説明

光源装置、偏光変換素子及び表示装置

【課題】光の利用効率を向上しつつ、小型な光源装置及び偏光変換素子を提供する。
【解決手段】光源装置1は、第1の波長の光を発する光源11と、互いに直交する第1と第2の直線偏光成分のうちの第1の直線偏光成分を透過し、第2の直線偏光成分を反射する反射型偏光素子16とを備え、光源11からの第1の波長の光を用いて生じさせた第2の波長の光の第1の直線偏光成分のみを出射する。この光源装置1では、第1の波長の光を第2の波長の光に変換する波長変換素子14と、第1の波長の光を透過し、第2の波長の光を反射するダイクロイックミラー13とが、光源11、ダイクロイックミラー13、波長変換素子14、反射型偏光素子16の順となるように、光源11と反射型偏光素子16との間に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直線偏光光を出力する光源装置、偏光変換素子、及びそれら光源装置または偏光変換素子を用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶表示装置などの照明光として、直線偏光光が利用されている。そこで、直線偏光光を生成するための偏光変換素子が開発されている。
例えば、液晶プロジェクタに利用されている偏光変換素子は、ガラスなどの透明な部材で形成された、直方体状の形状を有している。そしてこの偏光変換素子の内部には、光源からの光が入射する入射面に対して45°の角をなすように偏光分離膜が形成されている。そしてこの偏光分離膜は、光源からの光を、直進するp偏光成分と光の入射方向に対して直交する方向に反射されるs偏光成分に分離する。そしてp偏光成分は、偏光変換素子から出射する。一方、s偏光成分は、偏光分離膜が形成された面と略平行な面に設けられた反射膜により再度反射され、p偏光成分と平行な方向に沿って偏光変換素子から出射する。また偏光変換素子には、p偏光成分またはs偏光成分の何れか一方が出射する面に1/2波長板が取り付けられる。そして1/2波長板を透過した偏光成分の偏光方向は90°回転する。そのため、偏光変換素子を出射する光は直線偏光となる。
【0003】
このように、偏光変換素子は、無偏光の光のうちのs偏光成分及びp偏光成分の両方を利用できるので、高い効率で入射光を直線偏光光に変換できる。しかし、この偏光変換素子は、入射光をその偏光成分に応じて入射面と平行な方向に分離するため、入射面の面積に対して出射面の面積が2倍となる。そのため、この偏光変換素子は、小型化することが困難である。
【0004】
また、液晶ディスプレイのバックライト用として、多層反射型偏光フィルムを用いた偏光変換シートが利用されている。このような偏光変換シートでは、導光板の一方の面に反射シートが設けられ、導光板の他方の面には、導光板に近い方から順に、拡散シート、プリズムシート及び多層反射型偏光フィルムが設けられる。この偏光変換シートでは、導光板の側面から入射した無偏光の照明光は、拡散シートが設けられた側の面から導光板を出射すると、拡散シートにより拡散される。そして照明光は、プリズムシートにより多層反射型偏光フィルムの表面に対して直交するように向きを変えられる。多層反射型偏光フィルムは、照明光のうち、一方向の直線偏光成分を透過させ、その方向と直交する方向の直線偏光成分を反射する。多層反射型偏光フィルムにより反射された照明光は、プリズムシート、拡散シート及び導光板を透過した後、反射シートにより再反射される。その後、再反射された照明光は、再度導光板、拡散シート及びプリズムシートを経由して多層反射型偏光フィルムに入射する。ここで照明光は拡散シートにより拡散されるので、多層反射型偏光フィルムに再入射した照明光は、ほぼ無偏光の光となる。そのため、多層反射型偏光フィルムに再入射した照明光の一部の直線偏光成分は多層反射型偏光フィルムを透過し、その他の直線偏光成分は多層反射型偏光フィルムにより再度反射される。
このように、照明光は、多層反射型偏光フィルムと反射シートの間で繰り返し反射されることにより、特定の直線偏光成分の光に変換された上で偏光変換シートから出射する。しかし、この偏光変換シートでは、多層反射型偏光フィルムと反射シートの間に、導光板、拡散シート及びプリズムシートの3種類の部材が設けられているため、照明光が多層反射型偏光フィルムと反射シートの間を通る際の照明光の損失も大きくなる。そのため、この偏光変換シートにおける照明光の利用効率は、上記の偏光変換素子における利用効率よりも低くなる。
【0005】
そこで、光の利用効率を向上させ、かつ小型な偏光光源装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
