説明

光記録装置

【課題】光記録媒体の製造方法などの違いによる光記録媒体の構造上の差異に影響されない記録動作を実現することができる光記録装置の提供。
【解決手段】光記録媒体上に光を走査させながら照射することにより、該光記録媒体の光学的性質を変化させて、該光記録媒体における記録用案内溝上に情報を記録する情報記録手段と、前記記録用案内溝間の信号振幅を測定し、該測定した振幅値が予め記憶されている既定振幅値以下であるか否かを判定する判定手段と、前記測定した振幅値が前記既定振幅値を超えた場合には、前記情報記録手段の記録条件を変更する記録条件変更手段とを少なくとも有する光記録装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録可能なコンパクトディスク(CD−R/RW)、DVD−R/RW、DVD+R/+RW等の光記録媒体に対して好適に用いられる光記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光記録媒体として、DVD−RAM・WO、DVD−R、DVD+Rなどの1回だけ書き込みが可能なDVD(「DVD Write Once」と称することもある)や、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RWなどの複数回の書き込みが可能なDVD(Digital Versatile Disc)が知られている。
【0003】
このような各種光記録媒体において、隣接するトラック間に記録感度の相違がある場合、記録マークの幅を最適に制御し、信号再生時のトラック間のクロストークや、信号記録時のクロスイレーズを最小に抑え、トラックの高密度化を実現できる光記録方法を提供することを目的として、例えば、特許文献1には、光記録媒体の第1トラックTr(n−1)の第4の領域14に、異なる幅を有する複数の記録マーク4からなる第4テストパターンを記録し、前記第1トラックTr(n−1)に隣接する第2トラックTr(n)の、前記第4の領域14に隣接しない第3の領域13に、異なる幅を有する複数の記録マーク3からなる第3テストパターン3を記録し、第1トラックTr(n−1)及び第2トラックTr(n)を再生して得られた信号から各トラックの最適記録条件を求める光記録方法が提案されている。
しかし、この提案は、記録層が1層である通常の光記録媒体における記録再生の問題を取り扱うものであり、高密度記録を図るために最近市場で採用されつつある複数の記録層を有する多層光記録媒体における記録再生の問題については何ら言及していない。
【0004】
したがって光記録媒体、特に2つ以上の記録層を有する多層光記録媒体においては、その光記録媒体の製造方法などの違いに起因する光記録媒体の構造上の差異によりサーボ特性や記録条件が異なるため、従来の光記録装置では最適な記録ができておらず、その結果、記録品質が劣化して記録再生ができなくなるという課題があるのが現状である。
【0005】
【特許文献1】特開2002−197658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記要望に応え、従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、特に2つ以上の記録層を有する多層光記録媒体において、光記録媒体の製造方法などの違いに起因する光記録媒体の構造上の差異がサーボ信号に与える影響を調整することにより、最適な記録を実現することができる光記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 光記録媒体上に光を走査させながら照射することにより、該光記録媒体の光学的性質を変化させて、該光記録媒体における記録用案内溝上に情報を記録する情報記録手段と、
前記記録用案内溝間の信号振幅を測定し、該測定した振幅値が予め記憶されている既定振幅値以下であるか否かを判定する判定手段と、
前記測定した振幅値が前記既定振幅値を超えた場合には、前記情報記録手段の記録条件を変更する記録条件変更手段とを少なくとも有することを特徴とする光記録装置である。
<2> 記録用案内溝を走査する際に光が照射される領域が、記録用案内溝間に及ぶように設定されている前記<1>に記載の光記録装置である。
<3> 記録条件変更手段が、記録時のサーボ特性を変更する手段である前記<1>から<2>のいずれかに記載の光記録装置である。
<4> 記録条件変更手段が、記録時のトラッキングサーボ特性を変更する手段である前記<3>に記載の光記録装置である。
<5> 記録条件変更手段が、記録時のトラッキングエラー信号に挿入するオフセット量を変更する手段である前記<4>に記載の光記録装置である。
<6> 情報記録手段が、記録時の記録光の記録パワーを変更して記録を行い、
記録条件変更手段が、前記記録パワーによって、記録時のトラッキングエラー信号に挿入するオフセット量を変更する前記<5>に記載の光記録装置である。
<7> 記録条件変更手段が、情報を記録するときに光記録媒体の光学的性質を変化させるための記録用照射領域からの反射光による信号と、記録用案内溝に光を走査するための走査用照射領域からの反射光による信号との比率である信号比率を変更する手段である前記<4>に記載の光記録装置である。
<8> 情報記録手段が、記録時の記録光の記録パワーを変更して記録を行い、
記録条件変更手段が、前記記録パワーによって、信号比率を変更する前記<7>に記載の光記録装置である。
<9> 記録条件変更手段が、記録光の発光波形を変更する手段である前記<1>から<2>のいずれかに記載の光記録装置である。
<10> 光記録媒体が、2つ以上の記録層を有する多層光記録媒体である前記<1>から<9>のいずれかに記載の光記録装置である。
<11> 多層光記録媒体が、らせん状の記録用案内溝が形成された第1基板及び該第1基板上に形成された少なくとも第1記録層を有する第1構成体と、前記第1基板に形成された記録用案内溝と逆向きのらせん状の記録用案内溝が形成された第2基板、及び該第2基板上に形成された少なくとも第2記録層を有する第2構成体とを、前記第1基板及び前記第2基板を外側にして貼り合せて形成され、
