説明

光走査装置及びこれを備えた画像形成装置

【課題】部品点数の増加やコストアップを招くことなく、MEMSミラー近傍の温度を求めて高い走査性能を得ることができる光走査装置を提供すること。
【解決手段】光ビームを出射するレーザーダイオード(LD)25と、オートバイアスコントロール(ABC)機能を備えるLDドライバと、前記レーザーダイオード25から発せられる光ビームを偏向するMEMSミラー26と、該MEMSミラー26によって偏向された光ビームを走査面上に結像させる走査レンズ29,30を備えた光走査装置13において、LDドライバによって前記レーザーダイオード25に対する閾値電流を求め、求められた閾値電流に基づいて前記MEMSミラー26の駆動制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏向手段としてMEMSミラーを用いた光走査装置とこれを備えた複写機やプリンター等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンター等の画像形成装置においては、帯電器によって表面が一様に帯電された像担持体が光走査装置によって光走査され、その表面に画像情報に応じた静電潜像が形成される。そして、静電潜像は、現像装置によって現像剤であるトナーを用いて現像されてトナー像として顕像化され、このトナー像は、転写装置によって用紙上に転写された後に定着装置によって加熱及び加圧されて用紙上に定着され、トナー像が定着された用紙が装置外へ排出されることによって一連の画像形成動作が終了する。
【0003】
ところで、従来、光走査装置には、光ビームを走査する偏向器としてポリゴンミラーやガルバノミラーが専ら用いられているが、より高解像度の画像や高速プリントを達成するためには、これらのポリゴンミラーやガルバノミラーを更に高速で回転させる必要がある。
【0004】
しかしながら、ポリゴンミラーやガルバノミラーを高速で回転させると軸受の耐久性や風損による発熱や騒音の問題が発生し、高速走査には限界がある。
【0005】
そこで、近年、シリコンマイクロマシニング(MEMS)技術を利用した偏向器の開発が進められており、例えばマイクロミラー(以下、「MEMSミラー」と称する)とこれを軸支する捩り梁をSi基板に一体に形成し、MEMSミラー側の可動電極と固定側の固定電極との間に交流電圧を印加し、両電極間に発生する静電引力によって捩り梁を捩りながらMEMSミラーを共振させ、このMEMSミラーの共振を利用してこれを往復振動させる方式が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
上記方式によれば、共振を利用してMEMSミラーを往復振動(正弦振動)させるために高速動作が可能であり、騒音と消費電力を低く抑えることができるという利点が得られる。
【0007】
ところで、従来のポリゴンミラーは等角速度で回転運動するのに対して、MEMSミラーは共振による正弦揺動運動を行うため、偏向走査を等加速度で行うことができない。即ち、MEMSミラーによって偏向走査される光ビームは、次式で表わされる偏向角特性を有する。
【0008】
θ=Θsin(ωt) …(1)
ここに、θ:偏向角
Θ:最大偏向角
ω:角周波数
t:時間
而して、MEMSミラーの正弦振動においては、温度によって最大偏向角や共振周波数が変化し、これらが変化すると走査性能が低下するため、何らかの補正が必要になる。
【0009】
そこで、特許文献2には、MEMSミラーにサーミスター等の温度検知素子を取り付け、該温度検知素子によって検出される温度に応じてMEMSミラーへの入力を制御する技術が提案されている。
【0010】
又、前記(1)式にて表わされる制限振動を行うMEMSミラーを用いた光走査装置において走査面上で光ビームを等速走査させるためには、MEMSミラーで偏向走査された光ビームを次式で表わされるアークサイン特性を有する走査レンズによって集光させる必要がある。
【0011】
y=fΘArcsin(θ/Θ) …(2)
ここに、y:走査面上のレンズ光軸からの像高
f:走査レンズの焦点距離
走査レンズは(2)式にて示される特性を有しているため、MEMSミラーの振動中心と走査レンズの光軸とを合わせなければ等速走査を行うことができない。
【0012】
そこで、特許文献3には、走査レンズ又はMEMSミラーの何れか一方を調整することによってMEMSミラーの振動中心と走査レンズの光軸とを合わせる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平4−211218号公報
【特許文献2】特開平3−134613号公報