特許文献1に開示された偏光光源装置は、光源と、光源の一方の側に配設された反射板と、光源の他方の側に、反射板と平行平板状となるように配設された反射型直線偏光素子と、光源と反射型直線偏光素子の間に配設された1/4波長板とを有する。この偏光光源装置では、光源から放射された光は、1/4波長板を透過することでその偏光方向が回転された後、反射型直線偏光素子へ入射する。反射型直線偏光素子は、入射した光のうち、一方向の直線偏光成分を透過させ、透過する直線偏光成分と直交する直線偏光成分を反射する。反射型直線偏光素子で反射された光は、1/4波長板を透過した後、光源の後方に配置された反射板で反射され、再度1/4波長板を透過して反射型直線偏光素子へ入射する。そしてこの光は、1/4波長板を2回透過するため、反射型直線偏光素子で最初に反射されてから、再度反射型直線偏光素子に入射するまでに、その偏光方向が90°回転する。そのため、最初に反射型直線偏光素子で反射された光も、2回目の入射で反射型直線偏光素子を透過する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−162619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された偏光光源装置は、反射板と反射型直線偏光素子の間に光源が配置されている。そのため、光の一部は、光源に関する部材により吸収され、または光源に関する部材で様々な方向へ反射または散乱されるので、この偏光光源装置は、光源から発した光の全てを有効利用することはできない。
【0009】
そこで、本発明は、光の利用効率を向上しつつ、小型な光源装置及び偏光変換素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの側面によれば、光源装置が提供される。係る光源装置は、第1の波長の光を発する光源と、互いに直交する第1と第2の直線偏光成分のうちの第1の直線偏光成分を透過し、第2の直線偏光成分を反射する反射型偏光素子とを備え、光源からの第1の波長の光を用いて生じさせた第2の波長の光の第1の直線偏光成分のみを出射する。この光源装置では、第1の波長の光を第2の波長の光に変換する波長変換素子と、第1の波長の光を透過し、第2の波長の光を反射するダイクロイックミラーとが、光源、ダイクロイックミラー、波長変換素子、反射型偏光素子の順となるように、光源と反射型偏光素子との間に配置される。
【0011】
光源装置は、ダイクロイックミラーと反射型偏光素子の間に配置された1/4波長板をさらに有することが好ましい。
【0012】
あるいは、上記の光源装置において、波長変換素子は、光を散乱する散乱体を含むことが好ましい。
【0013】
また上記の各光源装置において、光源とダイクロイックミラーの間に、光源から発した光を集光し、略平行光として出射させる集光素子が配置されることが好ましい。
【0014】
さらに上記の各光源装置において、波長変換素子は、ダイクロイックミラーの反射面に対して垂直な方向を長手方向とする柱状結晶状に形成される蛍光体を含むことが好ましい。
【0015】
本発明の他の側面によれば、偏光変換素子が提供される。係る偏光変換素子は、一方の側が第1の波長を持つ光を発する光源に面するように配置され、第1の波長の光を透過するとともに、第2の波長の光を反射するダイクロイックミラーと、ダイクロイックミラーの他方の側に配置され、第2の波長を持つ光の第1の直線偏光成分を透過する一方、第1の直線偏光成分と直交する第2の直線偏光成分を反射する反射型偏光素子と、ダイクロイックミラーと反射型偏光素子の間に配置され、第1の波長の光が照射されることにより、第2の波長の光を発する波長変換素子とを有する。
【0016】
偏光変換素子は、ダイクロイックミラーと反射型偏光素子の間に配置された1/4波長板をさらに有することが好ましい。
【0017】
あるいは、上記の偏光変換素子において、波長変換素子は、光を散乱する散乱体を含むことが好ましい。
【0018】
さらに上記の各偏光変換素子において、波長変換素子は、ダイクロイックミラーの反射面に対して垂直な方向を長手方向とする柱状結晶状に形成される蛍光体を含むことが好ましい。
【0019】
本発明のさらに他の側面によれば、表示装置が提供される。係る表示装置は、上記の何れかの光源装置と、光源装置から出射された光の強度を表示すべき画像に応じて変調する空間光変調装置とを有する。
【0020】
