説明

光走査装置、及び画像形成装置

【課題】光線を走査する光走査装置において生じた異常内容を、より詳細に判定することができる光走査装置、及びこれを用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】光走査装置42は、レーザーダイオードLDと、レーザー光LBを一定領域内で走査するポリゴンミラー22と、その一定領域内におけるレーザー光LBの光路中に配設され、レーザー光LBの光量を示す第1検出信号SP1を出力するフォトダイオードPD1と、第1検出信号SP1が第1閾値電圧Vth1に満たず、かつ第1閾値電圧Vth1より少ない光量を示す第2閾値電圧Vth2を超える場合、レーザー光LBの光量不足と判定し、第1検出信号SP1が第2閾値電圧Vth2に満たない場合、ポリゴンミラー22による走査動作の異常又はレーザーダイオードLDの異常であると判定する判定部111とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光線を走査する光走査装置、及びこの光走査装置を用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体レーザーから照射されたレーザー光をポリゴンミラーで偏向させて感光ドラムを走査し、感光ドラムの周面に静電潜像を形成することによって、画像を形成する画像形成装置が知られている。そして、このような半導体レーザーから出力されたレーザー光のうち一部をハーフミラーによってフォトダイオードに導き、フォトダイオードによってレーザー光の光量を検出し、その光量が規定値に満たない場合に半導体レーザーが故障したことを知らせるメッセージを表示する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−10267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術では、レーザー光の光量が規定値を超えるか否かで故障の有無を判定しているため、半導体レーザーが全く発光しないのか、劣化により光量が低下しているのかを判別することはできなかった。また、特許文献1に記載の技術では、半導体レーザーとポリゴンミラーの間に設けられたハーフミラーによってレーザー光がフォトダイオードに導かれる。そのため、半導体レーザーの故障は検出できるものの、ポリゴンミラーから反射されたレーザー光の走査位置がずれるなどの走査動作の異常を検出することはできないという、不都合があった。
【0005】
本発明の目的は、光線を走査する光走査装置において生じた異常内容を、より詳細に判定することができる光走査装置、及びこれを用いた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光走査装置は、光線を出力する発光部と、前記発光部から出力された光線を予め定められた一定領域内で走査する走査部と、前記一定領域内における前記光線の光路中に配設され、前記光線の光量を示す第1検出信号を出力する第1検出部と、前記第1検出信号の示す光量が予め設定された第1閾値に満たず、かつ前記第1閾値より少ない光量を示す第2閾値を超える場合、前記光線の光量不足と判定し、前記第1検出信号の示す光量が前記第2閾値に満たない場合、前記走査部による走査動作の異常又は前記発光部の異常であると判定する判定部とを備える。
【0007】
この構成によれば、走査部によって走査される領域内における光線の光路中に配設された第1検出部によって光線の光量が第1検出信号として検出される。そして、判定部によって、第1検出信号の示す光量が第1閾値に満たず、かつ第2閾値を超える場合、光線の光量不足と判定され、第1検出信号の示す光量が第2閾値に満たない場合、前記走査部による走査動作の異常又は前記発光部の異常であると判定されるので、走査動作の異常を含む光走査装置の異常内容を、より詳細に判定することができる。
【0008】
また、前記発光部の近傍に配設され、前記光線の光量を示す第2検出信号を出力する第2検出部をさらに備え、前記判定部は、前記第1検出信号の示す光量が前記第2閾値に満たず、かつ前記第2検出信号の示す光量が予め設定された第3閾値を超える場合、前記走査部による走査動作の異常であると判定することが好ましい。
【0009】
第1検出部によって検出された第1検出信号だけでは、走査部による走査動作の異常と発光部の異常とを判別することが難しい。そこでこの構成によれば、発光部の近傍に配設された第2検出部によって、走査部により走査される前の光線の光量が第2検出信号として検出される。そして、判定部によって、第1検出信号の示す光量が第2閾値に満たず、かつ第2検出信号の示す光量が第3閾値を超える場合、走査部による走査動作の異常であると特定することができる。
