説明

光学高分子組成物およびその生成方法

本発明は、(i)低くとも約220℃のガラス転移温度を有する、少なくとも1つの熱可塑性樹脂、(ii)少なくとも1つの、フェニルアルコキシシラン、ビフェノール、トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサン、またはこれらのうち2つ以上の混合物、(iii)約100nm以下の範囲内の平均粒径および約1.4から約3の範囲内の屈折率を有し、かつ熱可塑性樹脂内に分散する無機微粒子、および、(iv)熱可塑性樹脂において、無機微粒子を分散させるために効果的な量の、少なくとも1つの分散剤を備え、トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンが、約100nm以下の平均粒径を有する微粒子の形態であるときに、トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンの微粒子が、随意的に、成分(ii)としても使用され、成分(iii)における無機微粒子の部分的置換物または完全置換物としても使用される、高分子組成物に関する。この高分子組成物は、例えば、レンズなどの光学物品を、成形によって形成するのに適した高温用熱可塑性物質であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、合衆国連邦法典第35巻第119(e)章に拠り、米国特許仮出願第61/045,048号明細書(出願日:2008年4月15日)に基づいて優先権を主張し、該仮出願の内容は全て参照によってここに引用されるものとする。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、光学高分子組成物および該組成物の生成方法に関する。本発明は、これらの高分子組成物で作られたプラスチック製レンズなどの物品に関する。
【0003】
〔背景技術〕
プラスチック製レンズ、ガラス製レンズ、およびシリコーン製レンズは、光学系、例えばカメラ、自動車の照明装置、軍事用夜間視力装備など、また、特にLED(Light Emitting Diode)などにおいて、その機能を発揮することが多い。
【0004】
〔発明の概要〕
プラスチック製レンズをガラス製レンズから区別する主な属性は、その軽量性、良好な耐衝撃性、および低いコストである。ただし、ガラスは、非常に高い温度ではプラスチックより安定している。コストの差は、大部分がこの2つの物質に必要な製造プロセスの違い、および物質を形成するために必要な相対的な温度に起因する。プラスチック製レンズは、通常、ガラス製レンズに対して約10倍の速さのサイクルタイムでの射出成形によって、約230℃〜390℃で製造される。ガラス製レンズは、通常、粉砕および研磨または約625℃での圧縮成形によって製造される。シリコーン製レンズは、非常に高い耐熱性を有するものの、ガラスに比べて製造コストがかさむ。シリコーン材料は、通常、ガラス材料およびプラスチック材料の少なくとも約3倍〜5倍のコストがかかる。また、シリコーン材料は、圧縮成形または液体射出処理のいずれかを実施するために高額な金型を必要とする上、いずれの処理も生産速度が比較的遅い。ガラス製レンズおよびシリコーン製レンズに比べれば、プラスチック製レンズに特殊な細部を作る方が、簡単で、かつ低コストである。
【0005】
カメラレンズやLEDレンズ装置などの産業用レンズ装置は、通常、半田リフロー炉内で組み立てられる。従来から、半田の融解温度を約200℃より少し低い温度まで下げるために、鉛が半田の成分として使用されてきた。問題は、無鉛半田の使用が望まれることが多いことである。また、無鉛半田を融解させるために必要な温度が、約217℃またはこれを超える温度であることである。このことが、より高い温度で動作し、最高動作温度が通常約250℃〜285℃である半田リフロー炉を必要とする理由である。このように、半田リフロー炉のプロセス温度が上昇したことによって、相当高いガラス転移温度(Tg)を有する、射出成形可能で、光学的にクリアな熱可塑性物質が必要になっている。
【0006】
光学熱可塑性組成物は、光学レンズ製品などの製作に使用する場合、一般に諸性質の独自の釣り合いを必要とする。しかしながら、1つの性質を改善すると、他の性質については妥協しなければならないことが多いので、熱可塑性組成物において、これらの諸性質の釣り合いをとることは困難である。例えば、光分解の酸化安定性を改善するために、有機紫外線安定剤を熱可塑性組成物において使用すると、熱可塑性組成物は、400〜500ナノメートル(nm)の可視スペクトルの藍色領域で成形される際に、400nm〜500nmの可視領域における光の透過量の減少を示すことが多い。別の例としては、加水分解の酸化安定性を改善するために、熱可塑性組成物において脂肪酸エステルまたは脂肪アミドを使用すると、熱可塑性組成物は、成形される際に、耐熱性、熱的酸化安定性、および光学透過量の低下を示すことが多い。本発明は、この問題に対する解決策を提供する。
【0007】
本発明は、光分解の酸化安定性、加水分解の酸化安定性、および熱的酸化安定性の特性を改善した高分子組成物に関する。本発明の高分子組成物は、光学レンズ製品などの提供に適した成形可能性ならびに光学的特性および機械的特性を示す。該組成物は、高温プロファイルにおいて、無鉛半田のリフローに商業的に適用可能であり、欠陥率も低減させる。該組成物は、LEDおよび高明度(high brightness:HB)LEDに適用可能であり、LED光源から約390nm〜約1200nm(一実施形態においては約400nm〜約500nm)の波長の光の照射を受けながら、約150℃に達する高熱や高湿度などの過酷な環境条件におかれても、長い寿命が達成できる。該成形品は、一貫した品質管理を実施しながら、多種多様な形状および設計で、細部まで精密に、高速かつ高い生産率で、経済的な大量生産が可能である。射出成形法または射出圧縮成形法を使用してもよい。
【0008】
予期しなかったことではあるが、上記高分子組成物に、1つ以上のアルコキシシランを、1つ以上のフェニルトリアルコキシシランの形態、または1つ以上のフェニルトリアルコキシシランと1つ以上のジアミノトリアルコキシシランとの混合物の形態で添加することによって、熱安定性が大幅に増加する可能性があることが発見された。このことが、極めて高い熱安定性を有する、光学熱可塑性を有するセラミック製高分子組成物の発見につながった。該組成物は、水分および波長の短い可視光に対する耐性が改善されている。該組成物は、疎水性を有していてもよい。該組成物が、例えば射出成形や射出圧縮成形などの自動化されたプロセスを使った、非常に低い応力および複屈折を示す均質な物品の形成に使用可能であることも発見された。該組成物は、セラミック相および有機相を備えていてもよい。このセラミック相は、平均粒径が約100nm以下(最大約100nmまで)の無機微粒子を備えていてもよく、有機相の熱安定性を補助すると考えられ、射出成形の分散剤および流体力学的な補助剤として作用し、その一方で、上記高分子組成物の均質性に寄与する。焼成済みのγ−酸化アルミニウム、δ−酸化アルミニウム、またはδ−θ酸化アルミニウムを使用することによって、約250℃から約285℃(一実施形態においては約260℃から約285℃)の温度で実施される半田リフロー処理、特に無鉛半田リフロー処理の間に、粒子が高分子組成物の熱安定性を増加させる可能性があることも発見された。該粒子は、約285℃以上までの温度に曝されると、非結晶ポリマーから水分を除去し、粒子内の水分を内部的に結合させる可能性がある。その結果、生成される組成物は、硬く、光学的にクリアであり、耐衝撃性を有する可能性がある。該組成物は、高速で射出成形されてもよく、細部まで精密に成形可能である。
【0009】
本発明は、(i)低くとも約220℃のガラス転移温度を有する少なくとも1つの熱可塑性樹脂、(ii)少なくとも1つの、フェニルアルコキシシラン、ビフェノール、トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサン、またはこれらのうち2つ以上の混合物、(iii)約100nm以下の範囲の平均粒径および約1.4から約3の範囲の屈折率を有し、かつ該熱可塑性樹脂内に分散する無機微粒子、および、(iv)該熱可塑性樹脂において該無機微粒子を分散させるために効果的な量の、少なくとも1つの分散剤を備え、該トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンが、約100nm以下の平均粒径を有する微粒子の形態であるときに、該トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンの微粒子が、随意的に(必要に応じて)、成分(ii)としても使用され、また、成分(iii)の無機微粒子の部分的置換物または完全置換物としても使用される、高分子組成物に関する。
【0010】
上記の高分子組成物を、「成形前の」高分子組成物、つまり、上記において特定された成分から構成され、かつ成形すれば、例えばレンズなどの成形物品を形成可能な高分子組成物となると解釈してもかまわない。
【0011】
一実施形態では、上記組成物は、少なくとも1つのビニルトリアルコキシシランまたは少なくとも1つのジアミノトリアルコキシシランをさらに備えていてもよい。一実施形態では、上記組成物は、少なくとも1つの抗加水分解剤をさらに備えていてもよい。一実施形態では、上記組成物は、少なくとも1つのビフェノール化合物をさらに備えていてもよい。一実施形態では、上記組成物は、少なくとも1つの青味剤をさらに備えていてもよい。一実施形態では、上記組成物は、少なくとも1つの紫外線吸収剤をさらに備えていてもよい。一実施形態では、上記組成物は、少なくとも1つの抗酸化剤をさらに備えていてもよい。一実施形態では、上記組成物は、1つ以上の、熱安定剤、帯電防止剤、色素、染料、蛍光増白剤、難燃剤、またはこれらのうち2つ以上の混合物をさらに備えている。一実施形態では、上記組成物は、1つ以上の、融解による処理が可能なガラス補強樹脂または物質をさらに備えていてもよい。
【0012】
一実施形態では、本発明は、(a)少なくとも1つの分散剤、(b)約100nm以下の範囲の平均粒径および約1.4から約3の範囲の屈折率を有する無機微粒子、(c)少なくとも1つの、フェニルアルコキシシラン、ビフェノール、トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサン、またはこれらのうち2つ以上の混合物、および、(d)(i)少なくとも1つの分散剤と、(ii)少なくとも1つの青味剤と、(iii)約100nm以下の範囲の平均粒径および約1.4から約3の範囲の屈折率を有する無機微粒子とを含有する、少なくとも1つの染料濃縮物を組み合わせることによってなり、該トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンが、約100nm以下の平均粒径を有する微粒子の形態であるときに、該トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンの微粒子が、随意的に、成分(c)としても使用され、また、成分(b)の部分的置換物または完全置換物としても使用される、添加用組成物に関する。該添加用組成物は、少なくとも1つのビニルトリアルコキシシランまたは少なくとも1つのジアミノトリアルコキシシランをさらに備えていてもよい。該添加用組成物は、1つ以上の、抗酸化剤、紫外線安定剤、熱安定剤、帯電防止剤、色素、染料、蛍光増白剤、難燃剤、または2つ以上の混合物をさらに備えていてもよい。
【0013】
一実施形態では、本発明は、低くとも約220℃のガラス転移温度を有する、少なくとも1つの熱可塑性樹脂と、前述の添加用組成物とを備えた高分子組成物に関する。
【0014】
一実施形態では、本発明は、前述の高分子組成物を備えた成形物品に関する。該成形物品は、レンズを備えていてもよい。
【0015】
一実施形態では、本発明は、低くとも約220℃のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂のペレットを、低くとも約70℃の温度で加熱し、該ペレットを、前述の添加用組成物でコーティングする、高分子組成物を生成する方法に関する。
【0016】
一実施形態では、本発明は、前述の添加用組成物でコーティングされた、低くとも約220℃のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂を含有するペレットを、射出成形装置に供給し、物品を成形する、該物品を形成するプロセスに関する。
【0017】
一実施形態では、本発明は、(A)低くとも約220℃のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂のペレットを、低くとも約70℃の温度で加熱し、(B)少なくとも1つの分散剤と、約100nm以下の範囲の平均粒径および約1.4から約3の範囲の屈折率を有する無機微粒子と、少なくとも1つの染料濃縮物とを含有する添加用組成物で、該ペレットをコーティングし、(C)少なくとも1つの、フェニルアルコキシシラン、ビフェノール、トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサン、またはこれらのうち2つ以上の混合物で、ステップ(B)において得られたペレットをコーティングする、高分子組成物を生成する方法であって、該トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンが、約100nm以下の平均粒径を有する微粒子の形態であるときに、該トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンの微粒子が、随意的に、ステップ(B)において添加される無機微粒子の部分的置換物または完全置換物として使用され、該トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンの微粒子がステップ(B)において添加される場合、ステップ(C)を実行すること(実行するかどうか)は任意選択的である、方法に関する。一実施形態では、ステップ(B)において得られたペレットを、ステップ(C)の間に、少なくとも1つのビニルトリアルコキシシランまたは少なくとも1つのジアミノトリアルコキシシランでもコーティングしてもよい。
【0018】
一実施形態では、本発明は、(A)低くとも約220℃のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂のペレットを、低くとも約70℃の温度で加熱し、(B)少なくとも1つの、フェニルアルコキシシラン、ビフェノール、トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサン、またはこれらのうち2つ以上の混合物で、該ペレットをコーティングし、(C)少なくとも1つの分散剤と、約100nm以下の範囲の平均粒径および約1.4から約3の範囲の屈折率を有する無機微粒子と、少なくとも1つの染料とを含有する添加用組成物で、ステップ(B)において得られたペレットをコーティングする、高分子組成物を生成する方法であって、該トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンが、約100nm以下の平均粒径を有する微粒子の形態であるときに、ステップ(B)において添加されるトリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンの微粒子が、随意的に、ステップ(C)において添加される無機微粒子の部分的置換物または完全置換物として使用され、該トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンの微粒子がステップ(B)において添加される場合、ステップ(C)の間に追加的な量の微粒子を添加することは任意選択的である、方法に関する。一実施形態では、上記ペレットを、ステップ(B)の間に、少なくとも1つのビニルトリアルコキシシランまたは少なくとも1つのジアミノトリアルコキシシランでもコーティングしてもよい。
【0019】
一実施形態では、本発明は、(A)低くとも約220℃のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂のペレットを、搬送部材または低剪断型混合部材を有する単一スクリュー式またはツインスクリュー式化合装置を使って、約300℃から約350℃の範囲の温度で化合し、(B)少なくとも1つの、フェニルアルコキシシラン、ビフェノール、トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサン、またはこれらのうち2つ以上の混合物を計量して該化合装置に供給し、(C)少なくとも1つの分散剤と、約100nm以下の範囲の平均粒径および約1.4から約3の範囲の屈折率を有する無機微粒子と、少なくとも1つの抗加水分解剤と、少なくとも1つの染料とを含有する添加用組成物を計量して該化合装置に供給する、高分子組成物を生成する方法であって、該トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンが、約100nm以下の平均粒径を有する微粒子の形態であるときに、ステップ(B)において添加されるトリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンの微粒子が、随意的に、ステップ(C)において添加される無機微粒子の部分的置換物または完全置換物として使用され、該トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンの微粒子がステップ(B)において添加される場合、ステップ(C)の間に追加的な量の微粒子を添加することは任意選択的である、方法に関する。ステップ(B)がステップ(C)より先に実行されても、あるいは、ステップ(C)がステップ(B)より先に実行されてもよい。一実施形態では、ステップ(B)の間に、少なくとも1つのビニルトリアルコキシシランまたは少なくとも1つのジアミノトリアルコキシシランを計量して上記化合装置に供給してもよい。
