説明

光学式情報記録再生装置

【課題】装置を大型化することなく、情報記録媒体と光ピックアップの相対的な傾きが生じた場合でも、安定な記録再生性能動作を可能とする。
【解決手段】第1のレーザ光源10からの光束を空間変調器13に照射し、光軸を共有する情報光と参照光を分離して生成し、生成された光束を対物レンズ23により情報記録媒体1に集光し、ホログラフィを利用して情報の記録再生を行う光学式情報記録再生装置であって、対物レンズ23を移動する駆動手段31を備え、空間変調された光束の中心を通る光線の情報記録媒体1への入射角に応じて、駆動手段31は、対物レンズ23を光束に対して平行に移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式情報記録再生装置に関し、特に、ホログラフィを利用して情報が記録される記録媒体に対して情報を記録し、情報が記録されている記録媒体からの情報の再生を行う光学式情報記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図10は、従来の同軸タイプのホログラフィックメモリ(コリニア方式)の光学系を示すブロック図である。
【0003】
まず、上記光学系を用いて、記録媒体であるホログラムディスク216に記録を行う場合について説明する。
【0004】
光源の緑レーザ201から出射された光束はコリメータ202で平行光束とされ、ミラー203を経由し、空間光変調素子SLM204を照明する。
【0005】
図10では、SLMとしてDMD(Deformable Mirror Device)が使用されている。
【0006】
SLM204上で「1」の情報を表す画素で反射された光は、ホログラムディスク216の方向へ反射され、「0」の情報を表す画素で反射された光はホログラムディスク216の方向へ反射されない。
【0007】
コリニア方式のSLM204上には、情報光206を変調する部分とそれを環状に取り巻く参照光205を変調する部分が設けられている。
【0008】
SLM204で「1」の情報を表す画素にて反射された参照光205と情報光206は、偏光ビームスプリッタPBS207をP偏光で透過する。その後、リレーレンズ(1)208、ミラー209、リレーレンズ(2)210、ダイクロBS211を経由してホログラムディスク216に入射する。
【0009】
1/4波長板QWP212を透過し、円偏光(例えば、右回りの円偏光)に変換された参照光205と情報光206は、ミラー213で反射されて焦点距離Fの対物レンズ214に入射する。
【0010】
二つのリレーレンズ1及び2により、SLM204上に表示されたパターンは、対物レンズ214からFだけ手前に中間像を形成する。
【0011】
これにより、SLM上のパターン像(図示せず)、対物レンズ214、ホログラム媒体216がいずれもFの距離だけ離れて配置される、いわゆる4F光学系が構成される。
【0012】
ホログラムディスク216は、ディスク状であり、スピンドルモータ215上に回転可能に保持されている。
【0013】
対物レンズ214によって、参照光205と情報光206はディスク上の記録媒体(図示せず)に集光され、干渉して干渉縞を形成する。
【0014】
記録媒体中の高分子材料には、この記録時の干渉縞パターンが屈折率分布として記録され、デジタル体積ホログラムが形成される。また、記録媒体中には反射膜が設けられている。
【0015】
ホログラムの記録再生を行う緑レーザ201以外に、記録媒体に感光性のない赤レーザ220が設けられていて、上記の反射膜を基準面として、ホログラムディスク216の変位を高精度に検出することが可能である。
【0016】
これにより、ホログラムディスク216に面ブレや偏芯が発生しても、光サーボ技術を用いてダイナミックに記録スポットを記録媒体面に追従させることが可能となり、高精度に干渉縞パターンを記録することができる。
【0017】
以下に簡単に説明する。
【0018】
赤レーザ220から出射された直線偏光光束はビームスプリッタBS221を透過し、レンズ222で平行光束とされる。その後、ミラー223とダイクロBS211で反射されて、ホログラムディスク216に向かう。
【0019】
1/4波長板QWP212を透過し、円偏光(例えば、右回りの円偏光)に変換された光束は、ミラー213で反射されて対物レンズ214に入射する。その後、ホログラムディスク216上の反射面に微小な光スポットとして集光される。
【0020】
反射された光束は逆回りの円偏光(例えば、左回りの円偏光)となり、対物レンズ214に再入射して平行光束とされる。その後、ミラー213で反射されて1/4波長板QWP212を透過して、往路とは垂直な直線偏光光束に変換される。
【0021】
