説明

光学素子、偏光板、位相差板、照明装置、および液晶表示装置

【課題】正面及び斜めからの観察において同様の色バランスがとれた画像を表示するために用いる、ハンドリング性等に優れた光学素子を提供する。
【解決手段】 透明基材と、該透明基材の上に形成された選択反射層とを有する、光源を備える装置に用いる光学素子であって、
該透明基材が、熱可塑性樹脂を含んでなり、紫外線吸収剤が厚さ方向中央部に偏在しており且つ平均厚さが100μm未満のものであり、
入射角0度の光線を反射する波長帯域の下限λLが、光源が発する光の中で600nm〜700nmの波長帯域で最大発光強度を示す光の波長λR1よりも長い、光学素子を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子、偏光板、位相差板、照明装置、および液晶表示装置に関する。具体的には、正面及び斜めからの観察において同様の色バランスがとれた画像を表示するために用いる光学素子、偏光板、位相差板、照明装置、および液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、光源と、二枚の二色性偏光子と、この二色性偏光子に挟まれて配置された液晶セルとを含むものである。冷陰極管、熱陰極管、LED(発光ダイオード)、EL(エレクトロルミネセンス)などの光源からの光は、青色光(波長410〜470nm)、緑色光(波長520〜580nm)、及び赤色光(波長600〜660nm)がバランスされ白色発光する。該光は一枚目の二色性偏光子で直線偏光に変換される。該直線偏光は、液晶セルにおける電圧印加又は電圧無印加の違いによって、位相がそのまま又は反転された直線偏光に変換される。一枚目の二色性偏光子の偏光透過軸と二枚目の二色性偏光子(検光子ともいう。)の偏光透過軸が直角の場合、液晶セルで位相が反転された直線偏光は二枚目の二色性偏光子を透過し、液晶セルで位相がそのままの直線偏光は二枚目の二色性偏光子を通過できない構成となる。一般に、入射角0度から入射する光に対して位相を反転できる(すなわち、位相を二分の一波長遅らせる)ものであっても、斜めから入射する光に対しては、位相の遅延をちょうど二分の一波長にすることができず、歪みを生じる。この歪みの度合いは波長によって異なってくる。その結果、正面から観察したときのカラー画像の色合いと、斜めから観察したときのカラー画像の色合いが異なる。
【0003】
また、輝度を向上させるために反射性偏光子が使われることがある。反射性偏光子では、斜めから入射する光の選択反射帯域が真正面から入射する光の選択反射帯域に比べて短波長側にシフトする。正面から入射する光について可視光領域全体を反射できる反射性偏光子であっても、斜めから入射する光については長波長の光(赤色光)を反射できないことがある。このようなことから、液晶表示装置では、一般に、正面から観察したときのカラー画像の色合いと、斜めから観察したときのカラー画像の色合いが異なる。
【0004】
この観察角度による色合いの相違を解消するために、特許文献1では、垂直入射光に対して波長λ1〜λ2(λ1<λ2)に選択反射帯域を示すコレステリック液晶層からなり、組み合されて使用される光源の発光スペクトルの極大波長λ0に対してλ0<λ1を満たすコリメータをバックライトシステムに配置することが提案されている。特許文献1に記載のコリメータは、様々な角度で進む光を、垂直方向に進む光だけに揃える機能を有するものである。従って、斜めから入射する光線はこのコリメータによって反射され透過しない。
【0005】
また特許文献2では、法線方向の可視光領域の入射光に対しては透過特性を有し、赤外域に反射波長帯域を有し、法線方向に対する入射角が大きくなるにしたがい、反射波長帯域が短波長側に変化する赤外反射層(B)を照明装置に配置することが提案されている。特許文献2には赤外反射層(B)として、入射角45度の波長710nm、640nm又は610nmの光の透過率が10%以下となるものが開示されている。したがって、斜めから入射する赤色光は赤外反射層(B)によってほぼ完全に反射又は吸収されてしまう。
【0006】
【特許文献1】特開2002−169026号公報(米国公開公報2002/0036735)
【特許文献2】特開2004−309618号公報
【0007】
ところで、液晶表示装置等に用いられる偏光板は、二色性偏光子と保護フィルムとからなる積層体である。この偏光板を構成する二色性偏光子としては、ポリビニルアルコールを溶液流延法により製膜したフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させ、ホウ酸溶液中で延伸させたフィルムが通常使用されている。
【0008】
偏光板を構成する保護フィルムとしてトリアセチルセルロース(TAC)フィルムが広く用いられている。しかし、トリアセチルセルロースフィルムは、耐熱性、耐湿性が十分でなく、高温もしくは高湿雰囲気下で長時間使用すると、偏光度が著しく低下したり、偏光子と保護フィルムとが分離したり、TACの加水分解によって透明性が低下したりする。その結果、偏光板の性能が低下し、液晶表示装置(LCD)に用いた場合には画質の低下が起こる。
【0009】
また、特許文献3にはノルボルネン系樹脂からなる積層フィルムを保護フィルムとして偏光子に積層した偏光板が提案されている。この保護フィルムは、中間層の両側に表面層が積層された3層積層体からなり、少なくとも中間層には紫外線吸収剤が配合されており、中間層の紫外線吸収剤濃度が両表面層より高く設定されている。特許文献3によれば、ノルボルネン系樹脂に紫外線吸収性を付与することにより、液晶や偏光子を紫外線から保護でき、一方の層または両側の表面層の紫外線吸収剤濃度を低くすることにより、押出成形時にロール汚れのない成形が可能となる、とされている。
【特許文献3】特開2002−249600号公報
【0010】
また、表示装置、特に液晶表示装置は、テレビ、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末、携帯電話機等各種電子機器の情報表示手段として利用されている。表示装置の表面には、予期せぬ機械的外力を受けたり、長時間太陽光の下に晒されたりなどして、様々なストレスが加わることが多い。従来の保護層を積層した偏光板を備える表示装置では、その表示面に使用に伴って多数の傷が付き、視認性、外観性を損なう事態が生じている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、正面及び斜めからの観察において同様の色バランスがとれた画像を表示するために用いる光学素子、偏光板、位相差板、照明装置、および液晶表示装置を提供することにある。具体的には、入射角度に応じて透過率などの特性が適切に変化するような光学素子、偏光板、位相差板、照明装置、および液晶表示装置を提供することにある。また、本発明の目的は、視認性、耐候性、紫外線透過防止効果、及び偏光子と保護層との密着性に優れ、高温高湿下でも高い偏光度を維持できる光学素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記特許文献に開示されている液晶表示装置を正面から観察した場合には、青色、緑色及び赤色が良くバランスした画像が得られるが、斜めから観察した場合には、黒表示時に青みを帯びた画像になってしまうことに気付いた。そして、この原因は、上記特許文献1及び2で用いているコリメータ又は赤外反射層(B)が斜めから入射する赤色光を遮断しすぎているからであることに思い至った。
【0013】
そこで、本発明者は、透明基材の上に選択反射層を形成して得られた、光源の600nm〜700nmの波長域中で最大発光強度を示す光の波長λR1よりも長い波長の帯域(λL〜λH)に入射角0度の光を反射する帯域を有する光学素子を、液晶表示装置の照明装置に備えたところ、正面及び斜めからの観察において同様の色バランスがとれた画像を表示できることを見出した。これらの知見に基づいて、本発明者はさらに検討を加え、前記透明基材として、紫外線吸収剤が厚さ方向中央部に偏在しており且つ平均厚さが100μm未満であるものを用いると、耐候性に優れた液晶表示装置が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0014】
かくして本発明は、以下のものを含む。
(1) 透明基材と、該透明基材の上に形成された選択反射層とを有する、光源を備える装置に用いる光学素子であって、
前記透明基材が、熱可塑性樹脂を含んでなり、紫外線吸収剤が厚さ方向中央部に偏在しており且つ平均厚さが100μm未満のものであり、
入射角0度の光線を反射する波長帯域の下限λLが、光源が発する光の中で600nm〜700nmの波長帯域で最大発光強度を示す光の波長λR1よりも長い、光学素子。
(2) 透明基材が、
紫外線吸収剤と熱可塑性樹脂とからなる中間層1、
該中間層1の一方の面に積層されるガラス転移温度(Tg)100℃以上のアクリル系樹脂からなる表面層2、及び
該中間層1のもう一方の面に積層されるガラス転移温度(Tg)100℃以上のアクリル系樹脂からなる表面層3
を有する積層体からなるものである、前記の光学素子。
(3) 入射角60度における波長600nm〜700nmの光の平均透過率が40%以上80%以下である、前記の光学素子。
(4) 入射角0度における波長600nm〜700nmの光の平均透過率が60%以上であり、
入射角0度における波長600nm〜700nmの光の平均透過率が入射角60度における波長600nm〜700nmの光の平均透過率より大きい前記光学素子。
(5) 入射角60度における、波長600nm〜700nmの光の平均透過率が50%以上80%以下である前記光学素子。
(6) 選択反射層がコレステリック規則性を持つ樹脂層を含む、前記光学素子。
【0015】
(7) 選択反射層が、コレステリック規則性を持つ樹脂層を含み、
該樹脂層のカイラルピッチが400nm以上であり、且つ
入射角0度における選択反射帯域での最大反射率が10%以上40%以下である、前記光学素子。
(8) 入射角0度における選択反射帯域で最大反射率を示す波長の光を入射角60度で入射したときの反射率が、入射角0度における前記最大反射率の50%以上90%以下である、前記光学素子。
(9) 入射角60度における波長600nm〜700nmの光の平均反射率が20%以上60%以下である、前記光学素子。
【0016】
(10) 前記光学素子と、直線偏光子とを積層させた偏光板。
(11) 前記光学素子と、位相差素子とを積層させた位相差板。
(12) 光反射素子、光源、光拡散素子、及び前記光学素子が、この順に配置された照明装置。
(13) 光反射素子、光源、光拡散素子、及び前記偏光板が、この順に配置された偏光照明装置。
(14) 光反射素子、光源、光拡散素子、前記光学素子、直線偏光子、液晶パネル及び検光子が、この順に配置された液晶表示装置。
(15) 光源が冷陰極管、熱陰極管、発光ダイオード、及びエレクトロルミネセンスから選択されるものである前記液晶表示装置。
【発明の効果】
【0017】
従来の液晶表示装置では、斜めから観察したときに、赤みを帯びることが多かった。それは、正面から観察したときの青色、緑色及び赤色の光量バランスに対して、斜めから観察したときの赤色の光量が青色及び緑色の光量に比べ相対的に高くなるからである。一方、特許文献1及び2のように斜めから入射する波長710nm、640nm又は610nmの光の透過率を10%以下にしてしまうと、正面から観察したときの青色、緑色及び赤色の光量バランスに対して、斜めから観察したときの赤色の光量が青色及び緑色の光量に比べ相対的に低くなりすぎてしまう。その結果、斜めから液晶表示装置を観察したときに、青みや赤みを帯びたり、暗くなったりする傾向にあった。
【0018】
本発明の好ましい態様の光学素子は、入射角60度で入射する波長600nm〜700nmの光を40%以上80%以下の範囲で透過させるので、これを、光源を有する装置に据え付けると、斜めから観察したときの青色、緑色及び赤色の色バランスが、正面から観察したときの青色、緑色及び赤色のバランスと同様のバランスに調整できる。その結果、斜めから観察したときに、赤みを帯びたり、青みを帯びたりすることがなくなり、色再現範囲を広くできる。
【0019】