【0020】
一実施形態では、本発明は、(A)低くとも約220℃のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂のペレットを、低くとも約70℃の温度で加熱し、(B)少なくとも1つの分散剤と、約100nm以下の範囲の平均粒径および約1.4から約3の範囲の屈折率を有する無機微粒子と、少なくとも1つの染料濃縮物とを含有する添加用組成物で、ステップ(A)において得られたペレットをコーティングし、(C)ステップ(B)において得られたペレットを計量して、搬送部材または低剪断型混合部材を有する単一スクリュー式またはツインスクリュー式化合装置へ供給し、(D)少なくとも1つの、フェニルアルコキシシラン、ビフェノール、トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサン、またはこれらのうち2つ以上の混合物を計量して該化合装置に供給する、高分子組成物を生成する方法であって、該トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンが、約100nm以下の平均粒径を有する微粒子の形態であるときに、ステップ(D)において添加されるトリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンの微粒子が、随意的に、ステップ(B)において添加される無機微粒子の部分的置換物または完全置換物として使用され、該トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンの微粒子がステップ(D)において添加される場合、ステップ(B)の間に追加的な量の微粒子を添加することは任意選択的である、方法に関する。一実施形態では、ステップ(D)の間に、少なくとも1つのビニルトリアルコキシシランまたは少なくとも1つのジアミノトリアルコキシシランを計量して上記化合装置に供給してもよい。
【0021】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、実施例1に開示したポリマーにおける、熱的重量分析(TGA)のプロットである。
【0022】
図2は、干渉偏光子を使って生成した2つの成形物品の画像を示しており、この2つの成形物品における流動応力、つまり成形応力(mold-in stress)を比較している。両画像は、高分子組成物の総重量に対して0.5重量%のフェニルアルコキシシランを含有する、実施例2の高分子組成物を用いて成形した光学物品(画像No.2)が、ほぼ同じ高分子組成物で、フェニルアルコキシシランを添加せずに成形した光学物品と比較すれば、流動応力、つまり成形応力が最大約70%減少することを示している。
【0023】
〔詳細な説明〕
明細書中に開示する範囲および比率の限定は、すべて組み合わせて使用してもよい。特に具体的に断らない限り、「a」、「an」、および/または「the」は、1つまたは1つ以上のものを指し、あるものが単数形で記載されていても、複数個のものをも含めて指していると理解される。
【0024】
上記高分子組成物は、低くとも約220℃、一実施形態では低くとも約225℃、一実施形態では低くとも約230℃、および一実施形態では低くとも約235℃のガラス転移温度(Tg)を有する、少なくとも1つの熱可塑性樹脂を備えていてもよい。この熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン)、ポリスチレン、ポリアルキレンテレフテート(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))、またはこれらのうち2つ以上の混合物、のうちの1つ以上を備えていてもよい。これらのうち2つ以上の共重合体が使用されてもよい。「共重合体」という用語は、ここでは、2つ以上の異なる繰り返し単位を含有する高分子組成物を指すために使用される。共重合体という用語の意味には、共重合体、三元重合体などを含むものとする。
【0025】
上記ポリカーボネートは、1つ以上のホモポリカーボネート、コポリカーボネート、熱可塑性ポリエステルカーボネート、またはこれらのうち2つ以上の混合物を含んでいてもよい。上記ポリカーボネートは、一般式HO−Z−OHで表される、少なくとも1つのビスフェノールを含んでいてもよい。ただし、該一般式中、Zは、約6個から約30個の炭素原子および1つ以上の芳香族基を有する二価の有機基である。上記ビスフェノールは、1つ以上のジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、インダンビスフェノール、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトン、α,α’−ビス(ヒドロキシフェニル)−ジイソプロピルベンゼンなどを含んでいてもよい。使用可能なビスフェノールの例としては、p,p’−イソプロピリデンジフェノール(ビスフェノールA)、テトラアルキルビスフェノールA、4,4−(m−フェニレンジイソプロピル)−ジフェノール(ビスフェノールM)、4,4−(p−フェニレンジイソプロピル)−ジフェノール、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)、またはこれらのうち2つ以上の混合物などがあげられる。上記ポリカーボネートは、ビスフェノールAの単量体に基づくホモポリカーボネートを含んでいてもよい。上記ポリカーボネートは、ビスフェノールAおよびビスフェノールTMCの単量体に基づくコポリカーボネートを含んでいてもよい。該ビスフェノールは、ホスゲン、ジフェニルカーボネート、またはジメチルカーボネートなどの1つ以上のカーボネート化合物と反応してもよい。
【0026】
上記ポリカーボネートは、2つ以上のポリカーボネートの混合物を含んでいてもよい。例えば、該ポリカーボネートは、ビスフェノールAで作られたポリカーボネートとビスフェノールTMCで作られたポリカーボネートとの混合物を含んでいてもよい。
【0027】
ポリエステルカーボネートは、前述のビスフェノールのうち1つ以上を、1つ以上の芳香族ジカルボン酸、および必要に応じてこれに相当する1つ以上の炭酸と反応させることによって得られる。該芳香族ジカルボン酸の例としては、o−フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、3,3’−または4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1つ以上のベンゾフェノンジカルボン酸、またはこれらのうち2つ以上の混合物などがあげられる。ポリカーボネート中の炭酸基を、約80mol%以下、一実施形態では約20mol%から約50mol%まで、芳香族ジカルボン酸エステル基に置き替えてもよい。
【0028】
上記反応において、不活性有機溶剤を使用してポリカーボネートを形成してもよい。不活性有機溶剤の例としては、塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロプロパン、四塩化炭素、クロロホルム、クロロベンゼン、クロロトルエン、またはこれらのうち2つ以上の混合物などがあげられる。
【0029】
ポリカーボネートを形成する上記反応を、例えば三級アミン、N−アルキルピペリジン、オニウム塩、またはこれらのうち2つ以上の混合物、などの触媒によって加速してもよい。トリブチルアミン、トリエチルアミン、および/またはN−エチルピペリジンが使用されてもよい。
【0030】
上記ポリカーボネートは、少量の分枝剤を使用することによって、意図的に、かつ制御して分岐鎖を有してもよい。適切な分枝剤の例としては、フロログルシノール;4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタ−2−エン;4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン;1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼン;1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン;トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン;2,2−ビス−[4,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキシル]プロパン;2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)−フェノール;2,6−ビス−(2−ヒドロキシ−5’−メチル−ベンジル)−4−メチルフェノール;2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−プロパン;ヘキサ−(4−(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)−フェニル)−o−テレフタル酸エステル、テトラ−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン;テトラ−(4−(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)−フェノキシ)−メタン;α,α’,α”−トリス−ヒドロキシフェニル−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン;2,4−ジヒドロキシ安息香酸;トリメシン酸;塩化シアヌル;3,3−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドール;1,4−ビス−(4’,4”−ジヒドロキシトリフェニル)−メチルベンゼン;1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、および/または3,3−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールなどがあげられる。
【0031】
上記反応において、1つ以上のチェーンストッパを使用してポリカーボネートを形成してもよい。チェーンストッパの例としては、フェノールなどの1つ以上のフェノール、クレゾールまたは4−tert−ブチルフェノールなどのアルキルフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、クミルフェノール、またはこれらのうち2つ以上の混合物等があげられる。
【0032】
ポリカーボネートは、高いガラス転移温度(Tg)を有する射出成形可能で、光学的にクリアな熱可塑性物質と称されることもある。ポリカーボネートは、低くとも約200℃、一実施形態では約200℃から約235℃またはそれ以上のTgを有していてもよい。Tgは、低くとも約220℃、一実施形態では低くとも約227℃、一実施形態では低くとも約235℃である。Tgは、約220℃から約290℃、一実施形態では約220℃から約260℃、一実施形態では約235℃から約290℃、一実施形態では約235℃から約260℃の範囲内にあってもよい。
【0033】
ポリカーボネートは、重量平均分子量(M)が、ポリカーボネートの相対的溶液粘性を、塩化メチレン中において、または等重量のフェノール/−o−ジクロロベンゼンの混合物中において測定し、光散乱によって較正した結果によれば、約20,000から約40,000の範囲内、一実施形態では約26,000から約36,000の範囲内、一実施形態では約28,000から約35,000の範囲内、一実施形態では約31,000から約35,000の範囲内、一実施形態では約33,000であってもよい。
【0034】
ポリカーボネートは、ビスフェノールAをビスフェノールTMCと合成することによって生成されてもよい。あるいは、ビスフェノールAから生成したポリカーボネートとビスフェノールTMCから生成したポリカーボネートとの混合物が使用されてもよい。ポリカーボネートは、約225℃から約235℃の範囲のビカー軟化温度(Vicat Softening Temperature)、および約227℃より高いTgを有していてもよい。APEC(登録商標)TP 0277という商品名で、バイエル社から入手可能なポリカーボネートが使用されてもよい。
【0035】
上記高分子組成物中の熱可塑性樹脂の濃度は、少なくとも約15重量%、一実施形態では少なくとも約50重量%、一実施形態では少なくとも約75重量%、一実施形態では少なくとも約90重量%、一実施形態では少なくとも約95重量%、一実施形態では少なくとも約97.3重量%であってもよく、また、高分子組成物の総重量に基づいて、一実施形態では約15重量%から約99.8重量%、一実施形態では約50重量%から約99.8重量%、一実施形態では約75重量%から約99.8重量%、一実施形態では約90重量%から約99.8重量%、一実施形態では約95重量%から約99.8重量%、一実施形態では約97.3重量%から約99.75重量%の範囲内であってもよい。
【0036】
本発明の高分子組成物は、1つ以上のフェニルアルコキシシラン、ビフェノール、またはこれらの混合物を含んでいてもよい。これらの化合物は、高い熱安定性、低い流動応力、つまり成形応力、および複屈折を、本発明の高分子組成物に付与すると考えられる。流動応力、つまり成形応力と複屈折との間に直線関係があるように考えられるので、流動応力、つまり成形応力を低減する、または取り除くことは、成形光学物品やレンズの製造を可能にするにあたって考慮すべき、重要な点であるのかもしれない。流動応力、つまり成形応力が大きくなればなるほど、複屈折は大きくなる。また、高い流動応力、つまり成形応力を有する成形光学物品は、半田リフロー処理、特に無鉛半田リフロー処理と関連する高温に曝されると、収縮または歪曲することがある。
【0037】
上記フェニルアルコキシシランは、それぞれ、1つ以上のフェニル基および1つ以上のアルコキシ基を含有していてもよい。各アルコキシ基は、1個から約5個の炭素原子、一実施形態では1個から約3個の炭素原子、一実施形態では1個または2個の炭素原子を含有していてもよい。例としては、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、またはこれらの混合物などのフェニルトリアルコキシシラン、およびジフェニルジメトキシシランなどのジフェニルジアルコキシシラン等があげられる。使用可能なフェニルトリメトキシシランの一例は、Degussa社から、Dynasylan 9165という名称で入手可能である。使用可能なフェニルトリエトキシシランの一例は、信越シリコーン社からKBE−103の名称で入手可能である。使用可能なジフェニルジメトキシシランの一例は、信越シリコーン社からKBM−202SSの名称で入手可能である。
【0038】
上記ビフェノールは、Schenectady International社(Schenectady、NY)から入手可能な4,4’−ビフェノールを含んでいてもよい。上記ビフェノールは、高分子組成物の約5重量%以下、一実施形態では約0.03重量%から3重量%、一実施形態では0.05重量%から2重量%の範囲の濃度で使用されてもよい。
【0039】
上記トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシルセスキオキサン(トリシラノールフェニルPOSSと称されることもある)は、その分岐鎖を有するトリシラノールフェニル多面体オリゴマーシルセスキオキサンを含んでいてもよい。この物質は、ナノ粒子の形態であってもよい。これらの微粒子は、粒径が約100nm以下であってもよい。例としては、Hybrid Plastics社から入手可能な1つ以上のトリ−シラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンがあげられる。この一例がトリシラノールフェニルPOSS SO1458などである。上記トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンは、実験式C423812Siで表されてもよい。この物質は、以下の構造を有していてもよい。
【0040】
【化1】

