説明

光検出装置

【課題】被検出光が、散乱光や波面の乱れた光であっても、高感度かつ高感度に検出することができる光検出方法および光検出装置、並びに、生体観察方法、顕微鏡および内視鏡を提供する。
【解決手段】光検出装置は、入射光のモード状態を調整するとともに前記入射光の空間分布状態に応じてモード調整条件を制御する制御手段を有するモード調整手段(10)、モード調整手段から出力されるモード状態が調整された前記光を増幅する増幅手段(20)、および、増幅手段から出力される前記増幅された前記光を電気信号に変換する変換手段(30)を備える。モード調整手段(10)は、多モードの入射光を、増幅手段(20)による増幅空間モードと略一致するモードに、エネルギーのモード分布を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光検出装置に関する。本発明の光検出装置は、例えば生体等の画像観察を行う内視鏡や顕微鏡に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
一般に、画像観察、センサ、セキュリティ、レーザレーダ等の光を利用する様々なシステムにおいて、所望の光を検出する技術はその性能を大きく左右する基本的かつ重要な要素となっている。特に、高速かつ高感度な検出技術に対するニーズは高い。
【0003】
例えば、画像観察において光を用いた生体観察をみると、生体の状態や形状は時々刻々と変化するため、正確な観察を行うためには、高速に光検出を行う必要がある。また、光照射によって生体は損傷を受け易いため、生体試料に照射できる照明光や励起光の光量には上限がある。そのため、生体から得られる光信号は通常微弱になってしまう。ましてや、光照射せずに、生体等の検出対象から発せられる自己発光等の光エネルギーを検出する場合は極く微弱な光を検出しなければならない。また、生体試料に限らず、検出手段から検出対象までの距離が遠い場合、散乱や吸収等により検出を妨害する物質が介在する場合、検出対象が微小または微量である場合は、検出信号が減少することで減らされ微弱である。これらの理由により、光を用いた生体観察等の各種検出システムにおいては、高速かつ高感度な光検出技術が強く求められている。
【0004】
現在用いられている代表的な光検出素子には、PMT(Photo multiplier tube)、APD(Avalanche photo diode)、PD(Photo diode)がある。PMTおよびAPDは、検出素子内にて電子増倍を行うので、高感度な光検出を実現できる。一方、PDは、非常に高速な応答速度を実現できるものの、検出素子内に電子増倍機能を持たないため、通常は、電気増幅器を用いて信号を増幅するようにしている。つまり、PMT、APD、PDは、いずれの素子も電気段にて信号増幅を行い、感度の向上を図っている。
【0005】
また、代表手的な二次元光検出器として、CCD(Charged coupled device)、CMOS(complementary metal Oxide semiconductor)、EM−CCD(Electron multiplying-CCD)、EB−CCD(Electron bombardment-CCD)、I−CCD(Intensified-CCD)がある。CCDまたはCMOSを用いて微弱光を検出する際には感度向上のために、PDと同様に後段に電気増幅器を配置する必要がある。EM−CCDおよびEB−CCDは、APDと 同様に検出素子内に電子増倍機能を持ち、高感度化を実現している。I−CCDは、CCDの前に光増幅器(Image intensifier、以下I.I.とする)を配置した構成をとる。I.I.は、入射光信号を一旦電気信号に変換し、I.I.に内蔵されているMCP(Micro channel plate)内において電子増倍を行った後、増倍された電子を蛍光板に衝突させることにより、増倍電子信号を再度光に変換するものである。つまりI−CCDも電気段にて信号増幅を行うことで高感度な光検出を実現している。
【0006】
しかしながら、上述の電気段での信号増幅を用いる従来型の光検出技術では、検出感度と検出速度との間にトレードオフの関係がある。すなわち、これらの検出技術を用いて検出を行った場合、高速性と高感度性を両立させることは大変難しい。従って、現状では、検出速度と検出感度とのいずれかを犠牲にして光検出を行わざるをえない状況にある。
【0007】
一方、従来、長距離光通信分野を中心に、光ファイバを光伝達手段として用いる光増幅器の開発が盛んに進められてきている。電気増幅器と比較すると、光増幅器は非常に高速・広帯域な動作が可能なうえ、構成によっては、非常に低雑音で高利得な光増幅が可能になるという特性を有している。そこで、このような光増幅器を高速な光電変換素子の前段に配置することで、高速かつ高感度な光検出ができることが期待される(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
この特許文献1の要旨は、所定の角度に配置された2本の光ファイバの一方のファイバから光照射し、他方のファイバから光検出することにより、観察対象の深度方向の分解能(axial resolution)を向上するために提案されている。
【0009】
一方、光増幅器からは、ASE(Amplified spontaneous emission)が発生し、これが光増幅器を用いた場合の光検出時の支配的な雑音原因になる。そのため、光増幅器を用いた高速・高感度光検出を実現するためには、光増幅器が低雑音であることが必須である。光増幅器は、入力される信号光強度が高ければ高い程、光増幅後の信号対雑音比(signal to noise ratio、以下SNRとする)が向上し、光検出感度が向上する。
【0010】
また、長距離光通信分野で用いられる低雑音光増幅器は、単一モード光ファイバで構成されている。この単一モード光ファイバの構成が用いられる理由は、伝送路との整合性が優れていること等に加え、光増幅器の雑音が光増幅器を構成する利得ファイバの伝播モードに比例して増大することにある。このため、長距離光通信分野では、利得ファイバとして単一モード光ファイバを利用することが光増幅器の低雑音性に大きく寄与している。
【0011】
しかしながら、このような単一モード光ファイバから成る長距離光通信用の低雑音光増幅器でさえ、光電変換素子の前段に用いるには、次のような課題がある。すなわち、生体観察、センサ、セキュリティ、レーザレーダ等の分野で検出される信号光は散乱光である場合や、波面が乱れた光である場合がほとんどである。このような光は、単一モードファイバへの結合効率が非常に低く、光増幅器に取り込むことのできる光信号は、全体の中の限られた一部分の微弱な信号となる。このため、SNRが劣化するので高い受光感度を得ることができない。
【0012】
