光導波路モジュール
【課題】光導波路の固定が確実に行える光導波路モジュールを提供する。
【解決手段】導波路シート2は、端部に傾斜端面6が形成され、傾斜端面6に露出したコア4の端面によって反射面6aが形成される。実装基板3は、導波路シート2が接着剤11により接着固定されると共に、反射面6aと対向する位置に実装凹部9が形成され、実装凹部9に面型発光素子7あるいは面型受光素子8が実装される。実装凹部9は、個々の面型発光素子7及び面型受光素子8に対応して独立して形成され、実装凹部9の両側に導波路支持部10が形成される。導波路支持部10は、実装基板3の表面と同一平面であり、導波路シート2の端部で実装凹部9の間の部分は、導波路支持部10に接着固定される。
【解決手段】導波路シート2は、端部に傾斜端面6が形成され、傾斜端面6に露出したコア4の端面によって反射面6aが形成される。実装基板3は、導波路シート2が接着剤11により接着固定されると共に、反射面6aと対向する位置に実装凹部9が形成され、実装凹部9に面型発光素子7あるいは面型受光素子8が実装される。実装凹部9は、個々の面型発光素子7及び面型受光素子8に対応して独立して形成され、実装凹部9の両側に導波路支持部10が形成される。導波路支持部10は、実装基板3の表面と同一平面であり、導波路シート2の端部で実装凹部9の間の部分は、導波路支持部10に接着固定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端部に傾斜した反射面を備えたシート状の光導波路を実装基板に実装して、面型の光素子を利用できるようにした光導波路モジュールに関する。詳しくは、面型の光素子が実装される実装凹部の両側に導波路支持部を備えて、光導波路の端部を支持できるようにしたものである。
【0002】
また、反射面の直下に波長選択フィルタを配置することで、簡単な構成で波長多重双方向光伝送を行えるようにしたものである。
【0003】
更に、実装基板の表面に接着剤の濡れ性を向上させる表面処理を施すことで、実装基板に対する光導波路の接着強度を増加させるものである。
【背景技術】
【0004】
従来より、電子機器内のボード間、チップ間等の情報伝達は電気信号により行われてきたが、更に超高速、大容量の情報伝送を実現するために、光配線技術が注目されており、光配線技術を利用して波長多重双方向光伝送を行えるようにした導波路型の光モジュールが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
従来の光モジュールでは、端面発光型の発光素子(LD)と端面受光型の受光素子(PD)を用いているが、特許文献1の構成では、受光素子を発光素子側とは別の実装用キャリアに実装して光導波路と位置合わせする必要がある。更に、波長多重双方向光伝送を実現する波長フィルタも別部品となっており、導波路端面に固定する必要があり、組立工程が複雑で低コスト化は困難である。
【0006】
これに対して、面型の受発光素子は作製プロセスが端面型のものに比較して容易であることや表面実装に向いていることなどから、端面型のものに比較して低コスト化に対して有利である。特に面型発光素子(VCSEL)は、高速で直接変調が可能であるというメリットもあり、低コストな光モジュール用のデバイスとして非常に有望であり、面型の受発光素子を使用した低コストな光モジュールが求められている。
【0007】
しかし、特許文献1の構成では、発光素子をVCSELに置き換えるためにはさらに別の実装用キャリアが必要となり、組立工程が更に複雑になってしまい、低コスト化が困難であるという問題がある。
【0008】
そこで、実装用キャリアを用いることなく、VCSELを実装できるようにした光モジュールが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
特許文献2の構成では、実装基板に凹部を形成してこの凹部に面型の発光素子あるいは受光素子を実装している。また、光導波路の端部に45度の反射部を形成し、反射部が発光素子あるいは受光素子の直上にくるように、光導波路を実装基板に実装している。
【0010】
【特許文献1】特開2001−305365号公報
【特許文献2】特開平10−300961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
光導波路の端部に45度の反射部を形成して、面型の光素子との光結合を行うためには、光導波路の反射部が形成された端部を凹部に突き出す構成とする必要がある。このため、凹部に突き出した光導波路の反射部が形成された部分は実装基板に対してフリーとなっており、熱等による光導波路の伸縮によって受発光素子との間に位置ずれが発生することを抑えることができないという問題がある。
【0012】
また、長期間の使用時には、光導波路の凹部に突き出した部分に反り等が生じ、やはり受発光素子との間の位置ずれや角度ずれを抑えることができず、過剰損失が発生するという問題がある。
【0013】
更に、実装基板は一般的にシリコンで構成されるが、光導波路を接着固定する接着剤はシリコン基板に対する濡れ性が悪く、接着剤が均一に付かないので、接着強度が不足するという問題がある。そして、接着強度が不足すると、温度の影響等により、光導波路の位置ずれを生じ、受発光素子との間の位置ずれを抑えることができないという問題がある。
【0014】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、光導波路の固定が確実に行え、かつ構成が簡単な光導波路モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決するため、本発明に係る光導波路モジュールは、コアとクラッドを有する光導波路と、光導波路を支持する実装基板とを備えた光導波路モジュールにおいて、光導波路は、少なくとも一の端部に傾斜端面が形成され、傾斜端面に露出したコアの端面によって反射面が形成されると共に、実装基板は、光導波路の下側で反射面と対向する位置に形成され、反射面を介してコアと光結合される面型光素子が実装される実装凹部と、実装凹部の両側に形成され、光導波路を支持する導波路支持部とを備えたものである。
【0016】
本発明に係る光導波路モジュールでは、実装基板の実装凹部に面型光素子を実装し、反射面を介してコアと面型光素子が光結合するように、光導波路を実装基板に実装すると、実装凹部の部分では接着固定が行えないので、光導波路の端部で実装凹部の上部に位置する部分はフリーとなる。これに対して、実装凹部の両側は、導波路支持部を備えることで、光導波路の端部でフリーとなっている部分の両側は、実装基板に対して接着固定が行われる。
【0017】
また、本発明に掛かる光導波路モジュールは、コアとクラッドを有する光導波路と、光導波路を支持する実装基板とを備えた光導波路モジュールにおいて、光導波路は、少なくとも一の端部に傾斜端面が形成され、傾斜端面に露出したコアの端面によって反射面が形成されると共に、反射面の直下に、任意の波長領域の光を選択的に反射及び透過させ、光の波長により光路を切り替える波長選択フィルタを備え、反射面を介してコアと光結合する面型光素子が、反射面と対向した光導波路の下側の実装基板に実装されるものである。
【0018】
本発明に掛かる光導波路モジュールでは、コアを伝搬される光は、反射面で反射して波長選択フィルタに入射される。波長選択フィルタでは、入射した光が波長に応じて反射もしくは透過され、光路が切り替えられる。
【0019】
更に、本発明に掛かる光導波路モジュールは、コアとクラッドを有する光導波路と、光導波路を支持する実装基板とを備えた光導波路モジュールにおいて、実装基板は、光導波路を接着固定する接着剤に対する濡れ性を向上させる表面処理が施されているものである。
【0020】
本発明に掛かる光導波路モジュールでは、実装基板に光導波路を接着固定する際に、実装基板の表面に接着剤の濡れ性を向上させる表面処理剤を塗布した後に、接着剤を塗布して光導波路を貼り付ける。
【発明の効果】
【0021】
本発明の光導波路モジュールによれば、面型光素子を実装するために形成される実装凹部の両側に導波路支持部を備えて光導波路を支持できるようにすることで、光導波路において、面型光素子との光結合のため、実装基板に接着固定できず空中でフリーとなる部分の両側が実装基板に固定される。これにより、フリーとなる部分が少なくなるので、熱による光導波路の伸縮や、長期的な使用による光導波路の反り等の変形による結合損失の増加を低減することができる。
【0022】
また、本発明の光導波路モジュールによれば、光導波路の端面に傾斜端面を形成し、この傾斜端面による反射面の直下に波長選択フィルタを配置することで、面型光素子を利用して波長多重双方向光通信が行える光導波路モジュールを、容易な組み立て工程で実現することが可能となる。
【0023】
更に、本発明の光導波路モジュールによれば、実装基板は、光導波路を接着固定する接着剤に対する濡れ性を向上させる表面処理が施されていることで、接着剤が実装基板上に均一に広がり、十分な接着強度が得られるので、信頼性が向上する。
【0024】
以上のことから、光結合の特性に優れ、長期にわたり信頼性の高い光導波路モジュールを、低コストで提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の光導波路モジュールの実施の形態について説明する。
【0026】
<第1の実施の形態の光導波路モジュールの構成例>
図1は第1の実施の形態の光導波路モジュールの一例を示す構成図で、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のA−A断面図、図1(c)は図1(a)のB−B断面図である。
【0027】
第1の実施の形態の光導波路モジュール1Aは、平面型の光導波路を構成する導波路シート2と、導波路シート2を支持する実装基板3を備える。導波路シート2は、例えば高分子材料で構成され、平行に配置された複数本のコア4と、下部クラッド5a及び上部クラッド5bを備えて、コア・クラッド構造を有する。コア4は、屈折率が下部クラッド5a及び上部クラッド5bより若干大きくなるように構成されて、光がコア4に閉じ込められて伝搬される。
【0028】
導波路シート2は、一方の端部に傾斜端面6を備える。傾斜端面6は、導波路シート2の端部を導波路シート2の下面に対して45度に傾斜させて構成され、各コア4の端面が露出する。コア4の端面は傾斜端面6と同じ45度の斜面であり、傾斜端面6に露出するコア4の端面によって反射面6aが構成される。
【0029】
実装基板3は、例えばシリコン(Si)基板であり、表面に導波路シート2が実装される。また、実装基板3は、面型発光素子(VCSEL)7と、面型受光素子(PD)8が、導波路シート2のコア4のピッチに合わせて実装される。
【0030】
更に、実装基板3は、導波路シート2の各コア4の反射面6aに対向させて面型発光素子7及び面型受光素子8を実装するため実装凹部9を備える。実装凹部9は、実装基板3の表面の一部を凹状にして形成され、底面には電極パッド9aを備える。
【0031】
面型発光素子7は、発光部7aが導波路シート2の所定のコア4の反射面6aと対向するように実装凹部9に実装され、電極パッド9aと電気的に接続される。また、ボンディングパッド7bが図示しない電子部品とワイヤボンディングにより電気的に接続される。
【0032】
面型受光素子8は、受光部8aが所定のコア4の反射面6aと対向するように実装凹部9に実装され、電極パッド9aと電気的に接続される。また、ボンディングパッド8bが図示しない電子部品とワイヤボンディングにより電気的に接続される。
【0033】
実装凹部9は、個々の面型発光素子7及び面型受光素子8に対応して独立して形成され、各実装凹部9の両側には、導波路支持部10が形成される。導波路支持部10は、導波路シート2が実装される実装基板3の表面と同一の平面で構成され、導波路シート2の一方の端部側を支持する。
【0034】
導波路シート2は、接着剤11により実装基板3に接着固定される。接着剤11による接着位置11aは、実装基板3の上面で、導波路シート2と接する箇所の全面であり、導波路シート2と接しない実装凹部9の両側の導波路支持部10も接着位置11aとなる。
【0035】
なお、光導波路モジュール1Aは、図示しない光ファイバが接続されて、導波路シート2のコア4と光学的に結合している。例えば、実装基板3に形成した図示しないガイド溝に光ファイバを嵌めて、導波路シート2のコア4と光ファイバとの位置合わせを行う構成を備えても良いし、導波路シート2に形成した図示しないガイド溝に光ファイバを嵌めて、導波路シート2のコア4と光ファイバとの位置合わせを行う構成を備えても良い。
【0036】
<第1の実施の形態の光導波路モジュールの動作例>
光導波路モジュール1Aは、電気信号が面型発光素子7で光信号に変換される。面型発光素子7は、実装基板3の表面に対して鉛直方向に光を出射する。これにより、面型発光素子7の発光部7aから出射された出力光信号は、導波路シート2の傾斜端面6の下面から入射し、対向するコア4の反射面6aで反射することで光の伝搬方向が90度変換されて、導波路シート2のコア4を伝搬される。そして、導波路シート2のコア4を伝搬された光信号は、図示しない光ファイバを伝搬されて対向機器で受光される。
【0037】
図示しない対向機器から出力され、光ファイバを伝搬された入力光信号は、導波路シート2のコア4を伝搬され、反射面6aで反射することで光の伝搬方向が90度変換される。面型受光素子8は、実装基板3の表面に対して鉛直方向からの光が入射される。これにより、導波路シート2においてコア4の反射面6aで反射した光信号は、傾斜端面6の下面から出射して、対向する面型受光素子8の受光部8aで受光され、面型受光素子8で電気信号に変換される。
