説明

光波距離測定方法及び光波距離装置

【課題】パルス光を利用した光波距離測定に於いて簡単で而も高精度の測距が行える光波距離測定方法及び光波距離装置を提供する。
【解決手段】測距光路と、内部参照光路と、パルス光を発するパルス発光光源と、パルス光を測距パルス光と内部参照パルス光とし、測距パルス光及び前記内部参照パルス光を受光して受光信号を発する受光検出器6と、該受光検出器からの受光信号に基づき測定対象物迄の距離を演算する計測部4とを具備し、該計測部は、内部参照パルス光と測定対象物で反射された測距パルス光との受光時間差に基づき粗測距を行い、前記受光検出器が出力する内部参照パルス光の受光波形、測距パルス光の受光波形をそれぞれフーリエ変換し、複数の周波数成分に分解し、得られた周波数成分毎に位相差を求め、位相差から得られる時間差に基づき精密測距を行い、粗測距と精密測距とを加算して測定対象物迄の距離を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパルス光を照射し、測定対象物で反射された反射パルス光を受光し、パルス光を照射し、反射パルス光を受光する迄の時間差に基づき測定対象物迄の距離を測定する光波距離測定方法及び光波距離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、パルス光を利用した光波距離装置には数々の方式が考案され、パルス波形を直接アナログデジタル変換するダイレクトサンプリング方式も利用されている。
【0003】
従来のダイレクトサンプリング方式は、A/D変換のサンプリング性能の制限により、測距性能がフィルタアレを用いた測距方式に比して劣る問題があった。然し乍ら、フィルタアレを用いた測距方式は回路構成が複雑であり、部品点数も多く大きな基板が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2010−540899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は斯かる実情に鑑み、パルス光を利用した光波距離測定に於いて簡単で而も高精度の測距が行える光波距離測定方法及び光波距離装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内部参照パルス光と測定対象物で反射された測距パルス光との受光時間差に基づき粗測距を行い、前記内部参照パルス光の受光波形、前記測距パルス光の受光波形をそれぞれフーリエ変換し、複数の周波数成分に分解し、得られた周波数成分毎に位相差を求め、位相差から得られる時間差に基づき精密測距を行い、粗測距と精密測距とを加算して測定対象物迄の距離を測定する光波距離測定方法に係るものである。
【0007】
又本発明は、測距光路と、内部参照光路と、パルス光を発するパルス発光光源と、該パルス発光光源から発せられるパルス光を測距パルス光として前記測距光路に向け、前記パルス光を内部参照パルス光として前記内部参照光路に向けるパルス光誘導手段と、測距パルス光及び前記内部参照パルス光を受光して受光信号を発する受光検出器と、該受光検出器からの受光信号に基づき測定対象物迄の距離を演算する計測部とを具備し、該計測部は、内部参照パルス光と測定対象物で反射された測距パルス光との受光時間差に基づき粗測距を行い、前記受光検出器が出力する内部参照パルス光の受光波形、測距パルス光の受光波形をそれぞれフーリエ変換し、複数の周波数成分に分解し、得られた周波数成分毎に位相差を求め、位相差から得られる時間差に基づき精密測距を行い、粗測距と精密測距とを加算して測定対象物迄の距離を測定する光波距離装置に係るものである。
【0008】
又本発明は、前記計測部は、前記受光検出器から得られる受光信号をアナログデジタル変換するA/D変換部と、該A/D変換部からのデジタル信号を受けるデータ取込み部と、該データ取込み部からのデータを逐次記憶するバッファ部と、前記データ取込み部からのデータが設定された閾値を交差した事を検出する閾値検知部と、該閾値検知部からの信号を基にバッファ部のデータを記憶する抽出記憶部と、該抽出記憶部のデータをフーリエ変換するフーリエ変換部と、前記A/D変換部のサンプリングクロックをカウントする粗時計カウンタと前記閾値検知部からの信号を基に粗時計カウンタのカウント値を記憶する粗時計記憶部と、前記A/D変換部、前記データ取込み部、前記バッファ部、前記閾値検知部、前記粗時計カウンタに同期したクロックを供給するクロック発振部と、前記粗時計記憶部と前記フーリエ変換部からの全てのデータを基に距離を演算する演算制御部とを備えている光波距離装置に係るものである。
【0009】
又本発明は、前記フーリエ変換部からの全てのデータより、分解された周波数成分の振幅及び位相を求め、前記振幅を基に位相データに重み付けを行い、距離を演算する光波距離装置に係るものである。
【0010】
又本発明は、前記A/D変換部の温度を検出する温度センサを備え、該温度センサからの検出信号を基に、前記A/D変換部の校正を実行する光波距離装置に係るものである。
【0011】
又本発明は、前記演算制御部が前記A/D変換部の温度に対応した校正データを有し、前記演算制御部は前記温度センサからの温度検出信号に基づき前記校正データを選択し、前記A/D変換部の校正を行う光波距離装置に係るものである。
【0012】
又本発明は、前記受光検出器からの電流信号を電圧信号に変換するトランスインピーダンスアンプを有し、該トランスインピーダンスアンプの出力がログ出力である光波距離装置に係るものである。
【0013】
又本発明は、前記パルス発光光源が、前記クロック発振部からの信号に同期したパルス発光信号によりパルス測距光を発光する同期パルス発光光源である光波距離装置に係るものである。