本発明の一実施態様の光学素子は、カイラルピッチ400nm以上であるコレステリック樹脂層を有し、且つ入射角0度における選択反射帯域での最大反射率が10%以上40%以下である。コレステリック樹脂層は入射角が大きくなると選択反射帯域が短波長側にシフトするので、本発明の光学素子を光源を有する装置に据え付けると、斜めから観察したときの青色、緑色及び赤色の色バランスが、正面から観察したときの青色、緑色及び赤色のバランスと同様のバランスに調整できる。その結果、斜めから観察したときに、赤みを帯びたり、青みを帯びたりすることがなくなり、色再現範囲を広くすることができる。
【0020】
本発明の光学素子は、上記特性を有する他、紫外線などの光に対する耐候性にも優れるので、画質の劣化が起こりにくい液晶表示装置を与えることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】光源の発光スペクトルの一例を示す図。
【図2】選択反射帯域を説明するための図。
【図3】本発明の光学素子(円偏光反射板)の一例を示す図。
【図4】本発明の液晶表示装置の一例の構成を示す図。
【符号の説明】
【0022】
1:透明基材
2:配向膜
3:コレステリック樹脂層
11:偏光子Y(検光子)
12:液晶セル
13:偏光子X
17:本発明の光学素子(円偏光反射板)
18:光拡散板
19:冷陰極管
20:反射板
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の光学素子は、熱可塑性樹脂を含んでなり、紫外線吸収剤が厚さ方向中央部に偏在しており且つ平均厚さが100μm未満である透明基材と、該透明基材の上に形成された選択反射層とを有し、
入射角0度の光線を反射する波長帯域の下限λLが、光源が発する光の中で600nm〜700nmの波長帯域で最大発光強度を示す光の波長λR1よりも長い光学素子である。
なお、本発明の光学素子は、光源とともに用いられる部材であって、この光源の光出射側に配置されるものである。
【0024】
本発明の光学素子は、光線を反射する波長帯域(以下、選択反射帯域ということがある。)がある。図2の実線30は入射角0度における反射率の波長依存性を示すものである。選択反射帯域は実線30のように、特定波長域(λLからλHの間の波長域)において反射率が他の部分よりも大きくなっている部分である。図2では選択反射帯域と非選択反射帯域との境界でくっきりと反射率が変化し、グラフが矩形又は台形状を成しているが、反射率が緩やかに変化して、例えば、グラフが放物線のような緩やかな山形形状を成していても良い。ここで選択反射帯域の下限λL及び上限λHは選択反射帯域における最大反射率の1/2倍の反射率を示す波長の中で、それぞれ最も短いもの及び最も長いものである。
【0025】
図1は、液晶表示装置に使用されている光源(冷陰極管)の発光スペクトルの一例を示すものである。λR1は光源が発する光の中で600nm〜700nmの波長帯域で最大発光強度を示す光の波長である。
前記の光線を反射する帯域(選択反射帯域)は、入射角によって、波長範囲が変化する。本発明では、入射角0度の光線を反射する帯域の下限波長λLが、前記波長λR1よりも長い。
【0026】
さらに、本発明の光学素子は、λLが、光源が発する光の中で630〜700nmの波長帯域で最大発光強度を示す光の波長λR2よりも長いことが好ましい。λLがより長い波長になることにより、正面観察したときの色バランスを良くでき、又は色度域に対する色再現範囲の面積比の値を高くすることができる。
【0027】
図1ではλR1は約610nmであるので、λLは610nmよりも長い波長にすることが好ましい。図2の実線30で示す選択反射帯域のλLは約680nmである。選択反射帯域の幅(λHとλLとの差)は、好ましくは50nm以上、特に好ましくは80nm以上である。
【0028】
入射角0度における選択反射帯域の最大反射率は、好ましくは10%以上40%以下、より好ましくは15%以上35%以下である。最大反射率が上記範囲にあると、液晶表示装置の表示画面を斜めから観察した場合において、正面から観察した場合と同様の色バランスがとれた画像を得ることができる。最大反射率が低いと斜めから観察したときに画像が赤みを帯びる傾向になる。最大反射率が高いと斜めから観察した時に画像が青みを帯びる傾向になる。
【0029】
本発明の光学素子は、入射角0度における選択反射帯域で最大反射率を示す波長の光を入射角60度で入射したときの反射率が、入射角0度における前記最大反射率の、好ましくは50%以上90%以下、より好ましくは60%以上85%以下である。
【0030】
本発明の光学素子は、入射角0度における波長600nm〜700nmの光の平均透過率が、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。さらに入射角0度における波長600nm〜700nmの光の平均透過率が、後記の入射角60度における波長600nm〜700nmの光の平均透過率より大きいことが好ましい。具体的には、入射角60度における波長600nm〜700nmの光の平均透過率が、入射角0度における波長600nm〜700nmの光の平均透過率の94%以下であることが好ましい。
【0031】
青色光及び緑色光の入射角0度における光線透過率は、赤色光に対する光量バランスを考慮して適宜選択できる。入射角0度における青色光(波長400nm〜500nm)及び緑色光(波長500nm〜600nm)の平均透過率は、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。なお、本明細書において平均透過率とは、10nmの波長間隔で測定した透過率の算術平均値である。
【0032】
前記の選択反射帯域は、光線の入射角度が大きくなると短波長側にシフトすることが好ましい。具体的には入射角60度において選択反射帯域が波長λR1又はλR2を含むようになることが好ましい。入射角が大きくなると選択反射帯域は短波長側にシフトする。これによって、入射角60度における波長600nm〜700nmの光の平均透過率を下げることができる。
【0033】
図2の破線31は、入射角60度における選択反射帯域の一例を示すものである。図2では選択反射帯域の下限が約610nmになっている。
本発明の光学素子は、その入射角60度における波長600nm〜700nmの光の平均透過率が、好ましくは40%以上80%以下、より好ましくは50%以上80%以下である。光線透過率が上記範囲未満になると、斜めから観察したときの表示画像が青みを帯びる傾向になる。光線透過率が上記範囲を超えると斜めから観察したときの表示画像が赤みを帯びる傾向になる。
【0034】
本発明の光学素子では、入射角60度における青色光(波長400nm〜500nm)及び緑色光(波長500nm〜600nm)の平均透過率が、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上である。
また、入射角60度における波長600nm〜700nmの光の平均透過率は、入射角60度における青色光(波長400nm〜500nm)及び緑色光(波長500〜600nm)の平均透過率よりも小さいことが好ましく、具体的には入射角60度における青色光(波長400〜500nm)及び緑色光(波長500nm〜600nm)の平均透過率よりも5〜30%小さい方が好ましい。
【0035】
本発明の光学素子は、入射角60度における波長600nm〜700nmの光の平均反射率が、好ましくは20%以上60%以下、より好ましく25%以上50%以下である。
【0036】
〔透明基材〕
本発明の光学素子を構成する透明基材は、紫外線吸収剤が厚さ方向中央部に偏在している。また、透明基材は、全体の平均厚さが100μm未満である。
透明基材を構成する材料は光学的に透明な熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。透明な熱可塑性樹脂としては、脂環式構造含有重合体樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等の鎖状オレフィン重合体、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アモルファスポリオレフィン、変性アクリルポリマー、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、アクリル系樹脂が、透明性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性等の観点から好ましい。
【0037】
本発明に用いられる好適な透明基材は、表面層2、中間層1、及び表面層3が積層されたものである。
表面層2、中間層1、及び表面層3のうち、少なくとも一層は引張弾性率が3.0GPa以上である樹脂を含む材料から形成されることが好ましい。引張弾性率が3.0GPa以上である樹脂を用いることによって透明基材の剛性が向上する。
中間層1は、紫外線吸収剤と熱可塑性樹脂とからなる層である。
表面層2は、該中間層1の一方の面に積層され、ガラス転移温度(Tg)100℃以上のアクリル系樹脂からなる層である。
表面層3は、該中間層1のもう一方の面に積層され、ガラス転移温度(Tg)100℃以上のアクリル系樹脂からなる層である。
【0038】
表面層2および表面層3に用いられるアクリル系樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上のアクリル系樹脂である。アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)のより好ましい範囲は100℃〜170℃であり、さらに好ましい範囲は100℃〜140℃である。アクリル系樹脂のガラス転移温度が上記範囲よりも小さい場合には表面硬度が不十分な傾向になる。
なお、表面層2に用いるアクリル系樹脂と、表面層3に用いるアクリル系樹脂とは、同じ樹脂であってもよいし、異なる樹脂であってもよい。
【0039】
上記アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする重合体樹脂が好ましく用いられる。この重合体樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルのみからなる単独重合体でも共重合体でもよく、また、(メタ)アクリル酸エステルとこれと共重合可能な単量体との共重合体であっても良い。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。同様に、(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを意味する。
【0040】
アクリル系樹脂の主成分として使用する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜15のアルカノール及びシクロアルカノールから誘導される構造のものが好ましい。より好ましくは、炭素数1〜8のアルカノールから誘導される構造のものである。炭素数が多すぎる場合は、得られる脆質フィルムの破断時の伸びが大きくなりすぎる。
【0041】
この(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸n−ドデシル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−デシル、メタクリル酸n−ドデシルなどを挙げることができる。
【0042】
また、これらの(メタ)アクリル酸エステルは、水酸基、ハロゲン原子等の任意の置換基を有していてもよい。そのような置換基を有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸グリシジル等を挙げることができる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0043】
本発明に使用するアクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルの含有量が、好ましくは50重量%以上、より好ましくは85重量%以上、特に好ましくは90重量%以上のものである。
【0044】
