光学素子保持構造及びこの構造を用いた光学システム
【課題】光学素子の回転中心を一致させ、光学素子とほとんどサイズが変わらない大きさの光学素子保持具によって保持具の厚さを小さくして占有体積を極小化するとともに、光学素子間の距離を短くし、また保持具のガタやずれの発生を防止することが可能な光学素子保持構造、この構造を使用した光学システムを提供する
【解決手段】光学素子1を保持する、光学素子1とほとんどサイズが変わらない大きさの光学素子保持具2と、この光学素子保持具2の球面部6を移動可能に受ける球面部受け具3を備えた光学素子保持構造において、光学素子保持具2は内部に光学素子1を保持する光学素子保持部10が形成されるとともに、外周面に球面状の球面部6が形成され、球面部受け具3は内部に前記光学素子保持具2を保持する光学素子保持具保持部12が形成されるとともに、内周面に球面部6と同じ半径であって球面部6を摺合わせ可能に受ける球面くぼみ7が形成されている
【解決手段】光学素子1を保持する、光学素子1とほとんどサイズが変わらない大きさの光学素子保持具2と、この光学素子保持具2の球面部6を移動可能に受ける球面部受け具3を備えた光学素子保持構造において、光学素子保持具2は内部に光学素子1を保持する光学素子保持部10が形成されるとともに、外周面に球面状の球面部6が形成され、球面部受け具3は内部に前記光学素子保持具2を保持する光学素子保持具保持部12が形成されるとともに、内周面に球面部6と同じ半径であって球面部6を摺合わせ可能に受ける球面くぼみ7が形成されている
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー共振器などの光学システムに用いられる光学素子を支持する光学素子保持構造及びこの構造を用いた光学システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー共振器などの光学システムは、ビーム状の光の伝搬する光軸にそって、光学素子を配列して構成される(特許文献1〜3参照)。例えば、レーザー共振器は、光の波長や直進性により、位置精度は1ミクロン〜100ミクロン、角度精度1/1000度〜1/10度での調整が必要であるため、微少ピッチのネジあるいはマイクロメーターといった高精度送り機構と可動部を利用した高精度な光学位置合わせ機器、角度合わせ機器を複数並べて固定し、軸合わせという調整過程を行ってレーザー発振や増幅を得る。
【0003】
光学システムでは方向合わせあるいは角度合わせにおいて、各軸ごとに移動機構を分解して、それぞれに精度を持たせる手法が用いられており、位置移動に関してはレールと「高精度送り機構」の組み合わせが、角度移動に関してはボールポイントとバネ等を利用した蝶番と高精度送り機構が、あるいは回転ステージと「高精度位置送り機構」の組み合わせが各軸ごとに実装される。
【0004】
図10に従来の小型の位置決め装置の実例を示す。101はXYZ位置を調整するXY位置調整保持具であり光学素子は保持されず、高さは30mm程度である。3つの位置調整機構は独立しており、天板サイズ(15mm×15mm)に対して、大きな体積を必要とし、位置決めする対象の位置が位置決め中心にはこないのが通例である。
【0005】
102は、光学素子103をはめ込んでθ,φ,ψ角度を調整する光学素子保持具である。このように1つの光学素子の位置調整では最大三軸(X,Y,Z)と、向き・角度においても最大三軸(θ,φ,ψ)の最大6つ以下の調整機構が必要である。
【0006】
図11は、6軸調整可能な最小の固定具の実例である。XYZθφ位置調整保持具112は5軸調整が可能であるが、厚さ20mm、高さ34mmで、3mm径までの光学素子が光学素子設置穴114に取り付けられる。θφψ角度を調整する光学素子保持具112は光学素子設置穴115に12.7mmのサイズまでの光学素子が取り付けられるが、高さは55mmで光学素子中心部の高さは約40mmとなる。なお、113,116は調整ネジである。
【0007】
図12において、前記の保持具を利用して光学素子を並べるとき、光学素子間の相互位置関係を高精度に保つため、剛性の高い基盤121を用意して、その上に保持具122,123,124,125を並べていく。なお、126は保持具125のXYZθφ位置調整具、127は保持具125とXYZθφ位置調整具126の固定具、128は高さ調整用スペーサーである。
【0008】
図12,図13において、4つの光学素子が並べられ、保持具122にxyzθφ調整可能なレンズ131を、保持具123にθφψ調整可能なレーザー結晶132を、保持具124にθφ調整可能なミラー133を、保持具125にxyzθφ調整可能な光学結晶134をそれぞれ保持して並べた例である。剛性を保つため大きめの基盤121の上にネジなどで保持具を固定する必要がある。光がたどる光軸129,135が光学素子131〜134の中心を通るように並べる必要がある。しかし、光学素子中心が保持具122〜125のどこにあるかが各自ばらばらとなるため、保持具の高さ方向や水平方向(光軸に対しての垂直)に保持具122〜125をそれぞれずらして光軸129,135に合わせる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−171350号公報
【特許文献2】特開2005−340763号公報
【特許文献3】特開2000−12930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図13において、光学素子保持具を並べ、光学素子を保持して光学システムを構成するための最小サイズは、理論的には137の枠のサイズであるが、実際には調整・固定具の大きさにより136に示す枠までサイズが増大している。図13は横方向からみた断面であり、他の観点では図13の光学結晶134を支える図12のXYZ調整保持具125などもシステムの肥大化に関与している。図12の122もXYZの機構を持つために必要とされるが、余分な高さ調整などで光学システムのサイズを大きくしており、コストも高くなっている。
【0011】
さらに問題は保持具の光軸方向の厚さが大きいことである。図13のレーザー結晶132,ミラー133の光学素子サイズはそれぞれ5mm,3mm厚であるが、保持具の厚さは15mmで、光軸の調整機構部によって厚さが増している。並べる場合には図13のように向きを工夫して近接させることも可能であるが、138の距離で示す空間の様に調整機構部139があるためにどうしても近づけられない部分が現れる。図13ではレンズ131とレーザー結晶132の距離を1mmにしたいが、実際には10mm以下に近づけることができない。
【0012】
前項の問題を解決するため、図13の138の距離を縮めるために延長治具を設置した例があるが、延長治具の角度を変えるとレンズが上下に動いたり、ミラーが光軸方向に前後したりした結果、光軸からずれたり結晶間でぶつかったりする。この様に角度調整で位置が動いてしまうと、それが微少であっても本来の位置にもう一度戻すように補正しないといけなくなるため、調整が難しくなり、時には不可能になる。さらに、こうした小型調整具は調整できる距離や角度の許容範囲が狭いため、補正できる範囲も狭い。このように回転中心と光学素子の距離がある、従来の固定具の方法は小型の光学システムに向いていない。
【0013】
さらに、これらの機構は複雑であるため高価であり、且つ空きスペースが多いため、振動に弱い。また、剛性や精度の問題で、ガタが発生しやすい。同時に固定作業の締め込みでわずかに固定位置がずれる「ずれ」も発生しやすくなる。さらに機構が大きいことと、光学素子と基盤の距離も長くなることが多いことから、温度変化による金属や材料の熱膨張に起因するずれが大きくなりやすく、高精度が要求されるレーザーなどでは温度の影響も受けやすい。
【0014】
そこで、本発明は、光学素子の回転中心を一致させ、光学素子とほとんどサイズが変わらない大きさの光学素子保持具によって保持具の厚さを小さくして占有体積を極小化するとともに、光学素子間の距離を短くし、また保持具のガタやずれの発生を防止することが可能な光学素子保持構造、この構造を使用した光学システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、小型の光学素子を調整し、特定の位置・角度で固定する機構の内、角度を保持して固定する機構を独立させ、これを小型化した光学素子保持構造とすることで、前記課題を解決した。本発明は、球面受けを利用した3軸角度自由度を持つ光学素子保持構造が保持する光学素子自身とほとんどサイズが変わらない、角度自由度の高い、回転可能且つ固定可能な球面受けのアダプターを使用して一般の光学素子の外寸にそろえることができるような小型化を行ったものである。