【特許文献3】特開平9−080348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献2において提案された技術においては、サーミスターやそのアンプ、信号の平滑回路等が必要となるため、コストアップや基板の大型化を招くという問題がある。
【0015】
従って、本発明の第1の目的とする処は、部品点数の増加やコストアップを招くことなく、MEMSミラー近傍の温度を求めて高い走査性能を得ることができる光走査装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することにある。
【0016】
又、特許文献3において提案されているように、等速走査を実現するために走査レンズ又はMEMSミラーの何れか一方を調整してMEMSミラーの振動中心と走査レンズの光軸とを合わせる技術においては、MEMSミラーを回転させる調整機構が用いられているために装置が大型化するという問題がある。更に、MEMSミラーが回転台に取り付けられているため、該MEMSミラーを上下左右に移動させることができない。このため、光源側で調整する必要があり、ユニット全体を用いた調整となり、調整装置が大型化して生産性が低下するという問題もある。
【0017】
従って、本発明の第2の目的とする処は、小型で安価な調整機構を用いてMEMSミラーを高精度に位置決めして等速走査を実現することができる光走査装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、光ビームを出射するレーザーダイオード(LD)と、オートバイアスコントロール(ABC)機能を備えるLDドライバと、前記レーザーダイオードから発せられる光ビームを偏向するMEMSミラーと、該MEMSミラーによって偏向された光ビームを走査面上に結像させる走査レンズを備えた光走査装置において、LDドライバによって前記レーザーダイオードに対する閾値電流を求め、求められた閾値電流に基づいて前記MEMSミラーの駆動制御を行うことを特徴とする。
【0019】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記MEMSミラーが一体に形成された基板上に前記レーザーダイオードを組み込んだことを特徴とする。
【0020】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記レーザーダイオードを固定するLDブラケットを設け、該LDブラケットに前記レーザーダイオードを固定するとともに、前記MEMSミラーを前記LDブラケットに対してそのトーションバーに平行な方向にのみ位置調整可能に取り付けたことを特徴とする。
【0021】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記レーザーダイオードと前記MEMSミラーの光路中に、位置調整機構を備えた自由曲面ミラーを配置したことを特徴とする。
【0022】
請求項5記載の画像形成装置は、請求項1〜4の何れかに記載の光走査装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
請求項1記載の発明によれば、温度上昇と共に閾値電流が上昇し、スロープ効率は低下するというレーザーダイオードの出力特性を利用し、オートバイアスコントロール(ABC)機能を備えたLDドライバによってスロープ効率からレーザーダイオードに対する閾値電流を求めることによってMEMSミラー近傍の温度を求め、この温度に基づいてMEMSミラーを駆動制御するようにしたため、部品点数の増加やコストアップを招くことなくMEMSミラーの温度補償を行って高い走査性能を得ることができる。
【0024】
請求項2記載の発明によれば、MEMSミラーが一体に形成された基板上にレーザーダイオードを組み込んだため、レーザーダイオードに対する閾値電流から求められる温度と実際のMEMSミラー近傍の温度が近似し、MEMSミラー近傍の温度をより高精度に求めることができる。又、基板が1枚で済むとともに、MEMSミラーやレーザーダイオードに接続される電気配線が短縮及び簡略化される。
【0025】
請求項3記載の発明によれば、LDブラケットにレーザーダイオードを固定するとともに、MEMSミラーをLDブラケットに対してそのトーションバーに平行な方向にのみ位置調整可能に取り付けたため、LDブラケットとこれに固定されたレーザーダイオードに対してMEMSミラーを高精度に位置決めすることができ、LDブラケットと走査レンズの位置調整をすることによってMEMSミラーの振動中心と走査レンズの光軸とを合わせて等速走査を小型で安価な調整機構によって実現することができる。
【0026】