【0041】
ここで、Rはフェニルである。この物質は、化学情報検索サービス機関では、CAS[444315−26−8]として掲載されていてもよい。これらの化合物は、高分子組成物の総重量の約0.01%から約10%、約0.05%から約7%、または約0.1重量%から5重量%の範囲の濃度で使用されてもよい。上記トリシラノールフェニルPOSSがナノ粒子の形態であるとき、必要に応じて、下記の無機微粒子の部分的置換物または完全な置換物として使用されてもよい。
【0042】
予測していなかったことではあるが、高分子組成物中のフェニル濃度を上昇させることによって、約360nmから約470nmの範囲、一実施形態では約400nmから約460nmの範囲内では、成形高分子組成物の光の透過量が増加することが発見された。このことによって、約400nmから約470nmの波長の短い可視光に曝露される際の、高分子組成物の光分解の酸化安定性が改善され得る。
【0043】
上記高分子組成物は、さらに、少なくとも1つのビニルトリアルコキシシランまたは少なくとも1つのジアミノトリアルコキシシランを備えていてもよい。これらの物質中の各アルコキシ基は、1個から約5個の炭素原子、一実施形態では1個から約3個の炭素原子、一実施形態では1個または2個の炭素原子を含有していてもよい。使用可能なビニルトリアルコキシシランの一例としては、ビニルトリメトキシシランがあけられる。使用可能なビニルトリメトキシシランは、例えばGeniosil XL 10という名称で、Whacker Chemical Corpから入手可能である。使用可能なジアミノトリアルコキシシランは、例えば、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランである。使用可能なN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランの一例は、Degussa社から、Dynasylan DAMOという名称で入手可能である。上記ビニルトリアルコキシシランまたはジアミノトリアルコキシシランが使用される際には、上記フェニルアルコキシシランまたはビフェノールに対する該ビニルトリアルコキシシランまたはジアミノトリアルコキシシランの重量比は最大約1:1まで、一実施形態では約0.01:1から約1:1、一実施形態では約0.1:1から約1:1、一実施形態では約0.2:1から約1:1、一実施形態では約0.5:1から約1:1、一実施形態では約0.7:1から約1:1であってもよい。
【0044】
上記高分子組成物中の上記シラン(フェニルアルコキシシラン単独で、またはビニルトリアルコキシシランまたはジアミノトリアルコキシシランとの組み合わせで)の濃度は、約20重量%以下、一実施形態では約0.02重量%から約20重量%、一実施形態では約0.05重量%から約10重量%、一実施形態では約0.10重量%から約2.5重量%の範囲であってもよい。
【0045】
上記無機微粒子は、ナノ物質、例えば透明なナノ物質および/または高い耐熱性を有するナノ物質と称されることもある。これらの微粒子を使用して、高分子組成物で作られた成形物品における可視光の分散を向上させてもよい。したがって、これらの微粒子は、高分子組成物で作られた光学的にクリアな成形物品の提供に寄与してもよい。これらの微粒子は、さらに、熱可塑性樹脂の分散補助剤、懸濁補助剤、および/または流動補助剤として作用してもよい。これらの微粒子は、特に焼成されたγ相およびδ相またはδθ相では、さらに水分除去剤として作用し、高温の半田リフロー処理に供される際の、ポリマーの耐加水分解性およびポリマーの耐熱性に寄与してもよい。
【0046】
上記無機微粒子は、酸化アルミニウム、融解二酸化アルミニウム、酸化水酸化アルミニウム、焼成酸化アルミナ、γ−酸化アルミニウム、δ−酸化アルミナ、δ−θ酸化アルミナ、α−酸化アルミナ、二酸化ケイ素、シリコン、酸化セリウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、またはこれらのうち2つ以上の混合物を含んでいてもよい。無機微粒子の平均粒径は、約100nm以下、一実施形態では約1nmから約100nm、一実施形態では約1nmから約75nm、一実施形態では約1nmから約50nm、一実施形態では約3nmから約50nm、一実施形態では約5nmから約50nm、一実施形態では約5nmから約40nm、一実施形態では約5nmから約30nm、一実施形態では約5nmから約20nm、一実施形態では約5nmから約15nmの範囲であってもよい。上記無機微粒子は、約1.4から約3、一実施形態では約1.4から約2.5、一実施形態では約1.4から約2、一実施形態では約1.4から約1.8、一実施形態では約1.5から約1.6の範囲の屈折率を有していてもよい。該屈折率は、約1.42から約3、一実施形態では約1.42から約2.5、一実施形態では約1.42から約2、一実施形態では約1.52から約1.58、一実施形態では約1.54から約1.58の範囲、また、一実施形態では約1.56であってもよい。上記無機微粒子は、比較的高いゼータ(zeta)電位を有していてもよい。このゼータ電位は、少なくとも約+30mVまたは−30mVより低い電位であってもよく、一実施形態では少なくとも約+35mVまたは−35mVより低い電位であってもよい。上記無機微粒子は、最高約350℃まで、一実施形態では最高約400℃まで、一実施形態では最高約600℃まで、一実施形態では最高約800℃まで、また、一実施形態では最高約1000℃まで、またはそれ以上の高い温度において熱的安定性を有していてもよい。使用可能な無機微粒子の例としては、Degussa社から入手可能なAluminum Oxide Cおよび/またはAeroxide Alu US、およびSASOL社から入手可能なPuralox K−160などがあげられる。
【0047】
上記無機微粒子をシラン処理して無機微粒子のポリマー内への分散を向上させてもよく、また、必要に応じて無機微粒子を高分子樹脂系に結合させてもよい。使用可能なシランの例としては、Dynasylan OCTEO(オクチルトリエトキシシラン)、Dynasylan DAMO(N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、およびDynasylan 9165(フェニルトリメトキシシラン)などがあげられる。Dynasylan DAMOとDynasylan 9165との混合物が使用されてもよい。これらの物質は、最高約370℃までの温度において、またはそれより高い温度において熱的安定性を有していてもよく、Degussa社から入手可能である。
【0048】
上記無機微粒子は、1つ以上のチタン酸塩、1つ以上のジルコン酸塩、またはこれらの混合物で表面処理をされてもよい。このチタン酸塩およびジルコン酸塩は、炭化水素結合に付いた官能基を有する1つ以上の有機化合物によって錯体を形成するチタンまたはジルコニウムの1つ以上の有機金属錯体を含んでいてもよい。この有機化合物は、1つ以上の官能基、一実施形態では2つ以上の官能基を含有していてもよい。この官能基は、1つ以上の=O、=S、−OR、−SR、−NR、−NO、=NOR、=NSR、および/または−N=NRを含んでいてもよい。なお、これらの式中において、Rは、水素または1個から約10個の炭素原子を有する炭化水素基(例えばアルキルまたはアルケニル)を表す。上記チタン酸塩および上記ジルコン酸塩は、アルコキシチタン酸塩および配位ジルコン酸塩を含んでいてもよい。これらの物質の例としては、Kenrich Petrochemicals, Inc.社(Bayonne、NJ)から、LICA 12またはKR−PROという商品名で入手可能なアルコキシチタン酸塩、およびKenrich Petrochemicals, Inc.社から、KZ 55またはKR 55という商品名で入手可能な配位ジルコン酸塩などがあげられる。
【0049】
上記高分子組成物中の上記無機微粒子の濃度は、高分子組成物の総重量に基づいて、約30重量%以下、一実施形態では約0.0001重量%から約30重量%、一実施形態では約0.0001重量%から約25重量%、一実施形態では約0.0001重量%から約20重量%、一実施形態では約0.0001重量%から約10重量%、一実施形態では約0.001重量%から約5重量%、一実施形態では約0.01重量%から約2重量%、一実施形態では約0.01重量%から約1重量%の範囲にあってもよい。上記高分子組成物を生成する際に使用可能な添加用組成物中の上記無機微粒子の濃度は、添加用組成物の総重量に基づいて、約0.5重量%から約20重量%、一実施形態では約1重量%から約10重量%の範囲であってもよい。
【0050】
上記分散剤は、無機微粒子の熱可塑性樹脂内への分散を向上させる任意の物質を含んでいてもよい。上記分散剤の例としては、1つ以上の脂肪酸、脂肪エステル、脂肪アミド、脂肪アルコール、多面体オリゴマーシレスキオキサン、またはこれらのうち2つ以上の混合物などがあげられる。上記脂肪酸は、約10個から約36個の炭素原子、一実施形態では約14個から約26個の炭素原子、一実施形態では約12個から約22個の炭素原子を有する1つ以上の飽和および/または不飽和モノカルボン酸を含んでいてもよい。この飽和モノカルボン酸は、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、および/またはヘキサトリアイソコンタン酸のうち1つ以上を含んでいてもよい。上記不飽和モノカルボン酸は、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、および/またはセトレイン酸のうち1つ以上を含んでいてもよい。上記の酸の2つ以上の混合物が使用されてもよい。
【0051】
上記脂肪エステルは、上記カルボン酸のうち1つ以上のエステルおよび1つ以上のアルコールを含んでいてもよい。該アルコールは、1つ以上の一価アルコールおよび/または1つ以上の多価アルコールを含んでいてもよい。この一価アルコールは、1個から約5個の炭素原子を有するアルコール、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、またはこれらのうち2つ以上の混合物を含んでいてもよい。上記多価アルコールは、グリセロール、エリトリトール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、グルコン酸、グリセルアルデヒド、グルコース、アラビノース、1,7−ヘプタンジオール、2−4−ヘプタンジオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ヘキサントリオール、1,2,5−ヘキサントリオール、2,3,4−ヘキサントリオール、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、キナ酸、2,2,6,6−テトラキス−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、1,10−デカンジオール、ジギタロース、またはこれらのうち2つ以上の混合物を含んでいてもよい。使用可能なエステルの例としては、メチルステアレート、ブチルステアレート、オレイン酸エチル、リノール酸ブチル、グリセロールモノラウレート、グリセロールモノオレアート、グリセロールモノリシノレアート、グリセロールモノステアレート、グリセロールジステアレート、グリセロールトリステアレート、ペンタエリトリトールテトラステアレート、またはこれらのうち2つ以上の混合物などがあげられる。上記脂肪エステルは、1つ以上の飽和脂肪エステル、1つ以上の不飽和脂肪エステル、またはこれらの混合物を含んでいてもよい。上記脂肪エステルは、室温で固体である物質、例えば、乾燥粉末を含んでいてもよい。
【0052】
上記脂肪アミドは、上記カルボン酸のうち1つ以上のアミド、およびアンモニアおよび/または少なくとも1つのアミンを含んでいてもよい。このアミンは、1つ以上のモノアミン、1つ以上のポリアミン、1つ以上のヒドロキシアミン、および/または1つ以上のアルコキシル化アミンを含んでいてもよい。このモノアミンは、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、アリルアミン、イソブチルアミン、ココアミン(cocoamine)、ステアリルアミン、ラウリルアミン、メチルラウリルアミン、オレイルアミン、N−メチル−オクチルアミン、ドデシルアミン、オクタデシルアミン、またはこれらのうち2つ以上の混合物を含んでいてもよい。上記ポリアミンは、エチレンジアミン、ジエチレン、トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ジ(ヘプタメチレン)トリアミン、トリプロピレンテトラミン、ジ(トリメチレン)トリアミン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、これらのうち2つ以上の混合物、などのアルキレンポリアミンを含んでいてもよい。上記ヒドロキシアミンは、1つ以上の一級アルカノールアミン、1つ以上の二級アルカノールアミン、またはこれらの混合物を含んでいてもよい。上記ヒドロキシアミンは、アミノアルコールと称されることもある。例としては、2−アミノ−1−ブタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、p−(β−ヒドロキシエチル)−アニリン、2−アミノ−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、N−(β−ヒドロキシプロピル)−N’−(β−アミノエチル)−ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−1−ブタノール、エタノールアミン、β−(β−ヒドロキシエトキシ)−エチルアミン、グルカミン、グルソアミン(glusoamine)、N−3−(アミノプロピル)−4−(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジン、2−アミノ−6−メチル−6−ヘプタノール、5−アミノ−1−ペンタノール、N−(β−ヒドロキシエチル)−1,3−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン、N−(β−ヒドロキシエトキシエチル)−エチレンジアミン、トリスメチロールアミノメタン、またはこれらのうち2つ以上の混合物などがあげられる。上記アルコキシル化アミンは、N,N(ジエタノール)エチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−エチレン−ジアミン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、モノ(ヒドロキシプロピル)で置換されたジエチレントリアミン、ジ(ヒドロキシプロピル)で置換されたテトラエチレンペンタミン、N−(3−ヒドロキシブチル)−テトラメチレンジアミン、これらのうち2つ以上の混合物、などのアルコキシル化アルキレンポリアミンを含んでいてもよい。
