変化を特定することが可能となる。
【0023】
(式1) W1<λ02/(8・nHC・dHC)
(式2) W2>λ02/(2・nHC・dHC)
光源1、2から照射される光のスペクトル幅はそれぞれ上記式1、式2を満たす。式中のλ02/(2・nHC・dHC)は反射スペクトルに現れるハードコート層の厚みに起因したリップル構造における隣合った山の間隔Δλを表す(図9〜11参照)。膜厚が変化することで反射スペクトル中に現れる山の位置が変化する。そのため光源1のようにΔλの四分の一程度のスペクトル幅を有する光源で計測すると、ハードコート層の膜厚変化に従って測定される反射率の値が大きく変化する。一方、光源2のスペクトル幅をΔλ程度以上にすることで、中心波長±Δλの範囲の平均的な反射率を得ることができる。この値はハードコート層の膜厚の変化の影響を受けず、表面の光学干渉層の変化のみを検出することができる。
波長380nm、ハードコート層の屈折率が1.5である場合、ハードコート層の膜厚が1μm程度の時は、光源2から照射される光のスペクトル幅は好ましくは50nm以上である。ハードコート層の膜厚が5μm程度の時は、光源2から照射される光のスペクトル幅は好ましくは10nm以上である。ハードコート層の膜厚が10μm程度の時は、光源2から照射される光のスペクトル幅は好ましくは5nm以上である。ハードコート層の膜厚が20μm程度である場合、光源2から照射される光のスペクトル幅は好ましくは2.4nm以上である。
【0024】
光源としては、点光源、ライン光源、面光源等が挙げられる。検出に寄与しない光は無駄であるため、検出器から光源を見込む角度は大きすぎない方が好ましい。その角度は1°以上30°以下が好ましく、2°以上10°以下がより好ましい。
【0025】
光源から照射される光の波長は特に限定されないが、基材によって吸収される波長が好ましい。その波長における光透過率は50%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。例えばハードコート層上に光学干渉層として低屈折率層を有する反射防止フィルムの場合、可視光線又は紫外線が好ましく、紫外線がより好ましい。これは反射防止フィルムの基材には紫外線吸収剤を含むことがあり、この場合紫外線を用いることで、基材の裏面からの反射を除去し、表面の膜厚変化を感度良く検出することができる。
更に反射防止フィルムは波長450nm〜600nmの間で反射率がもっとも低くなるように膜厚が設定されている。このとき膜厚変化に対する反射率変化は波長330nmから390nmの間で大きく、350nmから370nmの間でより大きい。そのため検出光のピーク波長は330nm以上390nm以下が好ましく、350nm以上370nm以下がより好ましい。
検出可能な膜厚変化は測定系が持つノイズに依存する。例えば検出系の光量検出のノイズが2%とすると、本発明の膜厚測定方法では、可視光線を使用した場合、低屈折率層の膜厚変化5%以上を検出することができる。また紫外線を使用した場合、低屈折率層の膜厚変化1%以上を検出することができる。
また、ハードコート層の膜厚変化は、可視光線を使用した場合、及び紫外線を使用した場合、どちらも25nm以上の変化を検出することができる。
【0026】
光の強度としては、フィルムにダメージを与える可能性があるため、強すぎない方が好ましいが、弱すぎると検出できないため適宜設定されることが好ましい。
UV透過フィルターを用いる際は検出器側、光源側のどちらに配置することも可能であるが(図5、6)、波長300nm以下の深紫外光が光拡散部や集光部などの光学系にダメージを与える可能性があるため、深紫外光をカットできるUV透過フィルターを光源側に配置することが好ましい。またUV透過フィルタの特性は365nm付近にピークがあることが好ましく、その半値幅は5nm以上50nm以下が好ましく、10nm以上30nm以下がより好ましい。
【0027】
光の照射角及び検出角については、フィルムの法線方向と成す角に関して、照射角と検出角は等しいことが好ましい。
その角度は0°〜80°で検出できるが、0°〜20°がスジの検出能が高いためより好ましい。
【0028】
2つの光源の配置としては、2つの光源で照射した光を検出できる配置であれば良い。測定時間を考えると、検出系1(光源1/検出器)、検出系2(光源2/検出器)を配置することが好ましい(図3、4)。スペースの制約がある場合、導光板タイプの光源を用意し、一方にスペクトル幅の狭い線スペクトル光源、もう一方にスペクトル幅の広いブロード光源を配置し、交互に点滅させることで各光源の光を一つの検出器で検出することもできる(図8)。またスペクトル幅のブロードな光源を配置し、検出器の前に配置する紫外透過フィルターの帯域を狭帯域と広帯域のものに交互に切り替えることで、一つの光源と一つの検出器で狭帯域と広帯域の二つの検出感度スペクトルを得ることもできる(図9)。
【0029】
本手法を適用できるハードコート層の厚みは、好ましくは1μm以上200μm以下であり、1μm以上100μm以下でより好適であり、1μm以上50μm以下の場合更に良好である。
本手法を適用できる光学干渉層の厚みは、好ましくは0.001μm〜0.5μmであり、0.01μm〜0.2μmでより好適であり、0.07μm〜0.13μmの場合更に良好である。
【0030】
図16は、光学フィルムの製造装置の一例を概略的に示す図である。
図16に示される光学フィルムの製造装置20は、送り出しロール21、塗布液塗布部22、塗布液硬化部23、第1の光源24、第2の光源25、第1の光源24からの光の反射光を検出する検出器26、第2の光源25からの光の反射光を検出する検出器27、膜厚推定部28、及び巻き取りロール29を含んでなる。
長尺の基材Bが巻回された送り出しロール21から基材Bが送り出され、塗布液塗布部22にて、ハードコート層用塗布液と光学干渉層用塗布液が塗布される。塗布液塗布部22において、ハードコート層用塗布液と光学干渉層用塗布液は逐次塗布でもよいし、同時塗布でもよい。
塗布方法としては、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書参照)が用いられ、これらの塗布方式のうちいずれかの方法により透明基材上に塗布し、加熱・乾燥する。これらの塗布方式のうち、グラビアコート法で塗布すると反射防止膜の各層のような塗布量の少ない塗布液を膜厚均一性高く塗布することができ、好ましい。グラビアコート法の中でもマイクログラビア法は膜厚均一性が高く、より好ましい。また、ダイコート法を用いても塗布量の少ない塗布液を膜厚均一性高く塗布することができ、更にダイコート法は前計量方式のため膜厚制御が比較的容易であり、更に塗布部における溶剤の蒸散が少ないため、好ましい。二層以上を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許第2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書及び原崎勇次著、「コーティング工学」、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。塗布層の膜厚はコーターに送られる塗布液の流量で決まる。この流量は塗布液を送液するポンプの回転速度で決まる。
塗布液硬化部23によりハードコート層及び光学干渉層が硬化される。ただし、逐次塗布の場合は、ハードコート層用塗布液を塗布してから光学干渉層用塗布液を塗布するまでの間に、ハードコート層用塗布液の乾燥工程、硬化工程などを設けてもよい。
硬化の方法は特に制限は無く、熱による硬化、紫外線などの光照射による硬化が挙げられるが、紫外線などの光照射による硬化が好ましい。
次に、前述のように反射光の検出工程と厚み変化検出工程でハードコート層及び光学干渉層の膜厚変化が推定される。これにより膜厚ムラの発生や、製造中の膜厚変化を検出することができる。
本発明の膜厚測定方法は、光学フィルムの製造工程において、基材の搬送速度が静止状態から100m/min程度の場合まで、オンラインでの膜厚変化の測定が可能である。光学フィルムの製造工程において、搬送速度は1m/minから50m/min程度が設定される。
【0031】
製造中の膜厚変化を検出した場合、膜厚変化の推定結果を塗布液塗布部22にフィードバックし、塗布液の塗布量を調節することで膜厚を調節することができる。具体的には、光学干渉層について、基準膜厚と検出膜厚の間に膜厚変化を検出した場合、下記式に従って光学干渉層用塗布液を送液するポンプの回転速度を変更する。
新しい回転速度=元の回転速度×基準膜厚/検出膜厚
一方、ハードコート層について、基準膜厚と検出膜厚の間に膜厚変化を検出した場合、まず塗布量を段階的に増減させて、反射率を測定する。次に基準膜厚に対応した反射率となる塗布量を選択し、その塗布量に対応するようにハードコート層用塗布液を送液するポンプの回転速度を変更する。塗布量の変更は送液に用いるポンプの回転数を変えることで達成される。塗布量調整は電気回路、電子回路、コンピューター等により自動で制御することも可能である。
【0032】
(基材)
次に、基材について説明する。
本発明における光学フィルムに用いられる基材は、ポリマー組成物からなることが好ましい。使用可能なポリマー材料の例には、セルロースアシレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエステル、ポリスチレン、スチレン系共重合体、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート系共重合体、ポリ塩化ビニリデン等が含まれる。但し、これらに限定されるものではない。
【0033】
使用可能なセルロースアシレートについて更に説明する。
セルロースアシレートフィルムの原料のセルロースとしては、綿花リンター、ケナフ、木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)等があり、何れの原料セルロースから得られるセルロースエステルでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。
【0034】
セルロースアシレートの合成方法は、発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行発明協会)p.7〜12に詳細に記載されているので、参照することができる。
【0035】
本発明における基材は、主原料となる1種又は2種以上のポリマーとともに、添加剤を含有していてもよい。添加剤の例には、可塑剤(好ましい添加量はポリマーに対して0.01〜20質量%、以下同様)、紫外線吸収剤(0.001〜1質量%)、フッ素系界面活性剤(0.001〜1質量%)、剥離剤(0.0001〜1質量%)、劣化防止剤(0.0001〜1質量%)、光学異方性制御剤(0.01〜10質量%)、赤外線吸収剤(0.001〜1質量%)等が含まれる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、微量の有機材料、無機材料及びそれらの混合物からなる粒子を分散含有していてもよい。これらの粒子は、製膜時におけるフィルムの搬送性向上を目的として添加される。この目的を達成し、本発明の効果を損なわないためには、粒子の粒径は5〜3000nmであるのが好ましく、粒子の屈折率は基材フィルムの屈折率との差が0〜0.5であるのが好ましく、添加量は1質量%以下であるのが好ましい。例えば、無機材料の粒子の例には、酸化珪素、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粒子が含まれる。有機材料の粒子の例には、アクリル系樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、スチレン系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等が含まれる。
【0036】
(ハードコート層)
次に、ハードコート層について説明する。
本発明における光学フィルムは、フィルムの物理的強度を付与するために、基材上にハードコート層を有する。
【0037】
ハードコート層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を透明支持体上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。
電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーが有する官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0038】
ハードコート層には、内部散乱性付与の目的で、平均粒径が1.0〜10.0μm、好ましくは1.5〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子又は樹脂粒子を含有してもよい。
【0039】
ハードコート層のバインダーには、ハードコート層の屈折率を制御する目的で、高屈折率モノマー又は無機粒子、或いは両者を加えることができる。無機粒子には屈折率を制御する効果に加えて、架橋反応による硬化収縮を抑える効果もある。本発明では、ハードコート層形成後において、前記多官能モノマー及び/又は高屈折率モノマー等が重合して生成した重合体、その中に分散された無機粒子を含んでバインダーと称する。
