光情報記録媒体およびその製造方法
【課題】 色素分子のJ会合体による均一な薄膜を簡易な手法で形成して、高屈折率を有し良好な光学特性を備えた薄膜を形成可能で、高速記録、高密度記録に適した、高感度および短マーク記録能力に優れたモノ(アザ)メチン化合物を用いた光情報記録媒体およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】 スピンコート法を採用することにより均一な薄膜を簡便に塗布形成可能とすること、J会合体を形成可能な色素材料(モノ(アザ)メチン色素と酸を含有する組成物)を用いて良好な光学特性(高屈折率)を得ること、そのための色素材料としては、溶解性の良好なモノ(アザ)メチン化合物とリン酸を用いて基板を侵すことがない溶剤を採用可能とすること、かくしてJ会合体を形成した薄膜からなる光記録層を設け、記録前後で屈折率の差が大きく、色素の分解が吸熱反応である色素薄膜を用いることができ、スピンコート法により基板上に塗布可能にできる。
【解決手段】 スピンコート法を採用することにより均一な薄膜を簡便に塗布形成可能とすること、J会合体を形成可能な色素材料(モノ(アザ)メチン色素と酸を含有する組成物)を用いて良好な光学特性(高屈折率)を得ること、そのための色素材料としては、溶解性の良好なモノ(アザ)メチン化合物とリン酸を用いて基板を侵すことがない溶剤を採用可能とすること、かくしてJ会合体を形成した薄膜からなる光記録層を設け、記録前後で屈折率の差が大きく、色素の分解が吸熱反応である色素薄膜を用いることができ、スピンコート法により基板上に塗布可能にできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光情報記録媒体およびその製造方法に係わるもので、とくに、少なくとも光吸収物質などを含む光記録層を有し、半導体レーザーによる波長が750〜830nmの赤色レーザー光、640〜680nm(たとえば650〜665nm)の短波長赤色レーザー光、さらに短波長側の350〜500nm付近(たとえば405nm前後)の青色レーザー光により高密度かつ高速で書き込みおよび再生が可能な光情報記録媒体の光記録層に使用できるモノ(アザ)メチン色素化合物を使用した光情報記録媒体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
追記型光記録ディスクとしては、初めに開発されたCD−Rや、その後に登場した大容量記録フォーマットであるDVD−R/+Rを含め、記録層として色素薄膜を有し、この色素が高パワーのレーザー光照射により分解することにともなってその光学物性が変化することにより記録が行われている。すなわち、未記録部分においては再生用レーザーによる照射光と反射膜からの戻り光とが干渉した光の強度の照射光強度に対する割合(反射率)の大きい信号光が検出されるが、記録部分においては色素の分解により色素の屈折率が低下することにより反射率は小さくなり、その弱くなった反射光を記録信号として検出する。このような記録原理を一般的にHigh to Low型記録と呼んでおり、これは記録前は反射率が高く、記録後は低くなることにより信号を記録できることを指している。このように情報を記録するためには記録層である色素薄膜の屈折率が非常に大きな意味を持つ。
これまで780nmのレーザーによる記録・再生を行うCD−Rや、660nmのレーザーによる記録・再生を行うDVD−R/+Rでは、上記の原理に基づいてHigh to Low型記録の追記型光記録ディスクが既に市場に多数出回っているが、405nmのレーザーで記録・再生を行うHD DVD−RやBlue−ray Disc−R(以下、両者をブルーディスク等という。)では、High to Low型記録では未だに実用的に十分な商品レベルに達していない。これは適切な屈折率を有する色素薄膜が得られていないためである。
【0003】
図1に示すように、HD DVD−R(HD DVD追記型)1は、レーザー光を透過する層として、レーザー光に対する屈折率がたとえば1.5〜1.7程度の範囲内の透明度の高い材料で、耐衝撃性に優れた、たとえばポリカーボネート板、アクリル板、エポキシ板等の樹脂板や、ガラス板等の透光性の基板2と、この基板2上に形成した光記録層3(光吸収層)と、この光記録層3の上に形成した、熱伝導率および光反射性の高い金属膜であり、たとえば、金、銀、銅、アルミニウム、あるいはこれらを含む合金を、蒸着法、スパッタ法等の手段により形成した光反射層4と、この光反射層4の上に形成した、基板2と同様の耐衝撃性、接着性に優れた樹脂により形成する、たとえば、紫外線硬化樹脂をスピンコート法により塗布し、これに紫外線を照射して硬化させることにより形成した保護層5(接着層)と、を有する。なお、場合によっては、保護層5のさらに上層に所定厚さの、上記基板2と同様の材料により構成し、約1.2mmの所定の厚さを確保したダミー基板6を積層し、規格で必要とされる所定の厚さに形成する。
上記基板2にはスパイラル状にプリグルーブ7を形成してある。このプリグルーブ7の左右には、このプリグルーブ7以外の部分すなわちランド8が位置している。
光記録層3は、基板2の上に形成した色素材料を含む光吸収性の物質(光吸収物質)からなる層で、レーザー光9を照射することにより、発熱、吸熱、溶融、昇華、変形または変性をともなう層である。この光記録層3はたとえば溶剤により溶解したアゾ系色素、シアニン系色素等を、スピンコート法等の手段により、基板2の表面に一様にコーティングすることによってこれを形成する。
光記録層3に用いる材料は、任意の光記録材料を採用することができるが、光吸収性の有機色素が望ましい。
【0004】
図示するように、HD DVD−R 1に透光性の基板2(入射層)側からレーザー光9(記録光)を照射したときに、光記録層3がこのレーザー光9のエネルギーを吸収することにより発熱(あるいは吸熱)し、光記録層3の熱分解によって記録ピット10が形成される。なお、11、12、13、14はそれぞれ隣接する層の層界である。
【0005】
また、図2に示すように、Blue−ray Disc−R(Blu−ray追記型)20は、厚さ1.1mmの透光性の基板2と、この基板2上に形成した光反射層4と、この光反射層4の上に形成した光記録層3(光吸収層)と、この光記録層3の上に形成した保護層5と、この保護層5の上に形成した接着層21と、接着層21の上に形成した厚さ0.1mmのカバー層22と、を有する。なお、接着層21を設けず、保護層5の上にカバー層22を設け、保護層5が接着層を兼用することも最近よく行われている。
上記基板2にはスパイラル状にプリグルーブ7を形成してある。このプリグルーブ7の左右には、このプリグルーブ7以外の部分すなわちランド8が位置している。
なお光反射層4は、基板2と光吸収層3の間の層界が低反射率を満たす場合には、これを設ける必要はない。
【0006】
図示するように、Blue−ray Disc−R 20にレーザー光を透過する層として透光性の入射層(カバー層22)側からレーザー光9(記録光)を照射したときに、光記録層3がこのレーザー光9のエネルギーを吸収することにより発熱(あるいは吸熱)し、光記録層3の熱分解によって記録ピット10が形成される。なお、23、24、2526はそれぞれ隣接する層の層界である。なお、ランド8に対応する光記録層3にピットが形成されるように図示されているが、プリグルーブ7に対応する光記録層3にピットが形成されることが最近よく行われるようになっている。
【0007】
こうした構成のHD DVD−R 1あるいはBlue−ray Disc−R 20への高速記録では、従来の記録速度ないし低速記録のときより短い時間で所定の記録を行う必要があるため、記録パワーが高くなり、記録時に発生する光記録層3における熱量、ないし単位時間あたりの熱量が大きくなり、熱ひずみの問題が顕在化しやすく、記録ピット10がばらつく原因となっている。また、レーザー光9を照射するための半導体レーザーの出射パワー自体に限界があり、高速記録に対応することができる高感度の色素材料が求められている。
CD−R、DVD−Rに代表される従来の追記型の光情報記録媒体では、光記録層に使用される有機化合物の分解・変質による屈折率変化を生じることによる記録ピットの形成が重視され、光学定数、分解挙動の適切な材料の選択を行うことが重要であるが、その有機化合物では、405nmのような青色レーザー波長に対する光学的性質(特に屈折率)が従来並の値しか示さない。有機化合物のレーザー光吸収帯を青色レーザー波長近傍に持たせるためには、メチン鎖を有するシアニン色素についていえば分子骨格を小さくする、あるいは共役系を短くする必要があるが、これでは吸収係数の低下、すなわち屈折率の低下を招き、再生したときに大きな変調度を得ることができないからである。
【0008】
高感度の色素材料とは、色素において適切な屈折率を有することであり、そのためには、n(屈折率)が高く、k(消衰係数)が低いことを必要とするが、このためには色素が高い吸光係数を有し、吸収スペクトルの半値幅が小さいことが必要であることが知られている。
一般的には吸収最大波長(λmax )の短波長化に伴いε(モル吸光係数)が小さくなることが知られており、ブルーディスク等に用いられる短波長の記録波長ではHigh to Low型光記録ディスクを実現する色素の開発は難しいといわれている。
また、High to Low型とは逆の記録特性を有するLow to High型記録を行うには実用可能な色素はいくつかあるものの、高速記録においては色素分解に伴う発熱量が大きいことから、記録ピットが肥大化する、いわゆる熱干渉により高品位の記録が行えず、分解に伴う発熱量が低くてすむ色素が待望されている。
このように、現在、従来より短波長側の350〜500nm付近(たとえば405nm前後)の青色レーザー光を用いて記録および再生が可能な光情報記録媒体についても開発が行われているが、光記録層に使用する有機色素化合物について、レーザー光が短波長側になるほど、光記録層としてより薄い薄膜を形成し、かつ高屈折率を得られる必要があり、その高屈折率のためには、色素が高い吸光係数を有し、吸収スペクトルの半値幅が小さいことが必要である。
【0009】
光記録層3の屈折率を上げるために、上述したように青色レーザー光に対して高いεをもつ材料は少ないため、色素の成膜時の分子の集合度合いである半値幅の制御が重要である。
吸収スペクトルの半値幅(半値幅(会合性)/cm-1)と屈折率(n max)との関係は図3に示され、適切な半値幅を示す材料を用いることで、高屈折率を有する材料を確保することができる。
このような観点から、色素分子の会合状態、とくにJ会合を利用することが検討されている。J会合は、色素分子が、エッジトゥエッジ(edge to edge)で配列した状態にあり、このJ会合が起こると、光吸収のスペクトルのピークが急峻化し、半値幅も小さくなるとともに、そのピークが長波長側にずれることが知られている。
【0010】
従来の、J会合体薄膜作成技術としては、LB法、Dip法、スピンコート法などがある。
LB法(Langmuir−Blodgett法:親水基と疎水基の両方を持つ分子を適当な溶媒に溶かして水面上に展開させると気−液界面に吸着されて、単分子膜を水面上に形成する。これに基板等をゆうくり浸漬させる等で均一な薄膜を形成させる方法。)は、精密かつ均一な薄膜の作成が可能であり、優れた光学特性を有する薄膜を得ることができる。しかしながら、成膜時に高度な制御が必要であることから、時間およびコストの面で欠点があるという問題がある。
Dip法(色素溶液に基板を浸漬した後取り出して乾燥し、その表面に色素膜を形成する方法)は、容易に会合制御を行うことができる。しかしながら、均一な薄膜の形成が困難であるとともに、これを安定に保持することが困難であるという問題がある。
スピンコート法(基板を回転させながら滴下した塗布液をその遠心力で展開する方法)は、薄膜作成は比較的容易である。しかしながら、単純なコート条件下では、分子が様々な状態で存在するために、会合制御が困難であるという問題がある。このスピンコート法は、その工程の簡便さおよび容易さの面で、他の手法よりも優れており、CD−RおよびDVD−Rなどの光情報記録媒体の製造工程に広く使われている手法である。
【0011】
スピンコート法ないし類似の薄膜作成法によりJ会合体薄膜を作成しているものとして、以下のようなものがある。
特許文献1(特開2001−199919号公報)は、有機色素(シアニン色素)のJ会合体薄膜を形成する手法を記載している。すなわち、シアニン色素およびシリカのゾル溶液を用いて、J会合体薄膜を形成している。
この技術では、薄膜中のシアニン色素の濃度がシリカによって薄められることで、光情報記録媒体用の色素薄膜として十分な色素物性を得ることができないため、光情報記録媒体用としては不適切なものとなっている。すなわち、この技術を光情報記録媒体に応用することは困難である。
【0012】
特許文献2(特開2000−151904号公報)は、有機色素(シアニン色素)のJ会合体薄膜を形成する手法が記載されている。すなわち、シアニン色素および高分子材料の高粘度溶液をラビング処理してJ会合体薄膜を作成している。
この技術では、薄膜中のシアニン色素の濃度が高分子材料によって薄められることで、光情報記録媒体用の色素薄膜として十分な色素物性を得ることができないため、光情報記録媒体用としては不適切なものとなっている。またラビング処理に必要な熱(温度130℃)を基板2のポリカーボネートに加えると基板2の変形が生じてしまう。すなわち、この技術を光情報記録媒体に応用することは困難である。
【0013】
特許文献3(特開2001−305591号公報)は、有機色素(スクアリリウム色素)のJ会合体薄膜を形成する手法が記載されている。すなわち、J会合体薄膜を形成しやすいスクアリリウム色素を用い、スピンコート法で塗布してJ会合体薄膜を作成している。
この特許文献3では、スクアリリウム色素は有機溶剤に対するその溶解性が乏しい点が特徴として挙げられ、光情報記録媒体の基板2の材料であるポリカーボネートを侵食しない溶剤に対しての溶解性を確保しにくいという欠点がある。すなわち、光情報記録媒体用の色素薄膜として十分な厚さを得ることが困難である。また、溶解性を確保するため、スクアリリウム色素分子に適当な置換基を化学装飾すると、J会合体薄膜の形成に影響を及ぼすため、設計する上で溶解性および会合性を考慮しなければならない複雑さがある。すなわち、この技術を光情報記録媒体に応用することは困難である。
【0014】
なお、特許文献4(特許3429521号公報)は、LB膜を光記録層3用の材料として用いている。すなわち、フォトクロミック色素を含む色素皮膜を形成した基板2を用いており、この基板2は、遠赤外線を放射するセラミック基板である。このフォトクロミック材料が色素の分子会合体であり、スピロピランJ会合体薄膜であることを特徴とする光情報記録媒体が開示されている。このフォトクロミック色素を含む色素皮膜に、数種類のシアニン色素および特別な脂肪酸を適当な混合比で混ぜたクロロホルム溶液を、水面上に展開圧縮して分子配向制御した単分子膜を形成し、基板2に付着させたものである。
この技術では、無蛍光ガラス基板の表面にトリメチルクロロシランにより疎水処理した基板を作成し、この基板上に上記分子配向制御した単分子膜を垂直浸漬法により片面二十層累積吸着させたものであるが、実際に光情報記録媒体に用いる色素薄膜としては、十分な厚さを持たせることが困難であるとともに、LB法を現在の光情報記録媒体に応用することは非常に困難である。
