説明

光量調節装置、撮像光学ユニットおよび撮像装置

【課題】 マグネットロータにより複数の遮光部材をそれぞれ駆動する駆動手段の位置決め精度が悪いと、互いに影響を及ぼし合ことがあった。
【解決手段】 光量を制御するシャッタ羽根3と絞り羽根4と、磁気回路により電磁的駆動力を得てシャッタ羽根3と絞り羽根4をそれぞれ駆動する駆動手段5、5´と、前記シャッタ羽根3と絞り羽根4、及び複数の駆動手段5、5´を取付けるベース部材1とを備え、前記複数の各駆動手段5、5´の前記磁気回路を構成するヨークY、Y´をベース部材1により構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラなどに用いられる光量調節装置に関し、例えば絞り動作を行う絞り羽根と露光動作を行うシャッタ羽根を備えた光量調節装置、この光量調節装置を備えた撮像光学ユニットおよびこの撮像光学ユニットを備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラやカメラ付き携帯電話に用いられるカメラ用シャッタ装置や絞り装置などの光量調節装置は、デジタルカメラやカメラ付き携帯電話の小型化、薄型化に伴って、小型化、薄型化の要請が益々強まってきている。
【0003】
その中で、小型化を意図した従来の光量調節装置として、露出用の開口部を開閉するシャッタ羽根と開口部の絞りを行う絞り羽根とを別々備えた絞り兼用シャッタにおいて、露出開口を備えた地板に2枚の絞り羽根を所定距離相対的に移動可能に支持し、また、前記2枚の絞り羽根で形成される絞り開口を1枚のシャッタで開閉する構成を有すると共に、さらに2枚の絞り羽根を駆動する駆動源とシャッタを駆動する駆動源を別々に有し、これらの駆動源を所謂ムービングマグネットモータから構成しているものが提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、駆動源を上述の例とは別な形態とする光量調節装置として、露出開口を備えた地板に対し、2枚の開き用シャッタを所定の距離を相対的に移動可能に支持させると共に、該開き用シャッタに前記露出開口を介して対向する位置に2枚の閉じ用シャッタを所定の距離を相対的に移動可能に支持させ、該閉じ用シャッタ、および該開き用シャッタを駆動する駆動源を別々に持っている構成としたものが提案されている(特許文献2)。
【0005】
これらの駆動源は、外周面を二分するように異なる磁極(N極及びS極)に着磁され、所定の角度範囲を回動するロータと、励磁用のコイルと、ロータの外周面に対向するように配置され、異なる磁極を発生し得る二つの磁極を有する二股状に形成された平板形状のヨークから構成されている。
【特許文献1】特開2002−139768公報
【特許文献2】特開2003−186079公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来の光量調節装置において、ヨーク部材の位置精度のバラツキにより、一方の電磁アクチュエータの磁気が他方の電磁アクチュエータに作用し、例えば、前述したようにシャッタ羽根駆動用アクチュエータ及び絞り羽根駆動用アクチュエータの作動開始位置、及び所定距離回動した作動終了位置において、コイルへの通電を切ってもその位置を保持するようにヨークとロータ間に働く磁気吸引力が作用しているが、その磁気吸引力を弱めるような力が働き、作動開始位置、作動終了位置を維持できなくなる場合があり、個々のヨーク位置を後加工で調整することがあった。
【0007】
また、上記先行技術に開示された光量調節装置において、前者の光量調節装置は、駆動源として所謂ムービングマグネット方式のモータを使用しており、ロータとコイルの構造の関係上、どうしても背が高くならざるをうえなく、装置の薄型化には不向きである。
【0008】
さらに、後者の光量調節装置の駆動源は、平板状のヨークを使用している関係上、ムービングマグネット方式のモータに比べて背が低くはなっているが、駆動源を載置している地板がモールドで形成されており、強度を保つ為には所定の厚みが必要となり、結果として装置の薄型化に限界があった。