【0040】
ハードコート層の屈折率は、反射防止性のフィルムを得るための光学設計から、屈折率が1.48〜2.00の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.48〜1.70である。本発明では、ハードコート層の上に低屈折率層が少なくとも1層あるので、屈折率がこの範囲より小さ過ぎると反射防止性が低下し、大き過ぎると反射光の色味が強くなる傾向がある。
【0041】
ハードコート層の強度は、鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。更に、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0042】
(光学干渉層)
次に、光学干渉層について説明する。
本発明における光学フィルムは、前記ハードコート層上に光学干渉層を有する。光学干渉層を有することで反射防止機能を付与したり、反射率増加機能を付与することができる。光学干渉層を低屈折率層とすることで反射防止機能を付与することができる。低屈折率層の屈折率は前記ハードコート層の屈折率より低く設定することが好ましい。低屈折率層とハードコート層との屈折率差は0.01以上0.40以下が好ましく、0.05以上0.30以下がより好ましい。
【0043】
低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.46であることが好ましく、1.25〜1.42であることがより好ましく、1.30〜1.38であることが特に好ましい。
【0044】
低屈折率層は、低屈折率素材を用いて形成することができる。低屈折率素材としては、低屈折率バインダーを用いることができる。また、バインダーに微粒子を加えて低屈折率層を形成することもできる。また、低屈折率層形成用組成物は後述するオルガノシラン化合物を含有することもできる。
【0045】
低屈折率バインダーとしては、含フッ素共重合体を好ましく用いることができる。含フッ素共重合体は、含フッ素ビニルモノマーから導かれる構成単位と架橋性付与のための構成単位を有することが好ましい。
【実施例】
【0046】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0047】
〔光学フィルムの作製〕
下記に示す通りに光学フィルムサンプル1〜4を作製した。
【0048】
(ハードコート層用塗布液の調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌してハードコート層塗布液とした。
トリメチロールプロパントリアクリレート(ビスコート#295(大阪有機化学(株)製)750.0質量部に、質量平均分子量15000のポリ(グリシジルメタクリレート)270.0質量部、メチルエチルケトン730.0質量部、シクロヘキサノン500.0質量部及び光重合開始剤(イルガキュア184、日本チバガイギー(株)製)50.0質量部を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用の塗布液を調製した。
【0049】
(低屈折率層用塗布液の調製)
(パーフルオロオレフィン共重合体(1)の合成)
【0050】
【化1】
【0051】
内容量100mlのステンレス製撹拌機付オートクレーブに酢酸エチル40ml、ヒドロキシエチルビニルエーテル14.7g及び過酸化ジラウロイル0.55gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。更にヘキサフルオロプロピレン(HFP)25gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は、0.53MPa(5.4kg/cm2)であった。該温度を保持し8時間反応を続け、圧力が0.31MPa(3.2kg/cm2)に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションにより溶剤を除去することにより沈殿したポリマーを取り出した。更にこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後ポリマー28gを得た。次に該ポリマーの20gをN,N−ジメチルアセトアミド100mlに溶解、氷冷下アクリル酸クロライド11.4gを滴下した後、室温で10時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え水洗、有機層を抽出後濃縮し、得られたポリマーをヘキサンで再沈殿させることによりパーフルオロオレフィン共重合体(1)を19g得た。得られたポリマーの屈折率は1.422であった。
【0052】
(ゾル液aの調製)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、メチルエチルケトン120質量部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103、信越化学工業(株)製)100質量部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート3質量部を加え混合したのち、イオン交換水31質量部を加え、61℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液aを得た。質量平均分子量は1620であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
【0053】
(中空シリカ分散液の調製)
中空シリカ微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、触媒化成工業(株)製CS60−IPA、平均粒子径60nm、シェル厚み10nm、シリカ濃度20質量%、シリカ粒子の屈折率1.31)500質量部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン30.5質量部、及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.51質量部加え混合した後に、イオン交換水を9質量部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8質量部を添加し、分散液を得た。その後、シリカの含率がほぼ一定になるようにシクロヘキサノンを添加しながら、圧力30Torrで減圧蒸留による溶媒置換を行い、最後に濃度調整により固形分濃度18.2質量%の分散液を得た。得られた分散液のIPA残存量をガスクロマトグラフィーで分析したところ0.5%以下であった。
【0054】
(低屈折率層用塗布液の調製)
DPHA 5.6g
P−1 2.4g
中空シリカ分散液(18.2%) 35.9g
RMS−033 0.5g
イルガキュア907 0.3g
ゾル液a 7.3g
MEK 287.9g
シクロヘキサノン 10.0g
【0055】
上記溶液を攪拌後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液を調製した。
【0056】
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
・P−1:パーフルオロオレフィン共重合体(1)
・DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製)
・中空シリカ:KBM−5103表面修飾中空シリカゾル(表面修飾率対シリカ30質量%、CS−60 IPA(触媒化成工業(株)製)屈折率1.31、平均粒径60nm、シェル厚み10nm、固形分濃度18.2%)
・RMS−033:反応性シリコーン(Gelest(株)製)
・イルガキュア907:光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
【0057】
(光学フィルムの作製)
膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム(TD80UF、富士写真フイルム(株)製)上に、ハードコート層用塗布液と低屈折率層用塗布液をダイコーターを用いて同時重層塗布した。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、ハードコート層を形成した。
【0058】
本実施例における光学フィルムの作成において、基材の搬送速度を30m/minに設定した。
【0059】
低屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm2、照射量600mJ/cm2の照射量とした。
【0060】
以上の方法で作製した光学フィルムサンプル1〜4の膜厚を表1に示す。
【0061】
本発明の手法にて膜厚変化を検出するため、基準サンプル(サンプル1)、低屈折率層の膜厚だけ変化させたサンプル(サンプル2)、ハードコート層の膜厚だけ変化させたサンプル(サンプル3)、低屈折率層の膜厚とハードコート層の膜厚を両方変化させたサンプル(サンプル4)を作成し、本発明の手法にてその変化を検出できるか検証した。
【0062】
【表1】
【0063】
各サンプルの反射光強度測定値を元に、本発明の手法、及び比較例(従来)の手法について、膜厚変化箇所の特定可否、及び検出感度を評価した。比較例、実施例中のスペクトル幅は分光放射輝度の半値全幅で表した。本実施例では、測定で得られた反射光強度Iを反射率Rに換算してから膜厚変化箇所の推定を行ったため、以下では反射光強度Iの代わりに反射率Rを記載する。反射率Rは光源を直接測定した時の光強度Ioと反射光の光強度Iの比I/Ioで定義される。
【0064】
(比較例1 可視1波長)
波長546.1nm スペクトル幅1nm 水銀ランプ×緑色バンドパスフィルター(ショット社製VG9)を用いて各サンプルについて反射率を測定した。
【0065】
【表2】
【0066】
測定反射率(R)と基準反射率(Rstd)の差をΔR=R−Rstdとする。ここでRstdはサンプル1の反射率に設定した。
その結果、サンプル2から4のΔRはそれぞれ変化するため、ハードコート層と低屈折率層のどちらで膜厚変化が起きたかを特定することができない。また反射率Rに対する反射率変化ΔRの比はそれぞれ1%以下となり、検出感度は低い。一方、1波長のみを検出するため、測定スピードは早い。
【0067】
(比較例1の評価)
評価結果は以下の通りであった。
膜厚ムラ発生箇所特定 ×
反射率変化の検出感度 △
【0068】
ここで膜厚ムラ発生箇所特定の判定基準は以下のように設定した。
○:特定できる
×:特定できない
また、反射率変化の検出感度は以下のように設定した。
○:光学干渉層の膜厚が2%変化した時の反射率変化が0.1%以上
△:光学干渉層の膜厚が2%変化した時の反射率変化が0.02%以上
×:光学干渉層の膜厚が2%変化した時の反射率変化が0.02%未満
【0069】
(比較例2 紫外1波長)
波長365nm スペクトル幅1nm 水銀ランプ×紫外バンドパスフィルター(HOYA製U360)を用いて各サンプルについて反射率を測定した。
【0070】
【表3】
【0071】
比較例1と同様に測定反射率(R)と基準反射率(Rstd)の差をΔR=R−Rstdとする。ここでRstdはサンプル1の反射率に設定した。
その結果、サンプル2から4のΔRはそれぞれ変化するため、ハードコート層と低屈折率層のどちらで膜厚変化が起きたかを特定することができない。また反射率Rに対する反射率変化ΔRの比はそれぞれ2%以上となり、検出感度は高い。一方、1波長のみを検出するため、測定スピードは早い。
【0072】
(比較例2の評価)
前記比較例1と同様の評価基準で評価した。
膜厚ムラ発生箇所特定 ×
反射率変化の検出感度 ○
【0073】
上記のように、光源を1つのみ用いた手法である比較例1、2の場合、ハードコート層、低屈折率層どちらの膜厚が変化しても反射率が変化するため、どちらの層で膜厚変化が起きたかを特定することができない。
【0074】
(実施例1 可視2波長)
光源1:波長546.1nm スペクトル幅1nm 水銀ランプ×緑色バンドパスフィルター(ショット社製VG9)を用いて各サンプルについて反射率を測定した。
また、光源2:波長545nm スペクトル幅35nm 緑色LEDを用いて各サンプルについて反射率を測定した。
【0075】
【表4】
【0076】
2つの光源で測定した反射率から下記のフローで膜厚変化箇所を推定する。本実施例では、基準膜厚に設定したサンプル1の光源1の反射率をRstd1、光源2の反射率をRstd2に設定した。
Rstd1=4.88%
Rstd2=4.89%
評価値:|R2−Rstd2|、及び評価値:|{(R2−Rstd2)−(R1−Rstd1)}|は以下の表5のようになる。
【0077】
【表5】
【0078】
今回1%の膜厚変化を検出するため、ε、ε2を以下のように設定した。
ε=0.02
ε2=0.02
これらの値はハードコート層、低屈折率層それぞれの屈折率、厚み、検出目標の膜厚変化を元に設定される。これらの値は光干渉の理論計算から求めることが可能である。またサンプルの実測値を参考に得ることも可能である。