【0038】
<実装基板の製造工程例>
図2は実装基板3の製造工程例を示す工程説明図で、次に、第1の実施の形態の光導波路モジュール1Aを構成する実装基板3の製造工程について説明する。
【0039】
実装基板3を形成する材料として、表面に熱酸化膜12aのあるシリコン基板12(結晶方位<100>)を用いる。まず、図1で説明した面型発光素子7及び面型受光素子8を実装する実装凹部9を作成する位置が開口するように、図2(a)に示すようにシリコン基板12の表面に所定の開口部13aを有するフォトレジスト13をパターンニングする。
【0040】
その後、フッ素系ガスを用いたイオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)により、開口部分の熱酸化膜12aを除去する。マスクしたフォトレジスト13は、酸素プラズマによるアッシングにより除去する。
【0041】
次に、図2(b)に示すように、シリコン基板12を例えば70℃のKOH水溶液(濃度20wt%)に入れてシリコンのエッチングを行い、実装凹部9を形成する。
【0042】
次に、図2(c)に示すように、実装凹部9の底面に所定のパターンで電極パッド9aを形成する。本例では、電極パッド9aの構成は、下層からチタン(Ti)、白金(Pt)、金(Au)の3層構造とし、金属膜形成には蒸着を用い、パターン形成にはフォトレジストを用いたリフトオフ工程により電極パット9aを形成する。
【0043】
金属膜形成の方法としては、蒸着の他にもメッキやスパッタ等でもよい。また、パターン形成もエッチングによる方法を用いても良い。
【0044】
そして、ウエハ状態で作製を行った場合は、最後に実装基板3の形態にダイシングして、実装凹部9を備えた実装基板3が完成する。
【0045】
<第1の実施の形態の導波路シートの製造工程例>
図3は導波路シート2の製造工程例を示す説明図で、次に、第1の実施の形態の光導波路モジュール1Aを構成する導波路シート2の製造工程について説明する。
【0046】
まず、図3(a)に示すように、下部クラッド5aを構成する紫外線硬化型の高分子材料をスピンコート等により支持基板14上に塗布し、プリベークを行った後、紫外線を照射して薄膜を硬化させ、下部クラッド5aを形成する。
【0047】
次に、図3(b)に示すように、コア4を構成する紫外線硬化型の高分子材料をスピンコート等により下部クラッド5a上に塗布し、コア4のパターンが形成された図示しないマスクを介して紫外線を照射することでコア4を形成する部位を硬化させ、溶液現像によってコア4の形成部位以外を除去して、所定のパターンでコア4を形成する。コア4を構成する高分子材料は、下部クラッド5a及び上部クラッド5bを構成する高分子材料より若干屈折率が大きい材料を用いる。
【0048】
次に、図3(c)に示すように、上部クラッド5bを構成する紫外線硬化型の高分子材料をスピンコート等により下部クラッド5a及びコア4上に塗布し、プリベークを行った後、紫外線照射及びポストベークを行って薄膜を硬化させ、上部クラッド5bを形成する。本例では、上部クラッド5bを構成する高分子材料は、下部クラッド5aを構成する高分子材料と同じ材料を用いているが、下部クラッド5aと屈折率がほぼ等しければ、別の材料を用いることも可能である。
【0049】
次に、図1で説明した傾斜端面6が形成される辺となる部分を、図3(d)に示すように、45度の角度を持つダイシングプレートを用いてダイシングすることで、傾斜端面6及び反射面6aを形成する。また、他の辺となる部分は、90度の角度を持つダイシングプレートを用いてダイシングすることで、所定の形状の導波路シート2を切り出す。
【0050】
そして、図3(e)に示すように、導波路シート2を支持基板14から剥離して、導波路シート2が完成する。
【0051】
なお、以上の例では、紫外線硬化型の高分子材料を用いてフォトリソグラフィプロセスによりコア4のパターンを形成したが、熱硬化型の樹脂を用いて金型成形によってパターンニングする方法や、金属マスク等でマスクしてRIEでパターンを転写して形成する方法等もある。
【0052】
<第1の実施の形態の光導波路モジュールの製造工程例>
図2で説明した工程で作製した実装基板3に、面型発光素子7及び面型受光素子8等を実装すると共に、図3で説明した工程で作製した導波路シート2を実装して、図1に示すような光導波路モジュール1Aが形成される。
【0053】
以下に、光導波路モジュール1A全体の製造工程例を説明すると、図2で説明した工程で作製した実装基板3の実装凹部9に、面型発光素子7及び面型受光素子8と、図示しない電子部品等を実装し、ワイヤボンディング等により電気的な接続を行う。
【0054】
次に、図3で説明した工程で作製した導波路シート2を、各コア4の反射面6aが、対応する面型発光素子7の発光部7a及び面型受光素子8の受光部8aの真上にくるように位置合わせを行い、接着剤11で実装基板3に固定する。
【0055】
導波路シート2は光を透過するので、接着剤11には可視光(405,436nm)硬化型の接着剤を使用し、導波路シート2の位置合わせ後に可視光を照射して接着剤11を硬化させ、導波路シート2を実装基板3に接着固定する。
【0056】
ここで、導波路シート2の傾斜端面6側の端部は実装凹部9上に位置する。このため、隣り合う実装凹部9の間の導波路支持部10にも接着剤11が塗布されて、導波路シート2が実装基板3に接着されるようにする。
【0057】
このように、面型発光素子7及び面型受光素子8を実装するために形成される実装凹部9の両側に導波路支持部10を備えて導波路シート2を支持できるようにすることで、導波路シート2において、面型発光素子7あるいは面型受光素子8との光結合のため、実装基板3に接着固定できず空中でフリーとなる部分の両側が実装基板3に固定される。これにより、フリーとなる部分が少なくなるので、熱による導波路シート2の伸縮や、長期的な使用による導波路シート2の反り等の変形による結合損失の増加を低減することができる。
【0058】
上述したように、実装基板3に実装凹部9を形成して面型発光素子7及び面型受光素子8を実装し、傾斜端面6による反射面6aを有する導波路シート2を実装基板3に実装して、導波路シート2と面型発光素子7及び面型受光素子8との光結合を行う構成では、実装凹部9は、面型発光素子7及び面型受光素子8が実装基板3の表面から突出しない深さとする必要がある。
【0059】
また、面型発光素子7及び面型受光素子8と導波路シート2とのギャップが広いと、光の結合効率が低下するので、面型発光素子7及び面型受光素子8と導波路シート2とのギャップは厳密にコントロールする必要がある。
【0060】
このため、実装基板3はシリコン基板で形成すると良い。実装基板3にシリコンを用いることにより、異方性エッチングによって高精度な実装凹部9を容易に形成することができるため、面型発光素子7及び面型受光素子8との間のギャップを精密にコントロールすることができ、良好な光結合を得ることができる。また、導波路支持部10の形成部位を残して実装凹部9を形成できるので、隣り合う実装凹部9の間に導波路支持部10を形成することができる。更に、シリコンは熱伝導率が高く、良好な放熱特性を得ることができる。
【0061】
<第2の実施の形態の光導波路モジュールの構成例>
図4は第2の実施の形態の光導波路モジュールの一例を示す構成図で、図4(a)は平面図、図4(b)は図4(a)のC−C断面図、図4(c)は図4(a)のD−D断面図である。以下の説明で、第1の実施の形態の光導波路モジュール1Aと同じ構成については同じ番号を付して説明する。
【0062】
第2の実施の形態の光導波路モジュール1Bは 導波路シート2を支持する実装基板3に面型発光素子7及び面型受光素子8を実装する実装凹部9を形成し、実装凹部9の両側で導波路シート2の下側となる位置には導波路支持部10を形成すると共に、各実装凹部9の間で導波路シート2より外側となる位置には連結凹部9bを形成し、各実装凹部9の後方を連結凹部9bで連結したものである。
【0063】
連結凹部9bは、実装凹部9と同様に実装基板3の表面の一部を凹状にして形成され、上述したエッチングによる実装凹部9の形成プロセスで実装凹部9と一括して形成される。
【0064】
更に、第2の実施の形態の光導波路モジュール1Bは、連結凹部9bを利用して、各実装凹部9に透明樹脂15が充填される。透明樹脂15は、耐湿性を有し、かつ、導波路シート2と同等の屈折率を有する透明な樹脂であり、例えばポリイミドシリコンを利用する。
【0065】
各実装凹部9では、面型発光素子7及び面型受光素子8と、導波路シート2において光が入出射する導波路シート2の下端面との間に透明樹脂15が充填される。これにより、導波路シート2の入射端面における反射による過剰損失の低減と、反射戻り光による面型発光素子7の出力モードの変化等を抑えて、導波路シート2からの出力光を安定化することが可能となる。
【0066】
また、透明樹脂15として耐湿性のある材料を利用することで、面型発光素子7及び面型受光素子8への水分を遮蔽することができるため、面型発光素子7及び面型受光素子8の信頼性を向上させることが可能となる。
【0067】
そして、第2の実施の形態の光導波路モジュール1Bでは、各実装凹部9が連結凹部9bで連結されているので、各実装凹部9に透明樹脂15を充填する工程において、一度の充填で連結凹部9bを介して全ての実装凹部9に透明樹脂15を充填できるので、工程を簡易にすることができる。
【0068】
なお、第1の実施の形態の光導波路モジュール1Aのように、独立した形態の実装凹部9に透明樹脂15を充填する構成とすることもできるが、個々の実装凹部9は体積が小さく、充填する透明樹脂15の量のコントロールが難しい。これに対して、各実装凹部9を連結凹部9bで連結することで、実装凹部9が分割されている場合に比較して凹部の体積が大きくなるため、充填する透明樹脂15のコントロールが容易となり、透明樹脂15の実装工程を容易に行うことができる。
【0069】
ここで、第2の実施の形態の光導波路モジュール1Bにおいても、実装凹部9の両側で導波路シート2の下側となる位置には導波路支持部10が形成され、導波路シート2において、面型発光素子7あるいは面型受光素子8との光結合のため、実装基板3に接着固定できず空中でフリーとなる部分の両側が実装基板3に固定される。
【0070】
これにより、第1の実施の形態の光導波路モジュール1Aと同様に、導波路シート2においてフリーとなる部分が少なくなるので、熱による導波路シート2の伸縮や、長期的な使用による導波路シート2の反り等の変形による結合損失の増加を低減することができる。
【0071】
<第3の実施の形態の光導波路モジュールの構成例>
図5は第3の実施の形態の光導波路モジュールの一例を示す構成図で、図5(a)は平面図、図5(b)は図5(a)のE−E断面図である。以下の説明で、第1の実施の形態の光導波路モジュール1Aと同じ構成については同じ番号を付して説明する。
【0072】
第3の実施の形態の光導波路モジュール1Cは、平面型の光導波路を構成する導波路シート2と、導波路シート2を支持する実装基板3を備える。導波路シート2は、例えば高分子材料で構成され、第1のコア4a及び第2のコア4bと、下部クラッド5a及び上部クラッド5bを備えて、コア・クラッド構造を有する。第1のコア4a及び第2のコア4bは、屈折率が下部クラッド5a及び上部クラッド5bより若干大きくなるように構成されて、光が第1のコア4a及び第2のコア4bに閉じ込められて伝搬される。
【0073】
第1のコア4aと第2のコア4bは交差部4cで交差し、交差部4cにおける第1のコア4aと第2のコア4bの交差角は90度である。交差部4cは、導波路シート2の一の辺に位置し、交差部4cが位置する導波路シート2の一の辺は、第1のコア4a及び第2のコア4bに対して45度の角度で延在している。また、第2のコア4bの端部が位置する導波路シート2の他の辺は、第2のコア4bに対して90度の角度で延在している。
【0074】
そして、交差部4cが位置する導波路シート2の一の辺は、導波路シート2の下面に対して45度に傾斜させて第1の傾斜端面16aを備え、第2のコア4bの端部が位置する導波路シート2の他の辺は、導波路シート2の下面に対して45度に傾斜させて第2の傾斜端面16bを備える。
【0075】
第1の傾斜端面16aは、第1のコア4a及び第2のコア4bの交差部4cにおける端面が露出して第1の反射面17aが形成される。また、第2の傾斜端面16bは、第2のコア4bの端面が露出して第2の反射面17bが形成される。
【0076】
導波路シート2は、第1のコア4aと第2のコア4bの交差部4cに形成される第1の反射面17aと対向した下面側に波長選択フィルタ18を備える。波長選択フィルタ18は、任意の波長領域における光を選択的に反射及び透過させる機能を有し、例えば、波長λ1の光は反射し、波長λ2の光は透過するように構成される。本例では、波長選択フィルタ18は、後述するように導波路シート2の下部クラッド5a内に形成される。
【0077】
実装基板3は、例えばシリコン(Si)基板であり、表面に導波路シート2が実装される。また、実装基板3は、面型発光素子(VCSEL)7と、面型受光素子(PD)8が実装される。
【0078】
更に、実装基板3は、導波路シート2の第1の反射面17aに対向させて面型受光素子8を実装し、第2の反射面17bに対向させて面型発光素子7を実装するため、実装凹部9を備える。実装凹部9は、実装基板3の表面の一部を凹状にして形成され、底面には電極パッド9aを備える。
【0079】