【0016】
具体的には、本発明は、光学素子を保持する光学素子保持具と、この光学素子保持具の球面部を移動可能に受ける球面部受け具を備えた光学素子保持構造において、光学素子保持具は、光学素子保持具は、光学素子とほとんどサイズが変わらない大きさであり、内部に光学素子を保持する光学素子保持部が形成されるとともに、外周面に球面状の球面部が形成され、球面部受け具は内部に前記光学素子保持具を保持する光学素子保持具保持部が形成されるとともに、内周面に前記球面部と同じ半径であって球面部を摺合わせ可能に受ける球面くぼみが形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
球面受けを利用した3軸角度自由度を持つ光学素子保持構造が保持する光学素子自身とほとんどサイズが変わらない、角度自由度の高い、回転可能且つ固定可能な球面受けのアダプターを使用して一般の光学素子の外寸にそろえることができるような小型化の実現が可能となる。
【0018】
従来の光学システムのサイズを大きくする問題に対しては、3軸角度自由度を持つ光学素子保持構造を単純に一つの円筒スリーブに内に固定するだけで、ほぼ、図4に示すような光学素子部のみのサイズと同等のサイズで光学システムを保持することができるようになる。また、前述の延長治具の先端に球面受け保持具を取り付けることで、従来の延長治具における衝突や軸ずれの課題を解決できる。この延長治具が有効になることで従来の延長治具では光学素子間の距離が縮まらないという課題も解決できる。
【0019】
レールを利用しない微少体積のXYZ調整可能な機構を小型化し、光学素子保持構造と組み合わせるあるいは単独で利用することで、前述の従来のXYZ調整機構を追加することにより光学システムの全体サイズが徒に大きくなる課題を解決する。具体的には、外周と内周円の中心をずらした円筒状の軸外し保持具により、XYZの3つの方向に対する調整自由度を提供する小型の固定具とした。2つのXY方向の調整については円筒の外周と内周円の中心をわずかにずらした軸外し保持具を二重に組み合わせて、別の円筒を最外側あるいは最内側に組み込んだ3重円筒構造を用いる。軸外し保持具を備えた光学素子保持構造の最内側の円筒内に光学素子を組み込む構造により、光学素子のXY方向の調整を可能としつつ、外形サイズは保持対象の光学素子をわずかに大きくしたサイズに押さえることが出来る。さらに、円筒をZ軸方向にスライドさせることで、Z方向の調整機構を追加してXYZ調整・保持機構の提供が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の光学素子保持構造は、光学素子の調整に必要な最大6軸の可動構造を最小の部品数と最小の体積の追加で実施できるため、複数の素子を0.1〜10mmの距離で並べる必要がある、マイクロチップレーザー発振器やファイバー結合機構などの光学システムの小型化に効果的である。特に光学素子の保持機構で可動となる軸の数を増やしたときに、従来の保持具が邪魔をして光学素子の距離があいてしまうという課題が起きない。
【0021】
本発明の光学素子保持構造は、光学素子を保持した光学素子保持具の球面部と同じ半径の球面くぼみを持つ球面部受け具にこれを内包させ、球面部受け具を円筒に挿入して、光学素子保持具が球面部受け具の中で回転することにより、θφψの3つの角度に対し、光学結晶のほぼ中心を回転中心として回転できる自由度を持つことになる。また、同時に光軸の方向にも球面部受け具を円筒の中で滑らせることで対応できるため、4軸の自由度を持つ可動機構となる。
【0022】
本発明の光学素子保持構造は、ベアリングなどの複雑な機構がないため、光学素子保持具、球面部受け具、円筒を薄い金属で作っても比較的高い固定強度を持つことができるため、全体のサイズを小さくすることが可能である。
【0023】
さらに、本発明の光学素子保持構造は、光学素子と光軸が常に光学素子保持構造の中心にあるため、従来の固定具のようなサイズを大きくする問題が起きない。また、円筒が筒状であることで基盤よりも肉薄であっても強度を得ることが可能であり、ここでもサイズを小さくすることが可能である。
【0024】
また、本発明の光学素子保持構造は、光学素子の光軸方向厚さとほぼ同じ厚さで作製することが容易である。光学素子の回転中心はほぼ光学素子の中心と一致するため、光学素子を複数並べる場合にそれらを近接配置しやすく、角度調整によっても光学素子の位置が動かないため、衝突や軸ずれの問題を回避できる。
【0025】
本発明は、さらに、円筒からネジなどで球面部受け具を締め付けることで間接的に光学素子保持具を全体的に締めて固定することができ、光学素子も間接的に締めることができる。また、軽く締めることで、調整時のガタをほぼ無くしたり、可動部の固さを調整したりできる。さらに固定時は結果的に、3つの回転軸(θ,φ,ψ)とZ軸を同時に固定することができる。
【0026】
さらに、軸外し保持具で小型化することで、図1にしめす従来のようなXYZ調整機構に比べて大幅に光学素子と支持基盤の距離を短くすることができ、保持に必要な金属の量も減ることから、振動、ずれ、がたつき、温度に起因する課題を解決することができる。また、軸外し量を調整することで、XY方向の調整精度を目的に合わせて調整できる。
【0027】
さらに軸外し保持具に光学素子保持具を内包することで6軸の自由度を持つ固定具を小体積で組み込むことが可能である。また、非常に小さいサイズに収まっており、光軸方向の厚さが光学素子のそれと同じであることにより、素子同士をほぼくっつけていても6軸の調整自由度を確保でき、しかも何個の素子でも連続的に近接して並べることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】小型光学素子をθφψの3軸の角度の自由度を与えつつ保持できる小型の光学素子保持構造を示す図である。
【図2】(a)は小型光学素子を保持し、xyzの3軸の位置の調整を可能にしつつ保持できる小型の軸外し保持具、(b)は組み立て後横から見た図である。
【図3】小型光学素子を保持し、xyzの3軸の位置の調整とθφψの3軸の角度の自由度を可能にしつつ、これらを固定できる小型の保持具の例を示す図である。
【図4】(a)は図13に示す3つの光学素子を用いる従来の保持具で保持した光学システム、(b)は本発明の光学素子保持構造により光学素子を保持した光学システムを示す図である。
【図5】本発明による角度固定具を用いて光学システムを構成した場合に、その微調整を外部の補助調整具で行う場合の模式図である。
【図6】本発明による角度固定具と従来の角度調整具を組み合わせた光学システムを示した図である。
【図7】本発明の光学素子保持具と軸外し保持具を利用して構成した半導体レーザー励起固体レーザーの光学システムを示した図である。
【図8】本発明による光学素子保持構造と位置調整・固定具とフレクシャーマウントの角度調整具を組み合わせた光学システムを示した図である。
【図9】図8の光学システムの組み立てと構造を説明するための図である。
【図10】従来の位置決め調整固定装置と角度調整装置と光学素子の実例図である。
【図11】XYZの三軸位置決め固定具とθφψの三軸角度調整・固定具の実例図である。
【図12】従来の固定具を利用して複数の小型光学素子を並べて作った光学システムの例を示す図である。
【図13】従来の固定具を利用して複数の小型光学素子を並べて作った光学システムの例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0029】
光学素子を保持する球面を備えた本発明の光学素子保持構造は、3つの回転軸(θ,φ,ψ)に対する調整自由度と固定機能を最小の体積で提供することが可能となる。図1で小型の光学素子1として例えば光学結晶(3mm×3mm×5mm)を内包させる例について説明する。
【0030】