これに対し、散乱光や波面が乱れた光を高効率で集めるため、コア径の大きな多モード光ファイバ増幅器を光電変換素子直前に配置することも考えられる。しかし、コア径を大きくしたことによる空間モード数の増大に伴い、光増幅器中で発生する光雑音が増大してしまうため、この場合もSNRが劣化するので高い受光感度を得ることはできない。
【0013】
なお、上記において、光を検出する場合を例に取り説明したが、ミリ波やマイクロ波等の光以外の電磁波を検出する場合も、同様の課題を有すると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第6423956号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、これらの点に着目してなされた本発明の目的は、被検出光が生体等により散乱された光や、波面が乱れた光であっても、高速かつ高感度に検出することができる光検出方法および光検出装置、並びに、生体観察方法、顕微鏡および内視鏡を提供することにある。また、本発明の他の目的は、光量等の電磁エネルギーの増大による損傷を最小限にしたい場面や、対象から届く検出信号が微弱な場面であっても、低雑音な検出信号を高効率で収集することができる光検出方法および光検出装置、並びに、生体観察方法、顕微鏡および内視鏡を提供することにある。

【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成する請求項1に係る光検出装置の発明は、
多モードの入射光のモード状態を調整するモード調整手段と、
前記入射光の空間分布状態に応じて前記モード調整手段のモード調整条件を制御する制御手段と、
前記モード調整手段から出力される前記モード状態が調整された前記光を増幅する増幅手段と、
前記増幅手段から出力される前記増幅された光を電気信号に変換する変換手段とを備え、前記モード調整手段は、入射光のエネルギーのモード分布を調整して、前記増幅手段による増幅空間モードと略一致するモードに調整するように構成されていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の光検出装置において、
前記制御手段が、前記変換手段からの出力信号レベルを高くするように制御されることを特徴とするものである。
【0018】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の光検出装置において、
前記モード調整手段がファイバブラッググレーティングもしくはテーパードファイバであることを特徴とするものである。
【0019】
請求項4に係る発明は、請求項2に記載の光検出装置において、前記制御手段が、前記モード調整手段に機械的な伸張、屈曲もしくは応力を与える機能を有することを特徴とするものである。
【0020】
請求項5に係る発明は、請求項2に記載の光検出装置において、前記制御手段が、前記モード調整手段に温度変化を与える機能を有することを特徴とするものである。
【0021】
請求項6に係る発明は、請求項1に記載の光検出装置において、前記モード調整手段が、グレーデッドインデックスファイバで構成されるテーパードファイバであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の発明によれば、入射光のエネルギーのモード分布を調整して、増幅手段の増幅空間モードと略一致するモードに調整するモード調整手段を、増幅手段及び変換手段の前に配置し、かつ入射光の空間分布状態に応じてモード調整手段のモード調整条件を制御するようにしたので、被検出光が散乱された光や波面の乱れた光であっても、時々刻々と入射光のモード状態が変化するような光であっても、被検出光を高効率で集めることができ、高速かつ高感度な光検出が可能になる。
【0023】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、光検出装置構成を最も簡素にできるという効果がある。本発明では、変換手段の出力レベルをモニタし、その変換手段の出力レベルが高くなるようにモード調整手段のモード調整条件を変えるため、入射光の空間分布状態を間接的に簡便に知ることができる。つまり、入射光の空間分布状態を知るために付加すべき特別な部品が不要である。そのため、光検出装置を構成する部品点数を必要最小限に抑えることができる。
【0024】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、モード調整手段にファイバブラッググレーティングもしくはテーパードファイバといった光ファイバ素子を用いることで、機械的振動などの外的環境の変動に強い光検出装置を実現することができるという効果がある。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明の効果に加えて、制御手段としてファイバブラッググレーティングやテーパードファイバに機械的な伸張もしくは屈曲機能を与える機能を有するものを用いることで、高速にモード状態の制御を行うことができるという効果がある。こうすることで、入射光のモード状態が高速に変動する場合にも高速かつ高感度な光検出が可能になる。
【0026】
請求項5に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明の効果に加えて、制御手段としてファイバブラッググレーティングやテーパードファイバなどの光ファイバ素子に温度的な変化を与える機能を有するものを用いることで、光ファイバ素子自身の機械的安定性を損なうことなくモードを調整できるという効果がある。この効果は、長期的な安定性が求められる用途に特に有用である。
【0027】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、コア中心部から周辺部にかけて徐々に屈折率が低下するようなグレーデッドインデックスファイバをモード調整手段として用いることで、損失の低いモード調整が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る光検出装置の概略構成を示すブロック図 である。
【図2】モード調整手段におけるモードの調整を説明する図である。
【図3】本発明の第2実施の形態に係る硬性内視鏡型血管イメージング装置の概略構成を示す図である。
【図4】テーパードファイバのコア部分縦断面の概略形状を示す図である。
【図5】Er添加フッ化物ファイバ型光増幅器の概略構成図である。
【図6】本発明の第3実施の形態に係る光検出装置の概略構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第4実施の形態に係る硬性内視鏡型血管イメージング装置の概略構成を示す図である。
【図8】本発明の第5実施の形態に係る光検出装置の概略構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第6実施の形態に係る高感度内視鏡の概略構成を示す図である。
