説明

光学装置、露光装置、及びデバイス製造方法

【課題】露光精度を高めることができる投影光学系、露光装置、露光方法、及びデバイス製造方法を提供する。
【解決手段】露光装置10は、鏡筒16の内部に保持された複数のミラー17を備える投影装置14を備えている。投影装置14の鏡筒16の外周部には、液相と固相との間で相転移する物性を有し、液相と固相とが共存する金属材料19と、鏡筒16の外周部に設けられて、金属材料19を保持する金属保持部材18とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトリソグラフィ技術を利用して、半導体素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等のマイクロデバイスを製造する際に用いられる光学部材を収容する鏡筒を有した光学装置、及び該光学装置を備える露光装置、露光装置を用いて露光する工程を含むデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置等のデバイスに対する小型化や高集積化の要請に伴い、デバイスに形成される回路パターンの高精細化が進んでいる。その高精細化を達成する露光装置の一つとして、極端紫外光(EUV光:Extreme Ultraviolet Light )を露光光として用いるEUV露光装置が注目されている。
【0003】
一般に露光装置は、ミラー、レンズ、及び視野絞り等の複数の光学部材を有する投影光学系を備えている。そして、露光対象である基板が露光されるときには、光源から射出された露光光が、投影光学系を介して基板に照射される。このとき、露光光を反射するミラーあるいは透過するレンズに加え、これらの光学部材を保持する鏡筒にも露光光の熱が与えられる。他方、鏡筒の外周部は、該鏡筒が置かれている外部雰囲気に曝されているため、鏡筒の温度と外部雰囲気との温度差によっては、熱が与えられたりあるいは奪われたりする。こうした様々な要因のゆえに、鏡筒の温度は変化しやすい。
【0004】
そこで、例えば特許文献1に記載の技術においては、鏡筒の外周部に接触するように冷媒用の配管を設けるようにしている。そして、温度が調節された冷媒に配管内を循環させることで、鏡筒の温度変化を抑えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−304145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、鏡筒の外周部に直接配管を接触させた上、配管の内部を冷媒が循環する構成にあっては、鏡筒やその内部の光学部材に冷媒の循環に伴う振動が伝わることになる。こうした振動は、基板に投影される像の位置ずれや、光学部材間の距離の変動を生じさせることになる。
【0007】
本発明の態様は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、露光精度を高めることができる光学装置、露光装置、及びデバイス製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の態様においては、後述の実施形態に示す図1〜図10に対応付けした以下の構成を採用している。
【0009】
本発明の態様の光学装置は、鏡筒(16)の内部に保持された光学部材(17)を備える光学装置(14)であって、液相と固相との間で相転移する物性を有し、前記液相と前記固相とが共存する金属材料(19)と、前記鏡筒の外周部に設けられ、前記金属材料を保持する第1の保持部(18)と、を備えることを要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、第1の保持部に保持された金属材料が、鏡筒の温度変化に応じて鏡筒の熱を受けたり、鏡筒に熱を与えたりすることによって、鏡筒の温度を調節する。そのため、鏡筒の温度が所定の範囲に維持されることから、鏡筒の熱伸縮、ひいては光学部材の位置が変わることが抑えられる。それゆえに、光学装置を介した露光の精度が高められるようになる。
【0011】
なお、本発明の態様を分かりやすく説明するために、本発明の構成と実施形態の説明に用いる図面に付された符号とを対応付けて説明したが、本発明の態様は該実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態における走査型露光装置の概略構成を示す図。
【図2】第1実施形態における金属保持部材周辺の断面構造を示す図。
【図3】二成分系の共融状態図。
【図4】加熱時間と金属材料の温度との関係を示すグラフ。
【図5】金属材料の液面高さと金属材料の状態との関係を示すグラフ。
【図6】第2実施形態における金属保持部材周辺の断面構造を示す図。
【図7】第3実施形態における金属保持部材周辺の断面構造を示す図。
【図8】第4実施形態における金属保持部材周辺の断面構造を示す図。
【図9】デバイスの製造例における処理の手順を示すフローチャート。
【図10】デバイスの製造例における基板処理工程を詳細に示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、本発明の態様にかかる光学装置及び露光装置の第1実施形態について図1〜5図を参照して説明する。
[露光装置]
まず、露光装置の全体構成について図1を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態の露光装置10は、光源装置11から射出される、波長が100nm程度以下の軟X線領域である極端紫外光、即ちEUV(Extreme Ultraviolet )光を露光光ELとして用いる走査型のEUV露光装置である。露光装置10は、内部が大気よりも低圧の真空雰囲気であって且つ所定温度領域の範囲内に設定される露光チャンバCを備えている。露光チャンバCには、連結部11aを介して光源装置11が接続されている。また、露光チャンバC内には、光源装置11から露光チャンバC内に供給された露光光ELで所定のパターンが形成された反射型のレチクルRを照明する照明装置12と、パターン形成面Raを有したレチクルRを保持するレチクルステージ13とが設けられている。また、露光チャンバC内には、レチクルRを介した露光光ELでレジストなどの感光性材料が塗布されたウエハWを照射する光学装置としての投影装置14と、ウエハWを保持するウエハステージ15とが設けられている。
【0014】
