説明

光学系及びレーザ加工装置

【課題】各加工ラインに沿って均一な加工を効率良く行うことができ、しかも加工品質を向上させることができるレーザ加工用の光学系及びそれを備えたレーザ加工装置を提供すること。
【解決手段】本発明の光学系は、レーザ光源11から発せられた前記レーザビームを、断面形状が楕円形状である楕円レーザビームに変換する一対のプリズム132と、一対のプリズム132によって変換される前記楕円レーザビームの楕円状断面における長軸方向の長さを変化させるプリズム回転機構133a,133bと、前記一対のプリズム132によって変換される前記楕円レーザビームの楕円状断面における長軸方向に沿って前記一対のプリズム132を平行移動させるプリズム移動機構14と、前記楕円レーザビームを被加工物に向けて集光する集光レンズ16と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハなどの被加工物(ワーク)をレーザ加工する際に用いられる光学系及びそれを備えたレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体ウェーハなどの被加工物(ワーク)を分割する方法として、ワークの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインを設けて複数の領域を区画し、このストリートに沿ってレーザビーム光線を照射することによりレーザ加工溝を形成し、このレーザ加工溝に沿ってメカニカルブレーキング装置によって割断する方法が提案されている(特許文献1)。
【0003】
レーザ加工は、切削加工に比べて加工速度を速くすることができると共に、サファイヤのように硬度の高い素材からなるワークであっても比較的容易に加工することができる。レーザ加工において、各加工ラインに沿って均一なレーザ加工溝を所望の深さに形成することは非常に難しい。すなわち、ワークに形成するレーザ加工溝の深さを深くするためにレーザビームの出力を一定以上に高めても、レーザビーム光線のエネルギーが十分吸収されず、所望の深さのレーザ加工溝を形成することができない。あまりレーザビームの出力を高くし過ぎると、加工品質が劣化する恐れもある。
【0004】
これらの問題を解決するために、本出願人は、シリンドリカルレンズを用いてレーザビームのスポット径を楕円形状に形成するレーザ加工装置を提案している(特許文献2)。集光されるレーザビームのスポット形状を楕円形に整形し、楕円形に整形したスポットの長軸を該加工送り方向に位置付けることで、単位時間当たりのエネルギーを長軸方向へ分散させることができ、加工ラインに沿って加工を効率良く行うことができるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−305420号公報
【特許文献2】特開2006−289388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、レーザ加工装置においてシリンドリカルレンズによってビームを楕円形状に形成すると、楕円形状のスポットの短軸方向と長軸方向とで対物レンズに入射する角度が異なり、結果として、楕円形状のスポットの短軸方向と長軸方向で異なる位置で焦点を結んでしまう。このため、上述したレーザ加工装置については、加工品質においてさらなる改善が求められている。
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、短軸方向と長軸方向で同一焦点となる楕円形状のスポットを形成でき、加工ラインに沿って均一な加工を効率良く行うことができ、しかも加工品質を向上させることができるレーザ加工用の光学系及びそれを備えたレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光学系は、レーザビームを発するレーザ光源と、前記レーザ光源から発せられた前記レーザビームの光路上に配設され、前記レーザビームを、断面形状が楕円形状である楕円レーザビームに変換する一対のプリズムと、前記一対のプリズムに入射する該レーザビームの光軸方向に垂直に交わる方向を回転軸として前記一対のプリズムをそれぞれ互いに逆回転させ、前記一対のプリズムによって変換される前記楕円レーザビームの楕円状断面における長軸方向の長さを変化させるプリズム回転機構と、前記一対のプリズムによって変換される前記楕円レーザビームの楕円状断面における長軸方向に沿って前記一対のプリズムを平行移動させるプリズム移動機構と、前記楕円レーザビームを被加工物に向けて集光する集光レンズと、を含むことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、レーザ光源から入射側のプリズムへ入射したレーザビームが平行光束を保持したまま屈折して楕円形状に整形される。