【0010】
また、前記判定部は、前記第2検出信号の示す光量が前記第3閾値に満たない場合、前記発光部の異常であると判定することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、判定部によって、第2検出信号の示す光量が予め設定された第3閾値に満たない場合、発光部の異常であると判定されるので、走査部による走査動作の異常と発光部の異常とを判別することができる。
【0012】
また、前記判定部は、前記第1検出信号の示す光量が前記第1閾値を超える場合、正常と判定することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、第1検出信号の示す光量が第1閾値を超える場合、判定部によって正常と判定されるので、光走査装置の状態を、より詳細に判定することができる。
【0014】
また、本発明に係る画像形成装置は、上述の光走査装置と、前記一定領域内に配設され、前記光線によって走査されることによって静電潜像が形成される感光体と、前記感光体に形成された静電潜像に基づき用紙に画像を形成する像形成部と、前記判定部による判定結果を報知する報知部とを備える。
【0015】
この構成によれば、走査動作の異常を含む光走査装置の異常内容を、より詳細に判定することができると共に、その判定結果を報知することができる。
【発明の効果】
【0016】
このような構成の光走査装置、及び画像形成装置は、走査部によって走査される領域内における光線の光路中に配設された第1検出部によって光線の光量が第1検出信号として検出される。そして、判定部によって、第1検出信号の示す光量が第1閾値に満たず、かつ第2閾値を超える場合、光線の光量不足と判定され、第1検出信号の示す光量が第2閾値に満たない場合、前記走査部による走査動作の異常又は前記発光部の異常であると判定されるので、走査動作の異常を含む光走査装置の異常内容を、より詳細に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る光走査装置を備えた画像形成装置の一例である複写機の内部構成を概略的に示す構造図である。
【図2】図1に示す複写機の電気的構成の一例を示すブロック図である。
【図3】露光部によって感光体ドラムを走査した状態を示す説明図である。
【図4】光走査装置の構成の一例を示す回路図である。
【図5】図4に示す光走査装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【図6】フォトダイオードによってレーザー光が検出されたときに得られる第1検出信号の信号波形の一例を示す説明図である。
【図7】判定部による異常判定の条件を表形式にまとめた真理値表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。図1は、本発明の一実施形態に係る光走査装置42を備えた画像形成装置の一例である複写機の内部構成を概略的に示す構造図である。図2は、図1に示す複写機1の電気的構成の一例を示すブロック図である。なお、画像形成装置は、複写機に限られず、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの機能を兼ね備えた複合機等であってもよい。
【0019】
この複写機1は、本体部2と、本体部2の左方に配設されたスタックトレイ3と、本体部2の上部に配設された原稿読取部5と、原稿読取部5の上方に配設された原稿給送部6とを有している。
【0020】
複写機1のフロント部には、略長方形の操作パネル部47が設けられている。操作パネル部47は、表示部473(報知部の一例)と、操作キー部476とを備えている。表示部473は、例えばタッチパネル機能を有する液晶ディスプレイ等によって構成されている。操作キー部476は、例えばユーザが印刷実行指示を入力するためのスタートキーや、印刷部数等を入力するためのテンキー等の各種キースイッチを備えている。
【0021】