光源装置11は、波長が5〜20nmのEUV光を露光光ELとして出力する装置であって、図示しないレーザ励起プラズマ光源を備えている。このレーザ励起プラズマ光源では、例えば半導体レーザ励起を利用したYAGレーザやエキシマレーザなどの高出力レーザで高密度のEUV光発生物質(ターゲット)を照射することによりプラズマが発生され、該プラズマからEUV光が露光光ELとして放射される。こうした露光光ELは、図示しない集光光学系によって集光されて露光チャンバC内に出力される。
【0015】
照明装置12は、露光チャンバCの内部と同様に、内部が真空雰囲気に設定される筐体12aを備えている。この筐体12a内には、光源装置11から筐体12a内に入射された露光光ELを反射可能な複数枚の図示しない反射ミラーが設けられている。各反射ミラーによって順に反射された露光光ELは反射ミラーRMに入射することによって、反射ミラーRMにて反射されてレチクルステージ13に保持されるレチクルRに導かれる。
【0016】
レチクルステージ13は、投影装置14の物体面側に配置されており、レチクルRを静電吸着する図示しない静電吸着保持装置を備えている。また、レチクルステージ13は、図示しないレチクルステージ駆動部の駆動によって、投影装置14に対して相対移動が可能である。
【0017】
投影装置14は、露光光ELでレチクルRのパターン形成面Raを照明することにより形成されたパターンの像を例えば1/4倍等の所定の縮小倍率に縮小させる光学系である。投影装置14は、露光チャンバCの内部と同様に、内部が真空雰囲気に設定される鏡筒16を備えている。鏡筒16内には、複数枚の反射型のミラー17が収容されている。なお、鏡筒16内に収容されるミラー17は例えば6枚であって、図1では図示の便宜上、1枚のみ示している。そして、物体面側であるレチクルR側から導かれた露光光ELは、各ミラー17に順に反射され、ウエハステージ15に保持されるウエハWの露光面Waに導かれる。
【0018】
また、鏡筒16の外周部には、液体状の金属を保持する金属保持部材18が複数連結されている。金属保持部材18のそれぞれには、液相と固相との間で相転移する金属材料19が保持されている。金属材料19は、鏡筒16における接触面を介して該鏡筒16と熱の授受を行うことによって、鏡筒16の温度を所定の範囲に調節する。
【0019】
ウエハステージ15は、ウエハWを静電吸着するための図示しない静電吸着保持装置を備えている。ウエハステージ15は、図示しないウエハステージ駆動部によって、投影装置14に対して相対移動が可能である。
【0020】
こうした露光装置10を用いてウエハWの一つのショット領域にレチクルRの回路パターンを形成するときには、まず、照明装置12によって照明領域をレチクルRに形成した状態で、レチクルステージ駆動部が、レチクルRを投影装置14に対して相対移動させるとともに、ウエハステージ駆動部が、ウエハWをレチクルRの移動に対して投影装置14の縮小倍率に応じた速度比でレチクルRの移動方向に同期して移動させる。そして、一つのショット領域への回路パターンの形成が終了すると、他のショット領域に対する回路パターンの形成が続けて行われる。
[金属保持部材]
次に、金属保持部材18とその周辺の構造の詳細について図2を参照して説明する。図2に示されるように、金属保持部材18は、各種合成樹脂等の断熱材料によって形成される環状部材であって、鏡筒16の外径と同じ内径を有する円環状の底壁部18aを有している。底壁部18aの外周縁には、上記レチクルステージ13側に延びる円筒状の周壁部18bが、底壁部18aの全周にわたり一体に形成されている。また、底壁部18aの内周縁には、上記ウエハステージ15側に延びる円筒状の接続部18cが、これもまた底壁部18aと一体に形成されている。底壁部18aと鏡筒16との間には、Oリング18eが挟み込まれ、また接続部18cと鏡筒16との間にも、Oリング18fが挟み込まれている。
【0021】
そして、接続部18cがねじ18dによって鏡筒16にねじ止めされることによって、底壁部18aと鏡筒16との間、及び接続部18cと鏡筒16との間がシールされる。また、周壁部18bと鏡筒16とに挟まれた空間には、底壁部18aが底部となる環状の凹部が金属保持部材18と鏡筒16とによって形成され、該凹溝である第1の保持部としての保持空間Sには、上記金属材料19が保持される。なお、金属保持部材18が断熱材料によって形成されているため、鏡筒16と金属材料19との間での熱の授受に対し、金属保持部材18が影響を及ぼすことを抑えることができる。
【0022】
金属材料19は、例えば二成分系の合金であり、且つ共晶組成の合金である。金属材料19は、露光装置10の使用時における鏡筒16の温度である基準温度にて液相と固相とが共存する固液共存相である。
【0023】
金属材料19の上方には、保持空間S内における金属材料19の液面高さH、つまり、底壁部18aにおける保持空間S側の面と液面19sとの距離を測定する測定装置Mが配設されている。測定装置Mは、非接触で液面19sの高さを測定する装置であって、例えば、金属材料19の表面に向けた射出光が金属材料19の液面19sにて反射されて、該測定装置Mによって検出されるまでの時間に基づいて金属材料19の液面19sの高さを測定する。測定装置Mによって測定された液面19sの高さから、金属材料19が、液相、液相と固相との共存状態である固液共存相、及び固相とのいずれであるかを判断することができる。つまり、本実施形態の測定装置Mは、金属材料19中の固相と液相との比率を検出する検出装置である。
[金属材料]
以下、金属材料19の特性について図3〜図5を参照して説明する。上述のように、金属材料19は、金属Aと金属Bとから構成される二成分系の合金であり、図3に示されるように、金属材料19の融点は、金属A単体の融点Tma及び金属B単体の融点Tmbよりも低く、しかも、金属Aと金属Bとが共晶組成Eにあるときの融点である共晶点Tmである。つまり、金属材料19は、共晶組成Eの合金である共晶合金であって、単体の金属と同様に液相と固相との間で相転移する。
【0024】
つまり、固相の金属材料19、例えば温度T1の金属材料19が加熱されると、図4に示されるように、加熱の開始時であるタイミングt0から金属材料19の温度が共晶点Tmとなるタイミングt1までの間は、該金属材料19の温度が上昇し続ける。そして、タイミングt1にて金属材料19の温度が共晶点Tmになると、固相である金属材料19が溶融を開始し、金属材料19が固液共存相となる。タイミングt1にて金属材料19が固液共存相になると、金属材料19の全てが液相となるタイミングt2までの間、金属材料19に与えられた熱エネルギーは潜熱として消費されることから、金属材料19の温度が一定に維持される。そして、タイミングt2にて金属材料19の全て液相になると、金属材料19の温度が再び上昇し始める。
