光送信器および光送信装置
【課題】光信号の搬送波周波数を高精度かつ高速に制御可能にして、送信光源の発振周波数の安定性を確保し、伝送性能の向上をはかるほか、波長多重間隔の高密度化により伝送路の帯域利用率の向上をはかって大容量の伝送を実現する。
【解決手段】信号処理回路12が、送信信号を変調方式に応じて電界情報にマッピングするマッピング回路121と、送信信号をマッピングされた電界情報の電界位相に対し一定周期の位相回転を付与する位相回転回路122とを有する。そして、搬送波周波数制御部16が、位相回転回路122で付与される位相回転の周期を制御することにより、光変調部15から出力される光信号の搬送波周波数を制御する。
【解決手段】信号処理回路12が、送信信号を変調方式に応じて電界情報にマッピングするマッピング回路121と、送信信号をマッピングされた電界情報の電界位相に対し一定周期の位相回転を付与する位相回転回路122とを有する。そして、搬送波周波数制御部16が、位相回転回路122で付与される位相回転の周期を制御することにより、光変調部15から出力される光信号の搬送波周波数を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、光送信器に関するとともに、複数の光送信器を有し波長多重を行なう光送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
データトラフィックの増大に伴い、基幹系光通信ネットワークの大容量化が必要不可欠であり、一波長あたり40Gbps(ギガビット毎秒),100Gbpsなどの高速通信が実用化されつつある。光通信ネットワークにおいて高速通信を実現するための技術として、近年、デジタル信号処理技術を用いて光送信あるいは光受信を行なうことが注目されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】D.-S. Ly-Gagnon, et al. “Coherent Detection of Optical Quadrature Phase-Shift Keying Signals With Carrier Phase Estimation”, IEEE JLT, vol.24, no.1, pp.12-21, January 2006
【非特許文献2】D. McGhan, “Electronic Dispersion Compensation”, OFC2006, OWK1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、波長多重の光伝送システムに用いられる送信光源から、一定の発振周波数(波長)の光を安定的に出力させるためには、エタロンフィルタ等を有する波長ロッカが用いられているが、その制御精度は、経年劣化を考慮すると数GHz程度である。この数GHz程度の周波数変動は、光伝送システムにおける伝送性能の低下を招くほか、一本の光ファイバにおいて多重化される波長の間隔の高密度化を阻害することになる。つまり、送信光源の周波数安定度が、光伝送システムの伝送距離や、一本の光ファイバの伝送容量の、制限要因となっている。
【0005】
また、送信光源の発振周波数(波長)の制御は、一般に温度制御であり、その制御に時間がかかるため、特に光伝送システム運用中の柔軟な波長配置の変更が困難である。つまり、その制御には、場合によって数分程度の時間がかかるとともに、制御される発振周波数の安定度も低く、運用中に、複雑な制御を高精度に行なうことは困難である。
【0006】
一つの側面で、本件は、光信号の搬送波周波数を高精度かつ高速に制御可能にして、送信光源の発振周波数の安定性を確保し、伝送性能の向上をはかるほか、波長多重間隔の高密度化により伝送路の帯域利用率の向上をはかって大容量の伝送を実現することを目的とする。
なお、前記目的に限らず、後述する発明を実施するための最良の形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的の一つとして位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本件の光送信器は、光源と、送信信号に対しデジタル信号処理を施す信号処理部と、前記信号処理部でデジタル処理を施された送信信号に従って、前記光源からの出力光を変調し光信号として伝送路へ出力する光変調部と、前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御する搬送波周波数制御部と、を有している。そして、前記信号処理部は、前記送信信号を変調方式に応じて電界情報にマッピングするマッピング回路と、前記マッピング回路により前記送信信号をマッピングされた電界情報の電界位相に対し一定周期の位相回転を付与する位相回転回路と、を有している。また、前記搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御することにより、前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御する。
【0008】
また、本件の光送信装置は、上述した光送信器を複数有するとともに、前記複数の光送信器からの光信号を合波することにより波長多重を行なって伝送路へ出力する光合波器と、を有している。そして、前記複数の光送信器における各光源は、同一の周波数の出力光を発振する。また、前記複数の光送信器における各搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御して前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御する微調整を行なう。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術では、光変調部から出力される光信号の搬送波周波数が、高精度かつ高速に制御される。これにより、送信光源の発振周波数の安定性が確保され、伝送性能が向上するほか、波長多重間隔の高密度化により伝送路の帯域利用率の向上をはかって大容量の伝送が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】光送信器の基本構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態の光送信器の構成を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態の光送信器の送信スペクトルを示す図である。
【図4】位相回転回路の構成を示すブロック図である。
【図5】IQ変調器の構成を示すブロック図である。
【図6】第2実施形態の光送信器の構成を示すブロック図である。
【図7】第3実施形態の光送信器の構成を示すブロック図である。
【図8】偏波多重IQ変調器の構成を示すブロック図である。
【図9】光通信システムの構成を示すブロック図である。
【図10】光受信器の一例の構成を示すブロック図である。
【図11】光受信器の他例の構成を示すブロック図である。
【図12】光送信装置の第1例の構成を示すブロック図である。
【図13】図12に示す光送信装置の送信スペクトルを示す図である。
【図14】光送信装置の第2例の構成を示すブロック図である。
【図15】図14に示す光送信装置の送信スペクトルを示す図である。
【図16】(A)および(B)は図14に示す光送信装置による波長配置変更(デフラグ)を説明するための図である。
【図17】光送信装置の第3例の構成を示すブロック図である。
【図18】図17に示す光送信装置の送信スペクトルを示す図である。
【図19】光送信装置の第4例の構成を示すブロック図である。
【図20】図19に示す光送信装置の送信スペクトルを示す図である。
【図21】光送信装置の第5例の構成および光受信装置の構成を示すブロック図である。
【図22】図21に示す光送信装置の送信スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施の形態を説明する。
〔1〕光送信器の基本構成
図1は本件の光送信器の基本構成を示すブロック図であり、この図1に示す基本構成を有する光送信器1は、レーザ光源11,信号処理回路12,DAC13,ドライバ14,光変調器15および搬送波周波数制御回路16を有している。
【0012】
レーザ光源(光源)11は、所定の周波数fCの出力光を発振する。
信号処理回路(信号処理部)12は、外部から入力されるバイナリデータである送信信号に対し、デジタル信号処理を施すもので、例えばDSP(Digital Signal Processor)である。信号処理回路12は、変調方式マッピング回路121および位相回転回路122としての機能を有している。
【0013】
変調方式マッピング回路121は、外部から入力されるバイナリデータである送信信号を、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying),QAM(Quadrature Ampltude Modulation),OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)等の変調方式に応じて、電界情報にコンスタレーションマッピングする。但し、RZ(Return to Zero)やNRZ(Non Return to Zero)等の変調方式の場合は、バイナリデータである送信信号を電界情報に変換すれば足りる。
位相回転回路122は、変調方式マッピング回路121により送信信号をマッピングされた電界情報の電界位相に対し、一定周期の位相回転を付与する。具体的に、位相回転回路122は、搬送波周波数制御回路16から周波数制御量Δfaを受けると、位相回転θ=2πΔfatを電界位相に対し付与する。
【0014】
DAC(デジタル/アナログ変換回路)13は、信号処理回路12からのデジタル信号をアナログ信号に変換する。
ドライバ(変調器駆動回路)14は、DAC13からの信号を増幅し、その信号によって光変調器15を駆動する。
光変調器(光変調部)15は、信号処理部12でデジタル処理を施された後にDAC13およびドライバ14によって処理された送信信号に従って、レーザ光源11からの出力光を変調し光信号として伝送路3へ出力する。
【0015】
搬送波周波数制御回路16は、光変調器15から出力される光信号の搬送波周波数を制御する。搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122に対し周波数制御量Δfaを出力して位相回転回路122で付与される位相回転θ=2πΔfatの周期を制御することにより、光変調器15から出力される光信号の搬送波周波数を制御する。搬送波周波数制御回路16は、このような周波数制御を行なうことにより、本光送信器1の電気帯域内において、光変調器15から出力される光信号の搬送波周波数の微調整を行なう。本光送信器1の電気帯域は、DAC13,ドライバ14および光変調器15の帯域特性によって決まる。
【0016】
上述のごとき基本構成を有する光送信器1では、搬送波周波数制御回路16が、位相回転回路122に対し周波数制御量Δfaを出力し、位相回転回路122で付与される位相回転θ=2πΔfatの周期を制御する。これにより、光変調器15から出力される光信号の搬送波周波数が、本光送信器1の電気帯域内において、レーザ光源11からの出力光の周波数fCに、周波数制御量Δfaを加算した値に微調整される。
【0017】
従って、本光送信器1によれば、レーザ光源11を直接制御する従来手法に比べ、光変調部15から出力される光信号の搬送波周波数が、周波数制御量Δfaによって高精度かつ高速に制御される。これにより、レーザ光源11の発振周波数の安定性が確保され、本光送信器1を用いた光通信システムにおいて、伝送性能が向上するほか、波長多重間隔が高密度化されて伝送路(光ファイバ)3の帯域利用率が向上され、大容量の伝送が実現される。
【0018】
〔2〕第1実施形態の光送信器
図2は第1実施形態の光送信器1Aの構成を示すブロック図であり、この図2に示す光送信器1Aは、レーザ光源11,信号処理回路12,DAC13I,13Q,ドライバ14I,14Q,IQ光変調器15Aおよび搬送波周波数制御回路16を有している。
【0019】
レーザ光源11は、所定の周波数fCの出力光を発振する。
信号処理回路12は、外部から入力されるバイナリデータである送信信号に対し、デジタル信号処理を施すもので、変調方式マッピング回路121,位相回転回路122,Iチャネル前置歪み補償回路123IおよびQチャネル前置歪み補償回路123Qとしての機能を有している。
【0020】
変調方式マッピング回路121は、図1に示す光送信器1と同様、外部から入力されるバイナリデータである送信信号を、QPSK,QAM,OFDM等の変調方式に応じて、電界情報にコンスタレーションマッピングする。この変調方式マッピング回路121により送信信号をマッピングされた電界情報E1は、I(In-phase)成分およびQ(Quadrature-phase)成分を含み、E1=I+j・Q=A(t)・exp(jθ(t))として与えられる。ここで、jは虚数単位、A(t)は電界強度(振幅)、θ(t)は電界位相、tは時間である。
【0021】
位相回転回路122は、変調方式マッピング回路121により送信信号をマッピングされた電界情報E1の電界位相に対し、一定周期の位相回転を付与する。具体的に、図1に示す光送信器1と同様、位相回転回路122は、搬送波周波数制御回路16から周波数制御量Δfaを受けると、位相回転θ=2πΔfatを電界情報E1の電界位相に対し付与する。
【0022】
位相回転回路122は、図4に示すように、積分回路122aおよび乗算器122bを有している。なお、図4は位相回転回路122の構成を示すブロック図である。積分回路122aは、搬送波周波数制御回路16から周波数制御量Δfaを受けると、位相回転量Δω(=2πΔfa)を離散時間単位T毎に積分することにより、離散時間nTでΔωnTだけ位相を回転させる複素数電界情報exp(−j(ΔωnT))を算出する。ここで、nは整数である。乗算器122bは、積分回路122aによって算出された複素数電界情報exp(−j(ΔωnT))を、変調方式マッピング回路121からの電界情報E(t)(=E1)に乗算することで、電界情報E(t)の電界位相をΔωnT(=2πΔfat)だけ回転させた電界情報E′(t)=E(t)*exp(jΔωnT)を得て出力する。
【0023】
Iチャネル前置歪み補償回路123Iは、位相回転回路122により位相回転を付与された電界情報のI成分に対し、このI成分に対応する送信系の不完全による信号品質劣化を補償する。同様に、Qチャネル前置歪み補償回路123Qは、位相回転回路122により位相回転を付与された電界情報のQ成分に対し、このQ成分に対応する送信系の不完全による信号品質劣化を補償する。ここで、I成分に対応する送信系は、例えば後述するDAC13I,ドライバ14Iおよび位相変調器151Iであり、Q成分に対応する送信系は、例えば後述するDAC13Q,ドライバ14Qおよび位相変調器151Qである。そして、Iチャネル前置歪み補償回路123IおよびQチャネル前置歪み補償回路123Qは、例えばI/Q信号間の損失バラツキ,スキュー,帯域バラツキ,リニアリティなどを補償する。その補償は、後述するように、位相回転回路122からの電界情報に対し、本光送信器1A(送信系)の波形歪みの逆関数を乗算する(畳み込む)ことによって行なわれる。
【0024】
DAC13I,13Qは、それぞれ、Iチャネル前置歪み補償回路123IおよびQチャネル前置歪み補償回路123Qからのデジタル信号(I成分およびQ成分)をアナログ信号に変換する。
ドライバ14I,14Qは、それぞれ、DAC13I,13Qからの信号を増幅し、各信号によってIQ変調器15Aにおける位相変調器151I,151Q(図5参照)を駆動する。
【0025】
IQ変調器(光変調部)15Aは、信号処理部12でデジタル処理を施された後にDAC13I,13Qおよびドライバ14I,14Qによって処理された送信信号(I成分およびQ成分)に従って、レーザ光源11からの出力光を変調し光信号として伝送路3へ出力する。IQ変調器15Aは、図5に示すように、I成分用の位相変調器151I,Q成分用の位相変調器151Qおよび位相シフト部152を有している。なお、図5はIQ変調器15Aの構成を示すブロック図である。位相シフト部152は、位相変調器151Iおよび位相変調器151Qを介して伝搬する一組の光信号に対し所定の位相差(π/2)を与えるもので、位相変調器151Q側に設けられている。位相変調器151Iおよび位相変調器151Qは、それぞれ、所定の位相差を付与された一組の光信号に対し、ドライバ14I,14Qからの送信信号(I成分およびQ成分)に基づく位相変調を施して伝送路3へ出力する。
【0026】
搬送波周波数制御回路16は、図1に示す光送信器1と同様、IQ変調器15Aから出力される光信号の搬送波周波数を制御する。搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122に対し周波数制御量Δfaを出力して位相回転回路122で付与される位相回転θ=2πΔfatの周期を制御することにより、IQ変調器15Aから出力される光信号の搬送波周波数を制御する。搬送波周波数制御回路16は、このような周波数制御を行なうことにより、例えば図3に示すように、本光送信器1Aの電気帯域内において、IQ変調器15Aから出力される光信号の搬送波周波数の微調整を行なう。本光送信器1Aの電気帯域は、DAC13I,13Q;ドライバ14I,14QおよびIQ変調器15Aの帯域特性によって決まる。なお、図3は第1実施形態の光送信器1Aの送信スペクトルを示す図である。
【0027】
このとき、搬送波周波数制御回路16は、本光送信器1Aの通信対象の光受信器2A,2B(図9〜図11参照)からのエラー信号に応じて、位相回転回路122の回転周波数を調整することにより、受信側におけるエラーを解消するように、本光送信器1Aの電気帯域内において搬送波周波数の微調整を行なう。ここで、エラー信号は、例えば図10,図11を参照しながら後述するごとく、光受信器2Aまたは2Bにおいて受信された受信信号の品質検出結果に係り、受信側で受信信号の品質劣化が生じている旨を示す信号である。エラー信号は、光受信器2A,2B側から本光送信器1A側へ、逆方路のチャネルを用いて送信されてもよいし、光通信システムの制御チャネルを用いて送信されてもよいし、本光送信器1Aの新たな機能である周波数変調(後述)を用いて送信されてもよい。上記以外の方法として、送信器出力,中継装置,受信器で光スペクトラムもしくは光周波数を観測し、それらの情報を基に搬送波周波数の微調整を行なう方法もある。
【0028】
また、搬送波周波数制御回路16は、周波数調整値Δfaにパイロット信号を重畳してもよい。即ち、搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122で付与される位相回転θ=2πΔfatの周期を制御してIQ変調器15Aから出力される光信号の搬送波周波数を制御することにより、パイロット信号を、周波数変調によって、IQ変調器15Aから出力される光信号の搬送波周波数に重畳し、伝送路3を通じて受信側へ送信する機能をそなえてもよい。このとき、搬送波周波数制御回路16は、パイロット信号として、逆方路のチャンネルの受信信号の品質検出結果、具体的には、上記エラー信号を、周波数変調によって搬送波周波数に重畳してもよい。このような周波数変調を行なう場合、図11を参照しながら後述するごとく、光受信器2B側において、周波数変調されたパイロット信号を搬送波から復調する機能がそなえられることになる。
【0029】
さらに、搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122で付与される位相回転θ=2πΔfatの周期を制御してIQ変調器15Aから出力される光信号の搬送波周波数を制御することにより、受信信号の品質検出用ディザを、IQ変調器15Aから出力される光信号の搬送波周波数に重畳し、伝送路3を通じて受信側(光受信器2A,2B)へ送信してもよい。
【0030】
また、搬送波周波数制御回路16は、送信器電気帯域以上に搬送波周波数を調整する場合には、位相回転回路122を用いた制御とともに、レーザ光源11の発振周波数の制御を併用してもよい。つまり、搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122で付与される位相回転の周期を制御してIQ変調器15Aから出力される光信号の搬送波周波数を制御する微調整と、レーザ光源11からの出力光の周波数を直接制御する粗調整とを併用し、IQ変調器15Aから出力される光信号の搬送波周波数を制御してもよい。このとき、波長多重光システムにて一般的に使用されているレーザ光源11の発振周波数は、発振周波数グリッド変更や温度制御による発振周波数調整によって制御可能であり、搬送波周波数制御回路16は、発振周波数グリッド変更や温度制御による発振周波数調整を用いて上記粗調整を行なう。