【0009】
本出願に係る発明は、このような従来の問題に鑑みなされたもので、複数のヨークなどから構成される複数の磁気回路に対し、磁気バランスが最適な位置に位置決めすることができる光量調節装置の提供を目的とする。
【0010】
また、上記した目的に加えて、装置全体の小型化、特に薄型化を図ることができ、さらに安価な光量調節装置の提供を目的とすることにある。
【0011】
さらに、光量調節装置の厚みを薄くする事により、これらを含むレンズユニットを薄型化する撮像光学ユニット、およびデジタルカメラやカメラ付き携帯電話などの撮像装置の小型化、薄型化を図る撮像装置の提供を目的とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的を実現する光量調節装置は、請求項1に記載のように、光量を制御する複数の遮光部材と、磁気回路により電磁的駆動力を得て前記複数の遮光部材をそれぞれ駆動する複数の駆動手段と、少なくとも前記複数の遮光部材を取付けるベース部材とを備えた光量調節装置において、前記複数の各駆動手段の前記磁気回路を構成するヨークは、共通の板材により構成していることを特徴とする。
【0013】
前記共通の板材は前記ベース部材の一部を兼ねることを特徴とする。
【0014】
前記ベース部材には撮像光を透過する円形の開口が形成されていることを特徴とする。
【0015】
前記駆動手段は、少なくとも周方向に2極に着磁されたマグネットと、該マグネットの円周方向に配置された前記ヨークと、前記ヨークの一部に嵌着され、コイルが巻回されたボビンと、から構成されていることを特徴とする。
【0016】
前記複数の遮光部材は、シャッタ部材同士の組み合わせ、絞り部材同士の組み合わせ、あるいはシャッタ部材と絞り部材との組み合わせであることを特徴とする。
【0017】
本発明の目的を実現する撮像光学ユニットは、請求項6に記載のように、上記の光量調節装置と、前記光量調節装置の前方または後方に少なくともレンズを配置した撮像光学系とをユニット化し、前記ベース部材のヨークの少なくとも一部が、前記ヨークに最も近接する前記撮像光学系のレンズの外周より、光軸中心側に入り込んでいることを特徴とする。
【0018】
本発明の目的を実現する撮像装置は、請求項7、8に記載のように、上記の光量調節装置と、前記光量調節装置の前方または後方に少なくともレンズを配置した撮像光学系とを備えた構成、あるいは上記の撮像光学ユニットを有した構成としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の光量調節装置によれば、複数の駆動手段ごとに複数のヨークを使用する場合に比べ部品の共用化、削減化が図れ、より安価な装置を提供できる。
【0020】
また、従来はベース部材に複数の駆動手段を取り付けており、組み付け位置精度が狂うと複数の駆動手段間で磁気的な干渉が働き、駆動性能に影響が出る為、個々のヨーク位置を調整していたが、複数の駆動手段のヨークを共通の板材にて形成することにより組み込むので、位置精度は部品加工精度によるだけとなり、調整等の必要がない。
【0021】
また、前記ヨークは前記ベース部材の一部として構成できるので、その部分の、ベース部材の厚み分を省くことができ、装置のより薄型化を図ることができる。
【0022】
また、一つの部品で複数のシャッタ、絞り駆動用手段の磁気回路を構成することにより、一つの部品の加工精度により複数の駆動手段の位置決めができ、機械的にも磁気的にも駆動手段相互の位置を最適な位置に設定することができる。
【0023】
本発明による撮像光学ユニットによれば、上記した効果に加え、さらにヨークの一部を光量調節装置に最も近接するレンズの外周より光軸中心側に入りこませるように配置する事により、撮像光学ユニットの小型化、薄型化が図られる。
【0024】
