説明

光硬化性樹脂組成物

【課題】本発明は、高さの異なる異種部材の一括形成に用いた際、異種部材をそれぞれ所望の高さに形成することが可能な光硬化性樹脂組成物を提供することを主目的としている。
【解決手段】上記目的を達成するために、本発明は、高さの異なる2種以上の異種部材を一括形成する際に用いられる光硬化性樹脂組成物であって、少なくともバインダー樹脂と、多官能モノマーと、光重合開始剤と、チオール基を含む連鎖移動剤とを含有することを特徴とする光硬化性樹脂組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶表示装置に適用されるカラーフィルタにおけるオーバーコート層および柱状スペーサ等の高さの異なる異種部材の一括形成に好適に用いられる光硬化性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、カラーフィルタと液晶駆動側基板とを対向させ、両者の間に液晶化合物を封入して薄い液晶層を形成し、液晶駆動側基板により液晶層内の液晶配列を電気的に制御してカラーフィルタの透過光または反射光の量を選択的に変化させることによって表示を行う。
【0003】
従来、液晶表示装置等におけるカラーフィルタの製造には、基板上に形成された感光性樹脂層にパターン露光を行い、露光後に感光性樹脂層を現像することによって、目的とするパターンを形成するフォトリソグラフィー法が用いられている。
【0004】
また、カラーフィルタをフォトリソグラフィー法により製造するに際して、工程数を減じるために、露光光に対して階調を有するフォトマスク(多階調マスク)を用いることが開示されている(例えば特許文献1参照)。一般に、多階調マスクは、露光光を実質的に遮光する遮光膜と、露光光を所望の透過率で透過する半透過膜とを用い、光を透過する透過領域と、光を透過しない遮光領域と、透過する光の量が調整された半透過領域とを有することにより、階調を出すマスクである。この多階調マスクでは、透過率の異なる領域によって透過光の量を制御することにより、現像後の感光性樹脂層の膜厚を多段階に制御することができる。このため、多階調マスクを用いた露光により、例えばカラーフィルタにおける柱状スペーサおよびオーバーコート層など、形状や高さ(膜厚)等が異なる2種類のパターンを一括形成することが可能となる。
【0005】
上述したような多階調マスクを用い、高さ(膜厚)の異なるパターンを一括形成する際に用いられる光硬化性樹脂組成物としては、バインダー樹脂に、多官能モノマーと光重合開始剤とを配合した組成物が知られている。一般に、高さの異なるパターン間において所望の段差を得るためには、用いる光硬化性樹脂組成物の感度が重要とされる。したがって、上述したような光硬化性樹脂組成物においては、光重合開始剤の種類を適宜選択することにより、感度調節が行われる。
【0006】
しかしながら、高感度の光重合開始剤を用いると、硬化反応が敏感となるため、半透過領域を介して露光された部位の残膜率が高くなりすぎてしまい、所望の段差を有するパターンの形成が困難となるといった問題があった。また逆に、低感度の光重合開始剤を用いると、半透過領域から露光された部位は硬化不足となり、現像後の残膜率が低すぎてしまい、場合によっては現像後に膜が残存しなくなるといった問題があった。
このように光重合開始剤の種類の選択により、高さ(膜厚)の異なるパターンの一括形成に適した光硬化性樹脂組成物とすることは困難であった。
【0007】
【特許文献1】特開2005−84366公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、高さの異なる異種部材の一括形成に用いた際、異種部材をそれぞれ所望の高さに形成することが可能な光硬化性樹脂組成物の提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、高さの異なる異種部材を一括形成する際に用いられる光硬化性樹脂組成物であって、少なくともバインダー樹脂と、多官能モノマーと、光重合開始剤と、チオール基を含む連鎖移動剤とを含有することを特徴とする光硬化性樹脂組成物を提供する。
【0010】
本発明においては、チオール基を含む連鎖移動剤を含有させることにより、低露光量に対する感度が向上した光硬化性樹脂組成物とすることができる。このため、本発明の光硬化性樹脂組成物を用いて感光性樹脂層を形成し、この感光性樹脂層を多階調マスクを介して露光し、現像して、高さの異なる異種部材を形成する場合、従来、多階調マスクの半透過領域から露光された部位(以下、低露光領域とする場合がある。)が硬化不足となるといった問題を解消することが可能となる。したがって、高さの異なる異種部材を一括形成する際、それぞれの異種部材を所望の高さに容易に形成することが可能となる。
【0011】
また、本発明の光硬化性樹脂組成物は、カラーフィルタにおけるオーバーコート層および柱状スペーサを一括形成するために用いられることが好ましい。所望の膜厚を有するオーバーコート層および柱状スペーサを、多階調マスクを用いて一括形成することは従来困難であったが、本発明の光硬化性樹脂組成物を用いることにより、オーバーコート層および柱状スペーサの一括形成を容易に達成することが可能となるからである。
【0012】
また本発明は、基板上に上記記載の光硬化性樹脂組成物を塗布して感光性樹脂層を形成する感光性樹脂層形成工程と、透明基板、遮光膜、およびI線透過率が5%〜50%の範囲内である半透過膜が順不同に積層され、上記透明基板上に上記遮光膜が設けられた遮光領域、上記透明基板上に上記半透過膜のみが設けられた半透過領域、および上記透明基板のみからなる透過領域を有する多階調マスクを用いて上記感光性樹脂層を露光し、現像して、上記光硬化性樹脂組成物を硬化させてなるオーバーコート層および柱状スペーサを同時に形成するオーバーコート層・柱状スペーサ形成工程とを有することを特徴とするカラーフィルタの製造方法を提供する。
【0013】
本発明によれば、上記記載の光硬化性樹脂組成物を用いることにより、オーバーコート層および柱状スペーサのような高さの異なる部材の同時形成を容易なものとすることができる。
【0014】
上記発明においては、上記オーバーコート層の膜厚が、0.1μm〜10μmの範囲内であり、上記柱状スペーサの膜厚が0.1μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。上記範囲内のオーバーコート層および柱状スペーサの膜厚は汎用されているものであるが、従来においては、このようなオーバーコート層および柱状スペーサを一括形成することは困難であったのに対し、本発明によれば、上述の光硬化性樹脂組成物を用いることにより、上記膜厚を有するオーバーコート層および柱状スペーサの一括形成を容易に行うことが可能となる。
