説明

光重合性組成物

【課題】高い感度を有し、重合性に優れた光重合性組成物を提供する。
【解決手段】エチレン性不飽和結合を有する重合可能な化合物と、下記一般式(1)で表されるラジカル発生剤と、共増感剤とを含む、光重合性組成物。
一般式(1) D−L−A
(式中、Dは、300nmより長波長領域に吸収係数1000以上の吸収を有する光吸収部を表し、Aは、光励起された光吸収部Dと相互作用してラジカルを発生する活性部を表し、Lは光吸収部Dと活性部Aとを連結する連結基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光に対して高感度を示すラジカル重合性組成物に関し、詳しくはインキ、カラーフィルタ、ホログラム、プルーフ、封止剤、接着剤、平板印刷、樹脂凸版、フォトレジスト等をはじめとする広い分野で好適に使用できる光重合性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光重合性組成物は、基本的に光重合開始剤と分子中にエチレン性不飽和結合を2個以上含有する付加重合可能な化合物(以下、「多官能性モノマー」と称する。)を含み、光を照射すると硬化し、粘着性が変化したり、溶媒に不溶化する。これらの性質を利用して、写真、印刷、金属表面加工、インキ等に広く利用されている。光重合性組成物の機能や応用例は多くの成書に記載されている(例えば、非特許文献1又は2等を参照。)。
このような分野において300nm以上の光、特に可視光の光に高感度を示す光重合性組成物は、印刷版、レジスト、ホログラフィの画像形成材料として使用された場合、短い露光時間で画像が形成され、作業時間の短縮化、作業効率のアップにつながることから極めて有用であり、レーザー直描画型の感光性材料として印刷版やフォトレジストの分野で利用されている。このような特性を決める素材の一つが光重合開始剤であることから、その高感度化研究が盛んに行われている。
光重合性組成物の高感度化の手段の一つとして、特許文献1には、光吸収部とラジカル発生部を連結させたラジカル重合開始剤(連結開始剤)の使用が提案されている。このような重合開始剤は、光吸収後、効率的に電子移動又はエネルギー移動を起こし、開始ラジカルを発生しやすい点で有利である。但し、連結することにより分子量が大きくなるため、発生したラジカルのサイズが大きく、ラジカルの拡散性が悪くなり、本来の効率の良いラジカル発生が十分に生かし切れない問題点があった。
【特許文献1】特開平2−63054号公報
【非特許文献1】J.Kosar著「Light Sensitive Systems」(J.Wiley & Sons,New York,1965年,158〜193頁)
【非特許文献2】K.I.Jacobson,R.E.Jacobson著「Imaging Systems」(J.Wiley & Sons,New York,1976年,181〜222頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、高い感度を有し、重合性に優れた光重合性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、光吸収部とラジカル発生部を連結させたラジカル重合開始剤を含む光重合性組成物に共増感剤を加えることにより、著しく感度が高くなり、優れた重合性を示すことを見出した。すなわち、光重合性組成物に共増感剤を含有させることにより、低拡散性の連結開始剤ラジカルが、拡散性の高い共増感剤ラジカルとなって、重合反応性が高まることを見出した。本発明はこのような知見に基づきなされるに至ったものである。
【0005】
本発明の課題は、下記の手段によって解決された。
[1]エチレン性不飽和結合を有する重合可能な化合物と、下記一般式(1)で表されるラジカル発生剤と、共増感剤とを含むことを特徴とする光重合性組成物。
一般式(1) D−L−A
(式中、Dは、300nmより長波長領域に吸収係数1000以上の吸収を有する光吸収部を表し、Aは、光励起された光吸収部Dと相互作用してラジカルを発生する活性部を表し、Lは光吸収部Dと活性部Aとを連結する連結基を表す。)
[2]前記共増感剤が、チオール化合物、スルフィド化合物、アミノ化合物、アミノ酸化合物、トリクロロメチル系化合物、オニウム塩系化合物、及びオキシム系化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物であることを特徴とする[1]項に記載の光重合性組成物。
[3]前記共増感剤が、光重合性組成物の全固形分の質量に対して、0.5〜20質量%含まれることを特徴とする[1]又は[2]項に記載の光重合性組成物。
[4]前記の一般式(1)における光吸収部Dが、シアニン色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素、クマリン色素またはヘミオキソノール色素を含むことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の光重合性組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の光重合性組成物は、高い感度を有し重合性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
[ラジカル発生剤]
本発明に用いられるラジカル発生剤は下記一般式(1)で表される化合物である。
一般式(1) D−L−A
(式中、Dは、300nmより長波長領域に吸収係数1000以上の吸収を有する光吸収部を表し、Aは、光励起された光吸収部Dと相互作用してラジカルを発生する活性部を表し、Lは光吸収部Dと活性部Aとを連結する連結基を表す。)
【0008】
本発明に用いられる前記一般式(1)で表されるラジカル発生剤(光重合開始剤)は、活性部Aと光吸収部Dとが共有結合により近い部分に配置されているため光電子移動が効率的に起こり、それゆえ、活性部Aと光吸収部Dとが非連結のもの(活性部Aを有する化合物と光吸収部Dを有する化合物とを併用した場合)と比較して高いラジカル発生効率を示す。また、その効果は添加量が低くなっても低下することはなく、低添加濃度領域で高いラジカル発生を示す。したがって、色素部分による着色が少ない硬化物を作製することができる。また、本来の色味を損なわないで可視光硬化が可能であり、厚膜系や希薄系での硬化を効率よく行うことができる。
【0009】
前記一般式(1)中、Dは、300nmより長波長領域に吸収係数1000以上の吸収を有する光吸収部を表す。光吸収部Dは、光吸収部Dを有する化合物から連結基Lとの結合部分を除いた残基を意味する。吸収波長領域は400〜900nmが好ましい。
光吸収部Dを有する化合物としては、各種色素や縮合多環芳香族化合物、縮合多環へテロ芳香族化合物及び芳香族ケトン化合物等を挙げることができる。
【0010】
