説明

光触媒塗装体およびそのための光触媒コーティング液

【課題】基材に対する浸食を防止しながら、優れた耐候性および有害ガス分解性、ならびにその他の所望の特性(透明性、膜強度等)を発揮する光触媒塗装体および光触媒コーティング液が提供される。
【解決手段】基材と、基材上に設けられた光触媒層とを備えた光触媒塗装体であって、光触媒層が光触媒粒子と無機酸化物粒子とを含んでなり、かつ層中の粒子間に隙間を有することを特徴とする光触媒塗装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物等の外装材の用途で、高度の耐候性、親水性、有害ガス分解性、および各種被膜特性に優れた光触媒塗装体およびそのための光触媒コーティング液に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンなどの光触媒が、建築物の外装材など多くの用途において近年利用されている。光触媒の利用により、光エネルギーを利用して種々の有害物質を分解したり、あるいは、光触媒が塗布された基材表面を親水化して表面に付着した汚れを容易に水で洗い流すことが可能となる。このような光触媒を塗布した光触媒塗装体を得る技術としては、以下のものが知られている。
【0003】
光触媒性金属酸化物粒子と、コロイダルシリカと、界面活性剤とを含有する水性分散液を用いて、合成樹脂等の表面に親水性を付与する技術が知られている(例えば、特許文献1(特開平11−140432号公報)参照)。この技術にあっては、界面活性剤を10〜25重量%と多量に含有させることにより親水性を強化している。また、膜厚を0.4μm以下とすることで光の乱反射による白濁を防止している。
【0004】
バインダー成分としてのシリカゾルと光触媒性二酸化チタンとを含有する塗膜を基体に形成して光触媒体を得る技術も知られている(例えば、特許文献2(特開平11−169727号公報)参照)。この技術にあっては、シリカゾルの添加量がSiO基準で二酸化チタンに対して20〜200重量部であるとされており、二酸化チタンの含有比率が高い。また、シリカゾルの粒径も0.1〜10nmと小さい。
【0005】
光触媒塗料を用いて波長500nmの光を50%以上透過させ、かつ、320nmの光を80%以上遮断する光触媒塗膜を形成する技術も知られている(例えば、特許文献3(特開2004−359902号公報)参照)。この技術にあっては、光触媒塗料のバインダーとしてオルガノシロキサン部分加水分解物が用いられており、その配合量は塗料組成物全体の5〜40質量%が好ましいとされている。
【0006】
ところで、光触媒層の基材を有機材料で構成すると、光触媒の光触媒活性により有機材料が分解あるいは劣化されるという問題が従来から知られている。この問題に対処するため、光触媒層と担体との間にシリコン変性樹脂等の接着層を設けることで、下地の担体を光触媒作用による劣化から保護する技術が知られている(例えば、特許文献4(国際公開第97/00134号パンフレット)参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平11−140432号公報
【特許文献2】特開平11−169727号公報
【特許文献3】特開2004−359902号公報
【特許文献4】国際公開第97/00134号パンフレット
【発明の開示】
【0008】
本発明者らは、今般、光触媒粒子と無機酸化物粒子とを特定の質量比率で含み、なおかつ加水分解性シリコーンを含まないか又は極力少量に抑えた特定の組成で光触媒層を構成することにより、基材(特に有機基材)への浸食を抑制しながら、高度の耐候性、親水性、有害ガス分解性、および所望の各種被膜特性(透明性、膜強度等)に優れた光触媒塗装体が得られるとの知見を得た。また、本発明者らは、前記光触媒層と、シリコーン変性樹脂から成る中間層とを構成することにより、中間層への浸食を抑制しながら、耐候性、有害ガス分解性、および所望の各種被膜特性(紫外線吸収性、透明性、膜強度等)に優れた光触媒塗装体が得られるとの知見を得た。
【0009】
したがって、本発明の目的は、基材(特に有機基材)または中間層に対する浸食を防止しながら、高度の耐候性、親水性、有害ガス分解性、および所望の各種被膜特性(透明性、膜強度等)に優れた光触媒塗装体およびそのための光触媒コーティング液を提供することにある。
【0010】
すなわち、本発明による光触媒塗装体は、基材と、該基材上に設けられる光触媒層とを備えた、光触媒塗装体であって、前記光触媒層が、光触媒粒子と、無機酸化物粒子と、を含んでなり、前記光触媒層が、層中の粒子間に隙間を有することを特徴とする光触媒塗装体である。
【0011】
また、本発明による光触媒コーティング液は、上記光触媒塗装体の製造に用いられる光触媒コーティング液であって、溶媒と、1質量部を超え20質量部未満(より好ましくは5質量部以上15質量部以下)の、10nm以上100nm以下の平均粒径を有する光触媒粒子と、70質量部を超え99質量部未満(より好ましくは75質量部を超え95質量部以下)の無機酸化物粒子と、シリカ換算で0質量部以上10質量部未満の加水分解性シリコーンと、を、前記光触媒粒子、前記無機酸化物粒子、および前記加水分解性シリコーンのシリカ換算量との合計量が100質量部となるように含んでなる、光触媒コーティング液である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
光触媒塗装体
本発明による光触媒塗装体は、基材と、該基材上に設けられる光触媒層とを備えた、光触媒塗装体であって、前記光触媒層が、光触媒粒子と、無機酸化物粒子と、を含んでなり、前記光触媒層が、層中の粒子間に隙間を有することを特徴とする光触媒塗装体である。
【0013】
光触媒層を、その主成分として光触媒粒子と、無機酸化物粒子とにより構成し、積極的に光触媒層中に粒子間の隙間を設けるようにすることで、光触媒層への通気性が向上し、外気中のNOxガス等の分解物質や、酸素、水蒸気等の活性酸素を発生させるのに必要な気体を光触媒粒子の近傍に有効に作用させやすくなる。それにより優れたNOx分解作用等の光触媒による気体分解特性が得られる。
【0014】
ここまで記述した構成に対して、さらに、光触媒層が、1質量部を超え20質量部未満(より好ましくは5質量部以上15質量部以下)の光触媒粒子と、70質量部を超え99質量部未満(より好ましくは75質量部を超え95質量部以下)の無機酸化物粒子と、0質量部以上10質量部未満の加水分解性シリコーンの乾燥物とを、前記光触媒粒子、前記無機酸化物粒子、および前記加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量が100質量部となるように含んでなるように光触媒塗装体を構成するのが好ましい。
【0015】
すなわち、光触媒層中の光触媒粒子の配合割合が無機酸化物粒子よりもかなり少ないこと(具体的には、光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンの合計量100質量部に対して、1質量部を超え20質量部未満、好ましくは5質量部以上15質量部以下にすること)で、光触媒粒子の基材との直接的な接触を最小限に抑えることができ、それにより基材(特に有機基材)または中間層を浸食しにくくなるものと考えられる。また、光触媒自体による紫外線吸収によって基材に到達する紫外線量を低減して紫外線による基材の損傷も低減できると考えられる。
【0016】
同時に、この構成により、基材(特に有機基材)または中間層に対する浸食を防止しながら、有害ガス分解性、および所望の各種被膜特性(透明性、膜強度等)に優れた光触媒塗装体を得ることが可能となる。まず、無機酸化物粒子が70質量部を超え99質量部未満(より好ましくは75質量部を超え95質量部以下)と多いため、光触媒層は、光触媒粒子および無機酸化物粒子の二種類の粒子から基本的に構成されるが、このため粒子間の隙間が豊富に存在する。光触媒層のバインダーとして広く用いられる加水分解性シリコーンを多量に使用した場合にはそのような粒子間の隙間を緻密に埋めてしまうため、ガスの拡散を妨げるものと考えられる。しかし、本発明の光触媒層は加水分解性シリコーンの乾燥物を含まないか、含むとしても光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンの乾燥物のシリカ換算量を合計量100質量部に対して10質量部未満としているため、粒子間の隙間を十分に維持、確保することができ、そのような隙間によってNOxやSOx等の有害ガスが光触媒層中に拡散しやすい構造が実現され、その結果、有害ガスが光触媒粒子と効率良く接触して光触媒活性により分解されるのではないかと考えられる。上記作用効果を勘案すると、加水分解性シリコーンの乾燥物のシリカ換算量は実質的に0質量部であるのが最も好ましい。
【0017】
光触媒粒子の平均粒径は10nm以上100nm以下であるのが好ましく、より好ましくは10nm以上60nm以下である。なお、この平均粒径は、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定した個数平均値として算出される。粒子の形状としては真球が最も良いが、略円形や楕円形でも良く、その場合の粒子の長さは((長径+短径)/2)として略算出される。この範囲内であると、光触媒層中の通気量、気体分解活性を十分に発揮する比表面積量、粒子が十分な光触媒活性を示す単結晶サイズ、透明性および耐候性等の各種被膜特性がバランス良く発揮される。なおかつ、光触媒粒子の平均粒径は10nm以上100nm以下、より好ましくは10nm以上60nm以下とすることは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することも可能である。
【0018】
光触媒粒子としては、例えば、酸化チタン(TiO)、ZnO、SnO、SrTiO、WO、Bi、Feのような金属酸化物の粒子が挙げられる。ここで例示したいずれの金属酸化物もここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができる。
【0019】
光触媒粒子としては、酸化チタン粒子が好ましい。酸化チタンはZnOと比較してより良好な耐水性を有する。また、SnOと比較して、より太陽光に多く含まれる380nm〜420nmの波長の光で気体分解等の光触媒機能を発揮する。さらに、SrTiOとは比較してナノオーダーの微粒子が得やすく、そのため大きな比表面積を有し実用的に充分な光触媒活性を得やすい。さらに、WO、Bi、Feと比較してバンドギャップが大きく、そのため充分な酸化力を有するとともに、光励起後に伝導電子と正孔の再結合が生じにくく、気体分解に充分な活性化エネルギーを有する。また、酸化チタンは、無害で、化学的にも安定で、かつ、安価に入手可能である。また、酸化チタンはバンドギャップエネルギーが高く、従って、光励起には紫外線を必要とし、光励起の過程で可視光を吸収しないので、補色成分による発色が起こらない。
光触媒粒子として、酸化チタン粒子を利用することは、なおかつここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0020】
光触媒粒子としては、酸化チタン粒子のうち、アナターゼ型酸化チタンが好ましい。
アナターゼ型酸化チタンはルチル型酸化チタンより酸化力が強く、より強く気体分解等の光触媒機能を発揮する。なおかつ、光触媒粒子として、アナターゼ型酸化チタン粒子を利用することは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0021】
光触媒層中には、さらにCu成分が存在するのが好ましい。Cuはそれ自体でも優れた防カビ特性を有し、かつ優れた有害ガス吸着特性を有し、かつ光触媒粒子に作用して光触媒の光励起により生成する伝導電子と正孔との再結合の確率を低下させて結果的に光触媒粒子の酸化力を向上させて気体分解力を増す。ここで、光触媒が酸化チタン、とりわけアナターゼ型酸化チタンのような酸化力のもともと強い光触媒のときにはより大きな効果を発揮する。なおかつ、光触媒層中に、Cuを存在させることは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0022】
光触媒粒子には、Cu成分が担持されているのが好ましい。光触媒層中にCuが存在するのみでなく、光触媒粒子にCuを積極的に担持させることで、Cuが光触媒粒子に作用して光触媒の光励起により生成する伝導電子と正孔との再結合の確率を低下させて結果的に光触媒粒子の酸化力を向上させて気体分解力を増す効果をより強めることができる。ここで、光触媒が酸化チタン、とりわけアナターゼ型酸化チタンのような酸化力のもともと強い光触媒のときにはより大きな効果を発揮する。なおかつ、光触媒粒子にCuを積極的に担持させることは、なおかつここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0023】
光触媒層中には、Cu成分およびAg成分の双方が存在するのが好ましい。光触媒層中にCuとAgの双方を存在させることで、Cuの優れた防カビ特性と、Agの優れた抗菌特性とを同時に発揮できるだけでなく、光触媒の分解活性も飛躍的に向上する。そのメカニズムは現在明らかではないが、おそらくは、光触媒粒子とAgとCuと3者の間の相互作用が関係しているものと考えられる。ここで、光触媒が酸化チタン、とりわけアナターゼ型酸化チタンのような酸化力のもともと強い光触媒のときにはより大きな効果を発揮する。なおかつ、光触媒層中に、CuおよびAgの双方を存在させることは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0024】
光触媒粒子には、Cu成分およびAg成分の双方が担持されているのが好ましい。光触媒層中にCuおよびAgが存在するのみでなく、光触媒粒子にCuおよびAgの双方を積極的に担持させることで、CuおよびAgが光触媒粒子に作用して光触媒の光励起により生成する伝導電子と正孔との再結合の確率を低下させて結果的に光触媒粒子の酸化力を向上させて気体分解力を増す効果をより強めることができる。ここで、光触媒が酸化チタン、とりわけアナターゼ型酸化チタンのような酸化力のもともと強い光触媒のときにはより大きな効果を発揮する。なおかつ、光触媒粒子にCuおよびAgの双方を積極的に担持させることは、なおかつここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0025】
光触媒層中の無機酸化物粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、セリア、イットリア、ボロニア、マグネシア、カルシア、フェライト、酸化鉄、無定形チタニア、ハフニア、酸化錫、酸化マンガン、酸化ニオビウム、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化インジウム、酸化ランタン、酸化バリウム等の単一酸化物の粒子、又はアルミノシリケート、チタン酸バリウム、ケイ酸カルシウム等の複合酸化物が好適に利用できる。
無機酸化物粒子を配合することで、光触媒層中の通気性を確保しつつ、光触媒の量を適度に低下させ、光触媒粒子の基材との直接的な接触を最小限に抑えることができ、それにより基材(特に有機基材)または中間層を浸食しにくくなるものと考えられる。また、光触媒自体による紫外線吸収によって基材に到達する紫外線量を低減して紫外線による基材の損傷も低減できると考えられる。
なおかつ、上記無機酸化物粒子を利用することは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0026】
光触媒層中の無機酸化物粒子としては、シリカが最も好ましい。シリカを配合することで光触媒層の親水性が向上し、水洗又は雨水で光触媒層が洗浄されることで、表面に付着する汚れが光触媒の分解機能を低下させるのを有効に防止できる。この抑制効果は、光触媒が酸化チタン、とりわけアナターゼ型酸化チタンのような酸化力のもともと強い光触媒のときにはより大きな効果を発揮する。なおかつ、無機酸化物粒子としてシリカ粒子を利用することは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0027】
光触媒層中の無機酸化物粒子については、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定することにより算出される個数平均粒径は、好ましくは5nm以上40nm未満、より好ましくは5nm以上20nm未満である。
