説明

光学的モードノイズ平均化デバイス

マルチモード光ファイバ(302)と、該マルチモード光ファイバ(302)内を伝搬する光の信号レベル変動であってモードノイズにより誘起された信号レベル変動を平均化する手段(308)とを含む、光学的モードノイズ平均化デバイス(300)。上記デバイスは、選択された期間に亙り上記マルチモード光ファイバ(302)の屈折率を循環的に変化させること、上記マルチモード光ファイバ(302)内の光分布をスクランブリングすること、または、その両方により、モードノイズにより誘起された信号レベル変動を平均化し得る。上記マルチモード光ファイバの屈折率は、該マルチモード光ファイバ(302)の温度を循環的に変化させることで循環的に変化され得る。代替的に、マルチモード光ファイバ(302)を循環的に操作することにより、屈折率が変更され得るか、または、該マルチモード光ファイバ内の光分布がスクランブリングされ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃焼監視方法に関し、より詳細には、マルチモード光ファイバに伴うモードノイズを平均化する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アメリカ合衆国内で生産される電力の大部分は石炭燃焼発電所で発電されている。同様に、世界中の発電の大部分が一次エネルギ源としての石炭に依存している。核エネルギ生産運転からの廃棄物の貯蔵に関する長期的な環境問題と、太陽光発電に関連した非効率性とを考慮に入れると、当分の間は石炭が一次エネルギ源のまま残る可能性が高い。これに加え、現在の割合で200年以上にわたるエネルギ生産に十分なだけの莫大な埋蔵量の石炭が世界中に存在する。
【0003】
しかし、石炭燃焼発電に関連する汚染物質の放出を削減すること、および、石炭燃焼発電プロセスの全体的な効率を向上させることへの高い要求が存続しており且つ存続してゆくであろう。従来、発電所と他の工業的な燃焼環境において、燃焼プロセスの効率と汚染物質放出のレベルとが、非分散型赤外(NDIR)光度測定の如き技術を用いて抽出ガス標本から得られた測定値により間接的に決定されてきた。抽出サンプリングシステムは、ガス抽出時点と最終的な分析時点との間に大きな遅延が生じ得るので、燃焼プロセスの閉ループ制御に対して特に良く適してはいない。更に抽出プロセスは概略的に、高度に可変的で動的とされ得る燃焼プロセスチャンバ内において測定された種(species)の実際濃度を表し得るまたは表し得ない一点測定値に帰着する。
【0004】
最近では、レーザ式の光学的分子種センサ(optical molecular species sensor)が、抽出測定技術に関連した問題に対処すべく実現されている。レーザ式測定技術は“その場で”実現され得ると共に、動的なプロセス制御に適した高速フイードバックという更なる利点を提供し得る。燃焼ガスの組成、温度および他の燃焼パラメータを測定する特に有望な技術は、波長可変ダイオード・レーザ吸収分光法(tunable diode laser absorption spectroscopy)(TDLAS)である。TDLASは、石炭燃焼による燃焼プロセスの制御および監視に適している。TDLASはまた、他の燃焼プロセスの監視にも等しく適している。特に、本明細書に記述される分光技術は、ジェット機のエンジン燃焼パラメータの監視および制御に適している。TDLASは、典型的には、近赤外スペクトル領域と中赤外スペクトル領域とにおいて動作するダイオード・レーザにより実現される。適切なレーザは、遠距離通信業界における使用のために広範囲に開発されていることから、TDLAS用途のために容易に入手可能である。燃焼プロセスの検出および制御に対して幾分か適した種々のTDLAS技術が開発されてきた。一般的な公知技術は、波長変調分光法、周波数変調分光法、および、直接吸収分光法である。これらの技術の各々は、光が燃焼プロセスチャンバの中を通して伝達されると共に、プロセスチャンバすなわち燃焼室内に存在するガスに固有の特定のスペクトル帯において吸収された後に検出器により受信されるというレーザ光の量と性質との間の所定関係に基づいている。検出器により受信された吸収スペクトルは、分析対象であるガス種の量と、関連する温度などの燃焼パラメータとを決定すべく使用される。
【0005】
典型的な石炭燃焼発電所は、一辺が10〜20メートルの燃焼室寸法を有する。該発電所は微粉炭により燃料補給され、高い粉塵負荷の故にレーザ光の透過を遮りかつ極度に明るい燃焼プロセスに帰着する。また、その環境が高度に乱流的でもある。プロセスチャンバの中を通過する光の総合的な透過率は、広帯域の吸収、微粒子による散乱、または、屈折率の変動に起因するビームの方向変化の結果として、時間の経過に応じて劇的に変動する。更に、検出器信号に干渉し得る燃焼石炭微粒子からの激しい熱背景放射もある。発電所ボイラの外側の環境も、TDLAS検出または制御システムの実現を困難なものにする。たとえば、一切の電子機器、光学部品、または、他の高感度の分光構成要素は、強烈な熱から離間配置され、または、適切に遮蔽して冷却されねばならない。これらの条件下でTDLASシステムの実現は極めて困難であるが、TDLASは石炭燃焼プロセスを監視して制御するのに特に適している。
【0006】
2004年3月31日に出願されると共に、その全ての開示内容は言及したことにより本明細書中に援用される“燃焼の監視および制御のための方法と装置”と称された国際特許出願第PCT/US04/10048号(公開番号WO2004/090496)において詳細に論じられた如く、TDLASシステムの実現に対しては光ファイバ結合が特に好適である。ファイバ結合システムにおいては、適切な種々の波長の多重光から成り得る一本以上のプローブ・ビームがピッチ側(送信)光学装置に対して送給され、燃焼室内へと放射される。上記プローブ・ビームは、燃焼室を縦断した後でキャッチ側(受信)光学装置において受信される。上記国際特許出願第PCT/US04/10048号において詳述された如く、キャッチ側の光学列(optical train)においてはマルチモード光ファイバを使用することが好適である。しかしマルチモード・ファイバを使用すると必然的に、光の収集および伝送のために使用されるマルチモード・ファイバのコアにおいて時間的および波長的に変動する不均一な光分布から帰着する検出光の信号レベルの変化であるというモードノイズに帰着する。“キャッチ”側のモードノイズは、効果的なTDLASに対して観測されるべき吸収特性を不明瞭とし得る。
【0007】
モードノイズの現象は、キャッチ側マルチモード光ファイバを特徴付けるTDLAS実施方式に対して限定されたり該実施方式により引き起こされるものではない。逆にモードノイズは、光を伝送する相当な長さの一切のマルチモード光ファイバにおいて必然的に生ずる。モードノイズはマルチモード・ファイバにおいて必然的である、と言うのも、単一モード・ファイバと比較してマルチモード・ファイバの断面直径は大きいので、伝送される光は多くの光路もしくはモードを伝搬し得るからである。幾つかの経路もしくはモードは、他の経路またはモードより長寸もしくは短寸である。故に必然的に強め合うまたは弱め合う干渉が生じ、マルチモード・ファイバのコアにおいて時間的および波長的に変動する不均一な光分布に帰着し、典型的なモードノイズのスペックル・パターンを引き起こす。故にモードノイズは、相当な長さのマルチモード・ファイバを利用するコンピュータ処理、遠距離通信、または他の科学用途において生ずる。モードノイズが所定の光学システムの効率を阻害するか否かは、特定のシステムの要件に依存する。
【0008】
本発明は、上記で論じられた問題のひとつ以上を克服する方法に関する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、マルチモード光ファイバと、該マルチモード光ファイバ内を伝搬する光の信号レベル変動であってモードノイズにより誘起された信号レベル変動を平均化する手段とを含む、光学的モードノイズ平均化デバイスである。上記デバイスは、選択された期間に亙り上記マルチモード光ファイバの屈折率を循環的に変化させること、上記マルチモード光ファイバ内の光分布をスクランブリングすること、または、その両方により、モードノイズにより誘起された信号レベル変動を平均化し得る。上記マルチモード光ファイバの屈折率は、該マルチモード光ファイバの温度を循環的に変化させることで循環的に変化され得る。上記マルチモード光ファイバを循環的かつ物理的に操作することにより、屈折率が変更され得るか、または、該マルチモード光ファイバ内の光分布がスクランブリングされ得る。
【0010】