面型発光素子7は、発光部7aが導波路シート2の第2の反射面17bと対向するように実装凹部9に実装され、電極パッド9aと電気的に接続される。また、ボンディングパッド7bが図示しない電子部品とワイヤボンディングにより電気的に接続される。
【0080】
面型受光素子8は、受光部8aが第1の反射面17aと対向するように実装凹部9に実装され、電極パッド9aと電気的に接続される。また、ボンディングパッド8bが図示しない電子部品とワイヤボンディングにより電気的に接続される。
【0081】
実装凹部9は、面型発光素子7及び面型受光素子8に対応して独立して形成され、各実装凹部9の両側には、導波路支持部10が形成される。導波路支持部10は、導波路シート2が実装される実装基板3の表面と同一の平面で構成され、導波路シート2の端部側を支持する。
【0082】
導波路シート2は、接着剤11により実装基板3に接着固定される。接着剤11による接着位置は、実装基板3の上面で、導波路シート2と接する箇所の全面であり、導波路シート2と接しない実装凹部9の両側の導波路支持部10も接着位置となる。
【0083】
なお、光導波路モジュール1Cは、図示しない光ファイバが接続されて、導波路シート2の第1のコア4aと光学的に結合している。例えば、実装基板3に形成した図示しないガイド溝に光ファイバを嵌めて、導波路シート2の第1のコア4aと光ファイバとの位置合わせを行う構成を備えても良いし、導波路シート2に形成した図示しないガイド溝に光ファイバを嵌めて、導波路シート2の第1のコア4aと光ファイバとの位置合わせを行う構成を備えても良い。
【0084】
<第3の実施の形態の光導波路モジュールの動作例>
光導波路モジュール1Cは、図示しない対向機器からの入力信号が波長λ2(例えば、λ2=790nm)の光信号で光ファイバを介して導波路シート2に入射される。導波路シート2に入射された入力光信号は、第1のコア4aを伝搬され、第1の反射面17aで反射することで光の伝搬方向が90度変換されて、波長選択フィルタ18に入射する。
【0085】
波長選択フィルタ18は、上述したように波長λ2の光は透過するので、第1の反射面17aで反射した図示しない対向機器からの光信号は、波長選択フィルタ18を透過して導波路シート2の第1の傾斜端面16aの下面側から出射し、面型受光素子8の受光部8aで受光されて、面型受光素子8で電気信号に変換される。
【0086】
一方、光導波路モジュール1Cでは、電気信号が面型発光素子7で光信号に変換される。ここで、面型発光素子7の発振波長はλ1(例えば、λ1=850nm)とする。面型発光素子7の発光部7aから出射された出力光信号は、導波路シート2の第2の傾斜端面16bの下面側から入射し、第2の反射面17bで反射することで光の伝搬方向が90度変換されて、導波路シート2の第2のコア4bを伝搬される。
【0087】
導波路シート2の第2のコア4bを伝搬された光信号は、第1の反射面17aで反射することで光の伝搬方向が90度変換されて、波長選択フィルタ18に入射する。
【0088】
波長選択フィルタ18は、上述したように波長λ1の光は反射するので、第1の反射面17aで反射した面型発光素子7からの光信号は、波長選択フィルタ18で反射して再度第1の反射面17aで反射することで光の伝搬方向が90度変換されて、第1のコア4aを伝搬される。そして、導波路シート2の第1のコア4aを伝搬された光信号は、図示しない光ファイバを伝搬されて対向機器で受光される。
【0089】
図示しない対向機器では、光導波路モジュール1Cと対になる光導波路モジュールとして、光導波路モジュール1Cと同じ構成で、かつ、波長λ1の光は透過し、波長λ2の光は反射する波長選択フィルタと、発振波長λ2の面型発光素子を備えた光導波路モジュールを用いることで、複数の異なる波長の光信号の分離多重化を行って、1本の光ファイバに複数の異なる波長の光信号を伝送させることが可能となる。
【0090】
これにより、光導波路モジュール1Cを備えることで、波長多重双方向光通信(WDM)が行われるシステムの構築が可能となる。
【0091】
<第3の実施の形態の導波路シートの製造工程例>
図6は導波路シート2の製造工程例を示す説明図で、次に、第3の実施の形態の光導波路モジュール1Cを構成する導波路シート2の製造工程について説明する。
【0092】
まず、図6(a)に示すように、下部クラッド5aの第1層を構成する紫外線硬化型の高分子材料をスピンコート等により支持基板14上に塗布し、プリベークを行った後、紫外線を照射して薄膜を硬化させ、下部クラッド第1層5a(1)を形成する。
【0093】
次に、図6(b)に示すように、下部クラッド第1層5a(1)上の所定の位置に、波長選択フィルタ18を構成する誘電体多層膜を形成する。本例では、まず、フォトレジストを塗布し、誘電体多層膜を形成したい部分はパターンニングして取り除く。次に誘電体多層膜を蒸着によって下部クラッド第1層5a(1)の全面に形成した後、溶液でフォトレジストをエッチングして、フォトレジストとフォトレジスト上の誘電体多層膜を取り除くリフトオフ工程によって、所望の場所にのみ誘電体多層膜による波長選択フィルタ18を形成する。
【0094】
次に、図6(c)に示すように、下部クラッド第1層5a(1)と同様の工程によって、下部クラッド第1層5a(1)の上に下部クラッド第2層5a(2)を形成する。これにより、下部クラッド第1層5a(1)と下部クラッド第2層5a(2)の間の所定の位置に、波長選択フィルタ18を挟み込んだ形態で下部クラッド5aが形成される。
【0095】
次に、図6(d)に示すように、第1のコア4a及び第2のコア4bを構成する紫外線硬化型の高分子材料をスピンコート等により下部クラッド5a上に塗布し、第1のコア4a及び第2のコア4bのパターンが形成された図示しないマスクを介して紫外線を照射することで第1のコア4a及び第2のコア4bを形成する部位を硬化させ、溶液現像によってコアの形成部位以外を除去して、所定のパターンで第1のコア4a及び第2のコア4bを形成する。第1のコア4a及び第2のコア4bを構成する高分子材料は、下部クラッド5a及び上部クラッド5bを構成する高分子材料より若干屈折率が大きい材料を用いる。
【0096】
次に、図6(e)に示すように、上部クラッド5bを構成する紫外線硬化型の高分子材料をスピンコート等により下部クラッド5a及び第1のコア4a及び第2のコア4b上に塗布し、プリベークを行った後、紫外線照射及びポストベークを行って薄膜を硬化させ、上部クラッド5bを形成する。本例では、上部クラッド5bを構成する高分子材料は、下部クラッド5aを構成する高分子材料と同じ材料を用いているが、下部クラッド5aと屈折率がほぼ等しければ、別の材料を用いることも可能である。
【0097】
次に、図5で説明した第1の傾斜端面16a及び第2の傾斜端面16bが形成される辺となる部分を、図6(f)に示すように、45度の角度を持つダイシングプレートを用いてダイシングすることで、第1の傾斜端面16a及び第1の反射面17aと、第2の傾斜端面16b及び第2の反射面17bを形成する。また、他の辺となる部分は、90度の角度を持つダイシングプレートを用いてダイシングすることで、所定の形状の導波路シート2を切り出す。
【0098】
そして、図6(g)に示すように、導波路シート2を支持基板14から剥離して、導波路シート2が完成する。
【0099】
なお、以上の例では、紫外線硬化型の高分子材料を用いてフォトリソグラフィプロセスにより第1のコア4a及び第2のコア4bのパターンを形成したが、熱硬化型の樹脂を用いて金型成形によってパターンニングする方法や、金属マスク等でマスクしてRIEでパターンを転写して形成する方法等もある。
【0100】
<第3の実施の形態の光導波路モジュールの製造工程例>
以下に、光導波路モジュール1C全体の製造工程例を説明する。なお、実装基板3の製造工程は、図2で説明した工程と同じで良い。まず、実装基板3の実装凹部9に、面型発光素子7及び面型受光素子8と、図示しない電子部品等を実装し、ワイヤボンディング等により電気的な接続を行う。
【0101】
次に、図6で説明した工程で作製した導波路シート2を、第1の反射面17aが面型受光素子8の受光部8aの真上に位置し、かつ、第2の反射面17bが面型発光素子7の発光部7aの真上に位置するように位置合わせを行い、接着剤11で実装基板3に固定する。
【0102】
導波路シート2は光を透過するので、接着剤11には可視光(405,436nm)硬化型の接着剤を使用し、導波路シート2の位置合わせ後に可視光を照射して接着剤11を硬化させ、導波路シート2を実装基板3に接着固定する。
【0103】
そして、第1のコア4aの他方の端面を露出させた導波路シート2の垂直カット辺に図示しない光ファイバを接合することで、上述したように、波長多重双方向光通信が行える光導波路モジュール1Cが完成する。
【0104】
以上のように、導波路シート2の端面に第1の傾斜端面16aを形成し、この第1の傾斜端面16aによる第1の反射面17aの直下に波長選択フィルタ18を配置すると共に、第1のコア4a及び第2のコア4bを第1の反射面17aの下で分岐する構成とすることで、面型発光素子7及び面型受光素子8を利用して波長多重双方向光通信が行える光導波路モジュール1Cを、容易な組み立て工程で実現することが可能となる。
【0105】
また、波長選択フィルタ18を導波路シート2内に集積して作製するプロセスも可能であるので、波長選択フィルタ18の実装工程を省くことができる。
【0106】
なお、以上の構成では、下部クラッド5aを2層にしてその間に波長選択フィルタ18を形成したが、下部クラッド5aを2層に分けずに1層の下部クラッド5aとして形成し、その上に波長選択フィルタ18を形成した後に、コア層を形成する構成としても良い。
【0107】
このような構成では、第1の反射面17aで反射した光が下部クラッド5aに出て拡散することなく波長選択フィルタ18で反射されて、第2のコア4bに結合されるため、結合損失を低減することができる。但し、第1のコア4a及び第2のコア4bの直下に波長選択フィルタ18が存在するので、波長選択フィルタ18の形成部位ではコアにおける光の伝搬損失が増大する。よって、波長選択フィルタ18は、なるべく光が反射する部分のみに形成する必要がある。
【0108】
<第4の実施の形態の光導波路モジュールの構成例>
図7は第4の実施の形態の光導波路モジュールの一例を示す構成図で、図7(a)は平面図、図7(b)は図7(a)のF−F断面図である。以下の説明で、第3の実施の形態の光導波路モジュール1Cと同じ構成については同じ番号を付して説明する。
【0109】
第4の実施の形態の光導波路モジュール1Dは、波長選択フィルタ18を導波路シート2内に集積せず、導波路シート2の第1の反射面17aと対向する下部クラッド5aの下面に、別途作製した波長選択フィルタ18を貼り付けた構成である。更に、波長選択フィルタ18の大きさを、面型受光素子8が実装される実装凹部9の大きさに合わせてある。
【0110】
他の構成及び動作は第3の光導波路モジュール1Cと同様である。さて、波長選択フィルタ18を下部クラッド5aの下面に貼り付け、その大きさを、面型受光素子8が実装される実装凹部9の大きさに合わせることで、面型発光装置7から出射され、第2のコア4bに結合せずにクラッド層に結合した迷光が、第1の傾斜端面16aで面型受光素子8方向に反射しても、波長選択フィルタ18で反射され、導波路シート2の下面からは出射しない。これにより、迷光が多重反射により面型受光素子8に入射してクロストークとなることを防ぐことができる。
【0111】
なお、第3の実施の形態及び第4の実施の形態では、信号が入出力されるコアは1本であるが、多数本のコアを所定のパターンで配置して、マルチチャンネルで送受信を行う光導波路モジュールを構成することも可能である。
【0112】
<第5の実施の形態の光導波路モジュールの構成例>
上述した第1〜第4の実施の形態の光導波路モジュール1は、フィルム化した導波路シート2を実装基板3に接着剤11で貼り付けているが、実装基板3に対する接着剤11の濡れ性が悪いと、導波路シート2に均一に接着剤11が付かず、接着強度が低下する。
【0113】
接着剤11が均一に付かないと、特に、温湿度の影響による接着強度の低下が顕著に見られ、接着強度の低下から導波路シート2の位置ずれを生じ、光素子との結合に問題を生じる。このため、導波路シート2を実装基板3に貼り付ける前に、実装基板3の表面に表面処理を行う。
【0114】
図8は第5の実施の形態の光導波路モジュール1Eの要部構成を示す断面図である。光導波路モジュール1Eは、例えば、図1に示す光導波路モジュール1Aと同様に、フィルム化した導波路シート2が実装基板3に接着剤11により貼り付けられている。
【0115】
導波路シート2は、例えば高分子材料で構成され、コア4と下部クラッド5a及び上部クラッド5bを備えて、コア・クラッド構造を有する。また、実装基板3はシリコン基板である。
【0116】
そして、実装基板3上に塗布された表面処理剤19上に接着剤11を塗布することで、実装基板3に対する接着剤11の濡れ性を向上させている。表面処理剤19としては、シランカップリング剤を用いる。
【0117】
<第5の実施の形態の光導波路モジュールの製造工程例>
図9は第5の実施の形態の光導波路モジュールの製造工程例を示す説明図で、以下に、第5の実施の形態における光導波路モジュール1Eの製造工程例を説明する。なお、実装基板3の製造工程は、例えば図2で説明した工程と同じで良く、導波路シート2の製造工程は、例えば図3で説明した工程と同じで良い。
【0118】
