説明

光触媒吹付材

【課題】 耐候性や耐酸性に優れ、強い日光や酸性雨に対しても劣化することなく光触媒作用を長期に渡って持続できる光触媒吹付材を提供する。
【解決手段】 アルミナセメント100重量部に対して、シリカヒュームを1〜25重量部、アナターゼ型酸化チタンを3〜30重量部混合する。セメント基材としてアルミナセメントにシリカヒュームを混合したものを用いたから、アルミナセメントの耐酸性に優れ、白華しにくい性質により、強い日光や酸性雨に対しても劣化することなく光触媒作用を長期に渡って持続できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントを基材とした光触媒吹付材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメントを基材とした光触媒吹付材が特許文献1に開示されている。この技術は、普通ポルトランドセメント50〜90重量%と、シリカヒューム3〜15重量%と、アナターゼ型酸化チタン5〜40重量%を混合したことを特徴としており、この光触媒吹付材を例えばコンクリート仕上げが求められる建築物の外壁等に吹き付けると、紫外線による光触媒作用で大気中のNOx・SOxや壁面に付着した油分等の汚れを自然分解できるというものである。
【0003】
ところで、前記技術ではセメント基材に普通ポルトランドセメントを用いているから、長期に渡って使用すると強い日光や酸性雨で劣化し、耐候性や耐酸性に満足できるものではなかった。
【特許文献1】特開平11−263660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、耐候性や耐酸性に優れた光触媒吹付材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) アルミナセメントとシリカヒュームを主成分とするセメント基材に光触媒である酸化チタンを混合した、光触媒吹付材
2) 酸化チタンがアナターゼ型である、前記1)記載の光触媒吹付材
3) アルミナセメント100重量部に対して、シリカヒュームを1〜25重量部、酸化チタンを3〜30重量部混合した、前記1)又は2)記載の光触媒吹付材
4) 増量材である珪砂と粘結剤と顔料を混合した、前記1)〜3)いずれか記載の光触媒吹付材
にある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、セメント基材としてアルミナセメントにシリカヒュームを混合したものを用いたから、アルミナセメントの耐酸性に優れ、白華しにくい性質により、強い日光や酸性雨に対しても劣化することなく光触媒作用を長期に渡って持続できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の混合比としては、アルミナセメント100重量部に対して、シリカヒューム1〜25重量部、酸化チタン3〜30重量部の範囲が実用的である。シリカヒュームが25重量部以上であるとアルミナセメントとの混合物において分散性が悪くなり、固化物の強度が弱くなるという問題があり、1重量部以下であるとシリカヒュームによる強度増大、良好な流動性、耐久性の向上の効果が得られないという問題がある。また、酸化チタンが30重量部以上であると吹き付け後に酸化チタンが脱落するという問題があり、3重量部以下であると光触媒の効果が得られないという問題がある。
【0008】
酸化チタンとしては、アナターゼ型とルチル型の2つの結晶構造があり、光触媒の効果が高いアナターゼ型が用いられる。増量材としては珪砂や洗い砂等が用いられ、粘結剤としては変性セルロース・ポリビニルアルコール樹脂等が用いられる。着色する場合は顔料も必要に応じて所定量が混合される。
【0009】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例1】
【0010】
本実施例と従来例の光触媒吹付材の配合成分を表1に示す。本実施例の光触媒吹付材と従来例の光触媒吹付材の防汚性・空気浄化能力・耐候性・耐酸性・物性を比較した。試験体はセメント板材の表面に光触媒吹付材を0.25g(膜厚1〜2mm)吹き付けたものを使用した。
【0011】
【表1】

【0012】
<防汚性>
本実施例と従来例の試験体の表面に薫煙で汚れを付けて下半分をアルミニウム箔で覆い、日照下に1日放置した。各試験体はアルミニウム箔で覆っていない部分は光触媒作用で汚れがほとんど分解されており、本実施例と従来例ともに同等の防汚効果が確認された。
【0013】
<空気浄化能力>
本実施例と従来例の試験体を2.3Lのデシケータに配置して初期濃度50ppmのホルムアルデヒドを導入し、2時間経過後の濃度を測定した。結果を図1に示す。このように、本実施例の光触媒吹付材は従来例と比較して優れた空気浄化能力を有していることが確認された。
【0014】
<耐候性>
デューサイクルウェザーメーターによる試験で、264時間は約10年に相当する。結果を表2に示す。このように、本実施例の光触媒吹付材は従来例と比較して優れた耐候性を有していることが確認された。
【0015】
【表2】

【0016】
<耐酸性>
本実施例と従来例の試験体を濃硫酸20倍希釈水溶液に下半分を浸漬し、240時間経過後の状態を観察した。従来例の試験体は浸漬部分のセメントが表面より2mm程侵食していたが、本実施例の試験体はほとんど変化がなく、耐酸性についても優れていることが確認された。
【0017】
<物性>
物性については表3に示す。特に曲げ強度や圧縮強度に優れていることが確認された。
【0018】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の光触媒吹付材は、建築物の外壁・道路の遮音壁等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例と従来例の光触媒吹付材の空気浄化能力の比較を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナセメントとシリカヒュームを主成分とするセメント基材に光触媒である酸化チタンを混合した、光触媒吹付材。
【請求項2】
酸化チタンがアナターゼ型である、請求項1記載の光触媒吹付材。
【請求項3】
アルミナセメント100重量部に対して、シリカヒュームを1〜25重量部、酸化チタンを3〜30重量部混合した、請求項1又は2記載の光触媒吹付材。
【請求項4】
増量材である珪砂と粘結剤と顔料を混合した、請求項1〜3いずれか記載の光触媒吹付材。

【図1】
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【公開番号】特開2008−7368(P2008−7368A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178986(P2006−178986)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(595016129)株式会社神垣組 (3)
【出願人】(591065549)福岡県 (121)
【Fターム(参考)】