本発明のさらに他の側面によれば、表示装置が提供される。係る表示装置は、上記の何れかの偏光変換素子と、偏光変換素子から出射された光の強度を表示すべき画像に応じて変調する空間光変調装置とを有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る光源装置及び偏光変換素子は、光の利用効率を向上しつつ、小型化できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光源装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る光源装置の動作を説明する図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る光源装置の概略構成図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る光源装置の動作を説明する図である。
【図5】柱状結晶状に形成された蛍光体を含む蛍光体層を有する光源装置の一例の概略構成図である。
【図6】各実施形態による光源装置の何れかを利用した、液晶プロジェクタの概略構成図である。
【図7】各実施形態による偏光変換素子の何れかを利用した、液晶ディスプレイ用バックライトの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図を参照しつつ、一つの実施形態による、光源装置について説明する。
図1は、第1の実施形態による光源装置の概略構成図である。図1に示すように、この光源装置1は、基板10上に形成された光源11と、光源11上に配置された偏光変換素子12とを有する。
【0024】
光源11は、無偏光で、かつ所定の波長の励起光を発する光源である。所定の波長は、偏光変換素子12に含まれる蛍光体に蛍光発光させることができる波長、例えば、近紫外〜青色に相当する波長とすることができる。例えば、光源11は、波長405nmの光を発する発光ダイオード(Light Emitting Diode、LED)とすることができる。
【0025】
偏光変換素子12は、光源11が発した励起光により蛍光を発し、その蛍光を直線偏光光として出力する。そのために、偏光変換素子12は、光源11側から順に、ダイクロイックミラー13と、波長変換素子の一例である蛍光体層14と、1/4波長板15と、反射型偏光素子16とが積層された構造を有する。なお、偏光変換素子12が有する各層は、互いに密着するように配置されてもよく、あるいは、互いに間隔を空けて配置されてもよい。また、蛍光体層14と1/4波長板15の配置は、入れ替えられてもよい。
この偏光変換素子12において、ダイクロイックミラー13の光源11と対向する面が光の入射面12aであり、反射型偏光素子16の外側の面、すなわち入射面12aと反対側の面が光の出射面12bである。
【0026】
ダイクロイックミラー13は、光源11が発する励起光に相当する波長の光を透過する一方、蛍光体層14により生じる蛍光に相当する波長の光を反射する。そのために、ダイクロイックミラー13は、例えば、ガラス層と、ガラス層の表面に形成された誘電体多層膜により形成される。あるいは、ダイクロイックミラー13は、光源11が発する励起光の波長よりも小さい周期で誘電率が変化するフォトニック結晶により形成されてもよい。例えば、ダイクロイックミラー13は、ガラスのような透明な部材の表面に、直径100nm〜200nm程度の複数の突起が所定の周期で形成された構造を有する。
【0027】
蛍光体層14は、波長変換素子として機能し、光源11から照射された励起光によって所定の波長を持つ蛍光を発する。そのために、蛍光体層14は、例えば、ガラス基板上に蛍光体が塗布された構造を有する。あるいは、蛍光体層14は、ガラス基板内に蛍光体がドープされた構造を有してもよい。さらにまた、蛍光体層14は、蛍光体を含む薄膜であってもよい。
また、波長変換素子として、上記の蛍光体層14の代わりに、ナノスケールで入力される光の波長を変換する量子ドットなどを用いてもよい。
蛍光体は、光源11が発する励起光の波長及び光源装置1が出力しようとする光の波長に応じて適切なものが選択される。
例えば、光源11が波長405nmの光を発し、かつ光源装置1が赤色に相当する波長を持つ光を出力しようとする場合、赤色蛍光体として、CaAlSiN3:Eu2+を使用することができる。また、光源11が波長405nmの光を発し、かつ光源装置1が緑色に相当する波長を持つ光を出力しようとする場合、緑色蛍光体として、例えば、(Ba,Sr)2SiO4:Eu2+を使用することができる。さらに、光源11が波長405nmの光を発し、かつ光源装置1が青色に相当する波長を持つ光を出力しようとする場合、青色蛍光体として、例えば、Sr10(PO4)6Cl2:Eu2+を使用することができる。
また、光源11が波長455nmの光を発し、かつ光源装置1が黄色に相当する波長を持つ光を出力しようとする場合、黄色蛍光体として、例えば、(Y,Gd)3Al5O12:Ce3+を使用することができる。
【0028】
