説明

光学読取装置

【課題】 照明光を全反射し得る読取対象物でも当該装置のセット位置を変更することなく容易に読み取り可能な光学読取装置を提供する。
【解決手段】光学情報読取装置10では、複数のLED32から照射されるそれぞれの直接光Lの光路上に位置し、入射した複数の直接光Lの出射方向を個別または所定の集まりごとに任意方向に変更可能な2枚の扇状レンズ51と、複数のLED32と読取対象物との間における扇状レンズ51の位置を直接光Lの光路上において調節可能な位置調整機構40と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取対象物に照射し得る照明光を発光可能な複数の光源と、これら複数の光源から前記読取対象物に照射されて反射した反射光を受光可能な受光素子と、この反射光による前記読取対象物の像を前記受光素子の受光面に結像可能な結像光学系と、を備えた光学読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の光学読取装置として、例えば、下記特許文献1に開示される「照明装置」を備えたものがある。この特許文献1に開示される技術では、リング状に配置された発光ダイオード群とこの発光ダイオード群からの光束をリング中心方向寄りに屈折可能としたレンズ(例えばリンク状のフレネルレンズ)とを備えたリング状の照明装置を、例えばCCDカメラの筒部の外周にはめ合わせて固定する。これにより、発光ダイオード群からの光束をリング中心方向寄りに屈折させることが可能となるので、例えばCCDカメラの下方に置いた被検査対象物品を撮影して検査する際に発光ダイオード群からの光束を効率よく照射できるとしている(特許文献1;段落番号0002、0004、図1等)。
【特許文献1】特開2003−59329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなリング状の照明装置を備えた従来の光学読取装置によると、リング状の発光ダイオード群からの光束は、リング状のレンズによってリングの全周からリング中心方向寄りに屈折するため、リング状の光束が一様にリング中心方向に集められる。このため、例えば、半導体チップや半導体ウェハあるいは金属表面等、照射された光のほぼ全てを反射(以下「全反射」という)し得るものを読取対象物とした場合には、反射光のほぼ全てがCCD(受光素子)に入射することから、光学読取装置がCCDカメラであるときには画面が真っ白になってしまい読取対象物を撮影し難いという問題がある。
【0004】
通常、このような全反射による問題は、読取対象物から照明装置までの位置や角度を調整して全反射の生じないところに光学読取装置をセットすることで回避可能ではあるが、読取対象物が必ずしも一定の位置に存在するとは限らない場合には、撮影の都度、光学読取装置の位置等をその都度セットし直さなければならず段取りに手間がかかるという新たな問題が生じ得る。また、読取対象物である金属表面が平面ではなく曲面や球面である場合には、光学読取装置の位置等を調整しても、その一部において全反射が生じてしまうため、当該読取対象物から照明装置までの位置や角度を調整するだけでは、全反射の問題は回避し難いという問題がある。
【0005】
このような問題は、光学読取装置がCCDカメラである場合に限られず、当該装置がバーコードリーダ等の光学情報読取装置である場合には、バーコード情報が読み取れないという不具合現象として現れる。即ち、半導体チップや半導体ウェハあるいは金属表面等に直接印刷された1次元または2次元のバーコード(情報コード)を読取対象物とするバーコードリーダの場合には、バーコード情報が読み難いという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、照明光を全反射し得る読取対象物でも当該装置のセット位置を変更することなく容易に読み取り可能な光学読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の光学読取装置では、読取対象物[W]に照射し得る照明光[La,Lb]を発光可能な複数の光源[32]と、これら複数の光源[32]から前記読取対象物[W]に照射されて反射した反射光[Lr]を受光可能な受光素子[27]と、この反射光[Lr]による前記読取対象物[W]の像を前記受光素子[27]の受光面[27a]に結像可能な結像光学系[24]と、を備えた光学読取装置であって、前記複数の光源[32]から照射されるそれぞれの照明光[L]の光路上に位置し、入射した前記複数の照明光[L]の出射方向を個別または所定の集まりごとに任意方向に変更可能な光学部材[50,51,150,151,250,251,252]と、前記複数の光源[32]と前記読取対象物[W]との間における前記光学部材[50等]の位置を前記照明光[L]の光路上において調節可能な位置調整機構[40]と、を備えることを技術的特徴とする。なお、[ ]内の数字等は、[発明を実施するための最良の形態]の欄で説明する符号に対応し得るものである(以下同じ)。
【0008】
特許請求の範囲に記載の請求項2の光学読取装置では、請求項1記載の光学読取装置において、前記光学部材[50等]は、入射した前記照明光[L]の出射側から見て環状に配置されていることを技術的特徴とする。
【0009】
特許請求の範囲に記載の請求項3の光学読取装置では、請求項2記載の光学読取装置において、前記反射光[Lr]は、前記環状に配置された光学部材[50等]によって囲まれる空間部[51a]を介して前記受光素子[27]に達することを技術的特徴とする。
【0010】
特許請求の範囲に記載の請求項4の光学読取装置では、請求項2または3記載の光学読取装置において、前記光学部材[50]が配置される前記環状は円形であり、前記複数の照明光[L]の出射方向を所定の集まりごとに任意方向に変更可能な場合には、当該所定の集まりの一つは、この円形を周方向に分割した複数の扇形の一に相当し[51,151]、前記環状の円形に対応して配置される前記複数の光源[32]は、前記複数の扇形に対応して位置していることを技術的特徴とする。
【0011】
特許請求の範囲に記載の請求項5の光学読取装置では、請求項2または3記載の光学読取装置において、前記光学部材[50]が配置される前記環状は円形であり、前記複数の照明光[L]の出射方向を所定の集まりごとに任意方向に変更可能な場合には、当該所定の集まりの一つは、この円形を径方向に分割した複数の同心円環形の一に相当し[251,252]、前記環状の円形に対応して配置される前記複数の光源[32]は、前記複数の同心円環形に対応して位置していることを技術的特徴とする。
【0012】
特許請求の範囲に記載の請求項6の光学読取装置では、請求項4または5記載の光学読取装置において、前記複数の照明光[L]の所定の集まりごとに、前記光源[32]の発光状態を制御可能な照明制御部[25,28]を備えることを技術的特徴とする。
【0013】
特許請求の範囲に記載の請求項7の光学読取装置では、請求項4〜6のいずれか一項に記載の光学読取装置において、前記環状の円形に対応して配置される前記複数の光源[32]は、前記受光素子[27]および前記結像光学系[24]に対して、前記光学部材[51,151,251,252]とともに移動可能であることを技術的特徴とする。
【0014】
