光部品
【課題】 光路への戻り光を低減する。
【解決手段】 光部品は、第1の光導波路と第2の光導波路とを有する平面光波回路、及びミラーを備える。ミラーは、第1の光導波路に光学的に結合された第1の光路の第1の光軸と第2の光導波路に光学的に結合された第2の光路の第2の光軸とが成す角度の二等分線と交差する方向に移動する。ミラーの表面には、第1の光路から光を受け取るとその光を第2の光路へ反射する実質的に平坦な反射部が設けられている。反射部は、二等分線に対して実質的に垂直な平面上に配置された曲線状のエッジを有している。
【解決手段】 光部品は、第1の光導波路と第2の光導波路とを有する平面光波回路、及びミラーを備える。ミラーは、第1の光導波路に光学的に結合された第1の光路の第1の光軸と第2の光導波路に光学的に結合された第2の光路の第2の光軸とが成す角度の二等分線と交差する方向に移動する。ミラーの表面には、第1の光路から光を受け取るとその光を第2の光路へ反射する実質的に平坦な反射部が設けられている。反射部は、二等分線に対して実質的に垂直な平面上に配置された曲線状のエッジを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、第1の光路から第2の光路へ伝播する光のパワーを調節する光部品に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信では、光信号のパワーを調節するための光部品、例えば可変光減衰器や光スイッチがしばしば使用される。このような光部品の一例では、二つの光導波路間の光路上にミラーを配置し、そのミラーを移動させることにより反射光量を変化させ、それにより一方の光導波路から他方の光導波路に伝播する光のパワーを調節する(非特許文献1を参照)。
【非特許文献1】C.Marxerほか、「Micro-Opto-Mechanical 2x2 Switch for Single Mode Fibers based on Plasma-Etched Silicon Mirror and Electrostatic Actuation」(preceding 11th IEEE Workshop on Micro-Electro-Mechanical System、1998年、233〜237頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図10は、ミラーを使用する可変光減衰器の一例を示す概略平面図である。可変光減衰器50は、平面光波回路(Planer Lightwave Circuit:PLC)10、ミラー20およびミラー駆動装置30を有する。PLC10中の光導波路11および12は、平面13に対して鏡面対称に配置された端部を有している。これらの端部は、同一平面上に揃えられた端面11aおよび12aを有している。ミラー20は、これらの端面11aおよび12aに平行な反射面20aを有している。ミラー駆動装置30は、矢印32および33で示される方向に沿ってミラー20を移動させることができる。光導波路11からの光は、反射面20aに入射すると、光導波路12に向けて反射される。これにより、光導波路11から光導波路12に光が伝播する。一方、光導波路11からの光が反射面20aに入射しない場合、その光は光導波路12には入射しない。
【0004】
図10に示されるように、反射面20aは、ミラー20の移動に伴って平面13を横切るように移動するエッジ20bを有している。エッジ20bでは、回折現象のため入射光が様々な方向に散乱される。このため、光導波路11からの光の一部が光導波路11に戻り、光導波路11内を再び伝播する。この光が光導波路11への戻り光である。このような戻り光は、光導波路11内を伝播する信号光の波形を歪ませ、通信エラーを引き起こすことがある。
【0005】
そこで、本発明は、第1の光路から第2の光路へ伝播する光のパワーを調節する光部品において第1の光路への戻り光を低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
図11は、図10に示される可変光減衰器50におけるミラーエッジ20bの位置と結合効率との関係を示している。ミラーエッジ位置が0μmのとき、エッジ20bは光導波路11および12間の平面13上に位置する。図11において実線は、光導波路11から光導波路12へ進行する光の結合効率を示し、一点鎖線は、光導波路11から光導波路11へ戻る光の結合効率を示し、二点鎖線は、光導波路12から光導波路12へ戻る光の結合効率を示している。図11では、一点鎖線と二点鎖線とが重なっている。図11に示されるように、可変光減衰器50では、光導波路11および12への戻り光の結合効率が大きい。したがって、光導波路中の信号光の波形が比較的歪みやすい。
【0007】
信号光波形の歪みを防ぐ方法として、図12に示されるように、光導波路11および12にアイソレータ51および52を接続することが考えられる。光導波路11を伝播する信号光55はミラー20によって反射されると光導波路12に入射し、光導波路12内を伝播する。ミラー20のエッジ部20bでの散乱によって生じた光導波路11への戻り光56は、光導波路11に接続されたアイソレータ51によって遮断される。また、光導波路12に接続されたアイソレータ52は、可変光減衰器50に接続された外部デバイスからの戻り光57を遮断し、可変光減衰器50への入射を防ぐ。したがって、光導波路12から光導波路12へ戻る光の発生も防止される。なお、戻り光の結合効率の代表的な許容値は−45dBであるが、可変光減衰器が使用されるシステムに応じて許容値は異なる。
【0008】
上記のようにアイソレータを使用すれば、可変光減衰器を使用する光通信システム内で戻り光が信号光に及ぼす影響を抑えることはできる。しかし、アイソレータを光導波路に接続する必要が生じるため、システムの構築が煩雑になるとともに、システムの製造コストも増加する。そこで、本発明者らは、戻り光を低減することの可能な別の光部品およびミラーを考案した。
【0009】
一つの側面において、本発明は、第1の光軸を有する第1の光路と、第1の光軸と非平行な第2の光軸を有する第2の光路と、第1の光軸と第2の光軸とが成す角度の二等分線を横切って移動するミラーとを備えている。ミラーの表面には、第1の光路から光を受け取るとその光を第2の光路へ反射する反射部が設けられている。
【0010】
反射部は、二等分線に対して実質的に垂直な平面上に配置された直線部を含むエッジを有していてもよい。直線部は、第1および第2の光軸を含む平面の法線に対して傾斜していてもよい。あるいは、反射部は、上記の二等分線に対して実質的に垂直な平面上に配置された曲線部を含むエッジを有していてもよい。
【0011】
これらの直線部および曲線部は、第1および第2の光軸を含む平面の法線と非平行である。反射面のエッジ上におけるこの非平行な部分は、第1光路からの光がその部分に入射したときに生じる散乱光の第1の光軸方向の成分を抑える。これにより、第1光路への戻り光が低減される。
【0012】
第1光路への戻り光のさらなる低減のために、上記の鋭角φは5°以上であることが好ましい。
【0013】
このほかに、反射部は、上記の二等分線に対して実質的に垂直な平面上に配置された部分を含むエッジを有しており、その部分は、下記の式
Rav(X)=∫R(X,Y)・Φ(Y)dY / ∫Φ(Y)dY(ここで、Xは第1および第2の光軸を含む平面と反射部との交線に沿って延びるX軸方向の座標、Yは反射部上でX軸と垂直に延びるY軸方向の座標、R(X,Y)はXY平面上における反射率分布、Φ(Y)は第1の光路から反射部に入射する光のY方向強度分布)で定義される関数Rav(X)が異なる二つのX座標間で少なくとも10%から90%まで変化するような分布を有していてもよい。
【0014】
ミラーの反射面のエッジにおいてこのような分布の関数Rav(X)を与える部分は、第1光路からの光がその部分に入射したときに生じる散乱光の第1の光軸方向の成分を抑える。これにより、第1光路への戻り光が低減される。
【0015】
第1光路への戻り光のさらなる低減のために、関数Rav(X)が10%から90%まで変化する二つのX座標の間隔は、第1の光路から反射部に入射する光のX方向のモードフィールド径の3%以上であることが好ましい。
【0016】
本発明の光部品は、第1の光路に光学的に結合された光導波路および第2の光路に光学的に結合された光導波路の少なくとも一方をさらに備えていてもよい。その光導波路は、平面導波路であってもよいし、光ファイバであってもよい。
【0017】
別の側面において、本発明は、反射面と、所定の移動経路に沿って反射面を移動させることの可能な駆動装置とを備える可動ミラー装置である。移動経路は、反射面を実質的に垂直に横断する平面に対して平行に延在している。反射面は、移動経路に沿った反射面の移動に応じてその平面と交差しつつ移動するエッジを有している。エッジは、その平面の法線に対して傾斜した直線部を含んでいてもよい。直線部と法線とが成す鋭角が5°以上であることが好ましい。あるいは、エッジは、曲線部を含んでいてもよい。
【0018】
これらの直線部および曲線部は、反射面の移動経路と平行な上記の平面の法線と非平行である。反射面のエッジ上におけるこの非平行な部分は、上記の平面上に配置された光軸を有する光路上の光がその部分に入射したときに生じる散乱光のその光軸方向の成分を抑える。これにより、その光路への戻り光が低減される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、第1の光路から第2の光路へ伝播する光のパワーを調節する光部品において第1の光路への戻り光を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