1/4波長板15は、入射した光の位相をずらす。そのため、所定の方向の直線偏光を持つ光が1/4波長板15を2回透過することにより、その光の偏光方向は90°回転する。
【0029】
反射型偏光素子16は、互いに直交する二つの直線偏光成分のうちの一方を透過し、他方を反射する。そのために、反射型偏光素子16は、例えば、ガラス等の透明な部材の表面に、アルミニウムまたはクロムなどの導電性材料からなる複数の直線パターンが数100nm程度のピッチで略平行に配列された構造を有する。このように形成された反射型偏光素子16は、直線パターンと平行な方向の直線偏光は透過し、一方、直線パターンと直交する方向の直線偏光は反射する。
あるいは、反射型偏光素子16は、多層反射型偏光フィルムであってもよい。
【0030】
以下、図2を参照しつつ、光源装置1の動作について説明する。
光源11が発した励起光Leは、偏光変換素子12の入射面12aからダイクロイックミラー13へ入射する。そして励起光Leは、ダイクロイックミラー13を透過して蛍光体層14へ達する。蛍光体層14は、励起光Leが照射されると、励起光Leの波長よりも長い波長を有する蛍光を発する。そして蛍光体層14で発した蛍光の一部Lf1は、1/4波長板15を透過して反射型偏光素子16へ入射する。
【0031】
反射型偏光素子16は、蛍光Lf1の互いに直交する二つの直線偏光成分のうち、一方の直線偏光成分Lf2を透過させる。そのため、蛍光のこの直線偏光成分Lf2は、出射面12bから出射する。一方、反射型偏光素子16は、他方の偏光成分Lf3を反射する。反射型偏光素子16を透過する直線偏光成分Lf2を、便宜上、p偏光と呼び、反射型偏光素子16で反射される直線偏光成分Lf3をs偏光と呼ぶ。
反射型偏光素子16で反射された蛍光Lf3は、1/4波長板15を透過することにより、円偏光となって蛍光体層14を透過してダイクロイックミラー13へ向かう。
蛍光の波長は、励起光Leの波長よりも長いため、蛍光Lf3はダイクロイックミラー13で反射される。そしてダイクロイックミラー13で反射された蛍光Lf3は、再度蛍光体層14を透過した後、1/4波長板15を透過することにより、p偏光となって反射型偏光素子16に入射する。そのため、この蛍光Lf3は、反射型偏光素子16を透過する。
【0032】
また、蛍光体層14で発した蛍光の残りの一部は、反射型偏光素子16へ向かわず、直接ダイクロイックミラー13へ向かう。蛍光のこの一部も、ダイクロイックミラー13で反射された後、蛍光体層14を透過して反射型偏光素子16へ向かう。そのため、蛍光の残りの一部も、蛍光体層14から反射型偏光素子16へ直接向かった蛍光の一部Lf1と同様に、p偏光となって出射面12bから出射する。
【0033】
以上説明してきたように、第1の実施形態による光源装置は、光源からの励起光により、蛍光体層で生じた蛍光を出力する。そしてこの光源装置において、蛍光は、その偏光成分に応じて光の出射方向と平行な方向に分離されるので、出射面のサイズは光源の発光面のサイズと等しくできる。そのため、この光源装置は小型化することができる。
また、蛍光体層で発した蛍光は反射型偏光素子とダイクロイックミラーの間に配置された蛍光体層と1/4波長板しか通らない。そしてこの蛍光は、反射型偏光素子とダイクロイックミラーの間を一往復するだけでその偏光方向が90°回転するので、1回目に反射型偏光素子に入射したときに反射された偏光成分も、2回目に反射型偏光素子に入射したときには透過する。そのため、偏光変換素子内での蛍光の損失が抑制されるので、この光源装置は、光の利用効率を向上できる。
【0034】
次に、第2の実施形態による光源装置について説明する。
図3は、第2の実施形態による光源装置の概略構成図である。図3に示すように、この光源装置2は、基板10上に形成された光源11と、光源11上に配置された偏光変換素子22とを有する。また偏光変換素子22は、光源11側から順に、ダイクロイックミラー13と、蛍光散乱体層24と、反射型偏光素子16とが積層された構造を有する。なお、図3において、光源装置2が有する各構成要素には、図1に示した光源装置1の対応する構成要素と同じ参照番号を付した。
また、第2の実施形態による光源装置2は、第1の実施形態による光源装置1と比較して、偏光変換素子22が1/4波長板を有さない点と、蛍光体層に散乱体が加えられている点で相違する。そのため、以下では、第1の実施形態による光源装置と異なる点について説明する。
【0035】
波長変換素子である蛍光散乱体層24は、蛍光体の他に、散乱体を含む。この散乱体は、例えば、蛍光散乱体層24のガラス基板の屈折率と異なる屈折率を持つガラス等の微粒子とすることができる。そして蛍光散乱体層24は、入射した光を散乱することにより、その光が特定の偏光成分を持たないようにする。なお、蛍光散乱体層24の代わりに、量子ドットが形成された層と、散乱体を含むガラスなどの透明部材とが積層された素子を波長変換素子として用いてもよい。
