説明

光硬化性組成物およびその硬化物

【課題】末端にエポキシ基を有し、またシロキサン結合を含有しないビニル系重合体およびカチオン性光開始剤からなる光硬化性組成物および硬化物を提供する。
【解決手段】分子末端が下記一般式(1)で表されるビニル系重合体(A)およびカチオン系光開始剤(B)を含むことを特徴とする光硬化性組成物。


(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜10の1価の炭化水素基、又は、2つの炭化水素基がエーテル結合もしくはエステル結合で結合されてなる炭素数1〜10の1価の基を表すが、R、R、Rが相互に結合し、環構造を形成していても構わない。Rは直接結合または炭素数1〜10の2価の炭化水素基、又は、2つの炭化水素基がエーテル結合もしくはエステル結合で結合されてなる炭素数1〜10の1価の基を表し、R、R、RとRが相互に結合し、環構造を形成していても構わない。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ基を末端に有するビニル系重合体およびカチオン系光開始剤を含有する光硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
架橋したエポキシ基は、耐熱性と機械的物性のバランスや、電気特性、接着特性、耐食性などに優れること、また成形の容易なことから、塗料、電気・電子、土木・建築、接着剤、複合材料などの幅広い分野に用いられている。末端にエポキシ基を有するビニル系重合体の製造方法として、例えば、(特許文献1)には、ポリイソブチレンの末端にフェノールをフリーデルクラフツ反応させ、更に、フェノール基の反応性を利用してエポキシ基を有する化合物を反応させ、末端にエポキシ基を有するポリイソブチレンを合成する方法が開示されている。しかしながら、フリーデルクラフツ反応に一般的に用いられる触媒は強力なルイス酸であるため、腐食性が高く、製造設備、維持費が非常に高価となる。またエポキシ基を有する化合物として、人体に対する毒性があり、さらに発がん性の疑われるエピクロルヒドリンに代表される低分子量エポキシ化合物を用いるために、製造工程および製造物の安全性に課題がある。
【0003】
また、(特許文献2)では、ビニル系重合体の末端を水酸基、アミノ基、カルボキシル基等に変換した後、エピクロルヒドリン等を反応させる方法が開示されているが、上記と同様にエピクロルヒドリンの毒性の問題がある。
【0004】
この他にエポキシ基を末端に有する有機重合体として、(特許文献3)ではヒドロシリル基とエポキシ基の両方を有する化合物を、末端に不飽和基を有する有機重合体とヒドロシリル化反応させることによりエポキシ基を導入し、(特許文献4)ではカチオン系光開始剤を用いて硬化物を得ている。しかしヒドロシリル基とエポキシ基の両方を有する化合物を合成するため、およびヒドロシリル化反応には、一般的に白金などの非常に高価な遷移金属触媒を使用するため、経済的に不利である。またシロキサン結合を有するために、低分子量環状シロキサン化合物が含まれるために、電子部品周りの接着およびシーリング用途における接点障害に課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】USP4,429,099
【特許文献2】特開2000−154212公報
【特許文献3】特開2004−143200公報
【特許文献4】WO2005/028537公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、末端にエポキシ基を有し、またシロキサン結合を含有しないビニル系重合体およびカチオン性光開始剤からなる光硬化性組成物および硬化物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記の課題を解決するため鋭意検討した結果、以下のことを見出して本発明を完成させた。
【0008】
すなわち本発明は、
(I)
分子末端が下記一般式(1)で表されるビニル系重合体(A)およびカチオン系光開始剤(B)を含むことを特徴とする光硬化性組成物。
【0009】
【化1】

(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜10の1価の炭化水素基、又は、2つの炭化水素基がエーテル結合もしくはエステル結合で結合されてなる炭素数1〜10の1価の基を表すが、R及びR、R及びR、又はR及びRが相互に結合し、環構造を形成していても構わない。Rは直接結合または炭素数1〜10の2価の炭化水素基、又は、2つの炭化水素基がエーテル結合もしくはエステル結合で結合されてなる炭素数1〜10の1価の基を表し、R及びR、R及びR、又はR及びRが相互に結合し、環構造を形成していても構わない。)
【0010】
(II)
ビニル系重合体(A)の分子末端が下記一般式(2)〜(5)の中から選ばれる構造であることを特徴とする(I)に記載の光硬化性組成物。
【0011】
【化2】