(第1実施形態)図1は、第1実施形態の光部品を示す概略平面図である。この光部品は、可変光減衰器100である。可変光減衰器100は、平面光波回路(Planer Lightwave Circuit:PLC)10、ミラー21およびミラー駆動装置30を有する。ミラー21およびミラー駆動装置30は、可動ミラー装置40を構成する。
【0022】
PLC10は、2本の光導波路11および12を有する。光導波路11および12は、図1の紙面に平行に延びる平面導波路である。光導波路11および12は、例えば石英ガラスから構成されている。光導波路11および12のミラー21に近い側の端部は、互いに交差して重なり合っていてもよいし、互いに離間していてもよい。
【0023】
ミラー21は、反射面21aを有する光反射器である。反射面21aは、実質的に平坦であり、光導波路11および12を伝播する所定波長の光に対して極めて高い反射率(例えば90%以上)を有する。反射面21aは実質的に均一な反射率を有している。反射面21aは、ミラー21の表面に設けられ、図1の紙面に垂直な方向に延在する。ミラー21は、反射面21aが光導波路11および12の端面と対向するように移動する。反射面21aとこれらの端面との間隙には、屈折率整合材が充填されていてもよい。ミラー21の詳細は後述する。
【0024】
ミラー駆動装置30は、矢印32および33で示されるように、ZX平面と実質的に平行にミラー21を移動させる。これに応じて、ミラー21の反射面21aは移動経路46に沿って移動する。ミラー21の移動は可逆的である。移動経路46は、反射面21aを実質的に垂直に横断する平面(例えば、図1の紙面)に対して平行に延在している。本実施形態では、移動経路46は、実質的にX方向に延びる直線状である。したがって、光導波路11および12の端面の付近では、矢印32および33で示されるように、反射面21aは光導波路11および12の端面と実質的に平行に移動する。ミラー駆動装置30の一例は、上記の非特許文献1に示されるような静電アクチュエータである。
【0025】
なお、移動経路46は曲線状であってもよい。曲率が充分に大きければ、光導波路11および12の端面の付近で反射面21aを実質的にX方向に移動させることができる。
【0026】
図1には、説明の便宜のためにXYZ直交座標系が描かれている。X軸は、導波路11および12の双方の光軸を含む平面と反射面21aとの交線に沿って延在する。Y軸は、導波路11および12の双方の光軸が成す角度の二等分線に垂直な平面内においてX軸に対して垂直に延在する。Z軸は、その二等分線と平行に延在する。
【0027】
以下では、図2および図3を参照しながら、ミラー21についてさらに詳細に説明する。図2は、ミラー21を示す概略斜視図である。図3は、図2とは別の角度から見たミラー21の反射面21aを示す図である。
【0028】
図2に示されるように、可変光減衰器100は、光導波路11からの光をミラー21を介して光導波路12へ送るための光路26および27を有している。光路26および27は、それぞれ光導波路11および12に光学的に結合されている。ミラー21の反射面21aは、光路26と交差するように移動する。光路26および27は、光導波路11および12の端面と反射面21aとの間に延在している。光導波路11から出射した光41は、ミラー21に向かって光路26上を進行し、反射面21aで反射され、光導波路12に向かって光路27上を進行する。光路26および27は、それぞれ光軸16および17を有している。光軸16および17は、図1の紙面に平行な平面上に配置されている。光軸16および17は非平行であり、角度θで交差する。角度θの二等分線18は、光軸16および17を含む平面上を延在する。図2における符号14は、光軸16および17を含む平面を示している。以下では、平面14を基準平面と呼ぶことにする。基準平面14は、反射面21aの移動経路46と実質的に平行であり、また、反射面21aを実質的に垂直に横断している。
【0029】
図2に示されるように、ミラー21の反射面21aは台形形状をしている。反射面21aは、ミラー21の移動に伴って二等分線18を横切るように移動する直線状のエッジ21bを有している。エッジ21bは、移動経路46に沿った反射面21aの移動に応じて、基準平面14と交差しつつ移動する。反射面21aおよびエッジ21bは実質的にXY平面上に位置している。また、上述のように、二等分線18はZ軸に平行である。したがって、エッジ21bは二等分線18に対して実質的に垂直な平面上に配置されている。エッジ21bは、基準平面14の法線15に対して傾斜しており、法線15との間に鋭角φを成している。
【0030】
なお、反射面21aを介して光導波路11および12間で光を効率良く結合させるためには、反射面21aおよびエッジ21bは二等分線18に対して完全に垂直であることが望ましい。しかし、実際は、二等分線18の反射面21a上への投影線と二等分線18とが成す角度が85°以上90°以下、より望ましくは89°以上90°以下であれば、充分に高い結合効率を得ることができる。
【0031】
反射面21aは、光路26の光軸16に沿って進行する光41を光導波路11から受け取ると、その光41を光路27の光軸17に沿って反射する。この結果、光導波路11からの光41は光軸17に沿って光導波路12に入射し、光導波路12内を伝播する。一方、光導波路11からの光が反射面21aに入射しない場合、その光は光導波路12には入射しない。
【0032】
図3には、入射光41のビーム44の断面が拡大して描かれている。図3に示されるように、光導波路11から反射面21aに入射する光がエッジ21b上に分布するときは、回折現象のためにエッジ21bで入射光が散乱する。散乱光の一部は光導波路12に結合し、光導波路12内を伝播する。図3に示される位置から矢印32の方向にミラー21が移動すると、反射面21a上のより狭い部分によって入射光が反射されるようになるので、光導波路11から光導波路12への結合効率が低下する。逆に、図3に示される位置から矢印33の方向にミラー21が移動すると、反射面21a上のより広い部分によって入射光が反射されるようになるので、光導波路11から光導波路12への結合効率が増加する。したがって、光導波路11から光導波路12へ伝播する光のパワーをミラー21の移動に応じて変更することができる。これが可変光減衰器100の動作原理である。
【0033】
エッジ21bでの散乱光の一部は光導波路11に戻る。これが光導波路11への戻り光である。本実施形態では、エッジ21bが基準平面14の法線15に対して傾斜しているために戻り光が低減される。以下では、図2および図13を参照し、図10に示されるミラー20と比較しながら、本実施形態のミラー21による戻り光の低減を説明する。
【0034】
図13は、図10に示されるミラー20を示す概略斜視図である。ミラー20の反射面20aは、エッジ20bを有する。エッジ20bは、基準平面14の法線15と平行な直線部である。つまり、エッジ20bは基準平面14に対して垂直である。理論的には、エッジ20bに実質的に垂直な基準平面14上の光軸16に沿ってエッジ20bに光が入射すると、光散乱はその平面14内で発生し、散乱光43は平面14に沿って進行する。平面14外で散乱光が発生しないのは、図13において、基準平面14の上側に位置する反射面20aの部分で反射された光成分と、基準平面14の下側に位置する反射面20aの部分で反射された光成分とが、ホイヘンスの原理にしたがって打ち消し合うためである。エッジ20bに垂直な平面14内で光散乱が起こると、散乱光43の一部は同じ平面14上に光軸16を有する光導波路11に比較的容易に結合する。こうして光導波路11への戻り光が生じる。
【0035】
一方、図2に示されるように、本実施形態のミラー21は、基準平面14の法線15に対して傾斜したエッジ21bを有している。したがって、基準平面14はエッジ21bと垂直ではない。このため、基準平面14上の光軸16に沿ってエッジ21bに光が入射しても、光散乱は基準平面14と非平行な面内で発生する。これにより散乱光の光導波路11への結合効率が低下するので、光導波路11への戻り光を低減することができる。
【0036】
以下では、図4を参照しながら本実施形態の効果を確かめる。図4は、光軸16および17の交差角度θの様々な値に対して、エッジ21bの傾斜角度φと光導波路11への戻り光の結合効率との関係を示している。ここで、入射光41は、真空で1.55μmの波長を有しており、光軸16を中心としたガウシアン分布を有するビームであるものとする。入射光41の横方向のMFD(モードフィールド径)は20μmであり、縦方向のMFDは10μmである。ここで、横方向および縦方向は、図3に示される入射光ビームの楕円形断面44の長軸方向および短軸方向を示し、これらはそれぞれX方向およびY方向に等しい。光導波路11および12の端面と反射面21aとの間隙には、屈折率1.45の屈折率整合材が充填されているものとする。
【0037】
図4に示されるように、いずれのθ値のもとでも、エッジ21bの傾斜角度φの増加とともに戻り光の結合効率が低減される。また、θが大きいほど結合効率の低減効果が大きい。特に、θが45°以上のときは、5°以上の傾斜角度φのもとで戻り光の結合効率を−40dB以下と大きく抑制できる。
【0038】
光導波路11および12のミラー21に対向する端部同士が成す角度は、光軸16および17間の角度θに応じて決まる。本実施形態のように光導波路11および12として平面導波路を使用するときは、θが大きいと光導波路11および12の曲率が高くなりがちである。この場合、光導波路11および12の曲げ部分で光が漏れ、ロスが発生するおそれが高い。可変光減衰器100を使用するシステムの構成にもよるが、漏れ光を特に抑制する必要がある場合は、角度θは30°以下が妥当であり、エッジ21bの傾斜角度φは10°以上が望ましい。また、基準平面14と実質的に平行な移動経路46に沿って反射面21aが移動する本実施形態では、傾斜角度φが75°以下であることが望ましい。角度φが大きくなるにつれて、光導波路11から光導波路12へ伝播する光のパワーを所定量だけ変更するために必要な反射面21aの移動距離も大きくなる。したがって、角度φがあまりに大きいと、可変光減衰器100の小型化が困難になる。