無機酸化物粒子の平均粒径を40nm未満、より好ましくは20nm未満とすることで、光触媒層中での通気性が向上し、気体分解反応性が向上するとともに、耐摩耗性が向上する。
なおかつ、無機酸化物粒子が5nm以上40nm未満、より好ましくは5nm以上20nm未満の個数平均粒径を有するようにすることは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0028】
光触媒層中には任意成分として界面活性剤を含んでもよい。本発明に用いる界面活性剤は、任意成分として、光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンの合計量100質量部に対して、0質量部以上10質量部未満光触媒層に含有されていてもよく、好ましくは0質量部以上8質量部以下であり、より好ましくは0以上6質量部以下である。界面活性剤の効果の1つとして基材へのレベリング性があり、大面積の塗装などこのレべリング効果が必要な用途の場合には、コーティング液と基材との組合せによって界面活性剤の量を先述の範囲内で適宜決めれば良いが、その際の下限値は光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンの合計量100質量部に対して0.1質量部とされるのが好ましい。この界面活性剤は光触媒コーティング液の濡れ性を改善するために有効な成分であるが、塗布、乾燥後に形成される光触媒層にあってはもはや本発明の光触媒塗装体の効果には寄与しない不可避不純物に相当するので、上限値は光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンの合計量100質量部に対して、10質量部未満、好ましくは8質量部未満、より好ましくは6質量部以下とするのがよい。すなわち、界面活性剤は光触媒コーティング液に要求される濡れ性に応じて、上記含有量範囲内において使用されてよく、濡れ性を問題にしない用途であれば界面活性剤は実質的にあるいは一切含まないのが最も好ましい。使用すべき界面活性剤は、光触媒や無機酸化物粒子の分散安定性、中間層上に塗布した際の濡れ性を勘案し非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤の中から適宜選択されることができるが、非イオン性界面活性剤がその中で特に好ましく、より好ましくは、その中でエーテル型非イオン性界面活性剤、エステル型非イオン性界面活性剤、ポリアルキレングリコール非イオン性界面活性剤、フッ素系非イオン性界面活性剤、シリコン系非イオン性界面活性剤である。
なおかつ、本発明に用いる界面活性剤は、任意成分として、光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンの合計量100質量部に対して、0質量部以上10質量部未満光触媒層に含有されていてもよく、好ましくは0質量部以上8質量部以下であり、より好ましくは0以上6質量部以下であるようにすることは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0029】
光触媒層は0.5μm以上3.0μm以下の膜厚を有するのが好ましく、より好ましくは1.0μm以上2.0μm以下である。光触媒層の膜厚を0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上にすることで、光触媒層と基材の界面に到達する紫外線が充分に減衰されるので耐候性が向上する。また、無機酸化物粒子よりも含有比率が低い光触媒粒子を膜厚方向に増加させることができるので、有害ガス分解性も向上する。さらには、光触媒層の膜厚を3.0μm以下、より好ましくは2.0μm以下にすることで、透明性、膜強度においても優れた特性が得られる。
なおかつ、光触媒層の膜厚を0.5μm以上3.0μm以下、より好ましくは1.0μm以上2.0μmにすることは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0030】
光触媒層はさらに任意成分として、チタンアルコキシドまたはチタンアルコキシドの誘導体の加水分解縮重合物を、二酸化チタン換算で0質量部以上10質量部未満、好ましくは0質量部以上8質量部未満、より好ましくは6質量部未満含んでいてもよい。
チタンアルコキシドまたはチタンアルコキシドの誘導体の加水分解縮重合物を二酸化チタン換算量で10質量部未満、好ましくは8質量部未満、より好ましくは6質量部未満の少量含む場合、耐摩耗性が多少向上し、かつ加水分解性シリコーンと比較して光触媒層を塗膜後より短時間で硬化することが期待できる。但し、本発明の優れたNOx分解性等の光触媒気体分解特性を充分に生かすためには、光触媒層の粒子間の隙間を充分に維持するのが好ましいが、チタンアルキシドまたはチタンアルコキシドの誘導体の加水分解縮重合物を二酸化チタン換算量で10質量部以上多量に使用した場合には、光触媒層のバインダーとして広く用いられる加水分解性シリコーンを多量に使用した場合と同様にそのような粒子間の隙間を緻密に埋めてしまうため、ガスの拡散を妨げるものと考えられる。しかし、本発明の光触媒層はチタンアルコキシドまたはチタンアルコキシドの誘導体の加水分解縮重合物を含まないか、含むとしても光触媒粒子、無機酸化物粒子、およびチタンアルキシドの乾燥物の二酸化チタン換算量を合計量100質量部に対して10質量部未満としているため、粒子間の隙間を十分に維持、確保することができ、そのような隙間によってNOxやSOx等の有害ガスが光触媒層中に拡散しやすい構造が実現され、その結果、有害ガスが光触媒粒子と効率良く接触して光触媒活性により分解されるのではないかと考えられる。
上記作用効果を勘案すると、本態様におけるより好ましい構成としては、チタンアルキシドまたはチタンアルコキシドの誘導体の加水分解縮重合物の二酸化チタン換算量と、加水分解性シリコーンの乾燥物のシリカ換算量との合計値が0質量部以上10質量部未満、好ましくは0質量部以上8質量部未満、より好ましくは0質量部以上6質量部未満とするのがより好ましく、チタンアルキシドまたはチタンアルコキシドの誘導体の加水分解縮重合物の二酸化チタン換算量が実質的に0質量部であるのが最も好ましい。
なお、光触媒層はさらに任意成分として、チタンアルコキシドまたはチタンアルコキシドの光触媒層の膜厚を誘導体の加水分解縮重合物を、二酸化チタン換算で0質量部以上10質量部未満、好ましくは0質量部以上8質量部未満、より好ましくは6質量部未満含んでいてもよいこと、チタンアルキシドまたはチタンアルコキシドの誘導体の加水分解縮重合物の二酸化チタン換算量と、加水分解性シリコーンの乾燥物のシリカ換算量との合計値が0質量部以上10質量部未満、好ましくは0質量部以上8質量部未満、より好ましくは0質量部以上6質量部未満とするのがより好ましく、チタンアルキシドまたはチタンアルコキシドの誘導体の加水分解縮重合物の二酸化チタン換算量が実質的に0質量部であることは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0031】
光触媒層は、200℃以下の加熱乾燥により得られるようにするのが好ましい。そうすることにより、基材が樹脂の場合に、基材の加熱に伴う劣化を有効に防止しうる。
なお、光触媒層は200℃以下の加熱乾燥により得られるようにすることは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0032】
加水分解性シリコーンは、アルコキシ基、ハロゲン基、水素基の群から選ばれる少なくとも1種の反応基を有するオルガノシロキサンであるのが好ましい。
これらの加水分解性シリコーンは常温乾燥又は10℃以上500℃以下の熱処理により脱水縮重合反応を生じて硬化し、硬質な加水分解性シリコーンの乾燥物となるので、光触媒層の耐摩耗性を向上できる。
加水分解性シリコーンには、そのモノマー単位として2官能性シラン、3官能性シラン、4官能性シランを単独又は組合わせて重合させ、その末端に反応基を有するシリコーン(オリゴマー、ポリマー)が好適に利用可能であるが、とりわけ、4官能性シラン単位(SiX、Xはアルコキシ基、ハロゲン基、水素基の群から選ばれる少なくとも1種の反応基)のみを重合させたシリケート(以下、4官能性シリコーンという)が最も好ましい。4官能性シリコーンを利用すると光触媒層の親水性が良好となり、セルフクリーニング性が同時に発揮されるので好ましい。4官能性シリコーンとしては、メチルシリケート、エチルシリケート、イソプロピルシリケート等のアルキルシリケートが好適に利用できる。
なお、加水分解性シリコーンを、アルコキシ基、ハロゲン基、水素基の群から選ばれる少なくとも1種の反応基を有するオルガノシロキサンであるようにすること、加水分解性シリコーンとして、好ましくはそのモノマー単位として2官能性シラン、3官能性シラン、4官能性シランを単独又は組合わせて重合させ、その末端に反応基を有するシリコーン(オリゴマー、ポリマー)を利用すること、及びさらに好ましくは4官能性シリコーンを利用することについて、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0033】
加水分解性シリコーンは、アルコキシ基を有するオルガノシロキサンであるとより好ましい。アルコキシ基を有するオルガノシロキサンは、ハロゲン基又は水素基を有するオルガノシロキサンと比較して、脱水縮重合反応を制御しやすく、安定した品質の光触媒層を得やすくなる。
なお、加水分解性シリコーンを、アルコキシ基を有するオルガノシロキサンであるようにすることは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0034】
加水分解性シリコーンの乾燥物は、加水分解性シリコーンの加水分解縮重合物であるとより好ましい。
加水分解縮重合反応は、他のラジカル重合反応等と比較して反応制御がしやすく、安定した品質の光触媒層を得やすくなる。
なお、加水分解性シリコーンの乾燥物は、加水分解性シリコーンの加水分解縮重合物であるようにすることは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0035】
本発明に用いる基材は、その上に光触媒層を形成可能な材料であれば無機材料、有機材料を問わず種々の材料であってよく、その形状も限定されない。材料の観点からみた基材の好ましい例としては、金属、セラミック、ガラス、プラスチック、ゴム、石、セメント、コンクリ−ト、繊維、布帛、木、紙、それらの組合せ、それらの積層体、それらの表面に少なくとも一層の被膜を有するものが挙げられる。
これらの基材のいずれに対しても、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができる。
【0036】
特に基材として、少なくともその表面が有機材料で形成された基材を用いると、本発明の特徴をより充分に発揮できる。ここで、その表面が有機材料で形成された基材としては基材全体が有機材料で構成されているもの、無機材料で構成された基材の表面が有機材料で被覆されたもの(例えば化粧板)のいずれをも包含する。本発明の光触媒層によれば、光触媒活性により損傷を受けやすい有機材料に対しても浸食しにくいことから、無機材料からなる中間層を介在させることなく、光触媒層という一つの層で優れた機能を有する光触媒塗装体を製造することができる。その結果、無機材料からなる中間層の形成が不要となる分、光触媒塗装体の製造に要する時間が低減でき生産性が向上するとともにコストも削減できる。
なお、基材として、少なくともその表面が有機材料で形成された基材を用いることは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0037】
光触媒層が基材上に直接塗布されてなるような使用形態でも、本発明の特徴をより充分に発揮できる。本発明の光触媒層は主成分が粒子であるため、基材の凹凸等に対する追随性に優れるためである。
なお、光触媒層が基材上に直接塗布されてなるような使用形態は、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0038】
基材と光触媒層との間に中間層を備えてなるようにするのも好ましい。特に中間層として耐候性に優れる物質を用いれば、基材が樹脂の場合の耐候性を増加させることができる。耐候性に優れる物質としては、シリコーン含有樹脂、フッ素含有樹脂が特に好ましい。また、中間層に可撓性に優れる物質を用いれば、基材に凹凸がある場合でも使用時のクラック等による外観不良が生じにくく好ましい。中間層に可撓性に優れる物質としては、二重鎖構造を含む樹脂、環状構造を含む樹脂、2官能性のモノマー単位を含むシリコーン、有機架橋と無機架橋の双方を含むシリコーンが特に好ましい。
なお、基材と光触媒層との間に中間層を備えてなるようにすること、中間層として耐候性に優れる物質を用いること、耐候性に優れる物質としては、シリコーン含有樹脂、フッ素含有樹脂のうちの少なくとも1種を用いること、中間層に可撓性に優れる物質を用いること、可撓性に優れる物質としては、二重鎖構造を含む樹脂、環状構造を含む樹脂、2官能性のモノマー単位を含むシリコーン、有機架橋と無機架橋の双方を含むシリコーンのうちの少なくとも1種を用いることは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0039】
中間層はシリコーン変性樹脂を含んでなるのが好ましく、より好ましくは中間層はアクリルシリコーンを含んでなるのが好ましい。
そうすることで、中間層の耐候性、光触媒反応に対する耐久性、可撓性等を充分に発揮することができる。
シリコーン変性樹脂としては、樹脂中にポリシロキサンを含むシリコーン変性アクリル樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性ウレタン樹脂、シリコーン変性ポリエステル等が耐候性の点からより好適である。
シリコーン変性樹脂は、ケイ素原子含有量が、シリコーン変性樹脂の固形分に対して0.2質量%以上16.5質量%未満が好ましく、より好ましくは6.5質量%以上16.5質量%未満である。シリコーン変性樹脂に含有されるケイ素原子含有量が0.2質量%以上の場合、中間層の耐候性が良好となり、光触媒に浸食される可能性が抑制される。またシリコーン変性樹脂に含有されるケイ素原子含有量が16.5質量%未満の場合、可撓性が充分になり、中間層におけるクラックの発生が抑制される。ここで前記シリコーン変性樹脂中のケイ素原子含有量は、X線光電子分光分析装置(XPS)による化学分析によって測定することができる。
またアクリルシリコーンとしては、カルボキシル基を有するシリコーン変性アクリル樹脂とエポキシ基を有するシリコーン樹脂の二液を混合して使用することが、塗膜の強度を向上させる点からさらに好適である。
中間層の乾燥膜厚は特に限定されるものでは無いが、好ましくは1μm〜50μm、より好ましくは1μm〜10μmである。1μmより薄い場合は、光触媒による中間層および基材の劣化抑制効果が劣る可能性がある。50μmより厚い場合は、中間層の種類に依存するが、乾燥後に微細なクラックが発生する恐れがある。
なお、中間層はシリコーン変性樹脂を含んでなること、シリコーン変性樹脂としては、ケイ素原子含有量がシリコーン変性樹脂の固形分に対して0.2質量%以上16.5質量%未満が好ましくより好ましくは6.5質量%以上16.5質量%未満であること、中間層はアクリルシリコーンを含んでなること、アクリルシリコーンとしてはカルボキシル基を有するシリコーン変性アクリル樹脂とエポキシ基を有するシリコーン樹脂の二液を混合して使用するのが好ましいこと、中間層の乾燥膜厚は好ましくは1μm〜50μmより好ましくは1μm〜10μmであることは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0040】
中間層は紫外線吸収剤を含んでなるのが好ましい。そうすることで、基材の耐候性、光触媒反応に対する耐久性を一層増すことができる。
なお、中間層は紫外線吸収剤を含んでなることは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0041】
中間層は有機防カビ剤を含んでなるのが好ましい。光触媒層とは別の中間層に有機防カビ剤を含み、かつ、光触媒層の粒子間に隙間が設けられていることで、光触媒による防藻、防カビ機能と、有機防カビ剤による防藻、防カビ機能とを互いに損なうことなく有効に発揮できる。