【0015】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、横電界方式の液晶表示装置に使用されるカラーフィルタの製造に用いられることが好ましい。横電界方式の液晶表示装置に使用されるカラーフィルタは、表面の平滑性が求められることから、オーバーコート層が必須となる構造であるため、本発明のカラーフィルタの製造方法を好適に用いることができるからである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、高さの異なる異種部材をそれぞれ所望の膜厚で一括形成することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の光硬化性樹脂組成物、およびそれを用いたカラーフィルタの製造方法について詳細に説明する。
【0018】
A.光硬化性樹脂組成物
まず、本発明の光硬化性樹脂組成物について説明する。本発明の光硬化性樹脂組成物は、高さの異なる異種部材を一括形成する際に用いられる光硬化性樹脂組成物であって、少なくともバインダー樹脂と、多官能モノマーと、光重合開始剤と、チオール基を含む連鎖移動剤とを含有することを特徴とするものである。
【0019】
一般に、高さの異なる異種部材を例えば多階調マスクを用いて一括形成する際、形成する異種部材の段差に応じて、用いる光硬化性樹脂組成物の感度の調節が必要となる。しかしながら、上述したように、感度の高い光重合開始剤を用いた場合は、多階調マスクの半透過領域から照射された部位においては、現像後の残膜率が高すぎてしまい、逆に感度の低い光重合開始剤を用いた場合は、半透過領域から照射された部位は、現像後の残膜率が低すぎてしまい、いずれの場合においても、異種部材の段差形成に適した感度を有する光硬化性樹脂組成物を、光重合開始剤の選択のみで得ることは困難であった。
【0020】
本発明は、上述したような感度が低めの光重合開始剤を用いた場合の不具合を解消することにより、高さの異なる異種部材の一括形成を容易としたものである。
すなわち、本発明によれば、チオール基を含む連鎖移動剤を含有させることから、光硬化性樹脂組成物の低露光量に対する感度を向上させることができる。これは、チオール基を含む連鎖移動剤は、光重合開始剤と組み合わせて用いることによりその機能が発揮されるものであるが、特に低い露光量が照射された場合に、連鎖移動剤としての機能が選択的に強く発揮されるため、光重合開始剤によって発生した少量のラジカルをより有効に利用することができるからである。したがって、本発明の光硬化性樹脂組成物を用いて感光性樹脂層を形成し、この感光性樹脂層を多階調マスクを介して露光し、現像して、高さの異なる異種部材を形成する場合、従来、多階調マスクを用いた露光において低露光領域が硬化不足となるといった問題を解消することが可能となり、低露光領域における残膜率を高くすることが可能となるため、それぞれの異種部材を所望の高さに容易に形成することができる。
【0021】
図1は、本発明の光硬化性樹脂組成物を用いて、カラーフィルタにおけるオーバーコート層および柱状スペーサを形成する例である。まず、図1(a)に示すように、基板2上に遮光部3と、赤色パターン4R、緑色パターン4Gおよび青色パターン4Bから構成される着色層4とを形成し、この着色層4上に本発明の光硬化性樹脂組成物を塗布し、感光性樹脂層11を形成する。次いで、図1(b)に示すように、感光性樹脂層11を多階調マスク21を介して露光光Lにより露光する。
【0022】
この多階調マスク21は、透明基板22上に遮光膜23および半透過膜24が形成されたものであり、透明基板22上に遮光膜23が設けられた遮光領域31と、透明基板22上に半透過膜24のみが設けられた半透過領域32と、透明基板22のみを有する透過領域33とを有している。多階調マスク21では、遮光領域31、半透過領域32および透過領域33でそれぞれ透過率が異なるので、各領域の透過率に応じて、感光性樹脂層の光硬化反応の程度が異なるものとなり、露光後に現像することにより、高さ(膜厚)の異なるパターン(オーバーコート層5および柱状スペーサ6)が一括形成される。
【0023】
また、上記多階調マスクとしては、図2に示すように、透明基板22上に半透過膜24、遮光膜23がこの順で積層された遮光領域31´を有する多階調マスク21´を用いることもできる。
【0024】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、上述したように、低露光量に対する感度が向上したものであるため、得られる複数のパターンのうち、低露光量の照射により形成されるパターン(図1に示す例においては、オーバーコート層5)が硬化不足となることがなく、所望の膜厚とすることができるのである。したがって、それぞれ所望の高さ(膜厚)を有するパターンを一括形成することが可能となる。
以下、光硬化性樹脂組成物の各構成成分について説明する。
【0025】
1.連鎖移動剤
まず、本発明の光硬化性樹脂組成物に含有される連鎖移動剤について説明する。本発明に用いられる連鎖移動剤は、チオール基を含む化合物である。このようなチオール基を含む化合物としては、例えば多官能チオール化合物を用いることができる。多官能チオール化合物は、分子内にメルカプト基(−SH)を少なくとも2つ、好ましくは3つ以上、さらに好ましくは4つ以上有する化合物である。メルカプト基が多いほど、低露光量に対する感度が向上するため、パターン形成の際、現像後の残膜率を制御しやすいからである。
【0026】
多官能チオール化合物として具体的には、エチレングリコールビスチオプロピオネート(EGTP)、ブタンジオールビスチオプロピオネート(BDTP)、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート(TMTP)、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート(PETP)、下記式(1)で表されるTHEIC−BMPA
【0027】
【化1】

【0028】
等のメルカプトプロピオン酸誘導体;エチレングリコールビスチオグリコレート(EGTG)、ブタンジオールビスチオグリコレート(BDTG)、ヘキサンジオールビスチオグリコレート(HDTG)、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート(TMTG)、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート(PETG)等のチオグリコール酸誘導体;1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,6−ヘキサメチレンジチオール、2,2'−(エチレンジチオ)ジエタンチオール、meso−2,3−ジメルカプトコハク酸、p−キシレンジチオール、m−キシレンジチオール等のチオール類;ジ(メルカプトエチル)エーテル等のメルカプトエーテル類を例示することができる。