(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体には、特に限定はないが、上述した(メタ)アクリル酸エステル以外のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体、さらに、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体、アルケニル芳香族単量体、共役ジエン単量体、非共役ジエン単量体、シアン化ビニル単量体、不飽和カルボン酸アミド単量体、カルボン酸不飽和アルコールエステル、オレフィン単量体などを挙げることができる。
【0045】
上述した(メタ)アクリル酸エステル以外のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体の具体例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジメチルなどを挙げることができる。
【0046】
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体は、モノカルボン酸、多価カルボン酸、多価カルボン酸の部分エステル及び多価カルボン酸無水物のいずれでもよく、その具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノエチル、フマル酸モノn−ブチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸などを挙げることができる。
【0047】
アルケニル芳香族単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびジビニルベンゼンなどを挙げることができる。
【0048】
共役ジエン単量体の具体例としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、シクロペンタジエンなどを挙げることができる。非共役ジエン単量体の具体例としては、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンなどを挙げることができる。
【0049】
シアン化ビニル単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどを挙げることができる。
【0050】
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体の具体例としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどを挙げることができる。
カルボン酸不飽和アルコールエステル単量体の具体例としては、酢酸ビニルなどを挙げることができる。
オレフィン単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテンなどを挙げることができる。
【0051】
(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体としては、アルケニル芳香族単量体が好ましく、なかでもスチレンが好ましい。
【0052】
本発明において使用するアクリル系樹脂において、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体の含有量は、50重量%以下、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
【0053】
本発明において使用するアクリル系樹脂の好ましい具体例としては、メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル/アクリル酸ブチル/スチレン共重合体、メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸メチル/スチレン/アクリル酸ブチル共重合体などを挙げることができる。アクリル系樹脂は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。本発明では、これらのうち、ポリメタクリレート樹脂が好ましく、中でもポリメチルメタクリレート樹脂がより好ましい。
【0054】
アクリル系樹脂の分子量は、特に限定されないが、通常、重量平均分子量で50,000〜500,000である。分子量がこの範囲内にあると、均質なフィルムを溶融流延法により容易に作ることができる。
【0055】
本発明において使用するアクリル系樹脂は、引張試験における破断時伸びが10〜180%の範囲内にあるのが好ましく、50〜170%の範囲内にあるのがより好ましい。破断時伸びが上記範囲内にあるときに、脆質フィルムのカス上げ性が良好となる。アクリル系樹脂として2種類以上を併用するときは、混合物の破断時伸びが前記範囲内にあることが好ましい。破断時伸びは、JIS K 7127の規定により、試験片タイプ1B(W10,L100,t0.1mm)、速度5mm/分の条件で求められた値である。
【0056】
透明基材は、表面層2及び表面層3のそれぞれの厚さが、好ましくは10μm以上であり、さらに好ましくは20〜60μmである。各表面層の厚さが上記範囲内にあることにより、表面鉛筆硬度と可撓性とを十分に付与できる。
【0057】
前記表面層2および表面層3のうちの少なくとも一方の表面硬度は、本発明の目的から鉛筆硬度1H以上であることが好ましい。この鉛筆硬度の調整は、厚さや組成によって行うことができる。
【0058】
中間層1を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、および脂環式オレフィンポリマーなどが挙げられる。これらのうちアクリル系樹脂が好ましい。
【0059】
脂環式オレフィンポリマーとしては、特開平05−310845号公報や米国特許第5179171号公報に記載されている環状オレフィンランダム多元共重合体;特開平05−97978号公報や米国特許第5202388号公報に記載されている水素添加重合体;特開平11−124429号公報(国際公開99/20676号公報)に記載されている熱可塑性ジシクロペンタジエン系開環重合体及びその水素添加物等が挙げられる。
【0060】
中間層1を構成する熱可塑性樹脂は、重量平均分子量(Mw)が、通常5,000〜100,000、好ましくは8,000〜80,000、より好ましくは10,000〜50,000である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、透明基材の機械的強度及び成形加工性が高度にバランスされ好適である。
【0061】
熱可塑性樹脂の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は特に制限されないが、通常1.0〜10.0、好ましくは1.0〜4.0、より好ましくは1.2〜3.5の範囲である。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、溶媒としてシクロヘキサン(樹脂が溶解しない場合はトルエン)を用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す。)で測定した標準ポリイソプレン換算の値である。
【0062】
熱可塑性樹脂は、その分子量2,000以下の樹脂成分(すなわち、オリゴマー成分)の含有量が、通常5重量%以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下である。オリゴマー成分の量が多いと積層体を製造する際に、中間層1、表面層2及び表面層3それぞれに微細な凹凸が発生したり、各層において厚さむらが生じたりして面精度が悪くなる可能性がある。
【0063】
オリゴマー成分の量を低減するためには、重合触媒や水素化触媒の選択;重合反応や水素化反応などの反応条件;樹脂を成形用材料としてペレット化する工程における温度条件;などを最適化すればよい。オリゴマー成分の量は、シクロヘキサン(樹脂が溶解しない場合はトルエン)を用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0064】
上記中間層1には紫外線吸収剤が含有されている。紫外線吸収剤は中間層1のみに含有させても良いし、表面層2及び/又は表面層3にも含有させても良い。表面層2及び/又は表面層3にも含有させる場合は、表面層2及び/又は表面層3中の紫外線吸収剤含有量は、中間層1中の含有量よりかなり少なくすることが重要である。
【0065】
本発明で用いる紫外線吸収剤は、特に限定されない。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等の公知のものが挙げられる。これらの中でも、2,2’−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン等が好適である。これらの中でも、特に2,2’−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)が好ましい。
【0066】
上記紫外線吸収剤を含有する中間層1(場合によっては表面層2,3)を形成する方法としては、紫外線吸収剤を熱可塑性樹脂に配合し、その配合物で形成する方法;紫外線吸収剤を高濃度に含有する熱可塑性樹脂のマスターバッチと、紫外線吸収剤を含有しない熱可塑性樹脂とを用いて形成する方法;中間層1の溶融押出成形時に溶融樹脂に直接供給する方法などが挙げられ、いずれの方法が採用されてもよい。
【0067】
中間層1に含有される紫外線吸収剤の量は、中間層1を構成する熱可塑性樹脂100重量部に対して0.5〜5重量部が好ましく、1.0〜5重量部がさらに好ましい。紫外線吸収剤の含有量が上記範囲内にあることにより、偏光板の色調を悪化させること無く紫外線を効率的に遮断することができ、長期使用時の偏光度の低下を防ぐことができる。中間層1の紫外線吸収剤の含有量が0.5重量部未満であると、波長370nm及び380nmにおける光線透過率が大きくなり、偏光板の偏光度が低下傾向になる。
【0068】
また、この中間層1に含有される紫外線吸収剤の濃度ばらつきが全面で0.1%以下であることが望ましい。紫外線吸収剤の濃度のばらつきをこの範囲に抑えると、紫外線による劣化が均一に起こり、液晶表示装置に実装したときの色調ムラが起こりにくくなるからである。中間層1における紫外線吸収剤の濃度のばらつきが全面で0.1%を超えると、色調のムラがはっきりと視認でき、色調不良の傾向になる。また、長期使用後には紫外線による劣化が不均一となり、色調不良がさらにひどくなる傾向になる。
【0069】
前述の中間層1における紫外線吸収剤の濃度のばらつきは、以下の手順で測定する。
まず、分光光度計により積層体の紫外線透過率を測定する。次に、接触式厚さ計により積層体の厚さを測定する。次いで、測定部の断面を光学顕微鏡により観察し、表面層と中間層1の厚さの比を求め、中間層1の厚さを求める。そして、紫外線透過率と厚さから紫外線吸収剤の濃度を下記式(A)から算出する。
C=−log10(0.01T)/K/L (A)
式(A)において、Cは紫外線吸収剤の濃度(重量%)、Tは光線透過率(%)、Kは吸光係数(−)、Lは積層体の厚さ(μm)である。
【0070】
以上の操作を積層体の縦方向及び横方向で一定間隔毎に行い、これらの測定値の算術平均値をとり、これを平均濃度Caveとする。そして、測定した濃度Cの内最大値をCmax、最小値をCminとして、以下の式から算出する。
濃度のばらつき(%)=(Cave−Cmin)/Cave×100、または
(Cmax−Cave)/Cave×100 のうちの大きい方
【0071】
前記中間層1における紫外線吸収剤の濃度のばらつきを全面で0.1%以下とするための手段としては、(1)乾燥させた熱可塑性樹脂と、紫外線吸収剤とを混合させる。次いで、その混合物を押出機に接続されたホッパーへ投入し、単軸押出機へ供給して溶融押出する方法;(2)乾燥機付きホッパーに熱可塑性樹脂を投入する。また別の投入口から紫外線吸収剤を投入する。前記熱可塑性樹脂及び紫外線吸収剤をそれぞれフィーダーで計量しながら二軸押出機へ供給して溶融押出する方法;が挙げられる。
【0072】
