説明

光構造観察装置、その構造情報処理方法及び光構造観察装置を備えた内視鏡装置

【課題】生体組織等の層構造を有する被計測物体の内部を3次元的に構造解析する。
【解決手段】処理部22は、光構造情報検出部220、光立体構造像構築部221、中間層抽出手段としての中間層抽出部222、層平坦化手段としての平坦化処理部223、構造像変換手段としての光立体構造像変換部224、平行領域設定手段としての平行領域設定部225と、領域特徴情報算出手段としての領域特徴情報算出部226と、平行断面画像生成手段としての平行断面画像生成部227と、画像解析手段としての癌化レベル判定部228と、立体特徴像生成手段としての立体特徴像生成部229と、表示制御部230及びI/F部231と、を備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光構造観察装置、その構造情報処理方法及び光構造観察装置を備えた内視鏡装置に係り、特に被計測物体の構造情報の情報処理に特徴のある光構造観察装置、その構造情報処理方法及び光構造観察装置を備えた内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば医療分野などで、非侵襲で生体内部の断層像を得る方法の一つとして、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)計測が利用されるようになってきた。このOCT計測は超音波計測に比べ、分解能が10μm程度と一桁高く、生体内部の詳細な断層像が得られるという利点がある。
【0003】
OCT計測は上述したように特定の領域の光断層像を取得する方法であるが、内視鏡下では、例えば癌病変部を通常照明光内視鏡や特殊光内視鏡の観察により発見し、その領域をOCT測定することで、癌病変部がどこまで浸潤しているかを見わけることが可能となる。また、測定光の光軸を2次元的に走査することで、OCT計測による深さ情報と合わせて3次元的な情報を取得することができる。
【0004】
OCT計測と3次元コンピュータグラフィック技術の融合により、マイクロメートルオーダの分解能を持つ3次元構造モデルを表示することが可能となることから、以下ではこのOCT計測による3次元構造モデルを光立体構造像(あるいは光立体構造情報)と呼ぶ。
【0005】
一般に、大腸癌の内視鏡診断では、内視鏡下で腺管(crypt)を観察し、ピットパターンと呼ばれる大腸の粘膜構造による分類が行われ、このような腺管構造を詳細に観察するために、色素などを使用して組織構造の特徴を明瞭にさせて拡大内視鏡で観察することが行なわれている。また、色素散布による検査時間やコスト増加の問題点を解決し、容易に観察を可能とするために、2次元の粘膜表面の凹凸を画像処理により色コントラストを再現する方法も提案されている(特許文献1)。
【0006】
一方、前述したOCT計測で大腸粘膜を3次元的に測定すると、腺管構造の3次元構造が抽出でき、表面付近の情報はピットパターンと同様な構造が得られる。さらにOCT計測では3次元構造が得られるため、腺管構造の深度方向の変化が観測される。大腸が癌になると粘膜層の腺管構造が崩れることが知られており、その中から腺管を抽出して3次元的な形状を分析することで、正常と病変部の違いを数値的に分析できることが知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−25025号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Journal of Biomedical Optics Vol. 13, p. 054055 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ピットパターン診断は、あくまでも粘膜表面の画像を基づいてその進行度を判断する手法であり、深達度に関する情報は経験的なものでしかなく、表面の腺管構造は分かるが内部構造は分からない。また、OCT計測による3次元的な測定での腺管の抽出では構造が視覚的にわかりにくく、また立体的な病変部の変化を画像化するのは困難である。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、生体組織等の層構造を有する被計測物体の内部を3次元的に構造解析することのできる光構造観察装置、その構造情報処理方法及び光構造観察装置を備えた内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の光構造観察装置は、低干渉光を用いて層構造を有する被計測物体の深さ方向である第1の方向と該第1の方向に直交する第2の方向から成るスキャン面を走査して得られる前記被計測物体の光構造情報を、前記スキャン面に直交する方向である第3の方向に沿って位置をずらしながら複数取得して、取得した複数の前記光構造情報に基づいて光立体構造像を構築する光構造観察装置において、前記光立体構造像に複数の演算領域を設定する演算領域設定手段と、前記演算領域毎に所定演算を実行して前記光構造情報の領域特徴情報を算出する領域特徴情報算出手段と、前記領域特徴情報に基づき、前記演算領域内の特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、前記特徴量に基づく立体特徴像を生成する立体特徴像生成手段と、を備えて構成される。
【0012】
本発明の請求項1に記載の光構造観察装置では、前記演算領域設定手段が前記光立体構造像に複数の演算領域を設定し、前記領域特徴情報算出手段が前記演算領域毎に所定演算を実行して前記光構造情報の領域特徴情報を算出し、前記特徴量抽出手段が前記領域特徴情報に基づき、前記演算領域内の特徴量を抽出し、前記立体特徴像生成手段が前記特徴量に基づく立体特徴像を生成することで、生体組織等の層構造を有する被計測物体の内部を3次元的に構造解析することを可能とする。
【0013】
請求項2に記載の光構造観察装置のように、請求項1に記載の光構造観察装置であって、前記演算領域設定手段は、前記光立体構造像を構成する前記光構造情報より前記被計測物体内の所望の中間層を抽出する中間層抽出手段と、前記中間層を平坦化する層平坦化手段と、平坦化された前記中間層を基準層として前記光立体構造像を再構築し3次元変換光構造像を生成する構造像変換手段と、前記3次元変換光構造像上において前記基準層に平行な平行面にて前記3次元変換光構造像を切断し前記基準層に直交する所定間隔の複数の平行領域を設定する平行領域設定手段と、を備えて構成され、前記平行領域を前記演算領域として設定することが好ましい。
【0014】