【0014】
又本発明は、前記パルス発光光源が、前記クロック発振部からの信号とは非同期のパルス測距光を発光する非同期パルス発光光源である光波距離装置に係るものである。
【0015】
又本発明は、前記パルス発光光源からのパルス光を前記受光検出器に導く前記内部参照光路と、該内部参照光路と受光光学系の光路とを結合する光路結合部と、測定対象物へパルス光を照射する前記測距光路と、前記内部参照光路を切替える光路切替え部とを備え、パルス発光信号と、前記測距光路にて受光したパルスと、前記内部参照光路にて受光したパルスから得られたデータより距離を演算する光波距離装置に係るものである。
【0016】
又本発明は、前記パルス光誘導手段がパルス発光光源からのパルス光を分割する光路分割部であり、測定対象物から反射された光と前記内部参照光路との光路差を形成する測距光路延長部と、前記内部参照光路と前記測距光路延長部からの光路を結合する前記光路結合部とを備え、パルス発光信号と、前記測距光路から受光した反射パルス光と、前記内部参照光路から受光した内部参照パルス光から得られたデータより距離を演算する光波距離装置に係るものである。
【0017】
又本発明は、前記パルス光誘導手段がパルス発光光源からのパルス光を分割し、前記内部参照光路に導く光路分割部であり、測定対象物から反射された反射パルス光と前記内部参照光路との光路差を形成する測距光路延長部と、前記内部参照光路と前記測距光路延長部からの光路を結合する光路結合部を備え、前記内部参照光路から受光した内部参照パルス光と、前記測距光路から受光した反射パルス光から得られたデータより距離を演算する光波距離装置に係るものである。
【0018】
又本発明は、前記パルス光誘導手段がパルス発光光源からのパルス光を分割する光路分割部であり、該光路分割部は分割したパルス光を内部参照光路に導き、前記測距光路に設けられ、前記内部参照光路との光路差を形成する測距光路延長部と、前記内部参照光路と前記測距光路延長部からの光路を結合する前記光路結合部と、パルス発光光源からのパルス光を、前記測距光路延長部へ導く第2内部参照光路と、該第2内部参照光路と測定対象物から反射された光を結合する第2光路結合部と、測定対象物へパルス光を照射する前記測距光路と、前記第2内部参照光路を切替える第2光路切替え部を備え、パルス発光信号と、前記測距光路から受光したパルスと、前記内部参照光路から受光したパルスと、前記第2内部参照光路から得られたデータより距離を演算する光波距離装置に係るものである。
【0019】
又本発明は、前記パルス光誘導手段がパルス発光光源からのパルス光を分割する光路分割部であり、該光路分割部は分割したパルス光を前記内部参照光路に導き、前記測距光路に設けられ前記内部参照光路との光路差を形成する測距光路延長部と、前記内部参照光路と前記測距光路延長部からの光路を結合する前記光路結合部と、パルス発光光源からのパルス光を、前記測距光路延長部へ光波距離装置内部で導く第2内部参照光路と、該第2内部参照光路と測定対象物から反射された光を結合する第2光路結合部と、前記第2内部参照光路を切替える第2光路切替え部とを備え、前記測距光路から受光したパルスと、前記内部参照光路から受光したパルスと、前記第2内部参照光路から得られたデータより距離を演算する光波距離装置に係るものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、内部参照パルス光と測定対象物で反射された測距パルス光との受光時間差に基づき粗測距を行い、前記内部参照パルス光の受光波形、前記測距パルス光の受光波形をそれぞれフーリエ変換し、複数の周波数成分に分解し、得られた周波数成分毎に位相差を求め、位相差から得られる時間差に基づき精密測距を行い、粗測距と精密測距とを加算して測定対象物迄の距離を測定するので、粗測定で簡単に概略の測距が行えると共に粗測定の精度の不足を精密測定で補い、簡便に高精度の距離測定が行える。
【0021】
又本発明によれば、測距光路と、内部参照光路と、パルス光を発するパルス発光光源と、該パルス発光光源から発せられるパルス光を測距パルス光として前記測距光路に向け、前記パルス光を内部参照パルス光として前記内部参照光路に向けるパルス光誘導手段と、測距パルス光及び前記内部参照パルス光を受光して受光信号を発する受光検出器と、該受光検出器からの受光信号に基づき測定対象物迄の距離を演算する計測部とを具備し、該計測部は、内部参照パルス光と測定対象物で反射された測距パルス光との受光時間差に基づき粗測距を行い、前記受光検出器が出力する内部参照パルス光の受光波形、測距パルス光の受光波形をそれぞれフーリエ変換し、複数の周波数成分に分解し、得られた周波数成分毎に位相差を求め、位相差から得られる時間差に基づき精密測距を行い、粗測距と精密測距とを加算して測定対象物迄の距離を測定するので、粗測定で簡単に概略の測距が行えると共に粗測定の精度の不足を精密測定で補い、簡便に高精度の距離測定が行える。
【0022】
又本発明によれば、前記計測部は、前記受光検出器から得られる受光信号をアナログデジタル変換するA/D変換部と、該A/D変換部からのデジタル信号を受けるデータ取込み部と、該データ取込み部からのデータを逐次記憶するバッファ部と、前記データ取込み部からのデータが設定された閾値を交差した事を検出する閾値検知部と、該閾値検知部からの信号を基にバッファ部のデータを記憶する抽出記憶部と、該抽出記憶部のデータをフーリエ変換するフーリエ変換部と、前記A/D変換部のサンプリングクロックをカウントする粗時計カウンタと前記閾値検知部からの信号を基に粗時計カウンタのカウント値を記憶する粗時計記憶部と、前記A/D変換部、前記データ取込み部、前記バッファ部、前記閾値検知部、前記粗時計カウンタに同期したクロックを供給するクロック発振部と、前記粗時計記憶部と前記フーリエ変換部からの全てのデータを基に距離を演算する演算制御部とを備えているので、ダイレクトサンプリング方式により、部品点数が少なく小型の基板で高性能な光波距離装置を提供することができる。