前記色素としてはカチオン色素及びノニオン色素が好ましい。カチオン色素は、色素分子の発色共役系の中に第四級アンモニウムが存在するものである。具体的には、シアニン色素、ヘミシアニン色素、トリアリールメタン色素、スチリル色素、ジアリールメタン色素、フルオラン色素等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、ノニオン色素は対アニオンを持たない色素のことであり、アニオンと塩を形成しない色素のことを表す。具体的には、メロシアニン色素、オキソノール色素、クマリン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、スチリルベース色素、スチルベン色素、ヘミオキソノール色素、ビニルケトン結合を有する色素、キノン色素、フタロシアニン色素等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記色素の中でもシアニン色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素、クマリン色素、ヘミオキソノール色素が、高感度の点で好ましい。
【0011】
また、縮合多環芳香族化合物としては、アントラセン、フェナンスレン、ピレン等、及びこれらの誘導体が挙げられ、また、縮合多環へテロ芳香族化合物としては、アクリジン、カルバゾール、フェノチアジン等、及びこれらの誘導体が挙げられる。また、芳香族ケトン化合物としては、ベンゾフェノン、チオキサントン、アントラキノン、ナフトキノン、アクリドン、フルオレノン等のケトン化合物、及びこれらの誘導体が挙げられる。また、カチオン色素残基、ノニオン色素残基、縮合多環芳香族化合物残基、縮合多環へテロ芳香族化合物残基、芳香族ケトン化合物残基には、置換基が置換してもよい。
【0012】
置換基としては、カルボキシル基、スルホ基、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、ヒドロキシ基、炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基)、炭素数2〜30のアルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、炭素数2〜30のアシルアミノスルホニル基、炭素数1〜30のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基、フェノキシエトキシ基、フェネチルオキシ基等)、炭素数1〜30のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、ドデシルチオ基等)、炭素数6〜30のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、p−トリルオキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基等)、ニトロ基、炭素数1〜30のアルキル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、
【0013】
炭素数2〜30のアシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等)、炭素数2〜30のアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基、ピペリジノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、モルホリノスルホニル基、ピペリジノスルホニル基等)、炭素数6〜30のアリール基(例えば、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、α−ナフチル基等)、置換アミノ基(例えば、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アシルアミノ基等)、置換ウレイド基、置換ホスホノ基、複素環基等が挙げられる。ここで、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシ基およびホスホノ基は、塩の状態であってもよい。
【0014】
前記一般式(1)中、Aは、光励起された光吸収部Dと相互作用してラジカルを発生する活性部を表す。活性部Aは、活性部Aを有する化合物から連結基Lとの結合部分を除いた残基を意味する。
活性部Aを有する化合物としては、ビスイミダゾール化合物、ジフェニルヨードニウム、ヒドロキシアルキルケトン、トリフェニルスルホニウム塩等のオニウム化合物、トリクロロメチル置換−S−トリアジン化合物、N−フェニルグリシンの他トリエタノールアミン、ヒドラジン等のアミン類、トリフェニルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン等のリン化合物、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム等のスルフィン酸類、p−トルエンスルホン酸メチルエステル等のスルホン酸エステル類、オキサゾール、オキサジアゾール、イミダゾール等のヘテロ環化合物、ジメドン等のエノレート化合物、トリブチルベンジルスズ等のスズ化合物、1−メトキシ−4−カルボメトキシピリジニウムテトラフルオロボレート等のピリジニウム塩(これについては“Research Disclosure”Vol.200,1980年12月,Item20036に記載されている。)、アリルチオウレアまたオキシムエステル、トリフェニル−n−ブチルボレート等のボレート化合物等を代表例として挙げることができる。
【0015】
前記一般式(1)中、Lは、光吸収部Dと活性部Aとを連結する連結基を表し、2価の連結基又は単結合を表す。Lで表される2価の連結基としては、炭素原子、窒素原子、硫黄原子、酸素原子のうち少なくとも1種を含む原子あるいは原子団からなるものが好ましい。好ましくは、アルキレン基(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン)、アリーレン基(例えば、フェニレン、ナフチレン)、アルケニレン基(例えば、エテニレン、プロペニレン)、アルキニレン基(例えば、エチニレン、プロピニレン)、アミド基、エステル基、スルホアミド基、スルホン酸エステル基、ウレイド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオエーテル基、エーテル基、カルボニル基、−N(Ra)−基(ここで、Raは水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基を表す。)、複素環2価基(例えば、6−クロロ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル基、ピリミジン−2,4−ジイル基、キノキサリン−2,3−ジイル基)を1つ又はそれ以上組み合せて構成される炭素数1以上20以下の2価の連結基を挙げられる。これらの2価の連結基は、更に置換されていてもよく、置換基としては、前述の芳香族ケトン化合物残基の置換基として挙げられたものが同様に挙げられる。
【0016】
Lで表される2価の連結基又は単結合として、更に好ましくは、炭素数1以上20以下のアルキレン基(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン)、炭素数6以上20以下のアリーレン基(例えば、フェニレン、ナフチレン)、炭素数2以上20以下のアルケニレン基(例えば、エテニレン、プロペニレン)を1つ又はそれ以上組み合せて構成される炭素数1以上20以下の2価の連結基、又は単結合が挙げられる。
【0017】
以下に、前記一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
【化1】