【0025】
このように、共晶合金である金属材料19が固液共存相である間は、金属材料19の放熱及び吸熱が生じても、該金属材料19の温度は一定に維持されることになる。そのため、例えば、鏡筒16が外部から熱を受けることで、その温度が基準温度よりも高くなると、金属材料19は、鏡筒16の温度上昇分に対応する熱を受けることで、こうして受けた熱を潜熱として消費する。これにより、金属材料19の全量に占める液相の割合が、鏡筒16からの熱を受ける前よりも大きくなる。他方、鏡筒16が冷却されることで、その温度が基準温度よりも低くなると、金属材料19は、鏡筒16の温度低下分に対応する熱を与える。これにより、金属材料19の全量に占める固相の割合が、鏡筒16に熱を与える前よりも大きくなる。
【0026】
こうした金属材料19を構成する金属の組み合わせ、各組み合わせの共晶組成、及び共晶点を以下に例示する。
・Ga−In合金 Ga:In=84:16(at%) 共晶点15.7℃
・Ga−Sn合金 Ga:Sn=92:8(at%) 共晶点20.5℃
・Ga−Zn合金 Ga:Zn=94:6(at%) 共晶点25℃
・Ga−Al合金 Ga:Al=91:9(at%) 共晶点26.4℃
・Hg−Na合金 Hg:Na=15:85(at%) 共晶点21℃
上記組み合わせのうち、鏡筒16に設定されている基準温度、例えば鏡筒16や上記ミラー17の熱膨張が所定の範囲に収まる温度のときに固液共存相となる金属の組み合わせが、上記金属材料19として選択される。なお、図3には、説明及び図示の便宜上、金属A及び金属Bが、液体同士であれば混合比に関わらず溶解するものの、固体同士についてはほとんど溶解しない場合における二成分系の状態図を示している。
【0027】
また、上記測定装置Mによって測定される液面高さHは、図5に示されるように、金属材料19の全てが固相であるときに、高さHSであり、金属材料19が固液共存相であるときには、該金属材料19の全量に占める液相の割合が大きくなるにしたがって、液面高さHが高くなる。そして、金属材料19の全てが液相であるときに高さHLとなる。
【0028】
ここで、金属材料19が固液共存相であるときには、上述のように、鏡筒16の温度が上下しても、金属材料19による吸熱及び放熱によって、鏡筒16の温度が略一定に維持される。しかしながら、金属材料19が液相、若しくは固相であると、鏡筒16の温度が上下することに伴って、金属材料19の温度も上下してしまう。これにより、鏡筒16の熱膨張や収縮により、ミラー17間の距離が変動することから、露光装置10による露光の精度が低下してしまう。そこで、露光装置10では、液面高さHが以下の範囲にあるときには、露光の精度が十分に得られないものとして露光を停止するようにされている。
・金属材料19の全てが固相であるときの高さHSよりも所定距離だけ大きい高さH1未満であるとき。
・金属材料19の全てが液相であるときの高さHLよりも所定距離だけ小さい高さH2を超えるとき。
【0029】
以上説明したように、本発明の態様にかかる光学装置及び露光装置の第1実施形態によれば、以下に列挙する効果が得られるようになる。
【0030】
(1)鏡筒16の外周に金属保持部材18を設けるとともに、金属保持部材18内に金属材料19を保持するようにしている。そのため、金属材料19が、鏡筒16における接触面を介して該鏡筒16と熱の授受を行うことによって、鏡筒16の温度を所定の範囲に調節する。それゆえに、鏡筒16の温度を所定の温度に保つことができる。また、露光装置10による露光の精度を高めることができる。
【0031】
(2)金属材料19として、鏡筒16の基準温度において固液共存相である共晶組成の合金を用いるようにしている。そのため、鏡筒16の温度が基準温度よりも高くなる、若しくは低くなるような場合でも、金属材料19が、鏡筒16の温度変化分だけ吸熱あるいは放熱しつつ、一定の温度に維持されやすくなる。それゆえに、鏡筒16の温度を所定の温度に保つことができる。また、露光装置10による露光の精度を高めることができる。
【0032】
(3)金属材料19の液面高さHが、該金属材料19の全てが固相であるときの高さHSよりも所定距離だけ大きい高さH1未満となるとき、及び金属材料19の全てが液相であるときの高さHLよりも所定距離だけ小さい高さH2となるときに、露光装置10による露光を停止する。そのため、鏡筒16の熱膨張、あるいは収縮が生じるような温度範囲では露光装置10による露光が行われないことから、ウエハWに対する露光の精度が低下することを抑えられる。
【0033】
(4)金属保持部材18を断熱材料で形成している。そのため、金属保持部材18が、鏡筒16と金属材料19との熱の授受に影響することを抑えることができる。それゆえに、鏡筒16の温度を一定に維持しやすくなる。
[第2実施形態]
以下、本発明の態様にかかる光学装置及び露光装置の第2実施形態について図6を参照して説明する。なお、本実施形態は、上記第1実施形態と比較して、鏡筒16の外周に設けられた金属保持部材周辺の構造が異なる。そのため以下では、光学装置及び露光装置の有する金属保持部材周辺について詳細に説明する。
[金属保持部材]
図6に示されるように、金属保持部材21は、第1実施形態と同様、各種合成樹脂等の断熱材料によって形成される環状部材であって、鏡筒16の外径と同じ内径を有する円環状の底壁部21aを有している。底壁部21aの外周縁には、上記レチクルステージ13側に延びる円筒状の周壁部21bが底壁部21aと一体に形成されているとともに、底壁部21aの内周縁には、上記ウエハステージ15側に延びる円筒状の接続部21cが底壁部21aと一体に形成されている。上記底壁部21aと鏡筒16との間には、Oリング21eが嵌め込まれ、また接続部18cと鏡筒16との間にも、Oリング21fが嵌め込まれている。そして、接続部21cがねじ21dによって鏡筒16にねじ止めされることによって、底壁部21aと鏡筒16との間、及び接続部21cと鏡筒16との間がシールされる。
【0034】