【0039】
また、反射面21aによって光41を効率良く反射するためには、エッジ21bの長さは、入射光41のエッジ21bに沿った方向におけるMFDよりも大きいことが好ましい。
【0040】
(第2実施形態)以下では、図1および図5を参照しながら、本発明の第2の実施形態を説明する。図5は、第2実施形態で使用されるミラー22を示す概略斜視図である。本実施形態の光部品は、図1に示される可変光減衰器100においてミラー21を図5に示されるミラー22で置き換えることにより得られる可変光減衰器である。本実施形態の可変光減衰器は、ミラー以外は可変光減衰器100と同様の構成を有する。
【0041】
ミラー22は、反射面22aを有する光反射器である。反射面22aは、実質的に平坦であり、光導波路11および12を伝播する所定波長の光に対して極めて高い反射率(例えば90%以上)を有する。反射面22aは実質的に均一な反射率を有している。ミラー22は、反射面22aが光導波路11および12の端面と対向するように移動する。反射面22aとこれらの端面との間隙には、屈折率整合材が充填されていてもよい。
【0042】
図5に示されるように、反射面22aは曲線状のエッジ22bを有している。エッジ22bは、ミラー22の移動に伴って二等分線18を横切るように移動する。反射面22aおよびエッジ22bは実質的にXY平面上に位置している。また、上述のように、二等分線18はZ軸に平行である。したがって、エッジ22bは二等分線18に対して実質的に垂直な平面上に配置されている。当然のことながら、エッジ22bは基準平面14の法線15と非平行である。
【0043】
なお、反射面22aを介して光導波路11および12間で光を効率良く結合させるためには、反射面22aおよびエッジ22bは二等分線18に対して完全に垂直であることが望ましい。しかし、実際は、二等分線18の反射面22a上への投影線と二等分線18とが成す角度が85°以上90°以下、より望ましくは89°以上90°以下であれば、充分に高い結合効率を得ることができる。
【0044】
反射面22aは、光路26の光軸16に沿って進行する光41を光導波路11から受け取ると、その光41を光路27の光軸17に沿って反射する。この結果、光導波路11からの光41は光軸17に沿って光導波路12に入射し、光導波路12内を伝播する。一方、光導波路11からの光が反射面22aに入射しない場合、その光は光導波路12には入射しない。
【0045】
光導波路11から反射面22aに入射する光がエッジ22b上に分布するときは、回折現象のためにエッジ22bで入射光が散乱する。散乱光の一部は光導波路12に結合し、光導波路12内を伝播する。図5に示される位置から矢印32の方向にミラー22が移動すると、反射面22a上のより狭い部分によって入射光が反射されるようになるので、光導波路11から光導波路12への結合効率が低下する。逆に、図3に示される位置から矢印33の方向にミラー22が移動すると、反射面22a上のより広い部分によって入射光が反射されるようになるので、光導波路11から光導波路12への結合効率が増加する。したがって、光導波路11から光導波路12へ伝播する光のパワーをミラー22の移動に応じて変更することができる。これが本実施形態の可変光減衰器の動作原理である。
【0046】
図5に示されるように、曲線状のエッジ22bは基準平面14と垂直ではない。このため、基準平面14上の光軸16に沿ってエッジ21bに光が入射しても、光散乱は基準平面14と非平行な面内で発生する。これにより散乱光の光導波路11への結合効率が低下するので、光導波路11への戻り光を低減することができる。
【0047】
より一般的に述べると、二等分線18と垂直な平面内で曲線状に延びるミラーのエッジは、そのエッジの具体的な形状にかかわらず、基準平面14と非垂直な方向に延びる部分を必ず含む。したがって、光散乱の少なくとも一部が、基準平面14と非平行な面内で発生することになる。このため、曲線状のエッジを有するミラーは、基準平面14と垂直な直線のみから構成されたエッジ20bを有するミラー20よりも、エッジで生じた散乱光を光導波路11に結合させにくい。したがって、曲線状のエッジを有するミラーを使用することにより、戻り光の結合効率を低減することができる。
【0048】
(第3実施形態)以下では、図1および図6を参照しながら、本発明の第3の実施形態を説明する。図6は、第3実施形態で使用されるミラー23を示す概略平面図である。本実施形態の光部品は、図1に示される可変光減衰器100においてミラー21を図6に示されるミラー23で置き換えることにより得られる可変光減衰器である。本実施形態の可変光減衰器は、ミラー以外は可変光減衰器100と同様の構成を有する。
【0049】
ミラー23は、反射面23aを有する光反射器である。反射面23aは、実質的に平坦であり、光導波路11および12を伝播する所定波長の光に対して極めて高い反射率(例えば90%以上)を有する。反射面23aは実質的に均一な反射率を有している。ミラー23は、反射面23aが光導波路11および12の端面と対向するように移動する。反射面23aとこれらの端面との間隙には、屈折率整合材が充填されていてもよい。
【0050】
図6に示されるように、反射面23aはノコギリ歯状のエッジ23bを有している。エッジ23bは、直線部23cと23dとが交互に接続された構成を有する。図6において直線部23cは右下がり延在し、直線部23dは右上がりに延在する。隣り合う直線部23cと直線部23dとが成す角度の二等分線はX軸に平行である。
【0051】
エッジ23bは、ミラー23の移動に伴って、光軸16および17が成す角度の二等分線18を横切るように移動する。反射面23aおよびエッジ23bは実質的にXY平面上に位置している。また、二等分線18はZ軸に平行である。したがって、エッジ23bは二等分線18に対して実質的に垂直な平面上に配置されている。基準平面14の法線15はY軸に平行である。エッジ23bを構成する直線部23cおよび23dは、いずれも基準平面14の法線15に対して傾斜している。これらの直線部23cおよび23dは、法線15との間に鋭角φを成している。
【0052】
なお、反射面23aを介して光導波路11および12間で光を効率良く結合させるためには、反射面23aおよびエッジ23bは二等分線18に対して完全に垂直であることが望ましい。しかし、実際は、二等分線18の反射面23a上への投影線と二等分線18とが成す角度が85°以上90°以下、より望ましくは89°以上90°以下であれば、充分に高い結合効率を得ることができる。
【0053】
図6では、反射面23aのノコギリ歯の各々が符号23eで表されている。各ノコギリ歯23eは、X方向に沿って高さHを有している。これらのノコギリ歯23eは、Y方向に沿って間隔Dで配列されている。
【0054】
反射面23aは、光路26の光軸16に沿って進行する光41を光導波路11から受け取ると、その光41を光路27の光軸17に沿って反射する。この結果、光導波路11からの光41は光導波路12の光軸17に沿って光導波路12に入射し、光導波路12内を伝播する。一方、光導波路11からの光41が反射面23aに入射しない場合、その光41は光導波路12には入射しない。
【0055】
光導波路11から反射面23aに入射する光がエッジ23b上に分布するときは、回折現象のためにエッジ23bで入射光が散乱する。散乱光の一部は光導波路12に結合し、光導波路12内を伝播する。ここで、図6に示されるXYZ座標系の原点の周辺に入射光のビームが照射されるものとする。図6に示される位置から矢印32の方向にミラー23が移動すると、反射面23a上のより狭い部分によって入射光が反射されるようになるので、光導波路11から光導波路12への結合効率が低下する。逆に、図6に示される位置から矢印33の方向にミラー23が移動すると、反射面33a上のより広い部分によって入射光が反射されるようになるので、光導波路11から光導波路12への結合効率が増加する。したがって、光導波路11から光導波路12へ伝播する光のパワーをミラー23の移動に応じて変更することができる。これが本実施形態の可変光減衰器の動作原理である。
【0056】
第1実施形態と同様に、エッジ23bがZX平面、すなわち基準平面14の法線15に対して傾斜した直線部23cおよび23dから構成されているので、光導波路11への戻り光を低減することができる。しかし、複数の直線部23cおよび23dで生じた散乱光が互いに干渉するため、充分な戻り光の低減を達成するために求められる条件は第1実施形態と異なる。
【0057】
そこで、以下では、本発明における戻り光の低減を別の観点から説明する。この説明では、下記の式
Rav(X)=∫R(X,Y)・Φ(Y)dY / ∫Φ(Y)dY (1)
で定義される関数Rav(X)を用いる。図2に示されるように、Xは基準平面14とミラーの反射面との交線に沿って延びるX軸方向の座標であり、Yはミラーの反射面と平行な平面においてX軸に垂直な方向の座標である。R(X,Y)は、XY平面内における反射率分布である。ここでは、反射面23aの存在するXY座標での反射率を100%とし、反射面23aの存在しないXY座標での反射率を0%とする。Φ(Y)は、光導波路11から反射面23に入射する光のY方向強度分布である。
【0058】