【0019】
【化2】

【0020】
【化3】

【0021】
【化4】

【0022】
【化5】

【0023】
【化6】

【0024】
【化7】

【0025】
前記一般式(1)で表される化合物は、前記の光吸収部Dを有する化合物と前記の活性部Aを有する化合物とを反応させ、縮合させることにより得ることができる。縮合反応としては、一般的な縮合反応を用いることができ、通常、加熱、触媒もしくは縮合剤を使用して反応させることができる。
【0026】
本発明の光重合性組成物における前記一般式(1)で表されるラジカル発生剤の含有量は、光重合性組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.01〜40質量%、より好ましくは0.05〜20質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%である。
【0027】
[エチレン性不飽和結合を有する重合可能な化合物]
本発明の光重合性組成物は、エチレン性不飽和結合を有する重合可能な化合物(以下、「重合可能な化合物」ということがある。)を含有する。前記重合可能な化合物は、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有する重合性化合物であり、該重合可能な化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アクリル酸エステル類、アクリルアミド類等のアクリル酸誘導体、アクリル酸及びその塩、メタクリル酸エステル類、メタクリルアミド類等のメタクリル酸誘導体、メタクリル酸及びその塩、無水マレイン酸、マレイン酸エステル類、イタコン酸、イタコン酸エステル類、スチレン類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、N−ビニル複素環類、アリルエーテル類、アリルエステル類、などが挙げられる。
【0028】
前記重合可能な化合物は、1個又は2個以上のオレフィン性二重結合を含み、低分子量(モノマー性)、高分子量(オリゴマー性)のいずれであってもよい。二重結合を含むモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、メチルメタクリレート又はエチルメタクリレート等のアルキル若しくはヒドロキシアルキルアクリレート又はメタクリレートなどが挙げられる。また、シリコンアクリレートも有利である。他の例としては、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−置換された(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニルのようなビニルエステル、イソブチルビニルエーテルのようなビニルエーテル、スチレン、アルキル−及びハロスチレン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル又は塩化ビニリデンなどが挙げられる。
【0029】
二個、又はそれ以上の二重結合を含むモノマーの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール又はビスフェノールAなどのジアクリレート、及び4,4’−ビス(2−アクリロイルオキシエトキシ)ジフェニルプロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート又はテトラアクリレート、ビニルアクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルスクシネート、ジアリルフタレート、トリアリルホスフェート、トリアリルイソシアヌレート又はトリス(2−アクリロイルエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0030】
比較的高分子量(オリゴマー性)の多不飽和化合物の例としては、(メタ)アクリル基を有するエポキシ樹脂、(メタ)アクリル基を有するポリエステル、ビニルエーテル又はエポキシ基を含むポリエステル、ポリウレタン及びポリエーテルが挙げられる。更に、不飽和オリゴマーの例として、不飽和ポリエステル樹脂であって、通常マレイン酸、フタル酸及び1種又はそれ以上のジオールから製造され、約500〜3000の分子量を有するものが挙げられる。加えて、ビニルエーテルモノマー及びオリゴマー、及びポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリビニルエーテル及びエポキシ主鎖を有するマレート終末されたオリゴマーを用いることも可能である。特に適したものは、ビニルエーテル基を有するオリゴマーと国際公開WO90/01512号パンフレットに記載のポリマーの組み合わせである。また、ビニルエーテル及びマレイン酸官能化されたモノマーのコポリマーもまた適している。この種の不飽和オリゴマーはプレポリマーとして属することもできる。
【0031】
特に適した例としては、エチレン性不飽和カルボン酸及びポリオール又はポリエポキシドのエステル、及び主鎖又は側鎖においてエチレン性不飽和基を有するポリマー、例えば不飽和ポリエステル、ポリアミド及びポリウレタン及びそれらのコポリマー、アルキド樹脂、ポリブタジエン及びブタジエンコポリマー、ポリイソプレン及びイソプレンコポリマー、側鎖において(メタ)アクリル基を含むポリマー及びコポリマー、並びに、1種又はそれ以上のそのようなポリマーの混合物である。
【0032】
不飽和カルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、及びリノール酸又はオレイン酸のような不飽和脂肪酸等が挙げられる。中でも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0033】