上記マルチモード光ファイバの温度は、該マルチモード光ファイバと熱連通して載置された熱的要素の作用により変更され得る。熱的要素として使用されるに適したデバイスとしては、限定的なものとしてで無く、熱電式モジュール、抵抗ヒータ、赤外ヒータ、化学的ヒータ、習用の冷却デバイス、化学的冷却器、周囲温度より低く冷却された流体の供給源、または、周囲温度より高く加熱された流体の供給源が挙げられる。
【0011】
上記光学デバイスは、上記マルチモード光ファイバに熱接触された熱電対などの温度センサと、上記温度センサから入力を受信して上記熱的要素を制御するコントローラとを含み得る。
【0012】
上記マルチモード光ファイバを循環的に操作する装置を特徴とする代替実施例において、上記操作としては上記マルチモード光ファイバの捻り、伸張または震動が挙げられる。上記マルチモード光ファイバの循環的な伸張を達成すべくピエゾ伸張器が使用され得る。代替的に、上記マルチモード光ファイバの長手軸心に関し且つ該マルチモード光ファイバの固定部分に対して交互的に時計方向および反時計方向に上記マルチモード光ファイバの一部を循環的に捻るべくモータが使用され得る。
【0013】
本発明は更に、マルチモード光ファイバにおいて光学的モードノイズを平均化する方法であって、上記マルチモード光ファイバの入力部に対して光を結合する段階と、上記マルチモード光ファイバの屈折率を循環的に変化させる段階と、平均化された光を上記マルチモード光ファイバの出力部にて受信する段階とを含む方法に関する。上記モードノイズ平均化方法は、上記マルチモード光ファイバの温度を循環的に変化させる段階、および、上記マルチモード光ファイバを循環的に操作する段階、の一方により屈折率を変化させる段階を含み得る。上記マルチモード光ファイバの温度は、該マルチモード光ファイバと熱連通する熱的構成要素を配備することにより循環的に変化され得る。代替的に上記マルチモード光ファイバは、該マルチモード光ファイバを捻り、伸張させ、または、震動させることにより循環的に操作され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
A.概要
本発明の好適実施例は、光学的モードノイズ平均化デバイスである。該光学的モードノイズ平均化デバイスは、以下の段落Eにおいて詳細に記述される。該光学的モードノイズ平均化デバイスは、限定的なものとしてで無く、ファイバ結合された波長可変ダイオード・レーザ吸収分光(TDLAS)検出装置に伴うキャッチ側(すなわち受信側)のマルチモード光ファイバに特有のモードノイズの平均化方法に対して特に適している。斯かる検出装置の複数の実施例が、2004年3月31日に出願されると共に、その全ての開示内容は言及したことにより本明細書中に援用される“燃焼の監視および制御のための方法と装置”と称された国際特許出願第PCT/US04/10048号(公開番号WO2004/090496)において詳細に論じられている。これに加え、ファイバ結合TDLAS検出装置は以下に記述される。本発明の好適実施例は、モードノイズが存在する一切の光学システムにおいて光学的モードノイズを平均化するに適している。特に上記光学的モードノイズ平均化デバイスは、光を伝送する相当な長さのマルチモード光ファイバを特徴とする一切のコンピュータ処理、遠距離通信、科学研究または他のシステムにおいて実現され得る。該平均化装置は、マルチモード光ファイバ内を伝搬する光に特有の光学的モードノイズを平均化することで当該光学システムの効率が増進され得るという一切の光学システムにおいて有用である。
【0015】
B.検出装置
図1には、燃焼プロセスの検出、監視および検出に適した検出装置10の実施例が示される。検出装置10は、近赤外または中赤外スペクトルの選択された周波数でレーザ発振する一連の波長可変ダイオード・レーザ12からのレーザ光を使用することにより波長可変ダイオード・レーザ吸収分光(TDLAS)を行う。波長可変ダイオード・レーザ12の各々の出力は、単一モード光ファイバ14とされ得る個別の光ファイバに結合され、マルチプレクサ16へと経路設定される。本明細書で使用される如く、“結合された(coupled)”、“光学結合された(optically coupled)”、または“光学的に通信している(in optical communication with)”という表現は、光が中間の構成要素または自由空間を通過してまたは通過せずに第1の構成要素から第2の構成要素に進行し得る場合の相対物の相互間の機能的関係と定義される。マルチプレクサ16内では、生成された周波数の一部または全部のレーザ光が多重化されることで、複数の選択周波数を有する多重化プローブ・ビーム(multiplexed probe beam)が形成される。この多重化プローブ・ビームはピッチ側(すなわち送信側)の光ファイバ18に結合され、且つ、図1に燃焼室22として示されているプロセスチヤンバに作動的に関係付けられたピッチ光学部品20すなわちコリメータに伝送される。
【0016】
ピッチ光学部品20は、燃焼室22の中を通して多重化プローブ・ビームを放射するように配向される。ピッチ光学部品20に対しては、燃焼室22を経由してキャッチ光学部品24が光学的に通信している。キャッチ光学部品24は好適には、ピッチ光学部品20の実質的に反対側に位置し、かつ、燃焼室22に対して作用的に関係付けられる。キャッチ光学部品24は、燃焼室22の中を通して放射される多重化プローブ・ビームを受信すべく位置決め且つ配向される。キャッチ光学部品24は、該キャッチ光学部品24により受信される多重化プローブ・ビームの一部をデマルチプレクサ28に伝送するキャッチ側の光ファイバ26に光学的に結合されている。デマルチプレクサ28内では、キャッチ光学部品24により受信された多重化プローブ・ビームの一部分が逆多重化され、この逆多重化されたレーザ光の各波長が出力光ファイバ30に結合される。一方、各出力光ファイバ30は検出器32に光学的に結合されており、該検出器は典型的には、そのプローブビームを形成するように生成されて多重化されたレーザ光の選択周波数の内の1つの周波数に対して感度を有する光検出器である。検出器32は、検出器周波数にて該検出器32に伝送される光の性質と量とに基づいて電気信号を生成する。各検出器32からの電気信号は典型的には、データ処理システム34内でデジタル化されて分析される。より詳細に後述するように、このデジタル化されて分析されたデータは、限定的なものとしてで無く、燃焼室22内の様々なガス種の濃度と燃焼温度とを含むプロセスチャンバ内の物理パラメータを検出するために使用され得る。データ処理システム34は更に、フイードバックループ36を通して燃焼制御装置38に信号を送ることにより、選択プロセスパラメータを能動的に制御するために使用され得る。燃焼プロセスの場合、制御されるプロセスパラメータは、燃料(例えば、微粉炭)供給量と、酸素供給量と、触媒または化学物質の添加速度とを含み得る。検出装置10のピッチ側とキャッチ側の両方に電子構成要素と光学構成要素との光ファイバ結合を使用すると、波長可変ダイオード・レーザ12、検出器32およびデータ処理システム34などの精巧で温度に影響される装置が、安定した動作環境を有する制御室の中に配置され得る。故に、比較的に堅牢なピッチ光学部品20およびキャッチ光学部品24のみが、燃焼室22の過酷な環境の付近に配置される必要がある。
【0017】
図2は、ファイバ結合多重化検出システム40の全体的な構成要素配置を概略的にしている。検出システム40は概略的に、システムラック42と、ブレイクアウトボックス44と、ピッチ光学部品48を有するトランスミッタヘッド46と、キャッチ光学部品52を有するレシーバヘッドと、接続光ファイバとから成る。システムラック42は好適には、燃焼室54から例えば1キロメートルなどの距離に位置された遠隔制御室内に配置される。上記制御室は典型的には、適度に制御された環境を有する。システムラック42は、レーザ56と、検出器58と、波長マルチプレクサ60と、波長デマルチプレクサ62とを含む。システムラック42は、システム電子機器と制御ソフトウェア(図2において不図示)も収容する。システムラック42は選択的に、アラインメント用光源64を収容し得る。
【0018】
システムラック42をブレイクアウトボックス44に接続する光ファイバは典型的には、標準的な単一モードの遠距離通信用光ファイバである。このタイプのファイバは安価であり、容易に入手可能であり、低損失であり、且つ、光スイッチ、光スプリッタ、波長分割マルチプレクサなどの、光を操作する遠距離通信用の種々の規格品に対してレーザ光を導向し得る。光ファイバ結合がなければ、レーザ光は常に自由空間を通して燃焼室54に導向されねばならず、これは実現が非常に困難であるか、または代替的に、高感度の電子機器と光学部品とが燃焼室54の直近に配置されねばならない。
【0019】
