説明

光量調節装置及び該光量調節装置の製造方法

【課題】隣接する羽根同士の接触を防止することができ且つ高速シャッタを容易に実行することができる光量調節羽根を提供する。
【解決手段】 シャッタ羽根20を支持する一対の駆動アーム21a,21bと、一対の駆動アーム21a,21bの端部に回動可能に取り付けられ、開口部11aの開口量を規制するシャッタ羽根20と、一対の駆動アーム21a,21bにシャッタ羽根20を軸支する一対の軸部材23a,23bとを備える。軸部材23aがレーザ光透過性樹脂から成ると共に、シャッタ羽根20は遮光性を有するレーザ光吸収性樹脂から成り、駆動アーム21a,21bの表面にカーボン層が形成される。シャッタ羽根20と軸部材23aとの当接領域にレーザ光を照射することにより、シャッタ羽根20と軸部材23aとが互いに融着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ、ビデオカメラ、デジタルカメラ等の光学機器に用いられる光量調節装置及び該光量調節装置の製造方法に関し、特に、他の光量調節羽根と隣接し且つ回動可能に設けられる光量調節装置及び該光量調節装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一眼レフタイプのカメラに用いられているスクエア型のフォーカルプレーンシャッタやレンズシャッタに用いられる光量調節装置は、薄板の遮光部材である光量調節羽根と、光量調節羽根に対して回動可能に固定された駆動部材とで構成され、駆動部材を回転して光量調節羽根の上下運動や回転運動を行うことにより、光量の調節又は遮断を行う。
【0003】
フォーカルプレーンシャッタは、駆動アームと呼ばれる駆動部材と、該駆動部材の先端部に回転可能に支持された遮光羽根とを備え、駆動部材及び遮光羽根が平行リンク機構を構成することにより、遮光羽根が上下に平行に移動して光量の調節又は遮断を行う。
【0004】
また、ビデオカメラに使用される光量調節装置としての絞り装置は、アイリスと呼ばれる一組の絞り羽根(光量調節羽根)に加えて、開口部の光量を調節するNDフィルタ機構を組み込んだものがある。このような絞り装置では、一組の絞り羽根の動作と独立した駆動源がNDフィルタを駆動するNDフィルタ駆動方式や、絞り羽根の駆動源とNDフィルタをリンクさせるカム機構を設け、絞り羽根の駆動源がカム機構を介して光路内にNDフィルタを進退させる方式が採用されている。後者の場合、NDフィルタの駆動源を絞り羽根の駆動源と共用するのでコスト低減等のメリットがあるが、上記カム機構のような絞り羽根とNDフィルタをリンクさせる為のリンク機構が必要となる。
【0005】
従来、このようなリンク機構を備える光量調節装置では、駆動部材及び光量調節羽根を回動可能に連結すべく、駆動部材及び光量調節羽根に設けられた各々の孔に鍔付きの軸部材を貫通させた状態で該軸部材にかしめ加工が施されている。このとき、かしめ加工が正常に施された場合は、軸部材の端部が光量調節羽根表面から若干突出するのみであるが、かしめ加工が正常に施されなかった場合は、光量調節装置を動作させたときに、軸部材の端部と光量調節羽根とが衝突し、光量調節装置が破損するという問題が生じ、これにより光量調節装置の信頼性を低下させていた。
【0006】
この問題を解消すべく、図8(a)及び(b)に示すように、かしめピン102が挿入される遮光羽根101の孔103の外周近傍に凹部101aが設けられ(図8(a))、かしめピン102にかしめ加工を施した際にかしめピン102の端部が凹部101aに入り込むことにより(図8(b))、かしめピン102の端部が絞り羽根101から突出するのを防止することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、近年、光量調節羽根の素材の変遷等の理由により、予め凹部を形成するのではなくかしめ加工時に工具において円錐形状を形成する光量調節羽根が提案されている。