請求項3に記載の光構造観察装置のように、請求項2に記載の光構造観察装置であって、前記特徴量抽出手段は、前記平行領域毎の前記領域特徴情報に基づく平行断面画像を生成する平行断面画像生成手段と、前記平行断面画像を空間周波数解析することにより前記特徴量を抽出する画像解析手段と、を備えて構成されることが好ましい。
【0015】
請求項4に記載の光構造観察装置のように、請求項2または3に記載の光構造観察装置であって、前記領域特徴情報抽出手段は、前記平行領域内の前記光構造情報を前記基準層に直交する方向に沿って、積分処理、最大値投影処理及び最小値投影処理のいずれか1つを前記所定処理として実行し前記領域特徴情報を抽出することが好ましい。
【0016】
請求項5に記載の光構造観察装置のように、請求項2ないし4のいずれか1つに記載の光構造観察装置であって、前記立体特徴像は、前記特徴量の分布像であることが好ましい。
【0017】
請求項6に記載の光構造観察装置のように、請求項2ないし5のいずれか1つに記載の光構造観察装置であって、前記光立体構造像、前記3次元変換光構造像、前記立体特徴像の少なくとも1つを表示手段に表示させる表示制御手段をさらに備えることが好ましい。
【0018】
請求項7に記載の光構造観察装置のように、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の光構造観察装置であって、前記被計測物体は、生体管腔臓器であることが好ましい。
【0019】
請求項8に記載の光構造観察装置のように、請求項7に記載の光構造観察装置であって、前記基準層は、粘膜筋板であることが好ましい。
【0020】
請求項9に記載の光構造観察装置のように、請求項7または8に記載の光構造観察装置であって、前記光構造情報は、前記生体管腔臓器における腺窩構造を含む構造情報であることが好ましい。
【0021】
請求項10に記載の光構造観察装置のように、請求項7ないし9のいずれか1つに記載の光構造観察装置であって、前記特徴量は、前記光構造情報に基づく前記生体管腔臓器の癌化の度合いを示すことが好ましい。
【0022】
本発明の請求項11に記載の光構造観察装置の構造情報処理方法は、低干渉光を用いて層構造を有する被計測物体の深さ方向である第1の方向と該第1の方向に直交する第2の方向から成るスキャン面を走査して得られる前記被計測物体の光構造情報を、前記スキャン面に直交する方向である第3の方向に位置をずらしながら複数取得して、取得した複数の前記光構造情報に基づいて光立体構造像を構築する光構造観察装置の構造情報処理方法において、前記光立体構造像に複数の演算領域を設定する演算領域設定ステップと、前記演算領域毎に所定演算を実行して前記光構造情報の領域特徴情報を算出する領域特徴情報算出ステップと、前記領域特徴情報に基づき、前記演算領域内の特徴量を抽出する特徴量抽出ステップと、前記特徴量に基づく立体特徴像を生成する立体特徴像生成ステップと、を備えて構成される。
【0023】
本発明の請求項12に記載の内視鏡装置は、請求項1ないし10のいずれか1つに記載の光構造観察装置と、管腔内に挿入する挿入部を有し、前記低干渉光を送受光するプローブを前記挿入部に挿通可能な内視鏡と、を備えて構成される。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、生体組織等の層構造を有する被計測物体の内部を3次元的に構造解析することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る画像診断装置を示す外観図
【図2】図1のOCTプロセッサの内部構成を示すブロック図
【図3】図2のOCTプローブの断面図
【図4】図1の内視鏡の鉗子口から導出されたOCTプローブを用いて光構造情報を得る様子を示す図
【図5】図2の処理部の構成を示すブロック図
【図6】図1の画像診断装置の作用を説明するフローチャート
【図7】図6の処理を説明するための第1の図
【図8】図5の光立体構造像構築部により生成された光立体構造像を示す図
【図9】図6の処理を説明するための第2の図
【図10】図6の処理を説明するための第3の図
【図11】図5の光立体構造像変換部により変換された光立体構造像を示す図
【図12】図6の処理を説明するための第4の図
【図13】図5の平行断面画像生成部が生成したピットパターンが現れた平行断面画像の一例を示す図
【図14】図6の処理を説明するための第5の図
【図15】図6の処理により生成された立体特徴像の表示の一例を示す図
【図16】図15の立体特徴像の深さ方向の任意の断面像を示す図
【図17】任意の深さ位置の図15の立体特徴像の平行断層像を示す図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0027】
<画像診断装置の外観>
図1は本発明に係る画像診断装置を示す外観図である。
【0028】
図1に示すように、本実施形態の光構造観察装置としての画像診断装置10は、主として内視鏡100、内視鏡プロセッサ200、光源装置300、OCTプロセッサ400、及び表示手段としてのモニタ装置500とから構成されている。尚、内視鏡プロセッサ200は、光源装置300を内蔵するように構成されていてもよい。
【0029】
内視鏡100は、手元操作部112と、この手元操作部112に連設される挿入部114とを備える。術者は手元操作部112を把持して操作し、挿入部114を被検者の体内に挿入することによって観察を行う。
【0030】
手元操作部112には、鉗子挿入部138が設けられており、この鉗子挿入部138が先端部144の鉗子口156に連通されている。本発明に係る画像診断装置10では、OCTプローブ600を鉗子挿入部138から挿入することによって、OCTプローブ600を鉗子口156から導出する。OCTプローブ600は、鉗子挿入部138から挿入され、鉗子口156から導出される挿入部602と、術者がOCTプローブ600を操作するための操作部604、及びコネクタ410を介してOCTプロセッサ400と接続されるケーブル606から構成されている。
【0031】
<内視鏡、内視鏡プロセッサ、光源装置の構成>
[内視鏡]
内視鏡100の先端部144には、観察光学系150、照明光学系152、及びCCD(不図示)が配設されている。
【0032】
観察光学系150は、被検体を図示しないCCDの受光面に結像させ、CCDは受光面上に結像された被検体像を各受光素子によって電気信号に変換する。この実施の形態のCCDは、3原色の赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタが所定の配列(ベイヤー配列、ハニカム配列)で画素毎に配設されたカラーCCDである。