請求項4記載の発明によれば、レーザーダイオードから出射する光ビームを自由曲面ミラーによって反射させてMEMSミラー上に結像させることができるため、収束光学系(1次光学系)に従来必要であったコリメータレンズやシリンドリカルレンズ等の複数のレンズが不要となり、部品点数を削減して光走査装置の小型化とコストダウンを図ることができる。又、自由曲面ミラーに設けられた位置調整機構によって該自由曲面ミラーのMEMSミラーに対する位置を調整することができる。
【0027】
請求項5記載の発明によれば、光走査装置の走査性能が高められる結果、高質画像が安定的に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る画像形成装置(カラーレーザープリンター)の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る光走査装置要部の構成を示す主走査方向平面図である。
【図3】図2のA部拡大詳細図である。
【図4】レーザーダイオードの供給電流と出力との関係を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る光走査装置要部の構成を示す主走査方向平面図である。
【図6】図5のB部拡大詳細図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る光走査装置のMEMSモジュールの正面図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る光走査装置のMEMSモジュールの上面図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る光走査装置のMEMSモジュールの背面図である。
【図10】本発明に係る光走査装置の基板の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0030】
[画像形成装置]
図1は本発明に係る画像形成装置の一形態としてのカラーレーザープリンターの断面図であり、図示のカラーレーザープリンターはタンデム型であって、その本体100内の中央部には、マゼンタ画像形成ユニット1M、シアン画像形成ユニット1C、イエロー画像形成ユニット1Y及びブラック画像形成ユニット1Kが一定の間隔でタンデムに配置されている。
【0031】
上記各画像形成ユニット1M,1C,1Y,1Kには、像担持体である感光ドラム2a,2b,2c,2dがそれぞれ配置されており、各感光ドラム2a〜2dの周囲には、帯電器3a,3b,3c,3d、現像装置4a,4b,4c,4d、転写ローラ5a,5b,5c,5d及びドラムクリーニング装置6a,6b,6c,6dがそれぞれ配置されている。
【0032】
ここで、前記感光ドラム2a〜2dは、ドラム状の感光体であって、不図示の駆動モーターによって図示矢印方向(時計方向)に所定のプロセススピードで回転駆動される。又、前記帯電器3a〜3dは、不図示の帯電バイアス電源から印加される帯電バイアスによって感光ドラム2a〜2dの表面を所定の電位に均一に帯電させるものである。
【0033】
更に、前記現像装置4a〜4dは、マゼンタ(M)トナー、シアン(C)トナー、イエロー(Y)トナー、ブラック(K)トナーをそれぞれ収容しており、各感光ドラム2a〜2d上に形成された各静電潜像に各色のトナーを付着させて各静電潜像を各色のトナー像として可視像化するものである。
【0034】
又、前記転写ローラー5a〜5dは、各一次転写部にて中間転写ベルト7を介して各感光ドラム2a〜2dに当接可能に配置されている。ここで、中間転写ベルト7は、駆動ローラー8とテンションローラー9との間に張設されて各感光ドラム2a〜2dの上面側に走行可能に配置されており、前記駆動ローラー8は、二次転写部において中間転写ベルト7を介して二次転写ローラー10に当接可能に配置されている。又、テンションローラー9の近傍にはベルトクリーニング装置11が設けられている。
【0035】
ところで、プリンター本体100内の各画像形成ユニット1M,1C,1Y,1Kの上方には、前記各現像装置4a〜4dにトナーを補給するためのトナーコンテナー12a,12b,12c,12dが一列に並設されている。
【0036】
又、プリンター本体100内の各画像形成ユニット1M,1C,1Y,1Kの下方には、各画像形成ユニット1M,1C,1Y,1Kに対応して本発明に係る計4つの光走査装置(レーザースキャナーユニット(LSU))13がそれぞれ配置され、これらの下方のプリンター本体100の底部には給紙カセット14が着脱可能に設置されている。そして、給紙カセット14には複数枚の不図示の用紙が積層収容されており、この給紙カセット14の近傍には、該給紙カセット14から用紙を取り出すピックアップローラー15と、取り出された用紙を分離して搬送パスSへと1枚ずつ送り出すフィードローラー16とリタードローラー17が設けられている。