ダイクロBS211で反射された光束は、往路と同様にミラー223、レンズ222を経由し、ビームスプリッタBS221で反射されて、光検出器224に導かれる。
【0022】
光検出器224は、複数の受光面(図示しない)を有していて、公知の方法で反射面の位置情報を検知し、それに基づいて対物レンズ214のフォーカスとトラッキングを行うことができる。
【0023】
次に、上記光学系を用いて、記録媒体であるホログラムディスク216から記録情報の再生を行う場合について説明する。
【0024】
光源の緑レーザ201から出射された光束は記録時と同様に、空間光変調素子SLM204を照明する。
【0025】
再生時は、SLM204上の参照光205を変調する部分のみが「1」の情報を表示し、情報光206を変調する部分はすべて「0」の情報を表示する。
【0026】
したがって、参照光の部分の画素で反射された光だけが、ホログラム216の方向へ反射され、情報光はホログラム216の方向へ反射されない。
【0027】
記録時と同様に参照光205は、円偏光(例えば、右回りの円偏光)となってディスク上の記録媒体(図示せず)に集光され、記録された干渉縞から情報光を再生する。
【0028】
記録媒体中の反射膜で反射された情報光は、逆回りの円偏光(例えば、左回りの円偏光)となり、対物レンズ214に再入射して平行光束とされる。その後、ミラー213で反射されて1/4波長板QWP212を透過して、往路とは垂直な直線偏光光束(S偏光)に変換される。
【0029】
この時、対物レンズ214からFの距離に再生されたSLMの表示パターンの中間像が形成される。
【0030】
ダイクロBS211を透過した光束は、リレーレンズ(2)210、ミラー209、リレーレンズ(1)208を経由して偏光ビームスプリッタPBS207に入射する。
【0031】
PBS207で反射された光束は、リレーレンズ(2)と(1)により、空間光変調素子SLM204と共役の位置にSLMの表示パターンの中間像として再結像される。
【0032】
この位置には開口217が予め置かれていて、情報光の周辺部にある不要な参照光が遮蔽される。そして、レンズ218により、再結像された中間像はCMOSセンサ219上に情報光の部分のみのSLM表示パターンを形成する。
【0033】
これにより、不要な参照光がCMOSセンサ219に入射しないので、S/Nの良い再生信号が得られる。
【0034】
ホログラフィックメモリの特徴として、記録時の参照光と再生時の参照光が同じ角度で情報記録媒体に入射しないと、回折効率が著しく減少し、正確な読み出しが困難になる。
【0035】
そこで、情報記録媒体と光ピックアップの相対的な傾きに応じて、光ピックアップ本体を傾斜させたり(特許文献1参照)、空間変調された光束をシフトさせる(特許文献2参照)といった手法が提案されている。
【特許文献1】特開2001−273650号公報
【特許文献2】特開2005−32309号公報
【非特許文献1】「ホログラフィックメモリ/HVD(TM)を支える計測・ナノ制御技術」(Proceeding of 35th Meeting on Lightwave Sensing Technology(LST35−12) June, 2005 著者:譚 小地、堀米 秀嘉)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
しかしながら、上記のような構成で情報記録媒体と光ピックアップの相対的な傾きを補正する場合、トラッキングやフォーカスサーボを行う駆動部と別の駆動機構が必要になるなど、大型化、コストアップの要因となる。
【0037】
また、変調パターン全体をシフトさせ補正する場合、空間変調素子、エリアセンサの双方の構造が複雑化し、やはり大型化、コストアップの要因となる。
【0038】
そこで、本発明は、装置を大型化することなく、情報記録媒体と光ピックアップの相対的な傾きが生じた場合でも、安定な記録再生性能動作を可能とする光学式情報記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0039】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、第1のレーザ光源からの光束を空間変調器に照射し、光軸を共有する情報光と参照光を分離して生成し、当該生成された光束を対物レンズにより情報記録媒体に集光し、ホログラフィを利用して情報の記録再生を行う光学式情報記録再生装置であって、前記対物レンズを移動する駆動手段を備え、前記空間変調された光束の中心を通る光線の前記情報記録媒体への入射角に応じて、前記駆動手段は、前記対物レンズを前記光束に対して平行に移動することを特徴とする。
【0040】
