説明

光導波路アレイを用いた光記録装置

【課題】
波長420nm以下の短波長のレーザ光を用いた場合においても、光利用効率の高い、光導波路アレイを用いた光記録装置を提供する。
【解決手段】
本発明は、波長420nm以下の光導波路アレイから出射する複数のレーザ光を感光材料上に変調走査して光記録する光記録装置において、該光導波路アレイはアンダークラッド層と、該アンダークラッド層上に在るコア部と、該コア部上面と該コア部側面とを覆うオーバークラッド層とから成り、前記コア部の材質はSiOにAlを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長420nm以下の光導波路アレイから出射する複数のレーザ光を感光材料上に変調走査し、光記録する光導波路アレイを用いた光記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数のレーザ光を感光材料上に変調走査し、光記録する技術は、レーザプリンタにおいて実用化されている。マルチビームを用いたレーザプリンタは、マルチビームの本数分、回転多面鏡の回転速度及び光変調速度を低減することができるためレーザプリンタの高速高精細化が可能となる。
【0003】
図1はマルチビーム発生素子として、光ファイバアレイを用いたレーザプリンタ光学系を示している。光ファイバアレイ8から出射するマルチビームのそれぞれのビームはコリメータレンズ7で平行光に変換された後、ビーム拡大器5、6で拡大され、ポリゴンミラー3で感光ドラム1上を走査される。
【0004】
感光ドラム1上では光スポット列が形成されている。図3に示すように、通常、光スポットの大きさに比較し光スポットの間隔が大きいため、光スポット列の配列方向を走査方向に対して斜めになるように配置し、光走査線が連続したものになるようにする。ポリゴンミラー3前に配置した円筒レンズ4は、ポリゴンミラー3が回転中に生じる歳差運動に起因する光走査線の位置変動を抑制する機能をもつ。
【0005】
図2は光ファイバアレイ部の断面を示したものである。光ファイバ9のそれぞれは、シリコン結晶12のV溝上に正確に密着され、ガラス板13で押さえられ、接着剤14で固定されている。光ファイバコア部92が光ファイバ9の中心に存在すれば、光ファイバアレイ8から出射されるビームは正確に直線上に配列される。
【0006】
【特許文献1】特開2002−299746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実際には光ファイバは構造誤差をもっているため、光ファイバアレイから出射されるビームは正確に直線上に配列されず、配列誤差を持つ。このことが高品質な印刷を得ることができない原因の一つとなる。この問題を解決するため、マルチビーム発生素子として光導波路アレイを用いる必要が生じてくる。光導波路アレイは、狭ピッチで多数本のコア部を高精度配列で製作することが可能であり、光導波路アレイから出射する複数本のレーザ光を用いることにより、高速、高精細、高品質な印刷が可能となる。
【0008】
通常、短波長のレーザ光を導波させる光導波路は、樹脂系の材料で製作すると変質してしまうため、SiOなどのガラス材料で製作されている。コア部はGeOやTiOなどを微量に含ませ、比屈折率差が0.1〜0.7%程度になるように製作される。しかし、波長が短波長になるにつれてレイリー散乱などによる散乱が大きくなり、光導波路の伝搬損失が大きくなる。特にGeOやTiOなどの物質は波長420nm以下の短波長のレーザ光になると散乱係数が急激に大きくなり、光導波路の光利用効率が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、波長420nm以下の光導波路アレイから出射する複数のレーザ光を感光材料上に変調走査して光記録する光記録装置において、該光導波路アレイはアンダークラッド層と、該アンダークラッド層上に在るコア部と、該コア部上面と該コア部側面とを覆うオーバークラッド層とから成り、前記コア部はSiOにAlを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、波長420nm以下の光導波路アレイから出射する複数のレーザ光を感光材料上に変調走査して光記録する光記録装置において、該光導波路アレイはアンダークラッド層と該アンダークラッド層上に在るコア部と該コア部上面と該コア部側面とを覆うオーバークラッド層とから成り、該コア部の材質をSiOにAlを含むものを用いることことにより、波長420nm以下の短波長のレーザ光を用いた場合においても、光利用効率の高い、光導波路アレイを用いた光記録装置を製作することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