判定手段によって前記第2構成体の記録用案内溝間の信号振幅を測定した振幅値が既定振幅値を超えたと判定した場合に、記録条件変更手段が、前記第2構成体に記録する際に、記録時のトラッキングエラー信号に挿入するオフセット量を変更すると共に、情報を記録するときに前記光記録媒体の光学的性質を変化させるための記録用照射領域からの反射光による信号と、記録用案内溝に光を走査するための走査用照射領域からの反射光による信号との比率である信号比率を変更する前記<10>に記載の光記録装置である。
【0008】
本発明の光記録装置においては、上記構成を備えることにより、記録用案内溝からの信号の漏れ込みがあってもトラッキングサーボ特性への影響のない光記録装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における問題を解決することができ、特に2つ以上の記録層を持つ多層光記録媒体において、光記録媒体の製造方法などの違いに起因する光記録媒体の構造上の差異がサーボ信号に与える影響を調整することにより、最適な記録を実現することができる光記録装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の光記録装置は、情報記録手段と、判定手段と、記録条件変更手段とを少なくとも有してなり、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。
【0011】
前記情報記録手段は、記録媒体上に光を走査させながら照射することにより、該光記録媒体の光学的性質を変化させて、該光記録媒体に設けられた記録用案内溝(グルーブ;G)上に情報を記録する手段であり、特に制限はなく、一般的なCD−R/RWドライブ、DVD−R、DVD−RW、DVD+RWドライブなどと同じ光記録媒体への情報記録手段が挙げられ、例えば光ピックアップ、などが挙げられる。
【0012】
前記判定手段は、前記記録用案内溝間の信号振幅を測定し、該測定結果を予め記憶されている既定振幅値以下であるか否かを判定する手段であり、例えば、リードアンプ、CPUなどが挙げられる。前記既定振幅値は、例えば光記録装置のROM、RAMなどに格納されている。
前記判定手段により、後述する2層光記録媒体の製造方法における逆層(IS)法と2P法との構造上の差異を容易に判別することができる。
【0013】
前記記録条件変更手段は、前記測定した振幅値が前記既定振幅値を超えた場合(前記測定した振幅値が前記既定振幅値以下ではない場合)には、前記情報記録手段の記録条件を変更する手段であり、例えば、(1)サーボ特性、特にトラッキングサーボ特性を変更する手段、(2)トラッキングエラー信号に挿入するオフセット量を変更する手段、(3)記録用照射領域からの反射光による信号と、走査用照射領域からの反射光による信号との比率を変更する手段、(4)記録光の発光波形を変更する手段などが挙げられる。前記記録条件変更手段としては、例えば、サーボ手段、レーザコントローラ、発光波形を作成する機能を有する光記録装置のCPUなどの演算部などが挙げられる。これらの詳細については、後述する。
【0014】
<光記録媒体>
本発明の光記録装置に用いられる光記録媒体としては、例えば、2層の記録層を有する多層光記録媒体(特にDVD+R/−R)が好適である。
このような多層光記録媒体としては、図1及び図2に示すように、光の入射側から、第1基板201/第1記録層L0/第1反射層202/接着層203又は第2記録用案内溝形成層203’/第2記録層L1/第2反射層204/第2基板(保護基板)205という構造を有するものが好ましい。なお、記録光(入射光)は第1基板201側から入射される。
【0015】
−第1基板−
前記第1基板は、基板側から記録再生を行う場合には使用レーザに対して透明でなければならないが、記録層側から記録再生を行う場合には透明である必要はない。
前記基板材料としては、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等のプラスチック;ガラス、セラミック、金属などが挙げられる。
なお、基板の表面にはトラッキング用の案内溝や案内ピット、更にアドレス信号などのプリフォーマットが形成されていてもよい。
【0016】
−記録層−
前記記録層は、レーザ光の照射により何らかの光学的変化を生じさせ、その変化により情報を記録するものであり、その材料としては有機色素を主成分とするものを用いる。ここで、主成分とは、記録再生に必要十分な量の有機色素を含有することを意味するが、通常は、必要に応じて適宜添加する少量の添加剤を除き、有機色素のみを用いる。
前記有機色素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばアゾ系色素、ホルマザン系色素、ジピロメテン系色素、(ポリ)メチン系色素、ナフタロシアニン系色素、フタロシアニン系色素、テトラアザポルフィリン系色素、スクアリリウム系色素、クロコニウム系色素、ピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素(インダンスレン系色素)、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素、アズレン系色素、テトラヒドロコリン系色素、フェナンスレン系色素、トリフェノチアジン系色素、又はこれらの金属錯体などが挙げられる。これら中でも、アゾ(金属キレート)色素、ホルマザン(金属キレート)色素、スクアリリウム(金属キレート)色素、ジピロメテン(金属キレート)色素、トリメチンシアニン色素、テトラアザポルフィリン色素が特に好ましい。
前記色素は熱分解特性として、分解開始温度は100℃〜360℃が好ましく、100℃〜350℃がより好ましい。前記分解開始温度が、360℃を超えると、記録時のピット形成がうまく行われずジッタ特性が悪くなることがあり、100℃未満であると、ディスクの保存安定性が悪化することがある。
【0017】
前記色素には、光学特性、記録感度、信号特性などの向上の目的で他の有機色素、金属、金属化合物を混合してもよく、或いは色素層と他の有機色素、金属、金属化合物からなる層を積層してもよい。
前記金属、又は金属化合物としては、例えばIn、Te、Bi、Se、Sb、Ge、Sn、Al、Be、TeO、SnO、As、Cdなどが挙げられ、それぞれを分散混合するか、或いは積層して用いることができる。
