説明

光書込み装置、画像形成装置及び光書込み装置の制御方法

【課題】光学部材による影響を受けた後のビームの指向性の際による濃度のばらつきを適正に調整すること
【解決手段】光源装置281を駆動して光ビームを照射させる書込み制御部121と、光ビームの点灯時間及び光ビームの光量を調整するための調整値を記憶している調整値記憶部122とを含み、書込み制御部121は、は、調整値に基づいて光ビームの点灯時間及び光ビームの光量を制御し、調整値が、光ビームを感光体ドラム109に導くための光学部材を経た後の光ビームの指向性に基づき、予め定められた基準となる指向性に応じて点灯時間及び光量を調整するように生成された値であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光書込み装置、画像形成装置及び光書込み装置の制御方法に関し、特に、光書込み装置における発光制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報の電子化が推進される傾向にあり、電子化された情報の出力に用いられるプリンタやファクシミリ及び書類の電子化に用いるスキャナ等の画像処理装置は欠かせない機器となっている。このような画像処理装置は、撮像機能、画像形成機能及び通信機能等を備えることにより、プリンタ、ファクシミリ、スキャナ、複写機として利用可能な複合機として構成されることが多い。
【0003】
このような画像処理装置のうち、電子化された書類の出力に用いられる画像形成装置においては、電子写真方式の画像形成装置が広く用いられている。電子写真方式の画像形成装置においては、感光体を露光することにより静電潜像を形成し、トナー等の顕色剤を用いてその静電潜像を現像してトナー画像を形成し、そのトナー画像を用紙に転写することによって紙出力を行う。
【0004】
電子写真方式の画像形成装置において、感光体を露光する光書き込み装置は、感光体を露光するビームを照射する光源及び照射されたビームを反射して感光体上を走査するためのポリゴンスキャナ等の光学部材を含む。このような光書き込み装置においては、ビームが同一光量及び同一点灯時間に調整されている場合であっても、レンズ、ミラー及びアパーチャ等の光学部材の違いによってビームの指向性が変化する場合がある。
【0005】
指向性の異なるビームによって夫々形成された画像には、濃度のばらつきが生じる。このような濃度のばらつきを解消するため、従来、形成された画像の状態に基づいて感光体を露光するビームのパルス幅を調整する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に係る方法では、形成された画像に基づいてパルス幅の調整を行うため、上述した光学部材の影響をも含んだ結果を調整することができる。ここで、上述したビームの指向性による影響は、特に画像の低濃度の領域における濃度のばらつきとして現れやすい。しかしながら、特許文献1に係る方法のように画像の濃度を検知する場合、低濃度領域においてはトナーの付着量が微小であるため、SN(Signal Noise)比が悪くなり、検知精度が低くなる。その結果、濃度のばらつきを適正に調整することが困難となる。
【0007】
本発明は、上記実情を考慮してなされたものであり、光学部材による影響を受けた後のビームの指向性の際による濃度のばらつきを適正に調整することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、感光体上に静電潜像を書き込むために前記感光体に光ビームを照射する光書き込み装置であって、光源を駆動して前記光ビームを照射させる光源制御部と、前記光ビームの点灯時間及び前記光ビームの光量を調整するための調整値を記憶している調整値記憶部とを含み、前記光源制御部は、前記調整値に基づいて前記光ビームの点灯時間及び前記光ビームの光量を制御し、前記調整値は、前記光書き込み装置において前記光ビームを前記感光体に導くための光学部材を経た後の前記光ビームの指向性に基づき、予め定められた基準となる指向性に応じて前記光ビームの点灯時間及び前記光ビームの光量を調整するように生成された値であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の他の態様は、画像形成装置であって、上述した光書き込み装置を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の更に他の態様は、感光体上に静電潜像を書き込むために前記感光体に光ビームを照射する光書き込み装置の制御方法であって、前記光書き込み装置は、光源を駆動して前記光ビームを照射させる光源制御部と、前記光ビームの点灯時間及び前記光ビームの光量を調整するための調整値を記憶している調整値記憶部とを含み、前記調整値は、前記光書き込み装置において前記光ビームを前記感光体に導くための光学部