光導波路アレイを用いた光記録装置では、図7に示したように各々の半導体レーザ11から出射したレーザ光を光ファイバアレイの各々の光ファイバ9に入射し、光ファイバアレイ8の出射端面を光導波路アレイ入射端面に接続し、半導体レーザ光を光導波路アレイに導いている。光ファイバのクラッド径は通常125μmであるため、光ファイバアレイのピッチ間隔は150μm程度となる。通常、光スポットの大きさに比較し、光スポットの間隔が大きいため、図3に示したように光スポット列の配列方向を走査方向に対して斜めになるように配置し、光走査線が連続したものになるようにする。
【0012】
光スポットの間隔が大きいほど、角度θを大きく取らなければならず、角度θが大きくなるほど角度誤差許容量が狭くなり、角度誤差による印刷品質の劣化が大きくなる。そこで、光ファイバアレイにより、ピッチ間隔150μmで光導波路アレイに導かれた複数のレーザ光は図5に示したように光導波路アレイでピッチ変換し、ピッチ間隔25μm程度に狭くする。これにより角度θを小さくすることができ、角度誤差による印刷品質への影響を低減することができる。
【0013】
光導波路アレイはシングルモードにする必要があるため、コア部の比屈折率差を大きくするとコア径を小さくする必要があり、コア部の比屈折率差を小さくするとコア径を大きくすることが可能となってくる。比屈折率差を小さくしコア径を大きくすると、光導波路アレイコア部にレーザ光を導くときの軸ずれ許容量が大きくなるが、曲げ損失が大きくなり、比屈折率差を大きくしコア径を小さくすると、曲げ損失は小さくなるが、軸ずれ許容量が小さくなる。これらの関係から、最適なコア部の比屈折率差、コア径を決定する。
【0014】
マーカットリィの方法により計算すると、波長420nmのレーザ光を用いた場合、コア径2μmの時、比屈折率差が0.26%以下の場合にシングルモードとなる。コア径2.5μmの場合には、比屈折率差0.17%以下の場合にシングルモードとなる。コア径2μm以下では光導波路アレイ入射端面にレーザ光を導く時の軸ずれ許容量が狭くなり、製作が困難である。コア径2μm以上でシングルモードにするための比屈折率差は、短波長化になるほど小さくなる。
【0015】
石英ガラス上にSiOにAlを5w%含む蒸着物質をEB蒸着した時の蒸着膜の比屈折率差を測定した。蒸着膜の比屈折率差は、蒸着条件によっても変化するが0.4%程度であった。このことから、波長420nm以下のレーザ光を導く光導波路アレイコア部の材質は、SiOにAlが5w%以下だけ含む材質を使用した時に、コア径、比屈折率差共に最適設計の光導波路アレイを製作することが可能であることがわかる。
【0016】
光導波路アレイの製作プロセスを図8を用いて説明する。まず、石英ガラスウエハー19上、または膜厚10μm以上の熱酸化膜付きシリコンウエハー19上にSiOにAlを含む物質をEB蒸着法により蒸着し、導波層22を形成する。次に導波層上にクロム膜23をスパッタ蒸着する。それからクロム膜上にフォトレジスト23のスピンコートを行い、プリベークを行った後、露光、現像を行い、クロム膜上にフォトレジストの導波路パターンを形成する。
【0017】
その後、ポストベークを行い、クロム膜のウエットエッチングを行った後、フォトレジストの剥離を行う。これにより、導波層上にクロム膜の導波路パターンが作製される。その後、ドライエッチング、クロム膜のウエットエッチングのプロセスを経て、石英ガラスウエハー、または熱酸化膜付きシリコンウエハー上に光導波路アレイのコア部パターンが形成される。
【0018】
次に、CVD法、火炎堆積法、スパッタ法などにより、オーバークラッド層21としてSiOを形成させる。その後、入出射端面の研磨を行う。
【0019】
光導波路アレイに複数のレーザ光を導く方法を、図7を用いて説明する。各々の半導体レーザから出射されたレーザ光はレンズ26により各々の光ファイバコア部入射端面に集光される。光ファイバアレイ出射端面は、光導波路アレイへの結合効率が最大になるように光導波路アレイ入射端面に接続される。接続固定は、UV硬化性樹脂を用いた固定、レーザ溶接を用いた固定などが用いられる。
【0020】
次に、図4を用いて光導波路アレイを用いた光記録装置の光学系の説明をおこなう。光導波路アレイ15から出射するマルチビームのそれぞれのビームはコリメータレンズ7で平行光に変換された後、ビーム拡大器5、6で拡大され、ポリゴンミラー3で感光ドラム1上を走査される。感光ドラム1上では光スポット列が形成されている。
【0021】
通常、光スポットの大きさに比較し、光スポットの間隔が大きいため、光スポット列の配列方向を走査方向に対して斜めになるように配置し、光走査線が連続したものになるようにする。ポリゴンミラー3前に配置した円筒レンズ4は、ポリゴンミラー3が回転中に生じる歳差運動に起因する光走査線の位置変動を抑制する機能をもつ。