更に、前記色素中に高分子材料、例えばアイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル系樹脂、天然高分子、シリコーン、液状ゴムなどの種々の材料、或いはシランカップリング剤などを分散混合してもよいし、特性改良の目的で安定剤(例えば遷移金属錯体)、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤などを一緒に用いることできる。
【0018】
前記記録層の形成は、例えば蒸着法、スパッタリング法、CVD法、溶剤塗布法などの通常の手段によって行うことができる。前記塗布法を用いる場合には、前記色素を有機溶剤に溶解し、スプレー、ローラーコーティグ、ディッピング、スピンコーティングなどの慣用のコーティング法によって行うことができる。
前記有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロルエタン、四塩化炭素、トリクロルエタン等の脂肪族ハロゲン化炭化水素類;ベンゼン、キシレン、モノクロルベンゼン、ジクロルベンゼン等の芳香族類;メトキシエタノール、エトキシエタノール等のセロソルブ類;ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記記録層の厚みは、100Å(10nm)〜10μmが好ましく、200Å(20nm)〜2,000Å(200nm)がより好ましい。
【0020】
−反射層−
前記反射層の材料としては、例えばAu、Ag、Cr、Ni、Al、Fe、Snなどの単体で高反射率が得られ腐食され難い金属や半金属が挙げられる。これらの中でも、反射率や生産性の点からAu、Ag、Alが特に好ましい。また、これらの金属や半金属は単独で使用しても2種以上の合金として使用してもよい。
前記反射層の形成法としては、例えば蒸着法、スッパタリング法などが挙げられる。前記反射層の厚みは、50Å(5nm)〜5,000Å(500nm)が好ましく、100Å(10nm)〜3,000Å(300nm)がより好ましい。
【0021】
−接着層−
前記接着層の材料としては、特に制限はなく、2枚の光記録媒体を接着できる材料なら何でもよく、生産性を考慮すると、紫外線硬化型接着剤又はホットメルト型接着剤が好ましい。また、第2記録用案内溝形成層としては紫外線硬化型樹脂が好適である。この場合第2記録用案内溝を形成するスタンパの剥離に適した材料が好適である。
【0022】
また、第1反射層への腐食を抑えるため下引き層を設けることも好ましい。
前記下引き層は、(1)接着性の向上、(2)水又はガスなどのバリアー、(3)記録層の保存安定性の向上、(4)反射率の向上、(5)溶剤からの基板の保護、(6)案内溝、案内ピット、プレフォーマットの形成などの目的で設けられる。
前記(1)の目的に対しては、例えばアイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂、天然樹脂、天然高分子、シリコーン、液状ゴム等の種々の高分子化合物、又はシランカップリング剤などを用いることができる。
前記(2)及び(3)の目的に対しては、前記高分子材料以外に、SiO、MgF、SiO、TiO、ZnO、TiN、SiNなどの無機化合物を用いることができ、更に、Zn、Cu、Ni、Cr、Ge、Se、Au、Ag、Alなどの金属又は半金属を用いることができる。
前記(4)の目的に対しては、Al、Au、Ag等の金属や、メチン染料、キサンテン系染料などからなる金属光沢を有する有機薄膜を用いることができる。
前記(5)及び(6)の目的に対しては、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることができる。
前記下引き層の厚みは、0.01μm〜30μmが好ましく、0.05μm〜10μmがより好ましい。
【0023】
前記保護層及び基板面ハードコート層は、(1)記録層(反射吸収層)の傷、ホコリ、汚れ等からの保護、(2)記録層(反射吸収層)の保存安定性の向上、(3)反射率の向上等を目的として使用される。これらの目的に対しては、前記下引き層と同じ材料を用いることができる。前記下引き層の材料としては、例えばポリメチルアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、天然ゴム、スチレンブタジエン樹脂、クロロプレンゴム、ワックス、アルキッド樹脂、乾性油、ロジンなどが挙げられる。これらの中でも、生産性に優れている点から紫外線硬化樹脂が特に好ましい。
前記保護層又は基板面ハードコート層の厚みは、0.01μm〜30μmが好ましく、0.05μm〜10μmがより好ましい。
前記下引き層、保護層、及び基板面ハードコート層には、前記記録層の場合と同様に安定剤、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤等を含有させることができる。
【0024】
−第2基板−
前記第2基板は、保護基板側からレーザ光を照射する場合には、使用レーザ光に対して透明でなければならないが、単なる保護板として用いる場合には透明でなくてもよい。使用可能な保護基板材料は前記基板材料と全く同じであり、例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などのプラスチック、又はガラス、セラミック、金属などを用いることができる。また、第1基板と同じ材料を用いることでコストを低減することができる。
【0025】
<多層光記録媒体の製造方法>
このような2層の記録層を持つ多層光記録媒体の製造方法としては、逆積層(IS)法と、2P法に大別される。
【0026】
前記逆積層法は、図1に示すように、第1基板201上に、第1記録層L0、及び第1反射層202を形成する。これを第1構成体という。次に、第2基板205上に、第2反射層204、及び第2記録層L1を形成する。これを第2構成体という。両者を、第1基板201と第2基板205とが外側になるように(第1反射層202と第2記録層L1とが向き合うように)、接着層203で貼り合わせる。
【0027】
前記2P法は、図2に示すように、第1基板201上に、第1記録層L0、及び第1反射層202を形成する。次に、第1反射層202上に第2記録用案内溝形成層203を形成し、該第2記録用案内溝形成層203’上に記録用案内溝を形成し、その上に第2記録層L1、及び第2反射層204を形成した後、接着剤で第2基板205を接着する。