【0037】
又、プリンター本体100の側部を上下方向に延びる前記搬送パスSには、用紙を搬送する搬送ローラー対18と、用紙を一時待機させた後に所定のタイミングで前記二次転写対向ローラー8と二次転写ローラー10との当接部である二次転写部へと供給するレジストローラー対19が設けられている。尚、搬送パスSの横には、用紙の両面に画像を形成する場合に使用される別の搬送パスS’が形成されており、この搬送パスS’には複数の反転ローラー対20が適当な間隔で設けられている。
【0038】
ところで、プリンター本体100内の一側部に縦方向に配置された前記搬送パスSは、プリンター本体100の上面に設けられた排紙トレイ21まで延びており、その途中には定着装置22と排紙ローラー対23,24が設けられている。
【0039】
次に、以上の構成を有するカラーレーザープリンターによる画像形成動作について説明する。
【0040】
画像形成開始信号が発せられると、各画像形成ユニット1M,1C,1Y,1Kにおいて各感光ドラム2a〜2dが図示矢印方向(時計方向)に所定のプロセススピードで回転駆動され、これらの感光ドラム2a〜2dは、帯電器3a〜3dによって一様に帯電される。又、各光走査装置13は、各色毎のカラー画像信号によって変調されたレーザービームを出射し、そのレーザービームを各感光ドラム2a〜2dの表面に照射し、各感光ドラム2a〜2d上に各色のカラー画像信号に対応した静電潜像をそれぞれ形成する。
【0041】
そして、先ず、マゼンタ画像形成ユニット1Mの感光ドラム2a上に形成された静電潜像に、該感光ドラム2aの帯電極性と同極性の現像バイアスが印加された現像装置4aによってマゼンタトナーを付着させ、該静電潜像をマゼンタトナー像として可視像化する。このマゼンタトナー像は、感光ドラム2aと転写ローラー5aとの間の一次転写部(転写ニップ部)において、トナーと逆極性の一次転写バイアスが印加された転写ローラー5aの作用によって、図示矢印方向に回転駆動されている中間転写ベルト7上に一次転写される。
【0042】
上述のようにしてマゼンタトナー像が一次転写された中間転写ベルト7は、次のシアン画像形成ユニット1Cへと移動する。そして、シアン画像形成ユニット1Cにおいても、前記と同様にして、感光ドラム2b上に形成されたシアントナー像が一次転写部において中間転写ベルト7上のマゼンタトナー像に重ねて転写される。
【0043】
以下同様にして、中間転写ベルト7上に重畳転写されたマゼンタ及びシアントナー像の上に、イエロー及びブラック画像形成ユニット1Y,1Kの各感光ドラム2c,2d上にそれぞれ形成されたイエロー及びブラックトナー像が各一次転写部において順次重ね合わせられ、中間転写ベルト7上にはフルカラーのトナー像が形成される。尚、中間転写ベルト7上に転写されないで各感光ドラム2a〜2d上に残留する転写残トナーは、各ドラムクリーニング装置6a〜6dによって除去され、各感光ドラム2a〜2dは次の画像形成に備えられる。
【0044】
そして、中間転写ベルト7上のフルカラートナー像の先端が駆動ローラー8と二次転写ローラー10間の二次転写部(転写ニップ部)に達するタイミングに合わせて、給紙カセット14からピックアップローラー15とフィードローラー16及びリタードローラー17によって搬送パスSへと送り出された用紙がレジストローラー対19によって二次転写部へと搬送される。そして、二次転写部に搬送された用紙に、トナーと逆極性の二次転写バイアスが印加された二次転写ローラー10によってフルカラーのトナー像が中間転写ベルト7から一括して二次転写される。
【0045】
而して、フルカラーのトナー像が転写された用紙は、定着装置22へと搬送され、フルカラーのトナー像が加熱及び加圧されて用紙の表面に熱定着され、トナー像が定着された用紙は、排紙ローラー対23,24によって排紙トレイ21上に排出されて一連の画像形成動作が完了する。尚、用紙上に転写されないで中間転写ベルト7上に残留する転写残トナーは、前記ベルトクリーニング装置11によって除去され、中間転写ベルト7は次の画像形成に備えられる。
【0046】
[光走査装置]
次に、本発明に係る前記光走査装置13の実施の形態について説明する。尚、4つの光走査装置13の構成は全て同じであるため、以下、1つの光走査装置13についてのみ説明する。
【0047】
<実施の形態1>
図2は本発明の実施の形態1に係る光走査装置要部の構成を示す主走査方向平面図、図3は図2のA部拡大詳細である。