実施例1におけるε、ε2は以下のように求めた。実施例におけるサンプル1の屈折率、厚み、測定波長545nmの条件において、光学干渉層の膜厚が1%変化した時の反射率の変化を理論計算すると、光源2で0.02となる。この値を閾値ε2に設定する。一方、ハードコート層の膜厚が1%変化した時の反射率の変化は、光源1で0.02、光源2で0.00となる。これらの値から|{(R2−Rstd2)−(R1−Rstd1)}|を計算で求めると0.02となるため、この値を閾値εに設定する。
【0079】
上記の評価値とε、ε2を比較した結果として、膜厚変化の発生箇所を推定した結果を表6に示す。
更に評価値ΔR2=R2−Rstd2から光学干渉層の膜厚の変化量を推定することも可能である。
【0080】
【表6】
【0081】
(実施例1の評価)
前記比較例1と同様の評価基準で評価した。
膜厚ムラ発生箇所特定○
反射率変化の検出感度△
【0082】
(実施例2 紫外2波長)
光源1:波長365nm スペクトル幅1nm 水銀ランプ×紫外バンドパスフィルター(HOYA製U360)を用いて各サンプルについて反射率を測定した。
光源2:波長365nm スペクトル幅30nm 紫外LEDを用いて各サンプルについて反射率を測定した。
【0083】
【表7】
【0084】
2つの光源で測定した反射率から下記のフローで膜厚変化箇所を推定した。本実施例では、基準膜厚に設定したサンプル1の光源1の反射率をRstd1、光源2の反射率をRstd2に設定した。
Rstd1=2.40%
Rstd2=2.41%
評価値:|R2−Rstd2|、評価値:|{(R2−Rstd2)−(R1−Rstd1)}|は以下の表8のようになる。
【0085】
【表8】
【0086】
今回1%の膜厚変化を検出するため、ε、ε2を以下のように設定した。
ε=0.02
ε2=0.06
これらの値は以下のように求めた。実施例2におけるサンプル1の屈折率、厚み、測定波長365nmの条件において、光学干渉層の膜厚が1%変化した時の反射率の変化を理論計算すると、光源2で0.06となる。この値を閾値ε2に設定する。一方、ハードコート層の膜厚が1%変化した時の反射率の変化は、光源1で0.02、光源2で0.00となる。これらの値から|{(R2−Rstd2)−(R1−Rstd1)}|を計算で求めると0.02となるため、この値を閾値εに設定する。
【0087】
【表9】
【0088】
(実施例2の評価)
前記比較例1と同様の評価基準で評価した。
膜厚ムラ発生箇所特定○
反射率変化の検出感度○
【0089】
上記検証実験より、本発明の手法を用いることで膜厚変化がハードコート層及び低屈折率層のどこで発生しているかを特定できることを確認した。本手法を実施例に記載した光学フィルムの製造工程で利用するため、製造工程中における硬化工程と巻き取り工程の間に本発明の膜厚測定装置を設置した。膜厚測定装置の光学系として、実施例2に記載した光源を選択した。これにより製造中における膜厚ムラの検出及び塗布中における膜厚変化を検出できた。
【0090】
更に検出した膜厚変化をフィードバックすることで、塗布量を調整し、膜厚安定化を行った。検出器はラインCCDを用い、幅方向の反射率分布を測定した。この反射率分布を元に膜厚分布を推定し、これを平均化することで塗布量の変化を推定した。これにより局所的な膜厚変動の影響を受けずに塗布量に対して適切なフィードバックをかけることができた。以下実施例3、実施例4において、実際のフィードバックの流れについて述べる。
【0091】
実施例3:光学干渉層の膜厚調整
実施例2の光学系において、評価値:|R2−Rstd2|が閾値ε2を超えた時、以下の手順で光学干渉層の塗布量の調整を行う。
(1)予め用意しておいた反射率Rと光学干渉層の膜厚dの関係d(R)から、基準反射率Rstd2、測定反射率R2それぞれの厚みdstd2、d2を算出する。
(2)以下の式を用いて新たな塗布量を算出し、光学干渉層用塗布液を送液するためのポンプの回転数を変更する。
塗布量比=dstd2/d2
新たな塗布量=塗布量比×元の塗布量
【0092】
実施例4:ハードコート層の膜厚調整
実施例2の光学系において、評価値:|{(R2−Rstd2)−(R1−Rstd1)}|が閾値εを超えた時、以下の手順でハードコート層の塗布量の調整を行う。
(1)塗布量を段階的に増減させ、それぞれの塗布量に対する光学フィルムの反射率を光源1、光源2を用いて測定する。
(2)再び評価値:|{(R2−Rstd2)−(R1−Rstd1)}|を計算し、評価値:|{(R2−Rstd2)−(R1−Rstd1)}|<εとなる塗布量を選択する。
(3)(2)で得た塗布量に基づいて、ハードコート層用塗布液を送液するためのポンプの回転数を変更する。
【符号の説明】
【0093】
B:基材
1:ハードコート層
2:光学干渉層
2’:多層の光学干渉層
3:光学フィルム
10:光学フィルムの膜厚測定装置
11:第1の光源
12:第2の光源
13、14:検出器
15:膜厚推定部
20:光学フィルムの製造装置
21:送り出しロール
22:塗布液塗布部
23:塗布液硬化部
24:第1の光源
25:第2の光源
26、27:検出器
28:膜厚推定部
29:巻き取りロール
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムの膜厚測定方法、及び光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、蛍光表示ディスプレイ(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)や液晶表示装置(LCD)のような画像表示装置では、表示面への傷付きを防止するため、及び表示面での外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、透明基材上にハードコート層及び低屈折率層若しくは高屈折率層、低屈折率層が交互に積層された光学干渉層を有し、反射防止機能を持たせた光学フィルムを設けることが好適である。
【0003】
また自動車や家などの窓ガラスには、表面への傷付きを防止するため、及び車内や室内の温度上昇を防ぐために、透明基材上にハードコート層及び高屈折率層若しくは低屈折率層、高屈折率層が交互に積層された光学干渉層を有し、赤外反射機能若しくは紫外反射機能を持たせた光学フィルムを設けることが好適である。
【0004】
これらハードコート層及び光学干渉層を有する光学フィルムは基材上にハードコート層及び光学干渉層を塗布法や蒸着法などにより形成することで製造されるが、各層の膜厚が変化すると明るさや色味が変わる。また局所的に膜厚が変化するとスジ等の欠陥となる。
したがって、膜厚を精度良く、しかも高速に測定する手法があれば、製造中の膜厚変動をオンラインで検出し、厚みを決定する機構に対してフィードバックすることができる。また局所的な膜厚変化を検出することで、良品不良品の峻別を容易に行うことができる。
【0005】
例えば、非特許文献1には、屈折率の異なる薄層の積層物に対して、その反射スペクトルを予測する手法が記載されている。この予測法と最小二乗法などの逆演算法を組み合わせることで、反射率から薄層積層物の各層の厚みを推定することができる。
しかしながら、この方法では多数の波長の反射率値を取得する必要があるため、膜厚推定に時間が掛かり、製造ライン上(オンライン)での膜厚検出には適さない。
【0006】
特許文献1では、線幅が狭い光源を用いた反射率測定と透過率測定を組み合わせることで、2つの値から膜厚推定を行う方法が提案されている。これにより高速に膜厚推定を行うことができるが、この手法で検出できる膜厚変化はハードコート層、又は光学干渉層のいずれかであり、両方の膜厚変化を検出することはできない。
【0007】
特許文献2及び3では、紫外線を使うことで基材フィルムの裏面からの反射を除去し、表面の膜厚変化を感度良く検出する手法が提案されている。
しかしながら、これらの方法でも検出できる膜厚変化はハードコート層、又は光学干渉層のいずれかであり、両方の膜厚変化を検出することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−221401号公報
【特許文献2】特開2000−241127号公報
【特許文献3】特開2006−38728号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】応用物理工学選書3薄膜、P.165−192 吉田貞史著 培風館
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、基材上にハードコート層及び光学干渉層を有する光学フィルムの膜厚測定方法であって、ハードコート層及び光学干渉層の両方の膜厚を高速で測定する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1.
基材と、該基材上に形成されたハードコート層と、該ハードコート層上に形成された少なくとも1層の光学干渉層とを有する光学フィルムの膜厚測定方法であって、
該ハードコート層の厚みが1μm〜200μmであり、該光学干渉層の厚みが0.001μm〜0.5μmであり、
該光学フィルムに、検出感度のスペクトル幅W1が下記式1を満たす第一の光を照射した時の第1反射光強度(I1)を検出する第1検出工程と、
該光学フィルムに、検出感度のスペクトル幅W2が下記式2を満たす第二の光を照射した時の第2反射光強度(I2)を検出する第2検出工程と、
該第1反射光強度(I1)と、該第2反射光強度(I2)と、該第1の光の基準反射光強度(Istd1)及び該第2の光の基準反射光強度(Istd2)とに基づいて、該ハードコート層及び該光学干渉層のうち少なくとも一方で膜厚の変化が発生しているか否かを判別する厚み変化検出工程と、を有する光学フィルムの膜厚測定方法。
(式1) W1<λ02/(8・nHC・dHC)
(式2) W2>λ02/(2・nHC・dHC)
ここでスペクトル幅は半値全幅を表し、λ0は光源の中心波長[nm]、nHCはハードコート層の光源の中心波長における屈折率、dHCはハードコート層の厚み[nm]を表す。
2.
前記第2反射光強度と前記第2の光の基準反射光強度との差の絶対値|(I2−Istd2)|を閾値(ε2)と比較することで、前記光学干渉層における膜厚の変化の発生の有無を判別する上記1に記載の光学フィルムの膜厚測定方法。
3.
前記第2反射光強度と前記第2の光の基準反射光強度との差と、前記第1反射光強度と前記第1の光の基準反射光強度との差との差の絶対値|{(I2−Istd2)−(I1−Istd1)}|を、閾値(ε)と比較することで、前記ハードコート層における膜厚の変化の発生の有無を判別する上記1又は2に記載の光学フィルムの膜厚測定方法。
4.
前記第1の光、及び前記第2の光のうち少なくともいずれか一方が紫外線である上記1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルムの膜厚測定方法。
5.
基材と、該基材上に形成された厚みが1μm〜200μmのハードコート層と、該ハードコート層上に形成された厚みが0.001μm〜0.5μmの光学干渉層とを有する光学フィルムの膜厚を測定する膜厚測定装置であって、
該光学フィルムに検出感度のスペクトル幅W1が下記式1を満たす第1の光源と、該第1の光源を該光学フィルムに照射した時の光学フィルムからの反射光強度(I1)を検出する第1の検出器からなる第1検出部と、
該光学フィルムに検出感度のスペクトル幅W2が下記式2を満たす第2の光源と、該第2の光源を該光学フィルムに照射した時の該光学フィルムからの反射光強度(I2)を検出する第2の検出器からなる第2検出部と、
該第1の反射光強度(I1)、該第2の反射光強度(I2)、該第1の光の基準反射光強度(Istd1)及び該第2の光の反射光強度(Istd2)とに基づいて、該ハードコート層及び該光学干渉層のうち少なくとも一方で膜厚の変化が発生しているか否かを判別する膜厚測定部と、を有する光学フィルムの膜厚測定装置。
(式1) W1<λ02/(8・nHC・dHC)
(式2) W2>λ02/(2・nHC・dHC)
ここでスペクトル幅は半値全幅を表し、λ0は光源の中心波長[nm]、nHCはハードコート層の光源の中心波長における屈折率、dHCはハードコート層の厚み[nm]を表す。
6.
基材と、該基材上に形成された厚みが1μm〜200μmのハードコート層と、該ハードコート層上に形成された厚みが0.001μm〜0.5μmの光学干渉層とを有する光学フィルムの製造方法であって、
該基材上に、ハードコート層形成用塗布液を塗布しハードコート層を形成する工程と、光学干渉層用塗布液を塗布し光学干渉層を形成する工程と、
該光学フィルムに、検出感度のスペクトル幅W1が下記式1を満たす第一の光を照射した時の第1反射光強度(I1)を検出する第1検出工程と、
該光学フィルムに、検出感度のスペクトル幅W2が下記式2を満たす第二の光を照射した時の第2反射光強度(I2)を検出する第2検出工程と、
該第1反射光強度(I1)と、該第2反射光強度(I2)と、該第1の光の基準反射光強度(Istd1)及び該第2の光の基準反射光強度(Istd2)とに基づいて、該ハードコート層及び該光学干渉層のうち少なくとも一方で膜厚の変化が発生しているか否かを判別する厚み変化検出工程と、
を有する光学フィルムの製造方法。
(式1) W1<λ02/(8・nHC・dHC)
(式2) W2>λ02/(2・nHC・dHC)
ここでスペクトル幅は半値全幅を表し、λ0は光源の中心波長[nm]、nHCはハードコート層の光源の中心波長における屈折率、dHCはハードコート層の厚み[nm]を表す。
7.