【0028】
信号情報は、第1記録層L0から第2記録層L1の案内溝上に屈折率変化として記録される。
記録面上の案内溝は螺旋状に形成されており、対物レンズ側の第1記録層L0と、その奥側の第2記録層L1で、螺旋の向きが異なる。このように第1記録層L0と第2記録層L1で案内溝の螺旋の向きが異なることをオポジットトラックと呼んでいる。
このようなオポジットトラックの構造の2層光記録媒体では、第1記録層L0においては内周から外周にかけて情報を記録し、第2記録層L1においては反対に外周から内周にかけて情報を記録する。
【0029】
前記2つの方法では、第1記録層L0及び第2記録層L1を形成するときの各記録用案内溝と記録光の入射方向に差が生じる。
前記逆積層法では、第1記録層L0は、入射光側の第1基板201に記録用案内溝が切られており、その上に第1記録層L0を形成する方式を採用しているが、第2記録層L1については、入射光と反対側の第2基板205に記録用案内溝が設けられており、その上に第2記録層L1を形成する。
前記2P法では、第1記録用案内溝が入射光側の第1基板201に設けられており、その上に第1記録層L0を形成する。また、第2記録用案内溝が入射光側の第2記録用案内溝形成層203’に設けられており、その上に第2記録層L1を形成する。
前記記録層が色素を含む液状材料を塗布する方法で形成される場合には、記録用案内溝の凸凹により厚さが異なり、入射光側から見た第2記録用案内溝の凹凸に対する第2記録層L1の厚さが2つの方法で異なり、その結果、サーボ条件及び記録光発光波形の形状に差異が生じる。
前記2P法によって作製した光記録媒体の場合には、図2に示すように、第2記録用案内溝に厚く色素が塗布されており、また、溝深さも深いことから、第2記録用案内溝に記録した記録マークの信号が第2記録用案内溝間に漏れ込む量が少ない。そのため、2P法では第2記録用案内溝間で測定した信号の振幅は小さくなる。これに対し、逆積層法によって作製した光記録媒体の場合には、図1に示すように、第2記録用案内溝と記録用案内溝間の記録層厚さに殆ど差はなく、また、溝深さも前記2P法よりも浅いことから、記録用案内溝に記録した記録マークの信号が記録用案内溝間に漏れ込む量が多くなってしまう。そのため、逆積層法では第2記録用案内溝間で測定した信号の振幅は大きくなる。
【0030】
前記光記録装置は、光記録媒体のグルーブと呼ばれる情報が記録される案内溝(情報トラック)を持つ記録面に、光源から出射された主ビームを照射することにより情報の記録を行い、記録面からの反射光に基づいて情報の再生などを行っている。そして、光記録装置には、光記録媒体の記録面に主ビームを照射するとともに、記録面からの反射光を受光するために、光ピックアップ装置が設けられている。
【0031】
また、光ピックアップ装置は、図3に示すように、光源411と、対物レンズ416を含み、光源411から出射される光束を光記録媒体418の記録面に導くとともに、記録面で反射された戻り光束を所定の受光位置まで導く光学系、及び受光位置に配置された分割受光素子419などを備えている。この受光素子からは、記録面に記録されているデータの再生情報だけでなく、光ピックアップ装置自体及び対物レンズ416の位置制御などに必要な情報を含む信号が出力され、それらの位置制御をするためにフィードバックされ、レンズアクチュエータ417によって駆動制御される。
記録面の所定位置にデータを正しく記録したり、記録面の所定位置に記録されているデータを正しく再生するためには、主ビームが記録面の所定位置に正確に照射されなければならない。そのためには、主ビームの照射位置を正確に検出する必要がある。そこで、記録面で反射された戻り光束から、記録面における主ビームの照射位置を検出する方法としては、トラッキングサーボ方法であるディファレンスプシュプル法がある。
【0032】
前記ディファレンスプシュプル法は、図4に示すように、光源から出射される光束を1つの主ビーム401と2つの副ビーム402とに分岐し、記録面において主ビーム401と副ビーム402とが光記録媒体の半径方向に1/2トラックピッチだけずれるように照射する。そして、記録面で反射した主ビーム401及び2つの副ビーム402の戻り光を、図5に示す3つの2分割された分割受光素子19a〜19cでそれぞれ受光し、その各分割受光素子それぞれでプッシュプル信号を求める。そして、主ビーム1のプッシュプル信号(MPP)と、2つの副ビーム2のサブプッシュプル信号の和信号(SPP)との差信号から、下記数式1で示すようにトラックエラー信号(DPP)を検出する。
<数式1>
DPP=MPP−K(SPP)
ただし、前記数式1中、Kは整数を表す。
【0033】
そして、検出されたトラックエラー信号(DPP)に基づいて、対物レンズを光記録媒体の半径方向に駆動する、いわゆるトラッキング制御が行われる。
【0034】
一般的なトラッキングサーボ方法であるディファレンスプシュプル法は、記録用案内溝内の記録用照射領域(主ビーム)と、該記録用案内溝の両脇の記録用案内溝間に走査用照射領域(副ビーム)とを設け、記録用案内溝内の記録用照射領域と併せて光を走査させる。この際、記録用照射領域から走査用照射領域への光の漏れこみを防ぐため、両者の距離を確保する必要がある。この観点から、走査用照射領域は、記録用照射領域の斜め前方、及び後方の位置の少なくともいずれかとなるようにすることが好適である。
【0035】
しかし、記録層が2層積層されており、それぞれの記録層上に、螺旋状の記録用案内溝がある構成の光記録媒体について、前記螺旋方向のうちの一が、他と逆方向である場合、光記録媒体を同一方向で回転させて、記録を行うこととした場合、記録層上の螺旋により、半径に対する記録方向が内周から外周、外周から内周で向きが変わってしまう。
そのとき、走査用照射領域の領域を挟む2つの記録用案内溝の記録状態に関して、半径方向に対する記録方向によって、記録又は未記録の組み合わせが異なるものとなってしまう。そのために記録用案内溝間の信号振幅が大きくなり、記録時にトラッキング用の信号にオフセットが載ってしまい、記録状態が劣化する。
【0036】
具体的に、図6及び図7を用い、2層の記録層構成の光記録媒体を例として説明する。