中間層1の厚さは10〜40μmであることが好ましい。中間層1の厚さが10μm未満であると、層間の界面が荒れやすく、平坦性、平滑性などの面状態が悪化傾向になる。一方、中間層1の厚さが40μmを超えると、偏光板保護フィルムとして使用した場合に、偏光板全体が厚くなる。
【0073】
中間層1の厚さは、市販の接触式厚さ計を用いて、総厚を測定し、厚さ測定部分を切断し断面を光学顕微鏡で観察して、中間層1と表面層との厚さ比を求めて、その比率より中間層1の厚さを計算する。以上の操作を積層体の横方向及び縦方向において一定間隔毎に行い平均値やばらつきを求めた。
【0074】
中間層1の厚さのばらつきは、全面で1μm以下であることが好ましい。この中間層1の厚さのばらつきが全面で1μm以下であることにより、色調のばらつきが小さくなる。また、長期使用後の色調変化も均一となるため、長期使用後の色調ムラも起こらない。
【0075】
中間層1の厚さのばらつきは、上記で測定した測定値の算術平均値を基準厚さTaveとし、測定した厚さTの内の最大値をTmax、最小値をTminとして、以下の式から算出する。
厚さのばらつき(μm)=Tave−Tmin、及び
max−Tave のうちの大きい方。
【0076】
本発明においては、表面層2及び/又は表面層3にも紫外線吸収剤を含有させることもあるが、その場合の含有量は、表面層を構成するアクリル系樹脂100重量部に対して好ましくは0.5重量部以下である。この含有量は、より具体的には、前記中間層1中の紫外線吸収剤の含有量を勘案して、透明基材全体として必要な紫外線透過防止性能を確保するように、決定する。
【0077】
本発明においては、透明基材の表面層2及び3並びに中間層1のどの層にも、紫外線吸収剤以外の他の配合剤を含有させてもよい。他の配合剤としては、格別限定はないが、無機微粒子;酸化防止剤、熱安定剤、近赤外線吸収剤等の安定剤;滑剤、可塑剤等の樹脂改質剤;染料や顔料等の着色剤;帯電防止剤等が挙げられる。これらの配合剤は、単独で、あるいは2種以上を組み合せて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。
【0078】
透明基材は、波長380nmにおける光線透過率が4%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。また、透明基材は、波長370nmにおける光線透過率が1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。更に、透明基材は、波長420〜780nmにおける光線透過率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
【0079】
透明基材の波長380nm又は波長370nmにおける光線透過率が上記範囲を超えると紫外線により偏光子が変化し偏光度が低下傾向になる。波長420〜780nmにおける光線透過率が上記範囲未満であると、液晶表示装置などの表示装置に実装したとき、特に長期間使用した場合の輝度が低下傾向になる。
上記光線透過率は、JIS K0115に準拠して、分光光度計を用いて測定することができる。
透明基材の厚さは、好ましくは、30μm〜80μmである。
【0080】
透明基材を得る方法は特に限定されないが好ましくは、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出成形法;ドライラミネーション等のフィルムラミネーション成形法、及び中間層1を構成するフィルムに対して表面層を構成する樹脂溶液をコーティングするようなコーティング成形法などの公知の方法が適宜利用され得る。中でも、製造効率や、フィルム中に溶剤などの揮発性成分を残留させないという観点から、共押出成形法が好ましい。
【0081】
共押出成形法の中でも、共押出Tダイ法が好ましい。さらに共押出Tダイ法にはフィードブロック方式、マルチマニホールド方式が挙げられるが、中間層1の厚さのばらつきを少なくできる点でマルチマニホールド方式がさらに好ましい。
【0082】
透明基材を得る方法として、共押出Tダイ法を採用する場合、Tダイを有する押出機における熱可塑性樹脂の溶融温度は、この熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも80〜180℃高い温度にすることが好ましく、より好ましくはガラス転移温度よりも100〜150℃高い温度にする。押出機での溶融温度が過度に低いと、熱可塑性樹脂の流動性が不足するおそれがあり、逆に溶融温度が過度に高いと、樹脂が劣化する可能性がある。
【0083】
中間層1の厚さのばらつきを全面で1μm以下とするためには、(1)押出機内に目開きが20μm以下のポリマーフィルターを設ける;(2)ギヤポンプを5rpm以上で回転させる;(3)ダイス周りに囲い手段を配置する;(4)エアギャップを200mm以下とする;(5)フィルムを冷却ロール上にキャストする際にエッジピニングを行う;(6)押出機として二軸押出機又はスクリュー形式がダブルフライト型の単軸押出機を用いる;のすべてを行う必要がある。前記(1)〜(6)の1つでも実施しないと、中間層1の厚さのばらつきを全面で±1μm以内にすることは難しい。
【0084】
押出温度は、使用する熱可塑性樹脂に応じて適宜選択すればよい。押出機内の温度で、樹脂投入口はTg〜(Tg+100)℃、押出し機出口は(Tg+50)〜(Tg+170)℃、ダイス温度は(Tg+50)℃〜(Tg+170)℃とするのが好ましい。ここでTgは押出樹脂のガラス転移温度である。
【0085】
透明基材を得る方法として溶融押出法を用いる場合には、ダイスの開口部から押出されたシート状の溶融樹脂を冷却ドラムに密着させる。溶融樹脂を冷却ドラムに密着させる方法は、特に制限されず、例えば、エアナイフ方式、バキュームボックス方式、静電密着方式などが挙げられる。
【0086】
冷却ドラムの数は特に制限されないが、通常は2本以上である。また、冷却ドラムの配置方法としては、例えば、直線型、Z型、L型などが挙げられるが特に制限されない。またダイスの開口部から押出された溶融樹脂の冷却ドラムへの通し方も特に制限されない。
【0087】
本発明においては、冷却ドラムの温度により、押出されたシート状の熱可塑性樹脂の冷却ドラムへの密着具合が変化する。冷却ドラムの温度を上げると密着はよくなるが、温度を上げすぎるとシート状の熱可塑性樹脂が冷却ドラムから剥がれずに、ドラムに巻きつく不具合が発生する恐れがある。そのため、冷却ドラム温度は、好ましくはダイスから押し出す熱可塑性樹脂のガラス転移温度をTgとすると、(Tg+30)℃以下、さらに好ましくは(Tg−5)℃〜(Tg−45)℃の範囲にする。そうすることにより滑りやキズなどの不具合を防止することができる。
【0088】
また、透明基材の製造方法において、残留溶剤の含有量を少なくすることが重要になるが、そのための手段としては、(1)熱可塑性樹脂自体の残留溶剤を少なくする;(2)フィルムを成形する前に用いる熱可塑性樹脂を予備乾燥する;などの手段が挙げられる。予備乾燥は、例えば原料をペレットなどの形態にして、熱風乾燥機などで行われる。乾燥温度は100℃以上が好ましく、乾燥時間は2時間以上が好ましい。予備乾燥を行うことにより、透明基材中の残留溶剤を低減させる事ができ、さらに押し出す熱可塑性樹脂の発泡を防ぐことができる。
【0089】
透明基材を製造する方法として、前述の押出法による以外に接着剤を用いて3枚のフィルムを貼りあわせて製造することも可能である。接着剤としては、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、変性ポリオレフィン系接着剤、ポリビニルアルキルエーテル系接着剤、ゴム系接着剤、エチレン−酢酸ビニル系接着剤、塩化ビニル−酢酸ビニル系接着剤、SEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体)系接着剤、SIS(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体)系接着剤、エチレン−スチレン共重合体などのエチレン系接着剤、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体などのアクリル酸エステル系接着剤などが挙げられる。これらの内、硬化後に所定の弾性を維持するものがより好ましく、そのような接着剤としては、SEBS系接着剤、SIS系接着剤、エチレン−酢酸ビニル系接着剤を挙げることができる。
【0090】
このような弾性を維持する接着剤を用いて中間層1の両側に表面層を積層することにより、透明基材の可撓性を向上させることができ、透明基材を製品に適する寸法に打ち抜く時の切断特性が良好となる。また、この接着剤層は、透明基材に外力が加わった時に生じる応力を緩和する応力緩衝層として作用するので、偏光子の保護特性をより向上させることができる。
【0091】
この接着層の平均厚さは、通常0.01〜30μm、好ましくは0.1〜15μmである。
【0092】
本発明の透明基材の外表面、すなわちアクリル系樹脂から構成されている表面層2および/または表面層3の表面は、不規則に生じる線状凹部や線状凸部が実質的に形成されず、その表面が平坦な面であることが好ましい。実質的に形成されないとは、仮に、線状凹部や線状凸部が形成されたとしても、深さが50nm未満もしくは幅が500nmより大きい線状凹部、および高さが50nm未満もしくは幅が500nmより大きい線状凸部であることである。より好ましくは、深さが30nm未満、または、幅が700nmの線状凹部であり、高さが30nm未満、または、幅が700nmより大きい線状凸部である。このような構成とすることにより、線状凹部や線状凸部での光の屈折等に基づく、光の干渉や光漏れの発生を防止でき、光学性能を向上できる。なお、不規則に生じるとは、意図しない位置に意図しない寸法、形状等で形成されるということである。
【0093】
上述した線状凹部の深さや、線状凸部の高さ、及びこれらの幅は、次に述べる方法で求めることができる。透明基材に光を照射して、透過光をスクリーンに映し、スクリーン上に現れる光の明又は暗の縞の有る部分(この部分は線状凹部の深さ及び線状凸部の高さが大きい部分である。)を30mm角で切り出す。切り出したフィルム片の表面を三次元表面構造解析顕微鏡(視野領域5mm×7mm)を用いて観察し、これを3次元画像に変換し、この3次元画像からMD方向の断面プロファイルを求める。断面プロファイルは視野領域で1mm間隔で求める。
【0094】
この断面プロファイルに、平均線を引き、この平均線から線状凹部の底までの長さが線状凹部深さ、または平均線から線状凸部の頂までの長さが線状凸部高さとなる。平均線とプロファイルとの交点間の距離が幅となる。これら線状凹部深さ及び線状凸部高さの測定値からそれぞれ最大値を求め、その最大値を示した線状凹部又は線状凸部の幅をそれぞれ求める。以上から求められた線状凹部深さ及び線状凸部高さの最大値、その最大値を示した線状凹部の幅及び線状凸部の幅を、そのフィルムの線状凹部の深さ、線状凸部の高さ及びそれらの幅とする。
【0095】
さらに本発明に用いる透明基材は、透明基材の外表面にハードコート層、反射防止層、防汚層などの機能層が形成されていても良い。
【0096】
(ハードコート層)
ハードコート層は、JIS K5600−5−4で示す鉛筆硬度試験(試験板はガラス板)で「1H」以上の硬度を示す、熱や光硬化性の材料から形成されることが好ましい。ハードコート層が設けられた透明基材の鉛筆硬度は4H以上となることが好ましい。透明基材の表面層をアクリル系樹脂で構成すると、ハードコート層によって表面の鉛筆強度を4H以上に調整することが容易になる。
【0097】
ハードコート層用材料としては、有機シリコーン系、メラミン系、エポキシ系、アクリル系、ウレタンアクリレート系などの有機ハードコート材料;および、二酸化ケイ素などの無機ハードコート材料;などが挙げられる。なかでも、接着力が良好であり、生産性に優れる観点から、ウレタンアクリレート系および多官能アクリレート系ハードコート材料の使用が好ましい。
【0098】
このハードコート層は、その屈折率nHが、その上に積層する低屈折率層の屈折率nLとの間に、nH≧1.53、及びnH1/2−0.2<nL<nH1/2+0.2、の関係を有することが、反射防止機能を発現させるために好ましい。
【0099】
