説明

光触媒反応装置

【課題】光触媒反応を、高い反応効率で行う。
【解決手段】光触媒の存在下で、液体原料と気体原料とに光を照射して光触媒反応を行う光触媒反応装置であって、光源3と、光源3からの光に対して透明であり、内部に光触媒と液体原料とを加圧状態で収容する反応容器2と、液体原料中に気体原料をバブリング状態で供給するバブリング装置4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒反応により対象物に所定の処理を施す光触媒反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒反応は、その強い光酸化力によって、室温で有機物を完全に酸化できることから、汚れの分解、消臭・脱臭、抗菌・殺菌、有害物質の除去等に幅広く利用されている。近年では、地球温暖化の主要因となっている二酸化炭素の排出量を低減する一手段としての利用が注目されている。特に、光触媒の存在下で二酸化炭素と水に紫外線を照射することで、二酸化炭素を還元して有用な有機化合物として固定化する方法は、有害副生物を生成することのないクリーンな技術として注目を集めている。例えば、二酸化炭素を含む水溶液中に光触媒を分散させ、この水溶液に紫外光を照射することで、二酸化炭素を還元して、蟻酸、ホルムアルデヒド、メタノール、メタン等の有機化合物を生成させることで、二酸化炭素を固定化する方法である。
【0003】
下記特許文献1には、光触媒の存在下で、二酸化炭素を水またはエタノールと反応させる二酸化炭素の固定化反応装置において、反応容器の上面を光透過性材料とし、装置外部から紫外光を照射する構成が開示されており、光の照射面積が広く、装置上面の光透過性材料を介して、反応装置内部の反応の進行状況を観察可能なことが記載されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、二酸化炭素を光触媒で有機物に固定する試験装置としての光触媒反応装置において、光源として紫外線発光ダイオードを用い、この光源を反応容器の周りに設置すると共に、光源を反応容器内にも設けた構成が開示されており、これにより紫外光を効率よく照射できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−102679号公報
【特許文献2】特開2008−246355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献1に記載の反応装置においては、液体原料が貯留された反応容器中に気体原料を流通させるだけなので、液体原料と気体原料との接触が充分でなく、反応率が低いという問題がある。これに対して、特許文献2の記載の反応装置では、液体原料中に気体原料をバブリングして供給することが開示されている。しかしながら、特許文献2に記載の反応装置は、試験用装置であるため、液体の貯留量が少なく、液体原料中に充分な気体原料を溶解させられず、反応効率が低いという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、液体原料中に気体原料を充分に溶解して、光触媒反応を高い反応効率で行うことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、光触媒反応装置に係る第1の解決手段として、光触媒の存在下で液体原料と気体原料とに光を照射して光触媒反応を行う光触媒反応装置であって、光を照射する照射手段と、光に対して透明であり、内部に光触媒と液体原料とを加圧状態で収容する反応容器と、液体原料中に気体原料をバブリング状態で供給するバブリング装置とを備えてなる、という手段を採用する。
本発明によれば、反応容器内に光触媒と液体原料とが加圧状態で収容され、液体原料中へ気体原料がバブリングして供給されるので、液体原料中に気体原料を高濃度で溶解することができる。また、気体原料が液体原料中でバブリングされることで、液体原料と気体原料との接触度合いが増大すると共に、液体原料中の光触媒の分散と攪拌とが充分になされることとなる。したがって、本発明によれば、光触媒反応の反応が促進されるので、反応効率を向上させることができる。
【0009】
光触媒反応装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、反応容器の排気口とバブリング装置の給気口とを接続し、内部に気体原料を加圧状態で循環させてなる金属製の循環配管を備えてなる、という手段を採用する。