【0033】
[光源装置]
光源装置300は、可視光を図示しないライトガイドに入射させる。ライトガイドの一端はLGコネクタ120を介して光源装置300に接続され、ライトガイドの他端は照明光学系152に対面している。光源装置300から発せられた光は、ライトガイドを経由して照明光学系152から出射され、観察光学系150の視野範囲を照明する。
【0034】
[内視鏡プロセッサ]
内視鏡プロセッサ200には、CCDから出力される画像信号が電気コネクタ110を介して入力される。このアナログの画像信号は、内視鏡プロセッサ200内においてデジタルの画像信号に変換され、モニタ装置500の画面に表示するための必要な処理が施される。
【0035】
このように、内視鏡100で得られた観察画像のデータが内視鏡プロセッサ200に出力され、内視鏡プロセッサ200に接続されたモニタ装置500に画像が表示される。
【0036】
<OCTプロセッサ、OCTプローブの内部構成>
図2は図1のOCTプロセッサの内部構成を示すブロック図である。
【0037】
[OCTプロセッサ]
図2に示すOCTプロセッサ400及びOCTプローブ600は、光干渉断層(OCT:Optical Coherence Tomography)計測法による測定対象の光断層画像を取得するためのもので、測定のための光Laを射出する第1の光源(第1の光源ユニット)12と、第1の光源12から射出された光Laを測定光(第1の光束)L1と参照光L2に分岐するとともに、被検体である測定対象Sからの戻り光L3と参照光L2を合波して干渉光L4を生成する光ファイバカプラ(分岐合波部)14と、光ファイバカプラ14で分岐された測定光L1を測定対象まで導波するとともに測定対象からの戻り光L3を導波する回転側光ファイバFB1を備えるOCTプローブ600と、測定光L1を回転側光ファイバFB1まで導波するとともに回転側光ファイバFB1によって導波された戻り光L3を導波する固定側光ファイバFB2と、回転側光ファイバFB1を固定側光ファイバFB2に対して回転可能に接続し、測定光L1および戻り光L3を伝送する光コネクタ18と、光ファイバカプラ14で生成された干渉光L4を干渉信号として検出する干渉光検出部20と、この干渉光検出部20によって検出された干渉信号を処理して光構造情報を取得し、処理部22を有する。また、処理部22で取得された光構造情報に基づいて画像はモニタ装置500に表示される。
【0038】
また、OCTプロセッサ400は、測定の目印を示すためのエイミング光(第2の光束)Leを射出する第2の光源(第2の光源ユニット)13と、参照光L2の光路長を調整する光路長調整部26と、第1の光源12から射出された光Laを分光する光ファイバカプラ28と、光ファイバカプラ14で合波された戻り光L4およびL5を検出する検出器30aおよび30bと、処理部22への各種条件の入力、設定の変更等を行う操作制御部32とを有する。
【0039】
なお、図2に示すOCTプロセッサ400においては、上述した射出光La、エイミング光Le、測定光L1、参照光L2および戻り光L3などを含む種々の光を各光デバイスなどの構成要素間で導波し、伝送するための光の経路として、回転側光ファイバFB1および固定側光ファイバFB2を含め種々の光ファイバFB(FB3、FB4、FB5、FB6、FB7、FB8など)が用いられている。
【0040】
第1の光源12は、OCTの測定のための光(例えば、波長1.3μmのレーザ光あるいは低コヒーレンス光)を射出するものであり、この第1の光源12は周波数を一定の周期で掃引させながら赤外領域である、例えば波長1.3μmを中心とするレーザ光Laを射出する光源である。この第1の光源12は、レーザ光あるいは低コヒーレンス光Laを射出する光源12aと、光源12aから射出された光Laを集光するレンズ12bとを備えている。また、詳しくは後述するが、第1の光源12から射出された光Laは、光ファイバFB4、FB3を介して光ファイバカプラ14で測定光L1と参照光L2に分割され、測定光L1は光コネクタ18に入力される。
【0041】
また、第2の光源13は、エイミング光Leとして測定部位を確認しやすくするために可視光を射出するものである。例えば、波長0.66μmの赤半導体レーザ光、波長0.63μmのHe−Neレーザ光、波長0.405μmの青半導体レーザ光などを用いることができる。そこで、第2の光源13としては、例えば赤色あるいは青色あるいは緑色のレーザ光を射出する半導体レーザ13aと、半導体レーザ13aから射出されたエイミング光Leを集光するレンズ13bを備えている。第2の光源13から射出されたエイミング光Leは、光ファイバFB8を介して光コネクタ18に入力される。
【0042】
光コネクタ18では、測定光L1とエイミング光Leとが合波され、OCTプローブ600内の回転側光ファイバFB1に導波される。
【0043】
光ファイバカプラ(分岐合波部)14は、例えば2×2の光ファイバカプラで構成されており、固定側光ファイバFB2、光ファイバFB3、光ファイバFB5、光ファイバFB7とそれぞれ光学的に接続されている。
【0044】
光ファイバカプラ14は、第1の光源12から光ファイバFB4およびFB3を介して入射した光Laを測定光(第1の光束)L1と参照光L2とに分割し、測定光L1を固定側光ファイバFB2に入射させ、参照光L2を光ファイバFB5に入射させる。
【0045】
さらに、光ファイバカプラ14は、光ファイバFB5に入射され後述する光路長調整部26によって周波数シフトおよび光路長の変更が施されて光ファイバFB5を戻った光L2と、後述するOCTプローブ600で取得され固定側光ファイバFB2から導波された光L3とを合波し、光ファイバFB3(FB6)および光ファイバFB7に射出する。
【0046】
OCTプローブ600は、光コネクタ18を介して、固定側光ファイバFB2と接続されており、固定側光ファイバFB2から、光コネクタ18を介して、エイミング光Leと合波された測定光L1が回転側光ファイバFB1に入射される。入射されたこのエイミング光Leと合波された測定光L1を回転側光ファイバFB1によって伝送して測定対象Sに照射する。そして測定対象Sからの戻り光L3を取得し、取得した戻り光L3を回転側光ファイバFB1によって伝送して、光コネクタ18を介して、固定側光ファイバFB2に射出するようになっている。
【0047】
光コネクタ18は、測定光(第1の光束)L1とエイミング光(第2の光束)Leとを合波するものである。
【0048】