【0015】
J会合体薄膜は、高屈折率を得ることが可能で、HD DVD−R 1、Blue−ray Disc−R 20の光記録層3として有用であるにもかかわらず、簡便かつ制御が容易な形成手法が確立されていないのが現状である。LB法やDip法では、その作成が比較的容易ではあっても、高度の制御技術が必要であったり、均一な薄膜を安定して得ることができないという問題がある。一方、スピンコート法は薄膜を容易に形成することが可能ではあるが、このスピンコート法によるJ会合体薄膜の作成が困難であるという問題がある。
【0016】
【特許文献1】特開2001−199919号公報
【特許文献2】特開2000−151904号公報
【特許文献3】特開2001−305591号公報
【特許文献4】特許3429521号公報
【特許文献5】特開2005−74872号公報(後述)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は以上のような諸問題にかんがみなされたもので、色素分子のJ会合体による均一な薄膜を形成可能なモノ(アザ)メチン化合物色素のJ会合体を直接形成するだけで他の補助手段を設けることなく光学特性を改善できる光情報記録媒体およびその製造方法を提供することを課題とする。
【0018】
また、本発明は、高屈折率を有し良好な光学特性を備えた薄膜を形成可能な光情報記録媒体およびその製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、簡易な手法(スピンコート法)でJ会合体による光記録層を形成可能な光情報記録媒体およびその製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、ポリカーボネートなど基板の材料を侵すことがない溶剤で色素材料を塗布可能な光情報記録媒体およびその製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、光記録層の薄膜内の構成成分が色素材料を主材料とし、高速記録、高密度記録に適した、高感度および短マーク記録能力に優れた光情報記録媒体およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、鋭意研究の結果、従来のCD−RやDVD−R/+Rでは色素分子のアモルファス薄膜を用いており、分子はランダムに配向した薄膜を形成しており、ランダムに分子が配向した薄膜では分子間の相互作用は弱く、ブロードな吸収スペクトルを示すが、J会合体では分子間相互作用により分子同士が規則的に配列した状態で微小な分子集合体を形成しているので、吸収スペクトルは半値幅が狭く、分子がランダムな場合よりも吸光度が大きくなる。このためJ会合体の薄膜を作成することにより高いnと低いkとを有する色素薄膜を形成することができ、High to Low型光情報記録媒体の実現や、記録レーザー光照射に伴う会合体の破壊による記録を行うことにより分解に伴う発熱を低減し、熱干渉を抑制することが期待されることを見い出した。
このようなJ会合体は古くから知られており、上述したように、高濃度の溶液中で形成したり、あるいは薄膜では、LB膜などの強制的に分子を配列させる手法などがとられてきたため、実用レベルの光記録ディスクに用いることができなかったが、最近になり、たとえばインドレニン系シアニン色素の2本のN−アルキル鎖末端をスルホン酸基で置換するとことによりスピンコート法でJ会合体薄膜を形成することが可能となってきた(特開2005−74872号公報、特願2004−101442明細書(本願出願人)が、そのほかのモノ(アザ)メチン色素化合物についても、スピンコート法を採用することにより均一な薄膜を簡便に塗布形成可能とすること、J会合体を形成可能な色素材料を用いて良好な光学特性(高屈折率)を得ること、この色素材料としては、溶解性の良好なオキサゾール核、チアゾール核などを含むモノ(アザ)メチン化合物(モノ(アザ)メチンシアニン)を用いて基板を侵すことがない溶剤を採用可能とすること、かくして記録前後で屈折率の差が大きく、色素の分解が吸熱反応である色素を用いることができることなどに着目したものである。
【0020】
本発明は、(1)、レーザー光により情報を記録する光記録層を有する光情報記録媒体であって、該光記録層は、下記一般式〔化1〕で示すモノ(アザ)メチン化合物および酸を含有する色素膜を有し、前記レーザー光を透過する層の透過した後側の表面に直接形成されている光情報記録媒体を提供するものである。
【化1】
(式中、Z1 、Z2 は、それぞれ、五員若しくは六員の芳香族環または含窒素複素環を形成するために必要な原子群を表し、同種でも異種でもよく、このZ1またはZ2が置換基を有していてもよく、Y1、Y2は、それぞれ、O、S、N−R(Rは(CH)n CH3 (nは0〜5から選ばれる数)のアルキル基)およびCH=CHの群から選ばれるいずれかであり、同種でも異種でもよく、AはCHまたはNであり、R1、R2は、それぞれ、(CH)n CH3 (nは0〜5から選ばれる数)のアルキル基を表し、同一でも異なってもよく、 1/m Xm-(mは1 〜4 から選ばれる数) は有機アニオン、無機アニオンおよび有機金属アニオンの群から選ばれるいずれかの少なくとも1種を表す。)
また、本発明は、(2)、上記一般式〔化1〕で示すモノ(アザ)メチン化合物が下記一般式〔化2〕で示すモノ(アザ)メチン化合物である上記(1)の光情報記録媒体、
【化2】
(式中、Y1、Y2は、それぞれ、O、S、N−R(Rは(CH)n CH3 (nは0〜5から選ばれる数)のアルキル基)およびCH=CHの群から選ばれるいずれかであり、同種でも異種でもよく、AはCHまたはNであり、R1、R2は、それぞれ、(CH)n CH3 (nは0〜5から選ばれる数)のアルキル基を表し、同一でも異なってもよく、 1/m Xm-(mは1 〜4 から選ばれる数) は有機アニオン、無機アニオンおよび有機金属アニオンの群から選ばれるいずれかの少なくとも1種を表し、R3 〜R6 は、それぞれ、水素原子、(CH)n CH3 (nは0〜5から選ばれる数)のアルキル基等の直鎖若しくは分岐の脂肪族炭化水素基、ハロゲン化アルキル基等のハロゲン化脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基等のエーテル基、エステル基、アルキルスルファモイル基、ニトロ基、シアノ基、芳香族環及び複素環の群から選ばれるいずれかであり、いずれも置換基を有していてもよく、同一または異なってもよい。)
(3)、酸は有機酸および無機酸のいずれかの少なくとも1種であり、上記一般式〔化1〕または〔化2〕で示すモノ(アザ)メチン化合物の色素に対してH+ がモル比で0.8〜3である上記(1)または(2)の光情報記録媒体、(4)、色素膜は上記一般式〔化1〕または〔化2〕で示すモノ(アザ)メチン化合物がJ会合体を形成した色素膜である上記(1)ないし(3)のいずれかの光情報記録媒体、(5)、レーザー光は、波長350〜500nmの波長領域からなる上記(1)ないし(4)のいずれかの光情報記録媒体、(6)、レーザー光により情報を記録する光記録層を設けた光情報記録媒体の製造方法であって、前記光記録層は、上記一般式〔化1〕または〔化2〕で示すモノ(アザ)メチン化合物の色素および酸を含有するモノ(アザ)メチン色素組成物の塗布液をスピンコート法により塗布することによる成膜により形成される光情報記録媒体の製造方法、(7)、モノ(アザ)メチン化合物の色素がJ会合体を形成する上記(6)の光情報記録媒体の製造方法、(8)、モノ(アザ)メチン化合物の色素を溶解する溶媒として、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール等のフッソ化アルコールを用いる上記(6)または(7)の光情報記録媒体の製造方法を提供するものである。
【0021】
上記モノ(アザ)メチン色素化合物、この化合物と酸との組成物、これらを用いた光情報記録媒体、およびその製造方法は、ブルーレーザー光による記録および再生はもちろん、記録用ないし再生用のCDおよびDVDにも応用可能である。
また、上記モノ(アザ)メチン色素化合物の合成にあたっては、オキサゾール核を含有するモノ(アザ)メチン化合物の合成法(特開平10−60295号公報)、複素環としてチアゾール核あるいはキノリン核を有する化合物の合成法(英国特許447,038)が知られている。また、モノメチンシアニン化合物の合成法については、WO 2005/095521A1号公報(PCT/JP2005/006724号明細書)にも記載されており、これを利用できる。同定にあたっては、NMR分析装置、GC/MS分析装置等を用いてモノ(アザ)メチンシアニン化合物の同定方法を参照することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明による光情報記録媒体およびその製造方法においては、上記一般式〔化1〕、〔化2〕に示すモノ(アザ)メチン化合物という特定の色素材料と酸を含有する色素膜を光記録層に有するので、スピンコート法という簡易な手法であっても色素分子のJ会合による均一な薄膜を形成することができる。J会合により色素薄膜の吸収スペクトルの先鋭化、半値幅の狭小化および長波長化することにより、高屈折率を持つ薄膜を形成することができる。したがって、色素分子のJ会合に由来する光吸収により、会合色素を熱分解させることにより、記録前後の屈折率差を生じやすくすることができる。しかも、このJ会合色素の熱分解は吸熱反応であり、従来のような発熱反応による熱の放熱制御を行う必要がない。
すなわち、高屈折率および記録前後における屈折率差などの優れた光学特性、および吸熱反応という熱特性を有する記録材料薄膜を均一に形成することができるとともに、スピンコート法という簡易な手法で上記会合体薄膜を形成し、従来の工程を改造することなく、優れた特性を持つ光情報記録媒体を得ることができる。
さらに溶解性の良好なモノ(アザ)メチン色素化合物を用いることにより、基板を侵すことがない2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール(TFP)などの溶剤で色素材料を塗布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、上記一般式〔化1〕、〔化2〕のモノ(アザ)メチン化合物に酸を添加して得られるモノ(アザ)メチン色素組成物を用いてJ会合体による薄膜を形成するようにしたので、その色素組成物の溶液又は分散液を使用して、簡易なスピンコート法を用いて、高屈折率で均一な光記録層を有する光情報記録媒体(HD DVD−R 1、Blue−ray Disc−R 20)を実現することができた。
上記一般式〔化1〕、〔化2〕のモノ(アザ)メチン化合物(モノ(アザ)メチンシアニン色素)において、分子(色素)骨格として、AがCHのときはモノメチンシアニン色素、AがNのときはモノアザメチンシアニン色素ということができ、Y1 、Y2 が例えばOのときはオキゾール核、Sのときはチアゾール核、Nのときはイミダゾール核、CH=CHのときはピリジン核ということができ、Y1 、Y2 は同種でも異種でもよいので、これら各核をモノメチン鎖またはモノアゾメチン鎖(−N=)で結合した構造を有し、モノ(アザ)メチンシアニン化合物(モノ(アザ)メチンシアニン色素)ということができる。
上記一般式〔化1〕、〔化2〕においては、 1/m Xm-は有機アニオン、無機アニオンおよび有機金属アニオンの群から選ばれるいずれかの少なくとも1種を表すが、mは1〜4のいずれかの数であり、mが1のときは1個の負の電荷を有し、mが2〜4のときはm個の負の電荷を有し、その場合は1/m倍して1個の負の電荷に相当するようにして用いることもできる。具体的には、有機アニオンとしては、CH3 COO- 等のアルキルカボン酸、トリフルオロメチルカルボン酸(CF3 COO- )、CH3 SO3 - 等のアルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸(φ−SO3 - 、φはベンゼン環を示し、以下同様)、トルエンスルホン酸(H3 C−φ−SO3 - )、ベンゼンカルボン酸(φ−COO- )等が挙げられ、無機アニオンとしては、ハロゲン原子イオン(Cl- 、Br- 、I- )、PF6 - 、SbF6 - 、リン酸、過塩素酸(ClO4 - )、過ヨウ素酸、ホウフッ化水素酸(BF4 - )、NO3 - 、OH- 、SCN- 、テトラフェニルホウ酸およびタングステン酸等のアニオン(陰イオン)が挙げられる。
上記一般式〔化1〕において、Z1 、Z2 は、それぞれ、五員若しくは六員の芳香族環または含窒素複素環を形成する(五員の芳香族環、六員の芳香族環、五員の含窒素複素環および六員の含窒素複素環のいずれかの環状基を形成する)ために必要な原子群を表し、同種でも異種でもよく、このZ1 、Z2 が置換基を有していてもよい。
【0024】
上記の芳香族環としては置換若しくは非置換のベンゼン環またはナフタリン環が挙げられるが、Z1 は下記一般式〔化3〕の4つのいずれかを表し、Z2 は下記一般式〔化4〕の4つのいずれかを表し、Z1 とZ2 は同種であっても異種であってもよい(ただし、D1 、D2 はそれぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシル基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボキシル基、アルキルヒドロキシル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキルアミド基、アルキルアミノ基、アルキルスルホンアミド基、アルキルカルボモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルスルホニル基、フェニル基、シアノ基、エステル基、ニトロ基、アシル基、アリル基、アリール基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、フェニルアゾ基、ピリジノアゾ基、アルキルカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アミノ基、アルキルスルホン基、チオシアノ基、メルカプト基、クロルスルホン基、アルキルアゾメチン基、アルキルアミノスルホン基、ビニル基及びスルホン基の群のなかから選択される置換基を表し、同種であっても異種であってもよく、p、qは置換基の数であってそれぞれ1又は複数の整数を表す。)。
【0025】
【化3】
【0026】
【化4】
【0027】
上記一般式〔化2〕においては、R3、R4、R5、R6は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン化アルキル基、置換基を有してもよいフェニル基および(CH)n CH3 (nは0〜5から選ばれる数)のアルキル基の群から選ばれてもよいが、さらにそのほかの芳香族環、複素環を含めた群から選ばれてもよく、その選ばれたものには置換基を有していてもよく、同一または異なってもよいが、R3〜R6 の少なくとも1つがCl基であること、また、モノ( アザ) メチン鎖の両側のベンゼン環に対称にCl基を有することも望ましい。
