説明

光学式米粒選別機

【課題】胴割粒の判別精度を向上させることを第1の技術的課題とし、また、この胴割粒の選別に加えて着色粒及び異物も同時に選別できる光学式米粒選別機を提供することを第2の技術的課題とするもの。
【解決手段】本発明の光学式米粒選別機によれば、胴割粒の判別について、亀裂部分が検出されず肌ずれ部分と胚芽部分とが少なくとも検出された第1米粒画像と、亀裂部分と肌ずれ部分と胚芽部分が少なくとも検出された第2米粒画像とを取得し、この両画像を使って引き算処理(演算)をして亀裂部分の画像だけを残すようにしたので、肌ずれ部分及び胚芽部分の影(検出光)の影響を受けることなく、胴割粒の判別が正確に行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玄米や精白米などの原料米粒中に含まれる不良品(着色粒や胴割粒など)及び異物を光学検出手段で判別し、選別する米粒選別機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、原料米粒に混入した不良品(着色粒)や異物(小石、ガラス片、プラスチック、金属片、陶器片など)を光学検出手段で判別し、選別手段によって選別する光学式米粒選別機は、例えば特許文献1によって知られている。この装置は、移送手段(傾斜シュート)から放出された原料米粒に可視光と近赤外光とを照射し、該照射光を受けた原料米粒からの反射光及び透過光を受光センサで光学検出し、検出した可視光の光学検出値に基づいて前記着色粒を判別するとともに、近赤外光の光学検出値に基づいて前記異物を判別し、この後に選別手段によって、前記判別された着色粒及び異物を除去するものである。
【0003】
一方、原料米粒に混入した内部に亀裂を有する胴割粒(不良品)を光学検出手段で判別し、選別手段によって選別する光学式胴割粒選別機も例えば特許文献2によって知られている。この装置は、移送手段(傾斜シュート)から放出された原料米粒に可視光を照射し、該照射光を受けた原料米粒からの透過光をCCDカメラ(CCDラインセンサ内蔵)で撮像し、該撮像データに基づいて形成した米粒イメージ中に亀裂部分に相当する線状の暗い影を検出すると、胴割粒と判断して選別手段によって除去するものである。
【0004】
さらに、原料米粒に混入した着色粒、異物及び胴割粒を光学検出手段によって同時に判別し、選別手段によって選別する光学式米粒選別機も例えば特許文献3によって知られている。この装置は、移送手段(傾斜シュート)から放出された原料米粒に可視光等を照射し、該照射光を受けた原料米粒からの反射光及び/又は透過光をラインセンサで受光検出し、該検出値(電圧値)を所定しきい値と比較して着色粒、異物及び胴割粒を判断し、選別手段によって除去するものである。
【0005】
【特許文献1】特許第3079932号公報
【特許文献2】特開2005−265519号公報
【特許文献3】特許第3146149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の光学式胴割粒選別機及び光学式米粒選別機においては、胴割粒の判別精度について更なる向上が望まれている。すなわち、この前者の光学式胴割粒選別機においては、胴割粒の判別は前述のように、米粒イメージ(撮像データ)中に亀裂部分に相当する線状の暗い影があるか否かによって行われるが、亀裂による線状の暗い影は、胚芽部分による影や肌ずれ(表面の傷)による影と紛らわしく、誤判別を生じて選別精度が上がらないという懸念がある。一方、後者の光学式米粒選別機においても、前記検出値(電圧値)と所定しきい値とを単に比較して判別しているだけなので、前記胚芽部分による影や肌ずれによる影の影響で、亀裂の有無の判別精度が上がらないという懸念がある。
そこで、本発明は上記問題点にかんがみ、胴割粒の判別精度を向上させることを第1の技術的課題とし、また、この胴割粒の選別に加えて着色粒及び異物も同時に選別できる光学式米粒選別機を提供することを第2の技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1により、
原料の各米粒を整列させて移送する移送手段(5)と、
該移送手段(5)から放出された前記原料米粒の落下軌跡(R)における光学検出位置(P)に対し、横一線状の可視光を照射する可視光照射部(9)、該可視光照射部(9)からの照射光を受けた前記光学検出位置(P)の各原料米粒からの反射光及び/又は透過光を検出するCCDカメラ(8)を備えてなる米粒を光学検出する光学検出手段(6)と、