干渉光検出部20は、光ファイバFB6および光ファイバFB7と接続されており、光ファイバカプラ14で参照光L2と戻り光L3とを合波して生成された干渉光L4およびL5を干渉信号として検出するものである。
【0049】
ここで、OCTプロセッサ400は、光ファイバカプラ28から分岐させた光ファイバFB6上に設けられ、干渉光L4の光強度を検出する検出器30aと、光ファイバFB7の光路上に干渉光L5の光強度を検出する検出器30bとを有している。
【0050】
干渉光検出部20は、検出器30aおよび検出器30bの検出結果に基づいて、光ファイバFB6から検出する干渉光L4と光ファイバFB7から検出する干渉光L5をフーリエ変換することにより、測定対象Sの各深さ位置における反射光(あるいは後方散乱光)の強度を検出する。
【0051】
処理部22は、干渉光検出部20で抽出した干渉信号から、測定位置におけるOCTプローブ600と測定対象Sとの接触している領域、より正確にはOCTプローブ600のプローブ外筒(後述)の表面と測定対象Sの表面とが接触しているとみなせる領域を検出し、さらに、干渉光検出部20で検出した干渉信号から光構造情報を取得し、取得した光構造情報に基づいて光立体構造像を生成すると共に、この光立体構造像に対して各種処理を施した画像をモニタ装置500へ出力する。処理部22の詳細な構成は後述する。
【0052】
光路長調整部26は、光ファイバFB5の参照光L2の射出側(すなわち、光ファイバFB5の光ファイバカプラ14とは反対側の端部)に配置されている。
【0053】
光路長調整部26は、光ファイバFB5から射出された光を平行光にする第1光学レンズ80と、第1光学レンズ80で平行光にされた光を集光する第2光学レンズ82と、第2光学レンズ82で集光された光を反射する反射ミラー84と、第2光学レンズ82および反射ミラー84を支持する基台86と、基台86を光軸方向に平行な方向に移動させるミラー移動機構88とを有し、第1光学レンズ80と第2光学レンズ82との距離を変化させることで参照光L2の光路長を調整する。
【0054】
第1光学レンズ80は、光ファイバFB5のコアから射出された参照光L2を平行光にするとともに、反射ミラー84で反射された参照光L2を光ファイバFB5のコアに集光する。
【0055】
また、第2光学レンズ82は、第1光学レンズ80により平行光にされた参照光L2を反射ミラー84上に集光するとともに、反射ミラー84により反射された参照光L2を平行光にする。このように、第1光学レンズ80と第2光学レンズ82とにより共焦点光学系が形成されている。
【0056】
さらに、反射ミラー84は、第2光学レンズ82で集光される光の焦点に配置されており、第2光学レンズ82で集光された参照光L2を反射する。
【0057】
これにより、光ファイバFB5から射出した参照光L2は、第1光学レンズ80により平行光になり、第2光学レンズ82により反射ミラー84上に集光される。その後、反射ミラー84により反射された参照光L2は、第2光学レンズ82により平行光になり、第1光学レンズ80により光ファイバFB5のコアに集光される。
【0058】
また、基台86は、第2光学レンズ82と反射ミラー84とを固定し、ミラー移動機構88は、基台86を第1光学レンズ80の光軸方向(図2矢印A方向)に移動させる。
【0059】
ミラー移動機構88で、基台86を矢印A方向に移動させることで、第1光学レンズ80と第2光学レンズ82との距離を変更することができ、参照光L2の光路長を調整することができる。
【0060】
抽出領域設定手段としての操作制御部32は、キーボード、マウス等の入力手段と、入力された情報に基づいて各種条件を管理する制御手段とを有し、処理部22に接続されている。操作制御部32は、入力手段から入力されたオペレータの指示に基づいて、処理部22における各種処理条件等の入力、設定、変更等を行う。
【0061】
なお、操作制御部32は、操作画面をモニタ装置500に表示させてもよいし、別途表示部を設けて操作画面を表示させてもよい。また、操作制御部32で、第1の光源12、第2の光源13、光コネクタ18、干渉光検出部20、光路長ならびに検出器30aおよび30bの動作制御や各種条件の設定を行うようにしてもよい。
【0062】
[OCTプローブ]
図3は図2のOCTプローブの断面図である。
【0063】
図3に示すように、挿入部602の先端部は、プローブ外筒620と、キャップ622と、回転側光ファイバFB1と、バネ624と、固定部材626と、光学レンズ628とを有している。
【0064】
プローブ外筒(シース)620は、可撓性を有する筒状の部材であり、光コネクタ18においてエイミング光Leが合波された測定光L1および戻り光L3が透過する材料からなっている。なお、プローブ外筒620は、測定光L1(エイミング光Le)および戻り光L3が通過する先端(光コネクタ18と反対側の回転側光ファイバFB1の先端、以下プローブ外筒620の先端と言う)側の一部が全周に渡って光を透過する材料(透明な材料)で形成されていればよく、先端以外の部分については光を透過しない材料で形成されていてもよい。
【0065】
キャップ622は、プローブ外筒620の先端に設けられ、プローブ外筒620の先端を閉塞している。
【0066】
回転側光ファイバFB1は、線状部材であり、プローブ外筒620内にプローブ外筒620に沿って収容されており、固定側光ファイバFB2から射出され、光コネクタ18で光ファイバFB8から射出されたエイミング光Leと合波された測定光L1を光学レンズ628まで導波するとともに、測定光L1(エイミング光Le)を測定対象Sに照射して光学レンズ628で取得した測定対象Sからの戻り光L3を光コネクタ18まで導波し、固定側光ファイバFB2に入射する。
【0067】
ここで、回転側光ファイバFB1と固定側光ファイバFB2とは、光コネクタ18によって接続されており、回転側光ファイバFB1の回転が固定側光ファイバFB2に伝達しない状態で、光学的に接続されている。また、回転側光ファイバFB1は、プローブ外筒620に対して回転自在、及びプローブ外筒620の軸方向に移動自在な状態で配置されている。
【0068】
バネ624は、回転側光ファイバFB1の外周に固定されている。また、回転側光ファイバFB1およびバネ624は、光コネクタ18に接続されている。
【0069】
光学レンズ628は、回転側光ファイバFB1の測定側先端(光コネクタ18と反対側の回転側光ファイバFB1の先端)に配置されており、先端部が、回転側光ファイバFB1から射出された測定光L1(エイミング光Le)を測定対象Sに対し集光するために略球状の形状で形成されている。
【0070】