【図10】本発明の第7実施の形態に係る光検出装置の概略構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第8実施の形態に係る硬性内視鏡型血管イメージング装置の概略構成を示す図である。
【図12】本発明の第9実施の形態に係る光検出装置を用いたレーザ走査型多光子蛍光顕微鏡の概略構成を示す図である。
【図13】本発明の第10実施の形態に係る光検出装置の概略構成を示すブロック図である。
【図14】本発明の第11実施の形態に係る硬性内視鏡型血管イメージング装置の概略構成を示す図である。
【図15】本発明の第12実施の形態に係る光検出装置の概略構成を示すブロック図である。
【図16】本発明の第13実施の形態に係る硬性内視鏡型血管イメージング装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
【0030】
(第1実施の形態)
図1は、本発明の第1実施の形態に係る光検出装置の概略構成を示すブロック図である。この光検出装置は、観察対象の試料から放出される被検出光を増幅して、電気信号として信号処理系へ受け渡すためのものである。
【0031】
本実施の形態に係る光検出装置は、入射した多モードの被検出光のモード状態を調整するモード調整手段10と、モード調整手段10でモード状態を調整された光を増幅する増幅手段20と、増幅手段20により増幅された光を電気信号に変換して信号処理系へ出力する変換手段30とを備える。増幅手段20は、特定の増幅空間モードに対して、SNRの優れた増幅特性を有し、モード調整手段10は、多モードの入射電磁波を、エネルギーのモード分布を調整して、増幅手段20による増幅空間モードと略一致するモードに調整する。
【0032】
図2は、モード調整手段10におけるモードの調整を説明する図である。モード調整手段10は、入射側において多モードの光の入射を許容し、一方、出射側では、後段の増幅手段20の増幅空間モードと略一致した、すなわち、整合性の高いエネルギーのモード分布となるように調整を行うように構成されている。図2(a)は、モード調整手段の入射側における入射光のエネルギーのモード分布の例である。この例では、モード番号1で示される基本モードと、モード番号2〜7で示される高次モードにエネルギーが分布している。図2(b)および図2(c)は、それぞれ異なるケースにおけるモード調整手段10の出射側における光のエネルギーのモード分布を示す図である。図2(b)では、許容されるモードはモード番号1および2で示される2つのモードのみであり、モード調整手段10の入射側における各モードのエネルギーが、低損失でこれら2つのモードに変換される。また、図2(c)は、モード調整手段の出射側でのエネルギーのモード分布として、入射側と同じモード番号1〜7の各モードが許容されるが、エネルギーのモード分布が変化して、モード番号1および2の2つのモードの分布が特に高くなる例を示している。すなわち、図2(c)では、擬似的に空間モード数を低減している。モード調整手段10は、図2(b)のようにモード数そのものを減少させるものと、図2(c)のようにエネルギーの分布を変化させるものとのいずれであっても良い。
【0033】
図1の概略構成により、散乱波または波面が乱れた波である被検出光は、モード調整手段10の入射側で許容されるモードに従ってモード調整手段10に入射する。その際、より多くの高次モードが許容されるほど、被検出光とモード調整手段10との結合効率が高くなる。その後、被検出光は、モード調整手段10によるモード調整を受け、増幅手段20に出射される。このとき、モード調整手段10から出射される被検出光のエネルギーのモード分布と、増幅手段20による増幅空間モードとは略一致するので、モードの不整合によるエネルギーの損失が低減される。さらに、被検出光は、増幅手段20により増幅されて変換手段30に出射され、変換手段30で電気信号に変換される。変換手段30から出力される電気信号は、後段に続く信号処理系により所望のデータに変換される。
【0034】
以上説明したように、本実施の形態によれば、多モードの入射光を、エネルギーのモード分布を調整して、増幅手段20による増幅空間モードと略一致するモードに調整するモード調整手段10を、増幅手段及び変換手段の前に配置したので、被検出光が散乱された光や波面の乱れた光であっても、この被検出光を高効率で集めることができ、高速かつ高感度な光検出が可能になる。
【0035】
また、モード調整手段10に入力される被検出光の空間分布状態が時間に応じて変化する場合、その被検出光の空間分布状態に適したモードの調整を行うために、モード調整手段10の特性を変化させる制御手段を用いる。変換手段30から出力される電圧レベルを確認することで、モード調整手段10に入力される被検出光の空間分布状態とモード調整手段10の特性が適合しているかどうかを判断することができる。従って、変換手段30から出力される電圧レベルが高くなるように制御手段を用い、モード調整手段10の特性を変化させることで、モード調整手段10に入力される被検出光の空間分布状態とモード調整手段10の特性を適合させることができる。こうすることで、時間に応じて被検出光の空間分布状態が変化する場合でも、高速かつ高感度な光検出が可能になる。
【0036】
さらに、本実施の形態に示す光検出装置に対して、特開2009−153654にも記載されるような波長可変光源と同期検出する構成を組み合わせることにより、高速、高感度、かつ高コントラストな光検出も実現できる。
【0037】
(第2実施の形態)
図3は、本発明の第2実施の形態に係る硬性内視鏡型血管イメージング装置の概略構成を示す図である。この装置は、レーザ光を照射して得られる被検出信号光を検出して、脂肪下に存在する血管位置を可視化するものである。
【0038】
この硬性内視鏡型血管イメージング装置は、生体試料100を走査しつつ照明用のレーザ光を照射し、生体試料100の表面及び内部で反射または散乱された光を、図1に示した構成を有する光検出装置により検出して電気信号に変換し、この電気信号を信号処理系により処理して画像を表示するように構成されている。
【0039】
この硬性内視鏡型血管イメージング装置は、波長543nm、出力2mWの単一モードファイバ(single mode fiber: SMF)出力型Er添加フッ化物ファイバレーザ61、アイソレータ62、単一モードファイバ(single mode fiber: SMF)63およびコリメータ64を照明光学系として備え、Er添加フッ化物ファイバレーザ61を出射したレーザ光が、アイソレータ62およびSMF63を介してコリメータ64により略平行光として生体試料100の所望の観察位置へ照射されるように構成されている。
【0040】