まず、図1等に示す実装凹部9が形成された実装基板3の表面に、図9(a)に示すように、表面処理剤19としてシランカップリング剤を塗布する。次に、図1等に示すように、実装基板3の実装凹部9に、面型発光素子7及び面型受光素子8と、図示しない電子部品等を実装し、ワイヤボンディング等により電気的な接続を行う。
【0119】
次に、図9(b)に示すように、実装基板3上に塗布された表面処理剤(シランカップリング剤)19上に例えば可視光硬化型の接着剤11を塗布し、図3で説明した工程で作製した導波路シート2の位置合わせを行った後、可視光を照射して接着剤11を硬化させ、導波路シート2を実装基板3に接着固定する。
【0120】
<第5の実施の形態の光導波路モジュールの効果>
具体的な実施例として、図3に示すプロセスで支持基板14上に厚さ約30μmの下部クラッド5a、断面形状が四角形で、そのサイズが約40×40μmのコア4、厚さ約30μmの上部クラッド5bを順次積層形成して導波路シート2を作製した。そして、傾斜端面6をダイシングにより形成し、支持基板14から剥離して厚さ約100μmのフィルム状の導波路シート2を作製した。
【0121】
実装基板3は、図2に示すプロセスで作製した。この実装基板3の表面に、表面処理剤19として5w%のシランカップリング剤水溶液を塗布し、100℃5分で乾燥させた。シランカップリング剤としては、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシランを用いた。
【0122】
その後、表面処理剤(シランカップリング剤)19上に接着剤11を塗布し、導波路シート2を接着固定して図8に示すような断面構造の光導波路モジュール1Eを作製した。
【0123】
図10は比較例の光導波路モジュールの一例を示す断面図である。比較例の光導波路モジュールは、図2に示すプロセスで作製した実装基板3上に、表面処理剤(シランカップリング剤)19を塗布せずに、接着剤11を塗布して、図3に示すプロセスで作製した導波路シート2を接着固定したものである。導波路シート2の構成は、図8に示す例と同じにした。
【0124】
実装基板3上に表面処理剤(シランカップリング剤)19を塗布した実施例では、接着剤11の実装基板3への濡れ性が良く、接着剤11が実装基板3上に均一に広がり、実装基板3へ導波路シート2を接着した場合に実装基板3と導波路シート2の間に気泡の残留が見られなかった。
【0125】
一方、実装基板3上に表面処理剤(シランカップリング剤)19を塗布しない比較例では、接着剤11が実装基板3上に均一に広がらず、実装基板3へ導波路シート2を接着した場合に実装基板3と導波路シート2の間に気泡が残留し、均一に接着層が作製されなかった。
【0126】
図11はシランカップリング剤の効果を示す説明図で、以下に具体的な効果について説明する。シリコンのような無機質表面に対して、有機溶剤からなる接着剤の濡れ性は悪く、実装基板3の表面処理を行わない場合は、接着剤11が実装基板3と導波路シート2との間に均一に回り込まず、気泡が残留する等接着層にムラが生じる。このような接着ムラが生じた場合、接着強度は低く、特に高温高湿環境下で使用した場合や保管した場合等における接着強度の低下が顕著である。そして、接着強度の低下により導波路シート2が位置ずれし光素子との結合に問題が生じる。
【0127】
これに対して、実装基板3を構成するシリコンの無機質表面をシランカップリング剤で処理すると、図11に示すように、シランカップリング剤と、導波路シート2を構成する有機高分子材料との相互作用により、有機樹脂からなる接着剤11の実装基板3に対する濡れ性を向上させることができる。
【0128】
その結果、実装基板3と導波路シート2との間に均一な接着層が形成され、接着強度が高く、高温高湿環境下等で使用したような場合においても十分な接着強度を保つことができ、信頼性が向上する。
【0129】
なお、表面処理剤19として使用するシランカップリング剤としては、上述した実施例に記載したものに限らず、式R2−Si−(OR1)3で表され、OR1が例えばメトキシ基、エトキシ基等、R2が例えばビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基等である、あらゆるシランカップリング剤を使用することが可能である。
【0130】
具体的には例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリイソプロポキシシラン、トリブトキシシラン、トリオクチロキシシラン、メチルジメトキシシラン、エチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、エチルジエトキシシラン、メチルジオクチロキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルオクチロキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を用いることができる。
【0131】
これらのシランカップリング剤は、相溶性のある各種溶媒で、濃度が0.1〜50w%、好ましくは0.1〜20w%となるよう希釈して使用する。希釈する溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、アセトン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0132】
また、実装基板3はシリコン基板に限らず、例えばガラス基板のようにシランカップリング剤と化学結合を形成するものであれば何でも良い。
【0133】
<第5の実施の形態の光導波路モジュールの変形例>
第5の実施の形態の光導波路モジュール1Eの全体構成としては、第1〜第4の実施の形態の光導波路モジュールの何れの構成であっても良い。更に、他の構成であっても良い。
【0134】
図12は光導波路モジュールの変形例を示す斜視図である。図12に示す光導波路モジュール1Fは、導波路シート2に形成した溝部20に波長選択フィルタ18を挿入して、波長多重双方向光通信が行える光導波路モジュールを構成したものである。
【0135】
図3に示すように、フォトリソグラフィプロセスで導波路シート2を作製する場合は、導波路中に高精度な溝部20を容易に形成することができる。本例では、コア4を略Y字型のパターンとし、その分岐点に溝部20を備える。溝部20は、紫外線硬化型の高分子材料を用いて導波路シート2を構成する場合は、導波路の形成プロセスで所定の形状のマスクを介して紫外線を照射し、溝部20を形成する部位以外を硬化させ、例えば溶液現像によって溝部20の形成部位を除去することで作製される。
【0136】
溝部20及び傾斜端面6を備えた導波路シート2は、図8に示すように、表面処理剤19としてシランカップリング剤で表面処理された実装基板3に、接着剤11により接着固定される。シランカップリング剤を利用する効果は、上述した通りである。
【0137】
波長選択フィルタ18は、例えば波長λ1の光は反射し、波長λ2の光は透過するように構成され、溝部20に挿入されて、接着剤で固定される。
【0138】
以上の構成では、実装凹部9に実装された面型発光素子7から出射された波長λ2の出力光信号は、導波路シート2の傾斜端面6に形成された反射面で反射して、コア4を伝搬される。コア4を伝搬される波長λ2の信号光は、波長選択フィルタ18を透過してコア4に入射し、光ファイバ21へと伝搬される。
【0139】
光ファイバ21から入射した波長λ1の入力信号光は、コア4を伝搬されて波長選択フィルタ18に入射する。波長選択フィルタ18は、波長λ1の光は反射するので、コア4を伝搬される波長λ1の信号光は、波長選択フィルタ18で反射し、コア4を伝搬されて、受光素子22に入射する。
【0140】
このように、光導波路モジュール1Fでは、複数の異なる波長の光信号の分離多重化が行われることで、1本の光ファイバ21に複数の異なる波長の光信号を伝送させることが可能となり、光導波路モジュール1Fを備えることでも、波長多重双方向光通信が行われるシステムの構築が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明は、電子機器のボード間やチップ間の光通信モジュールや、光ファイバを利用した通信ケーブルのコネクタ等に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】第1の実施の形態の光導波路モジュールの一例を示す構成図である。
【図2】実装基板の製造工程例を示す工程説明図である。
【図3】導波路シートの製造工程例を示す説明図である。
【図4】第2の実施の形態の光導波路モジュールの一例を示す構成図である。
【図5】第3の実施の形態の光導波路モジュールの一例を示す構成図である。
【図6】導波路シートの製造工程例を示す説明図である。
【図7】第4の実施の形態の光導波路モジュールの一例を示す構成図である。
【図8】第5の実施の形態の光導波路モジュールの要部構成を示す断面図である。
【図9】第5の実施の形態の光導波路モジュールの製造工程例を示す説明図である。
【図10】比較例の光導波路モジュールの一例を示す断面図である。
【図11】シランカップリング剤の効果を示す説明図である。
【図12】光導波路モジュールの変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0143】
1・・・光導波路モジュール、2・・・導波路シート、3・・・実装基板、4・・・コア、5a・・・下部クラッド、5b・・・上部クラッド、6・・・傾斜端面、6a・・・反射面、7・・・面型発光素子、7a・・・発光部、8・・・面型受光素子、8a・・・受光部、9・・・実装凹部、9a・・・電極パッド、9b・・・連結凹部、10・・・導波路支持部、11・・・接着剤、11a・・・接着位置、12・・・シリコン基板、12a・・・熱酸化膜、13・・・フォトレジスト、13a・・・開口部、14・・・支持基板、15・・・透明樹脂、16a・・・第1の傾斜端面、16b・・・第2の傾斜端面、17a・・・第1の反射面、17b・・・第2の反射面、18・・・波長選択フィルタ、19・・・表面処理剤
【技術分野】
【0001】
本発明は、端部に傾斜した反射面を備えたシート状の光導波路を実装基板に実装して、面型の光素子を利用できるようにした光導波路モジュールに関する。詳しくは、面型の光素子が実装される実装凹部の両側に導波路支持部を備えて、光導波路の端部を支持できるようにしたものである。
【0002】
また、反射面の直下に波長選択フィルタを配置することで、簡単な構成で波長多重双方向光伝送を行えるようにしたものである。
【0003】
更に、実装基板の表面に接着剤の濡れ性を向上させる表面処理を施すことで、実装基板に対する光導波路の接着強度を増加させるものである。
【背景技術】
【0004】
従来より、電子機器内のボード間、チップ間等の情報伝達は電気信号により行われてきたが、更に超高速、大容量の情報伝送を実現するために、光配線技術が注目されており、光配線技術を利用して波長多重双方向光伝送を行えるようにした導波路型の光モジュールが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
従来の光モジュールでは、端面発光型の発光素子(LD)と端面受光型の受光素子(PD)を用いているが、特許文献1の構成では、受光素子を発光素子側とは別の実装用キャリアに実装して光導波路と位置合わせする必要がある。更に、波長多重双方向光伝送を実現する波長フィルタも別部品となっており、導波路端面に固定する必要があり、組立工程が複雑で低コスト化は困難である。
【0006】
これに対して、面型の受発光素子は作製プロセスが端面型のものに比較して容易であることや表面実装に向いていることなどから、端面型のものに比較して低コスト化に対して有利である。特に面型発光素子(VCSEL)は、高速で直接変調が可能であるというメリットもあり、低コストな光モジュール用のデバイスとして非常に有望であり、面型の受発光素子を使用した低コストな光モジュールが求められている。
【0007】
しかし、特許文献1の構成では、発光素子をVCSELに置き換えるためにはさらに別の実装用キャリアが必要となり、組立工程が更に複雑になってしまい、低コスト化が困難であるという問題がある。
【0008】
そこで、実装用キャリアを用いることなく、VCSELを実装できるようにした光モジュールが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
特許文献2の構成では、実装基板に凹部を形成してこの凹部に面型の発光素子あるいは受光素子を実装している。また、光導波路の端部に45度の反射部を形成し、反射部が発光素子あるいは受光素子の直上にくるように、光導波路を実装基板に実装している。
【0010】
【特許文献1】特開2001−305365号公報
【特許文献2】特開平10−300961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
光導波路の端部に45度の反射部を形成して、面型の光素子との光結合を行うためには、光導波路の反射部が形成された端部を凹部に突き出す構成とする必要がある。このため、凹部に突き出した光導波路の反射部が形成された部分は実装基板に対してフリーとなっており、熱等による光導波路の伸縮によって受発光素子との間に位置ずれが発生することを抑えることができないという問題がある。
【0012】
また、長期間の使用時には、光導波路の凹部に突き出した部分に反り等が生じ、やはり受発光素子との間の位置ずれや角度ずれを抑えることができず、過剰損失が発生するという問題がある。
【0013】