また、本発明は、前記情報記録媒体に対して感光性のないレーザ光を発光する第2のレーザ光源と、当該第2のレーザ光源から照射され、前記情報記録媒体で反射された光束を検出する光検出器とをさらに有し、前記入射角は、前記光検出器の検出結果に基づいて検出されることを特徴とする。
【0041】
また、本発明は、前記光検出器の受光面は複数に分割されており、前記入射角は、前記各受光面の受光量に基づいて検出されることを特徴とする。
【0042】
また、本発明は、前記複数の受光面は4つであることを特徴とする。
【0043】
また、本発明は、前記第2のレーザ光源から出力された光束に対する前記対物レンズの平行移動量を検出する手段をさらに有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、ホログラム媒体への入射光軸を対物レンズを平行移動することによって最適化しているので、極めて簡素な構成で、安定な再生性能を得ることができ、装置互換を良好に保つことができる。
【0045】
本発明によれば、空間変調パターンの中心光線が記録媒体に対して常に直入射するように対物レンズを制御しているので、ディスクにそりが生じた場合やディスクが傾いた状態で記録された場合でも、安定な記録再生ができる。
【0046】
また、ドライブ間の相対傾きの差異を吸収できるので、装置互換が良好に保たれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の実施の形態を説明する。
【0048】
[実施例1]
図1は、本発明の実施例1におけるホログラム記録媒体1を示す断面図である。
【0049】
このホログラム記録媒体1は、対物レンズの側から透明基板のカバー層2、ホログラム記録層3、波長選択反射膜4、ギャップ層5、反射膜6、プリフォーマット基板7から構成されている。
【0050】
プリフォーマット基板7は、ポリカーボネート、ガラス等によって形成された円板状の基板である。
【0051】
プリフォーマット基板7は、半径方向に線状に延びる複数の位置決め領域としてのアドレスサーボエリア8が所定の角度間隔で設けられており、隣り合うアドレスサーボエリア間の扇形の区間がデータエリア9になっている。
図2は、本実施例における同軸タイプのホログラフィックメモリ(コリニア方式)の光学系を示すブロック図である。
【0052】
まず、上記光学系を用いて、記録媒体であるホログラム記録媒体1に記録を行う場合について説明する。
【0053】
光源の緑レーザ10から出射された光束はコリメータ11で平行光束とされ、ビームスプリッタ12を経由し空間光変調素子SLM13を照明する。
【0054】
図2では、SLMとしてDMD(Deformable Mirror Device)が使用されている。
【0055】
SLM13上で「1」の情報を表す画素で反射された光は、ホログラム記録媒体1の方向へ反射され、「0」の情報を表す画素で反射された光はホログラム記録媒体1の方向へ反射されない。
【0056】
コリニア方式のSLM13上には、情報光14を変調する部分とそれを環状に取り巻く参照光15を変調する部分が設けられている。
【0057】
SLM13で「1」の情報を表す画素にて反射された参照光15と情報光14は、偏光ビームスプリッタPBS16をP偏光で透過する。その後、リレーレンズ(1)17、ミラー18、リレーレンズ(2)19、ダイクロBS20を経由してホログラム記録媒体1に向かって出射する。
【0058】
1/4波長板QWP21を透過し、円偏光(例えば、右回りの円偏光)に変換された参照光14と情報光15は、ミラー22で反射されて焦点距離Fの対物レンズ23に入射する。
【0059】
二つのリレーレンズ(1)17及び(2)19により、SLM13上に表示されたパターンは、対物レンズ23からFだけ手前に中間像を形成する。
【0060】
これにより、SLM13上のパターン像(図示せず)、対物レンズ23、ホログラム記録媒体1がいずれもFの距離だけ離れて配置される、いわゆる4F光学系が構成される。
【0061】
ホログラム記録媒体1は、ディスク状であり、スピンドルモータ24上に回転可能に保持されている。
【0062】
対物レンズ23によって、参照光14と情報光15はディスク上に集光され、干渉して干渉縞を形成する。記録媒体中の高分子材料には、この記録時の干渉縞パターンが屈折率分布として記録され、デジタル体積ホログラムが形成される。
【0063】
ホログラムの記録再生を行う緑レーザ10以外に、記録媒体に感光性のない赤レーザ25が設けられていて、上記の反射膜を基準面として、ホログラム記録媒体1の変位を高精度に検出することが可能である。
【0064】
これにより、ホログラム記録媒体1に面ブレや偏芯が発生しても、光サーボ技術を用いてダイナミックに記録スポットを記録媒体面に追従させることが可能となり、高精度に干渉縞パターンを記録することができる。