特許請求の範囲に記載の請求項8の光学読取装置では、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学読取装置において、前記複数の光源[32]と前記光学部材[51]との間には、前記複数の光源[32]から発せられた照明光[La,Lb]を前記光学部材[51]に入射可能に導く導光部材[361]が設けられていることを技術的特徴とする。
【0015】
特許請求の範囲に記載の請求項9の光学読取装置では、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学読取装置において、前記光学部材[50等]は、レンズ、プリズムまたは拡散部材のうちの少なくとも1つ若しくはこれらの2以上の組み合わせであることを技術的特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明では、複数の光源[32]から照射されるそれぞれの照明光[L]の光路上に位置し、入射した複数の照明光[L]の出射方向を個別または所定の集まりごとに任意方向に変更可能な光学部材[50等]と、複数の光源[32]と読取対象物[W]との間における光学部材[50等]の位置を照明光[L]の光路上において調節可能な位置調整機構[40]と、を備える。これにより、位置調整機構[40]によって光学部材[50等]の位置を照明光[L]の光路上で調節することで、当該光路上における光学部材[50等]と複数の光源[32]との離隔距離を変更できるので、当該光学部材[50等]に入射した複数の照明光[L]の出射方向を当該任意方向に向けて個別または所定の集まりごとにほぼ連続的に変更することができる。このため、位置調整機構[40]により光学部材[50等]の位置を調節することで、光学部材[50等]から出射される照明光[La,Lb]の出射方向を個別または所定の集まりごとに変更できるので、照明光[La,Lb]を全反射し得る読取対象物[W]であっても、全反射の生じない方向に照明光[La,Lb]の出射方向を設定することができる。したがって、光学読取装置自体の位置を変更することなく全反射を回避できるので、照明光[La,Lb]を全反射し得る読取対象物[W]でも容易に読み取ることができる。
【0017】
請求項2の発明では、光学部材[50等]は、入射した照明光[L]の出射側から見て環状に配置されていることから、例えば、複数の光源[32]が環状に配置されるリング状の照明装置[30]に良好に適用することができる。したがって、リング状の照明装置[30]による照明光[La,Lb]を全反射し得る読取対象物[W]でも当該光学読取装置[10]のセット位置を変更することなく容易に読み取ることができる。
【0018】
請求項3の発明では、入射した照明光[L]の出射側から見て光学部材[50等]が環状に配置されている場合において、反射光[Lr]は、当該環状に配置された光学部材[50等]によって囲まれる空間部[51a]を介して受光素子[27]に達する。これにより、受光素子[27]には、環状に配置された光学部材[50等]によって任意方向に集光された照射光[La,Lb]による反射光[Lr]を、受光素子[27]の全周囲から入射させることができる。このため、全周ではなく一部から照射する場合に比べて、高い照度を得ることができる。
【0019】
請求項4の発明では、光学部材[150]が配置される環状は円形であり、複数の照明光[La,Lb]の出射方向を所定の集まりごとに任意方向に変R更可能な場合には、当該所定の集まりの一つは、この円形を周方向に分割した複数の扇形の一に相当し[51,151]、環状の円形に対応して配置される複数の光源[32]は、複数の扇形に対応して位置している。これにより、円環状に配置された光学部材[50]の一部である扇形状の光学部材[51,151]を位置調整機構[40]により移動させ、当該扇形状の光学部材[51,151]の位置を調節することで、当該光学部材[51,151]から出射される照明光[La,Lb]の出射方向を所定の集まりごとに変更できる。このため、当該光学部材[51,151]から出射された照明光[La,Lb]を全反射し得る読取対象物[W]であっても、全反射の生じない方向に照明光[La,Lb]の出射方向を設定することができるので、光学読取装置[10]自体の位置を変更することなく全反射を回避できる。したがって、照明光[La,Lb]を全反射し得る読取対象物[W]でも当該光学読取装置[10]のセット位置を変更することなく容易に読み取ることができる。
【0020】
請求項5の発明では、光学部材[250]が配置される環状は円形であり、複数の照明光[L]の出射方向を所定の集まりごとに任意方向に変更可能な場合には、当該所定の集まりの一つは、この円形を径方向に分割した複数の同心円環形の一に相当し[251,252]、環状の円形に対応して配置される複数の光源[232a,232b]は、複数の同心円環形に対応して位置している。これにより、円環状に配置された光学部材[50]の一部である同心円環形状の光学部材[251,252]を位置調整機構により移動させ、当該同心円環形状の光学部材[251,252]の位置を調節することで、当該光学部材[251,252]から出射される照明光[La,Lb]の出射方向を所定の集まりごとに変更できる。このため、当該光学部材[251,252]から出射された照明光[La,Lb]を全反射し得る読取対象物[W]であっても、全反射の生じない方向に照明光[La,Lb]の出射方向を設定することができるので、光学読取装置[10]自体の位置を変更することなく全反射を回避できる。したがって、照明光[La,Lb]を全反射し得る読取対象物[W]でも当該光学読取装置[10]のセット位置を変更することなく容易に読み取ることができる。
【0021】
請求項6の発明では、複数の照明光[L]の所定の集まりごとに、光源[32,232a,232b]の発光状態を制御可能な照明制御部[25,28]を備える。これにより、例えば、当該光源[32,232a,232b]の発光強度、発光タイミングや発光色等を任意に制御することができるので、読取対象物[W]に適した照射光[L]を発光でき、それを当該読取対象物[W]に照射することが可能となる。したがって、このような光源[32,232a,232b]の発光状態との組み合わせによって、光学部材[51,151,251,252]から出射された照明光[La,Lb]を全反射し得る読取対象物[W]でもより一層容易に読み取ることができる。
【0022】
請求項7の発明では、環状の円形に対応して配置される複数の光源[32,232a,232b]は、受光素子[27]および結像光学系[24]に対して、光学部材[51,151,251,252]とともに移動可能である。これにより、受光素子[27]および結像光学系[24]に対する離隔距離を、複数の光源[32,232a,232b]と光学部材[51,151,251,252]とを一緒に調整できるので、位置調整機構[40]による調節に加えて、より幅広く調節することが可能となる。したがって、このような複数の光源[32,232a,232b]および光学部材[51,151,251,252]の移動手段との組み合わせによって、光学読取装置[10]自体の位置を変更することなく照明光[La,Lb]を全反射し得る読取対象物[W]でもより一層容易に読み取ることができる。
【0023】