材を経た後の前記光ビームの指向性に基づき、予め定められた基準となる指向性に応じて前記光ビームの点灯時間及び前記光ビームの光量を調整するように生成された値であり、前記光源制御部が、前記調整値に基づいて前記光ビームの点灯時間及び前記光ビームの光量を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光学部材による影響を受けた後のビームの指向性の際による濃度のばらつきを適正に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像形成装置の機能構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係るプリントエンジンの構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る光書き込み装置の構成を示す上面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る光書き込み装置の構成を示す側断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る光書き込み装置の制御部を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施形態に係る調整値記憶部に記憶されている情報を示す図である。
【図8】光ビームの指向性を示す図である。
【図9】光ビームの指向性の違いを示す図である。
【図10】光ビームの指向性に応じた露光エネルギー、露光範囲の関係を示す図である。
【図11】露光エネルギーと感光体ドラムのスレッシュ値との関係を示す図である。
【図12】本発明の実施形態に係る制御パターンを示す図である。
【図13】本発明の他の実施形態に係る光書き込み装置の構成を示す側断面図である。
【図14】本発明の他の実施形態に係る光書き込み装置の制御部を示すブロック図である。
【図15】本発明の他の実施形態に係る調整値生成部が記憶している情報を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態においては、光書込み装置を含む画像形成装置の例として、複合機(MFP:Multi Function Peripheral)を説明する。本実施形態に係る複合機は、電子写真方式の画像形成装置であり、感光体に静電潜像を形成するための光書き込み装置に含まれる光源の制御において、光源から照射されるビームを感光体上に導く光学部材の影響を受けた後のビームの指向性に応じてビームの光量や発光期間を制御することがその要旨である。
【0014】
図1は、本実施形態に係る複合機1のハードウェア構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る複合機1は、一般的なサーバやPC(Personal Computer)等の情報処理端末と同様の構成に加えて、画像形成を実行するエンジンを有する。即ち、本実施形態に係る複合機1は、CPU(Central Processing Unit)10、RAM(Random Access Memory)11、ROM(Read Only Memory)12、エンジン13、HDD(Hard Disk Drive)14及びI/F15がバス18を介して接続されている。また、I/F15にはLCD(Liquid Crystal Display)16及び操作部17が接続されている。
【0015】
CPU10は演算手段であり、複合機1全体の動作を制御する。RAM11は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU10が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM12は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。エンジン13は、複合機1において実際に画像形成を実行する機構である。
【0016】
HDD14は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーション・プログラム等が格納されている。I/F15は、バス18と各種のハードウェアやネットワーク等を接続し制御する。LCD16は、ユーザが複合機1の状態を確認するための視覚的ユーザインタフェースである。操作部17は、キーボードやマウス等、ユーザが複合機1に情報を入力するためのユーザインタフェースである。
【0017】
このようなハードウェア構成において、ROM12やHDD14または図示しない光学ディスク等の記録媒体に格納されたプログラムがRAM11に読み出され、CPU10の制御に従って動作することにより、ソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、ハードウェアとの組み合わせによって、本実施形態に係る複合機1の機能を実現する機能ブロックが構成される。
