説明

光源装置及び波長変換方法

【課題】新規な方法で出射光の線幅を狭くする。
【解決手段】光源10は、第1分極反転構造22に第1入射光を出射する。第1分極反転構造22は、第1入射光を波長変換して高調波を出射する。ファイバーカプラ30は、第1分極反転構造22から出力された高調波を、光源装置からの出射光と、フィードバック光とに分岐する。第2分極反転構造42は、フィードバック光が入射される。第2分極反転構造42は、フィードバック光を波長変換して、第2入射光を出射する。第2入射光は、第1入射光と同一波長を有する。第2入射光は、第1波長変換部に入射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置及び波長変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザ光を用いた計測技術の開発が進められている。例えば、レーザ光の吸収強度を用いて試料中の特定の物質の量を検出する技術(レーザ分光計測)がある。またレーザ光を用いて、測定対象物の微小変動を検出する技術(干渉計)もある。これらのような計測技術においては、レーザ光の発振線幅を小さくすることが望まれている。
【0003】
また、テラヘルツレベルの電磁波を発生させるためのポンプ光としても、レーザ光が用いられている。このレーザ光においても、発振線幅を小さくすることが望まれている。
【0004】
一方、特許文献1及び2には、リング共振器を有するレーザシステムにおいて、希土類ドープファイバーをゲイン媒体として使用することが記載されている。特に特許文献1には、リング共振器を構成する希土類ドープファイバーにファイバーブラッググレーティングを設け、出射光の線幅を狭くすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2000−501244号公報
【特許文献2】特表2008−511182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
出射光の線幅を低コストで狭くするためには、新規な方法で出射光の線幅を狭くする必要がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、新規な方法で出射光の線幅を狭くすることができる光源装置及び波長変換方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る光源装置は、光源、第1波長変換部、分岐部、及び第2波長変換部を備える。光源は、第1波長変換部に第1入射光を出射する。第1波長変換部は、第1入射光を波長変換して高調波を出射する。分岐部は、第1波長変換部から出力された高調波を、光源装置からの出射光と、フィードバック光とに分岐する。第2波長変換部は、フィードバック光が入射される。第2波長変換部は、フィードバック光を波長変換して、第1入射光と同一波長を有する第2入射光を出射する。第2入射光は第1波長変換部に入射される。
【0009】
本発明に係る波長変換方法では、まず、第1入射光を第1波長変換部に入射し、第1波長変換部から第1入射光の高調波を出射させる。そして、この高調波を、出射光及びフィードバック光に分岐する。そして、このフィードバック光を波長変換して、第1入射光と同一波長を有する第2入射光を生成し、この第2入射光を第1入射光とともに第1波長変換部に入射する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、新規な方法で出射光の線幅を狭くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係る光源装置の構成を示す図である。
【図2】第2の実施形態に係る光源装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る光源装置の構成を示す図である。この光源装置は、例えば、分光分析の光源、干渉計の光源、又は電磁波発生のポンプ光の光源として使用される。この光源装置は、光源10、第1分極反転構造22(第1波長変換部)、ファイバーカプラ30(分岐部)、及び第2分極反転構造42(第2波長変換部)を備える。光源10は、第1分極反転構造22に第1入射光を出射する。第1分極反転構造22は、第1入射光を波長変換して高調波を出射する。ファイバーカプラ30は、第1分極反転構造22から出力された高調波を、光源装置からの出射光と、フィードバック光とに分岐する。第2分極反転構造42は、フィードバック光が入射される。第2分極反転構造42は、フィードバック光を波長変換して、第2入射光を出射する。第2入射光は、第1入射光と同一波長を有する。第2入射光は、第1波長変換部に入射される。以下、詳細に説明する。
【0014】
光源10は、例えばレーザダイオードである。このレーザダイオードは、例えば発信波長が980nmであるが、これに限定されない。光源10から出力された光は、光ファイバー50、希土類ドープファイバー52、及び光ファイバー56を介して、第1分極反転構造22に入射する。光ファイバー50,56及び希土類ドープファイバー52は、偏波保持光ファイバーである。希土類ドープファイバー52はレーザ光のゲイン媒体となっている。光ファイバー56はFBG(ファイバーブラッググレーティング)54を有している。光源10から出射した第1入射光は、光源10とFBG54の間で共振し、レーザ光として第1分極反転構造22に出射される。すなわち光源装置の光源は、ファイバー共振器を有する。
【0015】