なお、中間層は有機防カビ剤を含んでなることは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0042】
中間層には、その他に有機溶剤、着色顔料、体質顔料、顔料分散剤、消泡剤、酸化防止剤等の塗料用添加剤、塗料に通常含まれるその他成分を含有することができる。また、艶消し剤としてシリカ微粒子を含んでもよい。
上記着色顔料としては特に限定されず、例えば、二酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック等の無機系顔料、フタロシアニン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アゾ系アゾ系、アンスラキノン系、キノフタロン系、アンスラピリジニン系、キナクリドン系、トルイジン系、ピラスロン系、ペリレン系等の有機系顔料を用いることができる。
【0043】
本発明の塗装体は、外装材にも内装材にも適用可能だが、特に外装材として用いると、光触媒の光源として太陽光が利用できるので好ましい。ここで、外装材としては、建材、建物外装、窓枠、窓ガラス、構造部材、乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用遮音壁、鉄道用遮音壁、橋梁、ガードレ−ルの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、屋外用照明器具、台及び上記物品表面に貼着させるためのフィルム、シート、シール等が挙げられる。
なお、塗装体を外装材として用いることは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0044】
さらに光触媒層中に、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、パラジウム、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、白金および金からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属および/またはその金属からなる金属化合物を、添加してもよい。それにより、これらの金属の有する触媒機能を同時に発現できる。
【0045】
光触媒コーティング液
本発明による光触媒コーティング液は、ここまでに述べてきた光触媒塗装体を形成されるするためのコーティング液であって、溶媒と、1質量部を超え20質量部未満の、10nm以上100nm以下の平均粒径を有する光触媒粒子と、70質量部を超え99質量部未満の無機酸化物粒子と、シリカ換算で0質量部以上10質量部未満の加水分解性シリコーンとを、前記光触媒粒子、前記無機酸化物粒子、および前記加水分解性シリコーンのシリカ換算量との合計量が100質量部となるように含んでなる。
すなわち、光触媒コーティング液を基材に塗布し乾燥して光触媒層を形成したときに、光触媒粒子の配合割合が無機酸化物粒子よりもかなり少ないこと(具体的には、光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンの合計量100質量部に対して、1質量部を超え20質量部未満、好ましくは5質量部以上15質量部以下であること)で、光触媒粒子の基材との直接的な接触を最小限に抑えることができ、それにより基材(特に有機基材)または中間層を浸食しにくくなるものと考えられる。また、光触媒自体による紫外線吸収によって基材に到達する紫外線量を低減して紫外線による基材の損傷も低減できると考えられる。
【0046】
同時に、この構成により、基材(特に有機基材)または中間層に対する浸食を防止しながら、有害ガス分解性、および所望の各種被膜特性(透明性、膜強度等)に優れた光触媒塗装体を得ることが可能となる。まず、光触媒層は、光触媒粒子および無機酸化物粒子の二種類の粒子から基本的に構成されるため、粒子間の隙間が豊富に存在するが、光触媒層のバインダーとして広く用いられる加水分解性シリコーンを多量に使用した場合にはそのような粒子間の隙間を緻密に埋めてしまうため、ガスの拡散を妨げるものと考えられる。しかし、本発明の光触媒層は加水分解性シリコーンの乾燥物を含まないか、含むとしても光触媒粒子、
無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンの乾燥物のシリカ換算量を合計量100質量部に対して10質量部未満としているため、粒子間の隙間を十分に維持、確保することができ、そのような隙間によってNOxやSOx等の有害ガスが光触媒層中に拡散しやすい構造が実現され、その結果、有害ガスが光触媒粒子と効率良く接触して光触媒活性により分解されるのではないかと考えられる。上記作用効果を勘案すると、加水分解性シリコーンの乾燥物のシリカ換算量は実質的に0質量部であるのが最も好ましい。
【0047】
上記構成においては、とりわけ、光触媒粒子量を1質量部を超え5質量部未満の少量でNOx分解機能等の光触媒分解機能を発揮しうる。そのため、基材(特に有機基材)または中間層に対する浸食を防止しながら、耐候性、親水性、有害ガス分解性、および所望の各種被膜特性(透明性、膜強度等)に優れた光触媒塗装体が実現されるものと考えられる。したがって、本発明による光触媒層は、特に低緯度の熱帯、亜熱帯地方などの紫外線量が多く、かつ高温・多湿の気象条件下においても優れた耐久特性を光触媒分解機能と同時に発揮可能である。
【0048】
光触媒コーティング液中の光触媒粒子の平均粒径は10nm以上100nm以下であるのが好ましく、より好ましくは10nm以上60nm以下である。なお、この平均粒径は、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定した個数平均値として算出される。粒子の形状としては真球が最も良いが、略円形や楕円形でも良く、その場合の粒子の長さは((長径+短径)/2)として略算出される。この範囲内であると、光触媒コーティング液を基材に塗布・乾燥して形成される光触媒層中の通気量、気体分解活性を十分に発揮する比表面積量、粒子が十分な光触媒活性を示す単結晶サイズ、透明性および耐候性等の各種被膜特性がバランス良く発揮される。なおかつ、光触媒粒子の平均粒径は10nm以上100nm以下、より好ましくは10nm以上60nm以下とすることは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することも可能である。
【0049】
光触媒コーティング液中の光触媒粒子としては、例えば、酸化チタン(TiO)、ZnO、SnO、SrTiO、WO、Bi、Feのような金属酸化物の粒子が挙げられる。ここで例示したいずれの金属酸化物もここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができる。
【0050】
光触媒コーティング液中の光触媒粒子としては、酸化チタン粒子が好ましい。酸化チタンはZnOと比較してより良好な耐水性を有する。また、SnOと比較して、より太陽光に多く含まれる380nm〜420nmの波長の光で気体分解等の光触媒機能を発揮する。さらに、SrTiOとは比較してナノオーダーの微粒子が得やすく、そのため大きな比表面積を有し実用的に充分な光触媒活性を得やすい。さらに、WO、Bi、Feと比較してバンドギャップが大きく、そのため充分な酸化力を有するとともに、光励起後に伝導電子と正孔の再結合が生じにくく、気体分解に充分な活性化エネルギーを有する。また、酸化チタンは、無害で、化学的にも安定で、かつ、安価に入手可能である。また、酸化チタンはバンドギャップエネルギーが高く、従って、光励起には紫外線を必要とし、光励起の過程で可視光を吸収しないので、補色成分による発色が起こらない。
酸化チタンは、粉末状、ゾル状、溶液状など様々な形態で入手可能であるが、基材上に塗布・乾燥させた後に光触媒活性を示すものであれば、いずれの形態でコーティング液中に配合させることも可能である。
光触媒粒子として、酸化チタン粒子を利用することは、なおかつここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0051】
光触媒コーティング液中の光触媒粒子としては、酸化チタン粒子のうち、アナターゼ型酸化チタンが好ましい。アナターゼ型酸化チタンはルチル型酸化チタンより酸化力が強く、より強く気体分解等の光触媒機能を発揮する。なおかつ、光触媒粒子として、アナターゼ型酸化チタン粒子を利用することは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0052】
光触媒コーティング液中には、さらにCu成分を配合するのが好ましい。Cuはそれ自体でも優れた防カビ特性を有し、かつ優れた有害ガス吸着特性を有し、かつ光触媒粒子に作用して光触媒の光励起により生成する伝導電子と正孔との再結合の確率を低下させて結果的に光触媒粒子の酸化力を向上させて気体分解力を増す。ここで、光触媒が酸化チタン、とりわけアナターゼ型酸化チタンのような酸化力のもともと強い光触媒のときにはより大きな効果を発揮する。
なおかつ、光触媒コーティング液中に、Cu成分を配合させることは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0053】
光触媒コーティング液中の光触媒粒子には、Cu成分が担持されているのが好ましい。Cu成分を単に配合させるのみでなく、光触媒粒子にCuを積極的に担持させることで、Cuが光触媒粒子に作用して光触媒の光励起により生成する伝導電子と正孔との再結合の確率を低下させて結果的に光触媒粒子の酸化力を向上させて気体分解力を増す効果をより強めることができる。ここで、光触媒が酸化チタン、とりわけアナターゼ型酸化チタンのような酸化力のもともと強い光触媒のときにはより大きな効果を発揮する。なおかつ、光触媒粒子にCuを積極的に担持させることは、なおかつここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0054】
光触媒コーティング液中には、Cu成分およびAg成分の双方を配合させるのが好ましい。光触媒コーティング液中にCuとAgの双方を配合させることで、Cuの優れた防カビ特性と、Agの優れた抗菌特性とを同時に発揮できるだけでなく、光触媒の分解活性も飛躍的に向上する。そのメカニズムは現在明らかではないが、おそらくは、光触媒粒子とAgとCuと3者の間の相互作用が関係しているものと考えられる。ここで、光触媒が酸化チタン、とりわけアナターゼ型酸化チタンのような酸化力のもともと強い光触媒のときにはより大きな効果を発揮する。なおかつ、光触媒コーティング液中に、Cu成分およびAg成分の双方を配合させることは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0055】
光触媒コーティング液中の光触媒粒子には、Cu成分およびAg成分の双方が担持されているのが好ましい。光触媒コーティング液中にCuおよびAgが存在するのみでなく、光触媒粒子にCuおよびAgの双方を積極的に担持させることで、CuおよびAgが光触媒粒子に作用して光触媒の光励起により生成する伝導電子と正孔との再結合の確率を低下させて結果的に光触媒粒子の酸化力を向上させて気体分解力を増す効果をより強めることができる。ここで、光触媒が酸化チタン、とりわけアナターゼ型酸化チタンのような酸化力のもともと強い光触媒のときにはより大きな効果を発揮する。なおかつ、光触媒粒子にCuおよびAgの双方を積極的に担持させることは、なおかつここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0056】
光触媒コーティング液中の無機酸化物粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、セリア、イットリア、ボロニア、マグネシア、カルシア、フェライト、酸化鉄、無定形チタニア、ハフニア、酸化錫、酸化マンガン、酸化ニオビウム、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化インジウム、酸化ランタン、酸化バリウム等の単一酸化物の粒子、又はアルミノシリケート、チタン酸バリウム、ケイ酸カルシウム等の複合酸化物が好適に利用できる。これら無機酸化物粒子は、水を分散媒とした水性コロイド;またはエチルアルコール、イソプロピルアルコール、もしくはエチレングリコールなどの親水性溶媒にコロイド状に分散させたオルガノゾルの形態で配合するのが好ましい。
光触媒コーティング液中に無機酸化物粒子を配合することで、光触媒コーティング液を塗布し乾燥させて得られる光触媒層中の通気性を確保しつつ、光触媒の量を適度に低下させ、光触媒粒子の基材との直接的な接触を最小限に抑えることができ、それにより基材(特に有機基材)または中間層を浸食しにくくなるものと考えられる。また、光触媒自体による紫外線吸収によって基材に到達する紫外線量を低減して紫外線による基材の損傷も低減できると考えられる。
【0057】
光触媒コーティング液中の無機酸化物粒子としては、シリカが最も好ましい。シリカを配合することで光触媒層の親水性が向上し、水洗又は雨水で光触媒層が洗浄されることで、表面に付着する汚れが光触媒の分解機能を低下させるのを有効に防止できる。この抑制効果は、光触媒が酸化チタン、とりわけアナターゼ型酸化チタンのような酸化力のもともと強い光触媒のときにはより大きな効果を発揮する。シリカ粒子は、水を分散媒とした水性コロイド;またはエチルアルコール、イソプロピルアルコール、もしくはエチレングリコールなどの親水性溶媒にコロイド状に分散させたオルガノゾルの形態であるのが好ましく、特に好ましくはコロイダルシリカである。なおかつ、無機酸化物粒子としてシリカ粒子を利用することは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0058】
光触媒コーティング液中の無機酸化物粒子については、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定することにより算出される個数平均粒径は、好ましくは5nm以上40nm未満、より好ましくは5nm以上20nm未満である。
無機酸化物粒子の平均粒径を40nm未満、より好ましくは20nm未満とすること
で、光触媒コーティング液を基材に塗布し乾燥したときに得られる光触媒層中での通気性が向上し、気体分解反応性が向上するとともに、耐摩耗性が向上する。
なおかつ、光触媒コーティング液中の無機酸化物粒子が5nm以上40nm未満、より好ましくは5nm以上20nm未満の個数平均粒径を有するようにすることは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0059】
光触媒コーティング液中には任意成分として界面活性剤を含んでもよい。本発明に用いる界面活性剤は、任意成分として、光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンの合計量100質量部に対して、0質量部以上10質量部未満光触媒層に含有されていてもよく、好ましくは0質量部以上8質量部以下であり、より好ましくは0以上6質量部以下である。界面活性剤の効果の1つとして基材へのレベリング性があり、大面積の塗装などこのレべリング効果が必要な用途の場合には、コーティング液と基材との組合せによって界面活性剤の量を先述の範囲内で適宜決めれば良いが、その際の下限値は光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンの合計量100質量部に対して0.1質量部とされるのが好ましい。この界面活性剤は光触媒コーティング液の濡れ性を改善するために有効な成分であるが、塗布、乾燥後に形成される光触媒層にあってはもはや本発明の光触媒塗装体の効果には寄与しない不可避不純物に相当するので、上限値は光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンの合計量100質量部に対して、10質量部未満、好ましくは8質量部未満、より好ましくは6質量部以下とするのがよい。すなわち、界面活性剤は光触媒コーティング液に要求される濡れ性に応じて、上記含有量範囲内において使用されてよく、濡れ性を問題にしない用途であれば界面活性剤は実質的にあるいは一切含まないのが最も好ましい。使用すべき界面活性剤は、光触媒や無機酸化物粒子の分散安定性、中間層上に塗布した際の濡れ性を勘案し非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤の中から適宜選択されることができるが、非イオン性界面活性剤がその中で特に好ましく、より好ましくは、その中でエーテル型非イオン性界面活性剤、エステル型非イオン性界面活性剤、ポリアルキレングリコール非イオン性界面活性剤、フッ素系非イオン性界面活性剤、シリコン系非イオン性界面活性剤である。