【0023】
又本発明によれば、前記フーリエ変換部からの全てのデータより、分解された周波数成分の振幅及び位相を求め、前記振幅を基に位相データに重み付けを行い、距離を演算するので、1つの受光信号から複数の測定値が得られ、高精度の測定が可能となる。
【0024】
又本発明によれば、前記A/D変換部の温度を検出する温度センサを備え、該温度センサからの検出信号を基に、前記A/D変換部の校正を実行するので、又、前記演算制御部が前記A/D変換部の温度に対応した校正データを有し、前記演算制御部は前記温度センサからの温度検出信号に基づき前記校正データを選択し、前記A/D変換部の校正を行うので、A/D変換部での変換工程で生じる誤差を常時補正できるので、信頼性の高い測定結果を得ることができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施例に係る光波距離装置の概略構成図である。
【図2】第1の実施例に係る光波距離装置に於ける受光検出器がパルス光を受光した場合に発する信号波形の一例を示す図である。
【図3】第1の実施例に於ける計測部の概略構成図である。
【図4】該計測部に於いて、受光検出器が受光した波形をフーリエ変換して得られる周波数成分を時間領域に於いて分解表示した図である。
【図5】前記受光検出器が内部参照パルス光、反射パルス光を受光した場合の受光信号とパルス発光信号との関係を示す図である。
【図6】受光検出器が受光した波形をガウシアン波とし、AD変換する際のサンプリングとの関係を示す図である。
【図7】図6で示されるガウシアン波をフーリエ変換し、振幅と位相を計算した結果を示す図である。
【図8】受光検出器が受光した波形が矩形波であった場合の、AD変換する際のサンプリングとの関係を示す図である。
【図9】図8で示される矩形波をフーリエ変換し、振幅と位相を計算した結果を示す図である。
【図10】第2の実施例に於ける計測部の概略構成図である。
【図11】第3の実施例に係る光波距離装置の概略構成図である。
【図12】第4の実施例に係る光波距離装置の概略構成図である。
【図13】第4の実施例に於ける、パルス発光信号と内部参照光受光信号、第2内部参照光受光信号、反射パルス光受光信号との関係を示す図である。
【図14】第3の実施例と同様な光学的な構成を有し、非同期でパルス光を発光した場合の、内部参照光受光信号と反射パルス光受光信号との関係を示す図である。
【図15】第4の実施例と同様な光学的な構成を有し、非同期でパルス光を発光した場合の、内部参照光受光信号と第2内部参照光受光信号と反射パルス光受光信号との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0027】
先ず、図1に於いて本発明が実施される光波距離装置の一例を説明する。
【0028】
図1中、1は光波距離装置、2は測定対象物を示している。
【0029】
前記光波距離装置1は、筐体(図示せず)と該筐体内部に収納される光学部3及び計測部4から概略構成される。
【0030】
先ず、前記光学部3を説明する。
【0031】
レーザ光線のパルス光を発するパルス発光光源5、測定対象物2からの反射光を検出し、電気信号を発する受光検出器6、前記パルス発光光源5をパルス発光させる光源駆動部7、前記パルス発光光源5から発せられたパルス光を測定対象物2に向けて照射する投光光学系8、測定対象物2からの反射パルス光を受光し、前記受光検出器6に導く受光光学系9、前記パルス発光光源5からのパルス光を前記受光検出器6に導く内部参照光路10を具備している。前記投光光学系8、前記受光光学系9等は測距光路13を構成している。
【0032】
前記内部参照光路10と前記投光光学系8との分岐点には光路切替え部11が設けられ、前記受光光学系9と前記内部参照光路10との合流点には光路結合部12が設けられている。
【0033】
前記光路切替え部11は前記パルス発光光源5が発したパルス光を前記投光光学系8に射出するか、前記内部参照光路10に射出するかを択一的に選択し、前記投光光学系8に射出されたパルス光は測距光として前記測定対象物2に照射され、前記内部参照光路10に射出されたパルス光は内部参照パルス光とされる。
【0034】
又、前記光路結合部12は、例えばハーフミラー等の光学部材であり、前記受光光学系9からの反射パルス光は透過して前記受光検出器6に導き、前記内部参照光路10からの内部参照パルス光は反射し、前記受光検出器6に導く。該受光検出器6は前記計測部4に受光信号を送出する。
【0035】
前記計測部4は、前記光源駆動部7に、パルス発光信号を発し、該光源駆動部7の駆動を制御し、更に前記光路切替え部11にも切替え信号を発し、前記光源駆動部7の発光タイミングに同期させ、前記光路切替え部11の光路切替えを制御している。又、前記計測部4には前記受光検出器6から受光信号が入力され、該受光検出器6から入力される反射パルス光の受光信号、及び内部参照パルス光の受光信号に基づき前記測定対象物2迄の距離を演算する様になっている。
【0036】
前記光路切替え部11は、前記パルス発光光源5から発せられるパルス光を測距パルス光として前記測距光路13に向け、又前記パルス光を内部参照パルス光として前記内部参照光路10に向けるパルス光誘導手段として機能する。