請求項8の発明では、複数の光源[32]と光学部材[51]との間には、複数の光源[32]から発せられた照明光[L]を光学部材[51]に入射可能に導く導光部材[361]が設けられている。これにより、複数の光源[32]から発せられた照射光[L]を効率良く光学部材[51]に入射させられるので、当該複数の光源[32]による発光を必要最小限に抑えることが可能となる。したがって、光学読取装置[10]による消費電力を低減しながらも、照明光[La,Lb]を全反射し得る読取対象物[W]を容易に読み取ることができる。
【0024】
なお、上述した光学部材[50等]は、具体的には、レンズ、プリズムまたは拡散部材のうちの少なくとも1つ若しくはこれらの2以上の組み合わせとして実現される(請求項9)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の光学読取装置をバーコードリーダ等の光学情報読取装置に適用した実施形態について図を参照して説明する。なお、ここでいう「バーコード」とは、1次元コード(EAN/UPC、インターリーブド2オブ5、コーダバー、コード39/128、スタンダード2オブ5、RSS等)に限られず、2次元コード(QRコード、PDF417、データマトリックス、マキシコード、RSSコンポジット等)等の各種の情報コードを含む概念である。
【0026】
まず、本実施形態に係る光学情報読取装置10の構成を図1に基づいて説明する。図1(A) に示すように、光学情報読取装置10は、主に、本体部20とリング照明部30とから構成されており、当該リング照明部30から発せられた出射光La,Lb(照明光)を図略の読取対象物に照射することによって反射した反射光Lrを、本体部20に内蔵された受光部27により読み取り得る機能を有するものである。なお、本実施形態の場合、読取対象物は、バーコードに相当する。
【0027】
本体部20は、主に、ハウジング21、鏡筒22、アタッチメント部23等から構成されている。ハウジング21は、本体部20の外観をほぼ全体に構成する箱体で、内部には後述するCPU25を中心とした電子回路を構成し得る各種電子部品が収容されている。
【0028】
鏡筒22は、内部にレンズを保持可能に構成される無底の円筒体で、レンズ鏡筒または鏡胴とも称されるレンズハウジングに相当するものである。本実施形態の場合、鏡筒22の内部には、結像レンズ24が収容されており、ハウジング21の一端側から外部に鏡筒22の開口部が突出可能に構成されている。これにより、図略の読取対象物に反射した反射光Lrを当該結像レンズ24に入射可能にしている。
【0029】
アタッチメント部23は、ハウジング21から突出した鏡筒22の外周を取り囲むようにハウジング21の一端側に取り付けられる円環状の部材で、その周囲にはリング照明部30のベース部31aを取り付け可能な雄ねじ部23aが形成されている。即ち、このアタッチメント部23は、その外周に、リング照明部30の雌ねじ部31dと螺合可能な雄ねじ部23bを形成することで、当該アタッチメント部23を介して、ハウジング21とリング照明部30とのねじ締結を可能にしている。これにより、リング照明部30として、後述する複数のLED32とレンズ部50とを一緒に、結像レンズ24および受光部27に対する離隔距離を調整できる。
【0030】
結像レンズ24は、入射した反射光Lrによる読取対象物の像を、後述する受光部27の受光面27aに結像可能な結像光学系で、前述した鏡筒22内に収容された単数または複数のレンズに組み合わせにより構成されている。
【0031】
ハウジング21内には、CPU25を中心に、インターフェース部26、受光部27、LED駆動部28等から構成される電子回路が収容されている。CPU25は、中央演算処理装置、制御装置、プログラムカウンタ、半導体メモリ装置、汎用レジスタ等を含む情報処理装置であり、一般に、マイクロコンピュータやマイクロプロセッサ等と称されているものである。なお、図1(A) において、インターフェース部26は「I/F」、受光部27は「Img」、LED駆動部28は「Drv」と記号表現されている。
【0032】
インターフェース部26は、CPU25により情報処理し得るデータやコマンドを外部から入力したり、CPU25により情報処理したデータを外部に出力し得る入出力ポートで、パラレル−シリアル変換機能やディジタル−アナログ変換機能を有するものである。本実施形態では、例えば、受光部27により読み取りCPU25により情報処理した光学情報(例えばバーコードをデコードしたもの)をディジタルデータとしてインターフェース部26を介して外部に出力可能にしている。
【0033】
受光部27は、CCD(charge-coupled device)やC−MOSイメージセンサ等を代表とする固体撮像素子とその駆動回路とを備えた回路ユニットで、図略の入出力ポートを介してCPU25に接続されており、前述した結像レンズ24による結像がその受光面27aに形成され得る位置に設けられている。これにより、例えば、読取対象物に照射された出射光La,Lbが反射して結像レンズ24に入射すると、当該結像レンズ24によって当該読取対象物の像が受光面27aに結像可能となる。
【0034】
LED駆動部28は、後述するリング照明部30を構成するLED32の点灯/消灯等を制御し得るドライバ回路で、例えば、電流増幅部AMP、駆動トランジスタTr、電流制御抵抗R等により構成されている。なお、このLED駆動部28の構成例については、後述する他の実施形態において詳述する(図5(A) 参照)。
【0035】
このように本体部20が構成される一方で、リング照明部30は、主に、ハウジング31、複数のLED32、プリント基板33、位置調整機構40、レンズ部50等から構成されている。本実施形態のリング照明部30は、円環状に配置された複数のLED32によるリング照明としての機能と、位置調整機構40およびレンズ部50によりこのリング照明による出射光La,Lbの出射方向を変更し得る機能と、を有する。以下、リング照明部30の構成について図1および図2を参照して説明する。
【0036】
図2(A) および図2(B) に示すように、ハウジング31は、ベース部31aと筒壁部31bとから構成される有底の円筒体で、内部に、複数のLED32、プリント基板33、位置調整機構40等を収容可能に構成されている。ベース部31aは、ハウジング31の底部を形成し得る厚肉の円板形状の部材で、筒壁部31bと一体に形成されている。
【0037】
図1(A) および図2(B) に示すように、このベース部31aのほぼ中央外側には、前述した本体部20のアタッチメント部23を受け入れ可能な取付凹部31cが形成されており、この取付凹部31cの内周面にはアタッチメント部23の雄ねじ部23aと螺合可能な雌ねじ部31dが形成されている。また、この取付凹部31cの底部ほぼ中央には、本体部20の鏡筒22が貫通可能な貫通穴31eが形成されている。これにより、当該貫通穴31eに鏡筒22を貫通させた状態で、アタッチメント部23の雄ねじ部23aとベース部31aの雌ねじ部31dとを螺合させることが可能となる。
【0038】