【0065】
以下に簡単に説明する。
【0066】
赤レーザ25から出射された直線偏光光束はビームスプリッタBS26を透過し、レンズ27で平行光束とされ、ミラー28とダイクロBS20で反射されて、ホログラム記録媒体1に向かって出射する。
【0067】
1/4波長板QWP21を透過し、円偏光(例えば、右回りの円偏光)に変換された光束は、ミラー22で反射されて対物レンズ23に入射してホログラム記録媒体1上の反射面に微小な光スポットとして集光される。
【0068】
反射された光束は逆回りの円偏光(例えば、左回りの円偏光)となり、対物レンズ23に再入射して平行光束とされ、ミラー22で反射されて1/4波長板QWP21を透過して、往路とは垂直な直線偏光光束に変換される。
【0069】
ダイクロBS20で反射された光束は、往路と同様にミラー28、レンズ27を経由し、ビームスプリッタBS26で反射されて、シリンドリカルレンズ29を透過し、光検出器30に導かれる。
【0070】
光検出器30は、4分割の受光面を有している。2軸アクチュエータ31はCDやDVD等に用いられるような小型タイプで、対物レンズ23のみを保持している。
【0071】
図3は、本発明の実施例1における2軸アクチュエータ31を示す斜視図である。
【0072】
2軸アクチュエータ31は、ベース39と、ベース39に固定されたサスペンションワイヤ40a−40d、このサスペンションワイヤ40a−40dによって支持されたレンズホルダ41、レンズホルダ41に取り付けられたトラッキングコイル42及びフォーカスコイル43、ベース39に固定されたヨーク41と、ヨーク41に取り付けられた対向する2つのマグネット45a、45bから構成される。対物レンズはレンズホルダ41に取り付けられている。
【0073】
フォーカスコイル43に通電することにより、対物レンズ23が光軸方向に移動し、トラッキングコイル42に通電することにより、対物レンズ23が光軸と直交する方向に移動する。
【0074】
緑レーザ10、コリメータ11以外の光学系は、キャリッジ32上に固定されており、ホログラム記録媒体1の半径方向に移動可能となっている。所望のトラックへのアクセスは、キャリッジ32の駆動によって行う。
【0075】
次に、上記光学系を用いて、ホログラム記録媒体1から記録情報の再生を行う場合について説明する。
【0076】
光源の緑レーザ10から出射された光束は記録時と同様に、空間光変調素子SLM13を照明する。再生時は、SLM13上の参照光14を変調する部分のみが「1」の情報を表示し、情報光15を変調する部分はすべて「0」の情報を表示する。
【0077】
したがって、参照光14の部分の画素で反射された光だけが、ホログラム記録媒体1の方向へ反射され、情報光15はホログラム記録媒体1の方向へ反射されない。
【0078】
記録時と同様に参照光14は、円偏光(例えば、右回りの円偏光)となってディスク上に集光され、記録された干渉縞から情報光を再生する。記録媒体中の反射膜で反射された情報光は、逆回りの円偏光(例えば、左回りの円偏光)となり、対物レンズ23に再入射して平行光束とされる。その後、ミラー22で反射されて1/4波長板QWP21を透過して、往路とは垂直な直線偏光光束(S偏光)に変換される。
【0079】
この時、対物レンズ23からFの距離に再生されたSLM13の表示パターンの中間像が形成される。
【0080】
ダイクロBS20を透過した光束は、リレーレンズ(2)19、ミラー18、リレーレンズ(1)17を経由して偏光ビームスプリッタPBS16に向かう。PBS16で反射された光束は、リレーレンズ(2)と(1)により、空間光変調素子SLM13と共役の位置にあるCMOSセンサ33上に、SLM13の表示パターンの像を形成する。
【0081】
図4は、本発明の実施例1の制御系のブロック図である。
【0082】
光ヘッドからの出力は、各信号検出回路に伝送され、再生信号、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号、レンズ位置信号が検出される。
【0083】
フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号に基づき、それぞれのサーボ回路によって対物レンズアクチュエータ31の駆動が行われる。
【0084】
レンズ位置信号は、レンズ位置サーボ回路に伝送され、キャリッジ駆動の制御信号となる。コントローラはスピンドルモータの回転制御を行うとともに、後述するレンズ位置制御を再生信号を基に行う。
【0085】
フォーカス及びトラッキングサーボ制御動作については、記録時、再生時とも共通である。
【0086】
フォーカスエラー信号の検出は、アドレスサーボエリアでの4分割センサの出力を基に行う。
【0087】