【0012】
【化3】

【0013】
【化4】

【0014】
【化5】

(式中、Rは直接結合または炭素数1〜10の2価の炭化水素基、又は、2つの炭化水素基がエーテル結合もしくはエステル結合で結合されてなる炭素数1〜10の1価の基を表す。)
【0015】
(III)
ビニル系重合体(A)が、分子末端の炭素−炭素不飽和結合を酸化することにより製造されることを特徴とする(I)、(II)いずれかに記載の光硬化性組成物。
【0016】
(IV)
ビニル系重合体(A)がポリイソブチレン、水素添加ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエン、さらに(メタ)アクリル酸系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー及びケイ素含有ビニル系モノマーからなる群から選ばれるモノマーを主として重合して製造されるものである重合体から少なくとも一種選択されることを特徴とする(I)〜(III)いずれかに記載の光硬化性組成物。
【0017】
(V)
カチオン系光開始剤(B)が、一般式(6)で表される構造であることを特徴とする、(I)〜(IV)いずれかに記載の光硬化性組成物。
[RW]u+[MZv+uu− (6)
(式中、Wは、S、Se、Te、P、As,Sb、Bi、O、I、Br、Cl、Ti、Zr,Fe、Ru、OsまたはN≡Nであり、R、R、R、およびRは同一または異なる有機基であり、a、b、c、およびdはそれぞれ0〜3の整数であって(a+b+c+d)はWの価数に等しい。Mは、錯体[MZv+u]の中心原子を構成する金属またはメタロイドであり、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr,Mn、Coである。ZはMに配位する配位子で、ハロゲン原子または有機基である。uは錯体イオンの正味の電荷である。vはMの原子価である。)
【0018】
(VI)
カチオン系光開始剤(B)が、オニウム塩、スルホン酸のジアリールヨードニウム塩、スルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、ボロン酸のジアリールヨードニウム塩又はボロン酸のトリアリールスルホニウム塩から少なくとも一種選択されることを特徴とする、(I)〜(V)いずれかに記載の光硬化性組成物。
【0019】
(VII)
ビニル系重合体(A)以外のエポキシ基含有化合物(C)、をさらに含むことを特徴とする、(I)〜(VI)のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【0020】
(VIII)
オキセタン基含有化合物(D)をさらに含むことを特徴とする、(I)〜(VII)のいずれかに記載の光硬化性組成物。
【0021】
(IX)
カチオン系光開始剤(B)の量が、ビニル系重合体(A)、エポキシ基含有化合物(C)、およびオキセタン基含有化合物(D)の合計100重量部に対し、0.1〜10重量部であることを特徴とする(I)〜(VIII)いずれかに記載の光硬化性組成物。
【0022】
(X)
(I)〜(IX)いずれか1項に記載の光硬化性組成物を用いてなる粘着剤または接着剤組成物。
【0023】
(XI)
(I)〜(IX)いずれか1項に記載の光硬化性組成物を用いてなるコーティング剤用組成物。
【0024】
(XII)
(I)〜(IX)いずれか1項に記載の光硬化性組成物を用いてなるポッティング剤用組成物。
【0025】
(XIII)
(I)〜(IX)いずれか1項に記載の光硬化性組成物を用いてなるシール材用組成物。
【0026】
(XIV)
(I)〜(XIII)に記載の光硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物。
【発明の効果】
【0027】
本発明は安価なエポキシ末端ビニル系重合体およびカチオン系光開始剤を含有する光硬化系組成物を与える。本組成物においては、光エネルギー源の照射により短時間で優れた硬化性を発現でき、またシロキサン結合を含有しないため電気絶縁性に優れ、電子部品等の接着剤、コーティング剤、封止材等の用途で非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明の光硬化性組成物は、末端にエポキシ基を有するビニル系重合体(A)およびカチオン系光開始剤(B)を含有する光硬化性組成物であり、場合によってはビニル系重合体(A)以外のエポキシ基含有化合物(C)、および/またはオキセタン基含有化合物(D)を含有するものである。さらに必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、他のカチオン重合性化合物、シランカップリング剤、充填剤、改質剤、安定剤、他の樹脂成分等のその他の成分を含有することができる。
【0029】
本発明の光硬化性組成物は優れた硬化性を発現するとともに、その骨格となるビニル系重合体主鎖の種類によって、その重合体独特の特性を発現することができる。ビニル系重合体主鎖骨格としては特に限定はなく、例えば飽和炭化水素系重合体、アクリル系重合体を使用することができる。
【0030】
本発明におけるビニル系重合体(A)の少なくとも一つの末端部分の構造は、以下の一般式(1)で示される。
【0031】
【化1】

(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜10の1価の炭化水素基、又は、2つの炭化水素基がエーテル結合もしくはエステル結合で結合されてなる炭素数1〜10の1価の基を表すが、R及びR、R及びR、又はR及びRが相互に結合し、環構造を形成していても構わない。Rは直接結合または炭素数1〜10の2価の炭化水素基、又は、2つの炭化水素基がエーテル結合もしくはエステル結合で結合されてなる炭素数1〜10の1価の基を表し、R及びR、R及びR、又はR及びRが相互に結合し、環構造を形成していても構わない。)
【0032】
一般式(1)で表されるエポキシ基は、特に限定されるものではないが、反応性の点から、一般式(2)〜(5)であることが好ましく、更には一般式(2)、(4)で表される構造が原料の入手性の点から、より好ましく、一般式(4)で表される構造がさらに好ましい。分子末端が複数存在する場合、各末端のエポキシ基の構造が相互に異なっていても構わない。
【0033】
【化2】

【0034】
【化3】

【0035】
【化4】

【0036】
【化5】

(式中、Rは直接結合または炭素数1〜10の2価の炭化水素基、又は、2つの炭化水素基がエーテル結合もしくはエステル結合で結合されてなる炭素数1〜10の1価の基を表す。)
【0037】
本発明における、末端に一般式(1)〜(5)で示されるエポキシ基を有するビニル系重合体の製造方法には特に限定は無いが、反応の簡便さとコストの点から、分子末端に炭素−炭素不飽和結合を有するビニル系重合体を直接酸化する方法が好ましい。
【0038】
分子末端の炭素−炭素不飽和結合としては以下の一般式(7)で示されるものである。
【0039】
【化6】

(R、R、R、Rは上記と同じ)
分子末端の炭素−炭素不飽和結合としては、飽和炭化水素基に結合した構造であることが反応性の点で好ましい。飽和炭化水素基に結合した構造であるとは、上記一般式(7)のRが炭素数1〜10の2価の炭化水素基の場合である。
【0040】
分子末端の炭素−炭素不飽和結合が環構造上に存在しない場合、上記一般式(7)中のR、Rは水素である事が好ましく、Rは水素、メチル基であることが原料の入手性の点から好ましい。Rはさらに水素である事がより好ましい。
【0041】
の炭素数は1〜10であるのが原料の入手性の点から好ましい。
【0042】
分子末端の炭素−炭素不飽和結合が環構造上に存在することも反応性の点で好ましい。炭素−炭素不飽和結合が環構造上に存在するとは、上記一般式(7)のR及びR、R及びR、又はR及びRが相互に結合し、環構造を形成しているものであり、特に限定される物ではないが、下記一般式(8)および/または下記一般式(9)で表される構造のものであることが原料の入手性の点で好ましい。分子末端が複数存在する場合、各末端の炭素−炭素不飽和結合の構造が相互に異なっていても構わない。
【0043】
【化7】

