説明

光量調節装置および光学撮像機器

【課題】レンズ等による制約で遮光羽根駆動部及び遮光羽根加速領域を大きくすることが難しく、遮光羽根による遮光を高速化することができない。
【解決手段】地板1の支軸1aに嵌合するロータマグネット2の遮光羽根駆動軸2aに遮光羽根3,4の丸穴3a,4aそれぞれ回転自在に嵌合し、地板1の係合軸1bに遮光羽根3,4の複数箇所屈曲した長溝3b,4bをそれぞれ係合させ、ロータマグネット2の回転により、遮光羽根3,4は長溝3b,4bが係合軸1bとの当接位置をずらしながら当該当接位置を旋回支点として旋回し、屈曲箇所の屈曲状態により、遮光羽根3,4の旋回角度を制御し、遮光羽根3,4の駆動開始時の遮光の高速化、遮光終了から停止までの旋回角度を大きくしてバウンドによる再露光を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルスチルカメラ等の光学撮像機器に用いられるシャッタ装置などの光量調節装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は従来の光量調節装置を示す平面図で、(a)は遮光羽根開放状態、(b)(c)は遮光過渡状態、図7は遮光完了停止状態を示す図である。
【0003】
図6,図7に示す従来の光量調節装置は、時計回り旋回で遮光動作する右遮光羽根14と反時計回り旋回で遮光動作する左遮光羽根13とが対を成す遮光羽根群を有している。
【0004】
右遮光羽根14及び左遮光羽根13はそれぞれ、支軸11a、11bを中心に回動可能であり、右遮光羽根14に形成された長溝部14bには遮光羽根駆動軸12aが係合している。
【0005】
また、遮光羽根駆動軸12aはロータマグネット12の旋回によって支軸11aを中心に回動する。これにより、右遮光羽根14は、地板11に形成された開口穴11cを閉じる方向に旋回する場合、支軸11aを中心に時計回り旋回するとともに、左遮光羽根13は支軸11bを中心に反時計回り旋回し、左右の遮光羽根13、14が開放状態から遮光状態に旋回し、地板11に形成された開口穴11cが遮光される。
【0006】
さらに、遮光羽根駆動軸12aが支軸11aを中心に反時計回り旋回すると、左右の遮光羽根13,14が遮光状態から開放状態に旋回して、開口穴11cが開放される(特許文献1)。
【0007】
一方、上記した従来例の構成とは逆に、遮光羽根を開閉する羽根駆動軸の係合する第一の係合穴を丸穴とし、シャッタ地板に固定された規制部材に係合する第二の係合穴を長溝とした光量調節装置が提案されている(特許文献2)。
【0008】
特許文献2に記載の光量調節装置にあっては、遮光羽根の丸穴がこの丸穴に係合する羽根駆動軸の移動に伴い移動したとき、規制部材に係合する長溝は該規制部材との当接位置がずれてゆく。そしてこのずれに伴い羽根を揺動させるように作用する。
【0009】
このような構成とすることにより、遮光羽根の回転中心を比較的自由に配置でき、上記特許文献1に記載の従来の光量調節装置よりも装置を小型化できる。
【特許文献1】特開2002−182266号公報
【特許文献2】特開2005−77765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年の、シャッタ装置などの光量調節装置を必要とするデジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラなどの製品では、小型で高画質のものがもとめられている。必然的に光量調節装置も小型でかつ高速作動のものの要求がある。
【0011】
図6,図7に示す従来の光量調節装置や特許文献2に記載の装置では、遮光開始から遮光完了までの時間を速くするには、遮光羽根駆動力を大きくすればよいが、消費電力やスペースの制約から限界がある。
【0012】
また、遮光羽根駆動軸の旋回方向に対し、遮光羽根の慣性モーメントを小さくするために遮光羽根を小さくすると、開口穴を遮光しきれなくなる。また、遮光羽根の厚みを薄くして慣性モーメントを小さくすると、遮光羽根駆動軸12aによって、遮光羽根13,14の長溝13b,14bの端面がつぶれるおそれがあり遮光羽根を薄くすることにも制約がある。
【0013】