本発明による撮像装置によれば、上記した効果に加え、さらに搭載する光量調節装置および撮像光学ユニットの薄型化により、撮像装置の薄型化および小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1から図5は本発明の第一の実施例を示す。
【0026】
図1は後述するカバー板を取り外した状態の光量調節装置の平面図であり、シャッタ羽根は閉状態、光線の光量を制限する絞り羽根は開状態を示している。図2は図1からシャッタ羽根と絞り羽根を取り除いた状態の平面図である。図3はシャッタ羽根と絞り羽根の両方が開いた状態を示し、図4はシャッタ羽根が開状態で絞り羽根が閉状態を示し、図5aはカバーをベース部材に取付けた状態を示す平面図、図5bは図5aのA-A線に沿った断面図である。
【0027】
本実施例は、図1から図5に示すように、撮影光を透過する開口2がヨークを兼用するベース部材1に設けられる。ベース部材1は純鉄、電磁ステンレス、パーマロイ、ケイ素鋼板等の強磁性体の材料からなるヨーク用の材料からなる板材をプレス加工等により所定の形状に形成される。
【0028】
このベース部材1は、中心線L1を中心として図1、図2中、左右に略軸線対称に形成され、左部分に示す要素と同じ要素の右部分の符号は同じ数字とし、´を付して区別する。
【0029】
ベース部材1には、磁極部1aと1bとが磁気的に略コの字形状をなすように形成されたヨークY、同様に磁極部1a´と1b´とが略コの字形状をなすように形成されたヨークY´を有している。対向する磁極部1aと1b間、及び磁極部1a´と1b´間の中心には、シャッタ羽根3、及び絞り羽根4を所定の角度回動駆動するロータ5、5´が所定間隙を介して回転可能にそれぞれ支持されている。左側のロータ5は前記ベース部材1に適当な方法で取り付けられる図5bに示す軸受け部材7上に形成された軸7aに回転可能に支持される。
【0030】
更に、前記左右の各磁極部1b、1b´は、ロータ5、5´との対向する面積を増やすため、円弧状に切り曲げされ、ロータ5、5´の外周面の高さと同程度の幅で立ち上がっている。また、対向する各磁極部1a、1a´には、励磁するコイル8、8´が巻回されたボビン6、6´がそれぞれ挿入され、ボビン6、6´にはそれぞれ出力端子である端子9、9´が備えられている。
【0031】
前記磁極部1a、1a´には、図5bに示すように、前記ロータ5との対向する面積を増やすため、ロータ5の外周面の高さと同程度の高さになるように磁極部1a、1a´と同形状で所定の厚さの平板1jがカシメ、接着等の適切な手段で固定されている。
【0032】
シャッタ羽根3、絞り羽根4の回動支持構造
シャッタ羽根3、絞り羽根4の回動支持構造は以下のようになっている。前記シャッタ羽根3は、前記ベース部材1の下部に固定された軸受け部材7から突出するように形成された軸7bに前記シャッタ羽根3の穴3aが嵌合して回動中心をなすとともに、該軸7bは前記ベース部材1上に形成された穴1eを貫通し、前記ベース部材1上でシャッタ羽根3の穴3aと嵌合し、結果、前記シャッタ羽根3は所定の角度を回動可能に支持される。前記ベース部材1上には前記シャッタ羽根3の回動に対応して開き位置、閉じ位置を規定するストッパー1d、1cが切り曲げ等の方法で一体的に形成される。
【0033】
前記絞り羽根4は、同様に前記ベース部材1の下部に固定された不図示の軸受け部材7´から突出するように形成された軸7b´に前記絞り羽根4の穴4aが嵌合し回動中心をなすとともに、該軸7b´は前記ベース部材1上に形成された穴1e´を貫通し、前記ベース部材1上で絞り羽根4の穴4a´と嵌合し、結果、前記絞り羽根4は所定の角度を回動可能に支持される。前記ベース部材1上には前記絞り羽根4の回動に対応して開き位置、閉じ位置を規定するストッパー1d´、1c´が切り曲げ等の方法で一体的に形成される。
【0034】
前記シャッタ羽根3は、前述のように穴3aが軸7b上で回動可能に支持されるが、一方では、前記ロータ5と一体的に形成された駆動ピン5aが前記シャッタ羽根3に形成された長溝形状の長穴3bに遊嵌している。また、前記シャッタ羽根3の先端は前記開口2を覆うだけの面積を有している。シャッタ羽根3と絞り羽根4は、遮光性と潤滑性を有し、厚さ0.03〜0.15mmの熱可塑性プラスチックシートをプレス加工して形成される。