入射側のプリズムを透過した楕円レーザビームは出射光の向きが変化するが、入射側のプリズムから出射した楕円レーザビームが出射側のプリズムに入射し、平行光束を保持したまま屈折して出射され、最終的に楕円レーザビームの光軸が集光レンズの光軸方向と一致する方向(固定)に向けられる。入射側のプリズムへのレーザビームの入射角及び出射側のプリズムへの楕円レーザビームの入射角はプリズム回転機構によって調整される。一対のプリズムに対するレーザビームの入射角を変化させる結果、出射側のプリズムから出射する楕円レーザビームの光軸位置が楕円形状スポットの長軸方向へ移動して集光レンズの光軸とずれるが、プリズム移動機構によってこの光軸ずれを吸収する方向へ一対のプリズムを移動させることができ、後段に配置される光学部品を移動させる必要がなくなる。出射側のプリズムから出射する楕円レーザビームは平行光束の状態で集光レンズに入射するので、集光レンズへの入射角度を同じとすることができ、楕円形状のスポットの短軸方向と長軸方向で同じ位置で焦点を結ぶようにすることができる。また、一対のプリズムは、非球面光学素子であるので、シリンドリカルレンズに比べて光軸合わせが容易であり、簡単な制御で精度良く光軸合わせを行うことができる。
【0010】
本発明の光学系においては、前記一対のプリズムと前記集光レンズとの間に配設される回折光学素子を含み、前記回折光学素子は、前記回折光学素子に入射された前記楕円レーザビームの楕円状断面の長軸方向に対してそれぞれ所定の角度を持った複数の楕円レーザビームに前記楕円レーザビームを分光することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、高いエネルギーを持つレーザであっても、エネルギーを複数に分割することができ、エネルギーを効率良く加工に用いることができる。
【0012】
本発明のレーザ加工装置は、上記光学系と、被加工物を保持する保持テーブルと、を備え、前記光学系で生成された楕円レーザビームを前記被加工物に照射して加工することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、楕円形状のスポットの短軸方向と長軸方向とで対物レンズに入射する角度を同じとすることができ、楕円形状のスポットの短軸方向と長軸方向で同じ位置で焦点を結ぶようにすることができる。その結果、レーザ加工における加工品質を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、短軸方向と長軸方向で同一焦点となる楕円形状のスポットを形成でき、各加工ラインに沿って加工を効率良く行うことができ、しかも加工品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態に係る光学系を示す全体構成図である。
【図2】図1の光学系におけるレーザ断面を示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るレーザ加工装置を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る光学系を示す全体構成図である。図1に示す光学系は、レーザビームを発するレーザ光源11と、レーザ光源11から発せられた平行光束のレーザビームを断面形状が楕円形状である楕円レーザビームに変換する一対のプリズム132を含むビーム変換ユニット13と、一対のプリズム132を平行移動させるプリズム移動機構14と、ビーム変換ユニット13から出射した楕円レーザビームを分光して複数の楕円レーザビームを形成する回折光学素子15と、複数の楕円レーザビームを集光して複数の楕円スポットを保持テーブル17上に載置された被加工物(ワーク)18に形成する集光レンズ16と、から主に構成されている。一対のプリズム132のそれぞれのプリズム132a,132bには、それぞれを互いに逆回転させるプリズム回転機構133a,133bが備えられている。また、この光学系は、レーザ光源11の発振器の制御、プリズム移動機構の制御、及びプリズム回転機構133a,133bの制御を行う制御回路19を有する。
【0017】
