説明

光導波路および光ファイバ

【課題】柔軟で伝送損失の低い光導波路、特に、光ファイバ(POF)を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される繰り返し単位と、下記一般式(2)で表される繰り返し単位とを含むポリマーからなる領域を有する光導波路。
一般式(1)
【化1】


(一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ、アルキル基またはアリール基を表す。)
一般式(2)
【化2】


(一般式(2)中、R3はアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を表し、R4はアルキル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光導波路、特に、光ファイバ(プラスチック光ファイバ(POF))に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック系の光学部材は、同一の構造を有する石英系の光学部材と比較して、製造および加工が容易であること等の利点があり、近年光導波路等種々の応用が試みられている。特にプラスチック光ファイバ(POF)は、素線が全てプラスチックで構成されているため、伝送損失が石英系と比較してやや大きいという短所を有するものの、良好な可撓性を有し、軽量で、加工性がよく、石英系光ファイバと比較して口径の大きいファイバとして製造し易いという長所を有する。
光ファイバ用材料としては安価で加工容易なポリメタクリル酸メチル(PMMA)が広く使われているが、吸水性が高いポリマーであるため耐湿性が悪く、限られた用途でしか使用することができない。耐湿性を改善する手段としてはフッ素原子を導入するのが有力な手段であるが、ガラス転移温度(Tg)すなわち耐熱性との両立が難しく、例えばPMMAの側鎖のメチル基を単に含フッ素アルキル基に変えたポリメタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチルはTgが下がってしまい、これを用いたPOFは耐熱性が非常に悪い。この問題を解決する手段の一つが、主鎖に環構造を有する全フッ素ポリマー(非特許文献1)であり、耐熱性、低吸湿性、低伝送損失などの諸性能を満たす優れた素材である。しかしこのポリマーの原料であるパーフルオロ化された(ジエン)モノマーの合成は非常に煩雑で、ポリマーのコストが高価になるという問題点がある。
一方、透明性、耐熱性に優れ、さらに、安価かつ簡便に合成できるポリマー素材として、フマル酸ジアルキルエステル重合体が知られている(例えば、特許文献1、非特許文献2)。フマル酸ジアルキルエステルは1,2ジ置換エチレンでありながらラジカル重合する希少なモノマーであり、得られるポリマーは極めて高い耐熱性を有する。しかし、単独重合体は立体障害が高すぎて分子量が上がりにくく(せいぜい10万程度)、さらに剛直で棒状になりやすく、そのため機械強度(例えば、引張強度)が弱く脆いポリマーであることが欠点であり、この欠点は光ファイバとして用いる際にも致命的な問題であった。
フマレートの機械強度を改良手段としてアルキルビニルエーテルとのポリマーが提案されている(特許文献2)が、機械強度改良効果は十分ではなかった。また、フマル酸ジアルキルエステルとスチレンやアクリロニトリルなどのモノマーとの共重合の例が報告されているが(非特許文献3)、含フッ素体の例は無く、機械強度、吸湿性などは言及されていない。
【0003】
【特許文献1】特開昭62−169807号公報
【特許文献2】特開2000−143741号公報
【非特許文献1】TEFLON(登録商標)AF非晶質フルオロポリマーJohn Scheires、1997年、John Wiley & SonsLtd編のModern Fluoropolymers、397〜398頁)参照
【非特許文献2】J.Macromol.Sci., A25(5-7),537-554 (1988)
【非特許文献3】Journal of Polymer Science: PartA: Vol30, 1559 (1992)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、低吸湿性(耐湿性)、耐熱性(Tgが高い)、機械強度(弾性率、引張強度)および透明性のいずれもが良好で、かつ簡便に製造できるポリマーを用いることにより、柔軟で伝送損失の低い光導波路、特に、光ファイバ(POF)を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは種々検討を重ねた結果、フマル酸ジエステル(あるいはマレイン酸ジエステル)と酢酸イソプロペニルを始めとするイソプロペニルエステルのポリマーを用いることにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には下記手段により達成された。
(1)下記一般式(1)で表される繰り返し単位と、一般式(2)で表される繰り返し単位とを含むポリマーからなる領域を有する光導波路。
一般式(1)
【化1】

(一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ、アルキル基またはアリール基を表す。)
一般式(2)
【化2】

(一般式(2)中、R3はアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を表し、R4はアルキル基を表す。)
(2)前記一般式(1)中のR1およびR2の少なくとも一方が、フッ素原子を含む炭素数2〜6のアルキル基、またはフッ素原子を含むアリール基である、(1)に記載の光導波路。
(3)前記一般式(2)中のR3およびR4が、いずれも、メチル基である、(1)または(2)に記載の光導波路。
(4)下記一般式(3)で表される化合物と、下記一般式(4)で表される化合物とを含む重合性組成物を重合してなる領域を有する光導波路。
一般式(3)
【化3】

(一般式(3)中、R1およびR2は、それぞれ、アルキル基またはアリール基を表す。)
一般式(4)
【化4】

(一般式(4)中、R3は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を表し、R4はアルキル基を表す。)
(5)前記一般式(3)中のR1およびR2の少なくとも一方が、フッ素原子を含む炭素数2〜6のアルキル基である、(4)に記載の光導波路。
(6)前記一般式(4)中のR3およびR4が、いずれも、メチル基である(4)または(5)に記載の光導波路。
(7)光ファイバである、(1)〜(6)のいずれかに記載の光導波路。
【発明の効果】
【0006】
本発明の光導波路、特に、光ファイバ(POF)は、その原料に、低吸湿性(耐湿性)、耐熱性(Tgが高い)、機械強度(弾性率、引張強度)および透明性のいずれもが良好で、かつ簡便に製造できるポリマーを用いることにより、柔軟で伝送損失の低いものとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下において本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値を最小値および最大値として含む範囲を意味する。また、「繰り返し単位AとBを含むポリマー」「モノマーAとBを重合させてできるポリマー」などの記述は、A、Bのみからなるものであってもよく、A、Bをともに含みさらにその他の成分を含むものであってもよい。
【0008】
本発明で用いられるポリマー(共重合体)について説明する。
本発明で用いられるポリマーは、下記一般式(1)で表される繰り返し単位と、下記一般式(2)で表される繰り返し単位の両方を含むポリマーである。
一般式(1)
【化5】