本発明によれば、循環配管を備えるので、未反応の気体原料を反応容器から排気し、バブリング装置へ再導入して、反応に利用することができる。また、循環配管内は加圧状態であるので、気体原料を加圧状態のまま、液体原料中にバブリングして供給できる。また、加圧状態の気体原料を循環させて反応させるので、光触媒反応の効率を向上させることができる。また、循環配管をステンレス鋼製とするので、耐圧強度が向上し、以って充分な加圧状態を維持することができる。さらに、機械的強度も向上するので、光触媒反応装置の大型化が可能となる。
【0010】
光触媒反応装置に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、バブリング装置は、気体原料をバブリングジェットノズルから噴出させるものである、という手段を採用する。
本発明によれば、バブリングジェットノズルを採用するので、気体原料を液体原料中に微細な泡状でバブリングして供給することが可能であり、よって気体原料と液体原料との接触度合いを増大させることができる。また、バブリングジェットノズルからの噴出流によって、液体原料中に光触媒と気体原料とを分散させて攪拌することができるので、光触媒反応を効率よく進行させることができる。
【0011】
光触媒反応装置に係る第4の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、バブリング装置は、気体原料を多孔板を介して噴出させるものである、という手段を採用する。
本発明によれば、多孔板を採用するので、気体原料を所望径の気泡として、液体原料中にバブリングして供給することができ、以って気体原料が気泡として液体原料中に滞留する時間を増大させて、光触媒反応を効率よく進行させることができる。
【0012】
光触媒反応装置に関する第5の解決手段として、上記第1〜第4のいずれかの解決手段において、反応容器および循環配管の加圧状態は5MPa未満である、という手段を採用する。
【0013】
光触媒反応にする第6の解決手段として、上記第1〜第5のいずれかの解決手段において、反応容器内に、光を透過する内筒を配設し、該内筒内に照射手段を収容した、という手段を採用する。
本発明によれば、照射手段を反応装置内に備えるので、近距離で光を照射できる。また、拡散光の強度は距離の二乗に反比例するので、高強度の光を反応容器に照射でき、よって光触媒反応を効率良く行うことができる。
【0014】
光触媒反応に関する第7の解決手段として、上記第6の解決手段において、照射手段の光が紫外光、可視光、太陽光のうちのいずれかであり、照射手段を冷却する冷媒が内筒内に供給される、という手段を採用する。
本発明によれば、紫外光、可視光、太陽光は、照射により発熱し、これらを冷却する冷媒を照射手段と共に内筒内に収容するので、反応容器内での光触媒反応を、照射による加熱の心配なく、反応に適した条件下で安定して行うことができる。
【0015】
光触媒反応に関する第8の解決手段として、上記第1〜第7のいずれかの解決手段において、液体原料が水または有機アミンであり、気体原料が二酸化炭素であって、光触媒反応が二酸化炭素の還元反応である、という手段を採用する。
本発明によれば、二酸化炭素を効率の良い光触媒反応で、有機化合物に固定化することができる。
【0016】
光触媒反応に関する第9の解決手段として、上記第1〜第8のいずれかの解決手段において、光触媒が粒状もしくは粉末状であり、反応容器内の液体原料と該光触媒とを攪拌する攪拌手段を備えると共に、該光触媒の逆流防止部をバブリング装置に備える、という手段を採用する。
本発明によれば、光触媒を粒状もしくは粉末状とするので、液体原料および気体原料との接触の度合いを大きくすることができる。また、これらを攪拌するので、接触度合いを大きくして、反応効率を上げることができる。また、逆流防止部をバブリング装置に備えるので、粒状または粉末状の光触媒が不要に反応容器外へ流出することがなく、安定して光触媒反応を行うことができる。
【0017】
光触媒反応に関する第10の解決手段として、上記第1〜第9のいずれかの解決手段において、循環配管にガス分析部を備えた、という手段を採用する。
本発明によれば、ガス分析部を設けるので、逐次、循環配管中の流通ガスの成分を分析可能となり、光触媒反応の反応状況を容易に把握し、管理することができる。
【0018】
光触媒反応に関する第11の解決手段として、上記第1〜第10のいずれかの解決手段において、循環配管に気化した液体原料を凝縮させる冷却部を備えた、という手段を採用する。