レーザ光源11は、レーザ波長が100nm〜1500nmの短パルスレーザを発振する発振器を有している。発振器が発振する短パルスレーザは、断面形状が円形で平行光束であるレーザビームとして出射される。レーザ光源11から出射するレーザビームの光路上には、ミラー12が配設されており、ミラー12によりレーザビームを後述するビーム変換ユニット13の移動方向と同一方向に反射させてビーム変換ユニット13内に入射させている。また、レーザ光源11の発振器は、制御回路19に電気的に接続されており、制御回路19により短パルスレーザの発振が制御されている。
【0018】
ビーム変換ユニット13内には、ミラー12から光路変更されたレーザビームが入射し、該レーザビームを垂直下方へ反射させて、一対のプリズム132(プリズム132a)の上側プリズム132aへ入射させるミラー131が配設されている。したがって、ビーム変換ユニット13の外側に配設されたミラー12で、レーザ光源11から出射するレーザビームを受けて、ビーム変換ユニット13の移動方向と同一方向に反射させてビーム変換ユニット13内に固定されたミラー131へ入射しているので、ビーム変換ユニット13が移動してもレーザ光源11から発振されたレーザビームをビーム変換ユニット13へ導くことが出来る。
【0019】
ビーム変換ユニット13において、レーザビームの光路上の後段には、断面形状が楕円形状である楕円レーザビームに該レーザビームを変換する一対のプリズム132が配設されている。一対のプリズム132は、上側プリズム132aと、下側プリズム132bとから構成されている。レーザビームが一対のプリズム132を透過することにより、断面形状が円形であるレーザビームは、光軸と直交する1軸方向に拡張した楕円形状のビーム形状に変換される。したがって、楕円形状のビーム(楕円レーザビーム)の断面視において、その長軸方向がレーザビームの光軸と直交している。
【0020】
上側プリズム132aは、上側プリズム回転機構133aにより回転可能に取り付けられている。また、下側プリズム132bは、下側プリズム回転機構133bにより回動可能に取り付けられている。この上側プリズム回転機構133a及び下側プリズム回転機構133bは、制御回路19に電気的に接続されており、制御回路19により、上側プリズム回転機構133aの回転及び下側プリズム回転機構133bの回転がそれぞれ制御される。
【0021】
上側プリズム132aに対して断面形状が円形で平行光束の円形レーザビームが入射面に対して所定の入射角で入射すると、平行光束を維持したまま屈折して光軸と直交する一方向に拡大した断面楕円形状に変換される。上側プリズム132aを透過して平行光束の状態で一方向のビーム径が拡大された楕円レーザビームは、入射角に応じて上側プリズム132aからの出射光の向きが変化する。ビーム変換ユニット13から出射する楕円レーザビームの光軸を、常に集光レンズ16等の後段に配置された固定光学部品の光軸と一致させるために、下側プリズム132bを設けている。下側プリズム132bは、楕円レーザビームを屈折させて、楕円レーザビームの光軸が集光レンズ16の光軸と平行を維持させる働きをする。このため、下側プリズム132bは、上側プリズム132aの回転方向とは逆方向に回転させることで、下側プリズム132bでの屈折方向を調整している。これにより、楕円形状のスポットの短軸方向と長軸方向とで集光レンズに入射する角度を同じとすることができ、結果として、楕円形状のスポットの短軸方向と長軸方向で同じ位置で焦点を結ぶようになる。このように、上側プリズム132a及び下側プリズム132bは、協働して楕円レーザビームの長軸方向の寸法調整と出射光の向きの調整とを行うので、制御回路19により連動して回転するように制御される。
【0022】
制御回路19は、上側プリズム132a及び下側プリズム132bが、入射するレーザビームの光軸方向に垂直に交わる方向(紙面向って手前側−奥側)を回転軸としてそれぞれ互いに逆回転するように(図1中の回転矢印方向)、上側プリズム回転機構133a及び下側プリズム回転機構133bを制御する。上側プリズム回転機構133a及び下側プリズム回転機構133bの回転量を制御することにより、楕円レーザビームの楕円状断面における長軸方向の長さを変化させることができる。
【0023】
