説明

光線測定装置、焦点調整装置及び画像形成装置

【課題】一つの光線を二つの平行な光線に分割して各々の光線の断面径を測定する場合に、当該二つに分割した光線の空気換算長を光学部品の交換無しに変えることができる仕組みを提供する。
【解決手段】本発明の光線測定装置1は、入射光線を第1の光線と第2の光線に分割する分割手段11と、第1の光線を折り返し方式で反射させる平面ミラー12と、第2の光線を折り返し方式で反射させる平面ミラー13と、第1の光線と第2の光線を出射光軸に沿って反射させる直角プリズム14と、平面ミラー12を移動させるミラー移動部15と、平面ミラー13を移動させるミラー移動部16と、第1の光線と第2の光線を取り込む拡大光学系17と、第1の光線と第2の光線の各断面径を測定するためのCCDカメラ18とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光線測定装置、焦点調整装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、帯電した感光体の表面に走査光学系により画像信号に基づく光線(光ビーム)を照射することによって静電潜像を形成している。そして、この静電潜像をトナーで現像してトナー像とし、当該トナー像を用紙に転写・定着させている。この種の画像形成装置で所望の解像度の画像を形成するには、走査光学系から出射された光線が感光体の表面で合焦するように、走査光学系の焦点を調整する必要がある。
【0003】
走査光学系の焦点調整に関しては、走査光学系から出射された光線を二つに分割するとともに、当該分割した各々の光線の空気換算長に差をもたせた測定光学系を有する測定装置を用いて、各々の光線の断面径(ビーム径)が等しくなる位置を、光線の合焦位置として、走査光学系の焦点合わせを行なう技術が知られている(特許文献1を参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2008−20290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、一つの光線を二つの平行な光線に分割して各々の光線の断面径を測定する場合に、当該二つに分割した光線の空気換算長を光学部品の交換無しに変えることができる仕組みを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、入射光軸に沿って入射された光線を互いに光軸方向の異なる第1の光線と第2の光線に分割する分割手段と、前記分割手段によって分割された前記第1の光線を折り返し方式で反射させる第1の反射手段と、前記分割手段によって分割された前記第2の光線を折り返し方式で反射させる第2の反射手段と、前記第1の反射手段によって反射された前記第1の光線を出射光軸に沿って反射させる第3の反射手段と、前記第2の反射手段によって反射された前記第2の光線を前記出射光軸に沿って反射させる第4の反射手段と、前記出射光軸に沿って反射された前記第1の光線と前記第2の光線をそれぞれ取り込む拡大光学系と、前記拡大光学系に取り込まれた前記第1の光線と前記第2の光線の各断面径を測定するための撮像手段と、前記第1の反射手段及び前記第2の反射手段のうち、少なくとも一方の反射手段を、当該反射手段に入射する光線の光軸方向に移動させる移動手段とを備える光線測定装置に係るものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の光線測定装置において、前記移動手段は、前記第1の反射手段を当該第1の反射手段に入射する光線の光軸方向に移動させる第1の移動手段と、前記第2の反射手段を当該第2の反射手段に入射する光線の光軸方向に移動させる第2の移動手段とを有するものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の光線測定装置において、前記第1の反射手段と前記第2の反射手段は、それぞれ光軸に対して45度をなす二つの反射面を有し、前記分割手段によって分割された前記第1の光線を前記第1の反射手段に向けて反射させる第5の反射手段を備え、前記入射光軸と前記出射光軸は、互いに同軸上に設定され、前記分割手段、前記第3の反射手段、前記第4の反射手段及び前記第5の反射手段は、前記入射光軸及び前記出射光軸と同軸上に配置され、前記分割手段、前記第3の反射手段、前記第4の反射手段及び前記第5の反射手段を含む光学素子群を前記入射光軸及び前記出射光軸の光軸方向に一体に移動させる光学素子移動手段を備えるものである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1、2又は3記載の光線測定装置において、前記撮像手段を用いて測定された前記第1の光線と前記第2の光線の断面径の差が小さくなる条件で、前記入射光線の焦点の移動量を算出する移動量算出手段を備えるものである。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4記載の光線測定装置と、前記入射光軸に沿って入射される光線の焦点を、前記移動量算出手段によって算出された前記移動量に基づいて移動させる焦点移動手段とを備える焦点調整装置に係るものである。
【0011】
請求項6に記載の発明は、感光体と、前記感光体の表面を光線で露光走査する走査光学系と、前記走査光学系が出射する光線を測定対象とする光線測定装置とを備え、前記光線測定装置は、前記走査光学系から入射光軸に沿って入射された光線を互いに光軸方向の異なる第1の光線と第2の光線に分割する分割手段と、前記分割手段によって分割された前記第1の光線を折り返し方式で反射させる第1の反射手段と、前記分割手段によって分割された前記第2の光線を折り返し方式で反射させる第2の反射手段と、前記第1の反射手段によって反射された前記第1の光線を出射光軸に沿って反射させる第3の反射手段と、前記第2の反射手段によって反射された前記第2の光線を前記出射光軸に沿って反射させる第4の反射手段と、前記出射光軸に沿って反射された前記第1の光線と前記第2の光線をそれぞれ取り込む拡大光学系と、前記拡大光学系に取り込まれた前記第1の光線と前記第2の光線の各断面径を測定するための撮像手段と、前記第1の反射手段及び前記第2の反射手段のうち、少なくとも一方の反射手段を、当該反射手段に入射する光線の光軸方向に移動させる移動手