図2にはブレイクアウトボックス44も示されている。ブレイクアウトボックス44は、ボイラの近くに配置された堅牢な密閉容器である。ブレイクアウトボックス44は、複数のトランスミッタヘッド/レシーバヘッド対に光信号を送るために後述の如く使用され得る光スイッチと光スプリッタと光カプラ(集合的に66)とを収容する。
【0020】
図2に示された第3のグループのシステム構成要素がトランスミッタヘッド46とレシーバヘッド50である。トランスミッタヘッド46とレシーバヘッド50とにおける光学部品と電子機器は、ファイバ68内の光を平行ビームに変換し、このビームを正確に燃焼室54の中を通して導向し、燃焼室54の遠位側でビームを捕捉し、且つ、このビームをファイバ70の中に結合しなければならない。これを実現するための光学部品の選択が、伝送距離と、燃焼区域の乱流と、伝送されるビームの品質に対するこの乱流の影響と、ファイバ70のコアサイズとにより決定される。コアサイズの選択は、用途により左右される設計上の選択事項である。コアが更に大寸であると、更に多くのレーザ光だけでなく、更に多くの背景光も捕捉する。石炭燃焼ボイラと共に使用されたとき、50ミクロンのファイバ・コア直径は容認可能な結果を提供した。キャッチ(レシーバ)側でのファイバ結合は幾つかの利点を有する。特に、レーザ光と同一の場所にあり且つ同一の方向に進む光だけがファイバ70の中に集束される。これにより、検出される背景光の量が劇的に減少される。光は幾つかのレシーバファイバの内の1つのレシーバファイバ中へと捕捉され得ると共に、光スイッチまたは他の光学経路設定デバイスが、検出器58への経路設定のために1つのファイバからの光を選択し得る。図2には、1個のみのキャッチ光学部品が示される。
【0021】
キャッチ側でのファイバ結合の使用は、トランスミッタの光学部品とレシーバの光学部品との両方のアラインメント公差が正確に維持されることを必要とする(トランスミッタの照準とレシーバの照準との両方に関して0.5ミリラジアン未満)。好適には、ピッチ光学部品48とキャッチ光学部品52との両方が、複数のレーザ信号が同時に効率的に送信および受信され得る様に、660nmから1650nmまでの波長に関して適合設計かつ収差補正される。
【0022】
C.波長可変ダイオード・レーザ吸収分光法
波長可変ダイオード・レーザ吸収分光法(TDLAS)は、レーザ分光法の分野における当業者に公知の技術を用いて実施される。概略的にTDLASはターゲット環境の中を通したレーザ光の伝送により実施され、一酸化炭素または酸素の如き目標ガスに依る特定波長におけるレーザ光の吸収の検出が追随する。検出された光をスペクトル分析すると、レーザ経路に沿うガスのタイプと量が特定され得る。直接吸収分光法の詳細は、その全ての開示内容は言及したことにより本明細書中に援用されるTeichert,FernholzおよびEbertの“Simultaneous in situ Measurement of CO, H2O, and Gas Temperature in a Full-Sized, Coal-Fired Power Plant by Near-Infrared Diode Lasers,”(Applied Optics, 42(12):2043, 20 April 2003)において論じられている。レーザ吸収分光法の非接触という性質によれば上記レーザ吸収分光法は、石炭燃焼発電所の燃焼区域、または、他のプローブが使用不可能な易燃性もしくは有毒性の環境の如き過酷な環境に適合される。レーザ光を使用すると、これらの環境の幾つかにおいて遭遇し得る極度の減衰(典型的には、99.9%を超える光損失)の存在下において検出可能な伝送を受信するために必要な高い輝度が提供される。目標用途の過酷な条件に対して更に良好に耐えるためにレーザ光は、防護された光ファイバを通して目標環境にもたらされ得る。
【0023】
温度または複数の燃焼プロセス成分ガスの効果的な検出は、広く離間された複数の周波数のレーザ光を使用するTDLASの実行を必要とする。選択された周波数は、監視される遷移の吸収線に適合しなければならない。たとえば、放出NO濃度を概算するためには670nmの波長でNO2を監視することが有用である。更に石炭燃焼実用ボイラにおいては、酸素、水(温度)および一酸化炭素を監視することも極めて有用である。適切な吸収線と、故に適切なレーザ発振周波数とが、燃焼室の中を通過するレーザプローブ経路長が10メートルに等しく、かつ、各々の種のモル画分がCO(1%)、O2(4%)、CO2(10%)、および、H2O(10%)であるという前提に基づき選択され得る。周波数の選択のためにプロセス温度は、石炭燃焼発電所で典型的に見られる温度よりも僅かに高い1800Kであると仮定され得るが、この余裕幅は計算における安全係数の役割を果たす。
【0024】
たとえば次の基準に合致する3つの吸水線がTDLASのために選択され得る。
1.夫々、〜1000,2000、および、3000cm-1という更に低い状態エネルギ。
2.共振時における約20%のビーム吸収に帰着する約0.1−0.4の好適な吸光度を提供すること。
3.最適な状況は、安価で高出力のDFBダイオード遠距離通信用レーザが使用可能な1250nm〜1650nmの範囲内の遷移を使用すること。
4.容易な多重化を許容すべく、遷移は適切に分離されるべきこと。
5.選択された波長は、既存の(デ)マルチプレクサ格子により効率的に回折されるべきこと。
【0025】
適切な吸水線は次の波長で生じる。
【0026】
【表1】

【0027】
他の一切の燃焼ガスからの干渉は想定されていない。干渉の可能性が最も高い種であるCO2がモデル化されると共に、1.3〜1.4ミクロンの範囲内では強い干渉線が存在しない。
【0028】
同様に、適切な一酸化炭素線が、言及され且つ援用された上記のEbertの研究に基づいて選択され得る。適切な一酸化炭素線は、石炭燃焼実用ボイラ内でR(24)線を使用して1559.562nmにて見出される。この線を選択すると、水と二酸化炭素とからの干渉が回避される。この波長範囲は光通信C帯にあるので、該波長範囲内では既知の格子が極めて効率的である。この波長におけるCOの吸光度は0.7%であると予測される。
【0029】
更に、酸素は760.0932nmで測定され得る。好ましい(逆)多重化格子効率はこの範囲内では40%にすぎないと算出されるが、合理的な測定効率に対しては適切なレーザ出力が利用可能とされるべきである。
【0030】
本明細書にて論じられる如く、TDLAS検出装置のピッチ側とキャッチ側の両方にてファイバ結合を使用すると、ピッチ光学部品とキャッチ光学部品の厳密なアラインメントが必要とされる。能動アラインメントは、選択されたアラインメント波長を用いて行われることが好ましい。可能的な1つのアラインメント波長は660nmである、と言うのも、この周波数にては高出力(45mW)ダイオードが入手可能であり、かつ、660nmは14次格子動作のピークの近傍だからである。等しく適切な又は更に適切な他のアラインメント波長が決定され得る。
【0031】
要約すると、本発明において具体化されるTDLASのためのプローブビームへと多重化すべく選択される適切な波長群が表2に示される。この波長群は、石炭燃焼発電所における検出および制御に適したTDLAS検出装置の一実施形態に対することを銘記されたい。他の波長群が等しく適切であり得る。
【0032】
【表2】

【0033】
D.多重化ビームを使用するTDLASの独特の利点
波長多重化プローブ・ビームを使用するTDLASの具体的な利点は、温度測定値の精度の向上である。TDLASを使用して正確な濃度測定を行うためには、監視対象のガスの温度を知らなければならない。分子吸光の強度は温度の関数である。従って、吸収特徴の振幅を濃度に変換するためには、温度を知らなければならない。COの如き燃焼種の濃度を測定しようとする以前の幾つかの試みは、定量化における誤りの原因となる不十分な精度の温度測定値という欠点を有する。これは、習用的に温度測定を全く含まないというダイオード・レーザに基づくアンモニアスリップ監視の場合に特に当てはまる。本発明の検出システムにおいて温度は、2つ以上の分子水線の強度の比率を測定することにより求められ得る。この2つの線の積分強度の比率は(システム全体の圧力が一定であると仮定すると)温度のみの関数である。故に原理的には、2つの線が正確な温度を与える。しかし、(工業燃焼プロセスにおいて典型的に見られる如き)不均一な温度分布の場合には、2つの線は温度分布を求めるには不十分である。斯かる不均一な温度分布の場合には、2つの線は“経路平均(path-averaged)”温度のみを決定し得る。対照的に、(同一の種の)3つ以上の線の積分振幅を測定すると、温度の不均一性が調査され得る。この技術の例は、その全ての開示内容は言及したことにより本明細書中に援用されるSanders、Wang、JeffriesおよびHansonにより、プローブ分子として酸素を使用することで例証されている(Applied Optics、40(24):4404, 20 August 2001)。この好ましい技術は、500Kの平均温度における経路に対して照準線に沿い測定されたピーク強度の分布が、たとえば経路の一方の半分は300Kであり且つ他方の半分は700Kである場合の分布と同一でないという事実に立脚する。