更に、実装基板は一般的にシリコンで構成されるが、光導波路を接着固定する接着剤はシリコン基板に対する濡れ性が悪く、接着剤が均一に付かないので、接着強度が不足するという問題がある。そして、接着強度が不足すると、温度の影響等により、光導波路の位置ずれを生じ、受発光素子との間の位置ずれを抑えることができないという問題がある。
【0014】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、光導波路の固定が確実に行え、かつ構成が簡単な光導波路モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決するため、本発明に係る光導波路モジュールは、コアとクラッドを有する光導波路と、光導波路を支持する実装基板とを備えた光導波路モジュールにおいて、光導波路は、少なくとも一の端部に傾斜端面が形成され、傾斜端面に露出したコアの端面によって反射面が形成されると共に、実装基板は、光導波路の下側で反射面と対向する位置に形成され、反射面を介してコアと光結合される面型光素子が実装される実装凹部と、実装凹部の両側に形成され、光導波路を支持する導波路支持部とを備えたものである。
【0016】
本発明に係る光導波路モジュールでは、実装基板の実装凹部に面型光素子を実装し、反射面を介してコアと面型光素子が光結合するように、光導波路を実装基板に実装すると、実装凹部の部分では接着固定が行えないので、光導波路の端部で実装凹部の上部に位置する部分はフリーとなる。これに対して、実装凹部の両側は、導波路支持部を備えることで、光導波路の端部でフリーとなっている部分の両側は、実装基板に対して接着固定が行われる。
【0017】
また、本発明に掛かる光導波路モジュールは、コアとクラッドを有する光導波路と、光導波路を支持する実装基板とを備えた光導波路モジュールにおいて、光導波路は、少なくとも一の端部に傾斜端面が形成され、傾斜端面に露出したコアの端面によって反射面が形成されると共に、反射面の直下に、任意の波長領域の光を選択的に反射及び透過させ、光の波長により光路を切り替える波長選択フィルタを備え、反射面を介してコアと光結合する面型光素子が、反射面と対向した光導波路の下側の実装基板に実装されるものである。
【0018】
本発明に掛かる光導波路モジュールでは、コアを伝搬される光は、反射面で反射して波長選択フィルタに入射される。波長選択フィルタでは、入射した光が波長に応じて反射もしくは透過され、光路が切り替えられる。
【0019】
更に、本発明に掛かる光導波路モジュールは、コアとクラッドを有する光導波路と、光導波路を支持する実装基板とを備えた光導波路モジュールにおいて、実装基板は、光導波路を接着固定する接着剤に対する濡れ性を向上させる表面処理が施されているものである。
【0020】
本発明に掛かる光導波路モジュールでは、実装基板に光導波路を接着固定する際に、実装基板の表面に接着剤の濡れ性を向上させる表面処理剤を塗布した後に、接着剤を塗布して光導波路を貼り付ける。
【発明の効果】
【0021】
本発明の光導波路モジュールによれば、面型光素子を実装するために形成される実装凹部の両側に導波路支持部を備えて光導波路を支持できるようにすることで、光導波路において、面型光素子との光結合のため、実装基板に接着固定できず空中でフリーとなる部分の両側が実装基板に固定される。これにより、フリーとなる部分が少なくなるので、熱による光導波路の伸縮や、長期的な使用による光導波路の反り等の変形による結合損失の増加を低減することができる。
【0022】
また、本発明の光導波路モジュールによれば、光導波路の端面に傾斜端面を形成し、この傾斜端面による反射面の直下に波長選択フィルタを配置することで、面型光素子を利用して波長多重双方向光通信が行える光導波路モジュールを、容易な組み立て工程で実現することが可能となる。
【0023】
更に、本発明の光導波路モジュールによれば、実装基板は、光導波路を接着固定する接着剤に対する濡れ性を向上させる表面処理が施されていることで、接着剤が実装基板上に均一に広がり、十分な接着強度が得られるので、信頼性が向上する。
【0024】
以上のことから、光結合の特性に優れ、長期にわたり信頼性の高い光導波路モジュールを、低コストで提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の光導波路モジュールの実施の形態について説明する。
【0026】
<第1の実施の形態の光導波路モジュールの構成例>
図1は第1の実施の形態の光導波路モジュールの一例を示す構成図で、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のA−A断面図、図1(c)は図1(a)のB−B断面図である。
【0027】
第1の実施の形態の光導波路モジュール1Aは、平面型の光導波路を構成する導波路シート2と、導波路シート2を支持する実装基板3を備える。導波路シート2は、例えば高分子材料で構成され、平行に配置された複数本のコア4と、下部クラッド5a及び上部クラッド5bを備えて、コア・クラッド構造を有する。コア4は、屈折率が下部クラッド5a及び上部クラッド5bより若干大きくなるように構成されて、光がコア4に閉じ込められて伝搬される。
【0028】
導波路シート2は、一方の端部に傾斜端面6を備える。傾斜端面6は、導波路シート2の端部を導波路シート2の下面に対して45度に傾斜させて構成され、各コア4の端面が露出する。コア4の端面は傾斜端面6と同じ45度の斜面であり、傾斜端面6に露出するコア4の端面によって反射面6aが構成される。
【0029】
実装基板3は、例えばシリコン(Si)基板であり、表面に導波路シート2が実装される。また、実装基板3は、面型発光素子(VCSEL)7と、面型受光素子(PD)8が、導波路シート2のコア4のピッチに合わせて実装される。
【0030】
更に、実装基板3は、導波路シート2の各コア4の反射面6aに対向させて面型発光素子7及び面型受光素子8を実装するため実装凹部9を備える。実装凹部9は、実装基板3の表面の一部を凹状にして形成され、底面には電極パッド9aを備える。
【0031】
面型発光素子7は、発光部7aが導波路シート2の所定のコア4の反射面6aと対向するように実装凹部9に実装され、電極パッド9aと電気的に接続される。また、ボンディングパッド7bが図示しない電子部品とワイヤボンディングにより電気的に接続される。
【0032】
面型受光素子8は、受光部8aが所定のコア4の反射面6aと対向するように実装凹部9に実装され、電極パッド9aと電気的に接続される。また、ボンディングパッド8bが図示しない電子部品とワイヤボンディングにより電気的に接続される。
【0033】
実装凹部9は、個々の面型発光素子7及び面型受光素子8に対応して独立して形成され、各実装凹部9の両側には、導波路支持部10が形成される。導波路支持部10は、導波路シート2が実装される実装基板3の表面と同一の平面で構成され、導波路シート2の一方の端部側を支持する。
【0034】
導波路シート2は、接着剤11により実装基板3に接着固定される。接着剤11による接着位置11aは、実装基板3の上面で、導波路シート2と接する箇所の全面であり、導波路シート2と接しない実装凹部9の両側の導波路支持部10も接着位置11aとなる。
【0035】
なお、光導波路モジュール1Aは、図示しない光ファイバが接続されて、導波路シート2のコア4と光学的に結合している。例えば、実装基板3に形成した図示しないガイド溝に光ファイバを嵌めて、導波路シート2のコア4と光ファイバとの位置合わせを行う構成を備えても良いし、導波路シート2に形成した図示しないガイド溝に光ファイバを嵌めて、導波路シート2のコア4と光ファイバとの位置合わせを行う構成を備えても良い。
【0036】
<第1の実施の形態の光導波路モジュールの動作例>
光導波路モジュール1Aは、電気信号が面型発光素子7で光信号に変換される。面型発光素子7は、実装基板3の表面に対して鉛直方向に光を出射する。これにより、面型発光素子7の発光部7aから出射された出力光信号は、導波路シート2の傾斜端面6の下面から入射し、対向するコア4の反射面6aで反射することで光の伝搬方向が90度変換されて、導波路シート2のコア4を伝搬される。そして、導波路シート2のコア4を伝搬された光信号は、図示しない光ファイバを伝搬されて対向機器で受光される。
【0037】
図示しない対向機器から出力され、光ファイバを伝搬された入力光信号は、導波路シート2のコア4を伝搬され、反射面6aで反射することで光の伝搬方向が90度変換される。面型受光素子8は、実装基板3の表面に対して鉛直方向からの光が入射される。これにより、導波路シート2においてコア4の反射面6aで反射した光信号は、傾斜端面6の下面から出射して、対向する面型受光素子8の受光部8aで受光され、面型受光素子8で電気信号に変換される。
【0038】
<実装基板の製造工程例>
図2は実装基板3の製造工程例を示す工程説明図で、次に、第1の実施の形態の光導波路モジュール1Aを構成する実装基板3の製造工程について説明する。
【0039】
実装基板3を形成する材料として、表面に熱酸化膜12aのあるシリコン基板12(結晶方位<100>)を用いる。まず、図1で説明した面型発光素子7及び面型受光素子8を実装する実装凹部9を作成する位置が開口するように、図2(a)に示すようにシリコン基板12の表面に所定の開口部13aを有するフォトレジスト13をパターンニングする。
【0040】
その後、フッ素系ガスを用いたイオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)により、開口部分の熱酸化膜12aを除去する。マスクしたフォトレジスト13は、酸素プラズマによるアッシングにより除去する。
【0041】
次に、図2(b)に示すように、シリコン基板12を例えば70℃のKOH水溶液(濃度20wt%)に入れてシリコンのエッチングを行い、実装凹部9を形成する。
【0042】
次に、図2(c)に示すように、実装凹部9の底面に所定のパターンで電極パッド9aを形成する。本例では、電極パッド9aの構成は、下層からチタン(Ti)、白金(Pt)、金(Au)の3層構造とし、金属膜形成には蒸着を用い、パターン形成にはフォトレジストを用いたリフトオフ工程により電極パット9aを形成する。
【0043】
金属膜形成の方法としては、蒸着の他にもメッキやスパッタ等でもよい。また、パターン形成もエッチングによる方法を用いても良い。
【0044】
そして、ウエハ状態で作製を行った場合は、最後に実装基板3の形態にダイシングして、実装凹部9を備えた実装基板3が完成する。
【0045】
<第1の実施の形態の導波路シートの製造工程例>
図3は導波路シート2の製造工程例を示す説明図で、次に、第1の実施の形態の光導波路モジュール1Aを構成する導波路シート2の製造工程について説明する。
【0046】
まず、図3(a)に示すように、下部クラッド5aを構成する紫外線硬化型の高分子材料をスピンコート等により支持基板14上に塗布し、プリベークを行った後、紫外線を照射して薄膜を硬化させ、下部クラッド5aを形成する。
【0047】
次に、図3(b)に示すように、コア4を構成する紫外線硬化型の高分子材料をスピンコート等により下部クラッド5a上に塗布し、コア4のパターンが形成された図示しないマスクを介して紫外線を照射することでコア4を形成する部位を硬化させ、溶液現像によってコア4の形成部位以外を除去して、所定のパターンでコア4を形成する。コア4を構成する高分子材料は、下部クラッド5a及び上部クラッド5bを構成する高分子材料より若干屈折率が大きい材料を用いる。
【0048】
次に、図3(c)に示すように、上部クラッド5bを構成する紫外線硬化型の高分子材料をスピンコート等により下部クラッド5a及びコア4上に塗布し、プリベークを行った後、紫外線照射及びポストベークを行って薄膜を硬化させ、上部クラッド5bを形成する。本例では、上部クラッド5bを構成する高分子材料は、下部クラッド5aを構成する高分子材料と同じ材料を用いているが、下部クラッド5aと屈折率がほぼ等しければ、別の材料を用いることも可能である。
【0049】
次に、図1で説明した傾斜端面6が形成される辺となる部分を、図3(d)に示すように、45度の角度を持つダイシングプレートを用いてダイシングすることで、傾斜端面6及び反射面6aを形成する。また、他の辺となる部分は、90度の角度を持つダイシングプレートを用いてダイシングすることで、所定の形状の導波路シート2を切り出す。
【0050】
そして、図3(e)に示すように、導波路シート2を支持基板14から剥離して、導波路シート2が完成する。
【0051】
なお、以上の例では、紫外線硬化型の高分子材料を用いてフォトリソグラフィプロセスによりコア4のパターンを形成したが、熱硬化型の樹脂を用いて金型成形によってパターンニングする方法や、金属マスク等でマスクしてRIEでパターンを転写して形成する方法等もある。
【0052】
<第1の実施の形態の光導波路モジュールの製造工程例>
図2で説明した工程で作製した実装基板3に、面型発光素子7及び面型受光素子8等を実装すると共に、図3で説明した工程で作製した導波路シート2を実装して、図1に示すような光導波路モジュール1Aが形成される。
【0053】
以下に、光導波路モジュール1A全体の製造工程例を説明すると、図2で説明した工程で作製した実装基板3の実装凹部9に、面型発光素子7及び面型受光素子8と、図示しない電子部品等を実装し、ワイヤボンディング等により電気的な接続を行う。
【0054】
次に、図3で説明した工程で作製した導波路シート2を、各コア4の反射面6aが、対応する面型発光素子7の発光部7a及び面型受光素子8の受光部8aの真上にくるように位置合わせを行い、接着剤11で実装基板3に固定する。
【0055】