【特許文献1】特公平06−048341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の光量調節羽根では、かしめピンが微小な部材であるため、かしめ加工時の工具の位置精度を維持するのは困難であり、また、光量調節装置を大量生産する場合はかしめ加工で使用される工具が劣化するため、かしめピンの端部を常に凹部に収めることが困難である。したがって、かしめピンが光量調節羽根の裏側表面から突出するのを確実に防止することができず、隣接する光量調節羽根と接触してしまうという問題がある。また、かしめピンが通常金属製であることに加え、1つの駆動部材の端部には、先幕用、後幕用といった4枚程度の光量調節羽根が取り付けられているため、金属製のかしめピンの重量及び慣性モーメントにより、光量調節羽根の動作時間が長くなり、高速シャッタを実行することが困難である。
【0008】
本発明の目的は、かしめピンを使うことなく光量調節部材を駆動部材に取り付けることで、隣接する光量調節部材同士の接触を防止することができ且つ光量調節部材を高速で駆動する光量調節装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の光量調節装置は、光量調節部材と、駆動される駆動部材と、前記光量調節部材を前記駆動部材に軸支する軸部材とを備え、前記光量調節部材および前記軸部材のいずれか一方がレーザ光透過性樹脂から成ると共に、他方がレーザ光吸収性樹脂から成り、前記駆動部材は少なくともその表面が前記レーザ光透過性樹脂および前記レーザ光吸収性樹脂よりも融点の高い材料で覆われ、前記光量調節部材と前記軸部材との当接領域にレーザ光を照射することにより、前記光量調節部材と前記軸部材とが互いに融着されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の光量調節装置の製造方法は、光量調節部材と、駆動される駆動部材と、前記光量調節部材を前記駆動部材に軸支する軸部材とを備える光量調節装置の製造方法であって、前記軸部材をレーザ光吸収性樹脂およびレーザ光透過性樹脂のいずれか一方から作製し、前記光量調節部材をレーザ光吸収性樹脂およびレーザ光透過性樹脂の他方から作製し、前記駆動部材の少なくとも表面を前記レーザ光透過性樹脂および前記レーザ光吸収性樹脂よりも融点の高い材料で覆うとともに、前記光量調節部材と前記軸部材との当接領域にレーザ光を照射し、前記光量調節部材と前記軸部材とを互いに融着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、軸部材と光量調節部材との接合部において軸部材が光量調節部材の裏側表面から突出することがない。また、軸部材が樹脂から成るため、金属製等の軸部材に比して慣性モーメントが小さくなり、光量調節部材をより高速で駆動させることができる。したがって、軸部材と隣接する光量調節部材との接触を防止することができ且つ光量調節部材を高速で駆動することのできる光量調節装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳述する。
【0013】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る光量調節羽根の構成を概略的に示す外観図であり、図2は、図1における光量調節羽根の構成を示す外観図である。
【0014】
図1において、光量調節装置としてのフォーカルプレーンシャッタ1は、シャッタ地板11と、シャッタ地板11の中央部に設けられた略矩形の開口部11aと、シャッタ地板11に形成される軸(軸部材)13a,13bに回動可能に取り付けられる駆動アーム(駆動部材)21a,21bと、駆動アーム21a,21bに対して回動可能に取り付けられるシャッタ羽根(光量調節部材)20とを備える。シャッタ地板11には円弧状溝部14a,14bが形成されている。尚、フォーカルプレーンシャッタ1は、後幕用の平行リンク機構としてシャッタ羽根を4枚備えるが、シャッタ羽根20以外の他の3枚のシャッタ羽根の構成は、シャッタ羽根20と同様であるため、その説明を省略する。
【0015】
シャッタ羽根20には、一対の駆動アーム21a,21bがそれぞれ一対の軸部材23a,23bによって回動可能に軸支されている(図2)。一対の駆動アーム21a,21bの回動によって、シャッタ羽根20は開口部11aを閉鎖する位置と開放する位置との間を移動する。尚、駆動アームは、後幕用で8個(4組)設けられ、先幕用とあわせるとシャッタ装置全体で16個設けられるが、一対の駆動アーム21a,21b以外の他の駆動アームの構成は、一対の駆動アーム21a,21bと同様であるため、その説明を省略する。