【0018】
次に、図2を参照して、本実施形態に係る複合機1の機能構成について説明する。図2は、本実施形態に係る複合機1の機能構成を示すブロック図である。図2に示すように、本実施形態に係る複合機1は、コントローラ20、ADF(Auto Documennt Feeder:原稿自動搬送装置)110、スキャナユニット22、排紙トレイ23、ディスプレイパネル24、給紙テーブル25、プリントエンジン26、排紙トレイ27及びネットワークI/F28を有する。
【0019】
また、コントローラ20は、主制御部30、エンジン制御部31、入出力制御部32、画像処理部33及び操作表示制御部34を有する。図2に示すように、本実施形態に係る複合機1は、スキャナユニット22、プリントエンジン26を有する複合機として構成されている。尚、図2においては、電気的接続を実線の矢印で示しており、用紙の流れを破線の矢印で示している。
【0020】
ディスプレイパネル24は、複合機1の状態を視覚的に表示する出力インタフェースであると共に、タッチパネルとしてユーザが複合機1を直接操作し、または複合機1に対して情報を入力する際の入力インタフェース(操作部)でもある。ネットワークI/F28は、複合機1がネットワークを介して他の機器と通信するためのインタフェースであり、Ethernet(登録商標)やUSB(Universal Serial Bus)インタフェースが用いられる。
【0021】
コントローラ20は、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって構成される。具体的には、ROM12や不揮発性メモリ並びにHDD14や光学ディスク等の不揮発性記録媒体に格納されたファームウェア等の制御プログラムが、RAM11等の揮発性メモリ(以下、メモリ)にロードされ、CPU10がそれらのプログラムに従って演算を行うことにより構成されるソフトウェア制御部と集積回路などのハードウェアとによってコントローラ20が構成される。コントローラ20は、複合機1全体を制御する制御部として機能する。
【0022】
主制御部30は、コントローラ20に含まれる各部を制御する役割を担い、コントローラ20の各部に命令を与える。エンジン制御部31は、プリントエンジン26やスキャナユニット22等を制御または駆動する駆動手段としての役割を担う。入出力制御部32は、ネットワークI/F28を介して入力される信号や命令を主制御部30に入力する。また、主制御部30は、入出力制御部32を制御し、ネットワークI/F28を介して他の機器にアクセスする。
【0023】
画像処理部33は、主制御部30の制御に従い、入力された印刷ジョブに含まれる印刷情報に基づいて描画情報を生成する。この描画情報とは、画像形成部であるプリントエンジン26が画像形成動作において形成すべき画像を描画するための情報である。また、印刷ジョブに含まれる印刷情報とは、PC等の情報処理装置にインストールされたプリンタドライバによって複合機1が認識可能な形式に変換された画像情報である。操作表示制御部34は、ディスプレイパネル24に情報表示を行いまたはディスプレイパネル24を介して入力された情報を主制御部30に通知する。
【0024】
複合機1がプリンタとして動作する場合は、まず、入出力制御部32がネットワークI/F28を介して印刷ジョブを受信する。入出力制御部32は、受信した印刷ジョブを主制御部30に転送する。主制御部30は、印刷ジョブを受信すると、画像処理部33を制御して、印刷ジョブに含まれる印刷情報に基づいて描画情報を生成させる。
【0025】
画像処理部33によって描画情報が生成されると、エンジン制御部31は、生成された描画情報に基づき、給紙テーブル25から搬送される用紙に対して画像形成を実行する。即ち、プリントエンジン26が画像形成部として機能する。プリントエンジン26によって画像形成が施された文書は排紙トレイ27に排紙される。
【0026】
また、複合機1が複写機として動作する場合は、エンジン制御部31がスキャナユニット22から受信した撮像情報または画像処理部33が生成した画像情報に基づき、画像処理部33が描画情報を生成する。その描画情報に基づいてプリンタ動作の場合と同様に、エンジン制御部31がプリントエンジン26を駆動する。
【0027】
次に、本実施形態に係るプリントエンジン26の構成について、図3を参照して説明する。図3に示すように、本実施形態に係るプリントエンジン26は、給紙トレイ101から給紙ローラ102と分離ローラ103とにより分離給紙される用紙(記録紙)104の搬送経路に沿って各色の画像形成部106が並べられた構成を備えるものであり、所謂タンデムタイプといわれるものである。用紙104の搬送経路は図3において破線で示されており、この搬送経路に沿って、搬送方向の上流側から順に、複数の画像形成部(電子写真プロセス部)106BK、106M、106C、106Yが配列されている。