【0035】
前記絞り羽根4は、前述のように穴4aが軸7b´上で回動可能に支持されるが、一方では、前記ロータ5´と一体的に形成された駆動ピン5a´が前記絞り羽根4に形成された長溝形状の長穴4b´に遊嵌している。また、前記絞り羽根4の先端には前記開口2より小さい小絞り用の開口4cが形成されている。
【0036】
前記ベース部材1には、穴1g、1g´、1fが設けられている。穴1g、1g´はこの光量調節装置を不図示のカメラ本体に取り付けるためのものであり、位置決め穴1fはカバー部材10を取り付け固定するためのものである。
【0037】
前記カバー1部材0は、シャッタ羽根3、絞り羽根4の可動領域を覆い、シャッタ羽根3、絞り羽根4の浮き上がりを防止する。カバー部材10は金属ないしプラスチックの薄板からなり、ベース部材1上の位置きめ穴1fに適切な方法で固定され、下辺は図5aに示すごとくベース部材1に爪部10aが係合し、ベース部材1に対しカバー10の可撓性によりにより嵌め合い固定される。
【0038】
次に、本実施例の光量調節装置の作動について説明する。
【0039】
まず、不図示のカメラのシャッタレリーズボタンが押される前は、図3のようにシャッタ羽根3及び絞り羽根4とも、それぞれの羽根は重なって開口部2から退避している。
【0040】
この状態において、シャッタ羽根駆動装置を構成する左側のシャッタ羽根用のロータ5は、図3に示すように、磁気吸引力により時計方向に回動しようとする力が働いており、シャッタ羽根3はストッパー1dにより係止され、開状態が維持されている。一方、絞り羽根駆動装置を構成する右側の絞り羽根用のロータ5´は、図3に示すように、磁気吸引力により反時計方向に回動しようとする力が働いており、絞り羽根4はストッパー1d´により係止され、開状態が維持されている。
【0041】
次に、レリーズボタンが押されると、不図示の撮像素子はそれまで蓄積した電荷を放出し、その後所定露光量の電荷を蓄積した後、シャッタ羽根3を閉じて露光を終了し、その後蓄積した電荷の転送を行う。
【0042】
その時、不図示の駆動回路によりコイル8に通電されると、前記磁極部1a、1bはそれぞれS極、N極になりロータ5は反時計方向に回動し始める。ロータ5の反時計方向への回動に伴ってロータ5に一体的に設けられた駆動ピン5aも反時計方向に回動し始める。駆動ピン5aは回動に伴って前記シャッタ羽根3に形成された長溝3aの図4中右側の内壁部分を反時計方向に押圧し、シャッタ羽根3は軸7bを回動中心とし、時計方向に回動し開口2を閉鎖し、図1に示す状態に至る。
【0043】
シャッタ羽根3の閉鎖状態において、前記コイル8への通電を切ってもロータ5は磁気吸引力により反時計方向に回動しようとする力が働き、その力によりシャッタ羽根3も時計方向に回動しようとするが、ストッパー1cに係止され閉状態が維持される。
【0044】
この時、前記シャッタ羽根3と絞り羽根4は全開状態から全閉状態までのどの位置でも必ず重なっており羽根同士が干渉することはない。
【0045】
次に、撮像素子の電荷の転送が終了すると、シャッタ羽根3は再び開放する。このときシャッタ羽根用の駆動手段は、シャッタ閉鎖動作時と反対方向に駆動ピン5aを駆動する。その動作は今まで述べてきた、全開から全閉の動作と逆の動作を行い全開となる。
【0046】
次に絞り羽根4の動作について説明する。
【0047】
不図示の露出制御機構により露光量が決まるとその時、不図示の駆動回路によりコイル8´に通電されると前記磁極部1a´、1b´はそれぞれS極、N極になりロータ5´は時計方向に回動し始める。ロータ5´の回動に伴ってロータ5´に一体的に設けられた駆動ピン5a´も時計方向に回動し始める。駆動ピン5a´は回動に伴って前記絞り羽根4に形成された長溝4b´の図4中左側の内壁部分を時計方向に押圧し、絞り羽根4は軸7b´を回動中心とし、反時計方向に回動し開口2を図4に示すように小絞り径4cに制限する。