【0048】
本実施の形態に係る光走査装置13は、光源であるレーザーダイオード(LD)25と偏向手段であるMEMSミラー26を備えているが、図3に詳細に示すように、これらのレーザーダイオード25とこれを駆動するLDドライバは、MEMSミラー26が一体に形成された基板27上に組み込まれている。
【0049】
そして、本実施の形態に係る光走査装置13においては、図3に詳細に示すように、レーザーダイオード25とMEMSミラー26の光路中に、不図示の位置調整機構を備えた自由曲面ミラー28が配置されている。尚、この自由曲面ミラー28は、レーザーダイオード25から出射する光ビームを反射させてMEMSミラー26上に線状に結像させる機能を果たすものである。
【0050】
又、図2に示すように、MEMSミラー26によって偏向される光ビームの進行方向に沿って円弧状の2つの走査レンズ29,30が配設されている。尚、走査レンズ29,30は、MEMSミラー26によって偏向された光ビームを走査面である感光ドラム2a(2b,2c,2d)上に等速度で集光させるためのfθ特性を有している。
【0051】
ここで、前記MEMSミラー26は、基板27にエッチングや成膜等のマイクロマシニング技術(MEMS技術)を利用して一体に形成されており、これを支持する不図示のトーションバーを中心として往復振動(正弦振動)する。尚、MEMSミラー26の表面(反射面)にはアルミニウム膜等が成膜されてその反射率が高められている。
【0052】
而して、図2に示す光走査装置13において、レーザーダイオード25が画像データに応じてON/OFF制御されると、該レーザーダイオード25から画像データに対応して変調された光ビームが出射され、このレーザービームは、自由曲面ミラー28によって反射してMEMSミラー26上に線状に結像する。
【0053】
上述のようにMEMSミラー26上に線状に結像した光ビームは、MEMSミラー26が往復振動することによって主走査方向に偏向され、この偏向された光ビームは、走査レンズ29,30を通過することによって図1に示す各画像形成ユニット1M(1C,1Y,1K)の感光ドラム2a(2b,2c,2d)上に結像され、図2に示す有効走査範囲Rの一端を書出点P1、他端を書終点P2として感光ドラム2a(2b,2c,2d)上を主走査方向に往復走査する。すると、前述のように各感光ドラム2a(2b,2c,2d)上には各色のカラー画像信号に対応した静電潜像がそれぞれ形成される。
【0054】
ところで、MEMSミラー26の正弦振動においては、温度によって最大偏向角や共振周波数が変化し、これらが変化すると走査性能が低下するため、何らかの温度補償が必要となり、そのためにはMEMSミラー26の近傍の温度を求める必要がある。本実施の形態では、レーザーダイオード25の出力特性と温度との関係に着目し、レーザーダイオード25の出力特性からMEMSミラー26の近傍の温度を求めるようにした。
【0055】
図4にレーザーダイオードの供給電流と出力との関係を示すが、同図に示すように、レーザーダイオードの出力は供給電流が閾値を超えるまでは殆ど0であるが、供給電流が閾値を超えると供給電流に比例して出力が上昇する。この比例関係の傾きはスロープ効率と称され、通常のレーザーダイオードでは温度上昇と共に閾値電流が増加し、スロープ効率が低下する傾向を示す。レーザーダイオードのこのような特性を利用し、高速点灯させるレーザープリンター等に用いられる光走査装置には、LDドライバが自動的に電流を変化させ、そのときのスロープ効率から閾値電流を把握し、その閾値電流から非点灯の待機時に流す電流値を決定するオートバイアスコントロール(ABC)機能を備えたものがある。
【0056】
而して、LDドライバのオートバイアスコントロール(ABC)機能によって閾値電流を求めることは、レーザーダイオードの温度を求めることに等しい。従って、本実施の形態のように、レーザーダイオード25とMEMSミラー26の温度が等しくなる程度に両者を近接させれば、レーザーダイオード25の温度に基づいてMEMSミラー26を駆動制御することによって、部品点数の増加やコストアップを招くことなくMEMSミラー26の温度補償を行って高い走査性能を得ることができる。
【0057】
又、本実施の形態では、MEMSミラー26が一体に形成された基板27上にレーザーダイオード25を組み込んだため、レーザーダイオード25に対する閾値電流から求められる温度と実際のMEMSミラー26近傍の温度が近似し、MEMSミラー26近傍の温度をより高精度に求めることができる。更に、基板27が1枚で済むとともに、MEMSミラー26やレーザーダイオード25に接続される電気配線が短縮及び簡略化されるという効果も得られる。