本発明によれば、気化した液外原料が光触媒反応装置内で適宜凝縮し、気体原料の流通を妨げたりするのを防止することができ、光触媒反応を安定して行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、反応容器内に光触媒と液体原料とが加圧状態で収容され、液体原料中に気体原料がバブリングして供給されるので、液体原料中に気体原料を高濃度で溶解することができる。
また、気体原料が液体原料中でバブリングされることで、液体原料と気体原料との接触度合いが増大すると共に、液体原料中の光触媒の分散と攪拌とが充分になされることになるので、光触媒反応の反応が促進され、以って反応効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光触媒反応装置Aの構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る光触媒反応装置Bの構成図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る光触媒反応装置Cの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態の光触媒反応装置について説明する。
本第1実施形態に係る光触媒反応装置Aは、図1に示すように、反応容器2、光源3、バブリング装置4、循環配管5及びガス供給源6等から構成されている。
【0022】
反応容器2は、その内部に光触媒と液体原料とを収容し、光触媒による光触媒反応を行うものである。光源3は、上記反応容器2内の光触媒に所定波長の光を照射して、光触媒反応を行わせるものであって、図示するように反応容器2内に設置されている。また、反応容器2の下部には気体原料の給気口24が、反応容器2の上部には排気口25がそれぞれ設けられており、これら給気口24と排気口25とは図示するように循環配管5で相互に接続されている。また、循環配管5の途中部位にはガス供給源6が接続されている。さらに、給気口24と循環配管5との間には、図示するようにバブリング装置4が設けられている。気体原料は、このバブリング装置4によって反応容器2内の液体原料をバブリングしつつ液体原料中に供給される。
【0023】
反応容器2内では、光触媒の存在下で、光源3から照射された光によって、気体原料と液体原料とが光触媒反応を起こし、種々の有機化合物が気体生成物あるいは液体生成物として生成される。また、未反応の気体原料は気体生成物と共に、反応容器2の排気口25から排気されて循環配管5を通り、反応容器2内に再度導入されて、光触媒反応に供される。
【0024】
すなわち、このような本光触媒反応装置Aにあっては、反応容器2と循環配管5とによって、閉鎖循環系の反応装置が構成される。本光触媒反応装置Aにあっては、この閉鎖循環系を加圧状態とすると共に、液体原料を気体原料でバブリングすることによって、液体原料中への気体原料の溶解度を増大させて、反応効率を上げている。
【0025】
さらに詳細を説明すると、上記反応容器2は、光源3を内部に収容した内筒21と、内筒21よりも大径の外筒22とからなる。光源3は、使用する光触媒の種類によって、適宜選択されるが、可視光領域にはハロゲンランプ、紫外・可視光領域には、水銀ランプやキセノンランプがそれぞれ好適である。光照射によって光触媒が加熱されると、熱触媒反応が起こる場合があるので、内筒21には、光源3を冷却するための冷却水が循環している。反応容器2の頂部には、冷却水排出口26と冷却水供給口27とが設けられ、これらを接続するように冷却水循環路7が配設されており、この冷却水循環路7の途中には、加熱された冷却水を貯留して冷却する冷却槽8が配設されている。
【0026】
内筒21、外筒22は、共に光源3から出射される光を透過する材料からなるものであって、例えば、ガラスや石英からなる。外筒22の上端部は、内筒21と同径となるように縮径され、内筒21と外筒22との間に形成される空隙部が反応部23として封止されており、この反応部23内に光触媒と液体原料とが収容される。また、反応容器2は、マグネチックスターラーなどの攪拌器13上に載置されており、攪拌子14によって、反応部23の内容物が攪拌される。
【0027】
液体原料の液面下となる外筒22の下側部には、上記給気口24が配設されており、バブリング装置4が接続されている。このバブリング装置4により、液体原料中に気体原料がバブリングして供給される。また、液体原料の液面上となる外筒22の上側部には、2つの排出口25a、25bが設けられており、それぞれ配管51、52が接続されて、循環ポンプ9を介して循環配管5とされて、給気口24に接続されている。
【0028】