【0031】
上述のごとき第1実施形態の光送信器1Aでは、図1に示す光送信器1と同様、搬送波周波数制御回路16が、位相回転回路122に対し周波数制御量Δfaを出力し、位相回転回路122で付与される位相回転θ=2πΔfatの周期を制御する。これにより、IQ変調器15Aから出力される光信号の搬送波周波数が、本光送信器1Aの電気帯域内において、レーザ光源11からの出力光の周波数fCに、周波数制御量Δfaを加算した値に微調整される。
【0032】
従って、本光送信器1Aによれば、レーザ光源11を直接制御する従来手法に比べ、IQ変調部15Aから出力される光信号の搬送波周波数が、周波数制御量Δfaによって高精度かつ高速に制御される。これにより、レーザ光源11の発振周波数の安定性が確保され、本光送信器1Aを用いた光通信システムにおいて、伝送性能が向上するほか、波長多重の間隔が高密度化されて伝送路(光ファイバ)3の帯域利用率が向上され、大容量の伝送が実現される。
【0033】
また、本光送信器1Aによれば、レーザ光源11を直接制御する従来手法と異なり、周波数変調によるパイロット信号の搬送周波数への重畳や、受信信号の品質検出用ディザの重畳といった、複雑な周波数制御が可能である。これにより、制御チャネル等を用いることなくパイロット信号(例えばエラー信号)を送信できるほか、図10や図11を参照しながら後述するように、ディザによって受信側でのエラー検出感度を高めることができるといった、様々な作用効果が得られる。
【0034】
さらに、本光送信器1Aにおいては、信号処理回路12がIチャネル前置歪み補償回路123IおよびQチャネル前置歪み補償回路123Qとしての機能をそなえているので、DAC13I,13Q;ドライバ14I,14Qおよび位相変調器151I,151Qの不完全による信号品質劣化が前もって補償される。これにより、本光送信器1Aは、高品質の光送信を実現することができる。
【0035】
また、本光送信器1Aによれば、搬送波周波数制御回路16が、位相回転回路122による搬送波周波数の微調整と、レーザ光源11の発振周波数を直接制御する粗調整とを併用することにより、送信器電気帯域を超える搬送波周波数の調整を、高精度に行なうことができる。
【0036】
〔3〕第2実施形態の光送信器
図6は第2実施形態の光送信器1Bの構成を示すブロック図であり、この図6に示す光送信器1Bは、図2に示す第1実施形態の光送信器1Aとほぼ同様に構成されているが、信号処理回路12が伝送路前置歪み補償回路124としての機能を有する点でのみ、第1実施形態の光送信器1Aと異なっている。なお、図6において、レーザ光源11,ドライバ14I,14QやIQ変調器15Aの図示は省略されている。また、図6中において、既述の符号と同一の符号は、同一もしくはほぼ同一の部分を示しているので、その説明は省略する。
【0037】
伝送路前置歪み補償回路124は、変調方式マッピング回路121と位相回転回路122との間に配置され、変調方式マッピング回路121により送信信号をマッピングされた電界情報E1に対し、伝送路(光ファイバ)3による信号品質劣化を補償する。その補償は、後述するように、変調方式マッピング回路121からの電界情報E1に対し、伝送路3での光伝送による波形歪みの逆関数を乗算する(畳み込む)ことによって行なわれる。
【0038】
従って、本光送信器1Bによれば、上述した第1実施形態の光送信器1Aと同様の作用効果が得られるほか、信号処理回路12が伝送路前置歪み補償回路124としての機能をそなえているので、伝送路3での光伝送による波形歪みが前もって補償される。これにより、本光送信器1Bは、より高品質の光送信を実現することができる。
【0039】
以下に、図6に示す光送信器1Bにおける信号処理、つまりは位相回転回路122による搬送波周波数の制御原理について、下記(1)〜(5)式を参照しながら具体的に説明する。
送信信号に対し、変調方式マッピング回路121によるマッピングを行なった後の電界情報E1は、上述したように、下記(1)式で与えられる。
E1=A(t)・exp(jθ(t)) (1)
ここで、jは虚数単位、A(t)は電界強度(振幅)、θ(t)は電界位相、tは時間である。
【0040】
電界情報E1に対し、伝送路前置歪み補償回路124による補償を行なった後の電界情報E2は、下記(2)式で与えられる。
E2=h1(t)*E1 (2)
ここで、*は畳み込み、h1(t)は伝送路3の波形歪みの逆関数である。
電界情報E2に対し、位相回転回路122により周波数制御量Δfaに基づく位相回転を行なった後の電界情報E3は、下記(3)式で与えられる。
E3=exp(j2πΔfat)・E2 (3)
【0041】
電界情報E3に対し、Iチャネル前置歪み補償回路123IおよびQチャネル前置歪み補償回路123Qによる補償を行なった後の電界情報E4は、下記(4)式で与えられる。
E4=h2(t)*E3 (4)
ここで、h2(t)は本光送信器1B(送信系)の波形歪みの逆関数である。
【0042】
電界情報E4に対し、DAC13I,13Q;ドライバ14I,14Qおよび位相変調器151I,151Qによる処理を行なった後の信号の強度Psigは、下記(5)式で与えられる。
Psig=P・exp(j2π(fc)t)・h2(t)’*E4
=P・exp(j2π(fc)t)・h2(t)’*h2(t)*E3
=P・exp(j2π(fc)t)・E3
=P・exp(j2π(fc+Δfa)t)・E2 (5)
ここで、fcはレーザ光源11によって発振される出力光の周波数、Pは光電界強度、h2(t)’は本光送信器1B(送信系)の波形歪みの関数であり、h2(t)’*h2(t)=1である。
【0043】
〔4〕第3実施形態の光送信器
図7は第3実施形態の光送信器1Cの構成を示すブロック図であり、この図7に示す光送信器1Cは、偏波多重方式を採用し、レーザ光源11,信号処理回路12,DAC13XI,13XQ,13YI,13YQ,ドライバ14XI,14XQ,14YI,14YQ,偏波多重IQ変調器15Cおよび搬送波周波数制御回路16を有している。
【0044】
レーザ光源11は、所定の周波数fCの出力光を発振する。
信号処理回路12は、外部から入力されるバイナリデータである送信信号に対し、デジタル信号処理を施すもので、1:2DMUX120,変調方式マッピング回路121X,121Y,位相回転回路122X,122Y,Iチャネル前置歪み補償回路123XI,123YI,Qチャネル前置歪み補償回路123XQ,123YQとしての機能を有している。
【0045】
1:2DMUX(demultiplexer)120は、外部から入力されるバイナリデータである送信信号を、直交する偏波成分X,Yにそれぞれ対応する2系統の信号に分離する分離部である。
変調方式マッピング回路121X,121Yは、それぞれ、1:2DMUX120によって分離された偏波成分X,Yに対応してそなえられている。
【0046】
変調方式マッピング回路121Xは、偏波成分Xの信号を、QPSK,QAM,OFDM等の変調方式に応じて、電界情報にコンスタレーションマッピングする。この変調方式マッピング回路121Xにより送信信号をマッピングされた電界情報Ex1は、I成分およびQ成分を含み、Ex1=xI+j・xQとして与えられる。同様に、変調方式マッピング回路121Yは、偏波成分Yの信号を、QPSK,QAM,OFDM等の変調方式に応じて、電界情報にコンスタレーションマッピングする。この変調方式マッピング回路121Yにより送信信号をマッピングされた電界情報Ey1は、I成分およびQ成分を含み、Ey1=yI+j・yQとして与えられる。
【0047】
位相回転回路122X,122Yは、それぞれ、変調方式マッピング回路121X,121Yの後段において偏波成分X,Yに対応してそなえられている。
位相回転回路122Xは、変調方式マッピング回路121Xにより送信信号をマッピングされた電界情報Ex1の電界位相に対し、一定周期の位相回転を付与する。具体的に、図1や図2に示す光送信器1,1Aと同様、位相回転回路122Xは、搬送波周波数制御回路16から周波数制御量Δfaを受けると、位相回転θ=2πΔfatを電界情報Ex1の電界位相に対し付与する。同様に、位相回転回路122Yは、変調方式マッピング回路121Yにより送信信号をマッピングされた電界情報Ey1の電界位相に対し、一定周期の位相回転を付与する。具体的に、位相回転回路122Yは、搬送波周波数制御回路16から周波数制御量Δfaを受けると、位相回転θ=2πΔfatを電界情報Ey1の電界位相に対し付与する。なお、各位相回転回路122X,122Yは、図4に示す位相回転回路122と同様に構成されている。
【0048】
Iチャネル前置歪み補償回路123XIおよびQチャネル前置歪み補償回路123XQは、位相回転回路122Xの後段において偏波成分Xに対応してそなえられている。
Iチャネル前置歪み補償回路123XIは、位相回転回路122Xにより位相回転を付与された電界情報のI成分に対し、偏波成分XのI成分に対応する送信系の不完全による信号品質劣化を補償する。同様に、Qチャネル前置歪み補償回路123XQは、位相回転回路122Xにより位相回転を付与された電界情報のQ成分に対し、偏波成分XのQ成分に対応する送信系の不完全による信号品質劣化を補償する。ここで、偏波成分XのI成分に対応する送信系は、例えば後述するDAC13XI,ドライバ14XIおよび位相変調器151XIであり、偏波成分XのQ成分に対応する送信系は、例えば後述するDAC13XQ,ドライバ14XQおよび位相変調器151XQである。その補償は、後述するように、位相回転回路122Xからの電界情報に対し、本光送信器1C(送信系)の波形歪みの逆関数を乗算する(畳み込む)ことによって行なわれる。
【0049】
Iチャネル前置歪み補償回路123YIおよびQチャネル前置歪み補償回路123YQは、位相回転回路122Yの後段において偏波成分Yに対応してそなえられている。
Iチャネル前置歪み補償回路123YIは、位相回転回路122Yにより位相回転を付与された電界情報のI成分に対し、偏波成分YのI成分に対応する送信系の不完全による信号品質劣化を補償する。同様に、Qチャネル前置歪み補償回路123YQは、位相回転回路122Yにより位相回転を付与された電界情報のQ成分に対し、偏波成分YのQ成分に対応する送信系の不完全による信号品質劣化を補償する。ここで、偏波成分YのI成分に対応する送信系は、例えば後述するDAC13YI,ドライバ14YIおよび位相変調器151YIであり、偏波成分YのQ成分に対応する送信系は、例えば後述するDAC13YQ,ドライバ14YQおよび位相変調器151YQである。その補償は、後述するように、位相回転回路122Yからの電界情報に対し、本光送信器1C(送信系)の波形歪みの逆関数を乗算する(畳み込む)ことによって行なわれる。
【0050】
DAC13XI,13XQは、偏波成分Xに対応してそなえられ、それぞれ、Iチャネル前置歪み補償回路123XIおよびQチャネル前置歪み補償回路123XQからのデジタル信号(I成分およびQ成分)をアナログ信号に変換する。同様に、DAC13YI,13YQは、偏波成分Yに対応してそなえられ、それぞれ、Iチャネル前置歪み補償回路123YIおよびQチャネル前置歪み補償回路123YQからのデジタル信号(I成分およびQ成分)をアナログ信号に変換する。
【0051】
ドライバ14XI,14XQは、偏波成分Xに対応してそなえられ、それぞれ、DAC13XI,13XQからの信号を増幅し、各信号によって偏波多重IQ変調器15Cにおける位相変調器151XI,151XQ(図8参照)を駆動する。同様に、ドライバ14YI,14YQは、偏波成分Yに対応してそなえられ、それぞれ、DAC13YI,13YQからの信号を増幅し、各信号によって偏波多重IQ変調器15Cにおける位相変調器151YI,151YQ(図8参照)を駆動する。
【0052】
偏波多重IQ変調器(光変調部)15Cは、直交する偏波成分X,Y毎に互いに独立した光変調を行なう偏波多重変調部である。この偏波多重IQ変調器15Cは、信号処理部12でデジタル処理を施された2系統(偏波成分X,Y)の信号のI成分およびQ成分に従って、レーザ光源11からの出力光を変調し光信号として伝送路3へ出力する。
【0053】
偏波多重IQ変調器15Cは、図8に示すように、偏波成分Xに対応する、I成分用の位相変調器151XI,Q成分用の位相変調器151XQおよび位相シフト部152Xと、偏波成分Yに対応する、I成分用の位相変調器151YI,Q成分用の位相変調器151YQおよび位相シフト部152Yと、偏波合波器153とを有している。なお、図8は偏波多重IQ変調器15Cの構成を示すブロック図である。
【0054】
位相シフト部152Xは、位相変調器151XIおよび位相変調器151XQを介して伝搬する一組の光信号に対し所定の位相差(例えばπ/2)を与えるもので、位相変調器151XQ側に設けられている。位相変調器151XIおよび位相変調器151XQは、それぞれ、所定の位相差を付与された一組の光信号に対し、ドライバ14XI,14XQからの送信信号(I成分およびQ成分)に基づく位相変調を施す。
【0055】
位相シフト部152Yは、位相変調器151YIおよび位相変調器151YQを介して伝搬する一組の光信号に対し所定の位相差(π/2)を与えるもので、位相変調器151YQ側に設けられている。位相変調器151YIおよび位相変調器151YQは、それぞれ、所定の位相差を付与された一組の光信号に対し、ドライバ14YI,14YQからの送信信号(I成分およびQ成分)に基づく位相変調を施す。
【0056】
偏波合波器(PBC;Polarization Beam Combiner)153は、位相変調器151XIおよび位相変調器151XQからの偏波成分Xについての変調信号と、位相変調器151YIおよび位相変調器151YQからの偏波成分Yについての変調信号とを合波して伝送路3へ出力する。
【0057】
搬送波周波数制御回路16は、上述した光送信器1,1A,1Bと同様、偏波多重IQ変調器15Cから出力される光信号(X偏波,Y偏波)の搬送波周波数を制御する。搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122X,122Yに対し周波数制御量Δfaを出力して位相回転回路122X,122Yで付与される位相回転θ=2πΔfatの周期を制御することにより、偏波多重IQ変調器15Cから出力される光信号(X偏波,Y偏波)の搬送波周波数を制御する。搬送波周波数制御回路16は、このような周波数制御を行なうことにより、本光送信器1Cの電気帯域内において、IQ変調器15Aから出力される光信号(X偏波,Y偏波)の搬送波周波数の微調整を行なう。本光送信器1Cの電気帯域は、DAC13XI,13XQ,13YI,13YQ;ドライバ14XI,14XQ,14YI,14YQおよび偏波多重IQ変調器15Cの帯域特性によって決まる。
【0058】
このとき、搬送波周波数制御回路16は、第1実施形態と同様、本光送信器1Cの通信対象の光受信器2A,2B(図9〜図11参照)からのエラー信号に応じて、位相回転回路122X,122Yの回転周波数を調整することにより、受信側におけるエラーを解消するように、本光送信器1Aの電気帯域内において搬送波周波数の微調整を行なう。
【0059】
また、搬送波周波数制御回路16は、第1実施形態と同様、パイロット信号、例えば受信信号の品質検出結果(上記エラー信号)を、周波数変調によって、IQ変調器15Aから出力される光信号(X偏波,Y偏波)の搬送波周波数に重畳してもよい。なお、図7に示す光送信器1Cでは、搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122X,122Yに対し、同じ周波数制御量Δfaを出力しているが、位相回転回路122X,122Yに対し、異なる周波数制御量Δfa,Δfbを出力してもよい。
【0060】
さらに、搬送波周波数制御回路16は、第1実施形態と同様、位相回転回路122X,122Yで付与される位相回転θ=2πΔfatの周期を制御して偏波多重IQ変調器15Cから出力される光信号(X偏波,Y偏波)の搬送波周波数を制御することにより、受信信号の品質検出用ディザを、偏波多重IQ変調器15Cから出力される光信号(X偏波,Y偏波)の搬送波周波数に重畳し、伝送路3を通じて受信側(光受信器2A,2B)へ送信してもよい。
【0061】
また、搬送波周波数制御回路16は、第1実施形態と同様、送信器電気帯域以上に搬送波周波数を調整する場合には、位相回転回路122X,122Yを用いた制御とともに、レーザ光源11の発振周波数の制御を併用してもよい。つまり、搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122X,122Yで付与される位相回転の周期を制御して偏波多重IQ変調器15Cから出力される光信号(X偏波,Y偏波)の搬送波周波数を制御する微調整と、レーザ光源11からの出力光の周波数を直接制御する粗調整とを併用し、偏波多重IQ変調器15Cから出力される光信号の搬送波周波数を制御してもよい。
【0062】
上述のごとき第3実施形態の光送信器1Cでは、図1に示す光送信器1と同様、搬送波周波数制御回路16が、位相回転回路122X,122Yに対し周波数制御量Δfaを出力し、位相回転回路122X,122Yで付与される位相回転θ=2πΔfatの周期を制御する。これにより、IQ変調器15Aから出力される光信号(X偏波,Y偏波)の搬送波周波数が、本光送信器1Cの電気帯域内において、レーザ光源11からの出力光の周波数fCに、周波数制御量Δfaを加算した値に微調整される。
【0063】
従って、本光送信器1Cによれば、第1実施形態の光送信器1Aと同様、レーザ光源11を直接制御する従来手法に比べ、偏波多重IQ変調部15Cから出力される光信号の搬送波周波数が、周波数制御量Δfaによって高精度かつ高速に制御される。これにより、レーザ光源11の発振周波数の安定性が確保され、本光送信器1Cを用いた光通信システムにおいて、伝送性能が向上するほか、波長多重の間隔が高密度化されて伝送路(光ファイバ)3の帯域利用率が向上され、大容量の伝送が実現される。特に、本光送信器1Cによれば、偏波多重方式を採用することにより、光通信システムにおいてボーレートあたりのビットレートを倍増することができる。
【0064】
また、本光送信器1Cによっても、レーザ光源11を直接制御する従来手法と異なり、周波数変調によるパイロット信号の搬送周波数への重畳や、受信信号の品質検出用ディザの重畳といった、複雑な周波数制御が可能である。これにより、制御チャネル等を用いることなくパイロット信号(例えばエラー信号)を送信できるほか、図10や図11を参照しながら後述するように、ディザによって受信側でのエラー検出感度を高めることができるといった、様々な作用効果が得られる。
【0065】
さらに、本光送信器1Cでは、搬送波周波数制御回路16が、前述したように位相回転回路122X,122Yに対し異なる周波数制御量Δfa,Δfbを出力してもよい。これにより、偏波成分X,Yのそれぞれに対し、周波数変調によって、異なるパイロット信号を重畳することが可能になり、パイロット信号の送信情報量を倍増することができる。
【0066】
また、本光送信器1Cにおいても、信号処理回路12がIチャネル前置歪み補償回路123XI,YIおよびQチャネル前置歪み補償回路123XQ,YQとしての機能をそなえているので、DAC13XI,13XQ,13YI,13YQ;ドライバ14XI,14XQ,13YI,14YQおよび位相変調器151XI,151XQ,151YI,151YQの不完全による信号品質劣化が前もって補償される。これにより、本光送信器1Cは、高品質の光送信を実現することができる。
【0067】
さらに、本光送信器1Cによっても、搬送波周波数制御回路16が、位相回転回路122X,122Yによる搬送波周波数の微調整と、レーザ光源11の発振周波数を直接制御する粗調整とを併用することにより、送信器電気帯域を超える搬送波周波数の調整を、高精度に行なうことができる。
【0068】
なお、本光送信器1Cにおいても、変調方式マッピング回路121Xと位相回転回路122Xとの間、および、変調方式マッピング回路121Yと位相回転回路122Yとの間に、それぞれ、図6に示す光送信器1Bの伝送路前置歪み補償回路124と同様の伝送路前置歪み補償回路をそなえてもよい。この伝送路前置歪み補償回路は、変調方式マッピング回路121Xまたは121Yで送信信号をマッピングされた電界情報に対し、伝送路3による信号品質劣化を補償する。これにより、伝送路3での光伝送による波形歪みが前もって補償され、より高品質の光送信を実現することができる。
【0069】