さらに、Er添加フッ化物ファイバレーザ61を駆動するレーザドライバ66が設けられており、Er添加フッ化物ファイバレーザ61は、このレーザドライバ66を介して、この硬性内視鏡型血管イメージング装置全体を制御する後述するコンピュータ69からの制御により、出力状態を制御されるように構成されている。
【0041】
また、生体試料100からの信号光を検出するため、図3に示した硬性内視鏡型血管イメージング装置は、図1に示す光検出装置のモード調整手段10、増幅手段20および変換手段30のそれぞれに対応する構成として、テーパードファイバ11、Er添加フッ化物ファイバ型光増幅器21およびシリコンPIN−PD(PIN photo diode)31を備える。さらに、PIN−PD31の後段には、PIN−PD31から出力された電気信号を増幅する電気増幅器67、電気増幅器67で増幅されたアナログ電気信号をディジタル信号に変換するアナログ−ディジタル(analog-to-digital: AD)変換器68を設けている。
【0042】
テーパードファイバとは、入力側から出力側にかけて光が導波するコア部分の径が変化する構造を有する光ファイバのことである。テーパードファイバ11の入射面は、生体試料100に面してコリメータ64と近接した位置に配置され、コリメータ64とともに走査マウント65上に固定される。図4にコア部分の縦断面の概略形状を示すように、テーパードファイバ11は、入力側のコア径が出力側のコア径よりも大きなテーパ状となっている。本実施の形態では、入力側及び出力側のコア径が、それぞれ50μmおよび4μmで、長さが1.0mのものを使用する。
【0043】
また、Er添加フッ化物ファイバ型光増幅器21は、構成図を図5に示すように、アイソレータ73a、73b、波長分割多重(wavelength divisional multiplexing:WDM)カプラ74、Er添加フッ化物ファイバ75、光フィルタ76、半導体レーザ(laser Diode: LD)77を含んで構成する。
【0044】
アイソレータ73aおよび73bは、Er添加フッ化物ファイバ型光増幅器21の入力側および出力側に配置され、戻り光を抑止する。LD77は、Er添加フッ化物ファイバ75の励起光源であり、波長975nm、出力100mWの半導体レーザを使用する。また、LD77に接続されたLD77を駆動するドライバ72が設けられている。WDMカプラ74は、LD77からの励起光と入射側のアイソレータ73aを出射した信号光とを合波し、Er添加フッ化物ファイバ75へ出力するように構成される。Er添加フッ化物ファイバ75は、コア径4μmの単一モードEr添加フッ化物ファイバであり、励起光により信号光を増幅するとともに、残留励起光およびASEを出力する。光フィルタ76は、Er添加フッ化物ファイバ75の出射側に設けられ、残留励起光及びASEを除去して信号光のみを出射する。この信号光は、アイソレータ73bを介してEr添加フッ化物ファイバ型光増幅器21から出射される。このEr添加フッ化物ファイバ型光増幅器21は、テーパードファイバ11の出力を約15dB増幅することができる。
【0045】
また、本実施の形態の硬性内視鏡型血管イメージング装置は、図3に示すように、装置各部を制御するとともに、AD変換器68から出力されたディジタル信号の処理を行うコンピュータ69を備える。コンピュータ69は、レーザドライバ66、ドライバ71およびドライバ72と接続され、それぞれEr添加フッ化物ファイバレーザ61、Er添加フッ化物ファイバ型光増幅器21、および、走査マウント65を制御するとともに、AD変換器68の出力信号とEr添加フッ化物ファイバレーザ61の出力、Er添加フッ化物ファイバ型光増幅器21の増幅率および走査マウント65の位置の各情報とを関連付けて信号処理を行い、その結果を表示モニタ70に表示するように構成される。
【0046】
以上のような構成によって、本実施の形態に係る硬性内視鏡型血管イメージング装置では、生体試料の観察を行う際、コンピュータ69は、ドライバ71を介して走査マウント65を走査させるとともに、レーザドライバ66を介して、Er添加フッ化物ファイバレーザ61を駆動して、コリメータ64から生体試料100にレーザ光を照射させる。このレーザ光は、生体試料100の表面及び内部で反射または散乱されて、波長543nmの信号光としてテーパードファイバ11に入射する。
【0047】
ここで、テーパードファイバ11の入射側のコア径は50μmなので、4μmのコア径のファイバと比べると、入射面の面積が大きく空間的に広範囲の信号を集めることができるとともに、基本モードの他多くの高次モードが入射することができる。一方、テーパードファイバの出射側では、コア径が4μmと小さく、モード間のエネルギーの分布が調整されて基本モードに集中する。
【0048】
モード調整を受けた信号光は、Er添加フッ化物ファイバ型光増幅器21に入射し、図5に示した増幅空間モードが基本モードであるコア径4μmの単一モードEr添加フッ化物ファイバ75に入射する。テーパードファイバの出射側のモード分布と、Er添加フッ化物ファイバ75の増幅空間モードとが、略一致しているので、両者の接合部分における結合効率が高くなる。このため、テーパードファイバ11に入射した信号光のエネルギーの損失を抑えることができ、かつ、Er添加フッ化物ファイバ型光増幅器21において略単一モードでの増幅ができるので、ASEの発生が抑えられ、SNRの高い信号光を得ることができる。
【0049】
さらに、Er添加フッ化物ファイバ型光増幅器21を出射した信号光は、図3に示すように、PIN−PD31で電気信号に変換され、電気増幅器67で増幅され、AD変換器68でディジタル信号に変換され、コンピュータ69に送信される。コンピュータ69は、この電気信号とドライバ71から得られる走査位置情報等とを関連づけることにより信号処理を行い、血管画像を生成してモニタ70に表示する。このようにして、脂肪下に存在する血管位置を高速度に画像化することが可能になる。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態によれば、テーパードファイバ11をEr添加フッ化物ファイバ型光増幅器21の前段に配置することで、受光面を広くすることができ、さらに、入射側の許容空間モード数が大きいので、被検出信号光が散乱光や波面の乱れた光であっても、多くの信号光を入射させることができる。また、テーパードファイバ11により、増幅空間モード数の少ないEr添加フッ化物ファイバ型光増幅器21の増幅空間モードと略一致するモードに、エネルギーのモード分布を調整させたので、ASEを低減することができ、SNRの高い光増幅が可能になる。さらに、テーパードファイバ11を用いたことによって、少ないエネルギー損失でモード調整を行うことができる。したがって、被検出信号光が散乱光や波面の乱れた光であっても、信号光強度は高く、雑音光強度は低い光増幅が可能になる。従って、この光増幅器をPIN−PD31の前に配置することで高速かつ高感度な光検出が可能になる。