底壁部21aの外周縁と内周縁との略中央には、これらと同心の円筒状をなす熱伝導部21gが配設されている。熱伝導部21gは、周壁部21bと同心の円筒状をなす仕切部21hと、該仕切部21hと直交するフランジ部21iとから構成される。フランジ部21iは、仕切部21hを挟むように配置されたねじ21jによって上記底壁部21aにねじ止めされている。熱伝導部21gは、例えば金属等の熱伝導性の材料によって形成されている。
【0035】
そして、熱伝導部21gと鏡筒16とに挟まれた空間には、底壁部21aが底部となる環状の凹部が金属保持部材21の一部と鏡筒16とによって形成され、該凹部である第1の保持部としての第1保持空間S1には、第1実施形態と同様の金属材料19が保持される。
【0036】
金属材料19の上方には、上記第1実施形態と同様、第1保持空間S1内における金属材料19の液面高さH、つまり、上記底壁部21aにおける第1保持空間S1側の面と液面19sとの距離を測定する測定装置Mが配設されている。
【0037】
また、周壁部21bと熱伝導部21gとに挟まれた空間には、底壁部21aが底部となる環状の凹部が金属保持部材21の一部によって形成され、該凹部である第2の保持部としての第2保持空間S2には、熱伝導性の液体材料22が保持される。液体材料22中には、金属ブロック23の一端が浸漬されているとともに、該金属ブロック23の他端が冷媒配管26に接続されている。例えば、金属ブロック23の上記ウエハステージ15側の端部が液体材料22に浸漬されているとともに、該金属ブロック23の上記レチクルステージ13側の端部は、ペルチェ素子24及び配管接続部25を介して冷媒配管26に接続されている。
[液体材料]
上記第2保持空間S2に保持されている液体材料22としては、Ga、Gaを含む合金、及び水銀等の液体金属を用いることができる。液体材料22としてGaを含む合金を選択する場合には、上記金属材料19と同様、共晶組成の合金を用いるようにしてもよい。こうした液体材料22には、上記鏡筒16の基準温度、及び金属材料19の共晶点よりも融点の低い材料を選択することが好ましい。これにより、液体材料22が固相になることを抑えることができる。
【0038】
また、液体材料22としては、磁性を有した粉体を油中や液体金属中に分散させた磁性流体を用いることができる。この場合、液体材料22に対して外部磁場を作用させることによって、液体材料22が第2保持空間S2内に保持されやすくなる。
[調整装置]
本実施形態では、上記金属ブロック23、ペルチェ素子24、配管接続部25、及び冷媒配管26が、第1保持空間S1に保持された金属材料19に対する熱の授受を調整することで、該金属材料19を固液共存相の状態に維持する調整装置を構成している。以下、調整装置について詳細に説明する。
【0039】
金属ブロック23は、例えば銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、及びモリブデン等の比較的熱伝導率の高い材料で形成されている。金属ブロック23の形成材料が液体材料22によって腐食される場合には、金属ブロック23の表面をめっきする等して液体材料22から保護するようにしてもよい。金属ブロック23は、鏡筒16の周方向の全体にわたって設けられている。
【0040】
ペルチェ素子24の吸熱側は、金属ブロック23に熱的に連結され、ペルチェ素子24の放熱側は、配管接続部25を介して冷媒配管26に熱的に接続されている。また、ペルチェ素子24は、吸熱の度合いを制御する制御装置に電気的に接続されている。そして、ペルチェ素子24は、制御装置からの制御信号に応じて、金属ブロック23に対する吸熱の度合いを調整することにより、金属ブロック23の温度を略一定に維持する。
【0041】
冷媒配管26内には、図示しない温度調節装置によって一定の温度に維持された冷媒が流れている。そして、冷媒配管26は、ペルチェ素子24における放熱側の熱を、配管接続部25を介して取り除くことによって、ペルチェ素子24における放熱側の温度を略一定に維持する。
【0042】
本実施形態の金属保持部材21及び調整装置によれば、以下のような態様で鏡筒16の温度が略一定に維持されている。すなわち、鏡筒16の温度が上記基準温度よりも高くなると、鏡筒16の外周部に接している金属材料19では、鏡筒16から受ける熱が大きくなる。金属材料19は、上述のように、鏡筒16の基準温度において固液共存相であることから、鏡筒16からの熱を潜熱として消費することにより、その温度は共晶点に維持されつつも、金属材料19の全体に占める液相の割合が大きくなる。
【0043】
そして、上記測定装置Mによって測定された金属材料19の液面高さHが上記高さH2を超えると、ペルチェ素子24における吸熱側の出力を上げるための制御信号を上記制御装置がペルチェ素子24に対して出力する。これにより、ペルチェ素子24では、金属ブロック23を介した液体材料22による吸熱、すなわち液体材料22及び上記熱伝導部21gを介した金属材料19に対する吸熱が強められる。このとき、冷媒配管26内では冷媒が循環し続けているため、ペルチェ素子24における放熱側の温度が一定に維持され、これに伴い、ペルチェ素子24の吸熱側の温度も所定の温度に維持されるようになる。なお、冷媒の循環によって生じる振動のほとんどは、液体材料22及び金属材料19に吸収されるため、鏡筒16に対する振動の伝達が抑えられる。その結果、金属材料19の全体に占める液相の割合が小さくなることから、測定装置Mによって測定される金属材料19の液面高さHが、上記高さH2よりも小さくなる。
【0044】
他方、鏡筒16が冷却されることによってその温度が上記基準温度よりも低くなると、金属材料19が鏡筒16に対して放熱を行う。金属材料19が放熱を行うと、その温度は共晶点に維持されつつも、金属材料19の全体に占める固相の割合が大きくなる。
【0045】
そして、測定装置Mによって測定された液面高さHが上記高さH1未満になると、ペルチェ素子24における吸熱側の出力を下げるための制御信号を上記制御装置がペルチェ素子24に対して出力する。これにより、ペルチェ素子24では、金属ブロック23を介した液体材料22による吸熱、すなわち液体材料22及び熱伝導部21gを介した金属材料19に対する吸熱が弱められる。このとき、冷媒配管26内では冷媒が循環し続けているため、ペルチェ素子24における放熱側の温度が一定に維持され、これに伴い、ペルチェ素子24の吸熱側の温度も所定の温度に維持されるようになる。なお、冷媒の循環によって生じる振動のほとんどは、上述のように、液体材料22及び金属材料19によって吸収されるため、鏡筒16に対する振動の伝達が抑えられる。その結果、金属材料19の全体に占める固相の割合が小さくなることから、測定装置Mによって測定される金属材料19の液面高さHが、上記高さH1よりも大きくなる。