光学素子保持構造は、光学素子保持具2、球面部受け具3で構成される。光学素子保持具2の内部には、保持する光学素子1のサイズにくりぬいた穴からなる光学素子保持部10が形成されている。光学素子保持穴10は、光学素子1よりわずかに小さな穴に形成し、一部を切り欠いた隙間9を有している。光学素子1を光学素子保持具2にセットする際、隙間を広げてから光学素子1を挿入する方式とすることにより光学素子1を自然に挟み込むことができるとともに、容易に保持することが可能となる。なお、隙間を設けることなく締めネジで保持するようにしてもよい。さらに、光学素子保持具2の外周には、球面状をした球面部6が形成されている。
【0031】
球面部受け具3の内部には光学素子保持具2の球面部6を移動可能に受けて光学素子保持具2を保持する円筒状の光学素子保持具受け部12が形成されている。
【0032】
受け部12球面部受け具3の受け部12の内周面には、光学素子保持具2の球面部6と同じ半径の球面くぼみ7が形成される。光学素子保持具2が球面部受け具3に挿入されると、球面部受け具3の球面くぼみ7と光学素子保持具2の球面部6が摺合わせられて自由に回転可能となる。光学素子保持具2を球面部受け具3にセットするときも、球面部受け具3の一部を切り欠いた隙間11を広げておいて、光学素子保持具2を内部に挿入してから、球面部受け具3を閉じることでセットできる。球面部受け具3は円筒4に挿入する。
【0033】
光学素子保持具2が球面部受け具3の中で回転することで、θφψの3つの角度に対し、光学素子のほぼ中心を回転中心として回転できる自由度をもつことになる。同時に光軸の方向にも球面部受け具3を円筒4の中で滑らせることで対応できるため、4軸の自由度を持つ可動機構となる。
【0034】
円筒4から止めネジ5で複数方向から球面部受け具3を締め付けて縮むようにすることで間接的に光学素子保持具2の球面部6を全体的に締められて光学素子1も間接的に締められ、結果的に、3つの回転軸(θ,φ,ψ)とZ軸を同時に固定することができる。
【実施例2】
【0035】
図2で、本発明の軸外し保持具について説明する。軸外し保持具は、外周と内周円の中心をずらして軸外しした軸外し内側円筒22、外周と内周円の中心をずらして軸外しした軸外し外側円筒23、円筒24で構成される。軸外し内側円筒22の中心に、例えば2mm直径の小型レンズの光学素子21がセットされる。軸外し内側円筒(2)は軸外し外側円筒23に挿入され、軸外し外側円筒23は円筒24に挿入され、軸外し内側円筒22をカニ穴25により軸外し外側円筒23内で回すことにより、角度調整後、ネジ6で固定される。
【0036】
図2(b)において、28は組み立て後横から見た断面であり、29は組み立て後の中心にあるレンズを示し、210は最も軸を外した場合の例で、レンズ21が中心より下に来ている。211はレンズ中心を左下にずらした例である。
【実施例3】
【0037】
本実施例では、軸外し保持具に光学素子保持具を保持した球面部受け具を内包することで6軸の自由度を持つ固定具を小体積で組み込むことか可能である。図3(a)において、実施例1と同様の光学素子保持具31に例えば3mm×3mm×5mmの光学結晶34が保持される。光学素子保持具31にはカニ穴35が形成されている。
【0038】
光学素子保持具31は、球面受けを有する外周と内周円の中心をずらして軸外しした円筒の第1の軸外し保持具32に保持される。軸外し保持具32にはカニ穴36が形成されている。軸外し保持具32は、外周と内周円の中心をずらして軸外しした第2の軸外し保持具33に挿入される。第2軸外し保持具33の軸外し距離は第1の軸外し保持具32の逆になっており、通常は第2の軸外し保持具33の中心に光学結晶34の中心が重なる。
【0039】
組み立て順を横から見た図3(b)、正面から見た図3(c)において、軸外し保持具32と軸外し保持具33の間で球面受け37が構成されるため、θφψの3軸の自由な変更と保持か可能となり、四つのカニ穴35,36は光学素子保持具31と軸外し保持具32の回転を行うときに用いる。軸外し保持具32と軸外し保持具33の軸外し二重円筒により、XY方向の調整が可能である。Z方向については、止めネジ38の外側の保持具33内での移動で行う。この外径は12.7mmと非常に小さいサイズに収まっており、光軸方向の厚さは、光学素子のそれと同じ、5mmである。これにより、素子同士をほぼくっつけていても6軸の調整自由度を確保でき、しかも何個の光学素子でも連続的に近接して並べることができる。なお、39は外筒である。
【実施例4】
【0040】
本実施例は、XYZ軸調整の必要がない光学システム全体の最小化を目指した例である。図4(a)は図10〜13に示す従来の保持具で3つの光学素子を保持した光学システムであり、(b)は本発明の球面受け保持具により3つの光学素子を保持した光学システムを示す図である。
【0041】
本発明の球面受け保持具2及び球面部受け具3により、図13に示した光学システムの最小のサイズ1347にほぼ等しいサイズで光学素子を固定することが可能となる。
【0042】
43はミラー、44は内部にホールドしている光学結晶のサイズが2mm直径の円筒、45は凸面ミラーで、レーザーの不安定共振器を構成している。
【0043】
図4(a)の従来の光学システムと図4(b)の本発明の光学システムとの間では、システムのサイズに大きな違いがある。本発明では図1に示す光学素子保持具2の内部の穴を変えるだけで対応することができる。粗調整は光学素子保持具2の穴に調整ピンを入れて行うことができる。三つの保持具は一つの円筒46に直列に収まっており、互いの距離は、図13に示す最小のサイズ1347の円筒部内の固定ネジで決まるが、円筒部は小型化しても剛性が落ちにくいため、光学素子のみより一回り大きいサイズだけで光学システムを保持できる。本実施例では、球面受け保持具2及び球面部受け具3の面摺合わせによるθφψの角の自由度、球面部受け具3による破線で示す光軸方向Zへの自由度が得られる。
【実施例5】
【0044】
図4(b)に示した本発明の光学システムの微調整方法について説明する。
【0045】
図5において、10〜25mm離れた位置を中心として回転できるゴニオステージ54とこれに取り付けた調整ピン53を本発明の保持具51の調整ピン挿入穴52に差し込んで最内固定部品を回転させて調整することができる。微調整であれば、横方向にあけたスリットを使って調整することも可能である。また、調整治具55により、2〜4個のネジで最内固定具部品を押して回転させることで粗調整を行う。調整後は各固定部を締めネジで固定し、調整具を取り外す。
【実施例6】
【0046】
図4(b)に示す本発明の光学システムの微調整方法において、他の微調整固定具製品との同時利用する方法について説明する。
【0047】
前記の図5に示すような外部にゴニオステージ54、調整ピン53、調整具55を用意すると、しばしば再調整が必要となる高精度レーザー共振器などでは、不便なことがある。そこで、本発明の球面受け保持具を汎用の調整・固定治具などの光学素子固定穴に取り付ける実施例を図6により説明する。
【0048】
凸面ミラー66を保持する保持具62は図4(a)の凸面ミラー45微調整固定具製品の様に逆さまにつり下げたりせずに、同一基盤68に固定して、延長用筒67を兼用した本発明の保持具を利用して凸面ミラー36を結晶65に近づけている。延長用筒67が通常の延長アダプターであれば、前述の従来の延長治具に起因する問題が起こるが、図6の方法では凸面ミラーを包む角度粗調整可能な球面受け保持具66により保持具62での調整は微調整のみになり、問題が起きない。同様に結晶64,結晶65においても大きく角度を変える調整は結晶64,結晶65自体の保持具の自由度を利用して行い、角度微調整固定具(1),(2)による調整は微少範囲にできるため、結晶がぶつかったり距離が変わってしまったりする問題が起きない。本実施例は、光学システムの小型化よりも、自由な再調整機構を確保しながら、小型の光学システムに起きやすい素子間の衝突や軸外れなどの問題を回避した実施例である。
【実施例7】
【0049】
本実施例は、光ファイバー、レンズを追加して再調整可能なレーザー共振器を組んだ例で、図7は光学素子保持具と軸外し保持具を利用して構成した半導体レーザー励起固体レーザーの光学システムである。
【0050】
レーザーにエネルギーを投入する光ファイバー71の光を集光レンズ73で集光して、結晶76に入射するとレーザーが出力され、結晶711で色が変換された光が得られる。各光学素子に必要な調整軸が光ファイバー71はθφ,集光レンズ73はθφxyz 、結晶76はθφψ,出力ミラー78はθφ,光変換結晶711はθφψとなる。また、結晶76と光変換結晶711は大きな回転角調整が必要である。そこで、レンズ(3)には軸外し保持具72が、球面受け角度固定具75と結晶711には光学素子保持具72が通常のθφ微調整ホルダーの球面受け角度固定具77,結晶角度微調整調整ホルダー712とともに組み込まれている。