【0037】
前記光波距離装置1による距離測定の概略を説明する。
【0038】
前記光路切替え部11が測距光としてのパルス光を通過させる。パルス光は前記測定対象物2に照射され、該測定対象物2で反射され、反射パルス光として前記受光光学系9に入射し、更に前記光路結合部12を経て前記受光検出器6に反射パルス光が受光され、前記計測部4に受光信号を送出する。
【0039】
又、前記光路切替え部11が光路を切替え、パルス光が内部参照パルス光として前記内部参照光路10、前記光路結合部12を経て前記受光検出器6に受光される。該受光検出器6は内部参照パルス光の受光信号を前記計測部4に送出する。
【0040】
該計測部4では、受光信号が予め設定されている閾値を横切った時点を受光したと判断し、反射パルス光、内部参照パルス光それぞれについて受光時間を求め、更に反射パルス光の受光時間と内部参照パルス光を受光した時間とを比較し、時間差を求める。この時間差はパルス光が測定対象物2迄を往復した時間であるので、光速と時間差に基づき測定対象物2迄の距離が演算される。
【0041】
又、前記計測部4の検出回路等のドリフトが測定誤差として影響するが、内部参照パルス光と反射パルス光との差を求めることで、検出回路等のドリフトの影響が相殺され、正確な距離の演算が可能となる。
【0042】
上記した測距の流れは、パルス光を用いて測距を行う一般的な方法であるが、反射パルス光の光量は、測定対象物2の反射面の状態、或は測距距離に応じて変化する。
【0043】
図2は、反射パルス光の光量に対応した前記受光検出器6の受光信号の波形を示している。尚、該受光信号の波形をガウシアン波形として示しており、系列1、系列2、系列3は振幅1、振幅0.5、振幅0.25の場合をそれぞれ示している。
【0044】
反射パルス光の光量が大きい場合は、波形は振幅が大きく、最大値が突出した曲線(系列1)となっており、反射パルス光の光量が小さい場合は、波形は振幅が小さく(極大値が小さく)なだらかな曲線(系列3)となっている。
【0045】
又、反射パルス光の光量の大小に拘らず振幅の最大位置(極大値)の位置(時間)が同じとした場合でも、上記した様に受光した時点の判断を閾値で判断すると、反射パルス光の光量の大小に対応して、受光時間が変化する。
【0046】
図2に示される様に、閾値を受光信号の最大値に対して0.1とした場合、受光信号が閾値を横切る時間は光量により変化し、振幅の極大値が大きい曲線(系列1)では極大値から離れ、振幅の極大値が小さい曲線(系列3)では極大値に接近する。
【0047】
従って、反射パルス光の光量が大きい場合は、極大値からt1早く受光したと判断され、反射パルス光の光量が小さい場合は、極大値からt3早く受光したと判断される。この為、反射パルス光の光量の大小により、Δt=t1−t3が誤差として現れる。
【0048】
更に、測定対象物2の反射面の性状により、反射パルス光の受光信号の波形が変化する場合があり、この場合も、受光を検出する時点が変化する場合もある。
【0049】
本実施例では前記計測部4による信号処理で、反射パルス光の光量の大小に拘らず、又受光信号の波形の変化に拘らず、高精度の測距ができる様にしたものである。
【0050】
以下、前記計測部4を説明する。
【0051】
図3は、本発明の第1の実施例に於ける計測部4を示しており、図4中、該計測部4は、増幅部15としてのトランスインピーダンスアンプ、A/D変換部16、データ取込み部17、環状バッファ部18、閾値検出部19、記憶部20、フーリエ変換部(以下FFT部)21、クロック発振部24、粗時計カウンタ25、粗時計記憶部26及び測定対象物迄の距離を演算する演算制御部27等から構成されている。
【0052】
尚、前記増幅部15には前記受光検出器6からの受光信号が入力され、前記クロック発振部24からのクロック信号は、同期信号及び発光指令信号として前記光源駆動部7に入力される。
【0053】
前記計測部4は、1光パルスが発光される毎に、得られる反射パルス光及び内部参照パルス光の受光信号について、以下に述べる信号処理を実行する。尚、反射パルス光及び内部参照パルス光は同様の処理が実行されるので、以下は反射パルス光について説明する。
【0054】
反射パルス光が受光光学系9により集光され、前記光路結合部12を経て前記受光検出器6に入射する。該受光検出器6で受光された反射パルス光は、前記受光検出器6によりパルス光電流に光電変換される。パルス光電流は前記増幅部15へ入力され、該増幅部15に於いてパルス光電流がパルス電圧信号に変換される。
【0055】
前記増幅部15から出力されたアナログのパルス電圧信号は、前記A/D変換部16へ入力される。該A/D変換部16は、前記クロック発振部24から供給されるクロック信号を基に、アナログ信号から所定時間間隔でサンプリングし、更にサンプリングした信号をデジタル信号へ変換する。又前記増幅部15からの出力は、ログ出力となっている。
【0056】
前記データ取込み部17は、前記A/D変換部16により変換されたデジタル信号を取込み、前記環状バッファ部18と前記閾値検出部19へ送出する。前記環状バッファ部18は、前記A/D変換部16からのデジタル信号を所要量記憶し、一時的に蓄積すると共に所要量を超えるデジタル信号が取込まれる場合は、時間的に古いデジタルデータに最新のデジタルデータを上書きし、逐次更新記憶する。
【0057】
従って、前記環状バッファ部18には、常に最新のデジタルデータから所要量前迄のデジタルデータが記憶されている。
【0058】