【0044】
【化8】

(Rは上記と同じ)
【0045】
分子末端の炭素−炭素不飽和基の酸化方法としては、特に限定されるものではないが、酸素、オゾン、過酸化物、過酸などを酸化剤として用いる方法が挙げられる。これらの酸化剤の中でも、反応性の観点から過酸が好ましく、過酸としては、特に限定されるものではないが、具体的には過硫酸、過炭酸、過燐酸、次過塩素酸、過酢酸、過安息香酸、メタクロロ過安息香酸が挙げられ、反応性と入手性の点から過酢酸、メタクロロ過安息香酸が特に好ましい。なお、酸化剤の使用量は特に限定されるものではないが、炭素−炭素不飽和基のモル数に対して2〜4倍モル当量程度の範囲とすればよい。
【0046】
当該酸化反応は、必要に応じて各種溶媒を用いることができる。例えばベンゼン、トルエン、キシレン、塩化メチレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の溶剤を用いることができる。特に酸化反応を阻害しないことから、塩化メチレンが好ましい。
【0047】
当該酸化反応が終了した後は、酸化剤(過酸)を取り除くために、洗浄やろ過を行うことができる。洗浄は、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムといった還元剤を用いて余剰の酸化剤を還元し、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムといったアルカリ金属塩水溶液で中和した後に、水洗する方法が挙げられる。また残存する水分については、飽和食塩水で洗浄し、続いて無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウムといった中性乾燥剤を用いることで除去することができる。
【0048】
ビニル系重合体(A)の主鎖骨格としては、炭化水素系重合体である、ポリイソブチレン、水素添加ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエン、並びに、(メタ)アクリル酸系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー及びケイ素含有ビニル系モノマーからなる群から選ばれるモノマーを主として重合して製造される重合体が好ましい。ここで「主として」とは、ビニル系重合体を構成するモノマー単位のうち、50モル%以上が上記モノマーであることを意味し、好ましくは70モル%以上である。
【0049】
前記炭化水素系重合体は、芳香族環以外の炭素−炭素不飽和結合を実質的に含有しない重合体であり、たとえば、1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、水素添加ポリブタジエン、水素添加ポリイソプレンなどがあげられる。
【0050】
本発明に用いる炭化水素系重合体の主鎖骨格をなす重合体は、(1)エチレン、プロピレン、1,2−ブタジエン、1,4−ブタジエン、1−ブテン、イソブチレンなどのような炭素数1〜6のオレフィン系化合物を主成分として単独重合もしくは共重合させるか、(2)ブタジエン、イソプレンなどのようなジエン系化合物を単独重合もしくは共重合させ、あるいは、上記オレフィン系化合物を共重合させた後、水素添加するなどの方法により得ることができる。
【0051】
中でも、ポリイソブチレン、水素添加ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエンは、末端に官能基を導入しやすく、分子量を制御しやすく、また、末端官能基の数を多くすることができるので好ましい。さらに、ポリイソブチレンは液状または流動性を有するので取り扱いやすく、主鎖に芳香族環以外の炭素−炭素不飽和結合を全く含まないため水添の必要が無く、耐候性に極めて優れているので特に好ましい。ポリイソブチレンは、単量体単位のすべてがイソブチレン単位から形成されていてもよいし、イソブチレンと共重合可能な単量体単位をポリイソブチレン中に、好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下、とくに好ましくは10重量%以下の範囲で含有してもよい。
【0052】
このような炭化水素系重合の単量体成分としては、たとえば、炭素数4〜12のオレフィン、ビニルエーテル、芳香族ビニル化合物、ビニルシラン類、アリルシラン類などがあげられる。たとえば1−ブテン、2−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ヘキセン、ビニルシクロヘキセン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、β−ピネン、インデン、ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリビニルメチルシラン、テトラビニルシラン、アリルトリクロロシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルジメチルメトキシシラン、アリルトリメチルシラン、ジアリルジクロロシラン、ジアリルジメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランなどがあげられる。
【0053】
水素添加ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエンや他の炭化水素系重合体においても、上記ポリイソブチレンの場合と同様に、主成分となる単量体単位の他に他の単量体単位を含有させてもよい。
【0054】
炭化水素系重合体、好ましくはポリイソブチレン、水素添加ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエンの数平均分子量は1000〜100,000程度であるのが好ましく、とくに3,000〜20,000程度の液状ないし流動性を有するものが取扱いやすいなどの点から、好ましい。
【0055】
ポリイソブチレン系重合体を製造する方法としては、特に限定されないが、例えばリビングカチオン重合が挙げられる。
【0056】
本発明における炭化水素系重合体以外のビニル系重合体は、その主鎖を構成するビニル系モノマーとしては特に限定されず、各種のものを用いることができる。具体的には特開2005−232419号公報段落[0018]記載の各種モノマーのような、(メタ)アクリル酸系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー、ケイ素含有ビニル系モノマー、マレイミド系モノマー、ニトリル基含有ビニル系モノマー、アミド基含有ビニル系モノマー、ビニルエステル類、アルケン類、共役ジエン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を表す。
【0057】
なかでも、生成物の物性等から、芳香族ビニル系モノマー及び/または(メタ)アクリル酸系モノマーが好ましく、アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーがより好ましく、アクリル酸エステルモノマーがさらに好ましい。特に好ましいアクリル酸エステルモノマーとしては、アクリル酸アルキルエステルモノマーが挙げられ、具体的には、アクリル酸エチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−メトキシブチルである。
【0058】
本発明においては、これらの好ましいモノマーを他のモノマーと共重合、更にはブロック共重合させても構わなく、その際は、これらの好ましいモノマーが重量比で40重量%以上含まれていることが好ましい。
【0059】
本発明における炭化水素系重合体以外のビニル系重合体の数平均分子量は特に制限はないが、GPCで測定した場合に、1000〜100,000の範囲である、3,000〜100,000がより好ましく、5,000〜80,000がさらに好ましく、8,000〜50,000がなおさら好ましい。分子量が低くなりすぎると、炭化水素系重合体以外のビニル系重合体の本来の特性が発現されにくい傾向があり、一方、高くなりすぎると、取り扱いが困難になる傾向がある。
【0060】
本発明で使用するビニル系重合体は、種々の重合法により得ることができ、特に限定されないが、モノマーの汎用性、制御の容易性等の点からラジカル重合法が好ましく、ラジカル重合の中でも制御ラジカル重合がより好ましい。この制御ラジカル重合法は「連鎖移動剤法」とリビング重合の一種である「リビングラジカル重合法」とに分類することができる。得られるビニル系重合体の分子量、分子量分布の制御が容易であるリビングラジカル重合がさらに好ましく、原料の入手性、重合体末端への官能基導入の容易さから原子移動ラジカル重合が特に好ましい。上記ラジカル重合、制御ラジカル重合、連鎖移動剤法、リビングラジカル重合法、原子移動ラジカル重合は公知の重合法ではあるが、これら各重合法については、たとえば、特開2005−232419号公報や、特開2006−291073号公報などの記載を参照できる。
【0061】
本発明における炭化水素系重合体以外のビニル系重合体の好ましい合成法の一つである、原子移動ラジカル重合について以下に簡単に説明する。
【0062】
原子移動ラジカル重合では、有機ハロゲン化物、特に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物(例えば、α位にハロゲンを有するカルボニル化合物や、ベンジル位にハロゲンを有する化合物)、あるいはハロゲン化スルホニル化合物等が開始剤として用いられることが好ましい。具体的には特開2005−232419号公報段落[0040]〜[0064]記載の化合物が挙げられる。
【0063】
酸化反応可能な炭素−炭素不飽和基を1分子の末端に有するビニル系重合体を得るためには、2つ以上の開始点を持つ有機ハロゲン化物、又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤として用いるのが好ましい。具体的に例示するならば、
【0064】
【化9】