【0058】
更に、本実施の形態では、レーザーダイオード25から出射する光ビームを自由曲面ミラー28によって反射させてMEMSミラー26上に結像させるようにしたため、収束光学系(1次光学系)に従来必要であったコリメータレンズやシリンドリカルレンズ等の複数のレンズが不要となり、部品点数を削減して光走査装置13の小型化とコストダウンを図ることができる。
【0059】
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
【0060】
<実施の形態2>
図5は本実施の形態に係る光走査装置要部の構成を示す主走査方向平面図、図6は図5のB部拡大詳細図であり、これらの図においては図2及び図3において示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての再度の説明は省略する。
【0061】
本実施の形態に係る光走査装置13は、前記実施の形態1と同様に光源であるレーザーダイオード(LD)25と偏向手段であるMEMSミラー26を備えているが、図6に詳細に示すように、これらのレーザーダイオード25とMEMSミラー26及び後述のLDブラケット31はMEMSモジュール32として一体的に構成されている。
【0062】
ここで、上記MEMSモジュール32の構成を図7〜図10に基づいて以下に説明する。
【0063】
図7はMEMSモジュールの正面図、図8は同MEMSモジュールの上面図、図9は同MEMSモジュールの背面図、図10は基板の正面図である。
【0064】
ここで、前記MEMSミラー26は、図10に示すように、基板27の長手方向一端部にエッチングや成膜等のマイクロマシニング技術(MEMS技術)を利用して一体に形成されており、これを支持するトーションバー33を中心として往復振動(正弦振動)する。尚、MEMSミラー26のフレーム34の2箇所(トーションバー33の軸方向両端近傍)には円柱状のガイド35が一体に形成されている。
【0065】
又、図10に示すように、基板27のMEMSミラー26の周囲の対角線上には矩形長孔状のビス挿通孔27aが形成されており、MEMSミラー26の横には3つの貫通孔27bが形成され、基板27の長手方向他端部にはカプラーが取り付けられている。尚、図示しないが、基板27にはレーザーダイオード25を駆動するLDドライバが組み込まれており、このLDドライバにはオートバイアスコントロール(ABC)機能が備えられている。
【0066】
そして、MEMSモジュール32には前記LDブラケット31が設けられており、このLDブラケット31には、レーザーダイオード25が圧入によって固定されており、このレーザーダイオード25から延びる3本にピン37は、図8及び図9に示すように、基板27に形成された3つの各貫通孔27bをそれぞれ貫通している。
【0067】
又、図7に示すように、LDブラケット31には矩形の開口部31aが形成されており、MEMSミラー26がLDブラケット31に取り付けられた状態では、MEMSミラー26はLDブラケット31の開口部31aに臨んでいる。更に、図8に示すように、LDブラケット31の開口部31aを挟む2箇所(図8の紙面垂直方向2箇所)には断面半円状の嵌合溝31bが形成されている。
【0068】
而して、基板27は、これに一体に形成されたMEMSミラー26のフレーム34の2箇所(図10の上下方向2箇所)に設けられたガイド35をLDブラケット31に形成された嵌合溝31bに嵌め込むことによって、MEMSミラー26と共に図7の左右方向の位置がLDブラケット31とレーザーダイオード25に対して決められる。又、基板27とMEMSミラー26は、ガイド35がLDブラケット31の嵌合溝31bを摺動することによってLDブラケット31とレーザーダイオード25に対する位置を図7の上下方向(トーションバー33と平行な方向)に調整することができる。そして、基板27とMEMSミラー26の図7の上下方向の位置が調整されると、基板27に形成されたビス挿通孔27aに挿通するビス38をLDブラケット31にねじ込むことによって、基板27とこれに一体に形成されたMEMSミラー26がLDブラケット31に固定される。
【0069】
以上のように、本実施の形態では、LDブラケット31にレーザーダイオード25を固定するとともに、MEMSミラー26をLDブラケッ31トに対してそのトーションバー33に平行な方向にのみ位置調整可能に取り付けたため、LDブラケット31とこれに固定されたレーザーダイオード25に対してMEMSミラー26を高精度に位置決めすることができ、LDブラケット31と走査レンズ29,30の位置調整をすることによってMEMSミラー26の振動中心と走査レンズ29,30の光軸とを合わせて等速走査を小型で安価な調整機構によって実現することができる。