【0028】
これら複数の画像形成部106BK、106M、106C、106Yは、形成するトナー画像の色が異なるだけで内部構成は共通である。画像形成部106BKはブラックの画像を、画像形成部106Mはマゼンタの画像を、画像形成部106Cはシアンの画像を、画像形成部106Yはイエローの画像をそれぞれ形成する。尚、以下の説明においては、画像形成部106BKについて具体的に説明するが、他の画像形成部106M、106C、106Yは画像形成部106BKと同様であるので、その画像形成部106M、106C、106Yの各構成要素については、画像形成部106BKの各構成要素に付したBKに替えて、M、C、Yによって区別した符号を図に表示するにとどめ、説明を省略する。
【0029】
用紙104の搬送経路においては、上述した給紙ローラ102や、搬送ローラ108の他、図示しないローラによって用紙が搬送される。即ち、本実施形態に係る複合機1は、用紙の搬送に際してベルトを用いないベルトレス方式の画像形成装置である。画像形成に際して、給紙トレイ101に収納された用紙104は最も上のものから順に送り出され、搬送ローラ108によって最初の画像形成部106BKに搬送され、ここで、ブラックのトナー画像を転写される。
【0030】
画像形成部106BKは、感光体としての感光体ドラム109BK、この感光体ドラム109BKの周囲に配置された帯電器110BK、光書き込み装置111、現像器112BK、感光体クリーナ(図示せず)、除電器113BK等から構成されている。光書き込み装置111は、夫々の感光体ドラム109BK、109M、109C、109Y(以降、総じて「感光体ドラム109」という)に対してレーザビームを照射するように構成されている。
【0031】
画像形成に際し、感光体ドラム109BKの外周面は、暗中にて帯電器110BKにより一様に帯電された後、光書き込み装置111からのブラック画像に対応したレーザビームにより書き込みが行われ、静電潜像を形成される。現像器112BKは、この静電潜像をブラックトナーにより可視像化し、このことにより感光体ドラム109BK上にブラックのトナー画像が形成される。
【0032】
このトナー画像は、感光体ドラム109BKと、搬送経路を搬送された用紙104とが当接する位置(転写位置)で、転写ローラ115BKの働きにより用紙104上に転写される。この転写により、用紙104上にブラックのトナーによる画像が形成される。トナー画像の転写が終了した感光体ドラム109BKは、外周面に残留した不要なトナーを感光体クリーナにより払拭された後、除電器113BKにより除電され、次の画像形成のために待機する。尚、感光体ドラム109BKと転写ローラ115BKとは、用紙を搬送する搬送ローラとしても機能する。
【0033】
以上のようにして、画像形成部106BKでブラックのトナー画像を転写された用紙104は、搬送経路上を次の画像形成部106Mに搬送される。画像形成部106Mでは、画像形成部106BKでの画像形成プロセスと同様のプロセスにより感光体ドラム109M上にマゼンタのトナー画像が形成され、そのトナー画像が用紙104上に形成されたブラックの画像に重畳されて転写される。
【0034】
用紙104は、さらに次の画像形成部106C、106Yに搬送され、同様の動作により、感光体ドラム109C上に形成されたシアンのトナー画像と、感光体ドラム109Y上に形成されたイエローのトナー画像とが、用紙104上に重畳されて転写される。こうして、用紙104上にフルカラーの画像が形成される。このフルカラーの重ね画像が形成された用紙104は、搬送経路の終点となる定着器116にて画像を定着された後、複合機1の外部に排紙される。
【0035】
次に、本実施形態に係る光書き込み装置111について説明する。図4は、本実施形態に係る光書き込み装置111を上面から見た図である。また、図5は、本実施形態に係る光書き込み装置を側面から見た断面図である。図4、図5に示すように、各色の感光体ドラム109BK、109M、109C、109Yに書き込みを行うレーザビームは光源である光源装置281BK、281M、281C、281Y(以降、総じて「光源装置281」という)から照射される。尚、本実施形態に係る光源装置281は、半導体レーザ、コリメータレンズ、スリット、プリズム、シリンダレンズ等で構成されている。
【0036】
光源装置281から照射されたレーザビームは、反射鏡280によって反射される。各レーザビームは図示しないfθレンズ等の光学系によって夫々ミラー282BK、282M、282C、282Y(以降、総じて「ミラー282」という)に導かれ、更にその先の光学系によって各感光体ドラム109BK、109M、109C、109Yの表面へと導かれる。
【0037】