基材と、該基材上に形成された厚みが1μm〜200μmのハードコート層と、該ハードコート層上に形成された厚みが0.001μm〜0.5μmの光学干渉層とを有する光学フィルムの製造方法であって、
該基材上に、ハードコート層形成用塗布液を塗布しハードコート層を形成する工程と、光学干渉層用塗布液を塗布し光学干渉層を形成する工程と、
該光学フィルムに、検出感度のスペクトル幅W1が下記式1を満たす第一の光を照射した時の第1反射光強度(I1)を検出する第1検出工程と、
該光学フィルムに、検出感度のスペクトル幅W2が下記式2を満たす第二の光を照射した時の第2反射光強度(I2)を検出する第2検出工程と、
該第1反射光強度(I1)と、該第2反射光強度(I2)と、該第1の光の基準反射光強度(Istd1)及び該第2の光の基準反射光強度(Istd2)とに基づいて、該ハードコート層及び該光学干渉層のうち少なくとも一方で膜厚の変化が発生しているか否かを判別する厚み変化検出工程と、
該第2反射光強度と該第2の光に対する基準反射光強度との差I2−Istd2に基づいて、該光学干渉層における膜厚の変化の変化量を検出し、該変化量に基づいて該光学干渉層用塗布液の塗布量を制御する光学干渉層用塗布液塗布量調整工程と、
該ハードコート層塗布液の塗布量を段階的に増減させて、該第2反射光強度と該第2の光に対する基準反射光強度との差と、該第1反射光強度と該第1の光に対する基準反射光強度との差との差の絶対値|{(I2−Istd2)−(I1−Istd1)}|を、閾値(ε)と比較することで、最適な塗布量を決定し、該ハードコート層塗布液の塗布量を制御するハードコート層塗布液塗布量調整工程と、を有する光学フィルムの製造方法。
(式1) W1<λ02/(8・nHC・dHC)
(式2) W2>λ02/(2・nHC・dHC)
ここでスペクトル幅は半値全幅を表し、λ0は光源の中心波長[nm]、nHCはハードコート層の光源の中心波長における屈折率、dHCはハードコート層の厚み[nm]を表す。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基材上にハードコート層及び光学干渉層を有する光学フィルムの膜厚測定方法であって、ハードコート層及び光学干渉層の両方の膜厚を高速で測定する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】光学干渉層が単層の光学フィルムを示す断面模式図である。
【図2】光学干渉層が多層の光学フィルムを示す断面模式図である。
【図3】光学フィルムの膜厚測定装置を示す模式図である。
【図4】光学フィルムの膜厚測定装置を示す模式図である。
【図5】光学フィルムの膜厚測定装置を示す模式図である。
【図6】光学フィルムの膜厚測定装置を示す模式図である。
【図7】光学フィルムの膜厚測定装置を示す模式図である。
【図8】光学フィルムの膜厚測定装置を示す模式図である。
【図9】光学フィルムを構成するハードコート層の膜厚と反射スペクトルの関係を示す模式図である。
【図10】光学フィルムを構成するハードコート層の膜厚と反射スペクトルの関係を示す模式図である。
【図11】光学フィルムを構成するハードコート層の膜厚と反射スペクトルの関係を示す模式図である。
【図12】光学フィルムを構成する光学干渉層の膜厚が変化した時の反射スペクトルの変化の模式図である。
【図13】光学フィルムを構成するハードコート層の膜厚が変化した時の反射スペクトルの変化の模式図である。
【図14】膜厚の変化の発生の有無を判別するフローを示す模式図である。
【図15】膜厚の変化に基づいて塗布量を変化させるフローを示す模式図である。
【図16】光学フィルムの製造方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、特定範囲の厚みを有するハードコート層と光学干渉層とを有する光学フィルムに対して、後に詳述する特定の条件を満たすブロードな線幅とシャープな線幅の2種類の光を照射し、それぞれの反射光の強度を検出するものである。更にこの検出値を膜厚変化発生箇所検出のための計算式に代入することで、前記ハードコート層及び光学干渉層における膜厚の変化を両方、かつ高速で検出することを可能としたものである。
本発明の光学フィルムの膜厚測定方法は、基材と、該基材上に形成されたハードコート層と、該ハードコート層上に形成された少なくとも1層の光学干渉層とを有する光学フィルムの膜厚測定方法であって、該ハードコート層の厚みが1μm〜200μmであり、該光学干渉層の厚みが0.001μm〜0.5μmであり、該光学フィルムに、検出感度のスペクトル幅W1が下記式1を満たす第一の光を照射した時の第1反射光強度(I1)を検出する第1検出工程と、該光学フィルムに、検出感度のスペクトル幅W2が下記式2を満たす第二の光を照射した時の第2反射光強度(I2)を検出する第2検出工程と、該第1反射光強度(I1)と、該第2反射光強度(I2)と、該第1の光の基準反射光強度(Istd1)及び該第2の光の基準反射光強度(Istd2)とに基づいて、該ハードコート層及び該光学干渉層のうち少なくとも一方で膜厚の変化が発生しているか否かを判別する厚み変化検出工程と、を有する光学フィルムの膜厚測定方法である。
(式1) W1<λ02/(8・nHC・dHC)
(式2) W2>λ02/(2・nHC・dHC)
ここでスペクトル幅は半値全幅を表し、λ0は光源の中心波長[nm]、nHCはハードコート層の光源の中心波長における屈折率、dHCはハードコート層の厚み[nm]を表す。
【0015】
図1は、光学フィルムの断面を概略的に示す図である。
図1に示される光学フィルム3は、基材B上に、ハードコート層1と、該ハードコート層1上に光学干渉層2とを有する。
ハードコート層1及び光学干渉層2は、いかなる方法により形成されたものでもよい。ハードコート層及び光学干渉層の形成方法としては、例えば、塗布法及び蒸着法などが挙げられるが、製造速度の観点から塗布法が好ましい。塗布法としては、逐次塗布、及び重層塗布などが挙げられる。
図2は、光学干渉層が多層の光学フィルムを示す断面模式図である。図2において2’は多層の光学干渉層であり、例えばハードコート層1側から中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の順に積層する態様などがある。
【0016】
図3は、光学フィルムの膜厚測定装置の一例を概略的に示す図である。
図3に示される反射防止フィルムの膜厚測定装置10は、第1の光源11、第2の光源12、第1の光源11からの光の反射光を検出する検出器13、第2の光源12からの光の反射光を検出する検出器14、及び膜厚推定部15を含んでなる。
検出器13は第1の光源11からの光が光学フィルムで反射した光を検出する。
検出器14は第2の光源12からの光が光学フィルムで反射した光を検出する。
第1の光源11と第1の検出器13からなる検出工程1の検出感度のスペクトル幅W1は式1に従う。
第2の光源12と第2の検出器14からまる検出工程2の検出感度のスペクトル幅W2は式2に従う。
(式1) W1<λ02/(8・nHC・dHC)
(式2) W2>λ02/(2・nHC・dHC)
ここでスペクトル幅は半値全幅を表し、λ0は光源の中心波長[nm]、nHCはハードコート層の光源の中心波長における屈折率、dHCはハードコート層の厚み[nm]を表す。
膜厚推定部15は、検出器13及び14で検出した反射光のデータから光学フィルムの膜厚を推定する機能を有する。膜厚推定部15は例えばパーソナルコンピュータ等のデータ処理装置であって、検出器13及び14とデータ通信を行う機能と、入力したデータを処理する機能を有する。これらの機能はデータ処理装置のハードウェアとソフトウェアによって実現することができる。
【0017】
前記の検出感度のスペクトルとは、光源の発光スペクトルと検出器の感度のスペクトルの積で決まる。更に、光源から検出器にいたる光路のいずれかに光学フィルターを挿入することも可能である。透過フィルターとして用いる場合、検出感度のスペクトルは先の積にこの光学フィルターの透過スペクトルが積算される。また反射フィルターとして用いる場合、この光学フィルターの反射スペクトルが積算される。
スペクトル幅の狭い光源を得るためには、スペクトル線を発する光源を用いることが好ましい。例えば水銀ランプなどが好適に用いられる。また屈折率の異なる材料を積層した干渉フィルターを用いることで狭帯域の感度を得ることができる。
またスペクトル幅の広い光源を得るためには、熱的な光源、固体光源を用いることが好ましい。例えばA光源、LED光源、熱ランプなどが好適に用いられる。紫外域に広いスペクトル幅を有する光源としては、紫外LEDが好ましい。
【0018】
膜厚推定部15では、第1の光源の反射光の反射光強度I1と、第2の光源の反射光の反射光強度I2と、第1の光源の反射光の基準反射光強度Istd1、及び第2の光源の反射光の基準反射光強度Istd2とに基づいて、ハードコート層及び光学干渉層で膜厚の変化が発生しているか否かを判別する厚み変化検出工程が行われる。
厚み変化検出工程における処理において、用いる測定値は反射光強度と反射率のどちらでも良い。反射率Rは光源の光強度をIo、反射光の光強度をIとした時にR=I/Ioで定義される。反射光強度を用いる場合、光源の光強度に依存して厚み変化検出工程で用いる閾値の値が変化する。一方、反射率を用いる場合、閾値は光源の光強度に依存しない。
【0019】
より詳細には、図14に示すように、第2の光源の反射光の反射光強度I2と、第2の光源の反射光の基準反射光強度Istd2との差を、あらかじめ設定した閾値(ε2)と比較することで、前記光学干渉層における膜厚の変化の発生の有無を判別することができる。
また、図15に示すように、I2とIstd2との差と、I1とIstd1との差との差を、あらかじめ設定した閾値(ε)と比較することで、前記ハードコート層における膜厚の変化の発生の有無を判別することができる。
【0020】
第1の光源の反射光の基準反射光強度Istd1、及び第2の光源の反射光の基準反射光強度Istd2は、あらかじめ設定することもできるし、測定中に測定値に基づいて設定することもできる。例えば、使用するハードコート層の組成、光学干渉層の組成、設定膜厚などによって、目標とする反射率をあらかじめ決めておき、この値と光源の光強度の積をIstd1、Istd2に設定することができる。これは製造中の膜厚変化を検出し、塗布量にフィードバックして常に安定した膜厚を得たい時に適している。また測定中の値に基づいて設定する方法として、例えばある領域の反射率を平均化し、この値と光源の光強度の積をIstd1、Istd2に設定することができる。これにより周囲の反射率と異なる領域を検出することができるため、スジや点欠陥などの欠陥を検出するのに適している。
【0021】
閾値ε、ε2は対象とする光学フィルムの層構成、測定光源の波長及び検出目標とする厚み変化から測定若しくは計算によって得られる反射率若しくは反射光強度の値を下記式に代入することで算出される。
ε=|{(I2−Istd2)−(I1−Istd1)}|
ε2=|(I2−Istd2)|
ここでIstd1、Istd2は標準サンプルを光源1、光源2で測定したときの反射光強度若しくは反射率、I1、I2は検出目標レベルだけ膜厚が変化したサンプルを光源1、光源2で測定したときの反射光強度若しくは反射率を表す。閾値ε、ε2は測定データから算出して設定しても良いし、光学薄膜干渉の理論計算を用いて算出しても良い。測定データから算出する場合、標準サンプルと標準サンプルから検出目標レベルだけ膜厚が変化したサンプルを用意し、それぞれの反射率測定値若しくは反射光強度測定値から下記式を用いて算出する。また光学薄膜干渉の理論計算を用いて算出する場合、設計目標である屈折率と膜厚から膜厚変化に対する反射率変化を予測し、これに基づいて上記の測定データから算出する場合と同様に閾値を算出する。層構成から反射率を予測する光学薄膜干渉の理論計算は様々な方法が知られているが、例えば非特許文献1(応用物理工学選書3薄膜、P.165−192 吉田貞史著)に記載の計算手法を用いることができる。
【0022】