【0029】
上記の中でも、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート(PETP)、上記式(1)で表されるTHEIC−BMPA、および、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート(PETG)が好ましく、特にペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート(PETP)が好ましい。
【0030】
本発明の光硬化性樹脂組成物におけるチオール基を含む連鎖移動剤の含有量としては、光硬化性樹脂組成物中に固形分比で、0.1質量%〜15質量%の範囲内であることが好ましく、さらには0.1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。チオール基を含む連鎖移動剤の含有量が多すぎると、保存安定性が悪くなったり、臭気が強くなったりするからである。
なお、チオール基を含む連鎖移動剤と後述する光重合開始剤との質量比は、形成する異種部材の膜厚に応じて適宜選択される。
【0031】
また、本発明においては、本発明の効果を損なわない程度に、チオール基を含む化合物以外の連鎖移動剤を含有していてもよい。このような連鎖移動剤としては、一般にカラーフィルタの部材を形成する際に使用される連鎖移動剤を挙げることができる。
【0032】
2.光重合開始剤
次に、本発明の光硬化性樹脂組成物に含有される光重合開始剤について説明する。
本発明に用いられる光重合開始剤としては、例えば紫外線のエネルギーによりフリーラジカルを発生する化合物であって、ベンゾイン、ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン誘導体またはそれらのエステルなどの誘導体;キサントンおよびチオキサントン誘導体;クロロスルフォニル、クロロメチル多核芳香族化合物、クロロメチル複素環式化合物、クロロメチルベンゾフェノン類などの含ハロゲン化合物;トリアジン類;フルオレノン類;ハロアルカン類;光還元性色素と還元剤とのレドックスカップル類;有機硫黄化合物;過酸化物などが挙げられる。中でも、光重合開始剤としては、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア2959、ダロキュアー1173(いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、アデカ1717(旭電化工業株式会社製)などのケトン系およびビイミダゾール系化合物等が好ましく、特にイルガキュア184、イルガキュア2959が好ましい。
【0033】
また、光重合開始剤としては、3級アミン構造を有する光重合開始剤を使用することもできる。3級アミン構造を有する光重合開始剤は、分子内に酸素クエンチャーである3級アミン構造を有するため、開始剤から発生したラジカルが酸素により失活し難く、光硬化性樹脂組成物の感度を向上させるために適切な光重合開始剤である。
【0034】
この3級アミン構造を有する光重合開始剤としては、例えば、特開2004−287227公報に記載のものを用いることができる。また、3級アミン構造を有する光重合開始剤の市販品としては、例えば、イルガキュア907、イルガキュア369(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、ハイキュアABP(川口薬品製)、ビイミダゾール(黒金化成製)などが挙げられ、特にイルガキュア907が好ましい。
【0035】
これらの光重合開始剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上を併用する場合には、吸収分光特性を阻害しないようにするのが好ましい。
【0036】
本発明においては、上述したように、イルガキュア184、イルガキュア2959、およびイルガキュア907が好ましいが、後述するように、これらの中でも、イルガキュア184およびイルガキュア2959が好ましい。本発明の光硬化性樹脂組成物におけるチオール基を含む連鎖移動剤の添加量を少なくするほど、低露光量照射によって形成される部材の高さ(膜厚)を低く形成することが可能なことから、高さの低い部材の高さ調整がより容易となるからである。また、イルガキュア184およびイルガキュア2959の中では、チオール基を含む連鎖移動剤の添加量の誤差によって形成される膜厚の変動が少なく、高さ調整の容易さが特に優れるため、イルガキュア184が好ましい。
【0037】
また、感度の向上を期待したい場合には、増感剤を添加してもよい。増感剤としては、スチリル系化合物またはクマリン系化合物が好ましい。スチリル系化合物またはクマリン系化合物としては、例えば、特開2004−287227公報に記載のものを用いることができる。
【0038】
光重合開始剤の含有量としては、光硬化性樹脂組成物中に固形分比で、1質量%〜20質量%の範囲内、中でも1質量%〜15質量%の範囲内であることが好ましい。光重合開始剤の含有量が上記範囲であることにより、それぞれの露光部位を均一かつ十分に硬化させることができるからである。
【0039】
本発明の光硬化性樹脂組成物を調製するにあたって、光重合開始剤は、最初から添加しておいてもよいが、光硬化性樹脂組成物を比較的長期間保存する場合には、使用直前に光硬化性樹脂組成物中に分散または溶解することが好ましい。
【0040】
3.バインダー樹脂
次に、本発明の光硬化性樹脂組成物に含有されるバインダー樹脂について説明する。
本発明に用いられるバインダー樹脂としては、特に限定されるものではなく、一般にカラーフィルタの部材の形成に用いられるバインダー樹脂を用いることができる。具体的には、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ゼラチンなどの感光性または非感光性の樹脂を挙げることができ、これらは一種または二種以上混合して用いてもよい。
【0041】
上述した中でも、特に好ましいバインダー樹脂としては、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂およびメタクリル系樹脂であり、中でもこれらの樹脂に酸性官能基が導入されたものであることが好ましい。酸性官能基を含有することにより、アルカリ現像性が向上するからである。このような酸性官能基としては、アルカリ現像が可能なものであればよく、例えばカルボキシル基、アルコール性水酸基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。アルカリ現像性および光硬化性樹脂組成物の取り扱い性の点から、エポキシ系樹脂の場合、カルボキシル基、アルコール性水酸基が好ましく、アクリル系樹脂およびメタクリル系樹脂の場合、カルボキシル基が好ましい。