【0053】
上記脂肪アミドは、ステアリン酸アミド、オレアミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、またはこれらのうち2つ以上の混合物を含んでいてもよい。上記脂肪アミドは、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレアミド、エチレンビスリノール酸アミド、これらのうち2つ以上の混合物など、1つ以上のアルキレンビス脂肪性のアミドを含んでいてもよい。
【0054】
上記脂肪アルコールは、1つ以上の飽和脂肪アルコール、1つ以上の不飽和脂肪アルコール、またはこれらの混合物を含んでいてもよい。この飽和脂肪アルコールは、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、またはこれらのうち2つ以上の混合物を含んでいてもよい。上記不飽和脂肪アルコールは、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、またはこれらのうち2つ以上の混合物を含んでいてもよい。
【0055】
上記分散剤は、1つ以上のポリアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、またはこれらの混合物を含んでいてもよい。例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、トリブチレングリコール、さらに、2個から約8個の炭素原子を含有するアルキレン基がその他のアルキレングリコールおよびポリオキシアルキレングリコールなどがあげられる。上記物質の2つ以上の混合物が使用されてもよい。
【0056】
上記分散剤は、1つ以上のチタン酸塩、1つ以上のジルコン酸塩、またはこれらの混合物を含んでいてもよい。このチタン酸塩およびジルコン酸塩は、炭化水素結合に付いた官能基を有する1つ以上の有機化合物によって錯体を形成するチタンまたはジルコニウムの1つ以上の有機金属錯体を含んでいてもよい。この有機化合物は、1つ以上の官能基、一実施形態では2つ以上の官能基含有していてもよい。この官能基は、1つ以上の=O、=S、−OR、−SR、−NR、−NO、=NOR、=NSR、および/または−N=NRを含んでいてもよい。なお、これらの式中において、Rは、水素または炭化水素基(例えば、1個から約10個の炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル)を表す。上記チタン酸塩およびジルコン酸塩は、アルコキシチタン酸塩および配位ジルコン酸塩を含んでいてもよい。これらの物質の例としては、Kenrich Petrochemicals, Inc.社(Bayonne、NJ)から、LICA 12またはKR−PROという商品名で入手可能なアルコキシチタン酸塩、およびKenrich Petrochemicals, Inc.社から、KZ 55またはKR 55という商品名で入手可能な配位ジルコン酸塩などがあげられる。これらは、液体または粉末の形態で提供されてもよい。粉末は、液体チタン酸塩またはジルコン酸塩を無機微粒子(例えばヒュームドシリカまたは酸化アルミニウム)に吸着することによって、形成されてもよい。例えば、チタン酸塩またはジルコン酸塩の粉末は、2部のチタン酸塩またはジルコン酸塩の液体を、1部の酸化アルミニウムの微粒子に点下混合することによって調製されてもよい。該チタン酸塩は350℃まで熱的安定性を有していてもよく、該ジルコン酸塩は400℃まで熱的安定性を有していてもよい。該ジルコン酸塩は、フェノール系抗酸化剤、つまり、熱的安定剤とともに使用されてもよい。
【0057】
上記分散剤は、天然パラフィンまたは合成パラフィン、ポリエチレンワックス、あるいはこれらのうち2つ以上の混合物など、1つ以上の炭化水素系分散剤を含んでいてもよい。上記分散剤は、1つ以上のフルオロカーボンを含んでいてもよい。上記分散剤は、1つ以上のシリコーン放出剤、例えば1つ以上のシリコーンオイルを含んでいてもよい。
【0058】
上記分散剤は、1つ以上の界面活性物質を含んでいてもよい。この界面活性物質は、イオン性界面活性剤および/または非イオン性界面活性剤を含んでいてもよい。該イオン性界面活性剤は、陽イオン性化合物であっても、および/または陰イオン性化合物であってもよい。これらの化合物は、約20以下まで、一実施形態では約1から約20の範囲の親水性・親油性バランス(hydrophilic lipophilic balance、HLB)を有していてもよい。使用可能な界面活性物質の例としては、McCutcheon’s Emulsifiers and Detergents, 1993, North American & International Editionに開示されているものがあげられる。例としては、アルカノールアミド、アルキルアリールスルホネート、酸化アミン、ポリ(オキシアルキレン)化合物などがあげられ、さらに、アルキレンオキシドの反復単位、カルボキシル化されたアルコールエトキシレート、エトキシ化されたアルコール、エトキシ化されたアルキルフェノール、エトキシ化されたアミンおよびアミド、エトキシ化された脂肪酸、エトキシ化された脂肪エステルおよび油、脂肪エステル、グリセロールエステル、グリコールエステル、イミダゾリン誘導体、レシチンおよび誘導体、リグニンおよび誘導体、モノグリセリドおよび誘導体、オレフィンスルホネート、リン酸エステルおよび誘導体、プロポキシル化およびエトキシ化された脂肪酸またはアルコールまたはアルキルフェノール、ソルビタン誘導体、ショ糖エステルおよび誘導体、硫酸塩またはアルコールまたはエトキシ化されたアルコールまたは脂肪エステル、ポリイソブチレンコハク酸イミドおよび誘導体、ドデシルおよびトリデシルベンゼンまたは濃縮ナフタレンまたは石油のスルホネート、スルホサクシネートおよび誘導体、トリデシルおよびドデシルベンゼンスルホン酸、およびこれらのうち2つ以上の混合物を含むブロック共重合体を含む。
【0059】
上記分散剤は、内部潤滑剤、金型解放剤、流動補助剤、および/または処理補助剤としても機能してもよい。上記分散剤は、上記無機微粒子に加えて、その他の添加物のための分散剤として機能してもよい。上記分散剤は疎水性を有していてもよい。上記分散剤は、約50から約400℃、一実施形態では約60℃から約375℃、一実施形態では約65℃から約350℃の範囲の融解温度を有していてもよい。上記分散剤は、最高約350℃まで、一実施形態では最高約400℃までまたはそれより高い温度で熱的安定性を有していてもよい。
【0060】
上記分散剤は、Axel Plastics Research Laboratories, Inc.社(Woodsie、NY)から入手可能な製品である、INT−40DHTを含んでいてもよい。この製品は、最高約400℃まで熱的安定性を有していてもよい。INT−40DHTは、修飾された有機誘導体をともなう、飽和エステルと不飽和脂肪エステルとの混合物であると特定されてもよい。INT−40DHTは、1つ以上の脂肪酸と、脂肪エステルと、グリセリドとの混合物であると特定されてもよい。
【0061】
上記分散剤は、Axel Plastics社のINT−33UDYまたはINT−33UDSであってもよい。これらは、1つ以上の脂肪アミドと1つ以上の界面活性物質との混合物であると特定されてもよい。INT33UDYは、最高約350℃まで熱的安定性を有していてもよく、INT−33UDSは最高約400℃まで安定性を有していてもよい。
【0062】
上記加水分解剤を使用して、上記高分子組成物で作られた成形物品が熱および湿度に曝される際、および該高分子組成物で作られた成形物品が半田リフロー処理、特に無鉛半田リフロー処理において高温に曝される際の、該成形物品の加水分解安定性を向上させてもよい。この加水分解剤は、高分子カルボジイミドまたは1つ以上の焼成済み酸化アルミニウムを含んでいてもよい。この酸化アルミニウムは、γ、δ、δ−θ、またはα相の酸化アルミニウム、またはこれらのうち2つ以上の混合物を含んでいてもよい。該加水分解剤は、約350℃までまたはそれより高い温度まで熱的安定性を有していてもよい。カルボジイミドは水を吸収しなくてもよい。カルボジイミドは反応して、尿素基を形成してもよい。N=C=N1モルに対して1モルの水が反応してもよい。使用可能なカルボジイミド系加水分解剤は、最高約350℃まで熱安定性を有し、Rhein Chemie Corp.社(Pittsburgh、PA)から入手可能である、Stabaxol P 400であってもよい。使用可能な焼成済みアルミニウム系加水分解剤は、最初の結晶の粒径が約5nmであって、約350℃またはそれより高い温度まで熱的安定性を有し、Sasol Corp.(Houston、TX)社から入手可能である、Puralox K−160であってもよい。理論に拘束されるわけではないが、高分子組成物が約260℃を超える無鉛半田リフロー温度に曝される際に、焼成済み酸化アルミナ系加水分解剤は、高分子組成物から水分を除去し、また、吸収された水を結合させて、水分が気化することを防止すると考えられる。
【0063】
青味剤を使用して、高分子組成物で作られた成形物品の色の質を向上させてもよい。青味剤を使用して、高分子組成物における黄色の形成を打ち消して、高分子組成物を光学的にクリアにしてもよい。該青味剤は、少なくとも1つの青色染料、または少なくとも1つの青色染料と少なくとも1つの青紫色の染料との混合物を含んでいてもよい。この青色染料は、約170℃で融解するが、最高約400℃までの温度で熱的安定性を有する乾燥粉末の形態を有する不溶性の青色染料であると特定される、ColorChem International Corp.社から入手可能かもしれない、Amplast Blue R3またはAmplast Blue HBであってもよい。該青紫色染料は、約170℃で融解するが、最高約400℃までの温度で熱的安定性を有する乾燥粉末の形態を有する非可溶性の青紫色染料であると特定される、ColorChem International Corp.社から入手可能かもしれない、Amplast Violet BVまたはAmplast Violet PKであってもよい。高分子組成物中の該青味剤の濃度は、高分子組成物の重量に対して約0.05から約4ppm(parts per million)の範囲内であってもよい。高分子組成物を生成する際に使用可能な添加用組成物中の青味剤の濃度は、添加用組成物の総重量に対して約0.0005重量%から約0.008重量%、一実施形態では約0.001重量%から約0.004重量%の範囲内であってもよい。
【0064】
上記青味剤は、(i)少なくとも1つの分散剤、(ii)少なくとも1つの染料、および(iii)約100nm以下の範囲の平均粒径および約1.4から約2.5の範囲の屈折率を有する無機微粒子を含んでいてもかまわない、染料濃縮物の形態で供給されてもよい。この分散剤、染料、および無機微粒子は上述のものと同じであってもよい。染料濃縮物中の具体的な分散剤および/または無機微粒子は同じであってもよく、または分散剤および無機微粒子のいずれかまたは両方が、高分子組成物に対して染料濃縮物から別々に供給される特定の分散剤および無機微粒子とは異なっていてもよい。上述のように、染料は青色染料であっても、または青色染料と青紫色染料との混合物であってもよい。上記染料濃縮物中の分散剤の濃度は、約98.5重量%から約99.8重量%、一実施形態では約99.0重量%から約99.6重量%の範囲内であってもよい。上記染料濃縮物中の染料の濃度は、約0.05重量%から約0.8重量%、一実施形態では約0.2重量%から約0.6重量%の範囲内であってもよい。上記染料濃縮物中の無機粒子の濃度は、約0.05重量%から約1重量%、一実施形態では約0.1重量%から約0.5重量%の範囲内であってもよい。該染料濃縮物は、最高で低くとも約350℃まで、および一実施形態では最高で低くとも約400℃まで熱的安定性を有していてもよい、乾燥粉末の形態であってもよい。高分子組成物中の上記染料濃縮物の濃度は、高分子組成物の総重量に対して約0.001重量%から約0.01重量%、一実施形態では約0.004重量%から約0.008重量%の範囲内であってもよい。高分子組成物を生成する際に使用可能な添加用組成物内の上記染料濃縮物の濃度は、添加用組成物の総重量に対して約0.5重量%から約6重量%、一実施形態では約1重量%から約4重量%の範囲内であってもよい。
【0065】
上記染料濃縮物は、該染料濃縮物において使用するために選択した材料を混合および必要に応じて粉砕することによって生成されてもよい。均質で自由に流動する乾燥粉末であってもよい、染料濃縮物の一例を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
一実施形態では、上記染料濃縮物は表2に示した組成を有していてもよい。
【0068】
【表2】