なおかつ、本発明のコーティング液に用いる界面活性剤は、任意成分として、光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンの合計量100質量部に対して、0質量部以上10質量部未満光触媒層に含有されていてもよく、好ましくは0質量部以上8質量部以下であり、より好ましくは0以上6質量部以下であるようにすることは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0060】
光触媒コーティング液はさらに任意成分として、チタンアルコキシドまたはチタンアルコキシドの誘導体の加水分解縮重合物を、二酸化チタン換算で0質量部以上10質量部未満、好ましくは0質量部以上8質量部未満、より好ましくは6質量部未満含んでいてもよい。
チタンアルコキシドまたはチタンアルコキシドの誘導体の加水分解縮重合物を二酸化チタン換算量で10質量部未満、好ましくは8質量部未満、より好ましくは6質量部未満の少量含む場合、耐摩耗性が多少向上し、かつ加水分解性シリコーンと比較して光触媒層を塗膜後より短時間で硬化することが期待できる。但し、本発明の優れたNOx分解性等の光触媒気体分解特性を充分に生かすためには、光触媒層の粒子間の隙間を充分に維持するのが好ましいが、チタンアルキシドまたはチタンアルコキシドの誘導体の加水分解縮重合物を二酸化チタン換算量で10質量部以上多量に使用した場合には、光触媒層のバインダーとして広く用いられる加水分解性シリコーンを多量に使用した場合と同様にそのような粒子間の隙間を緻密に埋めてしまうため、ガスの拡散を妨げるものと考えられる。しかし、本発明の光触媒コーティング液はチタンアルコキシドまたはチタンアルコキシドの誘導体の加水分解縮重合物を含まないか、含むとしても光触媒粒子、無機酸化物粒子、およびチタンアルキシドの乾燥物の二酸化チタン換算量を合計量100質量部に対して10質量部未満としているため、粒子間の隙間を十分に維持、確保することができ、そのような隙間によってNOxやSOx等の有害ガスが光触媒層中に拡散しやすい構造が実現され、その結果、有害ガスが光触媒粒子と効率良く接触して光触媒活性により分解されるのではないかと考えられる。
上記作用効果を勘案すると、本態様におけるより好ましい構成としては、チタンアルキシドまたはチタンアルコキシドの誘導体の加水分解縮重合物の二酸化チタン換算量と、加水分解性シリコーンの乾燥物のシリカ換算量との合計値が0質量部以上10質量部未満、好ましくは0質量部以上8質量部未満、より好ましくは0質量部以上6質量部未満とするのがより好ましく、チタンアルキシドまたはチタンアルコキシドの誘導体の加水分解縮重合物の二酸化チタン換算量が実質的に0質量部であるのが最も好ましい。
なお、光触媒コーティング液はさらに任意成分として、チタンアルコキシドまたはチタンアルコキシドの光触媒層の膜厚を誘導体の加水分解縮重合物を、二酸化チタン換算で0質量部以上10質量部未満、好ましくは0質量部以上8質量部未満、より好ましくは6質量部未満含んでいてもよいこと、チタンアルキシドまたはチタンアルコキシドの誘導体の加水分解縮重合物の二酸化チタン換算量と、加水分解性シリコーンの乾燥物のシリカ換算量との合計値が0質量部以上10質量部未満、好ましくは0質量部以上8質量部未満、より好ましくは0質量部以上6質量部未満とするのがより好ましく、チタンアルキシドまたはチタンアルコキシドの誘導体の加水分解縮重合物の二酸化チタン換算量が実質的に0質量部であることは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0061】
光触媒コーティング液中の任意成分である加水分解性シリコーンは、アルコキシ基、ハロゲン基、水素基の群から選ばれる少なくとも1種の反応基を有するオルガノシロキサンであるのが好ましい。
これらの加水分解性シリコーンは基材に塗布後に常温乾燥又は10℃以上500℃以下の熱処理により脱水縮重合反応を生じて硬化し、硬質な加水分解性シリコーンの乾燥物となるので、の耐摩耗性を向上できる。
加水分解性シリコーンには、そのモノマー単位として2官能性シラン、3官能性シラン、4官能性シランを単独又は組合わせて重合させ、その末端に反応基を有するシリコーン(オリゴマー、ポリマー)が好適に利用可能であるが、とりわけ、4官能性シラン単位(SiX、Xはアルコキシ基、ハロゲン基、水素基の群から選ばれる少なくとも1種の反応基)のみを重合させたシリケート(以下、4官能性シリコーンという)が最も好ましい。4官能性シリコーンを利用すると光触媒層の親水性が良好となり、セルフクリーニング性が同時に発揮されるので好ましい。4官能性シリコーンとしては、メチルシリケート、エチルシリケート、イソプロピルシリケート等のアルキルシリケートが好適に利用できる。
なお、光触媒コーティング液中の任意成分である加水分解性シリコーンを、アルコキシ基、ハロゲン基、水素基の群から選ばれる少なくとも1種の反応基を有するオルガノシロキサンであるようにすること、加水分解性シリコーンとして、好ましくはそのモノマー単位として2官能性シラン、3官能性シラン、4官能性シランを単独又は組合わせて重合させ、その末端に反応基を有するシリコーン(オリゴマー、ポリマー)を利用すること、及びさらに好ましくは4官能性シリコーンを利用することについて、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0062】
光触媒コーティング液中の任意成分である加水分解性シリコーンは、アルコキシ基を有するオルガノシロキサンであるとより好ましい。アルコキシ基を有するオルガノシロキサンは、ハロゲン基又は水素基を有するオルガノシロキサンと比較して、脱水縮重合反応を制御しやすく、安定した品質の光触媒層を得やすくなる。
なお、光触媒コーティング液中の任意成分である加水分解性シリコーンを、アルコキシ基を有するオルガノシロキサンであるようにすることは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0063】
さらに光触媒コーティング液中に、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、パラジウム、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、白金および金からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属および/またはその金属からなる金属化合物を、添加してもよい。それにより、これらの金属の有する触媒機能を同時に発現できる。この添加は、前記金属または金属化合物をコーティング液に混合し、溶解または分散させる方法、前記金属または金属化合物を光触媒層や光触媒粒子に担持する方法、などのいずれの方法によっても行うことができる。
【0064】
光触媒コーティング液における溶媒としては、水も有機溶媒も利用できるが、水であるのが好ましい。そうすることで、塗装時に有機溶媒を揮発させることなく塗膜形成できるので、環境上好ましい。また、本発明の光触媒コーティング液の固形分濃度は特に限定されないが、1〜10質量%とするのが塗布し易い点で好ましい。なお、光触媒コーティング組成物中の構成成分の分析は、コーティング液を限外ろ過によって粒子成分と濾液に分離し、それぞれを赤外分光分析、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、蛍光X線分光分析などで分析し、スペクトルを解析することによって評価することができる。
なお、光触媒コーティング液中の溶媒を水にすること、および光触媒コーティング液の固形分濃度を1〜10質量%とすることは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0065】
上述した光触媒塗装体のうち、中間層が形成された光触媒塗装体を形成するための中間層形成用コーティング液は、溶媒とシリコーン変性樹脂を含んでなるのが好ましく、より好ましくは溶媒とアクリルシリコーンを含んでなるのが好ましい。
そうすることで、中間層の耐候性、光触媒反応に対する耐久性、可撓性等を充分に発揮することができる。
シリコーン変性樹脂としては、樹脂中にポリシロキサンを含むシリコーン変性アクリル樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性ウレタン樹脂、シリコーン変性ポリエステル等が耐候性の点からより好適である。
シリコーン変性樹脂は、ケイ素原子含有量が、シリコーン変性樹脂の固形分に対して0.2質量%以上16.5質量%未満が好ましく、より好ましくは6.5質量%以上16.5質量%未満である。シリコーン変性樹脂に含有されるケイ素原子含有量が0.2質量%以上の場合、中間層の耐候性が良好となり、光触媒に浸食される可能性が抑制される。またシリコーン変性樹脂に含有されるケイ素原子含有量が16.5質量%未満の場合、可撓性が充分になり、中間層におけるクラックの発生が抑制される。ここで前記シリコーン変性樹脂中のケイ素原子含有量は、X線光電子分光分析装置(XPS)による化学分析によってよって測定することができる。
またアクリルシリコーンとしては、カルボキシル基を有するシリコーン変性アクリル樹脂とエポキシ基を有するシリコーン樹脂の二液を混合して使用することが、塗膜の強度を向上させる点からさらに好適である。
なお、中間層はシリコーン変性樹脂を含んでなること、シリコーン変性樹脂としては、ケイ素原子含有量がシリコーン変性樹脂の固形分に対して0.2質量%以上16.5質量%未満が好ましくより好ましくは6.5質量%以上16.5質量%未満であること、中間層
はアクリルシリコーンを含んでなること、アクリルシリコーンとしてはカルボキシル基を有するシリコーン変性アクリル樹脂とエポキシ基を有するシリコーン樹脂の二液を混合して使用するのが好ましいことは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
なお、中間層形成用コーティング液が溶媒とシリコーン変性樹脂を含んでなること、中間層形成用コーティング液が溶媒とアクリルシリコーンを含んでなることは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0066】
上述した光触媒塗装体のうち、中間層が形成された光触媒塗装体を形成するための中間層形成用コーティング液は、紫外線吸収剤を含んでなるのが好ましい。そうすることで、基材の耐候性、光触媒反応に対する耐久性を一層増すことができる。
なお、中間層形成用コーティング液が紫外線吸収剤を含んでなることは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0067】
上述した光触媒塗装体のうち、中間層が形成された光触媒塗装体を形成するための中間層形成用コーティング液は、有機防カビ剤を含んでなるのが好ましい。光触媒層とは別の中間層に有機防カビ剤カビ剤を含み、かつ、光触媒層の粒子間に隙間が設けられていることで、光触媒による防藻、防カビ機能と、有機防カビ剤による防藻、防カビ機能とを互いに損なうことなく有効に発揮できる。
なお、中間層形成用コーティング液が有機防カビ剤を含んでなることは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0068】
中間層形成用コーティング液における溶媒としては、水も有機溶媒も利用できるが、水であるのが好ましい。そうすることで、塗装時に有機溶媒を揮発させることなく塗膜形成できるので、環境上好ましい。
また、本発明の中間層塗装用液剤の固形分濃度は特に限定されないが、10〜20質量%とするのが塗布し易い点で好ましい。なお、中間層コーティング液中の構成成分の分析は、樹脂成分に関しては赤外分光分析で評価することができる。
なお、中間層形成用コーティング液中の溶媒を水にすること、本発明の中間層塗装用液剤の固形分濃度は10〜20質量%が好ましいことは、ここまでに記述した各構成要素と好適に組み合わせることができ、かつその効果を妨げずに上述した新たな効果を発揮することができる。
【0069】
光触媒層製造方法
本発明の光触媒塗装体は、本発明の光触媒コーティング液を基材上に塗布することにより簡単に製造することができる。光触媒層の塗装方法は、前記液剤を刷毛塗り、ローラー、スプレー、ロールコーター、フローコーター、ディップコート、流し塗り、スクリーン印刷等、一般に広く行われている方法を利用できる。コーティング液の基材への塗布後は、常温乾燥させればよく、あるいは必要に応じて加熱乾燥してもよいが、焼結が進むまで加熱すると粒子間の空隙が減少し十分な光触媒活性を得ることができなくなる。本発明において、乾燥温度は10℃以上500℃以下であり、基材の種類に応じて上限値は適宜設定されて良い。基材の少なくとも一部に樹脂が含まれる場合、樹脂の耐熱温度等を考慮して好ましい乾燥温度は10℃以上200℃以下である。
【0070】
中間層製造方法
本発明の中間層塗装体は、本発明の中間層コーティング液を、前記基材上に塗布することにより簡単に製造することができる。中間層の塗装方法は、前記液剤を刷毛塗り、ローラー、スプレー、ロールコーター、フローコーター、ディップコート、流し塗り、スクリーン印刷、電着、蒸着等、一般に広く行われている方法を利用できる。コーティング液の基材への塗布後は、常温乾燥させればよく、あるいは必要に応じて加熱乾燥してもよい。
【実施例】
【0071】
<実施例A>
本発明を以下の例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
なお、以下の例において光触媒コーティング液の作製に使用した原料は以下の通りである。
光触媒粒子
・チタニア水分散体(平均粒径:42nm、塩基性)
無機酸化物粒子
・水分散型コロイダルシリカ(平均粒径:14nm、塩基性)(例1〜7、例9、例11〜23で使用)
・水分散型コロイダルシリカ(平均粒径:26nm、塩基性)(例8で使用)
・水分散型コロイダルシリカ(平均粒径:5nm、塩基性)(例10で使用)
加水分解性シリコーン
・テトラメトキシシランの重縮合物(SiO換算濃度:51質量%。溶媒:メタノール、水)
界面活性剤
・ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤
【0072】
例1〜3:耐候性の評価(屋外暴露)
光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材として着色有機塗装体を用意した。この着色有機塗装体は、シーラー処理した窯業系サイディング基材上にカーボンブラック粉末を添加した汎用アクリルシリコーンを塗布して、十分に乾燥および硬化させたものである。一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、界面活性剤とを表1に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。なお、この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
【0073】
得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記着色有機塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。こうして、光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例1〜3のいずれの例においても約0.5μmであった。
【0074】
こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体について、宮古島にてJIS K 5600−7−6に規定される暴露架台を用い南面に向けて水平より20°の角度で屋外暴露を行った。三ヶ月毎に外観を目視で確認した。
【0075】
得られた結果は表1に示される通りであった。ここで、表中のGはほとんど変化しなかったことを、NGはわずかに白華が生じたことを示す。表1に示されるように、光触媒層中の光触媒粒子の含有量を5質量部未満とすることで、宮古島において有機基材上に光触媒層を塗装しても充分な耐候性を有することが分かった。
【0076】
【表1】