配管51、52には、それぞれ切替栓53、54が設置されている。切替栓53、54は、特に限定されるものではないが、ガラス摺合活栓やダブル・フェルール型の喰込式継手(スエジロック:登録商標)などが好適である。この切替栓53、54よりも下流側の配管51、52と循環配管5とは金属(ステンレス、銅、亜鉛、チタン等)製の配管とされている。これにより、循環配管5の耐圧強度が高くすることができる。
【0029】
また、反応容器2を大容量化する際には、それに伴って循環配管5の配管長が大きくなるが、循環配管5を例えばステンレス鋼管とすることで、機械的強度が高くなるので、自重で破損する心配がなく、光触媒反応装置Aの大型化が可能となる。また、ステンレス鋼は耐腐食性が高いので、光触媒反応で生成する生成物と反応してしまう心配がない。なお、配管51、52には、気化した液体原料が循環ポンプ9や循環配管5に流入しないように、配管冷却器91、92がそれぞれ配設されている。
【0030】
配管51には、ガス分析部10がバルブ11a、11bを介して接続されており、反応容器2内の気体のサンプリングと分析とが行われる。さらに配管51には、圧力計12が設置されており、図示しない制御系を介して循環ポンプ9に接続され、反応容器2及び循環配管5内の圧力が適宜、所定の加圧状態になるように管理される。
【0031】
バブリング装置4は、反応容器2の給気口24に接続された二重配管のバブリング用配管41を備えてなり、二重配管の内管は循環配管5に接続されており、気体原料がバブリングして液体原料中に供給される。二重配管の外管中には、反応容器2内の液体原料が導入されており、この液体原料が満たされた外管中へ内管の気体原料を圧送することで、気体原料が気泡(バブル)となって放出される。バブリング用配管41と給気口24との接続部には、反応部23の光触媒がバブリング用配管中へ逆流しないように、逆流防止膜42が備えられている。この逆流防止膜42は、石英膜やセラミック板などが好適である。
【0032】
気体原料がバブリング装置4を介して加圧状態で液体原料中にバブル状に供給されることにより、液体原料と気体原料との接触の度合いが大きくなり、液体原料中へ気体原料を高濃度で溶解させることができるようになる。そして、この結果として、本光触媒反応装置Aにおける光触媒反応の反応効率を従来よりも向上させることができる。
【0033】
また、液体原料の液面下となる外筒22の側部とバブリング用配管41とには、図示するようにサンプリングライン15がそれぞれ設けられており、反応部23内の内容物を採取・分析して、光触媒反応の進行度を容易に確認できるようになっている。
【0034】
次に、このように構成された光触媒反応装置Aを用いた光触媒反応とその実施方法について、さらに詳しく説明する。
【0035】
本光触媒反応装置Aでは、反応部23内に光触媒と液体原料とを入れた後に、減圧して光触媒と液体原料中とを曝気すると共に、光触媒反応装置A内を清浄にする。そして、ガス供給源6から循環配管5及びバブリング装置4を介して反応部23に所定量の気体原料を供給して、反応部23及び循環配管5内を加圧状態の気体原料雰囲気とする。なお、ガス供給源6からの気体原料の供給は、この時点で一旦休止する。
【0036】
この後、光源3を点灯して光触媒反応を進行させると共に、循環ポンプ9を稼働させて、光触媒反応装置A内の気体原料を加圧状態で循環させる。すなわち、気体原料は、バブリング装置4を介して給気口24からバブリング状態で反応部23に導入され、液体原料中に溶解し、光触媒反応で消費される。その一方で、液体原料に溶解しなかった気体原料は反応部23の排気口25から排出され、循環配管5及びバブリング装置4を介して反応部23に再導入される。
【0037】
気体原料の加圧状態は、ガス供給源6からの供給量によって調整することができる。また、反応系の圧力は、圧力計12によって反応圧を検知し、不足分をガス供給源6から気体原料を適宜供給することで一定の加圧状態に維持される。気体原料の加圧状態は、最大5MPa未満とし、好ましくは0〜20kPa程度とする。これは、5MPaを超えると反応容器2の耐圧強度を超えるためである。
【0038】
さらに、光源3の点灯と同時に冷却水の循環を開始して、光源3によって反応容器2内が加熱しないようにする。また、配管冷却器91、92の冷却も開始して、液体原料や溶媒が循環配管5へ導入されないようにする。光触媒反応の進行度合いは、サンプリングライン15から反応部23の内容物を適宜採取することと、配管52に接続されたガス分析部で分析することによって確認される。また、光触媒反応の終了は、ガス分析部10によって反応部23の内容物及び循環配管5中のガス成分を分析し、この分析の結果に基づいて決定される。
【0039】