このハードコート層には、所望により、屈折率の調整、曲げ弾性率の向上、体積収縮率の安定化、耐熱性、帯電防止性、防眩性などの向上を図る目的で、各種フィラーを含有せしめてもよい。さらに、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、レベリング剤、消泡剤などの各種添加剤を配合することもできる。
【0100】
(反射防止層)
反射防止層は、外光の移りこみを防止するための層である。このような反射防止層が積層された透明基材は、入射角5°、430〜700nmにおける反射率が2.0%以下であるとともに、550nmにおける反射率が1.0%以下であることが好ましい。反射防止層の厚さは、0.01μm〜1μmが好ましく、0.02μm〜0.5μmがより好ましい。このような反射防止層としては、例えば、前記ハードコート層よりも屈折率の小さい、好ましくは屈折率が1.30〜1.45である低屈折率層を積層したもの、無機化合物からなる低屈折率層と無機化合物からなる高屈折率層とを繰り返し積層したもの、などを挙げることができる。
【0101】
低屈折率層を形成する材料は、透明基材又はハードコート層よりも屈折率の低いものであれば特に制限されないが、例えば、紫外線硬化型アクリル系樹脂等の樹脂系材料、樹脂中にコロイダルシリカ等の無機微粒子を分散させたハイブリッド系材料、テトラエトキシシラン等の金属アルコキシドを用いたゾル−ゲル系材料等が挙げられる。前記例示した低屈折率層を形成する材料は、重合済みのポリマーであってもよいし、前駆体となるモノマーまたはオリゴマーであってもよい。また、それぞれの材料は、表面に防汚染性を付与するためのフッ素基を含有する化合物を含むことが好ましい。
【0102】
前記フッ素基を含有するゾル−ゲル系材料としては、パーフルオロアルキルアルコキシシランを例示できる。パーフルオロアルキルアルコキシシランとしては、たとえば、一般式:CF3(CF2nCH2CH2Si(OR)3(式中、Rは、炭素数1〜5個のアルキル基を示し、nは0〜12の整数を示す)で表される化合物が挙げられる。具体的には、たとえば、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシランなどが挙げられる。これらのなかでも前記nが2〜6の化合物が好ましい。
【0103】
低屈折率層は、熱硬化性含フッ素化合物または電離放射線硬化型のフッ素化合物の硬化物からなることが好ましい。該硬化物の動摩擦係数は、好ましくは0.03〜0.15であり、水に対する接触角は好ましくは90〜120度である。硬化性の含フッ素高分子化合物としてはパーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラデシル)トリエトキシシラン)等の他、架橋性官能基を有する含フッ素共重合体が挙げられる。
【0104】
架橋性官能基を有する含フッ素重合体はフッ素含有モノマーと架橋性官能基を有するモノマーとを共重合することによって、又はフッ素含有モノマーと官能基を有するモノマーとを共重合し次いで重合体中の官能基に架橋性官能基を有する化合物を付加させることによって得ることができる。
【0105】
含フッ素モノマーとしては、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等のフルオロオレフィン類;ビスコート6FM(大阪有機化学製)、M−2020(ダイキン製)等の(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられる。
【0106】
架橋性官能基を有するモノマー又は架橋性官能基を有する化合物としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのグリシジル基を有するモノマー;アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基を有するモノマー;ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレートなどのヒドロキシル基を有するモノマー;メチロールアクリレート、メチロールメタクリレート;アリルアクリレート、アリルメタクリレートなどのビニル基を有するモノマー;アミノ基を有するモノマー;スルホン酸基を有するモノマー;等を挙げることができる。
【0107】
低屈折率層を形成するための材料としては、耐傷性を向上できる点で、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、フッ化マグネシウム等の微粒子をアルコール溶媒に分散したゾルが含まれたものを用いることができる。前記微粒子は、反射防止性の観点から、屈折率が低いものほど好ましい。このような微粒子は、空隙を有するものであってもよく、特にシリカ中空微粒子が好ましい。中空微粒子の平均粒径は、5nm〜2,000nmが好ましく、20nm〜100nmがより好ましい。ここで、平均粒径は、透過型電子顕微鏡観察によって求められる数平均粒径である。
【0108】
低屈折率層の厚さは特に制限されないが、通常0.05〜0.3μm、特に好ましくは0.1〜0.3μmである。
【0109】
(防汚層)
前記低屈折率層の防汚性を高めるために、前記低屈折率層の上(観察側)にさらに防汚層を設けてもよい。防汚層は、表面に撥水性、撥油性、耐汗性、防汚性などを付与できる層である。防汚層を形成するために用いる材料としては、フッ素含有有機化合物が好適である。フッ素含有有機化合物としては、フルオロカーボン、パーフルオロシラン、又はこれらの高分子化合物などが挙げられる。また、防汚層の形成方法は、形成する材料に応じて、蒸着、スパッタリング等の物理的気相成長法、化学的気相成長法、湿式コーティング法等を用いることができる。防汚層の平均厚さは好ましくは1〜50nm、より好ましくは3〜35nmである。
【0110】
また、これらの層の他に、防眩層、ガスバリア層、透明帯電防止層、プライマー層、電磁遮蔽層、下塗り層等のその他の層を透明基材に設けてもよい。
【0111】
以上のような機能層を形成する場合には、形成させる面に化学的処理を施すことが好ましい。化学的処理の手段としては、例えば、コロナ放電処理、スパッタ処理、低圧UV照射処理、プラズマ処理などが挙げられる。また、本発明の透明基材は、前記化学的処理に加えて、機能層との密着性強化や防眩性付与を目的として、エッチング、サンドブラスト、エンボスロール等による機械的処理が施されていても良い。
これらの機能層の形成方法に格別な限定はなく、各機能層の形成に一般的な方法を採用すればよい。
【0112】
本発明に用いられる透明基材は、その光弾性係数の絶対値が30×10-13cm2/dyn以下であることが好ましく、10×10-13cm2/dyn以下であることがより好ましく、5×10-13cm2/dyn以下であることがさらに好ましい。光弾性係数が上記数値よりも大きくなると、当該透明基材が外部からの応力によって位相差を発現しやすくなり、光学性能を低下させる傾向がある。
【0113】
本発明に用いられる透明基材は、面内方向のレターデーションRe(Re=d×(nx−ny)で定義される値;nxは面内の遅相軸の屈折率、nyは面内で遅相軸と直交する方向の屈折率;dは当該フィルムの平均厚さ)、及び厚さ方向のレターデーションRth(Rth=d×([nx+ny]/2−nz)で定義される値;nzは厚さ方向の屈折率)の絶対値が小さいものが好ましい。具体的には、当該透明基材の面内方向のレターデーションReは、波長550nmにおいて10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましく、3nm以下であることが特に好ましく、2nm以下であることが最も好ましい。当該透明基材の厚さ方向のレターデーションRthは、波長550nmにおいて−10nm〜+10nmであることが好ましく、−5nm〜+5nmであることがより好ましい。
【0114】
本発明に用いられる透明基材は、その透湿度が10g・m-2day-1以上、200g・m-2day-1以下であることが好ましい。透湿度を上記好適な範囲とすることにより、本発明の光学素子を偏光子の保護層として用いた場合に偏光子との密着性が向上する。透湿度は、40℃、92%RHの環境下で、24時間放置する試験条件で、JIS Z 0208に記載のカップ法により測定できる。
【0115】
〔選択反射層〕
本発明の光学素子を構成する選択反射層は、光学素子が上記のような光学特性(入射角に対する光線透過率及び光線反射率)を示すことができるものであれば特に制限されない。
選択反射層として、例えば、屈折率の異なる無機酸化物を交互に蒸着した多層薄膜(例えば、コールドフィルターなど);屈折率の異なる樹脂の薄膜を積層した薄膜;屈折率の異なる樹脂の多層膜を2軸延伸して得られる赤外反射フィルム;屈折率の異なる2種の樹脂膜を1軸延伸して赤外反射フィルムを得、それを直交させて積層したもの;コレステリック規則性を持つ樹脂層を含む円偏光反射板の選択反射帯域を赤外域としたもの;前記円偏光反射板の右捻れ品と左捻れ品を積層としたもの;同一捻れ方向のコレステリック規則性を持つ樹脂層を含む円偏光反射板2枚を1/2波長板を介して積層したもの;グリッド偏光子などが挙げられる。
【0116】
本発明の一実施態様の光学素子は、選択反射層がコレステリック規則性を持つ樹脂層(以下、コレステリック樹脂層ということがある。)を含み、該樹脂層のカイラルピッチが400nm以上であり、且つ入射角0度における選択反射帯域での最大反射率が10%以上40%以下である。
コレステリック規則性は、一平面上では分子軸が一定の方向に並んでいるが、次の平面では分子軸の方向が少し角度をなしてずれ、さらに次の平面ではさらに角度がずれるという具合に、該平面の法線方向に分子軸の角度が次々にずれて(ねじれて)いく構造である。このように分子軸の方向がねじれてゆく構造はカイラルな構造と呼ばれる。該平面の法線(カイラル軸)はコレステリック樹脂層の厚さ方向に略平行になっていることが好ましい。コレステリック樹脂層の厚さは、1μm〜10μmが好ましく、1μm〜5μmが特に好ましい。
【0117】
本発明に用いるコレステリック樹脂層は、そのカイラルピッチが好ましくは400nm以上、より好ましくは430nm以上である。カイラルピッチとは、カイラル構造において分子軸の方向が平面を進むに従って少しずつ角度がずれていき、そして再びもとの分子軸方向に戻るまでのカイラル軸方向の距離のことである。
【0118】
これらのうち、コレステリック規則性を持つ樹脂層を含む円偏光反射板は、選択反射帯域の調整が比較的容易である。そこで、コレステリック規則性を持つ樹脂層を含む円偏光反射板について説明する。
【0119】
図3は本発明の光学素子(円偏光反射板)の一例の構造を示す図である。
この円偏光反射板は、シート状の透明基材1に、配向膜2を形成し、さらにその上にコレステリック規則性を持つ樹脂層(反射選択層)3を形成することによって得ることができる。
【0120】
〔配向膜〕
前記配向膜は、コレステリック規則性を持つ樹脂層を面内で一方向に配向規制するために透明基材の表面に形成される。配向膜は、例えば、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなどのポリマーを含有するものである。配向膜は、このようなポリマーを含有する溶液(配向膜用組成物)を膜状に積層し、乾燥させ、そして一方向にラビング等することで、得ることができる。
【0121】
膜状に積層する方法としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延製膜法、バーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法などが挙げられる。
ラビングの方法は、特に制限されないが、例えばナイロンなどの合成繊維、木綿などの天然繊維からなる布やフェルトを巻き付けたロールで一定方向に配向膜を擦る方法が挙げられる。ラビングした時に発生する微粉末(異物)を除去して配向膜の表面を清浄な状態とするために、形成された配向膜をイソプロピルアルコールなどによって洗浄することが好ましい。
また、ラビングする方法以外に、配向膜の表面に偏光紫外線を照射する方法によっても、配向膜にコレステリック規則性を持つ樹脂層を面内で一方向に配向規制する機能を持たせることができる。