該光学検出手段(6)による光学検出データに基づいて前記原料米粒中における胴割粒を判別する判別手段(20)と、
該判別手段(20)が判別した胴割粒を選別する選別手段(19)と、
を有する光学式米粒選別機において、
前記CCDカメラ(8)は、モノクロCCDラインセンサ(8a)を内蔵したモノクロCCDカメラ(8)とするとともに、該モノクロCCDラインセンサ(8a)のセンサ光軸(8b)が前記原料米粒の落下軌跡(R)における光学検出位置(P)とほぼ直交するように配設し、
また、前記可視光照射部(9)は、前記落下軌跡(R)を挟んだ前記モノクロCCDカメラ(8)の反対側に可視光域における同一波長又は異なる波長をそれぞれ照射する第1照射部(10)及び第2照射部(11)を備え、前記第1照射部(10)は、前記モノクロCCDラインセンサ(8a)のセンサ光軸(8b)を挟んで該センサ光軸(8b)となす各内角度(α1,α2)がほぼ同一となるように配設した一方照射部(10a)及び他方照射部(10b)からなり、前記第2照射部(11)は前記センサ光軸(8b)と重合しない位置に配設し、
さらに、前記モノクロCCDラインセンサ(8a)の走査のタイミングに合わせて前記第1照射部(10)と第2照射部(11)との点灯を切り換える光源点灯切換手段(27)を備え、前記判別手段(20)は、前記モノクロCCDラインセンサ(8a)によって、第1照射部(10)が点灯している時に走査して得た第1撮像データと、第2照射部(11)が点灯している時に走査して得た第2撮像データとの光量差を演算して米粒における亀裂部分(L)を特定して胴割粒か否かを判別する、という技術的手段を講じた。
【0008】
また、請求項2により、
前記判別手段(20)は、前記第1撮像データから第1米粒画像を形成するとともに前記第2撮像データから第2米粒画像を形成し、前記第1米粒画像と第2米粒画像の互いに対応した画素の光量差を演算することによって亀裂部分(K)を特定するものであるとよい。
【0009】
さらに、請求項3により、前記第1照射部(10)及び第2照射部(11)は、420nm〜520nmの青色波長、500nm〜580nmの緑色波長及び600nm〜710nmの赤色波長の中から選択した同一波長又は互いに異なる波長を照射するものであるとよい。
【0010】
また、請求項4により、
前記第1照射部(10)及び第2照射部(11)はLED光源によって構成するとよい。
【0011】
さらに、請求項5により、
前記判別手段(20)は、前記第1撮像データ及び/又は第2撮像データに基づいて、予め設定したしきい値と比較して着色粒を判別するとともに、前記選別手段(19)に選別信号を出力するものであるとよい。
【0012】
また、請求項6により、前記光学検出手段には、前記光学検出位置に近赤外光を照射する近赤外光照射部を備えるとともに、前記光学検出位置からの近赤外光を検出する近赤外光センサを備え、前記判別手段は、前記近赤外光センサが検出した光学検出値に基づいて異物を判別するとともに、前記選別手段に選別信号を出力するものであるとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光学式米粒選別機によれば、胴割粒の判別について、亀裂部分が検出されず肌ずれ部分と胚芽部分とが少なくとも検出された第1米粒画像と、亀裂部分と肌ずれ部分と胚芽部分が少なくとも検出された第2米粒画像とを取得し、この両画像を使って引き算処理(演算)をして亀裂部分の画像だけを残すようにしたので、肌ずれ部分及び胚芽部分の暗い影(検出光)の影響を受けることなく、胴割粒の判別を正確に行うことが可能である。
【0014】
また、本発明では、前記第1米粒画像及び第2米粒画像を得るにためのCCDカメラを、高価なカラーCCDカメラを採用することなく安価なモノクロCCDカメラを採用しており、該モノクロCCDカメラの採用を実現するために、前記第1照射部10(照射LED10a,10bをセンサ光軸8bを挟んで対向配設)と前記第2照射部11(センサ光軸8bと重合しない位置に配設した照射LED11a)とを、前記モノクロCCDカメラのスキャンに同期させて点灯切換させて原料米粒を撮像して米粒の元画像を得て、該元画像から、第1撮像データを抜き出して第1米粒画像用を形成し、また、第2撮像データを抜き出して第2米粒画像を形成するという第1の工夫をなし、第2の工夫として、第1米粒画像及び第2米粒画像における米粒の長さ方向(縦方向)の解像度を上げるために、前記第1照射部10及び第2照射部11として点灯切換の応答性が速いLEDを採用するとともに、モノクロCCDカメラをスキャン速度が高速タイプのものしてある。