偏波多重方式を採用した光送信器1Cにおける信号処理も、第2実施形態の光送信器1Bの信号処理について説明した上記(1)〜(5)式に従って行なわれる。ただし、偏波多重方式を採用する場合、上記(1)〜(5)式において、電界情報Eとしては、下記(6)式の通りX偏波,Y偏波の情報Ex,Eyが採用され、波形歪みに係る関数/逆関数h(=h1(t),h2(t)またはh2(t)’)としては、下記(7)式の通り偏波を考慮した関数が用いられる。
【0070】
【数1】
【0071】
〔5〕光通信システムおよび光受信器
次に、図9を参照しながら、上述した光送信器1,1A〜1Cを適用される光通信システムの構成を説明するとともに、図10および図11を参照しながら、本実施形態の光通信システムに適用される光受信器2A,2Bの構成を説明する。なお、図9は本実施形態の光通信システムの構成を示すブロック図、図10は光受信器2Aの構成を示すブロック図、図11は光受信器2Bの構成を示すブロック図である。
【0072】
図9に示すように、光送信器1,1A〜1Cを適用される光通信システムは、光送信器Txと、光受信器Rxと、伝送路3と、複数(図9中では4)の中継器4とを有している。ここで、光送信器Txとしては、上述した光送信器1,1A〜1Cのいずれか一つが用いられ、光受信器Rxとしては、図10,図11を参照しながら後述する光受信器2Aまたは2Bが用いられる。また、伝送路3(光ファイバ)は、光送信器Txと光受信器Rxとの間を接続し、この伝送路3上に複数の中継器4が介設されている。
【0073】
光受信器(光受信器の一例)2Aは、図10に示すように、OE21および識別・誤り訂正回路22を有している。
OE(光/電気変換回路)21は、光送信器Txから伝送路3を通じて送信されてきた光信号を受信して電気信号に変換する。
識別・誤り訂正回路22は、OE21からの電気信号を識別し、その電気信号の誤り訂正数をモニタする。
【0074】
識別・誤り訂正回路22によってモニタされた誤り訂正数は、前記エラー信号として、光受信器Rx(2A)から光送信器Txへ、逆方路のチャネルを用いて、または、本光通信システムの制御チャネルを用いパイロット信号として、または、前記周波数変調を用いて、送信される。このようにして光受信器Rx(2A)から誤り訂正数を受信する光送信器Tx側では、搬送波周波数制御回路16が、誤り訂正数が最小になるように、位相回転回路122,122X,122Yの回転周波数を調整し、光送信器Txの電気帯域内において搬送波周波数の微調整を行なう。
【0075】
光受信器(光受信器の他例;デジタルコヒーレント受信器)2Bは、図11に示すように、局部発振光源23,90度ハイブリッド回路24,OE25,ADC26および信号処理回路27を有している。
局部発振光源23は、局部発振光を発振して出力する。
90度ハイブリッド回路24は、局部発振光源23からの局部発振光と、光送信器Txから伝送路3を通じて送信されてきた光信号とを合成し、光位相が互いに90度異なる2組の光信号を出力する。
【0076】
OE(光/電気変換回路)25は、90度ハイブリッド回路24からの2組の光信号を電気信号に変換する。
ADC(アナログ/デジタル変換回路)26は、OE25からの電気信号をデジタル信号に変換する。
信号処理回路27は、ADC26からの2組のデジタル信号に対し、デジタル信号処理を施すもので、波形歪み補償回路271,搬送波位相同期回路272,識別回路273および信号品質モニタ274としての機能を有している。
【0077】
波形歪み補償回路271は、ADC26からのデジタル信号に対し、波形歪みの補償を行なう。
搬送波位相同期回路272は、光源周波数オフセット補償機能および搬送波位相推定機能(J.C.Rasmussen他「100Gbps光伝送システムのためのデジタルコヒーレント受信技術」, FUJITSU, vol.60, no.5, p.476-483, 2009年9月)を有するほか、周波数復調機能を有している。
【0078】
光源周波数オフセット補償機能は、波形歪み補償回路271によって波形歪みを補償されたデジタル信号に対し、光源周波数オフセット補償を行なう機能である。光送信器Tx側のレーザ光源11と光受信器2B側の局部発振光源23との間には波長確度の範囲内で光周波数のズレ(オフセット)が発生しうる。一般的な波長多重用光源の場合、その周波数オフセットは、最大、数GHz程度となる可能性がある。光源周波数オフセットが大きい場合、受信信号を処理・識別することが困難になる。そこで、光源周波数オフセット補償機能は、光源周波数オフセットの推定値を得てから、その推定値をフィードバックして局部発振光源23の発振周波数を微調整する、もしくはデジタル処理により補償することにより、周波数オフセットの補償を行なう。
【0079】
光送信器Tx側のレーザ光源11と光受信器2B側の局部発振光源23との間の周波数オフセットが補償された後に残るのは、これらの光源11,23間の位相差である。搬送波位相推定機能は、その位相差を推定して補正することにより識別判定の準備を行なう機能である。
周波数復調機能は、光送信器Txにおいて上記周波数変調によりパイロット信号が重畳された場合、その搬送波からパイロット信号を復調する機能である。搬送波位相同期回路272において、上記光源周波数オフセット補償機能により光源周波数オフセットの推定値を得ることができ、光源周波数オフセット値により光送信器Txからの周波数変調によって重畳されたパイロット信号を復調することができる。
【0080】
識別回路273は、搬送波位相同期回路272によって得られた信号に基づいて、受信信号のデータ識別処理を行ない、識別結果をデータ信号として出力する。
信号品質モニタ274は、搬送波位相同期回路272によって得られた信号の品質をモニタする。
信号品質モニタ274によってモニタされた信号品質は、前記エラー信号として、光受信器Rx(2B)から光送信器Txへ、逆方路のチャネルを用いて、または、本光通信システムの制御チャネルを用いパイロット信号として、または、前記周波数変調を用いて、送信される。このようにして光受信器Rx(2B)から信号品質を受信する光送信器Tx側では、搬送波周波数制御回路16が、信号品質が最良になるように、位相回転回路122,122X,122Yの回転周波数を調整し、光送信器Txの電気帯域内において搬送波周波数の微調整を行なう。
【0081】
なお、最適な搬送波周波数を見つけやすくするために、上述したように搬送波周波数制御回路16によって搬送波周波数にディザを重畳した信号を送信することが有効である。この場合、識別・誤り訂正回路22によって得られる誤り訂正数、もしくは、信号品質モニタ274によって得られる品質情報に基づき、搬送波周波数に重畳されたディザがモニタされる。そして、搬送波周波数制御回路16が、モニタされたディザの振幅が最小になるように、位相回転回路122,122X,122Yの回転周波数を調整し、光送信器Txの電気帯域内において搬送波周波数の微調整を行なう。このとき、モニタされたディザの振幅が、前記エラー信号として光受信器Rxから光送信器Txへ送信される。
【0082】
このように、光送信器1,1A〜1Cとともに光受信器2A,2Bを用いることで、光受信器2A,2B側において、受信信号の誤り訂正数が最小になるように、または、受信信号の品質が最良になるように、または、ディザ振幅が最小になるように、搬送波周波数が高精度かつ高速に制御される。
【0083】
〔6〕光送信装置の第1例
以下に、上述のごとく構成された光送信器1,1A〜1Cを用い高密度波長多重を行なう光通信装置の構成例(第1例〜第5例)について説明する。
まず、図12および図13を参照しながら、光送信装置の第1例について説明する。図12は光送信装置の第1例の構成を示すブロック図、図13は図12に示す光送信装置の送信スペクトルを示す図である。
【0084】
図12に示すように、第1例の光送信装置100Aは、複数(図12ではn;nは自然数)の光送信器Tx1〜Txnと、光合波器101とを有している。
光送信器Tx1〜Txnとしては、図1〜図8に示す光送信器1,1A〜1Cのいずれかが用いられる。なお、図12では、光送信器Tx1〜Txnとして、図1に示す光送信器1が示されている。また、図12では、DAC13および搬送波周波数制御回路16の図示は省略されている。
【0085】
光合波器101は、複数の光送信器Tx1〜Txnからの光信号を合波することにより波長多重を行なって伝送路3へ出力する。
複数の光送信器Tx1〜Txnにおける各レーザ光源11は、同一の周波数fCの出力光を発振する。
複数の光送信器Tx1〜Txnにおける各搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122,122X,122Yで付与される位相回転の周期を制御して光変調部15,15A,15Cから出力される光信号の搬送波周波数を制御する微調整を行なう。
【0086】
このとき、複数の光送信器Tx1〜Txnにおける各搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122,122X,122Yに対し、それぞれ異なる周波数制御量Δfa1〜Δfanを出力する。これにより、光送信器Tx1〜Txnにおける各光変調部15,15A,15Cから出力される光信号の中心搬送波周波数は、図13に示すように、電気帯域幅内において、それぞれ、fC+Δfa1,fC+Δfa2,…,fC+Δfanに微調整される。
【0087】
従って、第1例の光送信装置100Aによれば、複数の光送信器Tx1〜Txnにおける各搬送波周波数制御回路16の機能を用い、各光送信器Tx1〜Txnから出力される光信号の搬送波周波数が電気帯域幅内で高精度かつ高速に微調整される。これにより、波長多重の間隔が高密度化されて伝送路(光ファイバ)3の帯域利用率が向上され、大容量の伝送が実現される。
なお、複数の光送信器Tx1〜Txnにおけるレーザ光源11は、一のレーザ光源によって共通化されていてもよい。この場合、レーザ光源11が一つだけとなるため、光通信装置100Aの構成をより簡素化することができる。
【0088】
〔7〕光送信装置の第2例
図14〜図16を参照しながら、光送信装置の第2例について説明する。図14は光送信装置の第2例の構成を示すブロック図、図15は図14に示す光送信装置の送信スペクトルを示す図、図16(A)および図16(B)は図14に示す光送信装置による波長配置変更(デフラグ)を説明するための図である。
【0089】
図14に示すように、第2例の光送信装置100Bは、複数(図14ではn)の光送信器Tx1〜Txnと、帯域可変光合波器102とを有している。
光送信器Tx1〜Txnとしては、図1〜図8に示す光送信器1,1A〜1Cのいずれかが用いられる。
帯域可変光合波器102は、複数の光送信器Tx1〜Txnからの光信号を合波することにより波長多重を行なって伝送路3へ出力する、帯域可変の光合波器である。
【0090】
そして、第2例の光送信装置100Bでは、複数の光送信器Tx1〜Txnにおける各搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122で付与される位相回転の周期を制御することにより、送信信号(バイナリデータ)のビットレートに応じた波長配置の調整を行なう。
従って、第2例の光送信装置100Bによれば、異なるビットレートの信号を一本の光ファイバで伝送する場合、各光送信器Tx1〜Txnにおける搬送波周波数制御回路16の機能を用いて、図15に示すように、各光パスP1〜P6(各光送信器Tx1〜Txnの送信信号)のビットレートに合わせて波長配置が高精度かつ高速に微調整される。これにより、波長多重の間隔が高密度化されて伝送路(光ファイバ)3の帯域利用率が向上され、大容量の伝送が実現される。
【0091】
このとき、光送信器Tx1〜Txnにおける各搬送波周波数制御回路16は、上記微調整機能と、レーザ光源11からの出力光の周波数を直接制御する粗調整機能とを併用して波長配置の調整を行なってもよい。粗調整は、上述したように、発振周波数グリッド変更や温度制御による発振周波数調整によって行なわれる。このように粗調整機能と微調整機能とを組み合わせることにより、送信器電気帯域を超える大きな幅での搬送波周波数の調整を、高精度に行なうことができる。
【0092】
ところで、上述のようにして図15や図16(A)に示すごとく高密度な波長配置を行なった状態の光ネットワークが複数年に亘って運用されていくと、各光パスでの需要や要求が変化する場合が多々ある。このような場合、光ネットワークの波長配置を修正・変更することにより、波長資源の利用効率の改善が可能である。
第2例の光送信装置100Bでは、上述した微調整機能および粗調整機能を用いることにより、光ネットワークの波長配置の修正・変更を行なうことができる。その際、搬送波周波数制御回路16の微調整機能を用いることで、少なくとも電気帯域内での光パスの移動・変更であれば、ヒットレスつまり当該光パスを信号断状態にすることなく、波長配置の変更を高精度かつ高速に行なうことができる。
【0093】
例えば図16(A)に示すように、光パスP1〜P6の波長配置を行なった状態の光ネットワークにおいて、光パスP2,P3が不要になり、光パスP4については、より広帯域が必要になったとする。このような場合、例えば図16(B)に示すように、光パスP4のビットレートが変更された後、光パスP4〜P6が、上述した微調整機能および粗調整機能を用いて移動され、光パスP1,P4〜P6が高密度に配置される。さらに、図16(B)に示す例では、新たな光パスP7,P8が、光パスP6以降の周波数帯域において追加され、上述した微調整機能および粗調整機能を用いて高密度に配置されている。
【0094】
このように、第2例の光送信装置100Bによれば、光送信器Tx1〜Txnにおける各搬送波周波数制御回路16の微調整機能および粗調整機能を用いて、波長配置の変更を高精度かつ高速に行なうことができる。従って、光ネットワークの長年の運用に伴い各光パスでの需要や要求が変化したとしても、光ネットワークの波長配置が修正・変更され、波長資源の利用効率を改善することができる。
【0095】
〔8〕光送信装置の第3例
図17および図18を参照しながら、光送信装置の第3例について説明する。図17は光送信装置の第3例の構成を示すブロック図、図18は図17に示す光送信装置の送信スペクトルを示す図である。
図17に示すように、第3例の光送信装置100Cは、図12に示す第1例の光送信装置100Aと同様、複数(図17ではn)の光送信器Tx1〜Txnと、光合波器101とを有している。
【0096】
光送信器Tx1〜Txnとしては、図1〜図8に示す光送信器1,1A〜1Cのいずれかが用いられる。なお、図17では、図12と同様、光送信器Tx1〜Txnとして、図1に示す光送信器1が示されている。また、図17では、DAC13および搬送波周波数制御回路16の図示は省略されている。
光合波器101は、複数の光送信器Tx1〜Txnからの光信号を合波することにより波長多重を行なって伝送路3へ出力する。
【0097】
複数の光送信器Tx1〜Txnにおけるレーザ光源11としては、サブチャネル毎もしくはサブチャネル群毎に、周波数同期のとれていない、異なる光源が用いられる。
複数の光送信器Tx1〜Txnにおける各搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122,122X,122Yで付与される位相回転の周期を制御して光変調部15,15A,15Cから出力される光信号の搬送波周波数を制御する微調整を行なう。
【0098】
このとき、複数の光送信器Tx1〜Txnにおける各搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122,122X,122Yに対し、それぞれ異なる周波数制御量Δfa1〜Δfanを出力する。これにより、光送信器Tx1〜Txnにおける各光変調部15,15A,15Cから出力される光信号の中心搬送波周波数の間隔は、図18に示すように、シンボルレートの定数倍(N×シンボルレート;Nは自然数)に調整される。
【0099】
従って、第3例の光送信装置100Cによれば、各レーザ光源11の発振周波数の同期がとれていなくても、各搬送波周波数制御回路16の機能を用い、各光送信器Tx1〜Txnから出力される光信号の中心搬送波周波数の間隔がシンボルレートの定数倍に調整される。これにより、各光送信器Tx1〜Txnから出力される光信号の周波数同期がとられ、OFDM(直交周波数分割多重)を実現することができる。
【0100】
〔9〕光送信装置の第4例
図19および図20を参照しながら、光送信装置の第4例について説明する。図19は光送信装置の第4例の構成を示すブロック図、図20は図19に示す光送信装置の送信スペクトルを示す図である。
図19に示すように、第4例の光送信装置100Dは、複数(図19ではn+1)の光送信器Tx1,Tx2,…,Txm,Txm′,…,Txnと、AWG103と、カプラ104とを有している。なお、mは1以上でn以下の自然数である。
【0101】
光送信器Tx1,Tx2,…,Txm,Txm′,…,Txnとしては、図1〜図8に示す光送信器1,1A〜1Cのいずれかが用いられる。
AWG(アレイ導波路回折格子)103は、n個のポート1〜nを有し、これらのポート1〜nに入力される光送信器Tx1〜Txnからの光信号を合波することにより波長多重を行なって伝送路3へ出力する、フィルタ帯域固定の光合波器である。ポート1〜nのそれぞれには、図20に示すように、フィルタ帯域が固定的に割り当てられている。
【0102】
ここで、光送信器Txm,Txm′が送信する信号のビットレートは、他の光送信器よりも低く、光送信器Txm,Txm′は、これらの光送信器Txm,Txm′からの信号を合成するカプラ104を介してAWG103のポートmに接続されている。
また、光送信器Tx1〜Txm−1,Txm+1〜Txnは、それぞれ、AWG103のポート1〜m−1,m+1〜nに接続されている。
【0103】
そして、光送信器Tx1,Tx2,…,Txm,Txm′,…,Txnにおける各搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122,122X,122Yで付与される位相回転の周期を制御することにより、AWG103の同一フィルタ帯域を、2以上の光送信器によって共用している。つまり、図19に示す光送信装置100Dでは、各搬送波周波数制御回路16の機能により、ポートmに入力される特定パス上の2つの光送信器Txm,Txm′の搬送波周波数が高精度かつ高速に調整される。これにより、例えば図20に示すように、AWG103のポートmに対応するフィルタ帯域が、2つの光送信器Txm,Txm′によって共用される。
【0104】
従って、第4例の光送信装置100Dによれば、AWG103を用いる場合に、ビットレートの低い2以上の光送信器Txm,Txm′をカプラ104によって組み合わせ、各搬送波周波数制御回路16の機能により各光送信器Tx1〜Txnの搬送波周波数が制御される。これにより、AWG103の一つのフィルタ帯域がビットレートの低い2以上の光送信器Txm,Txm′によって共用される。このため、AWG103の各フィルタ帯域が極めて効率よく利用される。
【0105】
なお、図19および図20に示す例では、AWG103における一つのフィルタ帯域を2つの光送信器Txm,Txm′によって共用する場合について説明した。しかし、本件は、これに限定されるものではなく、3以上の光送信器によって同一フィルタ帯域を共用するように、各搬送波周波数制御回路16の機能により、各光送信器Tx1〜Txnの搬送波周波数を制御するように構成してもよい。
【0106】
〔10〕光送信装置の第5例
図21および図22を参照しながら、光送信装置の第5例、および、その光送信装置に対応する光受信装置について説明する。図21は光送信装置の第5例の構成および光受信装置の構成を示すブロック図、図22は図21に示す光送信装置の送信スペクトルを示す図である。
【0107】
図21に示すように、第5例の光送信装置100Eは、複数(図21ではn)の光送信器Tx1〜Txnと、AWG103と、カプラ105,106とを有している。
この光送信装置100Eに対応する光受信装置200は、伝送路(光ファイバ)3を介して光送信装置100Eに接続され、複数(図21ではn)の光受信器Rx1〜Rxnと、光分波器201と、カプラ202,203とを有している。
【0108】
光送信器Tx1〜Txnとしては、図1〜図8に示す光送信器1,1A〜1Cのいずれかが用いられる。
AWG103は、n個のポート1〜nを有し、これらのポート1〜nにカプラ105,106を介して入力される光送信器Tx1〜Txnからの光信号を合波することにより波長多重を行なって伝送路3へ出力する、フィルタ帯域固定の光合波器である。ポート1〜nのそれぞれには、図22に示すように、フィルタ帯域が固定的に割り当てられている。
【0109】