【0046】
このように、本実施形態においては、金属材料19の液面高さHが、上記高さH2を超えたとき、及び上記高さH1未満となったときに、ペルチェ素子24による吸熱若しくは放熱、及び冷媒の循環を行うことによって、金属材料19が固液共存相から逸脱しないようにしている。
【0047】
以上説明したように、本発明の態様にかかる光学装置及び露光装置の第2実施形態によれば、上記第1実施形態によって得られる効果に加えて、以下の効果が得られるようになる。
【0048】
(5)金属保持部材21の第2保持空間S2に保持された液体材料22に、金属ブロック23の一端を浸漬させるとともに、該金属ブロック23の他端には、ペルチェ素子24及び配管接続部25を介して冷媒配管26を接続している。そして、第1保持空間S1に保持された金属材料19の液面高さHが、上記高さH1未満となるとき、及び高さH2を超えたときには、ペルチェ素子24及び冷媒配管26を流れる冷媒を用いて、金属材料19の液面高さHが、高さH1以上高さH2以下となるようにしている。そのため、金属材料19が鏡筒16に対して熱を与えたり、鏡筒16から熱を受けたりしても、金属材料19は、固液共存の状態に維持されるようになる。それゆえに、金属材料19の温度が一定に維持されるようになることから、鏡筒16の温度も一定に維持されるようになる。したがって、上記露光装置10による露光の精度が高められるようになる。
【0049】
(6)冷媒配管26内を冷媒が流れることによって生じる振動は、液体材料22と金属材料19とによって吸収される。そのため、金属材料19の温度の維持に冷媒の循環を用いたとしても、冷媒の循環に起因する振動が、鏡筒16に伝わりにくくなる。それゆえに、露光装置10による露光の精度が低下することを抑えられる。
[第3実施形態]
以下、本発明の態様にかかる光学装置及び露光装置の第3実施形態について図7を参照して説明する。なお、本実施形態は、上記第1実施形態及び第2実施形態と比較して、鏡筒16の外周に設けられた金属保持部材周辺の構造が異なっている。そのため以下では、光学装置及び露光装置の有する金属保持部材周辺について詳細に説明する。
[金属保持部材]
図7に示されるように、金属保持部材18は、上記第1実施形態と同様、各種合成樹脂等の断熱材料によって形成される環状部材であって、底壁部18a、周壁部18b、及び接続部18cを有している。底壁部18aと鏡筒16との間には、Oリング18eが挟み込まれ、また接続部18cと鏡筒16との間にもOリング18fが挟み込まれている。そして、接続部18cがねじ18dによって鏡筒16にねじ止めされることによって、底壁部18aと鏡筒16との間、及び接続部18cと鏡筒16との間がシールされる。
【0050】
また、周壁部18bと鏡筒16とに挟まれた空間には、底壁部18aが底部となる環状の凹部が金属保持部材18と鏡筒16とによって形成され、該凹部である第1の保持部としての保持空間Sには、上記金属材料19が保持される。金属材料19の上方には、その液面高さHを測定する測定装置Mが配設されている。
【0051】
保持空間Sには、金属材料19に浸漬されつつも、該保持空間Sを形成する底壁部18a、周壁部18b、及び鏡筒16には接しないように調整装置としての冷媒配管31が、上記凹部である保持空間Sの全体にわたり設けられている。冷媒配管31内には、図示しない温調装置によって一定の温度に維持された冷媒が流れている。冷媒の循環は、上記第2実施形態と同様、測定装置Mによって測定される液面高さHが上記高さH1未満となったとき、及び高さH2を超えたときに行われる。
【0052】
これにより、鏡筒16の温度が基準温度よりも高くなる、あるいは低くなることによって、金属材料19が鏡筒16から熱を受ける、あるいは鏡筒16に熱を与えるとしても、冷媒配管31内を循環する冷媒が、金属材料19に熱を与える、あるいは金属材料19から熱を受けることによって、金属材料19が固液共存相に維持される。それゆえに、金属材料19の温度が一定に維持されることから、鏡筒16の温度も一定に維持され、ひいては、露光装置10による露光の精度が高められるようになる。
【0053】
本実施形態では、冷媒配管31内を循環する冷媒によって金属材料19から直接熱を受けたり、金属材料19に直接熱を与えたりしている。そのため、他の部材や液体材料を介するよりも、金属材料19と冷媒との間での熱の授受がより短期間で行われることになる。それゆえに、金属材料19は、より固液共存相の状態に維持されやすくなる。
【0054】
また、冷媒配管31内を冷媒が循環することによって生じる振動は、金属材料19によって吸収されるため、鏡筒16に伝わりにくくなる。それゆえに、冷媒を循環させることで金属材料19への熱の授受を行ったとしても、露光装置10による露光の精度が低下することを抑えることができる。
【0055】
本実施形態によれば、上記第1実施形態によって得られる効果に加え、以下の効果が得られるようになる。
【0056】
(7)金属材料19に冷媒配管31を浸積させるとともに、金属材料19の液面高さHが、上記高さH1未満になったとき、及び高さH2を超えたときに、冷媒配管31内に冷媒を循環させることで、金属材料19と冷媒との間で熱の授受を行うようにしている。これにより、金属材料19が、固液共存相に維持されることから、鏡筒16の温度も一定に維持されるようになる。それゆえに、露光装置10による露光の精度が高められるようになる。
【0057】
(8)冷媒の循環する冷媒配管31を金属材料19中に浸漬させている。そのため、冷媒の循環によって生じる振動は、金属材料19によって吸収されることから、鏡筒16には伝わりにくくなる。それゆえに、冷媒を循環させることで金属材料19への熱の授受を行ったとしても、露光装置10による露光の精度が低下することを抑えることができる。
[第4実施形態]
以下、本発明の態様にかかる光学装置及び露光装置の第4実施形態について図8を参照して説明する。なお、本実施形態は、上記第3実施形態と比較して、金属材料を保持する保持空間内に設けられた調整装置の構造が異なっている。そのため以下では、本実施形態の光学装置及び露光装置の有する調整装置について詳細に説明する。
[金属保持部材]
図8に示されるように、上記第3実施形態と同様、金属保持部材18の底壁部18aを底部とし、且つ、周壁部18bと鏡筒16との挟まれた空間に形成された凹部であって、第1の保持部としての保持空間Sには、金属材料19が保持される。また、金属材料19の上方には、金属材料19の液面高さHを測定する測定装置Mが配設されている。
