説明

光学装置及び光学装置の製造方法

【課題】高速動作に対応し、信頼性の高い光学装置を提供する。
【解決手段】光学装置1は、表面に光学素子4が形成された第1基板2と、光学素子4に対向する部位を有し、該部位が光を透過する第2基板3と、第1基板2と第2基板3との間で、光学素子4の周囲に位置する光吸収部材16と、光学素子4および光吸収部材16を取り囲む封止部材15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置及び光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、シリコンウェーハ等の半導体基板の表面に、半導体集積回路等の機能素子を形成した機能デバイスが実用化され、様々な分野で用いられている。
【0003】
また近年、シリコンウェーハ等の半導体基板の表面に、半導体集積回路素子等の微細配線を形成する加工技術を応用して、極めて微小な構造体、いわゆる微小電子機械機構(MicroElectro Mechanical System:MEMS)を形成した新たな機能デバイスが注目され、実用化に向けて開発が進められている。中でも、基板上に可動ミラーをマトリクス状に配置した反射型光変調器である、マイクロミラーデバイス等の光学装置が、プロジェクター等の様々な分野で使用され、注目を集めている。
【0004】
この光学装置では、可動ミラーの動作速度や、信頼性の向上のため、微小可動ミラーを気密封止する必要がある。これには、一般に、微小可動ミラーを形成した基板上に、光透過性を有する蓋体を対向させ、ガラスや金属等の無機材料や、樹脂等の有機材料で封止するという方法が用いられる。
【0005】
しかし、近年、動作速度をさらに上昇させた際に、可動ミラーが誤動作することが課題となっている。これは、一度光学装置内に入射した光が可動ミラーで僅かながら乱反射を起こし、その乱反射した光(以下、「迷光」ともいう。)が再度可動ミラーにより反射されることが原因である。
【0006】
この迷光を防止するために、従来技術として、基板表面を光吸収材で覆い、迷光を吸収することにより誤動作を抑制するというものがある(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平2002−189178号公報
【特許文献2】特開平2006−234908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、比較的大きな微小可動ミラーを用いる場合、および封止エリアの高さを高くするために封止部の高さを高くした場合等には、封止部の内表面で反射した光により、微小可動ミラーの誤動作が発生するという場合がある。また、封止部に光を反射しやすい材料を用いた場合にも、迷光による微小可動ミラーの誤動作が発生しやすいという課題がある。同時に、封止エリアの気密性を保持することが求められる。
【0008】
本発明は、上記従来の技術の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高速動作に対応し、気密性の高い光学装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光学装置は、表面に光学素子が形成された第1基板と、前記光学素子に対向する部位を有し、該部位が光を透過する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間で、前記光学素子の周囲に位置する光吸収部材と、前記光学素子および前記光吸収部材を取り囲む封止部材とを備えるものである。この光学装置を、第1の光学装置という。
【0010】
好ましくは、第1の光学装置において、光吸収部材が、封止部材の内表面に形成されているものである。この光学装置を第2の光学装置という。
【0011】
好ましくは、第1または第2の光学装置において、光吸収部材が、光吸収性物質と樹脂とを含むものである。この光学装置を第3の光学装置という。
【0012】
好ましくは、第1乃至3の光学装置において、封止部材が、金属を含むものである。
【0013】