【0051】
まず、光ファイバーとコネクタ71とファイバー角度微調整ホルダー74はZ方向以外は固定されている。光ファイバー71とレンズ73は相互のXYZ関係が重要であり、これを光学素子保持具72で調整している。光ファイバー71、軸外し保持具72、レンズ73は一体化して全体のθφがファイバー角度微調整ホルダー74で調整され、結晶に最適な条件で光が導入されることで、レーザーの出力が最大化できる。結晶76と出力ミラー78は高精度で平行でなければならないが、球面受け角度固定具75で粗調整、球面受け角度固定具77で微調整することで、レンズ73−結晶76間の距離や結晶76−出力ミラー78間の距離を変えずに平行度を微調整できる。さらに光変換結晶711は出力ミラー78に近接していながら、θφの粗調整・微調整をともに必要とするため、延長用円筒を有する固定具710で固定されている。全体の固定は基盤714で行えるため、全体が小型化できている。
【実施例8】
【0052】
本実施例は、フレクシャーマウント(siskiyou社製 IXF.50型など)と組み合わせて最も小型化した例である。実施例6で示した手法にフレクシャーマウントを使って小型化すると同時に、レーザー光軸をシステムの中心に持ってきた実施例を図8に示す。
【0053】
図8(a)はフレクシャーマウント81の外観である。アルミ等の金属の塊から削り出ししており、三つの板が2カ所一体型の板バネ82でつながった構造をもっている。角度調整はフレクシャーマウント81に見える二つのネジで板バネ82に逆らって隙間を押し広げることで行なう。可動範囲は小さいが構造が単純化できている。
【0054】
図8(b)の断面図に示すように、フレクシャーマウントは、中央がくりぬかれており、その両端にミラーなどを固定できる穴84(本例では0.5インチ直径)があるため、一つの固定具に二つのミラーを取り付け、基盤を利用しなくても二つの光学素子の角度調整ができる。
【0055】
図8(c)の正面図において、板バネが場所をとらないため、光学素子は中央の保持穴85に保持される。また、左上と右下のネジ穴を利用して、フレクシャーマウントは2個以上を直列につないでいくことができるため、基盤なしで数珠つなぎに光学素子を並べていくことができる。
【0056】
図8(d)には、内包された光学素子が並ぶ様子が示されている。符号86はレーザー共振器を動作させる半導体レーザーからの光ファイバー入力コネクタである。光ファイバー先端に近接して、マイクロレンズ87を配置し、XYZ調整を行うことで集光した光を、光学素子保持具88に内包されたレーザー結晶に結合している。ここで、光ファイバー86の出口とレンズ87の位置関係はXYZの微調整後は、高精度で固定保持されながら、レンズ87と光学素子保持具88の関係はθφZで調整する必要がある。このために大きめの光学素子保持具88を最左部に組み込んでいる。光学素子保持具88は出射ミラー810との平行を出すため、光学素子保持具88で粗調整、フレクシャーマウント89で微調整を行う。一般に、光学素子保持具88が利用できないと、フレクシャーマウント89のみの機構では調整範囲が狭いため調整が容易ではない。二つのフレクシャーマウント89を直列にしていることで、光学結晶811についてもθφψとZの粗調整とθφの微調整が必要となる。
【0057】
図8(e)に示す正面図において、真ん中に光学結晶が配置され、どの方向にも出っ張りがない、小型化が可能な構造になっていることが分かる。818は光学結晶などの光軸位置である。
【0058】
図9は図8の細部を理解するために、組み立て工程を示す図である。
【0059】
まず、工程(a)において、結晶91を挿入した光学素子保持具92を球面部受け具93に挿入し、延長筒(4)に固定する。
【0060】
工程(b)では、組み上げた結晶保持具96をフレクシャーマウント97に挿入して固定する。98はφ方向の可動性を与える板バネ、99はθ方向の可動性を与える板バネであり、フレクシャーマウント97は三つの板がつながった構造の真ん中に穴がくりぬかれた構造となっている。
【0061】
工程(c)では、フレクシャーマウントの右側からレーザーミラー912を固定化し、結晶の固定具913の調整によりレーザーミラー912−結晶913で共振器を構成する。また、フレクシャーマウントの隙間から、必要に応じて可飽和吸収体を挿入する。挿入する隙間はθの調整結果では閉じてしまうため、固定具913にある光学素子保持具で隙間ができるように調整することが必要であり、光学素子保持具なしでは挿入する隙間を確保するのが困難となる。
【0062】
次に工程(d)で、レーザー結晶ホルダー96の空洞に入る軸外し保持具を有するマイクロレンズホルダーを組み立てる。915はマイクロレンズ、916は軸外し保持具を先端に持つ光ファイバー接続機構である。914の工程の組み立て部品をフレクシャーマウントに挿入して光学素子保持具でθφZの調整を可能とする。球面受け919を球面部918で挟み込むことで、球面軸受けと同じ機構を提供し、内部に軸外し円筒調整・固定具を含む円筒を挿入することでZを調整可能とする。θφとZが独立に固定できることも調整手順上重要な機能である。
【0063】
さらに工程(e)では二つ目のフレクシャーマウント921を固定しておく。
【0064】
工程(f)では光ファイバーコネクター923の取り付けと、工程(d)で組み上げた部品の調整、本体への挿入をしめしている。逆方向から、波長変換結晶926を先端の光学素子保持具にセットした結晶ホルダー925を挿入し、θφψとZの調整を行う。
【0065】
(g)の完成した断面図に示されるように、四つの光学素子が近接した状態で且つθφなど必要な自由度の元を用いつつ高いに密接に、最小の体積に金属で保持されている。28)はレーザー出力である。共振器内に空間が少なく、光学素子は上下左右で保持具と密着しているため、保持具の金属は剛性があまり高くなくても良い。そのために小型化が可能であり、それが放熱なども改善する効果を発現している。図9において、波長変換結晶926のさらに右側に複数の結晶を設置し、θφの調整を行うことも可能である。
【符号の説明】
【0066】
1:光学素子
2:光学素子保持具
3:球面部受け具
6:球面部
7:球面くぼみ
9:隙間
10:光学素子保持部
11:隙間
12:光学素子保持具保持部
31:光学素子保持具
32:第1の軸外し保持具
33:第2軸外し保持具
43〜46:光学素子
46:円筒
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー共振器などの光学システムに用いられる光学素子を支持する光学素子保持構造及びこの構造を用いた光学システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー共振器などの光学システムは、ビーム状の光の伝搬する光軸にそって、光学素子を配列して構成される(特許文献1〜3参照)。例えば、レーザー共振器は、光の波長や直進性により、位置精度は1ミクロン〜100ミクロン、角度精度1/1000度〜1/10度での調整が必要であるため、微少ピッチのネジあるいはマイクロメーターといった高精度送り機構と可動部を利用した高精度な光学位置合わせ機器、角度合わせ機器を複数並べて固定し、軸合わせという調整過程を行ってレーザー発振や増幅を得る。
【0003】
光学システムでは方向合わせあるいは角度合わせにおいて、各軸ごとに移動機構を分解して、それぞれに精度を持たせる手法が用いられており、位置移動に関してはレールと「高精度送り機構」の組み合わせが、角度移動に関してはボールポイントとバネ等を利用した蝶番と高精度送り機構が、あるいは回転ステージと「高精度位置送り機構」の組み合わせが各軸ごとに実装される。
【0004】
図10に従来の小型の位置決め装置の実例を示す。101はXYZ位置を調整するXY位置調整保持具であり光学素子は保持されず、高さは30mm程度である。3つの位置調整機構は独立しており、天板サイズ(15mm×15mm)に対して、大きな体積を必要とし、位置決めする対象の位置が位置決め中心にはこないのが通例である。
【0005】