【0016】
図3は、図2の線分A−Aに沿うシャッタ羽根20と駆動アーム21aとの接合部の断面図である。尚、軸部材23bは、その構成が軸部材23aと同様であるため、その説明を省略する。
【0017】
図3において、軸部材23aは一方の端部に鍔部24aを有する円柱状の軸である。軸部材23aの他方の端部25aは、後述する駆動アーム21aの孔24を貫通させた状態でシャッタ羽根20の主面に融着される。尚、上述したように、駆動アームはシャッタ装置全体で16個設けられるため、シャッタ羽根20は16個の軸部材により回転可能に支持されている。
【0018】
軸部材23aは、レーザ光透過性樹脂から成り、例えば透明、白色等のPC(ポリカーボネート)のナチュラルグレード(カーボン等その他の粒子未充填)から成型される。
【0019】
駆動アーム21aは、PET、PC、ABS等の熱可塑性樹脂から成る基材31と、基材31の表面に形成されたカーボン層32とを有する。また、駆動アーム21aの端部には孔24が設けられており、軸部材23aが孔24にがたつきなく嵌合し且つ円滑に回転可能となる寸法で形成される。したがって、シャッタ羽根20は、軸部材23aを回転中心として駆動アーム21aに対して滑らかに回動する。
【0020】
シャッタ羽根20は、遮光性を有するレーザ光吸収性樹脂から成り、例えば黒色塗料等を含有するPET(ポリエチレンテレフタレート)から成るシート材をプレス加工で打ち抜いて作製される。シャッタ羽根20は樹脂製であるため、軽量化を図ることができ、高速シャッタを実行するのに有効である。
【0021】
次に、シャッタ羽根20と駆動アーム21aとの接合方法を説明する。
【0022】
先ず、熱可塑性樹脂から成る所定形状の基材31にカーボン層32を形成し、駆動アーム21aを作製する。また、黒色塗料等を含有するレーザ光吸収性樹脂製のシート材をプレス加工で所定の形状に打ち抜き、所定厚さのシャッタ羽根20を作製する。
【0023】
次に、駆動アーム21aに設けられた孔24にレーザ光透過性樹脂製の軸部材23aを挿通し、軸部材23aの端部25aをシャッタ羽根20の主面上の所定位置に当接させる。また、軸部材23aの端部25aとシャッタ羽根20の主面とが当接した状態で、軸部材23a及びシャッタ羽根20を不図示の治具で固定する。その後、軸部材23aの上方から、不図示のレーザ光照射装置を用いて軸部材23aにレーザ光を所定時間照射する。このとき、レーザ光照射装置と軸部材23aとの間にマスク33が配されており、レーザ光は、マスク33により、軸部材23aとシャッタ羽根20との当接領域34におけるレーザ光のスポット径が軸部材23aの直径より小さくなるようにマスキングされる。マスキングされたレーザ光は、レーザ光透過性樹脂から成る軸部材23aを透過し、軸部材23aとシャッタ羽根20との当接領域34に到達する。当接領域34に到達したレーザ光は、レーザ光吸収性樹脂から成るシャッタ羽根20の当接領域34に吸収される。当接領域34に吸収されたレーザ光はエネルギーとして蓄積され、その結果、当接領域34におけるシャッタ羽根20側の領域が加熱溶融されるとともに、シャッタ羽根20からの熱伝達により当接領域34における軸部材23a側の領域が過熱溶融される。その後、加熱溶融された当接領域34が冷却することにより、軸部材23aとシャッタ羽根20が互いに融着(接合)される。
【0024】
シャッタ羽根20には黒色塗料等が含有されているため、外部から照射されるレーザ光によりシャッタ羽根20を溶融することが可能である。一方、駆動アーム21aは、シャッタ機構部品であるので機能上遮光性を必要とされるが、基材31の表面に厚さ7.0μm程度のカーボン層32が形成されているため、基材31は樹脂融着程度の温度で変形することがない。これは、カーボン層32はレーザ光吸収性樹脂およびレーザ光透過性樹脂よりも融点の高い材料だからである。
【0025】