導波路シート2は光を透過するので、接着剤11には可視光(405,436nm)硬化型の接着剤を使用し、導波路シート2の位置合わせ後に可視光を照射して接着剤11を硬化させ、導波路シート2を実装基板3に接着固定する。
【0056】
ここで、導波路シート2の傾斜端面6側の端部は実装凹部9上に位置する。このため、隣り合う実装凹部9の間の導波路支持部10にも接着剤11が塗布されて、導波路シート2が実装基板3に接着されるようにする。
【0057】
このように、面型発光素子7及び面型受光素子8を実装するために形成される実装凹部9の両側に導波路支持部10を備えて導波路シート2を支持できるようにすることで、導波路シート2において、面型発光素子7あるいは面型受光素子8との光結合のため、実装基板3に接着固定できず空中でフリーとなる部分の両側が実装基板3に固定される。これにより、フリーとなる部分が少なくなるので、熱による導波路シート2の伸縮や、長期的な使用による導波路シート2の反り等の変形による結合損失の増加を低減することができる。
【0058】
上述したように、実装基板3に実装凹部9を形成して面型発光素子7及び面型受光素子8を実装し、傾斜端面6による反射面6aを有する導波路シート2を実装基板3に実装して、導波路シート2と面型発光素子7及び面型受光素子8との光結合を行う構成では、実装凹部9は、面型発光素子7及び面型受光素子8が実装基板3の表面から突出しない深さとする必要がある。
【0059】
また、面型発光素子7及び面型受光素子8と導波路シート2とのギャップが広いと、光の結合効率が低下するので、面型発光素子7及び面型受光素子8と導波路シート2とのギャップは厳密にコントロールする必要がある。
【0060】
このため、実装基板3はシリコン基板で形成すると良い。実装基板3にシリコンを用いることにより、異方性エッチングによって高精度な実装凹部9を容易に形成することができるため、面型発光素子7及び面型受光素子8との間のギャップを精密にコントロールすることができ、良好な光結合を得ることができる。また、導波路支持部10の形成部位を残して実装凹部9を形成できるので、隣り合う実装凹部9の間に導波路支持部10を形成することができる。更に、シリコンは熱伝導率が高く、良好な放熱特性を得ることができる。
【0061】
<第2の実施の形態の光導波路モジュールの構成例>
図4は第2の実施の形態の光導波路モジュールの一例を示す構成図で、図4(a)は平面図、図4(b)は図4(a)のC−C断面図、図4(c)は図4(a)のD−D断面図である。以下の説明で、第1の実施の形態の光導波路モジュール1Aと同じ構成については同じ番号を付して説明する。
【0062】
第2の実施の形態の光導波路モジュール1Bは 導波路シート2を支持する実装基板3に面型発光素子7及び面型受光素子8を実装する実装凹部9を形成し、実装凹部9の両側で導波路シート2の下側となる位置には導波路支持部10を形成すると共に、各実装凹部9の間で導波路シート2より外側となる位置には連結凹部9bを形成し、各実装凹部9の後方を連結凹部9bで連結したものである。
【0063】
連結凹部9bは、実装凹部9と同様に実装基板3の表面の一部を凹状にして形成され、上述したエッチングによる実装凹部9の形成プロセスで実装凹部9と一括して形成される。
【0064】
更に、第2の実施の形態の光導波路モジュール1Bは、連結凹部9bを利用して、各実装凹部9に透明樹脂15が充填される。透明樹脂15は、耐湿性を有し、かつ、導波路シート2と同等の屈折率を有する透明な樹脂であり、例えばポリイミドシリコンを利用する。
【0065】
各実装凹部9では、面型発光素子7及び面型受光素子8と、導波路シート2において光が入出射する導波路シート2の下端面との間に透明樹脂15が充填される。これにより、導波路シート2の入射端面における反射による過剰損失の低減と、反射戻り光による面型発光素子7の出力モードの変化等を抑えて、導波路シート2からの出力光を安定化することが可能となる。
【0066】
また、透明樹脂15として耐湿性のある材料を利用することで、面型発光素子7及び面型受光素子8への水分を遮蔽することができるため、面型発光素子7及び面型受光素子8の信頼性を向上させることが可能となる。
【0067】
そして、第2の実施の形態の光導波路モジュール1Bでは、各実装凹部9が連結凹部9bで連結されているので、各実装凹部9に透明樹脂15を充填する工程において、一度の充填で連結凹部9bを介して全ての実装凹部9に透明樹脂15を充填できるので、工程を簡易にすることができる。
【0068】
なお、第1の実施の形態の光導波路モジュール1Aのように、独立した形態の実装凹部9に透明樹脂15を充填する構成とすることもできるが、個々の実装凹部9は体積が小さく、充填する透明樹脂15の量のコントロールが難しい。これに対して、各実装凹部9を連結凹部9bで連結することで、実装凹部9が分割されている場合に比較して凹部の体積が大きくなるため、充填する透明樹脂15のコントロールが容易となり、透明樹脂15の実装工程を容易に行うことができる。
【0069】
ここで、第2の実施の形態の光導波路モジュール1Bにおいても、実装凹部9の両側で導波路シート2の下側となる位置には導波路支持部10が形成され、導波路シート2において、面型発光素子7あるいは面型受光素子8との光結合のため、実装基板3に接着固定できず空中でフリーとなる部分の両側が実装基板3に固定される。
【0070】
これにより、第1の実施の形態の光導波路モジュール1Aと同様に、導波路シート2においてフリーとなる部分が少なくなるので、熱による導波路シート2の伸縮や、長期的な使用による導波路シート2の反り等の変形による結合損失の増加を低減することができる。
【0071】
<第3の実施の形態の光導波路モジュールの構成例>
図5は第3の実施の形態の光導波路モジュールの一例を示す構成図で、図5(a)は平面図、図5(b)は図5(a)のE−E断面図である。以下の説明で、第1の実施の形態の光導波路モジュール1Aと同じ構成については同じ番号を付して説明する。
【0072】
第3の実施の形態の光導波路モジュール1Cは、平面型の光導波路を構成する導波路シート2と、導波路シート2を支持する実装基板3を備える。導波路シート2は、例えば高分子材料で構成され、第1のコア4a及び第2のコア4bと、下部クラッド5a及び上部クラッド5bを備えて、コア・クラッド構造を有する。第1のコア4a及び第2のコア4bは、屈折率が下部クラッド5a及び上部クラッド5bより若干大きくなるように構成されて、光が第1のコア4a及び第2のコア4bに閉じ込められて伝搬される。
【0073】
第1のコア4aと第2のコア4bは交差部4cで交差し、交差部4cにおける第1のコア4aと第2のコア4bの交差角は90度である。交差部4cは、導波路シート2の一の辺に位置し、交差部4cが位置する導波路シート2の一の辺は、第1のコア4a及び第2のコア4bに対して45度の角度で延在している。また、第2のコア4bの端部が位置する導波路シート2の他の辺は、第2のコア4bに対して90度の角度で延在している。
【0074】
そして、交差部4cが位置する導波路シート2の一の辺は、導波路シート2の下面に対して45度に傾斜させて第1の傾斜端面16aを備え、第2のコア4bの端部が位置する導波路シート2の他の辺は、導波路シート2の下面に対して45度に傾斜させて第2の傾斜端面16bを備える。
【0075】
第1の傾斜端面16aは、第1のコア4a及び第2のコア4bの交差部4cにおける端面が露出して第1の反射面17aが形成される。また、第2の傾斜端面16bは、第2のコア4bの端面が露出して第2の反射面17bが形成される。
【0076】
導波路シート2は、第1のコア4aと第2のコア4bの交差部4cに形成される第1の反射面17aと対向した下面側に波長選択フィルタ18を備える。波長選択フィルタ18は、任意の波長領域における光を選択的に反射及び透過させる機能を有し、例えば、波長λ1の光は反射し、波長λ2の光は透過するように構成される。本例では、波長選択フィルタ18は、後述するように導波路シート2の下部クラッド5a内に形成される。
【0077】
実装基板3は、例えばシリコン(Si)基板であり、表面に導波路シート2が実装される。また、実装基板3は、面型発光素子(VCSEL)7と、面型受光素子(PD)8が実装される。
【0078】
更に、実装基板3は、導波路シート2の第1の反射面17aに対向させて面型受光素子8を実装し、第2の反射面17bに対向させて面型発光素子7を実装するため、実装凹部9を備える。実装凹部9は、実装基板3の表面の一部を凹状にして形成され、底面には電極パッド9aを備える。
【0079】
面型発光素子7は、発光部7aが導波路シート2の第2の反射面17bと対向するように実装凹部9に実装され、電極パッド9aと電気的に接続される。また、ボンディングパッド7bが図示しない電子部品とワイヤボンディングにより電気的に接続される。
【0080】
面型受光素子8は、受光部8aが第1の反射面17aと対向するように実装凹部9に実装され、電極パッド9aと電気的に接続される。また、ボンディングパッド8bが図示しない電子部品とワイヤボンディングにより電気的に接続される。
【0081】
実装凹部9は、面型発光素子7及び面型受光素子8に対応して独立して形成され、各実装凹部9の両側には、導波路支持部10が形成される。導波路支持部10は、導波路シート2が実装される実装基板3の表面と同一の平面で構成され、導波路シート2の端部側を支持する。
【0082】
導波路シート2は、接着剤11により実装基板3に接着固定される。接着剤11による接着位置は、実装基板3の上面で、導波路シート2と接する箇所の全面であり、導波路シート2と接しない実装凹部9の両側の導波路支持部10も接着位置となる。
【0083】
なお、光導波路モジュール1Cは、図示しない光ファイバが接続されて、導波路シート2の第1のコア4aと光学的に結合している。例えば、実装基板3に形成した図示しないガイド溝に光ファイバを嵌めて、導波路シート2の第1のコア4aと光ファイバとの位置合わせを行う構成を備えても良いし、導波路シート2に形成した図示しないガイド溝に光ファイバを嵌めて、導波路シート2の第1のコア4aと光ファイバとの位置合わせを行う構成を備えても良い。
【0084】
<第3の実施の形態の光導波路モジュールの動作例>
光導波路モジュール1Cは、図示しない対向機器からの入力信号が波長λ2(例えば、λ2=790nm)の光信号で光ファイバを介して導波路シート2に入射される。導波路シート2に入射された入力光信号は、第1のコア4aを伝搬され、第1の反射面17aで反射することで光の伝搬方向が90度変換されて、波長選択フィルタ18に入射する。
【0085】
波長選択フィルタ18は、上述したように波長λ2の光は透過するので、第1の反射面17aで反射した図示しない対向機器からの光信号は、波長選択フィルタ18を透過して導波路シート2の第1の傾斜端面16aの下面側から出射し、面型受光素子8の受光部8aで受光されて、面型受光素子8で電気信号に変換される。
【0086】
一方、光導波路モジュール1Cでは、電気信号が面型発光素子7で光信号に変換される。ここで、面型発光素子7の発振波長はλ1(例えば、λ1=850nm)とする。面型発光素子7の発光部7aから出射された出力光信号は、導波路シート2の第2の傾斜端面16bの下面側から入射し、第2の反射面17bで反射することで光の伝搬方向が90度変換されて、導波路シート2の第2のコア4bを伝搬される。
【0087】
導波路シート2の第2のコア4bを伝搬された光信号は、第1の反射面17aで反射することで光の伝搬方向が90度変換されて、波長選択フィルタ18に入射する。
【0088】
波長選択フィルタ18は、上述したように波長λ1の光は反射するので、第1の反射面17aで反射した面型発光素子7からの光信号は、波長選択フィルタ18で反射して再度第1の反射面17aで反射することで光の伝搬方向が90度変換されて、第1のコア4aを伝搬される。そして、導波路シート2の第1のコア4aを伝搬された光信号は、図示しない光ファイバを伝搬されて対向機器で受光される。
【0089】
図示しない対向機器では、光導波路モジュール1Cと対になる光導波路モジュールとして、光導波路モジュール1Cと同じ構成で、かつ、波長λ1の光は透過し、波長λ2の光は反射する波長選択フィルタと、発振波長λ2の面型発光素子を備えた光導波路モジュールを用いることで、複数の異なる波長の光信号の分離多重化を行って、1本の光ファイバに複数の異なる波長の光信号を伝送させることが可能となる。
【0090】
これにより、光導波路モジュール1Cを備えることで、波長多重双方向光通信(WDM)が行われるシステムの構築が可能となる。
【0091】
<第3の実施の形態の導波路シートの製造工程例>
図6は導波路シート2の製造工程例を示す説明図で、次に、第3の実施の形態の光導波路モジュール1Cを構成する導波路シート2の製造工程について説明する。
【0092】
まず、図6(a)に示すように、下部クラッド5aの第1層を構成する紫外線硬化型の高分子材料をスピンコート等により支持基板14上に塗布し、プリベークを行った後、紫外線を照射して薄膜を硬化させ、下部クラッド第1層5a(1)を形成する。
【0093】
次に、図6(b)に示すように、下部クラッド第1層5a(1)上の所定の位置に、波長選択フィルタ18を構成する誘電体多層膜を形成する。本例では、まず、フォトレジストを塗布し、誘電体多層膜を形成したい部分はパターンニングして取り除く。次に誘電体多層膜を蒸着によって下部クラッド第1層5a(1)の全面に形成した後、溶液でフォトレジストをエッチングして、フォトレジストとフォトレジスト上の誘電体多層膜を取り除くリフトオフ工程によって、所望の場所にのみ誘電体多層膜による波長選択フィルタ18を形成する。