(一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ、アルキル基またはアリール基を表す。)
一般式(2)
【化6】

(一般式(2)中、R3はアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を表し、R4はアルキル基を表す。)
【0009】
一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ、アルキル基またはアリール基を表す。
ここで、アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。アルキル基の炭素数は1〜10が好ましく、1〜6がより好ましい。具体的にはメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ベンジル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
一方、アリール基は、炭素数1〜8であることが好ましい。具体的にはフェニル基、p−トリル基などが挙げられる。
1およびR2の少なくとも一方は、フッ素原子を含む炭素数2〜6のアルキル基(例えば、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3,−テトラフルオロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル基、1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル基(ヘキサフルオロイソプロピル基)などが挙げられる。)、またはフッ素原子を含むアリール基(例えば、ペンタフルオロフェニル基)であることが好ましい。
また、R1およびR2は、いずれもが炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、いずれもが直鎖または分岐の炭素数1〜6のアルキル基であることがより好ましい。
また、後述するとおり、R1およびR2は、置換基によって置換されていてもよいが、少なくとも一方が、フッ素原子によって置換されているのが好ましい。
さらに、R1およびR2に含まれる合計の水素原子数とフッ素原子数の比率において、フッ素原子数が水素原子数の半分以上であることが好ましく、フッ素原子数のほうが多いことがさらに好ましい。
【0010】
一般式(2)中、R3はアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基(アニリノ基を含む)を表す。
3がアルキル基である場合、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐であることが好ましい。アルキル基の炭素数は1〜6であることが好ましい。好ましいアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基などが挙げられる。
3がアリール基である場合、炭素数6〜9であることが好ましく、フェニル基、ペンタフルオロフェニル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基などが挙げられる。
3がアルコキシ基である場合は、炭素数1〜7であることが好ましく、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、フェニルオキシ基などが挙げられる。
3がアミノ基である場合は炭素数1〜7であることが好ましく、具体的にはN,N−ジメチルアミノ基、ピペリジノ基、アニリノ基などが挙げられる。
3がとして好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくはメチル基とトリフルオロメチル基であり、さらに好ましくはメチル基である。
【0011】
4はアルキル基を表す。直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐であることが好ましく、直鎖であることがより好ましい。アルキル基の炭素数は1〜6であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。具体的にはメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基などが挙げられ、メチル基がより好ましい。
【0012】
3とR4は、いずれもがアルキル基であることが好ましく、R3が炭素数1〜6のアルキル基で、R4がメチル基であることがより好ましい。
また、後述するとおり、R3およびR4は、置換基によって置換されていてもよいが、少なくとも一方が、フッ素原子によって置換されているのが好ましい。
【0013】
1〜R4は、さらに置換可能な基で置換されていてもよい。置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等、より好ましくはフッ素原子等)、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールアゾ基、ヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基が好ましい例として挙げられる。
【0014】
本発明で用いられるポリマーは、例えば、一般式(1)で表される繰り返し単位と、一般式(2)で表される繰り返し単位をそれぞれ1%以上含み、好ましくは、一般式(1)で表される繰り返し単位と、一般式(2)で表される繰り返し単位とをそれぞれ30%以上を含む。一般式(1)で表される繰り返し単位および一般式(2)で表される繰り返し単位は、それぞれ、1種類のみを含んでいてもよく、2種類以上を含んでいてもよい。
【0015】
以下に本発明で用いることのできるポリマーの具体例を挙げるが、これらの具体例に限定されるものではない。x、y、zは、それぞれ、繰り返し単位の割合(モル%)を表し、0≦x+y+z≦100である(zが無い場合は0≦x+y≦100)。好ましくは、1<x<99、1<y<99であり、xおよびyが、それぞれ、30以上であることが好ましい。また、これら以外の繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0016】
【化7】

【0017】
【化8】

【0018】
【化9】

【0019】
次に本発明のポリマーの原料となるモノマーについて説明する。
本発明で用いられるポリマーは、少なくとも、下記一般式(3)で表される化合物1種以上と、一般式(4)で表される化合物1種以上とを重合させることにより製造できる。すなわち、別の化合物(モノマー)を含んでいてもよい。ここで、一般式(3)で表される化合物と一般式(4)で表される化合物の比(モル比)は、60:40〜40:60であることが好ましい。
一般式(3)
【化10】

【0020】
一般式(3)中、R1およびR2は、一般式(1)におけるR1およびR2と同義であり好ましい範囲も同義である。この不飽和化合物にはトランス体(フマル酸ジエステル)と、シス体(マレイン酸ジエステル)があるが、どちららでもよく、好ましくはトランス体である。
【0021】
フマル酸ジエステルは、下記に示すとおり、R1とR2が同じである場合(R1=R2=R)には、市販の塩化フマロイルとアルコールより単工程で合成することができる。R1とR2が異なる場合には、例えば特開平8−160365号公報に記載の方法などを用いて無水マレイン酸を出発原料として、対応するアルコール2種と逐次反応させることにより得られる。
【化11】

一般式(4)
【化12】

【0022】
一般式(4)中、R3およびR4は、一般式(2)におけるR3およびR4と同義であり好ましい範囲も同義である。
【0023】
本発明のポリマーは、一般式(3)で表される化合物および一般式(4)で表される化合物のみを原料モノマーとしてもよいし、さらに別の化合物(モノマー)を原料として追加してもよい。追加するモノマーの種類は特に限られず、共重合しうるあらゆるモノマーを用いることができ、具体的にはアクリレート、メタクリレート、スチレン、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、ジオキセンなどが挙げられる。
【0024】
以下に本発明で用いられる一般式(3)で表される化合物の具体例を挙げるが、これらの具体例に限定されるものではない。
【0025】
【化13】