一方、ベース部31aと一体に形成される筒壁部31bは、薄肉の円筒形状の部材で、後述する位置調整機構40のローラ41を取り付け可能な2個1組の長孔31fが、周方向に180度間隔で2箇所に対向するように形成されている。この長孔31fは、ローラ41のねじ固定位置を調節可能にし得るために、筒壁部31bの周方向に延びるように形成されている。また、この筒壁部31bの軸方向長さ、つまり筒壁の高さは、ベース部31aにねじ締結されたアタッチメント部23から突出する鏡筒22が、当該筒壁部31bを超えて外部に飛び出ない程度の長さに設定されている。
【0039】
図1(B) および図2(A) に示すように、LED32は、直接光Lを発光可能な発光ダイオードで、例えば赤色光を発光可能に構成されている。このような発光ダイオードは、通常、出射方向先端がドーム形状形成された透明体の樹脂モールドに封入されているため、当該ドーム形状部分が発散レンズとして機能する。そのため、LED32から発せられる直接光Lは、拡径する円錐形状の光ビームとして出射される。
【0040】
このような複数のLED32は、円環形状に形成されたプリント基板33に周方向ほぼ等間隔に取り付けられる。これによりリング照明が構成される。なお、このプリント基板33は、それぞれのLED32の電極に対してLED駆動部28と電気的に接続可能な所定のプリント配線が形成されているとともに、ハウジング31の底部を形成するベース部31aにねじ固定されている。
【0041】
なお、本実施形態に係るリング照明部30では、後述するように、円環形状のレンズを周方向に2分割したものに相当する2枚の扇状レンズ51を用いている。このため、これらの扇状レンズ51の組み合わせ部分に形成される隙間部分Gには、LED32が位置しないように当該隙間部分Gを避けてLED32を配置することで、当該隙間部分Gを通過して直進する直接光Lの発生を防止している(図2(A) に示すクロスハッチング部分)。
【0042】
図1、図2の各図に示すように、位置調整機構40は、ローラ41、ビス42、ナット43、44、扇状レンズ51の支柱52およびストッパ52aにより構成されている。即ち、扇状レンズ51に設けられる長板形状の支柱52を、2個1対のローラ41が支柱52の幅方向両側から挟み込むように挟持することで、当該支柱52の軸方向の移動を可能にしつつ幅方向の移動を規制する。
【0043】
具体的には、組付前の状態を示す図1(C) と、組付後の状態を示す図1(A) および図2(B) とを参照すると理解し易いので、ここではこれらに基づいて説明する。図1(A) および図1(C) に示すように、ローラ41は、筒壁部31bの長孔31fにナット44により固定されるビス42を回転軸として回動自在に構成されているとともに、ビス42の端部に位置するナット43によって軸方向位置が決められている。このように回動自在に筒壁部31bに取り付けられるローラ41を、図2(B) に示すように2個1対としてハウジング31の筒壁部31bに設ける。そして、これらのローラ41の取り付け位置を長孔31fによって調整することで、これらのローラ41間に挟み込まれるように、扇状レンズ51の支柱52を位置させる。なお、支柱52の先端部には、幅方向両側に凸状に突出したストッパ52aが形成されている。
【0044】
このように位置調整機構40を構成することによって、扇状レンズ51の支柱52は、2個のローラ41により挟み込まれるように挟持される。これにより、支柱52がその軸方向に移動しようとする場合には、これらのローラ41が回転するので、当該軸方向移動を可能にする一方で(図2(B) に示す支柱52’)、支柱52がその幅方向に移動しようとする場合には、筒壁部31bにねじ固定されたこれらのローラ41が当該移動を妨げ、幅方向の移動を規制する。また、支柱52がローラ41間から抜ける手前まで軸方向に移動した場合には、支柱52の先端部に形成されたストッパ52aが障害となって、ローラ41間から支柱52が抜け出ることを防止する。
【0045】
なお、図示されていないが、当該支柱52の板厚をローラ41の幅(厚さ)よりも厚く設定するとともに、ローラ41を案内するガイド溝を支柱52の両側に形成したり、ローラ41の幅方向両側からローラ41を挟み込み得るガイド板を支柱52の両側に設けることで、当該支柱52の厚さ方向の移動も規制することが可能となる。
【0046】
レンズ部50は、円環形状を有するレンズで、レンズ径は、ハウジング31の筒壁部31bによる開口径とほぼ同径に設定されている。本実施形態の場合、例えば、集光レンズ(正レンズ、凸レンズまたは収束レンズ)として光学的に機能する2枚の扇状レンズ51により構成されている。即ち、円環形状の集光レンズを周方向に2分割したものが1枚分の扇状レンズ51に相当し、当該扇状レンズ51は、(180/360)度の扇形、つまり180度に開いた扇子形状を成している。本実施形態では、例えば、円環形状のフレネルレンズを2分割したものに相当するものを用いている。
【0047】
このような扇状レンズ51を2枚組み合わせて円環形状のレンズ部50を構成することにより、その中央にはレンズ穴50aが形成されるが、本実施形態の場合、このレンズ穴50aの内径は、前述した鏡筒22の外径よりも大径に設定されている。これにより、読取対象物に反射した反射光Lrは、当該レンズ部50によって全周を囲まれるレンズ穴50aを介して受光部27に達し得るので、全周ではなく一部から照射する場合に比べて、高い照度を得ることが可能となる。
【0048】
なお、この扇状レンズ51の一端面側の外周縁付近には、前述した支柱52がレンズ経線に対してほぼ垂直に立設されている。ここで「レンズ経線」とは、光軸に垂直でレンズ表面の中心を通りレンズの縁から縁に引いた線のことである。
【0049】
本実施形態では、扇状レンズ51としてフレネルレンズを適用したが、レンズ部50を構成するものとしては、これに限られることはなく、複数のLED32から照射されるそれぞれの直接光Lの光路を変更可能な光学部材であれば、例えば、発散レンズ(負レンズまたは凹レンズ)、プリズム、拡散フィルタ(拡散部材)等でも適用することができる。
【0050】
このような扇状レンズ51を2枚1組として円環形状のレンズ部50を構成し、ハウジング31の開口部を覆うように当該レンズ部50を位置させる。これにより、リング照明を構成する複数のLED32から発せられた直接光Lは、当該レンズ部50を介して外部に出射光La,Lbとして出射される。また、前述した位置調整機構40を構成し得るように扇状レンズ51の支柱52を一対のローラ41に挟持させることにより、レンズ部50を構成する2枚の扇状レンズ51を個々に直接光Lの光路上を移動させることが可能となる(図1(A) に示す扇状レンズ51’)。
【0051】
これにより、図2(B) に示すように、直接光Lの光路上において、複数のLED32と扇状レンズ51との離隔距離dを連続的に変更できるので(d→d’)、扇状レンズ51に入射する直接光Lのビーム幅Bwを任意に変更できる(Bw→Bw’)。そのため、扇状レンズ51に入射した複数の直接光Lの出射方向を当該レンズ部50の中心方向あるいは外側方向に向けてそれぞれの扇状レンズ51ごとにほぼ連続的に変更することができるので、出射光La,Lbを全反射し得る読取対象物であっても、全反射の生じない方向に出射光La,Lbの出射方向を設定することが可能となる。したがって、光学情報読取装置10自体の位置を変更することなく全反射を回避できるため、出射光La,Lbを全反射し得る読取対象物でも容易に読み取ることができる。
【0052】