【0094】
次に、図6(c)に示すように、下部クラッド第1層5a(1)と同様の工程によって、下部クラッド第1層5a(1)の上に下部クラッド第2層5a(2)を形成する。これにより、下部クラッド第1層5a(1)と下部クラッド第2層5a(2)の間の所定の位置に、波長選択フィルタ18を挟み込んだ形態で下部クラッド5aが形成される。
【0095】
次に、図6(d)に示すように、第1のコア4a及び第2のコア4bを構成する紫外線硬化型の高分子材料をスピンコート等により下部クラッド5a上に塗布し、第1のコア4a及び第2のコア4bのパターンが形成された図示しないマスクを介して紫外線を照射することで第1のコア4a及び第2のコア4bを形成する部位を硬化させ、溶液現像によってコアの形成部位以外を除去して、所定のパターンで第1のコア4a及び第2のコア4bを形成する。第1のコア4a及び第2のコア4bを構成する高分子材料は、下部クラッド5a及び上部クラッド5bを構成する高分子材料より若干屈折率が大きい材料を用いる。
【0096】
次に、図6(e)に示すように、上部クラッド5bを構成する紫外線硬化型の高分子材料をスピンコート等により下部クラッド5a及び第1のコア4a及び第2のコア4b上に塗布し、プリベークを行った後、紫外線照射及びポストベークを行って薄膜を硬化させ、上部クラッド5bを形成する。本例では、上部クラッド5bを構成する高分子材料は、下部クラッド5aを構成する高分子材料と同じ材料を用いているが、下部クラッド5aと屈折率がほぼ等しければ、別の材料を用いることも可能である。
【0097】
次に、図5で説明した第1の傾斜端面16a及び第2の傾斜端面16bが形成される辺となる部分を、図6(f)に示すように、45度の角度を持つダイシングプレートを用いてダイシングすることで、第1の傾斜端面16a及び第1の反射面17aと、第2の傾斜端面16b及び第2の反射面17bを形成する。また、他の辺となる部分は、90度の角度を持つダイシングプレートを用いてダイシングすることで、所定の形状の導波路シート2を切り出す。
【0098】
そして、図6(g)に示すように、導波路シート2を支持基板14から剥離して、導波路シート2が完成する。
【0099】
なお、以上の例では、紫外線硬化型の高分子材料を用いてフォトリソグラフィプロセスにより第1のコア4a及び第2のコア4bのパターンを形成したが、熱硬化型の樹脂を用いて金型成形によってパターンニングする方法や、金属マスク等でマスクしてRIEでパターンを転写して形成する方法等もある。
【0100】
<第3の実施の形態の光導波路モジュールの製造工程例>
以下に、光導波路モジュール1C全体の製造工程例を説明する。なお、実装基板3の製造工程は、図2で説明した工程と同じで良い。まず、実装基板3の実装凹部9に、面型発光素子7及び面型受光素子8と、図示しない電子部品等を実装し、ワイヤボンディング等により電気的な接続を行う。
【0101】
次に、図6で説明した工程で作製した導波路シート2を、第1の反射面17aが面型受光素子8の受光部8aの真上に位置し、かつ、第2の反射面17bが面型発光素子7の発光部7aの真上に位置するように位置合わせを行い、接着剤11で実装基板3に固定する。
【0102】
導波路シート2は光を透過するので、接着剤11には可視光(405,436nm)硬化型の接着剤を使用し、導波路シート2の位置合わせ後に可視光を照射して接着剤11を硬化させ、導波路シート2を実装基板3に接着固定する。
【0103】
そして、第1のコア4aの他方の端面を露出させた導波路シート2の垂直カット辺に図示しない光ファイバを接合することで、上述したように、波長多重双方向光通信が行える光導波路モジュール1Cが完成する。
【0104】
以上のように、導波路シート2の端面に第1の傾斜端面16aを形成し、この第1の傾斜端面16aによる第1の反射面17aの直下に波長選択フィルタ18を配置すると共に、第1のコア4a及び第2のコア4bを第1の反射面17aの下で分岐する構成とすることで、面型発光素子7及び面型受光素子8を利用して波長多重双方向光通信が行える光導波路モジュール1Cを、容易な組み立て工程で実現することが可能となる。
【0105】
また、波長選択フィルタ18を導波路シート2内に集積して作製するプロセスも可能であるので、波長選択フィルタ18の実装工程を省くことができる。
【0106】
なお、以上の構成では、下部クラッド5aを2層にしてその間に波長選択フィルタ18を形成したが、下部クラッド5aを2層に分けずに1層の下部クラッド5aとして形成し、その上に波長選択フィルタ18を形成した後に、コア層を形成する構成としても良い。
【0107】
このような構成では、第1の反射面17aで反射した光が下部クラッド5aに出て拡散することなく波長選択フィルタ18で反射されて、第2のコア4bに結合されるため、結合損失を低減することができる。但し、第1のコア4a及び第2のコア4bの直下に波長選択フィルタ18が存在するので、波長選択フィルタ18の形成部位ではコアにおける光の伝搬損失が増大する。よって、波長選択フィルタ18は、なるべく光が反射する部分のみに形成する必要がある。
【0108】
<第4の実施の形態の光導波路モジュールの構成例>
図7は第4の実施の形態の光導波路モジュールの一例を示す構成図で、図7(a)は平面図、図7(b)は図7(a)のF−F断面図である。以下の説明で、第3の実施の形態の光導波路モジュール1Cと同じ構成については同じ番号を付して説明する。
【0109】
第4の実施の形態の光導波路モジュール1Dは、波長選択フィルタ18を導波路シート2内に集積せず、導波路シート2の第1の反射面17aと対向する下部クラッド5aの下面に、別途作製した波長選択フィルタ18を貼り付けた構成である。更に、波長選択フィルタ18の大きさを、面型受光素子8が実装される実装凹部9の大きさに合わせてある。
【0110】
他の構成及び動作は第3の光導波路モジュール1Cと同様である。さて、波長選択フィルタ18を下部クラッド5aの下面に貼り付け、その大きさを、面型受光素子8が実装される実装凹部9の大きさに合わせることで、面型発光装置7から出射され、第2のコア4bに結合せずにクラッド層に結合した迷光が、第1の傾斜端面16aで面型受光素子8方向に反射しても、波長選択フィルタ18で反射され、導波路シート2の下面からは出射しない。これにより、迷光が多重反射により面型受光素子8に入射してクロストークとなることを防ぐことができる。
【0111】
なお、第3の実施の形態及び第4の実施の形態では、信号が入出力されるコアは1本であるが、多数本のコアを所定のパターンで配置して、マルチチャンネルで送受信を行う光導波路モジュールを構成することも可能である。
【0112】
<第5の実施の形態の光導波路モジュールの構成例>
上述した第1〜第4の実施の形態の光導波路モジュール1は、フィルム化した導波路シート2を実装基板3に接着剤11で貼り付けているが、実装基板3に対する接着剤11の濡れ性が悪いと、導波路シート2に均一に接着剤11が付かず、接着強度が低下する。
【0113】
接着剤11が均一に付かないと、特に、温湿度の影響による接着強度の低下が顕著に見られ、接着強度の低下から導波路シート2の位置ずれを生じ、光素子との結合に問題を生じる。このため、導波路シート2を実装基板3に貼り付ける前に、実装基板3の表面に表面処理を行う。
【0114】
図8は第5の実施の形態の光導波路モジュール1Eの要部構成を示す断面図である。光導波路モジュール1Eは、例えば、図1に示す光導波路モジュール1Aと同様に、フィルム化した導波路シート2が実装基板3に接着剤11により貼り付けられている。
【0115】
導波路シート2は、例えば高分子材料で構成され、コア4と下部クラッド5a及び上部クラッド5bを備えて、コア・クラッド構造を有する。また、実装基板3はシリコン基板である。
【0116】
そして、実装基板3上に塗布された表面処理剤19上に接着剤11を塗布することで、実装基板3に対する接着剤11の濡れ性を向上させている。表面処理剤19としては、シランカップリング剤を用いる。
【0117】
<第5の実施の形態の光導波路モジュールの製造工程例>
図9は第5の実施の形態の光導波路モジュールの製造工程例を示す説明図で、以下に、第5の実施の形態における光導波路モジュール1Eの製造工程例を説明する。なお、実装基板3の製造工程は、例えば図2で説明した工程と同じで良く、導波路シート2の製造工程は、例えば図3で説明した工程と同じで良い。
【0118】
まず、図1等に示す実装凹部9が形成された実装基板3の表面に、図9(a)に示すように、表面処理剤19としてシランカップリング剤を塗布する。次に、図1等に示すように、実装基板3の実装凹部9に、面型発光素子7及び面型受光素子8と、図示しない電子部品等を実装し、ワイヤボンディング等により電気的な接続を行う。
【0119】
次に、図9(b)に示すように、実装基板3上に塗布された表面処理剤(シランカップリング剤)19上に例えば可視光硬化型の接着剤11を塗布し、図3で説明した工程で作製した導波路シート2の位置合わせを行った後、可視光を照射して接着剤11を硬化させ、導波路シート2を実装基板3に接着固定する。
【0120】
<第5の実施の形態の光導波路モジュールの効果>
具体的な実施例として、図3に示すプロセスで支持基板14上に厚さ約30μmの下部クラッド5a、断面形状が四角形で、そのサイズが約40×40μmのコア4、厚さ約30μmの上部クラッド5bを順次積層形成して導波路シート2を作製した。そして、傾斜端面6をダイシングにより形成し、支持基板14から剥離して厚さ約100μmのフィルム状の導波路シート2を作製した。
【0121】
実装基板3は、図2に示すプロセスで作製した。この実装基板3の表面に、表面処理剤19として5w%のシランカップリング剤水溶液を塗布し、100℃5分で乾燥させた。シランカップリング剤としては、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシランを用いた。
【0122】
その後、表面処理剤(シランカップリング剤)19上に接着剤11を塗布し、導波路シート2を接着固定して図8に示すような断面構造の光導波路モジュール1Eを作製した。
【0123】
図10は比較例の光導波路モジュールの一例を示す断面図である。比較例の光導波路モジュールは、図2に示すプロセスで作製した実装基板3上に、表面処理剤(シランカップリング剤)19を塗布せずに、接着剤11を塗布して、図3に示すプロセスで作製した導波路シート2を接着固定したものである。導波路シート2の構成は、図8に示す例と同じにした。
【0124】
実装基板3上に表面処理剤(シランカップリング剤)19を塗布した実施例では、接着剤11の実装基板3への濡れ性が良く、接着剤11が実装基板3上に均一に広がり、実装基板3へ導波路シート2を接着した場合に実装基板3と導波路シート2の間に気泡の残留が見られなかった。
【0125】
一方、実装基板3上に表面処理剤(シランカップリング剤)19を塗布しない比較例では、接着剤11が実装基板3上に均一に広がらず、実装基板3へ導波路シート2を接着した場合に実装基板3と導波路シート2の間に気泡が残留し、均一に接着層が作製されなかった。
【0126】
図11はシランカップリング剤の効果を示す説明図で、以下に具体的な効果について説明する。シリコンのような無機質表面に対して、有機溶剤からなる接着剤の濡れ性は悪く、実装基板3の表面処理を行わない場合は、接着剤11が実装基板3と導波路シート2との間に均一に回り込まず、気泡が残留する等接着層にムラが生じる。このような接着ムラが生じた場合、接着強度は低く、特に高温高湿環境下で使用した場合や保管した場合等における接着強度の低下が顕著である。そして、接着強度の低下により導波路シート2が位置ずれし光素子との結合に問題が生じる。
【0127】
これに対して、実装基板3を構成するシリコンの無機質表面をシランカップリング剤で処理すると、図11に示すように、シランカップリング剤と、導波路シート2を構成する有機高分子材料との相互作用により、有機樹脂からなる接着剤11の実装基板3に対する濡れ性を向上させることができる。
【0128】
その結果、実装基板3と導波路シート2との間に均一な接着層が形成され、接着強度が高く、高温高湿環境下等で使用したような場合においても十分な接着強度を保つことができ、信頼性が向上する。
【0129】
なお、表面処理剤19として使用するシランカップリング剤としては、上述した実施例に記載したものに限らず、式R2−Si−(OR1)3で表され、OR1が例えばメトキシ基、エトキシ基等、R2が例えばビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基等である、あらゆるシランカップリング剤を使用することが可能である。
【0130】
具体的には例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリイソプロポキシシラン、トリブトキシシラン、トリオクチロキシシラン、メチルジメトキシシラン、エチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、エチルジエトキシシラン、メチルジオクチロキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルオクチロキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を用いることができる。
【0131】