【0069】
上記染料濃縮物は、均質なペーストの形態で生成されてもよい。均質なペーストの濃縮物の一例を表3に示す。
【0070】
【表3】

【0071】
一実施形態では、上記染料濃縮物は表4に示した組成を有していてもよい。
【0072】
【表4】

【0073】
紫外線(UV)吸収体を使用して、加水分解安定性および/または熱安定性を高分子組成物に付与してもよく、および/または長期加水分解安定性、光分解安定性、および/または熱安定性を、高分子組成物から成形される物品に付与してもよい。この紫外線吸収体は、紫外線安定剤と称されることもある。該紫外線吸収体は、最高約350℃まで、一実施形態では最高約400℃までまたはそれより高い温度で熱的安定性を有していてもよい。一実施形態では、該紫外線吸収体は、上記脂肪エステルおよび無機微粒子と組み合わされる場合、最高で低くとも約400℃まで熱的安定性を有していてもよい。紫外線吸収体として使用するのに適した物質は、テトラエチル2,2’(1,4−フェニレンジメチリジン)ビスマロン酸を含んでいてもよい。適した物質の一例は、Clariant Corporation社(Charlotte、NC)から入手可能である、Hostavin(登録商標)B−CAPであってもよい。上記紫外線吸収体は、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン(CYA−SORB(登録商標)UV−1164)または2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシフェノール(Tinuvin(登録商標)1577)などの、1つ以上の置換トリアジンを含んでいてもよい。上記紫外線吸収体は、2,2−メチレンビス−(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾル−2−イル)フェノール)を含んでいてもよい。上記紫外線吸収体は、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホキシトリヒドリドベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−ナトリウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、および/または2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノンなどの、1つ以上のベンゾフェノン化合物を含んでいてもよい。上記紫外線吸収体は、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾル−2−イル)フェノール]、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)および/または2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾールなどの1つ以上のベンゾトリアゾール化合物を含んでいてもよい。高分子組成物中の紫外線吸収体の濃度は、高分子組成物の総重量に対して約0.01重量%から約0.2重量%、一実施形態では約0.02重量%から約0.1重量%の範囲内であってもよい。高分子組成物を生成する際に使用可能な添加用組成物中の紫外線吸収体の濃度は、添加用組成物の総重量に対して、約3重量%から約20重量%、一実施形態では約4重量%から約10重量%の範囲内であってもよい。
【0074】
上記抗酸化剤は、分子量が大きく揮発度が低い主抗酸化剤および/または分子量が大きく揮発度が低い副抗酸化剤を含んでいてもよい。この抗酸化剤は、処理中の熱可塑性樹脂の黄変を大幅に低減するまたは取り除くのに適していてもよい。上記主抗酸化剤は、最高約350℃まで、一実施形態では最高約400℃までまたはそれより高い温度で熱的安定性を有していてもよい。一実施形態では、上記主抗酸化剤は、上記脂肪エステルおよび無機微粒子と組み合わされる場合、最高約400℃までまたはそれより高い温度で熱的安定性を有していてもよい。上記主抗酸化剤は、分子量が約550から約750の範囲内であってもよい。
【0075】
上記主抗酸化剤は、1つ以上のヒンダードフェノールを含んでいてもよい。このヒンダードフェノールの例としては、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン;4,4’−イソプロピリデン−ジフェノール;ブチルヒドロキシアニソール;1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン;4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン;2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール;ビス−[3,3−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−フェニル−ブタン酸)]−グリコールエステル;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチル−フェニル)ブタン;4,4’−チオ−ビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール);4,4−チオ−ビス(2−tert−ブチル−m−クレゾール);4,4’−ブチリデン−ビス(2−tert−ブチル−m−クレゾール);2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール;2,6−ジ−tert−ブチル−4−sec−ブチルフェノール;2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール);1,3,5−(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5G)−トリオン;2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール);1,6−ヘキサメチレン−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ桂皮酸);テトラキス{メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタン;オクタデシル−3−(3’,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート;1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート;3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ桂皮酸トリエステル、またはこれらのうち2つ以上の混合物、のうち1つ以上があげられる。使用可能なヒンダードフェノールは、Cytec Industries社(West Paterson、NJ)からCyanox(登録商標)1790として入手可能かもしれない、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオンであってもよい。
【0076】
高分子組成物中の上記主抗酸化剤の濃度は、高分子組成物の総重量に対して、約1重量%以下、一実施形態では約0.01重量%から約1重量%、一実施形態では約0.03重量%から約0.07重量%の範囲内であってもよい。高分子組成物を生成する際に使用可能な添加用組成物中の上記主抗酸化剤の濃度は、添加用組成物の総重量に対して約10重量%以下、一実施形態では約1重量%から約10重量%、一実施形態では約3重量%から約7重量%の範囲内であってもよい。
【0077】
上記副抗酸化剤を使用して、高温処理中の高分子組成物の黄変を低減してもよい。該副抗酸化剤は、さらに、処理中に加水分解安定性および/または熱安定性を高分子組成物に付与してもよい。上記副抗酸化剤は、長期加水分解安定性、光分解安定性、および/または熱安定性を、高分子組成物から形成される成形物品に付与してもよい。上記副抗酸化剤は、最高で低くとも約350℃の温度まで、一実施形態では最高で低くとも約400℃まで熱的安定性を有していてもよい。一実施形態では、上記副抗酸化剤は、上記少なくとも1つの脂肪エステルおよび無機微粒子と組み合わされる場合、最高で低くとも約400℃まで熱的安定性を有していてもよい。
【0078】
上記副抗酸化剤は、少なくとも1つの亜リン酸塩を含んでいてもよい。上記副抗酸化剤は、ビス(アルキルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイト、ジオクチルペンタエリトリトールジホスファイト、ジフェニルペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリトリトールジホスファイト、またはこれらのうち2つ以上の混合物のうち1つ以上を含んでいてもよい。
【0079】
有用な副抗酸化剤は、Dover Chemical Corporation社(Dover、OH)からDoverphos(登録商標)S−9228PCとして入手可能な、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイトであってもよい。Doverphos S−9228PCは、ポリカーボネートとともに使用する際に好適かもしれない。なぜなら、Doverphos S−9228PCは約200ppmの最大のナトリウム含有量を有し、このナトリウム含有量によって、成形物品のナトリウムの光学的透明度を向上させ、および/または該ナトリウムの浸出を防止するのに効果的であり得るからである。この物質は、約220℃以上の融点を有していてもよい。この物質は、優れた加水分解安定性を示し、また、最高約400℃までの温度で熱的安定性を有していてもよい。
【0080】
高分子組成物中の上記副抗酸化剤の濃度は、高分子組成物の総重量に対して、約0.4重量%以下、一実施形態では約0.01重量%から約0.4重量%、一実施形態では約0.05重量%から約0.25重量%の範囲内であってもよい。高分子組成物を生成する際に使用可能な添加用組成物中の副抗酸化剤の濃度は、添加用組成物の総重量に対して、約50重量%以下、一実施形態では約3重量%から約50重量%、一実施形態では約10重量%から約40重量%の範囲内であってもよい。
【0081】
上記帯電防止剤は、ポリエーテルエステアルミド(polyetherestearmide)、グリセリンモノステアレート、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩、無水マレイン酸モノグリセリド、無水マレイン酸ジグリセリド、炭素、グラファイト、および/または金属粉末のうち1つ以上を含んでいてもよい。高分子組成物中の該帯電防止剤の濃度は、高分子組成物の総重量に対して、約0.02重量%から約1重量%、一実施形態では約0.05重量%から約0.5重量%の範囲内であってもよい。高分子組成物を生成する際に使用可能な添加用組成物中の上記帯電防止剤の濃度は、添加用組成物の総重量に対して、約0.05重量%から約20重量%、一実施形態では約1重量%から約10重量%の範囲内であってもよい。
【0082】
上記熱安定剤は、亜リン酸、リン酸、これらのエステル、および/またはこれらの縮合物のうち1つ以上を含んでいてもよい。これらの例としては、トリフェニル亜リン酸エステル、トリス(ノニルフェニル)亜リン酸エステル、トリデシル亜リン酸エステル、トリオクチル亜リン酸エステル、トリオクタデシル亜リン酸エステル、ジデシルモノフェニル亜リン酸エステル、ジオクチルモノフェニル亜リン酸エステル、ジイソプロピルモノフェニル亜リン酸エステル、モノブチルジフェニル亜リン酸エステル、モノデシルジフェニル亜リン酸エステル、モノオクチルジフェニル亜リン酸エステル、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチル亜リン酸エステル、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリトリトールジホスファイト、トリブチルリン酸塩、トリエチルリン酸塩、トリメチルリン酸塩、トリフェニルリン酸塩、ジフェニルモノオルトキセニルリン酸塩、ジブチルリン酸塩、ジオクチルリン酸塩、ジイソプロピルリン酸塩、および/または三リン酸などがあげられる。これらの化合物は、単独で使用されても、または2つ以上を組み合わせて使用されてもよい。高分子組成物中の上記熱安定剤の濃度は、高分子組成物の総重量に対して、約0.5重量%以下、一実施形態では約0.001重量%から約0.5重量%の範囲内であってもよい。高分子組成物を生成する際に使用可能な添加用組成物中の上記熱安定剤の濃度は、添加用組成物の総重量に対して、約30重量%以下、一実施形態では約3重量%から約30重量%の範囲内であってもよい。
【0083】
高分子組成物は、さらに、1つ以上の融解による処理が可能なガラス補強樹脂または物質を備えていてもよい。該融解による処理が可能なガラス補強樹脂は、少なくとも1つのリン酸塩ガラスを含んでいてもよい。融解による処理が可能なガラス補強樹脂は、約220℃から約400℃の範囲のTgを有していてもよい。融解による処理が可能なガラス補強樹脂は、高分子組成物の重量に対して、約90重量%以下、一実施形態では約0.25重量%から約90重量%、一実施形態では約0.5重量%から約20重量%、一実施形態では約10重量%から約50重量%の範囲の濃度で、高分子組成物中に存在してもよい。上記融解による処理が可能なガラス補強樹脂は、高分子組成物の体積に対して、約40体積%以下、一実施形態では約0.1体積%から約40体積%、一実施形態では約4.5体積%から約25体積%の範囲の濃度で、高分子組成物中に存在してもよい。いかなる特定の理論に拘束されるわけではないが、融解による処理が可能なガラス補強樹脂または物質によって、ポリカーボネート樹脂は、化合中に熱および剪断によって引き起こされる分解に対して、よりよく保護されるのかもしれないと考えられ、また、例えば約0.5重量%から約20重量%の範囲の濃度で使用される際には、ポリカーボネート樹脂との界面結合が改善されるのかもしれないとも考えられている。いかなる特定の理論に拘束されるわけではないが、融解による処理が可能なガラス補強樹脂は、ガラス補強樹脂を備えていない高分子組成物のTgより高いTgを、高分子組成物に付与すると考えられる。融解による処理が可能なガラス補強樹脂は、高分子組成物の耐温度性、剛性、および/または係数を増加させ得る。該ガラス補強樹脂は、金型内で冷める際に高分子組成物が縮小するのを抑制し得る。該ガラス補強樹脂は、高分子組成物から形成される成形物品に、より高い耐摩耗性を付与し得る。適切な融解による処理が可能なガラス補強樹脂は、Corning社から入手可能なリン酸塩ガラスである、908YRLである。この物質は、約309℃のTgおよび約1.55〜1.57の屈折率を有していてもよい。この物質は、約5nmから約30μmのサイズを有していればよく、好適には1μm未満のサイズが有用である。有用なその他のリン酸塩ガラスが、米国特許第6,667,258 B2号明細書および米国特許第5,153,151号明細書に記載されており、これらの特許のリン酸塩ガラスについての開示は参照によってここに引用されるものとする。ポリマーの屈折率とリン酸塩ガラスの屈折率とをできるだけ近い数値に合わせることが望ましいことがあるが、その一方で、高分子組成物の全体的な屈折率を増加させるためには、高分子組成物より高い屈折率を有するリン酸塩ガラスを使用することも望ましいことがある。
【0084】
上記ガラス補強樹脂をシラン処理して、ガラス補強樹脂のポリマー内への分散を向上させ、必要に応じてガラス補強樹脂を高分子樹脂系に結合させてもよい。使用可能なシランの例としては、上述のDynasylan DAMOおよび/またはDynasylan 9165があげられる。Dynasylan DAMOとDynasylan 9165との混合物が使用されてもよい。
【0085】
上記ガラス補強樹脂は、1つ以上のチタン酸塩、1つ以上のジルコン酸塩、またはこれらの混合物で表面処理されてもよい。このチタン酸塩およびジルコン酸塩は、炭化水素結合に付いた官能基を含有する1つ以上の有機化合物によって錯体を形成するチタンまたはジルコニウムの1つ以上の有機金属錯体を含んでいてもよい。この有機化合物は、1つ以上の官能基、一実施形態では、2つ以上の官能基を含有していてもよい。この官能基は、1つ以上の=O、=S、−OR、−SR、−NR、−NO、=NOR、=NSR、および/または−N=NRを含んでいてもよい。なお、これらの式中において、Rは、水素または1個から約10個の炭素原子を有する炭化水素基(例えばアルキルまたはアルケニル)を表す。上記チタン酸塩およびジルコン酸塩は、アルコキシチタン酸塩および配位ジルコン酸塩を含んでいてもよい。これらの物質の例としては、LICA 12またはKR−PROという商品名で入手可能なアルコキシチタン酸塩、およびKZ 55またはKR 55という商品名で入手可能な配位ジルコン酸塩などがあげられる。
【0086】
上記高分子組成物は、さらに、1つ以上の色素、染料、蛍光増白剤、難燃剤、またはこれらのうち2つ以上の混合物を備えていてもよい。高分子組成物中のこれらの追加的な添加物のそれぞれの濃度は、高分子組成物の総重量に対して、約1重量%以下、一実施形態では約0.01重量%から約0.5重量%の範囲内であってもよい。高分子組成物を生成する際に使用可能な添加用組成物中の、これらの追加的な添加物のそれぞれの濃度は、添加用組成物の総重量に対して、約30重量%以下、一実施形態では約1重量%から約20重量%の範囲内であってもよい。
【0087】
上記高分子組成物は、上記熱可塑性樹脂を上記添加用組成物と組み合わせることによって生成されてもよい。上記融解による処理が可能なガラス補強樹脂は、まず、上記熱可塑性樹脂および/または上記添加用組成物と組み合わせられてもよい。この添加用組成物は、上述のように分散剤、無機微粒子、および染料濃縮物を含んでいてもよい。該添加用組成物は、さらに、1つ以上の抗酸化剤、紫外線安定剤、熱安定剤、抗加水分解剤、ビフェノール化合物、帯電防止剤、色素、さらに別の染料、蛍光増白剤、難燃剤、融解による処理が可能なガラス補強樹脂、または2つ以上の混合物を含んでいてもよい。添加用組成物は、高分子組成物の総重量の少なくとも約0.1重量%、一実施形態では約0.1重量%から約3重量%、一実施形態では約0.3重量%から約2重量%の量で、高分子組成物中に存在してもよい。
【0088】
上記添加用組成物は、ペーストまたは乾燥粉末の形態であってもよい。一実施形態では、上記添加用組成物は、均質で自由に流動する乾燥粉末を含んでいてもよい。該添加用組成物は、高分子組成物の流動を増加させるおよび/または剪断を減少させることによって、内部潤滑剤または処理補助剤としてとして作用することが可能であってもよい。こうすることによって、例えば光学レンズなどの成形品を生成するための生成サイクルタイムの短縮、および高分子組成物のプロセス温度の低減が可能になり得る。こうすることによって、光学レンズなどの成形品の、約1μm未満の細部の精密成形が可能になり得る。上記添加用組成物は、高分子組成物内または高分子組成物から作られた成形物品内において、無機微粒子(例えばナノ粒子)および/または抗酸化剤、さらにその他の添加物の均質な分散を可能にする、優れた分散性を有していてもよい。上記添加用組成物は、加水分解に対して安定性を有していてもよく、この安定性によって、湿度の高い環境で成形される物品の経年変化が改善される。添加用組成物は、さらに、比較的高い光学的透明度を有していてもよく、高い光学的透明度は、高分子組成物で作られた成形物品の光学的透明度および光の透過量の保持および改善に寄与する。また、添加用組成物は、添加用組成物を含有する高分子組成物で作られた成形物品を対象とする二次的な作業(例えば、印刷、ボンディング、および/またはコーティングなど)に対して有害な影響を一切及ぼさないことが望ましいことがある。添加用組成物は、黄変性を有さず、高温および/または高湿度に曝される成形品の黄変に対して耐性を付与してもよい。
【0089】
上記添加用組成物は、最高約350℃まで、一実施形態では、最高約400℃またはそれより高い温度まで熱的安定性を有していてもよい。こうすることによって、熱可塑性樹脂および添加用組成物を最高約350℃まで、一実施形態では最高約400℃までの温度で処理することが可能になる。この熱安定性によって、さらに高分子組成物および高分子組成物で作られた成形物品の、熱的な経年変化が改善されてもよい。
【0090】
一実施形態では、上記添加用組成物は、表5に示す組成を有する、均質で自由に流動する乾燥粉末の形態の添加用組成物であってもよい。
【0091】
【表5】

【0092】
適切な添加用組成物の非限定な実施形態の例を、表6〜表9に示す。表6の添加用組成物は、レンズが無鉛半田リフロー処理中にその温度に影響されないカメラレンズなどに適用するための、例えば高温用の光学的にクリアな熱可塑性合成物を製造する際の使用に適していてもよい。
【0093】
【表6】

【0094】
表7の添加用組成物は、例えば、より高い耐熱的酸化性および耐加水分解性酸化性を有する、高温用の光学的にクリアな成形物品を製造するために使用可能な高分子組成物を生成する際の使用に適していてもよい。適切な適用としては、レンズが、無鉛半田リフロー処理中にその温度に影響されず、約85℃を超える高い動作温度で使用され、さらに、約60%を超える相対湿度に曝され、狭く短い波長帯(例えば、450nm)の強い光の伝播に曝される、カメラレンズおよびLEDなどがあげられる。
【0095】
【表7】

【0096】
表8の添加用組成物は、耐熱的酸化性、耐加水分解性酸化性、および耐光分解性酸化性が向上した、例えば高温用の光学的にクリアな熱可塑性合成物を生成するために使用可能な高分子組成物を生成する際の使用に適していてもよい。適切な適用としては、レンズが、無鉛半田リフロー処理中にその温度に影響されず、約85℃を超える高い動作温度で使用され、さらに、約60%を超える相対湿度に曝され、狭く短い波長帯(例えば、450nm)の強い光の伝播に曝され、太陽光の入射を受ける、カメラレンズおよびLEDなどがあげられる。
【0097】
【表8】

【0098】
表9の添加用組成物は、耐熱的酸化性、耐加水分解性酸化性、および耐光分解性酸化性が向上した、例えば高温用の光学的にクリアな熱可塑性合成物を生成するために使用可能な高分子組成物を生成する際の使用に適していてもよい。適切な適用としては、レンズが、無鉛半田リフロー処理中にその温度に影響されず、約85℃を超える高い動作温度で使用され、さらに、無鉛半田リフロー処理の前後で約60%を超える相対湿度に曝され、狭く短い波長帯(例えば、450nm)の強い光の伝播に曝され、太陽光の入射を受ける、カメラレンズおよびLEDなどがあげられる。
【0099】
【表9】