【0034】
より正確な温度測定という利点に加え、多重化プローブ・ビームを使用すると2種類以上の燃焼ガス種の同時監視が許容されることで、燃焼プロセス全体にわたり更に厳密な制御が許容される。
【0035】
E.モードノイズ
TDLASシステムの光学列(optical train)と、互いに広く離間された波長から多重化された信号を必要とする同様の実施方式とは、モードノイズの低減と高効率の光収集という相反する設計要件に依る多くの設計上の難題をもたらす。本明細書においてモードノイズは、測定対象のプロセスチャンバから光を収集し、且つ、該プロセスチャンバに対して光を伝送するために使用されるファイバのコアの中における時間的および波長的に変動する不均一な光分布から帰着する検出光の信号レベルの変化として定義される。
【0036】
マルチモードファイバでは、異なるモードが屈折率の変動を原因として異なる速度で伝搬する。その場合にファイバ内の強度の分布は、互いに異なる有効経路長を経た伝搬モードすべての干渉の結果として生じるスペックル・パターンである。このスペックル・パターンのすべての光が収集されて検出されるなら強め合う干渉と弱め合う干渉とが互いに正確に打ち消し合い、且つ、伝送される出力の合計は波長またはファイバ長には依存しない。しかしクリッピング、周辺減光または他の損失が導入されるなら、正確な打ち消し合いは行われず、かつ、検出された出力は波長および/または時間に応じて変化する。上述された如きTDLAS検出システムにおいて、モードノイズから帰着する出力変化は非常に問題である。幾つかの分光技術は、考察されるガス種による特定波長の光の吸収に立脚する。該吸収は重要な波長における出力の減少により検出される。故にモードノイズは、吸収に伴う出力低下を呈し得ると共に、TDLASを介して収集されたデータを不明瞭とし得る。ファイバの長さzの後で検出された出力に関する一般式は、
P=P0+Σijijijcos[(2πν0△nijz/c+△φij(T,σ))]
(1)
であり、式中、
0=波長非依存の平均出力、
i=i次の横モードにおける光の振幅、
ij=i次の横モードとj次の横モードとの間の重なり積分、
△nij=i次モードとj次モードの間の屈折率の差、
△φij=温度および応力を原因とするi次モードとj次モードの間の位相ずれである。
【0037】
正規直交群のモードと無損失とに対しては、cij=0である。しかし、一切のビームクリッピングまたは周辺減光または他の一切のモード依存損失は、何らかのcij≠0の原因となる。これは、平均伝送出力におけるリップルに帰着する。
【0038】
50ミクロンのコアを有する典型的な屈折率分布ファイバの場合には、屈折率の変化の合計△nが〜1%であるが、大半のモードはファイバコアの中心付近で大量の伝送時間を費やし、故に概略的に△nij≦0.0005である。一般的に入手可能な光ファイバGIF50は約135個のモードをサポートし、これは、合理的に達成可能なビームクリッピングレベルを仮定すれば、波長走査中に顕著なモードノイズを生じさせるのに十分なだけ粗い。
【0039】
モードノイズの具体例として、モードノイズを示す実現可能で最も単純なシステム、すなわち、1次元において最低のモードだけをサポートし、且つ、直交次元において2つの最低モードのみをサポートする方形導波路が考察され得る:
最低モード:E1=E10[expi(kz−ωt)]cos πx/2a
次のモード:E2=E20[expi(kz−ωt)]sin πx/a
である。
ファイバに沿ったポイントzにおける強度は、
I(x)=|El+E22であり、且つ、合計出力はP=∫|E1+E22dx (2)
であり、式中、積分はクリッピングと周辺減光との影響を含まねばならない。
【0040】
クリツピングがなければ、P〜E12+E22であり且つ波長依存性はない。クリッピングの付加は、その積分の限界を変化させることになる。クリッピングが追加の項〜E12cos△Φに帰着することが示され得るものであり、式中、△Φ=△kL=2π△nL/λである。
【0041】
単一モードのファイバが上述のシステムの光学列で使用され得るなら、モードノイズは問題ではない。しかしマルチモードファイバは典型的には、2つの理由から、ファイバ結合されたTDLASシステムのキャッチ側の光学列で使用されねばならない。第1に、測定体積(10メートルを超える測定経路を有する燃焼室)を横断した後に、最初は単一モード(ガウス空間分布)であるビームが著しく品質低下させられる。故にこの大きく歪んだビームを単一モードのファイバの中に結合する効率は非常に低い。これは受け入れ難い状況である、と言うのもそのビームは、煤と飛散灰とによる散乱と掩蔽とを主な原因として、測定体積を通過するときに3−4桁は減衰されるからである。単一モードのファイバの使用から帰着する減衰の増加は、測定を妨げるであろう。第2に、火球中の屈折ビーム方向付け効果(refractive beam steering effect)は、ビームの位置および照準とを不安定とする。この効果がある場合には、単一モードのファイバのコアに何らかの規則性を以て“命中”することは困難であろう。
【0042】
一方、マルチモードファイバのコアは、単一モードのファイバの目標断面積の25倍以上の目標断面積を有する。故に、ビーム方向付け効果は著しく低減され得る。更に、マルチモードファイバ中への結合効率は光の空間モードとは無関係なので、火球の中を通過した後に得られる低いビーム品質は問題ではない。
【0043】
コンピュータ処理、遠距離通信または一般的な科学分野における他の種類の実施方式は、相当な長さのマルチモード光ファイバの使用を必要としもしくは好適とする他の同様のまたは完全に無関係な制限を有し得る。他の実施方式においてもモードノイズは問題であり、データ収集またはデータ伝送に関する相当の難題を呈し得る。
【0044】
故に、マルチモードファイバ列の中で生じるモード依存損失が設計上の大きな難題である。マルチモードファイバのコアから発散する光分布は、ランダムなスペックル・パターンを示し、すなわち、そのファイバの互いに異なるモードの間の強め合う干渉と弱め合う干渉とにより明るい区域と暗い区域のランダムなパターンを示す。このスペックル・パターンが時間および波長の関数として全体的に一定不変なら、このスペックル・パターンは問題を呈しないであろう。しかし上述の如く、ビームがマルチモードのキャッチ側光学列内のどこかでクリッピングされるなら、特に波長の関数としてのスペックル・パターンの緩慢な変化はモードノイズを引き起こし得る。このクリッピングを回避することは不可能であり、クリッピングは低減され得るだけである。故にシステムの検出感度を改善するためには、モードノイズを低減させる付加的対策が実施されねばならない。
【0045】
モードノイズを緩和する幾つかの方法が在る。上記の式(1)から、モードノイズは、
1.モード依存の損失を減少させ、すなわち、クリッピングを減少させることでcijを小さく保ち、
2.zを減少させることで検査対象の吸収線よりも著しく大きいようにモードノイズの期間を増大させ、
3.低分散ファイバを用いることで△nijを減少させ、
4.モードをスクランブリングもしくは位相シフトする(但し後述する如く全てのモードスクランブリングもしくは位相シフト技術が等しく効果的ではない)、
ことにより減少され得る。
【0046】
好適にはファイバ結合TDLAS検出システムのキャッチ光学部品は、モードノイズを低減するために上記の全てを含むべく設計かつ実施される。これらの光学部品は、そのシステムの略々完璧なアラインメントを仮定して、あらゆるビームクリッピングが低レベルで生じるように設計される。マルチモードファイバの長さを最小限に保つべく努力が払われるべきだが、用途により、環境調整された区域内に制御電気機器を有するために、zが長くなければならない。△nijの値は、極めて高品質の低分散マルチモードファイバを使用することにより低減され得る。これに加え、キャッチ側マルチモード・ファイバの屈折率を循環的に変化させ又は該ファイバを機械的に操作することにより各モードを平均化し、且つ、収集されて平均化された光信号からデータを抽出することにより、優れた結果が実現され得る。
【0047】
マルチモードファイバで示されるスペックル・パターンは時間および波長の関数として、且つ、ファイバの物理的位置の関数としても変化する。伝送の時間および波長の両方が、ファイバの屈折率により影響される。ファイバを屈曲させて該ファイバを特定様式で操作すると、スペックル・パターンは変化され得る。この機械的操作または屈折率の循環的変化が一定の期間に亙り連続的に行われるなら、ファイバから発せられる光の空間分布は比較的均一なパターンへと平均化される。