上述したビーム変換ユニット13には、プリズム移動機構14が取り付けられており、楕円レーザビームの楕円状断面における長軸方向に沿ってビーム変換ユニット13を平行移動させる。ビーム変換ユニット13が該長軸方向に沿って平行移動することにより、一対のプリズム132が平行移動することになる。上記した通り、一対のプリズム132を回転させると、一対のプリズム132を透過して下側プリズム132bから出射する楕円レーザビームの光軸が集光レンズ16に対して楕円状断面の長軸方向にずれる。プリズム移動機構14は、集光レンズ16に対して楕円状断面の長軸方向にずれる光軸ずれを修正するものである。すなわち、プリズム移動機構14は、一対のプリズム132を透過した楕円レーザビームの光軸が常に回折光学素子15及び集光レンズ16に対して位置合わせされるようにビーム変換ユニット13(一対のプリズム132)を平行移動するものである。これにより、一対のプリズム132を回転させて、楕円レーザビームの楕円状断面における長軸方向の長さを変化させても、常に楕円レーザビームの光軸が回折光学素子15及び集光レンズ16に対して位置合わせされた状態で、楕円レーザビームをワーク18に照射することができる。
【0024】
プリズム移動機構14は、制御回路19に電気的に接続されており、制御回路19により、ビーム変換ユニット13の平行移動が制御される。具体的には、一対のプリズム132の回転位置に応じて、ビーム変換ユニット13の出射光と集光レンズ16の光軸との光軸ずれ量が決まる。したがって、制御回路19は、一対のプリズム132の回転位置に対応してビーム変換ユニット13の平行方向の位置を決定し、光軸ずれを無くす目標位置へビーム変換ユニット13を平行移動させる。
【0025】
ビーム変換ユニット13を出射した楕円レーザビームの光路上、すなわち一対のプリズム132と集光レンズ16との間には、回折光学素子15が配設されている。回折光学素子15は、回折光学素子15に入射された楕円レーザビームの楕円状断面における長軸方向に対してそれぞれ所定の角度を持った複数の楕円レーザビームに楕円レーザビームを分光する。高いエネルギーを持つレーザの場合については、そのままレーザ加工に用いると、その高いエネルギーすべてが加工に寄与せず、エネルギーが無駄になることがある。このように複数の楕円レーザビームに分光することにより、高いエネルギーを持つレーザであっても、エネルギーを複数に分割することができ、エネルギーを効率良く加工に用いることができる。
【0026】
回折光学素子15を透過した楕円レーザビームの光路の後段には、楕円レーザビームを被加工物18に向けて集光する集光レンズ16が配設されている。集光レンズ16を透過した楕円レーザビームは、保持テーブル17上に保持された被加工物18上に集光される。このようにして、本光学系を備えたレーザ加工装置においては、生成された楕円レーザビームを被加工物18に照射して被加工物18を加工するようになっている。
【0027】
次に、以上のように構成された光学系を用いてレーザビームを被加工物(ワーク)上に集光させた場合の作用について説明する。
【0028】
レーザ光源11で発生した平行光束で断面円形のレーザビームは、ミラー12で光路が変更されてビーム変換ユニット13内に入射される。ビーム変換ユニット13内では、レーザビームがミラー13によりその光路が変更されて、上側プリズム132aに向けられる。このときのレーザビーム(図2に示すX部におけるレーザビーム)の断面形状は、図2に示すように、円形である(円形レーザビーム)。
【0029】
この円形レーザビームは、一対のプリズム132に入射して光軸と直交する1軸方向に拡張した楕円形状のビーム形状に変換される。すなわち、円形レーザビームは、上側プリズム132aの入射面に対して所定の入射角で入射し、平行光束を維持したまま屈折して光軸と直交する一方向に拡大した断面楕円形状に変換され、入射角に応じた出射角で出射面から出射する。上側プリズム132aから出射した楕円レーザビームは、下側プリズム132bに入射して平行光束を維持したまま屈折して、集光レンズ16の光軸と平行となる出射角で出射される。このようにして、円形レーザビームが一対のプリズム132を透過すると、その断面形状は、図2に示すように、楕円形に整形される(図2に示すY部における楕円レーザビーム)と共に、出射方向が上側プリズム132aへの入射角によらず、常に集光レンズ16の光軸と平行方向に出射される。
【0030】
この場合においては、円形レーザビームは、一対のプリズム132を透過する際に、平行光束を維持したまま光軸と直交する一方向に拡大した断面楕円形状に変換されるので、楕円レーザビームの楕円状断面の短軸方向と長軸方向とで集光レンズ16に入射する角度を同じとすることができ、楕円形状のスポットの短軸方向と長軸方向で同じ位置で焦点を結ぶようにすることができる。その結果、レーザ加工における加工品質を向上させることができる。また、一対のプリズム132は、非球面光学素子であるので、シリンドリカルレンズに比べて光軸合わせが容易であり、簡単な制御で精度良く光軸合わせを行うことができる。