なお、図2(B) においては、複数設けられているLED32のうち、一部のLED32についてその直接光Lのビーム幅Bw等に関して図示している。そのため、図2(B) には図示されていないが、他のLED32についてもこれと同様に、扇状レンズ51との離隔距離dが変更されることにより、当該LED32から扇状レンズ51に入射する直接光Lのビーム幅Bwも変更されるため、入射した直接光Lの出射方向をレンズ部50の中心方向あるいは外側方向に向けてほぼ連続的に変更することができる。
【0053】
ここで、位置調整機構40によりレンズ部50の位置を調整することによって、読取対象物Wに照射される出射光La,Lbの強度が変化する様子を図3に基づいて説明する。
図3(A) に示すように、レンズ部50を構成する2枚の扇状レンズ51がハウジング31の開口部に接している状態、つまり両方の扇状レンズ51と複数のLED32との離隔距離が最も小さい(接近している)状態においては、LED32から発せられる直接光Lは扇状レンズ51によりレンズ部50の中心付近に集光される。そのため、扇状レンズ51から出射される出射光La,Lbにより照射される読取対象物Wは、出射光Laと出射光Lbとが重なる範囲α1が最も明るくなり、このような出射光の重なりのないその両側β1に向かって徐々に暗くなる。このような扇状レンズ51の位置設定では、出射光La、Lbにより照射された範囲を中心に全体に明るくなるので、特に全反射等が生じない場合の照射光に適している。
【0054】
これに対し、レンズ部50を構成する一方の扇状レンズ51を位置調整機構40によりLED32から遠ざかる位置に調整、つまり扇状レンズ51と複数のLED32との離隔距離が大きくなるよう扇状レンズ51の位置を設定する(図3(B) 中の符号51’)。これにより、一方の扇状レンズ51’だけがLED32から離れるため、扇状レンズ51’に入射する直接光Lはそのビーム幅が拡がる(Bw’)。そのため、扇状レンズ51’から出射される出射光La’は、他方の扇状レンズ51から出射される出射光Lbによりも拡散されて弱まったものとなる。したがって、扇状レンズ51’、51から出射される出射光La’,Lbにより照射される読取対象物Wは、出射光La’と出射光Lbとが重なる範囲α2が最も明るくなり、このような出射光の重なりのないその両側β2、γ2に向かって徐々に暗くなる。
【0055】
ただし、扇状レンズ51’に入射する直接光Lのビーム幅Bw’の方が、扇状レンズ51’に入射する直接光Lのビーム幅Bwよりも拡がっている分、扇状レンズ51’から出射される出射光La’も幅広く拡散されるため、読取対象物Wに照射される出射光La’の照射範囲(α2+γ2)も、扇状レンズ51から出射される出射光Lbの照射範囲(α2+β2)に比べて拡がったものとなる。このため、出射光La’と出射光Lbとが重なる範囲α2から扇状レンズ51’側向けて薄暗い照射範囲γ2が拡がり、それより狭い範囲で範囲α2から扇状レンズ51側向けてやや明るい照射範囲β2が形成される。つまり、図3(B) における照明光の強度は、α2>β2>γ2の順に弱くなるが、照射範囲は、α2>γ2>β2の順に狭くなる。このような扇状レンズ51、51’の位置設定では、出射光La’により照射された範囲γ2が他の範囲α2,β2に比べて暗くなるので、照射範囲の一部に片寄って暗くすることができる。このため、全反射の生じ得る範囲に対して暗くなるように扇状レンズ51’の位置を調整することで、当該全反射を抑制できるので、例えば、曲面や球面のある金属表面等の部分的な範囲で全反射が生じ得る場合に、当該範囲に直接マーキングされたバーコード等を読み取る場合の照射光に適している。
【0056】
一方、レンズ部50を構成する両方の扇状レンズ51を位置調整機構40によりLED32から遠ざかる位置に調整、つまり扇状レンズ51と複数のLED32との離隔距離が大きくなるよう扇状レンズ51の位置を設定する(図3(C) 中の符号51’)。これにより、両方の扇状レンズ51’がLED32から離れるため、LED32から発せられる直接光Lはそのビーム幅が拡がることから(Bw’)、両扇状レンズ51’から出射される出射光La’は、それぞれ拡散されて弱まったものとなる。したがって、両扇状レンズ51’から出射される出射光La’,Lb’により照射される読取対象物Wは、出射光La’と出射光Lb’とが重なる範囲α3が最も明るくなるが、図3(A) における範囲α1や図3(B) における範囲α2の明るさに比べて弱くなる(α3<α2<α1)。そして、このような出射光の重なりのないその両側β3に向かってさらに暗くなる。このような扇状レンズ51’の位置設定では、出射光La’,Lb’による照射によって全体的に暗くなるので、例えば、シリコンウェア等の平坦面状に全反射し得る範囲が拡がっている場合に、当該範囲に直接マーキングされたバーコード(QRコード)等を読み取る場合の照射光に適している。
【0057】
なお、以上説明した、図3(A) 、図3(B) および図3(C) に示す説明図においては、複数設けられているLED32のうち、2枚の扇状レンズ51にそれぞれに対応した一つのLED32にのみ着目して、その照射光(直接光L、出射光La,Lb等)の拡散等について表現している。そのため、図3の各図における範囲α1,β1,α2,β2,γ2,α3,β3は、ひとつの目安に過ぎない。したがって、本実施形態に係る光学情報読取装置10を実際に構成した場合には、扇状レンズ51の設定位置によって、各LED32ごとに、図3(A) 〜図3(C) に示すような照射光の拡散現象が生じるため、明るさを示す範囲α1,β1等は、より複雑に構成され得ることに留意されたい。
【0058】
このように本実施形態に係る光学情報読取装置10によると、複数のLED32から照射されるそれぞれの直接光Lの光路上に位置し、入射した複数の直接光Lの出射方向を個別または所定の集まりごとに任意方向に変更可能な2枚の扇状レンズ51と、複数のLED32と読取対象物Wとの間における扇状レンズ51の位置を直接光Lの光路上において調節可能な位置調整機構40と、を備える。これにより、位置調整機構40によって扇状レンズ51の位置を直接光Lの光路上で調節することで、当該光路上における扇状レンズ51と複数のLED32との離隔距離を変更できるので、扇状レンズ51に入射した複数の直接光Lの出射方向を当該任意方向に向けて個別または所定の集まりごとにほぼ連続的に変更することができる。このため、位置調整機構40により扇状レンズ51の位置を調節することで、扇状レンズ51から出射される出射光La,Lbの出射方向を個別または所定の集まりごとに変更できる。したがって、出射光La,Lbを全反射し得る読取対象物Wであっても、全反射の生じない方向に出射光La,Lbの出射方向を設定することができるので、光学情報読取装置10自体の位置を変更することなく全反射を回避でき、当該読取対象物Wを容易に読み取ることができる。
【0059】
なお、本実施形態では、「複数の光源」として、拡径する円錐形状の光ビームを出射可能なLED32を用いたが、例えば、拡がりのないレーザビーム等を出射可能な光源(レーザ光源)を「複数の光源」として用いる場合には、扇状レンズ51のレンズ面にその法線方向以外、つまりレンズ面に対して斜めに、当該レーザ光を入射させうる構成を採る。これにより、当該レーザ光源と扇状レンズ51との離隔距離が変化することにより、扇状レンズ51に入射するレーザ光の入射位置も変動し得ることから、扇状レンズ51に入射した複数のレーザ光の出射方向を当該任意方向に向けて個別または所定の集まりごとにほぼ連続的に変更することが可能となり、上述と同様の作用・効果を得ることができる。