図5は、4分割センサの受光パターンを示す平面図である。受光面a−dからの出力をそれぞれA−Dとすると、フォーカスエラー信号FEは以下の演算によって得られる。
【0088】
FE=(A+C)−(B+D)
フォーカス制御は、フォーカスエラー信号に基づき、対物レンズ23が搭載されている2軸アクチュエータ31を、ディスク面と垂直方向へ駆動することにより行う。
【0089】
トラッキングエラー信号の検出は、アドレスサーボエリアでの4分割センサの出力を基に行う。トラッキングエラー信号TEは以下の演算によって得られる。
【0090】
TE=(A+D)−(B+C)
トラッキング制御については、トラッキングエラー信号に基づき、対物レンズ23が搭載されている2軸アクチュエータ31を、ディスク面と水平方向へ駆動することにより行う。
【0091】
ここで、レンズ位置制御の手順について説明する。レンズ位置制御は、以下に述べるレンズ位置信号LPradを目標値とし、キャリッジ32によって行う。
【0092】
よって、キャリッジ32は、対物レンズ位置を固定したまま、トラック偏芯へ光学系を追従させる動作を行う。キャリッジ32の駆動で追従できない微小な高周波成分は、対物レンズ23のトラッキング動作で追従する。
【0093】
図6は、レンズ位置信号を検出の形態を示す側面図である。
【0094】
まず、記録時のレンズ位置制御について説明する。レンズ位置信号の検出は、図6に示すようなLED37、白黒パターン38と分割フォトダイオードからなるフォトセンサ34によって行う。
【0095】
LED37からの出射光を白黒パターン38に照射し、反射光を分割フォトダイオードで受光する。分割フォトダイオードの受光面e、fからの出力をそれぞれE、Fとすると、ラジアル方向のレンズ位置信号LPradは次のように与えられる。
【0096】
LPrad=E−F
レンズ位置制御は、レンズ位置信号LPradのゼロを目標値として、制御を行う。
【0097】
続いて、再生時のレンズ位置制御について説明する。ホログラム記録媒体1には、所定の複数箇所に傾き検出用のパターンが記録されている。
【0098】
再生時にはこの傾き検出用パターンを再生し、CMOSセンサ33の出力から記録画素ごとのレベル分布(ヒストグラム)を演算し、さらにその標準偏差を算出する。
【0099】
対物レンズ位置制御の目標値に一定のオフセットを与えながら再生を行い、標準偏差のピーク位置を検出する。以降の再生は、算出された標準偏差がピークになる対物レンズ位置を目標値として制御する。
【0100】
図7は、レンズ位置制御による、ホログラム記録媒体への光線入射角制御の原理を示す側面図である。
【0101】
空間変調された光束と対物レンズ位置に芯ずれが無い場合、図7(a)のように中心光線は傾きが変わることなくホログラム記録媒体に直入射する。一方、対物レンズ位置を空間変調された光束に対して偏芯させると、図7(b)のようにホログラム記録媒体に入射する光束は偏芯させた分だけ傾く。
【0102】
よって、対物レンズの平行シフト量を制御することにより、ホログラム記録媒体への光線入射角を制御することが可能である。
【0103】
これにより、ホログラム記録媒体が傾いていたり、傾いた光束で記録された情報を再生する場合に、その傾きに入射光束の傾きを合わせることが可能である。
【0104】
なお、本実施例では、トラックの接線方向の対物レンズ位置制御は行っていないが、駆動機構を設け、半径方向と同様に行ってもよい。また、再生時も記録時と同様のレンズ位置制御をしても構わない。
【0105】
以上のようにして、傾いて情報が記録されたホログラム記録媒体であっても、極めて簡素な構成で、安定な再生性能を得ることができる。
【0106】
[実施例2]
本実施例におけるホログラム記録媒体の構成は実施例1と同様である。光学系もほぼ同様であるが、サーボ用の光学系が異なる。
【0107】
図8は、本発明の実施例2における同軸タイプのホログラフィックメモリ(コリニア方式)の光学系を示すブロック図である。
【0108】
赤レーザ25から出射された直線偏光光束はレンズ27で平行光束とされ、開口35を通過し、ビームスプリッタBS26を反射して、ダイクロBS20で反射されて、ホログラム記録媒体1に向かって出射する。
【0109】
1/4波長板QWP21を透過し、円偏光(例えば、右回りの円偏光)に変換された光束は、ミラー22で反射されて対物レンズ23に入射してホログラム記録媒体1上の反射面に微小な光スポットとして集光される。
【0110】
反射された光束は逆回りの円偏光(例えば、左回りの円偏光)となり、対物レンズ23に再入射して平行光束とされ、ミラー22で反射されて1/4波長板QWP21を透過して、往路とは垂直な直線偏光光束に変換される。
【0111】