【0042】
また、アクリル系樹脂およびメタクリル系樹脂を用いる場合、酸性官能基に加えてさらに光重合性官能基を有することが好ましい。光重合性官能基を含有することにより形成される膜強度が向上するからである。このような光重合性官能基としては、光ラジカル重合、光ラジカル二量体等の光ラジカル反応により硬化する官能基が好ましく、エチレン性不飽和結合を有する(メタ)アクリル基等のラジカル重合性官能基が特に好ましい。
【0043】
本発明においては、アクリル系樹脂およびメタクリル系樹脂を用いる場合、さらに芳香族炭素環を有する構成単位を含有していてもよい。芳香族炭素環は光硬化性樹脂組成物に塗膜性を付与する成分である。
【0044】
また、アクリル系樹脂およびメタクリル系樹脂は、さらにエステル基を有する構成単位を含有していてもよい。エステル基を有する構成単位は、光硬化性樹脂組成物のアルカリ可溶性を抑制する成分である。
【0045】
本発明の光硬化性樹脂組成物中におけるバインダー樹脂の含有量としては、光硬化性樹脂組成物の固形分中、通常5質量%〜90質量%の範囲内、好ましくは10質量%〜70質量%の範囲内である。
【0046】
なお、バインダー樹脂として、酸性官能基を有するエポキシ樹脂を用いる場合、バインダー樹脂の含有量としては、通常5質量%〜40質量%の範囲内、好ましくは5質量%〜30質量%の範囲内である。
【0047】
また、バインダー樹脂として、酸性官能基および光重合性官能基を有するアクリル系樹脂およびメタクリル系樹脂を用いる場合、バインダー樹脂の含有量としては、光硬化性樹脂組成物の固形分中、通常5質量%〜90質量%の範囲内、好ましくは10質量%〜70質量%の範囲内である。
【0048】
4.多官能モノマー
次に、本発明の光硬化性樹脂組成物に含有される多官能モノマーについて説明する。本発明に用いられる多官能モノマーは、複数の重合性の官能基を有するものであり、上記バインダー樹脂と重合可能なものであれば特に限定されるものではない。
【0049】
本発明において、多官能モノマーは、光重合性官能基を一分子中に2つ以上、好ましくは3つ以上有していることが好ましい。架橋密度をさらに高めることができるからである。
【0050】
多官能モノマーの光重合性官能基としては、光硬化反応が開始または促進される官能基を利用することができる。この光重合性官能基として、具体的には、光ラジカル重合、光ラジカル二量化等の光ラジカル反応により硬化する官能基が好ましく、エチレン性不飽和結合を有する(メタ)アクリル基等の光ラジカル重合性官能基が特に好ましい。
【0051】
光重合性官能基としてエチレン性不飽和結合を一分子中に2つ以上有する多官能モノマーとしては、多官能アクリレート系のモノマーまたはオリゴマーが好ましく用いられる。この多官能アクリレート系のモノマーまたはオリゴマーとしては、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンテトラ(メタ)アクリレート、テトラトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどを例示することができる。これらは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
また、多官能モノマーは、2つ以上のエチレン性不飽和結合とアルコール性水酸基とを有していてもよい。アルコール性水酸基を有する多官能モノマーとしては、2−ヒドロキシ−1−(メタ)アクリロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロパン、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレートなどを例示することができる。
【0053】
これらの多官能モノマーには、反応希釈剤として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドンなどの単官能性モノマーを添加することができる。
【0054】
また、多官能モノマーの分子量は、通常、3,000未満である。
【0055】
また、本発明においては、上記のモノマー成分に酸性官能基を導入してもよい。これにより、アルカリ現像性が向上するからである。このような酸性官能基としては、アルカリ現像が可能なものであればよく、例えばカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。中でも、アルカリ現像性および光硬化性樹脂組成物の取り扱い性の点から、カルボキシル基が好ましい。
【0056】
多官能モノマーの含有量は、光硬化性樹脂組成物中の固形分に対して、20質量%以上であることが好ましく、さらには30質量%〜90質量%の範囲内であることが好ましい。多官能モノマーの含有量が少なすぎると十分に光硬化が進まず、露光部分が溶出する場合がある。また、多官能モノマーの含有量が多すぎると未露光部分でも現像できなくなる場合があり、光硬化性樹脂組成物の重合度によっては膜の非粘着性が失われるおそれがある。
また、本発明の光硬化性樹脂組成物が酸性官能基含有多官能モノマーと酸性官能基を含有しない多官能モノマーとを含有する場合、硬化性および製版性の調整のし易さから、酸性官能基含有多官能モノマーおよび多官能モノマーの和に対する酸性官能基含有多官能モノマーの質量比が0.1〜1の範囲内であることが好ましい。
【0057】
5.添加剤
本発明の光硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、上記の成分以外にも、界面活性剤、シランカップリング剤等の各種の添加剤を含有することができる。
【0058】
界面活性剤は、光硬化性樹脂組成物に対して塗工適性、乾燥後の膜平滑性を確保するために配合されるものである。界面活性剤としては、例えば、特開2002−341531公報に記載のものを用いることができる。
【0059】
また、シランカップリング剤は、塗工面との密着性を改善する目的で添加されるものである。シランカップリング剤としては、例えば、特開2002−341531公報に記載ものを用いることができる。
【0060】
さらに、本発明の光硬化性樹脂組成物を用いて着色層を形成する場合、光硬化性樹脂組成物には、通常、着色剤が配合される。着色剤としては、目的とする色(例えば赤色R、緑色G、青色B)に応じて、有機着色剤および無機着色剤の中から任意のものを選んで使用することができる。このような着色剤としては、一般的にカラーフィルタにおける着色層に用いられるものと同様のものを使用することができる。