適したポリオールとしては、芳香族及び、特に脂肪族及び環式脂肪族ポリオールである。芳香族ポリオールの例としては、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ジ(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ノボラック及びレゾルシンが挙げられる。ポリエポキシドの例としては、上記ポリオール、特に芳香族ポリオール、及びエピクロロヒドリンをベースとするものである。他の適したポリオールとしては、ポリマー鎖又は側鎖においてヒドロキシル基を含むポリマー及びコポリマーであり、例えば、ポリビニルアルコール及びそれらのコポリマー又はポリヒドロキシアルキルメタアクリレート又はそれらのコポリマーである。適した更なるポリオールは、ヒドロキシル末端基を有するオリゴエステルである。
【0034】
脂肪族及び環式脂肪族ポリオールの例としては、好ましくは2〜12個の炭素原子を有するアルキレンジオール、例えば、エチレングリコール、1,2−又は1,3−プロパンジオール、1,2−、1,3−又は1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール;好ましくは200〜1500の分子量を有するポリエチレングリコール、1,3−シクロペンタンジオール、1,2−、1,3−又は1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ジヒドロキシメチルシクロヘキサン、グリセロール、トリス(β−ヒドロキシエチル)アミン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びソルビトールである。
【0035】
ポリオールは、1種のカルボン酸で又は異なる不飽和カルボン酸で部分的に又は完全にエステル化されることができ、そして部分エステルにおいて遊離ヒドロキシル基は変性されることができ、例えば他のカルボン酸でエーテル化又はエステル化され得る。
【0036】
エステルとしては、例えば、以下のものが挙げられる。即ち、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリペンタエリスリトールオクタアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、
【0037】
トリペンタエリスリトールオクタメタクリレート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ジペンタエリスリトールトリスイタコネート、ジペンタエリスリトールペンタイタコネート、ジペンタエリスリトールヘキサイタコネート、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトール−変性トリアクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、オリゴエステルアクリレート及びメタクリレート、グリセロールジアクリレート及びトリアクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、200〜1500の分子量を有するポリエチレングリコールのビスアクリレート及びビスメタクリレート、又はそれらの混合物。
【0038】
また、前記重合可能な化合物として適したものは、同一の又は異なる不飽和カルボン酸と、好ましくは2〜6個、特に2〜4個のアミノ基を有する芳香族、環式脂肪族及び脂肪族ポリアミンとのアミドである。そのようなポリアミンの例としては、エチレンジアミン、1,2−又は1,3−プロピレンジアミン、1,2−、1,3−又は1,4−ブチレンジアミン、1,5−ペンチレンジアミン、1,6−ヘキシレンジアミン、オクチレンジアミン、ドデシレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、フェニレンジアミン、ビスフェニレンジアミン、ジ−β−アミノエチルエーテル、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジ(β−アミノエトキシ)−又はジ(β−アミノプロポキシ)エタンである。その他、好ましくは側鎖においてさらなるアミノ基を有するポリマー及びコポリマー、及びアミノ末端基を有するオリゴアミドが好適である。そのような不飽和アミドの例はメチレンビスアクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、ジエチレントリアミントリスメタクリルアミド、ビス(メタクリルアミドプロポキシ)エタン、β−メタクリルアミドエチルメタクリレート及びN−[(β−ヒドロキシエトキシ)エチル]アクリルアミドなどである。
【0039】
適した不飽和ポリエステル及びポリアミドは、例えば、マレイン酸から及びジオール又はジアミンから誘導される。マレイン酸のいくつかは他のジカルボン酸に置き換えることができる。それらはエチレン性不飽和コモノマー、例えばスチレンと一緒に使用されることができる。ポリエステル及びポリアミドは、ジカルボン酸から、エチレン性不飽和ジオール又はジアミンから、特に相対的に長鎖、例えば、6〜20個の炭素原子を有するものから誘導され得る。ポリウレタンの例としては、飽和又は不飽和ジイソシアネート及び不飽和、又はそれぞれ飽和のジオールから構成されるものが挙げられる。
【0040】
ポリブタジエン及びポリイソプレン及びそれらのコポリマーは既知である。適したコモノマーの例は、オレフィン、例えばエチレン、プロペン、ブテン及びヘキセン、(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、スチレン又は塩化ビニルである。側鎖において(メタ)アクリレート基を有するポリマーも同様に既知である。例えば、ノボラックをベースとするエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物として得ることができ、又はビニルアルコール若しくは(メタ)アクリル酸とエステル化されたそのヒドロキシアルキル誘導体とのホモ−若しくはコポリマーであることができ、又はヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートでエステル化された(メタ)アクリレートのホモ−若しくはコポリマーであり得る。