図6に示すように、副ビーム(走査用照射領域)が、第1記録層L0に対して情報を記録する際には、内周から外周にかけてD0方向に情報を記録するため、走査方向に向かって主ビーム(記録用照射領域)の前方かつ半径方向に対して記録用照射領域の外側、及び走査方向に向かって記録用照射領域の後方かつ半径方向に対して記録用照射領域の内側になるように設定されている光記録装置の場合、第1記録層L0の記録において、走査用照射領域に隣接する記録用案内溝の記録状態は両方とも記録済みか両方とも未記録の状態であり、反射率差が無い、即ち(C−D)+(E−F)が0(ゼロ)であり、良好な差動プッシュプル信号が得られる。
【0037】
一方、図7に示すように、第2記録層L1に対して記録する際には、外周から内周にかけてD1方向に情報を記録するため、第1記録層L0と逆螺旋となる第2記録層L1は、副ビーム(走査用照射領域)の外側に隣接する記録用案内溝が記録済みとなり、かつ走査用照射領域の内側に隣接する記録用案内溝が未記録となり、反射率差が生じて、(C−D)+(E−F)が0(ゼロ)とならず、第2記録層L1の記録時には、走査用照射領域の信号にオフセット量が乗ってしまう。
このオフセット量は、記録用案内溝間の記録層の厚さに依存するため、記録層案内溝外の記録層の厚みが記録用案内溝内より厚い場合、即ち、逆積層(IS)法で作製された光記録媒体では2P法で作製された光記録媒体に比べてオフセット量の増加が大きくなってしまう。
また、記録時の記録パワーが大きいとき、ビーム径が大きくなるためオフセット量が更に増大してしまう。また、記録パワーが大きいときに最適な信号比率(K値)も変動するためオフセット量が変わることがある。
【0038】
本発明においては、前記判定手段で記録用案内溝間の信号振幅を測定し、該測定結果を予め記憶されている既定振幅値と比較することにより、例えば逆積層法と2P法とを判定する。そして、記録用案内溝からの信号の漏れ込み量を評価し、漏れ込みによる影響を、トラッキング信号へのオフセット量の調整により削減することができる。
また、情報を記録するときに光記録媒体の光学的性質を変化させるための記録用照射領域(主ビーム)以外に、記録用案内溝に光を走査するための走査用照射領域(副ビーム)を有する光記録装置を用いて記録する際に、記録しようとする記録用案内溝の両隣の記録用案内溝のうち片側のみが既に記録されている状態で、記録用照射領域からの反射光と走査用照射領域からの反射光を用いてトラッキング用の信号を算出すると、走査用照射領域でトラッキング信号にオフセットが載ってしまう。更に、走査用照射領域への記録信号振幅が大きい方が、よりオフセット量が大きくなる。この場合、トラッキング信号へのオフセット量を調整すると共に、走査用照射領域と記録用照射領域の信号比率を調整することにより良好な記録動作が実現できる。
【0039】
したがって、前記多層光記録媒体が、らせん状の記録用案内溝が形成された第1基板及び該第1基板上に形成された少なくとも第1記録層を有する第1構成体と、前記第1基板に形成された記録用案内溝と逆向きのらせん状の記録用案内溝が形成された第2基板、及び該第2基板上に形成された少なくとも第2記録層を有する第2構成体とを、前記第1基板及び前記第2基板を外側にして貼り合せて形成された逆積層(IS)法による2層光記録媒体である場合には、
判定手段によって前記第2構成体の記録用案内溝間の信号振幅を測定した振幅値が既定振幅値を超えたと判定した場合に、記録条件変更手段が、前記第2構成体に記録する際に、記録時のトラッキングエラー信号に挿入するオフセット量を変更すると共に、情報を記録するときに前記光記録媒体の光学的性質を変化させるための記録用照射領域からの反射光による信号と、記録用案内溝に光を走査するための走査用照射領域からの反射光による信号との比率である信号比率を変更する。
【0040】
また、OPC(Optimum Power Control)領域などの内周部で、前記トラッキング信号へのオフセット量及び/又は走査用照射領域と記録用照射領域の信号比率を調整した場合に、高速記録へ変速するため外周部で記録光の出力を上げると、好適なオフセット量及び/又は信号比率が変動する。したがって、記録光の出力に応じて前記オフセット量及び/又は信号比率を変動させることが好適である。
また、記録光の発光波形を調整して、記録用案内溝からの信号が記録用案内溝間に漏れ込む量の少ない記録マークに調整することによっても、トラッキング信号への影響を抑えることができる。
【0041】
前記記録条件変更手段における記録条件の変更手段としては、上述したように、(1)トラッキングエラー信号に挿入するオフセット量を変更する手段、(2)記録用照射領域からの反射光による信号と、走査用照射領域からの反射光による信号との比率を変更する手段、(3)記録光の発光波形を変更する手段などが挙げられ、具体的には、図9〜図12により実施することができる。
【0042】
−(1)トラッキングエラー信号に挿入するオフセット量の変更−
図9に示すように、(1)通常の記録時サーボ調整を行った後、(2)記録済みの記録用案内溝にトラッキングを行い、(3)記録用案内溝間に漏れ込む信号振幅を測定した。得られた測定結果を、予め光記録装置内に記憶されている既定振幅値と比較し、既定振幅値以下である場合(YESの場合)には、(4)再生光により測定したトラッキングオフセットで記録を行う。一方、既定振幅値を超える場合(NOの場合)には、(5)再生光により測定したトラッキングオフセットに更に既定値をオフセットさせて記録を行う。
【0043】
−(1’)記録パワーに応じたオフセット量の変更−
図10に示すように、(1)〜(4)までは図9と同じであるが、既定振幅値を超える場合(NOの場合)には、(5’)記録時の記録パワーを、予め光記録装置内に記憶されている既定記録パワー値と比較し、既定記録パワー値以下である場合(YESの場合)には、(6)再生光により測定したトラッキングオフセットに更に既定値をオフセットさせて記録を行う。一方、既定記録パワー値を超える場合(NOの場合)には、(7)再生光により測定したトラッキングオフセットに、更に記録パワーに対応した既定値をオフセットさせて記録を行う。
【0044】
−(1)トラッキングサーボ特性の変更及び(2)信号比率の変更−