【0077】
例4〜6:紫外線暴露親水性評価
光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材として着色有機塗装体を用意した。この着色有機塗装体は、フロート板ガラス上にカーボンブラック粉末を添加した汎用アクリルシリコーンを塗布して、十分に乾燥および硬化させたものである。一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、表2に示される各種平均粒径の無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、界面活性剤とを表2に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。なお、この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
【0078】
得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記着色有機塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。こうして、光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例4〜6のいずれの例においても約0.5μmであった。
【0079】
こうして得られた光触媒塗装体について、以下の通り親水性の評価を行った。光触媒塗装体を暗所にて1日間養生した後に、1mW/cmに調整したBLB光下に光触媒塗装面を上にして7日間放置後、光触媒塗装面の接触角を接触角計(協和界面科学製 CA−X150型)にて測定した。なお、接触角の測定は親水性の代用とした。
【0080】
得られた結果は表2に示される通りであった。ここで、紫外線曝露親水性の評価基準は以下の通りとした。
<親水性>
A:接触角が10°未満
B:接触角が10°以上、20°未満
C:接触角が20°以上
表2に示されるように、光触媒層中の光触媒粒子の含有量を2質量部以上とすることによって、高い親水性を確保することが分かった。
【0081】
【表2】

【0082】
例7、8:耐摺動磨耗性評価
光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材として着色有機塗装体を用意した。この着色有機塗装体は、エポキシ樹脂で目止め処理したスレート板に、カーボンブラック粉末を添加した汎用アクリルシリコーンを塗布して、十分に乾燥および硬化させたものである。一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、表3に示される各種平均粒径の無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、界面活性剤とを表3に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。なお、この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
【0083】
得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記着色有機塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。こうして、光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例7および例8のいずれの例においても約0.5μmであった。
【0084】
こうして得られた光触媒塗装体について、以下の通り耐洗浄性試験を行った。試験方法はJIS A6909に準じて行った。光触媒塗装体を洗浄試験機(東洋精機製作所製 No.458 ウオッシャビリティテスタ)の試験台に光触媒塗装面を上向きにして水平に固定した。乾燥したブラシの質量が450gの豚毛ブラシの毛先を0.5%溶液の石鹸水に浸した後に光触媒塗装面に載せ、500往復させ、その後取り外して水で洗浄し乾燥させた。
【0085】
十分乾燥させた光触媒塗装体に3mW/cmに調整したBLB光を24時間照射した後、光触媒塗装面の接触角を接触角計(協和界面科学製 CA−X150型)にて測定した。なお、接触角の測定は親水性の代用とした。
【0086】
得られた結果は表3に示される通りであった。ここで、耐摺動磨耗性の評価基準は以下の通りとした。
<耐摺動磨耗性>
A:接触角が10°未満
B:接触角が10°以上
表3に示されるように、例7の光触媒塗装体は摺動に対して強固な膜を形成することが分かった。
【0087】
【表3】