【0041】
前記重合可能な化合物は、光重合性組成物の用途に応じて、その構造中に他の機能を発現する部位を有する化合物であってもよく、例えば、光重合性組成物を記録材料に利用する場合は、画像部を構成している発色成分の発色反応を促進する部位や、発色を抑制する部位を有していてもよい。これらについては後述する。
【0042】
前記エチレン性不飽和結合を有する重合可能な化合物の含有量としては、光重合性組成物の全質量中、通常、10〜99質量%であり、30〜95質量%が好ましい。
【0043】
[共増感剤]
本発明の光重合性組成物は共増感剤を含有する。本発明において共増感剤は、増感剤や開始剤の活性放射線に対する感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合性化合物の重合阻害を抑制する等の作用を有する。
そのメカニズムは共増感剤の種類によってさまざまであり、チオール化合物を例に挙げて説明する。チオール化合物は一般的に連鎖移動剤として知られている。すなわち、連結開始剤から発生したラジカルと水素引き抜き反応し、もとのラジカルを不活性化する代わりに、自分自身がラジカルとなって、開始反応を起こす化合物である。一般に、連結開始剤から発生するラジカルはサイズが大きく、拡散を起こしにくいラジカルであるが、サイズの小さな連鎖移動剤にラジカルを引き渡すことにより、拡散性に富む活性なラジカルとなり、重合率を大きく上げることができる。
【0044】
共増感剤の例としては、アミン類、例えばM.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
【0045】
共増感剤の別の例としては、チオール及びスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
【0046】
また、共増感剤の別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチルスズアセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)等が挙げられる。
【0047】
その他の共増感剤としては下記のものを挙げることができる。
(a)還元されて活性ラジカルを生成する化合物
炭素−ハロゲン結合を有する化合物:還元的に炭素−ハロゲン結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には、例えば、トリハロメチル−s−トリアジン類や、トリハロメチルオキサジアゾール類等が好適に使用できる。
【0048】
窒素−窒素結合を有する化合物:還元的に窒素−窒素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的にはヘキサアリールビイミダゾール類等が好適に使用される。
【0049】
酸素−酸素結合を有する化合物:還元的に酸素−酸素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には、例えば、有機過酸化物類等が好適に使用される。
【0050】
オニウム化合物:還元的に炭素−ヘテロ結合や、酸素−窒素結合が解裂し、活性ラジカルを発生すると考えられる。具体的には例えば、ジアリールヨードニウム塩類、トリアリールスルホニウム塩類、N−アルコキシピリジニウム(アジニウム)塩類等が好適に使用される。
フェロセン、鉄アレーン錯体類:還元的に活性ラジカルを生成しうる。
【0051】
アルキルアミン化合物:酸化により窒素に隣接した炭素上のC−X結合が解裂し、活性ラジカルを生成するものと考えられる。Xとしては、水素原子、カルボキシル基、トリメチルシリル基、ベンジル基等が好適である。具体的には、例えば、エタノールアミン類、N−フェニルグリシン類、N−トリメチルシリルメチルアニリン類等が挙げられる。
【0052】
含硫黄、含スズ化合物:上述のアミン類の窒素原子を硫黄原子、スズ原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成しうる。また、S−S結合を有する化合物もS−S解裂による増感が知られる。
【0053】
α−置換メチルカルボニル化合物:酸化により、カルボニル−α炭素間の結合解裂により、活性ラジカルを生成しうる。また、カルボニルをオキシムエーテルに変換したものも同様の作用を示す。具体的には、2−アルキル−1−[4−(アルキルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロノン−1類、並びに、これらとヒドロキシアミン類とを反応したのち、N−OHをエーテル化したオキシムエーテル類を挙げることができる。
【0054】
スルフィン酸塩類:還元的に活性ラジカルを生成しうる。具体的は、アリールスルフィン酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0055】
(b)ラジカルと反応し高活性ラジカルに変換、もしくは連鎖移動剤として作用する化合物
例えば、分子内にSH、PH、SiH、GeHを有する化合物群が用いられる。これらは、低活性のラジカル種に水素供与して、ラジカルを生成するか、もしくは、酸化された後、脱プロトンする事によりラジカルを生成しうる。具体的には、例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール類等が挙げられる。
【0056】
これらの共増感剤のより具体的な例は、例えば、特開昭9−236913号公報中に、感度向上を目的とした添加剤として、多く記載されている。以下に、その一部を例示するが、本発明の平版印刷版原版の感光層に用いられるものは、これらに限定されるものではない。以下の例示化合物中、Phはフェニル基を表し、TMSはトリメチルシリル基を表し、Meはメチル基を表す。
【0057】
【化8】