【0051】
また、モード調整手段10として、光ファイバの一種であるテーパードファイバ11を利用することで、長尺な空間モード調整導波路を安定的に実現することができる。長尺化することにより、断熱的な空間モード調整が可能になり、より低損失な空間モード調整を実現することができる。また、光ファイバを用いることにより空間光学系の微調整などが不要になるため、使用上の自由度が向上する。さらに、テーパードファイバ11は、設計の自由度が非常に高いので、検出光の状態に適したモード調整手段を実現することが可能になる。また、テーパードファイバ11は比較的容易に作製可能なため、低価格な光検出装置を提供することができる。
【0052】
また、増幅手段20として、Er添加フッ化物ファイバ型光増幅器21を用いたので、高利得および低雑音性で高い増幅効率の増幅をすることができる。さらに、石英系ファイバ型光増幅器では動作できない波長帯域でも光増幅が可能になり、特に、可視帯での効率的な光増幅が可能になる。
【0053】
さらに、図3に示す第2実施の形態において、時間や計測位置などによって被検出光の空間分布状態が変化するような場合、次のような構成を用いることで、高速かつ高感度な光検出が可能になる。まず、図3中のテーパードファイバ11をピエゾ素子に接着させる。ピエゾ素子に流す電流を変化させることでピエゾ素子、ひいてはテーパードファイバ11を伸縮もしくは屈曲させることができるようになっている。こうすることでテーパードファイバ11のモード調整特性を変化させることができる。この時、PIN−PD31からの出力電圧が高くなるように、このピエゾ素子に流れる電流がコンピュータ69にて制御される。
【0054】
(第3実施の形態)
図6は、本発明の第3実施の形態に係る光検出装置の概略構成を示すブロック図である。この光検出装置は、図1に記載の光検出装置の構成において、モード調整手段10を複数設けるとともに、モード調整手段10と増幅手段20との間に、合波手段40を設けている。
【0055】
この構成により、被検出光は、複数のモード調整手段10に入力され、それぞれのモード調整手段10において、空間モードの調整が行われる。その後、複数のモード調整手段10からの出力光は、合波手段40に入力され、合波される。合波手段40より出力された被検出信号光は増幅手段20によって増幅され、さらに変換手段30によって電気信号に変換される。変換手段30から出力される電気信号は後段に続く信号処理系にて所望のデータに変換される。
【0056】
本実施の形態によれば、第一実施の形態の効果に加え、並列に入射する多モードの入射光のモード調整を行う複数のモード調整手段10を、増幅手段20及び変換手段30の前に配置したので、被検出信号光が散乱された光や波面の乱れた光であっても、信号波を高効率で集めることができ、高速かつ高感度な光検出が可能になる。さらに、複数のモード調整手段10から出力される複数の光を合波する合波手段40を備えるので、入射光をモード数を少なくして合波させることにより、装置全体の動作安定性を更に向上させることができる。
【0057】
(第4実施の形態)
図7は、図6に示した光検出装置を用いた本発明の第4実施の形態に係る硬性内視鏡型血管イメージング装置の概略構成を示す図である。この硬性内視鏡型血管イメージング装置は、図3に示した硬性内視鏡型血管イメージング装置において、コリメータ64aに代えて、照明用レンズ64bを使用するとともに、テーパードファイバ11を並列に複数本設け、それらの出射側に合波手段40としてファイバカプラ41を設けている。また、走査マウント65に照明用レンズ64bと複数のテーパードファイバ11の入射面とが、生体試料100に面するように固定されている。
【0058】
照明用レンズ64bは、図3に示したコリメータ64aとは異なり、SMF63を伝播してきたレーザ光を拡散させて、テーパードファイバ11の入射面に面した生体試料100の領域に照射させる。このレーザ光は、生体試料100の表面及び内部で反射または散乱されて、複数のテーパードファイバ11に多モードの光として入射する。各テーパードファイバ11に入射した信号光は、モード間のエネルギー分布が調整された後、基本モードを含む少ないモード数の光としてファイバカプラ41に入射して合波される。その後、ファイバカプラ41で合波された信号光は、Er添加フッ化物ファイバ型光増幅器21に入射する。その他の構成および作用は第2実施の形態と同様であるので、同一構成要素には同一参照符号を付して説明を省略する。
【0059】
以上説明したように、本実施の形態によれば、第2実施の形態の効果に加え、テーパードファイバ11を複数有することにより、より多くの信号光を集光することができる。また、一般に、空間モード数の少ない素子ほど動作が安定しているので、信号光の空間モード数を少なくして合波手段を使用して合波させることにより、装置全体の動作安定性を更に向上させることができる。
【0060】
(第5実施の形態)
図8は、本発明の第5実施の形態に係る光検出装置の概略構成を示すブロック図である。この光検出装置は、図1に記載の光検出装置の構成において、モード調整手段10と増幅手段20とを、各1個を一組として複数並列に設けるとともに、それぞれの増幅手段20からの出力を、これら出力を並列に処理することのできる変換手段30に入力されるように構成したものである。
【0061】
上記の構成において、被検出光は、複数のモード調整手段10に入力され、それぞれのモード調整手段10において、空間モードの調整が行われる。その後、複数のモード調整手段10からの出力光は、対応する増幅手段20に入力されて増幅され、さらに変換手段30によって並列に電気信号に変換される。変換手段30から出力される電気信号は後段に続く信号処理系にて所望のデータに変換される。
【0062】
本実施の形態によれば、並列に入射する多モードの入射光を、エネルギーのモード分布を調整して、増幅手段20による増幅空間モードと略一致するモードに調整する複数のモード調整手段10を、それぞれ対応する増幅手段20及び変換手段30の前に配置したので、被検出信号光が散乱された光や波面の乱れた光であっても、これを高効率で集めることができ、高速かつ高感度な光検出が可能になる。さらに、複数のモード調整手段10及びそれに対応する複数の増幅手段20を有し、それぞれの増幅手段20からの光出力を並列に電気信号に変換することで、同時に画像情報等の複数点の情報を得ることができる。
【0063】
(第6実施の形態)
図9は、図8に示した光検出装置を用いた本発明の第6実施の形態に係る高感度内視鏡の概略構成を示す図である。この高感度内視鏡は、照明用のレーザ光を照射し、生体試料100の表面及び内部で反射または散乱された光を、図8の光検出装置により検出して電気信号に変換し、この電気信号を信号処理系により処理して内視鏡画像を表示するように構成されている。
【0064】