また、本発明の光学装置の製造方法は、第1表面に光学素子を有する第1基板と、第2表面を有する第2基板とを準備する工程と、前記第1表面における前記光学素子の周囲または前記第2表面上に、第1融点Tを有する第1材料からなる第1粒子、並びに該第1融点よりも低い第2融点Tを有する第2材料と前記第1融点Tよりも高い第3融点Tを有する第3材料とからなる第2粒子を含む封止材を環状に設ける工程と、前記封止材をT以上かつ0.8T未満の温度まで加熱して、前記第2材料を溶融させる工程と、前記封止材を0.8T以上に加熱して、前記第1粒子を粒成長させ、封止部材を形成する工程と、前記第1表面または前記第2表面と前記封止部材とを接続することにより、前記第1表面と前記第2表面とを前記封止部材を介して接続する工程とを有するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光学装置によれば、高速動作に対応し、気密性の高い光学装置を実現することができる。
【0015】
また本発明の光学装置の製造方法によれば、高速動作に対応し、気密性の高い光学装置を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
図1は、本発明の光学装置の構成例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の一点鎖線A−Aにおける断面図である。なお、(a)については、光学装置の構成要素のうち一部の構成要素を点線で示している。
【0018】
図1に示されるように、光学装置1は、第1基板2と第2基板3とを備える。第1基板2は、光学素子4が形成された第1表面5を有する。また、第1表面5には、環状の第1導体パターン6、及び配線導体7の一端が接続された電極8が設けられている。一方、第2基板3は、第2表面9を有する。第2表面9には、環状の第2導体パターン10、及び導体パッド11が設けられている。配線導体7は、第1基板2の内部に設けられるとともに、一端が電極8を介して接続端子12に接続され、他端が第1基板2の第3表面13にある導体パッド14に接続されている。なお、図1において、第3表面13は、第1表面5に対向する表面である。
【0019】
第1基板2の第1表面5、及び第2基板3の第2表面9は、対向するように配置されている。第1基板2の第1表面5は、第2基板3の第2表面9に、封止部材15を介して接合されている。この封止部材15は、第1表面5に設けられた環状の第1導体パターン6、及び第2表面9に設けられた環状の第2導体パターン10に接続されている。光吸収部材16は、光学素子4を取り囲んで配置され、さらに、封止部材15は、光吸収部材16を取り囲んで配置される。封止部材15は、第1基板2および第2基板3とともに封止エリアAを形成し、光学素子4を気密封止する。
【0020】
接続端子12は、第1基板2と第2基板3との間で、第1表面5に設けられた電極8と、第2表面9に設けられた導体パッド11とを電気的に接続する。
【0021】
ここで、光吸収部材16が光学素子4を取り囲んで配置され、さらに、封止部材15が光吸収部材16を取り囲んで配置されることから、封止部材15として金属等の光を反射しやすい材料を用いた場合にも、光吸収部材16により迷光を吸収することができる。その結果、光学素子4の迷光による誤動作が発生しにくくなる。また、光学素子4を確実に気密封止できるように封止部材15の材料を適切に選定することが可能となるため、気密信頼性を向上させることができる。
【0022】
また、光吸収部材16が、封止部材15の内表面に形成され、封止部材15に放熱性の高い材料を用いると、光吸収部材16が光を吸収し発熱した場合においても、封止部材15を介して封止エリアA外に熱を発散しやすくなり、光吸収部材16の迷光吸収性能が向上する。また、封止部材15に放熱性の高い材料を用いると、光吸収部材16の発熱による封止部材15の膨張や溶融等によるクラック等を低減することができる。これにより、光学素子4の気密信頼性を保持することができる。
【0023】
第1基板2は、酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化珪素質焼結体、若しくはガラスセラミックス焼結体等のセラミックス材料、単結晶若しくは多結晶等のシリコン材料、またはガラス材料等の絶縁材料からなる。また、第2基板3は、光を透過する物質であればよく、ガラス材料等の絶縁材料からなる。
【0024】
また、第1基板2は、封止部材15を介して接合されるので、接合の信頼性、つまり光学素子4の封止の気密性を高くするためには、第2基板3との熱膨張係数の差が小さい材料で形成することが好ましい。これは、温度変動時の熱膨張差による、接合部への応力負荷が小さくなることから、接合部の信頼性が向上するからである。例えば、第2基板3の材料がガラス等の熱膨張係数が3乃至6ppm/℃程度の小さい基板である場合、第1基板2の材料としては、ムライト質焼結体、または酸化アルミニウム−ホウ珪酸ガラス系等のガラスセラミックス焼結体等のような3乃至6ppm/℃程度の熱膨張係数の小さい材料で形成することが好ましい。