【0058】
保持空間S内には、金属材料19に浸漬されつつも、該保持空間Sを形成する底壁部18a、周壁部18b、及び鏡筒16には接しないように、調整装置を構成する第1冷媒配管41が、上記凹部である保持空間Sの全体にわたり設けられている。第1冷媒配管41には、図示しない温調装置によって一定の温度に維持された冷媒が流れているとともに、第1配管接続部41aに配設されたペルチェ素子42を介して、第2冷媒配管43の第2配管接続部43aが連結されている。第2冷媒配管43には、上記第1冷媒配管41と同様に、温調装置によって一定の温度に維持された冷媒が流れている。つまり、本実施形態では、第1冷媒配管41、第1配管接続部41a、ペルチェ素子42、第2冷媒配管43、及び第2配管接続部43aによって調整装置が構成されている。
【0059】
本実施形態では、測定装置Mによって測定された液面高さHが、上記高さH1未満であるとき、及び上記高さH2を超えるときに、ペルチェ素子42による放熱あるいは吸熱、及び第1冷媒配管41及び第2冷媒配管43における冷媒の循環を行う。これにより、金属材料19の状態を固液共存相に維持するようにしている。
【0060】
本実施形態によれば、上記第1実施形態によって得られる効果及び上記第3実施形態によって得られる効果を得ることができる。
[他の実施形態]
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
【0061】
・鏡筒16の周方向の全体にわたって金属保持部材18,21を設けるようにしたが、金属保持部材18,21は、鏡筒16の周方向における一部に設けるようにしてもよい。また、鏡筒16の複数箇所に設けてもよい。例えば、鏡筒16のうち鏡筒16の温度が変化しやすい箇所に、金属保持部材18,21を設けるようにしても良い。また、金属保持部材18,21は、鏡筒16の外周部に限らず、鏡筒16の内部や内周部に設けても良い。
【0062】
・金属保持部材18,21の底壁部18a,21a、周壁部18b,21b、及び接続部18c,21cを各種樹脂材料で形成するようにしたが、鏡筒16及び金属材料19よりも熱伝導性の低い材料を用いて形成するようにしてもよい。
【0063】
・金属材料19は、鏡筒16の基準温度において固液共存相であれば、共晶組成でない合金であってもよい。
【0064】
・金属材料19は、上記金属の組み合わせに限らず、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ナトリウム(Na)、及び水銀(Hg)の少なくとも一つを含む合金であればよい。例えば、二成分系の合金に限らず、3以上の金属を含む合金であってもよい。
【0065】
・金属材料19は、上述の合金に限らず、ガリウム(Ga)またはセシウム(Cs)の単体の金属であってもよい。なお、Gaの凝固点は29.8℃であり、Csの凝固点は28.4℃である。そのため、一般に鏡筒16の基準温度として設定される温度近傍の凝固点を有することから、露光装置10の使用中において固液共存相の状態を維持しやすい。
【0066】
・金属材料19は、鏡筒16の基準温度において固液共存相であれば、上記ガリウム及びセシウムに限らず、他の単体金属であってもよい。
【0067】
・Oリング18e,18fは、金属保持部材18,21と鏡筒16との間に設けられなくても良い。金属材料19が漏れ出ることのないように、金属保持部材18,21と鏡筒16とが密着していれば良い。
【0068】
・鏡筒16と金属保持部材18,21とを各別に形成するようにしたが、これら鏡筒16と金属保持部材18が一体的に形成されていてもよい。例えば、鏡筒に金属保持部材を形成して用いても良い。これによって、Oリング18e,18fやネジ18dが不要になり、且つ、金属材料19が漏れ出ることがない。また、本発明の態様にかかる投影装置14が簡素化される。
【0069】
・金属保持部材18,21を断熱材料で形成するようにしたが、金属保持部材18,21は断熱材料でなくてもよい。例えば、低熱膨張材料や熱伝導率の高い材料で構成しても良い。
【0070】
・測定装置Mは、金属材料19の液面19sをその上方から測定するようにしたが、横側から測定しても良い。例えば、金属保持部材18の周壁部18bの一部に光透過窓が設けられており、この光透過窓を介して、金属材料19の液面19sを測定できるように構成しても良い。これによって、測定装置Mを鏡筒16から離れた位置に設けることができる。
【0071】
・上記第1実施形態では、金属材料19の液面高さHが、高さH1未満であるとき、及び高さH2を超えたときに、露光装置10による露光を停止するようにした。これに限らず、液面高さHが、高さHS未満であるとき、及び高さHLを超えたときに露光装置10による露光を停止するようにしてもよい。
【0072】
・上記第1実施形態では、液面高さHが、上記高さH1未満であるときと、高さH2を超えるときには露光装置10による露光を停止するようにした。これに限らず、液面高さHがこうした範囲にあることを露光装置10の使用者に対して知らせる警告、例えば表示部への警告の表示や、警告音をならすこと等を行うようにしてもよい。また、鏡筒16の温度変化を予測し、光学部材の位置や傾き等を調整することや、こうした範囲にあるときのショット領域を記憶しておき、後でそのショット領域のチップを抽出してもよい。
【0073】
・上記第2実施形態では、金属ブロック23を金属保持部材18の全体にわたって設けるようにしたが、金属ブロック23は、金属保持部材18の一部に設けられるようにしてもよい。
【0074】
・上記第2実施形態では、ペルチェ素子24が金属ブロック23の温度を一定に維持するようにしたが、液体材料22の温度、金属材料19の温度、鏡筒16の温度等を一定に維持するにしてもよい。
【0075】
・上記第3実施形態では、熱伝導部21gと底壁部21aとを各別に形成するようにしたが、熱伝導部21gは、底壁部21aと一体的に形成されても良い。これによって、ねじ21jが不要になり、金属材料19と液体材料22とが混ざることがない。また、本発明の態様にかかる投影装置14が簡素化される。
【0076】
・上記第3実施形態では、液面高さHが、高さH1以上高さH2以下の範囲を逸脱するときに、冷媒の循環を行うようにしたが、液面高さHが、高さHS以上高さHL以下の範囲を逸脱するときに、冷媒の循環を行うようにしてもよい。