【0065】
【化10】

等が挙げられる。
【0066】
原子移動ラジカル重合において用いられるビニル系モノマーとしては特に制約はなく、上述したビニル系モノマーをすべて好適に用いることができるが、なかでも(メタ)アクリル酸系モノマーと芳香族ビニル系モノマーが好ましい。
【0067】
重合触媒として用いられる遷移金属錯体としては特に限定されないが、好ましくは周期律表第7族、8族、9族、10族、又は11族元素を中心金属とする金属錯体でありより好ましくは0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄又は2価のニッケルを中心金属とする遷移金属錯体、特に好ましくは銅の錯体が挙げられる。銅の錯体を形成するために使用される1価の銅化合物を具体的に例示するならば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅等である。銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために2,2′−ビピリジル若しくはその誘導体、1,10−フェナントロリン若しくはその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン若しくはヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン等のポリアミン等が配位子として添加される。
【0068】
重合反応は、無溶媒でも可能であるが、各種の溶媒中で行うこともできる。溶媒の種類としては特に限定されず、特開2005−232419号公報段落[0067]記載の溶剤が挙げられる。これらは、単独でもよく、2種以上を併用してもよい。また、エマルジョン系もしくは超臨界流体COを媒体とする系においても重合を行うことができる。
重合温度は、限定はされないが、0〜200℃の範囲で行うことができ、好ましくは、室温〜150℃の範囲である。
【0069】
ビニル系重合体の分子量分布、即ち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GP
C)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、特に限定されないが、好ましくは1.8未満であり、より好ましくは1.7以下であり、さらに好ましくは1.6以下であり、よりさらに好ましくは1.5以下であり、特に好ましくは1.4以下であり、最も好ましくは1.3以下である。分子量分布が1.8以上であると粘度が増大し、取り扱いが困難になる傾向にある。なお、本発明でのGPC測定は、移動相としてクロロホルムを用い、測定はポリスチレンゲルカラムにて行い、数平均分子量等はポリスチレン換算で求めることができる。
【0070】
末端に不飽和基を有するビニル系重合体の製造方法としては、一般に知られている方法で問題なく、特に限定されるものではないが、例えば上記原子移動ラジカル重合法によって得られた一般式(12)で示す末端構造を有するビニル系重合体(ハロゲン原子を主鎖末端に有するビニル系重合体)に、エチレン性不飽和基を2個有する化合物を反応させて、末端に炭素−炭素不飽和結合を導入させる方法が挙げられる。
−C(R10)(R11)(X) (12)
(式中、R10、R11はビニル系重合体のエチレン性不飽和基に結合した基を表す。Xは塩素、臭素、又はヨウ素を表す。)
【0071】
エチレン性不飽和基を2個有する化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば1,3−ブタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエンなどの末端に炭素−炭素不飽和結合を2つ有する炭化水素系化合物、3−ビニルシクロヘキセン、4−シクロヘキセンなど脂環式不飽和結合を有する炭化水素系化合物のほか、エーテル系重合体および/またはエステル系重合体末端に炭素−炭素不飽和結合を2つ有する化合物が挙げられる。
【0072】
上記の他に、末端に不飽和基を有するビニル系重合体の製造方法としては、例えば上記原子移動ラジカル重合法によって得られた一般式(11)で示す末端構造を有するビニル系重合体(ハロゲン原子を主鎖末端に有するビニル系重合体)に、炭素−炭素不飽和結合を有する求核剤による求核置換反応が挙げられる。このような求核剤としては例えば、炭素−炭素不飽和結合を有するアリルアルコールなどのアルコール化合物、4−ビニルフェノールなどのフェノール化合物、の他にカルボン酸化合物、アミン化合物、アミド化合物、およびこれらのアルカリ金属塩もしくはアンモニウム塩が挙げられる。また、炭素−炭素不飽和結合を有し、さらに電子吸引性置換基により安定化されたカルバニオンも好適に使用される。
【0073】
炭素−炭素不飽和結合を有する開始剤を用いてビニル系モノマーを重合し、重合体末端同士のカップリングすることによっても、両末端に官能基を有するビニル系重合体を製造することができることは既に述べたが、カップリングの方法としては、例えば、一般式6に示される末端ハロゲンを置換できる、同一または異なった官能基を合計2個以上有する化合物を用いて、ハロゲン末端どうしをカップリングさせる方法が挙げられる。末端ハロゲンを置換できる、同一または異なった官能基を合計2個以上有するものとしては特に限定されないが、ポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリチオール、およびそれらの塩、アルカリ金属硫化物等が好ましい。
【0074】
これら化合物の具体例としては;
エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ピナコール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,2−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、グリセロール、1,2,4−ブタントリオール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,2′−ビフェノール、4,4′−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4′−イソプロピリデンフェノール、3,3′−(エチレンジオキシ)ジフェノール、α,α′−ジヒドロキシ−p−キシレン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール等のポリオール;および、上記ポリオール化合物のアルカリ金属塩;
エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,2−ジアミノ−2−メチルプロパン、1,5−ジアミノペンタン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、α,α′−ジアミノ−p−キシレン等のポリアミン;および上記ポリアミン化合物のアルカリ金属塩;シュウ酸、マロン酸、メチルマロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、1,7−ヘプタンジカルボン酸、1,8−オクタンジカルボン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,2−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸等のポリカルボン酸;および上記ポリカルボン酸のアルカリ金属塩;