【0058】
本発明では、共増感剤が、チオール化合物、スルフィド化合物、アミノ化合物、アミノ酸化合物、トリクロロメチル系化合物、オニウム塩系化合物、及びオキシム系化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物であることが好ましい。
【0059】
本発明の光重合性組成物には、チオール化合物(例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール等)を共増感剤として用いることが特に好ましい。
なかでも、連鎖移動剤として知られている下記一般式(I)で表されるチオール化合物が特に好適に使用される。
【0060】
【化9】

【0061】
一般式(I)中、Rは、置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。Aは、−N=C−N−部分と共に炭素原子を有する5員環または6員環のヘテロ環を形成する原子団を表す。Aはさらに置換基を有してもよい。
【0062】
さらに好ましくは下記一般式(IA)または一般式(IB)で表されるものが使用される。
【0063】
【化10】

【0064】
一般式(IA)および式(IB)中、Rは、置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。Xは、ハロゲン原子、アルコキシル基、置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。
【0065】
以下に、一般式(I)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
【化11】

【0067】
【化12】

【0068】
【化13】

【0069】
【化14】

【0070】
【化15】

【0071】
本発明の光重合性組成物における共増感剤の含有量は、重合成長速度とラジカル連鎖移動のバランスによる硬化速度の向上の観点から、光重合性組成物の全固形分の質量に対し、0.1〜30質量%の範囲が好ましく、1〜25質量%の範囲がより好ましく、0.5〜20質量%の範囲が更に好ましい。
【0072】
[その他の成分]
本発明の光重合性組成物においては、効果を害しない範囲内で、目的に応じてその他の成分として適宜選択した公知の添加剤等を含有してもよい。前記その他の成分としては、例えば、光重合開始剤、酸素除去剤、熱重合阻害剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、連鎖移動剤、酸化防止剤等、及びこれらのプレカーサー等が挙げられ、これらは、光重合性組成物の全質量基準で、0.01〜20質量%添加されるのが好ましく、0.2〜15質量%添加されるのがより好ましく、0.5〜10質量%添加されるのが特に好ましい。
【0073】
本発明の光重合性組成物には、粘度調節等を目的としたバインダーを含有することもできる。特に、光重合性組成物が液体又は粘稠物質である場合に都合がよい。前記バインダーの含有量としては、総固形分含有量に対して5〜95質量%が好ましく、10〜90質量%がより好ましく、15〜85質量%が最も好ましい。前記バインダーの選択は、適用分野及びその分野のために必要とされる特性、例えば、水系若しくは有機溶媒系における現像能力、基材への接着及び酸素への感度に依存してなされる。
【0074】
前記バインダーとしては、重量平均分子量が約5000〜2000000、好ましくは10000〜1000000のポリマーが好ましい。このようなポリマーとして例えば、アクリレート及びメタクリレートのホモ若しくはコポリマー(例えば、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸のコポリマー、ポリ(アルキルメタクリレート)、ポリ(アルキルアクリレート)等)、セルロースエステル又はセルロールエーテル(例えば、セルロースアセテート、セルロースアセトブチレート、メチルセルロース、エチルセルロース等)、ポリビニルブチラル、ポリビニルホルマル、環化ゴム、ポリエーテル(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、塩素化ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/ビニリデンコポリマー、塩化ビニリデンとアクリロニトリルのコポリマー、メチルメタクリレート、酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル、コポリ(エチレン/酢酸ビニル)、ポリカプロラクタム、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、ポリエステル(例えば、ポリ(エチレングリコールテレフタレート)、ポリ(ヘキサメチレングリコールスクシネート)等)、ポリアミド、ポリウレアなどが挙げられる。
【0075】
また、ゼラチン類、(変性)ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、スチレン−マレイン酸共重合体加水分解物、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、アルギン酸ソーダ等の水溶性高分子も挙げられる。更に、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス、アクリル酸メチル−ブタジエンゴムラテックス等のラテックス類を用いてもよい。
【0076】