102は、光学素子103をはめ込んでθ,φ,ψ角度を調整する光学素子保持具である。このように1つの光学素子の位置調整では最大三軸(X,Y,Z)と、向き・角度においても最大三軸(θ,φ,ψ)の最大6つ以下の調整機構が必要である。
【0006】
図11は、6軸調整可能な最小の固定具の実例である。XYZθφ位置調整保持具112は5軸調整が可能であるが、厚さ20mm、高さ34mmで、3mm径までの光学素子が光学素子設置穴114に取り付けられる。θφψ角度を調整する光学素子保持具112は光学素子設置穴115に12.7mmのサイズまでの光学素子が取り付けられるが、高さは55mmで光学素子中心部の高さは約40mmとなる。なお、113,116は調整ネジである。
【0007】
図12において、前記の保持具を利用して光学素子を並べるとき、光学素子間の相互位置関係を高精度に保つため、剛性の高い基盤121を用意して、その上に保持具122,123,124,125を並べていく。なお、126は保持具125のXYZθφ位置調整具、127は保持具125とXYZθφ位置調整具126の固定具、128は高さ調整用スペーサーである。
【0008】
図12,図13において、4つの光学素子が並べられ、保持具122にxyzθφ調整可能なレンズ131を、保持具123にθφψ調整可能なレーザー結晶132を、保持具124にθφ調整可能なミラー133を、保持具125にxyzθφ調整可能な光学結晶134をそれぞれ保持して並べた例である。剛性を保つため大きめの基盤121の上にネジなどで保持具を固定する必要がある。光がたどる光軸129,135が光学素子131〜134の中心を通るように並べる必要がある。しかし、光学素子中心が保持具122〜125のどこにあるかが各自ばらばらとなるため、保持具の高さ方向や水平方向(光軸に対しての垂直)に保持具122〜125をそれぞれずらして光軸129,135に合わせる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−171350号公報
【特許文献2】特開2005−340763号公報
【特許文献3】特開2000−12930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図13において、光学素子保持具を並べ、光学素子を保持して光学システムを構成するための最小サイズは、理論的には137の枠のサイズであるが、実際には調整・固定具の大きさにより136に示す枠までサイズが増大している。図13は横方向からみた断面であり、他の観点では図13の光学結晶134を支える図12のXYZ調整保持具125などもシステムの肥大化に関与している。図12の122もXYZの機構を持つために必要とされるが、余分な高さ調整などで光学システムのサイズを大きくしており、コストも高くなっている。
【0011】
さらに問題は保持具の光軸方向の厚さが大きいことである。図13のレーザー結晶132,ミラー133の光学素子サイズはそれぞれ5mm,3mm厚であるが、保持具の厚さは15mmで、光軸の調整機構部によって厚さが増している。並べる場合には図13のように向きを工夫して近接させることも可能であるが、138の距離で示す空間の様に調整機構部139があるためにどうしても近づけられない部分が現れる。図13ではレンズ131とレーザー結晶132の距離を1mmにしたいが、実際には10mm以下に近づけることができない。
【0012】
前項の問題を解決するため、図13の138の距離を縮めるために延長治具を設置した例があるが、延長治具の角度を変えるとレンズが上下に動いたり、ミラーが光軸方向に前後したりした結果、光軸からずれたり結晶間でぶつかったりする。この様に角度調整で位置が動いてしまうと、それが微少であっても本来の位置にもう一度戻すように補正しないといけなくなるため、調整が難しくなり、時には不可能になる。さらに、こうした小型調整具は調整できる距離や角度の許容範囲が狭いため、補正できる範囲も狭い。このように回転中心と光学素子の距離がある、従来の固定具の方法は小型の光学システムに向いていない。
【0013】
さらに、これらの機構は複雑であるため高価であり、且つ空きスペースが多いため、振動に弱い。また、剛性や精度の問題で、ガタが発生しやすい。同時に固定作業の締め込みでわずかに固定位置がずれる「ずれ」も発生しやすくなる。さらに機構が大きいことと、光学素子と基盤の距離も長くなることが多いことから、温度変化による金属や材料の熱膨張に起因するずれが大きくなりやすく、高精度が要求されるレーザーなどでは温度の影響も受けやすい。
【0014】
そこで、本発明は、光学素子の回転中心を一致させ、光学素子とほとんどサイズが変わらない大きさの光学素子保持具によって保持具の厚さを小さくして占有体積を極小化するとともに、光学素子間の距離を短くし、また保持具のガタやずれの発生を防止することが可能な光学素子保持構造、この構造を使用した光学システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、小型の光学素子を調整し、特定の位置・角度で固定する機構の内、角度を保持して固定する機構を独立させ、これを小型化した光学素子保持構造とすることで、前記課題を解決した。本発明は、球面受けを利用した3軸角度自由度を持つ光学素子保持構造が保持する光学素子自身とほとんどサイズが変わらない、角度自由度の高い、回転可能且つ固定可能な球面受けのアダプターを使用して一般の光学素子の外寸にそろえることができるような小型化を行ったものである。
【0016】
具体的には、本発明は、光学素子を保持する光学素子保持具と、この光学素子保持具の球面部を移動可能に受ける球面部受け具を備えた光学素子保持構造において、光学素子保持具は、光学素子保持具は、光学素子とほとんどサイズが変わらない大きさであり、内部に光学素子を保持する光学素子保持部が形成されるとともに、外周面に球面状の球面部が形成され、球面部受け具は内部に前記光学素子保持具を保持する光学素子保持具保持部が形成されるとともに、内周面に前記球面部と同じ半径であって球面部を摺合わせ可能に受ける球面くぼみが形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
球面受けを利用した3軸角度自由度を持つ光学素子保持構造が保持する光学素子自身とほとんどサイズが変わらない、角度自由度の高い、回転可能且つ固定可能な球面受けのアダプターを使用して一般の光学素子の外寸にそろえることができるような小型化の実現が可能となる。
【0018】
従来の光学システムのサイズを大きくする問題に対しては、3軸角度自由度を持つ光学素子保持構造を単純に一つの円筒スリーブに内に固定するだけで、ほぼ、図4に示すような光学素子部のみのサイズと同等のサイズで光学システムを保持することができるようになる。また、前述の延長治具の先端に球面受け保持具を取り付けることで、従来の延長治具における衝突や軸ずれの課題を解決できる。この延長治具が有効になることで従来の延長治具では光学素子間の距離が縮まらないという課題も解決できる。
【0019】
レールを利用しない微少体積のXYZ調整可能な機構を小型化し、光学素子保持構造と組み合わせるあるいは単独で利用することで、前述の従来のXYZ調整機構を追加することにより光学システムの全体サイズが徒に大きくなる課題を解決する。具体的には、外周と内周円の中心をずらした円筒状の軸外し保持具により、XYZの3つの方向に対する調整自由度を提供する小型の固定具とした。2つのXY方向の調整については円筒の外周と内周円の中心をわずかにずらした軸外し保持具を二重に組み合わせて、別の円筒を最外側あるいは最内側に組み込んだ3重円筒構造を用いる。軸外し保持具を備えた光学素子保持構造の最内側の円筒内に光学素子を組み込む構造により、光学素子のXY方向の調整を可能としつつ、外形サイズは保持対象の光学素子をわずかに大きくしたサイズに押さえることが出来る。さらに、円筒をZ軸方向にスライドさせることで、Z方向の調整機構を追加してXYZ調整・保持機構の提供が可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の光学素子保持構造は、光学素子の調整に必要な最大6軸の可動構造を最小の部品数と最小の体積の追加で実施できるため、複数の素子を0.1〜10mmの距離で並べる必要がある、マイクロチップレーザー発振器やファイバー結合機構などの光学システムの小型化に効果的である。特に光学素子の保持機構で可動となる軸の数を増やしたときに、従来の保持具が邪魔をして光学素子の距離があいてしまうという課題が起きない。