【0077】
・上記第3実施形態では、金属材料19の液面高さHが高さH1以上高さH2以下の範囲を逸脱したときに冷媒の循環を行うようにしたが、冷媒の循環は、露光装置10を使用しているときに、常時行うようにしてもよい。
【0078】
・上記第2実施形態及び第4実施形態では、液面高さHが、高さH1以上高さH2以下の範囲を逸脱するときに、ペルチェ素子24,42の駆動と冷媒の循環とを行うようにしたが、液面高さHが、高さHS以上高さHL以下の範囲を逸脱するときに、ペルチェ素子24,42の駆動と冷媒の循環とを行うようにしてもよい。
【0079】
・上記第2実施形態及び第4実施形態では、ペルチェ素子24,42の駆動と冷媒の循環とを上記液面高さHが、高さH1以上高さH2以下の範囲から逸脱したときに行うようにしたが、ペルチェ素子24,42の駆動及び冷媒の循環は、露光装置10を使用しているときに、常時行うようにしてもよい。
【0080】
・上記第3実施形態及び第4実施形態では、冷媒配管31,41,43が金属保持部材18の全体にわたって設けられるようにしたが、冷媒配管31,41,43は、金属保持部材18の一部に設けられていてもよい。
【0081】
・上記第1実施形態に、第2実施形態の調整装置を採用する、つまり、第1実施形態の金属材料19にペルチェ素子と配管接続部を介して冷媒配管に接続された金属ブロックを浸漬させた構成とすることで、金属材料19を固液共存相に維持するようにしてもよい。
【0082】
・第2実施形態の調整装置として、第3実施形態の調整装置を採用する、つまり、液体材料に冷媒配管を浸積させた構成とするようにしてもよい。
【0083】
・第2実施形態の調整装置として、第4実施形態の調整装置を採用する、つまり、2つの冷媒配管、及びこれら冷媒配管に挟まれたペルチェ素子を有する調整装置を採用するようにしてもよい。
【0084】
・上記第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態、及び第4実施形態では、金属保持部材、金属材料、調整装置を備える光学装置を投影装置14に用いる例を示したが、本発明の態様を照明装置12に用いても良い。
【0085】
・上記走査型の露光装置10の露光対象は、上記シリコン基板のような半導体チップ等のマイクロデバイスを形成するためのウエハWの他、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置等に利用されるレチクル又はマスクを形成するための基板であってもよい。また走査型露光装置の露光対象は、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等を形成するための基板、CCD等の撮像デバイスを形成するための基板であってもよい。
【0086】
・上記光源装置11としてEUVを射出する光源を採用した場合には、該光源装置11に用いられるEUV光発生物質として、気体状の錫(Sn)、液体状又は固体状の錫、及びキセノン(Xe)等を用いることができる。
【0087】
・上記光源装置11には、例えば、g線(436nm)、i線(365nm)、ArFエキシマレーザ(193nm)、KrFエキシマレーザ(248nm)、Fレーザ(157nm)、Krレーザ(146nm)、Arレーザ(126nm)等を射出する光源を用いることができる。また、光源装置11としては、DFB半導体レーザ又はファイバレーザ等の固体レーザ光源が発振する赤外領域又は可視領域の単一波長レーザ光を、エルビウム又はエルビウムとイッテルビウムの双方等がドープされたファイバアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を射出する光源を用いることもできる。
【0088】
・また、光源装置11に搭載される光源には、放電型プラズマ光源を採用することもできる。
【0089】
・走査型の露光装置10は、ステップ・アンド・リピート方式の装置に具体化することもできる。
【0090】
次に、上記実施形態の露光装置10を用いたデバイスの製造方法をマイクロデバイスの製造方法に具体化した一実施形態について、図9及び図10を参照して説明する。図9は、ICやLSI等の半導体チップ、表示パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等、これらマイクロデバイスの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【0091】
まず、設計工程では、マイクロデバイスの機能設計や性能設計が行われ、その後、設計された機能や性能を実現するための目標パターンが設計される(ステップS101)。続いて、マスク製作工程では、設計された目標パターンに基づいてマスク、例えばレチクルRや、例えば可変成形マスクを駆動するためのパターンデータ、すなわち可変成形マスクの形成するパターンが目標パターンに基づいて生成される(ステップS102)。一方、基板製造工程では、シリコン基板、ガラス基板、セラミックス基板等、マイクロデバイスの基材である基板が準備される(ステップS103)。
【0092】
次に、加工工程としての基板処理工程では、基板上に各種の膜を形成する成膜技術、上述したパターンデータと露光装置10とを用いたリソグラフィ技術、基板上に形成された膜の一部をエッチングするエッチング技術等によって、回路パターン等の実パターンが基板上に形成される(ステップS104)。続いて、デバイス組立工程では、基板処理後の基板を用いてデバイスの組立が行われる(ステップS105)。このデバイス組立工程では、ダイシング、ボンティング、及びパッケージング等の各種の実装処理が必要に応じて実施される。次いで、検査工程では、デバイス組立工程で組み立てられたマイクロデバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の各種の検査が行われる(ステップS106)。そして、これらの工程を経て、マイクロデバイスが製造される。
【0093】
図10は、上述した基板処理工程の一部を示す一例であって、シリコン基板に薄膜トランジスタを形成するための各種の処理を示すフローチャートである。
【0094】