生体試料100に照明用のレーザ光を照射する光学系として、この高感度内視鏡では、波長635nm、出力20mWのLD80、アイソレータ81、多モードファイバ(multi-mode fiber: MMF)82a、および、照明用レンズ83を備え、光源であるLD80の出力はアイソレータ81およびMMF82aを介して、照明用レンズ83から空間に出力され、生体試料100へ照射されるように構成される。
【0065】
また、LD80を駆動するレーザドライバ79が設けられ、LD80は、レーザドライバ79を介して、この高感度内視鏡の全体を制御するコンピュータ69によって、出力を制御されるように構成されている。
【0066】
また、生体試料100からの被検出光を検出する光検出装置は、モード調整手段10として128×128本のテーパードファイバ11を、増幅手段20として各テーパードファイバ11に対応する128×128個の半導体光増幅器(semiconductor optical amplifier:SOA)22を、変換手段30として128×128個の画素を有するCCDカメラ32を、それぞれ用いる。また、各テーパードファイバ11と対応するSOA22との間には、それぞれアイソレータ84aを、各SOA22とCCDカメラ32との間にはアイソレータ84bとASE除去用の光バンドパスフィルタ(band-pass filter: BPF) 85とを設ける。CCDカメラ32の後段には、アナログ電気信号をディジタル信号に変換するアナログ-ディジタル(analog-to-digital: AD)変換器68を設ける。
【0067】
なお、テーパードファイバ11としては、入力側及び出力側のコア径がそれぞれ50μm及び9μmで、長さは1.0mのものを用い、その入射面は、生体試料100に面し、照明用レンズ83からのレーザ光の照射により、生体試料100のそれぞれ異なる位置からの信号光が入射するように配置され、照明用レンズ83とともにハウジング78に固定される。また、SOA22は、ドライバ86を介してコンピュータ69にて制御されるように構成されている。
【0068】
これによって、生体試料100の表面及び内部で反射もしくは散乱された波長635nmの信号光は、各テーパードファイバ11に入力され、モードが調整される。テーパードファイバ11のそれぞれの出力はアイソレータ84を介して対応するSOA22へ入力され、約18dB増幅される。各SOA22の出力は、対応するアイソレータ84を経由して対応するBPF85に入射してASEが除去される。各BPF85の出力は、128×128ピクセルのCCDカメラ32の各ピクセルに対応するように入力され、電気信号に変換される。さらに、CCDカメラ32により電気信号に変換された信号出力は、AD変換器68においてディジタル信号へ変換される。
【0069】
また、本実施の形態に係る高感度内視鏡では、装置各部を制御するとともに、AD変換器68から出力されたディジタル信号の処理を行うコンピュータ69が設けられている。コンピュータ69は、レーザドライバ79、および、ドライバ86とそれぞれ接続されて、LD80およびSOA22を制御するとともに、AD変換器68の出力信号とLD80の出力およびSOA21の増幅率とを関連付けて信号処理を行い、その結果を表示モニタ70に、例えば、内視鏡画像として表示する。
【0070】
以上説明したように、本実施の形態によれば、第2実施の形態と同様の効果を得ることができ、従来よりも高速かつ高感度に内視鏡画像を得ることができる。また、本実施の形態では、複数のテーパードファイバ11及びそれに対応する複数のSOA22を設け、それぞれのSOA22からの光出力を並列に電気信号に変換することにより、同時に生体試料100の複数点に関する情報を得ることができる。したがって、特に二次元画像などを生成する際に有効である。
【0071】
さらに、増幅手段20としてSOA22を用いることでコンパクトかつ低価格な光検出系を構築することが可能になるうえ、複数の半導体光増幅器やフォトダイオード(PD)など他の半導体素子との集積化が可能になる。また、供給電力が少なくてよいという利点も兼ね備えている。さらに、SOAは、ファイバ型光増幅器と比較すると、動作波長帯域が広いため、様々な被検出光に対応することができる。
【0072】
(第7実施の形態)
図10は、本発明の第7実施の形態に係る光検出装置の概略構成を示すブロック図である。この光検出装置は、図1に記載の光検出装置の構成において、モード調整手段10の前に、被検出光を集めるための集波手段50を設けている。これによって、請求項1に記載の発明の効果に加えて、検出できる信号光の量をより一層高めることができる。
【0073】
(第8実施の形態)
図11は、図10に示した光検出装置を用いた本発明の第8実施の形態に係る硬性内視鏡型血管イメージング装置の概略構成を示す図である。この硬性内視鏡型血管イメージング装置は、図3に示した硬性内視鏡型血管イメージング装置において、テーパードファイバ11の入射面の前に集光用レンズ51を設けたものである。テーパードファイバ11の前に集光用レンズ51を設けることにより、生体試料100の表面及び内部で反射または散乱された光の中の、より多くの部分をテーパードファイバ11に取り込むことができる。また、検出対象の深部ないし遠方に存在する被検物質に対しても、高感度かつ高いSNRで検出できるという利点を有する。
【0074】
(第9実施の形態)
図12は、本発明の第9実施の形態に係るレーザ走査型多光子顕微鏡の概略構成を示す図である。本実施の形態は、レーザ走査型多光子顕微鏡において、図10に示した光検出装置を、生細胞試料からの信号光の検出に使用したものである。
【0075】
図12に示すように、本実施の形態に係るレーザ走査型多光子顕微鏡は、チタン・サファイヤレーザ87、強度変調器88、X−Yガルバノミラー89、瞳投影レンズ90、結像レンズ91、ダイクロイックミラー92、対物光学系を構成する対物レンズ93、アイソレータ102、集光用レンズ52、テーパード導波路12、SOA23、PIN−PD33、電気増幅器67、AD変換器68、および、増幅率制御手段103を含んで構成されている。
【0076】
チタン・サファイヤレーザ87は、繰り返し周波数80MHz、パルス幅150fs、発振波長1060nmの超短光パルスを発生させる光源である。このチタン・サファイヤレーザ87からの超短光パルスは、光強度調整装置88により平均光強度を100mWに調整され、X−Yガルバノミラー89、瞳投影レンズ90、結像レンズ91、ダイクロイックミラー92および対物レンズ93を経て、検査対象である生細胞試料101に集光して照射されるように構成される。その際、X−Yガルバノミラー89を駆動して、レーザ光の試料上の照射位置を走査させる。これにより生細胞試料101中の所望の領域において、例えば赤色蛍光タンパク質(DsRed)を多光子励起(例えば、2光子励起)して蛍光を発生させることができる。