本光触媒反応装置Aで行う光触媒反応は、液体原料と気体原料とを用いたものであれば、特に限定されるものではないが、水、アルコール、またはモノエタノールアミンに代表される有機アミンを液体原料とし、二酸化炭素を気体原料とすれば、二酸化炭素を光触媒反応で還元して、他の有機化合物に固定化できる。特にモノエタノールアミンは二酸化炭素の溶解度が高いので、光触媒反応を高効率で行うことができる。また、必要に応じて、液体原料を他の溶媒と共に用いても良い。
【0040】
光触媒としては、TiO、ZnO、CdS、GaP、SiC等、既に種々のものが提案されているが、反応効率、安定性等の観点からTiOが好適である。TiOは、ルチル型、アナターゼ型、あるいはこれらの共存型のいずれであってもかまわない。光触媒の形状も特に限定されるものではないが、液体原料中に均一に分散可能なように、粒状または粉末状であることが好ましい。さらに、上記光触媒に、金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等の貴金属のほか、これら貴金属の硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩等を担持させてたものを用いても良い。
【0041】
例えば、光触媒を用いた二酸化炭素の固定化反応は、以下の(1)〜(5)式で示される還元反応である。
CO + 2H + 2e → CO + HO …(1)
CO + 2H + 2e → HCOOH …(2)
CO + 4H + 4e → HCHO + HO …(3)
CO + 6H + 6e → CHOH + HO …(4)
CO + 8H + 8e → CH + 2HO …(5)
【0042】
上記還元反応のうち、いずれの反応が優勢となるかは、光触媒の種類および反応条件によって適宜変化するが、これらの反応によって、二酸化炭素が一酸化炭素、蟻酸、ホルムアルデヒド、メタノール、メタン等の有機化合物に固定化される。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によれば、内部に光触媒と液体原料とを加圧状態で収容する反応容器2に、気体原料をバブリング装置4からバブリング状態で供給するので、液体原料中に気体原料を高濃度で溶解させることができ、この結果として光触媒反応を効率よく行うことができる。
【0044】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について図2を参照して説明する。
本第2実施形態に係る光触媒反応装置Bは、基本構成は第1実施形態と同様であるが、バブリング装置4において、図示するようにバブリング用配管41の先端にバブリングジェットノズル43と逆流防止膜42とを接続した点が第1実施形態とは異なる。なお、図2において、図1と共通の構成要素は同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0045】
バブリングジェットノズル43は、加圧状態の気体原料を更に高圧状態でノズル先端から気泡流として噴出するものであって、これにより、気体原料は微細な気泡流となって、液体原料中にバブリングして供給される。
【0046】
このような第2実施形態によれば、気体原料と液体原料との接触度合いがより一層増大する。また、バブリングジェットノズル43からの噴出流によって、反応部23内の光触媒と液体原料と気体原料とを充分に分散・攪拌することができる。よって、光触媒反応をより一層、効率よく進行させることができる。また、本実施形態において、バブリング条件によっては、反応部23内を充分に攪拌することが可能となるので、攪拌器13および攪拌子14とを不要とすることも可能である。
【0047】
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態について図3を参照して説明する。
本第3実施形態に係る光触媒反応装置Cは、基本構成は第1実施形態と同様であるが、反応容器2の外筒22の底部に多孔板44を配設し、この多孔板44にバブリング装置4のバブリング用配管41を接続した点が第1実施形態とは異なる。なお、図3において、図1と共通の構成要素は同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0048】
多孔板44は、セラミックやガラス等からなるものであって、バブリング用配管41から供給される気体原料を外筒22内に噴出させるので、気体原料は反応容器2の底面全体から均一にバブリングされる。このような多孔板44には、汎用のエアストーン等を利用することができる。
【0049】