1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,7−ヘプタンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,9−ノナンジチオール、2−メルカプトエチルエーテル、p−キシレン−α,α′−ジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、等のポリチオール;および、上記ポリチオール化合物のアルカリ金属塩;硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム;等である。
【0075】
炭素−炭素不飽和結合を主鎖末端に有するビニル系重合体は、炭素−炭素不飽和結合を有する連鎖移動剤を用いたビニル系モノマーのラジカル重合によっても製造することができる。
【0076】
上記の他に、末端に不飽和基を有するビニル系重合体の製造方法としては、例えばカチオン重合法によって得られた一般式(12)で示す末端構造を有するビニル系重合体(ハロゲン原子を主鎖末端に有するビニル系重合体)に、例えば金属アルコキシドを反応させることにより脱ハロゲン化水素する方法、あるいは四塩化チタンなどのルイス酸存在下、アリルトリメチルシランを反応させる方法が挙げられる。
【0077】
本発明の末端にエポキシ基を有するビニル系重合体の硬化方法としては、エポキシ基含有化合物の一般的な硬化剤により、エポキシ基を反応させ硬化させることができる。硬化剤としては、アミン系硬化剤、酸系硬化剤、三フッ化ホウ素アミンコンプレックス系硬化剤、カチオン系光硬化剤が一般的な方法で使用可能である。特にカチオン系光硬化剤を用いた場合は、エポキシ基含有化合物に硬化剤を混合した後も十分な作業時間を確保でき、さらに光照射によって随時硬化させることが可能となるため好ましい。
【0078】
本発明の光カチオン開始剤(B)は、光により、(A)成分の樹脂のカチオン重合を開始する化合物であれば特に限定はなく、いずれでも使用することができる。例えばカチオン開始剤の好ましい例として下記一般式(6)で表される構造が挙げられる
[RW]u+[MZv+uu− (6)
(式中、Wは、S、Se、Te、P、As,Sb、Bi、O、I、Br、Cl、Ti、Zr,Fe、Ru、OsまたはN≡Nであり、R、R、R、およびRは同一または異なる有機基であり、a、b、c、およびdはそれぞれ0〜3の整数であって(a+b+c+d)はWの価数に等しい。Mは、錯体[MZv+u]の中心原子を構成する金属またはメタロイドであり、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr,Mn、Coである。ZはMに配位する配位子で、F、Cl、Br等のハロゲン原子や有機基である。uは錯体イオンの正味の電荷である。vはMの原子価である。)
【0079】
またカチオン系光開始剤(B)が、オニウム塩、スルホン酸のジアリールヨードニウム塩、スルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、ボロン酸のジアリールヨードニウム塩、またはボロン酸のトリアリールスルホニウム塩から選ばれるカチオン系光開始剤であることが、入手性の点から好ましい。
【0080】
これらのオニウム塩の具体例としては、ジフェニルヨードニウム、4−メトキシジフェニルヨードニウム、ビス(4−メチルフェニル)ヨードニウム、ビス(4−tertブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム、トリルクミルヨードニウム、
トリフェニルスルホニウム、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウム、ビス[4−(ジフェニルスルフォニオ)−フェニル]スルフィド、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル)スルホニオ)−フェニル]スルフィド、η5−(シクロペンタジエニル)[1,2,3,4,5,6−η6−ヘキサメチルベンゼン]一鉄(1+)等が挙げられる。一般式(6)において陰イオンの具体例としては、テトラフルオロボレート、テトラキス((ペンタフルオロ)ボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。これら光カチオン開始剤は、1種単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0081】
また上記のオニウム塩以外にも、デカメチルフェロセン/テトラキス(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート、デカメチルフェロセン/テトラキス[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートなど特開平11−49791、特開2000−226396等に記載の開始剤を使用することが可能であり、組成物の安定性向上等の効果がある。
【0082】
本発明の樹脂組成物における(B)成分の含有割合は、ビニル系重合体(A)、後述するエポキシ基含有化合物(C)、およびオキセタン基含有化合物(D)の合計100重量部に対し、通常0.1〜10重量部であり、好ましくは0.3〜3重量部である。(B)成分の含有割合0.1重量部以上であるとより樹脂組成物の硬化状況が良好となり好ましく、又硬化後の光カチオン開始剤溶出を予防する観点から10重量部以下が好ましい。
【0083】
本発明の光硬化性組成物には、(B)成分に加え増感剤を使用することが可能である。増感剤としては、特に限定はなく、一般のカチオン系光開始剤に用いられる増感剤なら問題なく使用できる。例えば、ジアリールヨードニウムやトリアリールスルホニウム塩の増感にはアントラセン、ピレン、ペリレンなどの多環芳香族炭化水素が、ジアリールヨードニウム塩の増感にはベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、ミヒラーケトン、9,10−フェナントラキノンなどの芳香族ケトン、エオシン、ケトクマリン、アクリジン染料などが、トリアリールスルホニウム塩の増感には芳香族アミン、芳香族第三級アミン、クマリン、イソベンゾフランなどが挙げられる。
【0084】
本発明の光硬化性組成物には、必要に応じてビニル系重合体(A)以外のエポキシ基を有する化合物(C)を含有することができる。エポキシ基を有する化合物(C)は、例えば、エポキシ基を1個有する化合物としては、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテルなどがあり、エポキシ基を2個以上有する化合物としては、ヘキサンジオールグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラック型エポキシ化合物等が挙げられる。また、脂環式エポキシ基を有する化合物も問題なく使用できる。
【0085】
また、エポキシ基を有する化合物(C)として、オリゴマーも使用することができる。
【0086】
これらの(C)成分は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。また(A)成分の主鎖骨格の種類によって相溶性が異なるため、(A)成分に適した化合物を選択することが好ましい。本発明の樹脂組成物における(C)成分の含有割合は、ビニル系重合体(A)100重量部に対して通常1〜70重量部であり、好ましくは、1〜50重量部である。(C)成分の添加は、組成物の硬化性を改良させ、硬化物の接着性、耐熱性、機械強度を向上させるのに有効である。
【0087】
本発明の光硬化性組成物には、必要に応じてオキセタン環を有する化合物(D)を含有することができる。オキセタン環を有する化合物(D)は、一般式(13)で表されるオキセタン環を少なくとも1つ有する化合物であればいずれでも使用することができる。
【0088】
【化11】