【0088】
例9、10:ヘイズの測定
光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材として550nmの波長の透過率が94%のフロート板ガラスを用いた。一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、表4に示される各種平均粒径の無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、界面活性剤とを表4に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。なお、この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
【0089】
得られた光触媒コーティング液を先述の基材上に1000rpmで10秒間スピンコートし、120℃で乾燥し光触媒層を得た。こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体のヘイズをヘイズ計(Gardner製 haze−gard plus)を用いて測定した。
【0090】
得られた結果は表4に示される通りであった。例9の光触媒塗装体はヘイズ値を1%未満に抑えることができ透明性が確保できることが分かった。
【0091】
【表4】


【0092】
例11〜14:有害ガス分解性の評価
光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材として着色有機塗装体を用意した。この着色有機塗装体は、フロート板ガラス上にカーボンブラック粉末を添加した汎用アクリルシリコーンを塗布して、十分に乾燥および硬化させたものである。一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、表5に示される各種平均粒径の無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、界面活性剤とを表5に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。したがって、この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
【0093】
得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記着色有機塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。こうして、光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、表5に示される値であった。
【0094】
こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体について、以下の通りガス分解性試験を行った。光触媒塗装体に前処理として1mW/cmのBLB光で12hr以上照射した。JIS R1701に記載の反応容器内に塗装体サンプルを1枚セットした。25℃、50%RHに調整した空気に約1000ppbになるようにNOガスを混合し、遮光した反応容器内に20分導入した。その後ガスを導入したままで3mW/cmに調整したBLB光を20分間照射した。その後ガスを導入した状態で再度反応容器を遮光した。NOx除去量は、BLB光照射前後でのNO、NO濃度から下記の式に従って計算した。
NOx除去量=[NO(照射後)−NO(照射時)]−[NO(照射時)−NO(照射後)]
【0095】
得られた結果は表5に示される通りであった。表5に示されるように、光触媒層中の光触媒粒子の含有量を5質量部未満としても充分にNOx分解活性を得られることが分かった。
【0096】
【表5】

【0097】
例15〜17:加水分解性シリコーンの影響
光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材として着色有機塗装体を用意した。この着色有機塗装体は、フロート板ガラス上にカーボンブラック粉末を添加した汎用アクリルシリコーンを塗布して、十分に乾燥および硬化させたものである。一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、加水分解性シリコーンとしてのテトラメトキシシランの重縮合物と、界面活性剤とを表6に示される配合比(ただし加水分解性シリコーンはシリカ換算値)で混合して、光触媒コーティング液を得た。なお、例15の光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
【0098】
得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記着色有機塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。こうして、光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例15〜17のいずれの例においても約0.5μmであった。
【0099】
こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体について、以下の通りガス分解性試験を行った。光触媒塗装体に前処理として1mW/cmのBLB光で12hr以上照射した。JIS R1701に記載の反応容器内に塗装体サンプルを1枚セットした。25℃、50%RHに調整した空気に約1000ppbになるようにNOガスを混合し、遮光した反応容器内に20分導入した。その後ガスを導入したままで3mW/cmに調整したBLB光を20分間照射した。その後ガスを導入した状態で再度反応容器を遮光した。NOx除去量は、BLB光照射前後でのNO、NO濃度から下記の式に従って計算した。
NOx除去量=[NO(照射後)−NO(照射時)]−[NO(照射時)−NO(照射後)]
【0100】
得られた結果は表6に示される通りであった。ここで、加水分解性シリコーンを全く含まない例15を100として、それに対して50以上をG、50未満をNGを表す。表6に示されるように、光触媒層を光触媒粒子と無機酸化物から構成し、実質的に加水分解性シリコーンを含まないことにより、良好なNOx分解性を示した。一方、加水分解性シリコーンが10質量部入ったものはNOx分解性が喪失していることが分かった。
【0101】
【表6】