【0025】
また、第1基板2は、配線導体7により伝送される電気信号の遅延を抑制したい場合には、ポリイミド若しくはガラスエポキシ樹脂等の有機樹脂材料、セラミックス若しくはガラス等の無機粉末をエポキシ樹脂等の有機樹脂で結合して成る複合材、または酸化アルミニウム−ホウ珪酸ガラス系若しくは酸化リチウム系等のガラスセラミックス焼結体等のような比誘電率が2乃至8程度の小さい材料で形成することが好ましい。
【0026】
また、第1基板2は、封止する光学素子4の発熱量が大きく、この熱の外部への放散性を良好とするような場合には、窒化アルミニウム質焼結体等のような熱伝導率が150乃至300W/(m・K)程度の大きな材料で形成することが好ましい。
【0027】
また、第1基板2の第1表面5、及び第2基板3の第2表面8の少なくとも一方に、光学素子4を内側に収めるような凹部を形成しておいてもよい。凹部内に光学素子4の一部を収めるようにしておくと、光学素子4を取り囲むための封止部材15の高さを低く抑えることができ、光学装置1の低背化に有利なものとなる。
【0028】
光吸収部材16は、例えば、光吸収性物質と樹脂とを混合したものである。ここで、樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、フッ素樹脂、若しくはウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂、またはエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、フェノール、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレート、若しくはビスマレイミド等の熱硬化樹脂を用いることができる。また、光吸収性物質としては、カーボンブラック、若しくは酸化クロム粉末等の黒色の無機粉末、またはアゾ染料等の黒色の有機染料等を用いることができる。
【0029】
また、封止部材15は金属成分を含むことが好ましい。このように封止部材15が金属成分を含む場合には、光吸収部材16が光を吸収し発熱した場合においても、封止部材15に含まれる金属成分を介して封止エリアA外に熱を発散しやすくなり、光吸収部材16の迷光吸収性能が保持される。また封止部材15の放熱性が向上することにより、光吸収部材16の発熱による封止部材15の膨張や溶融等によるクラック等を低減することができることから、気密信頼性も維持することができ、より好ましい。ここで、金属成分としては、金等の金属、錫−銀系若しくは錫−銀−銅系等の半田、金−錫ろう等の低融点ろう材、または銀−ゲルマニウム系等の高融点ろう材等を用いることができる。
【0030】
接続端子12の材料としては、金等の金属、錫−銀系若しくは錫−銀−銅系等の半田、金−錫ろう等の低融点ろう材、または銀−ゲルマニウム系等の高融点ろう材等の金属成分を用いることができる。接続端子12の材料を封止部材15と同じ材料にすると、光学装置1を製造する際に、同じ温度で溶融することから、封止部材15と接続端子12とを同時に接合できる。また、上記電極8および導体パッド11、14は、銅、金、パラジウム、タングステン、モリブデン、またはマンガン等の金属材料により形成される。この形成の手段としては、厚膜法、またはめっき法若しくは蒸着等の薄膜法等がある。
【0031】
ここで、上記電極8、導体パッド11、および接続端子12は、封止エリアAの外若しくは内のどちらも形成することができる。
【0032】
上記接続端子12、電極8、及び導体パッド11を、封止エリアAの内側に配置すると、接続端子12および電極8が気密封止された状態となり、空気中の不純物による劣化、および劣化に伴う高周波信号の遅延等を抑制することができるため、接合及び高周波特性の信頼性が高くなる。この場合、接続端子12の表面を、光吸収部材16で覆うことにより、接続端子12の表面が光吸収部材16よって覆われていることから、接続端子12として金属等の光を反射しやすい材料を用いた場合にも、接続端子12の表面に形成した光吸収部材16により迷光を吸収することができるため、接続端子12の表面での迷光の反射による光学素子4の誤動作が発生しにくくなり、より好ましい。
【0033】
一方、上記電極8、接続端子12、及び導体パッド11を、封止エリアAの外側に配置すると、光学素子4と、電極8、接続端子12、及び導体パッド11との間の電磁気的干渉をより抑制することができる。そのため、電磁気的干渉や高周波ノイズの影響が抑制された、光学素子4の電気的、および機械的な作動の信頼性に優れた光学装置1を提供することができる。