【0028】
さらに詳しくは、上記一般式〔化2〕において、R3〜R6は、その単数又は複数が置換基によって置換されていてもよく、個々の置換基としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基などの脂肪族炭化水素基、ハロゲン化アルキル基等のハロゲン化脂肪族炭化水素基、メトシキ基、トリフルオロメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのエーテル基、メトキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などのエステル基、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、tert−ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基などのアルキルスルホニル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、エチルスルファモイル基、ジエチルスルファモイル基、プロピルスルファモイル基、ジプロピルスルファモイル基、ブチルスルファモイル基、ジブチルスルファモイル基、ペンチルスルファモイル基、ジペンチルスルファモイル基などのアルキルスルファモイル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基、さらには、ニトロ基、シアノ基などが挙げられ、さらにはいずれのものも単数または複数の置換基を有していてもよく、R3〜R6 と全部又は一部が同一でも異なってもよい。芳香族環としては、単環式のベンゼン環(置換基を有してもよいフェニル基でもよく)であり、複素環としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子およびテルル原子から選ばれるヘテロ原子を1または複数含んでなるものが望ましく、( R3、R4) と( R5、R6) とでは同一でも異なってもよく、いずれのものも単数または複数の置換基を有していてもよい。
【0029】
このような芳香環および複素環は、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、5−メチルヘキシル基などの脂肪族炭化水素基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基などの脂環式炭化水素基、フェニル基、ビフェニリル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、キシリル基、メシチル基、スチリル基、シンモナイル基、ナフチル基などの芳香族炭化水素基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などのエステル基、第一級アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基などの置換または無置換の脂肪族、脂環式もしくは芳香族アミノ基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、エチルスルファモイル基、ジエチルスルファモイル基、プロピルスルファモイル基、ジプロピルスルファモイル基、イソプロピルスルファモイル基、ジイソプロピルスルファモイル基、ブチルスルファモイル基、ジブチルスルファモイル基などのアルキルスルファモイル基、さらには、カルバモイル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、スルホ基、スルホアミノ基、スルホンアミド基などの置換基を1または複数有していてもよい。
なおまた、上記〔化1〕、〔化2 〕の一般式で表されるモノ( アザ) メチン化合物(モノ( アザ) メチンシアニン色素)において、その構造上、シス/トランス異性体が存在する場合には、いずれの異性体もこの発明に包含されるものとする。
【0030】
具体的には、後述する実施例に挙げたもののほかには、下記〔化5〕〜〔化8〕のモノメチンシアニン化合物が挙げられる。
【0031】
【化5】
【0032】
【化6】
【0033】
【化7】
【0034】
【化8】
【0035】
上記一般式〔化1〕、〔化2 〕やこれらに属する上記、後記の具体的化合物の構造のモノ( アザ) メチン化合物、酸および溶剤の選択により、前2者を含有する色素組成物、これら3者を含有する色素組成物を、溶液又は分散液として得て、スピンコート法でモノ( アザ) メチン化合物のJ会合体を含む薄膜を容易に作成することができる。
加える酸としては、リン酸、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸等の無機酸、アセチルサルチル酸(HOOC−φ−OCOCH3(オルト体)(後記〔化20〕))、ヒドロキノン(HO−φ−OH(パラ体)(後記〔化17〕))、カテコール(HO−φ−OH(オルト体)(後記〔化18〕))、2−ナフトール(φφ−OH(φφはナフタレン環を示す)(後記〔化19))等の有機酸が挙げられ、これらの誘導体も挙げられるが、これらに限定されるものではない。
加える酸は、上記一般式〔化1〕、〔化2〕やこれらに属する上記、後記の具体的化合物のモノ(アザ)メチン化合物の1分子に対して、H+ (1水素イオン)がモル比で0.8〜3であることが好ましい、さらには1〜3であることが好ましい。
【0036】
溶剤としては、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール等のフッソ化アルコールが好ましいが、クロロホルム、ジクロロエタン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、メタノール、トルエン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、メチルセロソルブ等のセロソルブ類、ジオキサン等も基板を侵食しない程度に単独又は併用し、また、フッソ化アルコールと単数又は複数併用することもできる。
このようなJ会合を形成する色素材料を使用することにより、光記録層3の高屈折率化が可能となり、かつ、光記録層3の低膜厚化が容易となり、高変調度を確保し、350〜500nm付近の波長領域で優れた記録特性を有する光情報記録媒体1、20を製造することができる。すなわち、記録時に、J会合を破壊することにより、記録前後の屈折率差を確保し、記録感度を改善することができる。
なお、一般的な色素の熱分解が発熱反応であるのに対して、本発明で用いるモノ(アザ)メチン化合物のJ会合状態における熱分解は吸熱反応であるため、分解時の熱拡散を抑制することができる。
【実施例】
【0037】
つぎに本発明の実施例による光情報記録媒体用色素材料、これを用いた光情報記録媒体、およびその製造方法を図4ないし図8にもとづき説明する。ただし、図1および図2と同様の部分には同一符号を付し、その詳述はこれを省略する。
(実施例1)
下記〔化9〕のモノメチンシアニン化合物(化合物I)を2.0g量りとり、100mLフラスコに入れ、さらにリン酸をそれぞれ0(添加無し)、0.5倍(178mg)(化合物Iに対してH+ がモル比で0.5(化合物Iの1分子:H+ が0.5水素イオン)、以下これに準ずる。)、1倍(357mg)、2倍(714mg)、4倍(1428mg)加えて、さらに2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール(TFP)を加えて全量100mLにしてよく攪拌して溶解し、化合物Iを20g/Lの濃度で含有する各モノメチン色素組成物を調製した。
上記調製した各モノメチン色素組成物の溶液を、5mL量りとり、1000mLのメスフラスコに滴下し、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールを加えて、全量を1000mLとし、よく攪拌して得られた溶液について、分光スペクトル測定を行った。
次に、上記調製した各モノメチン色素組成物の溶液を、厚さ0.6mm、4cm四方のガラスの単板に1mL滴下したのち、300rpmの回転数で30秒間スピンコートすることにより、均一なJ会合体薄膜を得た。各モノメチン色素組成物の薄膜について分光スペクトル測定を行った。
【0038】
【化9】
【0039】
(比較例1)
また、比較のために、下記〔化10〕のモノメチンシアニン色素(化合物X)についても、上述の化合物Iの場合と同様に、リン酸をそれぞれ0(添加無し)、0.5倍(178mg)、1倍(357mg)、2倍(714mg)、4倍(1428mg)添加し、化合物Xを20g/Lの濃度で含有する各モノメチン色素組成物をの溶液を調製し、これらの溶液を上記単板上にスピンコートした。その塗布膜の薄膜について分光スペクトル測定を行った。その塗布膜の薄膜について分光スペクトル測定を行った。
【0040】
【化10】
【0041】
上記それぞれ(三種類)の化合物についての分光スペクトル測定の結果を図4、5に示す。図4の化合物Iの溶液中での吸収スペクトル(一点鎖線、TFP溶液)に対して、単板上での吸収スペクトルはピーク位置がいずれも長波長側にシフトしているが、太線実線(薄膜((リン酸)添加無し)に比べて、点線(薄膜((リン酸添加)1倍)では吸収が大きくなる傾向が見られ、細線実線(薄膜((リン酸添加)2倍)では、さらなるリン酸添加によりピークがさらに長波長側に移動し、ピークも高く、急峻になり、半値幅も小さくなり、単板の薄膜によるスペクトル形状が溶液の状態と比較して、J会合の特徴である長波長化および先鋭化(半値幅の狭小化)していることがわかる。なお、薄膜化した場合であっても、長線点線(薄膜((リン酸添加)4倍)では、リン酸添加過剰によりJ会合体が壊れていることがわかる。
これに対し、図5の化合物Xの単板上での吸収スペクトルは、いずれもピーク位置は変わらず、太線実線(薄膜((リン酸)添加無し)に比べて、点線(薄膜((リン酸添加)1倍)、細線実線(薄膜((リン酸添加)2倍)はやや吸収が小さく、長線点線(薄膜((リン酸添加)4倍)は吸収がやや大きくなっているが、差はほとんどないということができ、リン酸添加によるピークの長波長側への移動、ピークの急峻化、半値幅の狭小化はみられず、J会合の特徴である長波長化および先鋭化(半値幅の狭小化)が見られないことがわかる。
このように、J会合体を形成する色素膜は、化合物の溶液の状態と薄膜化した状態との吸収スペクトルの変化を見ることで確認することができる。
例えば、薄膜化した状態での吸収ピークが、溶液の状態での吸収ピークよりも長波長側にシフトし、薄膜化した状態での吸収スペクトルの半値幅が、溶液の状態での吸収スペクトルの半値幅よりも狭いことで確認することができる。
しかしながら、この方法に限るものではなく、溶液中のモノマーの吸収スペクトルと薄膜化した状態での吸収スペクトルとを前述のように比較することで確認することもでき、種々の確認方法を採ることができる。
下記〔表1〕は、化合物I((リン酸添加)2倍)、Xの薄膜(単板上)について、波長405nmにおいてそれぞれの光学特性を示したものであって、化合物I((リン酸添加)2倍)は、J会合体を形成することにより、屈折率nの向上という良好な光学特性が認められる。
【0042】
【表1】
【0043】
以上のように、化合物I(リン酸添加無し)、化合物Xのシアニン色素薄膜ではJ会合体は形成されておらず、化合物Iのモノメチン化合物では、特にリン酸添加2倍の場合には、J会合体が形成されており、これをスピンコート塗布することにより、より簡易的に均一なJ会合体薄膜を形成することができることがわかった。
【0044】
(比較例2)
上記化合物Xの代わりに、下記〔化11〕のモノメチンシアニン色素(化合物XI)についても、上述の化合物Xの場合と同様に、リン酸をそれぞれ0(添加無し)、1倍、2倍、4倍添加した溶液を調製し、これらの溶液を上記単板上にスピンコートし、化合物XIの薄膜を有する単板について分光スペクトル測定を行った結果を図6に示す。
図6の化合物Xの単板上での吸収スペクトルは、いずれもピーク位置は変わらず、太線実線(薄膜((リン酸)添加無し)に比べて、点線(薄膜((リン酸添加)1倍)、細線実線(薄膜((リン酸添加)2倍)、長線点線(薄膜((リン酸添加)4倍)は吸収がやや大きくなっているが、差はほとんどないということができ、リン酸添加によるピークの長波長側への移動、ピークの急峻化、半値幅の狭小化はみられず、J会合の特徴である長波長化および先鋭化(半値幅の狭小化)が見られないことがわかる。
【0045】
【化11】
【0046】
(実施例2〜4)
実施例1において、化合物Iの代わりに、下記〔化12〕、〔化13〕、〔14〕、〔15〕のそれぞれのモノメチンシアニン色素(化合物II、III、IV、V)についても、上述の化合物Iの場合と同様に、リン酸をそれぞれ1倍、2倍添加した溶液を調製し、これらの溶液を上記単板上にスピンコートし、化合物II〜Vのそれぞれの薄膜を有する単板について分光スペクトル測定を行った。その結果を図7、8、9、10に示す。
図7〜10の単板上での吸収スペクトルは、点線(薄膜((リン酸添加)1倍)に比べ、細線実線(薄膜((リン酸添加)2倍)では、さらなるリン酸添加によりピークがさらに長波長側に移動し、ピークも急峻になり、半値幅も小さくなり、単板の薄膜によるスペクトル形状が溶液の状態と比較して、J会合の特徴である長波長化および先鋭化(半値幅の狭小化)していることがわかる。
【0047】
【化12】
【0048】
【化13】
【0049】
【化14】
【0050】
【化15】
【0051】
(実施例5)
下記〔化16〕のモノアザメチンシアニン化合物(化合物VI)を2.0g量りとり、100mLフラスコに入れ、さらにリン酸をそれぞれ0(添加無し)、0.5倍(160mg)(化合物VIに対してH+ がモル比で0.5(化合物VIの1分子:H+ が0.5水素イオン)、以下これに準ずる。)、1倍(320mg)、2倍(640mg)、4倍(1280mg)加えて、さらに2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール(TFP)を加えて全量100mLにしてよく攪拌して溶解し、化合物VIを20g/Lの濃度で含有する各モノメチン色素組成物を調製した。
上記調製した各モノメチン色素組成物の溶液を、5mL量りとり、1000mLのメスフラスコに滴下し、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールを加えて、全量を1000mLとし、よく攪拌して得られた溶液について、分光スペクトル測定を行った。
次に、上記調製した化合物VIを20g/Lの濃度で含有する各モノメチン色素組成物の溶液を、厚さ0.6mm、4cm四方のガラスの単板に1mL滴下したのち、300rpmの回転数で30秒間スピンコートすることにより、均一なJ会合体薄膜を得た。