段とを備える画像形成装置に係るものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、一つの光線を二つの平行な光線に分割して各々の光線の断面径を測定する場合に、当該二つに分割した光線の空気換算長を光学部品の交換無しに変えることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、第1の光線の像点と第2の光線の像点をそれぞれに対応する光軸方向で個別に移動させることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、第3の反射手段によって反射される第1の光線と第4の反射手段によって反射される第2の光線Hb2の光軸間距離を、光学部品の交換無しに変えることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、入射光線の焦点を目標位置に合わせるための移動量(補正量)を演算によって求めることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、入射光線の焦点を自動的に目標位置に合わせることができる。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、光線測定装置を備えた画像形成装置において、一つの光線を二つの平行な光線に分割して各々の光線の断面径を測定する場合に、当該二つに分割した光線の空気換算長を光学部品の交換無しに変えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の具体的な実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本発明の技術的範囲は以下に記述する実施の形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0019】
図1は本発明が適用される光線測定装置の概略構成を示す模式図である。光線測定装置1は、光線を出射する光源として、例えば、電子写真方式の画像形成装置に用いられる走査光学系2から出射される光線の焦点調整に用いられるものである。光線測定装置1は、測定光学系3と測定器4とを有している。測定光学系3は、走査光学系2から出射される光線を入射光線として取り込むとともに、当該入射光線を互いに光軸が平行でかつ光軸同士が重ならない二つの出射光線に変換し、当該二つの出射光線を測定器4に向けて出射するものである。測定器4は、測定光学系3から出射される二つの光線の断面径を測定するものである。ここで、光線は光ビームを意味し、光線の断面径は光ビームのビーム径を意味している。
【0020】
図2は走査光学系の構成例を示す概略図である。図示した走査光学系2は、半導体レーザ等からなるレーザ発光器101と、コリメータレンズ102と、ポリゴンミラー(回転多面鏡)103と、fθレンズ等からなるレンズ系104と、受光センサ105とを備えた構成となっている。走査光学系2は、ドラム形状の感光体106の表面を光線でライン状に露光走査(以下、「ライン走査」とも記す)することにより、感光体106の表面(ドラム外周面)に静電潜像を形成するものである。
【0021】
レーザ発光器101が発生する光線は、コリメータレンズ102でその断面形状(ビーム形状)を整形された後、図中B方向に定速回転するポリゴンミラー103の一面に照射される。このとき、ポリゴンミラー103の一面で光線が反射され、かつ反射した光線がポリゴンミラー103の回転にしたがって偏向される。これにより、ポリゴンミラー103の一面で反射した光線は、レンズ系104を介して感光体106の表面を図中A方向に走査される。レンズ系104は、ポリゴンミラー103によって偏向された光線が感光体106上で等速直線運動するように、当該光線を偏向する役割を果たす。
【0022】
受光センサ105は、感光体106の軸方向に沿う主走査方向で、走査光学系2による静電潜像の書き込み開始位置P1よりも手前(端)の位置P0に配置され、そこで光線の受光を感知したときに基準信号を出力するものである。受光センサ105が出力する基準信号は、感光体106上に光線のライン走査によって静電潜像を書き込むときに、主走査方向で静電潜像の書き込み開始位置P1を決めるための同期信号(主走査同期信号)となる。
【0023】
上記構成からなる走査光学系2においては、レーザ発光器101からコリメータレンズ102を通してポリゴンミラー103に照射された光線が、ポリゴンミラー103の回転によって感光体106の軸方向(主走査方向)にライン走査される。このライン走査をポリゴンミラー103の回転と感光体106の回転により1ラインごとに繰り返すことにより、感光体106の表面に二次元の静電潜像が形成される。
【0024】
このとき、感光体106の軸方向で、実際に感光体106の表面に光線のライン走査によって静電潜像の書き込み動作が行なわれる領域を有効領域とすると、この有効領域は、走査光学系2による静電潜像の書き込み開始位置P1と書き込み終了位置P2との間で規定される。これに対して、受光センサ105が光線の受光を感知する位置P0と静電潜像の書き込み開始位置P1との間では、感光体106に対して光線による画像の書き込み動作が行われない。このため、P0−P1間の領域は実質的に無効領域となる。また、感光体106の有効領域(P1−P2間)を光線で露光走査するときは、画像信号に応じて光線の点滅状態が制御される。
【0025】
<第1の実施の形態>
図3は本発明の第1の実施の形態に係る光線測定装置の構成を示す斜視図である。また、図4は本発明の第1の実施の形態に係る光線測定装置が備える測定光学系の配置状態を示す概略図である。
【0026】
光線測定装置1の測定光学系3は、無偏光キューブハーフミラー11と、二つの平面ミラー12,13と、直角プリズム14と、二つのミラー移動部15,16とを用いて構成されている。無偏光キューブハーフミラー11は、45度の直角プリズムを二つ組み合わせて構成されるものである。具体的には、無偏光キューブハーフミラー11は、各々の直角プリズムの斜面に無偏光膜を形成して、当該斜面同士を接着したサイコロ状のハーフミラーである。この無偏光キューブハーフミラー11は、当該無偏光キューブハーフミラー11に入射する光線の一部を反射し、かつそれ以外の光線を透過するもので、入射光線を1:1の割合で反射光線と透過光線に分割する。無偏光キューブハーフミラー11は、分割手段として設けられたものである。