不飽和化合物も非光重合性フィルム形成成分との混合物として使用でき、例えば、物理的に乾燥したポリマー、又は有機溶媒中のポリマー溶液であって、例えば、ニトロセルロース、又はセルロースアセトブチレートが挙げられる。しかし、それらは化学的に、及び/又は、熱的に硬化性(熱硬化性)樹脂、例えば、ポリイソシアネート、ポリエポキシド、メラミン樹脂、並びに、ポリイミド前駆体であってもよい。同時に熱硬化性樹脂を使用することは、第一段階において光重合されそして第二段階において熱後処理によって架橋されるハイブリッド系として既知である系における使用のために重要である。また、重合性基を有するバインダーも使用可能である。
【0077】
[重合禁止剤]
本発明においては、光重合性組成物の製造中あるいは保存中において重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合防止剤を添加することが好ましい。
本発明に用いうる熱重合防止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩、クペロンAl等が挙げられる。
【0078】
熱重合防止剤の添加量は、全組成物の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感光層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
【0079】
画像様に露光する際に使用可能な光源としては、可視〜赤外領域に光源波長を有する公知の光源の中から適宜選択することができ、中でも、最大吸収波長が300〜1000nmの光源が好ましく、装置の簡易小型化、低コスト化の点で、青色、緑色、赤色等の(半導体)レーザー光源又はLEDがより好ましい。尚、より高い感度を得るには、分光増感色素等の光吸収材料の吸収波長に適合した波長を持つ光源を適宜選択することが好ましい。一方、前記光重合性組成物、及び後述する記録材料の消色の際に使用可能な光源としては、光重合性組成物の吸収波長に適合した波長を有する光源を適宜選択することがより好ましい。具体的には、水銀灯、超高圧水銀灯、無電極放電型水銀灯、キセノンランプ、タングステンランプ、メタルハライドランプ、(半導体)レーザー光源、LED、蛍光灯等の幅広い光源が好適に挙げられる。
【0080】
本発明の光重合性組成物を用いて硬化膜を形成することができる。
その際、光硬化性組成物を塗布される支持体としては、寸度的に安定な板状物が用いられるが、その材質や形状、表面状態等には特に限定されない。例えば該寸度的に安定な板状物としては、紙、プラスチック(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなど)がラミネートされた紙、また、例えばアルミニウム(アルミニウム合金も含む。)、亜鉛、銅などのような金属の板、さらに、例えば二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタールなどのようなプラスチックのフィルム、上記の如き金属がラミネートもしくは蒸着された紙もしくはプラスチックフィルムなどが例示できる。
【0081】
また、支持体上に設けた光重合性組成物の層の上には、空気中の酸素による重合禁止作用を防止する目的で、例えばポリビニルアルコール、酸性セルロース類などのような酸素遮断性に優れたポリマーよりなる保護層を設けることも任意である。
【0082】
この様にして得られた硬化膜は、光硬化塗料やコーティング、光硬化型封止剤、光硬化型接着剤、インキ、カラーフィルタ、ホログラム記録媒体、平板印刷、樹脂凸版、フォトレジスト、ソルダーレジスト、各種金属や樹脂、ガラス、紙、木材等の表面加工等に利用することが可能である。
【0083】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0084】
(光重合性組成物試料S1(本発明例)の調製)
下記の化合物を混合し、光重合性組成物溶液S1を調製した。
・ポリメチルメタクリレート 0.49g
(PMMA、aldrich社製)
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 0.23g
(DPHA、新中村化学工業社製)
・光重合開始剤DA−1 18.7mg
(2.14×10-2mmole)
・2−メルカプトベンゾオキサゾール(MBO) 32.4mg
(2.14×10-1mmole)
・メチルエチルケトン 3.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 0.4g
【0085】
光重合開始剤化合物DA−1につき、UV測定器(島津製作所製、UV−3600、商品名)を使用してテトラヒドロフラン中での吸収係数及び最大吸収波長を測定したところ、吸収係数は11.3万、最大吸収波長は432nmであった。
【0086】
(光重合性組成物試料S2(比較例)の調製)
試料S1の調製において、光重合開始剤DA−1を化合物D1 8.4mgおよび化合物A1 11.3mg(いずれも2.14×10-2mmole)に代えたこと以外は試料S1と同様にして、光重合性組成物溶液S2を調製した。ここで、化合物D1及びA1は、それぞれ試料S1で用いた光重合開始剤DA−1における光吸収部D又は活性部Aを有する化合物である。
【0087】
(光重合性組成物試料S3(比較例)の調製)
試料S1の調製において、2−メルカプトベンゾオキサゾール(MBO)を添加しなかったこと以外は試料S1と同様にして、光重合性組成物溶液S3を調製した。
【0088】
(光重合性組成物試料S4(比較例)の調製)
試料S2の調製において、2−メルカプトベンゾオキサゾール(MBO)を添加しなかったこと以外は試料S2と同様にして、光重合性組成物溶液S4を調製した。
【0089】
【化16】