また、光送信装置100Eの各光送信器Tx1〜Txnにおける変調方式マッピング回路121の変調方式は、直交周波数分割多重方式(OFDM)である(図22参照)。
そして、複数の光送信器Tx1〜Txnのうちの一の光送信器からの光信号がAWG103の二のフィルタ帯域にまたがる場合(例えば図22に示す例では光送信器Tx2およびTx5)、その光送信器Tx2およびTx5における各搬送波周波数制御回路16は、以下のような制御を行なう。
【0110】
つまり、各搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122,122X,122Yで付与される位相回転の周期を制御することにより、図22に示すごとく光送信器Tx2およびTx5からの光信号の特定サブキャリアが二のフィルタ帯域間のガードバンドに位置するように、光送信器Tx2およびTx5における光変調部15,15A,15Cから出力される光信号の搬送波周波数を制御する。このとき、光送信器Tx2およびTx5は、ガードバンドに配置された特定サブキャリアの使用を禁止する。
【0111】
一方、光受信装置200における光受信器Rx1〜Rxnとしては、例えば、図10および図11に示す光受信器2Aおよび2Bのいずれかが用いられる。
光分波器201は、伝送路3を通じて光送信装置100Eからの波長多重光信号を受信し、その波長多重光信号をn個の信号に分波し、それぞれポート1〜nから、カプラ202および203を介して、光受信器Rx1〜Rxnへ出力する。
【0112】
カプラ202は、送信側のカプラ106に対応してそなえられ、光分波器201のポート1からの信号を2つに分離し、一方の信号を光受信器Rx1へ出力する。カプラ203は、送信側のカプラ105に対応してそなえられ、カプラ202からの他方の信号と光分波器201のポート2からの信号とを合成して光受信器Rx2へ出力する。
【0113】
このように、第5例の光送信装置100Eによれば、複数の光送信器Tx1〜TxnはそれぞれAWG103のフィルタ帯域幅に関係なくOFDMで高密度多重を行ない、特定チャネルの特定サブキャリアのみがガードバンドの位置に配置されるように、各チャネル(各光送信器Tx1〜Txn)の搬送波周波数が高精度かつ高速に制御される。そして、ガードバンドの位置に配置された特定サブキャリアの使用が禁止される。これにより、ガードバンドに位置する特定サブキャリアを使用した無駄な送信処理を確実に抑止することができ、光ネットワークでのOFDMによる伝送効率をより向上させることができる。
【0114】
〔11〕その他
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変形、変更して実施することができる。
【0115】
〔12〕付記
以上の本実施形態を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
光源と、
送信信号に対しデジタル信号処理を施す信号処理部と、
前記信号処理部でデジタル処理を施された送信信号に従って、前記光源からの出力光を変調し光信号として伝送路へ出力する光変調部と、
前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御する搬送波周波数制御部と、を有し、
前記信号処理部は、
前記送信信号を変調方式に応じて電界情報にマッピングするマッピング回路と、
前記マッピング回路により前記送信信号をマッピングされた電界情報の電界位相に対し、一定周期の位相回転を付与する位相回転回路と、を有し、
前記搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御することにより、前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御することを特徴とする、光送信器。
【0116】
(付記2)
前記マッピング回路により前記送信信号をマッピングされた電界情報は、I(In-phase)成分およびQ(Quadrature-phase)成分を含み、
前記光変調部は、前記信号処理部でデジタル処理を施された送信信号のI成分およびQ成分に従って、前記光源からの出力光を変調し、
前記信号処理部は、
前記位相回転回路により前記位相回転を付与された電界情報のI成分に対し、該I成分に対応する送信系の信号品質劣化を補償するIチャネル前置歪み補償回路と、
前記位相回転回路により前記位相回転を付与された電界情報のQ成分に対し、該Q成分に対応する送信系の信号品質劣化を補償するQチャネル前置歪み補償回路と、を有することを特徴とする、付記1記載の光送信器。
【0117】
(付記3)
前記信号処理部は、
前記マッピング回路により前記送信信号をマッピングされた電界情報に対し、前記伝送路による信号品質劣化の逆特性の歪みを付加し、前記伝送路による信号品質劣化を補償する伝送路前置歪み補償回路を有することを特徴とする、付記1または付記2に記載の光送信器。
【0118】
(付記4)
前記光変調部は、直交する偏波成分毎に互いに独立した光変調を行なう偏波多重変調部であり、
前記信号処理部は、
前記送信信号を、前記直交する偏波成分にそれぞれ対応する2系統の信号に分離する分離部を有するとともに、
前記分離部により分離された2系統の信号のそれぞれについて、前記マッピング回路および前記位相回転回路を有することを特徴とする、付記1記載の光送信器。
【0119】
(付記5)
各マッピング回路により前記送信信号をマッピングされた電界情報は、I(In-phase)成分およびQ(Quadrature-phase)成分を含み、
前記光変調部は、前記信号処理部でデジタル処理を施された前記2系統の信号のI成分およびQ成分に従って、前記光源からの出力光を変調し、
前記信号処理部は、前記分離部により分離された2系統の信号のそれぞれについて、
前記位相回転回路により前記位相回転を付与された電界情報のI成分に対し、該I成分に対応する送信系の信号品質劣化を補償するIチャネル前置歪み補償回路と、
前記位相回転回路により前記位相回転を付与された電界情報のQ成分に対し、該Q成分に対応する送信系の信号品質劣化を補償するQチャネル前置歪み補償回路と、を有することを特徴とする、付記4記載の光送信器。
【0120】
(付記6)
前記信号処理部は、前記分離部により分離された2系統の信号のそれぞれについて、
前記マッピング回路により前記送信信号をマッピングされた電界情報に対し、前記伝送路による信号品質劣化を補償する伝送路前置歪み補償回路を有することを特徴とする、付記4または付記5に記載の光送信器。
【0121】
(付記7)
前記搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御して前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御することにより、パイロット信号を、周波数変調によって、前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数に重畳し、前記伝送路を通じて受信側へ送信することを特徴とする、付記1〜付記6のいずれか一項に記載の光送信器。
【0122】
(付記8)
前記搬送波周波数制御部は、前記パイロット信号として、前記光送信器と対向した受信器が配置された局舎から出力された逆方路の光信号の受信信号の品質検出結果を、前記周波数変調によって前記搬送波周波数に重畳することを特徴とする、付記7記載の光送信器。
【0123】
(付記9)
前記搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御して前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御することにより、受信信号の品質検出用ディザを、前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数に重畳し、前記伝送路を通じて受信側へ送信することを特徴とする、付記1〜付記6のいずれか一項に記載の光送信器。
【0124】
(付記10)
前記搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御して前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御する微調整と、前記光源からの出力光の周波数を制御する粗調整とを併用して、前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御することを特徴とする、付記1〜付記9のいずれか一項に記載の光送信器。
【0125】
(付記11)
付記1〜付記10のいずれか一項に記載の、複数の光送信器と、
前記複数の光送信器からの光信号を合波することにより波長多重を行なって伝送路へ出力する光合波器と、を有し、
前記複数の光送信器における各光源は、同一の周波数の出力光を発振し、
前記複数の光送信器における各搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御して前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数の微調整を行なうことを特徴とする、光送信装置。
【0126】
(付記12)
前記各光源は、一の光源によって共通化されていることを特徴とする、付記11記載の光送信装置。
【0127】
(付記13)
付記1〜付記10のいずれか一項に記載の、複数の光送信器と、
前記複数の光送信器からの光信号を合波することにより波長多重を行なって伝送路へ出力する、帯域可変の光合波器と、を有し、
前記複数の光送信器における各搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御することにより、送信信号のビットレートに応じた波長配置の調整を行なうことを特徴とする、光送信装置。
【0128】
(付記14)
前記複数の光送信器における各搬送波周波数制御部は、前記光源からの出力光の周波数を制御する粗調整を併用して、前記波長配置の調整を行なうことを特徴とする、付記13記載の光送信装置。
【0129】
(付記15)
前記複数の光送信器における各搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御することにより、前記波長配置の変更を行なうことを特徴とする、付記13または付記14に記載の光送信装置。
【0130】
(付記16)
前記複数の光送信器における各搬送波周波数制御部は、前記光源からの出力光の周波数を制御する粗調整を併用して、前記波長配置の変更を行なうことを特徴とする、付記15記載の光送信装置。
【0131】
(付記17)
付記1〜付記10のいずれか一項に記載の、複数の光送信器と、
前記複数の光送信器からの光信号を合波することにより波長多重を行なって伝送路へ出力する光合波器と、を有し、
前記複数の光送信器における各搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御して前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御することにより、前記複数の光送信器から出力される光信号の中心搬送波周波数の間隔をシンボルレートの定数倍に調整することを特徴とする、光送信装置。
【0132】
(付記18)
付記1〜付記10のいずれか一項に記載の、複数の光送信器と、
前記複数の光送信器からの光信号を合波することにより波長多重を行なって伝送路へ出力する、フィルタ帯域固定の光合波器と、を有し、
前記複数の光送信器における各搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御することにより、前記光合波器の同一フィルタ帯域を、前記複数の光送信器のうちの2以上の光送信器によって共用することを特徴とする、光送信装置。
【0133】
(付記19)
付記1〜付記10のいずれか一項に記載の、複数の光送信器と、
前記複数の光送信器からの光信号を合波することにより波長多重を行なって伝送路へ出力する、フィルタ帯域固定の光合波器と、を有し、
前記複数の光送信器における各マッピング回路の変調方式は、直交周波数分割多重方式(OFDM)であり、
前記複数の光送信器のうちの一の光送信器からの光信号が前記光合波器の二のフィルタ帯域にまたがる場合、当該一の光送信器における各搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御することにより、当該一の光送信器からの光信号の特定サブキャリアが前記二のフィルタ帯域間のガードバンドに位置するように、当該一の光送信器における前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御することを特徴とする、光送信装置。
【0134】
(付記20)
当該一の光送信器は、前記ガードバンドに配置された前記特定サブキャリアの使用を禁止することを特徴とする、付記19記載の光送信装置。
【符号の説明】
【0135】
1,1A,1B,1C 光送信器
11 レーザ光源(光源)
12 信号処理回路(信号処理部)
120 1:2DMUX(分離部)
121,121X,121Y 変調方式マッピング回路
122,122X,122Y 位相回転回路
122a 積分回路
122b 乗算器
123I,123XI,123YI Iチャネル前置歪み補償回路
123Q,123XQ,123YQ Qチャネル前置歪み補償回路
124 伝送路前置歪み補償回路
13,13I,13Q,13XI,13XQ,13YI,13YQ DAC(デジタル/アナログ変換回路)
14,14I,14Q,14XI,14XQ,14YI,14YQ ドライバ(変調器駆動回路)
15 IQ変調器(光変調部)
15C 偏波多重IQ変調器(光変調部)
151I,151Q,151XI,151XQ,151YI,151YQ 位相変調器
152,152X,152Y 位相シフト部
153 偏波合波器(PBC)
16 搬送波周波数制御回路(搬送波周波数制御部)
2A,2B 光受信器
21 OE(光/電気変換回路)
22 識別・誤り訂正回路
23 局部発振光源
24 90度ハイブリッド回路
25 OE(光/電気変換回路)
26 ADC(アナログ/デジタル変換回路)
27 信号処理回路
271 波形歪み補償回路
272 搬送波位相同期回路
273 識別回路
274 信号品質モニタ
3 伝送路(光ファイバ)
4 中継器
100A,100B,100C,100D,100E 光送信装置
101 光合波器
102 帯域可変光合波器
103 AWG(アレイ導波路回折格子,フィルタ帯域固定の合波器)
104,105,106 カプラ
200 受信装置
201 光分波器
202,203 カプラ
Tx,Tx1,Tx2,…,Txm,Txm′,…,Txn 光送信器
Rx,Rx1〜Rxn 光受信器
【技術分野】
【0001】
本件は、光送信器に関するとともに、複数の光送信器を有し波長多重を行なう光送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
データトラフィックの増大に伴い、基幹系光通信ネットワークの大容量化が必要不可欠であり、一波長あたり40Gbps(ギガビット毎秒),100Gbpsなどの高速通信が実用化されつつある。光通信ネットワークにおいて高速通信を実現するための技術として、近年、デジタル信号処理技術を用いて光送信あるいは光受信を行なうことが注目されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】D.-S. Ly-Gagnon, et al. “Coherent Detection of Optical Quadrature Phase-Shift Keying Signals With Carrier Phase Estimation”, IEEE JLT, vol.24, no.1, pp.12-21, January 2006
【非特許文献2】D. McGhan, “Electronic Dispersion Compensation”, OFC2006, OWK1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、波長多重の光伝送システムに用いられる送信光源から、一定の発振周波数(波長)の光を安定的に出力させるためには、エタロンフィルタ等を有する波長ロッカが用いられているが、その制御精度は、経年劣化を考慮すると数GHz程度である。この数GHz程度の周波数変動は、光伝送システムにおける伝送性能の低下を招くほか、一本の光ファイバにおいて多重化される波長の間隔の高密度化を阻害することになる。つまり、送信光源の周波数安定度が、光伝送システムの伝送距離や、一本の光ファイバの伝送容量の、制限要因となっている。
【0005】
また、送信光源の発振周波数(波長)の制御は、一般に温度制御であり、その制御に時間がかかるため、特に光伝送システム運用中の柔軟な波長配置の変更が困難である。つまり、その制御には、場合によって数分程度の時間がかかるとともに、制御される発振周波数の安定度も低く、運用中に、複雑な制御を高精度に行なうことは困難である。
【0006】
一つの側面で、本件は、光信号の搬送波周波数を高精度かつ高速に制御可能にして、送信光源の発振周波数の安定性を確保し、伝送性能の向上をはかるほか、波長多重間隔の高密度化により伝送路の帯域利用率の向上をはかって大容量の伝送を実現することを目的とする。
なお、前記目的に限らず、後述する発明を実施するための最良の形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的の一つとして位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本件の光送信器は、光源と、送信信号に対しデジタル信号処理を施す信号処理部と、前記信号処理部でデジタル処理を施された送信信号に従って、前記光源からの出力光を変調し光信号として伝送路へ出力する光変調部と、前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御する搬送波周波数制御部と、を有している。そして、前記信号処理部は、前記送信信号を変調方式に応じて電界情報にマッピングするマッピング回路と、前記マッピング回路により前記送信信号をマッピングされた電界情報の電界位相に対し一定周期の位相回転を付与する位相回転回路と、を有している。また、前記搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御することにより、前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御する。
【0008】
また、本件の光送信装置は、上述した光送信器を複数有するとともに、前記複数の光送信器からの光信号を合波することにより波長多重を行なって伝送路へ出力する光合波器と、を有している。そして、前記複数の光送信器における各光源は、同一の周波数の出力光を発振する。また、前記複数の光送信器における各搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御して前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御する微調整を行なう。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術では、光変調部から出力される光信号の搬送波周波数が、高精度かつ高速に制御される。これにより、送信光源の発振周波数の安定性が確保され、伝送性能が向上するほか、波長多重間隔の高密度化により伝送路の帯域利用率の向上をはかって大容量の伝送が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】光送信器の基本構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態の光送信器の構成を示すブロック図である。
【図3】第1実施形態の光送信器の送信スペクトルを示す図である。
【図4】位相回転回路の構成を示すブロック図である。
【図5】IQ変調器の構成を示すブロック図である。
【図6】第2実施形態の光送信器の構成を示すブロック図である。
【図7】第3実施形態の光送信器の構成を示すブロック図である。
【図8】偏波多重IQ変調器の構成を示すブロック図である。
【図9】光通信システムの構成を示すブロック図である。
【図10】光受信器の一例の構成を示すブロック図である。
【図11】光受信器の他例の構成を示すブロック図である。
【図12】光送信装置の第1例の構成を示すブロック図である。
【図13】図12に示す光送信装置の送信スペクトルを示す図である。
【図14】光送信装置の第2例の構成を示すブロック図である。