【0027】
二つの平面ミラー12,13のうち、一方の平面ミラー12は、無偏光キューブハーフミラー11に入射する光線の光軸(以下、「入射光軸」)上に配置され、他方の平面ミラー13は、入射光軸に垂直な光軸(以下、「垂直光軸」と記す)上に配置されている。平面ミラー12は、平らな反射面12Aを有し、平面ミラー13も、平らな反射面13Aを有している。平面ミラー12の反射面12Aは、入射光軸に垂直に交わる面に対して角度θの傾きをもって配置されている。平面ミラー13の反射面13Aは、垂直光軸に垂直に交わる面に対して上記同様に角度θの傾きをもって配置されている。
【0028】
図4においては、無偏光キューブハーフミラー11に入射する光線のうち、無偏光キューブハーフミラー11の斜面(接着面)11Aを透過する光線を「第1の光線Hb1」とし、無偏光キューブハーフミラー11の斜面11Aで反射する光線を「第2の光線Hb2」としている。そうした場合、平面ミラー12は、無偏光キューブハーフミラー11を透過した第1の光線Hb1を折り返し方式で反射させる第1の反射手段に相当するものとなり、平面ミラー13は、無偏光キューブハーフミラー11で反射した第2の光線Hb2を折り返し方式で反射させる第2の反射手段に相当するものとなる。ここで記述する折り返し方式とは、光線が入射する方向に光線を反射する方式をいう。例えば、平面ミラー12に関しては、当該平面ミラー12の反射面12Aに対して無偏光キューブハーフミラー11が存在する方向から第1の光線Hb1が入射する。そして、第1の光線Hb1は平面ミラー12の反射面12Aで、無偏光キューブハーフミラー11に向かう方向、つまり光線が入射する方向に反射する。よって、平面ミラー12は、第1の光線Hb1を折り返し方式で反射させるものとなる。この点は平面ミラー13に関しても同様である。
【0029】
直角プリズム14は、垂直光軸上において、無偏光キューブハーフミラー11を間に挟んで、平面ミラー13と反対側に配置されている。直角プリズム14は、その一面を反射面14Aとしている。直角プリズム14の反射面14Aは、垂直光軸に対して45度の傾き角度をもって配置されている。直角プリズム14は、第3の反射手段と第4の反射手段を兼ねるものである。
【0030】
第1のミラー移動部15は第1の移動手段として設けられ、第2のミラー移動部16は第2の移動手段として設けられたものである。第1のミラー移動部15は、平面ミラー12を入射光軸の光軸方向(無偏光キューブハーフミラー11に対して接近離間する方向)に移動させるものである。第2のミラー移動部16は、平面ミラー13を垂直光軸の光軸方向(無偏光キューブハーフミラー11に対して接近離間する方向)に移動させるものである。
【0031】
光線測定装置1の測定器4は、拡大光学系17とCCDカメラ18とを用いて構成されている。拡大光学系17は、例えば、図示しない対物レンズと鏡筒を用いて構成されるものである。CCDカメラ18は、CCD(Charge Coupled Device)型の撮像素子を用いて構成されるものである。CCDカメラ18は、拡大光学系17に取り込まれた第1の光線と第2の光線の各断面径を測定するための撮像手段となるものである。CCDカメラ18は、拡大光学系17に入射し、かつ当該拡大光学系17で拡大された光線(第1の光線及び第2の光線)の像を撮像し、その像を表す撮像信号を生成する。CCDカメラ18が撮像する光線の像は、拡大光学系17を通して取り込まれる光線の断面形状(ビームスポット形状)を表すものとなる。また、CCDカメラ18で撮像される光線の断面形状は円形(又はそれに近似した形状)となり、その直径が光線の断面径を表すものとなる。光線の断面径の具体的な算出方法に関しては、例えば、上記特許文献1に開示されている方法を適用すればよい。
【0032】
上記構成からなる光線測定装置1においては、走査光学系2から出射された光線(入射光線)Hbのうち、一部の光線が無偏光キューブハーフミラー11の斜面11Aを透過し、かつ他の光線が無偏光キューブハーフミラー11の斜面11Aで反射する。このため、入射光線Hbは、無偏光キューブハーフミラー11によって第1の光線(透過光線)Hb1と第2の光線(反射光線)Hb2に分割される。無偏光キューブハーフミラー11の斜面11Aは、入射光軸に対して45度の傾きをもっている。このため、無偏光キューブハーフミラー11の斜面11Aを透過する第1の光線Hb1と、無偏光キューブハーフミラー11の斜面11Aで反射する第2の光線Hb2は、互いに光軸の方向が90度異なるものとなる。また、第1の光線Hb1は、無偏光キューブハーフミラー11の斜面11Aを透過した後、平面ミラー12の反射面12Aで反射されて、再び無偏光キューブハーフミラー11に入射する。また、第2の光線Hb2は、無偏光キューブハーフミラー11の斜面11Aで反射した後、平面ミラー13の反射面13Aで反射されて、再び無偏光キューブハーフミラー11に入射する。
【0033】
無偏光キューブハーフミラー11に再入射した第1の光線Hb1は、当該無偏光キューブハーフミラー11の斜面11Aで反射されることにより、直角プリズム14に向かって進行する。また、無偏光キューブハーフミラー11に再入射した第2の光線Hb2は、当該無偏光キューブハーフミラー11の斜面11Aを透過することにより、第1の光線Hb1と平行に直角プリズム14に向かって進行する。このとき、無偏光キューブハーフミラー11に再入射した各々の光線Hb1,Hb2の一部は、戻り光線となって走査光学系2側に進行する。このため、走査光学系2に戻り光線が入射しないように、その手前で図示しない遮光部材により戻り光線を遮光する。また、直角プリズム14に向かって平行に進む第1の光線Hb1と第2の光線Hb2の光軸間距離は、上述した反射面12A,13Aの傾き角度θによって決まる。即ち、反射面12A,13Aの傾き角度θが相対的に大きくなれば、光軸間距離も相対的に大きくなり、反射面12A,13Aの傾き角度θが相対的に小さくなれば、光軸間距離も相対的に小さくなる。
【0034】
次に、各々の光線Hb1,Hb2は、直角プリズム14の反射面14Aで反射した後、出射光軸に沿って進行することにより、測定器4の拡大光学系17に取り込まれる。このとき、第1の光線Hb1と第2の光線Hb2は、互いに光軸が平行でかつ光軸同士が重ならないように拡大光学系17に入射する。