さらに、遮光羽根の旋回開始から遮光を開始するまでの旋回角度を大きくして旋回速度が速くなったところで遮光開始する方法も提案されているが、遮光完了後、遮光羽根が旋回ストッパ11dに高速で衝突して生ずる遮光羽根のバウンドを吸収するスペースを含めて、スペース上の制約から限界がある。
【0014】
また、特許文献2の光量調節装置では、羽根の回転中心を比較的自由に配置でき、図6、7に示す従来例よりも装置の小型化が図れるが、遮光羽根の旋回角度と旋回速度の関係は図6,7に示す従来例と同様であり、作動速度や遮光完了後の遮光羽根のバウンドに関しては同様の課題を有している。
【0015】
そこで、本発明の目的は、光量調節装置を小型化しつつ、遮光羽根駆動軸の始動から停止までの旋回角度を大きくすることなく、遮光開始から遮光完了までの所要時間の速い光量調節装置およびこの光量調節装置を備えた光学撮像機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的を実現する光量調節装置の構成は、請求項1に記載のように、入射光を制御する複数の遮光羽根と、前記入射光を通過させる開口部を有し前記遮光羽根を回動可能に配置した地板と、前記地板に取り付けられて前記遮光羽根を移動させる駆動源と、前記駆動源の駆動力により前記遮光羽根を所定の軌跡に沿って移動させる羽根駆動手段と、前記地板に設けられて前記遮光羽根の移動を規制する規制部材と、を有し、前記遮光羽根は前記羽根駆動手段による移動と前記規制部材との規制を受けて該規制部材との当接位置をずらしながら当該当接位置を旋回支点として旋回する光量調節装置であって、前記羽根駆動手段は、前記少なくとも一枚の遮光羽根を回転自在に支持し、前記遮光羽根には、前記羽根駆動手段の移動に従って前記規制部材との当接により前記遮光羽根の旋回方向を規制する複数の屈曲部を設けた長溝を備えていることを特徴とする。
【0017】
さらに、複数の屈曲部は、遮光羽根が地板の開口部を遮蔽し始める前及び遮蔽した後の少なくとも一方にその変曲点を持つとより良い。
【0018】
また、前記変曲点は、前記遮光羽根が前記地板の開口部を遮蔽し始める前では、前記羽根駆動手段の旋回角度と前記遮光羽根の移動の割合が小から大に変化し、前記開口部を遮蔽した後では、大から小へ変化するように形成することが望ましい。
【0019】
また、遮光羽根の屈曲した長溝の両端部の形状と、規制部材の長溝の両端と当接する部分の形状を略同一とし、両端部で当接させて遮光羽根の開放側及び遮光側のストッパとする構成にする。これにより、従来の遮光羽根より薄く軽い遮光羽根の使用を可能にする。
【0020】
本発明の目的を実現する光学撮像機器の構成は、請求項4に記載のように、上記したいずれかの構成の光量調節装置と、前記光量調節装置を通った被写体光が結像する撮像手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、例えば遮光羽根の一端部側に形成した丸穴に駆動源であるロータマグネットに設けた旋回駆動する羽根駆動軸を回転自在に係合させ、この羽根駆動軸の旋回移動に伴い遮光羽根が移動したとき、遮光羽根に設けた長溝はこれに伴い規制部材との当接で羽根の旋回支点として作用し、その際長溝の屈曲部との当接位置に依存して、遮光羽根の旋回角度の増減制御が可能となるので、装置を小型化しつつ羽根駆動手段の始動から遮光完了までの時間を速くでき、遮光完了から旋回停止までの旋回角度を大きくしてバウンドによる再露光を防止することができる。
【0022】
具体的には、屈曲した長溝により遮光開始から遮光完了までの遮光羽根駆動軸の旋回角度を小さくすることで遮光開始から完了までの時間を速くすることができる。また、屈曲した長溝により遮光完了から旋回停止するまでの遮光羽根駆動軸の旋回角度を大きくすることで、遮光羽根が長溝の端部に当接後、バウンドしても、再露光しない構成としている。
【0023】
さらに、屈曲した長溝の両端と長溝に嵌合する規制部材を略同一形状にして両者の当接面を広くして、遮光羽根の開放側及び遮光側での停止時に、長溝が潰れない構成としている。これにより薄い遮光羽根の使用が可能になる。
【0024】
また、製品仕様に支障にならない場合は、前記長溝を直線状にしても差し支えない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を図面に示す実施例を参照しながら説明する。