本発明の光学フィルムの膜厚測定方法において、ハードコート層と光学干渉層の両方の膜厚の変化を推定する機構は、光学干渉層の反射スペクトルが波長に対してゆるやかに変化するのに対し、ハードコート層の反射スペクトルが波長に対して細かく変化する特性を利用したものである。光学干渉層とハードコート層を有する光学フィルムにおいて、様々な厚さを有するハードコート層の厚さを様々に変えた時の反射スペクトルの様子を図9〜11に示す。これらの図に示すようにハードコート層と光学干渉層を有する光学フィルムからの反射スペクトルはゆるやかに変化する成分と細かく変化する成分を重畳したものとして現れる。ここでゆるやかに変化する成分とは、可視域内の山の数が3つ以下のものを指す。一方細かく変化する成分とは可視域内の山の数が5つ以上のものを指す。光学フィルムの反射スペクトルはこれら二つの成分が加算されたものとなる。
ゆるやかに変化する成分の形状は光学フィルムを構成する部材の屈折率と光学干渉層と膜厚によって決まる。また細かく変化する成分の形状は光学フィルムを構成する部材の屈折率とハードコート層の膜厚によって決まる。
図12及び13に光学干渉層の膜厚、ハードコート層の膜厚それぞれが変化した時の反射スペクトルの変化を示す。光学干渉層の膜厚が変化した場合(図12)、スペクトル中の細かく変化する成分の山谷の位置はほとんど変化せず、ゆるやかに変化する成分のスペクトル形状が変化する。これを測定した場合、スペクトル幅の広い光源を用いてもスペクトル幅の狭い光源を用いても反射率が同程度変化して検出される。
一方、ハードコート層の膜厚が変化した場合(図13)、スペクトル中の細かく変化する成分の山谷の位置は変化するが、ゆるやかに変化する成分のスペクトル形状は変化しない。これをスペクトル幅の広い光源で測定した場合、細かく変化する成分は平均化されるため、反射率の変化として検出されない。一方スペクトル幅の狭い光源で測定した場合は、細かく変化する成分の山谷の変化を反射率の変化として検出する。
すなわち光学干渉層の膜厚変化は本発明における前記光源1及び前記光源2を用いた反射率に影響を与え、その大きさは同程度である。一方、ハードコート層の膜厚変化は本発明における前記光源1を用いた反射率のみに影響を与え、前記光源2を用いた反射率には影響を与えない。
これより前記光源2で検出される反射率変化は光学干渉層の膜厚変化に起因することが分かる。また光学干渉層の膜厚のみが変化した場合、(I2−Istd2)と(I1−Istd1)の値が同程度となるため、その差分である|{(I2−Istd2)−(I1−Istd1)}|はほぼ0(<ε)となる。これより|{(I2−Istd2)−(I1−Istd1)}|>εとなる場合は、ハードコート層に膜厚変化が生じている場合と特定することができる。
このように本発明における前記光源1で検出される反射率変化と前記光源2で検出される反射率変化を比較することで、ハードコート層、光学干渉層それぞれの膜厚変化を特定することが可能となる。
【0023】
(式1) W1<λ02/(8・nHC・dHC)
(式2) W2>λ02/(2・nHC・dHC)
光源1、2から照射される光のスペクトル幅はそれぞれ上記式1、式2を満たす。式中のλ02/(2・nHC・dHC)は反射スペクトルに現れるハードコート層の厚みに起因したリップル構造における隣合った山の間隔Δλを表す(図9〜11参照)。膜厚が変化することで反射スペクトル中に現れる山の位置が変化する。そのため光源1のようにΔλの四分の一程度のスペクトル幅を有する光源で計測すると、ハードコート層の膜厚変化に従って測定される反射率の値が大きく変化する。一方、光源2のスペクトル幅をΔλ程度以上にすることで、中心波長±Δλの範囲の平均的な反射率を得ることができる。この値はハードコート層の膜厚の変化の影響を受けず、表面の光学干渉層の変化のみを検出することができる。
波長380nm、ハードコート層の屈折率が1.5である場合、ハードコート層の膜厚が1μm程度の時は、光源2から照射される光のスペクトル幅は好ましくは50nm以上である。ハードコート層の膜厚が5μm程度の時は、光源2から照射される光のスペクトル幅は好ましくは10nm以上である。ハードコート層の膜厚が10μm程度の時は、光源2から照射される光のスペクトル幅は好ましくは5nm以上である。ハードコート層の膜厚が20μm程度である場合、光源2から照射される光のスペクトル幅は好ましくは2.4nm以上である。
【0024】
光源としては、点光源、ライン光源、面光源等が挙げられる。検出に寄与しない光は無駄であるため、検出器から光源を見込む角度は大きすぎない方が好ましい。その角度は1°以上30°以下が好ましく、2°以上10°以下がより好ましい。
【0025】
光源から照射される光の波長は特に限定されないが、基材によって吸収される波長が好ましい。その波長における光透過率は50%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。例えばハードコート層上に光学干渉層として低屈折率層を有する反射防止フィルムの場合、可視光線又は紫外線が好ましく、紫外線がより好ましい。これは反射防止フィルムの基材には紫外線吸収剤を含むことがあり、この場合紫外線を用いることで、基材の裏面からの反射を除去し、表面の膜厚変化を感度良く検出することができる。
更に反射防止フィルムは波長450nm〜600nmの間で反射率がもっとも低くなるように膜厚が設定されている。このとき膜厚変化に対する反射率変化は波長330nmから390nmの間で大きく、350nmから370nmの間でより大きい。そのため検出光のピーク波長は330nm以上390nm以下が好ましく、350nm以上370nm以下がより好ましい。
検出可能な膜厚変化は測定系が持つノイズに依存する。例えば検出系の光量検出のノイズが2%とすると、本発明の膜厚測定方法では、可視光線を使用した場合、低屈折率層の膜厚変化5%以上を検出することができる。また紫外線を使用した場合、低屈折率層の膜厚変化1%以上を検出することができる。
また、ハードコート層の膜厚変化は、可視光線を使用した場合、及び紫外線を使用した場合、どちらも25nm以上の変化を検出することができる。
【0026】
光の強度としては、フィルムにダメージを与える可能性があるため、強すぎない方が好ましいが、弱すぎると検出できないため適宜設定されることが好ましい。
UV透過フィルターを用いる際は検出器側、光源側のどちらに配置することも可能であるが(図5、6)、波長300nm以下の深紫外光が光拡散部や集光部などの光学系にダメージを与える可能性があるため、深紫外光をカットできるUV透過フィルターを光源側に配置することが好ましい。またUV透過フィルタの特性は365nm付近にピークがあることが好ましく、その半値幅は5nm以上50nm以下が好ましく、10nm以上30nm以下がより好ましい。
【0027】
光の照射角及び検出角については、フィルムの法線方向と成す角に関して、照射角と検出角は等しいことが好ましい。
その角度は0°〜80°で検出できるが、0°〜20°がスジの検出能が高いためより好ましい。
【0028】
2つの光源の配置としては、2つの光源で照射した光を検出できる配置であれば良い。測定時間を考えると、検出系1(光源1/検出器)、検出系2(光源2/検出器)を配置することが好ましい(図3、4)。スペースの制約がある場合、導光板タイプの光源を用意し、一方にスペクトル幅の狭い線スペクトル光源、もう一方にスペクトル幅の広いブロード光源を配置し、交互に点滅させることで各光源の光を一つの検出器で検出することもできる(図8)。またスペクトル幅のブロードな光源を配置し、検出器の前に配置する紫外透過フィルターの帯域を狭帯域と広帯域のものに交互に切り替えることで、一つの光源と一つの検出器で狭帯域と広帯域の二つの検出感度スペクトルを得ることもできる(図9)。
【0029】
本手法を適用できるハードコート層の厚みは、好ましくは1μm以上200μm以下であり、1μm以上100μm以下でより好適であり、1μm以上50μm以下の場合更に良好である。
本手法を適用できる光学干渉層の厚みは、好ましくは0.001μm〜0.5μmであり、0.01μm〜0.2μmでより好適であり、0.07μm〜0.13μmの場合更に良好である。
【0030】
図16は、光学フィルムの製造装置の一例を概略的に示す図である。
図16に示される光学フィルムの製造装置20は、送り出しロール21、塗布液塗布部22、塗布液硬化部23、第1の光源24、第2の光源25、第1の光源24からの光の反射光を検出する検出器26、第2の光源25からの光の反射光を検出する検出器27、膜厚推定部28、及び巻き取りロール29を含んでなる。
長尺の基材Bが巻回された送り出しロール21から基材Bが送り出され、塗布液塗布部22にて、ハードコート層用塗布液と光学干渉層用塗布液が塗布される。塗布液塗布部22において、ハードコート層用塗布液と光学干渉層用塗布液は逐次塗布でもよいし、同時塗布でもよい。
塗布方法としては、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書参照)が用いられ、これらの塗布方式のうちいずれかの方法により透明基材上に塗布し、加熱・乾燥する。これらの塗布方式のうち、グラビアコート法で塗布すると反射防止膜の各層のような塗布量の少ない塗布液を膜厚均一性高く塗布することができ、好ましい。グラビアコート法の中でもマイクログラビア法は膜厚均一性が高く、より好ましい。また、ダイコート法を用いても塗布量の少ない塗布液を膜厚均一性高く塗布することができ、更にダイコート法は前計量方式のため膜厚制御が比較的容易であり、更に塗布部における溶剤の蒸散が少ないため、好ましい。二層以上を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許第2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書及び原崎勇次著、「コーティング工学」、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。塗布層の膜厚はコーターに送られる塗布液の流量で決まる。この流量は塗布液を送液するポンプの回転速度で決まる。
塗布液硬化部23によりハードコート層及び光学干渉層が硬化される。ただし、逐次塗布の場合は、ハードコート層用塗布液を塗布してから光学干渉層用塗布液を塗布するまでの間に、ハードコート層用塗布液の乾燥工程、硬化工程などを設けてもよい。
硬化の方法は特に制限は無く、熱による硬化、紫外線などの光照射による硬化が挙げられるが、紫外線などの光照射による硬化が好ましい。
次に、前述のように反射光の検出工程と厚み変化検出工程でハードコート層及び光学干渉層の膜厚変化が推定される。これにより膜厚ムラの発生や、製造中の膜厚変化を検出することができる。
本発明の膜厚測定方法は、光学フィルムの製造工程において、基材の搬送速度が静止状態から100m/min程度の場合まで、オンラインでの膜厚変化の測定が可能である。光学フィルムの製造工程において、搬送速度は1m/minから50m/min程度が設定される。
【0031】
製造中の膜厚変化を検出した場合、膜厚変化の推定結果を塗布液塗布部22にフィードバックし、塗布液の塗布量を調節することで膜厚を調節することができる。具体的には、光学干渉層について、基準膜厚と検出膜厚の間に膜厚変化を検出した場合、下記式に従って光学干渉層用塗布液を送液するポンプの回転速度を変更する。
新しい回転速度=元の回転速度×基準膜厚/検出膜厚
一方、ハードコート層について、基準膜厚と検出膜厚の間に膜厚変化を検出した場合、まず塗布量を段階的に増減させて、反射率を測定する。次に基準膜厚に対応した反射率となる塗布量を選択し、その塗布量に対応するようにハードコート層用塗布液を送液するポンプの回転速度を変更する。塗布量の変更は送液に用いるポンプの回転数を変えることで達成される。塗布量調整は電気回路、電子回路、コンピューター等により自動で制御することも可能である。
【0032】
(基材)
次に、基材について説明する。
本発明における光学フィルムに用いられる基材は、ポリマー組成物からなることが好ましい。使用可能なポリマー材料の例には、セルロースアシレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエステル、ポリスチレン、スチレン系共重合体、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート系共重合体、ポリ塩化ビニリデン等が含まれる。但し、これらに限定されるものではない。