【0026】
【化14】

【0027】
【化15】

【0028】
以下に本発明で用いられる一般式(4)で表される化合物の具体例を挙げるが、これらの具体例に限定されるものではない。
【0029】
【化16】

【0030】
本発明で用いられるポリマーの製造方法は特に限定されないが、一般式(3)で表される化合物および(4)で表される化合物を用いて、重合(好ましくは、重合開始剤の存在下ラジカル重合)にてポリマーを得る方法が好ましい。ラジカル重合の手法としては公知の重合方法を用いて製造することができる。例えば、塊状重合、溶液重合、水中またはエマルション中での乳化重合、懸濁重合方法などである。用いる光学部材の要求性能によって重合方法が適宜選択される。例えば、光ファイバのコア材であれば塊状重合法が好ましく、該ファイバのクラッド材なら塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合法の中から適宜選択されることが好ましい。
【0031】
溶液重合に一般に用いられる溶媒としては酢酸エチル、酢酸メチルまたは酢酸ブチルなどを挙げることができる。
【0032】
重合開始剤としては、用いるモノマーや重合方法に応じて適宜選択することができるが、過酸化ベンゾイル(BPO)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート(PBO)、ジ−tert−ブチルパーオキシド(PBD)、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(PBI)、n−ブチル4,4,ビス(tert−ブチルパーオキシ)バラレート(PHV)などのパーオキサイド系化合物、または2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’―アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルヘキサン)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブタン)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−メチルヘキサン)、3,3’−アゾビス(3,4−ジメチルペンタン)、3,3’−アゾビス(3−エチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジエチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジーtert−ブチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などのアゾ系化合物が挙げられる。
なお、重合開始剤は2種類以上を併用してもよい。
水性媒体中で行うプロセスの場合には、さらに無機のフリーラジカル発生剤、例えば過硫酸塩または「レドックス」化合物を用いることができる。
【0033】
また、分子量調節のために、適宜、連鎖移動剤を用いてもよい。該連鎖移動剤は、主に重合体の分子量を調整するために用いられる。前記連鎖移動剤については、重合性モノマーの種類に応じて、適宜、種類および添加量を選択することができる。各モノマーに対する連鎖移動剤の連鎖移動定数は、例えば、ポリマーハンドブック第3版(J.BRANDRUPおよびE.H.IMMERGUT編、JOHN WILEY&SON発行)を参照することができる。また、該連鎖移動定数は大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊を参考にして、実験によっても求めることができる。
【0034】
連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン類(n−ブチルメルカプタン、n−ペンチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等)、チオフェノール類(チオフェノール、m−ブロモチオフェノール、p−ブロモチオフェノール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール等)などを用いるのが好ましく、中でも、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンのアルキルメルカプタンを用いるのがより好ましい。また、C−H結合の水素原子が重水素原子やフッ素原子で置換された連鎖移動剤を用いることもできる。
なお、連鎖移動剤は、2種類以上を併用してもよい。
【0035】
一般に、重合温度は選択した開始剤系の分解速度に依存し、好ましくは0〜200℃、より好ましくは40〜120℃である。前記一般式(3)で表される化合物および一般式(4)で表される化合物に加えてさらに室温でガス状のモノマーをコモノマーとして用いる場合、オートクレーブなどの耐圧容器で重合することが好ましく、その時にかかる圧力は、好ましくは大気圧から50bar、より好ましくは2〜20barである。
【0036】
上記のようにして得られる本発明で用いられるポリマーは、透明(紫外〜近赤外領域)で、非晶質なコポリマーで、一般的な溶媒(特に、テトラヒロドフラン(THF)、酢酸エチル等)に可溶であることが好ましい。
一般式(3)で表される化合物または一般式(4)で表される化合物由来の、一般式(1)で表される繰り返し単位または一般式(2)で表される繰り返し単位の含有率は、好ましくは20〜80mol%、より好ましくは30〜70mol%、さらに好ましくは40〜60mol%である。
該ポリマーの分子量は、数平均分子量で、好ましくは1000〜1000000(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーで測定したスチレン換算での数平均分子量)、より好ましくは10000〜600000、さらに好ましくは100000〜400000である。一方、重量平均分子量では、好ましくは2000〜1000000、より好ましくは20000〜800000、さらに好ましくは150000〜600000である。
また、該ポリマーのTgは、好ましくは60〜180℃より好ましくは70〜180℃、さらに好ましくは80〜180℃である。
また、該ポリマーの弾性率は、好ましくは800MPa以上、より好ましくは1000〜3000MPaである。
加えて、該ポリマーの引張強度は、好ましくは20MPa以上、より好ましくは25〜45MPaである。
【0037】
以下において、コア部とクラッド部とを有する光ファイバを作製した実施形態について説明する。該ポリマーの溶液または固体を用いて、例えば、以下のような方法により、((1)は特開平11−109144号公報(7頁、発明の実施の形態)に記載)、光ファイバプリフォームを製造することができる。但し、これらに限定されない。
(1) 熱可塑性樹脂を溶融し、その中心部に本発明のポリマーの溶融液を、さらにその中心部に屈折率調整剤、または屈折率調整剤を含む該ポリマーを注入し、屈折率調整剤を熱拡散させてプリフォームを製造する方法。
(2) 回転するガラス管などを利用して中空状の熱可塑性樹脂からなる管を最外層に形成し、次にこの中空部に、本発明のポリマーの溶液と屈折率調整剤とを注入し、回転させながら、減圧または加熱により、有機溶剤を揮発させて層を形成させつつ、屈折率調整剤の添加量を漸進的に増加させて、プリフォームを製造する方法。
(3)(1)および(2)に記載の製造方法において、屈折率調整剤を含まないでプリフォームを製造する方法。
(4)回転するガラス管などを利用して中空状の熱可塑性樹脂からなる管を最外層に形成し、次にこの中空部に本発明のポリマー(該熱可塑性樹脂とは屈折率の異なるポリマーであって、屈折率が該熱可塑性樹脂より高いことが好ましい。その屈折率差は好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、さらに好ましくは0.01以上)を製造可能な重合性組成物(モノマー、重合開始剤、必要なら連鎖移動剤、および必要なら屈折率調整剤)を注入し、熱あるいは光により重合させ中空のプリフォームを製造する方法。
(5)(4)において、該重合性組成物を段階的に重合させ、同心円状からなる複数層の回転重合体の中空ポリフォームを作製する際、複数種類の屈折率の異なるモノマーを用いて、中心に向かってその屈折率を漸進的に増加させながらプリフォームを製造する方法。この場合、最外層の熱可塑性樹脂は必須ではない。
【0038】
前記方法に用いられる熱可塑性樹脂としては、光ファイバの使用温度下で充分高い機械的強度を与える熱可塑性樹脂であれば何でもよいが、室温での引っ張り弾性率が2000MPa以上であることが好ましい。これらの中でも、特に代表的なものとしては、ポリメタクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、線状ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合体系樹脂(AS系樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体系樹脂(ABS系樹脂)、ポリアセタール系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、テトラフルオロエチレン共重合体系樹脂、クロロトリフルオロエチレン共重合体系樹脂などが挙げられる。
【0039】
屈折率調整剤はドーパントとも称し、併用するポリマー又は重合性モノマーの屈折率と異なる化合物である。その屈折率差は、0.005以上であるのが好ましい。ドーパントは、これを含有する重合体が無添加の重合体と比較して、屈折率が高くなる性質を有する。これらは、特許登録第3332922号公報や特開平5−173026号公報に記載されているような、モノマーの合成によって生成される重合体との比較において溶解性パラメータとの差が7(cal/cm31/2以内であるとともに、屈折率の差が0.001以上であり、これを含有する重合体が無添加の重合体と比較して屈折率が変化する性質を有し、重合体と安定して共存可能で、且つ前述の原料である重合性モノマーの重合条件(加熱および加圧等の重合条件)下において安定であるものを、いずれも用いることができる。
【0040】
また、ドーパントは重合性化合物であってもよく、重合性化合物のドーパントを用いた場合は、これを共重合成分として含むポリマーがこれを含まない重合体と比較して、屈折率が上昇する性質を有するものを用いることが好ましい。本発明では、屈折率の異なる複数種のモノマーを選択し、その組成比を漸進的に変化させることにより屈折率分布型コア部を形成してもよい。また、上記性質を有し、重合体と安定して共存可能で、且つ前述の原料である重合性モノマーの重合条件(加熱および加圧等の重合条件)下において安定であるものを、ドーパントとして用いることができる。ドーパントを用いて屈折率分布型コア部を形成することにより、得られる光学部材は広い伝送帯域を有する屈折率分布型プラスチック光ファイバとなる。
【0041】
前記ドーパントとしては、特許登録第3332922号や特開平11−142657号の各公報に記載されている様な、例えば、安息香酸ベンジル(BEN)、硫化ジフェニル(DPS)、リン酸トリフェニル(TPP)、フタル酸ベンジルn−ブチル(BBP)、フタル酸ジフェニル(DPP)、ビフェニル(DP)、ジフェニルメタン(DPM)、リン酸トリクレジル(TCP)、ジフェニルスルホキシド(DPSO)、ジフェニルスルフィドおよびその誘導体、ビス(トリメチルフェニル)スルフィド、ジチアン誘導体、ブロモベンゼン、1,2−ジブロモテトラフルオロベンゼン、1,3−ジブロモテトラフルオロベンゼン、1,4−ジブロモテトラフルオロベンゼン、2−ブロモテトラフルオロベンゾトリフルオライド、クロロペンタフルオロベンゼン、ブロモペンタフルオロベンゼン、ヨードペンタフルオロベンゼン、デカフルオロベンゾフェノン、パーフルオロアセトフェノン、パーフルオロビフェニル、クロロヘプタフルオロナフタレン、ブロモヘプタフルオロナフタレンなどが挙げられる。この中でも本発明の光導波路においては、BEN、DPS、TPP、DPSO、ジフェニルスルフィドおよび誘導体、ジチアン誘導体、ブロモベンゼンが好ましく用いられる。ジフェニルスルフィドおよび誘導体、ジチアン誘導体については、下記にその具体例を示す。ただし、これらに限定されるものではない。
これらのドーパント化合物中に存在する水素原子を重水素原子に置換した化合物も広い波長域での透明性を向上させる目的で用いることができる。また、重合性ドーパント、例えば、トリブロモフェニルメタクリレート等を用いることも可能である。ドーパントとして重合性化合物を用いる場合は、マトリックスを形成する際に、重合性モノマーと重合性屈折率調整成分とを共重合させるので、種々の特性(特に光学特性)の制御がより困難となるが、耐熱性の面では有利となる可能性がある。
【0042】
【化17】