原稿読取部5は、CCD(Charge Coupled Device)512及び露光ランプ511等からなるスキャナ部51と、ガラス等の透明部材により構成された原稿台52及び原稿読取スリット53とを備える。スキャナ部51は、図略の駆動部によって移動可能に構成され、原稿台52に載置された原稿を読み取るときは、原稿台52に対向する位置で原稿面に沿って移動され、原稿画像を走査しつつ取得した画像データを制御部100へ出力する。また、原稿給送部6により給送された原稿を読み取るときは、原稿読取スリット53と対向する位置に移動され、原稿読取スリット53を介して原稿給送部6による原稿の搬送動作と同期して原稿の画像を取得し、その画像データを制御部100へ出力する。
【0022】
また、例えば、原稿読取部5の側面には、電源スイッチ54が配設されている。
【0023】
原稿給送部6は、原稿を載置するための原稿載置部61と、画像読み取り済みの原稿を排出するための原稿排出部62と、原稿載置部61に載置された原稿を1枚ずつ繰り出して原稿読取スリット53に対向する位置へ搬送し、原稿排出部62へ排出する原稿搬送機構63とを備える。
【0024】
本体部2は、複数の給紙カセット461と、給紙カセット461から用紙を1枚ずつ繰り出して画像形成部40へ搬送する給紙ローラ462と、給紙カセット461から搬出されてきた用紙に画像を形成する画像形成部40と、装置全体の動作制御を司る制御部100とを備える。
【0025】
画像形成部40は、用紙搬送部411、露光部421、感光体ドラム43、現像部44、転写部41、及び定着部45を備えている。用紙搬送部411は、画像形成部40内の用紙搬送路中に設けられ、給紙ローラ462によって搬送されてきた用紙を感光体ドラム43に供給する搬送ローラ412や、用紙をスタックトレイ3又は排出トレイ48まで搬送する搬送ローラ463,464等を備えている。
【0026】
露光部421は、制御部100から出力された画像データに基づきレーザ光等を出力して感光体ドラム43を露光することで、感光体ドラム43上に静電潜像を形成する。現像部44は、感光体ドラム43上の静電潜像をトナー現像してトナー像を形成する。転写部41は、感光体ドラム43上のトナー像を用紙に転写する。定着部45は、トナー像が転写された用紙を加熱してトナー像を用紙に定着させる。
【0027】
この場合、現像部44、転写部41、及び定着部45が、請求項における像形成部の一例に相当している。
【0028】
制御部100は、例えば所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)と、所定の制御プログラムが記憶されたROM(Read Only Memory)と、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、これらの周辺回路等とを備えて構成されている。制御部100には、原稿読取部5、画像形成部40、操作パネル部47、及びHDD(Hard Disk Drive)150が接続されている。
【0029】
制御部100は、ROMやHDD150等に記憶された制御プログラムを実行することにより、複写制御部101、及び判定部111として機能する。そして、露光部421と判定部111とで、光走査装置42が構成されている。なお、図2では、装置全体を制御する制御部100が、判定部111として機能する例を示しているが、判定部111を制御部100とは別に設けて、光走査装置42を構成してもよい。
【0030】
そして、図1に示す電源スイッチ54がオンされると、図略の電源回路によって生成された電源電圧が複写機1内の各部に供給され、制御部100が動作を開始することによって、複写機1が起動される。
【0031】
複写制御部101は、装置内の各部の動作を制御して、原稿画像の複写を実行する。具体的には、複写制御部101は、原稿読取部5によって原稿から読み取られた画像データを画像形成部40へ送信し、画像形成部40によって、当該画像の画像形成を実行させる。
【0032】
判定部111は、露光部421で生じた異常内容を判定し、その判定結果を表示部473に表示させる。この場合、表示部473は報知部の一例に相当する。なお、判定部111は、判定結果をLAN(Local Area Network)や電話回線等の通信手段を介して外部に送信するようにしてもよい。この場合、これらの通信手段として用いられる通信回路が報知部の一例に相当する。
【0033】
図3は、露光部421によって感光体ドラム43を走査した状態を示す説明図である。図3に示す露光部421は、例えば、レーザーユニット21と、ポリゴンミラー22(走査部の一例)と、ポリゴンモーター23と、光センサ27とを備えている。なお、ポリゴンミラー22と感光体ドラム43との間にFシータレンズなどの光学系部材が配設されていてもよい。また、走査部の一例としてポリゴンミラーを示したが、走査部は例えばMEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラーであってもよい。