【0060】
また、LED32の個数nで360度を除した角度(360/n)の扇状レンズをn枚用いてレンズ部を構成することで、「個別」に、扇状レンズに入射した複数の直接光Lの出射方向を任意方向に向けてほぼ連続的に変更することが可能となる。そして、この場合も上述と同様の作用・効果を得ることができる。
【0061】
ここで、本実施形態に係る光学情報読取装置10のリング照明部30の変形例を、図4〜図8を参照して説明する。
【0062】
まず、リング照明部30の第1変形例としてリング照明部130の構成を図4(A) に基づいて説明する。なお、前述したリング照明部30と実質的に同一の構成部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0063】
前述したリング照明部30では、(180/360)度の扇形に設定された扇状レンズ51を2枚用いてレンズ部50を構成した。そのため「所定の集まりごと」に、扇状レンズ51に入射した複数の直接光Lの出射方向を当該任意方向に向けてほぼ連続的に変更したが、本第1変形例に係るリング照明部130では、図4(A) に示すように、(90/360)度の扇形に設定された扇状レンズ151を4枚用いてレンズ部150を構成する。つまり、レンズ部150を周方向に4分割し、90度に開いた扇子形状を成すように扇状レンズ151を構成する。そのため、4枚の扇状レンズ151に対して、それぞれ位置調整機構40が設けられている。なお、4枚の扇状レンズ151を円環状に組み合わせてレンズ部150を構成することによって、その中央にはレンズ穴150aが形成される。
【0064】
このように構成することによって、本第1変形例に係るリング照明部130では、前述したリング照明部30の扇状レンズ51に比べ、当該「所定の集まりごと」を細分化することができる。これにより、リング照明部30に比べて狭い範囲で、扇状レンズ151から出射される出射光La,Lbの出射方向を所定の集まりごとに変更できるので、出射光La,Lbを全反射し得る読取対象物Wであっても、全反射の生じない方向に出射光La,Lbの出射方向を細かい範囲で設定することができる。したがって、当該設定の自由度を高めることができるので、光学情報読取装置10自体の位置を変更することなく全反射を回避でき、当該読取対象物Wを一層容易に読み取ることができる。
【0065】
次に、リング照明部30の第2変形例としてリング照明部230の構成を図4(B) に基づいて説明する。なお、前述したリング照明部30と実質的に同一の構成部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0066】
これまで説明したリング照明部30(図2)やリング照明部130(図4(A) )では、「所定の集まりの一つ」として、円環状に配置されるレンズ部50、150(光学部材)を周方向に分割して扇状レンズ51、151を形成した。これに対し本第2変形例に係るリング照明部230では、図4(B) に示すように、レンズ部250(光学部材)を径方向に2分割して同心円環形の小径の円環状レンズ251および大径の円環状レンズ252を備える。円環状レンズ251の中央にはレンズ穴250aが形成されている。
【0067】
円環状レンズ251の外周には、当該円環状レンズ251の外径よりも僅かに大径に設定された外径の円筒体(外筒体)が設けられており、この外筒体の外周壁には雄ねじ溝が形成されている。一方、円環状レンズ252の内周には、当該円環状レンズ252の内径よりも僅かに小径に設定された内径の円筒体(内筒体)が設けられており、この内筒体の内周壁には、円環状レンズ251の円筒体の雄ねじ溝に螺合可能な雌ねじ溝が形成されている。また、この円環状レンズ252の外周には、当該円環状レンズ252の外径よりも僅かに大径に設定された外径の円筒体(外筒体)が設けられており、この外筒体の外周壁には雄ねじ溝が形成されている。そして、ハウジング31の内周壁には、この円環状レンズ252の外筒体に形成される雄ねじ溝に螺合可能な雌ねじ溝が形成されている。
【0068】
このように、円環状レンズ251の外筒体に雄ねじ溝、円環状レンズ252の内筒体に雌ねじ溝、また円環状レンズ252の外筒体に雄ねじ溝、ハウジング31の内周壁に雌ねじ溝、からなる「位置調整機構」をそれぞれ形成することによって、ハウジング31に円環状レンズ252を螺合させ、この円環状レンズ252に円環状レンズ251を螺合させることができる。これにより、ハウジング31に対して円環状レンズ252を軸方向に移動させることが可能になり、さらに円環状レンズ252に対して円環状レンズ251を軸方向に移動させることが可能になるため、円環状レンズ251もハウジング31に対して軸方向移動を可能になる。このようにリング照明部230では、円環状レンズ251の外筒体、円環状レンズ252の内筒体および外筒体、そしてハウジング31の内壁に形成されれている雄ねじ溝や雌ねじ溝が、「位置調整機構」として機能するので、前述したようなローラ41等から構成される位置調整機構40は設けられていない。
【0069】
また、リング照明部230では、それぞれの円環状レンズ251、252の形状に対応して、複数のLED232a、232bを配置する必要があるため、例えば、大径の円環状レンズ251に対応した円環形状のプリント基板233aと、小径の円環状レンズ252に対応した円環形状のプリント基板233bと、をハウジング31内に設け、それぞれに、LED232a、232bを周方向ほぼ等間隔に設けている。なお、本第2変形例のリング照明部230の場合、分割された円環状レンズ251、252は、環状を成しているので、扇状レンズ51、151のように隙間部分Gが形成されることはない。そのため、プリント基板233aに取り付けられる複数のLED232aや、プリント基板233bに取り付けられる複数のLED232bは、それぞれほぼ等間隔に配置されている。
【0070】
このように構成することによって、本第2変形例に係るリング照明部230では、円環状に配置されたレンズ部250の一部である円環状レンズ251、252を、円環状レンズ251,252の外筒体や内筒体に形成されるねじ溝からなる「位置調整機構」により移動させ、当該円環状レンズ251,252の位置を調節することで、当該円環状レンズ251,252から出射される照明光La,Lbの出射方向を所定の集まりごとに変更できる。このため、当該円環状レンズ251,252から出射された照明光La,Lbを全反射し得る読取対象物Wであっても、全反射の生じない方向に照明光La,Lbの出射方向を設定することができるので、光学読取装置10自体の位置を変更することなく全反射を回避できる。したがって、照明光La,Lbを全反射し得る読取対象物Wでも当該光学読取装置10のセット位置を変更することなく容易に読み取ることができる。
【0071】
なお、図5(A) に示すように、円環状レンズ251に対応して設けられる複数のLED232a(以下「グループXのLED群」という)と、円環状レンズ252に対応して設けられる複数のLED232b(以下「グループYのLED群」という)と、の点灯/消灯制御を個別に行い得るように、本体部20のLED駆動部28を構成しても良い。