前記閾値検出部19には前記演算制御部27より閾値が設定され、前記閾値検出部19は、前記A/D変換部16からのデジタルデータが前記閾値と交差した(閾値を超えた)か否かを検出し、交差したことを検出すると、交差信号を前記記憶部20と前記粗時計記憶部26へ出力する。
【0059】
前記記憶部20は、前記閾値検出部19からの交差信号を基に、前記環状バッファ部18に記憶されているデジタルデータから交差信号を基準とした所定範囲のデジタルデータを抽出し、各反射パルス光についての受光データ群29として記憶する。従って、1光パルス毎に少なくとも1つの反射パルスが得られ、更に前記記憶部20には反射パルス光毎に取得した受光データ群29が少なくとも1つ記憶される。
【0060】
該受光データ群29は前記FFT部21に送出され、該FFT部21では前記受光データ群29に基づきフーリエ変換(FFT)し、受光波形を複数の周波数成分に分解する。例えば、受光波形が図2で示したガウシアン波形とした場合、フーリエ変換(FFT)して得られる、複数の周波数成分の波形は図4に示される。図4中、曲線f(t)が前記受光検出器6が出力する受光波形であり、f1〜f6が分解された周波数成分である。
【0061】
又、前記FFT部21は、各周波数成分の実数部と虚数部を算出し、前記演算制御部27に出力する。
【0062】
前記クロック発振部24は、前記A/D変換部16に供給したクロックと同期したクロックを前記データ取込み部17、前記環状バッファ部18、前記閾値検出部19、前記粗時計カウンタ25へそれぞれ供給する。
【0063】
前記粗時計カウンタ25は、前記A/D変換部16に供給されたクロックと同じ、又は低い周波数のクロックを基に時間を計数する。前記粗時計記憶部26はパルス発光信号が発せられた時間と前記閾値検出部19が発する交差信号に基づき、パルス発光信号が発せられた時点から反射パルス光を受光した時点迄のクロックのカウント数、即ち時間が記憶される。又、得られたカウント数は前記演算制御部27に出力される。尚、前記粗時計カウンタ25によりパルス光を受光した場合のクロックのカウントは、内部参照パルス光についても同様に行われる。
【0064】
前記演算制御部27は、前記粗時計記憶部26から入力されるクロックのカウント数により、反射パルス光と内部参照パルス光との受光時間差を求め、該受光時間差と光速とで距離を演算する粗測定を実行する。
【0065】
又、前記演算制御部27は、反射パルス光及び内部参照パルス光について、それぞれ前記FFT部21から入力される各周波数成分の実数部と虚数部のデータから各周波数成分の振幅と位相を算出し、位相を算出することでクロック信号から得られる時間情報より、高い周波数の時間情報を得、得た時間情報に基づき反射パルス光及び内部参照パルス光間の精密時間差を求め、該精密時間差に基づき精密測定を実行する。
【0066】
粗測定の結果に精密測定の結果を加算することで、測定対象物2迄の距離を高精度に測定することができる。
【0067】
図5は、前記受光検出器6が内部参照パルス光、反射パルス光を受光した場合についての受光信号を示しており、前記粗時計記憶部26は、パルス発光信号から内部参照パルス光を受光した時のクロック数a、パルス発光信号から反射パルス光を受光した時のクロック数bをそれぞれカウントし、前記演算制御部27に出力する。
【0068】
該演算制御部27は、光速Cと測定対象物2迄の往復の時間(b−a)に基づき粗測定を実行する。
【0069】
次に、前記FFT部21から入力される各周波数成分の実数部と虚数部のデータに基づき実行される精密測定について説明する。
【0070】
前記FFT部21にて演算された実数部、虚数部をR+iIとすると、振幅と位相は下記の式にて算出される。
振幅:Mag =√(R2 +I2
位相:φ=tan-1(I/R)
【0071】
図6は、受光信号をガウシアン波として示し、又32データより表現されている。この32データよりFFT変換することにより、図7に示されるf1からf16迄の16の周波数の波形に分解でき、更に各周波数成分に対する振幅と位相を求めることができる。尚、図7は、図6に示されたガウシアン波形のFFT結果である。
【0072】
FFT結果の周波数fnは下記の式の通り、
fn=fsample×(n−1)/32
fsample:A/D変換部の変換周波数〔Hz〕
となる。
【0073】
更に、これを距離に換算するには、f1は、DC成分であるので利用しない。f2からf16迄の周波数成分の位相と振幅を用いて距離計算を行う。
【0074】
周波数成分毎に測距光路13による測距信号パルス波形の位相成分φEnと内部参照光路10による参照信号パルス波形の位相成分φInとの位相差を求める。
φMn=φEn−φIn〔rad〕
【0075】
周波数成分から得られた位相差を、周波数毎に下記の式で時間差として計算する。
tn=φMn/(2×Π)/fn〔sec〕
【0076】
得られた周波数毎の時間差を周波数成分毎の振幅に応じて重み付け平均を行う。尚、位相差に重み付け平均をしてから時間差を求めても良い。ここで得られる時間差は、上記した精密時間差に対応し、該精密時間差に基づき、精密測定距離値を演算する。
【0077】
下記式のMag nは、測距信号パルス波形より得られた振幅Mag En、又は、内部参照信号パルスから得られた振幅Mag InとMag Enの積を使用してもよい。
Dist(fine)=(Σ(tn×Mag n)/Σ(Mag n))×C/2〔m〕(C:光速〔m/S〕)
【0078】
又、測距光路13により得られた粗時計カウントCnt Eと、内部参照光路10により得られた粗時計カウントCnt Iより下記の式で粗測定距離値を演算する。
Dist(coarse)=(Cnt E−Cnt I)×(1/fsample)×C/2〔m〕