配向膜の厚さは0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることがさらに好ましい。
【0122】
〔コレステリック樹脂層〕
前記円偏光反射板は、コレステリック規則性を持つ樹脂層を含むものである。コレステリック規則性は、一平面上では分子軸が一定の方向に並んでいるが、次の平面では分子軸の方向が少し角度をなしてずれ、さらに次の平面ではさらに角度がずれるという具合に、該平面の法線方向に分子軸の角度が次々にずれて(ねじれて)いく構造である。このように分子軸の方向がねじれてゆく構造はカイラルな構造と呼ばれる。該平面の法線(カイラル軸)はコレステリック樹脂層の厚さ方向に略平行になっていることが好ましい。コレステリック樹脂層の厚さは、1μm〜10μmが好ましく、1μm〜5μmが特に好ましい。
【0123】
<コレステリック樹脂層を形成する材料(1):液晶ポリマー>
コレステリック樹脂層を形成する材料としては、先ず、液晶ポリマーが挙げられる。
一般に物質は温度や圧力などの条件により、気体、液体、固体の3つの状態(相)のいずれかになる。液晶は“液体と固体の中間の状態にあるもの”と説明されている。一般に液晶物質は他の物質と同様に低温では固体であり高温では透明な液体であるが、その中間の温度範囲で濁った液状となる。この状態が液晶状態である。このような状態を示す液晶物質はその分子構造の中に細長い棒状または盤状をなす部分がある。液晶状態では、この部分が“固体となる状態”、すなわち規則的に配列しようとする状態になり、他の部分が“液体となる状態”、すなわち流動的に自由な位置を保ち得る状態にある。液晶の分子は、この“固体となる状態”である部分が、電界、温度など、周囲条件に応じて規則的に配列したり、その配列状態が変ったり、さらにバラバラになったりすることにより光学的な特性が変化する。液晶物質は、液晶状態では液状で流動的ではあるが、分子がある規則性を持って配列しているので結晶と同様な性格を示す。すなわち“液状であるが結晶の性格を持つ状態”である。液晶ポリマーはこのような液晶性を有するポリマーである。この液晶ポリマーを配向膜上に膜状に積層することでコレステリック樹脂層を得ることができる。
【0124】
この液晶ポリマーとしては、メソゲン構造を有するポリマーがある。メソゲンは、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団である。
メソゲン構造を有するポリマーとしては、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、及びポリエステルイミド等のポリマー主鎖に、直接に又は屈曲性を付与するスペーサー部を介して、パラ置換環状化合物等からなるメソゲン基を結合した構造を有するもの;ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリシロキサン、ポリマロネート等をポリマー主鎖に、直接に又は共役性の原子団からなるスペーサー部を介して、パラ置換環状化合物等からなる低分子結晶化合物(メソゲン部)を結合した構造を有するものが挙げられる。
【0125】
前記スペーサー部としては、ポリメチレン鎖やポリオキシメチレン鎖等が挙げられる。スペーサー部を形成する構造単位に含まれる炭素数は、メソゲン部の化学構造等により適宜に決定され。一般にはポリメチレン鎖の場合には、該炭素原子数が1〜20、好ましくは2〜12であり、ポリオキシメチレン鎖の場合には、該炭素原子数が1〜10、好ましくは1〜3である。
【0126】
また、前記液晶ポリマーの他の例としては、低分子カイラル剤含有のネマチック液晶ポリマー;カイラル成分導入の液晶ポリマー;ネマチック液晶ポリマーとコレステリック液晶ポリマーの混合物等が挙げられる。カイラル成分導入の液晶ポリマーとは、それ自体がカイラル剤の機能を果たす液晶ポリマーである。ネマチック液晶ポリマーとコレステリック液晶ポリマーの混合物は、それらの混合比率を変えることによって、ネマチック液晶ポリマーのカイラル構造のピッチを調整することができるものである。
【0127】
さらに、アゾメチン形、アゾ形、アゾキシ形、エステル形、ビフェニル形、フェニルシクロヘキサン形、及びビシクロヘキサン形のようなパラ置換芳香族単位やパラ置換シクロヘキシル単位等からなるネマチック配向性を付与するパラ置換環状化合物を有するものに、不斉炭素を有する化合物等からなる適宜なカイラル成分や低分子カイラル剤等を導入する方法等により、コレステリック規則性を付与したもの(特開昭55−21479号公報、米国特許第5332522号等を参照)も挙げることができる。なお、パラ置換環状化合物におけるパラ位の末端置換基としては、シアノ基やアルキル基、アルコキシル基等が挙げられる。
【0128】
液晶ポリマーはその製法によって制限されない。液晶ポリマーは、例えば、メソゲン構造を有するモノマーをラジカル重合、カチオン重合又はアニオン重合することによって得られる。メソゲン構造を有するモノマーは、例えばアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルのようなビニル系モノマーに、直接に又はスペーサー部を介してメソゲン基を公知の方法で導入することによって得ることができる。また、液晶ポリマーは、ポリオキシメチルシリレンのSi−H結合を介し白金系触媒の存在下にビニル置換メソゲンモノマーを付加反応させることによって;主鎖ポリマーに付与した官能基を介して相間移動触媒を用いたエステル化反応によりメソゲン基を導入することによって;マロン酸の一部に必要に応じスペーサー部を介してメソゲン基を導入したモノマーとジオールとを重縮合反応させることによって得ることができる。
【0129】
(液晶ポリマーに導入または含有させるカイラル剤)
液晶ポリマーに導入または含有させるカイラル剤としては、従来公知のものを使用することができる。例えば、特開平6−281814号公報に記載されたカイラルモノマー、特開平8−209127号公報に記載されたカイラル剤、特開2003−131187号公報に記載の光反応型カイラル化合物等が挙げられる。
またカイラル剤としては、カイラル剤の添加によって意図しない相転移温度の変化を避けるために、カイラル剤自身が液晶性を示すものが好ましい。さらに、経済性の観点からは、液晶ポリマーを捩じる効率を表す指標であるHTP(=1/P・c)の大きなものが好ましい。ここで、Pはカイラル構造のピッチ長を表し、cはカイラル剤の濃度を表す。カイラル構造のピッチ長とは、カイラル構造において分子軸の方向が平面を進むに従って少しずつ角度がずれていき、そして再びもとの分子軸方向に戻るまでのカイラル軸方向の距離のことである。
【0130】
<コレステリック樹脂層を形成する材料(2):重合性組成物>
コレステリック樹脂層を形成する好適な材料として、重合性液晶化合物を含有する重合性組成物、好ましくは重合性液晶化合物、重合開始剤、及びカイラル剤を含有する重合性組成物が挙げられる。この材料を用いてコレステリック樹脂層を形成する方法の例としては、重合性液晶化合物、重合開始剤及びカイラル剤、さらに必要に応じて界面活性剤、配向調整剤等を溶剤に溶解させた塗布液を得、これを基材に膜状に積層し、乾燥させ、その乾燥させた膜を重合させる方法がある。
【0131】
(重合性組成物に含有させる重合性液晶化合物)
重合性液晶化合物としては、棒状液晶化合物が好ましく用いられる。
棒状液晶化合物としては、式(1)で表される化合物を挙げることができる。
R1−B1−A1−B3−M−B4−A2−B2−R2 式(1)
なお、式(1)中のA1及びA2は、後述するようにスペーサー基であるが、このスペーサー基を省いて、直接にB1とB3又はB4とB2が結合していてもよい。
【0132】
式(1)中、R1及びR2は重合性基を表す。重合性基であるR1、R2の具体例としては、化1に示す(r−1)〜(r−15)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0133】
【化1】

【0134】
B1、B2、B3及びB4は、それぞれ独立して単結合又は二価の連結基を表す。また、B3、B4の少なくとも一方は、−O−CO−O−であるのが好ましい。
【0135】
A1及びA2は炭素原子数1〜20のスペーサー基を表す。スペーサー基としては、例えば、ポリメチレン基やポリオキシメチレン基等が挙げられる。スペーサー基を形成する構造単位に含まれる炭素数は、メソゲン基の化学構造等により適宜に決定される。一般にはポリメチレン基の場合には、炭素原子数が1〜20、好ましくは2〜12であり、ポリオキシメチレン基の場合には、炭素原子数が1〜10、好ましくは1〜3である。
【0136】
Mはメソゲン基を表す。メソゲン基Mの形成材料としては特に制限されないが、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
【0137】
(重合性組成物に含有させる重合開始剤)
前記重合開始剤には、熱重合開始剤と光重合開始剤とがあるが、重合反応が速いことから光重合開始剤が好ましい。
光重合開始剤としては、多核キノン化合物(米国特許3046127号公報、同2951758号公報)、オキサジアゾール化合物(米国特許4212970号公報)、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号公報、同2367670号公報)、アシロインエーテル(米国特許2448828号公報)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号公報)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号公報)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号公報)などが挙げられる。
【0138】
重合開始剤の量は、重合性液晶化合物100重量部に対して1〜10重量部であることが好ましく、1〜5重量部であることがさらに好ましい。光重合開始剤を用いたときには、照射光として紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、0.1mJ/cm2〜50J/cm2であることが好ましく、0.1mJ/cm2〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。
紫外線の照射方法は、特に制限されない。また、重合転化率が100%になるまでの紫外線照射量は、重合性液晶化合物の種類によって適宜選択される。
【0139】
(重合性組成物に含有させるカイラル剤)
前記重合性組成物に含有させるカイラル剤としては、特開2003−66214号公報、特開2003−313187号公報、米国特許第6468444号公報、WO98/00428等に掲載されるものを適宜使用することが出来るが、液晶化合物を捩じる効率を表す指標であるHTPの大きなものが経済性の観点から好ましい。HTPは、式:HTP=1/P・cで表される。ここで、Pはカイラル構造のピッチ長を表し、cはカイラル剤の濃度を表す。また、カイラル剤の添加による意図しない相転移温度の変化を避けるために、カイラル剤自身が液晶性を示すものを用いることが好ましい。
【0140】
(重合性組成物に含有させるその他の配合剤)
前記塗布液および重合前の前記塗布液の膜の表面張力を調整するために界面活性剤を使用し得る。特に好ましくはノニオン系の界面活性剤であり、分子量が数千程度のオリゴマーであることが好ましい。このような界面活性剤としては、セイミケミカル社製KH−40等が挙げられる。
【0141】
重合性組成物に含有させる配向調整剤は、基材上に形成されたコレステリック樹脂層の空気側表面の配向状態を制御するためのものであり、前記界面活性剤を兼ねる場合もあるが、目的の配向状態によっては適宜樹脂類が用いられる。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、あるいはこれらの変性物が用いられるがこの限りではない。
【0142】