【0022】
光導波路アレイに複数本のレーザ光を導く実施例を図9を用いて説明する。各々の半導体レーザ11出射端面を光導波路アレイの各々のコア部入射端面に近接させ、半導体レーザから出射したレーザ光を直接、光導波路アレイの各々のコア部に導いている。
【0023】
光導波路アレイに複数本のレーザ光を導く実施例を図10を用いて説明する。各々の半導体レーザから出射したレーザ光をそれぞれレンズ25により光導波路アレイの各々のコア部入射端面に集光し、光導波路アレイの各々のコア部に導いている。
【産業上の利用可能性】
【0024】
波長420nm以下の光導波路アレイから出射する複数のレーザ光を感光材料上に変調走査して光記録する光記録装置は、高速、高精細なレーザプリンタにおいて利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】光ファイバアレイから出射する複数のレーザ光を感光材料上に変調走査し、光記録するレーザプリンタの光学系を示した説明図である。
【図2】光ファイバアレイの断面を示した説明図である。
【図3】複数のレーザ光を感光材料上に走査する走査方法を示した説明図である。
【図4】光導波路アレイから出射する複数のレーザ光を感光材料上に変調走査し、光記録するレーザプリンタの光学系を示した説明図である。
【図5】光導波路アレイのコア部パターンを示した説明図である。
【図6】光導波路の構造を示した説明図である。
【図7】光導波路アレイに複数本のレーザ光を導く実施方法を示した説明図である。
【図8】光導波路アレイの製作プロセスを示した説明図である。
【図9】光導波路アレイに複数本のレーザ光を導く実施方法を示した説明図である。
【図10】光導波路アレイに複数本のレーザ光を導く実施方法を示した説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1…感光ドラム、2…Fθレンズ、3…ポリゴンミラー、4…シリンドリカルレンズ、5…レンズ、6…レンズ、7…コリメータレンズ、8…光ファイバアレイ、9…光ファイバ、91…光ファイバクラッド部、92…光ファイバコア部、10…半導体レーザモジュール、11…半導体レーザ、12…シリコン結晶のV溝、13…ガラス板、14…接着剤、15…光導波路アレイ、16…光導波路コア部、17…光導波路アレイ出射端面、18…光導波路アレイ入射端面、19…アンダークラッド層、20…光導波路コア部、21…オーバークラッド層、22…導波層、23…クロム膜、24…フォトレジスト、25…レンズ、26…レンズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長420nm以下の光導波路アレイから出射する複数のレーザ光を感光材料上に変調走査して光記録する光記録装置において、前記光導波路アレイはアンダークラッド層と、該アンダークラッド層上に在るコア部と、該コア部上面と該コア部側面とを覆うオーバークラッド層とから成り、前記コア部はSiOにAlを含むことを特徴とする光導波路アレイを用いた光記録装置。
【請求項2】
前記コア部の材質は、SiOに5w%以下のAlを含むことを特徴とする請求項1記載の光導波路アレイを用いた光記録装置。
【請求項3】
前記アンダークラッド層は石英ガラス板であることを特徴とする請求項1記載の光導波路アレイを用いた光記録装置。
【請求項4】
前記アンダークラッド層はSiウエハー上の熱酸化膜であることを特徴とする請求項1記載の光導波路アレイを用いた光記録装置。
【請求項5】
前記オーバークラッド層はSiOであることを特徴とする請求項1記載の光導波路アレイを用いた光記録装置。
【請求項6】
前記光導波路アレイの各々の入射端面に、各々の半導体レーザから直接レーザ光を入射していることを特徴とする請求項1記載の光導波路アレイを用いた光記録装置。
【請求項7】
前記光導波路アレイの各々の入射端面に、各々の半導体レーザから出射するレーザ光をレンズを用いて集光して入射していることを特徴とする請求項1記載の光導波路アレイを用いた光記録装置。
【請求項8】
前記光導波路アレイの入射端面に光ファイバアレイ出射面を接続し、該光ファイバアレイの各々の光ファイバ入射面に各々の半導体レーザから出射するレーザ光を入射することによって、光導波路アレイにレーザ光を導いていることを特徴とする請求項1記載の光導波路アレイを用いた光記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−189705(P2006−189705A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−2599(P2005−2599)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】