【0089】
ここでR12、R13は、同一または異なった水素、酸素、および窒素からなる群より選択される1種以上を構成原子として含有する炭素数1〜20の1価の有機基を示す。R12およびR13が相互に結合し、環構造を形成していても構わない。
【0090】
これらオキセタン環を有する化合物としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−ヘキシロキシメチルオキセタン、3−エチル−3(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、1,4−ビス{[3−エチル−(3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3,3’−ジメチル−2−(p−メトキシフェニル)−オキセタン等の化合物が挙げられる。
【0091】
また、オキセタン環を有する化合物(D)として、オリゴマーも使用することができる。
【0092】
これらの(D)成分は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。また(A)成分の主鎖骨格の種類により相溶性等が異なるため、(A)成分に適した化合物を選択することが好ましい。本発明の樹脂組成物における(D)成分の含有割合は、ビニル系重合体(A)100重量部に対して通常1〜90重量部であり、好ましくは、1〜50重量部である。(D)成分の添加は、組成物の高速硬化性、高分子量化に有効である。
【0093】
本発明の硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、他の光カチオン重合性化合物、シランカップリング剤、充填剤、改質剤、安定剤、他の樹脂成分等のその他の成分を含有することができる。
【0094】
他の光カチオン重合性化合物としては、例えば、オキソラン化合物、環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、チイラン化合物、チエタン化合物、スピロオルトエステル化合物、ビニルエーテル化合物、ビニル化合物等が挙げられる。これらは、1種単独でも複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0095】
シランカップリング剤とは、エポキシ基、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアネート基等の反応性基を有するシラン化合物が挙げられる。具体的には、トリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメチルシラン等が挙げられる。これらは、1種単独でも複数種を組み合わせて使用してもよい。本発明の樹脂組成物におけるシランカップリング剤成分の含有割合は、特に限定はないが、(A)成分、(B)成分、(C)成分の合計100重量部に対して、通常0.1〜20重量部であり、好ましくは0.3〜10重量部である。シランカップリング剤の添加は、接着性や耐水性の向上に有効である。
【0096】
充填剤としては、例えば、微粒子シリカ、ガラスビーズ、タルク、スチレン系ポリマー粒子、メタクリレート系ポリマー粒子、エチレン系ポリマー粒子、プロピレン系ポリマー粒子等が挙げられ、中でも無機充填剤が好ましく、特に微粒子シリカが好ましい。これらは、1種単独でも複数種を組み合わせて使用してもよい。充填剤成分の含有割合は、特に限定はないが、(A)成分、(B)成分、(C)成分の合計100重量部に対して、通常20〜500重量部であり、好ましくは40〜300重量部である。無機充填剤の添加により、高強度化、対透湿性や接着性を向上させることができる。
【0097】
改質剤としては、例えば重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤等が挙げられる。これらは、1種単独でも複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0098】
安定剤としては、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。これらは1種単独でも複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0099】
他の樹脂成分としては、例えばポリアミド、ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリエーテル、ポリエステル、アクリル樹脂、シリコン樹脂、フッ素系樹脂等の樹脂成分が挙げられる。
【0100】
本発明の硬化性組成物は、各成分を均一に混合することにより調製される。混合方法に特に限定は無いが、まず(B)成分のカチオン性光開始剤を除くその他の成分を十分に混合した後に、(B)成分のカチオン性光開始剤を混合することが、組成物の安定性の点で好ましい。混合する場合、装置は特に限定されないが、手攪拌、機械的攪拌装置、ロールミル等を用い適宜混合することにより調製される。
【0101】
本発明の硬化物は、硬化性組成物に光エネルギー源を照射することにより得られる。光エネルギー源としては、紫外線、電子線、可視光等、一般に光硬化反応に用いられるものを特に制限なく使用できる。光硬化性組成物の硬化は、塗布された基材を望ましい光エネルギー源、例えば紫外線ランプの下を所定の速度で通過させ、その際光エネルギー源を出力状態にして所定の時間を経過させることで、塗布された基材を光エネルギーに暴露することを含む公知の方法のうちのいずれかにより達成される。
【0102】
硬化物を得る際に施す光硬化性組成物の塗布としては、例えば、刷毛塗り、押し出し、吹きつけ、グラビア、キスロール、ディスペンサー及びエアーナイフによる、当該技術分野で公知の手法を、塗布する基材の特徴に合わせて適用できる。
【0103】
本発明の光硬化性組成物を塗布する固体基材は、例えば紙、ポリオレフィンフィルム、ポリオレフィン被覆紙、箔、木材、厚紙及び綿などの柔軟なシート材料;例えばアルミニウム、銅、スチール及び銀などの金属材料;例えばガラス及び石などのケイ質材料、;並びに例えばポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル及びポリアクリレート等の合成ポリマー等が挙げられる。
【0104】
また必要に応じて光エネルギーの照射の後に、さらに加熱等の後硬化させることにより、より十分に硬化させることができる。
【0105】
本発明の光硬化性組成物は、限定はされないが、粘着剤、接着剤、コーティング剤、ポッティング剤、シール剤組成物等として有用である。具体的には、UV硬化型材料・コーティング・インキ、液状ソルダーレジスト、液晶用レジスト、光ファイバーコーティング剤、UV・可視光硬化型接着剤、光ディスクコーティング剤、電子部品用封止剤等が挙げられる。中でも、加熱工程の低減や、接点障害改善が求められる電子部品用途への使用が好適である。
【実施例】
【0106】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0107】
また、下記実施例中、「数平均分子量」及び「分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量の比)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。ただし、GPCカラムとしてポリスチレン架橋ゲルを充填したもの(shodex GPC K−804およびK−802.5;昭和電工(株)製)、GPC溶媒としてクロロホルムを用いた。
H−NMRはBruker社製ASX−400(400MHz)を使用し、溶媒として重クロロホルムを用いて23℃にて測定した。
【0108】
(製造例1)炭素−炭素不飽和結合を末端に有する(メタ)アクリル酸系重合体の合成例
アクリル酸n−ブチル(以下BAと略す)を脱酸素した。攪拌機付ステンレス製反応容器の内部を脱酸素し、臭化第一銅0.84kg、全アクリル酸エステルの一部としてBAを20.0kg仕込み、加熱攪拌した。アセトニトリル8.79kg、開始剤としてジエチル−2,5−ジブロモアジペートを1.76kg添加、混合し、混合液の温度を約80℃に調節した段階でN,N,N’,N’’,N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン(以下、トリアミンと略す)を0.03kg添加し、重合反応を開始した。残りのアクリル酸エステルとしてBAを80.0kg逐次添加し、重合反応を進めた。重合途中、適宜トリアミンを追加し、重合速度を調整した。重合時に使用したトリアミンの総量は0.15kgであった。重合が進行すると重合熱により内温が上昇するので内温を約80℃〜約90℃に調整しながら重合を進行させた。モノマー転化率(重合反応率)が約95%以上の時点で揮発分を減圧脱揮して除去し、重合体濃縮物を得た。