【0034】
また、配線導体7を、外部端子等を介して、外部電気回路の接地用端子等に接続することも可能である。その場合には、封止部材15に基準電位を与えることにより、封止部材15をシールドとして用いることもできる。さらに、第1基板2および第2基板3の内部に、光学素子4に対する光の入射および反射に対して阻害しない範囲で、配線導体7を形成することも可能である。
【0035】
また、第2基板3の第2表面9に対向する表面、または第1基板2の第3表面13に、導体パッド14を形成し、半田ボール等の実装用接合材を介して外部の電気回路に接続することにより、光学装置1を外部電気回路と電気的に接続することも可能である。
【0036】
次に、上記光学装置1の製造方法について、図2に基づいて説明する。
【0037】
図2は、光学装置1の製造方法を説明するための図であり、図2において図1と同じ部位には同じ符号を付してある。
【0038】
まず、図2(a)に示すように、第1表面5に光学素子4を有する第1基板2と、第2表面9を有する第2基板3とを準備する。
【0039】
ここで、第1基板2が例えばシリコン基板より成る場合、第1基板2の第1表面5に酸化シリコン層を形成するとともに、フォトリソグラフィ等の微細配線加工技術等を用いることより光学素子4が形成される。
【0040】
また例えば、第1基板2が酸化アルミニウム質焼結体から成る場合であれば、酸化アルミニウム、酸化珪素、または酸化カルシウム等の原料粉末を、有機樹脂およびバインダとともに混練してスラリーを得て、このスラリーをドクターブレード法、またはリップコータ法等によりシート状に成形して複数のグリーンシートを形成し、このグリーンシートの表面に、および必要に応じてグリーンシートにあらかじめ形成しておいた貫通孔内に、タングステンのメタライズペーストを印刷塗布または充填し、その後、これらのグリーンシートを積層して焼成することにより第1基板2を形成することができる。メタライズペーストを印刷塗布または充填する方法としては、印刷用のマスクの開口部からペーストを塗布するスクリーン印刷法、またはインクジェット若しくはディスペンサーなどのペーストを直接描画する方法等のいずれの方法も適用することができる。
【0041】
なお、上述のグリーンシートのうち、一部のものに打ち抜き加工を施して四角形状等の開口部を形成しておき、これを一方主面側の最表層に配置し、または最表層から内部に向かって数層積層するようにして、焼成後の第1基板2の第1表面5に、光学素子4の位置に対応する凹部が形成されるようにしておいてもよい。また、D−RIE等の微細穴加工技術を用いることも可能である。
【0042】
次に、図2(b)に示すように、第1表面5における光学素子4の周囲または第2表面9上に、第1融点Tを有する材料(以下、第1の材料ともいう)からなる第1粒子17、並びに第1融点よりも低い第2融点Tを有する材料(以下、第2の材料ともいう)と第1融点Tよりも高い第3融点Tを有する材料(以下、第3の材料ともいう)とからなる第2粒子18を含む封止材19を環状に設ける。ここで、導体パッド11に、接続端子12として同じものを塗布することもできる。なお、図では、第1表面5のみに封止材20を設けたものを示しているが、第2表面9のみに設ける場合や、第1表面5および第2表面9に同時に設けることも可能である。
【0043】
第1粒子17と第2粒子18とを含む封止材19を環状に設ける方法としては、第1粒子17および第2粒子18を、有機樹脂およびバインダとともに混練してスラリーを得て、印刷用のマスクの開口部からペーストを塗布するスクリーン印刷法、およびインクジェット若しくはディスペンサーなどのペーストを直接描画する方法等のいずれの方法も適用することができる。また、このスラリーをドクターブレード法若しくはリップコータ法等によりシート状に成形してシートを形成し、金型等で環状に打ち抜いたものを接着する方法等により形成することも可能である。
【0044】
次に、図2(c)に示すように、封止材19をT以上かつ0.8T未満の温度まで加熱して、第2粒子18の第2材料を溶融させる。
【0045】
ここで、封止材をT以上かつ0.8T未満の温度まで加熱すると、第1粒子17の融点が第2粒子18の第2の材料の融点よりも高いため、第1粒子17が溶融する前に、第2粒子18の第2の材料が溶融する。そして、第2の材料が流動することに伴い、第3の材料も流動し、結果として、その後に得られる封止部材15の内表面を、第2の材料と第3の材料とで覆うことができる。ここで、第3の材料を上記光吸収性物質にすることにより、光吸収部材16を形成することができる。また、第2の材料の一例として、樹脂が挙げられる。