【0033】
使用可能なセルロースアシレートについて更に説明する。
セルロースアシレートフィルムの原料のセルロースとしては、綿花リンター、ケナフ、木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)等があり、何れの原料セルロースから得られるセルロースエステルでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。
【0034】
セルロースアシレートの合成方法は、発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行発明協会)p.7〜12に詳細に記載されているので、参照することができる。
【0035】
本発明における基材は、主原料となる1種又は2種以上のポリマーとともに、添加剤を含有していてもよい。添加剤の例には、可塑剤(好ましい添加量はポリマーに対して0.01〜20質量%、以下同様)、紫外線吸収剤(0.001〜1質量%)、フッ素系界面活性剤(0.001〜1質量%)、剥離剤(0.0001〜1質量%)、劣化防止剤(0.0001〜1質量%)、光学異方性制御剤(0.01〜10質量%)、赤外線吸収剤(0.001〜1質量%)等が含まれる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、微量の有機材料、無機材料及びそれらの混合物からなる粒子を分散含有していてもよい。これらの粒子は、製膜時におけるフィルムの搬送性向上を目的として添加される。この目的を達成し、本発明の効果を損なわないためには、粒子の粒径は5〜3000nmであるのが好ましく、粒子の屈折率は基材フィルムの屈折率との差が0〜0.5であるのが好ましく、添加量は1質量%以下であるのが好ましい。例えば、無機材料の粒子の例には、酸化珪素、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粒子が含まれる。有機材料の粒子の例には、アクリル系樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、スチレン系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等が含まれる。
【0036】
(ハードコート層)
次に、ハードコート層について説明する。
本発明における光学フィルムは、フィルムの物理的強度を付与するために、基材上にハードコート層を有する。
【0037】
ハードコート層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を透明支持体上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。
電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーが有する官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0038】
ハードコート層には、内部散乱性付与の目的で、平均粒径が1.0〜10.0μm、好ましくは1.5〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子又は樹脂粒子を含有してもよい。
【0039】
ハードコート層のバインダーには、ハードコート層の屈折率を制御する目的で、高屈折率モノマー又は無機粒子、或いは両者を加えることができる。無機粒子には屈折率を制御する効果に加えて、架橋反応による硬化収縮を抑える効果もある。本発明では、ハードコート層形成後において、前記多官能モノマー及び/又は高屈折率モノマー等が重合して生成した重合体、その中に分散された無機粒子を含んでバインダーと称する。
【0040】
ハードコート層の屈折率は、反射防止性のフィルムを得るための光学設計から、屈折率が1.48〜2.00の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.48〜1.70である。本発明では、ハードコート層の上に低屈折率層が少なくとも1層あるので、屈折率がこの範囲より小さ過ぎると反射防止性が低下し、大き過ぎると反射光の色味が強くなる傾向がある。
【0041】
ハードコート層の強度は、鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。更に、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0042】
(光学干渉層)
次に、光学干渉層について説明する。
本発明における光学フィルムは、前記ハードコート層上に光学干渉層を有する。光学干渉層を有することで反射防止機能を付与したり、反射率増加機能を付与することができる。光学干渉層を低屈折率層とすることで反射防止機能を付与することができる。低屈折率層の屈折率は前記ハードコート層の屈折率より低く設定することが好ましい。低屈折率層とハードコート層との屈折率差は0.01以上0.40以下が好ましく、0.05以上0.30以下がより好ましい。
【0043】
低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.46であることが好ましく、1.25〜1.42であることがより好ましく、1.30〜1.38であることが特に好ましい。
【0044】
低屈折率層は、低屈折率素材を用いて形成することができる。低屈折率素材としては、低屈折率バインダーを用いることができる。また、バインダーに微粒子を加えて低屈折率層を形成することもできる。また、低屈折率層形成用組成物は後述するオルガノシラン化合物を含有することもできる。
【0045】
低屈折率バインダーとしては、含フッ素共重合体を好ましく用いることができる。含フッ素共重合体は、含フッ素ビニルモノマーから導かれる構成単位と架橋性付与のための構成単位を有することが好ましい。
【実施例】
【0046】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0047】
〔光学フィルムの作製〕
下記に示す通りに光学フィルムサンプル1〜4を作製した。
【0048】
(ハードコート層用塗布液の調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌してハードコート層塗布液とした。
トリメチロールプロパントリアクリレート(ビスコート#295(大阪有機化学(株)製)750.0質量部に、質量平均分子量15000のポリ(グリシジルメタクリレート)270.0質量部、メチルエチルケトン730.0質量部、シクロヘキサノン500.0質量部及び光重合開始剤(イルガキュア184、日本チバガイギー(株)製)50.0質量部を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用の塗布液を調製した。
【0049】
(低屈折率層用塗布液の調製)
(パーフルオロオレフィン共重合体(1)の合成)
【0050】
【化1】
【0051】
内容量100mlのステンレス製撹拌機付オートクレーブに酢酸エチル40ml、ヒドロキシエチルビニルエーテル14.7g及び過酸化ジラウロイル0.55gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。更にヘキサフルオロプロピレン(HFP)25gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は、0.53MPa(5.4kg/cm2)であった。該温度を保持し8時間反応を続け、圧力が0.31MPa(3.2kg/cm2)に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションにより溶剤を除去することにより沈殿したポリマーを取り出した。更にこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後ポリマー28gを得た。次に該ポリマーの20gをN,N−ジメチルアセトアミド100mlに溶解、氷冷下アクリル酸クロライド11.4gを滴下した後、室温で10時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え水洗、有機層を抽出後濃縮し、得られたポリマーをヘキサンで再沈殿させることによりパーフルオロオレフィン共重合体(1)を19g得た。得られたポリマーの屈折率は1.422であった。
【0052】
(ゾル液aの調製)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、メチルエチルケトン120質量部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103、信越化学工業(株)製)100質量部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート3質量部を加え混合したのち、イオン交換水31質量部を加え、61℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液aを得た。質量平均分子量は1620であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
【0053】
(中空シリカ分散液の調製)
中空シリカ微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、触媒化成工業(株)製CS60−IPA、平均粒子径60nm、シェル厚み10nm、シリカ濃度20質量%、シリカ粒子の屈折率1.31)500質量部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン30.5質量部、及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.51質量部加え混合した後に、イオン交換水を9質量部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8質量部を添加し、分散液を得た。その後、シリカの含率がほぼ一定になるようにシクロヘキサノンを添加しながら、圧力30Torrで減圧蒸留による溶媒置換を行い、最後に濃度調整により固形分濃度18.2質量%の分散液を得た。得られた分散液のIPA残存量をガスクロマトグラフィーで分析したところ0.5%以下であった。
【0054】
(低屈折率層用塗布液の調製)
DPHA 5.6g
P−1 2.4g
中空シリカ分散液(18.2%) 35.9g
RMS−033 0.5g
イルガキュア907 0.3g
ゾル液a 7.3g
MEK 287.9g
シクロヘキサノン 10.0g
【0055】
上記溶液を攪拌後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液を調製した。
【0056】
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
・P−1:パーフルオロオレフィン共重合体(1)
・DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製)
・中空シリカ:KBM−5103表面修飾中空シリカゾル(表面修飾率対シリカ30質量%、CS−60 IPA(触媒化成工業(株)製)屈折率1.31、平均粒径60nm、シェル厚み10nm、固形分濃度18.2%)
・RMS−033:反応性シリコーン(Gelest(株)製)
・イルガキュア907:光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
【0057】
(光学フィルムの作製)
膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム(TD80UF、富士写真フイルム(株)製)上に、ハードコート層用塗布液と低屈折率層用塗布液をダイコーターを用いて同時重層塗布した。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、ハードコート層を形成した。