【0109】
上記濃縮物に1,7−オクタジエン(以下オクタジエンと略す)21.0kg、アセトニトリル35.0kgを添加し、トリアミン0.34kgを追加した。内温を約80℃〜約90℃に調節しながら数時間加熱攪拌させて、重合体末端にオクタジエンを反応させた。アセトニトリル及び未反応のオクタジエンを減圧脱揮して除去し、末端にアルケニル基を有するアクリル酸n−ブチル重合体を含有する濃縮物を得た。
【0110】
上記濃縮物をトルエンで希釈し、ろ過助剤1kg、吸着剤(キョーワード700SEN:協和化学工業(株)製)0.5kg、ハイドロタルサイト(キョーワード500SH:協和化学工業(株)製)0.5kgを添加し、80〜100℃程度に加熱攪拌した後、固形成分をろ別した。ろ液を濃縮し、重合体粗精製物を得た。
【0111】
重合体粗精製物、熱安定剤(スミライザーGS:住友化学(株)製)0.2kg、吸着剤(キョーワード700SEN、キョーワード500SH)を添加し、減圧脱揮、加熱攪拌しながら昇温し、約170℃〜約200℃の高温状態で数時間程度加熱攪拌、減圧脱揮を行った。吸着剤(キョーワード700SEN、キョーワード500SH)それぞれ総量1.5kgとなるように追加し、10kgのトルエンを添加し、約170℃〜約200℃の高温状態で更に数時間程度加熱攪拌した。処理液を更にトルエンで希釈し、吸着剤をろ別した。ろ液を濃縮し、末端にアルケニル基を有するアクリル酸n−ブチル重合体を得た。
【0112】
得られたアルケニル基を末端に有するアクリル酸n−ブチル重合体は、数平均分子量24,700、分子量分布1.3、1分子あたりのアルケニル基の数は1.9であった。
【0113】
(製造例2)エポキシ基を末端に有するアクリル酸n−ブチル重合体(A−1)の合成例
製造例1で得られたアルケニル基を末端に有するアクリル酸n−ブチル重合体100gに対し、ジクロロメタン100mLを加え、50℃に加熱した。ここに、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)8.0g(和光純薬社製、水分含有、純度69〜75%)(末端アルケニル基に対して3当量)をジクロロメタン200mLに溶解させた溶液を滴下し、3時間攪拌した。攪拌終了後、亜硫酸ナトリウム水で洗浄し、過剰のmCPBAを分解した。その後、炭酸ナトリウム水で洗浄し、クロロ安息香酸を除去した。ジクロロメタンを減圧脱揮により除去した。H−NMR(Bruker製AvanceIII 400MHz NMRシステム)による測定により、アルケニル基に由来するピークが消失し、エポキシ基のメチレン、メチンプロトンに由来するピークが現れ、エポキシ基を末端に有するアクリル酸n−ブチル重合体(A−1)が得られたことを確認した。
【0114】
H−NMRスペクトルにおいて、主鎖中のメチレン基に由来するピークの積分値とエポキシ基が結合した炭素上のプロトンに由来するピークの積分値の比から算出したエポキシ基の導入率は95%であった。これによりアクリル酸n−ブチル重合体は1分子あたり平均して、1.9個のエポキシ基を末端に含有することがわかった。また、GPCにより求めた分子量は25,300であった。
【0115】
(製造例3)炭素−炭素不飽和結合を末端に有するイソブチレン系重合体の合成例
2Lの耐圧ガラス製容器に、三方コックを取り付け、容器内を窒素置換した後、注射器を用いて容器内に、エチルシクロヘキサン(モレキュラーシーブス3Aとともに1夜間以上放置することにより乾燥したもの)138mLおよびトルエン(モレキュラーシーブス3Aとともに1夜間以上放置することにより乾燥したもの)1012mL、1,4−ビス(α―クロロイソプロピル)ベンゼン8.14g(35.2mmol)を加えた。
【0116】
次にイソブチレンモノマー254mL(2.99mmol)が入っているニードルバルブ付き耐圧ガラス製乳化採取管wp、三方コックに接続して、重合容器を−70℃のドライアイス/エタノールバス中につけて冷却した後、真空ポンプを用いて容器内を減圧にした。ニードルバルブを開け、イソブチレンモノマーを液化ガス採取管から重合容器内に導入した後、三方コック内の一方から窒素を導入することにより容器内を常圧に戻した。次に2−メチルピリジン0.387g(4.15mmol)を加えた。次に四塩化チタン4.90mL(44.7mmol)を加えて重合を開始した。反応時間70分後にアリルトリメチルシラン9.65g(13.4mmol)を加えてポリマー末端にアリル基の導入反応を行った。反応時間120分後に、反応溶液を水200mLで4回洗浄した後、溶剤を留去することによりアリル末端イソブチレン系重合体を得た。
【0117】
得られたアリル末端イソブチレン系重合体は、数平均分子量5,800、分子量分布1.4、1分子あたりのアリル基の数は1.9であった。
【0118】
(製造例4)エポキシ基を末端に有するイソブチレン重合体(A−2)の合成例
製造例3で得られたアリル基を末端に有するイソブチレン重合体100gに対し、塩化メチレン300mLを加え、40℃に加熱した。ここに、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)18.2g(和光純薬社製、水分含有、純度69〜75%)(末端アルケニル基に対して3当量)を塩化メチレン270mLに溶解させた溶液を滴下し、2時間攪拌した。続いてmCPBA6.1g(末端アルケニル基に対して1当量)を塩化メチレン90mLに溶解させた溶液を追加添加し、さらに1時間攪拌した。攪拌終了後、亜硫酸ナトリウム水で洗浄し、過剰のmCPBAを分解した。塩化メチレンを減圧脱揮により除去し、ヘキサンで希釈した。その後炭酸ナトリウム水で洗浄し、クロロ安息香酸を除去した。ヘキサンを減圧脱揮により除去した。H−NMR(Bruker製AvanceIII 400MHz NMRシステム)による測定により、アリル基に由来するピークが消失し、エポキシ基のメチレン、メチンプロトンに由来するピークが現れ、エポキシ基を末端に有するイソブチレン重合体(A−2)が得られたことを確認した。
【0119】
H−NMRスペクトルにおいて、主鎖中のメチレン基に由来するピークの積分値とエポキシ基が結合した炭素上のプロトンに由来するピークの積分値の比から算出したエポキシ基の導入率は95%であった。これによりイソブチレン重合体は1分子あたり平均して、1.9個のエポキシ基を末端に含有することがわかった。また、GPCにより求めた分子量は5,900であった。
【0120】
(光硬化性組成物およびそれらを含む硬化物の作成)
光照射の方法:ベルトコンベア付UV照射装置(FUSION製LIGHT HAMMER 6 UV照射装置)を用い、サンプルに照射されるUVの積算光量を3000mJ/cm(測定波長365nm)に調整した。続いてサンプルをベルトコンベアに乗せてUVを照射した。
【0121】
[実施例1]
上記製造例2で合成したビニル系重合体(A−1)70重量部に対し、(C)成分のエポキシ化合物(脂環式エポキシ希釈剤:セロキサイド2021P:ダイセル化学工業(株)製)30重量部、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート系のカチオン系光開始剤(アデカオプトマーSP−172:(株)ADEKA製)1重量部を十分に混合し、光硬化性組成物を調製した。この混合物を、ステンレス製の型枠を取り付けたテフロン(登録商標)製のフィルム上に均一に1mmの厚みで仕込み、その後UV照射装置でUV照射した。積算光量3000mJ/cmのUV照射により得られたシート状硬化物の指触により、硬化性を判断した。
【0122】
[実施例2]
上記製造例2で合成したビニル系重合体(A−2)70重量部に対し、(C)成分のエポキシ化合物(脂環式エポキシ希釈剤:セロキサイド2021P:ダイセル化学工業(株)製)30重量部、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート系のカチオン系光開始剤(アデカオプトマーSP−172:(株)ADEKA製)1重量部を十分に混合し、光硬化性組成物を調製した。この混合物を、ステンレス製の型枠を取り付けたテフロン(登録商標)製のフィルム上に均一に1mmの厚みで仕込み、その後UV照射装置でUV照射した。積算光量6000mJ/cmのUV照射により得られたシート状硬化物の指触により、硬化性を判断した。
【0123】
いずれの実施例の組成物も、短時間のUV照射のみで良好な硬化性を有し、かつ硬化物はゴム弾性を有する比較的柔軟な硬化物であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子末端が下記一般式(1)で表されるビニル系重合体(A)およびカチオン系光開始剤(B)を含むことを特徴とする光硬化性組成物。
【化1】