反射鏡280は6面体のポリゴンミラーであり、回転することによってポリゴンミラー1面につき主走査方向の1ライン分のレーザビームを走査することができる。本実施形態に係る光書き込み装置111は、4つの光源装置を281BK、281Mと、281C、281Yの2色ずつの光源装置に分けて反射鏡280の異なる反射面を用いて走査を行うことによって、1つの反射面のみを用いて走査する方式よりコンパクトな構成で、同時に異なる4つの感光体ドラムに書き込むことを可能としている。
【0038】
次に、本実施形態に係る光書き込み装置111の制御ブロックについて、図6を参照して説明する。図6は、本実施形態に係る光書き込み装置111を制御する光書き込み装置制御部120の機能構成を示す図である。図6に示すように、本実施形態に係る光書き込み装置制御部120は、書込み制御部121及び調整値記憶部122を含む。
【0039】
尚、本実施形態に係る光書き込み装置111は、図1において説明したようなCPU10、RAM11、ROM12及びHDD14等の情報処理機構を含み、図6に示すような光書込み装置制御部120は、複合機1のコントローラ20と同様に、CPU10がプログラムに従って演算を行うことにより構成される。
【0040】
書込み制御部121は、コントローラ20のエンジン制御部31から入力される描画情報に基づき、所定の光量及び点灯時間で書込光源である光源装置281を発光制御する。その際、書込み制御部121は、調整値記憶部122に記憶されている調整値の情報に基づき、光源装置281の光量及び点灯時間を調整する。この調整値記憶部122に記憶されている調整値の情報が、本実施形態に係る要旨の1つである。
【0041】
図7は、調整値記憶部122が記憶している調整値の情報の例を示す図である。図7に示すように、調整値記憶部122は、書込み制御部122が光源装置281を発光制御する際の発光光量の調整値を示す光量調整値と、同じく点灯時間の調整値を示す点灯時間調整値とを記憶している。これらの調整値の情報は、夫々の複合機1毎に、搭載された光書き込み装置111のビームの指向性に応じて生成される。以下、本実施形態に係る調整値の情報の生成態様について説明する。
【0042】
図8は、光源装置281から照射されるビームの指向性を示す図であり、縦軸が光量(W)、横軸が光軸からの距離(mm)を示している。図8に示すように、光源装置281から照射されるビームの光量は正規分布に近似しており、光軸をピークとして光軸から離れるほど低くなる。尚、本実施形態においては、光量のピーク値をPとした場合において、光量がP/e(≒0.135×P)以上となる範囲の幅をビーム径としている。
【0043】
図9(a)、(b)、(c)は、ビーム毎の指向性の違いを示す図である。図9(a)〜(c)に夫々示すように、異なる光源装置281から照射されるビームは、同一光量に調整されていたとしても、ピーク値及びビーム径が異なっている場合がある。即ち、光源装置281が発するビームの光量は、一般的に、図8のグラフと横軸とによって画定される範囲の面積、即ち総光量が同一になるように調整されているが、夫々の光書き込み装置111において設置されたミラーやレンズを経ることにより、図9(a)〜(c)に示すように、ビームの指向性に差異が生じる。
【0044】
次に、ビームの点灯時間と露光エネルギーの関係について図10(a)〜(d)を参照して説明する。図10(a)に示すように、ビーム径L、ピーク光量Pのビームを例として考える。図10(b)は、ビームの点灯、消灯のタイミングを示す図であり、縦軸が光源装置281を発光させる発光光量、横軸が時間を示している。図10(b)の例では、点灯時間がTの場合を示している。また、図10(b)においては、基準となる発光光量Qにより、点灯/消灯がデジタルに切り替えられる場合を例として示している。
【0045】
図10(c)は、図10(a)のビームが図10(b)に示す点灯時間で点灯された場合の、露光エネルギーを示す図であり、縦軸が露光エネルギー、横軸が範囲を示している。図10(c)におけるMは、点灯時間TでビームのスキャンスピードがVの場合のスキャン範囲であり、M=V・Tの関係が成り立つ。
【0046】
図10(c)に示すように、ビームによる露光範囲は、スキャンスピードによって定まるスキャン範囲Mと、ビーム系Lによって定まる。スキャン範囲Mがビーム径Lよりも十分に大きい場合、露光範囲と露光エネルギーとの関係は図10(d)のようになる。図10(d)に示す露光エネルギーの最大値Eは、上述したようにMがLよりも大きい場合や、MとLとが等しい場合は一定の値であり、MがLよりも小さい程、Eの値も小さくなる。
【0047】
ここで、図9(a)〜(c)の各ビームは、夫々ビーム径がL、L、Lであり、スキャンスピードVが一定であれば、露光範囲は、L+M、L+M、L+M、と夫々異なることとなる。また、図10(d)に示す露光エネルギーの最大値Eに対応する図9(a)〜(c)各ビームの露光エネルギーの最大値を夫々E、E、Eとする。