【0100】
高分子組成物を生成するために使用可能な添加用組成物は、最高約400℃まで、またはそれ以上の温度まで熱的安定性を有していてもよい。この添加用組成物は、最高約400℃まで、またはそれ以上の温度まで熱的に安定した、少なくとも1つの脂肪エステル、少なくとも1つの脂肪アミド、またはこれらの混合物、および最高約400℃まで、またはそれ以上の温度まで熱的に安定した染料濃縮物を含んでいてもよい。この添加用組成物は、最高約400℃まで、またはそれ以上の温度まで熱的安定性を有している、青色染料、青紫色の染料、無機微粒子、抗加水分解剤、ビフェノール、主抗酸化剤、副抗酸化剤、および/または紫外線安定剤のうちの1つ以上を含んでいてもよい。
【0101】
最高約400℃までの温度で射出成形に適した粘性を有する、射出成形可能な超高温用光学熱可塑性物質を生成するための一実施形態では、以下の成分(a)〜(h)を含有する添加用組成物が使用されてもよい。すなわち、
(a)添加用組成物の総重量の少なくとも約40重量%の分散剤。なお、この分散剤は、(1)飽和エステルと不飽和脂肪エステルとの混合物、または(2)有機脂肪アミドと界面活性物質との混合物、または(3)複数の多面体オリゴマーシルセスキオキサンの混合物、あるいは(1)と(2)と(3)との混合物(または(1)または(2)または(3))を含んでいる。
【0102】
(b)添加用組成物の総重量の少なくとも約0.005重量%の、高い熱安定性を有する青色有機染料と高い熱安定性を有する青紫色有機染料との混合物。なお、この混合物は、(i)染料濃縮物の総重量の少なくとも約96重量%の、(1)飽和エステルと不飽和脂肪エステルとの混合物、または(2)有機脂肪アミドと界面活性物質との混合物、あるいは(1)と(2)との両方の混合物と、(ii)染料濃縮物組成物の総重量の少なくとも約0.05重量%の、高い熱安定性を有する青色有機染料と高い熱安定性を有する青紫色有機染料との混合物と、(iii)染料濃縮物の総重量の少なくとも約0.1重量%の、約100nm未満(一実施形態では約50nm未満)の平均粒径、約1.4〜1.8(一実施形態では約1.52〜1.58)の屈折率、および高い熱安定性を有する、透明な無機微粒子とを含んだ染料濃縮物の形態であってもよい。
【0103】
(c)添加用組成物の総重量の約30重量%以下の、主抗酸化剤。なお、この主抗酸化剤は、分子量が大きく、揮発度が低いヒンダードフェノールの形態であってもよい。
【0104】
(d)添加用組成物の総重量の少なくとも約10重量%(一実施形態では添加用組成物の総重量の約25重量%から約40重量%)の副抗酸化剤。なお、この副抗酸化剤は、分子量が大きく、揮発度が低く、約200℃を超える融解温度を有する亜リン酸塩の形態である。
【0105】
(e)添加用組成物の総重量の少なくとも約0.05重量%の、約100nm未満(一実施形態では約50nm未満)の平均粒径、約1.54〜1.58の屈折率、および高い熱安定性を有する、透明な無機微粒子。
【0106】
(f)少なくとも約2重量%の紫外線安定剤。
【0107】
(g)添加用組成物の総重量の約50重量%以下(一実施形態では添加用組成物の総重量の約25重量%から50重量%)の抗加水分解剤。なお、この抗加水分解剤は、約350℃またはそれ以上の温度の熱的安定性を有する、高分子カルボジイミドまたは焼成済み酸化アルミニウムの粒子の形態である。
【0108】
(h)添加用組成物の総重量の約50重量%以下のビフェノール化合物(一実施形態では添加用組成物の総重量の約25重量%から50重量%の、例えば4,4’ビフェノールなどのビフェノール化合物)。
【0109】
上記添加用組成物は、(1)染料濃縮物(b)を分散剤(a)と混合し、次に(2)(1)の結果得られた混合物を、無機微粒子(e)と、さらに必要に応じて、主抗酸化剤(c)、副抗酸化剤(d)、および/または紫外線安定剤(f)、および/または抗加水分解剤(g)、および/またはビフェノール化合物(h)と混合、および必要に応じて粉砕することによって生成されてもよい。
【0110】
最高約400℃までの温度で射出成形に適した粘性を有する、射出成形可能な超高温用光学熱可塑性物質を生成するための一実施形態では、以下の成分(a)〜(h)を含有する添加用組成物が使用されてもよい。すなわち、
(a)添加用組成物の総重量の少なくとも約40重量%の、少なくとも1つのジルコン酸塩。
【0111】
(b)添加用組成物の総重量の少なくとも約0.005重量%の、高い熱安定性を有する青色有機染料と高い熱安定性を有する青紫色有機染料との混合物。なお、この混合物は、(i)染料濃縮物の総重量の少なくとも約96重量%のジルコン酸塩と、(ii)染料濃縮物の総重量の少なくとも約0.05重量%の、高い熱安定性を有する青色有機染料と高い熱安定性を有する青紫色有機染料との混合物と、(iii)染料濃縮物の総重量の少なくとも約0.1重量%の、約100nm未満(一実施形態では約50nm未満)の平均粒径、約1.4〜1.8(一実施形態では約1.52〜1.58)の屈折率、および高い熱安定性を有する、透明な無機微粒子とを含んだ染料濃縮物の形態であってもよい。
【0112】
(c)添加用組成物の総重量の約30重量%以下の主抗酸化剤。なお、この主抗酸化剤は、分子量が大きく、揮発度が低いヒンダードフェノールの形態であってもよい。
【0113】
(d)添加用組成物の総重量の少なくとも約10重量%(一実施形態では添加用組成物の総重量の約25重量%〜40重量%)の副抗酸化剤。なお、この副抗酸化剤は、分子量が大きく、揮発度が低く、約200℃を超える融解温度を有する亜リン酸塩の形態である。
【0114】
(e)添加用組成物の総重量の少なくとも約0.05重量%の、約100nm未満(一実施形態では約50nm未満)の平均粒径、約1.54〜1.58の屈折率、および高い熱安定性を有する、透明な無機微粒子。
【0115】
(f)少なくとも約2重量%の紫外線安定剤。
【0116】
(g)添加用組成物の総重量の約50重量%以下(一実施形態では添加用組成物の総重量の約25重量%から50重量%)の抗加水分解剤。なお、この抗加水分解剤は、約350℃またはそれ以上の温度の熱的安定性を有する、高分子カルボジイミドまたは焼成済み酸化アルミニウムの粒子の形態である。
【0117】
(h)添加用組成物の総重量の約50重量%以下のビフェノール化合物(一実施形態では添加用組成物の総重量の約25重量%から50重量%の、例えば4,4’ビフェノールなどのビフェノール化合物)。
【0118】
上記添加用組成物は、(1)染料濃縮物(b)をジルコン酸塩(a)と混合し、次に(2)(1)の結果得られた混合物を、無機微粒子(e)と、さらに必要に応じて、主抗酸化剤(c)、副抗酸化剤(d)、および/または紫外線安定剤(f)と混合することによって生成されてもよい。
【0119】
熱可塑性樹脂を用いて処理される際に、上記添加物は、約300℃から約400℃のプロセス温度に曝されても、その他の有用な特徴および利点を光学レンズなどの成形物品に付与しながら、黄変または分解しないことが望ましいことがある。いかなる特定の理論に拘束されるわけではないが、上記添加用組成物は、1つ以上の特性を有し、表10に列挙する利点のうち1つ以上を提供してもよい。
【0120】
【表10】

【0121】
一実施形態では、上記高分子組成物は、高温用熱可塑性樹脂、および最高約400℃まで、またはそれより高い温度まで熱的に安定した添加用組成物を含んだ、超高温用光学熱可塑性物質であってもよい。射出成形可能な超高温用光学高分子物質は、表14に記載されている1つ以上の特性を有し、高い耐熱性を有する光学プラスチック製レンズ物品を製作するために使用されてもよく、最高約400℃までの温度で射出成形に適した粘性を有し、以下の(1)〜(4)のようにすることによって提供されてもよい。すなわち、
(1)高分子組成物の総重量の少なくとも約88重量%の量の適切な熱可塑性樹脂を、ペレットの形態で準備し、
(2)高分子組成物の総重量の少なくとも約0.2重量%の添加用組成物(例えば、表5に開示する添加用組成物)を準備し、
(3)上記熱可塑性樹脂製ペレットを、低くとも約100℃まで、一実施形態では低くとも約145℃まで加熱し、含水量がペレットの総重量の約0.01重量%未満になるまでペレットを乾燥させ、
(4)熱可塑性樹脂ペレットの総重量の少なくとも約0.2重量%、一実施形態では約0.5から約1.2%の、表5の乾燥粉末状添加用組成物を加熱済みペレット上に導入し、添加用組成物を加熱済みペレット上にタンブルブレンドして、添加用組成物を加熱済みペレット上またはその周りで融解させることによってペレットを添加用組成物でコーティングし、その結果、冷却時に熱可塑性樹脂製ペレットが添加用組成物でほぼ一様にコーティングされているようにする。
【0122】
その結果生成される高分子組成物を、表11を参照してさらに記載する。
【0123】
【表11】

【0124】
本発明の高分子組成物は、最高約400℃まで(一実施形態では約300℃から約400℃)のプロセス温度に耐えることができてもよい。本発明の高分子組成物は、表14に列挙した特性などの、1つ以上の望ましい特性を有する高温用光学レンズ物品の製作に適していてもよい。また、このような高分子組成物を使った単一レンズ物品および複合レンズ物品両方の成型に使用可能な、射出成形機器、射出成形方法、金型設計が各種存在してもよい。また、該高分子組成物は、押し出し法および溶媒キャスト法による、高い耐熱性を有するフィルムの製作に適していてもよい。該高分子組成物は、種々の金型設計で、各種の射出成形プロセスによって、光学的にクリアであってもよい、高い耐熱性を有する多用途の製品を製作する際に有用で、また、種々の設計、種々の適用範囲、および種々の光学的な物性で、プラスチック製光学レンズ物品を生成するために有用であってもよい。これらの目的に合致した、適切な非限定な物質の例は、下記の表12に開示されている。
【0125】
【表12】

【0126】

【0127】

【0128】

【0129】

【0130】

【0131】

【0132】

【0133】
開示する発明に係わる、適切な高温用高分子組成物の例としては、表13に列挙する組成物を含んでもよい。
【0134】
【表13】

【0135】
上記高分子組成物は、ペレットの形態の熱可塑性樹脂物質を準備し、その熱可塑性樹脂製ペレットを適した温度まで、例えば低くとも約100℃まで、一実施形態では約100℃から約155℃、一実施形態では約100℃から約135℃、一実施形態では約135℃から約155℃の範囲の温度まで加熱し、望ましい濃度の添加用組成物を上記加熱済みペレットと混合することによって生成されてもよい。該ペレットは、球形状、立方体形状、シリンダー形状、杆体形状、不規則な形状などを含めた、任意の望ましい形状を有していてもよい。ペレットは、約1μmから約10,000μm、一実施形態では約500μmから約1000μmの範囲の平均粒径を有していてもよい。いかなる特定の理論に拘束されるわけではないが、加熱済みペレットの混合時に、添加用組成物は、融解して加熱済みペレットの表面に流れていき、ペレットをコーティングすると考えられる。一実施形態では、ペレットは添加用組成物でほぼ一様にコーティングされてもよい。上記アルコキシシラン(例えば、フェニルトリメトキシシラン単独、またはビニルトリメトキシシランまたはジアミノトリメトキシシランとの組み合わせ)は、例えばペレットに噴霧されることによって、ペレットに塗布またはコーティングされて、所望の濃度を付与してもよい。アルコキシシランを添加された上記樹脂製ペレットは、約5分間、または添加されたアルコキシシランが樹脂製ペレットをコーティングするまで、タンブルブレンドされてもよい。ペレットは、真空乾燥器中で約80℃から約120℃で約2時間〜4時間加熱および乾燥されて、自由に流動するペレット混合物を形成してもよい。その他の構成としては、ペレットを、まずアルコキシシランでコーティングし、つづいて添加用組成物でコーティングしてもよい。その他の構成としては、上記高分子組成物は、搬送部材または低剪断型混合部材のいずれかを有する単一スクリュー式またはツインスクリュー式の化合装置を使って、熱可塑性樹脂のペレットを、300℃と350℃との間の温度で化合し、少なくとも1つのアルコキシシランを計量して上記化合装置に供給し、上記コーティング済みペレットまたは望ましい濃度の添加用組成物を計量して上記化合装置に供給することによって、生成されてもよい。
【0136】
上記高分子組成物は、低くとも約180℃、一実施形態では低くとも約200℃、一実施形態では低くとも約220℃、一実施形態では低くとも約230℃、一実施形態では低くとも約240℃、一実施形態では低くとも約250℃、一実施形態では低くとも約260℃、一実施形態では低くとも約270℃、一実施形態では低くとも約275℃、一実施形態では低くとも約280℃のガラス転移温度(Tg)を有していてもよい。
【0137】
いかなる特定の理論に拘束されるわけではないが、アルコキシシランの添加の結果、高いTg、アルコキシシランを含有しない高分子組成物のTgよりは低いTg、を有する高分子組成物が生成されると考えられる。さらに、アルコキシシランを含有しない高分子組成物は、約260℃に達する(約320℃またはそれ以上の高温に達することもある)高分子組成物のTgより高い温度で、ゴム平坦領域を有してもよいと考えられる。このことは、アルコキシシランを含有する高分子組成物が、Tgを超える荷重負荷容量を有していない可能性があるが、約260℃まで(さらにおそらく最高約320℃まで)の温度に短い時間曝されると、硬靭なゴム状態を保持または維持しつづける可能性があることを意味しているのかもしれない。予測していなかったことではあるが、アルコキシシランを含有する高分子組成物を使って射出成形プロセスで成形された物品は、非常に低い成形応力、つまり流動応力、および非常に低い複屈折を示す。これによって、高温用の無鉛半田リフローへ適用する際に、本発明の高分子組成物が有用なものとなる。
【0138】
本発明の高分子組成物の熱安定性は、熱的重量分析(thermal gravimetric analysis、TGA)を使って決定されてもよい。これらの組成物における長所の一つは、TGAによれば、約450℃、一実施形態では約455℃、一実施形態では約460℃、一実施形態では約462℃、一実施形態では約464℃の温度において、約5%か、それに満たない重量の減少を示すように、十分に安定していることである。
【0139】
レンズに適用する場合には、大半の場合において、成形済み光学グレードの熱可塑性物質は、約400nm〜1000nmの可視光領域において、レンズ部または厚さが約1.0mmの生成物では、少なくとも約85%、レンズ部または厚さが約1.5mmの生成物では少なくとも約80%の、表面反射損失込みの可視光透過率を有する可能性がある。この差異は、光の透過量が厚さに関連していることが原因であるのかもしれない。さらに、これらの光学グレードの熱可塑性レンズ部または生成物が、他の重要な性質を有している可能性もある。この性質としては、約−20℃から約85℃の環境(相対湿度が約80%より高い環境を含める)で実使用した場合の、高い光学的透明度、非常に低い着色性、非常に低いヘイズ、光分解安定性、加水分解安定性、および熱安定性などが含まれてもよい。LED照明に適用する場合、上記高分子組成物は、約100℃を超えても動作温度能力を有し、また、その他のケースでは約150℃を超えても動作温度能力を有する可能性があることが多い。上記成形済み物質は、光学的なコーティングを付けて結合させることができる、きれいな表面を有していることが多い。表14に、射出成形プラスチック製レンズを製作するための本発明の高分子組成物を使って達成できる可能性のある、光学特性、機械的特性、および物性の概略を示す。
【0140】
【表14】