【0046】
ここで、第3の材料の添加量は、第3の材料の比重にもよるが、第2の材料が溶融して、流動を阻害しない程度であればよい。第3の材料の種類や形状等にもよるが、第2粒子18中の第3の材料の比重およびと体積をかけ乗算した値たものと、第2粒子18中の第2の材料の比重およびと体積をかけたもの乗算した値との比が、0.5程度以下であれば、流動を阻害することを抑制しとなく、第3の材料が第2の材料とともに流動しやすくなることから、好ましい。なお、この場合に、第1粒子17中の第1の材料の比重および体積を乗算した値と、第2粒子18中の第2の材料の比重および体積を乗算した値との比は、0.5より大きい。
【0047】
次に、図2(d)に示すように、封止材19を0.8T以上に加熱して、第1粒子17を粒成長させ、封止部材15を形成する。
【0048】
次に、図2(e)に示すように、封止部材15を0.8T以上に加熱し、第1表面5または第2表面9と封止部材15とを接続することにより、第1表面5と第2表面9とを封止部材15を介して接続する。
【0049】
ここで、封止材19を0.8T以上に加熱することにより、第1粒子17を溶融させ、第1表面5と第2表面9とを封止部材15を介して接続することから、接続と同時に封止部材15の内表面に光吸収部材16を形成することができる。さらに、接続の際に第1基板2および第2基板3の少なくとも一方に力を加えると、第1粒子17同士がより接触しやすくなり、第1粒子17が粒成長しやすくなり、より低温で封着できることから、好ましい。また、第1粒子17が溶融し、完全に粒成長する前に上記力を加えることにより、封止部材15内部の第2の材料および第3の材料が流動しやすくなり、より容易に接合部材15の表面を覆うことができるため、好ましい。
【0050】
封止部材15および接続端子12の表面が、光吸収部材16で覆われるような構成を実現するためには、第1粒子17と第2の材料の融点Tの差を大きくするとよい。具体的には、第1粒子10と第2の材料の融点Tの差が、20℃以上であればよい。このような材料の組み合わせの例としては、第2の材料としてポリスチレン、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、フッ素樹脂、またはエポキシ樹脂があり、第1粒子17として金、錫−銀若しくは錫−銀−銅系等の半田、金−錫ろう、または銀−ゲルマニウムろう材がある。このように、第1粒子17と第2の材料の融点Tとの差を大きくすると、第2の材料が溶融し、封止材19の表面に流れ出てから、第1粒子17が溶融するため、封止部材15の表面、および上記接続端子12が光吸収部材16で覆われた構成をより容易に製造することができる。
【0051】
ここで、第3の材料が無機材料であれば、その大きさ、形状および添加量等を調整することにより、第2の材料の流動性を調整することが可能である。ここで、第2の材料の大きさとしては、例えば光吸収性物質がカーボンブラックである場合は、0.01μm乃至0.1μm以下程度の大きさであれば、粒子同士が凝集することなく流動し、封止部材15の表面を覆うことができるため、望ましい。また、第2の材料が樹脂である場合、第3の材料の添加量としては、樹脂との組み合わせにもよるが、樹脂の体積を100とした場合に、光吸収性物質の体積が40乃至80(すなわち、光吸収物質の添加量が40乃至80体積部)であれば、封止部材15の全面をより確実に覆うことができる。
【0052】
また、第1粒子17に対する、第2粒子18の比率を調整することにより、封止部材15の表面に形成される光吸収部材16の厚みを調整することもできる。
【0053】
また、第1粒子17に対する、第2粒子18の比率等を調整することにより、封止部材15の封止エリアAに接しない表面(以下、「封止部材15の外表面」ともいう。)に光吸収部材16を形成することもできる。これにより、光吸収部材16により封止部材15を補助するため、気密信頼性を向上させることができる。ここで、封止部材15の外表面に形成された光吸収部材16は、図2(e)の工程終了後、除去することができる。この除去の方法としては、微小なアルミナ等の粒子を水等の溶媒に混合したものを吹き付けて除去する機械的方法、または薬品等により溶解させ除去する化学的方法等がある。
【0054】
なお、第2の材料として、封止部材15との接合強度の大きい樹脂を用いると、光学装置1に熱や衝撃等が加わった場合においても、封止部材15の内表面に光吸収性物質をより確実に保持することができる。よって、光吸収部材16の迷光吸収の信頼性が向上し、また脱落した光吸収性物質が光学装置1のミラー部や可動部に付着することによる誤動作を抑制することができる。また樹脂を封止部材15の内表面に形成することにより、樹脂により封止部材15を補強することができ、気密封止信頼性も向上させることができる。