光学レンズ628は、回転側光ファイバFB1から射出した測定光L1(エイミング光Le)を測定対象Sに対し照射し、測定対象Sからの戻り光L3を集光し回転側光ファイバFB1に入射する。
【0071】
固定部材626は、回転側光ファイバFB1と光学レンズ628との接続部の外周に配置されており、光学レンズ628を回転側光ファイバFB1の端部に固定する。ここで、固定部材626による回転側光ファイバFB1と光学レンズ628の固定方法は、特に限定されず、接着剤により、固定部材626と回転側光ファイバFB1および光学レンズ628を接着させて固定されても、ボルト等を用い機械的構造で固定してもよい。なお、固定部材626は、ジルコニアフェルールやメタルフェルールなど光ファイバの固定や保持あるいは保護のために用いられるものであれば、如何なるものを用いても良い。
【0072】
また、回転側光ファイバFB1およびバネ624は、後述する回転筒656に接続されており、回転筒656によって回転側光ファイバFB1およびバネ624を回転させることで、光学レンズ628をプローブ外筒620に対し、矢印R2方向に回転させる。また、光コネクタ18は、回転エンコーダを備え、回転エンコーダからの信号に基づいて光学レンズ628の位置情報(角度情報)から測定光L1の照射位置を検出する。つまり、回転している光学レンズ628の回転方向における基準位置に対する角度を検出して、測定位置を検出する。
【0073】
さらに、回転側光ファイバFB1、バネ624、固定部材626、及び光学レンズ628は、後述する駆動部により、プローブ外筒620内部を矢印S1方向(鉗子口方向)、及びS2方向(プローブ外筒620の先端方向)に移動可能に構成されている。
【0074】
また、図3左側は、OCTプローブ600の操作部604における回転側光ファイバFB1等の駆動部の概略を示す図である。
【0075】
プローブ外筒620は、固定部材670に固定されている。これに対し、回転側光ファイバFB1およびバネ624は、回転筒656に接続されており、回転筒656は、モータ652の回転に応じてギア654を介して回転するように構成されている。回転筒656は、光コネクタ18に接続されており、測定光L1及び戻り光L3は、光コネクタ18を介して回転側光ファイバFB1と固定側光ファイバFB2間を伝送される。
【0076】
また、これらを内蔵するフレーム650は支持部材662を備えており、支持部材662は、図示しないネジ孔を有している。ネジ孔には進退移動用ボールネジ664が咬合しており、進退移動用ボールネジ664には、モータ660が接続されている。したがって、モータ660を回転駆動することによりフレーム650を進退移動させ、これにより回転側光ファイバFB1、バネ624、固定部材626、及び光学レンズ628を図3のS1及びS2方向に移動させることが可能となっている。
【0077】
OCTプローブ600は、以上のような構成であり、光コネクタ18により回転側光ファイバFB1およびバネ624が、図3中矢印R2方向に回転されることで、光学レンズ628から射出される測定光L1(エイミング光Le)を測定対象Sに対し、矢印R2方向(プローブ外筒620の円周方向)に対し走査しながら照射し、戻り光L3を取得する。エイミング光Leは、測定対象Sに、例えば青色、赤色あるいは緑色のスポット光として照射され、このエイミング光Leの反射光は、モニタ装置500に表示された観察画像に輝点としても表示される。
【0078】
これにより、プローブ外筒620の円周方向の全周において、測定対象Sの所望の部位を正確にとらえることができ、測定対象Sを反射した戻り光L3を取得することができる。
【0079】
さらに、光立体構造像を生成するための複数の光構造情報を取得する場合は、駆動部により光学レンズ628が矢印S1方向の移動可能範囲の終端まで移動され、断層像からなる光構造情報を取得しながら所定量ずつS2方向に移動し、又は光構造情報取得とS2方向への所定量移動を交互に繰り返しながら、移動可能範囲の終端まで移動する。
【0080】
このように測定対象Sに対して所望の範囲の複数の光構造情報を得て、取得した複数の光構造情報に基づいて光立体構造像を得ることができる。
【0081】
つまり、干渉信号により測定対象Sの深さ方向(第1の方向)の光構造情報を取得し、測定対象Sに対し図3矢印R2方向(プローブ外筒620の円周方向)に走査することで、第1の方向と、該第1の方向と直交する第2の方向とからなるスキャン面での光構造情報を取得することができ、さらには、このスキャン面に直交する第3の方向に沿ってスキャン面を移動させることで、光立体構造像を生成するための複数の光構造情報が取得できる。
【0082】
図4は図1の内視鏡の鉗子口から導出されたOCTプローブを用いて光構造情報を得る様子を示す図である。図4に示すように、OCTプローブの挿入部602の先端部を、測定対象Sの所望の部位に近づけて、光構造情報を得る。所望の範囲の複数の光構造情報を取得する場合は、OCTプローブ600本体を移動させる必要はなく、前述の駆動部によりプローブ外筒620内で光学レンズ628を移動させればよい。
【0083】
[処理部]
図5は図2の処理部の構成を示すブロック図である。
【0084】
図5に示すように、OCTプロセッサ400の処理部22は、光構造情報検出部220、光立体構造像構築部221、中間層抽出手段としての中間層抽出部222、層平坦化手段としての平坦化処理部223、構造像変換手段としての光立体構造像変換部224、平行領域設定手段としての平行領域設定部225と、領域特徴情報算出手段としての領域特徴情報算出部226と、平行断面画像生成手段としての平行断面画像生成部227と、画像解析手段としての癌化レベル判定部(平行断面画像解析部)228と、立体特徴像生成手段としての立体特徴像生成部229と、表示制御部230及びI/F(インターフェイス)部231と、を備えて構成される。
【0085】
なお、演算領域設定手段は、中間層抽出部222、平坦化処理部223、光立体構造像変換部224及び平行領域設定部225により構成される。
【0086】
また、特徴量抽出手段は、平行断面画像生成部227及び癌化レベル判定部228により構成される。
【0087】
光構造情報検出部220は、干渉光検出部20で検出した干渉信号から光構造情報を検出するものである。また、光立体構造像構築部221は光構造情報検出部220が検出した光構造情報に基づいて光立体構造像を生成するものである。
【0088】
中間層抽出部222は、スキャン面での光構造情報において、例えば測定対象Sが大腸の粘膜の場合、中間層として例えば粘膜筋板を抽出するものである。なお、食道のような粘膜上皮が扁平上皮である場合は、中間層抽出部222は、中間層として例えば基底膜(基底層)を抽出する。