【0034】
レーザーユニット21は、レーザー光LBをポリゴンミラー22へ出射する。レーザーユニット21は、例えばレーザー光LBを出射するレーザーダイオード等のレーザー光源と、レーザー光源の光量を検出するフォトダイオード等の光センサとが一つのパッケージ内に配設されて構成されている。
【0035】
ポリゴンミラー22は、例えば正六角形の多面鏡であり、その側面に6つの光偏向面221を有している。ポリゴンミラー22は、ポリゴンモーター23によって、回転軸25を中心に回転方向RAに回転される。これにより、レーザーユニット21から出射されたレーザー光LBは、ポリゴンミラー22の光偏向面221により反射されて、その反射角がポリゴンミラー22の回転に伴い変化する。その結果、レーザー光LBが、感光体ドラム43の周面を含む一定領域内で、主走査方向に走査される。これにより、感光体ドラム135上に走査ラインSLが主走査方向に描画される。
【0036】
一つの光偏向面221により一つの走査ラインSLが描画され、ポリゴンミラー22の回転に伴いレーザー光LBを反射する光偏向面221が切り替わる都度、新たな走査ラインSLが感光体ドラム43に描画される。一方、感光体ドラム135は、回転方向RBに回転することで、副走査方向に複数の走査ラインSLが描画される。
【0037】
光センサ27は、走査ラインSLの開始側の感光体ドラム43の端部付近において、レーザー光LBの光路中に配設されている。光センサ27は、レーザー光LBを受光すると、ビーム検出信号BDがローレベルで複写制御部101及び判定部111へ出力される。
【0038】
複写制御部101は、描画しようとする画像データを表す走査ラインSLを描画させるための制御信号を、ビーム検出信号BDと同期してレーザーユニット21へ出力する。これにより、複写制御部101は、走査ラインSLが正しく描画されるように、描画される画像と走査ラインSLとを同期させる。
【0039】
図4は、光走査装置42の構成の一例を示す回路図である。図4に示す光走査装置42は、レーザーダイオードLD(発光部の一例)、フォトダイオードPD1(第1検出部の一例)、フォトダイオードPD2(第2検出部の一例)、コンパレーターCMP1,CMP2,CMP3、抵抗R1,R2、可変抵抗VR、フェライトビーズF1、ダイオードD1、キャパシタC1、APC(Automatic Power Control)回路422、及び判定部111を備えている。図4においてはポリゴンモーター23の記載を省略している。
【0040】
レーザーダイオードLD及びフォトダイオードPD2は、レーザーユニット21内に近接配置されて封入されている。レーザーダイオードLDは、例えば端面発光型レーザーであり、レーザーダイオードLDの正面からレーザー光LBが射出され、レーザーダイオードLDの反対側から射出されるいわゆるバックビームがフォトダイオードPD2に照射されるようになっている。レーザー光LBの光量とバックビームの光量とは、同一、または相関関係があるので、フォトダイオードPD2は、バックビームの光量を検出することにより間接的にレーザー光LBの光量を検出するようになっている。
【0041】
なお、発光部の一例としてレーザーダイオードLDを示したが、発光部は光線を出力するものであればよく、レーザーダイオードに限らない。また、第2検出部としてフォトダイオードPD2を用いる例を示したが、第2検出部はレーザー光の光量を検出できるものであればよく、フォトダイオードに限らない。また、フォトダイオードPD2が、レーザーダイオードLDのバックビームの光量を検出する例を示したが、フォトダイオードPD2は、直接レーザー光LBの光量を、レーザーダイオードLDとポリゴンミラー22との間で検出する構成であってもよい。フォトダイオードPD2は、例えばレーザーダイオードLDとポリゴンミラー22との間の光路上に設けられたハーフミラーによって反射されたレーザー光の光量を、レーザー光LBの光量を示す情報として検出する構成であってもよい。
【0042】
レーザーダイオードLDのアノードは電源Vccに接続され、レーザーダイオードLDのカソードはフェライトビーズF1を介してAPC回路422に接続されている。フォトダイオードPD2のカソードは電源Vccに接続され、フォトダイオードPD2のアノードは抵抗R2と可変抵抗VRとを介して回路グラウンドに接続されている。
【0043】