第1実施例
図1〜図4は本発明の第1実施例を示す。
【0026】
図1は光量調節装置の平面図で、(a)は遮光羽根開放状態、(b)(c)は遮光過渡状態、図2は遮光完了停止状態を示す平面図、図3は図1、図2の遮光羽根を示す図、図4は図1、図2に示す光量調節装置の断面図である。
【0027】
開口部1cが形成された基板部材であるところの地板1は、ロータマグネット(円筒形永久磁石)2を回転可能に軸支する支軸1aと、複数の遮光羽根(本実施例では2枚)である第1遮光羽根3、第2遮光羽根4にそれぞれ形成された後述の屈曲した(複数の変曲点を有する)長溝3b,4bに係合する規制部材である係合軸1bと、ステ−タヨーク5とこのステ−タヨーク5に挿入取り付けられる電磁コイル6を収納取り付けする凹部1eと、を同じ片面に形成している。
【0028】
ロータマグネット2には、支軸1aに回転自在に嵌合する丸穴2bが中央に形成されると共に、図4に示すように、この丸穴2bからシフトした径方向外方位置に遮光羽根駆動軸2aが地板1の片面側に突出するように形成され、さらに外周面には2極に着磁された磁極(N,S)が形成されている。
【0029】
軟磁性材料からなる馬蹄形状のステータヨーク5には、巻線コイルをボビンに巻回して構成された電磁コイル6が挿入され、地板1の凹部1eに挿入して位置決め、取り付けられている。ステータヨーク5は、円筒形永久磁石のロータマグネット2の外周曲面に対向配置した磁極部5a、5bにて磁気的な回路を構成している。尚、図4においてロータマグネット2は、この磁気的な回路によって保持され、遮光羽根3,4側(支軸1の軸方向)に移動しないようになっている。
【0030】
図1(a)に示すように、第1遮光羽根3は後端部に形成した丸穴3aがロータマグネット2の遮光羽根駆動軸2aに嵌合し、羽根全体の長さ方向の中間部に形成されたくびれ部よりも該丸穴3a寄りに、羽根全体の幅方向に長く延びる屈曲した長溝3bが形成されている。そして、この長溝3bには地板1のロータマグネット2、ステータヨーク5、電磁コイル6に重ならない位置に設けた係合軸1bが嵌合している。また、第1遮光羽根3に重なる位置にロータマグネット2、ステ−タヨーク5が配置され、第1遮光羽根3の作動領域の外側に電磁コイル6が位置している。
【0031】
また、第2遮光羽根4は、後端部に形成した丸穴4aがロータマグネット2の遮光羽根駆動軸2aに嵌合し、羽根全体の長さ方向の中間部に形成されたくびれ部よりも該丸穴4a寄りに、羽根全体の幅方向に長く延びる屈曲した長溝4bが形成されている。そして、この長溝4bには地板1の係合軸1bが嵌合している。
【0032】
すなわち、第1遮光羽根3の丸穴3aと第2遮光羽根4の丸穴4aは共に同じ遮光羽根駆動軸2aに嵌合し、第1遮光羽根3の長穴3bと第2遮光羽根4の長穴4bは共に同じ係合軸1bに嵌合している。
【0033】
第1遮光羽根3,第2遮光羽根4は、ロータマグネット2の旋回に伴う遮光羽根駆動軸2aの旋回によって、図1(a)の全開状態および図2の全閉状態の間を図1(b)(c)に示す状態を経て移動するように取り付けられている。すなわち、第1遮光羽根3の長溝3bと第2遮光羽根4の長溝4bとは、係合軸1bに嵌合した状態で交差し、図1中、マグネットロータ2が図1(a)に示す全開状態から時計回り方向に回転すると、第1遮光羽根3は、その長溝3bが係合軸1bと係合する旋回支点をなす係合位置がずれながら反時計回り方向に旋回を開始する。
【0034】
その際、遮光羽根駆動軸2aと係合軸1bとの間の距離が変化するので、その変化を吸収すべく係合軸1bに対する長溝3bの係合位置が変更されることになるが、係合軸1bに当接する長溝3bの内周縁が直線ではなく屈曲(変曲点を有する)していた場合、長溝3bの内側に凸の内周縁と、外側に凹の内周縁と、その間を結ぶ曲面とが係合軸1bにそれぞれ当接することになる。マグネットロータ2が旋回した場合、長溝3bの内周縁が直線の場合を基準とすると、長溝3bの内周縁(丸穴3aから遠い方の内周縁)における凹の部分が係合軸1bに当接するには、さらに第1遮光羽根3が反時計回り方向に旋回することになり、マグネットローラ2がさらに旋回する。また、長溝3bの内周縁(丸穴3aから遠い方の内周縁)における凸の部分が係合軸1bに当接すると、マグネットロータ2の旋回角度は小さくなる。これは第2遮光羽根4についても同様である。