【0141】
上記高分子組成物の光学的な性質および/または物性は、各種適用に適していないことがあり、したがって、使用する前に化合することによって、高分子組成物をアップグレードして注文に応じて製造し、所望の適用の要件を満足させることが好適かもしれない。従来のように、高い融解温度、特に約300℃より高い融解温度で高分子組成物を化合すると、その結果、不利な熱履歴を追加することになってもよい。これらのプロセス温度では、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂は分解する可能性がある。熱可塑性樹脂およびある種の添加物質が分解すると、黄変などの変色となって現れることがあり、こういった変色が、光のスペクトルの可視光領域において、光の透過量を低下させ、成形物品をレンズとして使用するにあたってその適性を低下させる、または不適なものにしてしまう可能性がある。この問題は、有機添加物が存在し、プロセス温度が約300から約400℃の範囲であると、有機物質が揮発して、黄変および黒いしみの形成をさらに引き起こす可能性が強まることである。
【0142】
本発明に係わる光学熱可塑性組成物は、従来の化合法で処理されてもよいが、一実施形態では、原料から成形物品まで一貫した工程をなす連続射出成形プロセスで、光学機器が製造される。上記添加用組成物、高分子組成物、およびこれらを生成製作するための方法は、ここに記載するように、化合しなくても射出成形可能かもしれない、添加物でコーティングされた、滑らかで、乾いた熱可塑性ペレットを提供してもよい。また、光学レンズなどの成形物品が原料から直接処理されて、光学レンズなどの最終成形物品を形成してもよい。本発明の添加用組成物および高分子組成物、ならびにコーティング済み熱可塑性ペレットを製造する方法を使って、高分子組成物において使用される熱可塑性樹脂の光学特性より優れた光学特性を有するプラスチック製レンズが射出成形されてもよい。熱可塑性ペレットの製造は費用対効果が高く、既存の乾燥およびタンブルブレンドの設備を使って達成してもかまわない。コーティング済みペレットを製造するための方法は、ここに記載するように、重量が場合によってわずか0.25g(ペレット1つまたは2つのおおよその重量)しかない極小さなカメラおよびLEDレンズ物品を製作する際に、特に有用かもしれない。ペレットをほぼ一様にコーティングすることによって、それぞれのペレットが全体の高分子組成物を約100重量%含有し、こうすることによって、作製された個々のレンズ部も高分子組成物を約100重量%含んでいてもよいことを保証し得る。約2重量%を超える無機微粒子および/または融解による処理が可能なガラス補強樹脂を高分子組成物に組み込む場合には、まず、無機微粒子および/または融解による処理が可能なガラス補強樹脂を高分子組成物に、従来の化合法で、高い熱安定性を有する分散剤および/または主抗酸化剤それぞれを約0.3重量%以下化合して、ペレットを形成することが有用であってもよい。つぎに、該ペレットは、上述のように、添加用組成物でコーティングされ、つづいて射出成形および/または押し出しに供されてもよい。他の構成としては、まず、上述のようにアルコキシシランを含有する添加用組成物で、ペレットをほぼ一様にコーティングし、つぎに従来の化合法で無機微粒子、および必要に応じて、融解による処理が可能なガラス補強樹脂を、高分子組成物に化合することが有用であってもよい。
【0143】
本発明の高分子組成物で作られた成形物品、例えば、約1mmの厚さを有する成形物品は、約1.55、一実施形態では約1.56の屈折率を有していてもよい。これらの成形物品は、視感透過率の最大理論値の少なくとも約85%、一実施形態では少なくとも約88%の視感透過率を有していてもよい。成形物品は、約3未満、一実施形態では約1未満のヘイズを有していてもよい。これらの成形物品は、約3未満、一実施形態では約1未満の黄色指数を有していてもよい。成形物品は、少なくとも約85%、一実施形態では少なくとも約88%の表面反射損失込み可視光透過率を有していてもよい。
【0144】
本発明の高分子組成物は、以下の長所のうち1つ以上の長所を含め、先行技術の物質に対する多数の長所を提供してもよい。高分子組成物は、成形されると、優れた光学特性を有していてもよい。高分子組成物で作られたレンズは、高い照明能力を有するカメラレンズおよびLEDレンズの製作に有用となり得る、高い屈折率を有していてもよい。カメラレンズは、高温用光透過性熱可塑性(high temperature light transmissible thermoplastic、HTLT)セル式カメラレンズおよびHTLT LEDレンズを含んでいてもよい。カメラレンズは、電話付き携帯カメラなどのカメラの製作において使用するためのカメラモジュールにおいて使用されてもよい。上記高分子組成物で作られたレンズは、高いガラス転移温度を有していてもよく、半田リフロー、特に高い動作温度を有する可能性がある無鉛半田リフローへの適用において使用されてもよい。高分子組成物は、従来のプラスチックな処理法が使用できるように、ベースとなる熱可塑性樹脂より低い粘性を有していてもよい。高分子組成物は、約300℃から約400℃の範囲の温度で、成形レンズなどの成形物品の光学特性、機械的特性、および/またはその他の物性において妥協することなく、成形され得る。高分子組成物は、約235℃に達する高い温度の金型に注入されても、金型に固着せず、また、外部の金型解放剤を使用しなくてもよい。これには、その結果得られた成形物品、例えば成形済みレンズ部が、熱い金型の中でアニーリングまたは応力緩和され得るプロセスが、成形プロセスの通常の一部として含まれてもよい。高分子組成物は、成形されると、従来のアニーリング方法で効果的にアニーリングまたは応力緩和され、その結果、機械的特性および熱的特性が改善または最適化されてもよい。高分子組成物は、成形されると、例えばLEDおよび自動車のヘッドランプなどの適用に適した多種多様な環境条件下において、優れた熱的酸化特性、加水分解性酸化特性、および/または耐光分解性酸化特性を有し、安定かつクリアな状態を保ってもよい。高分子組成物を使用して、サイズがミクロンおよびサブミクロンという微細構造を有する極小さなレンズ部を精度よく成型してもよい。高分子組成物から製造されるレンズは、抗反射膜を含めた、多種多様な有機および/または金属酸化物コーティングで表面処理されてもよい。レンズの下側に、LEDおよびその他の半導体機器ならびに電子機器への適用のための、粘着剤および軟らかいシリコーン製カプセル形成部材を充填し結合してもよい。
【0145】
上記高分子組成物および該高分子組成物を生成するための方法は、高温用光学熱可塑性合成物における使用に限定されなくてもよい。開示された高分子組成物および該高分子組成物で作られた成形物品の多数の特徴および利点を有する、本発明の開示に係わる高温用熱可塑性樹脂またはその他の熱可塑性樹脂(例えば、ポリカーボネートおよびポリスルホン樹脂)を使って、高い屈折率を有する光学的ナノ物質製熱可塑性合成物を含めた、色素、ミネラル、および/またはナノ物質を充填された高温用合成物を生成するために、高分子組成物は、単独で使用されてもよく、また、その他の添加物と組み合わせて使用されてもよい。さらに、高分子組成物を使用して、比較的低い耐温度性を有する他の熱可塑性樹脂(ポリカーボネートおよびポリスルホン樹脂)を使って、光学熱可塑性複合材料を生成してもよい。こうすることによって、開示される高温用熱可塑性複合材料と同じ特徴および利点のうちの多数を有する熱可塑性複合材料が得られる。
【0146】
本発明の高分子組成物は、光学的にクリア、半透明、または不透明であっても、開示されたアルコキシシラン、および/または無機微粒子、および/またはガラス補強樹脂で生成されていても、無鉛半田リフローへの適用、例えばLEDレンズ用の搭載デバイスおよびセル式カメラレンズ用のカメラモジュールケースにおいて使用するための、他の成形物品の製作に有用であってもよい。
【0147】
理論に拘束されることを望むわけではないが、フェニル基および酸化アルミニウム物質を含有する化合物を、本発明の高分子組成物に含めることによって、高分子組成物が成形される際に、金型内の応力を減少させることが可能になると考えられる。その結果、高分子組成物のガラス転移温度を超える温度に本発明の高分子組成物が曝されるときに、該高分子組成物で作られた物品の歪曲が減少すると考えられる。
【0148】
本発明は、以下の例を参照すればさらに理解できる。以下の実施例は、本発明の各種態様をさらに説明する目的においてのみ、提供するものであって、本発明をいかなる形であれ限定することを意図するものではない。
【0149】
〔実施例1〕
下記の表15に示した材料を混合および粉砕することによって、染料濃縮物を調製する。
【0150】
【表15】

【0151】
前述の染料濃縮物と下記の表16に列挙する材料とを混合および粉砕することによって、添加用組成物を調製する。
【0152】
【表16】

【0153】
APEC(登録商標)TP−0277ポリカーボネート樹脂製ペレットおよび表16に示す添加用組成物を使って、表17に示す高分子組成物を調製する。該樹脂製ペレットを、真空乾燥器内にて135℃で、4時間または含水量が0.005重量%未満になるまで乾燥させる。樹脂製ペレットを135℃まで加熱し、タンブルブレンダー内で、表16の添加用組成物を樹脂製ペレットに0.6:99.4の重量比で添加する。樹脂製ペレットおよび添加用組成物を、5分間または添加用組成物が融解して樹脂製ペレットをコーティングするまでタンブルブレンドする。このコーティング済み樹脂製ペレットを、真空中にて室温で冷却し、滑らかで乾いた状態にする。コーティング済み樹脂製ペレットに、室温でフェニルトリメトキシシランを噴霧して、表16に示す濃度を得る。コーティング済みペレットを5分間タンブルブレンドする。この状態でコーティング済みペレットは、射出成形または射出圧縮成形法のいずれかによって直接成形可能である。直接成形しないのであれば、コーティング済みペレットを、真空乾燥器中にて120℃で4時間乾燥させ、それから真空中で室温まで冷却し、気密性パッケージに真空包装して、後ほど使用できるようにすることも可能である。このペレットはスムーズで自由に流動するものである。他の構成としては、搬送部材または低剪断型部材のいずれかを有し、同時にフェニルトリメトキシシランを計量して、溶融した高分子組成物に添加する、単一スクリュー式またはツインスクリュー式の押し出し機内で、コーティング済みペレットを化合してもよい。他の構成としては、同じ化合装置内で、上述の方法と同じ方法を使って、同時に表16の添加用組成物およびフェニルトリメトキシシランを計量して、溶融した樹脂に添加することによって、樹脂製ペレットを化合してもよい。
【0154】
【表17】

【0155】
射出成形済み高分子レンズ物品を、上述のコーティング済み樹脂製ペレットを使って製造する。コーティング済みペレットまたは化合済みペレットのいずれかを、125℃で加熱して、0.01重量%未満の水分レベル含有量を得る。射出成形機器の上のホッパーを約80℃まで加熱する。ホッパー上には窒素ブランケットを使用する。
【0156】
コーティング済み樹脂製ペレットまたは化合済みペレットのいずれかを、スクリュー型射出装置を用いて射出成形または射出圧縮成形する。バレルの容量は、バレル内の滞留時間を最小化するために、容量の50%と75%との間のペレット射出サイズを実現するのには十分な容量である。貯蔵物の温度は、320℃から380℃の範囲である。150℃から225℃の金型温度を使用する。成形プロセスの条件は以下のようである。
<射出成形処理の条件>
ノズル 340℃〜380℃
前部 335℃〜360℃
中央 330℃〜350℃
後部 300℃〜330℃
成形物品は以下の光学特性を有する。
屈折率/589.93nm/厚さ1.5mm/ASTM D−542
1.50〜1.555
実際の光透過率(厚さ1.5mm)%/ASTM D 1746
405nm 85.12%
450nm 86.87
505nm 87.76
550nm 88.18
605nm 88.63
650nm 89.08
705nm 89.43
750nm 89.65
805nm 89.91
850nm 89.98
900nm 89.06
950nm 90.05
1000nm 89.20
ヘイズ、厚さ1.5mm/ASTM D 1003
<2.0
黄色指数/厚さ1.5mm/ASTM E313
<2.0
コーティング済み樹脂製ペレット(サンプルのサイズ11.5970mg)を、Universal V3.OG TAを使って熱的重量分析(TGA)にかける。結果を図1に示す。その結果、464.60℃で重量の減少が5%であったことを示している。
【0157】
〔実施例2〕
下記の表18に示した材料を混合および粉砕することによって、染料濃縮物を調製する。
【0158】
【表18】

【0159】
前述の染料濃縮物と下記の表19に列挙する材料とを混合および粉砕することによって、添加用組成物を調製する。
【0160】
【表19】

【0161】
APEC(登録商標)TP−0277ポリカーボネート樹脂製ペレットおよび表19に示す添加用組成物を使って、表20に示す高分子組成物を調製する。該樹脂製ペレットを、真空乾燥器内にて135℃で、4時間または含水量が0.005重量%未満になるまで乾燥させる。樹脂製ペレットを135℃まで加熱し、タンブルブレンダー内で、表19の添加用組成物を樹脂製ペレットに0.75の重量比で添加する。樹脂製ペレットおよび添加用組成物を、5分間または添加用組成物が融解して樹脂製ペレットをコーティングするまでタンブルブレンドする。このコーティング済み樹脂製ペレットを、真空中または気密性の容器に保存する。このペレットは、スムーズで自由に流動するものである。必要であれば、コーティング済みペレットを、真空中で再乾燥させて、含水量を0.005重量%未満に保ってもよい。コーティング済みペレットは、搬送部材または低剪断型部材のいずれかを有し、同時にフェニルトリメトキシシランを計量して、溶融した高分子組成物に添加する、単一スクリュー式またはツインスクリュー式押し出し機で、約325℃〜335℃で化合される。
【0162】
【表20】