【0079】
更に、精密測定距離値と粗測定距離値を下記の式にて組合せ、距離値を演算する。
Dist=Dist(coarse)+Dist(fine)〔m〕
【0080】
尚、パルス波形のピーク値のデータ位置が、測距信号パルスと内部参照信号パルスで異なる場合は、高次の周波数から得られる位相が、f2から得られる位相情報とn周期離れている可能性がある為、それを補正するか、データ位置が同一となる様に、図3中、閾値検出部19は、パルス波形データの立上がりと立下りの両方を検出し、環状バッファ部18のデータを記憶部20に保存し計算する必要がある。
【0081】
上記の補正方法の一例を以下に説明する。
【0082】
測距信号パルスと内部参照信号パルスのピーク値からピーク値迄の時間Dfnをそれぞれの信号の立上がりと立下がりのカウント値より算出する。
【0083】
各周波数と上記のピーク値からピーク値迄の時間の積をとり、位相差を2Πで正規化し差をとる。
fn×Dfn―φMn/2Π
上記の式の結果を四捨五入しCOR nを得る、補正する周期数を得て、周波数毎に下記の式で時間差として計算する。
tn=(φMn/2Π+COR n)/f〔sec〕
【0084】
図8は、前記増幅部15が飽和した場合の波形を模式的に示したものである。図9は、図8に示した波形をFFT変換した結果である。ガウシアン波からFFT変換した図7と異なり、高い周波数成分迄振幅と位相情報を有していることが分かる。
【0085】
又、立上がりエッジと立下りエッジの粗時計カウンタ25の値を用い、受光パルス幅を検知することができ、受光パルス幅を検知することで、多重反射によりパルス幅が広がった受光データを無効とすることもできる。
【0086】
図10は、第2の実施例に於ける計測部4を示している。図10に於いて、図3中で示したものと同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0087】
第2の実施例は、前記A/D変換部16が温度によって特性が変化する場合の補正を行う様にしたものである。
【0088】
前記A/D変換部16の温度を検出する温度センサ31が設けられ、又前記演算制御部27は前記A/D変換部16の特性を補正する為の校正データ32を有している。
【0089】
高速なA/D変換部16では、内部にA/D変換用の複数のコアを具備し、複数のコアでA/D変換を並行して行うことで高速化されている。然し乍ら、コアはそれぞれの特性に違いがあり、A/D変換部16の性能を発揮するには、それらの特性の補正を行う必要がある。
【0090】
補正には、基準となるサイン波を各コアに入力し出力されるデジタルデータをFFT変換し振幅、オフセット、位相データから補正データを算出しA/D変換部16に入力しA/D変換部16を校正する。A/D変換部16自体にこれらの校正を自動で行うものもあるが、コアの特性は温度により変化するため温度が変わる度に校正を行う必要がある。
【0091】
前記演算制御部27は前記温度センサ31からの温度に基づき、A/D変換部16の温度を監視し、適宜校正を行う。
【0092】
尚、予め使用温度範囲内でのA/D変換部16の校正データ32を取得し、前記演算制御部27に記憶しておき、前記温度センサ31から得られる温度に対応する校正データ32に基づきA/D変換部16を校正する様にすれば、常に最適な特性となる様に前記A/D変換部16を制御できる。
【0093】
又、前記A/D変換部16内部の校正を説明したが、高速のA/D変換部16を利用する際、A/D変換部16から出力される高速のデジタルデータも、各コアから出力される遅延が異なり、又、配線基板の配線長によってデジタル信号の遅延量が異なる。以下は、前記A/D変換部16との通信遅延の補正について説明する。
【0094】
前記データ取込み部17は、前記A/D変換部16からのデータ線それぞれに対し、データの取込みタイミングを設定(同期化)し高速デジタル信号を取込む。
【0095】
同期化の為、前記A/D変換部16よりテストパターンを出力させる。例として、11クロックに1回、全てのデータ線がHiレベルとなるテストパターンとし、テストパターンの任意のビットを選択し、選択したビットの信号に任意の遅延(数十〜数百ピコ秒)を追加する。
【0096】
遅延を追加した後、データがHiになったタイミングで内部カウンタをスタートさせ、内部カウンタが11になった時にデータが再度Hiとなることを確認し、11クロック毎にHiになる同期信号をデータ取込み部17内部で作成する。
【0097】
上記で作成した同期信号を他のビットのデータを比較して同期信号がHiの時にデータもHiとなる様にデータの遅延を追加させ、全てのビットの遅延量をそれぞれ設定する。
【0098】
又、データの遅延量を増減し、HiからLow、LowからHiに変わる遅延量を取得し、Hiの期間の中心に遅延を設定することで、各ビットでジッターやスキューから一番遠く、安定したデータ取得できる遅延量を算出設定できる。
【0099】
前記増幅部15は、ログアンプ構成とし、入力電流に対し非線形の領域を使用することにより、受光光量のダイナミックレンジを拡張することも可能である。
【0100】
尚、トランスインピーダンスアンプの周波数特性が、A/D変換部16のナイキスト周波数を越える場合、トランスインピーダンスアンプとA/D変換部16の間にローパスフィルタを入れると良い。
【0101】
図11は、第3の実施例を示している。
【0102】
第3の実施例は、第1の実施例に対し、前記光路切替え部11に代え光路分割部34が設けられ、更に測距光路13中に測距光路延長部35が設けられたものである。
【0103】