【0035】
図3にロータマグネット2の遮光羽根駆動軸2aと第1遮光羽根3及び第2遮光羽根4との関係を示している。この状態は図1(a)に示す全開状態を示しており、第1遮光羽根3の長溝3bと第2遮光羽根4の長溝4bは第1長溝部3e,4e、第2長溝部3f,4f、第3長溝部3g,4gを連接して複数の変曲点を有する屈曲した構成としている。
【0036】
要するに、本実施例において、ロータマグネット2の旋回角度と、第1遮光羽根3及び第2遮光羽根4が図1(a)に示す全開状態から図1(c)に示す遮光完了までに移動する移動の割合を上記した変曲点を境にして変更している。
【0037】
すなわち、第1遮光羽根3及び第2遮光羽根4が図1(a)に示す全開状態から図1(b)に示す遮光開始するまでのロータマグネット2の旋回領域を第1旋回領域、図1(b)に示す遮光開始から開口穴1cを遮光するまでのロータマグネット2の旋回領域を第2旋回領域、開口穴1cを遮光してから図1(c)に示す遮光完了までのロータマグネット2の旋回領域を第3旋回領域とすると、第1旋回領域から第2旋回領域に移行する前後において、旋回角度に対する第1遮光羽根3及び第2遮光羽根4の移動量の割合が小から大へと変化させ、さらに第2旋回領域から第3旋回領域に移行する前後において、旋回角度に対する第1遮光羽根3及び第2遮光羽根4の移動量の割合が大から小へと変化させるようにしている。
【0038】
そして、第1旋回領域と第2旋回領域とを比較すると、第1旋回領域において、ロータマグネット2の旋回角度に対する遮光羽根の移動の割合を小さくするには、ロータマグネット2が所定の角度を旋回する際の遮光羽根の移動量を小さくすればよく、第2旋回領域において、ロータマグネット2の旋回角度に対する遮光羽根の移動の割合を大きくするには、ロータマグネット2が所定の角度を旋回する際の遮光羽根の移動量を大きくすればよい。そうすると、第1旋回領域において、遮光羽根はゆっくりと動き出し、第1旋回領域を越えて第2旋回領域に入ると急激に加速する。
【0039】
また、第2旋回領域と第3旋回領域とを比較すると、第2旋回領域において、ロータマグネット2の旋回角度に対する遮光羽根の移動の割合を大きくするには、上述の場合と同様に、ロータマグネット2が所定の角度を旋回する際の遮光羽根の移動量を大きくし、第3旋回領域において、ロータマグネット2の旋回角度に対する遮光羽根の移動の割合を小さくするには、ロータマグネット2が所定の角度を旋回する際の遮光羽根の移動量を小さくすればよい。そうすると、高速で旋回していた遮光羽根が第2旋回領域を越えて第3旋回領域に入ると減速し、最終的にストッパに当たって停止することになる。
【0040】
本実施例においては、第1旋回領域、第2旋回領域、第3旋回領域の各領域での遮光羽根の移動量を変更せずにロータマグネット2の旋回角度を変更するようにしており、第1旋回領域及び第3旋回領域でのロータマグネット2の旋回角度を大きくし、第2旋回領域でのロータマグネット2の旋回角度を小さくしている。
【0041】
本実施例において、第1長溝部3e,4eを、ロータマグネット2が旋回開始してから、図1(b)に示す開口穴1cを遮光開始するまでのロータマグネット2の所定の旋回角度に対し、第1遮光羽根3と第2遮光羽根4の移動量が小さくなるような向き、すなわち上述した凹の形状にそれぞれ形成している。つまり、遮光方向にロータマグネット2が旋回すると、係合軸1bに対し、第1長溝部3e,4eは丸穴3a,4aに近い方の内周縁(凸の内周縁)が当接するので、第1遮光羽根3と第2遮光羽根4とは遮光方向への移動が小さい(例えばストレートの内周縁に比較して)。
【0042】
次に、第2長溝部3f,4fは、図1(c)に示す遮光開始から遮光完了までのロータマグネット2の所定の旋回角度に対して第1遮光羽根3と第2遮光羽根4の移動量が大きくなるような向き、すなわち上述した凸の形状にそれぞれ形成している。つまり、遮光方向にロータマグネット2が旋回すると、係合軸1bに対し、第2長溝部3f,4fは丸穴3a,4aに近い方の内周縁(凹の内周縁)が当接するので、第1遮光羽根3と第2遮光羽根4とは遮光方向への移動量が大きくなる(第1長溝部3e,4eを移動する場合に比較して)。