【0015】
さらに、本発明では、着色粒を判別する際に、前記第1米粒画像用及び/又は第2米粒画像を胴割判別と兼用することができるので、別のCCDカメラ等を設ける必要がない。
【0016】
また、前記近赤外カメラ15も備えたので、異物の判別が可能である。これにより、本発明の光学式米粒選別機1によれば、胴割粒と着色粒と異物とを同時に選別する際に、胴割粒の判別精度が向上したものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明の光学式米粒選別機1に関する実施例1の縦断面図である。また、図9には実施例2(照射部の可視光の波長を異ならせた変形例)を示す。本発明における原料米粒は、主に玄米を対象とするが精白米等の分搗(つ)き米も含む。
【0018】
実施例1の構成(図1):
本発明の光学式米粒選別機1は、原料米粒Kを貯留する原料タンク2と、該原料タンク2から排出された原料米粒を後述する傾斜シュート3に順次送り出す振動フィーダ4と、下方傾斜させた前記傾斜シュート3とからなる移送手段5を構成する。前記傾斜シュート3の下方傾斜角度は、約45度とした。前記傾斜シュート3において原料米粒を滑走・流下させる傾斜面には、流下方向に沿って形成した溝3aを複数列隣接して構成し、該溝3aの幅Wを米粒Kの幅寸法に相当する、3.3ミリメートルとして、原料米粒Kを米粒の長さ方向に整列させて流下させるようにしてある(図2(a))。前記傾斜シュート3の下端部近傍には、原料米粒Kの落下軌跡Rに沿った位置に、光学検出手段6と選別手段19とを順次配設する。
【0019】
光学検出手段6:
前記光学検出手段6は、前記落下軌跡R上における光学検出位置Pを中心として、その一方側(フロント側)の光学検出手段6aに照射部7を構成し、他方側(リヤ側)の光学検出手段6bにCCDカメラ8を構成する(図1参照)。本発明は、前記CCDカメラ8については、カラーCCDカメラを採用することなく、これよりもコスト面において安価な、可視光域の一種類の波長に高い感度を有し、その波長の明暗度(明るさの程度)を検出するモノクロCCDカメラ(モノクロCCDラインセンサ8aを内蔵)8を採用し、カラーCCDカメラを採用したときと同様の選別効果が得られるものである。前記モノクロCCDカメラ(モノクロCCDラインセンサ8a)8は、該センサ光軸(センサ光路)8bが前記光学検出位置Pとほぼ直交するように配設する。また、前記モノクロCCDカメラ8から前記光学検出位置Pを通過したセンサ光軸8b上(前記フロント側)には、背景板8cを配設する。該背景板8cは、良品の色(反射率)と同じ色のものとする。なお、前記CCDは、「Charge Coupled Devices」の略である。また、前記モノクロCCDカメラ8はサンプリング周波数が40MHz(メガヘルツ)の高速タイプのものとし、米粒Kの縦方向を約80回スキャンして後述する元画像を形成するようにしてある。
【0020】
前記照射部7については、前記光学検出位置Pに対して横一線状の可視光を照射する可視光照射部9と、同じく前記光学検出位置Pに対して近赤外光を照射する近赤外光照射部12とから構成する。
【0021】
前記可視光照射部9は、第1照射部10と第2照射部11とから構成する。該第1照射部10と第2照射部11とは、可視光における同一波長のものを採用(実施例1)してもよいし、互いに異なる波長のものを採用してもよい(実施例2)。
【0022】
前記第1照射部10は、前記モノクロCCDカメラ8から光学検出位置Pを通過したセンサ光軸8bを挟んで一対配設した照射LED(一方照射部)10a、他方照射部(10b)で構成する。該照射LED10a,10bは、LED素子13aと集光レンズ13bとからなるLED(単体)を水平方向に複数並設して構成し、これにより、前記光学検出位置Pに横一線状の可視光を照射するようにしてある。前記照射LED10a,10bは、前記光学検出位置Pを支点(中心)とした照射LED10aの光路軸10cと前記センサ光軸8bとがなす内角度α1と、照射LED10bの光路軸10dと前記センサ光軸8bとがなす内角度α2とがほぼ同一角度となるような位置に配設する。本実施例においては、前記内角度α1,α2は約25度とした。なお、前記照射LED10a,10bの波長については、500nm〜580nmの緑色波長を使用し、そのLED素子13aは中心波長が520nmのものを採用した。また、前記照射LED10a,10bの波長については、本実施例1(前記第1照射部10の波長と前記第2照射部11の波長を同じとする。)においては、前記緑色波長以外に、600nm〜710nmの赤色波長のもの、又は420nm〜520nmの青色波長のものを適宜採用することができる。