【0072】
即ち、図5(A) に示すように、LED駆動部28は、CPU25から出力される輝度制御信号を増幅し得る電流増幅部AMPと、この電流増幅部AMPの出力をベースで受けるとともに+電源Vccとコレクタとの間にグループXのLED群を接続しアースとエミッタとの間に電流制御抵抗Rを接続する駆動トランジスタTrと、により構成されるグループX駆動部、および、このグループX駆動部と同様に構成されグループYのLED群を駆動可能なグループY駆動部、からなる。なお、電流増幅部AMPは、外部から入力されるオンオフ信号によって出力制御され得るように構成されており、グループX駆動部の電流増幅部AMPにはCPU25から出力されるオンオフ信号Xが、グループY駆動部の電流増幅部AMPにはCPU25から出力されるオンオフ信号Yが、それぞれ接続されている。
【0073】
このようにLED駆動部28を構成することにより、例えば、CPU25から出力される輝度制御信号の信号レベルをアナログ的に増減させることにより、グループXやグループYのLED群を構成するLED232a、232bの輝度(発光強度)を任意に制御することが可能となる。つまり「発光状態」として輝度(発光強度)を任意に制御できる。
【0074】
また、図5(B) に示すタイミングで、オンオフ信号X,YをCPU25からLED駆動部28に出力する。これにより、CPU25からは、ほぼ同一のタイミングでオン信号およびオフ信号が出力されているので、円環状レンズ251に対応したグループXのLED群(LED232a)と円環状レンズ252に対応したグループYのLED群(LED232b)とをほぼ同時に点灯させたり消灯させたりすることができる。
【0075】
さらに、例えば、図5(C) に示すタイミングで、オンオフ信号X,YをCPU25からLED駆動部28に出力する。これにより、CPU25からは、オンオフ信号Xのオン信号およびオフ信号と、オンオフ信号Yのオン信号およびオフ信号と、が交互に相反したタイミングで出力されているので、円環状レンズ251に対応したグループXのLED群(LED232a)が点灯している時には、円環状レンズ252に対応したグループYのLED群(LED232b)が消灯し、グループXのLED群(LED232a)が消灯している時には、円環状レンズ252に対応したグループYのLED群(LED232b)が点灯する。つまり、「発光状態」として、グループXとグループYとを交互に点滅させることができる。
【0076】
なお、「発光状態」の他の例として、LED232a、232bの発光色を、単色ではなく、例えば、赤色、青色および緑色からなる光の三原色に設定し、さらにこれらの発光色をもCPU25から制御可能に構成する。これにより、読取対象物Wに適して発光色を選択可能にすることができるので、前述したリング照明部30、130、230等とこの機能を有する本体部とを組み合わせることで、照明光La,Lbを全反射し得る読取対象物Wでも当該光学読取装置10のセット位置を変更することなくさらに一層容易に読み取ることができる。
【0077】
続いて、リング照明部30の第3変形例としてリング照明部330の構成を図6に基づいて説明する。なお、図6(B) に図示されている半断面図は、図6(A) に示す6B線断面によるものであるが、同図右側は、扇状レンズ51と複数のLED32との離隔距離が最も小さい位置に設定されている場合を示し、同図左側は、扇状レンズ51と複数のLED32との離隔距離が最も大きい位置に設定されている場合を示す。また、前述したリング照明部30と実質的に同一の構成部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0078】
図6(A) および図6(B) に示すように、本第3変形例に係るリング照明部330は、前述したリング照明部30を構成する扇状レンズ51のそれぞれに、その周囲を覆う遮光カバー361(導光部材)を設けた例である。即ち、扇状レンズ51の裏側(LED32からの直接光Lが入射する側)に、扇状レンズ51の扇形状よりも一回り小さい扇形状を横断面形状として形成される、断面扇形状の筒体を遮光カバー361として形成する。またこの遮光カバー361は、図6(B) に示すように、その長さがハウジング31内に収容可能な程度に設定されている。
【0079】
このように構成される遮光カバー361を扇状レンズ51の裏側に取り付けることで、複数のLED32から発せられた直接光Lを効率良く扇状レンズ51に入射させられるので、当該複数のLED32による発光を必要最小限に抑えることが可能となる。したがって、光学読取装置10による消費電力を低減しながらも、出射光La,Lbを全反射し得る読取対象物Wを容易に読み取ることができる。
【0080】
なお、「導光部材」としては、このような遮光カバー361のように扇状レンズ51の周囲を覆うものの他に、例えば、光ファイバーのように光学的にLED32からの直接光Lを導く光ケーブルや導光部材であっても良い。これらの場合にも、複数のLED32による発光を必要最小限に抑えることが可能となるので、上述と同様の作用・効果を得ることが可能となる。
【0081】
さらに続いて、リング照明部30の第4変形例としてリング照明部430の構成を図7に基づいて説明する。なお、前述したリング照明部30と実質的に同一の構成部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0082】
図7(A) および図7(B) に示すように、本第4変形例に係るリング照明部430は、前述したリング照明部30を構成する扇状レンズ51の裏側(LED32からの直接光Lが入射する側)に拡散板470を設けた例である。この拡散板470は、入射した光を意図的に拡散させて、出射光La,Lbをボカし気味にするもので、拡散フィルターと称される場合もある。
【0083】
本第4変形例では、このような拡散板470を扇状レンズ51の裏側全面に設ける(貼付する)ことにより、扇状レンズ51による光の拡散だけでなく、さらに拡散板470による拡散も期待し得る構成を採る。これにより、複数のLED32から発せられた直接光Lは、拡散板470付きの扇状レンズ51に入射することで、より確実に拡散されるので、照明光La,Lbを全反射し得る読取対象物Wでも当該光学読取装置10のセット位置を変更することなく、より確実に容易に読み取ることが可能となる。
【0084】
なお、図8に示すように、リング照明部530(リング照明部30の第5変形例)のように、このような拡散板470を扇状レンズ51の裏側全面に設けるのではなく、一部分に設けても良い。即ち、リング照明部30の第5変形例に係るリング照明部530では、45度に開いた扇子形状を成すように拡散板570を形成し、それを扇状レンズ51の裏側に周方向45度間隔に設ける(貼付する)。これにより、当該拡散板570が存在する範囲と、当該拡散板570が存在しない範囲と、が45度間隔に交互に形成されるため、拡散板470を全面に設けたリング照明部430に比べて拡散の度合を調整できる。
【0085】
なお、このような拡散板570を、扇状レンズ51とは別に設けられる透明の薄板状円環板に周方向45度間隔に貼付して、当該円環板を周方向に回転可能に扇状レンズ51に取り付ける構成を採ることで、拡散板570の存在位置を周方向に設定できるので、より一層拡散の度合を調整することができる。