【0077】
また、対物レンズ93は、生細胞試料101から発生した蛍光を、ダイクロイックミラー92に導く。ダイクロイックミラー92は、チタン・サファイヤレーザ87からの波長1060nmの光は透過させ、波長700nm以下の短波長の光は反射させるように構成される。これにより、生細胞試料101で発生した波長約570nm〜650nmの蛍光を、ダイクロイックミラー92で反射させる。
【0078】
集光用レンズ52、テーパード導波路12、SOA23およびPIN−PD33は、それぞれ、図10に示した光検出装置の集波手段50、モード調整手段10、増幅手段20および変換手段30に相当する。ダイクロイックミラー92で反射された蛍光は、アイソレータ102を経て集光用レンズ52により集光され、テーパード導波路12へ入力される。テーパード導波路12は、入射側の空間モードが8であり、モード調整によって出射側のモード数が2まで減少するように構成されている。テーパード導波路12から出力された蛍光は、増幅率制御手段103を介して外部のコンピュータ69により制御されるSOA23に入射して増幅され、シリコンPIN−PD33により電気信号に変換される。SOA23は、入射する信号光のモード数を減じたことにより、ASEの発生を抑制して高いSNRで増幅することができる。
【0079】
さらに、PIN−PD33から出力された電気信号は電気増幅器67で増幅され、AD変換器68でディジタル信号に変換され、外部のコンピュータ69に送信される。コンピュータ69は、AD変換器68から受信した信号と、X−Yガルバノミラー89から得られる走査位置情報等とを関連付けて信号処理を行い、その結果をモニタ70に顕微鏡画像として表示する。
【0080】
なお、上記のレーザ走査型多光子蛍光顕微鏡では、チタン・サファイヤレーザ87からの励起光パルスにより、例えば、2光子励起されて生細胞試料101から発生する蛍光は、数ns程度持続する。すなわち、生細胞試料101から発生する蛍光は、チタン・サファイヤレーザ87からの励起光パルスに同期したパルス光となる。そこで、本実施の形態では、このパルス状の蛍光がSOA23に入射するタイミングに同期させて、SOA23の増幅率を、蛍光が入射するタイミングで大きくするように、コンピュータ69により制御する。
【0081】
本実施の形態によれば、チタン・サファイヤレーザ87からの励起光パルスにより多光子励起されて生細胞試料101から発生する蛍光を、テーパード導波路12を用いて空間モード数を減少させるようにモード調整を行い、SOA23で増幅してから、シリコンPIN−PD33で光電変換するようにしたので、生細胞試料101に照射するレーザ光の強度を過度に高めることなく、生細胞試料101から得られる信号光である蛍光が微弱でも、2光子励起による蛍光を高感度かつ高速に光電変換することができる。
【0082】
また、SOA23の増幅率を、SOA23への蛍光の入射タイミングに同期して制御するようにしたので、蛍光が入射しない期間に光増幅器に電力を供給することにより発生するASEの混入を低減することができ、SNRを向上することができる。さらに、SOA23の増幅率を変化させることによって、検出信号レベルを簡単に調整することができる。
【0083】
(第10実施の形態)
図13は、本発明の第10実施の形態に係る光検出装置の概略構成を示すブロック図である。この光検出装置は、図1に記載の光検出装置の構成において、モード調整手段10の前段に、複数の集波手段50と、該複数の集波手段50からの検出光を合波する合波手段40とを設けたものである。
【0084】
上記の構成において、被検出光は、複数の集波手段50によって集光され、合波手段40に入力される。合波手段40は、入力された複数の被検出光を合波し、モード調整手段10に出力する。その他の作用は、図1の光検出装置と同様である。
【0085】
本実施の形態によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、複数の集波手段50を備えることによって、複数箇所からの信号光を一括で取得することができ、さらに、複数箇所からの信号光を合波手段40でまとめることにより、増幅手段20に入力される信号光のエネルギーを増大させ、SNRをさらに向上させることができる。
【0086】
(第11実施の形態)
図14は、図13に示した光検出装置を用いた本発明の第11実施の形態に係る硬性内視鏡型血管イメージング装置の概略構成を示す図である。この硬性内視鏡型血管イメージング装置は、図3に示した硬性内視鏡型血管イメージング装置において、コリメータ64aに代えて、照明用レンズ64bを使用するとともに、テーパードファイバ11の前段に、複数の集光用レンズ51とこの集光用レンズ51に結合した多モードファイバ(multi-mode fiber: MMF)82bと、各MMF82bからの信号光を合波する多モードファイバカプラ42とを設けている。なお、集光用レンズ51および多モードファイバカプラ42は、それぞれ、図13の集波手段50および合波手段40に相当する。
【0087】
また、走査マウント65に、照明用レンズ64bと各集光用レンズ51とが、試料100に面するように固定されている。さらに、照明用レンズ64bは、図3に示したコリメータ64aとは異なり、SMF63を伝播してきたレーザ光を拡散させて、各集光用レンズ51の入射面に面した生体試料100の領域に照射させるように構成されている。
【0088】
これにより、照明用レンズ64bを出射したレーザ光は、生体試料100の表面及び内部で反射または散乱されて、複数の集光用レンズ51で集光され、MMF82bを介して多モードファイバカプラ42で合波され、テーパードファイバ11に多モードの光として入射する。その他の、構成および作用は第2実施の形態と同様であるので、同一構成要素には同一参照符号を付して説明を省略する。
【0089】
以上説明したように、本実施の形態によれば、複数の集光用レンズ51を設けたので、複数箇所からの信号光を一括で取得することができ、検出できる信号光量をより一層高めることが可能になる。また、複数箇所からの信号光を多モードファイバカプラ42でまとめることにより、後段に続くテーパードファイバ11、Er添加フッ化物ファイバ型光増幅器21、および、PIN−PD31の数量を一つに減らすことができる。また、複数箇所からの信号光をまとめることで、Er添加フッ化物ファイバ型光増幅器21に入力される信号光エネルギーを増大させることができる。したがって、より高速かつ高感度に内視鏡画像を得ることが可能になる。
【0090】
(第12実施の形態)
図15は、本発明の第12実施の形態に係る光検出装置の概略構成を示すブロック図である。この光検出装置は、図8に記載の光検出装置の構成において、各モード調整手段10の前段に、集波手段50を設けたものである。これによって、第5実施の形態に係る光検出装置の有する効果に加え、より多くの被検出光を、モード調整手段10に導くことが可能になる。