【0058】
本実施例における光学フィルムの作成において、基材の搬送速度を30m/minに設定した。
【0059】
低屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm2、照射量600mJ/cm2の照射量とした。
【0060】
以上の方法で作製した光学フィルムサンプル1〜4の膜厚を表1に示す。
【0061】
本発明の手法にて膜厚変化を検出するため、基準サンプル(サンプル1)、低屈折率層の膜厚だけ変化させたサンプル(サンプル2)、ハードコート層の膜厚だけ変化させたサンプル(サンプル3)、低屈折率層の膜厚とハードコート層の膜厚を両方変化させたサンプル(サンプル4)を作成し、本発明の手法にてその変化を検出できるか検証した。
【0062】
【表1】
【0063】
各サンプルの反射光強度測定値を元に、本発明の手法、及び比較例(従来)の手法について、膜厚変化箇所の特定可否、及び検出感度を評価した。比較例、実施例中のスペクトル幅は分光放射輝度の半値全幅で表した。本実施例では、測定で得られた反射光強度Iを反射率Rに換算してから膜厚変化箇所の推定を行ったため、以下では反射光強度Iの代わりに反射率Rを記載する。反射率Rは光源を直接測定した時の光強度Ioと反射光の光強度Iの比I/Ioで定義される。
【0064】
(比較例1 可視1波長)
波長546.1nm スペクトル幅1nm 水銀ランプ×緑色バンドパスフィルター(ショット社製VG9)を用いて各サンプルについて反射率を測定した。
【0065】
【表2】
【0066】
測定反射率(R)と基準反射率(Rstd)の差をΔR=R−Rstdとする。ここでRstdはサンプル1の反射率に設定した。
その結果、サンプル2から4のΔRはそれぞれ変化するため、ハードコート層と低屈折率層のどちらで膜厚変化が起きたかを特定することができない。また反射率Rに対する反射率変化ΔRの比はそれぞれ1%以下となり、検出感度は低い。一方、1波長のみを検出するため、測定スピードは早い。
【0067】
(比較例1の評価)
評価結果は以下の通りであった。
膜厚ムラ発生箇所特定 ×
反射率変化の検出感度 △
【0068】
ここで膜厚ムラ発生箇所特定の判定基準は以下のように設定した。
○:特定できる
×:特定できない
また、反射率変化の検出感度は以下のように設定した。
○:光学干渉層の膜厚が2%変化した時の反射率変化が0.1%以上
△:光学干渉層の膜厚が2%変化した時の反射率変化が0.02%以上
×:光学干渉層の膜厚が2%変化した時の反射率変化が0.02%未満
【0069】
(比較例2 紫外1波長)
波長365nm スペクトル幅1nm 水銀ランプ×紫外バンドパスフィルター(HOYA製U360)を用いて各サンプルについて反射率を測定した。
【0070】
【表3】
【0071】
比較例1と同様に測定反射率(R)と基準反射率(Rstd)の差をΔR=R−Rstdとする。ここでRstdはサンプル1の反射率に設定した。
その結果、サンプル2から4のΔRはそれぞれ変化するため、ハードコート層と低屈折率層のどちらで膜厚変化が起きたかを特定することができない。また反射率Rに対する反射率変化ΔRの比はそれぞれ2%以上となり、検出感度は高い。一方、1波長のみを検出するため、測定スピードは早い。
【0072】
(比較例2の評価)
前記比較例1と同様の評価基準で評価した。
膜厚ムラ発生箇所特定 ×
反射率変化の検出感度 ○
【0073】
上記のように、光源を1つのみ用いた手法である比較例1、2の場合、ハードコート層、低屈折率層どちらの膜厚が変化しても反射率が変化するため、どちらの層で膜厚変化が起きたかを特定することができない。
【0074】
(実施例1 可視2波長)
光源1:波長546.1nm スペクトル幅1nm 水銀ランプ×緑色バンドパスフィルター(ショット社製VG9)を用いて各サンプルについて反射率を測定した。
また、光源2:波長545nm スペクトル幅35nm 緑色LEDを用いて各サンプルについて反射率を測定した。
【0075】
【表4】
【0076】
2つの光源で測定した反射率から下記のフローで膜厚変化箇所を推定する。本実施例では、基準膜厚に設定したサンプル1の光源1の反射率をRstd1、光源2の反射率をRstd2に設定した。
Rstd1=4.88%
Rstd2=4.89%
評価値:|R2−Rstd2|、及び評価値:|{(R2−Rstd2)−(R1−Rstd1)}|は以下の表5のようになる。
【0077】
【表5】
【0078】
今回1%の膜厚変化を検出するため、ε、ε2を以下のように設定した。
ε=0.02
ε2=0.02
これらの値はハードコート層、低屈折率層それぞれの屈折率、厚み、検出目標の膜厚変化を元に設定される。これらの値は光干渉の理論計算から求めることが可能である。またサンプルの実測値を参考に得ることも可能である。
実施例1におけるε、ε2は以下のように求めた。実施例におけるサンプル1の屈折率、厚み、測定波長545nmの条件において、光学干渉層の膜厚が1%変化した時の反射率の変化を理論計算すると、光源2で0.02となる。この値を閾値ε2に設定する。一方、ハードコート層の膜厚が1%変化した時の反射率の変化は、光源1で0.02、光源2で0.00となる。これらの値から|{(R2−Rstd2)−(R1−Rstd1)}|を計算で求めると0.02となるため、この値を閾値εに設定する。
【0079】
上記の評価値とε、ε2を比較した結果として、膜厚変化の発生箇所を推定した結果を表6に示す。
更に評価値ΔR2=R2−Rstd2から光学干渉層の膜厚の変化量を推定することも可能である。
【0080】
【表6】
【0081】
(実施例1の評価)
前記比較例1と同様の評価基準で評価した。
膜厚ムラ発生箇所特定○
反射率変化の検出感度△
【0082】
(実施例2 紫外2波長)
光源1:波長365nm スペクトル幅1nm 水銀ランプ×紫外バンドパスフィルター(HOYA製U360)を用いて各サンプルについて反射率を測定した。
光源2:波長365nm スペクトル幅30nm 紫外LEDを用いて各サンプルについて反射率を測定した。
【0083】
【表7】
【0084】
2つの光源で測定した反射率から下記のフローで膜厚変化箇所を推定した。本実施例では、基準膜厚に設定したサンプル1の光源1の反射率をRstd1、光源2の反射率をRstd2に設定した。
Rstd1=2.40%
Rstd2=2.41%
評価値:|R2−Rstd2|、評価値:|{(R2−Rstd2)−(R1−Rstd1)}|は以下の表8のようになる。
【0085】
【表8】
【0086】
今回1%の膜厚変化を検出するため、ε、ε2を以下のように設定した。
ε=0.02
ε2=0.06
これらの値は以下のように求めた。実施例2におけるサンプル1の屈折率、厚み、測定波長365nmの条件において、光学干渉層の膜厚が1%変化した時の反射率の変化を理論計算すると、光源2で0.06となる。この値を閾値ε2に設定する。一方、ハードコート層の膜厚が1%変化した時の反射率の変化は、光源1で0.02、光源2で0.00となる。これらの値から|{(R2−Rstd2)−(R1−Rstd1)}|を計算で求めると0.02となるため、この値を閾値εに設定する。
【0087】
【表9】
【0088】
(実施例2の評価)
前記比較例1と同様の評価基準で評価した。
膜厚ムラ発生箇所特定○
反射率変化の検出感度○
【0089】
上記検証実験より、本発明の手法を用いることで膜厚変化がハードコート層及び低屈折率層のどこで発生しているかを特定できることを確認した。本手法を実施例に記載した光学フィルムの製造工程で利用するため、製造工程中における硬化工程と巻き取り工程の間に本発明の膜厚測定装置を設置した。膜厚測定装置の光学系として、実施例2に記載した光源を選択した。これにより製造中における膜厚ムラの検出及び塗布中における膜厚変化を検出できた。
【0090】
更に検出した膜厚変化をフィードバックすることで、塗布量を調整し、膜厚安定化を行った。検出器はラインCCDを用い、幅方向の反射率分布を測定した。この反射率分布を元に膜厚分布を推定し、これを平均化することで塗布量の変化を推定した。これにより局所的な膜厚変動の影響を受けずに塗布量に対して適切なフィードバックをかけることができた。以下実施例3、実施例4において、実際のフィードバックの流れについて述べる。
【0091】
実施例3:光学干渉層の膜厚調整
実施例2の光学系において、評価値:|R2−Rstd2|が閾値ε2を超えた時、以下の手順で光学干渉層の塗布量の調整を行う。
(1)予め用意しておいた反射率Rと光学干渉層の膜厚dの関係d(R)から、基準反射率Rstd2、測定反射率R2それぞれの厚みdstd2、d2を算出する。
(2)以下の式を用いて新たな塗布量を算出し、光学干渉層用塗布液を送液するためのポンプの回転数を変更する。
塗布量比=dstd2/d2
新たな塗布量=塗布量比×元の塗布量
【0092】
実施例4:ハードコート層の膜厚調整
実施例2の光学系において、評価値:|{(R2−Rstd2)−(R1−Rstd1)}|が閾値εを超えた時、以下の手順でハードコート層の塗布量の調整を行う。
(1)塗布量を段階的に増減させ、それぞれの塗布量に対する光学フィルムの反射率を光源1、光源2を用いて測定する。
(2)再び評価値:|{(R2−Rstd2)−(R1−Rstd1)}|を計算し、評価値:|{(R2−Rstd2)−(R1−Rstd1)}|<εとなる塗布量を選択する。
(3)(2)で得た塗布量に基づいて、ハードコート層用塗布液を送液するためのポンプの回転数を変更する。
【符号の説明】
【0093】
B:基材
1:ハードコート層
2:光学干渉層
2’:多層の光学干渉層
3:光学フィルム
10:光学フィルムの膜厚測定装置
11:第1の光源
12:第2の光源
13、14:検出器
15:膜厚推定部
20:光学フィルムの製造装置
21:送り出しロール
22:塗布液塗布部
23:塗布液硬化部
24:第1の光源
25:第2の光源
26、27:検出器
28:膜厚推定部
29:巻き取りロール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材上に形成されたハードコート層と、該ハードコート層上に形成された少なくとも1層の光学干渉層とを有する光学フィルムの膜厚測定方法であって、
該ハードコート層の厚みが1μm〜200μmであり、該光学干渉層の厚みが0.001μm〜0.5μmであり、
該光学フィルムに、検出感度のスペクトル幅W1が下記式1を満たす第一の光を照射した時の第1反射光強度(I1)を検出する第1検出工程と、
該光学フィルムに、検出感度のスペクトル幅W2が下記式2を満たす第二の光を照射した時の第2反射光強度(I2)を検出する第2検出工程と、
該第1反射光強度(I1)と、該第2反射光強度(I2)と、該第1の光の基準反射光強度(Istd1)及び該第2の光の基準反射光強度(Istd2)とに基づいて、該ハードコート層及び該光学干渉層のうち少なくとも一方で膜厚の変化が発生しているか否かを判別する厚み変化検出工程と、を有する光学フィルムの膜厚測定方法。
(式1) W1<λ02/(8・nHC・dHC)
(式2) W2>λ02/(2・nHC・dHC)
ここでスペクトル幅は半値全幅を表し、λ0は光源の中心波長[nm]、nHCはハードコート層の光源の中心波長における屈折率、dHCはハードコート層の厚み[nm]を表す。
【請求項2】
前記第2反射光強度と前記第2の光の基準反射光強度との差の絶対値|(I2−Istd2)|を閾値(ε2)と比較することで、前記光学干渉層における膜厚の変化の発生の有無を判別する請求項1に記載の光学フィルムの膜厚測定方法。
【請求項3】
前記第2反射光強度と前記第2の光の基準反射光強度との差と、前記第1反射光強度と前記第1の光の基準反射光強度との差との差の絶対値|{(I2−Istd2)−(I1−Istd1)}|を、閾値(ε)と比較することで、前記ハードコート層における膜厚の変化の発生の有無を判別する請求項1又は2に記載の光学フィルムの膜厚測定方法。
【請求項4】