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、ケトン類、アルキルハライド類、アミド類、スルホキシド類、ヘテロ環化合物、炭化水素類、エステル類、及びエーテル類が含まれる。特に環境への負荷を考慮した場合にはケトン類が好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0143】
塗布液を膜状に積層するには、公知の方法、例えば、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、及びダイコーティング法等を実施できる。
【0144】
本発明に用いるコレステリック樹脂層は非液晶性の樹脂層であることが好ましい。非液晶性のものであると、周囲の温度や電界などによってコレステリック規則性が変化しないからである。非液晶性のコレステリック樹脂層は、前記重合性組成物として、重合性基を2以上有する重合性液晶化合物を含有したものを選択し、それを重合することによって得ることができる。重合性基を2以上有する重合性液晶化合物によって、コレステリック樹脂に比較的剛直な架橋構造が導入され、液晶性を生じない樹脂が得られるのである。
【0145】
コレステリック規則性を持つ樹脂層に、光が入射すると、特定波長領域の左回り又は右回りの何れかの円偏光のみが反射される。反射された円偏光以外の光は透過する。この円偏光が反射される特定波長領域を選択反射帯域という。
図3に示すように、円偏光反射板のコレステリック樹脂層に入射角θ1で入射した白色光は、コレステリック樹脂層表面で屈折して屈折角θ2でコレステリック樹脂層内を通過し、波長λに対応したピッチ長Pを持つコレステリック樹脂層(図3ではP2と表記された層)で一方の円偏光が反射角θ2で反射し、コレステリック樹脂層表面で屈折して出射角θ1で出射する。屈折はスネルの法則に従って行われる。
【0146】
カイラル構造において分子軸が捩れる時の回転軸を表す螺旋軸4と、コレステリック樹脂層の法線とが平行である場合、カイラル構造のピッチ長Pと反射される円偏光の波長λとは式(2)及び式(3)の関係を有する。
λc=n×P×cosθ2 式(2)
o×P×cosθ2≦λ≦ne×P×cosθ2 式(3)
式中、noは棒状液晶化合物の短軸方向の屈折率を表し、neは棒状液晶化合物の長軸方向の屈折率を表し、n=(ne+no)/2、Pはカイラル構造のピッチ長を表す。
【0147】
すなわち、選択反射帯域の中心波長λcは、コレステリック樹脂層におけるカイラル構造のピッチ長Pに依存する。このカイラル構造のピッチ長を変えることによって、選択波長帯域を変えることができる。また、反射率はカイラル構造の積層数に比例する。反射率を調整するためにカイラル構造の層数、すなわち厚さを調整する。選択反射帯域の幅はnoとneの差に依存するので、製造しやすい適切な液晶化合物を選択する。
【0148】
本発明の光学素子を、直線偏光子と積層させることによって偏光板を得ることができる。また、本発明の光学素子を位相差素子と積層させることによって位相差板を得ることができる。直線偏光子や位相差素子と積層することによって、各素子間の空気層が排除され、界面における無用な反射や干渉を低減できる。なお、直線偏光子または位相差素子を、前記コレステリック樹脂層を積層させる透明基材の代わりに使用することで、コレステリック樹脂層を直接に直線偏光子または位相差素子に積層することができる。
また本発明の光学素子を他の光学素子と組み合わせることによって照明装置、偏光照明装置、及び液晶表示装置を得ることができる。
【0149】
前記直線偏光子は、直角に交わる二つの直線偏光の一方を透過するものである。例えば、ポリビニルアルコールフィルムやエチレン酢酸ビニル部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムにヨウ素や二色性染料などの二色性物質を吸着させて一軸延伸させたもの、前記親水性高分子フィルムを一軸延伸して二色性物質を吸着させたもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン配向フィルムなどが挙げられる。その他に、グリッド偏光子、多層偏光子などの偏光を反射光と透過光に分離する機能を有する偏光子が挙げられる。これらのうちポリビニルアルコールを含有する偏光子が好ましい。
【0150】
本発明に用いる直線偏光子の偏光度は特に限定されないが、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。直線偏光子の平均厚さは好ましくは5μm〜80μmである。
一対の直線偏光子(以下、一対の直線偏光子を、別々に、直線偏光子X、直線偏光子Y(検光子)と言うことがある。)の偏光透過軸が互いに、平行又は直角になるように、液晶セルを挟んで配置する。直線偏光子は吸湿によって偏光性能が変化することがある。これを防ぐために保護フィルムが直線偏光子Xまたは検光子の両面に通常貼り合わせてある。検光子に貼り合わされる保護フィルムには、反射防止層、防汚層、防眩層などが備わっていてもよい。
【0151】
前記位相差素子は、光の位相を変化させることができる素子である。例えば、高分子フィルムを延伸して配向させたものが挙げられる。位相差素子は、直線偏光子に貼り合わされる前記保護フィルムとして用いることができる。
【0152】
本発明の照明装置は、光反射素子、光源、光拡散素子、及び本発明の光学素子が、この順に配置されたものである。また本発明の偏光照明装置は、光反射素子、光源、光拡散素子、及び本発明の偏光板が、この順に配置されたものである。なお、偏光板は本発明の光学素子が直線偏光子よりも光拡散素子側になるように配置することが好ましい。その他に、プリズムシート、反射性偏光子、1/4波長板、1/2波長板、視野角補償フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルムなどが配置されていてもよい。
【0153】
前記光反射素子は、光を反射することができる素子である。具体的には、反射性金属膜や白色膜を備えた反射板が挙げられる。本発明に用いる光源は白色光を発するものであればよく、冷陰極管、熱陰極管、発光ダイオード、及びエレクトロルミネセンスから選択される。前記光拡散素子は輝度の面内分布をなくすために光を散乱し拡散光とする素子である。具体的には透明基材中にシリコーンビーズなどの光拡散材を分散させたもの(光拡散板と称することもある)、透明基材表面に光拡散材を塗布したもの(光拡散シートと称することもある)などが挙げられる。
【0154】
本発明の液晶表示装置は、本発明の光学素子を備えるものである。さらに、前記偏光板、前記位相差板、前記照明装置、または前記偏光照明装置を備えるものである。特に、光源、本発明の光学素子、直線偏光子X、液晶セル、及び直線偏光子Yが、この順に配置されたものであることが好ましい。その他に、反射素子、導光板、光拡散素子、プリズムシート、反射性偏光子、1/4波長板、1/2波長板、視野角補償フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルムなどが配置されていてもよい。

【0155】
液晶セルは、数μmのギャップを隔てて対向する透明電極を設けた2枚のガラス基板の間に液晶物質を充填し、この電極に電圧を掛けて液晶の配向状態を変化させてここを通過する光の量を制御するものである。
液晶物質の配向状態を変化させる方式(動作モード)などによって、液晶セルは分類され、例えば、TN(Twisted Nematic)型液晶セル、STN(Super Twisted Nematic)型液晶セル、HAN(Hybrid Alignment Nematic)型液晶セル、IPS(In Plane Switching)型液晶セル、VA(Vertical Alignment)型液晶セル、MVA(Multi−domain Vertical Alignment型液晶セル、OCB(Optical Compensated Bend)型液晶セルなどが挙げられる。
【0156】
図4は、本発明の液晶表示装置の一例の構成を示す図である。図4に示すように、反射板20、冷陰極管19、光拡散板18、円偏光反射板17、直線偏光子X、液晶セル12、直線偏光子Yの順に配置されている。光源からの光が入射角0度で円偏光反射板に入射した場合は、光学素子の選択反射帯域は赤外域付近にあるので、青色、緑色、赤色の各光がそのまま透過する。入射角が大きくなると、選択反射帯域が短波長側にシフトし、赤色光を一部反射するようになり、赤色光の光線透過率が低くなっていく。
そして入射角60度において、600nm〜700nmの波長の光の平均透過率が40%以上80%以下に調整される。また、波長600nm〜700nmの波長の光の平均反射率が調整される。
これによって、赤色光の青色光及び緑色光に対するバランスが調整され、正面及び斜めからの観察において同様の色バランスがとれた画像を表示することができる。
【実施例】
【0157】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。また、部および%は、特に記載のない限り重量基準である。
【0158】
(透明基材1)
ポリメチルメタクリレート樹脂(引張弾性率3.3GPa、ガラス転移温度Tg=110℃;以下「PMMA1」と記すことがある)を、目開き10μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを設置したダブルフライト型一軸押出機に投入し、押出機出口温度260℃で溶融樹脂をダイスリップの表面粗さRaが0.1μmであるマルチマニホールドダイの一方に供給した。
【0159】
同時に、ポリメチルメタクリレート樹脂(引張弾性率2.5GPa、ガラス転移温度Tg=100℃)に紫外線吸収剤を2重量%添加し、この紫外線吸収剤含有ポリメチルメタクリレート樹脂(以下「PMMA2」と記すことがある)を、目開き10μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを設置したダブルフライト型の一軸押出機に導入し、押出機出口温度260℃で溶融樹脂をダイスリップの表面粗さRaが0.1μmであるマルチマニホールドダイの他方に供給した。
【0160】
そして、溶融状態のポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA1)、紫外線吸収剤入りポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA2)のそれぞれをマルチマニホールドダイから260℃で吐出させ、130℃に温度調整された冷却ロールにキャストし、その後、50℃に温度調整された冷却ロールに通して、PMMA1層(15μm)−PMMA2層(50μm)−PMMA1層(15μm)の3層構成からなる、幅600mm、厚さ80μmのフィルム状の透明基材1を共押出成形により得た。この透明基材1の線状凹部の深さまたは線状凸部の高さは、20nm以下であり、かつ幅が800nm以上の範囲であった。
【0161】
(透明基材2)
ポリメチルメタクリレート樹脂(ガラス転移温度Tg=110℃;以下「PMMA1」と記すことがある)を、目開き10μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを設置したダブルフライト型一軸押出機に投入し、押出機出口温度260℃で溶融樹脂をダイスリップの表面粗さRaが0.1μmであるマルチマニホールドダイの一方に供給した。
【0162】
同時に、ポリカーボネート樹脂(引張弾性率2.2GPa、紫外線吸収剤不含、吸水率0.2%、「PC」と記すことがある)を、目開き10μmのリーフディスク形状のポリマーフィルターを設置したダブルフライト型の一軸押出機に導入し、押出機出口温度260℃で溶融樹脂をダイスリップの表面粗さRaが0.1μmであるマルチマニホールドダイの他方に供給した。
【0163】
そして、溶融状態のポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA1)、ポリカーボネート樹脂(PC)、及び接着層形成材料としてエチレン−酢酸ビニル共重合体のそれぞれをマルチマニホールドダイから260℃で吐出させ、130℃に温度調整された冷却ロールにキャストし、その後、50℃に温度調整された冷却ロールに通して、PMMA1層(20μm)−接着層(4μm)−PC層(32μm)−接着層(4μm)−PMMA1層(20μm)の3層構成からなる、幅600mm、厚さ80μmのフィルム状透明基材2を共押出成形により得た。