第1分極反転構造22は、波長変換素子20に形成されている。波長変換素子20は、例えば強誘電体結晶を用いて形成されている。この強誘電体結晶は、例えばMgを添加したLiNbOであるが、これに限定されない。強誘電体結晶には導波路が形成されている。この導波路の構造は限定されない。この導波路は、例えばリッジ構造であっても良いし、埋め込み形であってもよい。第1分極反転構造22は、この導波路に設けられている。第1分極反転構造22は擬似位相整合素子である。第1分極反転構造22の分極反転の周期は、波長変換素子20に入射される第1入力光の高調波を生成するように定められている。例えば第1分極反転構造22は、第1入射光の第2高調波を生成するように定められている。
【0016】
波長変換素子20からの出射光は、光ファイバー60を介して光源装置の出射光として出射する。光ファイバー60は、偏波保持光ファイバーである。光ファイバー60には、ファイバーカプラ30が設けられている。ファイバーカプラ30は、出射光を、光源装置からの出射光と、フィードバック光に分岐する。
【0017】
ファイバーカプラ30で分岐されたフィードバック光は、光ファイバー70を介して第2分極反転構造42に入射する。光ファイバー70は、偏波保持光ファイバーである。なお、光ファイバー70にはアイソレータ72が設けられている。アイソレータ72は、波長変換素子20から第2分極反転構造42に向かう方向に光を通す。
【0018】
第2分極反転構造42は、波長変換素子40に形成されている。波長変換素子40は、例えば強誘電体結晶を用いて形成されている。この強誘電体結晶は、例えばMgを添加したLiNbOであるが、これに限定されない。強誘電体結晶には導波路が形成されている。この導波路の構造は限定されない。この導波路は、例えばリッジ構造であっても良いし、埋め込み形であってもよい。第2分極反転構造42は、この導波路に設けられている。第2分極反転構造42は、擬似位相整合素子である。第2分極反転構造42の分極反転の周期は、フィードバック光(すなわち第1入力光の高調波)を第1入力光と同一波長の光(第2入射光)に変換するように定められている。例えば第1入射光が第1入射光の第2高調波である場合、第2分極反転構造42は、この第2高調波を縮退パラメトリック変換(Optical Parametric Oscillate:OPO)するように定められている。
【0019】
波長変換素子40から出力された第2入射光は、光ファイバー80及びファイバーカプラ32を介して希土類ドープファイバー52に入射する。光ファイバー80は、偏波保持光ファイバーである。ファイバーカプラ32は2つの入射部を有している。ファイバーカプラ32の一方の入射部は光ファイバー50に接続しており、他方の入射部は光ファイバー80に接続している。またファイバーカプラ32の出射部は、希土類ドープファイバー52に接続している。すなわち第2入射光は、第1入射光と共に、希土類ドープファイバー52に入射する。
【0020】
ここで、第2分極反転構造42から、光ファイバー80、ファイバーカプラ32及び希土類ドープファイバー52を介して第1分極反転構造22に至るまでの光路(以下、第1光路と記載)の長さをlとする。また、第1分極反転構造22から、光ファイバー60、ファイバーカプラ30、及び光ファイバー70を介して第2分極反転構造42に至るまでの光路(以下、第2光路と記載)の長さをlとする。lとlは、以下の式(1)に示す関係を満たしている。
【0021】

ただし、nωは、第1入射光の波長における第1光路の屈折率である。nは、第1分極反転構造22が生成した高調波の波長における第2光路の屈折率である。λωは、第1入射光の波長である。λは、高調波の波長である。またmは整数である。
【0022】
上記した(1)式を満たすことにより、第1分極反転構造22に入射するタイミングにおいて、第1入射光の位相と第2入射光の位相が同期する。なお図1に示す例では、第1入射光と第2入射光は、ファイバーカプラ32で合波されるタイミングでも位相が同期している。
【0023】
なお、各光ファイバーと波長変換素子20の結合は、物理的に接合されていても良いし、レンズを介して光学的に結合されていても良い。
【0024】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。第1分極反転構造22から出力される高調波は、第1入射光に付随するASE(Amplified Spontaneous Emission)光が取り除かれているため、線幅が狭い。このため、この高調波から生成された第2入射光は、第1入射光と比較して線幅が狭くなる。従って、第1分極反転構造22に入射する入射光は、半値幅が狭くなる。従って、光源装置の出射光も半値幅(線幅)が狭くなる。
【0025】
また、第2入射光は、第1入射光と共に希土類ドープファイバー52に入射する。従って、波長変換素子20に入射するレーザ光そのものの半値幅が狭くなる。従って、上記した効果がさらに顕著になる。
【0026】
さらに、第1入射光と第2入射光の位相がずれた場合、光源装置の出射光の線幅は広くなってしまう。これに対して本実施形態では、第1入射光と第2入射光は、ファイバーカプラ32で合波されるタイミングで位相が同期している。従って、光源装置の出射光の線幅はさらに狭くなる。
【0027】
また光源装置の構成が簡素であるため、光源装置の製造コストも低い。例えば図1に示す光源装置は、複雑な制御系を必要としない。また、FBG54は光ファイバー56に設けられている。そして、高価な希土類ドープファイバー52にFBGを設ける必要がない。このため、希土類ドープファイバー52にFBGを設ける場合と比較して、FBG54の製造ミスが生じても、製造コストの上昇を低く抑えられる。