【0023】
前記第2照射部11も、前記LED素子13aと集光レンズ13bとからなるLED(単体)を水平方向に複数並設して構成した照射LED11aとし、これにより、前記光学検出位置Pに横一線状の可視光を照射するようにしてある。また、照射LED11aの配設位地は、該照射LED11aの光路軸11bが前記センサ光軸8bと重合しない位置とし、本実施例においては前記照射LED10bの下方側とした。なお、前記照射LED11aの使用波長については、前記照射LED10a,10bと同様に、500nm〜580nmの緑色波長の波長を使用し、LED素子13aは中心波長が520nmのものを採用した。
【0024】
一方、前記近赤外光照射部12も、前記LED素子13aと集光レンズ13bとからなるLED(単体)を水平方向に複数並設して構成した照射LED12aとし、前記光学検出位置Pに横一線状の近赤外光を照射するようにしてある。前記照射LED12aは、1450nm〜1600nmの近赤外光領域の波長の波長を使用し、LED素子13aは中心波長を1500nmのものを採用した。前記照射LED12aを配設する位置は任意の位置でよく、本実施例では前記照射LED10aの上方とした。
【0025】
ところで、前記光学検出手段6の構成には、さらに以下の特徴がある。すなわち、前記光学検出手段6a(前記一方側<フロント側>)には、前記モノクロCCDカメラ8と同じ構成のモノクロCCDカメラ14(モノクロCCDラインセンサ14a)、及び近赤外の波長域に高い感度を有する近赤外カメラ15(近赤外光ラインセンサ15aを内臓)が備えてある。前記モノクロCCDカメラ14及び近赤外カメラ15は、それぞれのセンサ光軸が前記光学検出位置Pと交わるように任意の位置に配設してある。
【0026】
また、前記光学検出手段6b(前記他方側<リヤ側>)には、前記光学検出位置Pに対して可視光を照射する照射LED16及び近赤外光を照射する照射LED17をそれぞれ配設する。前記照射LED16は、前記第1照射部10の構成と同様に、前記センサ光軸8bを挟んだ状態で一対の照射LED16a,16bで構成している。前記内角度α1,α2も前記光学検出手段6a(前記一方側<フロント側>)側と同じで、使用波長も緑色波長と同様にしてある。前記照射LED17についても、前記照射LED12aと同じ構成のものとした。前記モノクロCCDカメラ14(モノクロCCDラインセンサ14a)用のセンサ光軸14b上には、前記背景板8cと同様な背景板18が配設してある。
【0027】
選別手段19:
前記選別手段19は、本実施例においては、高圧エアーを空気銃のように噴風させる高圧空気噴風手段19としたが、これ以外に、ソレノイドを使った板ばね式のものを使用してもよい。前記高圧空気噴風手段19は、前記光学検出位置Pよりも下方位置の落下軌跡Rに向かって高圧エアーを噴風するように、前記各溝(チャンネル)3aごとに一つの噴風口19bを配設させるように、複数の噴風口19bを横一線状に隣接してなる噴風ノズル19aを備える(図1及び図2(b))。該噴風ノズル19aの各噴風口19bは管路を介してそれぞれの電磁弁に接続し、該各電磁弁は高圧エアー供給源と連通している。前記各電磁弁は後述する前記エジェクタバルブ駆動回路32と接続し、該エジェクタバルブ駆動回路32からの噴風信号を受けて瞬間的に弁を開閉するように構成されている。これにより、判別された不良粒は、空気銃のような高圧噴風エアーを瞬間的に受けて落下軌跡Rから選別除去される。
【0028】
図3(b)には、傾斜シュート3の各溝(チャンネル)3a、モノクロCCDラインセンサ8a(モノクロCCDカメラ8)、モノクロCCDラインセンサ14a(モノクロCCDカメラ14)、近赤外光ラインセンサ15a(近赤外カメラ15)、前記各噴風口19b(噴風ノズル19a)及び原料米粒Kとの位置関係が示してある。
【0029】
判別手段20:
前記光学式米粒選別機1には判別手段20を構成する(図1)。該判別手段20は、前記モノクロCCDカメラ8、モノクロCCDカメラ14及び近赤外カメラ15が撮像したデータ(光学検出データ)を基に、原料米粒中に混入した胴割粒、着色粒及び異物を判別するものである。前記判別手段20の構成は、図3に示したように、中央演算処理部(以下「CPU」という。)21を中心に、該CPU21に対して読み出し書き込み用記憶部(RAM)22及び前記中央演算部21に接続した読み出し専用記憶部(ROM)23が接続してある。また、前記前記モノクロCCDカメラ8、モノクロCCDカメラ14及び近赤外カメラ15には、入出力回路(I/O)24及び画像処理回路25を介してCPU21に接続してある。前記画像処理回路25にはRAM26が接続してある。