上記それぞれの化合物についての分光スペクトル測定の結果を図11、12に示す。図11の化合物VIの溶液中での吸収スペクトルでは、リン酸の添加量によってピークの波長位置に変化がないのに対し、図12の単板上での吸収スペクトルでは、Ref(リン酸添加無し)に比べて、リン酸添加によりピークが長波長側に移動し、リン酸2倍添加の場合には、ピークも高く、急峻になり、半値幅も小さくなり、単板の薄膜によるスペクトル形状が溶液の状態と比較して、J会合の特徴である長波長化および先鋭化(半値幅の狭小化)していることがわかる。なお、図12では、リン酸添加過剰(リン酸4倍添加)によりJ会合体が壊れていることがわかる。
J会合性を示さず色素分子が比較的分散状態にある化合物X(図5)と比較しても化合物VI(特にリン酸2倍添加の場合)の薄膜の吸収スペクトルが先鋭化していることがわかる。
上記〔表1〕は、化合物I、化合物Xの薄膜(単板上)について、波長405nmにおいてそれぞれの光学特性を示すものであるが、化合物VI(リン酸2倍添加)についも、化合物Iに準じて、J会合体を形成することにより、屈折率nの向上という良好な光学特性が認められる。
【0052】
【化16】
【0053】
(実施例6)
実施例1において、リン酸の代わりにヒドロキノン(下記〔化17))をそれぞれ0(添加なし)、1倍用いたこと以外は同様にして、各モノメチン色素組成物の薄膜(単板上)を形成し、その薄膜について分光スペトクル測定を行った結果を図13に示す。
図13では、実線((ヒドロキノン)添加なし)に比べて、点線((ヒドロキノン)1倍)では吸収が大きくなり、ピークが長波長側に移動し、ピークも急峻になり、半値幅も小さくなり、J会合の特徴である長波長化および先鋭化(半値幅の狭小化)していることがわかる。
【0054】
【化17】
【0055】
(実施例7)
実施例1において、リン酸の代わりにカテコール(下記〔化18))をそれぞれ0(添加なし)、1倍用いたこと以外は同様にして、各モノメチン色素組成物の薄膜(単板上)を形成し、その薄膜について分光スペトクル測定を行った結果を図14に示す。
図14では、実線((カテコール)添加なし)に比べて、点線((カテコール)1倍)では吸収が大きくなり、ピークが長波長側に移動し、ピークも急峻になり、半値幅も小さくなり、J会合の特徴である長波長化および先鋭化(半値幅の狭小化)していることがわかる。
【0056】
【化18】
【0057】
(実施例8)
実施例1において、リン酸の代わりに2−ナフトール(下記〔化19))をそれぞれ0(添加なし)、1倍用いたこと以外は同様にして、各モノメチン色素組成物の薄膜(単板上)を形成し、その薄膜について分光スペトクル測定を行った結果を図15に示す。
図15では、実線((ナフトール)添加なし)に比べて、点線((ナフトール)1倍)では吸収が大きくなり、ピークが長波長側に移動し、ピークも急峻になり、半値幅も小さくなり、J会合の特徴である長波長化および先鋭化(半値幅の狭小化)していることがわかる。
なお、下記〔化17〕〜〔化19〕のそれぞれの代わりに、アセチルサリチル酸(下記〔化20〕)を同様にして用いてもこれらに準じた結果を得ることができる。
【0058】
【化19】
【0059】
【化20】
【0060】
(比較例3)
実施例1において、リン酸の代わりにマロン酸ジメチルをそれぞれ0(添加なし)、1倍、2倍用いたこと以外は同様にして、各モノメチン色素組成物の薄膜(単板上)を形成し、その薄膜について分光スペトクル測定を行った結果を図16に示す。
図16では、いずれもピーク位置は変わらず、実線((マロン酸ジメチル)添加なし)に比べて、点線((マロン酸ジメチル)1倍)、長線点線((マロン酸ジメチル)2倍)はやや吸収が大きくなっているが、差はほとんどないということができ、ピークの長波長側への移動、ピークの急峻化、半値幅の狭小化は見られず、J会合の特徴である長波長化および先鋭化(半値幅の狭小化)は見られないことがわかる。
【0061】
(比較例4)
実施例1において、リン酸の代わりに酢酸ナトリウムをそれぞれ0(添加なし)、1倍、2倍用いたこと以外は同様にして、各モノメチン色素組成物の薄膜(単板上)を形成し、その薄膜について分光スペトクル測定を行った結果を図17に示す。
図17では、いずれもピーク位置は変わらず、実線((酢酸ナトリウム)添加なし)に比べて、点線((酢酸ナトリウム)1倍)、長線点線((酢酸ナトリウム)2倍)はやや吸収が大きくなっているが、大きな差はないということができ、ピークの長波長側への移動、ピークの急峻化、半値幅の狭小化は見られず、J会合の特徴である長波長化および先鋭化(半値幅の狭小化)は見られないことがわかる。
【0062】
(実施例9)
実施例1で用いた化合物Iにリン酸及び溶剤を添加して得られるモノメチン色素組成物の薄膜(J会合性モノメチン色素薄膜)をHD DVD−R 1の光記録層3に応用した例を以下に示す。
上記〔化9〕のモノメチンシアニン化合物(化合物I)を2.0g量りとり、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール100mLに溶解し、さらにリン酸を714mg(2倍(化合物Iに対してH+ がモル比で2)加え、化合物Iについて20g/Lの溶液を調製した。なお、下記〔化21〕の化合物VIIを光安定剤として重量比で30%添加した。なお、他のアミニウム系、ジイモニウム系安定剤も使用できる。
ポリカーボネート製で、ピッチが0.40μm間隔で刻んであるプリグルーブ7を有する外径120mm、厚さ0.6mmの円盤状の基板2に、この塗布溶液の1mLを所定の回転数でスピンコート法により塗布し、均一なJ会合体薄膜を得た。
この色素を塗布した透明基板2を温度80℃で30分間熱処理し、残留している余分な溶剤、水成分を揮発処理して、色素面(光記録層3)を形成した。
さらに、この光記録層3の上に銀(Ag)をスパッタリングし、厚さ100nmの光反射層4を形成した。
なお、基板2の周縁部に飛び散った色素をメタノールで洗浄して洗い流した。
さらに、光反射層4の上に、紫外線硬化型の樹脂接着剤SD−318(大日本インキ化学工業製)をスピンコートしたのち、これに紫外線を照射して硬化させ、保護層5を形成した。
この保護層5の表面に紫外線硬化樹脂接着剤を塗布し、上述と同じ材質および形状(厚さ0.6mm、外径120mm)のダミー基板6を貼り合わせ、この接着剤に紫外線を照射して硬化させて接着し、HD DVD−R 1(HD DVD追記型)を作成した。
【0063】
【化21】
【0064】
かくして、化合物Iとリン酸を含有するモノメチン色素組成物により、均一なモノメチンシアニン化合物色素のJ会合体薄膜を光記録層3に持つHD DVD−R 1を得た。 また、比較例1で用いた化合物Xを用いて、上述と同様にして光記録層3を形成し、HD DVD−R 1を得た。
上記〔表1〕は、それぞれのHD DVD−R 1の電気特性評価結果を示すものであって、化合物Iとリン酸を含有するモノメチン色素組成物による光記録層3を有するHD DVD−R 1の方が記録に必要なパワーが低いため記録感度はより良好であり、最短マーク長のC/Nレベルが改善し、また、ランダム記録信号記録時のシンメトリも低パワーで達成可能である。
【0065】
(実施例10)
実施例9において、化合物Iの2.0gの代わりに、実施例5で用いた化合物VIを同じモル数になるように用いたこと以外は同様にして、均一なモノアザメチンシアニン化合物色素のJ会合体薄膜を光記録層3にもつHD DVD−R 1(HD DVD追記型)を作成した。
上記〔表1〕の化合物Iを用いたHD DVD−R 1の電気特性評価結果に準じた結果が得られ、化合物VIとリン酸を含有するモノアザメチン色素組成物による光記録層3を有するHD DVD−R 1の方が、化合物Xを用いたものよりも記録に必要なパワーが低いため記録感度はより良好であり、最短マーク長のC/Nレベルが改善し、また、ランダム記録信号記録時のシンメトリも低パワーで達成可能である。
【0066】
化合物I、VIのそれぞれとリン酸とを実施例9、10の場合と同様に用い、それぞれBlue−ray Disc−R(Blu−ray追記型)20を作成しても、実施例9、10のHD DVD−R 1(HD DVD追記型)に準じた結果得られる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】一般的な円盤状の光情報記録媒体(HD DVD−R)の要部拡大断面図である。
【図2】他のタイプの一般的な円盤状の光情報記録媒体(Blue−ray Disc−R)の要部拡大断面図である。
【図3】吸収スペクトルの半値幅と屈折率との関係を示すグラフである。
【図4】化合物I(〔化9〕)にリン酸を添加した溶液およびその溶液の塗布膜の薄膜(単板上)について、分光スペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図5】化合物X(〔化10〕)にリン酸を添加した溶液の塗布膜の薄膜(単板上)について、分光スペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図6】化合物XI(〔化11〕)にリン酸を添加した溶液の塗布膜の薄膜(単板上)について、分光スペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図7】化合物II(〔化12〕)にリン酸を添加した溶液の塗布膜の薄膜(単板上)について、分光スペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図8】化合物III(〔化13〕)にリン酸を添加した溶液の塗布膜の薄膜(単板上)について、分光スペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図9】化合物IV(〔化14〕)にリン酸を添加した溶液の塗布膜の薄膜(単板上)について、分光スペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図10】化合物V(〔化15〕)にリン酸を添加した溶液の塗布膜の薄膜(単板上)について、分光スペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図11】化合物VI(〔化16〕)にリン酸を添加した溶液について、分光スペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図12】化合物VI(〔化16〕)にリン酸を添加した薄膜(単板上)について、分光スペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図13】化合物I(〔化9〕)にヒドロキノン(〔化17)を添加した溶液の塗布膜の薄膜(単板上)について、分光スペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図14】化合物I(〔化9〕)にカテコール(〔化18)を添加した溶液の塗布膜の薄膜(単板上)について、分光スペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図15】化合物I(〔化9〕)に2ーナフトール(〔化19)を添加した溶液の塗布膜の薄膜(単板上)について、分光スペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図16】化合物I(〔化9〕)にマロン酸ジメチルを添加した溶液の塗布膜の薄膜(単板上)について、分光スペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図17】化合物I(〔化9〕)に酢酸ナトリウムを添加した溶液の塗布膜の薄膜(単板上)について、分光スペクトル測定の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0068】
1 HD DVD−R
2 基板
3 光記録層(光吸収層)
4 光反射層
5 保護層(接着層)
6 ダミー基板
7 プリグルーブ
8 ランド
9 レーザー光(記録光、再生光)
10 記録ピット
11 第1の層界
12 第2の層界
13 第3の層界
14 第4の層界
20 Blue−ray Disc−R
21 接着層
22 カバー層
23 第1の層界
24 第2の層界
25 第3の層界
26 第4の層界
27 第5の層界
【技術分野】
【0001】
本発明は、光情報記録媒体およびその製造方法に係わるもので、とくに、少なくとも光吸収物質などを含む光記録層を有し、半導体レーザーによる波長が750〜830nmの赤色レーザー光、640〜680nm(たとえば650〜665nm)の短波長赤色レーザー光、さらに短波長側の350〜500nm付近(たとえば405nm前後)の青色レーザー光により高密度かつ高速で書き込みおよび再生が可能な光情報記録媒体の光記録層に使用できるモノ(アザ)メチン色素化合物を使用した光情報記録媒体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
追記型光記録ディスクとしては、初めに開発されたCD−Rや、その後に登場した大容量記録フォーマットであるDVD−R/+Rを含め、記録層として色素薄膜を有し、この色素が高パワーのレーザー光照射により分解することにともなってその光学物性が変化することにより記録が行われている。すなわち、未記録部分においては再生用レーザーによる照射光と反射膜からの戻り光とが干渉した光の強度の照射光強度に対する割合(反射率)の大きい信号光が検出されるが、記録部分においては色素の分解により色素の屈折率が低下することにより反射率は小さくなり、その弱くなった反射光を記録信号として検出する。このような記録原理を一般的にHigh to Low型記録と呼んでおり、これは記録前は反射率が高く、記録後は低くなることにより信号を記録できることを指している。このように情報を記録するためには記録層である色素薄膜の屈折率が非常に大きな意味を持つ。
これまで780nmのレーザーによる記録・再生を行うCD−Rや、660nmのレーザーによる記録・再生を行うDVD−R/+Rでは、上記の原理に基づいてHigh to Low型記録の追記型光記録ディスクが既に市場に多数出回っているが、405nmのレーザーで記録・再生を行うHD DVD−RやBlue−ray Disc−R(以下、両者をブルーディスク等という。)では、High to Low型記録では未だに実用的に十分な商品レベルに達していない。これは適切な屈折率を有する色素薄膜が得られていないためである。
【0003】
図1に示すように、HD DVD−R(HD DVD追記型)1は、レーザー光を透過する層として、レーザー光に対する屈折率がたとえば1.5〜1.7程度の範囲内の透明度の高い材料で、耐衝撃性に優れた、たとえばポリカーボネート板、アクリル板、エポキシ板等の樹脂板や、ガラス板等の透光性の基板2と、この基板2上に形成した光記録層3(光吸収層)と、この光記録層3の上に形成した、熱伝導率および光反射性の高い金属膜であり、たとえば、金、銀、銅、アルミニウム、あるいはこれらを含む合金を、蒸着法、スパッタ法等の手段により形成した光反射層4と、この光反射層4の上に形成した、基板2と同様の耐衝撃性、接着性に優れた樹脂により形成する、たとえば、紫外線硬化樹脂をスピンコート法により塗布し、これに紫外線を照射して硬化させることにより形成した保護層5(接着層)と、を有する。なお、場合によっては、保護層5のさらに上層に所定厚さの、上記基板2と同様の材料により構成し、約1.2mmの所定の厚さを確保したダミー基板6を積層し、規格で必要とされる所定の厚さに形成する。