関数Rav(X)は、入射光ビームのY方向の分布で平均化した反射面の反射率分布を表している。このRav(X)を用いた戻り光抑制の解釈では、ミラーのエッジの形状にかかわらず、Rav(X)の分布に応じて戻り光が決定される。よって、まず図2のミラー21を用いて説明する。Φ(Y)をMFD(モードフィールド径)10μmのガウンシアン分布とし、直線部21bの傾斜角度φを0°、20°および45°としたときのミラー21(図2を参照)に関するRav(X)を図7に示す。図7では、Rav(X)が50%となる位置をX座標の原点としている。
【0059】
図7に示されるように、φ=0°の場合は、X>0のときRav(X)=0%であり、X<0のときRav(X)=100%である。つまり、X座標の原点においてRav(X)は非連続的である。φ=0°のとき、エッジ21bはもはや基準平面14の法線15に対して傾斜しておらず、図13に示されるエッジ20bのように法線15と平行な直線となる。一方、φ=20°および45°の場合、Rav(X)はX座標の原点において連続的であり、原点付近で滑らかに変化する。
【0060】
図7に示されるように、X座標の原点付近におけるRav(X)の変化は、傾斜角度φが大きくなるにつれて緩やかになる。したがって、φ=0°に対応するエッジ20bよりもφ>0°に対応するエッジ21bのほうが戻り光が少ないことを考慮すれば、戻り光の低減のために必要な条件とは関数Rav(X)が緩やかに変化することと考えられる。φ=0°の場合は、X=0という単一のX座標においてRavが0%から100%まで変化する。このことから、本発明者は、Rav(X)が異なる二つのX座標間で少なくとも10%から90%、より好ましくは0%から100%まで変化すれば、エッジ20bを有するミラー20と比較して光導波路11への戻り光を充分に低減できると考えた。
【0061】
なお、Rav(X)の変化がφ=0°の場合より緩やかであれば充分なので、Rav(X)が必ずしも連続的に変化する必要はない。例えば、Rav(X)が二つのX座標間で10%から90%まで階段状に変化する場合でも、戻り光の低減効果を充分に得ることができる。ただし、階段が細かいほど、戻り光の低減効果も大きくなり、より好ましい。
【0062】
以下では、Rav(X)が10%から90%まで変化するX方向の幅をエッジ幅と呼ぶことにする。上記で説明した図4の横軸をエッジ幅/入射光ビームのX方向のMFDに置き換えると、図4は図8のように描き直される。ここで、入射光ビームはガウンシアン分布を有しており、そのX方向のMFDは20μm、Y方向のMFDは10μmである。
【0063】
Rav(X)を用いた戻り光抑制の解釈では、ミラーのエッジの形状にかかわらず、Rav(X)の分布に応じて戻り光が決定される。したがって、図4は図2に示される形状のエッジ21bに関して得られたものであるが、これを描き直した図8は他の形状のエッジについても適用できる。
【0064】
図8に示されるように、光軸16および17間の角度θが45°以上のときは、図8の横軸の値、すなわち(エッジ幅/X方向のMFD)が0.03以上のときに、戻り光の結合効率を−40dB以下と大きく抑制できる。図6に示されるノコギリ歯状のエッジ23bでは、エッジ幅はノコギリ歯23eの高さHにほぼ等しい。したがって、ノコギリ歯23eの高さHがX方向のMFDの3%以上であれば、戻り光を大きく抑制できる。
【0065】
なお、本実施形態のように光導波路11および12が平面導波路の場合、θが大きいと光導波路11および12の曲率が高くなりがちである。光導波路の漏れ光を特に抑制する必要がある場合は、角度θは30°以下が妥当であり、エッジ21bの傾斜角度φは10°以上が望ましい。このとき、エッジ幅は、X方向のMFDの6%以上であることが望ましい。
【0066】
以下では、図9(a)および(b)を参照しながら、上記実施形態のミラーの製造方法について説明する。図9(a)および(b)は、ミラー23の例を示す概略斜視図である。
【0067】
図9(a)に示されるように、ミラー23は基板23fの一端部をノコギリ歯状に加工し、その後、基板23fの上面を高反射率の材料23gでコーティングすることにより製造することができる。他のミラー21および22についても同様に、基板端部を所望の形状に加工してから基板上面を高反射率の材料でコーティングすることにより製造できる。
【0068】
また、図9(b)に示されるように、ミラー23は基板23hの上面に高反射率の材質23iをノコギリ歯状の端部を有するようにコーティングすることによっても製造できる。他のミラー21および22についても同様に、基板の上面に高反射率の材料を所望の形状を有すようにコーティングすることにより製造できる。なお、この製法では、高反射材によって覆われていない部分が基板の上面に存在する。この部分での反射を低減するためには、基板の上面に反射防止コーティングを施してから高反射材をコーティングするか、あるいは基板と同程度の屈折率を持つ屈折率整合材中でミラーを移動させることが望ましい。
【0069】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0070】
上記実施形態では、本発明の光部品の一例として可変光減衰器が挙げられている。しかし、本発明は、一つの光路から別の光路へ伝播する光のパワーを変更する他の任意の光部品であってもよい。例えば、上記実施形態の可変光減衰器は、ミラーを移動させることにより、光導波路11から光導波路12へ伝播する光のパワーをほぼ0にすることが可能である。したがって、これらの可変光減衰器は、光導波路11から光導波路12へ伝播する光をオンオフする1×1光スイッチとして使用することができる。
【0071】
上記実施形態の光部品は、光路として光導波路を有する。しかし、本発明の光部品は、光導波路の代わりに、レンズなど任意の光学系によって媒質(例えば空気)中に形成される光路を備えていてもよい。また、光路として使用される光導波路は、上記実施形態における平面導波路に限られず、他の任意の光導波路、例えば光ファイバであってもよい。
【0072】
上記の実施形態では、ミラーの反射面が平坦である。しかし、本発明では、曲面部を含む反射面を採用してもよい。
【0073】
上記の実施形態では、ミラーが二等分線18と直交する方向に直線的に移動する。しかし、ミラーの移動は直線的でなくてもよい。例えば、まっすぐな棒状のアームの一端にミラーを固定し、アームの他端を中心にアームを旋回させることによりミラーを移動させてもよい。この場合、ミラーの移動経路は、略円弧状の曲線となる。移動経路の曲率半径が充分に大きければ、移動経路は近似的に直線となる。
【0074】
本発明の光部品において、ミラーの反射面に垂直な方向の厚みは任意である。例えば、ミラーは、反射面に垂直な方向に均一な厚みを有していてもよい。
【0075】
本発明の光部品において、ミラーまたはミラー駆動装置は、微小電子機械システム(MEMS)技術を用いて製造してもよい。ミラー駆動装置の例としては、静電アクチュエータや、電磁力を利用する電磁アクチュエータや、熱変形を利用するアクチュエータが挙げられる。例えば、静電アクチュエータは、可動電極部と固定電極部を有しており、可動電極部にミラーが設置される。両電極間に静電気力を発生させることで可動電極部が動かされ、それに応じてミラーが移動する。
【0076】
第3実施形態では、複数のノコギリ歯が同じ高さと幅を有している。しかし、ミラーの反射面は、高さまたは幅、あるいはその双方が互いに異なる複数のノコギリ歯を有していてもよい。
【0077】
上記実施形態では、均一な反射率を有する反射面のエッジの適切な形状によって望ましいRav(X)が得られる。しかし、この代わりに、反射面上の反射率の分布によって望ましいRav(X)を達成してもよい。例えば、反射面にコーティングされる高反射率材料の厚みを位置に応じて変動させることにより、反射率の分布を実現してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】第1実施形態の可変光減衰器を示す概略平面図である。
【図2】第1実施形態のミラーを示す概略斜視図である。
【図3】図2とは別の角度から見たミラーの反射面を示す図である。
【図4】エッジ角度に応じた戻り光の結合効率を示す図である。
【図5】第2実施形態のミラーを示す概略斜視図である。
【図6】第3実施形態のミラーを示す概略平面図である。
【図7】関数Rav(X)を示す図である。
【図8】(エッジ幅/X方向のMFD)に応じた戻り光の結合効率を示す図である。
【図9】第3実施形態のミラーの例を示す概略斜視図である。
【図10】可変光減衰器の一例を示す概略平面図である。
【図11】ミラーのエッジの位置と結合効率との関係を示す図である。
【図12】戻り光を低減する一つの方法を示す概略図である。
【図13】ミラーを示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0079】
10…平面光波回路(PLC)、11および12…光導波路、14…二つの光軸を含む平面、15…二つの光軸を含む平面の法線、16および17…光軸、18…二つの光軸が成す角度の二等分線、21〜23…ミラー、21a〜23a…反射面、21b〜23b…エッジ、23cおよび23d…直線部、23e…ノコギリ歯、26および27…光路、30…ミラー駆動装置、32および33…ミラーの移動方向、40…可動ミラー装置、46…ミラーの移動経路、100…可変光減衰器。
【技術分野】
【0001】
この発明は、第1の光路から第2の光路へ伝播する光のパワーを調節する光部品に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信では、光信号のパワーを調節するための光部品、例えば可変光減衰器や光スイッチがしばしば使用される。このような光部品の一例では、二つの光導波路間の光路上にミラーを配置し、そのミラーを移動させることにより反射光量を変化させ、それにより一方の光導波路から他方の光導波路に伝播する光のパワーを調節する(非特許文献1を参照)。