【0035】
ここで、第1のミラー移動部15により平面ミラー12を入射光軸の光軸方向に移動させると、無偏光キューブハーフミラー11と平面ミラー12(反射面12A)との間の距離L1が変化し、これにしたがって第1の光線Hb1の光路長が変化する。同様に、第2のミラー移動部16により平面ミラー13を垂直光軸の光軸方向に移動させると、無偏光キューブハーフミラー11と平面ミラー13(反射面13A)との間の距離L2が変化し、これにしたがって第2の光線Hb2の光路長が変化する。
【0036】
より具体的に記述すると、第1のミラー移動部15により平面ミラー12を無偏光キューブハーフミラー11に近づける方向に移動させた場合は、無偏光キューブハーフミラー11と平面ミラー12との間の距離L1が短くなり、これにしたがって第1の光線Hb1の空気換算長が短くなる。このため、第1の光線Hb1の像点(光線の断面径が最小になる光軸上の位置)は、出射光軸上で走査光学系2から遠い側に移動する。また、第1のミラー移動部15により平面ミラー12を無偏光キューブハーフミラー11から離れる方向に移動させた場合は、無偏光キューブハーフミラー11と平面ミラー12との間の距離L1が長くなり、これにしたがって第1の光線Hb1の空気換算長が長くなる。このため、第1の光線Hb1の像点は、出射光軸上で走査光学系2に近い側に移動する。空気換算長とは、光学系中の光路長を屈折率1.0の空気に換算したときの光路長として表したものである。
【0037】
同様に、第2のミラー移動部16により平面ミラー13を無偏光キューブハーフミラー11に近づける方向に移動させた場合は、無偏光キューブハーフミラー11と平面ミラー13との間の距離L2が短くなり、これにしたがって第2の光線Hb2の空気換算長が短くなる。このため、第2の光線Hb2の像点は、出射光軸上で走査光学系2から遠い側に移動する。また、第2のミラー移動部16により平面ミラー13を無偏光キューブハーフミラー11から離れる方向に移動させた場合は、無偏光キューブハーフミラー11と平面ミラー13との間の距離L2が長くなり、これにしたがって第2の光線Hb2の空気換算長が長くなる。このため、第2の光線Hb2の像点は、出射光軸上で走査光学系2に近い側に移動する。
【0038】
続いて、本発明の実施の形態に係る光線測定装置1を用いて走査光学系2の焦点を調整する方法について説明する。
【0039】
まず、第1の光線Hb1の空気換算長が第2の光線Hb2の空気換算長よりも長くなるように(又は短くなるように)、ミラー移動部15,16により平面ミラー12,13を移動させる。そうすると、第1の光線Hb1と第2の光線Hb2の光路長に相対的な差が生じるため、第1の光線Hb1の像点と第2の光線Hb2の像点が、出射光軸上で位置ずれした状態となる。即ち、第1の光線Hb1の空気換算長を第2の光線Hb2の空気換算長よりも長くした場合は、第1の光線Hb1の像点が、第2の光線Hb2の像点よりも走査光学系2に近い側に変位した状態となる。また、第1の光線Hb1の空気換算長を第2の光線Hb2の空気換算長よりも短くした場合は、第1の光線Hb1の像点が、第2の光線Hb2の像点よりも走査光学系2から遠い側に変位した状態となる。
【0040】
このとき、走査光学系2から出射される光線の焦点を合わせるべき位置(感光体の表面に相当する位置)を目標位置と定義すると、第1の光線Hb1の像点と目標位置との間の距離は、平面ミラー12と無偏光キューブハーフミラー11との間の距離(離間距離)L1に依存したものとなる。また、第2の光線Hb2の像点と目標位置との間の距離は、平面ミラー13と無偏光キューブハーフミラー11との間の距離(離間距離)L2に依存したものとなる。このため、ミラー移動部15によって平面ミラー12を移動させると、目標位置に対して第1の光線Hb1の像点が移動する。また、ミラー移動部16によって平面ミラー13を移動させると、目標位置に対して第2の光線Hb2の像点が移動する。
【0041】
そこで、走査光学系2の焦点調整を行なう前の光線測定装置1の調整作業として、ミラー移動部15,16により平面ミラー12,13を次のような条件で移動させる。即ち、第1の条件として、第1の光線Hb1の像点と第2の光線Hb2の像点との間に目標位置が介在するように、平面ミラー12,13を移動させる。また、第2の条件として、第1の光線Hb1の像点と目標位置との間の距離が、第2の光線Hb2の像点と目標位置との間の距離と等しくなるように、平面ミラー12,13を移動させる。また、第3の条件として、第1の光線Hb1の断面径が相対的に大きく変化する位置と、第2の光線Hb2の断面径が相対的に大きく変化する位置が、それぞれ目標位置に一致するように、平面ミラー12,13を移動させる。
【0042】
ここで、走査光学系2から出射される光線の断面径は、当該光線の焦点で最小となり、当該光線の焦点から光軸方向に離れるにしたがって大きくなる。また、図5(A)〜(C)に示すように、光線の断面径を縦軸にとり、光軸上の位置を横軸にとって、光線の断面径の変化を曲線(U字曲線)で表したときに、その曲線の形状(U字形の開き具合)は走査光学系2の特性(特に、画像形成装置のマシンの機種)によって変わる。このため、光線の断面径が相対的に大きく変化する位置(図中、破線の丸印で示す位置)も、走査光学系2の特性によって変わる。したがって、上記第3の条件では、走査光学系2の特性に合わせて、平面ミラー12,13を移動させることになる。
【0043】
このように光線測定装置1で平面ミラー12,13の位置を調整(設定)したら、走査光学系2の焦点調整を次のような手順で行なう。まず、走査光学系2を駆動して、測定光学系3から測定器4に入射する二つの光線Hb1,Hb2の像を、拡大光学系17を通してCCDカメラ18で撮像し、これによって生成される撮像信号を図示しないモニターに入力して画面に表示する。そうすると、モニター画面内に二つの光線Hb1,Hb2の断面形状が同時に映し出される。このとき、拡大光学系(対物レンズ)17の物点を感光体表面に相当する目標位置に配置して像点をCCDカメラ18の撮像素子の撮像面(受光面)に置くことで、感光体表面位置にCCDカメラ18の撮像面を配置することと同等になる。
【0044】