図11に示すように、(1)〜(6)までは図9と同じであるが、既定記録パワー値を超える場合(NOの場合)には、(7’)再生光により測定したトラッキングオフセットに、既定値をオフセットし、更に記録用照射領域と走査用照射領域との信号比率を調整したトラッキングサーボにより記録を行う。
【0045】
−(3)記録光の発光波形の変更−
図12に示すように、(1)〜(4)までは図9と同じであるが、既定振幅値を超える場合(NOの場合)には、(5”)記録用案内溝からの信号の漏れ込みの少ない発光波形に調整して記録を行った。
【0046】
以上の説明は2層の記録層を有する多層光記録媒体を中心に行ったが、更に多くの記録層を有する多層光記録媒体においても、記録用案内溝と記録層の形成方法について、2層の記録層を有する光記録媒体と本質的な差はなく、本発明を実施することは可能である。
【0047】
ここで、図13は、光記録装置の要部構成の一例を示す機能ブロック図である。図13中、1は光ディスク、2はスピンドルモータ、3は情報記録手段としての光ピックアップ、4はモータドライバ、5は判別手段としてのリードアンプ、6は記録条件変更手段としてのサーボ手段、7はDVDデコーダ、8はADIPデコーダ、9はレーザコントローラ、10はDVDエンコーダ、11はDVD−ROMエンコーダ、12はバッファRAM、13はバッファマネージャ、14はDVD−ROMデコーダ、15はATAPI/SCSIインターフェース、16はD/Aコンバータ、17はROM、18はCPU、19はRAM、20はパルスジェネレータをそれぞれ示し、LBはレーザ光、Audioはオーディオ出力信号をそれぞれ示す。
【0048】
図13において、矢印はデータが主に流れる方向を示しており、また、図13を簡略化するために、図13の各ブロックを制御するCPU18には、太線矢印のみを付けて各ブロックとの接続を省略している。ROM17には、CPU18において解読可能なコードで記述された制御プログラムが格納されている。なお、光記録装置の電源がオン状態になると、前記制御プログラムはメインメモリ(不図示)にロードされ、CPU18はそのプログラムに従って前記各部の動作を制御するとともに、制御に必要なデータ等を一時的にRAM19に保存する。
【0049】
前記図13の光記録装置において、光記録媒体1は、スピンドルモータ2によって回転駆動される。このスピンドルモータ2は、モータドライバ4とサーボ手段5により、線速度又は角速度が一定になるように制御される。この線速度又は角速度は、階段的に変更することが可能である。
光ピックアップ3は、半導体レーザ(不図示)、光学系、フォーカスアクチュエータ、トラックアクチュエータ、受光素子、及びポジションセンサを内蔵しており、レーザ光LBを光記録媒体1に照射する。この光ピックアップ3は、シークモータ(不図示)によってスレッジ方向への移動が可能である。これらフォーカスアクチュエータ、トラックアクチュエータ、及びシークモータは、受光素子とポジションセンサから得られる信号に基いて、モータドライバ4とサーボ手段5により、レーザ光LBのスポットが光記録媒体1上の目的の場所に位置するように制御される。
【0050】
そして、リード時には、光ピックアップ3によって得られた再生信号が、リードアンプ5で増幅されて2値化される。リードアンプ内では主に最長信号振幅を規格化する過程と最記録マーク信号を増幅する波形等価機能を経て2値化される。入力された2値化データは、このDVDデコーダ7において、8/16復調される。なお、記録データは、8ビットずつ纏められて変調(8/16変調)されており、この変調では、8ビットを16ビットに変換している。この場合に、結合ビットは、それまでの「1」と「0」の数が平均的に等しくなるように付けられる。これを「DC成分の抑制」といい、DCカットされた再生信号のスライスレベル変動が抑圧される。
【0051】
復調されたデータは、デインターリーブとエラー訂正の処理が行われる。その後、このデータは、DVD−ROMデコーダ14へ入力され、データの信頼性を高めるため、更にエラー訂正の処理が行われる。このように2回のエラー訂正の処理が行われたデータは、バッファマネージャ13によって一旦バッファRAM12に蓄えられ、セクタデータとして揃った状態で、ATAPI/SCSIインターフェース15を介して、不図示のホストコンピュータへ一気に転送される。なお、音楽データの場合には、DVDデコーダ7から出力されたデータが、D/Aコンバータ16へ入力され、アナログのオーディオ出力信号「Audio」として取り出される。
【0052】
また、ライト時には、ATAPI/SCSIインターフェース15を通して、ホストコンピュータから送られてきたデータは、バッファマネージャ13によって一旦バッファRAM12に蓄えられる。その後、ライト動作が開始されるが、この場合には、その前にレーザスポットを書き込み開始地点に位置させる必要がある。この地点は、DVD+RW/+Rでは、予め光記録媒体1上に記録用案内溝としてトラックの蛇行により刻まれているウォブル信号によって求められる。
なお、前記地点は、DVD−RW/−Rでは、記録用案内溝上のウォブル信号の代りにランドプリピットによって、DVD−RAM/RAM・WOではプリピットによって求められる。
【0053】
DVD+RW/+R記録媒体におけるウォブル信号には、ADIP(ADress In Pre−groove)と呼ばれるアドレス情報が含まれており、この情報が、ADIPデコーダ8によって取り出される。また、このADIPデコーダ8によって生成される同期信号は、DVDエンコーダ10へ入力され、光記録媒体1上の正確な位置へのデータの書き込みを可能にしている。バッファRAM12のデータは、DVD−ROMエンコーダ11やDVDエンコーダ10において、エラー訂正コードの付加や、インターリーブが行われ、記録用の信号として8/16変調される。記録用に変調された信号はパルスジェネレータ20において光記録媒体に適した記録光波形に変換され、レーザコントローラ9、光ピックアップ3を介して、光記録媒体1に記録される。光ピックアップの効率の補正には、記録光の回折光を直接に受光素子で測定し、そのパワー変動によりレーザコントローラ9の記録パワーを変更することが可能である。光記録媒体に対する記録パワーの補正方法としては、記録後発光時の反射光の変動から、光記録媒体に対する記録パワーの効率を測定し、レーザコントローラ9の記録パワーを補正することが可能である。アドレスの制御方法は、ランドプリピットやプリピットからアドレス情報を得る構成であってもよい。