ダイクロBS20で反射された光束は、ビームスプリッタBS26を透過し、レンズ36を経由して、シリンドリカルレンズ29を透過し、光検出器30に導かれる。光検出器30は、4分割の受光面を有している。2軸アクチュエータ31はCDやDVD等に用いられるような小型タイプで、対物レンズ23のみを保持している。
【0112】
開口35は、対物レンズ23の有効径より数百ミクロン小さく作られている。本実施例の場合、対物レンズ23の有効系は直径3.5 mm、開口35の直径は3 mmである。また、開口の中心と、SLM13の変調パターンの中心軸は精度良く調整固定されている。
【0113】
緑レーザ10、コリメータ11以外の光学系は、キャリッジ32上に固定されており、ディスクの径方向に移動可能となっている。所望のトラックへのアクセスは、キャリッジ32の駆動によって行う。
【0114】
本発明の実施例2の制御系のブロック図である。
【0115】
光ヘッドからの出力は、各信号検出回路に伝送され、再生信号、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号、チルトエラー信号が検出される。
【0116】
フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号に基づき、それぞれのサーボ回路によって対物レンズアクチュエータの駆動が行われる。チルトエラー信号は、レンズ位置サーボ回路に伝送され、キャリッジ駆動の制御信号となる。コントローラはスピンドルモータの回転制御を行う。
【0117】
フォーカス及びトラッキングサーボ制御動作については、記録時、再生時とも共通である。
【0118】
フォーカスエラー信号の検出は、アドレスサーボエリアでの4分割センサの出力を基に行う。4分割センサの受光パターンを図4に示す。受光面a−dからの出力をそれぞれA−Dとすると、フォーカスエラー信号FEは以下の演算によって得られる。
【0119】
FE=(A+C)−(B+D)
フォーカス制御は、フォーカスエラー信号に基づき、対物レンズ23が搭載されている2軸アクチュエータ31を、ディスク面と垂直方向へ駆動することにより行う。
【0120】
トラッキングエラー信号の検出は、アドレスサーボエリアでの4分割センサの出力を基に行う。トラッキングエラー信号TEは以下の演算によって得られる。
【0121】
TE=(A+D)−(B+C)
トラッキング制御については、トラッキングエラー信号に基づき、対物レンズ23が搭載されている2軸アクチュエータ31を、ディスク面と水平方向へ駆動することにより行う。
【0122】
ここで、レンズ位置制御の手順について説明する。
【0123】
本実施例では、記録時と再生時のレンズ位置制御は共通である。
【0124】
レンズ位置制御は、以下に示すチルトエラー信号TILTradに基づき、キャリッジ32によって行う。
【0125】
よって、キャリッジ32は、対物レンズ位置を固定したまま、トラック偏芯へ光学系を追従させる動作を行う。キャリッジ32の駆動で追従できない微小な高周波成分は、対物レンズ23のトラッキング動作で追従する。
【0126】
チルトエラー信号の検出は、アドレスサーボエリアでのプリピットのない領域での4分割センサの出力を基に行う。ラジアル方向のチルトエラー信号TILTradは、以下の演算によって得られる。
【0127】
TILTrad=(A+D)−(B+D)
記録又は再生時は、チルトエラー信号TILTradに基づき、キャリッジ32に対しゼロを目標値としたフィードバック制御を行う。
【0128】
次に、チルトエラー信号検出の原理について説明する。
【0129】
光軸中心がディスクに直入射した場合は、反射光の光軸は入射光の光軸と一致する。しかし、光軸中心がディスクに斜入射した場合は、反射光の光軸は入射光と一致せず、光束が傾き方向へシフトする。
【0130】
このシフト量を分割受光面で検出することにより、検出を行う。このとき、対物レンズへの入射光束は、対物レンズの有効径よりも小さく制限されているため、対物レンズシフトによる強度分布変化の影響を受けず、ディスク面への光軸中心の入射角が精度良く検出される。
【0131】
なお、再生時は、実施例1と同様に傾き検出用のパターンを用いたレンズ位置制御を行っても良い。また、本実施例では、トラックの接線方向の対物レンズ位置制御は行っていないが、駆動機構を設け、半径方向と同様に行ってもよい。
【0132】
本実施例では、SLMパターンの中心を通る光線の、ホログラム記録媒体への入射角度を検出し、対物レンズの平行移動によって制御するようにしたので、ディスクに反りがあるような場合でも、安定した記録、再生を行うことができる。
【0133】