【0021】
本発明の光学素子保持構造は、光学素子を保持した光学素子保持具の球面部と同じ半径の球面くぼみを持つ球面部受け具にこれを内包させ、球面部受け具を円筒に挿入して、光学素子保持具が球面部受け具の中で回転することにより、θφψの3つの角度に対し、光学結晶のほぼ中心を回転中心として回転できる自由度を持つことになる。また、同時に光軸の方向にも球面部受け具を円筒の中で滑らせることで対応できるため、4軸の自由度を持つ可動機構となる。
【0022】
本発明の光学素子保持構造は、ベアリングなどの複雑な機構がないため、光学素子保持具、球面部受け具、円筒を薄い金属で作っても比較的高い固定強度を持つことができるため、全体のサイズを小さくすることが可能である。
【0023】
さらに、本発明の光学素子保持構造は、光学素子と光軸が常に光学素子保持構造の中心にあるため、従来の固定具のようなサイズを大きくする問題が起きない。また、円筒が筒状であることで基盤よりも肉薄であっても強度を得ることが可能であり、ここでもサイズを小さくすることが可能である。
【0024】
また、本発明の光学素子保持構造は、光学素子の光軸方向厚さとほぼ同じ厚さで作製することが容易である。光学素子の回転中心はほぼ光学素子の中心と一致するため、光学素子を複数並べる場合にそれらを近接配置しやすく、角度調整によっても光学素子の位置が動かないため、衝突や軸ずれの問題を回避できる。
【0025】
本発明は、さらに、円筒からネジなどで球面部受け具を締め付けることで間接的に光学素子保持具を全体的に締めて固定することができ、光学素子も間接的に締めることができる。また、軽く締めることで、調整時のガタをほぼ無くしたり、可動部の固さを調整したりできる。さらに固定時は結果的に、3つの回転軸(θ,φ,ψ)とZ軸を同時に固定することができる。
【0026】
さらに、軸外し保持具で小型化することで、図1にしめす従来のようなXYZ調整機構に比べて大幅に光学素子と支持基盤の距離を短くすることができ、保持に必要な金属の量も減ることから、振動、ずれ、がたつき、温度に起因する課題を解決することができる。また、軸外し量を調整することで、XY方向の調整精度を目的に合わせて調整できる。
【0027】
さらに軸外し保持具に光学素子保持具を内包することで6軸の自由度を持つ固定具を小体積で組み込むことが可能である。また、非常に小さいサイズに収まっており、光軸方向の厚さが光学素子のそれと同じであることにより、素子同士をほぼくっつけていても6軸の調整自由度を確保でき、しかも何個の素子でも連続的に近接して並べることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】小型光学素子をθφψの3軸の角度の自由度を与えつつ保持できる小型の光学素子保持構造を示す図である。
【図2】(a)は小型光学素子を保持し、xyzの3軸の位置の調整を可能にしつつ保持できる小型の軸外し保持具、(b)は組み立て後横から見た図である。
【図3】小型光学素子を保持し、xyzの3軸の位置の調整とθφψの3軸の角度の自由度を可能にしつつ、これらを固定できる小型の保持具の例を示す図である。
【図4】(a)は図13に示す3つの光学素子を用いる従来の保持具で保持した光学システム、(b)は本発明の光学素子保持構造により光学素子を保持した光学システムを示す図である。
【図5】本発明による角度固定具を用いて光学システムを構成した場合に、その微調整を外部の補助調整具で行う場合の模式図である。
【図6】本発明による角度固定具と従来の角度調整具を組み合わせた光学システムを示した図である。
【図7】本発明の光学素子保持具と軸外し保持具を利用して構成した半導体レーザー励起固体レーザーの光学システムを示した図である。
【図8】本発明による光学素子保持構造と位置調整・固定具とフレクシャーマウントの角度調整具を組み合わせた光学システムを示した図である。
【図9】図8の光学システムの組み立てと構造を説明するための図である。
【図10】従来の位置決め調整固定装置と角度調整装置と光学素子の実例図である。
【図11】XYZの三軸位置決め固定具とθφψの三軸角度調整・固定具の実例図である。
【図12】従来の固定具を利用して複数の小型光学素子を並べて作った光学システムの例を示す図である。
【図13】従来の固定具を利用して複数の小型光学素子を並べて作った光学システムの例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0029】
光学素子を保持する球面を備えた本発明の光学素子保持構造は、3つの回転軸(θ,φ,ψ)に対する調整自由度と固定機能を最小の体積で提供することが可能となる。図1で小型の光学素子1として例えば光学結晶(3mm×3mm×5mm)を内包させる例について説明する。
【0030】
光学素子保持構造は、光学素子保持具2、球面部受け具3で構成される。光学素子保持具2の内部には、保持する光学素子1のサイズにくりぬいた穴からなる光学素子保持部10が形成されている。光学素子保持穴10は、光学素子1よりわずかに小さな穴に形成し、一部を切り欠いた隙間9を有している。光学素子1を光学素子保持具2にセットする際、隙間を広げてから光学素子1を挿入する方式とすることにより光学素子1を自然に挟み込むことができるとともに、容易に保持することが可能となる。なお、隙間を設けることなく締めネジで保持するようにしてもよい。さらに、光学素子保持具2の外周には、球面状をした球面部6が形成されている。
【0031】
球面部受け具3の内部には光学素子保持具2の球面部6を移動可能に受けて光学素子保持具2を保持する円筒状の光学素子保持具受け部12が形成されている。
【0032】
受け部12球面部受け具3の受け部12の内周面には、光学素子保持具2の球面部6と同じ半径の球面くぼみ7が形成される。光学素子保持具2が球面部受け具3に挿入されると、球面部受け具3の球面くぼみ7と光学素子保持具2の球面部6が摺合わせられて自由に回転可能となる。光学素子保持具2を球面部受け具3にセットするときも、球面部受け具3の一部を切り欠いた隙間11を広げておいて、光学素子保持具2を内部に挿入してから、球面部受け具3を閉じることでセットできる。球面部受け具3は円筒4に挿入する。
【0033】
光学素子保持具2が球面部受け具3の中で回転することで、θφψの3つの角度に対し、光学素子のほぼ中心を回転中心として回転できる自由度をもつことになる。同時に光軸の方向にも球面部受け具3を円筒4の中で滑らせることで対応できるため、4軸の自由度を持つ可動機構となる。
【0034】
円筒4から止めネジ5で複数方向から球面部受け具3を締め付けて縮むようにすることで間接的に光学素子保持具2の球面部6を全体的に締められて光学素子1も間接的に締められ、結果的に、3つの回転軸(θ,φ,ψ)とZ軸を同時に固定することができる。
【実施例2】
【0035】
図2で、本発明の軸外し保持具について説明する。軸外し保持具は、外周と内周円の中心をずらして軸外しした軸外し内側円筒22、外周と内周円の中心をずらして軸外しした軸外し外側円筒23、円筒24で構成される。軸外し内側円筒22の中心に、例えば2mm直径の小型レンズの光学素子21がセットされる。軸外し内側円筒(2)は軸外し外側円筒23に挿入され、軸外し外側円筒23は円筒24に挿入され、軸外し内側円筒22をカニ穴25により軸外し外側円筒23内で回すことにより、角度調整後、ネジ6で固定される。
【0036】
図2(b)において、28は組み立て後横から見た断面であり、29は組み立て後の中心にあるレンズを示し、210は最も軸を外した場合の例で、レンズ21が中心より下に来ている。211はレンズ中心を左下にずらした例である。
【実施例3】
【0037】
本実施例では、軸外し保持具に光学素子保持具を保持した球面部受け具を内包することで6軸の自由度を持つ固定具を小体積で組み込むことか可能である。図3(a)において、実施例1と同様の光学素子保持具31に例えば3mm×3mm×5mmの光学結晶34が保持される。光学素子保持具31にはカニ穴35が形成されている。
【0038】
光学素子保持具31は、球面受けを有する外周と内周円の中心をずらして軸外しした円筒の第1の軸外し保持具32に保持される。軸外し保持具32にはカニ穴36が形成されている。軸外し保持具32は、外周と内周円の中心をずらして軸外しした第2の軸外し保持具33に挿入される。第2軸外し保持具33の軸外し距離は第1の軸外し保持具32の逆になっており、通常は第2の軸外し保持具33の中心に光学結晶34の中心が重なる。