【0048】
閉鎖状態においては前記コイル8´への通電を切ってもロータ5´は磁気吸引力により時計方向に回動しようとする力が働き、その力により絞り羽根4も反時計方向に回動しようとするが、ストッパー1c´に係止され閉状態が維持される。
【0049】
この時、前記シャッタ羽根3と絞り羽根4は全開状態から全閉状態までのどの位置でも必ず重なっており羽根同士が干渉することはない。
【0050】
また、本実施例の光量調節装置にあっては、図5bに示すように、ボビン6の厚みがカバー部材10を取付けた状態での光量調節装置の厚みと略同じに形成され、またボビン6の端子9は最外周位置に配置されているので、この端子9が多少厚み方向に突出していても、この端子9よりも内側部分ではこの光量調節装置の表裏面から厚み方向に突出するものがない。
【0051】
本実施例においては、ヨークを兼用したベース部材1に二つのアクチュエータを搭載し、一方をシャッタ羽根駆動用アクチュエータとして、他方を絞り羽根駆動用アクチュエータとする構成としたが、二つともシャッタ羽根駆動用アクチュエータとしても良い。このような構成をとればシャッタ羽根の開口を覆う面積を少なくすることができ、即ち一つにシャッタ羽根の移動距離を少なくすることができシャッタスピードが上がる。また、二つとも絞り羽根駆動用アクチュエータとしても良い、すなわち一方の絞り羽根には小絞り用開口を設け、他方の絞り羽根には中絞り用の開口を設け、所謂3段絞り装置とすることにより露出精度を上げることができる。
【0052】
なお、本実施例において、複数のヨークY、Y´を共通の板材としてベース部材1を兼用しているが、この板材をベース部材1と別部材としても良い。
【0053】
第二の実施例
図6および図7は第二の実施例を示す。本
本第二の実施例は、光量調節装置として2枚のシャッタ羽根を備えたシャッタ装置としたもので、図6は第1のシャッタ羽根20および第2のシャッタ羽根21の待機状態を示しており、図7は第1のシャッタ羽根20および第2のシャッタ羽根21により開口2が閉鎖された状態を示している。基本的な構成として第一の実施例と異なる点は、第一の実施例における絞り羽根4に代えて第二のシャッタ羽根21を配置し、第1のシャッタ羽根20と第二のシャッタ羽根21には、開口2を囲むように切欠部20b、21bが形成されている点にあり、その他の部材は図1から図5に示した部材と同様であり、説明を省く。
【0054】
次に、この実施例のシャッタ装置の作動方法について説明する。
【0055】
まず、不図示のカメラのシャッタレリーズボタンが押される前は、図6のように第1及び第2のシャッタ羽根20、21、それぞれの羽根の一部が重なって開口部2から退避し、各羽根20,21の切欠部20b、21bが開口2取り囲むように位置している。
【0056】
この状態において、第1のシャッタ羽根20の羽根駆動部分では、ロータ5は図6のように、磁気吸引力により時計方向に回動しようとする力が働いており、第1のシャッタ羽根20はストッパー1cにより係止され、開状態が維持されている。
【0057】
一方、第2のシャッタ羽根21の羽根駆動部分では、ロータ5´は図6のように、磁気吸引力により反時計方向に回動しようとする力が働いており、第1のシャッタ羽根21はストッパー1d´により係止され、開状態が維持されている。
【0058】
次に、レリーズボタンが押されると、撮像素子はそれまで蓄積した電荷を放出し、その後所定露光量の電荷を蓄積した後、シャッタ羽根群を閉じて露光を終了し、その後蓄積した電荷の転送を行う。
【0059】
その時、不図示の駆動回路によりコイル8に通電されると前記磁極部1a、1bはそれぞれS極、N極になりロータ5は時計方向に回動し始める。ロータ5の回動に伴ってロータ5に一体的に設けられた駆動ピン5aも時計方向に回動し始める。駆動ピン5aは回動に伴って前記第1のシャッタ羽根20に形成された長溝20aの図7中左側の内壁部分を時計方向に押圧し、第1のシャッタ羽根20は軸7bを回動中心とし、反時計方向に回動し開口2を閉鎖し、図7に示す状態に至る。