また、ドライブ間の相対傾きの差異を吸収できるので、装置互換が良好に保たれる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明は、情報光と参照光とを記録媒体上に集光して干渉させて記録し、参照光で再生する光学式情報記録再生装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明の実施例1におけるホログラム記録媒体1を示す断面図である。
【図2】本発明の実施例1における同軸タイプのホログラフィックメモリ(コリニア方式)の光学系を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例1における2軸アクチュエータの31を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施例1の制御系のブロック図である。
【図5】4分割センサの受光パターンを示す平面図である。
【図6】レンズ位置信号を検出の形態を示す側面図である。
【図7】レンズ位置制御による、ホログラム記録媒体への光線入射角制御の原理を示す側面図である。
【図8】本発明の実施例2における同軸タイプのホログラフィックメモリ(コリニア方式)の光学系を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施例2の制御系のブロック図である。
【図10】従来の同軸タイプのホログラフィックメモリ(コリニア方式)の光学系を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0136】
1 ホログラム記録媒体
2 カバー層
3 ホログラム記録層
4 波長選択反射膜
5 ギャップ層
6 反射膜
7 プリフォーマット基板
8 アドレスサーボエリア
9 データエリア
10 緑レーザ
11 コリメータ
12 BS
13 SLM
14 情報光
15 参照光
16 PBS
17 リレーレンズ1
18 ミラー
19 リレーレンズ2
20 ダイクロBS
21 QWP
22 ミラー
23 対物レンズ
24 スピンドルモータ
25 赤レーザ
26 ビームスプリッタ
27 レンズ
28 ミラー
29 シリンドリカルレンズ
30 光検出器
31 2軸アクチュエータ
32 キャリッジ
33 CMOSセンサ
34 フォトセンサ
35 開口
36 レンズ
37 LED
38 白黒パターン
201 緑レーザ
202 コリメータ
203 ミラー
204 SLM
205 情報光
206 参照光
207 PBS
208 リレーレンズ1
209 ミラー
210 リレーレンズ2
211 ダイクロBS
212 QWP
213 ミラー
214 対物レンズ
215 スピンドルモータ
216 ホログラム
217 開口
218 レンズ
219 CMOS
220 赤レーザ
221 ビームスプリッタ
222 レンズ
223 ミラー
224 光検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のレーザ光源からの光束を空間変調器に照射し、光軸を共有する情報光と参照光を分離して生成し、当該生成された光束を対物レンズにより情報記録媒体に集光し、ホログラフィを利用して情報の記録再生を行う光学式情報記録再生装置であって、
前記対物レンズを移動する駆動手段を備え、
前記空間変調された光束の中心を通る光線の前記情報記録媒体への入射角に応じて、前記駆動手段は、前記対物レンズを前記光束に対して平行に移動することを特徴とする光学式情報記録再生装置。
【請求項2】
前記情報記録媒体に対して感光性のないレーザ光を発光する第2のレーザ光源と、当該第2のレーザ光源から照射され、前記情報記録媒体で反射された光束を検出する光検出器とをさらに有し、
前記入射角は、前記光検出器の検出結果に基づいて検出されることを特徴とする請求項1記載の光学式情報記録再生装置。
【請求項3】
前記光検出器の受光面は複数に分割されており、
前記入射角は、前記各受光面の受光量に基づいて検出されることを特徴とする請求項2記載の光学式情報記録再生装置。
【請求項4】
前記複数の受光面は4つであることを特徴とする請求項3記載の光学式情報記録再生装置。
【請求項5】
前記第2のレーザ光源から出力された光束に対する前記対物レンズの平行移動量を検出する手段をさらに有することを特徴とする請求項2から4のいずれ1項記載の光学式情報記録再生装置。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−149250(P2007−149250A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343879(P2005−343879)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】