【0163】
射出成形済み高分子レンズ物品を、上述のコーティング済み樹脂製ペレットを使って製造する。コーティング済みペレットまたは化合済みペレットのいずれかを、125℃で加熱して、0.01重量%未満、好ましくは0.005重量%未満の水分レベル含有量を得る。射出成形機器の上のホッパーを約80℃まで加熱する。ホッパー上には窒素ブランケットを使用する。
【0164】
コーティング済み樹脂製ペレットまたは化合済みペレットのいずれかを、スクリュー型射出装置を用いて射出成形または射出圧縮成形する。バレルの容量は、バレル内の滞留時間を最小化するために、容量の50%と75%との間のペレット射出サイズを実現するのには十分な要領である。貯蔵物の温度は、320℃から380℃の範囲である。150℃から225℃の金型温度を使用する。成形プロセスの条件は以下のようである。
<射出成形処理の条件>
ノズル 340℃〜380℃
前部 335℃〜360℃
中央 330℃〜350℃
後部 300℃〜330℃
成形物品は以下の光学特性を有する。
屈折率/589.93nm/厚さ1.5mm/ASTM D−542
1.555〜1.56
実際の光透過率(厚さ1.5mm)%/ASTM D 1746
405nm 86.36%
450nm 88.27
505nm 89.05
550nm 89.29
605nm 89.64
650nm 89.91
705nm 90.16
750nm 90.36
805nm 90.57
850nm 90.90
900nm 90.33
950nm 90.73
1000nm 89.47
ヘイズ、厚さ1.5mm/ASTM D 1003
<2.0
黄色指数/厚さ1.5mm/ASTM E313
1.4
上記成形物品は、アルコキシシランを添加しない成形物品と比較すると、非常に低い流動応力、つまり成形応力を示す。図2は、干渉偏光の下で調べた2つの成形物品を示している。画像は、高分子組成物の総重量に対してフェニルアルコキシシランを0.5重量%含有する実施例2の高分子組成物で成形した光学物品(画像No.2)が、ほぼ同じ高分子組成物で、フェニルアルコキシシランを添加せずに成形した光学物品と比較すれば、流動応力、つまり成形応力が最大約70%減少することを示している。
【0165】
本発明を各種実施形態を参照して説明したが、各種の改善が可能であることは、明細書を読めば当業者にとって明らかになる。したがって、本発明には、請求項の範囲内における改善点をすべて含めるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】実施例1に開示したポリマーにおける、熱的重量分析(TGA)のプロットである。
【図2】干渉偏光子を使って生成した2つの成形物品の画像を示しており、この2つの成形物品における流動応力、つまり成形応力(mold-in stress)を比較している。両画像は、高分子組成物の総重量に対して0.5重量%のフェニルアルコキシシランを含有する、実施例2の高分子組成物を用いて成形した光学物品(画像No.2)が、ほぼ同じ高分子組成物で、フェニルアルコキシシランを添加せずに成形した光学物品と比較すれば、流動応力、つまり成形応力が最大約70%減少することを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)低くとも約220℃のガラス転移温度を有する、少なくとも1つの熱可塑性樹脂、
(ii)少なくとも1つの、フェニルアルコキシシラン、ビフェノール、トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサン、またはこれらのうち2つ以上の混合物、
(iii)約100nm以下の範囲内の平均粒径および約1.4から約3の範囲内の屈折率を有し、かつ該熱可塑性樹脂内に分散する無機微粒子、および、
(iv)該熱可塑性樹脂において、該無機微粒子を分散させるために効果的な量の、少なくとも1つの分散剤、
を備え、
該トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンが、約100nm以下の平均粒径を有する微粒子の形態であるときに、該トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンの微粒子が、随意的に、成分(ii)としても使用され、成分(iii)における無機微粒子の部分的置換物または完全置換物としても使用される、
高分子組成物。
【請求項2】
少なくとも1つのビニルトリアルコキシシランまたは少なくとも1つのジアミノトリアルコキシシランをさらに備えた、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの青味剤、少なくとも1つの紫外線吸収剤、少なくとも1つの抗酸化剤、またはこれらのうち2つ以上の混合物をさらに備えた、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
1つ以上の、熱安定剤、帯電防止剤、色素、染料、蛍光増白剤、難燃剤、またはこれらのうち2つ以上の混合物をさらに備えた、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1つの、融解による処理が可能なガラス補強樹脂をさらに備えた、請求項1〜4のいずれか1項に記載の高分子組成物。
【請求項6】
上記熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアルキレンテレフテート、またはこれらのうち2つ以上の混合物を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
上記熱可塑性樹脂が、ポリカーボネートを含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
上記熱可塑性樹脂が、p,p’−イソプロピリデンジフェノールに由来する、少なくとも1つのポリカーボネート、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンに由来する、少なくとも1つのポリカーボネート、これらの混合物、またはp,p’−イソプロピリデンジフェノールおよび1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンに由来する共重合体を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
上記フェニルアルコキシシランが、1つ以上の、フェニルトリアルコキシシランおよび/またはジフェニルジアルコキシシランを含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
上記フェニルアルコキシシランが、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、またはこれらのうち2つ以上の混合物を含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
上記ビフェノールが、4,4’−ビフェノールを含有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
上記トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンが、約100nm以下の平均粒径を有する微粒子の形態である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
上記ビニルトリアルコキシシランが、ビニルトリメトキシシランを含有する、請求項2〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
上記ジアミノトリアルコキシシランが、ジアミノトリメトキシシランを含有する、請求項2〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
上記無機微粒子が、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、シリコン、酸化セリウム、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、またはこれらのうち2つ以上の混合物を含有する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
上記無機微粒子が、酸化アルミニウムを含有し、約50nm以下の範囲内の平均粒径および約1.4から約3の範囲内の屈折率を有する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
上記分散剤が、1つ以上の、脂肪酸、脂肪エステル、脂肪アミド、脂肪アルコール、ポリアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、チタン酸塩、ジルコン酸塩、パラフィン、フルオロカーボン、シリコーンオイル、界面活性物質、またはこれらのうち2つ以上の混合物を含有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
上記分散剤が、1つ以上の飽和脂肪エステル、1つ以上の不飽和脂肪エステル、またはこれらの混合物を含有する、請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
上記分散剤が、1つ以上の脂肪エステルと、1つ以上の脂肪酸と、1つ以上のグリセリドとの混合物を含有する、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
上記分散剤が、1つ以上の脂肪アミドを含有する、請求項1〜19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
上記ジアミノトリアルコキシシランが、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシ−シランを含有する、請求項2〜15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
上記青味剤が、少なくとも1つの青色染料、少なくとも1つの青紫色の染料、またはこれらの混合物を含有する、請求項3〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
上記紫外線吸収剤が、テトラルキル−2、2’−(1,4−フェニレンジメチリジン)ビスマロン酸を含有する、請求項3〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
上記抗酸化剤が、少なくとも1つのヒンダードフェノール、少なくとも1つの亜リン酸塩、またはこれらの混合物を含有する、請求項3〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
上記抗酸化剤が、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル) s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリトリトールジホスファイト、またはこれらの混合物を含有する、請求項3〜19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
上記高分子組成物が、熱的重量分析によって、約450℃の温度において約5%以下の重量の減少を示す、請求項1〜25のいずれか1項に記載の高分子組成物。
【請求項27】
(a)少なくとも1つの分散剤、
(b)約100nm以下の範囲内の平均粒径および約1.4から約3の範囲内の屈折率を有する無機微粒子、
(c)少なくとも1つの、フェニルアルコキシシラン、ビフェノール、トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサン、またはこれらのうち2つ以上の混合物、および、
(d)(i)少なくとも1つの分散剤と、(ii)少なくとも1つの青味剤と、(iii)約100nm以下の範囲内の平均粒径および約1.4から約3の範囲内の屈折率を有する無機微粒子とを含有する、少なくとも1つの染料濃縮物、
を組み合わせることによってなり、
該トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンが、約100nm以下の平均粒径を有する微粒子の形態であるときに、該トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンの微粒子が、随意的に、成分(c)としても使用され、成分(b)における部分的置換物または完全置換物としても使用される、
添加用組成物。
【請求項28】
請求項1〜26のいずれか1項に記載の高分子組成物から形成される成形物品。
【請求項29】
上記物品がレンズを備えた、請求項28に記載の成形物品。
【請求項30】
低くとも約220℃のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂のペレットを、低くとも約70℃の温度で加熱し、
該ペレットを、請求項27に記載の添加用組成物でコーティングする、
高分子組成物を生成する方法。
【請求項31】
請求項27に記載の添加用組成物でコーティングされた、低くとも約220℃のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂を含有するペレットを、射出成形装置に供給し、
物品を成形する、
物品を形成するプロセス。
【請求項32】
(A)低くとも約220℃のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂のペレットを、低くとも約70℃の温度で加熱し、
(B)少なくとも1つの分散剤と、約100nm以下の範囲内の平均粒径および約1.4から約3の範囲内の屈折率を有する無機微粒子と、少なくとも1つの染料とを含有する添加用組成物で、該ペレットをコーティングし、
(C)少なくとも1つの、フェニルアルコキシシラン、ビフェノール、トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサン、またはこれらのうち2つ以上の混合物で、ステップ(B)において得られたペレットをコーティングする、
高分子組成物を生成する方法であって、
該トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンが、約100nm以下の平均粒径を有する微粒子の形態であるときに、該トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンの微粒子が、随意的に、ステップ(B)において添加される無機微粒子の部分的置換物または完全置換物として使用され、
該トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンの微粒子が、ステップ(B)において添加される場合、ステップ(C)を実行することは任意選択的である、
高分子組成物を生成する方法。
【請求項33】
ステップ(B)において得られたコーティング済みペレットを、ステップ(C)の間に、少なくとも1つのビニルトリアルコキシシランまたは少なくとも1つのジアミノトリアルコキシシランでもコーティングする、請求項32に記載のプロセス。
【請求項34】
(A)低くとも約220℃のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂のペレットを、低くとも約70℃の温度で加熱し、
(B)少なくとも1つの、フェニルアルコキシシラン、ビフェノール、トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサン、またはこれらのうち2つ以上の混合物で、該ペレットをコーティングし、
(C)少なくとも1つの分散剤と、約100nm以下の範囲内の平均粒径および約1.4から約3の範囲内の屈折率を有する無機微粒子と、少なくとも1つの染料とを含有する添加用組成物で、ステップ(B)において得られたペレットをコーティングする、
高分子組成物を生成する方法であって、
該トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンが、約100nm以下の平均粒径を有する微粒子の形態であるときに、ステップ(B)において添加されるトリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンの微粒子が、随意的に、ステップ(C)において添加される無機微粒子の部分的置換物または完全置換物として使用され、
該トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンの微粒子が、ステップ(B)において添加される場合、ステップ(C)の間に、追加的な量の微粒子を添加することは任意選択的である、
高分子組成物を生成する方法。
【請求項35】
上記ペレットを、ステップ(B)の間に、少なくとも1つのビニルトリアルコキシシランまたは少なくとも1つのジアミノトリアルコキシシランでもコーティングする、請求項34に記載のプロセス。
【請求項36】
(A)低くとも約220℃のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂のペレットを、搬送部材または低剪断型混合部材を有する、単一スクリュー式またはツインスクリュー式化合装置を使って、約300℃から約350℃の範囲内の温度で化合し、
(B)少なくとも1つの、フェニルアルコキシシラン、ビフェノール、トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサン、またはこれらのうち2つ以上の混合物を計量して該化合装置に供給し、
(C)少なくとも1つの分散剤と、約100nm以下の範囲内の平均粒径および約1.4から約3の範囲内の屈折率を有する無機微粒子と、少なくとも1つの抗加水分解剤と、少なくとも1つの染料とを含有する添加用組成物を計量して、該化合装置に供給する、
高分子組成物を生成する方法であって、
該トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンが、約100nm以下の平均粒径を有する微粒子の形態であるときに、ステップ(B)において添加されるトリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンの微粒子が、随意的に、ステップ(C)において添加される無機微粒子の部分的置換物または完全置換物として使用され、
該トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンの微粒子が、ステップ(B)において添加される場合、ステップ(C)の間に、追加的な量の微粒子を添加することは任意選択的である、
高分子組成物を生成する方法。
【請求項37】
(A)低くとも約220℃のガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂のペレットを、低くとも約70℃の温度で加熱し、
(B)少なくとも1つの分散剤と、約100nm以下の範囲内の平均粒径および約1.4から約3の範囲内の屈折率を有する無機微粒子と、少なくとも1つの染料とを含有する添加用組成物で、ステップ(A)において得られたペレットをコーティングし、
(C)ステップ(B)において得られたペレットを計量して、搬送部材または低剪断型混合部材を有する単一スクリュー式またはツインスクリュー式化合装置へ供給し、
(D)少なくとも1つの、フェニルアルコキシシラン、ビフェノール、トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサン、またはこれらのうち2つ以上の混合物を計量して該化合装置に供給する、
高分子組成物を生成する方法であって、
該トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンが、約100nm以下の平均粒径を有する微粒子の形態であるときに、ステップ(D)において添加されるトリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンの微粒子が、随意的に、ステップ(B)において添加される無機微粒子の部分的置換物または完全置換物として使用され、
該トリシラノールフェニル多面体オリゴマーシレスキオキサンの微粒子が、ステップ(D)において添加される場合、ステップ(B)の間に、追加的な量の微粒子を添加することは任意選択的である、
高分子組成物を生成する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−516717(P2011−516717A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505153(P2011−505153)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2009/040588
【国際公開番号】WO2009/129274
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(503017356)サンカラー コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】