【0039】
組み立て順を横から見た図3(b)、正面から見た図3(c)において、軸外し保持具32と軸外し保持具33の間で球面受け37が構成されるため、θφψの3軸の自由な変更と保持か可能となり、四つのカニ穴35,36は光学素子保持具31と軸外し保持具32の回転を行うときに用いる。軸外し保持具32と軸外し保持具33の軸外し二重円筒により、XY方向の調整が可能である。Z方向については、止めネジ38の外側の保持具33内での移動で行う。この外径は12.7mmと非常に小さいサイズに収まっており、光軸方向の厚さは、光学素子のそれと同じ、5mmである。これにより、素子同士をほぼくっつけていても6軸の調整自由度を確保でき、しかも何個の光学素子でも連続的に近接して並べることができる。なお、39は外筒である。
【実施例4】
【0040】
本実施例は、XYZ軸調整の必要がない光学システム全体の最小化を目指した例である。図4(a)は図10〜13に示す従来の保持具で3つの光学素子を保持した光学システムであり、(b)は本発明の球面受け保持具により3つの光学素子を保持した光学システムを示す図である。
【0041】
本発明の球面受け保持具2及び球面部受け具3により、図13に示した光学システムの最小のサイズ1347にほぼ等しいサイズで光学素子を固定することが可能となる。
【0042】
43はミラー、44は内部にホールドしている光学結晶のサイズが2mm直径の円筒、45は凸面ミラーで、レーザーの不安定共振器を構成している。
【0043】
図4(a)の従来の光学システムと図4(b)の本発明の光学システムとの間では、システムのサイズに大きな違いがある。本発明では図1に示す光学素子保持具2の内部の穴を変えるだけで対応することができる。粗調整は光学素子保持具2の穴に調整ピンを入れて行うことができる。三つの保持具は一つの円筒46に直列に収まっており、互いの距離は、図13に示す最小のサイズ1347の円筒部内の固定ネジで決まるが、円筒部は小型化しても剛性が落ちにくいため、光学素子のみより一回り大きいサイズだけで光学システムを保持できる。本実施例では、球面受け保持具2及び球面部受け具3の面摺合わせによるθφψの角の自由度、球面部受け具3による破線で示す光軸方向Zへの自由度が得られる。
【実施例5】
【0044】
図4(b)に示した本発明の光学システムの微調整方法について説明する。
【0045】
図5において、10〜25mm離れた位置を中心として回転できるゴニオステージ54とこれに取り付けた調整ピン53を本発明の保持具51の調整ピン挿入穴52に差し込んで最内固定部品を回転させて調整することができる。微調整であれば、横方向にあけたスリットを使って調整することも可能である。また、調整治具55により、2〜4個のネジで最内固定具部品を押して回転させることで粗調整を行う。調整後は各固定部を締めネジで固定し、調整具を取り外す。
【実施例6】
【0046】
図4(b)に示す本発明の光学システムの微調整方法において、他の微調整固定具製品との同時利用する方法について説明する。
【0047】
前記の図5に示すような外部にゴニオステージ54、調整ピン53、調整具55を用意すると、しばしば再調整が必要となる高精度レーザー共振器などでは、不便なことがある。そこで、本発明の球面受け保持具を汎用の調整・固定治具などの光学素子固定穴に取り付ける実施例を図6により説明する。
【0048】
凸面ミラー66を保持する保持具62は図4(a)の凸面ミラー45微調整固定具製品の様に逆さまにつり下げたりせずに、同一基盤68に固定して、延長用筒67を兼用した本発明の保持具を利用して凸面ミラー36を結晶65に近づけている。延長用筒67が通常の延長アダプターであれば、前述の従来の延長治具に起因する問題が起こるが、図6の方法では凸面ミラーを包む角度粗調整可能な球面受け保持具66により保持具62での調整は微調整のみになり、問題が起きない。同様に結晶64,結晶65においても大きく角度を変える調整は結晶64,結晶65自体の保持具の自由度を利用して行い、角度微調整固定具(1),(2)による調整は微少範囲にできるため、結晶がぶつかったり距離が変わってしまったりする問題が起きない。本実施例は、光学システムの小型化よりも、自由な再調整機構を確保しながら、小型の光学システムに起きやすい素子間の衝突や軸外れなどの問題を回避した実施例である。
【実施例7】
【0049】
本実施例は、光ファイバー、レンズを追加して再調整可能なレーザー共振器を組んだ例で、図7は光学素子保持具と軸外し保持具を利用して構成した半導体レーザー励起固体レーザーの光学システムである。
【0050】
レーザーにエネルギーを投入する光ファイバー71の光を集光レンズ73で集光して、結晶76に入射するとレーザーが出力され、結晶711で色が変換された光が得られる。各光学素子に必要な調整軸が光ファイバー71はθφ,集光レンズ73はθφxyz 、結晶76はθφψ,出力ミラー78はθφ,光変換結晶711はθφψとなる。また、結晶76と光変換結晶711は大きな回転角調整が必要である。そこで、レンズ(3)には軸外し保持具72が、球面受け角度固定具75と結晶711には光学素子保持具72が通常のθφ微調整ホルダーの球面受け角度固定具77,結晶角度微調整調整ホルダー712とともに組み込まれている。
【0051】
まず、光ファイバーとコネクタ71とファイバー角度微調整ホルダー74はZ方向以外は固定されている。光ファイバー71とレンズ73は相互のXYZ関係が重要であり、これを光学素子保持具72で調整している。光ファイバー71、軸外し保持具72、レンズ73は一体化して全体のθφがファイバー角度微調整ホルダー74で調整され、結晶に最適な条件で光が導入されることで、レーザーの出力が最大化できる。結晶76と出力ミラー78は高精度で平行でなければならないが、球面受け角度固定具75で粗調整、球面受け角度固定具77で微調整することで、レンズ73−結晶76間の距離や結晶76−出力ミラー78間の距離を変えずに平行度を微調整できる。さらに光変換結晶711は出力ミラー78に近接していながら、θφの粗調整・微調整をともに必要とするため、延長用円筒を有する固定具710で固定されている。全体の固定は基盤714で行えるため、全体が小型化できている。
【実施例8】
【0052】
本実施例は、フレクシャーマウント(siskiyou社製 IXF.50型など)と組み合わせて最も小型化した例である。実施例6で示した手法にフレクシャーマウントを使って小型化すると同時に、レーザー光軸をシステムの中心に持ってきた実施例を図8に示す。
【0053】
図8(a)はフレクシャーマウント81の外観である。アルミ等の金属の塊から削り出ししており、三つの板が2カ所一体型の板バネ82でつながった構造をもっている。角度調整はフレクシャーマウント81に見える二つのネジで板バネ82に逆らって隙間を押し広げることで行なう。可動範囲は小さいが構造が単純化できている。
【0054】
図8(b)の断面図に示すように、フレクシャーマウントは、中央がくりぬかれており、その両端にミラーなどを固定できる穴84(本例では0.5インチ直径)があるため、一つの固定具に二つのミラーを取り付け、基盤を利用しなくても二つの光学素子の角度調整ができる。
【0055】
図8(c)の正面図において、板バネが場所をとらないため、光学素子は中央の保持穴85に保持される。また、左上と右下のネジ穴を利用して、フレクシャーマウントは2個以上を直列につないでいくことができるため、基盤なしで数珠つなぎに光学素子を並べていくことができる。
【0056】
図8(d)には、内包された光学素子が並ぶ様子が示されている。符号86はレーザー共振器を動作させる半導体レーザーからの光ファイバー入力コネクタである。光ファイバー先端に近接して、マイクロレンズ87を配置し、XYZ調整を行うことで集光した光を、光学素子保持具88に内包されたレーザー結晶に結合している。ここで、光ファイバー86の出口とレンズ87の位置関係はXYZの微調整後は、高精度で固定保持されながら、レンズ87と光学素子保持具88の関係はθφZで調整する必要がある。このために大きめの光学素子保持具88を最左部に組み込んでいる。光学素子保持具88は出射ミラー810との平行を出すため、光学素子保持具88で粗調整、フレクシャーマウント89で微調整を行う。一般に、光学素子保持具88が利用できないと、フレクシャーマウント89のみの機構では調整範囲が狭いため調整が容易ではない。二つのフレクシャーマウント89を直列にしていることで、光学結晶811についてもθφψとZの粗調整とθφの微調整が必要となる。