【0043】
本発明のポリマーをコア部に用いる場合は、低伝送損失化の観点から、C−H結合が少ない方が好ましく、C−H結合がC−D結合に置換されているものが好ましい。C−D結合に置換されているものを採用することにより、伝送損失をより下げることができる。
【0044】
前記ドーパントと本発明のポリマーとを用いて、Graded−Index(GI)型の屈折率分布を有するコア部を作製する方法としては、以下の(I)及び(II)の方法が好ましい。但し、これらの方法に限定されるものではない。
(I) 溶融押出成形により、含フッ素ポリマーからなる円筒状の成形体aと、ドーパントを含む本発明のポリマーからなる円柱状の成形体bとを作製する。成形体aに成形体bを挿入し、加熱することにより、成形体b中のドーパントを溶融拡散させ、GI型の屈折率分布を形成する。この方法は上記(1)の方法の一態様である。
(II) 円筒状の成形体の中に、含フッ素ポリマーの溶液を注入し、回転させながら減圧して、溶剤を除去し、その内面に含フッ素ポリマーからなる層を形成する。次いで、ドーパントを含むポリマーの溶液を注入し、回転させながら減圧して、脱溶剤を行い、含フッ素ポリマーの層の内面にドーパントを含むコポリマーの層を形成する。ドーパントの添加量を増やしながら、同様の操作を繰り返して複数の層を形成し、GI型の屈折率分布を付与させる。この方法は上記(2)の方法の一態様である。
(III) ガラス管などの円筒形状の容器内に、前記一般式(3)で表される化合物を1種以上と、前記一般式(4)で表される化合物1種以上と、必要に応じて他のモノマーと、ドーパントとを含有する重合性組成物を注入し、回転しつつ溶媒を除去して層を形成する。ドーパントの濃度が異なる重合性組成物を用いてこの操作を繰り返し、最外層から中心に向けて、順次ドーパントの濃度を高くして複数層を形成し、中空のプリフォーム(PF)を製造する。または、前記一般式(3)で表される化合物および一般式(4)で表される化合物の少なくとも一方を2種以上用いて、回転しつつ重合して層を形成する。モノマーの組成比が異なる重合性組成物を用いてこの操作を繰り返し、最外層から中心に向けて、順次屈折率の高いモノマーの共重合比を高くして複数層を形成し、中空のプリフォーム(PF)を製造する。
【0045】
その他にも、光伝送性能を低下させない範囲で、その他の添加剤を添加することができる。例えば、耐候性や耐久性などを向上させる目的で、安定剤を添加することができる。また、光伝送性能の向上を目的として、光信号増幅用の誘導放出機能化合物を添加することもできる。該化合物を添加することにより、減衰した信号光を励起光により増幅することができ、伝送距離が向上するので、例えば、光伝送リンクの一部にファイバ増幅器として使用することができる。これらの添加剤も、前記原料モノマーに添加した後、重合することによって、含有させることができる。
【0046】
光ファイバはプリフォームを溶融延伸することにより作製することができる。延伸は、例えば、プリフォームを加熱炉(例えば円筒状の加熱炉)等の内部を通過させることによって加熱し、溶融させた後、引き続き連続して延伸紡糸するのが好ましい。加熱温度は、プリフォームの材質等に応じて適宜決定することができるが、一般的には、180〜250℃が好ましい。延伸条件(延伸温度等)は、得られたプリフォームの径、所望の光ファイバの径および用いた材料等を考慮して、適宜決定することができる。特に、屈折率分布型光ファイバにおいては、その断面の中心方向から円周に向け屈折率が変化する構造を有するため、この分布を破壊しないように、均一に加熱且つ延伸紡糸する必要がある。従って、プリフォームの加熱には、プリフォームを断面方向において均一に加熱可能である円筒形状の加熱炉等を用いことが好ましい。また、加熱炉は延伸軸方向に温度分布を持つことが好ましい。溶融部分が狭いほど屈折率分布の形状が歪みにくく収率があがるため好ましい。具体的には溶融部分の領域が狭くなるように溶融領域の前後では、予熱と徐冷を行うことが好ましい。さらに、溶融領域に用いる熱源としてはレーザーのようなせまい領域に対しても高出力のエネルギーを供給できるものがより好ましい。
【0047】
なお、上記した様に、プリフォームの製造方法によって、中空形状のプリフォームが得られる場合がある。かかる形状のプリフォームを延伸する場合は、減圧下で延伸を行うのが好ましい。
【0048】
延伸は線形とその真円度を維持させるため、中心位置を一定に保つ調芯機構を有する延伸紡糸装置を用いて行うのが好ましい。延伸条件を選択することによりファイバの重合体の配向を制御することができ、線引きで得られるファイバの曲げ性能等の機械特性や熱収縮などを制御することもできる。また、線引時の張力は、特開平7−234322号公報に記載されているように、溶融したプラスチックを配向させるために10g以上とすることができ、もしくは特開平7−234324号公報に記載されているように、溶融延伸後に歪みを残さないようにするために100g以下とすることが好ましい。また、特開平8−106015号公報に記載されているように、延伸の際に予備加熱工程を実施する方法などを採用することもできる。以上の方法によって得られるファイバについては、得られる素線の破断伸びや硬度について特開平7−244220号公報に記載の様に規定することでファイバの曲げや側圧特性を改善することができる。また、特開平8−54521号公報のように低屈折率の層を外周に設けて反射層として機能させてさらに伝送性能を向上させることもできる。
【0049】
本発明の光ファイバの伝導損失は、例えば、乾燥時において150dB/kmであることが好ましい。
また、本発明の光ファイバの湿熱時の損失上昇は、例えば、75℃、湿度80%の条件で、15dB/km以下であることが好ましい。
【0050】
前述した方法で製造された光ファイバは、そのままの形態で種々の用途に供することができる。また、保護や補強を目的として、その外側に被覆層を有する形態、繊維層を有する形態、および/または複数のファイバを束ねた状態で、種々の用途に供することができる。被覆工程は、例えばファイバ素線の通る穴を有する対向したダイスにファイバ素線を通し、対向したダイス間に溶融した被覆用の樹脂を満たし、ファイバ素線をダイス間に移動することで被覆されたファイバを得ることができる。被覆層は可撓時に内部のファイバへの応力から保護するため、ファイバ素線と融着していないことが望ましい。さらにこのとき、溶融した樹脂と接することでファイバ素線に熱的ダメージが加わるので、極力ダメージを押さえるような移動速度や低温で溶融できる樹脂を選ぶことも望ましい。このとき、被覆層の厚みは被覆材の溶融温度や素線の引き抜き速度、被覆層の冷却温度による。その他にも、光部材に塗布したモノマーを重合させる方法やシートを巻き付ける方法、押し出し成形した中空管に光部材を通す方法などが知られている。
【0051】