ダイオードD1のカソードは電源Vccに接続され、ダイオードD1のアノードはフェライトビーズF1とAPC回路422との接続点に接続されている。ダイオードD1は、レーザーダイオードLDを逆電圧から保護する保護回路である。キャパシタC1は、電源Vccと回路グラウンドとの間に接続されている。キャパシタC1は、いわゆるパスコンであり、レーザーダイオードLD及びフォトダイオードPD2に供給される電源電圧を安定化させる。フェライトビーズF1は、レーザーダイオードLDを静電気から保護する保護回路である。
【0044】
フォトダイオードPD2にレーザー光が照射されると、レーザー光の光量に応じた電流が抵抗R2と可変抵抗VRとの直列回路に流れ、その流れた電流が抵抗R2と可変抵抗VRとの直列抵抗によって電圧に変換される。その結果、フォトダイオードPD2のアノードと抵抗R2との接続点の電圧が、レーザー光LBの光量を示す第2検出信号SP2として得られる。第2検出信号SP2は、APC回路422及びコンパレーターCMP3のプラス端子に入力される。
【0045】
レーザー光LBの光量(バックビームの光量)と第2検出信号SP2の電圧値との関係は、フォトダイオードPD2の特性ばらつきや抵抗R2の抵抗ばらつきによって変化するため、可変抵抗VRを調節することで、これらのばらつきの影響をキャンセルできるようになっている。
【0046】
コンパレーターCMP3のマイナス端子には、第3閾値電圧Vth3(第3閾値の一例)が入力されている。第3閾値電圧Vth3としては、レーザーダイオードLDが発光したか否かを判定するための基準となる電圧が設定されている。
【0047】
コンパレーターCMP3は、第2検出信号SP2と第3閾値電圧Vth3とを比較し、その比較結果を示すモニタ電圧信号MONを判定部111へ出力する。コンパレーターCMP3は、第2検出信号SP2が第3閾値電圧Vth3を超えると、レーザーダイオードLDが発光していることを示すべくモニタ電圧信号MONをハイレベル(H)とし、第1検出信号SP1が第2閾値電圧Vth2を下回ると、レーザーダイオードLDが消灯していることを示すべくモニタ電圧信号MONをローレベル(L)とする。
【0048】
なお、コンパレーターCMP3は、レーザーダイオードLDが発光したか否かを判定できればよく、高精度の電圧判定は必要とされないので、例えばコンパレーターCMP3の代わりにバッファ回路を用いてもよい。この場合、バッファ回路のスレッショルドレベルが第3閾値に相当する。
【0049】
光センサ27は、例えばフォトダイオードPD1とコンパレーターCMP1とが1パッケージに集積されたフォトICである。フォトダイオードPD1としては、例えばピンフォトダイオードが用いられる。
【0050】
フォトダイオードPD1のカソードは電源Vccに接続され、フォトダイオードPD1のアノードは抵抗R1を介して回路グラウンドに接続されている。これにより、フォトダイオードPD1にレーザー光が照射されると、レーザー光の光量に応じた電流が抵抗R1に流れ、その流れた電流が抵抗R1によって電圧に変換される。その結果、フォトダイオードPD1のアノードと抵抗R1との接続点の電圧が、ポリゴンミラー22で反射された後のレーザー光LBの光量を示す第1検出信号SP1として得られる。第1検出信号SP1は、コンパレーターCMP1のマイナス端子、及びコンパレーターCMP2のプラス端子に入力される。
【0051】
コンパレーターCMP1のプラス端子には、第1閾値電圧Vth1(第1閾値の一例)が入力されている。第1閾値電圧Vth1は、レーザー光LBの検出の有無を判定するための基準電圧である。コンパレーターCMP1は、第1検出信号SP1と第1閾値電圧Vth1とを比較し、その比較結果を示すビーム検出信号BDを複写制御部101及び判定部111へ出力する。
【0052】
コンパレーターCMP1は、第1検出信号SP1が第1閾値電圧Vth1を超えると、ビーム検出信号BDをローレベル(L)とし、第1検出信号SP1が第1閾値電圧Vth1を下回ると、ビーム検出信号BDをハイレベル(H)とする。すなわち、ビーム検出信号BDは、ローレベルのとき、光センサ27によってレーザー光LBが検出されたことを示している。
【0053】
コンパレーターCMP2のマイナス端子には、第2閾値電圧Vth2(第2閾値の一例)が入力されている。第2閾値電圧Vth2としては、光センサ27によって受光されたレーザー光LBの光量が僅かであっても、第1検出信号SP1として得られる電圧が設定されている。具体的には、第2閾値電圧Vth2は、第1閾値電圧Vth1より低い電圧(少ない光量を示す信号)に設定されており、例えば、第1閾値電圧Vth1の略1/3の電圧(光量)にされている。