そうした場合、走査光学系2から出射される光線(入射光線)の焦点が目標位置に合っていれば、図6(A)に示すように、モニター画面に映し出される二つの光線Hb1,Hb2の断面径が等しくなる。これに対して、走査光学系2から出射される光線の焦点が目標位置からずれていれば、モニター画面に映し出される二つの光線の断面径が異なるものとなる。例えば、図6(B)に示すように、走査光学系2から出射される光線の焦点が目標位置よりも測定器4側にずれていた場合は、一方の光線(図例ではHb1)の断面径が他方の光線(図例ではHb2)の断面径よりも小さくなる。また、図6(C)に示すように、走査光学系2から出射される光線の焦点が目標位置よりも走査光学系2側にずれていた場合は、一方の光線(図例ではHb1)の断面径が他方の光線(図例ではHb2)の断面径よりも大きくなる。このとき、二つの光線(Hb1,Hb2)の断面径の差分は、目標位置に対する入射光線の焦点のずれ量に対応したものとなる。
【0045】
したがって、走査光学系2の焦点調整に際しては、モニター画面に二つの光線の断面形状を映し出しながら、二つの光線の断面径の差が小さくなるように、走査光学系2から出射される光線(入射光線)の焦点を、例えば、走査光学系2内の焦点移動手段となるコリメータレンズ102の移動機構により調整する。このとき、焦点調整に適用する移動量は、少なくとも二つの光線の断面径の差が小さくなる条件で、また実用的には二つの光線の断面径の差が予め設定された許容値以内に収まる条件で、さらに理想的には二つの光線の断面径の差が等しくなる条件で求める。これにより、実際に画像形成装置のマシンに組み込んだ走査光学系2の焦点調整を行なって、通常通りに画像の形成動作を実行すると、走査光学系2から出射された光線が感光体106の表面で合焦するようになる。
【0046】
なお、上記移動機構を用いたコリメータレンズ102の移動は、手動で行なってもよいし、モータ等を用いて自動で行なってもよい。また、コリメータレンズ102の移動を自動で行なう場合は、焦点調整に適用する入射光線の焦点の移動量を、例えば、光線測定装置1が備えるコンピュータ(又は光線測定装置1本体に接続された端末装置のコンピュータ)を移動量算出手段として、次のような方法で求めればよい。即ち、2つの光線の断面径の差分と、目標位置からの焦点ずれ量との相関データを予め実験的に求めてコンピュータのメモリに記憶しておき、実際に光線測定装置1を用いて測定した2つの光線の断面径の差分に対応する焦点ずれ量を補正するための移動量(コリメータレンズ102の移動量)を、コンピュータのCPUが相関データから演算により求める。焦点移動手段となるコリメータレンズ102の移動機構は、移動量算出手段が求めた移動量に基づいて、コリメータレンズ102を光軸方向に移動させることにより、走査光学系2から出射される光線(入射光線)の焦点を目標位置に合わせて調整することになる。
【0047】
なお、上記第1の実施の形態においては、平面ミラー12と平面ミラー13の両方を、それぞれに対応するミラー移動部15,16によって、無偏光キューブハーフミラー11に接近離間する方向に移動させる構成としたが、これに限らず、いずれか一方の平面ミラーだけを移動させる構成としてもよい。
【0048】
<第2の実施の形態>
図7は本発明の第2の実施の形態に係る光線測定装置の構成を示す概略平面図である。本発明の第2の実施の形態に係る光線測定装置1は、上記第1の実施の形態と比較して、特に、測定光学系3の構成が異なっている。即ち、光線測定装置1の測定光学系3は、二つの無偏光キューブハーフミラー21,24と、相対応する二つの直角プリズム22,23と、相対応する二つの直角プリズム25,26と、三つの移動ステージ27,28,29を用いて構成されている。
【0049】
無偏光キューブハーフミラー21は、図示しない走査光学系2から出射される光線の入射側(光路の前段側)に配置され、無偏光キューブハーフミラー24は、測定器4に対する光線の出射側(光路の後段側)に配置されている。無偏光キューブハーフミラー21の斜面21Aと無偏光キューブハーフミラー24の斜面24Aは、同じ向き(互いに平行)に配置されている。無偏光キューブハーフミラー21は、分割手段として設けられたものである。
【0050】
測定光学系3の入射光軸と出射光軸は同一の光軸になっており、当該光軸(以下、「基準光軸」)上に、無偏光キューブハーフミラー21,24と直角プリズム22,23が直列に配置されている。即ち、走査光学系2側(図中、左側)から測定器4側(図中、右側)に向かって、無偏光キューブハーフミラー21、直角プリズム22、直角プリズム23及び無偏光キューブハーフミラー24が順に配置されている。直角プリズム22,23は、互いの斜面を向かい合わせた状態で配置されている。直角プリズム22の斜面は反射面22Aとなっており、直角プリズム23の斜面も反射面23Aとなっている。無偏光キューブハーフミラー21,24の反射面21A,24Aと直角プリズム22,23の反射面22A,23Aは、傾斜の向きが90度反転している。即ち、無偏光キューブハーフミラー21,24の反射面21A,24Aは、図中右下がりの向きで傾き、直角プリズム22,23の反射面22A,23Aは、図中右上がりの向きで傾いている。また、直角プリズム22の反射面22Aと直角プリズム23の反射面23Aとの間には隙間(空隙)が介在している。直角プリズム22は、第5の反射手段として設けられ、直角プリズム23は、第4の反射手段として設けられたものである。また、無偏光キューブハーフミラー24は、第3の反射手段として設けられたものである。
【0051】
直角プリズム25,26は、互いに同じ寸法で、かつ直角プリズム22,23よりも大きい寸法で形成されている。直角プリズム25,26は、基準光軸を間に挟んで、一方側(図中、上側)と他方側(図中、下側)に配置されている。直角プリズム25は、基準光軸から見て、外向きに二つの反射面25Aを配置している。同様に、直角プリズム26は、基準光軸から見て、外向きに二つの反射面26Aを配置している。また、直角プリズム25は、基準光軸の軸方向において、直角プリズム23から無偏光キューブハーフミラー24に至る部分にプリズムの斜面を配置している。一方、直角プリズム27は、基準光軸の軸方向において、無偏光キューブハーフミラー21から直角プリズム23に至る部分にプリズムの斜面を配置している。このため、直角プリズム25は、直角プリズム26よりも走査光学系2から遠い側に配置されている。直角プリズム25は、第1の反射手段として設けられ、直角プリズム26は、第2の反射手段として設けられたものである。