上記基板2にはスパイラル状にプリグルーブ7を形成してある。このプリグルーブ7の左右には、このプリグルーブ7以外の部分すなわちランド8が位置している。
光記録層3は、基板2の上に形成した色素材料を含む光吸収性の物質(光吸収物質)からなる層で、レーザー光9を照射することにより、発熱、吸熱、溶融、昇華、変形または変性をともなう層である。この光記録層3はたとえば溶剤により溶解したアゾ系色素、シアニン系色素等を、スピンコート法等の手段により、基板2の表面に一様にコーティングすることによってこれを形成する。
光記録層3に用いる材料は、任意の光記録材料を採用することができるが、光吸収性の有機色素が望ましい。
【0004】
図示するように、HD DVD−R 1に透光性の基板2(入射層)側からレーザー光9(記録光)を照射したときに、光記録層3がこのレーザー光9のエネルギーを吸収することにより発熱(あるいは吸熱)し、光記録層3の熱分解によって記録ピット10が形成される。なお、11、12、13、14はそれぞれ隣接する層の層界である。
【0005】
また、図2に示すように、Blue−ray Disc−R(Blu−ray追記型)20は、厚さ1.1mmの透光性の基板2と、この基板2上に形成した光反射層4と、この光反射層4の上に形成した光記録層3(光吸収層)と、この光記録層3の上に形成した保護層5と、この保護層5の上に形成した接着層21と、接着層21の上に形成した厚さ0.1mmのカバー層22と、を有する。なお、接着層21を設けず、保護層5の上にカバー層22を設け、保護層5が接着層を兼用することも最近よく行われている。
上記基板2にはスパイラル状にプリグルーブ7を形成してある。このプリグルーブ7の左右には、このプリグルーブ7以外の部分すなわちランド8が位置している。
なお光反射層4は、基板2と光吸収層3の間の層界が低反射率を満たす場合には、これを設ける必要はない。
【0006】
図示するように、Blue−ray Disc−R 20にレーザー光を透過する層として透光性の入射層(カバー層22)側からレーザー光9(記録光)を照射したときに、光記録層3がこのレーザー光9のエネルギーを吸収することにより発熱(あるいは吸熱)し、光記録層3の熱分解によって記録ピット10が形成される。なお、23、24、2526はそれぞれ隣接する層の層界である。なお、ランド8に対応する光記録層3にピットが形成されるように図示されているが、プリグルーブ7に対応する光記録層3にピットが形成されることが最近よく行われるようになっている。
【0007】
こうした構成のHD DVD−R 1あるいはBlue−ray Disc−R 20への高速記録では、従来の記録速度ないし低速記録のときより短い時間で所定の記録を行う必要があるため、記録パワーが高くなり、記録時に発生する光記録層3における熱量、ないし単位時間あたりの熱量が大きくなり、熱ひずみの問題が顕在化しやすく、記録ピット10がばらつく原因となっている。また、レーザー光9を照射するための半導体レーザーの出射パワー自体に限界があり、高速記録に対応することができる高感度の色素材料が求められている。
CD−R、DVD−Rに代表される従来の追記型の光情報記録媒体では、光記録層に使用される有機化合物の分解・変質による屈折率変化を生じることによる記録ピットの形成が重視され、光学定数、分解挙動の適切な材料の選択を行うことが重要であるが、その有機化合物では、405nmのような青色レーザー波長に対する光学的性質(特に屈折率)が従来並の値しか示さない。有機化合物のレーザー光吸収帯を青色レーザー波長近傍に持たせるためには、メチン鎖を有するシアニン色素についていえば分子骨格を小さくする、あるいは共役系を短くする必要があるが、これでは吸収係数の低下、すなわち屈折率の低下を招き、再生したときに大きな変調度を得ることができないからである。
【0008】
高感度の色素材料とは、色素において適切な屈折率を有することであり、そのためには、n(屈折率)が高く、k(消衰係数)が低いことを必要とするが、このためには色素が高い吸光係数を有し、吸収スペクトルの半値幅が小さいことが必要であることが知られている。
一般的には吸収最大波長(λmax )の短波長化に伴いε(モル吸光係数)が小さくなることが知られており、ブルーディスク等に用いられる短波長の記録波長ではHigh to Low型光記録ディスクを実現する色素の開発は難しいといわれている。
また、High to Low型とは逆の記録特性を有するLow to High型記録を行うには実用可能な色素はいくつかあるものの、高速記録においては色素分解に伴う発熱量が大きいことから、記録ピットが肥大化する、いわゆる熱干渉により高品位の記録が行えず、分解に伴う発熱量が低くてすむ色素が待望されている。
このように、現在、従来より短波長側の350〜500nm付近(たとえば405nm前後)の青色レーザー光を用いて記録および再生が可能な光情報記録媒体についても開発が行われているが、光記録層に使用する有機色素化合物について、レーザー光が短波長側になるほど、光記録層としてより薄い薄膜を形成し、かつ高屈折率を得られる必要があり、その高屈折率のためには、色素が高い吸光係数を有し、吸収スペクトルの半値幅が小さいことが必要である。
【0009】
光記録層3の屈折率を上げるために、上述したように青色レーザー光に対して高いεをもつ材料は少ないため、色素の成膜時の分子の集合度合いである半値幅の制御が重要である。
吸収スペクトルの半値幅(半値幅(会合性)/cm-1)と屈折率(n max)との関係は図3に示され、適切な半値幅を示す材料を用いることで、高屈折率を有する材料を確保することができる。
このような観点から、色素分子の会合状態、とくにJ会合を利用することが検討されている。J会合は、色素分子が、エッジトゥエッジ(edge to edge)で配列した状態にあり、このJ会合が起こると、光吸収のスペクトルのピークが急峻化し、半値幅も小さくなるとともに、そのピークが長波長側にずれることが知られている。
【0010】
従来の、J会合体薄膜作成技術としては、LB法、Dip法、スピンコート法などがある。
LB法(Langmuir−Blodgett法:親水基と疎水基の両方を持つ分子を適当な溶媒に溶かして水面上に展開させると気−液界面に吸着されて、単分子膜を水面上に形成する。これに基板等をゆうくり浸漬させる等で均一な薄膜を形成させる方法。)は、精密かつ均一な薄膜の作成が可能であり、優れた光学特性を有する薄膜を得ることができる。しかしながら、成膜時に高度な制御が必要であることから、時間およびコストの面で欠点があるという問題がある。
Dip法(色素溶液に基板を浸漬した後取り出して乾燥し、その表面に色素膜を形成する方法)は、容易に会合制御を行うことができる。しかしながら、均一な薄膜の形成が困難であるとともに、これを安定に保持することが困難であるという問題がある。
スピンコート法(基板を回転させながら滴下した塗布液をその遠心力で展開する方法)は、薄膜作成は比較的容易である。しかしながら、単純なコート条件下では、分子が様々な状態で存在するために、会合制御が困難であるという問題がある。このスピンコート法は、その工程の簡便さおよび容易さの面で、他の手法よりも優れており、CD−RおよびDVD−Rなどの光情報記録媒体の製造工程に広く使われている手法である。
【0011】
スピンコート法ないし類似の薄膜作成法によりJ会合体薄膜を作成しているものとして、以下のようなものがある。
特許文献1(特開2001−199919号公報)は、有機色素(シアニン色素)のJ会合体薄膜を形成する手法を記載している。すなわち、シアニン色素およびシリカのゾル溶液を用いて、J会合体薄膜を形成している。
この技術では、薄膜中のシアニン色素の濃度がシリカによって薄められることで、光情報記録媒体用の色素薄膜として十分な色素物性を得ることができないため、光情報記録媒体用としては不適切なものとなっている。すなわち、この技術を光情報記録媒体に応用することは困難である。
【0012】
特許文献2(特開2000−151904号公報)は、有機色素(シアニン色素)のJ会合体薄膜を形成する手法が記載されている。すなわち、シアニン色素および高分子材料の高粘度溶液をラビング処理してJ会合体薄膜を作成している。
この技術では、薄膜中のシアニン色素の濃度が高分子材料によって薄められることで、光情報記録媒体用の色素薄膜として十分な色素物性を得ることができないため、光情報記録媒体用としては不適切なものとなっている。またラビング処理に必要な熱(温度130℃)を基板2のポリカーボネートに加えると基板2の変形が生じてしまう。すなわち、この技術を光情報記録媒体に応用することは困難である。
【0013】
特許文献3(特開2001−305591号公報)は、有機色素(スクアリリウム色素)のJ会合体薄膜を形成する手法が記載されている。すなわち、J会合体薄膜を形成しやすいスクアリリウム色素を用い、スピンコート法で塗布してJ会合体薄膜を作成している。
この特許文献3では、スクアリリウム色素は有機溶剤に対するその溶解性が乏しい点が特徴として挙げられ、光情報記録媒体の基板2の材料であるポリカーボネートを侵食しない溶剤に対しての溶解性を確保しにくいという欠点がある。すなわち、光情報記録媒体用の色素薄膜として十分な厚さを得ることが困難である。また、溶解性を確保するため、スクアリリウム色素分子に適当な置換基を化学装飾すると、J会合体薄膜の形成に影響を及ぼすため、設計する上で溶解性および会合性を考慮しなければならない複雑さがある。すなわち、この技術を光情報記録媒体に応用することは困難である。
【0014】
なお、特許文献4(特許3429521号公報)は、LB膜を光記録層3用の材料として用いている。すなわち、フォトクロミック色素を含む色素皮膜を形成した基板2を用いており、この基板2は、遠赤外線を放射するセラミック基板である。このフォトクロミック材料が色素の分子会合体であり、スピロピランJ会合体薄膜であることを特徴とする光情報記録媒体が開示されている。このフォトクロミック色素を含む色素皮膜に、数種類のシアニン色素および特別な脂肪酸を適当な混合比で混ぜたクロロホルム溶液を、水面上に展開圧縮して分子配向制御した単分子膜を形成し、基板2に付着させたものである。
この技術では、無蛍光ガラス基板の表面にトリメチルクロロシランにより疎水処理した基板を作成し、この基板上に上記分子配向制御した単分子膜を垂直浸漬法により片面二十層累積吸着させたものであるが、実際に光情報記録媒体に用いる色素薄膜としては、十分な厚さを持たせることが困難であるとともに、LB法を現在の光情報記録媒体に応用することは非常に困難である。
【0015】
J会合体薄膜は、高屈折率を得ることが可能で、HD DVD−R 1、Blue−ray Disc−R 20の光記録層3として有用であるにもかかわらず、簡便かつ制御が容易な形成手法が確立されていないのが現状である。LB法やDip法では、その作成が比較的容易ではあっても、高度の制御技術が必要であったり、均一な薄膜を安定して得ることができないという問題がある。一方、スピンコート法は薄膜を容易に形成することが可能ではあるが、このスピンコート法によるJ会合体薄膜の作成が困難であるという問題がある。
【0016】
【特許文献1】特開2001−199919号公報
【特許文献2】特開2000−151904号公報
【特許文献3】特開2001−305591号公報
【特許文献4】特許3429521号公報
【特許文献5】特開2005−74872号公報(後述)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は以上のような諸問題にかんがみなされたもので、色素分子のJ会合体による均一な薄膜を形成可能なモノ(アザ)メチン化合物色素のJ会合体を直接形成するだけで他の補助手段を設けることなく光学特性を改善できる光情報記録媒体およびその製造方法を提供することを課題とする。
【0018】
また、本発明は、高屈折率を有し良好な光学特性を備えた薄膜を形成可能な光情報記録媒体およびその製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、簡易な手法(スピンコート法)でJ会合体による光記録層を形成可能な光情報記録媒体およびその製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、ポリカーボネートなど基板の材料を侵すことがない溶剤で色素材料を塗布可能な光情報記録媒体およびその製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、光記録層の薄膜内の構成成分が色素材料を主材料とし、高速記録、高密度記録に適した、高感度および短マーク記録能力に優れた光情報記録媒体およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、鋭意研究の結果、従来のCD−RやDVD−R/+Rでは色素分子のアモルファス薄膜を用いており、分子はランダムに配向した薄膜を形成しており、ランダムに分子が配向した薄膜では分子間の相互作用は弱く、ブロードな吸収スペクトルを示すが、J会合体では分子間相互作用により分子同士が規則的に配列した状態で微小な分子集合体を形成しているので、吸収スペクトルは半値幅が狭く、分子がランダムな場合よりも吸光度が大きくなる。このためJ会合体の薄膜を作成することにより高いnと低いkとを有する色素薄膜を形成することができ、High to Low型光情報記録媒体の実現や、記録レーザー光照射に伴う会合体の破壊による記録を行うことにより分解に伴う発熱を低減し、熱干渉を抑制することが期待されることを見い出した。
このようなJ会合体は古くから知られており、上述したように、高濃度の溶液中で形成したり、あるいは薄膜では、LB膜などの強制的に分子を配列させる手法などがとられてきたため、実用レベルの光記録ディスクに用いることができなかったが、最近になり、たとえばインドレニン系シアニン色素の2本のN−アルキル鎖末端をスルホン酸基で置換するとことによりスピンコート法でJ会合体薄膜を形成することが可能となってきた(特開2005−74872号公報、特願2004−101442明細書(本願出願人)が、そのほかのモノ(アザ)メチン色素化合物についても、スピンコート法を採用することにより均一な薄膜を簡便に塗布形成可能とすること、J会合体を形成可能な色素材料を用いて良好な光学特性(高屈折率)を得ること、この色素材料としては、溶解性の良好なオキサゾール核、チアゾール核などを含むモノ(アザ)メチン化合物(モノ(アザ)メチンシアニン)を用いて基板を侵すことがない溶剤を採用可能とすること、かくして記録前後で屈折率の差が大きく、色素の分解が吸熱反応である色素を用いることができることなどに着目したものである。
【0020】
本発明は、(1)、レーザー光により情報を記録する光記録層を有する光情報記録媒体であって、該光記録層は、下記一般式〔化1〕で示すモノ(アザ)メチン化合物および酸を含有する色素膜を有し、前記レーザー光を透過する層の透過した後側の表面に直接形成されている光情報記録媒体を提供するものである。
【化1】