【0030】
さらに、前記CPU21には、前記第1照射部10(照射LED10a,10b)の点灯と前記第2照射部11(照射LED11a)の点灯とを交互点灯切り換えするために信号を出力するタイミング発生回路27(光源点灯切換手段)を接続し、該タイミング発生回路27は、I/O28を介して前記第1照射部10及び第2照射部11の各LED電源回路29,30に接続してある。また、前記CPU21は、I/O28を介し、前記近赤外光照射部12(照射LED12a)及び照射LED17のLED電源回路31に接続し、前記高圧空気噴風手段19における各電磁弁(図示せず)に対して選別信号(弁を開閉させる信号)を出力するエジェクタバルブ駆動回路32に接続してある。
【0031】
実施例1の作用(図1):
前記光学式米粒選別機1の選別運転を開始すると、原料米粒は、図2(b)に示したように、前記原料タンク2及び振動フィーダ4を介して傾斜シュート3に供給され、該傾斜シュート3の各溝(チャンネル)3aに沿って流下し、下端部から整列状態で放出される。放出された原料米粒Kには前記光学検出位置Pにおいて、前記光学検出手段6a(前記フロント側)から、前記可視光照射部9(第1照射部10<照射LED10a,10b>と第2照射部11<照射LED11a>)と前記近赤外光照射部12(照射LED12a)とからの各照射光が照射され、また、前記光学検出手段6b(前記リヤ側)から、前記照射LED16a,16bと照射LED17とからの各照射光が照射される。
【0032】
さらに、前記各照射光の照射タイミング等について具体的に説明する。まず、前記近赤外光照射部12(照射LED12a)及び照射LED17は常時点灯とし、近赤外光が原料米粒K(前記光学検出位置P)に照射される。一方、前記可視光照射部9は、第1照射部10(照射LED10a,10b)と第2照射部11(照射LED11a)が交互に点灯切換えされる。この交互点灯切換えの実行は、前記CPU21からの点灯信号を受けて前記タイミング発生回路27によって、前記モノクロCCDカメラ8が走査(横一線上をスキャン)に同期させるように、図4(タイミングチャート)に示したような点灯(ON)・消灯(OFF)のタイミングで、第1照射部10<照射LED10a,10b>と第2照射部11<照射LED11a>)とを高速で点灯切換して行う。
【0033】
前記モノクロCCDカメラ8は、図4に示すように、例えば、奇数スキャン目の時に第1照射部10を点灯(第1照射光=緑1)し、次いで、偶数スキャン目の時に第2照射部11を点灯(第2照射光=緑2)し、というように繰り返し、その各スキャンデータ(撮像データ)は、順次、前記画像処理回路25に取り込まれる。前記画像処理回路25は、順次取り込んだ撮像データから、図5(米粒画像形成のアルゴリズム)に示したような米粒の元画像を形成する。そして、この米粒の元画像から奇数スキャンの撮像データ(第2撮像データ、緑2画像)を抜き出して分離し、この分離した複数の撮像データを上下に繋ぎ合わせて第2米粒画像を形成し、一方、偶数スキャンの撮像データ(第1撮像データ、緑1画像)を抜き出して分離し、この分離した複数の撮像データを上下に繋ぎ合わせて第1米粒画像を形成する。このようにして、元画像から第1米粒画像と第2米粒画像とが形成される。
【0034】
なお、前記元画像は、前述のように米粒Kの縦方向を約80回スキャンして形成するようにしてあるので、前記第1米粒画像と第2米粒画像とはそれぞれ40の撮像データから形成されて1粒の米粒として十分認識できる。このため、後述する胴割粒か否かの判別及び着色粒か否かの判別が可能となる。
【0035】
胴割粒の判別方法:
次に、前記判別手段20による胴割粒の判別方法(判別アルゴリズム)を説明する(図6)。図6には、図5(米粒画像形成のアルゴリズム)で説明したようにして、肌ずれを生じているとともに胚芽が残った胴割粒を前記モノクロCCDカメラ8によって撮像して得た元画像から形成された第1米粒画像と第2米粒画像とが示してある。該第2米粒画像は、元画像から奇数スキャンの撮像データを抜き出して合体し、かつ、所定のしきい値によって二値化して亀裂部分、胚芽部分及び肌ずれ部分が検出されたものとなっている。一方、前記第1米粒画像は、元画像から偶数スキャンの撮像データを抜き出して合体し、かつ、所定のしきい値によって二値化して胚芽部分及び肌ずれ部分が検出されたものとなっている(亀裂部分が検出されない)。