【0089】
なお、中間層は、I/F部231を介した操作制御部32の設定信号により設定することができる。
【0090】
平坦化処理部223は、中間層抽出部222が抽出した例えば粘膜筋板の層位置を平坦にするために、抽出された粘膜筋板をある基準の位置になるように深さ方向のデータをシフトさせるものである。なお、2次元の光構造情報または3次元の光構造情報から、例えば粘膜筋板の位置をある任意の関数にフィッティングさせる処理部により平坦化処理部223を構成してもよい。
【0091】
光立体構造像変換部224は、例えば粘膜筋板が光立体構造像の基準面となるように、光立体構造像を変換するものである。
【0092】
なお、基準面は、粘膜筋板に限らず粘膜表面、基底層(粘膜上皮が扁平上皮の場合)でも良いが、大腸の場合は、粘膜筋板を基準面とすることがより望ましい。
【0093】
平行領域設定部225は、光立体構造像変換部224を基準層に直交する方向に沿った平行面にて異なる深さで切断し、I/F部231を介した操作制御部32の設定信号により設定される分割数の、複数の平行領域を設定するものである。
【0094】
なお、分割数は任意に設定でき、例えば術者がモニタ装置500上にて光立体構造像変換部224を確認することで、観察部位(例えば大腸)、疾患状態等を考慮してI/F部231を介して平行領域設定部225に対して分割数を設定することが可能となっている。
【0095】
領域特徴情報算出部226は、平行領域毎の光構造情報を基準層に直交する方向に沿って積分し、該平行領域毎の領域特徴情報としてのピットパターンを算出するものである。
【0096】
平行断面画像生成部227は、領域特徴情報算出部226が算出した領域特徴情報としてのピットパターンが現れた積分画像である平行断面画像を生成するものである。
【0097】
なお、平行断面画像生成部227が生成する平行断面画像は、積分画像に限らず、MIP(Maximum intensity projection:最大値投影処理)画像,MINIP(Minimum intensity projection:最小値投影処理)画像のいずれかでも良い。例えば術者はI/F部231を介した操作制御部32の設定信号により平行断面画像生成部227の処理方法を設定することができ、平行断面画像生成部227の処理は構造の特徴を強調して見ることができるように使い分けることが望ましい。また、大腸正常部の腺管構造のような規則正しい配列のような構造では、平行断面画像生成部227の処理により生成される画像は積分画像が好ましい。また、平行断面画像生成部227が生成する平行断面画像は、積分処理、最大値投影処理、最小値投影処理等の処理を行わず、抽出領域の断面画像としてもよい。
【0098】
癌化レベル判定部228は、平行断面画像生成部227が生成した平行断面画像を空間周波数解析(フーリエ解析)し、前記の異なる高さ位置におけるそれぞれの平行断面画像において、正常部/異常部の判定をするための画像解析(癌化レベル判定)を行うものである。癌化レベル判定部228は、ある高さ位置の平行断面画像の解析(癌化レベル判定)が終わったら、次に異なる高さの平行断面画像で同様の解析(癌化レベル判定)を行なう。
【0099】
なお、正常部/異常部の判定(癌化レベル判定)をするための平行断面画像の解析領域は、I/F部231を介した操作制御部32の設定信号により設定できる。
【0100】
また、癌化レベル判定部228におけるパターン配列の異常を検出する処理(癌化レベル判定)は、フーリエ変換に限らず、その他のパターン認識手段を用いても良い。また、複数のピットのパターンからの判定に限らず、ひとつのピットの形状を抽出し、円形からの逸脱度で判定をしてもよい。隣接ピットとの距離で判定してもよい。これらを複合的に組み合わせて、判定パラメータを算出しても良い。
【0101】
立体特徴像生成部229は、癌化レベル判定部228における解析結果により得られた情報に基づいて、光立体構造像構築部221が構築した光立体構造像をさらに再構築した立体特徴像を生成するものである。
【0102】
表示制御部230は、操作制御部32からの指定信号に基づき、光立体構造像、3次元変換光構造像、立体特徴像等の少なくとも1つの像をモニタ装置500に表示させるものである。
【0103】
I/F部231は、操作制御部32からの設定信号、指定信号を各部に送信する通信インターフェイス部である。
【0104】
例えば、立体特徴像生成部229が病変部の3次元的な領域を強調して表示するために、表示制御部230はモニタ装置500に病変部の光立体構造像構築部221が構築した光立体構造像にある一定の信号を印加して立体特徴像を再構築することで、表示制御部230が正常部とは異なる濃度や色で強調した像を表示する。この再構築された立体特徴像により、立体的な病変部の変化、具体的には病変部の3次元的な立体分布像を観察することが可能になる。
【0105】
なお、表示制御部230は、I/F部231を介した操作制御部32の設定信号により、再構築された立体特徴像上の任意の断層像をモニタ装置500に表示させることができ、この任意の断層像において2次元的に表示することで、任意の部位(深さ)での2次元的な病変部の分布像の詳細観察も可能となる。
【0106】
このように構成された本実施形態の光構造観察装置としての画像診断装置10の作用について、図6のフローチャートを用い、図7ないし図16を参照して説明する。
【0107】
図6は図1の画像診断装置の作用を説明するフローチャートであって、図7ないし図17は図6の処理を説明するための図である。
【0108】
術者は、画像診断装置10を構成する、内視鏡100、内視鏡プロセッサ200、光源装置300、OCTプロセッサ400、及びモニタ装置500の各部に電源を投入し、内視鏡100の鉗子口から導出されたOCTプローブ600の挿入部602の先端部を、例えば大腸の粘膜(測定対象S)に近づけて、OCTプローブ600により光走査を開始する。
【0109】
画像診断装置10のOCTプロセッサ400の処理部22では、図6に示すように、光構造情報検出部220が干渉光検出部20で検出した干渉信号から、図7に示すような断層像を構成するスキャン面920での光構造情報を検出し(ステップS1)、光立体構造像構築部221が光構造情報検出部220により検出した光構造情報に基づいて図8に示すような光立体構造像930を生成する(ステップS2)。
【0110】
この図8の光立体構造像930では、腺管(crypt)が粘膜筋板950を基板として略垂直に粘膜層に形成されるため、腺管の向き(図8中の矢印900)はランダムな向きとなっている。