これらのシランカップリング剤は、相溶性のある各種溶媒で、濃度が0.1〜50w%、好ましくは0.1〜20w%となるよう希釈して使用する。希釈する溶媒としては、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、アセトン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0132】
また、実装基板3はシリコン基板に限らず、例えばガラス基板のようにシランカップリング剤と化学結合を形成するものであれば何でも良い。
【0133】
<第5の実施の形態の光導波路モジュールの変形例>
第5の実施の形態の光導波路モジュール1Eの全体構成としては、第1〜第4の実施の形態の光導波路モジュールの何れの構成であっても良い。更に、他の構成であっても良い。
【0134】
図12は光導波路モジュールの変形例を示す斜視図である。図12に示す光導波路モジュール1Fは、導波路シート2に形成した溝部20に波長選択フィルタ18を挿入して、波長多重双方向光通信が行える光導波路モジュールを構成したものである。
【0135】
図3に示すように、フォトリソグラフィプロセスで導波路シート2を作製する場合は、導波路中に高精度な溝部20を容易に形成することができる。本例では、コア4を略Y字型のパターンとし、その分岐点に溝部20を備える。溝部20は、紫外線硬化型の高分子材料を用いて導波路シート2を構成する場合は、導波路の形成プロセスで所定の形状のマスクを介して紫外線を照射し、溝部20を形成する部位以外を硬化させ、例えば溶液現像によって溝部20の形成部位を除去することで作製される。
【0136】
溝部20及び傾斜端面6を備えた導波路シート2は、図8に示すように、表面処理剤19としてシランカップリング剤で表面処理された実装基板3に、接着剤11により接着固定される。シランカップリング剤を利用する効果は、上述した通りである。
【0137】
波長選択フィルタ18は、例えば波長λ1の光は反射し、波長λ2の光は透過するように構成され、溝部20に挿入されて、接着剤で固定される。
【0138】
以上の構成では、実装凹部9に実装された面型発光素子7から出射された波長λ2の出力光信号は、導波路シート2の傾斜端面6に形成された反射面で反射して、コア4を伝搬される。コア4を伝搬される波長λ2の信号光は、波長選択フィルタ18を透過してコア4に入射し、光ファイバ21へと伝搬される。
【0139】
光ファイバ21から入射した波長λ1の入力信号光は、コア4を伝搬されて波長選択フィルタ18に入射する。波長選択フィルタ18は、波長λ1の光は反射するので、コア4を伝搬される波長λ1の信号光は、波長選択フィルタ18で反射し、コア4を伝搬されて、受光素子22に入射する。
【0140】
このように、光導波路モジュール1Fでは、複数の異なる波長の光信号の分離多重化が行われることで、1本の光ファイバ21に複数の異なる波長の光信号を伝送させることが可能となり、光導波路モジュール1Fを備えることでも、波長多重双方向光通信が行われるシステムの構築が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明は、電子機器のボード間やチップ間の光通信モジュールや、光ファイバを利用した通信ケーブルのコネクタ等に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】第1の実施の形態の光導波路モジュールの一例を示す構成図である。
【図2】実装基板の製造工程例を示す工程説明図である。
【図3】導波路シートの製造工程例を示す説明図である。
【図4】第2の実施の形態の光導波路モジュールの一例を示す構成図である。
【図5】第3の実施の形態の光導波路モジュールの一例を示す構成図である。
【図6】導波路シートの製造工程例を示す説明図である。
【図7】第4の実施の形態の光導波路モジュールの一例を示す構成図である。
【図8】第5の実施の形態の光導波路モジュールの要部構成を示す断面図である。
【図9】第5の実施の形態の光導波路モジュールの製造工程例を示す説明図である。
【図10】比較例の光導波路モジュールの一例を示す断面図である。
【図11】シランカップリング剤の効果を示す説明図である。
【図12】光導波路モジュールの変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0143】
1・・・光導波路モジュール、2・・・導波路シート、3・・・実装基板、4・・・コア、5a・・・下部クラッド、5b・・・上部クラッド、6・・・傾斜端面、6a・・・反射面、7・・・面型発光素子、7a・・・発光部、8・・・面型受光素子、8a・・・受光部、9・・・実装凹部、9a・・・電極パッド、9b・・・連結凹部、10・・・導波路支持部、11・・・接着剤、11a・・・接着位置、12・・・シリコン基板、12a・・・熱酸化膜、13・・・フォトレジスト、13a・・・開口部、14・・・支持基板、15・・・透明樹脂、16a・・・第1の傾斜端面、16b・・・第2の傾斜端面、17a・・・第1の反射面、17b・・・第2の反射面、18・・・波長選択フィルタ、19・・・表面処理剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアとクラッドを有する光導波路と、前記光導波路を支持する実装基板とを備えた光導波路モジュールにおいて、
前記光導波路は、少なくとも一の端部に傾斜端面が形成され、前記傾斜端面に露出した前記コアの端面によって反射面が形成されると共に、
前記実装基板は、前記光導波路の下側で前記反射面と対向する位置に形成され、前記反射面を介して前記コアと光結合される面型光素子が実装される実装凹部と、前記実装凹部の両側に形成され、前記光導波路を支持する導波路支持部とを備えた
ことを特徴とする光導波路モジュール。
【請求項2】
前記光導波路は、前記実装基板の表面及び前記導波路支持部に接着固定されている
ことを特徴とする請求項1記載の光導波路モジュール。
【請求項3】
隣り合う前記実装凹部の間に、前記実装凹部間の一部を連結する連結凹部を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の光導波路モジュール。
【請求項4】
前記実装凹部に、前記光導波路と同等の屈折率を有する樹脂が充填される
ことを特徴とする請求項1記載の光導波路モジュール。
【請求項5】
前記樹脂は耐湿性を有することを特徴とする請求項4記載の光導波路モジュール。
【請求項6】
前記実装基板はシリコンで構成され、前記実装凹部が異方性エッチングにより作製されている
ことを特徴とする請求項1記載の光導波路モジュール。
【請求項7】
前記光導波路は高分子材料により作製され、シート状である
ことを特徴とする請求項1記載の光導波路モジュール。
【請求項8】
任意の波長領域の光を選択的に反射及び透過させ、光の波長により光路を切り替える波長選択フィルタを備えた
ことを特徴とする請求項1記載の光導波路モジュール。
【請求項9】
前記波長選択フィルタは、前記反射面の直下に実装される
ことを特徴とする請求項8記載の光導波路モジュール。
【請求項10】
前記実装基板は、前記光導波路を接着固定する接着剤に対する濡れ性を向上させる表面処理が施されている
ことを特徴とする請求項1記載の光導波路モジュール。
【請求項11】
コアとクラッドを有する光導波路と、前記光導波路を支持する実装基板とを備えた光導波路モジュールにおいて、
前記光導波路は、少なくとも一の端部に傾斜端面が形成され、前記傾斜端面に露出した前記コアの端面によって反射面が形成されると共に、
前記反射面の直下に、任意の波長領域の光を選択的に反射及び透過させ、光の波長により光路を切り替える波長選択フィルタを備え、
前記反射面を介して前記コアと光結合する面型光素子が、前記反射面と対向した前記光導波路の下側の前記実装基板に実装される
ことを特徴とする光導波路モジュール。
【請求項12】
前記波長選択フィルタが直下に配置された前記反射面で一のコアと他のコアを分岐させて、複数の光路を形成した
ことを特徴とする請求項11記載の光導波路モジュール。
【請求項13】
前記波長選択フィルタを、前記光導波路の形成プロセスにより前記光導波路に集積させた
ことを特徴とする請求項11記載の光導波路モジュール。
【請求項14】
前記光導波路は、下部クラッド及び上部クラッドと前記コアを備え、前記波長選択フィルタは、前記下部クラッド内に形成された
ことを特徴とする請求項13記載の光導波路モジュール。
【請求項15】
コアとクラッドを有する光導波路と、前記光導波路を支持する実装基板とを備えた光導波路モジュールにおいて、
前記実装基板は、前記光導波路を接着固定する接着剤に対する濡れ性を向上させる表面処理が施されている
ことを特徴とする光導波路モジュール。
【請求項16】
前記表面処理が、シランカップリング剤の被覆によるものである
ことを特徴とする請求項15記載の光導波路モジュール。
【請求項17】
少なくとも一の端部に傾斜端面が形成され、前記傾斜端面に露出した前記コアの端面によって反射面が形成された前記光導波路が作製され、
前記傾斜端面が形成された前記光導波路が、前記表面処理が施された前記実装基板に接着固定される
ことを特徴とする請求項15記載の光導波路モジュール。
【請求項1】
コアとクラッドを有する光導波路と、前記光導波路を支持する実装基板とを備えた光導波路モジュールにおいて、
前記光導波路は、少なくとも一の端部に傾斜端面が形成され、前記傾斜端面に露出した前記コアの端面によって反射面が形成されると共に、
前記実装基板は、前記光導波路の下側で前記反射面と対向する位置に形成され、前記反射面を介して前記コアと光結合される面型光素子が実装される実装凹部と、前記実装凹部の両側に形成され、前記光導波路を支持する導波路支持部とを備えた
ことを特徴とする光導波路モジュール。
【請求項2】
前記光導波路は、前記実装基板の表面及び前記導波路支持部に接着固定されている
ことを特徴とする請求項1記載の光導波路モジュール。
【請求項3】
隣り合う前記実装凹部の間に、前記実装凹部間の一部を連結する連結凹部を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の光導波路モジュール。
【請求項4】
前記実装凹部に、前記光導波路と同等の屈折率を有する樹脂が充填される
ことを特徴とする請求項1記載の光導波路モジュール。
【請求項5】
前記樹脂は耐湿性を有することを特徴とする請求項4記載の光導波路モジュール。
【請求項6】
前記実装基板はシリコンで構成され、前記実装凹部が異方性エッチングにより作製されている
ことを特徴とする請求項1記載の光導波路モジュール。
【請求項7】
前記光導波路は高分子材料により作製され、シート状である
ことを特徴とする請求項1記載の光導波路モジュール。
【請求項8】
任意の波長領域の光を選択的に反射及び透過させ、光の波長により光路を切り替える波長選択フィルタを備えた
ことを特徴とする請求項1記載の光導波路モジュール。
【請求項9】
前記波長選択フィルタは、前記反射面の直下に実装される
ことを特徴とする請求項8記載の光導波路モジュール。
【請求項10】
前記実装基板は、前記光導波路を接着固定する接着剤に対する濡れ性を向上させる表面処理が施されている
ことを特徴とする請求項1記載の光導波路モジュール。
【請求項11】
コアとクラッドを有する光導波路と、前記光導波路を支持する実装基板とを備えた光導波路モジュールにおいて、
前記光導波路は、少なくとも一の端部に傾斜端面が形成され、前記傾斜端面に露出した前記コアの端面によって反射面が形成されると共に、
前記反射面の直下に、任意の波長領域の光を選択的に反射及び透過させ、光の波長により光路を切り替える波長選択フィルタを備え、
前記反射面を介して前記コアと光結合する面型光素子が、前記反射面と対向した前記光導波路の下側の前記実装基板に実装される
ことを特徴とする光導波路モジュール。
【請求項12】
前記波長選択フィルタが直下に配置された前記反射面で一のコアと他のコアを分岐させて、複数の光路を形成した
ことを特徴とする請求項11記載の光導波路モジュール。
【請求項13】
前記波長選択フィルタを、前記光導波路の形成プロセスにより前記光導波路に集積させた
ことを特徴とする請求項11記載の光導波路モジュール。
【請求項14】
前記光導波路は、下部クラッド及び上部クラッドと前記コアを備え、前記波長選択フィルタは、前記下部クラッド内に形成された
ことを特徴とする請求項13記載の光導波路モジュール。
【請求項15】
コアとクラッドを有する光導波路と、前記光導波路を支持する実装基板とを備えた光導波路モジュールにおいて、
前記実装基板は、前記光導波路を接着固定する接着剤に対する濡れ性を向上させる表面処理が施されている
ことを特徴とする光導波路モジュール。
【請求項16】
前記表面処理が、シランカップリング剤の被覆によるものである
ことを特徴とする請求項15記載の光導波路モジュール。
【請求項17】
少なくとも一の端部に傾斜端面が形成され、前記傾斜端面に露出した前記コアの端面によって反射面が形成された前記光導波路が作製され、
前記傾斜端面が形成された前記光導波路が、前記表面処理が施された前記実装基板に接着固定される
ことを特徴とする請求項15記載の光導波路モジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−184757(P2006−184757A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−380398(P2004−380398)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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