【0086】
なお、以上説明した実施形態およびその各変形例では、いわゆるリング照明を前提に説明したが、本発明の適用範囲はこれに限られることはなく、読取対象物に照射し得る照明光を発光可能な複数の光源であれば、光源の集合形態は、円形、楕円形、矩形、多角形等のいずれであっても良い。当該複数の光源と受光素子(受光部27)との位置関係は、読取対象物に反射した反射光が結像光学系(結像レンズ24)を介して入射する位置にあれば、必ずしも上述した実施形態のような位置関係になくても良い。これらの場合も、上述と同様の作用・効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の光学読取装置の一実施形態に係る光学情報読取装置の構成例を示す説明図で、図1(A) は本体部の電気的構成例およびリング照明部の機械的構成例を示したもの、図1(B) は図1(A) に示す1B方向から矢視によるリング照明部の機械的構成例を示したもの、図1(C) は図1(A) に示す位置調整機構の組付構成例を示したものである。
【図2】本実施形態に係る光学情報読取装置のリング照明部の構成を示す説明図で、図2(A) は照明光の出射側から見た構成図で、図2(B) は図2(A) に示す2B線断面図である。
【図3】本実施形態に係る光学情報読取装置のリング照明部を構成する2枚の扇状レンズの位置関係により、読取対象物を照射する照明光の照射範囲および強度が変化する例を示す説明図で、図3(A) は両方の扇状レンズと複数のLEDとの離隔距離が最も小さい位置に設定されている場合、図3(B) は一方の扇状レンズだけが複数のLEDとの離隔距離が大きくなる位置に設定されている場合、図3(C) は両方の扇状レンズと複数のLEDとの離隔距離が最も大きい位置に設定されている場合、である。
【図4】本実施形態に係る光学情報読取装置を構成するリング照明部の変形例を示す説明図で、図4(A) はレンズ部を周方向に4分割(径方向分割なし)した第1変形例の構成を示すもの、図4(B) はレンズ部を径方向に2分割(周方向分割なし)した第2変形例の構成を示すものである。
【図5】図5(A) は、本実施形態に係る光学情報読取装置を構成する本体部のLED駆動部およびその周辺回路との接続関係を示す回路図で、図5(B) および図5(C) は、CPUから出力される各オンオフ信号のタイミングチャートである。
【図6】本実施形態に係る光学情報読取装置を構成するリング照明部の第3変形例を示す説明図で、図6(A) は照明光の出射側から見た構成図で、図6(B) は図6(A) に示す6B線断面図である。
【図7】本実施形態に係る光学情報読取装置を構成するリング照明部の第4変形例を示す説明図で、図7(A) は照明光の出射側から見た構成図で、図7(B) は図7(A) に示す7B線断面図である。
【図8】本実施形態に係る光学情報読取装置を構成するリング照明部の第5変形例を示す説明図で、図8(A) は照明光の出射側から見た構成図で、図8(B) は図8(A) に示す8B線断面図である。
【符号の説明】
【0088】
10…光学情報読取装置(光学読取装置)
20…本体部
21…ハウジング
22…鏡筒
23…アタッチメント部
23a…雄ねじ部
24…結像レンズ(結像光学系)
27…受光部(受光素子)
27a…受光面
28…LED駆動部
30、130、230、330、430、530…リング照明部
31…ハウジング
31d…雌ねじ部
31e…貫通穴
31f…長孔
32…LED(光源)
40…位置調整機構
50…レンズ部(光学部材)
50a、150a、250a…レンズ穴(空間部)
51、151…扇状レンズ
52…支柱
251、252…円環状レンズ
361…遮光カバー(導光部材)
L…直接光(照明光)
La、Lb…出射光(照明光)
Lr…反射光
W…読取対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取対象物に照射し得る照明光を発光可能な複数の光源と、これら複数の光源から前記読取対象物に照射されて反射した反射光を受光可能な受光素子と、この反射光による前記読取対象物の像を前記受光素子の受光面に結像可能な結像光学系と、を備えた光学読取装置であって、
前記複数の光源から照射されるそれぞれの照明光の光路上に位置し、入射した前記複数の照明光の出射方向を個別または所定の集まりごとに任意方向に変更可能な光学部材と、
前記複数の光源と前記読取対象物との間における前記光学部材の位置を前記照明光の光路上において調節可能な位置調整機構と、
を備えることを特徴とする光学読取装置。
【請求項2】
前記光学部材は、入射した前記照明光の出射側から見て環状に配置されていることを特徴とする請求項1記載の光学読取装置。
【請求項3】
前記反射光は、前記環状に配置された光学部材によって囲まれる空間部を介して前記受光素子に達することを特徴とする請求項2記載の光学読取装置。
【請求項4】
前記光学部材が配置される前記環状は円形であり、前記複数の照明光の出射方向を所定の集まりごとに任意方向に変更可能な場合には、当該所定の集まりの一つは、この円形を周方向に分割した複数の扇形の一に相当し、
前記環状の円形に対応して配置される前記複数の光源は、前記複数の扇形に対応して位置していることを特徴とする請求項2または3記載の光学読取装置。
【請求項5】
前記光学部材が配置される前記環状は円形であり、前記複数の照明光の出射方向を所定の集まりごとに任意方向に変更可能な場合には、当該所定の集まりの一つは、この円形を径方向に分割した複数の同心円環形の一に相当し、
前記環状の円形に対応して配置される前記複数の光源は、前記複数の同心円環形に対応して位置していることを特徴とする請求項2または3記載の光学読取装置。
【請求項6】
前記複数の照明光の所定の集まりごとに、前記光源の発光状態を制御可能な照明制御部を備えることを特徴とする請求項4または5記載の光学読取装置。
【請求項7】
前記環状の円形に対応して配置される前記複数の光源は、前記受光素子および前記結像光学系に対して、前記光学部材とともに移動可能であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の光学読取装置。
【請求項8】
前記複数の光源と前記光学部材との間には、前記複数の光源から発せられた照明光を前記光学部材に入射可能に導く導光部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学読取装置。
【請求項9】
前記光学部材は、レンズ、プリズムまたは拡散部材のうちの少なくとも1つ若しくはこれらの2以上の組み合わせであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学読取装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−57296(P2007−57296A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240880(P2005−240880)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】