【0055】
また、第2の材料が熱硬化性樹脂である場合、上記加熱の際に、第2粒子18に含まれる樹脂が溶融後固化するため、その後光吸収部材16が固化することになる。
【0056】
ここで、封止部材15を介した第1基板2と第2基板3との接合は、例えば、第1粒子17が錫−銀系半田から成る場合であれば、封止部材15に位置合わせして載せ、これらを約250℃〜300℃程度の温度のリフロー炉中で熱処理すること等により行なわれる。
【0057】
また、第2の材料の沸点をT2F(T<T2F)とすると、上記熱処理を、0.8T乃至0.8T2Fの範囲で行うとよい。この温度範囲で行うと、圧着の際に、第1粒子17が粒成長もしくは、溶融して封止部材15を形成する一方で、第2の材料が沸騰、膨張することによる第2の材料の飛散の発生を抑制することができる。ここで、第2の材料が、前述の熱硬化性樹脂であれば、加熱により溶融後固化するため、上記T2Fが上がり、温度範囲が広くなることから、より好ましい。
【0058】
また、第1粒子17の大きさに広い分布を持たせると、第1粒子17の溶融による収縮がより緩やかになり、圧着する際の熱処理の温度の制御がより容易になることから、好ましい。特に、第1粒子17の粒径が1乃至50μmの範囲にあれば、より好ましい。
【0059】
また、図2(e)の工程の前に、封止部材15と同じ高さとなるようにして、接続端子12が形成されていれば、図2(e)の工程の際、封止部材15を第1基板2に接続するときに、同時に導体パッド11と電極8とをより容易に接続することができ、好ましい。封止部材15の高さを接続端子12の高さと同じとする方法としては、例えば、図2(d)の工程で、接続端子12となる錫−銀半田等の材料を溶融させて上記導体パッド11または電極8上に形成する際に、その上面を封止材と同じ高さとなるようにしてセラミックス製の治具等で押さえておく方法や、または、図2(d)の工程終了後、一旦冷却し、封止部材15および接続端子12が同じ高さになるように研磨する等の方法が可能である。
【0060】
また、上記第1の材料および第2の材料として、複数の種類の材料を用いることができる。これにより、熱膨張係数等の調整が容易となる。例えば、第2の材料として、複数の樹脂の比率を調整し混合することにより、第1の材料との接合性を向上させ、かつ熱膨張係数を第1の材料に近づけることができ、気密信頼性をより高くすることができる。
【0061】
さらに、封止部材15の、上記第1の材料及び第2の材料は、樹脂等の有機成分、金等の金属、錫−銀系若しくは錫−銀−銅系等の半田、金−錫ろう等の低融点ろう材、銀−ゲルマニウム系等の高融点ろう材、または酸化アルミニウム−ホウ珪酸ガラス系や酸化リチウム系等の低融点ガラス等を用いることができる。ただし、上記第2の材料の融点は、上記第1の材料の融点よりも低いという条件を満たす。
【0062】
なお、上記光学装置1の製造工程において、封止部材15の内部に第2および第3材料が混在することがある。図3は、そのような場合の光学装置1の一例を示す断面図である。図3において図1と同一の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。このような構成では、封止部材15の内部に含まれる微小な空洞が第2材料および第3材料で充填される。よって、空洞内の気体が膨張して、封止部材15の一部が飛散することを抑制できる。
【0063】
なお、このような光学装置31は、図2(d)において、第1粒子17を粒成長させ、封止部材15を形成する際に、第1粒子17間に、すでに溶融している第2の材料および第3の材料が充填されることにより作製される。また、接続端子12も封止部材15と同一の材料で形成されていた場合、接続端子12に設けられた空隙にも同様にその空洞に第2および第3の材料が充填される。
【0064】
なお、上述の光学装置1,31において、第1粒子17と第2粒子18との熱膨張係数を近くすると、光学装置1に熱処理を加えた際の熱膨張の差によって封止部材15の内部にクラックが入る可能性が低くなるため、気密信頼性が向上し、より好ましい。
【0065】
また、第1基板2の第1表面5、第2基板3の第2表面9の少なくとも一面に、封止部材15および接続端子12を形成し、圧着する前に熱処理を行ってもよい。この場合、封止部材15および接続端子12に含まれる低沸点成分およびダスト等を、熱処理により除去することができる。ここで、第1表面5または第2表面9に対する封止部材15の形成は、リフロー法、又はシーム溶接若しくは電子ビーム溶接等の溶接法により行なうことができる。