【0054】
また、図14は、図13の光記録装置を使用した情報処理装置100の概略図であり、この情報処理装置100は、主制御装置101、インターフェース102、光記録装置103、入力装置104、記録装置105、表示装置106などを備えている。
主制御装置101は、マイクロコンピュータ、メインメモリ(何れも不図示)などを含んで構成され、ホストの全体を制御する。
インターフェース102は、光記録装置との双方向の通信用のものであり、ATAPI及びSCSI等の標準インターフェースに準拠している。また、インターフェースは図1の光記録装置のインターフェース15と接続されている。なお、各インターフェース間の接続形態は、通信ケーブル(例えばSCSIケーブル)などの通信線を用いたケーブル接続だけでなく、赤外線などを利用したワイヤレス接続であってもよい。
【0055】
記録装置105(ハード記録媒体HDD等)には、主制御装置のマイクロコンピュータで解読可能なコードで記述されたプログラムが格納されている。なお、情報処理装置の駆動電源がオン状態になると、前記プログラムは、主制御装置のメインメモリにロードされる。
表示装置106は、例えばCRT、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)などの表示部(不図示)を備え、主制御装置からの各種情報を表示する。
入力装置104は、例えばキーボード、マウス、ポインティングデバイスなどのうち少なくとも1つの入力媒体(不図示)を備え、ユーザから入力された各種情報を主制御装置に通知する。なお、入力媒体からの情報はワイヤレス方式で入力されてもよい。また、表示装置と入力装置とが一体化したものとして、例えば、タッチパネル付きCRTなどがある。
情報処理装置100はオペレーティングシステム(OS)を搭載している。そして、情報処理装置を構成する全てのデバイスはOSによって管理されている。
【0056】
本発明によれば、光記録媒体の製造方法などに起因する光記録媒体の構造上の差異がサーボ信号に与える影響を調整することにより、最適な記録を実現することができる光記録装置を提供できる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。
【0058】
<光記録媒体及び性能評価>
光記録媒体としては、図10に示すような逆積層法により作製されたDVD+Rディスク(光記録媒体A)と、図11に示すような2P法により作製されたDVD+Rディスク(光記録媒体B)とを用意した。
光記録媒体Aは記録用案内溝間の振幅が反射率に対して70%、光記録媒体Bは記録用案内溝間の振幅が反射率に対して30%であった。
【0059】
次に、2つの光記録媒体A及びBについて、以下に示す実施例1〜4及び比較例1の光記録装置を用い、2.4倍速記録時及び8倍速記録時の記録再生動作の成否を評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0060】
実施例1〜4として、それぞれ図9〜図12のいずれかに記載された記録条件変更手段を有する光記録装置を用いた。また、比較例1として、図8に記載された手段を有する光記録装置を用いた。
【0061】
(比較例1)
比較例1では、図8に示すように、(1)通常の記録時サーボ調整を行った後、(4)再生光により測定したトラッキングオフセットで記録を行った。
【0062】
(実施例1)
実施例1では、図9に示すように、(1)通常の記録時サーボ調整を行った後、(2)記録済みの記録用案内溝にトラッキングを行い、(3)記録用案内溝間に漏れ込む信号振幅を測定した。得られた測定結果を、予め光記録装置内に記憶されている既定振幅値と比較し、既定振幅値以下である場合(YESの場合)には、(4)再生光により測定したトラッキングオフセットで記録を行った。一方、既定振幅値を超える場合(NOの場合)には、(5)再生光により測定したトラッキングオフセットに更に既定値をオフセットさせて記録を行った。
【0063】
(実施例2)
実施例2では、図10に示すように、(1)〜(4)までは実施例1と同じであるが、既定振幅値を超える場合(NOの場合)には、(5’)記録時の記録パワーを、予め光記装置内に記憶されている既定記録パワー値と比較し、既定記録パワー値以下である場合(YESの場合)には、(6)再生光により測定したトラッキングオフセットに更に既定値をオフセットさせて記録を行った。一方、既定記録パワー値を超える場合(NOの場合)には、(7)再生光により測定したトラッキングオフセットに、更に記録パワーに対応した既定値をオフセットさせて記録を行った。
【0064】
(実施例3)
実施例3では、図11に示すように、(1)〜(6)までは実施例2と同じであるが、既定記録パワー値を超える場合(NOの場合)には、(7’)再生光により測定したトラッキングオフセットに、更に記録用照射領域と走査用照射領域との信号比率を調整したトラッキングサーボにより記録を行った。
【0065】
(実施例4)
実施例4では、図12に示すように、(1)〜(4)までは実施例1と同じであるが、既定振幅値を超える場合(NOの場合)には、(5”)記録用案内溝からの信号の漏れ込みの少ない記録波形に調整して記録を行った。
【0066】
−2.4倍速記録時の記録再生動作の成否−
【表1】

表1の結果から、実施例1〜4は、全て光記録媒体A及びB共に記録再生可能であった。これに対し、比較例1では、光記録媒体Aに対するトラッキングサーボ特性が合わず、記録エラーが発生した。
【0067】
−8倍速記録時の記録再生動作の成否−
【表2】

表2の結果から、光記録媒体Bはすべて記録再生可能であったが、光記録媒体Bは高速記録時に記録速度(記録パワー)が上がった際には補正が入っている。即ち、実施例2は記録時のトラッキングオフセット量を2.4倍速記録時の30%増しに設定した。実施例3は記録用照射領域と走査用照射領域の信号比率を2.4倍速記録時の半分に設定した。これらの結果から、高速記録時には、実施例2及び3のみ記録再生が可能であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の光記録装置は、DVD−RAM・WO、DVD−R、DVD+R等の1回だけ書き込みが可能なDVD;DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW等の複数回の書き込みが可能なDVDの記録に用いられ、特に2つ以上の記録層を有する多層光記録媒体に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、逆積層(IS)法により製造された2層光記録媒体の一例を示す図である。