【0061】
6.溶剤
本発明の光硬化性樹脂組成物には、塗料化および塗工適性を考慮して、通常、溶剤が含有される。溶剤は、チオール基を含む連鎖移動剤、光重合開始剤、バインダー樹脂、多官能モノマー等が溶解もしくは分散するものであれば、特に限定されるものではない。溶剤としては、例えば、特開2004−287227公報に記載のものを用いることができる。
【0062】
本発明の光硬化性樹脂組成物の固形分濃度は、10質量%〜50質量%の範囲内であることが好ましい。
【0063】
7.光硬化性樹脂組成物の調製方法
本発明の光硬化性樹脂組成物を製造するには、チオール基を含む連鎖移動剤、光重合開始剤、バインダー樹脂、多官能モノマー、および、その他の成分を適切な溶剤に投入し、ペイントシェーカー、ビーズミル、サンドグラインドミル、ボールミル、アトライターミル、2本ロールミル、3本ロールミルなどの一般的な方法で溶解、分散させればよい。
【0064】
8.用途
本発明の光硬化性樹脂組成物は、多階調マスクを用いて、例えばカラー液晶表示装置、モノクロ液晶表示装置、および有機EL表示装置等の種々の表示装置における高さの異なる2種以上の異種部材を一括形成する場合に用いることができ、中でも、カラー液晶表示装置に用いられるカラーフィルタにおける高さの異なる2種以上の異種部材の一括形成に好適に用いられる。
なお、本発明において高さの異なる異種部材とは、基板からその部材表面までの高さが異なるパターンにより構成される部材のことをいい、機能は同一であっても異なっていてもよい。
【0065】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、具体的には、液晶表示装置用カラーフィルタにおけるオーバーコート層および柱状スペーサ、半透過型液晶表示装置用カラーフィルタにおける透過部用着色層および反射部用着色層、有機EL表示装置用カラーフィルタにおけるRGB用オーバーコート層およびW用オーバーコート層、液晶表示装置用カラーフィルタにおける柱状スペーサおよび配向制御用突起、半透過型液晶表示装置用カラーフィルタにおける柱状スペーサ、反射部用配向制御用突起および透過部用配向制御用突起、液晶表示装置用カラーフィルタにおける柱状スペーサ、配向制御用突起およびブラックマトリクス、半透過型液晶表示装置用カラーフィルタにおける柱状スペーサ、オーバーコート層およびギャップ調整層、液晶表示装置用カラーフィルタにおける柱状スペーサ、オーバーコート層およびW用オーバーコート層などを一括形成するために用いられることが好ましい。
特に、本発明の光硬化性樹脂組成物は、カラーフィルタにおけるオーバーコート層および柱状スペーサを形成するために用いられることが好ましい。
【0066】
9.オーバーコート層および柱状スペーサの形成
本発明の光硬化性樹脂組成物を用いて、カラーフィルタにおけるオーバーコート層および柱状スペーサを一括形成する場合、オーバーコート層の膜厚を0.1μm〜10μmの範囲内、好ましくは0.1μm〜5μmの範囲内に、また、柱状スペーサの膜厚を0.1μm〜10μmの範囲内、好ましくは0.1μm〜8μmの範囲内に形成することが可能である。このようなオーバーコート層および柱状スペーサの膜厚は、現在汎用されているものであり、従来では一括形成が困難な膜厚とされていたが、本発明の光硬化性樹脂組成物を用いることにより、これらの一括形成を実現可能となるのである。
【0067】
本発明において、オーバーコート層および柱状スペーサの膜厚を上述した範囲内に形成する場合、チオール基を含む連鎖移動剤および光重合開始剤の好ましい組み合わせは、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート(PETP)と、イルガキュア184(Irg184)、イルガキュア2959(Irg2959)、またはイルガキュア907(Irg907)との組み合わせである。
また、これらの光重合開始剤の中でも、イルガキュア184およびイルガキュア2959が好ましい。これは、図3(a)に示すように、PETPの組成比率が少なくなるに従って、オーバーコート層(OC)の膜厚も薄くなることから、PETPの組成比率と形成されるオーバーコート層の膜厚とはほぼ比例関係にあるといえるため、オーバーコート層の膜厚制御が容易となるからである。さらに、図3(b)に示すように、柱状スペーサ(CS)の膜厚を広範囲で形成することが可能であるからである。
また、本発明において、イルガキュア184およびイルガキュア2959の中では、イルガキュア184がより好ましい。これは、図3(a)に示すように、イルガキュア184の方が緩やかに上昇した直線を描いていることから、PETPの添加量の誤差による膜厚の変動が生じにくいため、オーバーコート層の膜厚制御の容易さが特に優れているといえるからである。また、図3(b)に示すように、柱状スペーサの膜厚との関係においても、イルガキュア184の方が緩やかな曲線を描いているため、PETPの添加量によって膜厚に大幅なずれが生じることが少なく、柱状スペーサの膜厚制御も容易となるからである。
【0068】
また、本発明においては、オーバーコート層および柱状スペーサの膜厚を上述した範囲内に形成する場合、PETPとイルガキュア184、イルガキュア2959、またはイルガキュア907との質量比としては、以下に示す質量比であることが好ましい。
例えば、光重合開始剤としてイルガキュア184を用いた場合、イルガキュア184を100重量部とした際、PETPを10重量部〜1000重量部の範囲内とすることが好ましく、特に10重量部〜500重量部の範囲内とすることが好ましい。
【0069】
また、例えば、光重合開始剤としてイルガキュア2959を用いた場合、イルガキュア2959を100重量部とした際、PETPを5重量部〜1000重量部の範囲内とすることが好ましく、特に5重量部〜500重量部の範囲内とすることが好ましい。
【0070】
さらに、例えば、光重合開始剤としてイルガキュア907を用いた場合、イルガキュア907を100重量部とした際、PETPを1重量部〜1000重量部の範囲内とすることが好ましく、特に1重量部〜500重量部の範囲内とすることが好ましい。
【0071】
B.カラーフィルタの製造方法