【0028】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態に係る光源装置の構成を示す図である。本実施形態に係る光源装置は、以下の点を除いて、第1の実施形態に係る光源装置と同様の構成である。
【0029】
まず、波長変換素子20の強誘電体結晶は、第1分極反転構造22に加えて第2分極反転構造42を有している。また、この強誘電体結晶は、分岐導波路41(分岐部)も有している。分岐導波路41は、入射側が第1分極反転構造22に接続しており、出力側が光ファイバー60及び第2分極反転構造42に接続している。分岐導波路41は、第1分極反転構造22から出射された高調波を、光源装置の出射光と、フィードバック光に分岐する。このフィードバック光は、第2分極反転構造42によって第2入射光に変換される。
【0030】
また第2分極反転構造42から出射された第2入射光は、アイソレータ72及び光ファイバー80を介して、ファイバーカプラ32に入射する。
【0031】
本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第1分極反転構造22、第2分極反転構造42、及び分岐部を一つの強誘電体結晶中に設けたため、光源装置を小型化することができる。
【0032】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。例えば第1及び第2の実施形態において、第1分極反転構造22及び第2分極反転構造42の代わりに、他の原理による波長変換素子を用いても良い。
【符号の説明】
【0033】
10 光源
20 波長変換素子
22 第1分極反転構造
30 ファイバーカプラ
32 ファイバーカプラ
40 波長変換素子
41 分岐導波路
42 第2分極反転構造
50 光ファイバー
52 希土類ドープファイバー
54 FBG
56 光ファイバー
60 光ファイバー
70 光ファイバー
72 アイソレータ
80 光ファイバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源装置であって、
第1入射光を出射する光源と、
前記第1入射光が入射され、前記第1入射光を波長変換して高調波を出射する第1波長変換部と、
前記第1波長変換部から出力された前記高調波を、前記光源装置からの出射光と、フィードバック光とに分岐する分岐部と、
前記フィードバック光が入射され、前記フィードバック光を波長変換して、前記第1入射光と同一波長を有する第2入射光を出射する第2波長変換部と、
を備え、
前記第2入射光は、前記第1波長変換部に入射される光源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光源装置において、
前記第2波長変換部から出射した前記第2入射光が前記第1波長変換部に入射するまでに通る第1光路の長さをlとして、
前記第1波長変換部から出射した前記高調波が前記第2波長変換部に入射するまでに通る第2光路の長さをlとした場合、
以下の(1)式を満たす光源装置。

ただし、nω:前記第1入射光の波長における前記第1光路の屈折率、n:前記高調波の波長における前記第2光路の屈折率、λω:前記第1入射光の波長、λ:前記高調波の波長、m:整数。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光源装置において、
前記光源と前記第1波長変換部の間に設けられており、レーザ発振のためのゲイン媒体を備え、
前記第2入射光は、前記第1入射光と共に前記ゲイン媒体に入射する光源装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光源装置において、
前記ゲイン媒体は偏波保持光ファイバーであり、
前記偏波保持光ファイバーは、ファイバーブラッググレーティングを有する光源装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の光源装置において、
前記分岐部はファイバーカプラである光源装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の光源装置において、
前記第1波長変換部、前記分岐部、及び前記第2波長変換部は、同一の強誘電体結晶に形成されており、
前記第1波長変換部及び前記第2波長変換部は、いずれも分極反転構造を有しており、
前記分岐部は、前記強誘電体結晶に形成された分岐導波路である光源装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の光源装置において、
前記高調波は第2高調波である光源装置。
【請求項8】
第1入射光を第1波長変換部に入射し、前記第1波長変換部から前記第1入射光の高調波を出射させ、
前記高調波を、出射光及びフィードバック光に分岐し、
前記フィードバック光を波長変換して、前記第1入射光と同一波長を有する第2入射光を生成し、前記第2入射光を前記第1入射光とともに前記第1波長変換部に入射する、波長変換方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−104889(P2013−104889A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246396(P2011−246396)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】