【0036】
前記第1米粒画像に亀裂部分が検出(表示)されないのは、前記モノクロCCDカメラ8によって第1撮像データを撮像する際の照射光源に理由がある。すなわち、図4(タイミングチャート)に示したように、前記モノクロCCDカメラ8が第1撮像データをスキャンする際には第1照射部10(照射LED10a,10b)が点灯(緑1)している。該照射LED10a,10bが点灯すると、該照射LED10a,10bからの照射光は、前記光学検出位置Pにおいて、長さ方向が上下方向にされた米粒Kに対し、その上方側と下方側から同じ内角度α1,α2方向から光が照射されるので、当該米粒内に透過した光は米粒内部の亀裂面に当たっても打ち消されて亀裂の暗い影として検出されないが、当該胴割粒の表面に生じている肌ずれ部分や胚芽部分については透過光に影として現れ検出できるためである。また、第2撮像データをスキャンする際には第2照射部11(照射LED11a)が点灯しているが、前記光学検出位置Pの米粒Kに一方向(前記センサ光軸8bに重合しない。)から光が照射されるので、米粒内部に透過した光は内部亀裂に当たって暗い影として検出され、また、肌ずれ部分や胚芽部分についても前述と同様に透過光に影として表れて検出される。
【0037】
本発明における胴割粒の判別方法の特徴点は、上記のようにして得られた、亀裂部分が検出されない第1米粒画像と、亀裂部分が検出される第2米粒画像とを取得し、この両画像を使って引き算処理(演算)をして胴割粒を判別する点にある。前記引き算処理は、図6に示したように、前記第2米粒画像の各画素Gの光量値から第1米粒画像におけるそれぞれに対応した画素Gの光量値を引き算することによって行う。この引き算処理により、肌ずれ部分と胚芽部分の各光量値は差し引きゼロとなって消える一方、亀裂部分の光量値が残り、亀裂部分Lの画素(図6の黒ずみ部分<二値化の黒部分>)だけが残る。このため、亀裂部分に該当する前記画素が連続して任意設定の数以上と確認された場合には胴割粒と判別することができ、選別信号を前記エジェクタバルブ駆動回路32に出力することができる。したがって、米粒に肌ずれ部分及び/又は胚芽部分があったとしても、胴割粒を判別する際に肌ずれ部分や胚芽部分の影によって誤判別することがなく判別精度が向上する。
【0038】
着色粒の判別方法:
着色粒の判別は、前記第1米粒画像及び/又は第2米粒画像を用いて前記判別手段20が判別する。前記第1米粒画像及び/又は第2米粒画像は、前記第1照射部10と前記第2照射部11による照射光が当たった米粒表面の反射光等を基にして形成されているため、当該第1米粒画像及び/又は第2米粒画像に米粒の着色部分も検出される。したがって、例えば、図7に示したように、米粒画像の各画素の光量値を所定のしきい値(着色部分の判別用)で二値化して着色部分を検出し、該着色部分の画素数によって選別すべき着色粒(不良品)か否かを判別し、着色粒をした場合には、選別信号を前記エジェクタバルブ駆動回路32に出力する。なお、着色粒の判別においては、上述のモノクロCCDカメラ8(リヤ側)の米粒画像による判別に加えて、前記モノクロCCDカメラ14(フロント側)の米粒画像も加味して判別することにより、原料米粒における着色部分の検出を表・裏の両面において行うことができる。
【0039】
異物の判別方法:
異物の判別は、前記近赤外カメラ15の検出光に基づいて前記判別手段20が判別する。例えば、図8に示したように、近赤外カメラ15で検出した原料米粒K(光学検出位置Pにおける横一線)の検出値(電圧値)を所定のしきい値と比較し、検出値(電圧値)がしきい値より下がると異物と判定し、その検出値が下がった位置に該当する噴風口19b(電磁弁)に対し、選別信号を前記エジェクタバルブ駆動回路32に出力する。
【0040】
以上説明したように本発明の光学式米粒選別機1によれば、亀裂部分が検出されず肌ずれ部分と胚芽部分とが少なくとも検出された第1米粒画像と、亀裂部分と肌ずれ部分と胚芽部分が少なくとも検出された第2米粒画像とを取得し、この両画像を使って引き算処理(演算)をして亀裂部分の画像だけを残すようにしたので、胴割粒の判別を正確に行うことが可能になる。
【0041】