すなわち、カーボン層32により表面がコーティングされた駆動アーム21aは当接領域34からの熱伝達を受けるものの、カーボン層32表面のカーボン粒子は熱伝達による温度で溶融せず、当接領域34に接触していてもカーボン層32表面は変化しない。したがって、レーザ光により軸部材23aをシャッタ羽根20に融着しても、駆動アーム21aは熱伝達による影響を受けることがなく、軸部材23aに対する回動可能状態を維持する。
【0026】
本実施の形態によれば、軸部材23aがレーザ光透過性樹脂から成ると共にシャッタ羽根20がレーザ光吸収性樹脂から成り、軸部材23a及びシャッタ羽根20はレーザ光により互いに融着されるので、軸部材23aとシャッタ羽根20との接合部において軸部材23aがシャッタ羽根20の裏側表面から突出することがない。また、軸部材23aがレーザ光透過性樹脂から成るため、金属製等の軸部材に比して慣性モーメントが小さくなり、光量調節羽根20の動作時間が短くなる。したがって、かしめピンを使うことなくシャッタ羽根20を駆動アーム21aに取り付けることで、隣接する羽根との接触を防止することができ且つ高速シャッタを容易に実行することができる。
【0027】
また、本実施の形態では、レーザ光透過性樹脂としてポリカーボネート、レーザ光吸収性樹脂として黒色塗料を含有するポリエチレンテレフタレートを使用したが、レーザ光透過性樹脂がポリカーボネートを主成分とする材料から成り、レーザ光吸収性樹脂がポリエチレンテレフタレートを主成分とする材料から成るものであってもよい。また、軸部材及びシャッタ羽根の材料は、ポリカーボネート及びポリエチレンテレフタレート以外の組合せであっても構わない。具体的には、軸部材がPC及びABSから成る群から選択された材料であり、PET、PC及びABSからなる群から選択された材料であってもよい。
【0028】
また、上記実施の形態では、基材31の表面にカーボン層32が形成されるが、これに限るものではない。すなわち、基材31に比して融点の高い材料、例えば金属材料から成る層が、蒸着又は塗装により基材31の表面に形成されてもよい。また、駆動アーム21aは、熱可塑性樹脂から成る基材31と、基材31の表面に形成されたカーボン層32とを有するが、これに限るものではなく、駆動アーム21aの全体が金属材料から成るものであっても、カーボン材料から成るものであってもよい。
【0029】
また、本実施の形態では、軸部材23aが駆動アーム21aの孔24を貫通した状態でシャッタ羽根20に融着されるが、これに限るものではなく、シャッタ羽根20に孔を設け、軸部材23aがシャッタ羽根20の孔を貫通した状態で駆動アーム21aに融着されてもよい。この場合、シャッタ羽根20の表面にはカーボン材料等から成る被覆層が形成される。
【0030】
本実施の形態では、駆動アーム21aは不図示の駆動源により回動駆動されるが、これに限るものではなく、不図示の駆動源の回転運動を直線運動に変換するリンク機構が設けられ、該リンク機構により駆動アーム21aが平行動作するように構成されてもよい。
【0031】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る光量調節羽根の構成を概略的に示す部分断面図である。上記第1の実施の形態では、軸部材23aがレーザ光透過性樹脂から成り、シャッタ羽根20がレーザ光吸収性樹脂から成るが、本第2の実施の形態では、軸部材がレーザ光吸収性樹脂から成り、シャッタ羽根がレーザ光透過性樹脂から成る。
【0032】
図4において、不図示の駆動源により回動駆動される一対の駆動アーム41a,41bと、一対の駆動アーム41a,41bの端部に回動可能に取り付けられ、開口量を規制するシャッタ羽根40と、一対の駆動アーム41a,41bにシャッタ羽根40を軸支する一対の軸部材43a,43bとを備える。尚、駆動アーム41b及び軸部材43bは、その構成が夫々駆動アーム41a及び軸部材43aと同様であるため、その説明を省略する。
【0033】
軸部材43aは、遮光性を有するレーザ光吸収性樹脂から成り、例えば黒色塗料等を含有するPET(ポリエチレンテレフタレート)から成る。軸部材43aは一方の端部に鍔部44aを有する円柱状の軸である。軸部材43aの他方の端部45aは、後述する駆動アーム41aの孔44を貫通させた状態でシャッタ羽根40の主面に融着される。
【0034】