【非特許文献1】C.Marxerほか、「Micro-Opto-Mechanical 2x2 Switch for Single Mode Fibers based on Plasma-Etched Silicon Mirror and Electrostatic Actuation」(preceding 11th IEEE Workshop on Micro-Electro-Mechanical System、1998年、233〜237頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図10は、ミラーを使用する可変光減衰器の一例を示す概略平面図である。可変光減衰器50は、平面光波回路(Planer Lightwave Circuit:PLC)10、ミラー20およびミラー駆動装置30を有する。PLC10中の光導波路11および12は、平面13に対して鏡面対称に配置された端部を有している。これらの端部は、同一平面上に揃えられた端面11aおよび12aを有している。ミラー20は、これらの端面11aおよび12aに平行な反射面20aを有している。ミラー駆動装置30は、矢印32および33で示される方向に沿ってミラー20を移動させることができる。光導波路11からの光は、反射面20aに入射すると、光導波路12に向けて反射される。これにより、光導波路11から光導波路12に光が伝播する。一方、光導波路11からの光が反射面20aに入射しない場合、その光は光導波路12には入射しない。
【0004】
図10に示されるように、反射面20aは、ミラー20の移動に伴って平面13を横切るように移動するエッジ20bを有している。エッジ20bでは、回折現象のため入射光が様々な方向に散乱される。このため、光導波路11からの光の一部が光導波路11に戻り、光導波路11内を再び伝播する。この光が光導波路11への戻り光である。このような戻り光は、光導波路11内を伝播する信号光の波形を歪ませ、通信エラーを引き起こすことがある。
【0005】
そこで、本発明は、第1の光路から第2の光路へ伝播する光のパワーを調節する光部品において第1の光路への戻り光を低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
図11は、図10に示される可変光減衰器50におけるミラーエッジ20bの位置と結合効率との関係を示している。ミラーエッジ位置が0μmのとき、エッジ20bは光導波路11および12間の平面13上に位置する。図11において実線は、光導波路11から光導波路12へ進行する光の結合効率を示し、一点鎖線は、光導波路11から光導波路11へ戻る光の結合効率を示し、二点鎖線は、光導波路12から光導波路12へ戻る光の結合効率を示している。図11では、一点鎖線と二点鎖線とが重なっている。図11に示されるように、可変光減衰器50では、光導波路11および12への戻り光の結合効率が大きい。したがって、光導波路中の信号光の波形が比較的歪みやすい。
【0007】
信号光波形の歪みを防ぐ方法として、図12に示されるように、光導波路11および12にアイソレータ51および52を接続することが考えられる。光導波路11を伝播する信号光55はミラー20によって反射されると光導波路12に入射し、光導波路12内を伝播する。ミラー20のエッジ部20bでの散乱によって生じた光導波路11への戻り光56は、光導波路11に接続されたアイソレータ51によって遮断される。また、光導波路12に接続されたアイソレータ52は、可変光減衰器50に接続された外部デバイスからの戻り光57を遮断し、可変光減衰器50への入射を防ぐ。したがって、光導波路12から光導波路12へ戻る光の発生も防止される。なお、戻り光の結合効率の代表的な許容値は−45dBであるが、可変光減衰器が使用されるシステムに応じて許容値は異なる。
【0008】
上記のようにアイソレータを使用すれば、可変光減衰器を使用する光通信システム内で戻り光が信号光に及ぼす影響を抑えることはできる。しかし、アイソレータを光導波路に接続する必要が生じるため、システムの構築が煩雑になるとともに、システムの製造コストも増加する。そこで、本発明者らは、戻り光を低減することの可能な別の光部品およびミラーを考案した。
【0009】
一つの側面において、本発明は、第1の光軸を有する第1の光路と、第1の光軸と非平行な第2の光軸を有する第2の光路と、第1の光軸と第2の光軸とが成す角度の二等分線を横切って移動するミラーとを備えている。ミラーの表面には、第1の光路から光を受け取るとその光を第2の光路へ反射する反射部が設けられている。
【0010】
反射部は、二等分線に対して実質的に垂直な平面上に配置された直線部を含むエッジを有していてもよい。直線部は、第1および第2の光軸を含む平面の法線に対して傾斜していてもよい。あるいは、反射部は、上記の二等分線に対して実質的に垂直な平面上に配置された曲線部を含むエッジを有していてもよい。
【0011】
これらの直線部および曲線部は、第1および第2の光軸を含む平面の法線と非平行である。反射面のエッジ上におけるこの非平行な部分は、第1光路からの光がその部分に入射したときに生じる散乱光の第1の光軸方向の成分を抑える。これにより、第1光路への戻り光が低減される。
【0012】
第1光路への戻り光のさらなる低減のために、上記の鋭角φは5°以上であることが好ましい。
【0013】
このほかに、反射部は、上記の二等分線に対して実質的に垂直な平面上に配置された部分を含むエッジを有しており、その部分は、下記の式
Rav(X)=∫R(X,Y)・Φ(Y)dY / ∫Φ(Y)dY(ここで、Xは第1および第2の光軸を含む平面と反射部との交線に沿って延びるX軸方向の座標、Yは反射部上でX軸と垂直に延びるY軸方向の座標、R(X,Y)はXY平面上における反射率分布、Φ(Y)は第1の光路から反射部に入射する光のY方向強度分布)で定義される関数Rav(X)が異なる二つのX座標間で少なくとも10%から90%まで変化するような分布を有していてもよい。
【0014】
ミラーの反射面のエッジにおいてこのような分布の関数Rav(X)を与える部分は、第1光路からの光がその部分に入射したときに生じる散乱光の第1の光軸方向の成分を抑える。これにより、第1光路への戻り光が低減される。
【0015】
第1光路への戻り光のさらなる低減のために、関数Rav(X)が10%から90%まで変化する二つのX座標の間隔は、第1の光路から反射部に入射する光のX方向のモードフィールド径の3%以上であることが好ましい。
【0016】
本発明の光部品は、第1の光路に光学的に結合された光導波路および第2の光路に光学的に結合された光導波路の少なくとも一方をさらに備えていてもよい。その光導波路は、平面導波路であってもよいし、光ファイバであってもよい。
【0017】
別の側面において、本発明は、反射面と、所定の移動経路に沿って反射面を移動させることの可能な駆動装置とを備える可動ミラー装置である。移動経路は、反射面を実質的に垂直に横断する平面に対して平行に延在している。反射面は、移動経路に沿った反射面の移動に応じてその平面と交差しつつ移動するエッジを有している。エッジは、その平面の法線に対して傾斜した直線部を含んでいてもよい。直線部と法線とが成す鋭角が5°以上であることが好ましい。あるいは、エッジは、曲線部を含んでいてもよい。
【0018】
これらの直線部および曲線部は、反射面の移動経路と平行な上記の平面の法線と非平行である。反射面のエッジ上におけるこの非平行な部分は、上記の平面上に配置された光軸を有する光路上の光がその部分に入射したときに生じる散乱光のその光軸方向の成分を抑える。これにより、その光路への戻り光が低減される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、第1の光路から第2の光路へ伝播する光のパワーを調節する光部品において第1の光路への戻り光を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
(第1実施形態)図1は、第1実施形態の光部品を示す概略平面図である。この光部品は、可変光減衰器100である。可変光減衰器100は、平面光波回路(Planer Lightwave Circuit:PLC)10、ミラー21およびミラー駆動装置30を有する。ミラー21およびミラー駆動装置30は、可動ミラー装置40を構成する。
【0022】
PLC10は、2本の光導波路11および12を有する。光導波路11および12は、図1の紙面に平行に延びる平面導波路である。光導波路11および12は、例えば石英ガラスから構成されている。光導波路11および12のミラー21に近い側の端部は、互いに交差して重なり合っていてもよいし、互いに離間していてもよい。
【0023】
ミラー21は、反射面21aを有する光反射器である。反射面21aは、実質的に平坦であり、光導波路11および12を伝播する所定波長の光に対して極めて高い反射率(例えば90%以上)を有する。反射面21aは実質的に均一な反射率を有している。反射面21aは、ミラー21の表面に設けられ、図1の紙面に垂直な方向に延在する。ミラー21は、反射面21aが光導波路11および12の端面と対向するように移動する。反射面21aとこれらの端面との間隙には、屈折率整合材が充填されていてもよい。ミラー21の詳細は後述する。
【0024】
ミラー駆動装置30は、矢印32および33で示されるように、ZX平面と実質的に平行にミラー21を移動させる。これに応じて、ミラー21の反射面21aは移動経路46に沿って移動する。ミラー21の移動は可逆的である。移動経路46は、反射面21aを実質的に垂直に横断する平面(例えば、図1の紙面)に対して平行に延在している。本実施形態では、移動経路46は、実質的にX方向に延びる直線状である。したがって、光導波路11および12の端面の付近では、矢印32および33で示されるように、反射面21aは光導波路11および12の端面と実質的に平行に移動する。ミラー駆動装置30の一例は、上記の非特許文献1に示されるような静電アクチュエータである。