【0054】
コンパレーターCMP2は、第1検出信号SP1と第2閾値電圧Vth2とを比較し、その比較結果を示す光量検知信号SVを判定部111へ出力する。コンパレーターCMP2は、第1検出信号SP1が第2閾値電圧Vth2を超えると、光量検知信号SVをハイレベル(H)とし、第1検出信号SP1が第2閾値電圧Vth2を下回ると、光量検知信号SVをローレベル(L)とする。
【0055】
APC回路422は、複写制御部101からの制御信号に応じてレーザーダイオードLDに流す駆動電流を制御することによって、レーザーダイオードLDを点灯又は消灯させる。また、APC回路422は、レーザーダイオードLDを点灯させた際の光量を、第2検出信号SP2によって監視し、レーザーダイオードLDの光量が予め設定された一定の光量になるように、レーザーダイオードLDの駆動電流を調節する。
【0056】
次に、このように構成された光走査装置42の動作について説明する。図5は、図4に示す光走査装置42の動作の一例を示すフローチャートである。まず、ユーザーが電源スイッチ54をオンすると(ステップS1)、複写機1が起動され、複写制御部101がポリゴンモーター23の回転を開始させる(ステップS2)。
【0057】
次に、複写制御部101は、APC回路422によってレーザーダイオードLDの点灯を開始させる(ステップS3)。そうすると、レーザーダイオードLDが正常に発光していれば、レーザー光LBがポリゴンミラー22によって主走査方向に走査されることになる。
【0058】
次に、判定部111は、モニタ電圧信号MONがハイレベルか否かを確認する(ステップS4)。そして、モニタ電圧信号MONがローレベル、すなわちフォトダイオードPD2で検出されるレーザー光の光量が、第3閾値電圧Vth3に対応する光量に満たず、レーザーダイオードLDが消灯していると考えられるとき(ステップS4でNO)、判定部111は、レーザーダイオードLDが故障するなどして無点灯になる異常状態であると判断し、例えば「レーザー異常」(発光部の異常)という異常内容を示すメッセージと共に、ユーザーに対して複写機1のメーカーが運営しているサービスセンターに修理を依頼するよう促すメッセージを、表示部473によって表示させ(ステップS5)、処理を終了する。
【0059】
これにより、ユーザーは、「レーザー異常」が生じているという、故障内容と共に、修理の依頼を行うことができる。その結果、修理を行う保守作業者は、故障内容に応じた部品、例えば交換用のレーザーダイオードLDやレーザーダイオードLD交換用の工具を準備して、故障の生じた複写機1を修理しに行くことができるので、保守修理作業を円滑に行うことができる。
【0060】
一方、モニタ電圧信号MONがハイレベル、すなわちフォトダイオードPD2で検出されるレーザー光の光量が、第3閾値電圧Vth3に対応する光量を超え、レーザーダイオードLDが点灯していると考えられるとき(ステップS4でYES)、判定部111は、光量検知信号SVがハイレベルか否かを確認する(ステップS6)。
【0061】
そして、光量検知信号SVがローレベル、すなわちフォトダイオードPD1で検出されるレーザー光LBの光量が第2閾値電圧Vth2に対応する光量に満たないとき、判定部111は、レーザー光LBの走査位置がずれるなどの走査動作に異常が生じていると判定する(ステップS6でNO)。以下、このような走査動作の異常を「光軸ずれ」と称する。そして、判定部111は、走査動作に異常が生じていることを示すメッセージとして、例えば「光軸ずれ」という異常内容を示すメッセージと共に、ユーザーに対して複写機1のメーカーが運営しているサービスセンターに修理を依頼するよう促すメッセージを、表示部473によって表示させ(ステップS7)、処理を終了する。
【0062】
これにより、ユーザーは、「光軸ずれ」が生じているという、故障内容と共に、修理の依頼を行うことができる。その結果、修理を行う保守作業者は、故障内容に応じた部品、例えば交換用のポリゴンミラーや光学系部材、あるいはレーザー光LBの光路を調整するための工具を準備して、故障の生じた複写機1を修理しに行くことができるので、保守修理作業を円滑に行うことができる。
【0063】
図6は、フォトダイオードPD1によってレーザー光LBが検出されたときに得られる第1検出信号SP1の信号波形の一例を示す説明図である。第1検出信号SP1は、レーザー光LBによる走査が行われていれば、走査周期毎に、レーザー光LBがフォトダイオードPD1の受光面を通過したタイミングで、図6の信号波形A,B,Cに示すようなパルス状の第1検出信号SP1が得られる。