【0031】
この構成において、制御回路19は、楕円レーザビームの楕円状断面における長軸方向の長さを変化させる場合には、上側プリズム回転機構133a及び下側プリズム回転機構133bを駆動して上側プリズム132a及び下側プリズム132bの回転位置を制御する。例えば、楕円レーザビームの楕円状断面における長軸方向の寸法を長くする場合には、プリズム132aの入射面に対して垂直な線とプリズム132aへ入射する円形レーザビームの成す角度が90度に近づく程、長軸方向の寸法が長くなる。このように、一対のプリズム132を回転させると、回折光学素子15及び集光レンズ16に対して光軸がずれるので、その光軸ずれをプリズム移動機構14により修正する。すなわち、制御回路19により、一対のプリズム132の回転位置に基づいてビーム変換ユニット13の平行移動すべき目標位置を決定し、その目標位置までの平行移動量分だけビーム変換ユニット13を平行移動させる。これにより、回折光学素子15及び集光レンズ16に対する光軸ずれを修正することができる。
【0032】
楕円レーザビームは、回折光学素子15に入射して、楕円レーザビームの楕円状断面における長軸方向に対してそれぞれ所定の角度を持った複数の楕円レーザビームに楕円レーザビームを分光する(図2に示すZ部における複数の楕円レーザビーム)。このように複数の楕円レーザビームに分光することにより、高いエネルギーを持つレーザであっても、エネルギーを複数に分割することができ、エネルギーを効率良く加工に用いることができる。
【0033】
この複数の楕円レーザビームは、集光レンズ16を通過することにより、ワーク18上で焦点を結び、ワーク18がレーザ加工される。
【0034】
次に、上述した光学系を用いたレーザ加工装置について説明する。
図3はマルチビーム光学系を用いたレーザ加工装置の構成例である。
半導体ウェーハWは、略円板状に形成されており、表面に格子状に配列された分割予定ラインによって複数の領域に区画され、この区画された領域にIC、LSIなどのデバイス42が形成されている。また、半導体ウェーハWは、貼着テープ43を介して環状フレーム41に支持される。
【0035】
なお、本実施の形態においては、ワークとしてシリコンウェーハなどの半導体ウェーハを例に挙げて説明するが、この構成に限定されるものではなく、半導体ウェーハWに貼着されるDAF(Die Attach Film)などの粘着部材、半導体製品のパッケージ、セラミック、ガラス、サファイヤ(Al)系の無機材料基板、各種電気部品やミクロンオーダーの加工位置精度が要求される各種加工材料をワークとしてもよい。
【0036】
レーザ加工装置20は、加工台21にY軸方向に形成された一対にY軸ガイドレール22a,22bが配設されている。Y軸テーブル23はY軸ガイドレール22a,22bに沿ってY軸方向に移動自在に載置されている。Y軸テーブル23の背面側には、図示しないナット部が形成され、ナット部にボールネジ24が螺合されている。そして、ボールネジ24の端部には、駆動モータ25が連結され、駆動モータ25によりボールネジ24が回転駆動される。
【0037】
Y軸テーブル23上にはY軸方向と直交するX軸方向に形成された一対にX軸ガイドレール26a,26bが配設されている。X軸テーブル27はX軸ガイドレール26a,26bに沿ってX軸方向で移動自在に載置されている。X軸テーブル27の背面側には、図示しないナット部が形成され、ナット部にボールネジ28が螺合されている。そして、ボールネジ28の端部には、駆動モータ29が連結され、駆動モータ29によりボールネジ28が回転駆動される。
【0038】
X軸テーブル27上にチャックテーブル30が設置されている。チャックテーブル30は、テーブル支持部31と、テーブル支持部31の上部に設けられた加工予定ラインであるストリートを持つ半導体ウェーハWを吸着保持するウェーハ保持部32と、環状フレーム41を保持するフレーム保持部33とを備える。テーブル支持部31の内部には、ウェーハ保持部32に半導体ウェーハWを吸着保持させる吸引源が設けられている。
【0039】
また、加工台21には支柱部34が立設されており、支柱部34の上端部からチャックテーブル30の上方に伸びたアーム35にレーザ照射ユニット36が支持されている。レーザ照射ユニット36には、前述した光学系が収納されている。