【0060】
一方、不図示の駆動回路によりコイル8への通電と同時にコイル8´に通電され、それとともに前記磁極部1a´、1b´はそれぞれS極、N極になりロータ5´は時計方向に回動し始める。ロータ5´の回動に伴ってロータ5に一体的に設けられた駆動ピン5a´も時計方向に回動し始める。駆動ピン5a´は回動に伴って前記第2のシャッタ羽根21に形成された長溝21aの図7中左側の内壁部分を時計方向に押圧し、第2のシャッタ羽根21は軸7bを回動中心とし、反時計方向に回動し開口2を閉鎖し、図7に示す状態に至る。
【0061】
閉鎖状態において、前記コイル8への通電を切ってもロータ5は磁気吸引力により時計方向に回動しようとする力が働き、その力により第1のシャッタ羽根20も反時計方向に回動しようとするが、ストッパー1dに係止され閉状態が維持される。
【0062】
また、同様に前記コイル8´への通電を切ってもロータ5´は磁気吸引力により反時計方向に回動しようとする力が働き、その力により第2のシャッタ羽根20も反時計方向に回動しようとするが、ストッパー1c´に係止され閉状態が維持される。
【0063】
この時、前記第1と第2のシャッタ羽根20,21は全開状態から全閉状態までのどの位置でも必ず重なっており、羽根同士が干渉することはない。
【0064】
次に、撮像素子の電荷の転送が終了すると、第1と第2のシャッタ羽根20,21は再び開放する。その動作は今まで述べてきた、全開から全閉の動作と逆の動作を行い全開となる。
【0065】
以上のように、本第一および第二の実施例においては、ヨークを兼用したベース1に二つの電磁アクチュエータを搭載し、第一の実施例では一方をシャッタ羽根駆動用アクチュエータとして、他方を絞り羽根駆動用アクチュエータとし、第二の実施例では両方をシャッタ羽根駆動用アクチュエータとし、複数(これらの実施例では2つ)の電磁アクチュエータの磁気回路をそれぞれ構成するヨークは共通のヨークとしてのベース部材1を使用する構成にした。
【0066】
このため、二つの電磁アクチュエータの位置精度は、1枚のベース部材1にプレス加工等により一体的に形成される共通ヨークの機械加工精度に依存することになり、従来の光量調節装置のように、ベース部材に取付けられるヨークの取付け位置精度のバラツキにより、一方の電磁アクチュエータの磁気が他方の電磁アクチュエータに作用し、例えば、前述したようにシャッタ羽根駆動用アクチュエータ及び絞り羽根駆動用アクチュエータの作動開始位置、あるいは所定距離回動した作動終了位置において、コイルへの通電を切ってもその位置を保持するようにヨークとロータ間に働くので磁気吸引力が作用しているが、その磁気吸引力を弱めるような力が働き、作動開始位置、作動終了位置を維持できなくなるといった弊害を防止できる。そして従来例では、個々のヨーク位置を後加工で調整していたが、本第一および第二の実施例においては、ヨークの絶対位置、相対位置が機械加工精度により決まるので、磁気回路上、磁気バランスが最適な位置に位置決めすることができた。
【0067】
また、第二の実施例に述べた第1のシャッタ羽根と第2のシャッタ羽根の代わりに二つとも絞り羽根駆動用アクチュエータとしても良い、すなわち第1のシャッタ羽根の代わりに小絞り用開口を持った第1の絞り羽根を設け、他方の第2のシャッタ羽根の代わりに中絞り用の開口を持った第2の絞り羽根を設け、所謂3段絞り装置とすることにより露出精度を上げることができる。
その構成、動作については第一実施例と同じであり、説明を省略する。
【0068】
第三の実施例
次に本発明の第三の実施例を、図8によって説明する。
【0069】
本実施例は、前記第一または第二の実施例の光量調節装置を用いてレンズユニットとして構成したものである。したがって駆動部及び絞り羽根などの構成及び作動方法は同様である。
【0070】