次に、本発明のカラーフィルタの製造方法について説明する。本発明のカラーフィルタの製造方法は、基板上に上記記載の光硬化性樹脂組成物を塗布して感光性樹脂層を形成する感光性樹脂層形成工程と、透明基板、遮光膜、およびI線透過率が5%〜50%の範囲内である半透過膜が順不同に積層され、上記透明基板上に上記遮光膜が設けられた遮光領域、上記透明基板上に上記半透過膜のみが設けられた半透過領域、および上記透明基板のみからなる透過領域を有する多階調マスクを用いて上記感光性樹脂層を露光し、現像して、光硬化性樹脂組成物を硬化させてなるオーバーコート層および柱状スペーサを同時に形成するオーバーコート層・柱状スペーサ形成工程とを有することを特徴とするものである。
【0072】
本発明のカラーフィルタの製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図1は、カラーフィルタにおけるオーバーコート層および柱状スペーサを形成する例である。
まず、図1(a)に示すように、基板2上に遮光部3と、赤色パターン4R、緑色パターン4Gおよび青色パターン4Bから構成される着色層4を形成し、この着色層4上に上述の光硬化性樹脂組成物を塗布し、感光性樹脂層11を形成する。次いで、図1(b)に示すように、感光性樹脂層11を多階調マスク21を介して露光光Lにより露光する。
【0073】
多階調マスク21は、透明基板22上に遮光膜23および半透過膜24が形成されたものであり、透明基板22上に遮光膜23が設けられた遮光領域31と、透明基板22上に半透過膜24のみが設けられた半透過領域32と、透明基板22のみを有する透過領域33とを有している。この多階調マスク21では、遮光領域11、半透過領域12および透過領域13で透過率が異なるので、各領域の透過率に応じて、感光性樹脂層の光硬化反応の程度が異なるものとなり、露光後に現像することによって、高さの異なるオーバーコート層5および柱状スペーサ6が一括形成される。
【0074】
また、上記多階調マスクとしては、図2に示すように、透明基板22上に半透過膜24、遮光膜23がこの順で積層された遮光領域31´を有する多階調マスク21´を用いることもできる。
【0075】
本発明に用いられる光硬化性樹脂組成物は、上記「A.光硬化性樹脂組成物」の項に記載したように、低露光量に対する感度が向上したものであるため、低露光量で照射されたオーバーコート層形成部位が硬化不足となることがない。したがって、本発明によれば、上述の光硬化性樹脂組成物を用いることにより、従来、一括形成することが困難とされていたオーバーコート層および柱状スペーサを、容易に一括形成することが可能となる。
以下、本発明のカラーフィルタの製造方法における各工程について説明する。
【0076】
1.感光性樹脂層形成工程
本発明における感光性樹脂層形成工程は、基板上に上述の光硬化性樹脂組成物を塗布して感光性樹脂層を形成する工程である。
なお、光硬化性樹脂組成物については、上記「A.光硬化性樹脂組成物」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
【0077】
本発明に用いられる基板としては、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジット材、あるいは透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材を用いることができる。この中で特にコーニング社製1737ガラスは、熱膨脹率の小さい素材であり、寸法安定性および高温加熱処理における特性に優れ、また、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスであるため、アクティブマトリックス方式による液晶表示装置用のカラーフィルタに適している。
【0078】
なお、上記基板の大きさとしては、特に限定されるものではなく、小型の液晶表示装置から大型の液晶表示装置に対応したあらゆる大きさの基板であっても使用することが可能である。本発明においては、中でも大型の液晶表示装置に対応した基板が好適に用いられ、その大きさとしては、通常、縦900mm〜3000mm、横700mm〜2500mmの範囲内であり、中でも縦900mm〜2500mmの範囲内、横700mm〜2200mmの範囲内であることが好ましい。
【0079】
光硬化性樹脂組成物の塗布方法としては、例えばスピンコート法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法等を使用することができる。
【0080】
塗布後の感光性樹脂層の膜厚は、形成する柱状スペーサの高さに適合するように調整される。
【0081】
上記の光硬化性樹脂組成物の塗布後は、感光性樹脂層に対して加熱処理(プリベーク)を施してもよい。
【0082】
2.オーバーコート層・柱状スペーサ形成工程
本発明におけるオーバーコート層・柱状スペーサ形成工程は、透明基板、遮光膜、およびI線透過率が5%〜50%の範囲内である半透過膜が順不同に積層され、上記透明基板上に上記遮光膜が設けられた遮光領域、上記透明基板上に上記半透過膜のみが設けられた半透過領域、および上記透明基板のみからなる透過領域を有する多階調マスクを用いて上記感光性樹脂層を露光し、現像して、光硬化性樹脂組成物を硬化させてなるオーバーコート層および柱状スペーサを一括形成する工程である。
【0083】
本発明に用いられる多階調マスクは、透明基板、遮光膜、およびI線透過率が5%〜50%の範囲内である半透過膜が順不同に積層され、上記透明基板上に上記遮光膜が設けられた遮光領域、上記透明基板上に上記半透過膜のみが設けられた半透過領域、および上記透明基板のみからなる透過領域を有するものであれば特に限定されるものではなく、カラーフィルタにおける部材形成に一般的に用いられているものを使用することができる。このような多階調マスクとしては、例えば図1(b)および図2に示すような多階調マスク21および21´を用いることができる。
【0084】
上記多階調マスクにおける半透過膜のI線透過率は、5%〜50%の範囲内とされるものであるが、好ましくは5%〜40%の範囲内、より好ましくは5%〜35%の範囲内である。透過率が上記範囲未満では、半透過領域と遮光領域との透過率の差が出にくくなる場合があり、また透過率が上記範囲を超えると、半透過領域と透過領域との透過率の差が出にくくなる場合があるからである。
【0085】
なお、透過率の測定方法としては、多階調マスクに使用する透明基板の透過率をリファレンス(100%)として、半透過膜の透過率を測定する方法を採用することができる。測定装置としては、紫外・可視分光光度計(例えば日立U-4000等)、またはフォトダイオードアレイを検出器としている装置(例えば大塚電子MCPD等)を用いることができる。
【0086】
なお、本発明に用いられる多階調マスクのその他の点については、例えば特開2006−18001公報を参照することができる。
【0087】
また、露光方法としては、特に限定されるものではなく、例えば感光性樹脂層の表面から数十μm程度の間隙をあけて多階調マスクを配置し、露光するプロキシミティ露光を行うことができる。この露光により、照射部分で光硬化反応が生じる。