【0025】
なお、移動経路46は曲線状であってもよい。曲率が充分に大きければ、光導波路11および12の端面の付近で反射面21aを実質的にX方向に移動させることができる。
【0026】
図1には、説明の便宜のためにXYZ直交座標系が描かれている。X軸は、導波路11および12の双方の光軸を含む平面と反射面21aとの交線に沿って延在する。Y軸は、導波路11および12の双方の光軸が成す角度の二等分線に垂直な平面内においてX軸に対して垂直に延在する。Z軸は、その二等分線と平行に延在する。
【0027】
以下では、図2および図3を参照しながら、ミラー21についてさらに詳細に説明する。図2は、ミラー21を示す概略斜視図である。図3は、図2とは別の角度から見たミラー21の反射面21aを示す図である。
【0028】
図2に示されるように、可変光減衰器100は、光導波路11からの光をミラー21を介して光導波路12へ送るための光路26および27を有している。光路26および27は、それぞれ光導波路11および12に光学的に結合されている。ミラー21の反射面21aは、光路26と交差するように移動する。光路26および27は、光導波路11および12の端面と反射面21aとの間に延在している。光導波路11から出射した光41は、ミラー21に向かって光路26上を進行し、反射面21aで反射され、光導波路12に向かって光路27上を進行する。光路26および27は、それぞれ光軸16および17を有している。光軸16および17は、図1の紙面に平行な平面上に配置されている。光軸16および17は非平行であり、角度θで交差する。角度θの二等分線18は、光軸16および17を含む平面上を延在する。図2における符号14は、光軸16および17を含む平面を示している。以下では、平面14を基準平面と呼ぶことにする。基準平面14は、反射面21aの移動経路46と実質的に平行であり、また、反射面21aを実質的に垂直に横断している。
【0029】
図2に示されるように、ミラー21の反射面21aは台形形状をしている。反射面21aは、ミラー21の移動に伴って二等分線18を横切るように移動する直線状のエッジ21bを有している。エッジ21bは、移動経路46に沿った反射面21aの移動に応じて、基準平面14と交差しつつ移動する。反射面21aおよびエッジ21bは実質的にXY平面上に位置している。また、上述のように、二等分線18はZ軸に平行である。したがって、エッジ21bは二等分線18に対して実質的に垂直な平面上に配置されている。エッジ21bは、基準平面14の法線15に対して傾斜しており、法線15との間に鋭角φを成している。
【0030】
なお、反射面21aを介して光導波路11および12間で光を効率良く結合させるためには、反射面21aおよびエッジ21bは二等分線18に対して完全に垂直であることが望ましい。しかし、実際は、二等分線18の反射面21a上への投影線と二等分線18とが成す角度が85°以上90°以下、より望ましくは89°以上90°以下であれば、充分に高い結合効率を得ることができる。
【0031】
反射面21aは、光路26の光軸16に沿って進行する光41を光導波路11から受け取ると、その光41を光路27の光軸17に沿って反射する。この結果、光導波路11からの光41は光軸17に沿って光導波路12に入射し、光導波路12内を伝播する。一方、光導波路11からの光が反射面21aに入射しない場合、その光は光導波路12には入射しない。
【0032】
図3には、入射光41のビーム44の断面が拡大して描かれている。図3に示されるように、光導波路11から反射面21aに入射する光がエッジ21b上に分布するときは、回折現象のためにエッジ21bで入射光が散乱する。散乱光の一部は光導波路12に結合し、光導波路12内を伝播する。図3に示される位置から矢印32の方向にミラー21が移動すると、反射面21a上のより狭い部分によって入射光が反射されるようになるので、光導波路11から光導波路12への結合効率が低下する。逆に、図3に示される位置から矢印33の方向にミラー21が移動すると、反射面21a上のより広い部分によって入射光が反射されるようになるので、光導波路11から光導波路12への結合効率が増加する。したがって、光導波路11から光導波路12へ伝播する光のパワーをミラー21の移動に応じて変更することができる。これが可変光減衰器100の動作原理である。
【0033】
エッジ21bでの散乱光の一部は光導波路11に戻る。これが光導波路11への戻り光である。本実施形態では、エッジ21bが基準平面14の法線15に対して傾斜しているために戻り光が低減される。以下では、図2および図13を参照し、図10に示されるミラー20と比較しながら、本実施形態のミラー21による戻り光の低減を説明する。
【0034】
図13は、図10に示されるミラー20を示す概略斜視図である。ミラー20の反射面20aは、エッジ20bを有する。エッジ20bは、基準平面14の法線15と平行な直線部である。つまり、エッジ20bは基準平面14に対して垂直である。理論的には、エッジ20bに実質的に垂直な基準平面14上の光軸16に沿ってエッジ20bに光が入射すると、光散乱はその平面14内で発生し、散乱光43は平面14に沿って進行する。平面14外で散乱光が発生しないのは、図13において、基準平面14の上側に位置する反射面20aの部分で反射された光成分と、基準平面14の下側に位置する反射面20aの部分で反射された光成分とが、ホイヘンスの原理にしたがって打ち消し合うためである。エッジ20bに垂直な平面14内で光散乱が起こると、散乱光43の一部は同じ平面14上に光軸16を有する光導波路11に比較的容易に結合する。こうして光導波路11への戻り光が生じる。
【0035】
一方、図2に示されるように、本実施形態のミラー21は、基準平面14の法線15に対して傾斜したエッジ21bを有している。したがって、基準平面14はエッジ21bと垂直ではない。このため、基準平面14上の光軸16に沿ってエッジ21bに光が入射しても、光散乱は基準平面14と非平行な面内で発生する。これにより散乱光の光導波路11への結合効率が低下するので、光導波路11への戻り光を低減することができる。
【0036】
以下では、図4を参照しながら本実施形態の効果を確かめる。図4は、光軸16および17の交差角度θの様々な値に対して、エッジ21bの傾斜角度φと光導波路11への戻り光の結合効率との関係を示している。ここで、入射光41は、真空で1.55μmの波長を有しており、光軸16を中心としたガウシアン分布を有するビームであるものとする。入射光41の横方向のMFD(モードフィールド径)は20μmであり、縦方向のMFDは10μmである。ここで、横方向および縦方向は、図3に示される入射光ビームの楕円形断面44の長軸方向および短軸方向を示し、これらはそれぞれX方向およびY方向に等しい。光導波路11および12の端面と反射面21aとの間隙には、屈折率1.45の屈折率整合材が充填されているものとする。
【0037】
図4に示されるように、いずれのθ値のもとでも、エッジ21bの傾斜角度φの増加とともに戻り光の結合効率が低減される。また、θが大きいほど結合効率の低減効果が大きい。特に、θが45°以上のときは、5°以上の傾斜角度φのもとで戻り光の結合効率を−40dB以下と大きく抑制できる。
【0038】
光導波路11および12のミラー21に対向する端部同士が成す角度は、光軸16および17間の角度θに応じて決まる。本実施形態のように光導波路11および12として平面導波路を使用するときは、θが大きいと光導波路11および12の曲率が高くなりがちである。この場合、光導波路11および12の曲げ部分で光が漏れ、ロスが発生するおそれが高い。可変光減衰器100を使用するシステムの構成にもよるが、漏れ光を特に抑制する必要がある場合は、角度θは30°以下が妥当であり、エッジ21bの傾斜角度φは10°以上が望ましい。また、基準平面14と実質的に平行な移動経路46に沿って反射面21aが移動する本実施形態では、傾斜角度φが75°以下であることが望ましい。角度φが大きくなるにつれて、光導波路11から光導波路12へ伝播する光のパワーを所定量だけ変更するために必要な反射面21aの移動距離も大きくなる。したがって、角度φがあまりに大きいと、可変光減衰器100の小型化が困難になる。
【0039】
また、反射面21aによって光41を効率良く反射するためには、エッジ21bの長さは、入射光41のエッジ21bに沿った方向におけるMFDよりも大きいことが好ましい。
【0040】
(第2実施形態)以下では、図1および図5を参照しながら、本発明の第2の実施形態を説明する。図5は、第2実施形態で使用されるミラー22を示す概略斜視図である。本実施形態の光部品は、図1に示される可変光減衰器100においてミラー21を図5に示されるミラー22で置き換えることにより得られる可変光減衰器である。本実施形態の可変光減衰器は、ミラー以外は可変光減衰器100と同様の構成を有する。
【0041】
ミラー22は、反射面22aを有する光反射器である。反射面22aは、実質的に平坦であり、光導波路11および12を伝播する所定波長の光に対して極めて高い反射率(例えば90%以上)を有する。反射面22aは実質的に均一な反射率を有している。ミラー22は、反射面22aが光導波路11および12の端面と対向するように移動する。反射面22aとこれらの端面との間隙には、屈折率整合材が充填されていてもよい。
【0042】
図5に示されるように、反射面22aは曲線状のエッジ22bを有している。エッジ22bは、ミラー22の移動に伴って二等分線18を横切るように移動する。反射面22aおよびエッジ22bは実質的にXY平面上に位置している。また、上述のように、二等分線18はZ軸に平行である。したがって、エッジ22bは二等分線18に対して実質的に垂直な平面上に配置されている。当然のことながら、エッジ22bは基準平面14の法線15と非平行である。