【0164】
(引張弾性率)
熱可塑性樹脂を単層成形して、厚さ100μmのフィルムを得、1cm×25cmの試験片を切り出し、ASTM D 882に基づき、引張試験機(東洋ボールドウィン社製、テンシロンUTM−10T−PL)を用いて引張速度25mm/minの条件で測定した。同様の測定を5回行い、その算術平均値を引張弾性率の代表値とする。
【0165】
実施例1
透明基材1の両面を濡れ指数が56dyne/cmになるようにプラズマ処理した。ポリビニルアルコール5部及び水95部からなる配向膜用組成物を透明基材1の片面に塗布し、乾燥して、膜を形成した。次いで、透明基材1の長手方向に平行な方向に、フェルトのロールでラビングして、平均厚さ0.1μmの配向膜を得た。
【0166】
ネマチック液晶化合物(BASF社製、商品名「LC242」) 100部、カイラル剤(BASF社製、商品名「LC756」) 3.60部、光重合開始剤(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、商品名「Irgacure907」) 3.21部、及び界面活性剤(セイミケミカル社製、商品名「KH−40」) 0.11部、をメチルエチルケトン 160部に溶解し、孔径2μmのポリフルオロエチレン製CD/Xシリンジフィルターを用いて濾過することにより、液晶塗工液を調製した。
【0167】
配向膜上に、液晶塗工液を乾燥厚さが1.85μmになるように塗工し、100℃で5分間乾燥した。次いで、紫外線を150mJ/cm2で照射し、コレステリック樹脂層を形成し、円偏光反射板を得た。
この円偏光反射板に、図1に示す発光スペクトルを持つ平行化された白色光を入射角0度で入射し、光線透過率を分光器(相馬光学社製、商品名「S−2600」)で測定した。入射角0度のおける選択反射帯域は波長700〜820nmであり、入射角0度における波長600nm〜700nmの光の平均透過率は89%であった。
【0168】
次に平行化された白色光(600nm〜700nmの波長帯域で最大発光強度を示す光の波長λR1が630nmの光)を入射角60度で入射し、光線透過率を同様に測定した。入射角60度における波長600nm〜700nmの光の平均透過率は71%であった。その他の物性を併せて表1に示した。
前記円偏光反射板を図4に示す構成の液晶表示装置に組み込み、観察角度による色度変化を目視評価した。左右0〜80度の範囲でほとんど色度変化が認められなかった。
【0169】
比較例1
透明基板1の光線透過率を実施例1と同様に測定した。選択反射帯域は確認されず、平行化された白色光を入射角0度で入射した場合の波長600nm〜700nmの光の平均透過率は90%であった。平行化された白色光を入射角60度で入射した場合の波長600nm〜700nmの光の平均透過率は82%であった。その他の物性を併せて表1に示した。
実施例1で用いた円偏光反射板に代えて、透明基板1を用いて、実施例1と同様に図4に示す構成の液晶表示装置に組み込み、観察角度による色度変化を目視評価した。左右方向60度以上で赤みを帯びていた。
【0170】
実施例2
透明基材1の両面を濡れ指数が56dyne/cmになるようにプラズマ処理した。ポリビニルアルコール 5部、及び水 95部からなる配向膜用組成物を透明基材1の片面に塗布し、乾燥して、膜を形成した。次いで、透明基材1の長手方向に平行な方向に、フェルトのロールでラビングして、平均厚さ0.1μmの配向膜を得た。
【0171】
ネマチック液晶化合物(BASF社製、商品名「LC242」) 100部、カイラル剤(BASF社製、商品名「LC756」) 3.46部、光重合開始剤(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、商品名「Irgacure907」) 3.21部、及び界面活性剤(セイミケミカル社製、商品名「KH−40」) 0.11部を、メチルエチルケトン 160部に溶解し、孔径2μmのポリフルオロエチレン製CD/Xシリンジフィルターを用いて濾過することにより、液晶塗工液を調製した。
【0172】
配向膜上に、液晶塗工液を乾燥厚さが1.88μmになるように塗工し、100℃で5分間乾燥した。次いで、紫外線を150mJ/cm2で照射し、コレステリック樹脂層を形成し、円偏光反射板を得た。
円偏光反射板の断面をSEM観察したところ、コレステリック樹脂層の螺旋ピッチは470nmであった。その他の物性を併せて表1に示した。
【0173】
この円偏光反射板に、図1に示す発光スペクトルを持つ平行化された白色光を入射角0度で入射し、光線反射率を分光器(相馬光学製、商品名「S−2600」)で測定した。選択反射帯域は690nm〜850nmにあり、波長760nmで最大反射率24%を示した。
次に平行化された白色光を入射角60度で入射し、光線反射率を同様に測定したところ、波長760nmでの反射率は20%であり、入射角0度における波長760nmの反射率の83%であった。また、入射角60度における波長600nm〜700nmの光の平均反射率は29%であった。
【0174】
前記円偏光反射板を図4に示す構成の液晶表示装置に組み込み、観察角度による色度変化を目視評価した。左右0〜80度の範囲でほとんど色度変化が認められなかった。
【0175】
比較例2
透明基材1の両面を濡れ指数が56dyne/cmになるようにプラズマ処理した。ポリビニルアルコール 5部、及び水 95部からなる配向膜用組成物を透明基材1の片面に塗布し、乾燥して、膜を形成した。次いで、透明基材1の長手方向に平行な方向に、フェルトのロールでラビングして、平均厚さ0.1μmの配向膜を得た。
【0176】
ネマチック液晶化合物(BASF社製、商品名「LC242」) 100部、カイラル剤(BASF社製、商品名「LC756」) 4.98部、光重合開始剤(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、商品名「Irgacure907」) 3.24部、及び界面活性剤(セイミケミカル社製、商品名「KH−40」) 0.12部、をメチルエチルケトン 162部に溶解し、孔径2μmのポリフルオロエチレン製CD/Xシリンジフィルターを用いて濾過することにより、液晶塗工液を調製した。
【0177】
配向膜上に、液晶塗工液を乾燥厚さが1.50μmになるように塗工し、100℃で5分間乾燥した。次いで、紫外線を150mJ/cm2で照射し、コレステリック樹脂層を形成し、円偏光反射板を得た。
円偏光反射板の断面をSEM観察したところ、コレステリック樹脂層の螺旋ピッチは365nmであった。その他の物性を併せて表1に示した。
【0178】
さらに、実施例2と同様に光線反射率を測定した。選択反射帯域は530nm〜630nmにあり、波長555nmで最大反射率28%を示した。平行化された白色光を入射角60度で入射した場合の、波長555nmでの反射率は12%であり、入射角0度における波長555nmの反射率の43%であった。また、入射角60度における波長600nm〜700nmの光の平均反射率は18%であった。
【0179】
実施例2で用いた円偏光反射板に代えて、前記円偏光反射板を用いて、実施例1と同様に図4に示す構成の液晶表示装置に組み込み、観察角度による色度変化を目視評価した。左右方向60度以上で黄緑色を呈していた。
【0180】
比較例3
透明基材1を透明基材2に代えた他は実施例1と同様にして円偏光反射板を得た。そして、前記円偏光反射板を図4に示す構成の液晶表示装置に組み込み、観察角度による色度変化を目視評価した。左右0〜80度の範囲でほとんど色度変化が認められなかったが、アーク灯の照射によって、ΔYIが大きかった。
【0181】
【表1】

【0182】
(色度変化)
液晶表示装置を、左右方向で0〜80度の角度から目視観察し、以下の基準で評価した
○:左右方向0〜80度の範囲で殆ど色度変化が認められなかった。
×:左右方向60度以上で赤みを帯びた。
【0183】
(耐候性)
円偏光反射板を、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機社製、S-80)を用いて、サンシャインカーボンアーク灯、相対湿度60%の条件にて、200時間露光した後取り出し、偏光板の色相の変化(ΔYI)を、色差計(スガ試験機社製)を用いて測定し、以下の指標で評価した。
○:ΔYIが2未満
×:ΔYIが2以上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、該透明基材の上に形成された選択反射層とを有する、光源を備える装置に用いる光学素子であって、
前記透明基材が、熱可塑性樹脂を含んでなり、紫外線吸収剤が厚さ方向中央部に偏在しており且つ平均厚さが100μm未満のものであり、
入射角0度の光線を反射する波長帯域の下限λLが、光源が発する光の中で600nm〜700nmの波長帯域で最大発光強度を示す光の波長λR1よりも長い、光学素子。
【請求項2】
透明基材が、
紫外線吸収剤と熱可塑性樹脂とからなる中間層1、
該中間層1の一方の面に積層されるガラス転移温度(Tg)100℃以上のアクリル系樹脂からなる表面層2、及び
該中間層1のもう一方の面に積層されるガラス転移温度(Tg)100℃以上のアクリル系樹脂からなる表面層3
を有する積層体からなるものである、請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
入射角60度における波長600nm〜700nmの光の平均透過率が40%以上80%以下である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項4】
入射角0度における波長600nm〜700nmの光の平均透過率が60%以上であり、
入射角0度における波長600nm〜700nmの光の平均透過率が入射角60度における波長600nm〜700nmの光の平均透過率より大きい請求項1に記載の光学素子。
【請求項5】
入射角60度における波長600nm〜700nmの光の平均透過率が50%以上80%以下である請求項1に記載の光学素子。
【請求項6】
選択反射層が、コレステリック規則性を持つ樹脂層を含む、請求項1に記載の光学素子。
【請求項7】
選択反射層がコレステリック規則性を持つ樹脂層を含み、
該樹脂層のカイラルピッチが400nm以上であり、且つ
入射角0度における選択反射帯域での最大反射率が10%以上40%以下である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項8】
入射角0度における選択反射帯域で最大反射率を示す波長の光を、入射角60度で入射したときの反射率が、入射角0度における前記最大反射率の50%以上90%以下である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項9】
入射角60度における波長600nm〜700nmの光の平均反射率が20%以上60%以下である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項10】
請求項1に記載の光学素子と、直線偏光子とを積層させた偏光板。
【請求項11】
請求項1に記載の光学素子と、位相差素子とを積層させた位相差板。
【請求項12】
光反射素子、光源、光拡散素子、及び請求項1に記載の光学素子が、この順に配置された照明装置。
【請求項13】
光反射素子、光源、光拡散素子、及び請求項10に記載の偏光板が、この順に配置された偏光照明装置。
【請求項14】
光反射素子、光源、光拡散素子、請求項1に記載の光学素子、直線偏光子、液晶パネル及び検光子が、この順に配置された液晶表示装置。
【請求項15】
光源が冷陰極管、熱陰極管、発光ダイオード、及びエレクトロルミネセンスから選択されるものである請求項14に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−197224(P2008−197224A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30308(P2007−30308)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】