【0036】
図4を参照しつつ、光源装置2の動作について説明する。
光源11が発した励起光Leは、光源11に対向する、偏光変換素子22の入射面22aからダイクロイックミラー13へ入射する。そして励起光Leは、ダイクロイックミラー13を透過して蛍光散乱体層24へ達する。蛍光散乱体層24は、励起光Leが照射されると、励起光Leの波長よりも長い波長を有する蛍光を発する。そして蛍光散乱体層24で発した蛍光の一部Lf1は、反射型偏光素子16へ入射する。
【0037】
反射型偏光素子16は、蛍光Lf1の互いに直交する二つの直線偏光成分のうち、p偏光成分を透過させる。そのため、p偏光成分Lf2は、出射面22bから出射する。一方、反射型偏光素子16は、s偏光成分Lf3を反射する。
反射型偏光素子16で反射された蛍光Lf3は、蛍光散乱体層24により散乱された後、ダイクロイックミラー13で反射される。そしてダイクロイックミラー13で反射された蛍光Lf3は、再度蛍光散乱体層24によって散乱された後、反射型偏光素子16に入射する。
【0038】
このように、反射型偏光素子16で反射された蛍光Lf3は、蛍光散乱体層24を透過する際に、散乱体によって散乱されるため、ほぼ無偏光の光となる。そのため、反射型偏光素子16に再入射した蛍光Lf3は、1回目に反射型偏光素子16に入射したときと同様に、p偏光成分とs偏光成分に分離され、このうちのp偏光成分Lf4が出射面12bから出射する。一方、反射型偏光素子16により反射されたs偏光成分Lf5は、再度蛍光散乱体層24を通ってダイクロイックミラー13により反射され、反射型偏光素子16に入射する。
また、蛍光散乱体層24で発した蛍光の残りの一部は、反射型偏光素子16へ向かわず、直接ダイクロイックミラー13へ向かう。蛍光のこの一部も、ダイクロイックミラー13で反射された後、蛍光散乱体層24を透過して反射型偏光素子16へ向かう。そのため、蛍光の残りの一部も、蛍光体散乱体層24から反射型偏光素子16へ直接向かった蛍光の一部Lf1と同様に、そのp偏光成分が出射面12bから出射し、s偏光成分は反射型偏光素子16で反射される。
【0039】
このように、蛍光は、ダイクロイックミラー13と反射型偏光素子16で反射され、その間に配置された蛍光散乱体層24のみを繰り返し透過する。そして蛍光は、反射型偏光素子16へ入射する度に、そのp偏光成分が反射型偏光素子16を透過する。そのため、蛍光散乱体層24で発した蛍光は、その殆どがp偏光成分を持つ直線偏光となって偏光変換素子22から出射される。
【0040】
以上説明してきたように、第2の実施形態による光源装置では、反射型偏光素子とダイクロイックミラーの間に蛍光散乱体層のみが配置される。そのため、蛍光散乱体層で発した蛍光は、反射型偏光素子から出射されるまで、反射型偏光素子とダイクロイックミラーの間、すなわち蛍光散乱体層のみを透過する。そのため、偏光変換素子内での蛍光の損失が抑制されるので、この光源装置は、光の利用効率を向上できる。また、本実施形態の光源装置は、先の第1の実施形態に比べ、1/4波長板が無い分、装置の厚みが薄くなり、しかも安価に製造できる。
【0041】
なお、上記の各実施形態において、蛍光体層または蛍光散乱体層は、ガラスなどの基板と、その基板上に柱状結晶として形成された蛍光体を有してもよい。この場合、この柱状結晶の長手方向が、ダイクロイックミラーの反射面に対して略直交するように、柱状結晶が形成される。このように蛍光体が形成されることにより、蛍光の一部が柱状結晶内を全反射しながら伝播する。そのため、ダイクロイックミラーの反射面に対して略垂直に入射する蛍光の成分が増えるので、ダイクロイックミラーによる損失を低減できる。
【0042】
図5は、波長変換素子として、このような柱状結晶状に形成された蛍光体を含む蛍光体層を有する光源装置の一例の概略構成図である。図5に示す光源装置3は、光源11と、偏光変換素子32と、光源11と偏光変換素子32との間に配置された集光レンズ37とを有する。また偏光変換素子32は、光源11側から順に、ダイクロイックミラー13と、蛍光体層34と、1/4波長板15と、反射型偏光素子16とが積層された構造を有する。なお、図5において、光源装置3が有する各構成要素には、図1に示した光源装置1の対応する構成要素と同じ参照番号を付した。
【0043】
集光レンズ37は、集光素子として機能する。そして集光レンズ37は、光源11から発した励起光を集光し、略平行光にする。そのため集光レンズ37から出射された励起光は、偏光変換素子32の入射面32aに対して略垂直に入射する。そのために、光源11は、集光レンズ37の前側焦点面に配置される。なお、集光レンズ37は、例えば、屈折レンズ、回折レンズあるいは屈折率分布型レンズとすることができる。また集光レンズ37として、複数の光学素子が組み合わされた光学系が用いられてもよい。さらにまた、集光レンズ37の代わりに、凹面鏡が配置されてもよい。