【0070】
又、本実施の形態では、自由曲面ミラー28に設けられた位置調整機構によって該自由曲面ミラー28のMEMSミラー26に対する位置を調整することができる。
【0071】
ところで、本実施の形態においても、前記実施の形態1と同様にオートバイアスコントロール(ABC)機能を備えたLDドライバによってレーザーダイオード25の温度を求め、その結果に基づいてMEMSミラー26を駆動制御するようにしているため、部品点数の増加やコストアップを招くことなくMEMSミラー26の温度補償を行って高い走査性能を得ることができるという効果が得られる。
【0072】
尚、本発明は、偏向手段として正弦振動するMEMSミラーに限らず、偏向角θがθ=θsin(ωt)+θsin(nωt)(θ,θは振幅、ωは角周波数、nは自然数、tは時間)で表されるような振動を行うMEMSミラーを備えた光走査装置に対しても同様に適用可能である。又、以上は本発明をカラーレーザープリンターとこれに備えられた光走査装置に対して適用した形態について説明したが、本発明は、モノクロプリンターや複写機等を含む他の任意の画像形成装置及びこれに備えられた光走査装置に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0073】
1M マゼンタ画像形成ユニット
1C シアン画像形成ユニット
1Y イエロー画像形成ユニット
1K ブラック画像形成ユニット
2a〜2d 感光ドラム
3a〜3d 帯電器
4a〜4d 現像装置
5a〜5d 転写ローラー
6a〜6d ドラムクリーニング装置
7 中間転写ベルト
8 駆動ローラー
9 テンションローラー
10 二次転写ローラー
11 ベルトクリーニング装置
12a〜12d トナーコンテナー
13 光走査装置
14 給紙カセット
15 ピックアップローラー
16 フィードローラー
17 リタードローラー
18 搬送ローラー対
19 レジストローラー対
20 搬送ローラー対
21 排紙トレイ
22 定着装置
23,24 排紙ローラー対
25 レーザーダイオード
26 MEMSミラー
27 基板
27a 基板のビス挿通孔
27b 基板の貫通孔
28 自由曲面ミラー
29,30 走査レンズ
31 LDブラケット
31a LDブラケットの開口部
31b LDブラケットの嵌合溝
32 MEMSモジュール
33 トーションバー
34 MEMSミラーのフレーム
35 ガイド
36 カプラー
37 ピン
38 ビス
P1 書出点
P2 書終点
R 有効走査範囲
S,S’ 搬送パス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを出射するレーザーダイオード(LD)と、オートバイアスコントロール(ABC)機能を備えるLDドライバと、前記レーザーダイオードから発せられる光ビームを偏向するMEMSミラーと、該MEMSミラーによって偏向された光ビームを走査面上に結像させる走査レンズを備えた光走査装置において、
LDドライバによって前記レーザーダイオードに対する閾値電流を求め、求められた閾値電流に基づいて前記MEMSミラーの駆動制御を行うことを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記MEMSミラーが一体に形成された基板上に前記レーザーダイオードを組み込んだことを特徴とする請求項1記載の光走査装置。
【請求項3】
前記レーザーダイオードを固定するLDブラケットを設け、該LDブラケットに前記レーザーダイオードを固定するとともに、前記MEMSミラーを前記LDブラケットに対してそのトーションバーに平行な方向にのみ位置調整可能に取り付けたことを特徴とする請求項1記載の光走査装置。
【請求項4】
前記レーザーダイオードと前記MEMSミラーの光路中に、位置調整機構を備えた自由曲面ミラーを配置したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の光走査装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の光走査装置を備えることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−208157(P2012−208157A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71551(P2011−71551)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】