素線を被覆することにより、光ファイバケーブル製造が可能となる。その際にその被覆の形態として、被覆材と光ファイバ素線の界面が全周にわたって接して被覆されている密着型の被覆と、被覆材と光ファイバ素線の界面に空隙を有するルース型被覆がある。ルース型被覆では、たとえばコネクタとの接続部などにおいて被覆層を剥離した場合、その端面の空隙から水分が浸入して長手方向に拡散されるおそれがあるため、通常は密着型が好ましい。しかし、ルース型の被覆の場合、被覆と素線が密着していないので、ケーブルにかかる応力や熱とはじめとするダメージの多くを被覆材層で緩和させることができ、素線にかかるダメージを軽減させることができるため、使用目的によっては好ましく用いることができる。水分の伝播については、空隙部に流動性を有するゲル状の半固体や粉粒体を充填することで、端面からの水分伝播を防止でき、かつ、これらの半固体や粉粒体に耐熱や機械的機能の向上などの水分伝播防止と異なる機能をあわせ持つようにすることでより高い性能の被覆を形成できる。ルース型の被覆を製造するには、クロスヘッドダイの押出し口ニップルの位置を調整し減圧装置を加減することで空隙層を作ることができる。空隙層の厚みは前述のニップル厚みと空隙層を加圧/減圧することで調整が可能である。
【0052】
さらに、必要に応じて被覆層(1次被覆層)の外周にさらに被覆層(2次被覆層)を設けてもよい。2次被覆層に難燃剤や紫外線吸収剤、酸化防止剤、ラジカル捕獲剤、昇光剤、滑剤などを導入してもよく、耐透湿性能を満足する限りにおいては、1次被覆層にも導入は可能である。なお、難燃剤については臭素を始めとするハロゲン含有の樹脂や添加剤や燐含有のものがあるが、毒性ガス低減などの安全性の観点で難燃剤として金属水酸化物を加えるのが主流となりつつある。金属水酸化物はその内部に結晶水として水分を有しており、またその製法過程での付着水が完全に除去できないため、金属水酸化物による難燃性被覆は本発明の対透湿性被覆(1次被覆層)の外層被覆(2次被覆層)として設けることが望ましい。また、複数の機能を付与させるために、様々な機能を有する被覆を積層させてもよい。例えば、本発明のような難燃剤以外に、素線の吸湿を抑制するためのバリア層や水分を除去するための吸湿材料、例えば吸湿テープや吸湿ジェルを被覆層内や被覆層間に有することができ、また可撓時の応力緩和のための柔軟性素材層や発泡層等の緩衝材、剛性を挙げるための強化層など、用途に応じて選択して設けることができる。樹脂以外にも構造材として、高い弾性率を有する繊維(いわゆる抗張力繊維)および/または剛性の高い金属線等の線材を熱可塑性樹脂に含有すると、得られるケーブルの力学的強度を補強することができることから好ましい。抗張力繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維が挙げられる。また、金属線としてはステンレス線、亜鉛合金線、銅線などが挙げられる。いずれのものも前述したものに限定されるものではない。その他に保護のための金属管の外装、架空用の支持線や、配線時の作業性を向上させるための機構を組み込むことができる。
【0053】
また、ケーブルの形状は使用形態によって、素線を同心円上にまとめた集合ケーブルや、一列に並べたテープ心線と言われる態様、さらにそれらを押え巻やラップシースなどでまとめた集合ケーブルなど用途に応じてその形態を選ぶことができる。
【0054】
また、本発明の光ファイバを用いたケーブルは、軸ずれに対して従来の光ファイバに比べて許容度が高いため突き合せによる接合でも用いることができるが、端部に接続用光コネクタを用いて接続部を確実に固定することが好ましい。コネクタとしては一般に知られている、PN型、SMA型、SMI型、F05型、MU型、FC型、SC型などの市販の各種コネクタを利用することも可能である。
【0055】
本発明の光ファイバを用いて光信号を伝送するシステムには、種々の発光素子や受光素子、光スイッチ、光アイソレータ、光集積回路、光送受信モジュールなどの光部品を含む光信号処理装置等で構成される。また、必要に応じて他の光ファイバなどと組合わせてもよい。それらに関連する技術としてはいかなる公知の技術も適用でき、例えば、プラスティックオプティカルファイバの基礎と実際(エヌ・ティー・エス社発行)、日経エレクトロニクス2001.12.3号110頁〜127頁「プリント配線基板に光部品が載る,今度こそ」などを参考にすることができる。前記文献に記載の種々の技術と組み合わせることによって、コンピュータや各種デジタル機器内の装置内配線、車両や船舶などの内部配線、光端末とデジタル機器、デジタル機器同士の光リンクや一般家庭や集合住宅・工場・オフィス・病院・学校などの屋内や域内の光LAN等をはじめとする、高速大容量のデータ通信や電磁波の影響を受けない制御用途などの短距離に適した光伝送システムに好適に用いることができる。
【0056】
さらに、IEICE TRANS.ELECTRON.,VOL.E84−C,No.3,MARCH 2001,p.339−344「High−Uniformity Star Coupler Using Diffused Light Transmission」,エレクトロニクス実装学会誌 Vol.3,No.6,2000 476頁〜480ページ「光シートバス技術によるインタコネクション」の記載されているものや、特開平10−123350号、特開2002−90571号、特開2001−290055号等の各公報に記載の光バス;特開2001−74971号、特開2000−329962号、特開2001−74966号、特開2001−74968号、特開2001−318263号、特開2001−311840号等の各公報に記載の光分岐結合装置;特開2000−241655号等の公報に記載の光スターカプラ;特開2002−62457号、特開2002−101044号、特開2001−305395号等の各公報に記載の光信号伝達装置や光データバスシステム;特開2002−23011号公報等に記載の光信号処理装置;特開2001−86537号公報等に記載の光信号クロスコネクトシステム;特開2002−26815号公報等に記載の光伝送システム;特開2001−339554号、特開2001−339555号等の各公報に記載のマルチファンクションシステム;や各種の光導波路、光分岐器、光結合器、光合波器、光分波器などと組み合わせることで、多重化した送受信などを使用した、より高度な光伝送システムを構築することができる。以上の光伝送用途以外にも照明、エネルギー伝送、イルミネーション、センサ分野にも用いることができる。
【実施例】
【0057】
以下に実施例を挙げて説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手段等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0058】
[モノマー合成例1] (3−3)の合成
【化18】