【0102】
例18、19:耐候性試験(下地劣化の評価)
光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材として着色有機塗装体を用意した。この着色有機塗装体は、フロート板ガラス上にカーボンブラック粉末を添加した汎用アクリルシリコーンを塗布して、十分に乾燥および硬化させたものである。一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、界面活性剤とを表7に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。なお、この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
【0103】
得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記着色有機塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。こうして、光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。操作型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例18および例19のいずれの例においても約0.5μmであった。
【0104】
こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体について、以下の通り耐候性試験を行った。光触媒塗装体を過酸化水素水噴霧を併用したキセノンアーク式耐候性試験機(東洋精機製、Ci4000)に投入した。キセノンランプの強度は80W/m(波長300〜400nm)、過酸化水素水の濃度は1%、キセノンランプの照射は22時間/サイクルで過酸化水素水の噴霧は始めの2時間で3分噴霧→2分停止を繰り返して行う。200hr経過後に試験片を取り出し、塗膜表面にセロハンテープを貼り付けて一気に剥がし、塗膜劣化(チョーキング現象)によるテープの糊面に付着する着色有機塗装の粉の有無で評価した。
【0105】
得られた結果は表7に示される通りであった。ここで、表中のGはほとんどテープの糊面に粉が付着していなかったことを表す。表7に示されるように、光触媒層中の光触媒粒子の含有量を5質量部未満の光触媒塗装体は充分な耐候性を有することが分かった。
【0106】
【表7】

【0107】
例20〜例23:直線透過率の測定
光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材として550nmの波長の透過率が94%のフロート板ガラスを用意した。一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、界面活性剤とを表8に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。なお、この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
【0108】
得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記フロート板ガラス上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。こうして、光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。操作型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚(μm)を測定したところ、表8に示される値であった。
【0109】
こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体について、以下の通り直線(550nm)透過率の測定を紫外・可視・近赤外分光光度計(島津製作所製 UV−3150)を用いて行った。
【0110】
得られた結果は表8に示される通りであった。ここで、直線透過率の評価基準は以下の通りとした。
<直線透過率>
A:直線(550nm)透過率が95%以上
B:直線(550nm)透過率が90%以上95%未満
表8の光触媒塗装体は高い透明性を示した。
【0111】
【表8】

【0112】
<実施例B>
本発明を以下の例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
なお、以下の例において中間層コーティング液は、以下に示したいずれかのシリコーン変性アクリル樹脂材と水と造膜助剤を適宜混合して作成した。詳細を表9に示した。
・ケイ素原子含有量が10質量%のシリコーン変性アクリル樹脂ディスパージョン
・ケイ素原子含有量が0.2質量%のシリコーン変性アクリル樹脂ディスパージョン
・ケイ素原子含有量が16.5質量%のシリコーン変性アクリル樹脂ディスパージョン
【0113】
【表9】

【0114】
以下の例において光触媒コーティング液は、以下に示した光触媒粒子と、いずれかの無機酸化物と水と界面活性剤を適宜混合して作成した。詳細を表10に示した。の作製に使用した原料は以下の通りである。
光触媒粒子
・チタニア水分散体(平均粒径:42nm、塩基性)
無機酸化物粒子
・水分散型コロイダルシリカ(平均粒径:26nm、塩基性)
・水分散型コロイダルシリカ(平均粒径:14nm、塩基性)
・水分散型コロイダルシリカ(平均粒径:5nm、塩基性)
・水分散型コロイダルシリカ(平均粒径:51nm、塩基性)
加水分解性シリコーン
・テトラメトキシシランの重縮合物(SiO換算濃度:51質量%。溶媒:メタノール、水)
界面活性剤
・ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤
【0115】
【表10】

【0116】
例31〜36:ガス分解性の評価
中間層および光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材としてフロート板ガラスを用意した。あらかじめ加熱したガラス基材上に、表9のM−1に記載の中間層コーティング液をスプレーコートし、120℃で乾燥し中間層を得た。このM−1液中の樹脂の固形分濃度は約20質量%であった。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚を測定したところ、例31〜36のいずれの例においても約10μmであった。
【0117】
一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水とを表10のT−2〜T−7に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。光触媒コーティング液中の、光触媒、無機酸化物および加水分解性シリコーンの合計の固形分濃度は5.5質量%とした。得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記中間層塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例31〜36のいずれの例においても約0.5μmであった。こうして、中間層と光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。
【0118】
こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体について、以下の通りガス分解性試験を行った。光触媒塗装体に前処理として1mW/cmのBLB光で12hr以上照射した。JIS R1701に記載の反応容器内に塗装体サンプルを1枚セットした。25℃、50%RHに調整した空気に約1000ppbになるようにNOガスを混合し、遮光した反応容器内に20分導入した。その後ガスを導入したままで3mW/cmに調整したBLB光を20分間照射した。その後ガスを導入した状態で再度反応容器を遮光した。NOx除去量は、BLB光照射前後でのNO、NO濃度から下記の式に従って計算した。
NOx除去量=[NO(照射後)−NO(照射時)]−[NO(照射時)−NO(照射後)]射後)]
【0119】
得られた結果は表11に示される通りであった。表11に示されるように、光触媒層を光触媒粒子と無機酸化物から構成し、加水分解性シリコーンを含まない構造にすると、良好なNOx分解性を示した。一方、加水分解性シリコーンが10質量部入ったものは、NOx分解性が喪失していることが分かった。また光触媒層中の光触媒比率を2.5倍に増やしてもその傾向は変わらなかった。
【0120】
【表11】

【0121】
例37〜53:紫外線遮蔽率および直線透過率の測定
光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材として550nmの波長の透過率が94%のフロート板ガラスを用意した。一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水とを表4のT−1〜T−3、T−5、T−8に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。したがって、この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記フロート板ガラス上にスプレー
塗布し、120℃で乾燥した。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、表12に示される値であった。
【0122】
こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体について、以下の通り直線(550nm)透過率および紫外線(300nm)遮蔽率の測定を紫外・可視・近赤外分光光度計(島津製作所製 UV−3150)を用いて行った。
【0123】
得られた結果は表12に示される通りであった。ここで、紫外線遮蔽率および直線透過率の評価基準は以下の通りとした。
<紫外線遮蔽率>
A:紫外線(300nm)遮蔽率が80%以上
B:紫外線(300nm)遮蔽率が30%以上80%未満
C:紫外線(300nm)遮蔽率が30%未満
<直線透過率>
a:直線(550nm)透過率が97%以上
b:直線(550nm)透過率が95%以上97%未満
c:直線(550nm)透過率が95%未満
表12に示されるように、光触媒層中の光触媒の含有量が5質量部〜15質量部では膜厚を0.5μm以上3μm以下にすることで有機物の劣化に起因する紫外線を十分に遮蔽し、かつ透明性も確保できることが分かった。
【0124】
【表12】

【0125】
例54〜56:塗膜の透明性評価
光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材としてフロート板ガラスを用意した。光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水とを表10のT−3、T−10、T−11に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。得られた光触媒コーティング液を50×50mmの板ガラス上に1g滴下した後、1000rpm10秒の条件でスピンコートして塗膜の透明性試験体を得た。
【0126】
こうして得られた50×50mmの大きさの光触媒塗装体について、BYK−Gardner社製haze−gard plusにてヘイズ値を測定した。
【0127】
得られた結果は表13に示される通りであった。表13より、例54、55の光触媒塗装体は、ヘイズ値を1%未満に抑えることができ、透明性が確保できることが分かった。
【0128】
【表13】

【0129】
例57〜59:塗膜の密着性評価
中間層および光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材としてフロートガラスを用意した。あらかじめ加熱したフロートガラス上に、表9のM−1に記載の中間層コーティング液をスプレーコートし、120℃で乾燥し中間層を得た。M−1液中の樹脂の固形分濃度は約20%であった。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚を測定したところ、例57〜59のいずれの例においても約10μmであった。
【0130】
一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水とを表10のT−3、T−11、T−12に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記中間層塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例57〜59のいずれの例においても約0.5μmであった。こうして、中間層と光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。
【0131】
こうして得られた50×50mmの大きさの光触媒塗装体について、常温の飽和水酸化カルシウム水溶液中に18時間浸漬した。水洗い後、50℃で1時間乾燥させた後、塗膜表面にJIS Z1522に規定されるセロハンテープを貼り、垂直に瞬間的に剥がしたあと、剥離面を観察して、前後での膜の残存を確認した。
【0132】
得られた結果は表14に示される通りであった。ここで表中の○は光触媒層の剥離が全く認められなかったもの、△は光触媒層の剥離が一部認められたもの、×は光触媒層が全面剥離がしたものを表す。例57、58の光触媒塗装体は、光触媒層が中間層に対し充分な密着性を有することが分かった。
【0133】
【表14】

【0134】
例60〜62:塗膜の耐候性評価−1
中間層および光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材としてフロート板ガラスを用意した。あらかじめ加熱したガラス基材上に、表9のM−2に記載の中間層コーティング液に着色顔料を混合したものをスプレーコートし、120℃で乾燥し中間層を得た。M−2液中の樹脂の固形分濃度は約20%であった。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚を測定したところ、例60〜62のいずれの例においても約10μmであった。
【0135】
一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水とを表10のT−2、T−5、T−9に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記中間層塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例60〜62のいずれの例においても約0.5μmであった。こうして、中間層と光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。
【0136】
こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体について、以下の通り耐候性試験を行った。光触媒塗装体をJIS B7753に規定されるサンシャインウエザオメーター(スガ試験機製、S−300C)に投入した。300hr経過後に試験片を取り出し、日本電色製の測色差計ZE2000にて、促進試験前後で色差を測定し、そのΔb値を比較することで変色の度合いを評価した。
【0137】
得られた結果は表15に示される通りであった。ここで、表中のGはほとんど変色しなかったことを、NGはΔb値がプラス側(黄変側)に推移したことを表す。表15に示されるように、光触媒層中の光触媒の含有量を15質量部以下にすることによって、ケイ素原子含有量が小さい中間層に光触媒層を塗装しても充分な耐候性を有することが分かった。
【0138】
【表15】