【0111】
なお、このとき、表示制御部230は、光立体構造像構築部221からの光立体構造像930の画像をI/F部231を介した操作制御部32の指定信号によりモニタ装置500に出力することができる。
【0112】
次に、処理部22では、表示制御部230が光立体構造像構築部221により生成された光立体構造像930を構成するスキャン面920での光構造情報をモニタ装置500に表示させ、中間層抽出部222がこのスキャン面920での光構造情報において、例えば測定対象Sが大腸の粘膜の場合、中間層として粘膜筋板950を抽出する(ステップS3)。
【0113】
具体的には、中間層抽出部222は、画像信号強度を解析することで粘膜筋板を抽出する。つまり、中間層抽出部222は、図9に示すように、光立体構造像930を構成する各スキャン面920において、最初の画像信号強度が強い部分951aが粘膜表面951であり、次の画像信号強度が強い部分950aが粘膜筋板950に相当すると判断して粘膜筋板950の層位置を抽出する。
【0114】
そして、処理部22では、平坦化処理部223が中間層抽出部222により抽出された粘膜筋板950の層位置を平坦にするために、抽出された粘膜筋板950をある基準の位置になるように深さ方向の光構造情報をシフトさせ、図10に示すように、粘膜筋板950を平坦化する(ステップS4)。 続いて、処理部22では、光立体構造像変換部224が平坦化処理部223により平坦化された粘膜筋板950が光立体構造像の基準面となるように、光立体構造像930を図11に示すような光立体構造像930aに変換する(ステップS5)。
【0115】
なお、このとき、表示制御部230は、光立体構造像変換部224からの光立体構造像930aの画像をI/F部231を介した操作制御部32の指定信号によりモニタ装置500に出力することができ、図11に示すように、光立体構造像930aでは平坦化された粘膜筋板950を基板として略垂直に粘膜層に形成されるため、腺管(crypt)が正常な場合には腺管(crypt)の向き(図11中の矢印900)は規則的な配向となっている。このように光立体構造像930aによって視覚的に容易に腺管(crypt)の状態を判断することができる。
【0116】
次に、処理部22では、図12に示すように、平行領域設定部225が光立体構造像変換部224を基準層に直交する方向に沿った平行面にて異なる深さで切断し、I/F部231を介した操作制御部32の設定信号により設定される分割数の、複数の平行領域を設定する(ステップS6)。なお、図12は図11における立体特徴像の深さ方向の一断面930bを示している。
【0117】
このとき、平行領域設定部225での複数の平行領域の分割数は任意に設定でき、例えば術者がモニタ装置500上にて光立体構造像変換部224を確認することで、観察部位(例えば大腸)、疾患状態等を考慮してI/F部231を介して平行領域設定部225に対して平行領域の分割数を設定することができる。
【0118】
図12では8分割を一例として示しており、以下説明を簡略化するため、平行領域960(i)、960(j)、960(k)の3つの異なる深さの平行領域を用いるものとする。
【0119】
そして、処理部22では、領域特徴情報算出部226が平行領域毎の光構造情報を基準層に直交する方向に沿って積分し、該平行領域毎の領域特徴情報としてのピットパターンを算出する(ステップS7)。
【0120】
続いて、処理部22では、図13に示すように、平行断面画像生成部227が領域特徴情報算出部226にて算出した、平行領域毎、例えば平行領域960(i)の領域特徴情報としてのピットパターンが現れた積分画像である平行断面画像970を生成する(ステップS8)。
【0121】
次に、処理部22は、癌化レベル判定部228において、平行断面画像生成部227が生成した平行断面画像970を空間周波数解析(フーリエ解析)し、前記の異なる高さ位置における平行領域960(i)、960(j)、960(k)のそれぞれの平行断面画像において、正常部/異常部の判定をするための画像解析(癌化レベル判定)を行う(ステップS9)。
【0122】
例えば、正常部大腸のピットパターンは、直径約100μmの円形のパターンが規則的に配列している。癌化レベル判定部228は、I/F部231を介した操作制御部32の設定信号に基づいて平行断面画像において、ある点を中心として、例えば約500μmの解析領域を設定し、その解析領域をフーリエ変換する。フーリエ変換後の画像では、解析領域が正常なエリアの場合、100μm周期の近傍に鋭いピークが検出される。一方、解析領域が病変部になると、この規則的な配列が消失していくため、フーリエ変換後の画像では、ピークが鈍くなり、最後に消失する。
【0123】
癌化レベル判定部228は、このフーリエ解析画像の変換値(ピーク出現量)を特徴量として抽出する。
【0124】
そして、癌化レベル判定部228は、解析領域を平行断面画像上で移動しながらフーリエ解析を繰り返しことで、特徴量(ピーク出現量)に基づく腺管構造の癌化情報を取得し、腺管構造の正常部と異常部(あるいは癌化の度合い)の判定を行なう。
【0125】
ステップS9においては、癌化レベル判定部228は、ある高さの平行断面画像の解析が終わったら、次に異なる高さの平行断面画像で同様の解析を行う。これにより、病変部の水平方向の情報だけでなく深さ方向の癌化情報も取得する。すなわち、図14に示すように、癌化レベル判定部228により、異なる深さ毎(平行領域960(i)、960(j)、960(k))の平行断面画像上で異常な形状をした腺管が占めるエリア、すなわち病変の占めるエリア971(i)、971(j)、971(k)の3次元的な癌化情報の分布が得られることになる。
【0126】
次に、処理部22は、立体特徴像生成部229にて癌化レベル判定部228における解析結果により得られた情報に基づいて、図15に示すように、例えば光立体構造像構築部221が構築した光立体構造像980に癌化情報画像981を重畳し再構築した癌化情報の分布像としての立体特徴像981を生成する(ステップS10)。
【0127】
そして、本実施形態では、処理部22は、表示制御部230にて、I/F部231を介した操作制御部32の設定信号により、光立体構造像構築部221による光立体構造像980、光立体構造像変換部224による3次元変換光構造像930(図8参照)、立体特徴像生成部229による立体特徴像982の少なくとも1つをモニタ装置500に表示させる。
【0128】