【0052】
移動ステージ27は、上述した無偏光キューブハーフミラー21,24と直角プリズム22,23を搭載している。また、移動ステージ28は直角プリズム22を搭載し、移動ステージ29は直角プリズム23を搭載している。移動ステージ27は、これに搭載された無偏光キューブハーフミラー21,24と直角プリズム22,23を基準光軸の軸方向に一体に移動させるものである。移動ステージ27は、無偏光キューブハーフミラー21,24と直角プリズム22,23を含む光学素子群を移動させる光学素子移動手段として設けられたものである。移動ステージ28は、これに搭載された直角プリズム22を基準光軸と垂直な軸方向に移動させるもので、第1の移動手段に相当するものである。移動ステージ29は、これに搭載された直角プリズム23を基準光軸と垂直な軸方向に移動させるもので、第2の移動手段に相当するものである。各々の移動ステージ27,28,29は、例えば、モータを駆動源として、それぞれ個別に移動するものである。
【0053】
光線測定装置1の測定器4は、拡大光学系17とCCDカメラ18とを用いて構成されている。拡大光学系17は、対物レンズ17Aと鏡筒17Bを用いて構成されている。また、光線測定装置1の測定光学系3と測定器4は、共通の移動ステージ30に搭載されている。移動ステージ30は、光線測定装置1の測定光学系3と測定器4を、基準光軸の軸方向に一体に移動させるものである。移動ステージ30は、例えば、モータを駆動源として移動するものである。
【0054】
上記構成からなる光線測定装置1においては、図8に示すように、走査光学系2から出射された光線(入射光線)が無偏光キューブハーフミラー21により第1の光線(透過光線)Hb1と第2の光線(反射光線)Hb2に分割される。このうち、第1の光線Hb1は、無偏光キューブハーフミラー21の斜面21Aを透過した後、直角プリズム22の反射面22Aで反射されて、直角プリズム25に入射する。また、第2の光線Hb2は、無偏光キューブハーフミラー21の斜面21Aで反射されて、直角プリズム26に入射する。
【0055】
直角プリズム25に入射した第1の光線Hb1は、当該直角プリズム25の二つの反射面25Aで順に反射されて、無偏光キューブハーフミラー24に入射する。また、直角プリズム26に入射した第2の光線Hb2は、当該直角プリズム26の二つの反射面26Aで順に反射されて、直角プリズム23に入射する。その際、直角プリズム25に入射した第1の光線Hb1は、二つの反射面25Aによって折り返し方式で反射される。同様に、直角プリズム26に入射した第2の光線Hb2は、二つの反射面26Aによって折り返し方式で反射される。
【0056】
無偏光キューブハーフミラー24に入射した第1の光線Hb1は、当該無偏光キューブハーフミラー24の斜面24Aで反射され、基準光軸と平行に出射される。直角プリズム23に入射した第2の光線Hb2は、当該直角プリズム23の反射面23Aで反射されて、無偏光キューブハーフミラー24に入射する。さらに、無偏光キューブハーフミラー24に入射した第2の光線Hb2は、当該無偏光キューブハーフミラー24の斜面24Aを透過して、基準光軸(第1の光線Hb1)と平行に出射される。こうして測定光学系3から出射された第1の光線Hb1と第2の光線Hb2は、互いに光軸が平行でかつ光軸同士が重ならないように拡大光学系17に入射する。
【0057】
本発明の第2の実施の形態に係る光線測定装置1においては、走査光学系2から測定光学系3へと入射された光線が、測定光学系3の中で、基準光軸と平行な方向に進む段階と、基準光軸と垂直な方向に進む段階を経て、測定器4の拡大光学系17へと出射される。このため、測定光学系3を構成する各々の光学部品(21〜26)は、基準光軸又はこれと垂直な軸に合わせて配置されることになる。また、第1の光線Hb1は、直角プリズム22、直角プリズム25及び直角プリズム24の内部(ガラス中)を通って進み、第2の光線Hb2は、直角プリズム26、直角プリズム23及び無偏光キューブハーフミラー24の内部(ガラス中)を通って進む。このため、各々の光線Hb1,Hb2が空気中を進む場合に比較して、光線の空気換算長が長くなる。
【0058】
また、拡大光学系17に向かって平行に進む第1の光線Hb1と第2の光線Hb2の光軸間距離は、測定光学系3が備える移動ステージ27の位置に依存したものとなる。このため、移動ステージ27を基準光軸の軸方向に移動させると、それに応じて二つの光線Hb1,Hb2の光軸間距離が変化する。例えば、図9(A)に示す配置状態を初期位置とし、当該初期位置から移動ステージ27を基準光軸に沿って走査光学系2に近づく方向に移動させると、図9(B)に示すように、直角プリズム22の反射面22Aで反射する第1の光線Hb1が直角プリズム25に入射する位置と、無偏光キューブハーフミラー21の斜面21Aで反射する第2の光線Hb2が直角プリズム26に入射する位置が、それぞれ走査光学系2側に移動する。このため、直角プリズム25の反射面25Aに到達する第1の光線Hb1の位置(光線が反射する位置)と、直角プリズム26の反射面26Aに到達する第2の光線Hb2の位置が、それぞれ基準光軸に近い側に変位する。その結果、基準光軸に垂直な方向において、測定光学系3から出射される第1の光線Hb1の位置は直角プリズム26側に移動し、測定光学系3から出射される第2の光線Hb2の位置は直角プリズム25側に移動する。
【0059】
これに対して、上記初期位置から移動ステージ27を基準光軸に沿って測定器4の拡大光学系17に近づく方向に移動させると、図9(C)に示すように、直角プリズム22の反射面22Aで反射する第1の光線Hb1が直角プリズム25に入射する位置と、無偏光キューブハーフミラー21の斜面21Aで反射する第2の光線Hb2が直角プリズム26に入射する位置が、それぞれ拡大光学系17側に移動する。このため、直角プリズム25の反射面25Aに到達する第1の光線Hb1の位置と、直角プリズム26の反射面26Aに到達する第2の光線Hb2の位置が、それぞれ基準光軸から遠い側に変位する。その結果、基準光軸に垂直な方向において、測定光学系3から出射される第1の光線Hb1の位置は直角プリズム25側に移動し、測定光学系3から出射される第2の光線Hb2の位置は直角プリズム26側に移動する。