また、本発明では、前記第1米粒画像及び第2米粒画像を得るにためのCCDカメラを、高価なカラーCCDカメラを採用することなく安価なモノクロCCDカメラを採用している。そして、このモノクロCCDカメラの採用を実現するために、まず、前記第1照射部10(照射LED10a,10b)をセンサ光軸8bを挟んで対向配設)と前記第2照射部11(照射LED11a)とをモノクロCCDカメラのスキャンに同期させて交互に点灯切換させて米粒の元画像を得て、該元画像から、第1撮像データを抜き出して第1米粒画像を形成し、また、第2撮像データを抜き出して第2米粒画像を形成するという工夫がなされている。また、第1米粒画像及び第2米粒画像における米粒の長さ方向(縦方向)の解像度を上げるために、前記第1照射部10(照射LED10a,10b)及び前記第2照射部11(照射LED11a)を点灯切換の応答性が速いLEDを採用するとともに、モノクロCCDカメラをスキャン速度が高速タイプ(サンプリング周波数が例えば40MHz)を採用した点が工夫してある。
【0042】
さらに、本発明では、着色粒を判別する際に、前記第1米粒画像用及び/又は第2米粒画像を胴割判別と兼用することができるので、別のCCDカメラ等を設ける必要がない。また、前記近赤外カメラ15も備えたので、異物の判別が可能である。これにより、本発明の光学式米粒選別機1によれば、胴割粒と着色粒と異物とを同時に選別する際において、胴割粒の判別精度が向上したものとなる。
【0043】
実施例2の構成(図9):
以下に実施例2として、本発明の別の実施例を示す(符号は実施例1と同一とする。)。実施例1と異なる点は、前記第1照射部10の波長と、前記第2照射部11の波長とを異ならせた点のみである。すなわち、図9に示したように、例えば前記第1照射部10(照射LED10a,10b)の波長を緑色波長(前述のとおり)にし、前記第2照射部11(照射LED11a)を赤色波長(前述のとおり)にする。その他は実施例1と全く同一であり、モノクロCCDカメラのスキャンに同期させて前記第1照射部10と第2照射部11の点灯を交互に切換え、図10に示したように、これによって取得した米粒の元画像から前記第1米粒画像(緑画像)と第2米粒画像(赤画像)とをそれぞれ形成し、胴割粒の判別も同様に前記第2米粒画像から第1米粒画像を引き算処理して亀裂画像Lだけを検出可能にし、胴割判別を行なう。このほかの、着色粒の判別及び異物の判別は実施例1と同様にすればよく説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の光学式米粒選別機の縦側断面図(実施例1)
【図2】本発明における傾斜シュート、モノクロCCDラインセンサ及び噴風ノズルの位置関係を表した図
【図3】本発明における光学式米粒選別機における判別手段のブロック図
【図4】本発明におけるモノクロCCDカメラのスキャン、第1照射部及び第2照射部の点灯切換のタイミングチャート
【図5】本発明におけるモノクロCCDカメラが撮像した元画像から第1米粒画像及び第2米粒画像を形成するアルゴリズム
【図6】本発明におけるモノクロCCDカメラが撮像した元画像から胴割粒を判別するアルゴリズム
【図7】本発明における着色粒の判別アルゴリズム
【図8】本発明における異物の判別アルゴリズム
【図9】本発明の光学式米粒選別機の縦側断面図(実施例2)
【図10】実施例2におけるモノクロCCDカメラが撮像した元画像から胴割粒を判別するアルゴリズム
【符号の説明】
【0045】
1 光学式米粒選別機
2 原料タンク
3 傾斜シュート
3a 溝
4 振動フィーダ
5 移送手段
6a 光学検出手段(フロント側、一方側)
6b 光学検出手段(リヤ側、他方側)
7 照射部
8 CCDカメラ(モノクロCCDカメラ)
8a モノクロCCDラインセンサ
8b センサ光軸
8c 背景板
9 可視光照射部
10 第1照射部
10a 照射LED(一方照射部)
10b 照射LED(他方照射部)
11 第1照射部
11a 照射LED
12 近赤外光照射部
12a 照射LED
13a LED素子
13b 集光レンズ
14 モノクロCCDカメラ
14a モノクロCCDラインセンサ
14b センサ光軸
15 近赤外カメラ
15a 近赤外光ラインセンサ
16 照射LED
16a 照射LED(可視光)
16b 照射LED(可視光)
17 照射LED(近赤外光)
18 背景板
19 選別手段(高圧空気噴風手段)
19a 噴風ノズル
20 判別手段
21 中央演算処理部(CPU)
22 読み出し書き込み用記憶部(RAM)
23 読み出し専用記憶部(ROM)
24 入出力回路(I/O)
25 画像処理回路
26 読み出し書き込み用記憶部(RAM)
27 タイミング発生回路(光源点灯切換手段)
28 入出力回路(I/O)
29 LED電源回路(第1照射部用)
30 LED電源回路(第2照射部用)
31 LED電源回路(近赤外光照射部)