【0043】
したがって、係合軸1bに対し第1長溝部3e,4eが当接している状態では遮光羽根はゆっくりと加速され、変曲点を越えて第2長溝部3f,4fに当接すると急激に加速されることになる。
【0044】
第3長溝部3g,4gは、図2に示す開口穴1cを遮光完了してから旋回規制部に突き当たった遮光完了停止状態までのロータマグネット2の所定の旋回角度に対して第1遮光羽根3と第2遮光羽根4の移動量が小さくなる向き、すなわち上述した凹の形状にそれぞれ形成している。つまり、遮光方向にロータマグネット2が旋回すると、係合軸1bに対し、第3長溝部3g,4gは丸穴3a,4aに近い方の内周縁(凸の内周縁)が当接するので、第1遮光羽根3と第2遮光羽根4とは遮光方向への移動量が小さくなる(第2長溝部3g,4gを移動する場合に比較して)。
【0045】
したがって、係合軸1bに対し第2長溝部3f,4fが当接している状態では遮光羽根は高速で移動し、変曲点を越えて第3長溝部3g,4gに当接すると急激に減速されることになる。
【0046】
なお、第1遮光羽根3および第2遮光羽根4は、図1(a)に示す開放状態では長溝3bの端部3c,長溝4bの端部4cが係合軸1bに当接している。さらに、図2に示す遮光状態では、長溝3bの端部3d,長溝4bの端部4dが係合軸1bに当接している。
【0047】
以上が本実施例の構成であるが、以下に図1,図2,図3,図4を参照して光量調節装置の動作を説明する。
【0048】
電磁コイル6への通電がOFF状態ではステータヨーク5が非励磁状態にあり、外周面を2極(N極、S極)に着磁されているロータマグネット2は、これに対向配置するステータヨーク5の各磁極部5a,5bと吸引する力(デイテント力)によって、図1(a)または図2の羽根位置状態に保持される。
【0049】
図1(a)に示す開放状態のとき、第1遮光羽根3および第2遮光羽根4は、長溝3bの端部3c,長溝4bの端部4cが地板1に設けた係合軸1bに当接する方向に磁気的に吸引されて、この開放状態が保持されている。
【0050】
この状態から、ステータヨーク5の磁極部5aがN極になり、磁極部5bがS極になるようにコイル6に通電すると、ステータヨーク5とロータマグネット2との間に反発力が発生し、ロータマグネットは図1の状態から時計回りの方向に旋回起動し、磁気的中間点を通過した時点で、吸引力に切り換わり約36°回転する(図2参照)。
【0051】
ロータマグネット2に一体に設けられた遮光羽根駆動軸2aはロータマグネット2と一体の運動をする。これにより、第1遮光羽根3および第2遮光羽根4は、開放状態から図2の開口穴1cを遮光した遮光状態に回動する。
【0052】
上記の動作過程において、ロータマグネット2が始動してから第1遮光羽根3及び第2遮光羽根4が開口穴1cを遮光し始めるまでは、第1遮光羽根3に設けた長溝3bの第1長溝部3e、第2遮光羽根4に設けた長溝4bの第1長溝部4eに規制されて、ロータマグネット2は大きな旋回(約15°)を必要とし、十分加速される状態になっている。すなわち、第1長溝部3e,4eは羽根駆動手段を加速させ、遮光羽根を加速しやすくする機能を有している。
【0053】
ロータマグネット2がさらに旋回すると、第1遮光羽根3に設けた長溝3bの第2長溝部3fに、第2遮光羽根4に設けた長溝4bの第2長溝部4fにそれぞれ規制されてロータマグネット2の旋回(約13°)で急激に開口穴1cを遮光する。このため、遮光開始から遮光完了までの時間を速くすることができる。この第2長溝部3f,4fは開口穴1cを遮光する領域をカバーする。
【0054】
その後、さらにロータマグネット2が旋回すると、第1遮光羽根3に設けた長溝3bの第3長溝部3g,第2遮光羽根4の長溝4bの第3長溝部4gに規制されてロータマグネット2の旋回(約8°)に対し、第1、第2遮光羽根3,4の移動量は小さくなり、第1遮光羽根3に設けた長溝3bの端部3dが、また第2遮光羽根4に設けた長溝4bの端部4dがそれぞれ係合軸1bに当接し、ロータマグネット2は旋回を停止する。
【0055】