【0048】
上述したように、夫々のビームは同一光量に調整されている。そのため、各ビームについて、図10(d)に示すような露光エネルギーのグラフと横軸とで確定される面積は同一であり、その結果、E、E、Eの値は夫々異なることとなる。尚、E、E、Eの値は各ビームの光量P、P、Pに応じて定まる。従って、夫々の露光エネルギーは、E>E>Eの関係となる。
【0049】
このように、各ビームの指向性の違いにより露光エネルギー及び露光範囲に差異が生じると、最終的に形成される画像の濃度について、光書き込み装置111毎に差異が生じることとなる。そのため、本実施形態に係る光書き込み装置制御部120は、図7に示す点灯時間調整値に基づいて光源装置281の点灯時間を調整すると共に、光量調整値に基づいて光源装置281が照射するビームの光量を調整することにより、図9(a)〜(c)に示すようなビーム毎の指向性の違いを補正する。
【0050】
点灯時間の調整においては、指向性の異なる夫々のビームによる露光範囲が同一となるように調整を行う。このための条件式は、以下の式(1)で示される。

また、スキャン範囲は、スキャンスピード及び点灯時間によって定まるため、上記式(1)は、以下の式(2)に変換される。

上記式(2)を、調整するべき点灯時間について解くことにより、調整後の点灯時間を求めることができ、図7に示す点灯時間調整値を求めることができる。
【0051】
また、上述したように、各ビームは総光量、即ち、図9(a)〜(c)に示す夫々のグラフと横軸とで確定される面積が同一の総光量Qとなるように調整されている。従って、点灯時間のみを変化させると、総光量が異なってしまうため、調整された点灯時間に応じて、各ビームの総光量Q、Q、Qを調整する。このための条件式は、以下の式(3)で示される。

上記式(3)を、点灯時間を調整したビームの総光量について解くことにより、調整後の総光量を求めることができ、図7に示す光量調整値を求めることができる。
【0052】
次に、指向性が異なる各ビームを調整する際の具体例について説明する。図11(a)、(b)は、夫々図10(d)、(c)に対して、感光体ドラム109への光書き込みに要する露光エネルギーのスレッシュ値を追加した図である。感光体ドラム109を含むプリントエンジン26は、露光による電位変動がスレッシュ値を超えた場合に、トナーが付着して静電潜像が現像されるように設計されている。
【0053】
上述したように、点灯時間によって定まるスキャン範囲がビーム径よりも十分長ければ、露光エネルギーの最大値Eは最大となるため、図11(a)に示すようにスレッシュ値を超えることができる。これに対して、スキャン範囲がビーム径よりも短い場合、ビームの指向性によって定まる光量のピーク値Pによっては、図11(b)に示すように、露光エネルギーの最大値Eがスレッシュ値を下回る可能性があり、トナーによる静電潜像の現像が不安定となる。
【0054】
このため、短いスキャン範囲でも安定して現像される静電潜像を形成するためには、例えば図9(a)〜(c)であれば、最もピーク光量の大きい図9(c)のビームを基準とし、図9(a)、(b)のビームを図9(c)のビームの露光範囲及び総光量に合わせるように、図7に示す点灯時間調整値及び光量調整値を生成することが好ましい。これにより、トナーによる静電潜像の現像を安定化させることができる。
【0055】
次に、点灯時間及び光量の調整値をグラフを用いて具体的に説明する。ここでは、図9(b)に示すビームの指向性を、図9(c)に示すビームの指向性に近似させる場合を例として説明する。図12(a)は、デフォルトの点灯時間T及び光量制御値Q(以降、制御パターンとする)を示す図であり、縦軸が光量制御値、横軸が時間を示す。この制御パターンは、点灯時間及び光量を調整しないビーム、ここでは図9(c)のビームについて用いられる。
【0056】
図9(b)のビームを図9(c)のビームに近似させる場合、上記式(2)より、調整後の点灯時間Tは、以下の式(4)で示される。

従って、図9(b)に示すビームの点灯時間の調整値は上記式(4)からTを減じた値となり、その値の1/2だけ図12(a)に示す制御パターンから遅れて点灯開始すると共に、同じく1/2だけ早く点灯終了するように制御することとなる。この値が点灯時間調整値ΔTであり、以下の式(5)によって示される。

【0057】
また、図9(b)のビームを図9(c)のビームに近似させる場合、上記式(3)により、調整後の総光量Qは以下の式(6)で示される。

従って、総光量の調整値ΔQは、以下の式(7)で示される。

そして、上記式(7)のTに上記式(4)を適用すると、総光量の調整値ΔQは、以下の式(8)で示される。

【0058】