【0091】
(第13実施の形態)
図16は、図15に示した光検出装置を用いた本発明の第13実施の形態に係る硬性内視鏡型血管イメージング装置の概略構成を示す図である。この硬性内視鏡型血管イメージング装置は、図9に示した第6実施の形態に係る硬性内視鏡型血管イメージング装置において、複数のテーパードファイバ11の前に集光用レンズ52を設けたものである。テーパードファイバ11の前に集光用レンズ52を設けることにより、生体試料100の表面及び内部で反射または散乱された光の中の、より多くの部分を各テーパードファイバ11に取り込むことができる。その他の構成および作用は、第6実施の形態と同様であるので、同一構成要素には同一参照符号を付して説明を省略する。
【0092】
以上説明したように、本実施の形態によれば、テーパードファイバ11の前に集光用レンズ52を設けたので、検出できる信号光量をより一層高めることが可能になる。したがって、より高速かつ高感度に内視鏡画像を得ることが可能になる。
【0093】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。たとえば、モード調整手段としては、テーパードファイバ11またはテーパード導波路12を使用したが、これに限られず、テーパードフォトニック結晶導波路、長周期ファイバブラッググレーティングや屈折率変調平面導波路などを使用することができる。
【0094】
例えば、第9実施の形態において、テーパード導波路12に代えて、導波路長手方向に不均一な屈折率の分布を有する屈折率分布型導波路等を使用するか、または、導波路長手方向に不均一な応力の分布もしくは不均一な温度の分布を与えた導波路を使用することができる。この場合、光導波路中の屈折率、応力、もしくは温度の揺らぎにより、空間モード間においてエネルギーのやり取りが発生する。この屈折率、応力、もしくは温度の揺らぎを意図的に光導波路中に与えることにより、空間モード間のエネルギー比率の変化を誘導することができる。
【0095】
また、増幅手段としては、Er添加フッ化物ファイバ型光増幅器またはSOAを使用したがこれに限られない。例えば、これらの増幅器に代えて、誘導ラマン散乱効果を利用したファイバ型光増幅器を使用することができる。希土類添加ファイバ型光増幅器の動作波長帯域は非常に離散的なため、光増幅効果を得ることができない波長領域が存在するが、誘導ラマン散乱効果は動作波長帯域を選ばないため、これを利用することで、任意の波長領域において光増幅が可能になる。また、他のファイバ型光増幅器、例えば、ファイバ型ブリルアン光増幅器、ファイバ型パラメトリック光増幅器などを使用することもできる。さらに、色素増幅器を使用することもできる。ファイバ型光増幅器や半導体光増幅器と比較すると、色素の増幅帯域は広いので、色素増幅器を使用すると、広帯域な信号を増幅することが可能になる。さらに色素の設計次第で、様々な波長での光増幅が可能になる。
【0096】
また、変換手段としては、PIN−PDまたはCCDカメラを使用したが、これに限られず、たとえば、APD、PMT、CMOS、EM−CCDまたはEB−CCDを使用することもできる。
【0097】
合波手段40としては、ファイバカプラまたは多モードファイバカプラを使用したがこれに限られず、例えば、平面導波路型光カプラ、空間型ビームコンバイナ、偏波合成カプラ、波長合成カプラなどを使用することもできる。
【0098】
集波手段としては、集光用レンズを使用したがこれに限られず、例えば、GRIN(Gradient Index)レンズや、レンズドファイバなどを使用することもできる。
【符号の説明】
【0099】
10 モード調整手段
11 テーパードファイバ
11a テーパードファイバのコア部分
12 テーパード導波路
20 増幅手段
21 Er添加フッ化物ファイバ型光増幅器
22 半導体光増幅器(SOA)
23 半導体光増幅器(SOA)
30 変換手段
31 PIN−PD
32 CCDカメラ
33 PIN−PD
40 合波手段
41 ファイバカプラ
42 多モードファイバカプラ
50 集波手段
51 集光用レンズ
52 集光用レンズ
61 Er添加フッ化物ファイバレーザ
62 アイソレータ
63 SMF
64a コリメータ
64b 照明用レンズ
65 走査マウント
66 レーザドライバ
67 電気増幅器
68 AD変換器
69 コンピュータ
70 表示モニタ
71 ドライバ
72 ドライバ
73a、37b アイソレータ
74 WDMカプラ
75 Er添加フッ化物ファイバ
76 光フィルタ
77 LD
78 ハウジング
79 レーザドライバ
80 LD
81 アイソレータ 82a、82b MMF
83 照明用レンズ
84a、84b アイソレータ
85 BPF
86 ドライバ
87 チタン・サファイヤレーザ
88 光強度調整装置
89 X−Yガルバノミラー
90 瞳投影レンズ
91 結像レンズ
92 ダイクロイックミラー
93 対物レンズ
100 生体試料
101 生細胞試料
102 アイソレータ
103 増幅率制御手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多モードの入射光のモード状態を調整するモード調整手段と、
前記モード調整手段は、前記入射光の空間分布状態に応じてモード調整条件を制御する制御手段を有し、
前記モード調整手段から出力される光を増幅する増幅手段と、
前記増幅手段から出力される光を電気信号に変換する変換手段とを備え、
前記モード調整手段は、前記入射光のモード分布と、前記増幅手段の増幅空間モードとを略一致するように構成されていることを特徴とする光検出装置。
【請求項2】
前記制御手段が、前記変換手段の出力信号レベルを高くするように制御されることを特徴とする請求項1記載の光検出装置。
【請求項3】
前記モード調整手段がファイバブラッググレーティングもしくはテーパードファイバであることを特徴とする請求項1記載の光検出装置。
【請求項4】
前記制御手段が、前記モード調整手段に機械的な作用(伸張、屈曲もしくは応力)を与える機能を有することを特徴とする請求項1記載の光検出装置。
【請求項5】
前記制御手段が、前記モード調整手段に温度変化を与える機能を有することを特徴とする請求項1記載の光検出装置。
【請求項6】
前記モード調整手段が、グレーデッドインデックスファイバで構成されるテーパードファイバであることを特徴とする請求項3記載の光検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−230649(P2010−230649A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252961(P2009−252961)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】