このような第3実施形態によれば、気体原料を所望径の気泡として、液体原料中にバブリングして供給することができ、気体原料が気泡として液体原料中に滞留する時間を増大させて、光触媒反応をより一層と効率よく進行させることができる。本実施形態においても、実施形態2と同様に、バブリング条件によっては、反応部23内を充分に攪拌することが可能となるので、攪拌器13と攪拌子14とを不要とすることも可能である。
【0050】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、例えば、バブリング装置4において、バブリング用配管41を用いずに、微細な孔が多数形成された気泡発生用管を用意し、この気泡発生管を反応容器2の外筒22の底部に渦巻状に配設して、内筒21を包囲するようにエアーカーテン状にバブリングさせる構成のもの等、種々の変形例が考えられる。また、外筒22の周囲に鏡などの反射板を取り付けても良い。
【符号の説明】
【0051】
A、B、C…光触媒反応装置、2…反応容器、21…内筒、22…外筒、23…反応部、24…給気口、25…排気口、3…光源、4…バブリング装置、42…逆流防止膜、43…バブリングジェットノズル、44…多孔板、5…循環配管、91、92…配管冷却器、10…ガス分析部、13…攪拌器、14…攪拌子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒の存在下で液体原料と気体原料とに光を照射して光触媒反応を行う光触媒反応装置であって、
前記光を照射する照射手段と、
前記光に対して透明であり、内部に前記光触媒と前記液体原料とを加圧状態で収容する反応容器と、
前記液体原料中に前記気体原料をバブリング状態で供給するバブリング装置と
を備えることを特徴とする光触媒反応装置。
【請求項2】
前記反応容器の排気口と前記バブリング装置の給気口とを接続し、内部に前記気体原料を加圧状態で循環させてなる金属製の循環配管を備えてなることを特徴とする請求項1記載の光触媒反応装置。
【請求項3】
前記バブリング装置は、前記気体原料をバブリングジェットノズルから噴出させるものであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の光触媒反応装置。
【請求項4】
前記バブリング装置は、前記気体原料を多孔板を介して噴出させるものであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の光触媒反応装置。
【請求項5】
前記反応容器および循環配管の加圧状態は、5MPa未満であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の光触媒反応装置。
【請求項6】
前記反応容器内に、前記光を透過する内筒を配設し、該内筒内に前記照射手段を収容したことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の光触媒反応装置。
【請求項7】
前記照射手段の光が紫外光、可視光、太陽光のうちのいずれかであり、前記照射手段を冷却する冷媒が前記内筒内に供給されることを特徴とする請求項6記載の光触媒反応装置。
【請求項8】
前記液体原料が水または有機アミンであり、前記気体原料が二酸化炭素であって、前記光触媒反応が二酸化炭素の還元反応であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の光触媒反応装置。
【請求項9】
前記光触媒が粒状もしくは粉末状であり、前記反応容器内の前記液体原料と該光触媒とを攪拌する攪拌手段を備えると共に、該光触媒の逆流防止部を前記バブリング装置に備えることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の光触媒反応装置。
【請求項10】
前記循環配管に、ガス分析部を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の光触媒反応装置。
【請求項11】
前記循環配管に、気化した前記液体原料を凝縮させる冷却部を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の光触媒反応装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−104515(P2011−104515A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261948(P2009−261948)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】