説明

光学素子表面のパターニング方法

【課題】 光学素子の表面に効率良く均一なパターンを形成してパターニングの品質を高める光学素子表面のパターニング方法を提供する。
【解決手段】 光学素子を載置する支持面を具え、且つ内部に複数の冷却管を配設してなるダイセット部と、
該ダイセット部の支持面の周囲に設けられ該光学素子を固定する挟持部と、該ダイセット部の支持面に対向するとともに、所定のパターンを形成する入子が設けられてなる圧接面を具え、且つ内部に加熱手段が設けられるダイと、該ダイの上方に設けられ、該ダイを駆動して光学素子に対する熱圧接を進行させる駆動手段と、を含んでなる光学素子表面のパターニング装置を利用して、光学素子を該ダイセット部の支持面に固定し、ダイの位置を調整して該光学素子上に対応させ、熱圧接方式で該ダイを該光学素子に圧接させ、該入子を該光学素子の表面に圧入させてパターンを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子表面のパターニング方法に関し、特に液晶表示パネルなどのバックライトモジュールに用いられる光学素子の表面にパターニングする加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ(TFT−LCD)製造技術の急速な進歩に伴い、液晶表示装置は体積が縮小し、軽く、薄くなるとともに、高い節電効果を具え、かつ輻射線の放射を効果的に抑制できるなどの特徴を具えるようになり、例えばパーソナル・ディジタル・アシスト(PDA)、ノートブックタイプ・コンピュータ、ディジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話機などの電子製品に広く応用されている。また、業界の積極的な研究開発と、大型化された生産設備の投入によって、液晶表示装置は品質が絶え間無く高められ、その反面価格が低下している。このため液晶表示装置の応用範囲が迅速に拡大している。但し、液晶表示装置は非発光性の表示装置であって、バックライトモジュールによって画像の表示機能が賦与される。
【0003】
図1に従来の液晶表示装置のバックライトモジュールを開示する。図示によれば、従来のバックライトモジュール(10)は、ライトガイド(11)と、反射板(12)と、ランプ(13)と、複数層の光学フィルム(14)と、フレーム(15)とによってなる。ライドガイド(11)と光学フィルム(14)は、いずれもアクリルなどの透過性の材質を射出成形か或いは押出成形によって形成する。また、該ライトガイド(11)の下部表面と光学フィルム(14)の表面にはいずれも適宜なパターン形成する。これらパターンは、光線を錯乱させる散乱点(16)としてバックライトモジュール(10)の輝度を高めるとともに、バックライトモジュール(10)が広角で照射できるようにする効果を有する。
【0004】
ライトガイド(11)の下方に設ける反射板(12)は、ライトガイド(11)を透過して下方に至る光線を反射してライトガイド(11)内に戻し、光線の利用効率を高める作用を有する。ライトガイド(11)の側面に設けられるランプ(13)は冷陰管(Cold Cathode Fluorescent Tube)を用い、エッジライト(Edge-Light type)方式で光線をライトガイド(11)に照射する。バックライトモジュール(10)の下方と側面に設けるフレーム(15)はバックライトモジュール(10)とバックライトモジュール(10)の内部の素子を保護する効果を有する。
【0005】
アメリカ合衆国特許・出願Appl. No 09/766,774号及びNo 09/766,914は、ガイドライトの下表面に図案を形成する方法と装置に関するものであって、複数のピン(pin)を具えたカッター(cutter)を利用して該ピンをガイドライトの表面に挿入するとともに、駆動装置によってカッターとガイドライトとを相対させて駆動し、かつ該ピンによってガイドライト表面に複数のV字状を呈する溝を有するパターンを形成する。ガイドライト表面の図案は、ランプから遠くなるとともに密度が減少していく。これはガイドライト内部の光を均一に拡散させるためである。
【0006】
しかし、ピンを具えたカッターを利用してガイドライトの表面に複数のV字状の溝を形成する方法は、ガイドライトの表面を繰り返して切削するために、加工時間がかかり作業効率が低下するとともに、切削の過程においてピンが容易に磨耗し、溝のサイズに誤差が生じる。また、同様にV字状を呈する溝であっても、切削の動作においてピンから受ける力がそれぞれの溝の位置において異なるため、形成される個々のパターンがいずれも同様であるとは限らない。よって、バックライトモジュールの品質に影響を与える。
【0007】
よって、従来の光学素子の表面に対するパターニング方法における欠点を改善し、パターニングの品質を高めるとともに、より効率よくパターニングを行う方法の開発が、業界における急務となっている。