【0090】
(硬化膜の作製)
調製した光重合性組成物溶液S1〜S4をそれぞれ、スピンコーターを用いてシリコン基板の上に塗布し、3分間乾燥し、膜厚3μmの塗布膜を得た。
また別途、塗布膜の濃度を求めるためにガラス基板に同じ条件で塗布し、吸収を測定したところ、試料S1〜S4いずれも440nmでの吸光度は0.8であった。
【0091】
光照射装置(HOYA社製、商品名、EXECURE3000)を用い、各塗布膜に、波長440nmのフィルタを通した光で照射して硬化膜を作製した。このとき、440nmの光の照射強度は1.5mWである。
このとき、露光量を50.00mJ/cm2、100.00mJ/cm2、150.00mJ/cm2、及び200.00mJ/cm2で光照射し、そのときのシリコン基板上の各試料S1〜S4の重合率(Conversion)を、FT−IRにてモノマーの二重結合の消失、すなわち、1430〜1400cm-1における吸収の減少を追跡することにより測定した。FT−IR装置はNICOLET6700(サーモエレクトロン社製、商品名)を使用した。結果を表1に示す。また、共増感剤を含有する試料S1及びS2と共増感剤を含有しない試料S3及びS4とをそれぞれ対比した結果を表2に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
表1の結果から明らかなように、本発明の試料S1は、いずれの露光量においても比較例試料S2〜S4に比べて著しく二重結合の消費率が大きく、優れた重合反応性を示すことがわかった。
また、表2の結果から明らかなように、光吸収部D又は活性部Aを有する化合物D1及びA1を用いた比較例試料S2においても共増感剤を含有させることにより二重結合の消費率が増加するが、前記一般式(1)で表される光重合開始剤(連結開始剤)を含有させた本発明の試料S1では更に二重結合の消費率が増加することがわかった。このことから、光吸収部Dとラジカル発生部Aとを連結させたラジカル重合開始剤および共増感剤を含有する本発明の光重合性組成物は、特に高い感度を有し、優れた重合性を示すことがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和結合を有する重合可能な化合物と、下記一般式(1)で表されるラジカル発生剤と、共増感剤とを含むことを特徴とする光重合性組成物。
一般式(1) D−L−A
(式中、Dは、300nmより長波長領域に吸収係数1000以上の吸収を有する光吸収部を表し、Aは、光励起された光吸収部Dと相互作用してラジカルを発生する活性部を表し、Lは光吸収部Dと活性部Aとを連結する連結基を表す。)
【請求項2】
前記共増感剤が、チオール化合物、スルフィド化合物、アミノ化合物、アミノ酸化合物、トリクロロメチル系化合物、オニウム塩系化合物、及びオキシム系化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物であることを特徴とする請求項1記載の光重合性組成物。
【請求項3】
前記共増感剤が、光重合性組成物の全固形分の質量に対して、0.5〜20質量%含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の光重合性組成物。
【請求項4】
前記の一般式(1)における光吸収部Dが、シアニン色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素、クマリン色素またはヘミオキソノール色素を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光重合性組成物。

【公開番号】特開2008−201912(P2008−201912A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−40021(P2007−40021)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】