【0043】
なお、反射面22aを介して光導波路11および12間で光を効率良く結合させるためには、反射面22aおよびエッジ22bは二等分線18に対して完全に垂直であることが望ましい。しかし、実際は、二等分線18の反射面22a上への投影線と二等分線18とが成す角度が85°以上90°以下、より望ましくは89°以上90°以下であれば、充分に高い結合効率を得ることができる。
【0044】
反射面22aは、光路26の光軸16に沿って進行する光41を光導波路11から受け取ると、その光41を光路27の光軸17に沿って反射する。この結果、光導波路11からの光41は光軸17に沿って光導波路12に入射し、光導波路12内を伝播する。一方、光導波路11からの光が反射面22aに入射しない場合、その光は光導波路12には入射しない。
【0045】
光導波路11から反射面22aに入射する光がエッジ22b上に分布するときは、回折現象のためにエッジ22bで入射光が散乱する。散乱光の一部は光導波路12に結合し、光導波路12内を伝播する。図5に示される位置から矢印32の方向にミラー22が移動すると、反射面22a上のより狭い部分によって入射光が反射されるようになるので、光導波路11から光導波路12への結合効率が低下する。逆に、図3に示される位置から矢印33の方向にミラー22が移動すると、反射面22a上のより広い部分によって入射光が反射されるようになるので、光導波路11から光導波路12への結合効率が増加する。したがって、光導波路11から光導波路12へ伝播する光のパワーをミラー22の移動に応じて変更することができる。これが本実施形態の可変光減衰器の動作原理である。
【0046】
図5に示されるように、曲線状のエッジ22bは基準平面14と垂直ではない。このため、基準平面14上の光軸16に沿ってエッジ21bに光が入射しても、光散乱は基準平面14と非平行な面内で発生する。これにより散乱光の光導波路11への結合効率が低下するので、光導波路11への戻り光を低減することができる。
【0047】
より一般的に述べると、二等分線18と垂直な平面内で曲線状に延びるミラーのエッジは、そのエッジの具体的な形状にかかわらず、基準平面14と非垂直な方向に延びる部分を必ず含む。したがって、光散乱の少なくとも一部が、基準平面14と非平行な面内で発生することになる。このため、曲線状のエッジを有するミラーは、基準平面14と垂直な直線のみから構成されたエッジ20bを有するミラー20よりも、エッジで生じた散乱光を光導波路11に結合させにくい。したがって、曲線状のエッジを有するミラーを使用することにより、戻り光の結合効率を低減することができる。
【0048】
(第3実施形態)以下では、図1および図6を参照しながら、本発明の第3の実施形態を説明する。図6は、第3実施形態で使用されるミラー23を示す概略平面図である。本実施形態の光部品は、図1に示される可変光減衰器100においてミラー21を図6に示されるミラー23で置き換えることにより得られる可変光減衰器である。本実施形態の可変光減衰器は、ミラー以外は可変光減衰器100と同様の構成を有する。
【0049】
ミラー23は、反射面23aを有する光反射器である。反射面23aは、実質的に平坦であり、光導波路11および12を伝播する所定波長の光に対して極めて高い反射率(例えば90%以上)を有する。反射面23aは実質的に均一な反射率を有している。ミラー23は、反射面23aが光導波路11および12の端面と対向するように移動する。反射面23aとこれらの端面との間隙には、屈折率整合材が充填されていてもよい。
【0050】
図6に示されるように、反射面23aはノコギリ歯状のエッジ23bを有している。エッジ23bは、直線部23cと23dとが交互に接続された構成を有する。図6において直線部23cは右下がり延在し、直線部23dは右上がりに延在する。隣り合う直線部23cと直線部23dとが成す角度の二等分線はX軸に平行である。
【0051】
エッジ23bは、ミラー23の移動に伴って、光軸16および17が成す角度の二等分線18を横切るように移動する。反射面23aおよびエッジ23bは実質的にXY平面上に位置している。また、二等分線18はZ軸に平行である。したがって、エッジ23bは二等分線18に対して実質的に垂直な平面上に配置されている。基準平面14の法線15はY軸に平行である。エッジ23bを構成する直線部23cおよび23dは、いずれも基準平面14の法線15に対して傾斜している。これらの直線部23cおよび23dは、法線15との間に鋭角φを成している。
【0052】
なお、反射面23aを介して光導波路11および12間で光を効率良く結合させるためには、反射面23aおよびエッジ23bは二等分線18に対して完全に垂直であることが望ましい。しかし、実際は、二等分線18の反射面23a上への投影線と二等分線18とが成す角度が85°以上90°以下、より望ましくは89°以上90°以下であれば、充分に高い結合効率を得ることができる。
【0053】
図6では、反射面23aのノコギリ歯の各々が符号23eで表されている。各ノコギリ歯23eは、X方向に沿って高さHを有している。これらのノコギリ歯23eは、Y方向に沿って間隔Dで配列されている。
【0054】
反射面23aは、光路26の光軸16に沿って進行する光41を光導波路11から受け取ると、その光41を光路27の光軸17に沿って反射する。この結果、光導波路11からの光41は光導波路12の光軸17に沿って光導波路12に入射し、光導波路12内を伝播する。一方、光導波路11からの光41が反射面23aに入射しない場合、その光41は光導波路12には入射しない。
【0055】
光導波路11から反射面23aに入射する光がエッジ23b上に分布するときは、回折現象のためにエッジ23bで入射光が散乱する。散乱光の一部は光導波路12に結合し、光導波路12内を伝播する。ここで、図6に示されるXYZ座標系の原点の周辺に入射光のビームが照射されるものとする。図6に示される位置から矢印32の方向にミラー23が移動すると、反射面23a上のより狭い部分によって入射光が反射されるようになるので、光導波路11から光導波路12への結合効率が低下する。逆に、図6に示される位置から矢印33の方向にミラー23が移動すると、反射面33a上のより広い部分によって入射光が反射されるようになるので、光導波路11から光導波路12への結合効率が増加する。したがって、光導波路11から光導波路12へ伝播する光のパワーをミラー23の移動に応じて変更することができる。これが本実施形態の可変光減衰器の動作原理である。
【0056】
第1実施形態と同様に、エッジ23bがZX平面、すなわち基準平面14の法線15に対して傾斜した直線部23cおよび23dから構成されているので、光導波路11への戻り光を低減することができる。しかし、複数の直線部23cおよび23dで生じた散乱光が互いに干渉するため、充分な戻り光の低減を達成するために求められる条件は第1実施形態と異なる。
【0057】
そこで、以下では、本発明における戻り光の低減を別の観点から説明する。この説明では、下記の式
Rav(X)=∫R(X,Y)・Φ(Y)dY / ∫Φ(Y)dY (1)
で定義される関数Rav(X)を用いる。図2に示されるように、Xは基準平面14とミラーの反射面との交線に沿って延びるX軸方向の座標であり、Yはミラーの反射面と平行な平面においてX軸に垂直な方向の座標である。R(X,Y)は、XY平面内における反射率分布である。ここでは、反射面23aの存在するXY座標での反射率を100%とし、反射面23aの存在しないXY座標での反射率を0%とする。Φ(Y)は、光導波路11から反射面23に入射する光のY方向強度分布である。
【0058】
関数Rav(X)は、入射光ビームのY方向の分布で平均化した反射面の反射率分布を表している。このRav(X)を用いた戻り光抑制の解釈では、ミラーのエッジの形状にかかわらず、Rav(X)の分布に応じて戻り光が決定される。よって、まず図2のミラー21を用いて説明する。Φ(Y)をMFD(モードフィールド径)10μmのガウンシアン分布とし、直線部21bの傾斜角度φを0°、20°および45°としたときのミラー21(図2を参照)に関するRav(X)を図7に示す。図7では、Rav(X)が50%となる位置をX座標の原点としている。
【0059】
図7に示されるように、φ=0°の場合は、X>0のときRav(X)=0%であり、X<0のときRav(X)=100%である。つまり、X座標の原点においてRav(X)は非連続的である。φ=0°のとき、エッジ21bはもはや基準平面14の法線15に対して傾斜しておらず、図13に示されるエッジ20bのように法線15と平行な直線となる。一方、φ=20°および45°の場合、Rav(X)はX座標の原点において連続的であり、原点付近で滑らかに変化する。
【0060】
図7に示されるように、X座標の原点付近におけるRav(X)の変化は、傾斜角度φが大きくなるにつれて緩やかになる。したがって、φ=0°に対応するエッジ20bよりもφ>0°に対応するエッジ21bのほうが戻り光が少ないことを考慮すれば、戻り光の低減のために必要な条件とは関数Rav(X)が緩やかに変化することと考えられる。φ=0°の場合は、X=0という単一のX座標においてRavが0%から100%まで変化する。このことから、本発明者は、Rav(X)が異なる二つのX座標間で少なくとも10%から90%、より好ましくは0%から100%まで変化すれば、エッジ20bを有するミラー20と比較して光導波路11への戻り光を充分に低減できると考えた。
【0061】