(式中、Z1 、Z2 は、それぞれ、五員若しくは六員の芳香族環または含窒素複素環を形成するために必要な原子群を表し、同種でも異種でもよく、このZ1またはZ2が置換基を有していてもよく、Y1、Y2は、それぞれ、O、S、N−R(Rは(CH)n CH3 (nは0〜5から選ばれる数)のアルキル基)およびCH=CHの群から選ばれるいずれかであり、同種でも異種でもよく、AはCHまたはNであり、R1、R2は、それぞれ、(CH)n CH3 (nは0〜5から選ばれる数)のアルキル基を表し、同一でも異なってもよく、 1/m Xm-(mは1 〜4 から選ばれる数) は有機アニオン、無機アニオンおよび有機金属アニオンの群から選ばれるいずれかの少なくとも1種を表す。)
また、本発明は、(2)、上記一般式〔化1〕で示すモノ(アザ)メチン化合物が下記一般式〔化2〕で示すモノ(アザ)メチン化合物である上記(1)の光情報記録媒体、
【化2】
(式中、Y1、Y2は、それぞれ、O、S、N−R(Rは(CH)n CH3 (nは0〜5から選ばれる数)のアルキル基)およびCH=CHの群から選ばれるいずれかであり、同種でも異種でもよく、AはCHまたはNであり、R1、R2は、それぞれ、(CH)n CH3 (nは0〜5から選ばれる数)のアルキル基を表し、同一でも異なってもよく、 1/m Xm-(mは1 〜4 から選ばれる数) は有機アニオン、無機アニオンおよび有機金属アニオンの群から選ばれるいずれかの少なくとも1種を表し、R3 〜R6 は、それぞれ、水素原子、(CH)n CH3 (nは0〜5から選ばれる数)のアルキル基等の直鎖若しくは分岐の脂肪族炭化水素基、ハロゲン化アルキル基等のハロゲン化脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基等のエーテル基、エステル基、アルキルスルファモイル基、ニトロ基、シアノ基、芳香族環及び複素環の群から選ばれるいずれかであり、いずれも置換基を有していてもよく、同一または異なってもよい。)
(3)、酸は有機酸および無機酸のいずれかの少なくとも1種であり、上記一般式〔化1〕または〔化2〕で示すモノ(アザ)メチン化合物の色素に対してH+ がモル比で0.8〜3である上記(1)または(2)の光情報記録媒体、(4)、色素膜は上記一般式〔化1〕または〔化2〕で示すモノ(アザ)メチン化合物がJ会合体を形成した色素膜である上記(1)ないし(3)のいずれかの光情報記録媒体、(5)、レーザー光は、波長350〜500nmの波長領域からなる上記(1)ないし(4)のいずれかの光情報記録媒体、(6)、レーザー光により情報を記録する光記録層を設けた光情報記録媒体の製造方法であって、前記光記録層は、上記一般式〔化1〕または〔化2〕で示すモノ(アザ)メチン化合物の色素および酸を含有するモノ(アザ)メチン色素組成物の塗布液をスピンコート法により塗布することによる成膜により形成される光情報記録媒体の製造方法、(7)、モノ(アザ)メチン化合物の色素がJ会合体を形成する上記(6)の光情報記録媒体の製造方法、(8)、モノ(アザ)メチン化合物の色素を溶解する溶媒として、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール等のフッソ化アルコールを用いる上記(6)または(7)の光情報記録媒体の製造方法を提供するものである。
【0021】
上記モノ(アザ)メチン色素化合物、この化合物と酸との組成物、これらを用いた光情報記録媒体、およびその製造方法は、ブルーレーザー光による記録および再生はもちろん、記録用ないし再生用のCDおよびDVDにも応用可能である。
また、上記モノ(アザ)メチン色素化合物の合成にあたっては、オキサゾール核を含有するモノ(アザ)メチン化合物の合成法(特開平10−60295号公報)、複素環としてチアゾール核あるいはキノリン核を有する化合物の合成法(英国特許447,038)が知られている。また、モノメチンシアニン化合物の合成法については、WO 2005/095521A1号公報(PCT/JP2005/006724号明細書)にも記載されており、これを利用できる。同定にあたっては、NMR分析装置、GC/MS分析装置等を用いてモノ(アザ)メチンシアニン化合物の同定方法を参照することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明による光情報記録媒体およびその製造方法においては、上記一般式〔化1〕、〔化2〕に示すモノ(アザ)メチン化合物という特定の色素材料と酸を含有する色素膜を光記録層に有するので、スピンコート法という簡易な手法であっても色素分子のJ会合による均一な薄膜を形成することができる。J会合により色素薄膜の吸収スペクトルの先鋭化、半値幅の狭小化および長波長化することにより、高屈折率を持つ薄膜を形成することができる。したがって、色素分子のJ会合に由来する光吸収により、会合色素を熱分解させることにより、記録前後の屈折率差を生じやすくすることができる。しかも、このJ会合色素の熱分解は吸熱反応であり、従来のような発熱反応による熱の放熱制御を行う必要がない。
すなわち、高屈折率および記録前後における屈折率差などの優れた光学特性、および吸熱反応という熱特性を有する記録材料薄膜を均一に形成することができるとともに、スピンコート法という簡易な手法で上記会合体薄膜を形成し、従来の工程を改造することなく、優れた特性を持つ光情報記録媒体を得ることができる。
さらに溶解性の良好なモノ(アザ)メチン色素化合物を用いることにより、基板を侵すことがない2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール(TFP)などの溶剤で色素材料を塗布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、上記一般式〔化1〕、〔化2〕のモノ(アザ)メチン化合物に酸を添加して得られるモノ(アザ)メチン色素組成物を用いてJ会合体による薄膜を形成するようにしたので、その色素組成物の溶液又は分散液を使用して、簡易なスピンコート法を用いて、高屈折率で均一な光記録層を有する光情報記録媒体(HD DVD−R 1、Blue−ray Disc−R 20)を実現することができた。
上記一般式〔化1〕、〔化2〕のモノ(アザ)メチン化合物(モノ(アザ)メチンシアニン色素)において、分子(色素)骨格として、AがCHのときはモノメチンシアニン色素、AがNのときはモノアザメチンシアニン色素ということができ、Y1 、Y2 が例えばOのときはオキゾール核、Sのときはチアゾール核、Nのときはイミダゾール核、CH=CHのときはピリジン核ということができ、Y1 、Y2 は同種でも異種でもよいので、これら各核をモノメチン鎖またはモノアゾメチン鎖(−N=)で結合した構造を有し、モノ(アザ)メチンシアニン化合物(モノ(アザ)メチンシアニン色素)ということができる。
上記一般式〔化1〕、〔化2〕においては、 1/m Xm-は有機アニオン、無機アニオンおよび有機金属アニオンの群から選ばれるいずれかの少なくとも1種を表すが、mは1〜4のいずれかの数であり、mが1のときは1個の負の電荷を有し、mが2〜4のときはm個の負の電荷を有し、その場合は1/m倍して1個の負の電荷に相当するようにして用いることもできる。具体的には、有機アニオンとしては、CH3 COO- 等のアルキルカボン酸、トリフルオロメチルカルボン酸(CF3 COO- )、CH3 SO3 - 等のアルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸(φ−SO3 - 、φはベンゼン環を示し、以下同様)、トルエンスルホン酸(H3 C−φ−SO3 - )、ベンゼンカルボン酸(φ−COO- )等が挙げられ、無機アニオンとしては、ハロゲン原子イオン(Cl- 、Br- 、I- )、PF6 - 、SbF6 - 、リン酸、過塩素酸(ClO4 - )、過ヨウ素酸、ホウフッ化水素酸(BF4 - )、NO3 - 、OH- 、SCN- 、テトラフェニルホウ酸およびタングステン酸等のアニオン(陰イオン)が挙げられる。
上記一般式〔化1〕において、Z1 、Z2 は、それぞれ、五員若しくは六員の芳香族環または含窒素複素環を形成する(五員の芳香族環、六員の芳香族環、五員の含窒素複素環および六員の含窒素複素環のいずれかの環状基を形成する)ために必要な原子群を表し、同種でも異種でもよく、このZ1 、Z2 が置換基を有していてもよい。
【0024】
上記の芳香族環としては置換若しくは非置換のベンゼン環またはナフタリン環が挙げられるが、Z1 は下記一般式〔化3〕の4つのいずれかを表し、Z2 は下記一般式〔化4〕の4つのいずれかを表し、Z1 とZ2 は同種であっても異種であってもよい(ただし、D1 、D2 はそれぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシル基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボキシル基、アルキルヒドロキシル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキルアミド基、アルキルアミノ基、アルキルスルホンアミド基、アルキルカルボモイル基、アルキルスルファモイル基、アルキルスルホニル基、フェニル基、シアノ基、エステル基、ニトロ基、アシル基、アリル基、アリール基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、フェニルアゾ基、ピリジノアゾ基、アルキルカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、アミノ基、アルキルスルホン基、チオシアノ基、メルカプト基、クロルスルホン基、アルキルアゾメチン基、アルキルアミノスルホン基、ビニル基及びスルホン基の群のなかから選択される置換基を表し、同種であっても異種であってもよく、p、qは置換基の数であってそれぞれ1又は複数の整数を表す。)。
【0025】
【化3】
【0026】
【化4】
【0027】
上記一般式〔化2〕においては、R3、R4、R5、R6は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン化アルキル基、置換基を有してもよいフェニル基および(CH)n CH3 (nは0〜5から選ばれる数)のアルキル基の群から選ばれてもよいが、さらにそのほかの芳香族環、複素環を含めた群から選ばれてもよく、その選ばれたものには置換基を有していてもよく、同一または異なってもよいが、R3〜R6 の少なくとも1つがCl基であること、また、モノ( アザ) メチン鎖の両側のベンゼン環に対称にCl基を有することも望ましい。
【0028】
さらに詳しくは、上記一般式〔化2〕において、R3〜R6は、その単数又は複数が置換基によって置換されていてもよく、個々の置換基としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基などの脂肪族炭化水素基、ハロゲン化アルキル基等のハロゲン化脂肪族炭化水素基、メトシキ基、トリフルオロメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのエーテル基、メトキシカルボニル基、トリフルオロメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、アセトキシ基、トリフルオロアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などのエステル基、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、tert−ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基などのアルキルスルホニル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、エチルスルファモイル基、ジエチルスルファモイル基、プロピルスルファモイル基、ジプロピルスルファモイル基、ブチルスルファモイル基、ジブチルスルファモイル基、ペンチルスルファモイル基、ジペンチルスルファモイル基などのアルキルスルファモイル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲン基、さらには、ニトロ基、シアノ基などが挙げられ、さらにはいずれのものも単数または複数の置換基を有していてもよく、R3〜R6 と全部又は一部が同一でも異なってもよい。芳香族環としては、単環式のベンゼン環(置換基を有してもよいフェニル基でもよく)であり、複素環としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子およびテルル原子から選ばれるヘテロ原子を1または複数含んでなるものが望ましく、( R3、R4) と( R5、R6) とでは同一でも異なってもよく、いずれのものも単数または複数の置換基を有していてもよい。
【0029】
このような芳香環および複素環は、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、5−メチルヘキシル基などの脂肪族炭化水素基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基などの脂環式炭化水素基、フェニル基、ビフェニリル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、キシリル基、メシチル基、スチリル基、シンモナイル基、ナフチル基などの芳香族炭化水素基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などのエステル基、第一級アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基などの置換または無置換の脂肪族、脂環式もしくは芳香族アミノ基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、エチルスルファモイル基、ジエチルスルファモイル基、プロピルスルファモイル基、ジプロピルスルファモイル基、イソプロピルスルファモイル基、ジイソプロピルスルファモイル基、ブチルスルファモイル基、ジブチルスルファモイル基などのアルキルスルファモイル基、さらには、カルバモイル基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、スルホ基、スルホアミノ基、スルホンアミド基などの置換基を1または複数有していてもよい。
なおまた、上記〔化1〕、〔化2 〕の一般式で表されるモノ( アザ) メチン化合物(モノ( アザ) メチンシアニン色素)において、その構造上、シス/トランス異性体が存在する場合には、いずれの異性体もこの発明に包含されるものとする。
【0030】
具体的には、後述する実施例に挙げたもののほかには、下記〔化5〕〜〔化8〕のモノメチンシアニン化合物が挙げられる。
【0031】
【化5】
【0032】
【化6】
【0033】
【化7】
【0034】
【化8】
【0035】
上記一般式〔化1〕、〔化2 〕やこれらに属する上記、後記の具体的化合物の構造のモノ( アザ) メチン化合物、酸および溶剤の選択により、前2者を含有する色素組成物、これら3者を含有する色素組成物を、溶液又は分散液として得て、スピンコート法でモノ( アザ) メチン化合物のJ会合体を含む薄膜を容易に作成することができる。