シャッタ羽根40は、レーザ光透過性樹脂、例えばPCのナチュラルグレードから成る基材46と、基材46の表面に形成されたカーボン層47とを有する。カーボン層47は、軸部材43aとシャッタ羽根40との当接領域54及びシャッタ羽根40に関して当接領域54の裏側に位置する領域55を除いて、基材46の表面の全体に亘って形成されている。なお、カーボン層47のカーボン材料は、レーザ光吸収性樹脂およびレーザ光透過性樹脂よりも融点の高い材料である。
【0035】
駆動アーム41aは、PET、PC、ABS等の熱可塑性樹脂から成る基材41と、基材41の表面に形成されたカーボン層42とを有する。また、駆動アーム41aの端部には孔44が設けられており、軸部材43aががたつきなく嵌合し且つ円滑に回転可能となる寸法で形成される。
【0036】
次に、シャッタ羽根40と駆動アーム41aとの接合方法を説明する。
【0037】
先ず、熱可塑性樹脂から成る所定形状の基材31にカーボン層42を形成し、駆動アーム41aを作製する。なお、カーボン層42のカーボン材料は、レーザ光吸収性樹脂およびレーザ光透過性樹脂よりも融点の高い材料である。また、レーザ光透過性樹脂製のシート材をプレス加工で所定の形状に打ち抜いて基材46を作製し、軸部材43aとシャッタ羽根40との当接領域54及びシャッタ羽根40に関して当接領域54の裏側に位置する面55を除いて、基材46の表面の全体に亘ってカーボン層47を形成する。尚、カーボン層47を形成する方法としては、軸部材43aとシャッタ羽根40との当接領域54にマスキングを施すか、基材46の表面の全体に亘ってカーボン層47を形成した後、当接領域54及び領域55に対応する部分を機械加工により研磨してもよい。
【0038】
次に、駆動アーム41aに設けられた孔44にレーザ光吸収性樹脂製の軸部材43aを挿通し、軸部材43aの端部45aをシャッタ羽根40の主面上の所定位置、すなわちカーボン層47が形成されていない当接領域54に当接させる。また、軸部材43aの端部45aとシャッタ羽根40の当接領域54とが当接した状態で、軸部材43a及びシャッタ羽根40を不図示の治具で固定する。その後、シャッタ羽根40の下方から、不図示のレーザ光照射装置を用いて軸部材43aにレーザ光を所定時間照射する。このとき、レーザ光照射装置と軸部材43aとの間にマスク53が配されており、レーザ光は、マスク53により、軸部材53aとシャッタ羽根40との当接領域54におけるレーザ光のスポット径が軸部材43aの直径未満になるようにマスキングされる。マスキングされたレーザ光は、レーザ光透過性樹脂製の基材46を透過し、軸部材43aとシャッタ羽根40との当接領域54に到達する。当接領域54に到達したレーザ光は、レーザ光吸収性樹脂製の軸部材43aの当接領域54に吸収される。当接領域54に吸収されたレーザ光はエネルギーとして蓄積され、その結果、当接領域54における軸部材43a側の領域が加熱溶融されるとともに、軸部材43aからの熱伝達により当接領域54におけるシャッタ羽根40側の領域が過熱溶融される。その後、加熱溶融された当接領域54が冷却することにより、軸部材43aとシャッタ羽根40が互いに融着(接合)される。
【0039】
本実施の形態によれば、軸部材43aがレーザ光吸収性樹脂から成ると共にシャッタ羽根40がレーザ光透過性樹脂から成り、軸部材43a及びシャッタ羽根40はレーザ光により互いに融着されるので、軸部材43aとシャッタ羽根40との接合部において軸部材43aがシャッタ羽根40の裏側表面から突出することがない。また、軸部材43aがレーザ光吸収性樹脂から成るため、金属製等の軸部材に比して慣性モーメントが小さくなり、シャッタ羽根40の動作時間が短くなる。したがって、かしめピンを使うことなくシャッタ羽根20を駆動アーム41aに取り付けることで、隣接するシャッタ羽根との接触を防止することができ且つ高速シャッタを容易に実行することができる。
【0040】
また、シャッタ羽根40の基材46に透明な材料を使用する必要がある場合でも、基材46の表面の全体に亘ってカーボン層47を形成するので、シャッタ羽根40の遮光性を十分に満たすことができる。
【0041】