【特許文献1】アメリカ合衆国特許出願Appl. No09/766,774号公報
【特許文献2】アメリカ合衆国特許出願Appl. No09/766,914の公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、光学素子の表面に均一なパターンを形成してパターニングの品質を高めることができる光学素子表面のパターニング方法を提供することを課題とする。
【0009】
また、この発明は、光学素子の表面にパターンを形成する場合、効率よくパターニングを行うことができ、表面処理の速度を高めることのできる光学素子表面のパターニング方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明者は従来の技術に見られる欠点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、光学素子を載置する支持面を具え、且つ内部に複数の冷却管を配設してなるダイセット部と、該ダイセット部の支持面の周囲に設けられ該光学素子を固定する挟持部と、該ダイセット部の支持面に対向するとともに、所定のパターンを形成する入子が設けられてなる圧接面を具え、且つ内部に加熱手段が設けられるダイと、該ダイの上方に設けられ、該ダイを駆動して光学素子に対する熱圧接を進行させる駆動手段とによって光学素子表面のパターニング装置を構成し、光学素子を該ダイセット部の支持面に固定し、ダイの位置を調整して該光学素子上に対応させ、熱圧接方式で該ダイを該光学素子に圧接させ、該入子を該光学素子の表面に圧入させてパターンを形成する光学素子表面のパターニング方法によって課題を解決できる点に着眼し、かかる知見に基づいて本発明を完成させた。
【0011】
前記光学素子は、ライトガイド、散乱板、もしくは光学フィルムなどであって、該ダイセット部の支持面に載置して該挟持部で固定してパターニング加工を施す。この場合、加熱手段によってダイを光学素子の溶解する臨界温度に至るまで高めて、駆動手段で光学素子に圧接させる。また、同時に該ダイセット内部に設けた冷却管で光学素子の溶解した部分の固形化を早めるとともに、熱圧接の過程において光学素子に反り、変形などが発生することを防ぐ。かかる光学素子表面のパターニング方法によって本発明の課題を解決することができる。
【0012】
以下、この発明について具体的に説明する。
請求項1に記載する光学素子表面のパターニング方法は、支持面を有するダイセット部を準備するステップと、
光学素子を該ダイセット部の支持面に固定するステップと、
圧接面を有し、該圧接面に複数の所定のパターンを形成する入子が設けられたダイの位置を調整して該光学素子上に対応させるステップと、
熱圧接方式で該ダイを該光学素子に圧接させ、該入子を該光学素子の表面に圧入させるステップと、
該ダイを該光学素子から離し、該光学素子の表面に該入子に対応するパターンを形成するステップと、を含む。
【0013】
請求項2に記載する光学素子表面のパターニング方法は、請求項1におけるダイセット部の内部に複数の冷却管を設けてなり、該ダイによって該光学素子に対して熱圧接を行い、光学素子を変形させる過程において、該冷却管によって該光学素子を急速に冷却し、該光学素子に反りが発生したり、変形したりすることを防ぐステップを含む。
【0014】
請求項3に記載する光学素子表面のパターニング方法は、請求項1におけるダイセット部が、挟持部を具えてなり、該光学素子を該ダイセット部の支持面に固定するステップにおいて、該挟持部によって光学素子を固定する。
【0015】
請求項4に記載する光学素子表面のパターニング方法は、請求項1における熱圧接のステップにおいて、該ダイの熱圧接温度を該光学素子の溶解する臨界温度とする。
【0016】
請求項5に記載する光学素子表面のパターニング方法は、光学素子を載置する支持面を具え、且つ内部に複数の冷却管を配設してなるダイセット部と、
該ダイセット部の支持面の周囲に設けられ、該光学素子を固定する挟持部と、
該ダイセット部の支持面に対向するとともに、所定のパターンを形成する入子が設けられてなる圧接面を具え、且つ内部に加熱手段が設けられるダイと、
該ダイの上方に設けられ、該ダイを駆動して光学素子に対する熱圧接を進行させる駆動手段と、を含んでなる。
【発明の効果】
【0017】
この発明による光学素子表面のパターニング方法は、1ストロークの熱圧接でパターンを形成することができるため、従来のカッターで切削する方法において切削を繰り返すことによって作業効率が上がらないという欠点を改善し、効率の良いパターニングを提供することができる。
【0018】
また、この発明は従来の加工方法は従来のカッターで切削する方法においてカッターのピンが磨耗したり、形成する個々のパターンが不均一になったりして、パターンニングの品質が劣化するという欠点を改善し、バックライトモジュールの品質を確保する効果を有する。
【0019】