【図15】図14に示す光送信装置の送信スペクトルを示す図である。
【図16】(A)および(B)は図14に示す光送信装置による波長配置変更(デフラグ)を説明するための図である。
【図17】光送信装置の第3例の構成を示すブロック図である。
【図18】図17に示す光送信装置の送信スペクトルを示す図である。
【図19】光送信装置の第4例の構成を示すブロック図である。
【図20】図19に示す光送信装置の送信スペクトルを示す図である。
【図21】光送信装置の第5例の構成および光受信装置の構成を示すブロック図である。
【図22】図21に示す光送信装置の送信スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施の形態を説明する。
〔1〕光送信器の基本構成
図1は本件の光送信器の基本構成を示すブロック図であり、この図1に示す基本構成を有する光送信器1は、レーザ光源11,信号処理回路12,DAC13,ドライバ14,光変調器15および搬送波周波数制御回路16を有している。
【0012】
レーザ光源(光源)11は、所定の周波数fCの出力光を発振する。
信号処理回路(信号処理部)12は、外部から入力されるバイナリデータである送信信号に対し、デジタル信号処理を施すもので、例えばDSP(Digital Signal Processor)である。信号処理回路12は、変調方式マッピング回路121および位相回転回路122としての機能を有している。
【0013】
変調方式マッピング回路121は、外部から入力されるバイナリデータである送信信号を、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying),QAM(Quadrature Ampltude Modulation),OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)等の変調方式に応じて、電界情報にコンスタレーションマッピングする。但し、RZ(Return to Zero)やNRZ(Non Return to Zero)等の変調方式の場合は、バイナリデータである送信信号を電界情報に変換すれば足りる。
位相回転回路122は、変調方式マッピング回路121により送信信号をマッピングされた電界情報の電界位相に対し、一定周期の位相回転を付与する。具体的に、位相回転回路122は、搬送波周波数制御回路16から周波数制御量Δfaを受けると、位相回転θ=2πΔfatを電界位相に対し付与する。
【0014】
DAC(デジタル/アナログ変換回路)13は、信号処理回路12からのデジタル信号をアナログ信号に変換する。
ドライバ(変調器駆動回路)14は、DAC13からの信号を増幅し、その信号によって光変調器15を駆動する。
光変調器(光変調部)15は、信号処理部12でデジタル処理を施された後にDAC13およびドライバ14によって処理された送信信号に従って、レーザ光源11からの出力光を変調し光信号として伝送路3へ出力する。
【0015】
搬送波周波数制御回路16は、光変調器15から出力される光信号の搬送波周波数を制御する。搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122に対し周波数制御量Δfaを出力して位相回転回路122で付与される位相回転θ=2πΔfatの周期を制御することにより、光変調器15から出力される光信号の搬送波周波数を制御する。搬送波周波数制御回路16は、このような周波数制御を行なうことにより、本光送信器1の電気帯域内において、光変調器15から出力される光信号の搬送波周波数の微調整を行なう。本光送信器1の電気帯域は、DAC13,ドライバ14および光変調器15の帯域特性によって決まる。
【0016】
上述のごとき基本構成を有する光送信器1では、搬送波周波数制御回路16が、位相回転回路122に対し周波数制御量Δfaを出力し、位相回転回路122で付与される位相回転θ=2πΔfatの周期を制御する。これにより、光変調器15から出力される光信号の搬送波周波数が、本光送信器1の電気帯域内において、レーザ光源11からの出力光の周波数fCに、周波数制御量Δfaを加算した値に微調整される。
【0017】
従って、本光送信器1によれば、レーザ光源11を直接制御する従来手法に比べ、光変調部15から出力される光信号の搬送波周波数が、周波数制御量Δfaによって高精度かつ高速に制御される。これにより、レーザ光源11の発振周波数の安定性が確保され、本光送信器1を用いた光通信システムにおいて、伝送性能が向上するほか、波長多重間隔が高密度化されて伝送路(光ファイバ)3の帯域利用率が向上され、大容量の伝送が実現される。
【0018】
〔2〕第1実施形態の光送信器
図2は第1実施形態の光送信器1Aの構成を示すブロック図であり、この図2に示す光送信器1Aは、レーザ光源11,信号処理回路12,DAC13I,13Q,ドライバ14I,14Q,IQ光変調器15Aおよび搬送波周波数制御回路16を有している。
【0019】
レーザ光源11は、所定の周波数fCの出力光を発振する。
信号処理回路12は、外部から入力されるバイナリデータである送信信号に対し、デジタル信号処理を施すもので、変調方式マッピング回路121,位相回転回路122,Iチャネル前置歪み補償回路123IおよびQチャネル前置歪み補償回路123Qとしての機能を有している。
【0020】
変調方式マッピング回路121は、図1に示す光送信器1と同様、外部から入力されるバイナリデータである送信信号を、QPSK,QAM,OFDM等の変調方式に応じて、電界情報にコンスタレーションマッピングする。この変調方式マッピング回路121により送信信号をマッピングされた電界情報E1は、I(In-phase)成分およびQ(Quadrature-phase)成分を含み、E1=I+j・Q=A(t)・exp(jθ(t))として与えられる。ここで、jは虚数単位、A(t)は電界強度(振幅)、θ(t)は電界位相、tは時間である。
【0021】
位相回転回路122は、変調方式マッピング回路121により送信信号をマッピングされた電界情報E1の電界位相に対し、一定周期の位相回転を付与する。具体的に、図1に示す光送信器1と同様、位相回転回路122は、搬送波周波数制御回路16から周波数制御量Δfaを受けると、位相回転θ=2πΔfatを電界情報E1の電界位相に対し付与する。
【0022】
位相回転回路122は、図4に示すように、積分回路122aおよび乗算器122bを有している。なお、図4は位相回転回路122の構成を示すブロック図である。積分回路122aは、搬送波周波数制御回路16から周波数制御量Δfaを受けると、位相回転量Δω(=2πΔfa)を離散時間単位T毎に積分することにより、離散時間nTでΔωnTだけ位相を回転させる複素数電界情報exp(−j(ΔωnT))を算出する。ここで、nは整数である。乗算器122bは、積分回路122aによって算出された複素数電界情報exp(−j(ΔωnT))を、変調方式マッピング回路121からの電界情報E(t)(=E1)に乗算することで、電界情報E(t)の電界位相をΔωnT(=2πΔfat)だけ回転させた電界情報E′(t)=E(t)*exp(jΔωnT)を得て出力する。
【0023】
Iチャネル前置歪み補償回路123Iは、位相回転回路122により位相回転を付与された電界情報のI成分に対し、このI成分に対応する送信系の不完全による信号品質劣化を補償する。同様に、Qチャネル前置歪み補償回路123Qは、位相回転回路122により位相回転を付与された電界情報のQ成分に対し、このQ成分に対応する送信系の不完全による信号品質劣化を補償する。ここで、I成分に対応する送信系は、例えば後述するDAC13I,ドライバ14Iおよび位相変調器151Iであり、Q成分に対応する送信系は、例えば後述するDAC13Q,ドライバ14Qおよび位相変調器151Qである。そして、Iチャネル前置歪み補償回路123IおよびQチャネル前置歪み補償回路123Qは、例えばI/Q信号間の損失バラツキ,スキュー,帯域バラツキ,リニアリティなどを補償する。その補償は、後述するように、位相回転回路122からの電界情報に対し、本光送信器1A(送信系)の波形歪みの逆関数を乗算する(畳み込む)ことによって行なわれる。
【0024】
DAC13I,13Qは、それぞれ、Iチャネル前置歪み補償回路123IおよびQチャネル前置歪み補償回路123Qからのデジタル信号(I成分およびQ成分)をアナログ信号に変換する。
ドライバ14I,14Qは、それぞれ、DAC13I,13Qからの信号を増幅し、各信号によってIQ変調器15Aにおける位相変調器151I,151Q(図5参照)を駆動する。
【0025】
IQ変調器(光変調部)15Aは、信号処理部12でデジタル処理を施された後にDAC13I,13Qおよびドライバ14I,14Qによって処理された送信信号(I成分およびQ成分)に従って、レーザ光源11からの出力光を変調し光信号として伝送路3へ出力する。IQ変調器15Aは、図5に示すように、I成分用の位相変調器151I,Q成分用の位相変調器151Qおよび位相シフト部152を有している。なお、図5はIQ変調器15Aの構成を示すブロック図である。位相シフト部152は、位相変調器151Iおよび位相変調器151Qを介して伝搬する一組の光信号に対し所定の位相差(π/2)を与えるもので、位相変調器151Q側に設けられている。位相変調器151Iおよび位相変調器151Qは、それぞれ、所定の位相差を付与された一組の光信号に対し、ドライバ14I,14Qからの送信信号(I成分およびQ成分)に基づく位相変調を施して伝送路3へ出力する。
【0026】
搬送波周波数制御回路16は、図1に示す光送信器1と同様、IQ変調器15Aから出力される光信号の搬送波周波数を制御する。搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122に対し周波数制御量Δfaを出力して位相回転回路122で付与される位相回転θ=2πΔfatの周期を制御することにより、IQ変調器15Aから出力される光信号の搬送波周波数を制御する。搬送波周波数制御回路16は、このような周波数制御を行なうことにより、例えば図3に示すように、本光送信器1Aの電気帯域内において、IQ変調器15Aから出力される光信号の搬送波周波数の微調整を行なう。本光送信器1Aの電気帯域は、DAC13I,13Q;ドライバ14I,14QおよびIQ変調器15Aの帯域特性によって決まる。なお、図3は第1実施形態の光送信器1Aの送信スペクトルを示す図である。
【0027】
このとき、搬送波周波数制御回路16は、本光送信器1Aの通信対象の光受信器2A,2B(図9〜図11参照)からのエラー信号に応じて、位相回転回路122の回転周波数を調整することにより、受信側におけるエラーを解消するように、本光送信器1Aの電気帯域内において搬送波周波数の微調整を行なう。ここで、エラー信号は、例えば図10,図11を参照しながら後述するごとく、光受信器2Aまたは2Bにおいて受信された受信信号の品質検出結果に係り、受信側で受信信号の品質劣化が生じている旨を示す信号である。エラー信号は、光受信器2A,2B側から本光送信器1A側へ、逆方路のチャネルを用いて送信されてもよいし、光通信システムの制御チャネルを用いて送信されてもよいし、本光送信器1Aの新たな機能である周波数変調(後述)を用いて送信されてもよい。上記以外の方法として、送信器出力,中継装置,受信器で光スペクトラムもしくは光周波数を観測し、それらの情報を基に搬送波周波数の微調整を行なう方法もある。
【0028】
また、搬送波周波数制御回路16は、周波数調整値Δfaにパイロット信号を重畳してもよい。即ち、搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122で付与される位相回転θ=2πΔfatの周期を制御してIQ変調器15Aから出力される光信号の搬送波周波数を制御することにより、パイロット信号を、周波数変調によって、IQ変調器15Aから出力される光信号の搬送波周波数に重畳し、伝送路3を通じて受信側へ送信する機能をそなえてもよい。このとき、搬送波周波数制御回路16は、パイロット信号として、逆方路のチャンネルの受信信号の品質検出結果、具体的には、上記エラー信号を、周波数変調によって搬送波周波数に重畳してもよい。このような周波数変調を行なう場合、図11を参照しながら後述するごとく、光受信器2B側において、周波数変調されたパイロット信号を搬送波から復調する機能がそなえられることになる。
【0029】
さらに、搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122で付与される位相回転θ=2πΔfatの周期を制御してIQ変調器15Aから出力される光信号の搬送波周波数を制御することにより、受信信号の品質検出用ディザを、IQ変調器15Aから出力される光信号の搬送波周波数に重畳し、伝送路3を通じて受信側(光受信器2A,2B)へ送信してもよい。
【0030】
また、搬送波周波数制御回路16は、送信器電気帯域以上に搬送波周波数を調整する場合には、位相回転回路122を用いた制御とともに、レーザ光源11の発振周波数の制御を併用してもよい。つまり、搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122で付与される位相回転の周期を制御してIQ変調器15Aから出力される光信号の搬送波周波数を制御する微調整と、レーザ光源11からの出力光の周波数を直接制御する粗調整とを併用し、IQ変調器15Aから出力される光信号の搬送波周波数を制御してもよい。このとき、波長多重光システムにて一般的に使用されているレーザ光源11の発振周波数は、発振周波数グリッド変更や温度制御による発振周波数調整によって制御可能であり、搬送波周波数制御回路16は、発振周波数グリッド変更や温度制御による発振周波数調整を用いて上記粗調整を行なう。
【0031】
上述のごとき第1実施形態の光送信器1Aでは、図1に示す光送信器1と同様、搬送波周波数制御回路16が、位相回転回路122に対し周波数制御量Δfaを出力し、位相回転回路122で付与される位相回転θ=2πΔfatの周期を制御する。これにより、IQ変調器15Aから出力される光信号の搬送波周波数が、本光送信器1Aの電気帯域内において、レーザ光源11からの出力光の周波数fCに、周波数制御量Δfaを加算した値に微調整される。
【0032】
従って、本光送信器1Aによれば、レーザ光源11を直接制御する従来手法に比べ、IQ変調部15Aから出力される光信号の搬送波周波数が、周波数制御量Δfaによって高精度かつ高速に制御される。これにより、レーザ光源11の発振周波数の安定性が確保され、本光送信器1Aを用いた光通信システムにおいて、伝送性能が向上するほか、波長多重の間隔が高密度化されて伝送路(光ファイバ)3の帯域利用率が向上され、大容量の伝送が実現される。
【0033】
また、本光送信器1Aによれば、レーザ光源11を直接制御する従来手法と異なり、周波数変調によるパイロット信号の搬送周波数への重畳や、受信信号の品質検出用ディザの重畳といった、複雑な周波数制御が可能である。これにより、制御チャネル等を用いることなくパイロット信号(例えばエラー信号)を送信できるほか、図10や図11を参照しながら後述するように、ディザによって受信側でのエラー検出感度を高めることができるといった、様々な作用効果が得られる。
【0034】
さらに、本光送信器1Aにおいては、信号処理回路12がIチャネル前置歪み補償回路123IおよびQチャネル前置歪み補償回路123Qとしての機能をそなえているので、DAC13I,13Q;ドライバ14I,14Qおよび位相変調器151I,151Qの不完全による信号品質劣化が前もって補償される。これにより、本光送信器1Aは、高品質の光送信を実現することができる。
【0035】
また、本光送信器1Aによれば、搬送波周波数制御回路16が、位相回転回路122による搬送波周波数の微調整と、レーザ光源11の発振周波数を直接制御する粗調整とを併用することにより、送信器電気帯域を超える搬送波周波数の調整を、高精度に行なうことができる。
【0036】
〔3〕第2実施形態の光送信器
図6は第2実施形態の光送信器1Bの構成を示すブロック図であり、この図6に示す光送信器1Bは、図2に示す第1実施形態の光送信器1Aとほぼ同様に構成されているが、信号処理回路12が伝送路前置歪み補償回路124としての機能を有する点でのみ、第1実施形態の光送信器1Aと異なっている。なお、図6において、レーザ光源11,ドライバ14I,14QやIQ変調器15Aの図示は省略されている。また、図6中において、既述の符号と同一の符号は、同一もしくはほぼ同一の部分を示しているので、その説明は省略する。
【0037】
伝送路前置歪み補償回路124は、変調方式マッピング回路121と位相回転回路122との間に配置され、変調方式マッピング回路121により送信信号をマッピングされた電界情報E1に対し、伝送路(光ファイバ)3による信号品質劣化を補償する。その補償は、後述するように、変調方式マッピング回路121からの電界情報E1に対し、伝送路3での光伝送による波形歪みの逆関数を乗算する(畳み込む)ことによって行なわれる。
【0038】
従って、本光送信器1Bによれば、上述した第1実施形態の光送信器1Aと同様の作用効果が得られるほか、信号処理回路12が伝送路前置歪み補償回路124としての機能をそなえているので、伝送路3での光伝送による波形歪みが前もって補償される。これにより、本光送信器1Bは、より高品質の光送信を実現することができる。
【0039】
以下に、図6に示す光送信器1Bにおける信号処理、つまりは位相回転回路122による搬送波周波数の制御原理について、下記(1)〜(5)式を参照しながら具体的に説明する。
送信信号に対し、変調方式マッピング回路121によるマッピングを行なった後の電界情報E1は、上述したように、下記(1)式で与えられる。
E1=A(t)・exp(jθ(t)) (1)
ここで、jは虚数単位、A(t)は電界強度(振幅)、θ(t)は電界位相、tは時間である。
【0040】
電界情報E1に対し、伝送路前置歪み補償回路124による補償を行なった後の電界情報E2は、下記(2)式で与えられる。
E2=h1(t)*E1 (2)
ここで、*は畳み込み、h1(t)は伝送路3の波形歪みの逆関数である。
電界情報E2に対し、位相回転回路122により周波数制御量Δfaに基づく位相回転を行なった後の電界情報E3は、下記(3)式で与えられる。
E3=exp(j2πΔfat)・E2 (3)
【0041】
電界情報E3に対し、Iチャネル前置歪み補償回路123IおよびQチャネル前置歪み補償回路123Qによる補償を行なった後の電界情報E4は、下記(4)式で与えられる。
E4=h2(t)*E3 (4)
ここで、h2(t)は本光送信器1B(送信系)の波形歪みの逆関数である。
【0042】
電界情報E4に対し、DAC13I,13Q;ドライバ14I,14Qおよび位相変調器151I,151Qによる処理を行なった後の信号の強度Psigは、下記(5)式で与えられる。
Psig=P・exp(j2π(fc)t)・h2(t)’*E4
=P・exp(j2π(fc)t)・h2(t)’*h2(t)*E3
=P・exp(j2π(fc)t)・E3
=P・exp(j2π(fc+Δfa)t)・E2 (5)
ここで、fcはレーザ光源11によって発振される出力光の周波数、Pは光電界強度、h2(t)’は本光送信器1B(送信系)の波形歪みの関数であり、h2(t)’*h2(t)=1である。
【0043】
〔4〕第3実施形態の光送信器
図7は第3実施形態の光送信器1Cの構成を示すブロック図であり、この図7に示す光送信器1Cは、偏波多重方式を採用し、レーザ光源11,信号処理回路12,DAC13XI,13XQ,13YI,13YQ,ドライバ14XI,14XQ,14YI,14YQ,偏波多重IQ変調器15Cおよび搬送波周波数制御回路16を有している。
【0044】
レーザ光源11は、所定の周波数fCの出力光を発振する。
信号処理回路12は、外部から入力されるバイナリデータである送信信号に対し、デジタル信号処理を施すもので、1:2DMUX120,変調方式マッピング回路121X,121Y,位相回転回路122X,122Y,Iチャネル前置歪み補償回路123XI,123YI,Qチャネル前置歪み補償回路123XQ,123YQとしての機能を有している。
【0045】
1:2DMUX(demultiplexer)120は、外部から入力されるバイナリデータである送信信号を、直交する偏波成分X,Yにそれぞれ対応する2系統の信号に分離する分離部である。
変調方式マッピング回路121X,121Yは、それぞれ、1:2DMUX120によって分離された偏波成分X,Yに対応してそなえられている。
【0046】