32 エジェクタバルブ駆動回路
G 画素
J 受光素子
K 原料米粒
L 亀裂部分(亀裂画像)
P 光学検出位置
R 原料米粒Kの落下軌跡
W 幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料の各米粒を整列させて移送する移送手段(5)と、
該移送手段(5)から放出された前記原料米粒の落下軌跡(R)における光学検出位置(P)に対し、横一線状の可視光を照射する可視光照射部(9)、該可視光照射部(9)からの照射光を受けた前記光学検出位置(P)の各原料米粒からの反射光及び/又は透過光を検出するCCDカメラ(8)を備えてなる米粒を光学検出する光学検出手段(6)と、
該光学検出手段(6)による光学検出データに基づいて前記原料米粒中における胴割粒を判別する判別手段(20)と、
該判別手段(20)が判別した胴割粒を選別する選別手段(19)と、
を有する光学式米粒選別機において、
前記CCDカメラ(8)は、モノクロCCDラインセンサ(8a)を内蔵したモノクロCCDカメラ(8)とするとともに、該モノクロCCDラインセンサ(8a)のセンサ光軸(8b)が前記原料米粒の落下軌跡(R)における光学検出位置(P)とほぼ直交するように配設し、
また、前記可視光照射部(9)は、前記落下軌跡(R)を挟んだ前記CCDカメラ(8)の反対側に可視光域における同一波長又は異なる波長をそれぞれ照射する第1照射部(10)及び第2照射部(11)を備え、前記第1照射部(10)は、前記CCDラインセンサ(8a)のセンサ光軸(8b)を挟んで該センサ光軸(8b)となす各内角度(α1,α2)がほぼ同一となるように配設した一方照射部(10a)及び他方照射部(10b)からなり、前記第2照射部(11)は前記センサ光軸(8b)と重合しない位置に配設し、
さらに、前記CCDラインセンサ(8a)の走査のタイミングに合わせて前記第1照射部(10)と第2照射部(11)との点灯を切り換える光源点灯切換手段(27)を備え、前記判別手段(20)は、前記CCDラインセンサ(8a)によって、第1照射部(10)が点灯している時に走査して得た第1撮像データと、第2照射部(11)が点灯している時に走査して得た第2撮像データとの光量差を演算して米粒における亀裂部分(L)を特定して胴割粒か否かを判別することを特徴とする光学式米粒選別機。
【請求項2】
前記判別手段(20)は、前記第1撮像データから第1米粒画像を形成するとともに前記第2撮像データから第2米粒画像を形成し、前記第1米粒画像と第2米粒画像の互いに対応した画素の光量差を演算することによって亀裂部分(K)を特定する請求項1に記載の光学式米粒選別機。
【請求項3】
前記第1照射部(10)及び第2照射部(11)は、420nm〜520nmの青色波長、500nm〜580nmの緑色波長及び600nm〜710nmの赤色波長の中から選択した同一波長又は互いに異なる波長を照射するものとする請求項1又は請求項2に記載の光学式米粒選別機。
【請求項4】
前記第1照射部(10)及び第2照射部(11)はLED光源によって構成する請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の光学式米粒選別機。
【請求項5】
前記判別手段(20)は、前記第1撮像データ及び/又は第2撮像データに基づいて、予め設定したしきい値と比較して着色粒を判別するとともに、前記選別手段(19)に選別信号を出力する請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の光学式米粒選別機。
【請求項6】
前記光学検出手段には、前記光学検出位置に近赤外光を照射する近赤外光照射部を備えるとともに、前記光学検出位置からの近赤外光を検出する近赤外光センサを備え、前記判別手段は、前記近赤外光センサが検出した光学検出値に基づいて異物を判別するとともに、前記選別手段に選別信号を出力する請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の光学式米粒選別機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−240876(P2009−240876A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88887(P2008−88887)
【出願日】平成20年3月29日(2008.3.29)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】