【0059】
(3−3A)の合成
無水マレイン酸98g(1.00mol)とイソプロピルアルコール60.1g(1.00mol)を窒素雰囲気下、バス温110℃(内温70〜95℃)で2時間攪拌した。粗生成物を蒸留にて精製(4mmHg、115−119℃)して無色透明液体3−3Aを109g(69%)得た。
1H−NMRデータ:
δ1.34(d,6H),5.19(m,1H),6.41(m,2H)
【0060】
(3−3)の合成
(3−3A)50.0g(0.316mol)のTHF200ml溶液を氷冷し、攪拌しながら2,6−ジクロロベンゾイルクロライド66.2g(0.316mol)を内温を10℃以下に保って滴下し、引き続きトリエチルアミン 32.0g(0.316mol)を10℃以下に保って滴下し、室温後1時間半攪拌した。THFを減圧にて留去し、ジクロロメタン150mlを入れて再び氷冷した。ここに 2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパノール55g(0.37mol)を加え、トリエチルアミン37.6g(0.37mol)を、内温10℃以下に保って滴下し、室温で1時間攪拌した。反応液にジクロロメタン150mlと2NのHCl 0.5Lを加えて分液し水層を除去、有機層を飽和食塩水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して、溶媒を減圧留去した。ここにモルホリン1.1g(0.013mol)を加え、窒素雰囲気下で1.5時間攪拌した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1/30)で精製した後、さらに蒸留し(71−75℃/3mmHg)、無色透明の液体(3−3)を46.8g(51%)得た。
1H−NMRデータ:
δ1.31(d,6H),4.75(t,2H),5.13(m,1H),6.89(m,2H)
【0061】
[モノマー合成例2](3−8)の合成
【化19】