【0057】
図8(e)に示す正面図において、真ん中に光学結晶が配置され、どの方向にも出っ張りがない、小型化が可能な構造になっていることが分かる。818は光学結晶などの光軸位置である。
【0058】
図9は図8の細部を理解するために、組み立て工程を示す図である。
【0059】
まず、工程(a)において、結晶91を挿入した光学素子保持具92を球面部受け具93に挿入し、延長筒(4)に固定する。
【0060】
工程(b)では、組み上げた結晶保持具96をフレクシャーマウント97に挿入して固定する。98はφ方向の可動性を与える板バネ、99はθ方向の可動性を与える板バネであり、フレクシャーマウント97は三つの板がつながった構造の真ん中に穴がくりぬかれた構造となっている。
【0061】
工程(c)では、フレクシャーマウントの右側からレーザーミラー912を固定化し、結晶の固定具913の調整によりレーザーミラー912−結晶913で共振器を構成する。また、フレクシャーマウントの隙間から、必要に応じて可飽和吸収体を挿入する。挿入する隙間はθの調整結果では閉じてしまうため、固定具913にある光学素子保持具で隙間ができるように調整することが必要であり、光学素子保持具なしでは挿入する隙間を確保するのが困難となる。
【0062】
次に工程(d)で、レーザー結晶ホルダー96の空洞に入る軸外し保持具を有するマイクロレンズホルダーを組み立てる。915はマイクロレンズ、916は軸外し保持具を先端に持つ光ファイバー接続機構である。914の工程の組み立て部品をフレクシャーマウントに挿入して光学素子保持具でθφZの調整を可能とする。球面受け919を球面部918で挟み込むことで、球面軸受けと同じ機構を提供し、内部に軸外し円筒調整・固定具を含む円筒を挿入することでZを調整可能とする。θφとZが独立に固定できることも調整手順上重要な機能である。
【0063】
さらに工程(e)では二つ目のフレクシャーマウント921を固定しておく。
【0064】
工程(f)では光ファイバーコネクター923の取り付けと、工程(d)で組み上げた部品の調整、本体への挿入をしめしている。逆方向から、波長変換結晶926を先端の光学素子保持具にセットした結晶ホルダー925を挿入し、θφψとZの調整を行う。
【0065】
(g)の完成した断面図に示されるように、四つの光学素子が近接した状態で且つθφなど必要な自由度の元を用いつつ高いに密接に、最小の体積に金属で保持されている。28)はレーザー出力である。共振器内に空間が少なく、光学素子は上下左右で保持具と密着しているため、保持具の金属は剛性があまり高くなくても良い。そのために小型化が可能であり、それが放熱なども改善する効果を発現している。図9において、波長変換結晶926のさらに右側に複数の結晶を設置し、θφの調整を行うことも可能である。
【符号の説明】
【0066】
1:光学素子
2:光学素子保持具
3:球面部受け具
6:球面部
7:球面くぼみ
9:隙間
10:光学素子保持部
11:隙間
12:光学素子保持具保持部
31:光学素子保持具
32:第1の軸外し保持具
33:第2軸外し保持具
43〜46:光学素子
46:円筒
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子を保持する光学素子保持具と、この光学素子保持具の球面部を移動可能に受ける球面部受け具を備えた光学素子保持構造において、
光学素子保持具は、光学素子とほとんどサイズが変わらない大きさであり、内部に光学素子を保持する光学素子保持部が形成されるとともに、外周面に球面状の球面部が形成され、
球面部受け具は内部に前記光学素子保持具を保持する光学素子保持具保持部が形成されるとともに、内周面に前記球面部と同じ半径であって球面部を摺合わせ可能に受ける球面くぼみが形成されていることを特徴とする光学素子保持構造。
【請求項2】
前記光学素子保持具の球面部の回転中心が保持した光学素子の中心部と一致するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光学素子保持構造。
【請求項3】
光学素子保持部は光学素子より小さな穴に形成し、光学素子を挿入する際に拡げる、一部を切り欠いた隙間を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学素子保持構造。
【請求項4】
光学素子保持具保持部は光学素子保持具より小さな穴に形成し、光学素子保持具を挿入する際に拡げる、一部を切り欠いた隙間を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学素子保持構造。
【請求項5】
光学素子が保持される請求項1〜4のいずれかに記載の光学素子保持構造と、
この光学素子保持構造を保持する外周に球面受けを有する外周と内周円の中心をずらした第1の軸外し保持具と、
第1の軸外し保持具を保持する外周と内周円の中心をずらした第2の軸外し保持具を備えたことを特徴とする光学素子保持構造。
【請求項6】
前記軸外し保持具と前記軸外し円筒どうしがZ方向にスライド可能であることを特徴とする請求項3記載の光学素子保持構造。
【請求項7】
光学素子が請求項1〜6のいずれかに記載されている光学素子保持構造に保持されて直列、並列あるいは角度付きで配置されていることを特徴とする光学システム。
【請求項1】
光学素子を保持する光学素子保持具と、この光学素子保持具の球面部を移動可能に受ける球面部受け具を備えた光学素子保持構造において、
光学素子保持具は、光学素子とほとんどサイズが変わらない大きさであり、内部に光学素子を保持する光学素子保持部が形成されるとともに、外周面に球面状の球面部が形成され、
球面部受け具は内部に前記光学素子保持具を保持する光学素子保持具保持部が形成されるとともに、内周面に前記球面部と同じ半径であって球面部を摺合わせ可能に受ける球面くぼみが形成されていることを特徴とする光学素子保持構造。
【請求項2】
前記光学素子保持具の球面部の回転中心が保持した光学素子の中心部と一致するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光学素子保持構造。
【請求項3】
光学素子保持部は光学素子より小さな穴に形成し、光学素子を挿入する際に拡げる、一部を切り欠いた隙間を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学素子保持構造。
【請求項4】
光学素子保持具保持部は光学素子保持具より小さな穴に形成し、光学素子保持具を挿入する際に拡げる、一部を切り欠いた隙間を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学素子保持構造。
【請求項5】
光学素子が保持される請求項1〜4のいずれかに記載の光学素子保持構造と、
この光学素子保持構造を保持する外周に球面受けを有する外周と内周円の中心をずらした第1の軸外し保持具と、
第1の軸外し保持具を保持する外周と内周円の中心をずらした第2の軸外し保持具を備えたことを特徴とする光学素子保持構造。
【請求項6】
前記軸外し保持具と前記軸外し円筒どうしがZ方向にスライド可能であることを特徴とする請求項3記載の光学素子保持構造。
【請求項7】
光学素子が請求項1〜6のいずれかに記載されている光学素子保持構造に保持されて直列、並列あるいは角度付きで配置されていることを特徴とする光学システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−107522(P2011−107522A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264023(P2009−264023)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(509320715)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(509320715)
【Fターム(参考)】
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