【0048】
モードノイズを有効に循環的に位相シフトし又はスクランブリングすることにより時間平均された測定値によれば、均一な信号レベルが生成される。ファイバの屈折率は、該ファイバを伸張させもしくは捻(ねじ)ることにより、または、ファイバの温度を変化させることにより変化され得る。ファイバの温度を変化させると、i次およびj次の横モード間の屈折率差△nijの変化が引き起こされる。該ファイバの屈折率のこの変化によれば、式2において与えられた関数cos(2πν0△nijz)/cによるモードノイズがシフトされる。
【0049】
F.光学的モードノイズの平均化
図3に概略的に示された如く、時間平均された測定値を生成するためのモードノイズの循環的な位相シフトまたはスクランブリングは、光学デバイス300により達成され得る。光学デバイス300は、入力部304および出力部306を有するマルチモード光ファイバ302を含む。光はマルチモード光ファイバ302の入力部304に対して結合され得ると共に、概略的に入力部304および出力部306に関係付けられて図3に示された矢印の方向においてシステムを伝搬し得る。
【0050】
光学デバイス300はまた、マルチモード・ファイバ302に対して作用的に関係付けられた平均化構成要素308も含む。平均化構成要素308は、選択された期間に亙りマルチモード光ファイバ302の屈折率を循環的に変化させる装置を含み得る。代替的に平均化構成要素308は、マルチモード光ファイバ302内の光分布をスクランブリングする装置を含み得る。屈折率の変化または光分布のスクランブリングは平均化構成要素308により、マルチモード光ファイバ302の温度の循環的変化、マルチモード光ファイバ302の循環的な操作、または、それらの両方により達成され得る。
【0051】
平均化構成要素308がマルチモード光ファイバ302の循環的操作を実施するという実施例において、該平均化構成要素308はマルチモード光ファイバ302を捻り、伸張し又は震動させ得る。平均化構成要素308がマルチモード光ファイバ302の温度を循環的に変化させるという実施例においては、該マルチモード光ファイバと熱連通する種々の熱的要素または熱的構成要素が配備され得る。マルチモード光ファイバ302の温度に影響する一切の装置は、平均化構成要素308に含まれ得る。マルチモード光ファイバ302の温度に影響を与えるべく使用され得る代表的なデバイスとしては、熱電式モジュール、抵抗ヒータ、赤外ヒータ、化学的ヒータ、圧縮流体および熱交換器を利用する習用の冷却デバイス、化学的冷却器、周囲温度より低く冷却された流体の供給源、および、周囲温度より高く加熱された流体の供給源が挙げられる。これらのデバイスの幾つかは、以下において詳細に論じられる。
【0052】
平均化構成要素308がマルチモード・ファイバ302の循環的な加熱もしくは冷却を引き起こすという実施例においては、マルチモード光ファイバ302に対して熱連通するセンサ310も載置され得る。センサ310は、制御ライン314を介して平均化構成要素308を制御し得るコントローラ312に対して情報を提供し得る。
【0053】
G.温度式位相シフト装置
温度式モード位相シフトの有効性は、単位時間当たりの温度の変化と、温度変化に晒されるファイバの長さzとに直接的に関連する。温度式モード・シフトはモードノイズを処理する特に有効な方法である、と言うのも、ファイバの温度を変化させると全ての横モードの屈折率が変化され且つ温度変化はファイバの相当な長さに亙り生じ得るからである。故に、ファイバの屈折率を変化させることにより、全ての横モードが確実にシフトされ、且つ、信号と共に“固定”されたままとなるモードは無くなり得る。
【0054】
ファイバの温度を循環させるために、実質的に任意の形式の加熱/冷却システムがマルチモード・ファイバに対して熱連通して載置され得る。ファイバの温度に影響すべく、電気抵抗ヒータ、習用の冷却デバイス、加熱もしくは冷却された流体、ペルチェもしくは他の熱電式デバイス、赤外デバイスまたは化学的デバイスの全てが使用され得る。
【0055】
循環的な温度変化を利用するモード位相シフト・デバイスの一実施例は、流体式モード位相シフト・デバイス(流体デバイス)400である。図4には、分解図が示される。図4には、ファイバの一端から他端に亙り且つファイバの回りに対して高温および低温の空気を交互的に送出する渦流空気管402A、402Bを用いる流体デバイス400の実施例が示される。(図4において不図示の)圧縮空気源から送給された空気は、2本の渦流管402A、402Bの一方に対して交互的に送給される。渦流管402A、402Bは、チャンバ404に対して流体連通して結合される。図4に示された如くチャンバ404は、側部408A、408B、頂部プレート410、前部412および後部アクセス・ポート414を有する密閉容器406により形成され得る。密閉容器406全体は、典型的なデータ処理機器用ラックに対して取付けられるに適している。ラック取付け可能な密閉容器406が特に好適ではあるが、流体デバイス400を実現すべく、所定長さのマルチモード光ファイバ418を保持するスプール416を受容し得る任意の密閉容器形状、種類もしくは型式が使用され得る。代替的に、密閉容器406を備えないデバイスが使用され得る。
【0056】
渦流管402A、402Bは、アクセス・ポート414を介して上記密閉容器の内部と流体連通することから、スプール416上に巻回されたマルチモード光ファイバ418と流体連通かつ熱連通する。故にマルチモード光ファイバ418は、周囲温度より高く加熱され又は低く冷却された空気を渦流管402A、402Bにより付与することで、循環的に加熱および/または冷却され得る。
【0057】
適切な渦流管402A、402Bは容易に入手可能である。たとえば、EXAIR(登録商標)社からEXAIR(登録商標)3230渦流管が入手可能である。30ft3/分のスループットで動作するこれらのもしくは同様の渦流管は、管の配向に依存して+60℃に加熱されまたは−20℃に冷却された空気を提供し得る。これに加え、渦流管を用いる場合には加熱空気および冷却空気の間で循環させることが比較的に容易である。但し、流体デバイス400の実施例を実現するためには、加熱もしくは冷却された流体をマルチモード光ファイバ418に熱連通させて循環的に供給する任意の装置または方法が適切であることを銘記することが重要である。加熱および冷却流体は上記で論じられた如く空気とされ得るが、マルチモード・ファイバを加熱もしくは冷却するために水、加熱/冷却用オイル、圧縮ガスまたは他の流体が使用され得る。
【0058】
一例として且つ限定的なものとしてで無く、動作の間において渦流管402A、402Bの一方は、ファイバが取入口温度より約10℃だけ高い温度に到達するまで、加熱空気を送給し得る。上記ファイバの温度は、ファイバと接触して組み込まれた熱電対420または他の温度センサにより決定され得る。(図4において不図示の)温度制御ユニットは、熱電対420からの入力を受信すると共に、冷却のために空気が渦流管402A、402Bの他方に対して送られる様にソレノイド・スィッチをトリガし得る。代替的に、渦流管402A、402Bによりマルチモード光ファイバ418に対して提供される加熱空気は限界レベルに決して到達しないことから、温度コントローラの使用が排除されて、加熱および冷却の間で渦流管402A、402Bを循環的に切換える計時リレーにより置き換えられ得る。各温度間の循環は好適には、上記デバイスの動作の間において連続的である。
【0059】
図5および図6には、マルチモード・ファイバの温度の循環的変化に基づくモード位相シフト・デバイスの高度に好適な実施例が示される。熱電式モード位相シフト・デバイス(熱電デバイス)500は、選択長さのマルチモード光ファイバ504を保持するスプール502を含む。マルチモード光ファイバ504に対しては、一個以上の熱電式加熱/冷却モジュール506が熱連通して載置される。図5に示された実施例においては、スプール502の内側部の回りにおいて径方向に複数の熱電式加熱/冷却モジュール506が配設される。熱電モジュール506の外側面とマルチモード光ファイバ504のコイルとの間においては熱電式グリースを用いることで、熱連通が促進される。図5に示された実施例においてスプール502は開放縁部を以て構成されることで、熱電モジュール506とマルチモード光ファイバ504との間の接触を促進し、且つ、マルチモード光ファイバ504の巻回を促進する。
【0060】
図6の分解図には、マルチモード・ファイバ504と接触させてスプール502に対し熱電モジュール506を位置決めするひとつの配置構成が示される。