【0060】
この場合、移動ステージ27の移動方向及び移動量は、図示しないモータの回転方向及び回転量を制御項目として、当該モータに対応するモータドライバにより制御される。したがって、本発明の第2の実施の形態に係る光線測定装置1においては、図9(D)に示すように、測定光学系3から測定器4の拡大光学系17に向けて出射される第1の光線Hb1と第2の光線Hb2の光軸を一致させた状態(光軸間距離がゼロの状態)を含めて、二つの光線Hb1,Hb2の光軸間距離をモータの駆動により無段階に調整する機能をもつことになる。
【0061】
また、上記の移動ステージ27を固定した状態で移動ステージ28を移動させると、第1の光線Hb1の空気換算長が変化する。具体的には、移動ステージ28を基準光軸から遠ざかる方向に移動させると、第1の光線Hb1の空気換算長が長くなる。このため、第1の光線Hb1の像点は、基準光軸上で走査光学系2に近い側に移動する。また、移動ステージ28を基準光軸に近づく方向に移動させると、第1の光線Hb1の空気換算長が短くなる。このため、第1の光線Hb1の像点は、出射光軸上で走査光学系2から遠い側に移動する。
【0062】
同様に、上記の移動ステージ27を固定した状態で移動ステージ29を移動させると、第2の光線Hb2の空気換算長が変化する。具体的には、移動ステージ29を基準光軸から遠ざかる方向に移動させると、第2の光線Hb2の空気換算長が長くなる。このため、第2の光線Hb2の像点は、基準光軸上で走査光学系2に近い側に移動する。また、移動ステージ29を基準光軸に近づく方向に移動させると、第2の光線Hb2の空気換算長が短くなる。このため、第2の光線Hb2の像点は、基準光軸上で走査光学系2から遠い側に移動する。
【0063】
そこで、走査光学系2の焦点調整を行なう前の光線測定装置1の調整作業として、移動ステージ28,29により直角プリズム25,26を、前述した第1〜第3の条件を満たす位置に移動させる。このとき、直角プリズム25,26は、いずれも、基準光軸に垂直な軸方向で、それぞれの位置が調整されることになる。走査光学系2の焦点調整に関しては、上記第1の実施の形態で記述した内容と同様であるため、説明を省略する。
【0064】
なお、上記第2の実施の形態においては、直角プリズム25と直角プリズム26の両方を、それぞれに対応する移動ステージ28,29によって、基準光軸に接近離間する方向に移動させる構成としたが、これに限らず、いずれか一方の直角プリズムだけを移動させる構成としてもよい。
【0065】
<適用例>
本発明の実施の形態に係る光線測定装置1は、走査光学系2の焦点調整を行なうための装置として、電子写真式の画像形成装置のマシン内に組み込むようにしてもよい。また、光線測定装置1を備える画像形成装置を発明の一つとして抽出してもよい。その場合、画像形成装置は、感光体の表面に形成したトナー像を、感光体から用紙に転写する方式(以下、「直接転写方式」)のものでもよいし、感光体から中間転写体(例えば、中間転写ベルト等)にトナー像を転写(一次転写)した後、当該トナー像を中間転写体から用紙に転写(二次転写)する方式のものでもよい。
【0066】
図10は本発明が適用される画像形成装置の一例として、直接転写方式の画像形成装置の構成を示す概略図である。図10においては、ドラム形状の感光体106が図中矢印方向(反時計廻り方向)に回転駆動される。感光体106の周囲には、当該感光体106の回転方向にしたがって、帯電器32、走査光学系2、電位センサ34、現像器35、転写補助帯電器36、パッチ濃度センサ37、クリーナー38、除電器39が順に配置されている。また、感光体106を間に挟んで、帯電器32の反対側には転写ベルト40が配置されている。転写ベルト40の一方端側には定着器41が配置されている。
【0067】
帯電器32は、予め設定された帯電電圧(帯電量)をもって感光体106の表面を一様に帯電するものである。走査光学系2は、感光体106の表面を光線で露光走査することにより、感光体106の表面に静電潜像を形成するものである。電位センサ34は、感光体106の回転方向において、走査光学系2による露光位置よりも下流側の位置で、感光体106上の表面電位を測定するものである。電位センサ34で測定される感光体106の帯電電位は、画像濃度を制御するための一つのパラメータとなる。
【0068】
現像器35は、感光体106上の静電潜像をトナーで現像するものである。現像器35の内部には、トナーとキャリアを混合した二成分現像剤が収容されている。また、現像器35には現像ロール42が設けられている。現像ロール42は、それ自身が回転することで、感光体106の表面にトナーを連続的に供給し、静電潜像をトナー像に現像するものである。現像器35には、トナー容器43に収容されたトナーがトナー補給モータ44の駆動によって供給(補給)される構成となっている。また、現像器35にはトナー濃度センサ45が取り付けられている。トナー濃度センサ45は、現像器35内のトナー濃度(トナー混合比)を測定するものである。トナー濃度センサ45で測定されるトナー濃度は、画像濃度を制御するための一つのパラメータとなる。
【0069】
転写補助帯電器36は、感光体106から用紙へのトナー像の転写を補助するためのものである。感光体106から用紙へのトナー像の転写は、感光体106と転写ベルト40とが近接して対向する部分で行なわれる。また、用紙に転写されたトナー像は、定着器41で加熱及び加圧により定着される。パッチ濃度センサ37は、感光体106上に形成された基準パッチの濃度を測定するものである。パッチ濃度センサ37で測定される基準パッチ濃度は、画像濃度を制御するための一つのパラメータとなる。クリーナー38は、用紙に転写されずに感光体106の表面に残った不要なトナーを除去するものである。除電器39は、感光体106の表面に残った不要な電荷を除去するものである。
【0070】