【0044】
偏光変換素子32は、光源11が発した励起光により蛍光を発し、その蛍光を直線偏光光として出力する。また偏光変換素子32は、第1の実施形態による光源装置1が有する偏光変換素子11と比較して、蛍光体層34が、ダイクロイックミラー13の反射面に対して略直交する方向に形成された柱状結晶状の蛍光体を有する点で異なる。そして蛍光体層34にて生じた蛍光の少なくとも一部は、その柱状結晶内を全反射しながら伝播する。そのため、ダイクロイックミラー13の反射面に対して略垂直に入射する蛍光の成分が増える。そのため、ダイクロイックミラー13は、略垂直に入射する蛍光に対する反射率が高くなるように構成されればよいので、この偏光変換素子32は、ダイクロイックミラー13による損失を低減できる。
【0045】
また、上記の各実施形態において、蛍光体層または蛍光散乱体層と反射型偏光変換素子の間に、光源から発した光を反射し、蛍光体層または蛍光散乱体層で発した蛍光を透過させるダイクロイックミラーを配置してもよい。これにより、この光源装置は、光源から発する短波長の光(例えば、近紫外光)が、偏光変換素子を透過して他の素子へ達することを抑制できる。そのため、この光源装置は、他の素子がその短波長の光によるダメージを受けることを防止できる。
また、上記の各実施形態において、光源は、LEDに限られず、例えば、蛍光管、冷陰極管、高圧水銀ランプあるいは有機エレクトロルミネッセンス(Organic Electro-Luminescence、有機EL)素子であってもよい。
【0046】
図6は、上記の各実施形態による光源装置の何れかを利用した、表示装置の一例を示す図であり、本図では、液晶プロジェクタの概略構成を示した。この実施形態の表示装置は、上記の各実施形態による光源装置の何れかと、空間光変調装置である液晶パネルとを含むように構成される。
液晶プロジェクタ4は、光源装置41g、41b、41rと、ダイクロイックミラー42b、42rと、液晶パネル43と、駆動回路44と、コントローラ45と、同期回路46と、投影光学系47とを有する。
【0047】
光源装置41g、41b、41rは、それぞれ、上記の実施形態の何れかによる光源装置である。このうち、光源装置41gは、ダイクロイックミラー42b及び42rを挟んで液晶パネル43の後方に配置される。そして光源装置41gは、緑色に相当する波長を持つ直線偏光光を出力する。そのために、光源装置41gが有する偏光変換素子411gの蛍光体層または蛍光散乱体層には、緑色に相当する波長を持つ光を発する蛍光体が含まれる。
また光源装置41bは、光源装置41bから出力された光がダイクロイックミラー42bにて反射され、液晶パネル43に達するように配置される。そして光源装置41bは、青色に相当する波長を持つ直線偏光光を出力する。そのために、光源装置41bが有する偏光変換素子411bの蛍光体層または蛍光散乱体層には、青色に相当する波長を持つ光を発する蛍光体が含まれる。
さらに、光源装置41rは、光源装置41rから出力された光がダイクロイックミラー42rにて反射され、液晶パネル43に達するように配置される。そして光源装置41rは、赤色に相当する波長を持つ直線偏光光を出力する。そのために、光源装置41rが有する偏光変換素子411rの蛍光体層または蛍光散乱体層には、赤色に相当する波長を持つ光を発する蛍光体が含まれる。
なお、各光源装置41g、41b、41rから出力される光の偏光方向が同一となるように、各光源装置は配置される。例えば、各光源装置から出力される光の偏光方向は、紙面に対して垂直な方向とすることができる。
【0048】
ダイクロイックミラー42bは、青色に相当する波長以下の波長を持つ光を反射し、青色に相当する波長よりも長い波長を持つ光を透過する。またダイクロイックミラー42rは、赤色に相当する波長以上の波長を持つ光を反射し、赤色に相当する波長よりも短い波長を持つ光を透過する。そのため、光源装置41gから出力された光は、ダイクロイックミラー42b及び42rを透過して液晶パネル43に達する。一方、光源装置41bから出力された光は、ダイクロイックミラー42bにより反射され、液晶パネル43に達する。また光源装置41rから出力された光は、ダイクロイックミラー42rにより反射され、液晶パネル43に達する。
なお、ダイクロイックミラー42bと42rは重なるように図示されているが、ダイクロイックミラー42bと42rは、互いに重ならないように配置されてもよい。また、ダイクロイックミラー42bと42rの代わりに、それら二つのダイクロイックミラーと同様の機能を有するダイクロイックプリズムが使用されてもよい。