【0088】
上記の露光後は、現像が行われる。現像により、感光性樹脂層が部分的に除去される。具体的は、露光により硬化した部分が残存し、その他の部分が選択的に除去される。多階調マスクの透過領域から露光された部位では硬化反応が十分に進行するのに対し、半透過領域から露光された部位では硬化反応が不十分となるので、高さの異なるオーバーコート層および柱状スペーサを同時に形成することができる。現像は、一般的なアルカリ現像方法に従って行うことができる。
【0089】
また、露光および現像後、形成されたオーバーコート層および柱状スペーサに対して加熱処理(ポストベーク)を施してもよい。この加熱処理は、例えば温度100〜250℃、処理時間10〜60分程度で適宜設定することができる。
【0090】
本発明により形成されるオーバーコート層は、カラーフィルタの表面を平坦化し、着色層を保護するために設けられるものである。
本発明において、オーバーコート層の膜厚は、0.1μm〜10μmの範囲内に形成されることが好ましく、中でも0.1μm〜5μmの範囲内に形成されることが好ましい。
【0091】
また、本発明により形成される柱状スペーサは、本発明のカラーフィルタを液晶表示装置に用いた場合に、セルギャップを維持するために設けられるものである。柱状スペーサは、基板上の非表示領域に複数形成される。
本発明において、柱状スペーサの膜厚としては、0.1μm〜10μmの範囲内に形成されることが好ましく、中でも0.1μm〜8μmの範囲内に形成されることが好ましい。
【0092】
上記オーバーコート層および柱状スペーサにおける上記範囲内の膜厚は、汎用されているものであるが、このような範囲の膜厚を有するオーバーコート層および柱状スペーサを一括形成することは、従来においては困難であった。本発明においては、低露光量に対する感度が向上した光硬化性樹脂組成物を使用しているため、低露光量で照射される部位が硬化不足となることがなく、オーバーコート層を上記範囲内の膜厚に形成することができる。したがって、本発明の製造方法により、従来、一括形成することが困難とされていた上記範囲内の膜厚を有するオーバーコート層および柱状スペーサを、容易に一括形成することが可能となる。
【0093】
なお、柱状スペーサの幅および形状としては、基板上の非表示領域に選択的に形成することができ、所定のセルギャップを基板全体に渡って維持することが可能であれば特に限定されるものではない。柱状スペーサの幅としては、5μm〜30μm程度とされる。さらに、柱状スペーサの形状は柱状であればよく、例えば、円柱状、角柱状、截頭錐体形状等のいずれであってもよい。
【0094】
柱状スペーサの形成密度(密集度)は、液晶層の厚みムラ、開口率、柱状スペーサの形状、光硬化性樹脂組成物の組成等を考慮して適宜選択される。例えば、1ピクセルに1個の柱状スペーサを設ければ、必要十分なスペーサ機能を発現する。
【0095】
3.その他の工程
本発明においては、感光性樹脂層形成工程前またはオーバーコート層・柱状スペーサ形成工程後に、カラーフィルタにおける各種部材を形成する工程を必要に応じて行うことができる。例えば、基板上に遮光部を形成する遮光部形成工程や、基板上に着色層を形成する着色層形成工程、オーバーコート層および柱状スペーサを覆うように配向膜を形成する配向膜形成工程を行うことができる。
【0096】
なお、上記遮光部形成工程や着色層形成工程、配向膜形成工程は、一般的なカラーフィルタの製造方法に用いられる工程と同様とすることができるのでここでの説明は省略する。
【0097】
4.用途
本発明のカラーフィルタの製造方法は、オーバーコート層と柱状スペーサとを一括形成するものである。したがって、横電界方式の液晶表示装置に使用されるカラーフィルタの製造に好適に用いられる。横電界方式の液晶表示装置に使用されるカラーフィルタは、表面の平滑性が特に求められていることから、オーバーコート層を必須とする構成であるからである。
【0098】
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0099】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
【0100】
[製造例1] バインダー樹脂溶液Aの合成
重合槽内にベンジルメタクリレート(BzMA)を40重量部、スチレン(St)20重量部、アクリル酸(AA)を20重量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を20重量部、およびジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)を180重量部、仕込み、攪拌し溶解させた後、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)を4重量部、添加し、均一に溶解させた。その後、窒素気流下で、85℃で2時間攪拌し、さらに100℃で1時間反応させた。さらに得られた溶液にグリシジルメタクリレート(GMA)を10重量部、2-メタクロイルエチルイソシアネート(MOI)を10重量部、トリエチルアミンを0.5重量部、および、ハイドロキノンを0.1重量部、添加し、100℃で5時間攪拌し、目的とするバインダー樹脂溶液A(固形分25%、重量平均分子量35000)を得た。
【0101】
[製造例2] バインダー樹脂溶液Bの合成
重合槽内にジエチレングリコールメチルエチルエーテル(DMDG)を180重量部、仕込み、攪拌した後、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)を4重量部、添加し、均一に溶解させた。引き続き、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を20重量部、グリシジルメタクリレート(GMA)を10重量部、および、メタクリル酸メチル(MMA)を70重量部を仕込み、窒素置換した後に緩やかに攪拌を始めた。溶液温度を85℃に上昇させ、この温度を5時間保持しバインダー樹脂溶液B(固形分40%、重量平均分子量8000)を得た。
【0102】
[実施例]
光硬化性樹脂組成物を、下記表1に示す割合で、各成分を混合して調製した。
このとき、多官能モノマー(酸性官能基含有多官能モノマー)としては、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートの二塩基酸無水物とジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとからなり、それらを質量比3:7の割合で含む混合物(TO1382 東亞合成(株)製)を用いた。