【0064】
そして、例えばポリゴンミラー22の回転軸が傾いたり、図略のFシータレンズなどの光学系部材の配置位置がずれたりするなどの不具合が生じてレーザー光LBの走査位置がずれた場合、レーザー光LBがフォトダイオードPD1の受光面の中央を走査せず、フォトダイオードPD1の受光面の端部をレーザー光LBがわずかに走査したり、あるいはフォトダイオードPD1の受光面をレーザー光LBが全く走査しない、といった状況になる。このような場合、第1検出信号SP1のピークの電圧レベルが図6の信号波形Aに示すように極めて低くなるか、あるいはレーザー光LBの走査周期を超えて第1検出信号SP1が0Vのままとなる結果、レーザー光LBの走査周期を超える期間継続して、第1検出信号SP1が第2閾値電圧Vth2を下回り光量検知信号SVはローレベルとなる。
【0065】
従って、モニタ電圧信号MONがハイレベル(ステップS4でYES)であって、かつ光量検知信号SVがローレベル(レーザー光LBの走査周期を超える期間継続してローレベル)(ステップS6でNO)の場合、判定部111は、「光軸ずれ」が生じていると判定することができる。
【0066】
一方、光量検知信号SVがハイレベルになった場合(レーザー光LBの走査周期内に、一回でも光量検知信号SVがハイレベルになった場合)(ステップS6でYES)、すなわちフォトダイオードPD1で検出されるレーザー光LBの光量が第2閾値電圧Vth2に対応する光量を超えるとき、判定部111は、ビーム検出信号BDがローレベルか否かを確認する(ステップS8)。
【0067】
そして、ビーム検出信号BDがハイレベルであった場合(レーザー光LBの走査周期を超える期間継続してビーム検出信号BDがハイレベルであった場合)、図6の第1検出信号SP1の信号波形Bで示されるように、レーザー光LBの光量は、第1閾値電圧Vth1に対応する光量に満たず、かつ第2閾値電圧Vth2に対応する光量を超えていることになる。
【0068】
そこで、ビーム検出信号BDがハイレベルであった場合(レーザー光LBの走査周期を超える期間継続してビーム検出信号BDがハイレベルであった場合)、判定部111は、レーザー光LBの光量が不足していると判定する(ステップS8でNO)。
【0069】
そして、判定部111は、レーザー光LBの光量が不足していることを示すメッセージとして、例えば「光量不足」という異常内容を示すメッセージと共に、ユーザーに対して複写機1のメーカーが運営しているサービスセンターに修理を依頼するよう促すメッセージを、表示部473によって表示させ(ステップS9)、処理を終了する。
【0070】
これにより、ユーザーは、「光量不足」が生じているという、故障内容と共に、修理の依頼を行うことができる。レーザー光LBの光量が不足する原因としては、レーザーダイオードLDの特性劣化による発光量の減少の他、例えばレーザー光LBの光路中に配設されたFシータレンズ等の光学系部材が汚れている可能性が考えられる。そこで、修理を行う保守作業者は、故障内容に応じた部品、例えば交換用のレーザーダイオードLDの他、Fシータレンズ等の光学系部材の汚れを清掃する清掃用具などを準備して、故障の生じた複写機1を修理しに行くことができるので、保守修理作業を円滑に行うことができる。
【0071】
一方、ビーム検出信号BDがローレベルであった場合(レーザー光LBの走査周期内に、1回でもビーム検出信号BDがローレベルになった場合)(ステップS8でYES)、判定部111は、レーザー光LBの走査は正常に行われていると判定し、ユーザーによる複写実行指示があった場合に複写を開始できる状態で待機する画像形成待機状態に移行して(ステップS10)、異常判定処理を終了する。
【0072】
図7は、判定部111による異常判定の条件を表形式にまとめた真理値表である。図7において、「L」はローレベル、「H」はハイレベル、「X」は任意の論理であることを示している。図7に示すように、モニタ電圧信号MONがローレベルであれば、ビーム検出信号BD及び光量検知信号SVに関わらず「レーザー異常」と判定され、ビーム検出信号BDがローレベルであれば、光量検知信号SV及びモニタ電圧信号MONに関わらず「正常動作」と判定される。また、ビーム検出信号BD及びモニタ電圧信号MONが共にハイレベルの場合において、光量検知信号SVがハイレベルであれば「光量不足」と判定され、光量検知信号SVがローレベルであれば「光軸すれ」と判定される。
【0073】