なお、表示制御部230は、図16に示すように、立体特徴像982の深さ方向の任意の断面像985上に癌化情報画像985aを2次元的な癌化情報の分布像として表示することもできるし、また図17に示すように、任意の深さ位置の立体特徴像の平行領域960(i)、960(j)、960(k)のそれぞれの癌化情報画像990(i)、990(j)、990(k)を2次元的な癌化情報の分布像としてモニタ装置500に表示させることもできる。 上記本実施形態の光構造観察装置としての画像診断装置10は、腺管構造が粘膜表面に現れる臓器であれば適用可能であり、例えば、胃、十二指腸、空腸、回腸、結腸、直腸は、適用可能である。粘膜上皮が扁平上皮で、新生血管が現れることが特徴である食道、咽頭、喉頭、胆管、膵管、膀胱、膣、子宮などは、新生血管を認識することで適用が可能となる。新生血管特有の模様の有無を、パターン認識手法を用いて、正常部と異常部の領域を色分けすることで、深さ方向の異常部の抽出が可能となる。
【0129】
以上、本発明の光構造観察装置としての画像診断装置10について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0130】
10…画像診断装置、22…処理部、100…内視鏡、200…内視鏡プロセッサ、220…光構造情報検出部、221…光立体構造像構築部、222…中間層抽出部、223…平坦化処理部、224…光立体構造像変換部、225…平行領域設定部、226…領域特徴情報算出部、227…平行断面画像生成部、228…癌化レベル判定部、229…立体特徴像生成部、230…表示制御部、231…I/F部、300…光源装置、400…OCTプロセッサ、500…モニタ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低干渉光を用いて層構造を有する被計測物体の深さ方向である第1の方向と該第1の方向に直交する第2の方向から成るスキャン面を走査して得られる前記被計測物体の光構造情報を、前記スキャン面に直交する方向である第3の方向に沿って位置をずらしながら複数取得して、取得した複数の前記光構造情報に基づいて光立体構造像を構築する光構造観察装置において、
前記光立体構造像に複数の演算領域を設定する演算領域設定手段と、
前記演算領域毎に所定演算を実行して前記光構造情報の領域特徴情報を算出する領域特徴情報算出手段と、
前記領域特徴情報に基づき、前記演算領域内の特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、
前記特徴量に基づく立体特徴像を生成する立体特徴像生成手段と、
を備えたことを特徴とする光構造観察装置。
【請求項2】
前記演算領域設定手段は、前記光立体構造像を構成する前記光構造情報より前記被計測物体内の所望の中間層を抽出する中間層抽出手段と、前記中間層を平坦化する層平坦化手段と、平坦化された前記中間層を基準層として前記光立体構造像を再構築し3次元変換光構造像を生成する構造像変換手段と、前記3次元変換光構造像上において前記基準層に平行な平行面にて前記3次元変換光構造像を切断し前記基準層に直交する所定間隔の複数の平行領域を設定する平行領域設定手段と、を備えて構成され、前記平行領域を前記演算領域として設定することを特徴とする請求項1に記載の光構造観察装置。
【請求項3】
前記特徴量抽出手段は、前記平行領域毎の前記領域特徴情報に基づく平行断面画像を生成する平行断面画像生成手段と、前記平行断面画像を空間周波数解析することにより前記特徴量を抽出する画像解析手段と、を備えて構成されることを特徴とする請求項2に記載の光構造観察装置。
【請求項4】
前記領域特徴情報抽出手段は、前記平行領域内の前記光構造情報を前記基準層に直交する方向に沿って、積分処理、最大値投影処理及び最小値投影処理のいずれか1つを前記所定処理として実行し前記領域特徴情報を抽出することを特徴とする請求項2または3に記載の光構造観察装置。
【請求項5】
前記立体特徴像は、前記特徴量の分布像であることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1つに記載の光構造観察装置。
【請求項6】
前記光立体構造像、前記3次元変換光構造像、前記立体特徴像の少なくとも1つを表示手段に表示させる表示制御手段をさらに備えたことを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1つに記載の光構造観察装置。
【請求項7】
前記被計測物体は、生体管腔臓器であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の光構造観察装置。
【請求項8】
前記基準層は、粘膜筋板であることを特徴とする請求項7に記載の光構造観察装置。
【請求項9】
前記光構造情報は、前記生体管腔臓器における腺窩構造を含む構造情報であることを特徴とする請求項7または8に記載の光構造観察装置。
【請求項10】
前記特徴量は、前記光構造情報に基づく前記生体管腔臓器の癌化の度合いを示すことを特徴とする請求項7ないし9のいずれか1つに記載の光構造観察装置。
【請求項11】
低干渉光を用いて層構造を有する被計測物体の深さ方向である第1の方向と該第1の方向に直交する第2の方向から成るスキャン面を走査して得られる前記被計測物体の光構造情報を、前記スキャン面に直交する方向である第3の方向に位置をずらしながら複数取得して、取得した複数の前記光構造情報に基づいて光立体構造像を構築する光構造観察装置の構造情報処理方法において、
前記光立体構造像に複数の演算領域を設定する演算領域設定ステップと、
前記演算領域毎に所定演算を実行して前記光構造情報の領域特徴情報を算出する領域特徴情報算出ステップと、
前記領域特徴情報に基づき、前記演算領域内の特徴量を抽出する特徴量抽出ステップと、
前記特徴量に基づく立体特徴像を生成する立体特徴像生成ステップと、
を備えたことを特徴とする光構造観察装置の構造情報処理方法。
【請求項12】
請求項1ないし10のいずれか1つに記載の光構造観察装置と、
管腔内に挿入する挿入部を有し、前記低干渉光を送受光するプローブを前記挿入部に挿通可能な内視鏡と、
を備えたことを特徴とする内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−78447(P2011−78447A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230700(P2009−230700)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【出願人】(510097747)独立行政法人国立がん研究センター (35)
【Fターム(参考)】