図8に示すレンズユニットLUは、第一または第二の実施例に示す光量調節装置Eと、被写体側の前玉レンズ11と、結像面側の後玉レンズ12とを保持部材13を介して一体的に組付けて構成したもので、ヨークを構成する材料で形成されると共に、ヨークを一体的に形成したベース部材1(あるいはヨークを構成する部材にベース部材の機能を持たせたヨーク)における当該ヨークを、シャッタ羽根3に近接したレンズ11の外周より光軸中心側に一部オーバーラップさせており、これにより、レンズユニットLUの小型化を図っている。
【0071】
これはヨークをベース部材と兼用させる事により、通常ならばベース部材の他にヨークの厚みが必要なため、近接するレンズに干渉してヨークとレンズをオーバーラップできないのに対して、本実施例ではベース部材の厚みのみでヨークの厚みを構成できるので、レンズに干渉することなくヨークを光軸中心側へオーバーラップして配置する事ができる。これにより、レンズユニットのサイズをより一層小型化することができる。
【0072】
また、図8においては、ヨークが開口部2の周辺のベース部材を全て兼ねているが、ベース部材の一部分のみを兼ねるようにしても勿論良く、また、ヨーク部材より薄いベース部材上にヨーク部材を載置しても良い。
【0073】
また、図8においてはシャッタ及び絞り装置を備えた光量調節装置Eがレンズ群11、12の中に配置される、いわゆるビトゥインザレンズシャッタとなっており、ヨークを挟んで両側にレンズが配置されるビトゥインザレンズシャッタの場合が最もスペースの制約が多く、このため本実施例の効果が最も大きいが、レンズ群の被写体側最前部に配置される、いわゆるビフォアザレンズシャッタでも、レンズ群の最後尾に配置されるビハインドザレンズシャッタでも同様の効果は得られる。
【0074】
上述のように上記した第一、第二の実施例の光量調節装置は、上述したように、複数のヨークをベース部材上に一体的に形成して複数の磁気回路を構成しているので、各磁気回路同士の位置精度が格段に向上し、磁気回路同士が影響を及ぼし合うという不具合を解消できるという効果が得られる。またさらに、ヨーク部材の機能をベース部材に持たせることにより(あるいはベース部材の機能を薄くしたヨーク部材に持たせたと考えることもできる)、従来、所定の厚さのベース部材上に、シャッタ機構、または絞り機構を載置する構造に比べ、ベース部材を廃止し、その機能をシャッタ機構、または絞り機構を駆動する電磁装置に必然的に使用されるヨーク部材に持たせることにより薄型でより安価な光量調節装置を提供することができるという効果を有する。また、ベース部材1においてヨークY、Y´を構成する少なくとも一部は、ヨークに最も近接するレンズの外周より、光軸中心側に入り込んでいるように構成することにより、レンズユニットを小型化できるという効果を有している。
【0075】
第四の実施例
第一、第二の実施例の光量調節装置あるいは第三の実施例のレンズユニットを、図9および図10のようにデジタルカメラやカメラ付き携帯端末機器などの撮像装置に応用することにより、これら撮像装置の小型化、薄型化が達成できる。
【0076】
図9は、撮像手段としてCCDセンサ、CMOSセンサなどの撮像素子14を備えたデジタルカメラ15の撮像光学系に第一の実施例に示す光量調節装置Eあるいは第二の実施例に示すレンズユニットLUを配置したもので、上述した効果によりカメラの撮影光学系の厚みを薄くして、カメラの薄型化を図ることができる。
【0077】
図10は、携帯端末装置に第一の実施例に示す光量調節装置Eとレンズ17とを配置したものである。光量調節装置Eに対してレンズ17は従来のようにヨークにより配置位置が限定されることがないため、上述した効果により携帯端末である薄くしかも幅が狭いカメラ付き携帯電話の更なる小型化に寄与することができる。
【0078】
なお、第一、第二の実施例の光量調節装置、あるいは第三の実施例のレンズユニットを静止画像記録機能を備えたデジタルビデオカメラ等の撮像装置に対して適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第一の実施例における光量調節装置の平面図で、シャッタ羽根が閉鎖状態で絞り羽根が開放状態を示す。