加える酸としては、リン酸、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸等の無機酸、アセチルサルチル酸(HOOC−φ−OCOCH3(オルト体)(後記〔化20〕))、ヒドロキノン(HO−φ−OH(パラ体)(後記〔化17〕))、カテコール(HO−φ−OH(オルト体)(後記〔化18〕))、2−ナフトール(φφ−OH(φφはナフタレン環を示す)(後記〔化19))等の有機酸が挙げられ、これらの誘導体も挙げられるが、これらに限定されるものではない。
加える酸は、上記一般式〔化1〕、〔化2〕やこれらに属する上記、後記の具体的化合物のモノ(アザ)メチン化合物の1分子に対して、H+ (1水素イオン)がモル比で0.8〜3であることが好ましい、さらには1〜3であることが好ましい。
【0036】
溶剤としては、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール等のフッソ化アルコールが好ましいが、クロロホルム、ジクロロエタン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、メタノール、トルエン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、メチルセロソルブ等のセロソルブ類、ジオキサン等も基板を侵食しない程度に単独又は併用し、また、フッソ化アルコールと単数又は複数併用することもできる。
このようなJ会合を形成する色素材料を使用することにより、光記録層3の高屈折率化が可能となり、かつ、光記録層3の低膜厚化が容易となり、高変調度を確保し、350〜500nm付近の波長領域で優れた記録特性を有する光情報記録媒体1、20を製造することができる。すなわち、記録時に、J会合を破壊することにより、記録前後の屈折率差を確保し、記録感度を改善することができる。
なお、一般的な色素の熱分解が発熱反応であるのに対して、本発明で用いるモノ(アザ)メチン化合物のJ会合状態における熱分解は吸熱反応であるため、分解時の熱拡散を抑制することができる。
【実施例】
【0037】
つぎに本発明の実施例による光情報記録媒体用色素材料、これを用いた光情報記録媒体、およびその製造方法を図4ないし図8にもとづき説明する。ただし、図1および図2と同様の部分には同一符号を付し、その詳述はこれを省略する。
(実施例1)
下記〔化9〕のモノメチンシアニン化合物(化合物I)を2.0g量りとり、100mLフラスコに入れ、さらにリン酸をそれぞれ0(添加無し)、0.5倍(178mg)(化合物Iに対してH+ がモル比で0.5(化合物Iの1分子:H+ が0.5水素イオン)、以下これに準ずる。)、1倍(357mg)、2倍(714mg)、4倍(1428mg)加えて、さらに2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール(TFP)を加えて全量100mLにしてよく攪拌して溶解し、化合物Iを20g/Lの濃度で含有する各モノメチン色素組成物を調製した。
上記調製した各モノメチン色素組成物の溶液を、5mL量りとり、1000mLのメスフラスコに滴下し、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールを加えて、全量を1000mLとし、よく攪拌して得られた溶液について、分光スペクトル測定を行った。
次に、上記調製した各モノメチン色素組成物の溶液を、厚さ0.6mm、4cm四方のガラスの単板に1mL滴下したのち、300rpmの回転数で30秒間スピンコートすることにより、均一なJ会合体薄膜を得た。各モノメチン色素組成物の薄膜について分光スペクトル測定を行った。
【0038】
【化9】
【0039】
(比較例1)
また、比較のために、下記〔化10〕のモノメチンシアニン色素(化合物X)についても、上述の化合物Iの場合と同様に、リン酸をそれぞれ0(添加無し)、0.5倍(178mg)、1倍(357mg)、2倍(714mg)、4倍(1428mg)添加し、化合物Xを20g/Lの濃度で含有する各モノメチン色素組成物をの溶液を調製し、これらの溶液を上記単板上にスピンコートした。その塗布膜の薄膜について分光スペクトル測定を行った。その塗布膜の薄膜について分光スペクトル測定を行った。
【0040】
【化10】
【0041】
上記それぞれ(三種類)の化合物についての分光スペクトル測定の結果を図4、5に示す。図4の化合物Iの溶液中での吸収スペクトル(一点鎖線、TFP溶液)に対して、単板上での吸収スペクトルはピーク位置がいずれも長波長側にシフトしているが、太線実線(薄膜((リン酸)添加無し)に比べて、点線(薄膜((リン酸添加)1倍)では吸収が大きくなる傾向が見られ、細線実線(薄膜((リン酸添加)2倍)では、さらなるリン酸添加によりピークがさらに長波長側に移動し、ピークも高く、急峻になり、半値幅も小さくなり、単板の薄膜によるスペクトル形状が溶液の状態と比較して、J会合の特徴である長波長化および先鋭化(半値幅の狭小化)していることがわかる。なお、薄膜化した場合であっても、長線点線(薄膜((リン酸添加)4倍)では、リン酸添加過剰によりJ会合体が壊れていることがわかる。
これに対し、図5の化合物Xの単板上での吸収スペクトルは、いずれもピーク位置は変わらず、太線実線(薄膜((リン酸)添加無し)に比べて、点線(薄膜((リン酸添加)1倍)、細線実線(薄膜((リン酸添加)2倍)はやや吸収が小さく、長線点線(薄膜((リン酸添加)4倍)は吸収がやや大きくなっているが、差はほとんどないということができ、リン酸添加によるピークの長波長側への移動、ピークの急峻化、半値幅の狭小化はみられず、J会合の特徴である長波長化および先鋭化(半値幅の狭小化)が見られないことがわかる。
このように、J会合体を形成する色素膜は、化合物の溶液の状態と薄膜化した状態との吸収スペクトルの変化を見ることで確認することができる。
例えば、薄膜化した状態での吸収ピークが、溶液の状態での吸収ピークよりも長波長側にシフトし、薄膜化した状態での吸収スペクトルの半値幅が、溶液の状態での吸収スペクトルの半値幅よりも狭いことで確認することができる。
しかしながら、この方法に限るものではなく、溶液中のモノマーの吸収スペクトルと薄膜化した状態での吸収スペクトルとを前述のように比較することで確認することもでき、種々の確認方法を採ることができる。
下記〔表1〕は、化合物I((リン酸添加)2倍)、Xの薄膜(単板上)について、波長405nmにおいてそれぞれの光学特性を示したものであって、化合物I((リン酸添加)2倍)は、J会合体を形成することにより、屈折率nの向上という良好な光学特性が認められる。
【0042】
【表1】
【0043】
以上のように、化合物I(リン酸添加無し)、化合物Xのシアニン色素薄膜ではJ会合体は形成されておらず、化合物Iのモノメチン化合物では、特にリン酸添加2倍の場合には、J会合体が形成されており、これをスピンコート塗布することにより、より簡易的に均一なJ会合体薄膜を形成することができることがわかった。
【0044】
(比較例2)
上記化合物Xの代わりに、下記〔化11〕のモノメチンシアニン色素(化合物XI)についても、上述の化合物Xの場合と同様に、リン酸をそれぞれ0(添加無し)、1倍、2倍、4倍添加した溶液を調製し、これらの溶液を上記単板上にスピンコートし、化合物XIの薄膜を有する単板について分光スペクトル測定を行った結果を図6に示す。
図6の化合物Xの単板上での吸収スペクトルは、いずれもピーク位置は変わらず、太線実線(薄膜((リン酸)添加無し)に比べて、点線(薄膜((リン酸添加)1倍)、細線実線(薄膜((リン酸添加)2倍)、長線点線(薄膜((リン酸添加)4倍)は吸収がやや大きくなっているが、差はほとんどないということができ、リン酸添加によるピークの長波長側への移動、ピークの急峻化、半値幅の狭小化はみられず、J会合の特徴である長波長化および先鋭化(半値幅の狭小化)が見られないことがわかる。
【0045】
【化11】
【0046】
(実施例2〜4)
実施例1において、化合物Iの代わりに、下記〔化12〕、〔化13〕、〔14〕、〔15〕のそれぞれのモノメチンシアニン色素(化合物II、III、IV、V)についても、上述の化合物Iの場合と同様に、リン酸をそれぞれ1倍、2倍添加した溶液を調製し、これらの溶液を上記単板上にスピンコートし、化合物II〜Vのそれぞれの薄膜を有する単板について分光スペクトル測定を行った。その結果を図7、8、9、10に示す。
図7〜10の単板上での吸収スペクトルは、点線(薄膜((リン酸添加)1倍)に比べ、細線実線(薄膜((リン酸添加)2倍)では、さらなるリン酸添加によりピークがさらに長波長側に移動し、ピークも急峻になり、半値幅も小さくなり、単板の薄膜によるスペクトル形状が溶液の状態と比較して、J会合の特徴である長波長化および先鋭化(半値幅の狭小化)していることがわかる。
【0047】
【化12】
【0048】
【化13】
【0049】
【化14】
【0050】
【化15】
【0051】
(実施例5)
下記〔化16〕のモノアザメチンシアニン化合物(化合物VI)を2.0g量りとり、100mLフラスコに入れ、さらにリン酸をそれぞれ0(添加無し)、0.5倍(160mg)(化合物VIに対してH+ がモル比で0.5(化合物VIの1分子:H+ が0.5水素イオン)、以下これに準ずる。)、1倍(320mg)、2倍(640mg)、4倍(1280mg)加えて、さらに2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール(TFP)を加えて全量100mLにしてよく攪拌して溶解し、化合物VIを20g/Lの濃度で含有する各モノメチン色素組成物を調製した。
上記調製した各モノメチン色素組成物の溶液を、5mL量りとり、1000mLのメスフラスコに滴下し、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールを加えて、全量を1000mLとし、よく攪拌して得られた溶液について、分光スペクトル測定を行った。
次に、上記調製した化合物VIを20g/Lの濃度で含有する各モノメチン色素組成物の溶液を、厚さ0.6mm、4cm四方のガラスの単板に1mL滴下したのち、300rpmの回転数で30秒間スピンコートすることにより、均一なJ会合体薄膜を得た。
上記それぞれの化合物についての分光スペクトル測定の結果を図11、12に示す。図11の化合物VIの溶液中での吸収スペクトルでは、リン酸の添加量によってピークの波長位置に変化がないのに対し、図12の単板上での吸収スペクトルでは、Ref(リン酸添加無し)に比べて、リン酸添加によりピークが長波長側に移動し、リン酸2倍添加の場合には、ピークも高く、急峻になり、半値幅も小さくなり、単板の薄膜によるスペクトル形状が溶液の状態と比較して、J会合の特徴である長波長化および先鋭化(半値幅の狭小化)していることがわかる。なお、図12では、リン酸添加過剰(リン酸4倍添加)によりJ会合体が壊れていることがわかる。
J会合性を示さず色素分子が比較的分散状態にある化合物X(図5)と比較しても化合物VI(特にリン酸2倍添加の場合)の薄膜の吸収スペクトルが先鋭化していることがわかる。
上記〔表1〕は、化合物I、化合物Xの薄膜(単板上)について、波長405nmにおいてそれぞれの光学特性を示すものであるが、化合物VI(リン酸2倍添加)についも、化合物Iに準じて、J会合体を形成することにより、屈折率nの向上という良好な光学特性が認められる。
【0052】
【化16】
【0053】
(実施例6)
実施例1において、リン酸の代わりにヒドロキノン(下記〔化17))をそれぞれ0(添加なし)、1倍用いたこと以外は同様にして、各モノメチン色素組成物の薄膜(単板上)を形成し、その薄膜について分光スペトクル測定を行った結果を図13に示す。
図13では、実線((ヒドロキノン)添加なし)に比べて、点線((ヒドロキノン)1倍)では吸収が大きくなり、ピークが長波長側に移動し、ピークも急峻になり、半値幅も小さくなり、J会合の特徴である長波長化および先鋭化(半値幅の狭小化)していることがわかる。
【0054】
【化17】
【0055】
(実施例7)
実施例1において、リン酸の代わりにカテコール(下記〔化18))をそれぞれ0(添加なし)、1倍用いたこと以外は同様にして、各モノメチン色素組成物の薄膜(単板上)を形成し、その薄膜について分光スペトクル測定を行った結果を図14に示す。
図14では、実線((カテコール)添加なし)に比べて、点線((カテコール)1倍)では吸収が大きくなり、ピークが長波長側に移動し、ピークも急峻になり、半値幅も小さくなり、J会合の特徴である長波長化および先鋭化(半値幅の狭小化)していることがわかる。
【0056】
【化18】
【0057】
(実施例8)
実施例1において、リン酸の代わりに2−ナフトール(下記〔化19))をそれぞれ0(添加なし)、1倍用いたこと以外は同様にして、各モノメチン色素組成物の薄膜(単板上)を形成し、その薄膜について分光スペトクル測定を行った結果を図15に示す。
図15では、実線((ナフトール)添加なし)に比べて、点線((ナフトール)1倍)では吸収が大きくなり、ピークが長波長側に移動し、ピークも急峻になり、半値幅も小さくなり、J会合の特徴である長波長化および先鋭化(半値幅の狭小化)していることがわかる。
なお、下記〔化17〕〜〔化19〕のそれぞれの代わりに、アセチルサリチル酸(下記〔化20〕)を同様にして用いてもこれらに準じた結果を得ることができる。
【0058】
【化19】
【0059】
【化20】
【0060】
(比較例3)
実施例1において、リン酸の代わりにマロン酸ジメチルをそれぞれ0(添加なし)、1倍、2倍用いたこと以外は同様にして、各モノメチン色素組成物の薄膜(単板上)を形成し、その薄膜について分光スペトクル測定を行った結果を図16に示す。
図16では、いずれもピーク位置は変わらず、実線((マロン酸ジメチル)添加なし)に比べて、点線((マロン酸ジメチル)1倍)、長線点線((マロン酸ジメチル)2倍)はやや吸収が大きくなっているが、差はほとんどないということができ、ピークの長波長側への移動、ピークの急峻化、半値幅の狭小化は見られず、J会合の特徴である長波長化および先鋭化(半値幅の狭小化)は見られないことがわかる。
【0061】
(比較例4)
実施例1において、リン酸の代わりに酢酸ナトリウムをそれぞれ0(添加なし)、1倍、2倍用いたこと以外は同様にして、各モノメチン色素組成物の薄膜(単板上)を形成し、その薄膜について分光スペトクル測定を行った結果を図17に示す。
図17では、いずれもピーク位置は変わらず、実線((酢酸ナトリウム)添加なし)に比べて、点線((酢酸ナトリウム)1倍)、長線点線((酢酸ナトリウム)2倍)はやや吸収が大きくなっているが、大きな差はないということができ、ピークの長波長側への移動、ピークの急峻化、半値幅の狭小化は見られず、J会合の特徴である長波長化および先鋭化(半値幅の狭小化)は見られないことがわかる。
【0062】
(実施例9)
実施例1で用いた化合物Iにリン酸及び溶剤を添加して得られるモノメチン色素組成物の薄膜(J会合性モノメチン色素薄膜)をHD DVD−R 1の光記録層3に応用した例を以下に示す。