上記構成からなる画像形成装置においては、感光体106を回転させた状態で、感光体106の表面を帯電器32で一様に帯電するとともに、走査光学系2によって感光体106の表面に静電潜像を形成する。その際、電位センサ34では、感光体106の表面において、帯電器32により一様に帯電した電位と、露光走査後の電位とを測定する。また、現像器35では、現像ロール42の回転により、感光体106上の静電潜像をトナー像に現像する。こうして現像されたトナー像は、転写ベルト40に載せて搬送された用紙(不図示)に転写されるとともに、定着器41で用紙に定着される。また、画像濃度を検出するために、感光体106の表面には帯電、露光及び現像の各工程を経て基準パッチが形成され、この基準パッチの濃度がパッチ濃度センサ37で測定される。また、現像によって消費された分のトナーはトナー補給モータ44の駆動により、トナー容器43から現像器35へと補給される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明が適用される光線測定装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】走査光学系の構成例を示す概略図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る光線測定装置の構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る光線測定装置が備える測定光学系の配置状態を示す概略図である。
【図5】光線の断面径の変化曲線の例を示す図である。
【図6】光学走査系から出射される光線の焦点が目標位置に一致する場合と不一致の場合の状態を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る光線測定装置の構成を示す概略平面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る光線測定装置の光路を示す概略図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る光線測定装置の光路の変化を示す概略図である。
【図10】本発明が適用される画像形成装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0072】
1…光線測定装置、2…走査光学系、3…測定光学系、4…測定器、11,21,24…無偏光キューブハーフミラー、12,13…平面ミラー、14,22,23,25,26…直角プリズム、15,16…ミラー移動部、17…拡大光学系、18…CCDカメラ、106…感光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光軸に沿って入射された光線を互いに光軸方向の異なる第1の光線と第2の光線に分割する分割手段と、
前記分割手段によって分割された前記第1の光線を折り返し方式で反射させる第1の反射手段と、
前記分割手段によって分割された前記第2の光線を折り返し方式で反射させる第2の反射手段と、
前記第1の反射手段によって反射された前記第1の光線を出射光軸に沿って反射させる第3の反射手段と、
前記第2の反射手段によって反射された前記第2の光線を前記出射光軸に沿って反射させる第4の反射手段と、
前記出射光軸に沿って反射された前記第1の光線と前記第2の光線をそれぞれ取り込む拡大光学系と、
前記拡大光学系に取り込まれた前記第1の光線と前記第2の光線の各断面径を測定するための撮像手段と、
前記第1の反射手段及び前記第2の反射手段のうち、少なくとも一方の反射手段を、当該反射手段に入射する光線の光軸方向に移動させる移動手段と
を備える光線測定装置。
【請求項2】
前記移動手段は、前記第1の反射手段を当該第1の反射手段に入射する光線の光軸方向に移動させる第1の移動手段と、前記第2の反射手段を当該第2の反射手段に入射する光線の光軸方向に移動させる第2の移動手段とを有する
請求項1記載の光線測定装置。
【請求項3】
前記第1の反射手段と前記第2の反射手段は、それぞれ光軸に対して45度をなす二つの反射面を有し、
前記分割手段によって分割された前記第1の光線を前記第1の反射手段に向けて反射させる第5の反射手段を備え、
前記入射光軸と前記出射光軸は、互いに同軸上に設定され、
前記分割手段、前記第3の反射手段、前記第4の反射手段及び前記第5の反射手段は、前記入射光軸及び前記出射光軸と同軸上に配置され、
前記分割手段、前記第3の反射手段、前記第4の反射手段及び前記第5の反射手段を含む光学素子群を前記入射光軸及び前記出射光軸の光軸方向に一体に移動させる光学素子移動手段を備える
請求項1記載の光線測定装置。
【請求項4】
前記撮像手段を用いて測定された前記第1の光線と前記第2の光線の断面径の差が小さくなる条件で、前記入射光線の焦点の移動量を算出する移動量算出手段を備える
請求項1、2又は3記載の光線測定装置。
【請求項5】
請求項4記載の光線測定装置と、
前記入射光軸に沿って入射される光線の焦点を、前記移動量算出手段によって算出された前記移動量に基づいて移動させる焦点移動手段と
を備える焦点調整装置。
【請求項6】
感光体と、
前記感光体の表面を光線で露光走査する走査光学系と、
前記走査光学系が出射する光線を測定対象とする光線測定装置とを備え、
前記光線測定装置は、
前記走査光学系から入射光軸に沿って入射された光線を互いに光軸方向の異なる第1の光線と第2の光線に分割する分割手段と、
前記分割手段によって分割された前記第1の光線を折り返し方式で反射させる第1の反射手段と、
前記分割手段によって分割された前記第2の光線を折り返し方式で反射させる第2の反射手段と、
前記第1の反射手段によって反射された前記第1の光線を出射光軸に沿って反射させる第3の反射手段と、
前記第2の反射手段によって反射された前記第2の光線を前記出射光軸に沿って反射させる第4の反射手段と、
前記出射光軸に沿って反射された前記第1の光線と前記第2の光線をそれぞれ取り込む拡大光学系と、
前記拡大光学系に取り込まれた前記第1の光線と前記第2の光線の各断面径を測定するための撮像手段と、
前記第1の反射手段及び前記第2の反射手段のうち、少なくとも一方の反射手段を、当該反射手段に入射する光線の光軸方向に移動させる移動手段と
を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−127668(P2010−127668A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300395(P2008−300395)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】