上記式(8)に示す総光量の調整は、上述したように点灯時間を調整するタイミング、即ち、全体の点灯開始時と点灯終了時における、ビーム径の1/2のスキャン範囲に適用する。そのような調整を加えた後の制御パターンを図12(b)に示す。
【0059】
図12(b)に示すような制御パターンによって図9(b)に示すビームを発光制御することにより、図9(b)に示すビームも図9(c)に示すビームも、図12(c)に示すような同一の露光エネルギー及び露光範囲を得ることが可能となる。
【0060】
従って、図12(b)に示すような制御パターンを実現するため、図9(b)に示すビームの光源装置281を有する光書き込み制御部120の調整値記憶部122は、上記式(5)の値を点灯時間調整値として、上記式(7)の値を総光量調整値として記憶する。これらの調整値は、装置の製造時における測定によって生成されてオペレータによって記憶される。
【0061】
そして、書込み制御部121は、このような点灯時間調整値及び総光量調整値に基づき、図12(b)に示すような制御パターンで光源装置281の発光を制御することにより、異なる光書き込み装置111毎のビームの指向性の差異に基づく画像濃度のばらつきを補正することが可能となる。
【0062】
また、本実施形態に係る方法によれば、光ビームを直接検知して指向性を求め、その指向性に基づいて定まるビーム径に基づいて調整値を生成する。そのため、画像を検知して画像の濃淡に基づいてビームのパルス幅を調整する場合よりもノイズの影響を低減することができ、高精度に光ビームの指向性を調整することが可能となる。
【0063】
以上、説明したように、本実施形態に係る光書き込み装置111によれば、光学部材による影響を受けた後のビームの指向性の際による濃度のばらつきを適正に調整することができる。
【0064】
尚、上記実施形態においては、オペレータによる操作によって調整値記憶部122に記憶する調整値が生成されて記憶される場合を例として説明した。この他、光書き込み装置111内部に、光学部材を経た後のビームの指向性を検知するセンサを設け、光書き込み制御部120がその検知結果に基づいて計算することも可能である。そのような例について以下に説明する。
【0065】
図13は、光書き込み装置111内部にビームの指向性を検知するセンサ283を設ける場合を示す図である。図13に示すように、レンズやミラーを経て感光体ドラム109に導かれるビームを検知可能な位置にセンサ283を設けることにより、図9(a)〜(c)に示すようなビームの指向性を検知することが可能となる。
【0066】
図14は、光書き込み装置制御部120内部において調整値を生成する場合の機能構成を示すブロック図である。図14に示すように、センサ283の検知結果を取得して調整値を計算する調整値生成部123を含む以外は、図6と同様の構成を有する。
【0067】
調整値生成部123は、図15に示すように基準光量、基準点灯時間及び基準ビーム径の情報を記憶している。基準光量及び基準点灯時間とは、図12(a)に示すような、調整を行わないデフォルトの制御パターンを示す点灯時間及び総光量の値であり、式(8)におけるQ、Tに相当する値である。また、基準ビーム径は、ビームの指向性を近似させる対象、上記実施形態においては、図9(c)のビームのビーム径を示す値であり、式(5)のLに相当する値である。
【0068】
また、調整値生成部123は、センサ283の検知結果により、実装されている光書き込み装置111のビームのビーム径を取得することができる。このビーム径は、式(5)のLに相当する値である。これらの値に基づき、調整値生成部123は、上記式(5)、式(8)の計算により光量調整値及び点灯時間調整値を算出する。調整値記憶部122は、このようにして算出された光量調整値及び点灯時間調整値を記憶することにより、オペレータの操作を介さずに調整値記憶部122に調整値を記憶させることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 複合機、
10 CPU、
11 RAM、
12 ROM、
13 エンジン、
14 HDD、
15 I/F、
16 LCD、
17 操作部、
18 バス、
20 コントローラ、
21 ADF、
22 スキャナユニット、
23 排紙トレイ、
24 ディスプレイパネル、
25 給紙テーブル、
26 プリントエンジン、
27 排紙トレイ、
28 ネットワークI/F、
30 主制御部、
31 エンジン制御部、
32 入出力制御部、
33 画像処理部、
34 操作表示制御部、
101 給紙トレイ、
102 給紙ローラ、
103 分離ローラ、
104 用紙、
106BK、106C、106M、106Y 画像形成部、
108 搬送ローラ、
109BK、109C、109M、109Y 感光体ドラム、
110BK 帯電器、
111光書き込み装置、
112BK、112C、112M、112Y 現像器、
113BK、113C、113M、113Y 除電器、