変調方式マッピング回路121Xは、偏波成分Xの信号を、QPSK,QAM,OFDM等の変調方式に応じて、電界情報にコンスタレーションマッピングする。この変調方式マッピング回路121Xにより送信信号をマッピングされた電界情報Ex1は、I成分およびQ成分を含み、Ex1=xI+j・xQとして与えられる。同様に、変調方式マッピング回路121Yは、偏波成分Yの信号を、QPSK,QAM,OFDM等の変調方式に応じて、電界情報にコンスタレーションマッピングする。この変調方式マッピング回路121Yにより送信信号をマッピングされた電界情報Ey1は、I成分およびQ成分を含み、Ey1=yI+j・yQとして与えられる。
【0047】
位相回転回路122X,122Yは、それぞれ、変調方式マッピング回路121X,121Yの後段において偏波成分X,Yに対応してそなえられている。
位相回転回路122Xは、変調方式マッピング回路121Xにより送信信号をマッピングされた電界情報Ex1の電界位相に対し、一定周期の位相回転を付与する。具体的に、図1や図2に示す光送信器1,1Aと同様、位相回転回路122Xは、搬送波周波数制御回路16から周波数制御量Δfaを受けると、位相回転θ=2πΔfatを電界情報Ex1の電界位相に対し付与する。同様に、位相回転回路122Yは、変調方式マッピング回路121Yにより送信信号をマッピングされた電界情報Ey1の電界位相に対し、一定周期の位相回転を付与する。具体的に、位相回転回路122Yは、搬送波周波数制御回路16から周波数制御量Δfaを受けると、位相回転θ=2πΔfatを電界情報Ey1の電界位相に対し付与する。なお、各位相回転回路122X,122Yは、図4に示す位相回転回路122と同様に構成されている。
【0048】
Iチャネル前置歪み補償回路123XIおよびQチャネル前置歪み補償回路123XQは、位相回転回路122Xの後段において偏波成分Xに対応してそなえられている。
Iチャネル前置歪み補償回路123XIは、位相回転回路122Xにより位相回転を付与された電界情報のI成分に対し、偏波成分XのI成分に対応する送信系の不完全による信号品質劣化を補償する。同様に、Qチャネル前置歪み補償回路123XQは、位相回転回路122Xにより位相回転を付与された電界情報のQ成分に対し、偏波成分XのQ成分に対応する送信系の不完全による信号品質劣化を補償する。ここで、偏波成分XのI成分に対応する送信系は、例えば後述するDAC13XI,ドライバ14XIおよび位相変調器151XIであり、偏波成分XのQ成分に対応する送信系は、例えば後述するDAC13XQ,ドライバ14XQおよび位相変調器151XQである。その補償は、後述するように、位相回転回路122Xからの電界情報に対し、本光送信器1C(送信系)の波形歪みの逆関数を乗算する(畳み込む)ことによって行なわれる。
【0049】
Iチャネル前置歪み補償回路123YIおよびQチャネル前置歪み補償回路123YQは、位相回転回路122Yの後段において偏波成分Yに対応してそなえられている。
Iチャネル前置歪み補償回路123YIは、位相回転回路122Yにより位相回転を付与された電界情報のI成分に対し、偏波成分YのI成分に対応する送信系の不完全による信号品質劣化を補償する。同様に、Qチャネル前置歪み補償回路123YQは、位相回転回路122Yにより位相回転を付与された電界情報のQ成分に対し、偏波成分YのQ成分に対応する送信系の不完全による信号品質劣化を補償する。ここで、偏波成分YのI成分に対応する送信系は、例えば後述するDAC13YI,ドライバ14YIおよび位相変調器151YIであり、偏波成分YのQ成分に対応する送信系は、例えば後述するDAC13YQ,ドライバ14YQおよび位相変調器151YQである。その補償は、後述するように、位相回転回路122Yからの電界情報に対し、本光送信器1C(送信系)の波形歪みの逆関数を乗算する(畳み込む)ことによって行なわれる。
【0050】
DAC13XI,13XQは、偏波成分Xに対応してそなえられ、それぞれ、Iチャネル前置歪み補償回路123XIおよびQチャネル前置歪み補償回路123XQからのデジタル信号(I成分およびQ成分)をアナログ信号に変換する。同様に、DAC13YI,13YQは、偏波成分Yに対応してそなえられ、それぞれ、Iチャネル前置歪み補償回路123YIおよびQチャネル前置歪み補償回路123YQからのデジタル信号(I成分およびQ成分)をアナログ信号に変換する。
【0051】
ドライバ14XI,14XQは、偏波成分Xに対応してそなえられ、それぞれ、DAC13XI,13XQからの信号を増幅し、各信号によって偏波多重IQ変調器15Cにおける位相変調器151XI,151XQ(図8参照)を駆動する。同様に、ドライバ14YI,14YQは、偏波成分Yに対応してそなえられ、それぞれ、DAC13YI,13YQからの信号を増幅し、各信号によって偏波多重IQ変調器15Cにおける位相変調器151YI,151YQ(図8参照)を駆動する。
【0052】
偏波多重IQ変調器(光変調部)15Cは、直交する偏波成分X,Y毎に互いに独立した光変調を行なう偏波多重変調部である。この偏波多重IQ変調器15Cは、信号処理部12でデジタル処理を施された2系統(偏波成分X,Y)の信号のI成分およびQ成分に従って、レーザ光源11からの出力光を変調し光信号として伝送路3へ出力する。
【0053】
偏波多重IQ変調器15Cは、図8に示すように、偏波成分Xに対応する、I成分用の位相変調器151XI,Q成分用の位相変調器151XQおよび位相シフト部152Xと、偏波成分Yに対応する、I成分用の位相変調器151YI,Q成分用の位相変調器151YQおよび位相シフト部152Yと、偏波合波器153とを有している。なお、図8は偏波多重IQ変調器15Cの構成を示すブロック図である。
【0054】
位相シフト部152Xは、位相変調器151XIおよび位相変調器151XQを介して伝搬する一組の光信号に対し所定の位相差(例えばπ/2)を与えるもので、位相変調器151XQ側に設けられている。位相変調器151XIおよび位相変調器151XQは、それぞれ、所定の位相差を付与された一組の光信号に対し、ドライバ14XI,14XQからの送信信号(I成分およびQ成分)に基づく位相変調を施す。
【0055】
位相シフト部152Yは、位相変調器151YIおよび位相変調器151YQを介して伝搬する一組の光信号に対し所定の位相差(π/2)を与えるもので、位相変調器151YQ側に設けられている。位相変調器151YIおよび位相変調器151YQは、それぞれ、所定の位相差を付与された一組の光信号に対し、ドライバ14YI,14YQからの送信信号(I成分およびQ成分)に基づく位相変調を施す。
【0056】
偏波合波器(PBC;Polarization Beam Combiner)153は、位相変調器151XIおよび位相変調器151XQからの偏波成分Xについての変調信号と、位相変調器151YIおよび位相変調器151YQからの偏波成分Yについての変調信号とを合波して伝送路3へ出力する。
【0057】
搬送波周波数制御回路16は、上述した光送信器1,1A,1Bと同様、偏波多重IQ変調器15Cから出力される光信号(X偏波,Y偏波)の搬送波周波数を制御する。搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122X,122Yに対し周波数制御量Δfaを出力して位相回転回路122X,122Yで付与される位相回転θ=2πΔfatの周期を制御することにより、偏波多重IQ変調器15Cから出力される光信号(X偏波,Y偏波)の搬送波周波数を制御する。搬送波周波数制御回路16は、このような周波数制御を行なうことにより、本光送信器1Cの電気帯域内において、IQ変調器15Aから出力される光信号(X偏波,Y偏波)の搬送波周波数の微調整を行なう。本光送信器1Cの電気帯域は、DAC13XI,13XQ,13YI,13YQ;ドライバ14XI,14XQ,14YI,14YQおよび偏波多重IQ変調器15Cの帯域特性によって決まる。
【0058】
このとき、搬送波周波数制御回路16は、第1実施形態と同様、本光送信器1Cの通信対象の光受信器2A,2B(図9〜図11参照)からのエラー信号に応じて、位相回転回路122X,122Yの回転周波数を調整することにより、受信側におけるエラーを解消するように、本光送信器1Aの電気帯域内において搬送波周波数の微調整を行なう。
【0059】
また、搬送波周波数制御回路16は、第1実施形態と同様、パイロット信号、例えば受信信号の品質検出結果(上記エラー信号)を、周波数変調によって、IQ変調器15Aから出力される光信号(X偏波,Y偏波)の搬送波周波数に重畳してもよい。なお、図7に示す光送信器1Cでは、搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122X,122Yに対し、同じ周波数制御量Δfaを出力しているが、位相回転回路122X,122Yに対し、異なる周波数制御量Δfa,Δfbを出力してもよい。
【0060】
さらに、搬送波周波数制御回路16は、第1実施形態と同様、位相回転回路122X,122Yで付与される位相回転θ=2πΔfatの周期を制御して偏波多重IQ変調器15Cから出力される光信号(X偏波,Y偏波)の搬送波周波数を制御することにより、受信信号の品質検出用ディザを、偏波多重IQ変調器15Cから出力される光信号(X偏波,Y偏波)の搬送波周波数に重畳し、伝送路3を通じて受信側(光受信器2A,2B)へ送信してもよい。
【0061】
また、搬送波周波数制御回路16は、第1実施形態と同様、送信器電気帯域以上に搬送波周波数を調整する場合には、位相回転回路122X,122Yを用いた制御とともに、レーザ光源11の発振周波数の制御を併用してもよい。つまり、搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122X,122Yで付与される位相回転の周期を制御して偏波多重IQ変調器15Cから出力される光信号(X偏波,Y偏波)の搬送波周波数を制御する微調整と、レーザ光源11からの出力光の周波数を直接制御する粗調整とを併用し、偏波多重IQ変調器15Cから出力される光信号の搬送波周波数を制御してもよい。
【0062】
上述のごとき第3実施形態の光送信器1Cでは、図1に示す光送信器1と同様、搬送波周波数制御回路16が、位相回転回路122X,122Yに対し周波数制御量Δfaを出力し、位相回転回路122X,122Yで付与される位相回転θ=2πΔfatの周期を制御する。これにより、IQ変調器15Aから出力される光信号(X偏波,Y偏波)の搬送波周波数が、本光送信器1Cの電気帯域内において、レーザ光源11からの出力光の周波数fCに、周波数制御量Δfaを加算した値に微調整される。
【0063】
従って、本光送信器1Cによれば、第1実施形態の光送信器1Aと同様、レーザ光源11を直接制御する従来手法に比べ、偏波多重IQ変調部15Cから出力される光信号の搬送波周波数が、周波数制御量Δfaによって高精度かつ高速に制御される。これにより、レーザ光源11の発振周波数の安定性が確保され、本光送信器1Cを用いた光通信システムにおいて、伝送性能が向上するほか、波長多重の間隔が高密度化されて伝送路(光ファイバ)3の帯域利用率が向上され、大容量の伝送が実現される。特に、本光送信器1Cによれば、偏波多重方式を採用することにより、光通信システムにおいてボーレートあたりのビットレートを倍増することができる。
【0064】
また、本光送信器1Cによっても、レーザ光源11を直接制御する従来手法と異なり、周波数変調によるパイロット信号の搬送周波数への重畳や、受信信号の品質検出用ディザの重畳といった、複雑な周波数制御が可能である。これにより、制御チャネル等を用いることなくパイロット信号(例えばエラー信号)を送信できるほか、図10や図11を参照しながら後述するように、ディザによって受信側でのエラー検出感度を高めることができるといった、様々な作用効果が得られる。
【0065】
さらに、本光送信器1Cでは、搬送波周波数制御回路16が、前述したように位相回転回路122X,122Yに対し異なる周波数制御量Δfa,Δfbを出力してもよい。これにより、偏波成分X,Yのそれぞれに対し、周波数変調によって、異なるパイロット信号を重畳することが可能になり、パイロット信号の送信情報量を倍増することができる。
【0066】
また、本光送信器1Cにおいても、信号処理回路12がIチャネル前置歪み補償回路123XI,YIおよびQチャネル前置歪み補償回路123XQ,YQとしての機能をそなえているので、DAC13XI,13XQ,13YI,13YQ;ドライバ14XI,14XQ,13YI,14YQおよび位相変調器151XI,151XQ,151YI,151YQの不完全による信号品質劣化が前もって補償される。これにより、本光送信器1Cは、高品質の光送信を実現することができる。
【0067】
さらに、本光送信器1Cによっても、搬送波周波数制御回路16が、位相回転回路122X,122Yによる搬送波周波数の微調整と、レーザ光源11の発振周波数を直接制御する粗調整とを併用することにより、送信器電気帯域を超える搬送波周波数の調整を、高精度に行なうことができる。
【0068】
なお、本光送信器1Cにおいても、変調方式マッピング回路121Xと位相回転回路122Xとの間、および、変調方式マッピング回路121Yと位相回転回路122Yとの間に、それぞれ、図6に示す光送信器1Bの伝送路前置歪み補償回路124と同様の伝送路前置歪み補償回路をそなえてもよい。この伝送路前置歪み補償回路は、変調方式マッピング回路121Xまたは121Yで送信信号をマッピングされた電界情報に対し、伝送路3による信号品質劣化を補償する。これにより、伝送路3での光伝送による波形歪みが前もって補償され、より高品質の光送信を実現することができる。
【0069】
偏波多重方式を採用した光送信器1Cにおける信号処理も、第2実施形態の光送信器1Bの信号処理について説明した上記(1)〜(5)式に従って行なわれる。ただし、偏波多重方式を採用する場合、上記(1)〜(5)式において、電界情報Eとしては、下記(6)式の通りX偏波,Y偏波の情報Ex,Eyが採用され、波形歪みに係る関数/逆関数h(=h1(t),h2(t)またはh2(t)’)としては、下記(7)式の通り偏波を考慮した関数が用いられる。
【0070】
【数1】
【0071】
〔5〕光通信システムおよび光受信器
次に、図9を参照しながら、上述した光送信器1,1A〜1Cを適用される光通信システムの構成を説明するとともに、図10および図11を参照しながら、本実施形態の光通信システムに適用される光受信器2A,2Bの構成を説明する。なお、図9は本実施形態の光通信システムの構成を示すブロック図、図10は光受信器2Aの構成を示すブロック図、図11は光受信器2Bの構成を示すブロック図である。
【0072】
図9に示すように、光送信器1,1A〜1Cを適用される光通信システムは、光送信器Txと、光受信器Rxと、伝送路3と、複数(図9中では4)の中継器4とを有している。ここで、光送信器Txとしては、上述した光送信器1,1A〜1Cのいずれか一つが用いられ、光受信器Rxとしては、図10,図11を参照しながら後述する光受信器2Aまたは2Bが用いられる。また、伝送路3(光ファイバ)は、光送信器Txと光受信器Rxとの間を接続し、この伝送路3上に複数の中継器4が介設されている。
【0073】
光受信器(光受信器の一例)2Aは、図10に示すように、OE21および識別・誤り訂正回路22を有している。
OE(光/電気変換回路)21は、光送信器Txから伝送路3を通じて送信されてきた光信号を受信して電気信号に変換する。
識別・誤り訂正回路22は、OE21からの電気信号を識別し、その電気信号の誤り訂正数をモニタする。
【0074】
識別・誤り訂正回路22によってモニタされた誤り訂正数は、前記エラー信号として、光受信器Rx(2A)から光送信器Txへ、逆方路のチャネルを用いて、または、本光通信システムの制御チャネルを用いパイロット信号として、または、前記周波数変調を用いて、送信される。このようにして光受信器Rx(2A)から誤り訂正数を受信する光送信器Tx側では、搬送波周波数制御回路16が、誤り訂正数が最小になるように、位相回転回路122,122X,122Yの回転周波数を調整し、光送信器Txの電気帯域内において搬送波周波数の微調整を行なう。
【0075】
光受信器(光受信器の他例;デジタルコヒーレント受信器)2Bは、図11に示すように、局部発振光源23,90度ハイブリッド回路24,OE25,ADC26および信号処理回路27を有している。
局部発振光源23は、局部発振光を発振して出力する。
90度ハイブリッド回路24は、局部発振光源23からの局部発振光と、光送信器Txから伝送路3を通じて送信されてきた光信号とを合成し、光位相が互いに90度異なる2組の光信号を出力する。
【0076】
OE(光/電気変換回路)25は、90度ハイブリッド回路24からの2組の光信号を電気信号に変換する。
ADC(アナログ/デジタル変換回路)26は、OE25からの電気信号をデジタル信号に変換する。
信号処理回路27は、ADC26からの2組のデジタル信号に対し、デジタル信号処理を施すもので、波形歪み補償回路271,搬送波位相同期回路272,識別回路273および信号品質モニタ274としての機能を有している。
【0077】
波形歪み補償回路271は、ADC26からのデジタル信号に対し、波形歪みの補償を行なう。
搬送波位相同期回路272は、光源周波数オフセット補償機能および搬送波位相推定機能(J.C.Rasmussen他「100Gbps光伝送システムのためのデジタルコヒーレント受信技術」, FUJITSU, vol.60, no.5, p.476-483, 2009年9月)を有するほか、周波数復調機能を有している。
【0078】
光源周波数オフセット補償機能は、波形歪み補償回路271によって波形歪みを補償されたデジタル信号に対し、光源周波数オフセット補償を行なう機能である。光送信器Tx側のレーザ光源11と光受信器2B側の局部発振光源23との間には波長確度の範囲内で光周波数のズレ(オフセット)が発生しうる。一般的な波長多重用光源の場合、その周波数オフセットは、最大、数GHz程度となる可能性がある。光源周波数オフセットが大きい場合、受信信号を処理・識別することが困難になる。そこで、光源周波数オフセット補償機能は、光源周波数オフセットの推定値を得てから、その推定値をフィードバックして局部発振光源23の発振周波数を微調整する、もしくはデジタル処理により補償することにより、周波数オフセットの補償を行なう。
【0079】
光送信器Tx側のレーザ光源11と光受信器2B側の局部発振光源23との間の周波数オフセットが補償された後に残るのは、これらの光源11,23間の位相差である。搬送波位相推定機能は、その位相差を推定して補正することにより識別判定の準備を行なう機能である。
周波数復調機能は、光送信器Txにおいて上記周波数変調によりパイロット信号が重畳された場合、その搬送波からパイロット信号を復調する機能である。搬送波位相同期回路272において、上記光源周波数オフセット補償機能により光源周波数オフセットの推定値を得ることができ、光源周波数オフセット値により光送信器Txからの周波数変調によって重畳されたパイロット信号を復調することができる。
【0080】
識別回路273は、搬送波位相同期回路272によって得られた信号に基づいて、受信信号のデータ識別処理を行ない、識別結果をデータ信号として出力する。
信号品質モニタ274は、搬送波位相同期回路272によって得られた信号の品質をモニタする。
信号品質モニタ274によってモニタされた信号品質は、前記エラー信号として、光受信器Rx(2B)から光送信器Txへ、逆方路のチャネルを用いて、または、本光通信システムの制御チャネルを用いパイロット信号として、または、前記周波数変調を用いて、送信される。このようにして光受信器Rx(2B)から信号品質を受信する光送信器Tx側では、搬送波周波数制御回路16が、信号品質が最良になるように、位相回転回路122,122X,122Yの回転周波数を調整し、光送信器Txの電気帯域内において搬送波周波数の微調整を行なう。
【0081】
なお、最適な搬送波周波数を見つけやすくするために、上述したように搬送波周波数制御回路16によって搬送波周波数にディザを重畳した信号を送信することが有効である。この場合、識別・誤り訂正回路22によって得られる誤り訂正数、もしくは、信号品質モニタ274によって得られる品質情報に基づき、搬送波周波数に重畳されたディザがモニタされる。そして、搬送波周波数制御回路16が、モニタされたディザの振幅が最小になるように、位相回転回路122,122X,122Yの回転周波数を調整し、光送信器Txの電気帯域内において搬送波周波数の微調整を行なう。このとき、モニタされたディザの振幅が、前記エラー信号として光受信器Rxから光送信器Txへ送信される。
【0082】
このように、光送信器1,1A〜1Cとともに光受信器2A,2Bを用いることで、光受信器2A,2B側において、受信信号の誤り訂正数が最小になるように、または、受信信号の品質が最良になるように、または、ディザ振幅が最小になるように、搬送波周波数が高精度かつ高速に制御される。