【0062】
200mlの3つ口フラスコ(以下室温1時間の攪拌終了までを窒素雰囲気下で行った)に、水素化ナトリウム(Aldrich製、dry 95%)4.80g(0.200mol)と脱水THF40mlを入れて氷冷し、攪拌しながらヘキサフルオロイソプロピルアルコール37.2g(0.221g)の脱水THF60ml溶液を液温を15℃以下に保ちながら滴下し、室温で1時間攪拌した。
この混合物を、氷冷した無水マレイン酸17.6g(0.179mol)のTHF200ml溶液中に、窒素雰囲気下で攪拌しながら、内温を15℃以下に保って添加した。室温で2時間攪拌した後、氷冷した1N塩酸に注ぎジイソプロピルエーテルで抽出、有機相を飽和食塩水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、溶媒を減圧留去した。粗生成物はヘキサンから再結晶で精製し、(3−8A)33.2g(62%)を白色固体として得た。
【0063】
(3−8A)20g(0.075mol)、塩化チオニル 10.7g(0.090mol)、ジメチルホルムアミド(DMF)0.2gの混合物を80℃で2時間攪拌した。反応液を氷冷し、アセトニトリル120ml、トリフルオロエタノール7.52g(0.075mol)を添加し、内温15℃以下を保ってトリエチルアミン7.60g(0.075mol)を滴下し、室温で1時間攪拌した。反応液に酢酸エチルと希塩酸を加えて分液し、有機相を飽和食塩水で2回洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。粗生成物は、シリカゲルクロマトグラフィーにて精製(AcOEt/Hexane=1/30)、さらに減圧蒸留し(52℃/3mmHg)、無色透明の液体(3−8)を12.4g(47%)得た。
(3−8)の1H−NMRデータ(300MHz,CDCl3):
δ4.63(q,2H),5.74(m,1H),7.08(m,2H)
【0064】
[ポリマー合成例1]ポリマー(P−4)の合成
(3−3)と酢酸イソプロペニル(4−1)を用いて合成した。(3−3)は上記モノマー合成例1によって合成したものを用いた。(4−1)は東京化成工業(株)製の一般試薬を蒸留して用いた。ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)は、和光純薬工業(株)製の市販試薬をそのまま用いた。
容量20mlの試験管に(3−3)4.58g(15.8mmol)、(4−1)1.58g(15.8mmol)およびジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)14.6mg(0.064mmol)を入れて軽く振り混ぜた。アルゴン置換後シリコン栓で密栓し、65℃で24時間静置して重合を行った。試験管を割ってロッド状のポリマーを取り出し、これをTHFに溶解し、ヘキサンに注いで再沈を行った。得られた粉体を再度THFに溶解し、メタノールに注いで再度再沈操作を行い、減圧乾燥して白色粉体(P−4)4.68g(76%)を得た。1H−NMRの積分値から算出した組成比(モル比)は、(3−3)42%、(4−1)58%であった。GPCにて分子量を測定し、数平均分子量は、11.5万、重量平均分子量は23.4万であった。
このポリマーのTgは104℃、屈折率は1.417であった。
このポリマーをTHFに溶解してスライドガラス上にコートし、加熱してTHFを蒸発させて得たフィルムは完全に透明であった。高温プレス機を用いて作製したフィルムの強度をテンシロンで測定した結果、このポリマーの弾性率は1200MPa、引張強度は29.0MPaであった。
【0065】
[ポリマー合成例2]ポリマー(P−5)の合成
モノマーを(3−3)から上記モノマー合成例2によって合成した等モルの(3−8)に、再沈溶媒をヘキサンからメタノールに変えて、その他はポリマー合成例1と同様にしてポリマーを得た(白色粉体、収率79%)。
1H−NMRの積分値から算出した組成比(モル比)は、(3−8)44%、(4−1)56%であった。GPCにて分子量を測定し、数平均分子量は13.0万、質量平均分子量は19.7万であった。
このポリマーのTgは96℃、屈折率は1.390であった。
このポリマーをTHFに溶解してスライドガラス上にコートし、加熱してTHFを蒸発させて得たフィルムは完全に透明であった。高温プレス機を用いて作製したフィルムの強度をテンシロンで測定した結果、このポリマーの弾性率は1240MPa、引張強度は30.5MPaであった。
【0066】
[ファイバ作製例1]ポリマー(P−4)を用いた界面ゲル重合による光ファイバ(S−1)の作製例
あらかじめ溶融押出成形によって作製された、厚さ1mm、内径22mm、長さ30cmのポリフッ化ビニリデン樹脂(屈折率:1.38)の中空管チューブ(片端を同じ樹脂で封じてある)をステンレスパイプに挿入し、回転重合装置にセットした。次に該チューブ内に、水分、重合禁止剤、塵埃を十分除去した(3−3)と等モルの(4−1)、重合開始剤としてジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.24%(モノマーの合計量に対する重量比)を注入し、窒素置換した後、密閉状態にし、1500rpmで回転しながら、65℃で3時間、70℃で2時間、90℃で12時間重合を行い、厚さ4mmのアウターコア部(最外層に相当)を作製した。
【0067】
次にインナーコア部の重合は以下のようにして行った。アウターコア部まで作製された中空管を80℃に加温した加圧重合容器に垂直に静置した。等モルの(3−3)と(4−1)、ドーパントとしてブロモベンゼンをモノマーの合計重量に対して5%になるように添加し、重合開始剤ジ−tert−ブチルパーオキサイド0.3%(モノマーの合計量に対する重量比)を添加して、十分脱気して、80℃に加温した重合組成物を該中空管の中空部に静かに添加し、その後、加圧重合容器内を窒素雰囲気下に置換した後、0.2Mpaまで加圧し、100℃で48時間加熱重合した。その後、加圧状態を維持しながら140℃で、24時間加熱重合および熱処理して、プリフォームを得た。
【0068】
つぎに上記で得られたプリフォームを溶融延伸した。200〜240℃に調整された加熱炉内に該プリフォームを鉛直下向きに挿入し、延伸速度は目的とするファイバ外径(300μm)になるようにファイバ径測定器を通じて測定された該ファイバの直径によって延伸速度を制御した。該ファイバを、低密度ポリエチレンで一次被覆し、さらに、水酸化マグネシウムがニトリルブタジエンゴムとポリエチレンで混練された被覆材で2次被覆した。該光ファイバプリフォームの断面方向の屈折率は、クラッド部が1.380で一定、アウターコア部は1.417で一定、インナーコア部は1.417〜1.426(中心部)であった。そのインナーコア部の屈折率分布は上に凸の放物線を描いていた。
得られた被覆ファイバの伝送損失および該被覆ファイバを75℃、80%相対湿度(RH)に240時間おいた前後の損失上昇を表1に示した。
【0069】
[ファイバ作製例2] (P−5)を用いた光ファイバ(S−2)の作製例
用いるモノマーを(3−3)から(3−8)に変更し、ファイバ作製例1と同様に被覆ファイバを作製した。該光ファイバプリフォームの断面方向の屈折率は、クラッド部が1.380で一定、アウターコア部は1.390で一定、インナーコア部は1.390から1.401(中心部)であった。そのインナーコア部の屈折率分布は上に凸の放物線を描いていた。
得られた被覆ファイバの伝送損失、該被覆ファイバを75℃、80%RHに240時間おいた前後の損失上昇を表1に示した。評価結果を表1にまとめた。
【0070】
[比較例1] ポリメタクリル酸メチル(PMMA)を用いた光ファイバ(R−1)の作製例
用いるモノマーをMMA(メタクリル酸メチル)に、ドーパントをブロモベンゼンからジフェニルスルフィド(MMAに対して重量比で5%)に変更して、ファイバ作製例1と同様に被覆ファイバを作製した。評価結果を表1にまとめた。
【0071】
【表1】