【0066】
また、上記のように、圧着する前に熱処理を行った場合、圧着前に、光吸収部材16で、封止部材15の表面を覆うことも可能である。この場合、光吸収部材16の厚みを調整することができる。ここで、光吸収部材16を形成する方法としては、例えば、第1の材料からなる粉末、第2の材料からなる粉末を有機樹脂およびバインダとともに混練してスラリーを得て、印刷用のマスクの開口部からペーストを塗布するスクリーン印刷法や、インクジェット、ディスペンサー等による直接塗布する方法等が適用できる。
【0067】
また、配線導体7が、第1基板2の内部に形成されていれば、配線導体7により第1基板2の内部にインダクタ等の機能部品を形成することもでき、高周波信号に対応できる。
【0068】
なお、本発明は上述の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内であれば、種々の変形は可能である。
【0069】
例えば、上述の実施の形態の例では一つの光学装置1内に一つの光学素子4が形成されているが、一つの光学装置1内に複数の光学素子4を形成してもよい。
【0070】
また、配線導体7の外部電気回路への電気的な接続は、外部端子として半田ボールを介して行なうものに限らず、リード端子や導電性接着剤等を介して行なってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の実施の形態による光学装置の構成例を示す平面図及び断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態による光学装置の製造方法の一例を示した図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態による光学装置の構成例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1:光学装置
2:第1基板
3:第2基板
4:光学素子
5:第1表面
6:第1導体パターン
7:配線導体
8:電極
9:第2表面
10:第2導体パターン
11、14:導体パッド
12:接続端子
13:第3表面
15:封止部材
16:光吸収部材
17:第1粒子
18:第2粒子
19:封止材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に光学素子が形成された第1基板と、前記光学素子に対向する部位を有し、該部位が光を透過する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間で、前記光学素子の周囲に位置する光吸収部材と、前記光学素子および前記光吸収部材を取り囲む封止部材とを備えた光学装置。
【請求項2】
前記光吸収部材は、前記封止部材の内表面に形成されている請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記光吸収部材は、光吸収性物質と樹脂とを含む請求項1または請求項2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記封止部材は、金属を含む請求項1から請求項3のいずれかに記載の光学装置。
【請求項5】
第1表面に光学素子を有する第1基板と、第2表面を有する第2基板とを準備する工程と、
前記第1表面における前記光学素子の周囲または前記第2表面上に、第1融点Tを有する第1材料からなる第1粒子、並びに該第1融点よりも低い第2融点Tを有する第2材料と前記第1融点Tよりも高い第3融点Tとを有する第3材料からなる第2粒子を含む封止材を環状に設ける工程と、
前記封止材をT以上かつ0.8T未満の温度まで加熱して、前記第2材料を溶融させる工程と、
前記封止材を0.8T以上に加熱して、前記第1粒子を粒成長させ、封止部材を形成する工程と、
前記第1表面または前記第2表面と前記封止部材とを接続することにより、前記第1表面と前記第2表面とを前記封止部材を介して接続する工程と
を有する光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−107691(P2010−107691A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279198(P2008−279198)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】