【0061】
熱電モジュール506に対しては、ひとつ以上の熱シンク508も作用的に配設され得る。好適には熱シンク508は、アルミニウムもしくは銅などの高度に熱伝導的な材料から作製されると共に、各熱シンク508の表面積を増大すべく設計されたフィンもしくは他の機構を有する。熱シンク508を横断して空気を付勢もしくは吸引すべくファン510が作用的に位置決めされることで、熱電モジュール506から熱の迅速な抽出が、故に、マルチモード・ファイバ504の迅速な加熱もしくは冷却が促進される。図5および図6に示される如く、熱シンク508の全体に亙り且つそれらの回りにおける空気の流れを阻害せずに熱電デバイス500の各構成要素を相互に関して適切な配向で保持すべく、頂部リング514および底部リング516を有するフレーム構造512が採用され得る。好適には、自由な空気流を確実にすべくフレーム構造512には開口518が形成される。
【0062】
図5および図6に示された実施例は、ペルチェ原理に基づく熱電モジュール506を使用する。熱電モジュール506に対しては、リード線520を介して直流が提供される。ペルチェ原理に基づいて動作する熱電モジュール506によれば、熱電モジュール506の両面は、提供されるDC電流の方向に依存して加熱または冷却を行う。故にこれらのモジュールは一定の利点を提供する、と言うのも、リード線520に対して提供される直流の極性を選択的に切換えることでマルチモード光ファイバ504を選択的に加熱もしくは冷却することは比較的に容易だからである。但し、マルチモード光ファイバ504を加熱および/または冷却すべく他の形式のデバイスが実現され得ることを銘記することが重要である。たとえば、マルチモード・ファイバ504の温度を変化させるために、直接的な抵抗ヒータ、習用の冷却装置、赤外加熱デバイス、および/または、化学反応に基づくヒータおよび/または冷却器が使用され得る。
【0063】
図5および図6に示された如く上記好適実施例において、円筒状構成で取付けられた熱電モジュール506に対しては、適切な電源から電力が送給され得る。各熱電モジュール506に対して送給されるDC電力の極性を循環的に反転させるべく、電流切換え用の電子機器が使用され得る。熱電モジュール506と熱連通する好適にはPremium GIF50マルチモード・ファイバである所定長さのマルチモード・ファイバ504においては、モード位相シフトが生ずる。モード位相シフトおよび平均化を達成するためには、55m〜100mがマルチモード・ファイバに対する適切な長さであることが見出された。他の長さも適切であり得る。巻回された100mのファイバが使用されるなら、ファイバの約50%が熱電式冷却器と直接接触する。直接接触によれば、熱電式グリース以外には熱電モジュール506とファイバ504との間に伝導材料は無いことを銘記されたい。この構成によれば、システムの熱質量は最小限とされる。熱質量を最小限とすることにより、システムの温度応答は迅速とされ且つ更に効率的なモード位相シフトが行われる。
【0064】
熱電モジュール506とマルチモード光ファイバ504との間にはひとつ以上の熱電対522または他の温度測定デバイスが取付けられ、マルチモード光ファイバ504の温度を常に監視すべく使用され得る。(図5および図6では不図示の)温度制御ユニットは、上記熱電対により決定された温度を受信すると共に温度読取値に基づいて電流方向を循環させ得る。容易に入手可能な熱電モジュールにより、35℃〜50℃の温度範囲が達成可能である。ファイバは85℃の最高温度を超えず又はファイバに対する損傷が生じないことが重要である。片面式の冷却器による65℃から10℃までの且つ両面式の冷却器による65℃から30℃までの温度変化による試験が完了された。完全サイクルは任意の選択存続時間とされ得るが、約25秒のサイクルが有効であることが見出された。
【0065】
上述された如く、熱電モジュール506と熱連通して取付けられた熱シンク508により、該熱電モジュール506の対向面に対して熱が放散され得る。入力電力に等しい熱の放散を助力すべく、上記熱シンクのフィンを通して付勢空気が送給もしくは吸引され得る。空気が上記システムを通り且つ上記ユニットの頂部から流出する様に上記フィンの底部における開口518を通して空気を付勢することにより、効率的な熱放散が達成され得る。十分な空気流を許容する他の構成も適切である。代替的に熱電デバイス500は、冷却流体に浸漬されるか別様に冷却され得る。好適には上記ファンは、上記デバイスが動作している間は定常運転される。熱を放散すべく任意の適切なファンまたは流体供給源が利用され得るが、図5および図6に示されたシステムからの熱を除去するためには300CFMのファンが有効であることが見出された。
【0066】
熱電モジュール506の加熱および冷却に対しては、制御用電子機器が組み合わされ得る。フィードバック制御用電子機器は、熱電対518、温度計または他の温度センサからの入力に基づいてファイバの温度を検出し得る。これに加え、温度入力に基づいて上記コントローラは、熱電モジュール506に対して送給される電力の電流方向を切換えると共に加熱および冷却サイクルに対する電力レベルを調節し得る(典型的に加熱は更に効率的なので、必要な電力は更に少なくされ得る)。同様に上記コントローラは、ファイバ光学部品に対して与えられる最高温度および最低温度を制御すると共に過熱の場合には駆動回路機構を遮断し得る。
【0067】
H.熱電式モジュールによる位相シフト・システムの試験
上述の熱電デバイス500により試験が実施された。吸収が無く、窒素パージされたチャンバを通して4つの波長帯域を投じることで試験が実施された。路程における吸収種がなければ、基準信号により分割された後でレーザは線形の波長応答を呈さねばならない。勾配の線形性の偏差は、主としてモードノイズにより引き起こされる。測定値における不確定性を決定すべく使用される式の概略的表現は次式により与えられる:
σx=[1/N Σ(xi−fi(ax+b))21/2 (3)
式中、
i=信号i/タップi
i(ax+b)=“x1-nの線形フィット”である。
【0068】
各波長サイクルの開始時および終了時は、ピッチ・ヘッドおよび受信ヘッドの踏破時間により引き起こされる時間遅延の故に無視され得る。これらの時間遅延によれば、各サイクルの開始時および終了時においてタップと観測信号との間に相当の変動が引き起こされる。
【0069】
片面式および両面式の熱電モジュール506、複数回の平均化時間および異なるファイバ長を用いた熱電デバイス500の実施例により、システム性能試験が行われた。全ての結果に対し、モード位相シフトおよび平均化によれば、低減されたモードノイズ信号偏差が生成された。ノイズの低減は、式(3)において与えられた如く実験で使用されるファイバの長さに依存し、長寸ファイバは短寸ファイバよりも更に高頻度のモードノイズ偏差を有する。この故に、モード位相シフトによる相対分解能増大は、長寸ファイバにおいて更に明確とされる。結果は、種々の構成に対して以下に示される。
【0070】
【表3】

【0071】
機械的操作に基づく装置
上記で論じられた如くモードノイズは、マルチモード・ファイバの屈折率を循環的に変化させ又はマルチモード・ファイバを機械的に操作すると共に、収集された平均光信号からデータを抽出することで平均化および円滑化され得る。上記で論じられた温度式位相シフト装置は、循環的な温度変化を介してマルチモード・ファイバの屈折率を変化させることでモード位相シフトを達成する。以下で論じられる如く、屈折率を変化させるためにはマルチモード・ファイバの機械的操作も採用され得る。これに加えて機械的操作によれば、ファイバが操作されるときに光は導波路内の特定のモードに完全には追随し得ないので、モードノイズにより影響された信号が平均化されて円滑化されるる結果となり得る。故に、所定長さのマルチモード・ファイバ内でモードノイズにより引起こされたスペックル・パターンの平均化および円滑化は、位相シフトおよび機械的スクランブリングの組み合わせにより達成され得る。
【0072】
機械的ファイバ操作の幾つかの特定様式は、モードノイズを平均化する上で他の様式よりも更に効果的である。特に、ファイバ上の何らかの他のポイントを基準としてそのファイバの縦(z)軸を中心として該ファイバを捻ると、スペックル・パターンの変化が引き起こされる。得られる支配的な変化は、z軸を中心としたスペックル・パターンの回転である。ファイバが機械的に回転させられるのと同じだけ上記パターンが上記軸を中心として回転はしないという事実が重要である。二次的な効果は、実際の光分散が上記回転により幾分か変化させられることである。スペックル・パターンの回転は、応力により引き起こされるファイバ内の屈折率の変化を主な原因とはしないが、この屈折率変化は、スペックル強度パターンにおけるわずかな変化を説明し得る。寧ろ上記回転は、導波路が捻り運動の形で操作されるときに光が該導波路に完全には追従し得ないことに起因する。