【0139】
例63、64:塗膜の耐光性評価−2
中間層および光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材として亜鉛メッキ鋼板に汎用のエポキシ樹脂系の下塗り剤を塗装し、乾燥したものを用意した。表9のM−1およびM−3に記載の中間層コーティング液をそれぞれスプレーコートし、120℃で乾燥し中間層を得た。M−1およびM−3液中の樹脂の固形分濃度は約20%であった。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚を測定したところ、M−1を用いた例33、M−3を用いた例64のいずれの中間層も約10μmであった。
【0140】
一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水とを表10のT−3に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記中間層塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例63、例64のいずれの例においても約0.5μmであった。こうして、中間層と光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。
【0141】
こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体について、以下の通り耐候性試験を行った。光触媒塗装体をメタリングウエザオメーター(スガ試験機製M6T)に投入した。150hr経過後に試験片を外観を確認した。
【0142】
ケイ素原子含有量が10質量%のアクリル変性シリコーン樹脂を用いた場合においては、クラックが入らず耐候性が良好であった。一方ケイ素原子含有量が16.5%のアクリル変性シリコーン樹脂を用いた場合、わずかではあるが部分的にクラックの発生がみられた。
【0143】
例65:塗膜の耐光性評価−3
基材のサイズを150×65mmとした以外は例63と同じ条件で、光触媒塗装体を作成した。この光触媒塗装体について、以下の通り耐候性試験を行った。光触媒塗装体をJIS B7753に規定されるサンシャインウエザオメーター(スガ試験機製、S−300C)に投入した。4500hr経過後に試験片を取り出し、日本電色製の測色差計ZE2000にて色差を測定し、ΔE値を算出した。また接触角計(協和界面科学製CA−X150)にて水接触角を測定した。なおΔE値は、JIS Z8730に記載の方法に基づいて算出した。
【0144】
本発明において得られた光触媒塗装体は、サンシャインウエザオメーター4500hr経過後のΔE値が0.5、水接触角は5°以下と驚異的な耐候性と、超親水性を有することが分かった。またNOxガス分解および塗膜の密着性も、初期とほとんど同等のレベルであった。
【0145】
例66:塗膜の耐候性評価−4
例65と同一条件にて作成した光触媒塗装体について、以下の通り耐候性試験を行った。光触媒塗装体を神奈川県茅ケ崎市にて、水平から上方に向け45°の傾斜をつけた状態で南の方角に向け、屋外曝露を実施した。約500日経過後に試験片を取り出し、日本電色製の測色差計ZE2000にて色差を測定した。
【0146】
本発明において得られた光触媒塗装体は、屋外曝露を実施した約500日経過後のΔE値が0.5以下と、驚異的な防汚性を有することが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、基材上に設けられた光触媒層とを備えた光触媒塗装体であって、
前記光触媒層が、
光触媒粒子と、
無機酸化物粒子と、を含んでなり、
前記光触媒層が、層中の粒子間に隙間を有することを特徴とする
光触媒塗装体。
【請求項2】
前記光触媒層が
1質量部を超え20質量部未満の光触媒粒子と、
70質量部を超え99質量部未満の無機酸化物粒子と、
0質量部以上10質量部未満の加水分解性シリコーンの乾燥物とを、
前記光触媒粒子、前記無機酸化物粒子、および前記加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量が100質量部となるように含んでなる、
請求項1に記載の光触媒塗装体。
【請求項3】
前記光触媒層が
5質量部以上15質量部以下の光触媒粒子と、
75質量部を超え95質量部以下の無機酸化物粒子と、
0質量部以上10質量部未満の加水分解性シリコーンの乾燥物とを、
前記光触媒粒子、前記無機酸化物粒子、および前記加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量が100質量部となるように含んでなる、
請求項1または2に記載の光触媒塗装体。
【請求項4】
前記光触媒粒子の平均粒径が10nm以上100nm以下である、ことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の光触媒塗装体。
【請求項5】
前記光触媒粒子が、酸化チタン粒子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光触媒塗装体。
【請求項6】
前記光触媒粒子が、アナターゼ型酸化チタンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光触媒塗装体。
【請求項7】
前記光触媒層中には、さらにCuが存在することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光触媒塗装体。
【請求項8】
前記光触媒粒子には、Cuが担持されていることを特徴とする請求項7に記載の光触媒塗装体。
【請求項9】
前記光触媒層中には、さらにCuおよびAgが存在することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光触媒塗装体。
【請求項10】
前記光触媒粒子には、AgおよびCuが担持されていることを特徴とする請求項9に記載の光触媒塗装体。
【請求項11】
前記無機酸化物粒子がシリカ粒子であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の光触媒塗装体。
【請求項12】
前記無機酸化物粒子が、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定することにより算出される、5nm以上40nm未満の個数平均粒径を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の光触媒塗装体。
【請求項13】
前記無機酸化物粒子が、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定することにより算出される、5nm以上20nm未満の個数平均粒径を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の光触媒塗装体。
【請求項14】
前記光触媒層中に、さらに界面活性剤を0質量部以上10質量部未満含んでなることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の光触媒塗装体。
【請求項15】
前記光触媒層の膜厚が0.5μm以上3μm以下の膜厚を有することを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の光触媒塗装体。
【請求項16】
前記光触媒層はさらに任意成分として、チタンアルコキシドまたはチタンアルコキシドの誘導体の加水分解縮重合物を、二酸化チタン換算で0質量部以上10質量部未満含んでなる、請求項1〜15のいずれか1項に記載の光触媒塗装体。
【請求項17】
前記光触媒層は、200℃以下の加熱乾燥により得られることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の光触媒塗装体。
【請求項18】
前記加水分解性シリコーンは、アルコキシ基、ハロゲン基、水素基の群から選ばれる少なくとも1種の反応基を有するオルガノシロキサンであることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の光触媒塗装体。
【請求項19】
前記加水分解性シリコーンは、アルコキシ基を有するオルガノシロキサンであることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の光触媒塗装体。
【請求項20】
前記加水分解性シリコーンの乾燥物は、前記加水分解性シリコーンの加水分解縮重合物であることを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載の光触媒塗装体。
【請求項21】
前記基材が、少なくともその表面が有機材料で形成された基材である、請求項1〜20のいずれか1項に記載の光触媒塗装体。
【請求項22】
前記光触媒層が前記基材上に直接塗布されてなる請求項1〜21のいずれか1項に記載の光触媒塗装体。
【請求項23】
前記基材と前記光触媒層との間に中間層を備えてなる、請求項1〜22のいずれか1項に記載の光触媒塗装体。
【請求項24】
前記中間層はシリコーン変性樹脂を含んでなる、請求項23に記載の光触媒塗装体。
【請求項25】
前記中間層はアクリルシリコーンを含んでなる、請求項23または24に記載の光触媒塗装体。
【請求項26】
前記中間層は紫外線吸収剤を含んでなる、請求項23〜25のいずれか1項に記載の光触媒塗装体。
【請求項27】
前記中間層は有機防カビ剤を含んでなる、請求項23〜26のいずれか1項に記載の光触媒塗装体。
【請求項28】
外装材として用いられる、請求項1〜27のいずれか1項に記載の光触媒塗装体。
【請求項29】
請求項1〜28のいずれか1項に記載の光触媒塗装体の製造に用いられる光触媒コーティング液であって、
溶媒と、
1質量部を超え20質量部未満の、10nm以上100nm以下の平均粒径を有する光触媒粒子と、
70質量部を超え99質量部未満の無機酸化物粒子と、
シリカ換算で0質量部以上10質量部未満の加水分解性シリコーンと、
を、前記光触媒粒子、前記無機酸化物粒子、および前記加水分解性シリコーンのシリカ換算量との合計量が100質量部となるように含んでなる、光触媒コーティング液。
【請求項30】
請求項1〜28のいずれか1項に記載の光触媒塗装体の製造に用いられる光触媒コーティング液であって、
溶媒と、
5質量部以上15質量部以下の、10nm以上100nm以下の平均粒径を有する光触媒粒子と、
75質量部を超え95質量部以下の無機酸化物粒子と、
シリカ換算で0質量部以上10質量部未満の加水分解性シリコーンと、
を、前記光触媒粒子、前記無機酸化物粒子、および前記加水分解性シリコーンのシリカ換算量との合計量が100質量部となるように含んでなる、光触媒コーティング液。
【請求項31】
前記光触媒粒子の平均粒径が10nm以上100nm以下である、ことを特徴とする請求項29または30に記載の光触媒コーティング液。
【請求項32】
前記光触媒粒子が、酸化チタン粒子であることを特徴とする請求項29〜31のいずれか1項に記載の光触媒コーティング液。
【請求項33】
前記光触媒粒子が、アナターゼ型酸化チタンであることを特徴とする請求項29〜32のいずれか1項に記載の光触媒コーティング液。
【請求項34】
さらにCuを含んでなる請求項29〜33のいずれか1項に記載の光触媒コーティング液。
【請求項35】
さらにCuおよびAgを含んでなる請求項29〜34のいずれか1項に記載の光触媒コーティング液。
【請求項36】
前記光触媒粒子には、Cuが担持されていることを特徴とする請求項34に記載の光触媒コーティング液。
【請求項37】
前記光触媒粒子には、AgおよびCuが担持されていることを特徴とする請求項35に記載の光触媒コーティング液。
【請求項38】
前記無機酸化物粒子がシリカ粒子であることを特徴とする請求項29〜37のいずれか1項に記載の光触媒コーティング液。
【請求項39】
前記無機酸化物粒子が、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定することにより算出される、5nm以上40nm未満の個数平均粒径を有する、請求項29〜38のいずれか1項に記載の光触媒コーティング液。
【請求項40】
前記無機酸化物粒子が、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定することにより算出される、5nm以上20nm未満の個数平均粒径を有する、請求項29〜39のいずれか1項に記載の光触媒コーティング液。
【請求項41】
さらに界面活性剤を0質量部以上10質量部未満含んでなることを特徴とする請求項29〜40のいずれか1項に記載の光触媒コーティング液。
【請求項42】
さらに任意成分として、チタンアルコキシドまたはチタンアルコキシドの誘導体の加水分解縮重合物を、二酸化チタン換算で0質量部以上10質量部未満含んでなる、請求項29〜41のいずれか1項に記載の光触媒コーティング液。
【請求項43】
前記加水分解性シリコーンは、アルコキシ基、ハロゲン基、水素基の群から選ばれる少なくとも1種の反応基を有するオルガノシロキサンであることを特徴とする請求項29〜42のいずれか1項に記載の光触媒コーティング液。
【請求項44】
前記加水分解性シリコーンは、アルコキシ基を有するオルガノシロキサンであることを特徴とする請求項29〜43のいずれか1項に記載の光触媒コーティング液。
【請求項45】
前記溶媒は水であることを特徴とする請求項29〜44のいずれか1項に記載の光触媒コーティング液。
【請求項46】
請求項22〜28に記載の光触媒塗装体の前記中間層を形成するためのコーティング液であって、
溶媒と、
シリコーン変性樹脂とを含んでなる、コーティング液。
【請求項47】
請求項22〜28に記載の光触媒塗装体の前記中間層を形成するためのコーティング液であって、
溶媒と、
アクリルシリコーンとを含んでなる、コーティング液。
【請求項48】
さらに紫外線吸収剤を含んでなる、請求項46または47に記載のコーティング液。
【請求項49】
さらに有機防カビ剤を含んでなる、請求項46〜48のいずれか1項に記載のコーティング液。
【請求項50】
前記溶媒は水であることを特徴とする請求項46〜49のいずれか1項に記載の光触媒コーティング液。

【公開番号】特開2010−99647(P2010−99647A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−652(P2009−652)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】