【0072】
尚、本発明のポリマーの平均分子量は、以下の方法により測定した。すなわち、ポリマーの平均分子量は、得られたコポリマーの一部をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した。本発明におけるコポリマーの数平均分子量(Mn)は、ポリスチレンを標準物質とした値である。
また、測定装置は、HLC−8220(東ソー製)、カラムはTSKgel SuperHZM-H ( 4.6 mmI.D.×15 cm )、TSKgel SuperHZ4000 ( 4.6 mmI.D.×15 cm )、 TSKgel SuperHZ2000 ( 4.6 mmI.D.×15 cm ) の3本を連結して使用した。
試料濃度は2質量%、インジェクト量は10μl、流速0.35 ml/minで、RI検出器を用いて行った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位と、下記一般式(2)で表される繰り返し単位とを含むポリマーからなる領域を有する光導波路。
一般式(1)
【化1】

(一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ、アルキル基またはアリール基を表す。)
一般式(2)
【化2】

(一般式(2)中、R3はアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を表し、R4はアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)中のR1およびR2の少なくとも一方が、フッ素原子を含む炭素数2〜6のアルキル基、またはフッ素原子を含むアリール基である、請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
前記一般式(2)中のR3およびR4が、いずれも、メチル基である、請求項1または2に記載の光導波路。
【請求項4】
下記一般式(3)で表される化合物と、下記一般式(4)で表される化合物とを含む重合性組成物を重合してなる領域を有する光導波路。
一般式(3)
【化3】

(一般式(3)中、R1およびR2は、それぞれ、アルキル基またはアリール基を表す。)
一般式(4)
【化4】

(一般式(4)中、R3は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を表し、R4はアルキル基を表す。)
【請求項5】
前記一般式(3)中のR1およびR2の少なくとも一方が、フッ素原子を含む炭素数2〜6のアルキル基である、請求項4に記載の光導波路。
【請求項6】
前記一般式(4)中のR3およびR4が、いずれも、メチル基である請求項4または5に記載の光導波路。
【請求項7】
光ファイバである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光導波路。

【公開番号】特開2007−17546(P2007−17546A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196879(P2005−196879)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】