以上、ステップS1〜S10の処理により、光走査装置42において生じた異常内容を、より詳細に判定し、その判定結果をユーザーや保守作業者に報知することができる。
【0074】
なお、必ずしもフォトダイオードPD2やコンパレーターCMP3を備えていなくてもよく、ステップS4,S5を実行しなくてもよい。この場合、ステップS7において、「光軸ずれ」又は「レーザー異常」が生じていると判定することになる。
【0075】
また、判定部111は、ステップS8において、ビーム検出信号BDがローレベルであった場合(ステップS8でYES)、必ずしもレーザー光LBの走査は正常に行われていると判定する必要はなく、画像形成待機状態に移行(ステップS10)する必要もない。
【0076】
また、ビーム検出信号BD、光量検知信号SV、及びモニタ電圧信号MONの論理レベルと信号の意味との対応は一例であって、論理レベルとレベルの意味との対応関係は異なっていてもよい。
【0077】
また、第1検出信号SP1及び第2検出信号SP2と、第1閾値電圧Vth1、第2閾値電圧Vth2、及び第3閾値電圧Vth3との比較をコンパレーターCMP1,CMP2,CMP3によって行う例を示したが、コンパレーターCMP1,CMP2,CMP3を用いず、例えば第1検出信号SP1及び第2検出信号SP2をデジタル値に変換し、CPUによって、そのデジタル値と、第1閾値、第2閾値、及び第3閾値とを比較するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 複写機
2 本体部
21 レーザーユニット
22 ポリゴンミラー
23 ポリゴンモーター
25 回転軸
27 光センサ
40 画像形成部
41 転写部
42 光走査装置
43 感光体ドラム
44 現像部
45 定着部
47 操作パネル部
54 電源スイッチ
100 制御部
101 複写制御部
111 判定部
135 感光体ドラム
221 光偏向面
421 露光部
422 APC回路
473 表示部
BD ビーム検出信号
CMP1,CMP2,CMP3 コンパレーター
LB レーザー光
LD レーザーダイオード
MON モニタ電圧信号
PD1,PD2 フォトダイオード
SL 走査ライン
SP1 第1検出信号
SP2 第2検出信号
SV 光量検知信号
Vth1 第1閾値電圧
Vth2 第2閾値電圧
Vth3 第3閾値電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光線を出力する発光部と、
前記発光部から出力された光線を予め定められた一定領域内で走査する走査部と、
前記一定領域内における前記光線の光路中に配設され、前記光線の光量を示す第1検出信号を出力する第1検出部と、
前記第1検出信号の示す光量が予め設定された第1閾値に満たず、かつ前記第1閾値より少ない光量を示す第2閾値を超える場合、前記光線の光量不足と判定し、前記第1検出信号の示す光量が前記第2閾値に満たない場合、前記走査部による走査動作の異常又は前記発光部の異常であると判定する判定部と
を備える光走査装置。
【請求項2】
前記発光部の近傍に配設され、前記光線の光量を示す第2検出信号を出力する第2検出部をさらに備え、
前記判定部は、
前記第1検出信号の示す光量が前記第2閾値に満たず、かつ前記第2検出信号の示す光量が予め設定された第3閾値を超える場合、前記走査部による走査動作の異常であると判定する請求項1記載の光走査装置。
【請求項3】
前記判定部は、
前記第2検出信号の示す光量が前記第3閾値に満たない場合、前記発光部の異常であると判定する請求項2記載の光走査装置。
【請求項4】
前記判定部は、
前記第1検出信号の示す光量が前記第1閾値を超える場合、正常と判定する請求項1〜3のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の光走査装置と、
前記一定領域内に配設され、前記光線によって走査されることによって静電潜像が形成される感光体と、
前記感光体に形成された静電潜像に基づき用紙に画像を形成する像形成部と、
前記判定部による判定結果を報知する報知部とを備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−114031(P2013−114031A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260067(P2011−260067)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】