そして、当接の際に第1遮光羽根3および第2遮光羽根4はバウンドするが、これら第1、第2遮光羽根3,4の移動量が小さいためにこのバウンドを小さく抑えることができ、開口穴1cに対して開口が形成されて再露光を発生させることが防止できる。すなわち、この第3長溝部3g,4gはバウンドを吸収する機能を有する。
【0056】
この状態で電磁コイル6への通電をOFFにしても、前述したように、ロータマグネット2とステータヨーク5の磁気的吸引で前記状態を保持している。
【0057】
その後、ステータヨーク5の磁極部5aがS極になり、磁極部5bがN極になるように電磁コイル6に通電すると、ステータヨーク5とロータマグネット2との間に反発力と吸引力が生じてロータマグネット2が反時計回り旋回し、初期の位置に戻る。これにより第1、第2遮光羽根3,4も初期位置に復帰する。この様にコイル6への正、逆通電による磁気的な吸引力、反発力の働きを受けて、遮光羽根3,4は遮光、開口動作を行なう。
【0058】
一方、図6,7に示す従来例においては、開放状態から始動し遮光を開始するまでのロータマグネット12の旋回角は約9°であるのに対し、本実施例では約15°とロータマグネット2の旋回角が大きいため、図6,7に示す従来例の遮光羽根は本実施例の第1,第2遮光羽根3,4を旋回させる加速度も小さい。
【0059】
また、従来例を示す図6(b),(c)に示す遮光開始から遮光完了間でのロータマグネット12の旋回角は約20°であった。
【0060】
これに対し、本実施例では、図1(b),(c)に示す遮光開始から遮光完了間でのロータマグネット2の旋回角は約13°であった。
【0061】
このように、従来例における遮光開始から遮光完了間でのロータマグネット12の旋回角(約20°)は、本実施例における同区間でのロータマグネット2の旋回角(約13°)に比べて大きく遮光に長い時間を要している。さらに、図6(c)に示す遮光完了から図7に示す遮光完了停止状態までのロータマグネット12の旋回角は約7°で、本実施例の同区間でのロータマグネット2の旋回角が約8°であるのに比べて小さいため、従来例では元の遮光完了位置にバウンドして戻る角度が小さく、その分バウンドによる再露光に対し不利である。これに対し、本実施例では遮光完了から遮光完了停止状態までに要する旋回角度が大きくなった分だけ、バウンドによる再露光の発生を防止できる余裕が得られ、バウンドによる再露光の発生を防止することができる。
【0062】
以上のような動作を繰り返した場合、旋回を停止させる第1、第2遮光羽根3、4に設けた長溝3、4の長さ方向の両端をなす端部3c、3dと4c,4dは係合軸1bに衝突を繰り返す。そこで本実施例においては、長溝3、4の端部を半円状とし、この長穴に当接する係合軸1bを円柱状にして、第1、第2遮光羽根3、4が開放側又は遮光側で停止する時、これらの長溝3、4の端部でそれぞれ当接するようにする。これにより遮光羽根と係合軸の接触面が広くなり、障害となる潰れが発生することはない。これにより、より薄く軽い遮光羽根を使用する事が可能となる。
【0063】
さらに、地板1に設けた一つの前記規制部材である係合軸1bにより遮光羽根の旋回を規制し、旋回のストッパとしても機能させることで、他の個所に規制部材、ストッパを設けることなく装置を構成でき小型化することができる。
【0064】
これに比較して、従来例によるとロータマグネット12が開放状態、遮光状態で旋回を停止する際、遮光羽根駆動軸12aは遮光羽根13の長溝13b、遮光羽根14の長溝14bの平らな端面に衝突し停止する。前記のように平らな面に遮光羽根駆動軸12bが衝突するため薄い遮光羽根を採用すると長溝13b,14bの端面が潰れて障害となり、薄い遮光羽根を採用することができない。
(第2実施例)
図5は本発明の第2実施例を示す。図5は光学撮像装置の概略図である。
【0065】
図5は、上記した実施例の光量調節装置100をデジタルカメラ、デジタルビデオカメラなどの光学撮像装置101に適用した例で、撮像光学系を有する鏡筒ユニット102に光量調節装置100を装備し、光量調節装置100を通った被写体光を撮像素子103に結像させるようにしており、高輝度の被写体の撮影、動体の被写体の撮影でも適正な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1実施例である光量調節装置を示し、(a)は開放状態の平面図、(b)(c)は遮光羽根の遮光過程を示す図。