なお、Rav(X)の変化がφ=0°の場合より緩やかであれば充分なので、Rav(X)が必ずしも連続的に変化する必要はない。例えば、Rav(X)が二つのX座標間で10%から90%まで階段状に変化する場合でも、戻り光の低減効果を充分に得ることができる。ただし、階段が細かいほど、戻り光の低減効果も大きくなり、より好ましい。
【0062】
以下では、Rav(X)が10%から90%まで変化するX方向の幅をエッジ幅と呼ぶことにする。上記で説明した図4の横軸をエッジ幅/入射光ビームのX方向のMFDに置き換えると、図4は図8のように描き直される。ここで、入射光ビームはガウンシアン分布を有しており、そのX方向のMFDは20μm、Y方向のMFDは10μmである。
【0063】
Rav(X)を用いた戻り光抑制の解釈では、ミラーのエッジの形状にかかわらず、Rav(X)の分布に応じて戻り光が決定される。したがって、図4は図2に示される形状のエッジ21bに関して得られたものであるが、これを描き直した図8は他の形状のエッジについても適用できる。
【0064】
図8に示されるように、光軸16および17間の角度θが45°以上のときは、図8の横軸の値、すなわち(エッジ幅/X方向のMFD)が0.03以上のときに、戻り光の結合効率を−40dB以下と大きく抑制できる。図6に示されるノコギリ歯状のエッジ23bでは、エッジ幅はノコギリ歯23eの高さHにほぼ等しい。したがって、ノコギリ歯23eの高さHがX方向のMFDの3%以上であれば、戻り光を大きく抑制できる。
【0065】
なお、本実施形態のように光導波路11および12が平面導波路の場合、θが大きいと光導波路11および12の曲率が高くなりがちである。光導波路の漏れ光を特に抑制する必要がある場合は、角度θは30°以下が妥当であり、エッジ21bの傾斜角度φは10°以上が望ましい。このとき、エッジ幅は、X方向のMFDの6%以上であることが望ましい。
【0066】
以下では、図9(a)および(b)を参照しながら、上記実施形態のミラーの製造方法について説明する。図9(a)および(b)は、ミラー23の例を示す概略斜視図である。
【0067】
図9(a)に示されるように、ミラー23は基板23fの一端部をノコギリ歯状に加工し、その後、基板23fの上面を高反射率の材料23gでコーティングすることにより製造することができる。他のミラー21および22についても同様に、基板端部を所望の形状に加工してから基板上面を高反射率の材料でコーティングすることにより製造できる。
【0068】
また、図9(b)に示されるように、ミラー23は基板23hの上面に高反射率の材質23iをノコギリ歯状の端部を有するようにコーティングすることによっても製造できる。他のミラー21および22についても同様に、基板の上面に高反射率の材料を所望の形状を有すようにコーティングすることにより製造できる。なお、この製法では、高反射材によって覆われていない部分が基板の上面に存在する。この部分での反射を低減するためには、基板の上面に反射防止コーティングを施してから高反射材をコーティングするか、あるいは基板と同程度の屈折率を持つ屈折率整合材中でミラーを移動させることが望ましい。
【0069】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0070】
上記実施形態では、本発明の光部品の一例として可変光減衰器が挙げられている。しかし、本発明は、一つの光路から別の光路へ伝播する光のパワーを変更する他の任意の光部品であってもよい。例えば、上記実施形態の可変光減衰器は、ミラーを移動させることにより、光導波路11から光導波路12へ伝播する光のパワーをほぼ0にすることが可能である。したがって、これらの可変光減衰器は、光導波路11から光導波路12へ伝播する光をオンオフする1×1光スイッチとして使用することができる。
【0071】
上記実施形態の光部品は、光路として光導波路を有する。しかし、本発明の光部品は、光導波路の代わりに、レンズなど任意の光学系によって媒質(例えば空気)中に形成される光路を備えていてもよい。また、光路として使用される光導波路は、上記実施形態における平面導波路に限られず、他の任意の光導波路、例えば光ファイバであってもよい。
【0072】
上記の実施形態では、ミラーの反射面が平坦である。しかし、本発明では、曲面部を含む反射面を採用してもよい。
【0073】
上記の実施形態では、ミラーが二等分線18と直交する方向に直線的に移動する。しかし、ミラーの移動は直線的でなくてもよい。例えば、まっすぐな棒状のアームの一端にミラーを固定し、アームの他端を中心にアームを旋回させることによりミラーを移動させてもよい。この場合、ミラーの移動経路は、略円弧状の曲線となる。移動経路の曲率半径が充分に大きければ、移動経路は近似的に直線となる。
【0074】
本発明の光部品において、ミラーの反射面に垂直な方向の厚みは任意である。例えば、ミラーは、反射面に垂直な方向に均一な厚みを有していてもよい。
【0075】
本発明の光部品において、ミラーまたはミラー駆動装置は、微小電子機械システム(MEMS)技術を用いて製造してもよい。ミラー駆動装置の例としては、静電アクチュエータや、電磁力を利用する電磁アクチュエータや、熱変形を利用するアクチュエータが挙げられる。例えば、静電アクチュエータは、可動電極部と固定電極部を有しており、可動電極部にミラーが設置される。両電極間に静電気力を発生させることで可動電極部が動かされ、それに応じてミラーが移動する。
【0076】
第3実施形態では、複数のノコギリ歯が同じ高さと幅を有している。しかし、ミラーの反射面は、高さまたは幅、あるいはその双方が互いに異なる複数のノコギリ歯を有していてもよい。
【0077】
上記実施形態では、均一な反射率を有する反射面のエッジの適切な形状によって望ましいRav(X)が得られる。しかし、この代わりに、反射面上の反射率の分布によって望ましいRav(X)を達成してもよい。例えば、反射面にコーティングされる高反射率材料の厚みを位置に応じて変動させることにより、反射率の分布を実現してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】第1実施形態の可変光減衰器を示す概略平面図である。
【図2】第1実施形態のミラーを示す概略斜視図である。
【図3】図2とは別の角度から見たミラーの反射面を示す図である。
【図4】エッジ角度に応じた戻り光の結合効率を示す図である。
【図5】第2実施形態のミラーを示す概略斜視図である。
【図6】第3実施形態のミラーを示す概略平面図である。
【図7】関数Rav(X)を示す図である。
【図8】(エッジ幅/X方向のMFD)に応じた戻り光の結合効率を示す図である。
【図9】第3実施形態のミラーの例を示す概略斜視図である。
【図10】可変光減衰器の一例を示す概略平面図である。
【図11】ミラーのエッジの位置と結合効率との関係を示す図である。
【図12】戻り光を低減する一つの方法を示す概略図である。
【図13】ミラーを示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0079】
10…平面光波回路(PLC)、11および12…光導波路、14…二つの光軸を含む平面、15…二つの光軸を含む平面の法線、16および17…光軸、18…二つの光軸が成す角度の二等分線、21〜23…ミラー、21a〜23a…反射面、21b〜23b…エッジ、23cおよび23d…直線部、23e…ノコギリ歯、26および27…光路、30…ミラー駆動装置、32および33…ミラーの移動方向、40…可動ミラー装置、46…ミラーの移動経路、100…可変光減衰器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光軸を有する第1の光路に光学的に結合された第1の光導波路と、前記第1の光軸と非平行な第2の光軸を有する第2の光路に光学的に結合された第2の光導波路と、を有する平面光波回路と、
前記第1の光軸と前記第2の光軸とが成す角度の二等分線と交差する方向に移動するミラーと、
を備え、
前記ミラーの表面には、前記第1の光路から光を受け取るとその光を前記第2の光路へ反射する実質的に平坦な反射部が設けられており、
前記反射部は、前記二等分線に対して実質的に垂直な平面上に配置された曲線状のエッジを有している、
光通信用の光部品。
【請求項1】
第1の光軸を有する第1の光路に光学的に結合された第1の光導波路と、前記第1の光軸と非平行な第2の光軸を有する第2の光路に光学的に結合された第2の光導波路と、を有する平面光波回路と、
前記第1の光軸と前記第2の光軸とが成す角度の二等分線と交差する方向に移動するミラーと、
を備え、
前記ミラーの表面には、前記第1の光路から光を受け取るとその光を前記第2の光路へ反射する実質的に平坦な反射部が設けられており、
前記反射部は、前記二等分線に対して実質的に垂直な平面上に配置された曲線状のエッジを有している、
光通信用の光部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−48205(P2009−48205A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260077(P2008−260077)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【分割の表示】特願2004−57843(P2004−57843)の分割
【原出願日】平成16年3月2日(2004.3.2)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【分割の表示】特願2004−57843(P2004−57843)の分割
【原出願日】平成16年3月2日(2004.3.2)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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