光重合開始剤Aとしては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(イルガギュア184 チバスペシャリティケミカルズ社製)、光重合開始剤Bとしては、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(イルガギュア907 チバスペシャリティケミカルズ社製)、光重合開始剤Cとしては、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(イルガギュア2959 チバスペシャリティケミカルズ社製)、光重合開始剤Dとしては、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1(イルガギュア369 チバスペシャリティケミカルズ社製)を用いた。
チオール基を含む連鎖移動剤Aとしては、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート(PETP 淀化学(株)製)、チオール基を含む連鎖移動剤Bとしては、エチレングリコールビスチオグリコレート(EGTG 淀化学(株)製)を用いた。
シランカップリング剤としては、3−グリドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-403 信越化学(株)製)を用いた。
溶剤としては、メチルエチルアセテートを用いた。
【0103】
【表1】

【0104】
[評価]
(オーバーコート層および柱状スペーサの形成)
10cm画のガラス基板上に、実施例1〜4および比較例1〜3で得られた光硬化性樹脂組成物を、スピンコーター(MIKASA製、形式1H-DX2)により塗布し、乾燥し、乾燥膜厚6μmの塗膜を形成した。この塗膜をホットプレート上で100℃、3分間プリベークした。所定の形状、大きさ、および間隔を有する露光パターンを形成できるように設計された多階調マスクを配置して、プロキシミティアライナにより紫外線を75mJ/cmの強度(2kW超高圧水銀ランプUSH-2004TO、405nm照度換算)で照射した。次いで、塗膜が形成された基板上に、0.05重量%KOH水溶液を溶剤型感材用現像装置(芝浦工業(株)製、VFJ0004)にて60秒間散布して、現像した。現像後、塗膜をクリーンオーブン(忍足研究所(株)製、SCOV-250 Hy-So)により、230℃で30分間ポストベークを行った。このようにして、オーバーコート層および柱状スペーサを形成した。
【0105】
(膜厚測定)
上記オーバーコート層および柱状スペーサについて、触針式膜厚計P−15(ケーエルエー・テンコール(株)製)を用いて膜厚測定を行った。結果を下記表2に示す。
【0106】
【表2】

【0107】
表2の結果から、光重合開始剤を含有しない比較例1、3およびチオール基を含む連鎖移動剤を含有しない比較例2では、オーバーコート層に剥れが生じ、また柱状スペーサは形成不可能であった。
一方、チオール基を含む連鎖移動剤を含有する実施例1〜4では、オーバーコート層および柱状スペーサを一括形成することができた。中でも光重合開始剤としてイルガキュア184、907、2959を用いた実施例1〜3は、オーバーコート層と柱状スペーサとの膜厚差がつけやすい点で優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明におけるカラーフィルタの製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】本発明におけるカラーフィルタの製造方法の他の例を示す工程図である。
【図3】本発明の光硬化性樹脂組成物中のPETP組成比に対するオーバーコート層または柱状スペーサの膜厚変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0109】
1 … カラーフィルタ
2 … 基板
3 … 遮光部
4 … 着色層
4R … 赤色パターン
4G … 緑色パターン
4B … 青色パターン
5 … オーバーコート層
6 … 柱状スペーサ
11 … 感光性樹脂層
21 … 多階調マスク
22 … 透明基板
23 … 遮光膜
24 … 半透過膜
31 … 遮光領域
32 … 半透過領域
33 … 透過領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さの異なる2種以上の異種部材を一括形成する際に用いられる光硬化性樹脂組成物であって、
少なくともバインダー樹脂と、多官能モノマーと、光重合開始剤と、チオール基を含む連鎖移動剤とを含有することを特徴とする光硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
カラーフィルタにおけるオーバーコート層および柱状スペーサを一括形成するために用いられることを特徴とする請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
基板上に請求項1または請求項2に記載の光硬化性樹脂組成物を塗布して感光性樹脂層を形成する感光性樹脂層形成工程と、透明基板、遮光膜、およびI線透過率が5%〜50%の範囲内である半透過膜が順不同に積層され、前記透明基板上に前記遮光膜が設けられた遮光領域、前記透明基板上に前記半透過膜のみが設けられた半透過領域、および前記透明基板のみからなる透過領域を有する多階調マスクを用いて前記感光性樹脂層を露光し、現像して、前記光硬化性樹脂組成物を硬化させてなるオーバーコート層および柱状スペーサを同時に形成するオーバーコート層・柱状スペーサ形成工程とを有することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項4】
前記オーバーコート層の膜厚が、0.1μm〜10μmの範囲内であり、前記柱状スペーサの膜厚が0.1μm〜10μmの範囲内であることを特徴とする請求項3に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項5】
横電界方式の液晶表示装置に使用されるカラーフィルタの製造に用いることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のカラーフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−75011(P2008−75011A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257267(P2006−257267)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】