【図2】図2は、2P法により製造された2層光記録媒体の一例を示す図である。
【図3】図3は、光ピックアップ装置の概略図である。
【図4】図4は、記録面上に集光された主ビーム及び副ビームの配置の一例を示す図である。
【図5】図5は、主ビーム及び副ビームを検出する2分割された3つの受光素子と信号演算器を示す図である。
【図6】図6は、2層光記録媒体の記録面上に集光された主ビーム及び副ビームの配置を示す図である。
【図7】図7は、2層光記録媒体の記録面上に集光された主ビーム及び副ビームの配置を示す図である。
【図8】図8は、比較例1の光記録装置の機能を示す図である。
【図9】図9は、実施例1の光記録装置の機能を示す図である。
【図10】図10は、実施例2の光記録装置の機能を示す図である。
【図11】図11は、実施例3の光記録装置の機能を示す図である。
【図12】図12は、実施例4の光記録装置の機能を示す図である。
【図13】図13は、光記録装置の要部構成の一例を示す機能ブロック図である。
【図14】図14は、図13に示す光ディスク装置を使用した情報処理装置の概略図である。
【符号の説明】
【0070】
1 光ディスク
2 スピンドルモータ
3 光ピックアップ
4 モータドライバ
5 リードアンプ
6 サーボ手段
7 DVDデコーダ
8 ADIPデコーダ
9 レーザコントローラ
10 DVDエンコーダ
11 DVD−ROMエンコーダ
12 バッファRAM
13 バッファマネージャ
14 DVD−ROMデコーダ
15 ATAPI/SCSIインターフェース
16 D/Aコンバータ
17 ROM
18 CPU
19 RAM
20 パルスジェネレータ
100 情報処理装置
101 主制御装置
102 インターフェース
103 光記録装置
104 入力装置
105 記録装置
106 表示装置
201 第1基板
202 第1反射層
203 接着層
204 第2反射層
205 第2基板
L0 第1記録層
L1 第2記録層
LB レーザ光
Audio オーディオ出力信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光記録媒体上に光を走査させながら照射することにより、該光記録媒体の光学的性質を変化させて、該光記録媒体における記録用案内溝上に情報を記録する情報記録手段と、
前記記録用案内溝間の信号振幅を測定し、該測定した振幅値が予め記憶されている既定振幅値以下であるか否かを判定する判定手段と、
前記測定した振幅値が前記既定振幅値を超えた場合には、前記情報記録手段の記録条件を変更する記録条件変更手段とを少なくとも有することを特徴とする光記録装置。
【請求項2】
記録用案内溝を走査する際に光が照射される領域が、記録用案内溝間に及ぶように設定されている請求項1に記載の光記録装置。
【請求項3】
記録条件変更手段が、記録時のサーボ特性を変更する手段である請求項1から2のいずれかに記載の光記録装置。
【請求項4】
記録条件変更手段が、記録時のトラッキングサーボ特性を変更する手段である請求項3に記載の光記録装置。
【請求項5】
記録条件変更手段が、記録時のトラッキングエラー信号に挿入するオフセット量を変更する手段である請求項4に記載の光記録装置。
【請求項6】
情報記録手段が、記録時の記録光の記録パワーを変更して記録を行い、
記録条件変更手段が、前記記録パワーによって、記録時のトラッキングエラー信号に挿入するオフセット量を変更する請求項5に記載の光記録装置。
【請求項7】
記録条件変更手段が、情報を記録するときに光記録媒体の光学的性質を変化させるための記録用照射領域からの反射光による信号と、記録用案内溝に光を走査するための走査用照射領域からの反射光による信号との比率である信号比率を変更する手段である請求項4に記載の光記録装置。
【請求項8】
情報記録手段が、記録時の記録光の記録パワーを変更して記録を行い、
記録条件変更手段が、前記記録パワーによって、信号比率を変更する請求項7に記載の光記録装置。
【請求項9】
記録条件変更手段が、記録光の発光波形を変更する手段である請求項1から2のいずれかに記載の光記録装置。
【請求項10】
光記録媒体が、2つ以上の記録層を有する多層光記録媒体である請求項1から9のいずれかに記載の光記録装置。
【請求項11】
多層光記録媒体が、らせん状の記録用案内溝が形成された第1基板及び該第1基板上に形成された少なくとも第1記録層を有する第1構成体と、前記第1基板に形成された記録用案内溝と逆向きのらせん状の記録用案内溝が形成された第2基板、及び該第2基板上に形成された少なくとも第2記録層を有する第2構成体とを、前記第1基板及び前記第2基板を外側にして貼り合せて形成され、
判定手段によって前記第2構成体の記録用案内溝間の信号振幅を測定した振幅値が既定振幅値を超えたと判定した場合に、記録条件変更手段が、前記第2構成体に記録する際に、記録時のトラッキングエラー信号に挿入するオフセット量を変更すると共に、情報を記録するときに前記光記録媒体の光学的性質を変化させるための記録用照射領域からの反射光による信号と、記録用案内溝に光を走査するための走査用照射領域からの反射光による信号との比率である信号比率を変更する請求項10に記載の光記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【図3】
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【図4】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−280589(P2007−280589A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57837(P2007−57837)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】