尚、該測距光路延長部35を構成するものとしては、光ファイバ等が挙げられる。又、前記光路分割部34は、パルス発光光源5から発せられるパルス光を測距パルス光として前記測距光路13に向け、又前記パルス光を内部参照パルス光として内部参照光路10に向けるパルス光誘導手段として機能する。
【0104】
第3の実施例では、前記光路分割部34により1つのパルス光を測距パルス光と内部参照パルス光とに分割する。
【0105】
前記測距光路延長部35は反射パルス光の前記受光検出器6への到達時間を遅延させ、前記内部参照光路10を経由して受光検出器6へ到達する内部参照パルス光と、測定対象物2で反射され、前記受光光学系9を介して受光する反射パルス光の到達時間に差を作り、光路の切替えをすることなく、一つのパルス光から測距が可能となる構成である。
【0106】
図12は、第4の実施例を示しており、第4の実施例では投光光学系8に第2光路切替え部36が設けられ、受光光学系9に第2光路結合部37が設けられ、更に前記第2光路切替え部36と前記第2光路結合部37とを連絡する第2内部参照光路38が設けられたものであり、前記第2光路切替え部36は演算制御部27からの制御信号により光路を測距光路13と第2内部参照光路38とに切替える。第4の実施例では、測距光路13の距離値と第2内部参照光路38の距離値の差を求める事により距離値を算出する構成となっている。
【0107】
図13は、第4の実施例に於けるパルス発光信号と受光信号の関係を示すものであり、前記受光検出器6には前記内部参照光路10を経た内部参照パルス光と、前記第2内部参照光路38を経た第2内部参照パルス光と、測距光路13を経た反射パルス光とが入射し、前記受光検出器6からは受光したパルス光に対応する受光信号が発せられる。
【0108】
パルス発光信号基準として第2内部参照光受光信号迄の時間をa、パルス発光信号基準として反射パルス光受光信号迄の時間をb、内部参照光受光信号と第2内部参照光受光信号、反射パルス光受光信号間の時間差をそれぞれc,dとすると、測距光が測定対象物2迄を往復する時間は、(d−c)又は(b−a)として計算される。
【0109】
上記実施例では、前記パルス発光光源5の発光をパルス発光信号に同期させ、受光信号迄の時間をパルス発光信号を基準として求めたが、パルス発光光源5がクロック発振部24からのパルス発光信号に同期せず、非同期で発光させることもできる。
【0110】
前記パルス発光光源5を非同期で発光させる場合は、パルス光を光路切替え部11で分割する方式の光波距離装置1に適用することができ、内部参照光の受光信号を基準として反射パルスを受光する迄の時間を計測する。
【0111】
図14は、第3の実施例と同様な光学的な構成を有し、非同期で前記パルス発光光源5を発光した場合の、内部参照光受光信号と反射パルス光受光信号との関係を示すものであり、内部参照光受光信号と反射パルス光受光信号との受光時間差aが距離演算に用いられる。
【0112】
図15は、非同期で前記パルス発光光源5を発光した場合の、内部参照光受光信号と第2内部参照光受光信号及び反射パルス光受光信号との関係を示すものであり、光学的な構成は図12に示す第4の実施例に対応する。内部参照光受光信号を基準として、第2内部参照光受光信号迄の時間aと、反射パルス光受光信号迄の時間bがそれぞれ求められ、測距光が測定対象物2迄を往復する時間は、(b−a)として計算される。
【0113】
尚、非同期パルス発光光源の例としてはQ−SWレーザ、ファイバーレーザ等、自励発振するパルスレーザ光源がある。又、同期パルス発光光源の例としては、PLD、ファイバーアンプレーザ等、発光のタイミングを電気的な信号により制御できるパルスレーザ光源がある。
【符号の説明】
【0114】
1 光波距離装置
2 測定対象物
3 光学部
4 計測部
5 パルス発光光源
6 受光検出器
7 光源駆動部
8 投光光学系
9 受光光学系
10 内部参照光路
13 測距光路
16 A/D変換部
17 データ取込み部
18 環状バッファ部
19 閾値検出部
20 記憶部
21 FFT部
24 クロック発振部
25 粗時計カウンタ
26 粗時計記憶部
27 演算制御部
31 温度センサ
32 校正データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部参照パルス光と測定対象物で反射された測距パルス光との受光時間差に基づき粗測距を行い、前記内部参照パルス光の受光波形、前記測距パルス光の受光波形をそれぞれフーリエ変換し、複数の周波数成分に分解し、得られた周波数成分毎に位相差を求め、位相差から得られる時間差に基づき精密測距を行い、粗測距と精密測距とを加算して測定対象物迄の距離を測定することを特徴とする光波距離測定方法。
【請求項2】
測距光路と、内部参照光路と、パルス光を発するパルス発光光源と、該パルス発光光源から発せられるパルス光を測距パルス光として前記測距光路に向け、前記パルス光を内部参照パルス光として前記内部参照光路に向けるパルス光誘導手段と、測距パルス光及び前記内部参照パルス光を受光して受光信号を発する受光検出器と、該受光検出器からの受光信号に基づき測定対象物迄の距離を演算する計測部とを具備し、該計測部は、内部参照パルス光と測定対象物で反射された測距パルス光との受光時間差に基づき粗測距を行い、前記受光検出器が出力する内部参照パルス光の受光波形、測距パルス光の受光波形をそれぞれフーリエ変換し、複数の周波数成分に分解し、得られた周波数成分毎に位相差を求め、位相差から得られる時間差に基づき精密測距を行い、粗測距と精密測距とを加算して測定対象物迄の距離を測定することを特徴とする光波距離装置。
【請求項3】