【0083】
〔6〕光送信装置の第1例
以下に、上述のごとく構成された光送信器1,1A〜1Cを用い高密度波長多重を行なう光通信装置の構成例(第1例〜第5例)について説明する。
まず、図12および図13を参照しながら、光送信装置の第1例について説明する。図12は光送信装置の第1例の構成を示すブロック図、図13は図12に示す光送信装置の送信スペクトルを示す図である。
【0084】
図12に示すように、第1例の光送信装置100Aは、複数(図12ではn;nは自然数)の光送信器Tx1〜Txnと、光合波器101とを有している。
光送信器Tx1〜Txnとしては、図1〜図8に示す光送信器1,1A〜1Cのいずれかが用いられる。なお、図12では、光送信器Tx1〜Txnとして、図1に示す光送信器1が示されている。また、図12では、DAC13および搬送波周波数制御回路16の図示は省略されている。
【0085】
光合波器101は、複数の光送信器Tx1〜Txnからの光信号を合波することにより波長多重を行なって伝送路3へ出力する。
複数の光送信器Tx1〜Txnにおける各レーザ光源11は、同一の周波数fCの出力光を発振する。
複数の光送信器Tx1〜Txnにおける各搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122,122X,122Yで付与される位相回転の周期を制御して光変調部15,15A,15Cから出力される光信号の搬送波周波数を制御する微調整を行なう。
【0086】
このとき、複数の光送信器Tx1〜Txnにおける各搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122,122X,122Yに対し、それぞれ異なる周波数制御量Δfa1〜Δfanを出力する。これにより、光送信器Tx1〜Txnにおける各光変調部15,15A,15Cから出力される光信号の中心搬送波周波数は、図13に示すように、電気帯域幅内において、それぞれ、fC+Δfa1,fC+Δfa2,…,fC+Δfanに微調整される。
【0087】
従って、第1例の光送信装置100Aによれば、複数の光送信器Tx1〜Txnにおける各搬送波周波数制御回路16の機能を用い、各光送信器Tx1〜Txnから出力される光信号の搬送波周波数が電気帯域幅内で高精度かつ高速に微調整される。これにより、波長多重の間隔が高密度化されて伝送路(光ファイバ)3の帯域利用率が向上され、大容量の伝送が実現される。
なお、複数の光送信器Tx1〜Txnにおけるレーザ光源11は、一のレーザ光源によって共通化されていてもよい。この場合、レーザ光源11が一つだけとなるため、光通信装置100Aの構成をより簡素化することができる。
【0088】
〔7〕光送信装置の第2例
図14〜図16を参照しながら、光送信装置の第2例について説明する。図14は光送信装置の第2例の構成を示すブロック図、図15は図14に示す光送信装置の送信スペクトルを示す図、図16(A)および図16(B)は図14に示す光送信装置による波長配置変更(デフラグ)を説明するための図である。
【0089】
図14に示すように、第2例の光送信装置100Bは、複数(図14ではn)の光送信器Tx1〜Txnと、帯域可変光合波器102とを有している。
光送信器Tx1〜Txnとしては、図1〜図8に示す光送信器1,1A〜1Cのいずれかが用いられる。
帯域可変光合波器102は、複数の光送信器Tx1〜Txnからの光信号を合波することにより波長多重を行なって伝送路3へ出力する、帯域可変の光合波器である。
【0090】
そして、第2例の光送信装置100Bでは、複数の光送信器Tx1〜Txnにおける各搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122で付与される位相回転の周期を制御することにより、送信信号(バイナリデータ)のビットレートに応じた波長配置の調整を行なう。
従って、第2例の光送信装置100Bによれば、異なるビットレートの信号を一本の光ファイバで伝送する場合、各光送信器Tx1〜Txnにおける搬送波周波数制御回路16の機能を用いて、図15に示すように、各光パスP1〜P6(各光送信器Tx1〜Txnの送信信号)のビットレートに合わせて波長配置が高精度かつ高速に微調整される。これにより、波長多重の間隔が高密度化されて伝送路(光ファイバ)3の帯域利用率が向上され、大容量の伝送が実現される。
【0091】
このとき、光送信器Tx1〜Txnにおける各搬送波周波数制御回路16は、上記微調整機能と、レーザ光源11からの出力光の周波数を直接制御する粗調整機能とを併用して波長配置の調整を行なってもよい。粗調整は、上述したように、発振周波数グリッド変更や温度制御による発振周波数調整によって行なわれる。このように粗調整機能と微調整機能とを組み合わせることにより、送信器電気帯域を超える大きな幅での搬送波周波数の調整を、高精度に行なうことができる。
【0092】
ところで、上述のようにして図15や図16(A)に示すごとく高密度な波長配置を行なった状態の光ネットワークが複数年に亘って運用されていくと、各光パスでの需要や要求が変化する場合が多々ある。このような場合、光ネットワークの波長配置を修正・変更することにより、波長資源の利用効率の改善が可能である。
第2例の光送信装置100Bでは、上述した微調整機能および粗調整機能を用いることにより、光ネットワークの波長配置の修正・変更を行なうことができる。その際、搬送波周波数制御回路16の微調整機能を用いることで、少なくとも電気帯域内での光パスの移動・変更であれば、ヒットレスつまり当該光パスを信号断状態にすることなく、波長配置の変更を高精度かつ高速に行なうことができる。
【0093】
例えば図16(A)に示すように、光パスP1〜P6の波長配置を行なった状態の光ネットワークにおいて、光パスP2,P3が不要になり、光パスP4については、より広帯域が必要になったとする。このような場合、例えば図16(B)に示すように、光パスP4のビットレートが変更された後、光パスP4〜P6が、上述した微調整機能および粗調整機能を用いて移動され、光パスP1,P4〜P6が高密度に配置される。さらに、図16(B)に示す例では、新たな光パスP7,P8が、光パスP6以降の周波数帯域において追加され、上述した微調整機能および粗調整機能を用いて高密度に配置されている。
【0094】
このように、第2例の光送信装置100Bによれば、光送信器Tx1〜Txnにおける各搬送波周波数制御回路16の微調整機能および粗調整機能を用いて、波長配置の変更を高精度かつ高速に行なうことができる。従って、光ネットワークの長年の運用に伴い各光パスでの需要や要求が変化したとしても、光ネットワークの波長配置が修正・変更され、波長資源の利用効率を改善することができる。
【0095】
〔8〕光送信装置の第3例
図17および図18を参照しながら、光送信装置の第3例について説明する。図17は光送信装置の第3例の構成を示すブロック図、図18は図17に示す光送信装置の送信スペクトルを示す図である。
図17に示すように、第3例の光送信装置100Cは、図12に示す第1例の光送信装置100Aと同様、複数(図17ではn)の光送信器Tx1〜Txnと、光合波器101とを有している。
【0096】
光送信器Tx1〜Txnとしては、図1〜図8に示す光送信器1,1A〜1Cのいずれかが用いられる。なお、図17では、図12と同様、光送信器Tx1〜Txnとして、図1に示す光送信器1が示されている。また、図17では、DAC13および搬送波周波数制御回路16の図示は省略されている。
光合波器101は、複数の光送信器Tx1〜Txnからの光信号を合波することにより波長多重を行なって伝送路3へ出力する。
【0097】
複数の光送信器Tx1〜Txnにおけるレーザ光源11としては、サブチャネル毎もしくはサブチャネル群毎に、周波数同期のとれていない、異なる光源が用いられる。
複数の光送信器Tx1〜Txnにおける各搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122,122X,122Yで付与される位相回転の周期を制御して光変調部15,15A,15Cから出力される光信号の搬送波周波数を制御する微調整を行なう。
【0098】
このとき、複数の光送信器Tx1〜Txnにおける各搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122,122X,122Yに対し、それぞれ異なる周波数制御量Δfa1〜Δfanを出力する。これにより、光送信器Tx1〜Txnにおける各光変調部15,15A,15Cから出力される光信号の中心搬送波周波数の間隔は、図18に示すように、シンボルレートの定数倍(N×シンボルレート;Nは自然数)に調整される。
【0099】
従って、第3例の光送信装置100Cによれば、各レーザ光源11の発振周波数の同期がとれていなくても、各搬送波周波数制御回路16の機能を用い、各光送信器Tx1〜Txnから出力される光信号の中心搬送波周波数の間隔がシンボルレートの定数倍に調整される。これにより、各光送信器Tx1〜Txnから出力される光信号の周波数同期がとられ、OFDM(直交周波数分割多重)を実現することができる。
【0100】
〔9〕光送信装置の第4例
図19および図20を参照しながら、光送信装置の第4例について説明する。図19は光送信装置の第4例の構成を示すブロック図、図20は図19に示す光送信装置の送信スペクトルを示す図である。
図19に示すように、第4例の光送信装置100Dは、複数(図19ではn+1)の光送信器Tx1,Tx2,…,Txm,Txm′,…,Txnと、AWG103と、カプラ104とを有している。なお、mは1以上でn以下の自然数である。
【0101】
光送信器Tx1,Tx2,…,Txm,Txm′,…,Txnとしては、図1〜図8に示す光送信器1,1A〜1Cのいずれかが用いられる。
AWG(アレイ導波路回折格子)103は、n個のポート1〜nを有し、これらのポート1〜nに入力される光送信器Tx1〜Txnからの光信号を合波することにより波長多重を行なって伝送路3へ出力する、フィルタ帯域固定の光合波器である。ポート1〜nのそれぞれには、図20に示すように、フィルタ帯域が固定的に割り当てられている。
【0102】
ここで、光送信器Txm,Txm′が送信する信号のビットレートは、他の光送信器よりも低く、光送信器Txm,Txm′は、これらの光送信器Txm,Txm′からの信号を合成するカプラ104を介してAWG103のポートmに接続されている。
また、光送信器Tx1〜Txm−1,Txm+1〜Txnは、それぞれ、AWG103のポート1〜m−1,m+1〜nに接続されている。
【0103】
そして、光送信器Tx1,Tx2,…,Txm,Txm′,…,Txnにおける各搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122,122X,122Yで付与される位相回転の周期を制御することにより、AWG103の同一フィルタ帯域を、2以上の光送信器によって共用している。つまり、図19に示す光送信装置100Dでは、各搬送波周波数制御回路16の機能により、ポートmに入力される特定パス上の2つの光送信器Txm,Txm′の搬送波周波数が高精度かつ高速に調整される。これにより、例えば図20に示すように、AWG103のポートmに対応するフィルタ帯域が、2つの光送信器Txm,Txm′によって共用される。
【0104】
従って、第4例の光送信装置100Dによれば、AWG103を用いる場合に、ビットレートの低い2以上の光送信器Txm,Txm′をカプラ104によって組み合わせ、各搬送波周波数制御回路16の機能により各光送信器Tx1〜Txnの搬送波周波数が制御される。これにより、AWG103の一つのフィルタ帯域がビットレートの低い2以上の光送信器Txm,Txm′によって共用される。このため、AWG103の各フィルタ帯域が極めて効率よく利用される。
【0105】
なお、図19および図20に示す例では、AWG103における一つのフィルタ帯域を2つの光送信器Txm,Txm′によって共用する場合について説明した。しかし、本件は、これに限定されるものではなく、3以上の光送信器によって同一フィルタ帯域を共用するように、各搬送波周波数制御回路16の機能により、各光送信器Tx1〜Txnの搬送波周波数を制御するように構成してもよい。
【0106】
〔10〕光送信装置の第5例
図21および図22を参照しながら、光送信装置の第5例、および、その光送信装置に対応する光受信装置について説明する。図21は光送信装置の第5例の構成および光受信装置の構成を示すブロック図、図22は図21に示す光送信装置の送信スペクトルを示す図である。
【0107】
図21に示すように、第5例の光送信装置100Eは、複数(図21ではn)の光送信器Tx1〜Txnと、AWG103と、カプラ105,106とを有している。
この光送信装置100Eに対応する光受信装置200は、伝送路(光ファイバ)3を介して光送信装置100Eに接続され、複数(図21ではn)の光受信器Rx1〜Rxnと、光分波器201と、カプラ202,203とを有している。
【0108】
光送信器Tx1〜Txnとしては、図1〜図8に示す光送信器1,1A〜1Cのいずれかが用いられる。
AWG103は、n個のポート1〜nを有し、これらのポート1〜nにカプラ105,106を介して入力される光送信器Tx1〜Txnからの光信号を合波することにより波長多重を行なって伝送路3へ出力する、フィルタ帯域固定の光合波器である。ポート1〜nのそれぞれには、図22に示すように、フィルタ帯域が固定的に割り当てられている。
【0109】
また、光送信装置100Eの各光送信器Tx1〜Txnにおける変調方式マッピング回路121の変調方式は、直交周波数分割多重方式(OFDM)である(図22参照)。
そして、複数の光送信器Tx1〜Txnのうちの一の光送信器からの光信号がAWG103の二のフィルタ帯域にまたがる場合(例えば図22に示す例では光送信器Tx2およびTx5)、その光送信器Tx2およびTx5における各搬送波周波数制御回路16は、以下のような制御を行なう。
【0110】
つまり、各搬送波周波数制御回路16は、位相回転回路122,122X,122Yで付与される位相回転の周期を制御することにより、図22に示すごとく光送信器Tx2およびTx5からの光信号の特定サブキャリアが二のフィルタ帯域間のガードバンドに位置するように、光送信器Tx2およびTx5における光変調部15,15A,15Cから出力される光信号の搬送波周波数を制御する。このとき、光送信器Tx2およびTx5は、ガードバンドに配置された特定サブキャリアの使用を禁止する。
【0111】
一方、光受信装置200における光受信器Rx1〜Rxnとしては、例えば、図10および図11に示す光受信器2Aおよび2Bのいずれかが用いられる。
光分波器201は、伝送路3を通じて光送信装置100Eからの波長多重光信号を受信し、その波長多重光信号をn個の信号に分波し、それぞれポート1〜nから、カプラ202および203を介して、光受信器Rx1〜Rxnへ出力する。
【0112】
カプラ202は、送信側のカプラ106に対応してそなえられ、光分波器201のポート1からの信号を2つに分離し、一方の信号を光受信器Rx1へ出力する。カプラ203は、送信側のカプラ105に対応してそなえられ、カプラ202からの他方の信号と光分波器201のポート2からの信号とを合成して光受信器Rx2へ出力する。
【0113】
このように、第5例の光送信装置100Eによれば、複数の光送信器Tx1〜TxnはそれぞれAWG103のフィルタ帯域幅に関係なくOFDMで高密度多重を行ない、特定チャネルの特定サブキャリアのみがガードバンドの位置に配置されるように、各チャネル(各光送信器Tx1〜Txn)の搬送波周波数が高精度かつ高速に制御される。そして、ガードバンドの位置に配置された特定サブキャリアの使用が禁止される。これにより、ガードバンドに位置する特定サブキャリアを使用した無駄な送信処理を確実に抑止することができ、光ネットワークでのOFDMによる伝送効率をより向上させることができる。
【0114】
〔11〕その他
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変形、変更して実施することができる。
【0115】
〔12〕付記
以上の本実施形態を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
光源と、
送信信号に対しデジタル信号処理を施す信号処理部と、
前記信号処理部でデジタル処理を施された送信信号に従って、前記光源からの出力光を変調し光信号として伝送路へ出力する光変調部と、
前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御する搬送波周波数制御部と、を有し、
前記信号処理部は、
前記送信信号を変調方式に応じて電界情報にマッピングするマッピング回路と、
前記マッピング回路により前記送信信号をマッピングされた電界情報の電界位相に対し、一定周期の位相回転を付与する位相回転回路と、を有し、
前記搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御することにより、前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御することを特徴とする、光送信器。
【0116】
(付記2)
前記マッピング回路により前記送信信号をマッピングされた電界情報は、I(In-phase)成分およびQ(Quadrature-phase)成分を含み、
前記光変調部は、前記信号処理部でデジタル処理を施された送信信号のI成分およびQ成分に従って、前記光源からの出力光を変調し、
前記信号処理部は、
前記位相回転回路により前記位相回転を付与された電界情報のI成分に対し、該I成分に対応する送信系の信号品質劣化を補償するIチャネル前置歪み補償回路と、
前記位相回転回路により前記位相回転を付与された電界情報のQ成分に対し、該Q成分に対応する送信系の信号品質劣化を補償するQチャネル前置歪み補償回路と、を有することを特徴とする、付記1記載の光送信器。
【0117】
(付記3)
前記信号処理部は、
前記マッピング回路により前記送信信号をマッピングされた電界情報に対し、前記伝送路による信号品質劣化の逆特性の歪みを付加し、前記伝送路による信号品質劣化を補償する伝送路前置歪み補償回路を有することを特徴とする、付記1または付記2に記載の光送信器。
【0118】
(付記4)
前記光変調部は、直交する偏波成分毎に互いに独立した光変調を行なう偏波多重変調部であり、
前記信号処理部は、
前記送信信号を、前記直交する偏波成分にそれぞれ対応する2系統の信号に分離する分離部を有するとともに、
前記分離部により分離された2系統の信号のそれぞれについて、前記マッピング回路および前記位相回転回路を有することを特徴とする、付記1記載の光送信器。
【0119】
(付記5)
各マッピング回路により前記送信信号をマッピングされた電界情報は、I(In-phase)成分およびQ(Quadrature-phase)成分を含み、
前記光変調部は、前記信号処理部でデジタル処理を施された前記2系統の信号のI成分およびQ成分に従って、前記光源からの出力光を変調し、
前記信号処理部は、前記分離部により分離された2系統の信号のそれぞれについて、
前記位相回転回路により前記位相回転を付与された電界情報のI成分に対し、該I成分に対応する送信系の信号品質劣化を補償するIチャネル前置歪み補償回路と、
前記位相回転回路により前記位相回転を付与された電界情報のQ成分に対し、該Q成分に対応する送信系の信号品質劣化を補償するQチャネル前置歪み補償回路と、を有することを特徴とする、付記4記載の光送信器。
【0120】
(付記6)
前記信号処理部は、前記分離部により分離された2系統の信号のそれぞれについて、
前記マッピング回路により前記送信信号をマッピングされた電界情報に対し、前記伝送路による信号品質劣化を補償する伝送路前置歪み補償回路を有することを特徴とする、付記4または付記5に記載の光送信器。
【0121】
(付記7)
前記搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御して前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御することにより、パイロット信号を、周波数変調によって、前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数に重畳し、前記伝送路を通じて受信側へ送信することを特徴とする、付記1〜付記6のいずれか一項に記載の光送信器。
【0122】
(付記8)
前記搬送波周波数制御部は、前記パイロット信号として、前記光送信器と対向した受信器が配置された局舎から出力された逆方路の光信号の受信信号の品質検出結果を、前記周波数変調によって前記搬送波周波数に重畳することを特徴とする、付記7記載の光送信器。