【0040】
以上のように構成されたレーザ加工装置20において、半導体ウェーハWがチャックテーブル30に載置される。そして、半導体ウェーハWは、図示しない吸引源によりウェーハ保持部32に吸着される。
【0041】
次に、レーザ光線照射ユニット36が駆動し、X軸テーブル27、Y軸テーブル23により位置調整されてレーザ加工が開始される。レーザ光線照射ユニット36は、ストリートに向けてレーザビームを照射する。このとき、レーザ光線照射ユニット36の上記光学系は、図2に示すように1ライン状に複数の楕円形状のスポットを形成し、加工進行方向と楕円状断面の長軸方向とを一致させている。また、楕円形状のスポットの短軸方向と長軸方向で同じ位置で焦点を結ぶ状態でワークへのレーザ加工が行われる。X軸テーブル27、Y軸テーブル23により、半導体ウェーハWのストリートに沿ってレーザ加工位置が移動し、分割された楕円形状のスポットでエネルギー分割されると共に、さらに各スポットが楕円状断面の長軸方向へエネルギー分散した状態で加工される。
【0042】
このようなレーザ加工装置においては、上記光学系で、楕円形状のスポットの短軸方向と長軸方向とで対物レンズに入射する角度を同じとすることができ、楕円形状のスポットの短軸方向と長軸方向で同じ位置で焦点を結ぶようにすることができる。その結果、各加工ラインに沿って均一な加工を効率良く行うことができ、しかも加工品質を向上させることができる。
【0043】
また、本構成のレーザ加工装置は、上記したライン加工だけでなく、ビアホール加工の様な穴あけ加工、ウェーハの一部を陥没させる様な面加工にも適用できる。
【0044】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であってこの実施の形態に制限されるものではない。本発明の範囲は、上記した実施の形態のみの説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、半導体ウェーハなどの被加工物を、楕円ビームを用いてレーザ加工するレーザ加工装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
11 レーザ光源
12 ミラー
13 ビーム変換ユニット
14 プリズム移動機構
15 回折光学素子
16 集光レンズ
17 保持テーブル
18 被加工物(ワーク)
19 制御回路
20 レーザ加工装置
30 チャックテーブル
W 半導体ウェーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームを発するレーザ光源と、
前記レーザ光源から発せられた前記レーザビームの光路上に配設され、前記レーザビームを、断面形状が楕円形状である楕円レーザビームに変換する一対のプリズムと、
前記一対のプリズムに入射する該レーザビームの光軸方向に垂直に交わる方向を回転軸として前記一対のプリズムをそれぞれ互いに逆回転させ、前記一対のプリズムによって変換される前記楕円レーザビームの楕円状断面における長軸方向の長さを変化させるプリズム回転機構と、
前記一対のプリズムによって変換される前記楕円レーザビームの楕円状断面における長軸方向に沿って前記一対のプリズムを平行移動させるプリズム移動機構と、
前記楕円レーザビームを被加工物に向けて集光する集光レンズと、
を含むことを特徴とする光学系。
【請求項2】
前記一対のプリズムと前記集光レンズとの間に配設される回折光学素子を含み、
前記回折光学素子は、
前記回折光学素子に入射された前記楕円レーザビームの楕円状断面の長軸方向に対してそれぞれ所定の角度を持った複数の楕円レーザビームに前記楕円レーザビームを分光することを特徴とする請求項1記載の光学系。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の光学系と、被加工物を保持する保持テーブルと、を備え、
前記光学系で変換された楕円レーザビームを前記被加工物に照射して加工することを特徴とするレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−25279(P2011−25279A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173242(P2009−173242)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】