前記第1の光、及び前記第2の光のうち少なくともいずれか一方が紫外線である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルムの膜厚測定方法。
【請求項5】
基材と、該基材上に形成された厚みが1μm〜200μmのハードコート層と、該ハードコート層上に形成された厚みが0.001μm〜0.5μmの光学干渉層とを有する光学フィルムの膜厚を測定する膜厚測定装置であって、
該光学フィルムに検出感度のスペクトル幅W1が下記式1を満たす第1の光源と、該第1の光源を該光学フィルムに照射した時の光学フィルムからの反射光強度(I1)を検出する第1の検出器からなる第1検出部と、
該光学フィルムに検出感度のスペクトル幅W2が下記式2を満たす第2の光源と、該第2の光源を該光学フィルムに照射した時の該光学フィルムからの反射光強度(I2)を検出する第2の検出器からなる第2検出部と、
該第1の反射光強度(I1)、該第2の反射光強度(I2)、該第1の光の基準反射光強度(Istd1)及び該第2の光の反射光強度(Istd2)とに基づいて、該ハードコート層及び該光学干渉層のうち少なくとも一方で膜厚の変化が発生しているか否かを判別する膜厚測定部と、を有する光学フィルムの膜厚測定装置。
(式1) W1<λ02/(8・nHC・dHC)
(式2) W2>λ02/(2・nHC・dHC)
ここでスペクトル幅は半値全幅を表し、λ0は光源の中心波長[nm]、nHCはハードコート層の光源の中心波長における屈折率、dHCはハードコート層の厚み[nm]を表す。
【請求項6】
基材と、該基材上に形成された厚みが1μm〜200μmのハードコート層と、該ハードコート層上に形成された厚みが0.001μm〜0.5μmの光学干渉層とを有する光学フィルムの製造方法であって、
該基材上に、ハードコート層形成用塗布液を塗布しハードコート層を形成する工程と、光学干渉層用塗布液を塗布し光学干渉層を形成する工程と、
該光学フィルムに、検出感度のスペクトル幅W1が下記式1を満たす第一の光を照射した時の第1反射光強度(I1)を検出する第1検出工程と、
該光学フィルムに、検出感度のスペクトル幅W2が下記式2を満たす第二の光を照射した時の第2反射光強度(I2)を検出する第2検出工程と、
該第1反射光強度(I1)と、該第2反射光強度(I2)と、該第1の光の基準反射光強度(Istd1)及び該第2の光の基準反射光強度(Istd2)とに基づいて、該ハードコート層及び該光学干渉層のうち少なくとも一方で膜厚の変化が発生しているか否かを判別する厚み変化検出工程と、
を有する光学フィルムの製造方法。
(式1) W1<λ02/(8・nHC・dHC)
(式2) W2>λ02/(2・nHC・dHC)
ここでスペクトル幅は半値全幅を表し、λ0は光源の中心波長[nm]、nHCはハードコート層の光源の中心波長における屈折率、dHCはハードコート層の厚み[nm]を表す。
【請求項7】
基材と、該基材上に形成された厚みが1μm〜200μmのハードコート層と、該ハードコート層上に形成された厚みが0.001μm〜0.5μmの光学干渉層とを有する光学フィルムの製造方法であって、
該基材上に、ハードコート層形成用塗布液を塗布しハードコート層を形成する工程と、光学干渉層用塗布液を塗布し光学干渉層を形成する工程と、
該光学フィルムに、検出感度のスペクトル幅W1が下記式1を満たす第一の光を照射した時の第1反射光強度(I1)を検出する第1検出工程と、
該光学フィルムに、検出感度のスペクトル幅W2が下記式2を満たす第二の光を照射した時の第2反射光強度(I2)を検出する第2検出工程と、
該第1反射光強度(I1)と、該第2反射光強度(I2)と、該第1の光の基準反射光強度(Istd1)及び該第2の光の基準反射光強度(Istd2)とに基づいて、該ハードコート層及び該光学干渉層のうち少なくとも一方で膜厚の変化が発生しているか否かを判別する厚み変化検出工程と、
該第2反射光強度と該第2の光に対する基準反射光強度との差I2−Istd2に基づいて、該光学干渉層における膜厚の変化の変化量を検出し、該変化量に基づいて該光学干渉層用塗布液の塗布量を制御する光学干渉層用塗布液塗布量調整工程と、
該ハードコート層塗布液の塗布量を段階的に増減させて、該第2反射光強度と該第2の光に対する基準反射光強度との差と、該第1反射光強度と該第1の光に対する基準反射光強度との差との差の絶対値|{(I2−Istd2)−(I1−Istd1)}|を、閾値(ε)と比較することで、最適な塗布量を決定し、該ハードコート層塗布液の塗布量を制御するハードコート層塗布液塗布量調整工程と、を有する光学フィルムの製造方法。
(式1) W1<λ02/(8・nHC・dHC)
(式2) W2>λ02/(2・nHC・dHC)
ここでスペクトル幅は半値全幅を表し、λ0は光源の中心波長[nm]、nHCはハードコート層の光源の中心波長における屈折率、dHCはハードコート層の厚み[nm]を表す。
【請求項1】
基材と、該基材上に形成されたハードコート層と、該ハードコート層上に形成された少なくとも1層の光学干渉層とを有する光学フィルムの膜厚測定方法であって、
該ハードコート層の厚みが1μm〜200μmであり、該光学干渉層の厚みが0.001μm〜0.5μmであり、
該光学フィルムに、検出感度のスペクトル幅W1が下記式1を満たす第一の光を照射した時の第1反射光強度(I1)を検出する第1検出工程と、
該光学フィルムに、検出感度のスペクトル幅W2が下記式2を満たす第二の光を照射した時の第2反射光強度(I2)を検出する第2検出工程と、
該第1反射光強度(I1)と、該第2反射光強度(I2)と、該第1の光の基準反射光強度(Istd1)及び該第2の光の基準反射光強度(Istd2)とに基づいて、該ハードコート層及び該光学干渉層のうち少なくとも一方で膜厚の変化が発生しているか否かを判別する厚み変化検出工程と、を有する光学フィルムの膜厚測定方法。
(式1) W1<λ02/(8・nHC・dHC)
(式2) W2>λ02/(2・nHC・dHC)
ここでスペクトル幅は半値全幅を表し、λ0は光源の中心波長[nm]、nHCはハードコート層の光源の中心波長における屈折率、dHCはハードコート層の厚み[nm]を表す。
【請求項2】
前記第2反射光強度と前記第2の光の基準反射光強度との差の絶対値|(I2−Istd2)|を閾値(ε2)と比較することで、前記光学干渉層における膜厚の変化の発生の有無を判別する請求項1に記載の光学フィルムの膜厚測定方法。
【請求項3】
前記第2反射光強度と前記第2の光の基準反射光強度との差と、前記第1反射光強度と前記第1の光の基準反射光強度との差との差の絶対値|{(I2−Istd2)−(I1−Istd1)}|を、閾値(ε)と比較することで、前記ハードコート層における膜厚の変化の発生の有無を判別する請求項1又は2に記載の光学フィルムの膜厚測定方法。
【請求項4】
前記第1の光、及び前記第2の光のうち少なくともいずれか一方が紫外線である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルムの膜厚測定方法。
【請求項5】
基材と、該基材上に形成された厚みが1μm〜200μmのハードコート層と、該ハードコート層上に形成された厚みが0.001μm〜0.5μmの光学干渉層とを有する光学フィルムの膜厚を測定する膜厚測定装置であって、
該光学フィルムに検出感度のスペクトル幅W1が下記式1を満たす第1の光源と、該第1の光源を該光学フィルムに照射した時の光学フィルムからの反射光強度(I1)を検出する第1の検出器からなる第1検出部と、
該光学フィルムに検出感度のスペクトル幅W2が下記式2を満たす第2の光源と、該第2の光源を該光学フィルムに照射した時の該光学フィルムからの反射光強度(I2)を検出する第2の検出器からなる第2検出部と、
該第1の反射光強度(I1)、該第2の反射光強度(I2)、該第1の光の基準反射光強度(Istd1)及び該第2の光の反射光強度(Istd2)とに基づいて、該ハードコート層及び該光学干渉層のうち少なくとも一方で膜厚の変化が発生しているか否かを判別する膜厚測定部と、を有する光学フィルムの膜厚測定装置。
(式1) W1<λ02/(8・nHC・dHC)
(式2) W2>λ02/(2・nHC・dHC)
ここでスペクトル幅は半値全幅を表し、λ0は光源の中心波長[nm]、nHCはハードコート層の光源の中心波長における屈折率、dHCはハードコート層の厚み[nm]を表す。
【請求項6】
基材と、該基材上に形成された厚みが1μm〜200μmのハードコート層と、該ハードコート層上に形成された厚みが0.001μm〜0.5μmの光学干渉層とを有する光学フィルムの製造方法であって、
該基材上に、ハードコート層形成用塗布液を塗布しハードコート層を形成する工程と、光学干渉層用塗布液を塗布し光学干渉層を形成する工程と、
該光学フィルムに、検出感度のスペクトル幅W1が下記式1を満たす第一の光を照射した時の第1反射光強度(I1)を検出する第1検出工程と、
該光学フィルムに、検出感度のスペクトル幅W2が下記式2を満たす第二の光を照射した時の第2反射光強度(I2)を検出する第2検出工程と、
該第1反射光強度(I1)と、該第2反射光強度(I2)と、該第1の光の基準反射光強度(Istd1)及び該第2の光の基準反射光強度(Istd2)とに基づいて、該ハードコート層及び該光学干渉層のうち少なくとも一方で膜厚の変化が発生しているか否かを判別する厚み変化検出工程と、
を有する光学フィルムの製造方法。
(式1) W1<λ02/(8・nHC・dHC)
(式2) W2>λ02/(2・nHC・dHC)
ここでスペクトル幅は半値全幅を表し、λ0は光源の中心波長[nm]、nHCはハードコート層の光源の中心波長における屈折率、dHCはハードコート層の厚み[nm]を表す。
【請求項7】
基材と、該基材上に形成された厚みが1μm〜200μmのハードコート層と、該ハードコート層上に形成された厚みが0.001μm〜0.5μmの光学干渉層とを有する光学フィルムの製造方法であって、
該基材上に、ハードコート層形成用塗布液を塗布しハードコート層を形成する工程と、光学干渉層用塗布液を塗布し光学干渉層を形成する工程と、
該光学フィルムに、検出感度のスペクトル幅W1が下記式1を満たす第一の光を照射した時の第1反射光強度(I1)を検出する第1検出工程と、
該光学フィルムに、検出感度のスペクトル幅W2が下記式2を満たす第二の光を照射した時の第2反射光強度(I2)を検出する第2検出工程と、
該第1反射光強度(I1)と、該第2反射光強度(I2)と、該第1の光の基準反射光強度(Istd1)及び該第2の光の基準反射光強度(Istd2)とに基づいて、該ハードコート層及び該光学干渉層のうち少なくとも一方で膜厚の変化が発生しているか否かを判別する厚み変化検出工程と、
該第2反射光強度と該第2の光に対する基準反射光強度との差I2−Istd2に基づいて、該光学干渉層における膜厚の変化の変化量を検出し、該変化量に基づいて該光学干渉層用塗布液の塗布量を制御する光学干渉層用塗布液塗布量調整工程と、
該ハードコート層塗布液の塗布量を段階的に増減させて、該第2反射光強度と該第2の光に対する基準反射光強度との差と、該第1反射光強度と該第1の光に対する基準反射光強度との差との差の絶対値|{(I2−Istd2)−(I1−Istd1)}|を、閾値(ε)と比較することで、最適な塗布量を決定し、該ハードコート層塗布液の塗布量を制御するハードコート層塗布液塗布量調整工程と、を有する光学フィルムの製造方法。
(式1) W1<λ02/(8・nHC・dHC)
(式2) W2>λ02/(2・nHC・dHC)
ここでスペクトル幅は半値全幅を表し、λ0は光源の中心波長[nm]、nHCはハードコート層の光源の中心波長における屈折率、dHCはハードコート層の厚み[nm]を表す。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−68173(P2012−68173A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214566(P2010−214566)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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