この発明による光学素子の表面に図案を形成する加工方法は、光学素子を加熱・加圧して図案を形成するため、装置が磨耗することがなく、品質の高い図案を形成することができる効果を有する。
【0020】
この発明による光学素子の表面に図案を形成する加工方法は、光学素子のサイズ、材質、図案などを変更する場合に上方フレーム全てを変更する必要がないため製造コストを抑える効果を有する。
【0021】
この発明による光学素子の表面に図案を形成する加工方法は、下方フレームの内部に冷却管が設けられているため、加熱された光学素子をすばやく冷却して固形化するため製造効率を高める効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、液晶表示パネルなどのバックライトモジュールに用いられる光学素子の表面にパターニングする加工方法を提供するものであって、光学素子を載置する支持面を具え、且つ内部に複数の冷却管を配設してなるダイセット部と、該ダイセット部の支持面の周囲に設けられ該光学素子を固定する挟持部と、該ダイセット部の支持面に対向するとともに、所定のパターンを形成する入子が設けられてなる圧接面を具え、且つ内部に加熱手段が設けられるダイと、該ダイの上方に設けられ、該ダイを駆動して光学素子に対する熱圧接を進行させる駆動手段とによって光学素子表面のパターニング装置を構成する。かかるパターニング装置を利用して行うパターニング方法は、ワークである光学素子を該ダイセット部の支持面に固定し、ダイの位置を調整して該光学素子上に対応させ、熱圧接方式で該ダイを該光学素子に圧接させ、該入子を該光学素子の表面に圧入させてパターンを形成する。
かかる光学素子表面のパターニング方法の特徴について詳述するために、具体的な実施例を挙げ、図示を参照にして以下に説明する。
【実施例】
【0023】
本発明の光学素子にパターニングを行う加工装置を図2に開示する。図面によれば、加工ワークである光学素子を載置する支持面(211)を有するダイセット部(21)と、該ダイセット部(211)の周囲に設けられ、該支持面(211)に載置した光学素子(25)を固定する挟持部(23)と、内部に加熱手段(223)を配設したダイ(22)と、該ダイ(22)を駆動する駆動手段(24)とによってパターニング装置を構成する。また、ダイセット部(21)の内部には、複数の冷却管(212)を配管する。
【0024】
ダイ(22)は、ダイセット部(21)の支持面(211)に対向する圧接面(221)を具え、該圧接面(221)の表面には所定の立体的パターン形成する入子(222)を設ける。図面に開示するように、入子(222)をV字状に形成すると、光学素子(25)に表面にV字状の溝を有するパターンが形成される。但し、V字状に限定されることはなく、例えばU字状など光学素子の異なる要求に合わせて変更してもよい。
【0025】
駆動手段(24)は、ダイ(22)の上方に設けられ、ダイ(22)を上下に移動させて、ダイセット部(21)に支持された加工ワークである光学素子(25)に対して圧接を行う。
【0026】
この発明によるパターンニング方法で光学素子の表面にパターンを形成する場合のそれぞれのステップを図3に開示する。図面によれば、(a)のステップにおいてダイセット部(21)を準備し、(b)のステップにおいて、光学素子(25)をダイセット部(21)の支持面(211)に固定する。光学素子(25)は、ライトガイドか、散乱板か、もしくはその他光学フィルムである。
【0027】
(c)のステップにおいて、ダイ(22)の位置を調整し、光学素子(25)上に対応させる。ダイ(22)の圧接面(221)には、ワークである光学素子(25)のサイズ、パターンの形状などに応じた入子(222)が設けられている。
【0028】
(d)のステップにおいて、駆動手段(24)によってダイ(22)を駆動して光学素子(25)に対して熱圧接を行う。この場合、光学素子(25)が熱変形を受ける過程において、冷却管(212)によって光学素子(25)を同時に冷却し、固形化させる。
【0029】
(e)のステップにおいて、駆動手段(24)によってダイ(22)を光学素子(25)から離し、光学素子(25)の表面に入子(222)に対応するパターンを形成する。
【0030】
実施例において、ダイ(22)とダイセット部(21)は銅合金を材質としたが、その他好ましい熱伝導特性を有する材料であってもよい。熱圧接の過程においては、加熱手段(223)が光学素子(25)の溶解する臨界温度に至るまでダイ(22)を加熱して光学素子(25)に対して熱圧接を行う。この場合、光学素子(25)は、入子(222)の温度と圧力の作用を受け、表面に入子(222)に対応するパターンが形成される。
【0031】
ダイセット部(21)内に設ける冷却管(212)は、光学素子(25)の溶解した部分の固形化を早めるとともに、熱圧接の過程において光学素子(25)に反りが発生したり、変形したりしてバックライトモジュールの品質に影響を与えることを防ぐ作用を有する。
【0032】