(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜10の1価の炭化水素基、又は、2つの炭化水素基がエーテル結合もしくはエステル結合で結合されてなる炭素数1〜10の1価の基を表すが、R及びR、R及びR、又はR及びRが相互に結合し、環構造を形成していても構わない。Rは直接結合または炭素数1〜10の2価の炭化水素基、又は、2つの炭化水素基がエーテル結合もしくはエステル結合で結合されてなる炭素数1〜10の1価の基を表し、R及びR、R及びR、又はR及びRが相互に結合し、環構造を形成していても構わない。)
【請求項2】
ビニル系重合体(A)の分子末端が下記一般式(2)〜(5)の中から選ばれる構造であることを特徴とする請求項1に記載の光硬化性組成物。
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

(式中、Rは直接結合または炭素数1〜10の2価の炭化水素基、又は、2つの炭化水素基がエーテル結合もしくはエステル結合で結合されてなる炭素数1〜10の1価の基を表す。)
【請求項3】
ビニル系重合体(A)が、分子末端の炭素−炭素不飽和結合を酸化することにより製造されることを特徴とする請求項1、2いずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項4】
ビニル系重合体(A)がポリイソブチレン、水素添加ポリイソプレン、水素添加ポリブタジエン、さらに(メタ)アクリル酸系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマー及びケイ素含有ビニル系モノマーからなる群から選ばれるモノマーを主として重合して製造されるものである重合体から少なくとも一種選択されることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項5】
カチオン系光開始剤(B)が、一般式(6)で表される構造であることを特徴とする、請求項1〜4いずれか1項に記載の光硬化性組成物。
[RW]u+[MZv+uu− (6)
(式中、Wは、S、Se、Te、P、As,Sb、Bi、O、I、Br、Cl、Ti、Zr,Fe、Ru、OsまたはN≡Nであり、R、R、R、およびRは同一または異なる有機基であり、a、b、c、およびdはそれぞれ0〜3の整数であって(a+b+c+d)はWの価数に等しい。Mは、錯体[MZv+u]の中心原子を構成する金属またはメタロイドであり、B、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr,Mn、Coである。ZはMに配位する配位子で、ハロゲン原子または有機基である。uは錯体イオンの正味の電荷である。vはMの原子価である。)
【請求項6】
カチオン系光開始剤(B)が、オニウム塩、スルホン酸のジアリールヨードニウム塩、スルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、ボロン酸のジアリールヨードニウム塩又はボロン酸のトリアリールスルホニウム塩から少なくとも一種選択されることを特徴とする、請求項1〜5いずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項7】
ビニル系重合体(A)以外のエポキシ基含有化合物(C)、をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜6いずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項8】
オキセタン基含有化合物(D)をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜7いずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項9】
カチオン系光開始剤(B)の量が、ビニル系重合体(A)、エポキシ基含有化合物(C)、およびオキセタン基含有化合物(D)の合計100重量部に対し、0.1〜10重量部であることを特徴とする請求項1〜8いずれか1項に記載の光硬化性組成物。
【請求項10】
請求項1〜9いずれか1項に記載の光硬化性組成物を用いてなる粘着剤または接着剤組成物。
【請求項11】
請求項1〜9いずれか1項に記載の光硬化性組成物を用いてなるコーティング剤用組成物。
【請求項12】
請求項1〜9いずれか1項に記載の光硬化性組成物を用いてなるポッティング剤用組成物。
【請求項13】
請求項1〜9いずれか1項に記載の光硬化性組成物を用いてなるシール材用組成物。
【請求項14】
請求項1〜13いずれか1項に記載の光硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物。

【公開番号】特開2012−82261(P2012−82261A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227582(P2010−227582)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】