上記〔化9〕のモノメチンシアニン化合物(化合物I)を2.0g量りとり、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール100mLに溶解し、さらにリン酸を714mg(2倍(化合物Iに対してH+ がモル比で2)加え、化合物Iについて20g/Lの溶液を調製した。なお、下記〔化21〕の化合物VIIを光安定剤として重量比で30%添加した。なお、他のアミニウム系、ジイモニウム系安定剤も使用できる。
ポリカーボネート製で、ピッチが0.40μm間隔で刻んであるプリグルーブ7を有する外径120mm、厚さ0.6mmの円盤状の基板2に、この塗布溶液の1mLを所定の回転数でスピンコート法により塗布し、均一なJ会合体薄膜を得た。
この色素を塗布した透明基板2を温度80℃で30分間熱処理し、残留している余分な溶剤、水成分を揮発処理して、色素面(光記録層3)を形成した。
さらに、この光記録層3の上に銀(Ag)をスパッタリングし、厚さ100nmの光反射層4を形成した。
なお、基板2の周縁部に飛び散った色素をメタノールで洗浄して洗い流した。
さらに、光反射層4の上に、紫外線硬化型の樹脂接着剤SD−318(大日本インキ化学工業製)をスピンコートしたのち、これに紫外線を照射して硬化させ、保護層5を形成した。
この保護層5の表面に紫外線硬化樹脂接着剤を塗布し、上述と同じ材質および形状(厚さ0.6mm、外径120mm)のダミー基板6を貼り合わせ、この接着剤に紫外線を照射して硬化させて接着し、HD DVD−R 1(HD DVD追記型)を作成した。
【0063】
【化21】
【0064】
かくして、化合物Iとリン酸を含有するモノメチン色素組成物により、均一なモノメチンシアニン化合物色素のJ会合体薄膜を光記録層3に持つHD DVD−R 1を得た。 また、比較例1で用いた化合物Xを用いて、上述と同様にして光記録層3を形成し、HD DVD−R 1を得た。
上記〔表1〕は、それぞれのHD DVD−R 1の電気特性評価結果を示すものであって、化合物Iとリン酸を含有するモノメチン色素組成物による光記録層3を有するHD DVD−R 1の方が記録に必要なパワーが低いため記録感度はより良好であり、最短マーク長のC/Nレベルが改善し、また、ランダム記録信号記録時のシンメトリも低パワーで達成可能である。
【0065】
(実施例10)
実施例9において、化合物Iの2.0gの代わりに、実施例5で用いた化合物VIを同じモル数になるように用いたこと以外は同様にして、均一なモノアザメチンシアニン化合物色素のJ会合体薄膜を光記録層3にもつHD DVD−R 1(HD DVD追記型)を作成した。
上記〔表1〕の化合物Iを用いたHD DVD−R 1の電気特性評価結果に準じた結果が得られ、化合物VIとリン酸を含有するモノアザメチン色素組成物による光記録層3を有するHD DVD−R 1の方が、化合物Xを用いたものよりも記録に必要なパワーが低いため記録感度はより良好であり、最短マーク長のC/Nレベルが改善し、また、ランダム記録信号記録時のシンメトリも低パワーで達成可能である。
【0066】
化合物I、VIのそれぞれとリン酸とを実施例9、10の場合と同様に用い、それぞれBlue−ray Disc−R(Blu−ray追記型)20を作成しても、実施例9、10のHD DVD−R 1(HD DVD追記型)に準じた結果得られる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】一般的な円盤状の光情報記録媒体(HD DVD−R)の要部拡大断面図である。
【図2】他のタイプの一般的な円盤状の光情報記録媒体(Blue−ray Disc−R)の要部拡大断面図である。
【図3】吸収スペクトルの半値幅と屈折率との関係を示すグラフである。
【図4】化合物I(〔化9〕)にリン酸を添加した溶液およびその溶液の塗布膜の薄膜(単板上)について、分光スペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図5】化合物X(〔化10〕)にリン酸を添加した溶液の塗布膜の薄膜(単板上)について、分光スペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図6】化合物XI(〔化11〕)にリン酸を添加した溶液の塗布膜の薄膜(単板上)について、分光スペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図7】化合物II(〔化12〕)にリン酸を添加した溶液の塗布膜の薄膜(単板上)について、分光スペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図8】化合物III(〔化13〕)にリン酸を添加した溶液の塗布膜の薄膜(単板上)について、分光スペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図9】化合物IV(〔化14〕)にリン酸を添加した溶液の塗布膜の薄膜(単板上)について、分光スペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図10】化合物V(〔化15〕)にリン酸を添加した溶液の塗布膜の薄膜(単板上)について、分光スペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図11】化合物VI(〔化16〕)にリン酸を添加した溶液について、分光スペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図12】化合物VI(〔化16〕)にリン酸を添加した薄膜(単板上)について、分光スペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図13】化合物I(〔化9〕)にヒドロキノン(〔化17)を添加した溶液の塗布膜の薄膜(単板上)について、分光スペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図14】化合物I(〔化9〕)にカテコール(〔化18)を添加した溶液の塗布膜の薄膜(単板上)について、分光スペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図15】化合物I(〔化9〕)に2ーナフトール(〔化19)を添加した溶液の塗布膜の薄膜(単板上)について、分光スペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図16】化合物I(〔化9〕)にマロン酸ジメチルを添加した溶液の塗布膜の薄膜(単板上)について、分光スペクトル測定の結果を示すグラフである。
【図17】化合物I(〔化9〕)に酢酸ナトリウムを添加した溶液の塗布膜の薄膜(単板上)について、分光スペクトル測定の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0068】
1 HD DVD−R
2 基板
3 光記録層(光吸収層)
4 光反射層
5 保護層(接着層)
6 ダミー基板
7 プリグルーブ
8 ランド
9 レーザー光(記録光、再生光)
10 記録ピット
11 第1の層界
12 第2の層界
13 第3の層界
14 第4の層界
20 Blue−ray Disc−R
21 接着層
22 カバー層
23 第1の層界
24 第2の層界
25 第3の層界
26 第4の層界
27 第5の層界
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光により情報を記録する光記録層を有する光情報記録媒体であって、該光記録層は、下記一般式〔化1〕で示すモノ(アザ)メチン化合物および酸を含有する色素膜を有し、前記レーザー光を透過する層の透過した後側の表面に直接形成されている光情報記録媒体。
【化1】
(式中、Z1 、Z2 は、それぞれ、五員若しくは六員の芳香族環または含窒素複素環を形成するために必要な原子群を表し、同種でも異種でもよく、このZ1またはZ2が置換基を有していてもよく、Y1、Y2は、それぞれ、O、S、N−R(Rは(CH)n CH3 (nは0〜5から選ばれる数)のアルキル基)およびCH=CHの群から選ばれるいずれかであり、同種でも異種でもよく、AはCHまたはNであり、R1、R2は、それぞれ、(CH)n CH3 (nは0〜5から選ばれる数)のアルキル基を表し、同一でも異なってもよく、 1/m Xm-(mは1 〜4 から選ばれる数) は有機アニオン、無機アニオンおよび有機金属アニオンの群から選ばれるいずれかの少なくとも1種を表す。)
【請求項2】
上記一般式〔化1〕で示すモノ(アザ)メチン化合物が下記一般式〔化2〕で示すモノ(アザ)メチン化合物である請求項1に記載の光情報記録媒体。
【化2】
(式中、Y1、Y2は、それぞれ、O、S、N−R(Rは(CH)n CH3 (nは0〜5から選ばれる数)のアルキル基)およびCH=CHの群から選ばれるいずれかであり、同種でも異種でもよく、AはCHまたはNであり、R1、R2は、それぞれ、(CH)n CH3 (nは0〜5から選ばれる数)のアルキル基を表し、同一でも異なってもよく、 1/m Xm-(mは1 〜4 から選ばれる数) は有機アニオン、無機アニオンおよび有機金属アニオンの群から選ばれるいずれかの少なくとも1種を表し、R3 〜R6 は、それぞれ、水素原子、(CH)n CH3 (nは0〜5から選ばれる数)のアルキル基等の直鎖若しくは分岐の脂肪族炭化水素基、ハロゲン化アルキル基等のハロゲン化脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基等のエーテル基、エステル基、アルキルスルファモイル基、ニトロ基、シアノ基、芳香族環及び複素環の群から選ばれるいずれかであり、いずれも置換基を有していてもよく、同一または異なってもよい。)
【請求項3】
酸は有機酸および無機酸のいずれかの少なくとも1種であり、上記一般式〔化1〕または〔化2〕で示すモノ(アザ)メチン化合物の色素に対してH+ がモル比で0.8〜3である請求項1または2に記載の光情報記録媒体。
【請求項4】
色素膜は上記一般式〔化1〕または〔化2〕で示すモノ(アザ)メチン化合物がJ会合体を形成した色素膜である請求項1ないし3のいずれかに記載の光情報記録媒体。
【請求項5】
レーザー光は、波長350〜500nmの波長領域からなる請求項1ないし4のいずれかに記載の光情報記録媒体。
【請求項6】
レーザー光により情報を記録する光記録層を設けた光情報記録媒体の製造方法であって、前記光記録層は、上記一般式〔化1〕または〔化2〕で示すモノ(アザ)メチン化合物の色素および酸を含有するモノ(アザ)メチン色素組成物の塗布液をスピンコート法により塗布することによる成膜により形成される光情報記録媒体の製造方法。
【請求項7】
モノ(アザ)メチン化合物の色素がJ会合体を形成する請求項6に記載の光情報記録媒体の製造方法。
【請求項8】
モノ(アザ)メチン化合物の色素を溶解する溶媒として、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール等のフッソ化アルコールを用いる請求項6または7に記載の光情報記録媒体の製造方法。
【請求項1】
レーザー光により情報を記録する光記録層を有する光情報記録媒体であって、該光記録層は、下記一般式〔化1〕で示すモノ(アザ)メチン化合物および酸を含有する色素膜を有し、前記レーザー光を透過する層の透過した後側の表面に直接形成されている光情報記録媒体。
【化1】
(式中、Z1 、Z2 は、それぞれ、五員若しくは六員の芳香族環または含窒素複素環を形成するために必要な原子群を表し、同種でも異種でもよく、このZ1またはZ2が置換基を有していてもよく、Y1、Y2は、それぞれ、O、S、N−R(Rは(CH)n CH3 (nは0〜5から選ばれる数)のアルキル基)およびCH=CHの群から選ばれるいずれかであり、同種でも異種でもよく、AはCHまたはNであり、R1、R2は、それぞれ、(CH)n CH3 (nは0〜5から選ばれる数)のアルキル基を表し、同一でも異なってもよく、 1/m Xm-(mは1 〜4 から選ばれる数) は有機アニオン、無機アニオンおよび有機金属アニオンの群から選ばれるいずれかの少なくとも1種を表す。)
【請求項2】
上記一般式〔化1〕で示すモノ(アザ)メチン化合物が下記一般式〔化2〕で示すモノ(アザ)メチン化合物である請求項1に記載の光情報記録媒体。
【化2】
(式中、Y1、Y2は、それぞれ、O、S、N−R(Rは(CH)n CH3 (nは0〜5から選ばれる数)のアルキル基)およびCH=CHの群から選ばれるいずれかであり、同種でも異種でもよく、AはCHまたはNであり、R1、R2は、それぞれ、(CH)n CH3 (nは0〜5から選ばれる数)のアルキル基を表し、同一でも異なってもよく、 1/m Xm-(mは1 〜4 から選ばれる数) は有機アニオン、無機アニオンおよび有機金属アニオンの群から選ばれるいずれかの少なくとも1種を表し、R3 〜R6 は、それぞれ、水素原子、(CH)n CH3 (nは0〜5から選ばれる数)のアルキル基等の直鎖若しくは分岐の脂肪族炭化水素基、ハロゲン化アルキル基等のハロゲン化脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基等のエーテル基、エステル基、アルキルスルファモイル基、ニトロ基、シアノ基、芳香族環及び複素環の群から選ばれるいずれかであり、いずれも置換基を有していてもよく、同一または異なってもよい。)
【請求項3】
酸は有機酸および無機酸のいずれかの少なくとも1種であり、上記一般式〔化1〕または〔化2〕で示すモノ(アザ)メチン化合物の色素に対してH+ がモル比で0.8〜3である請求項1または2に記載の光情報記録媒体。
【請求項4】
色素膜は上記一般式〔化1〕または〔化2〕で示すモノ(アザ)メチン化合物がJ会合体を形成した色素膜である請求項1ないし3のいずれかに記載の光情報記録媒体。
【請求項5】
レーザー光は、波長350〜500nmの波長領域からなる請求項1ないし4のいずれかに記載の光情報記録媒体。
【請求項6】
レーザー光により情報を記録する光記録層を設けた光情報記録媒体の製造方法であって、前記光記録層は、上記一般式〔化1〕または〔化2〕で示すモノ(アザ)メチン化合物の色素および酸を含有するモノ(アザ)メチン色素組成物の塗布液をスピンコート法により塗布することによる成膜により形成される光情報記録媒体の製造方法。
【請求項7】
モノ(アザ)メチン化合物の色素がJ会合体を形成する請求項6に記載の光情報記録媒体の製造方法。
【請求項8】
モノ(アザ)メチン化合物の色素を溶解する溶媒として、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール等のフッソ化アルコールを用いる請求項6または7に記載の光情報記録媒体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−307814(P2007−307814A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−139888(P2006−139888)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
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