【0049】
コントローラ45は、インターフェース回路(図示せず)を介して液晶プロジェクタ4と接続された外部機器から入力された画像信号に基づいて、駆動回路44及び各光源装置41b、41g、41rを制御する。本実施形態では、コントローラ45は、色順次駆動方式により液晶パネル43及び各光源装置41b、41g、41rを制御する。そこで、コントローラ45は、入力された画像信号から、赤色画像、青色画像及び緑色画像に相当する単色画像信号を生成する。そしてコントローラ45は、各単色画像信号を駆動回路44へ出力する。
また、コントローラ45は、同期回路46から供給された同期信号に基づいて、各光源装置の発光タイミングを調節する。そしてコントローラ45は、液晶パネル43上に青色画像が表示されるタイミングで光源装置41bを点灯させる。同様に、コントローラ45は、液晶パネル43上に緑色画像が表示されるタイミングで光源装置41gを点灯させ、また液晶パネル43上に赤色画像が表示されるタイミングで光源装置41rを点灯させる。
【0050】
駆動回路44は、コントローラ45から入力される、表示すべき画像に応じた画像信号に基づいて、液晶パネル43を駆動する駆動信号を生成する。駆動回路44は、同期回路46から供給される同期信号に基づいて、赤色画像、緑色画像、青色画像のそれぞれに対応する駆動信号を出力するタイミングを、光源装置41r、41g、41bが点灯するタイミングと同期させる。
同期回路46は、各光源装置が赤色光、青色光及び緑色光を出力するタイミングと液晶パネル43に赤色画像、青色画像及び緑色画像を表示させるタイミングとを同期させるための同期信号を生成し、生成した同期信号をコントローラ45及び駆動回路44にそれぞれ出力する。
【0051】
液晶パネル43は、2次元アレイ状の空間光変調装置として機能する。そして液晶パネル43は、駆動回路44から供給される駆動信号に応じて、各光源装置から照射された直線偏光光に対する透過率を画素単位で変更して、液晶パネル43を透過する各光源装置からの光の強度を変調することにより画像を表示する。
【0052】
投影光学系47は、液晶パネル43上に表示された画像を、液晶プロジェクタ4から所定距離はなれた位置に設置されたスクリーン上へ投影する。
【0053】
また、上記の各実施形態による光源装置に含まれる偏光変換素子は、液晶ディスプレイ用のバックライトにおいて、直線偏光光を出力する偏光変換シートとして利用できる。
図7は、本発明の各実施形態による偏光変換素子の何れかを利用した、表示装置の他の例を示す図であり、本図では、液晶ディスプレイの概略構成を示した。この実施形態の表示装置は、上記の各実施形態による偏光変換素子の何れかと、空間光変調装置である液晶パネルとを含むように構成される。液晶ディスプレイ5は、液晶ディスプレイ用バックライト50と、液晶パネル54と、コントローラ55とを有する。そして液晶ディスプレイ用バックライト50は、光源51と、導光板52と、上記の実施形態の何れかによる偏光変換素子により構成された偏光変換シート53とを有する。
【0054】
光源51は、例えば、蛍光管、冷陰極管あるいはLEDを有し、偏光変換シート53が有する蛍光体層あるいは蛍光散乱体層に含まれる蛍光体に蛍光発光させることが可能な波長を持つ励起光を発する。光源51は、導光板52の側面に近接して配置され、そのため、光源51から発した励起光は、導光板52内を伝播し、導光板52の表面52aの何れかから偏光変換シート53へ向けて出射する。なお、導光板52から出射した励起光の輝度が表面52a全体で均一となるように、導光板52と偏光変換シート53との間に拡散シートが配置されてもよい。
導光板52から出射した励起光は、偏光変換シート53の入射面53aへ入射し、それにより、偏光変換シート53内で蛍光が発する。なお、偏光変換シート53が白色光を生じるように、例えば、偏光変換シート53が有する波長変換素子に、赤色蛍光体、緑色蛍光体及び青色蛍光体の3種類の蛍光体が含まれることが好ましい。そして偏光変換シート53内で生じた蛍光は、直線偏光光となって偏光変換シート53の出射面53bから出射する。そして、この直線偏光光は、液晶ディスプレイ用バックライト50の出射面53b近傍に配置された液晶パネル54に入射する。
【0055】
液晶パネル54は、2次元アレイ状の空間光変調装置として機能する。そして液晶パネル54は、コントローラ55から供給される駆動信号に応じて、偏光変換シート53から照射された直線偏光光に対する透過率を画素単位で変更して、液晶パネル54を透過する偏光変換シート53からの光の強度を変調することにより画像を表示する。
【0056】