【0123】
(付記9)
前記搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御して前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御することにより、受信信号の品質検出用ディザを、前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数に重畳し、前記伝送路を通じて受信側へ送信することを特徴とする、付記1〜付記6のいずれか一項に記載の光送信器。
【0124】
(付記10)
前記搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御して前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御する微調整と、前記光源からの出力光の周波数を制御する粗調整とを併用して、前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御することを特徴とする、付記1〜付記9のいずれか一項に記載の光送信器。
【0125】
(付記11)
付記1〜付記10のいずれか一項に記載の、複数の光送信器と、
前記複数の光送信器からの光信号を合波することにより波長多重を行なって伝送路へ出力する光合波器と、を有し、
前記複数の光送信器における各光源は、同一の周波数の出力光を発振し、
前記複数の光送信器における各搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御して前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数の微調整を行なうことを特徴とする、光送信装置。
【0126】
(付記12)
前記各光源は、一の光源によって共通化されていることを特徴とする、付記11記載の光送信装置。
【0127】
(付記13)
付記1〜付記10のいずれか一項に記載の、複数の光送信器と、
前記複数の光送信器からの光信号を合波することにより波長多重を行なって伝送路へ出力する、帯域可変の光合波器と、を有し、
前記複数の光送信器における各搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御することにより、送信信号のビットレートに応じた波長配置の調整を行なうことを特徴とする、光送信装置。
【0128】
(付記14)
前記複数の光送信器における各搬送波周波数制御部は、前記光源からの出力光の周波数を制御する粗調整を併用して、前記波長配置の調整を行なうことを特徴とする、付記13記載の光送信装置。
【0129】
(付記15)
前記複数の光送信器における各搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御することにより、前記波長配置の変更を行なうことを特徴とする、付記13または付記14に記載の光送信装置。
【0130】
(付記16)
前記複数の光送信器における各搬送波周波数制御部は、前記光源からの出力光の周波数を制御する粗調整を併用して、前記波長配置の変更を行なうことを特徴とする、付記15記載の光送信装置。
【0131】
(付記17)
付記1〜付記10のいずれか一項に記載の、複数の光送信器と、
前記複数の光送信器からの光信号を合波することにより波長多重を行なって伝送路へ出力する光合波器と、を有し、
前記複数の光送信器における各搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御して前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御することにより、前記複数の光送信器から出力される光信号の中心搬送波周波数の間隔をシンボルレートの定数倍に調整することを特徴とする、光送信装置。
【0132】
(付記18)
付記1〜付記10のいずれか一項に記載の、複数の光送信器と、
前記複数の光送信器からの光信号を合波することにより波長多重を行なって伝送路へ出力する、フィルタ帯域固定の光合波器と、を有し、
前記複数の光送信器における各搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御することにより、前記光合波器の同一フィルタ帯域を、前記複数の光送信器のうちの2以上の光送信器によって共用することを特徴とする、光送信装置。
【0133】
(付記19)
付記1〜付記10のいずれか一項に記載の、複数の光送信器と、
前記複数の光送信器からの光信号を合波することにより波長多重を行なって伝送路へ出力する、フィルタ帯域固定の光合波器と、を有し、
前記複数の光送信器における各マッピング回路の変調方式は、直交周波数分割多重方式(OFDM)であり、
前記複数の光送信器のうちの一の光送信器からの光信号が前記光合波器の二のフィルタ帯域にまたがる場合、当該一の光送信器における各搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御することにより、当該一の光送信器からの光信号の特定サブキャリアが前記二のフィルタ帯域間のガードバンドに位置するように、当該一の光送信器における前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御することを特徴とする、光送信装置。
【0134】
(付記20)
当該一の光送信器は、前記ガードバンドに配置された前記特定サブキャリアの使用を禁止することを特徴とする、付記19記載の光送信装置。
【符号の説明】
【0135】
1,1A,1B,1C 光送信器
11 レーザ光源(光源)
12 信号処理回路(信号処理部)
120 1:2DMUX(分離部)
121,121X,121Y 変調方式マッピング回路
122,122X,122Y 位相回転回路
122a 積分回路
122b 乗算器
123I,123XI,123YI Iチャネル前置歪み補償回路
123Q,123XQ,123YQ Qチャネル前置歪み補償回路
124 伝送路前置歪み補償回路
13,13I,13Q,13XI,13XQ,13YI,13YQ DAC(デジタル/アナログ変換回路)
14,14I,14Q,14XI,14XQ,14YI,14YQ ドライバ(変調器駆動回路)
15 IQ変調器(光変調部)
15C 偏波多重IQ変調器(光変調部)
151I,151Q,151XI,151XQ,151YI,151YQ 位相変調器
152,152X,152Y 位相シフト部
153 偏波合波器(PBC)
16 搬送波周波数制御回路(搬送波周波数制御部)
2A,2B 光受信器
21 OE(光/電気変換回路)
22 識別・誤り訂正回路
23 局部発振光源
24 90度ハイブリッド回路
25 OE(光/電気変換回路)
26 ADC(アナログ/デジタル変換回路)
27 信号処理回路
271 波形歪み補償回路
272 搬送波位相同期回路
273 識別回路
274 信号品質モニタ
3 伝送路(光ファイバ)
4 中継器
100A,100B,100C,100D,100E 光送信装置
101 光合波器
102 帯域可変光合波器
103 AWG(アレイ導波路回折格子,フィルタ帯域固定の合波器)
104,105,106 カプラ
200 受信装置
201 光分波器
202,203 カプラ
Tx,Tx1,Tx2,…,Txm,Txm′,…,Txn 光送信器
Rx,Rx1〜Rxn 光受信器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
送信信号に対しデジタル信号処理を施す信号処理部と、
前記信号処理部でデジタル処理を施された送信信号に従って、前記光源からの出力光を変調し光信号として伝送路へ出力する光変調部と、
前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御する搬送波周波数制御部と、を有し、
前記信号処理部は、
前記送信信号を変調方式に応じて電界情報にマッピングするマッピング回路と、
前記マッピング回路により前記送信信号をマッピングされた電界情報の電界位相に対し、一定周期の位相回転を付与する位相回転回路と、を有し、
前記搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御することにより、前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御することを特徴とする、光送信器。
【請求項2】
前記マッピング回路により前記送信信号をマッピングされた電界情報は、I(In-phase)成分およびQ(Quadrature-phase)成分を含み、
前記光変調部は、前記信号処理部でデジタル処理を施された送信信号のI成分およびQ成分に従って、前記光源からの出力光を変調し、
前記信号処理部は、
前記位相回転回路により前記位相回転を付与された電界情報のI成分に対し、該I成分に対応する送信系の信号品質劣化を補償するIチャネル前置歪み補償回路と、
前記位相回転回路により前記位相回転を付与された電界情報のQ成分に対し、該Q成分に対応する送信系の信号品質劣化を補償するQチャネル前置歪み補償回路と、を有することを特徴とする、請求項1記載の光送信器。
【請求項3】
前記信号処理部は、
前記マッピング回路により前記送信信号をマッピングされた電界情報に対し、前記伝送路による信号品質劣化の逆特性の歪みを付加し、前記伝送路による信号品質劣化を補償する伝送路前置歪み補償回路を有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の光送信器。
【請求項4】
前記光変調部は、直交する偏波成分毎に互いに独立した光変調を行なう偏波多重変調部であり、
前記信号処理部は、
前記送信信号を、前記直交する偏波成分にそれぞれ対応する2系統の信号に分離する分離部を有するとともに、
前記分離部により分離された2系統の信号のそれぞれについて、前記マッピング回路および前記位相回転回路を有することを特徴とする、請求項1記載の光送信器。
【請求項5】
各マッピング回路により前記送信信号をマッピングされた電界情報は、I(In-phase)成分およびQ(Quadrature-phase)成分を含み、
前記光変調部は、前記信号処理部でデジタル処理を施された前記2系統の信号のI成分およびQ成分に従って、前記光源からの出力光を変調し、
前記信号処理部は、前記分離部により分離された2系統の信号のそれぞれについて、
前記位相回転回路により前記位相回転を付与された電界情報のI成分に対し、該I成分に対応する送信系の信号品質劣化を補償するIチャネル前置歪み補償回路と、
前記位相回転回路により前記位相回転を付与された電界情報のQ成分に対し、該Q成分に対応する送信系の信号品質劣化を補償するQチャネル前置歪み補償回路と、を有することを特徴とする、請求項4記載の光送信器。
【請求項6】
前記搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御して前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御することにより、パイロット信号を、周波数変調によって、前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数に重畳し、前記伝送路を通じて受信側へ送信することを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の光送信器。
【請求項7】
前記搬送波周波数制御部は、前記パイロット信号として、前記光送信器と対向した受信器が配置された局舎から出力された逆方路の光信号の受信信号の品質検出結果を、前記周波数変調によって前記搬送波周波数に重畳することを特徴とする、請求項6記載の光送信器。
【請求項8】
前記搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御して前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御することにより、受信信号の品質検出用ディザを、前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数に重畳し、前記伝送路を通じて受信側へ送信することを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の光送信器。
【請求項9】
前記搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御して前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御する微調整と、前記光源からの出力光の周波数を制御する粗調整とを併用して、前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御することを特徴とする、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の光送信器。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の、複数の光送信器と、
前記複数の光送信器からの光信号を合波することにより波長多重を行なって伝送路へ出力する光合波器と、を有し、
前記複数の光送信器における各光源は、同一の周波数の出力光を発振し、
前記複数の光送信器における各搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御して前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数の微調整を行なうことを特徴とする、光送信装置。
【請求項1】
光源と、
送信信号に対しデジタル信号処理を施す信号処理部と、
前記信号処理部でデジタル処理を施された送信信号に従って、前記光源からの出力光を変調し光信号として伝送路へ出力する光変調部と、
前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御する搬送波周波数制御部と、を有し、
前記信号処理部は、
前記送信信号を変調方式に応じて電界情報にマッピングするマッピング回路と、
前記マッピング回路により前記送信信号をマッピングされた電界情報の電界位相に対し、一定周期の位相回転を付与する位相回転回路と、を有し、
前記搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御することにより、前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御することを特徴とする、光送信器。
【請求項2】
前記マッピング回路により前記送信信号をマッピングされた電界情報は、I(In-phase)成分およびQ(Quadrature-phase)成分を含み、
前記光変調部は、前記信号処理部でデジタル処理を施された送信信号のI成分およびQ成分に従って、前記光源からの出力光を変調し、
前記信号処理部は、
前記位相回転回路により前記位相回転を付与された電界情報のI成分に対し、該I成分に対応する送信系の信号品質劣化を補償するIチャネル前置歪み補償回路と、
前記位相回転回路により前記位相回転を付与された電界情報のQ成分に対し、該Q成分に対応する送信系の信号品質劣化を補償するQチャネル前置歪み補償回路と、を有することを特徴とする、請求項1記載の光送信器。
【請求項3】
前記信号処理部は、
前記マッピング回路により前記送信信号をマッピングされた電界情報に対し、前記伝送路による信号品質劣化の逆特性の歪みを付加し、前記伝送路による信号品質劣化を補償する伝送路前置歪み補償回路を有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の光送信器。
【請求項4】
前記光変調部は、直交する偏波成分毎に互いに独立した光変調を行なう偏波多重変調部であり、
前記信号処理部は、
前記送信信号を、前記直交する偏波成分にそれぞれ対応する2系統の信号に分離する分離部を有するとともに、
前記分離部により分離された2系統の信号のそれぞれについて、前記マッピング回路および前記位相回転回路を有することを特徴とする、請求項1記載の光送信器。
【請求項5】
各マッピング回路により前記送信信号をマッピングされた電界情報は、I(In-phase)成分およびQ(Quadrature-phase)成分を含み、
前記光変調部は、前記信号処理部でデジタル処理を施された前記2系統の信号のI成分およびQ成分に従って、前記光源からの出力光を変調し、
前記信号処理部は、前記分離部により分離された2系統の信号のそれぞれについて、
前記位相回転回路により前記位相回転を付与された電界情報のI成分に対し、該I成分に対応する送信系の信号品質劣化を補償するIチャネル前置歪み補償回路と、
前記位相回転回路により前記位相回転を付与された電界情報のQ成分に対し、該Q成分に対応する送信系の信号品質劣化を補償するQチャネル前置歪み補償回路と、を有することを特徴とする、請求項4記載の光送信器。
【請求項6】
前記搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御して前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御することにより、パイロット信号を、周波数変調によって、前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数に重畳し、前記伝送路を通じて受信側へ送信することを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の光送信器。
【請求項7】
前記搬送波周波数制御部は、前記パイロット信号として、前記光送信器と対向した受信器が配置された局舎から出力された逆方路の光信号の受信信号の品質検出結果を、前記周波数変調によって前記搬送波周波数に重畳することを特徴とする、請求項6記載の光送信器。
【請求項8】
前記搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御して前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御することにより、受信信号の品質検出用ディザを、前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数に重畳し、前記伝送路を通じて受信側へ送信することを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の光送信器。
【請求項9】
前記搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御して前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御する微調整と、前記光源からの出力光の周波数を制御する粗調整とを併用して、前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数を制御することを特徴とする、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の光送信器。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の、複数の光送信器と、
前記複数の光送信器からの光信号を合波することにより波長多重を行なって伝送路へ出力する光合波器と、を有し、
前記複数の光送信器における各光源は、同一の周波数の出力光を発振し、
前記複数の光送信器における各搬送波周波数制御部は、前記位相回転回路で付与される位相回転の周期を制御して前記光変調部から出力される光信号の搬送波周波数の微調整を行なうことを特徴とする、光送信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
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【図19】
【図20】
【図21】
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【公開番号】特開2012−120010(P2012−120010A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269020(P2010−269020)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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