上述のパターニング方法は、ピンを有するカッターで切削を行う従来のパターニング方法に比して、次に掲げる長所を具える。
a.この発明のパターニング方法は1ストロークの熱圧接で光学素子表面にすべてのパターンを形成することができる。よって、切削を繰り返す従来の方法に比して、本発明のパターニング方法は好ましい作業効率が得られる。
b.この発明におけるパターンニング装置のダイに設けられる入子は、熱圧接方式で光学素子表面にパターンを形成するため磨耗しにくい。従来のカッターによる切削方式はピンが容易に磨耗してパターニングの品質に影響を与える。
c.この発明においては、上述のとおり熱圧接方式を採用するため、好ましいパターニングの品質が得られる。
d.この発明におけるパターンニング装置のダイに設けられる入子は、光学素子のサイズ、材質、もしくは必要とするパターンの形状に応じて交換することができる。ワークである光学素子を変更した場合、ダイ全体を交換することなく、入子を交換するだけでよい。よって、製造コストを節減することができる。
e.この発明によるパターンニング方法は、熱圧接と同時にダイセット部内に設けた冷却管によって光学素子の溶解部の固形化を促進するため、製造工程の作業効率をさらに高めることができる。
【0033】
以上は、この発明の好ましい実施例であって、この発明の実施の範囲を限定するものではない。よって、当業者のなし得る修正、もしくは変更であって、この発明の精神の下においてなされ、この発明に対して均等の効果を有するものは、いずれもこの発明の特許請求の範囲に属するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】従来のバックモジュールの構造を表わす説明図である。
【図2】この発明による光学素子表面のパターニング装置の構造を示した説明図である。
【図3】この発明による光学素子表面のパターニング方法のステップを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0035】
10 バックライトモジュール
11 ライトガイド
12 反射板
13 ランプ
14 光学フィルム
15 フレーム
16 散乱点
21 ダイセット部
211 支持面
212 冷却管
22 ダイ
221 圧接面
222 入子
223 加熱手段
23 挟持部
24 駆動手段
25 光学素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持面を有するダイセット部を準備するステップと、
光学素子を該ダイセット部の支持面に固定するステップと、
圧接面を有し、該圧接面に複数の所定のパターンを形成する入子が形成されたダイの位置を調整して該光学素子上に対応させるステップと、
熱圧接方式で該ダイを該光学素子に圧接させ、該入子を該光学素子の表面に圧入させるステップと、
該ダイを該光学素子から離し、該光学素子の表面に該入子に対応するパターンを形成するステップと、を含むことを特徴とする光学素子表面のパターニング方法。
【請求項2】
前記ダイセット部は内部に複数の冷却管を設けてなり、該ダイによって該光学素子に対して熱圧接を行い、光学素子を変形させる過程において、該冷却管によって該光学素子を急速に冷却し、該光学素子に反りが発生したり、変形したりすることを防ぐステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の光学素子表面のパターニング方法。
【請求項3】
前記ダイセット部は、挟持部を具えてなり、該光学素子を該ダイセット部の支持面に固定するステップにおいて、該挟持部によって光学素子を固定することを特徴とする請求項1に記載の光学素子表面のパターニング方法。
【請求項4】
前記熱圧接のステップにおいて、該ダイの熱圧接温度を該光学素子の溶解する臨界温度とすることを特徴とする請求項1に記載の光学素子表面のパターニング方法。
【請求項5】
光学素子を載置する支持面を具え、且つ内部に複数の冷却管を配設してなるダイセット部と、
該ダイセット部の支持面の周囲に設けられ、該光学素子を固定する挟持部と、
該ダイセット部の支持面に対向するとともに、所定のパターンを形成する入子が設けられてなる圧接面を具え、且つ内部に加熱手段が設けられるダイと、
該ダイの上方に設けられ、該ダイを駆動して光学素子に対する熱圧接を進行させる駆動手段と、を含んでなることを特徴とする光学素子表面のパターニング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2004−179148(P2004−179148A)
【公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−295894(P2003−295894)
【出願日】平成15年8月20日(2003.8.20)
【出願人】(502451502)明基電通股▲ふん▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】