【図2】本発明の第1実施例である光量調節装置の遮光側停止状態を示す図。
【図3】図1、図2の遮光羽根を示す図。
【図4】図1、図2に示す光量調節装置の断面図。
【図5】本発明の第2実施例を示す図。
【図6】従来の光量調節装置を示し、(a)は開放状態の平面図、(b),(c)は遮光羽根の遮光過程を示す図。
【図7】従来の光量調節装置(遮光側停止状態)を示す図。
【符号の説明】
【0067】
1 地板
1a 支軸(マグネット回転軸) 1b 係合軸
1c 開口穴 1e 凹部
2 ロータマグネット(円筒形永久磁石)
2a 遮光羽根駆動軸 2b 丸穴
3 第1遮光羽根
4 第2遮光羽根
3a,4a 丸穴 3b,4b 長溝
3c,3d,4c,4d 長溝端部
3e,4e 第1長溝部 3f,4f 第2長溝部
3g,4g 第3長溝部
5 ステータヨーク
5a、5b ステータヨークの磁極部
6 電磁コイル
7 カバー板
100 シャッタ装置
101 光学撮像機器
102 鏡筒ユニット
103 撮像素子
11 従来の光量調節装置の地板
11a 支軸(マグネット回転軸)11b 係合軸
11c 開口穴 11d ストッパ軸
12 従来の光量調節装置のロータマグネット(円筒形永久磁石)
12a 遮光羽根駆動軸 12b 丸穴
13 従来の光量調節装置の第1遮光羽根
13a 丸穴 13b 長溝
14 従来の光量調節装置の第2遮光羽根
14a 丸穴 14b 長溝
15 従来の光量調節装置のステータヨーク
15a、15b ステータヨークの磁極部
16 従来の光量調節装置の電磁コイル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を制御する複数の遮光羽根と、前記入射光を通過させる開口部を有し前記遮光羽根を回動可能に配置した地板と、前記地板に取り付けられて前記遮光羽根を移動させる駆動源と、前記駆動源の駆動力により前記遮光羽根を所定の軌跡に沿って移動させる羽根駆動手段と、前記地板に設けられて前記遮光羽根の移動を規制する規制部材と、を有し、前記遮光羽根は前記羽根駆動手段による移動と前記規制部材との規制を受けて該規制部材との当接位置をずらしながら当該当接位置を旋回支点として旋回する光量調節装置であって、
前記羽根駆動手段は、前記少なくとも一枚の遮光羽根を回転自在に支持し、前記遮光羽根には、前記羽根駆動手段の移動に従って前記規制部材との当接により前記遮光羽根の旋回方向を規制する複数の屈曲部を設けた長溝を備えていることを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記遮光羽根の複数の屈曲部は、前記遮光羽根が前記地板の開口部を遮蔽し始める前、及び該開口部を遮蔽した後の少なくとも一方で前記規制部材と当接している部分に変曲点を持つことを特徴とする請求項1に記載の光量調節装置。
【請求項3】
前記変曲点は、前記遮光羽根が前記地板の開口部を遮蔽し始める前では、前記羽根駆動手段の旋回角度と前記遮光羽根の移動の割合が小から大に変化し、前記開口部を遮蔽した後では、大から小へ変化するように形成したことを特徴とする請求項2に記載の光量調節装置。
【請求項4】
前記遮光羽根の屈曲した長溝の両端部の形状と、前記規制部材の前記長溝の少なくとも端部と当接する部分の形状を略同一とし、前記遮光羽根の開放側及び遮光側において前記いずれか一方の端部と前記規制部材とが当接することにより停止することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光量調節装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の光量調節装置と、前記光量調節装置を通った被写体光が結像する撮像手段と、を有することを特徴とする光学撮像機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−111959(P2008−111959A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294286(P2006−294286)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】