コントローラ55は、インターフェース回路(図示せず)を介して液晶ディスプレイ5と接続された外部機器から入力された画像信号に基づいて、液晶パネル54を制御する。そこで、コントローラ55は、入力された画像信号に応じた駆動信号を生成し、その駆動信号を液晶パネル54へ出力する。
このように、本実施形態による表示装置は、光源からの励起光によって直線偏光光である蛍光を発する偏光変換シートの出射面近傍に液晶パネルが配置されることにより、光の利用効率を高くできる。
【0057】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0058】
1、2、3 光源装置
10 基板
11 光源
12、22、32 偏光変換素子
13 ダイクロイックミラー
14、34 蛍光体層
15 1/4波長板
16 反射型偏光素子
24 蛍光散乱体層
37 集光レンズ
4 液晶プロジェクタ
41b、41g、41r 光源装置
42b、42r ダイクロイックミラー
43 液晶パネル
44 駆動回路
45 コントローラ
46 同期回路
47 投影光学系
5 液晶ディスプレイ
50 バックライト
51 光源
52 導光板
53 偏光変換シート
54 液晶パネル
55 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長の光を発する光源と、
互いに直交する第1と第2の直線偏光成分のうちの第1の直線偏光成分を透過し、第2の直線偏光成分を反射する反射型偏光素子とを備え、
前記光源からの第1の波長の光を用いて生じさせた第2の波長の光の前記第1の直線偏光成分のみを出射する光源装置において、
前記第1の波長の光を前記第2の波長の光に変換する波長変換素子と、
前記第1の波長の光を透過し、前記第2の波長の光を反射するダイクロイックミラーとを、
前記光源、前記ダイクロイックミラー、前記波長変換素子、前記反射型偏光素子の順となるように、前記光源と前記反射型偏光素子との間に配置したことを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記ダイクロイックミラーと前記反射型偏光素子の間に配置された1/4波長板をさらに有する、請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記波長変換素子は、光を散乱する散乱体を含む、請求項1に記載の光源装置。
【請求項4】
前記光源と前記ダイクロイックミラーの間に、前記光源から発した光を集光し、略平行光として出射させる集光素子をさらに有する、請求項1〜3の何れか一項に記載の光源装置。
【請求項5】
前記波長変換素子は、前記ダイクロイックミラーの反射面に対して垂直な方向を長手方向とする柱状結晶状に形成される蛍光体を含む、請求項1〜4の何れか一項に記載の光源装置。
【請求項6】
一方の側が第1の波長を持つ光を発する光源に面するように配置され、前記第1の波長の光を透過するとともに、第2の波長の光を反射するダイクロイックミラーと、
前記ダイクロイックミラーの他方の側に配置され、前記第2の波長を持つ光の第1の直線偏光成分を透過する一方、前記第1の直線偏光成分と直交する第2の直線偏光成分を反射する反射型偏光素子と、
前記ダイクロイックミラーと前記反射型偏光素子の間に配置され、前記第1の波長の光が照射されることにより、前記第2の波長の光を発する波長変換素子と、
を有することを特徴とする偏光変換素子。
【請求項7】
前記ダイクロイックミラーと前記反射型偏光素子の間に配置された1/4波長板をさらに有する、請求項6に記載の偏光変換素子。
【請求項8】
前記波長変換素子は、光を散乱する散乱体を含む、請求項6に記載の偏光変換素子。
【請求項9】
前記波長変換素子は、前記ダイクロイックミラーの反射面に対して垂直な方向を長手方向とする柱状結晶状に形成される蛍光体を含む、請求項6〜8の何れか一項に記載の偏光変換素子。
【請求項10】
請求項1〜5の何れか一項に記載の光源装置と、
前記光源装置から出射された光の強度を表示すべき画像に応じて変調することにより、当該画像を表示する空間光変調装置と、
を有することを特徴とする表示装置。
【請求項11】
請求項6〜9の何れか一項に記載の偏光変換素子と、
前記偏光変換素子から出射された光の強度を表示すべき画像に応じて変調することにより、当該画像を表示する空間光変調装置と、
を有することを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−77444(P2011−77444A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229688(P2009−229688)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】