前記計測部は、前記受光検出器から得られる受光信号をアナログデジタル変換するA/D変換部と、該A/D変換部からのデジタル信号を受けるデータ取込み部と、該データ取込み部からのデータを逐次記憶するバッファ部と、前記データ取込み部からのデータが設定された閾値を交差した事を検出する閾値検知部と、該閾値検知部からの信号を基にバッファ部のデータを記憶する抽出記憶部と、該抽出記憶部のデータをフーリエ変換するフーリエ変換部と、前記A/D変換部のサンプリングクロックをカウントする粗時計カウンタと前記閾値検知部からの信号を基に粗時計カウンタのカウント値を記憶する粗時計記憶部と、前記A/D変換部、前記データ取込み部、前記バッファ部、前記閾値検知部、前記粗時計カウンタに同期したクロックを供給するクロック発振部と、前記粗時計記憶部と前記フーリエ変換部からの全てのデータを基に距離を演算する演算制御部とを備えている請求項2の光波距離装置。
【請求項4】
前記フーリエ変換部からの全てのデータより、分解された周波数成分の振幅及び位相を求め、前記振幅を基に位相データに重み付けを行い、距離を演算する請求項3の光波距離装置。
【請求項5】
前記A/D変換部の温度を検出する温度センサを備え、該温度センサからの検出信号を基に、前記A/D変換部の校正を実行する請求項3の光波距離装置。
【請求項6】
前記演算制御部が前記A/D変換部の温度に対応した校正データを有し、前記演算制御部は前記温度センサからの温度検出信号に基づき前記校正データを選択し、前記A/D変換部の校正を行う請求項5の光波距離装置。
【請求項7】
前記受光検出器からの電流信号を電圧信号に変換するトランスインピーダンスアンプを有し、該トランスインピーダンスアンプの出力がログ出力である請求項5の光波距離装置。
【請求項8】
前記パルス発光光源が、前記クロック発振部からの信号に同期したパルス発光信号によりパルス測距光を発光する同期パルス発光光源である請求項3の光波距離装置。
【請求項9】
前記パルス発光光源が、前記クロック発振部からの信号とは非同期のパルス測距光を発光する非同期パルス発光光源である請求項3の光波距離装置。
【請求項10】
前記パルス発光光源からのパルス光を前記受光検出器に導く前記内部参照光路と、該内部参照光路と受光光学系の光路とを結合する光路結合部と、測定対象物へパルス光を照射する前記測距光路と、前記内部参照光路を切替える光路切替え部とを備え、パルス発光信号と、前記測距光路にて受光したパルスと、前記内部参照光路にて受光したパルスから得られたデータより距離を演算する請求項2又は請求項3又は請求項8の光波距離装置。
【請求項11】
前記パルス光誘導手段がパルス発光光源からのパルス光を分割する光路分割部であり、測定対象物から反射された光と前記内部参照光路との光路差を形成する測距光路延長部と、前記内部参照光路と前記測距光路延長部からの光路を結合する前記光路結合部とを備え、パルス発光信号と、前記測距光路から受光した反射パルス光と、前記内部参照光路から受光した内部参照パルス光から得られたデータより距離を演算する請求項2又は請求項3又は請求項9の光波距離装置。
【請求項12】
前記パルス光誘導手段がパルス発光光源からのパルス光を分割し、前記内部参照光路に導く光路分割部であり、測定対象物から反射された反射パルス光と前記内部参照光路との光路差を形成する測距光路延長部と、前記内部参照光路と前記測距光路延長部からの光路を結合する光路結合部を備え、前記内部参照光路から受光した内部参照パルス光と、前記測距光路から受光した反射パルス光から得られたデータより距離を演算する請求項9の光波距離装置。
【請求項13】
前記パルス光誘導手段がパルス発光光源からのパルス光を分割する光路分割部であり、該光路分割部は分割したパルス光を内部参照光路に導き、前記測距光路に設けられ、前記内部参照光路との光路差を形成する測距光路延長部と、前記内部参照光路と前記測距光路延長部からの光路を結合する前記光路結合部と、パルス発光光源からのパルス光を、前記測距光路延長部へ導く第2内部参照光路と、該第2内部参照光路と測定対象物から反射された光を結合する第2光路結合部と、測定対象物へパルス光を照射する前記測距光路と、前記第2内部参照光路を切替える第2光路切替え部を備え、パルス発光信号と、前記測距光路から受光したパルスと、前記内部参照光路から受光したパルスと、前記第2内部参照光路から得られたデータより距離を演算する請求項2又は請求項3又は請求項8の光波距離装置。
【請求項14】
前記パルス光誘導手段がパルス発光光源からのパルス光を分割する光路分割部であり、該光路分割部は分割したパルス光を前記内部参照光路に導き、前記測距光路に設けられ前記内部参照光路との光路差を形成する測距光路延長部と、前記内部参照光路と前記測距光路延長部からの光路を結合する前記光路結合部と、パルス発光光源からのパルス光を、前記測距光路延長部へ光波距離装置内部で導く第2内部参照光路と、該第2内部参照光路と測定対象物から反射された光を結合する第2光路結合部と、前記第2内部参照光路を切替える第2光路切替え部とを備え、前記測距光路から受光したパルスと、前記内部参照光路から受光したパルスと、前記第2内部参照光路から得られたデータより距離を演算する請求項2又は請求項3又は請求項9の光波距離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−11558(P2013−11558A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145605(P2011−145605)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)
【Fターム(参考)】