まず、酸化工程では、加熱されたシリコン基板の表面が酸素の雰囲気下で熱酸化され、これにより、ゲート絶縁膜が形成される(ステップS111)。CVD工程では、ゲート酸化膜上にポリシリコン膜等のゲート電極膜がCVD法によって形成される(ステップS112)。レジスト膜形成工程では、ゲート電極膜上に感光性材料が塗布され、これにより、基板の全面にレジスト膜が形成される(ステップS113)。露光工程では、露光装置10にて上記レチクルRや可変成形マスクの形成するマスクパターンに基づき露光パターンがレジスト膜上に形成される(ステップS114)。現像工程では、露光工程において露光されたレジスト膜が現像され、これによりゲートが形成される部位を覆うレジストパターンが形成される(ステップS115)。エッチング工程では、レジストパターンをマスクにしたエッチングが実施され、これにより、ゲート絶縁膜及びゲート電極膜がパターニングされる(ステップS116)。イオン注入工程では、レジストマスクで覆われていないシリコン基板の領域にイオンが注入される(ステップS117)。レジスト除去工程では、エッチングに利用されたレジストパターンが、例えば酸素ラジカルの雰囲気下で除去される(ステップS118)。
【符号の説明】
【0095】
10…露光装置、11…光源装置、11a…連結部、12…照明装置、12a…筐体、13…レチクルステージ、14…投影装置、15…ウエハステージ、16…鏡筒、17…ミラー、18,21…金属保持部材、18a,21a…底壁部、18b,21b…周壁部、18c,21c…接続部、18d,21d,21j…ねじ、18e,18f,21e,21f…Oリング、19…金属材料、19s…液面、21g…熱伝導部、21h…仕切部、21i…フランジ部、22…液体材料、23…金属ブロック、24,42…ペルチェ素子、25…配管接続部、26,31…冷媒配管、41…第1冷媒配管、41a…第1配管接続部、43…第2冷媒配管、43a…第2配管接続部、C…露光チャンバ、EL…露光光、M…測定装置、R…レチクル、Ra…パターン形成面、RM…反射ミラー、S…保持空間、S1…第1保持空間、S2…第2保持空間、W…ウエハ、Wa…露光面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡筒の内部に保持された光学部材を備える光学装置であって、
液相と固相との間で相転移する物性を有し、前記液相と前記固相とが共存する金属材料と、
前記鏡筒の外周部に設けられ、前記金属材料を保持する第1の保持部と、
を備えることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記金属材料は、
温度変化することで、前記液相と前記固相との比率を変化させることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記金属材料は、
前記鏡筒の温度が上昇すると、前記鏡筒からの熱を受けて、前記固相に対して前記液相の比率を増やすことを特徴とする請求項2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記金属材料は、
前記鏡筒の温度が低下すると、前記鏡筒に熱を与えて、前記固相に対して前記液相の比率を減らすことを特徴とする請求項2に記載の光学装置。
【請求項5】
前記金属材料は、
前記鏡筒に設定されている基準温度のときに、前記液相と前記固相とが共存する固液共存相となるによう選択された単体の金属または金属合金であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項6】
前記単体の金属は、
ガリウム(Ga)またはセシウム(Cs)であることを特徴とする請求項5に記載の光学装置。
【請求項7】
前記金属合金は、
ガリウム(Ga)、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ナトリウム(Na)、水銀(Hg)の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項5に記載の光学装置。
【請求項8】
前記基準温度となるように、前記鏡筒または前記金属材料の液相と固相との比率を調整する調整装置をさらに備えることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項9】
前記調整装置は、
前記鏡筒に対して前記第1の保持部の外側に設けられ、前記第1の保持部を介して前記金属材料との間で熱交換する液体材料を保持する第2の保持部と、
前記液体材料の少なくとも一部に接触し、前記液体材料との間で熱交換することで、前記液体材料の温度を調整する温調装置と、
を備えることを特徴とする請求項8に記載の光学装置。
【請求項10】
前記液体材料は、
前記温調装置から伝播した振動を吸収することを特徴とする請求項9に記載の光学装置。
【請求項11】
前記液体材料は、
ガリウム(Ga)またはインジウム(In)の少なくとも一方を含む液体金属であることを特徴とする請求項9または10に記載の光学装置。
【請求項12】
前記金属材料の固相と液相との比率を検出する検出装置をさらに備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項13】
前記金属材料の固相と液相との比率を検出する検出装置をさらに備え、
前記調整装置は、
前記検出装置の検出結果に基づいて、前記金属材料の液相と固相との比率を調整することを特徴とする請求項8から11のいずれか一項に記載の光学装置。
【請求項14】
光源からの光を用いてマスクを照明する照明装置と、
前記マスクに形成されたパターンの像を物体に投影する投影装置と、を備える露光装置において、
前記照明装置および前記投影装置の少なくとも一方は、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の光学装置を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項15】
デバイスを製造するデバイス製造方法であって、
請求項14に記載の露光装置を用いて物体を露光する露光工程と、
前記露光工程で露光された前記物体を現像する現像工程と、
前記物体の表面を加工する加工工程と、
を含むデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−231046(P2012−231046A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99101(P2011−99101)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】