【0073】
図7には、本発明の一実施例すなわち機械的モードノイズ平均化装置(機械的デバイス)700が概略的に示される。機械的デバイス700は中空シャフト・モータ702を使用し、該モータを通してマルチモード・ファイバ704が載置かつ締着される。ファイバの遠隔区画706はモータ702のシャフト位置に対して堅固に保持されると共に、上記モータは、好適には+360°とされてから−360度とされる動作である捻り動作により反復的に掃引される。この動作の周波数は好適には10Hz以上とされることで、伝送された信号の効率的な平均化を可能とすると共に、キャッチ側のモードノイズが相当に低減され得る。マルチモード・ファイバの長手軸心に沿い該ファイバを捻ることがモードノイズのスクランブリングに対して有効であると決定されたが、震動、伸張または屈曲などの他の機械的操作も採用され得る。
【0074】
ピエゾ伸張器
光ファイバを伸張させると、該ファイバの屈折率および長さの両方の変化がもたらされる。マルチモード・ファイバは、ピエゾ伸張器により伸張され得る。ピエゾ・デバイスは概略的に、変調された時間遅延を単一モード・ファイバに導入すべく用いられる。マルチモード・ファイバはピエゾ伸張デバイスにおいては用いられない、と言うのも、光が踏破し得る複数の経路すなわちモードの故にマルチモード・ファイバにおける時間遅延は制御し得ないからである。但し、ピエゾ伸張デバイスは時間遅延を生成するには実用的でないとしても、モード位相シフトを導入するためには使用され得る。
【0075】
マルチモード・ファイバが伸張されたとき、該ファイバに対して導入された応力は、該ファイバの屈折率および長さの両方の変化を引き起こす。図8に概略的に示された如くピエゾ・デバイス800は、各半円筒体804の回りに数メートルのマルチモード光ファイバ802を巻回してから、所定の振動周波数および距離にて各半円筒体804を振動させることで作用する。各半円筒体804間の距離が拡開および収縮するにつれ、ファイバ802における応力は調和振動する。この振動により、ファイバ802の屈折率は変動される。モード・シフトの有効性は、ファイバの長さ(z)の変化と、ファイバの屈折率(△nij)(式(1))の変化との両方の関数である。
【0076】
モード位相シフトは、ピエゾ・デバイス800を用いた2つの技術の一方により達成され得る。第1の技術に対しては、多くのモードを平均化することにより均一な信号レベルが達成される様に、ピエゾ・デバイス800は十分なファイバ802を以て実現されると共に十分な応力を導入すべく構成されることで大きな度合いのモード変化を生成する。代替的に、ピエゾ・デバイス800は定常的な屈折率変化を繰り返すことから、該ピエゾ・デバイス800は可能的には、最小および最大の伸張距離において180°の調波のモード・シフトを生成する様式で振動すべく操作され得る。この方法によるとモードノイズは、多数のモード・シフトを時間平均することによってではなく、180°の位相シフトが達成される様に伸張特性を最適化することにより低減され得る。故にその場合にモードノイズは僅かに1回のサイクルで平均化されることから、モードノイズを排除した迅速なデータ獲得が許容され得る。
【0077】
ピッチ側の光学列
測定領域を通して伝送されるべき全ての波長に対して単一モードのビーム生成が必要なので、ファイバ結合TDLAS検出装置のピッチ側の光学列は、設計上の大きな難問も呈する。単一モードのファイバがピッチ側光学列の全体において使用可能なら、モードノイズは問題ではない。しかしファイバは、制限された波長窓に対してのみ単一モードの導波路として動作する。特定のファイバに関する短波長カットオフを超えると、光は幾つかの高次空間モードにおいてファイバを通して伝送され得る。光がそのファイバから出射するとき、これらの高次モードは干渉し合うことでスペックル・パターンを生じさせる。このスペックル・パターンは時間的および波長的に変動する。その場合、僅かな量のビームクリッピングでさえも測定におけるノイズを引き起こす。
【0078】
逆に、伝送されることが必要な最短の波長に一致する単一モードのカットオフを有するファイバが選択されるなら、更なる長波長はファイバ中に結合されるときに相当の損失を受けると共に、該ファイバは、更なる長波長に対して大きな曲げ損失を呈する。
【0079】
この問題は、上述のファイバ結合型波長多重化TDLAS検出/制御装置においては、1.67ミクロンもの長さの波長を760nmまたは670nmもの短さの波長と多重化することが必要なので、深刻な問題である。斯かる広範囲な波長に関して単一モード動作と高い結合効率と低い曲げ損失とを実現する既知の単一の市販のファイバは存在していない。将来的にはフォトニック結晶ファイバがこの難問に対する解決策を提供するかも知れないが、フォトニック結晶ファイバ技術は現時点では初期段階の状態である。
【0080】
図9に示された如く、670nmまたは760nmから1670nmまでの単一モード・ビームにおける光の多重化およびピッチングの問題は、単一モード・カットオフよりも短い波長に対して高次の空間モードが進展することを許容しないマルチモード・ファイバ120の非常に短寸の伝送区画を利用することで最小限とされ得る。式(1)を参照すると、マルチモードファイバの長さLが短いなら、モードノイズは最小化されるであろう。この場合、1280nmのカットオフ波長を有する単一モードファイバ(例えば、Corning SMF28)の短い区間に対してたとえば760nmの光が結合されたとしても、その760nmの光は少なくとも数メートルに亙り単一モードのままである。故にピッチ側のモードノイズに対する解決策は、1280nmよりも長い波長に関しては単一モードであるが760nmに関してはマルチモードであり得るファイバの中に、760nmの光が測定区域を通過して伝送されるべく平行化される前に踏破すべき短い距離のみに対して該760nmの光を結合することである。
【0081】
斯かるシステムの概略図は図9および図2に示される。図9を参照すると、広範に離間されたレーザ発振周波数でレーザ発振する複数のダイオード・レーザ源902が、個別の単一モード光ファイバ904A〜904nに結合されている。1349nm乃至1670nmの波長でレーザ発振するダイオード・レーザは、マルチプレクサ906により多重化される。マルチプレクサ906の出力は、大きな伝送損失なしに且つモードノイズの発生なしに1349nm乃至1670nmの範囲内の波長を有する光を伝送するのに適した寸法を有するピッチ側の光ファイバ908に結合される。これらの波長に適している光ファイバはCorningSMF28である。しかし760nmの入力は、多重化されてSMF28光ファイバに結合されたなら、比較的短い距離にわたる伝送の後にマルチモード的となる。故に760nmレーザの出力は、1280nm未満の波長に対して単一モードであるSMF750の如きファイバに結合される。入力ファイバ904n中を伝送されるレーザ光と、ピッチ側の光ファイバ908の中を伝送される多重化レーザ光とは、ピッチ光学部品910の付近で結合され得る。カプラ912およびピッチ光学部品910は好適には、結合および多重化された波長の全てを大きな損失なしで伝送すべく選択された短寸の伝送光ファイバ914により光学的に接続される。図9に示されたシステムに適した伝送光ファイバはCorningSMF28である。伝送光ファイバが比較的に短ければ、該伝送光ファイバ914に結合される760nmレーザ光はそれほどのマルチモード的な挙動を示さない。図9に示されたシステムおよびファイバに対し、相当のマルチモード的ノイズの発生を回避するために伝送光ファイバは3メートル以下の長さに維持されるべきことが確認されている。
【0082】
類似のシステムが図2に示されており、その場合にカプラ134は、760mmダイオード・レーザと、相当に長い波長を有するダイオード・レーザからの多重化ビームとの両方からの入力を受信する。
【0083】
本発明の目的は、本明細書に開示された実施例により完全に実現された。当業者であれば、本発明の種々の見地は発明の本質的作用から逸脱せずに異なる実施例を通して達成され得ることは理解される。特定の実施例は例示的であり、添付の各請求項に示された発明の有効範囲の制限を意図してはいない。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は、本発明のTDLAS検出装置の概略図である。
【図2】図2は、燃焼室の近傍の構成要素に光学的に結合されて遠隔配置された構成要素を特徴とするTDLAS検出装置の概略図である。
【図3】図3は、本発明に係る光学的モードノイズ平均化デバイスの概略図である。