【図2】図1のベース部材、ロータ、コイルボビンの配置状態を示す図。
【図3】本発明の第一の実施例を示す平面図で、シャッタ羽根と絞り羽根が共に開放状態を示す。
【図4】本発明の第一の実施例を示す平面図で、シャッタ羽根が開放状態で絞り羽根が閉鎖状態を示す。
【図5a】図1の光量調節装置にカバー部材を取付けた平面図。
【図5b】図5aのA−A線断面図。
【図6】本発明の第二の実施例を示す光量調節装置の平面図で、シャッタ羽根開状態を示す。
【図7】本発明の第二の実施例を示す光量調節装置の平面図で、シャッタ羽根閉状態を示す。
【図8】本発明の第三の実施例を示すレンズユニットの断面図。
【図9】本発明の第四の実施例を示すカメラの概略図。
【図10】本発明の第四の実施例を示す携帯端末としてのカメラ付き携帯電話の概略図。
【符号の説明】
【0080】
1 ベース部材
2 開口
3 シャッタ羽根
4 絞り羽根
5 ロータ
6 ボビン
7 軸受け部材
8 励磁コイル
9 端子
10 カバー部材
11 前玉レンズ
12 後玉レンズ
13 保持部材
14 撮像素子
15 カメラ
16 形態端末
17 レンズ
20 第1のシャッタ羽根
21 第2のシャッタ羽根
E 光量調節装置
LU レンズユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光量を制御する複数の遮光部材と、磁気回路により電磁的駆動力を得て前記複数の遮光部材をそれぞれ駆動する複数の駆動手段と、少なくとも前記複数の遮光部材を取付けるベース部材とを備えた光量調節装置において、
前記複数の各駆動手段の前記磁気回路を構成するヨークは、共通の板材により構成していることを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記共通の板材は前記ベース部材の一部を兼ねることを特徴とする請求項1記載の光量調節装置。
【請求項3】
前記ベース部材には撮像光を透過する円形の開口が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光量調節装置。
【請求項4】
前記駆動手段は、少なくとも周方向に2極に着磁されたマグネットと、該マグネットの円周方向に配置された前記ヨークと、前記ヨークの一部に嵌着され、コイルが巻回されたボビンと、から構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光量調節装置。
【請求項5】
前記複数の遮光部材は、シャッタ部材同士の組み合わせ、絞り部材同士の組み合わせ、あるいはシャッタ部材と絞り部材との組み合わせであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光量調節装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の光量調節装置と、前記光量調節装置の前方または後方に少なくともレンズを配置した撮像光学系とをユニット化し、前記ヨークの少なくとも一部が、前記ヨークに最も近接する前記撮像光学系のレンズの外周より、光軸中心側に入り込んでいることを特徴とする撮像光学ユニット。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載の光量調節装置と、前記光量調節装置の前方または後方に少なくともレンズを配置した撮像光学系とを備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
請求項6に記載の撮像光学ユニットを有することを特徴とする撮像装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−171545(P2006−171545A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−366153(P2004−366153)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】