115BK、115C、115M、115Y 転写ローラ、
116 定着器、
120 光書き込み装置制御部、
121 書込み制御部、
122 調整値記憶部、
123 調整値生成部、
280 反射鏡、
281、281BK、281Y、281M、281C 光源装置、
282、282BK、282Y、282M、282C ミラー
283 センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0070】
【特許文献1】特開平1−206368号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体上に静電潜像を書き込むために前記感光体に光ビームを照射する光書き込み装置であって、
光源を駆動して前記光ビームを照射させる光源制御部と、
前記光ビームの点灯時間及び前記光ビームの光量を調整するための調整値を記憶している調整値記憶部とを含み、
前記光源制御部は、前記調整値に基づいて前記光ビームの点灯時間及び前記光ビームの光量を制御し、
前記調整値は、前記光書き込み装置において前記光ビームを前記感光体に導くための光学部材を経た後の前記光ビームの指向性に基づき、予め定められた基準となる指向性に応じて前記光ビームの点灯時間及び前記光ビームの光量を調整するように生成された値であることを特徴とする光書き込み装置。
【請求項2】
前記光源制御部は、前記光ビームの点灯時間を調整するための調整値に基づき、点灯開始及び点灯終了のタイミングを調整することを特徴とする請求項1に記載の光書き込み装置。
【請求項3】
前記光源制御部は、前記光ビームの光量を調整するための調整値に基づき、前記点灯開始及び点灯終了のタイミングにおける前記光ビームの光量を調整することを特徴とする請求項2に記載の光書き込み装置。
【請求項4】
前記光源制御部は、前記光ビームの点灯開始後及び点灯終了前において、前記光ビームの指向性に基づいて定まる前記光ビームのビーム径の半分の区間を前記光ビームが走査される間、前記光ビームの光量を調整することを特徴とする請求項3に記載の光書き込み装置。
【請求項5】
前記光ビームの点灯時間を調整するための調整値ΔTは、前記光ビームの指向性に基づいて定まる前記光ビームのビーム径をL、前記予め定められた基準となる指向性に基づいて定まる前記光ビームのビーム径をL、前記光書き込み装置において前記光ビームが前記感光体上を走査される速度をVとすると、以下の式によって生成されることを特徴とする請求項2乃至4いずれか1項に記載の光書き込み装置。

【請求項6】
前記光ビームの光量を調整するための調整値ΔQは、前記光ビームの指向性に基づいて定まる前記光ビームのビーム径をL、前記予め定められた基準となる指向性に基づいて定まる前記光ビームのビーム径をL、前記光書き込み装置において前記光ビームが前記感光体上を走査される速度をV、調整前のデフォルトの点灯時間をT、調整前のデフォルトの光量をQとすると、以下の式によって生成されることを特徴とする請求項2乃至5いずれか1項に記載の光書き込み装置。

【請求項7】
複数の光書き込み装置について測定された複数の前記光ビームの指向性のうち、夫々の指向性に基づいて定まる前記光ビームのビーム径が最も狭い指向性を、前記予め定められた基準となる指向性とすることを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項に記載の光書き込み装置。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれか1項に記載の光書き込み装置を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
感光体上に静電潜像を書き込むために前記感光体に光ビームを照射する光書き込み装置の制御方法であって、
前記光書き込み装置は、
光源を駆動して前記光ビームを照射させる光源制御部と、
前記光ビームの点灯時間及び前記光ビームの光量を調整するための調整値を記憶している調整値記憶部とを含み、
前記調整値は、前記光書き込み装置において前記光ビームを前記感光体に導くための光学部材を経た後の前記光ビームの指向性に基づき、予め定められた基準となる指向性に応じて前記光ビームの点灯時間及び前記光ビームの光量を調整するように生成された値であり、
前記光源制御部が、前記調整値に基づいて前記光ビームの点灯時間及び前記光ビームの光量を制御することを特徴とする光書き込み装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−82136(P2013−82136A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224040(P2011−224040)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】