【図4】図4は、熱的要素として周囲温度より高く加熱されまたは周囲温度より低く冷却された流体供給源を備えた温度式位相シフト装置の分解図である。
【図5】図5は、熱的要素として一連の熱電デバイスを利用する温度式位相シフト装置の分解図である。
【図6】図6は、図5の温度式位相シフト装置の代替的な分解図である。
【図7】図7は、マルチモード光ファイバの機械的操作のためにモータを用いる光学的モードノイズ平均化デバイスの概略図である。
【図8】図8は、マルチモード光ファイバの機械的操作のためにピエゾ伸張器を用いる光学的モードノイズ平均化デバイスの概略図である。
【図9】図9は、ピッチ側モードノイズ低減デバイスの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチモード光ファイバと、
該マルチモード光ファイバ内を伝搬する光の信号レベル変動であってモードノイズにより誘起された信号レベル変動を平均化する手段と、
を備えて成る光学デバイス。
【請求項2】
前記平均化手段は、
選択された期間に亙り前記マルチモード光ファイバの屈折率を循環的に変化させる手段、および、
上記マルチモード光ファイバ内の光分布をスクランブリングする手段、
の一方から成る、請求項1記載の光学デバイス。
【請求項3】
前記平均化手段は、
前記マルチモード光ファイバの温度を循環的に変化させる手段、および、
上記マルチモード光ファイバを循環的に操作する手段、
の一方から成る、請求項1記載の光学デバイス。
【請求項4】
前記マルチモード光ファイバを循環的に操作する前記手段は、
上記マルチモード光ファイバを捻る、
上記マルチモード光ファイバを伸張させる、
上記マルチモード光ファイバを震動させる、
の内の少なくともひとつを実施すべく構成された装置を備える、請求項3記載の光学デバイス。
【請求項5】
前記マルチモード光ファイバの温度を循環的に変化させる前記手段は、上記マルチモード光ファイバと熱連通された熱的要素であって、ヒータ、冷却器、周囲温度より高く加熱された流体の供給源および周囲温度より低く冷却された流体の供給源の内の少なくともひとつを備える熱的要素から成る、請求項3記載の光学デバイス。
【請求項6】
前記マルチモード光ファイバに熱接触された温度センサと、
上記温度センサから入力を受信するコントローラであって、上記マルチモード光ファイバの温度を循環的に変化させる前記手段を制御するコントローラと、
を更に備えて成る、請求項3記載の光学デバイス。
【請求項7】
入力部および出力部を有するマルチモード光ファイバにおいてモードノイズにより誘起された信号強度変動を平均化する方法であって、
上記マルチモード光ファイバの上記入力部に対して光を結合する段階と、
上記マルチモード光ファイバの屈折率を循環的に変化させる段階と、
上記光を上記マルチモード光ファイバの上記出力部にて受信する段階と、
を備えて成る、方法。
【請求項8】
前記マルチモード光ファイバの前記屈折率は、
上記マルチモード光ファイバの温度を循環的に変化させる、および、
上記マルチモード光ファイバを循環的に操作する、
の一方により変化される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記マルチモード光ファイバの温度を循環的に変化させる前記段階は、上記マルチモード光ファイバと熱連通する熱的構成要素を配備する段階を備える、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記マルチモード光ファイバと熱連通する温度センサを配備する段階と、
前記温度センサから入力を受信するコントローラにより上記熱的構成要素を制御する段階と、
を更に備えて成る、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記マルチモード光ファイバを循環的に操作する前記段階は、
上記マルチモード光ファイバを捻る段階、
上記マルチモード光ファイバを伸張させる段階、
上記マルチモード光ファイバを震動させる段階、
の内の少なくともひとつの段階を備える、請求項8記載の方法。
【請求項12】
マルチモード光ファイバと、
上記マルチモード光ファイバと熱接触する熱的要素と、
を備えて成る、モードノイズにより誘起された光の信号レベル変動を平均化する光学デバイス。
【請求項13】
前記マルチモード光ファイバと熱接触する温度センサと、
上記温度センサからの入力を受信して前記熱的要素を制御するコントローラと、
を更に備えて成る、請求項12記載の光学デバイス。
【請求項14】
前記熱的要素と熱接触する熱シンクと、
上記熱シンクと流体連通するファンと、
を更に備えて成る、請求項12記載の光学デバイス。
【請求項15】
選択長さの前記マルチモード光ファイバを前記熱的要素に対して実質的に熱接触させて支持するスプールを更に備えて成る、請求項12記載の光学デバイス。
【請求項16】
前記マルチモード光ファイバの前記選択長さは55m乃至100mである、請求項12記載の光学デバイス。
【請求項17】
前記熱的要素は、熱電式モジュール、抵抗ヒータ、赤外ヒータ、化学的ヒータ、冷却デバイス、化学的冷却器、周囲温度より低く冷却された流体の供給源、および、周囲温度より高く加熱された流体の供給源の内の少なくともひとつを備えて成る、請求項12記載の光学デバイス。
【請求項18】
マルチモード光ファイバと、
上記マルチモード光ファイバと作用的に関係付けられた操作装置と、
を備えて成る、モードノイズにより誘起された光の信号レベル変動を平均化する光学デバイス。
【請求項19】
前記操作装置は、前記マルチモード光ファイバの機械的操作であって、選択長さの上記マルチモード光ファイバを伸張させる、上記マルチモード光ファイバの選択部分を捻る、および、選択長さの上記マルチモード光ファイバを震動させる、の内の少なくともひとつから成る機械的操作を実施する、請求項18記載の光学デバイス。
【請求項20】
前記操作装置はピエゾ伸張器を備えて成る、請求項18記載の光学デバイス。
【請求項21】
前記ピエゾ伸張器は、最小および最大の伸張距離の夫々において180°の光学的モード・シフトを生成すべく選択された一連の振動により前記マルチモード光ファイバを伸張させるべく構成される、請求項20記載の光学デバイス。
【請求項22】
前記操作装置はモータを備えて成る、請求項18記載の光学デバイス。
【請求項23】
前記モータは、前記マルチモード光ファイバの長さ方向軸心に関し且つ該マルチモード光ファイバの第2固定部分に対して交互的に時計方向および反時計方向に上記マルチモード光ファイバの第1部分を循環的に捻るべく構成される、請求項22記載の光学デバイス。
【請求項24】
マルチモード光ファイバと、
該マルチモード光ファイバ内を伝搬する光の信号レベル変動であってモードノイズにより誘起された信号レベル変動を平均化する手段と、
を備えて成る、キャッチ側光学システムを備えて成る燃焼検出装置。
【請求項25】
前記平均化手段は、
選択された期間に亙り前記マルチモード光ファイバの屈折率を循環的に変化させる手段、および、
上記マルチモード光ファイバ内の光分布をスクランブリングする手段、
の一方から成る、請求項24記載の燃焼検出装置。
【請求項26】
前記平均化手段は、
前記マルチモード光ファイバの温度を循環的に変化させる手段、および、
上記マルチモード光ファイバを循環的に操作する手段、
の一方から成る、請求項24記載の燃焼検出装置。
【請求項27】
前記マルチモード光ファイバを循環的に操作する前記手段は、
上記マルチモード光ファイバを捻る、
上記マルチモード光ファイバを伸張させる、
上記マルチモード光ファイバを震動させる、
の内の少なくともひとつを実施すべく構成された装置を備える、請求項26記載の燃焼検出装置。
【請求項28】
前記マルチモード光ファイバの温度を循環的に変化させる前記手段は、上記マルチモード光ファイバと熱連通された熱的要素であって、ヒータ、冷却器、周囲温度より高く加熱された流体の供給源および周囲温度より低く冷却された流体の供給源の内の少なくともひとつを備える熱的要素から成る、請求項26記載の燃焼検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−534983(P2007−534983A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506152(P2007−506152)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【国際出願番号】PCT/US2005/002853
【国際公開番号】WO2005/103781
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(505365415)ゾロ テクノロジーズ,インコーポレイティド (13)
【Fターム(参考)】