また、上記実施の形態では、基材46の表面にカーボン層47が形成されるが、これに限るものではない。すなわち、基材46に比して融点の高い材料、例えば金属材料から成る層が、蒸着又は塗装により基材46の表面に形成されてもよい。
【0042】
図5は、本発明の第3の実施の形態に係る光量調節羽根を備えるアイリス絞り装置の構成を示す分解斜視図であり、図6は、図5における光量調節羽根の構成を示す部分断面図である。
【0043】
図5及び図6において、アイリス絞り装置60は、後述する一対の光量調節羽根を上下方向に移動可能に支持する羽根ケース61と、互いに略平行に配置され、羽根ケース61に設けられた開口部61aの開口量を規制する一対の光量調節羽根62a,62bと、光量調節羽根62aに軸支される薄板形状のNDフィルタ63とを備える。また、アイリス絞り装置60は、羽根ケース61の内側面に設けられ、NDフィルタ63を羽根ケース61に軸支する軸64と、光量調節羽根62aの主面に設けられ、NDフィルタ63を光量調節羽根62aに軸支する軸部材65とを備える。さらに、アイリス絞り装置60は、一対の光量調節羽根62a,62bの下方に配置され且つ一対の光量調節羽根62a,62bの各下端が連結されるアーム部66を備える。
【0044】
一対の光量調節羽根62a,62bは、遮光性を有するレーザ光吸収性樹脂から成り、例えば黒色塗料等が含有されたPET、PC、ABS等のレーザ光吸収性樹脂のシート材をプレス加工で打ち抜いて作製される。一対の光量調節羽根62a,62bは、モータ等の不図示の駆動源により駆動されるアーム部66の回動によって互いに接近又は離反する。
【0045】
NDフィルタ63は、PET、PC、ABS等の透明な熱可塑性樹脂から成る基材63aと、基材63aの主面の一方に蒸着により形成され、透過率を減少させるフィルタ層63bと、基材63aの主面の他方において、後述する孔63dの周辺部に形成されたカーボン層63cとを有する(図6)。NDフィルタ63のほぼ中央部には、軸部材65が挿入される孔63dが設けられ、軸部材65ががたつきなく嵌合し、且つ円滑に回転可能となる寸法で形成されている。また、NDフィルタ63は、基材63aの端部において、羽根ケース61に設けられた支持部材64と係合してNDフィルタ63を軸支する略凹状の係合部63eを有する。すなわち、NDフィルタ63は、孔63dに挿入された軸部材65が光量調節羽根62aの移動に伴って上下方向に移動することにより、支持部材64を中心として回動する。
【0046】
軸部材65は一方の端部に鍔部65aを有する円柱状の軸である。軸部材65の他方の端部65bは、NDフィルタ63の孔63dを貫通させた状態で光量調節羽根62aの主面に融着される。軸部材65は、レーザ光透過性樹脂から成り、例えば透明、白色等のPC(ポリカーボネート)のナチュラルグレード(カーボンなどその他の粒子未充填)から成型される。
【0047】
図7は、図5における光量調節羽根の動作を説明する図であり、(a)は光量調節前の状態を示し、(b)は、光量調節後の状態を示す。
【0048】
まず、暗部の撮影等で光量が必要な場合は、開口部61aを開放状態にするべく、一対の光量調節羽根62a,62bが最も離反する。このとき、NDフィルタ63は開口部61aから退避している(図7(a))。その後、光量を調節する場合は、不図示のセンサ等からの信号に基づいて駆動源が駆動し、アーム66が所定方向に回動して一対の光量調節羽根62a,62bが接近し、これにより開口部61aの開口面積が減少する。光量を更に減少する場合は、開口部61aが所定の開口面積になった後に、NDフィルタ63が一対の光量調節羽根62aの移動に伴って開口部61aに進入する。そして、開口部61aから一対の光量調節羽根62a,62bが最も接近しているときに、NDフィルタ63が開口部61aの全てを覆う(図7(b))。
【0049】
本実施の形態によれば、軸部材65aがレーザ光吸収性樹脂から成ると共に光量調節羽根62aがレーザ光透過性樹脂から成り、軸部材65a及び光量調節羽根62aはレーザ光により互いに融着されるので、軸部材65aと光量調節羽根62aとの接合部において軸部材65aが光量調節羽根62aの裏側表面から突出することがない。また、軸部材65aがレーザ光吸収性樹脂から成るため、金属製等の軸部材に比して慣性モーメントが小さくなり、光量調節羽根62aの動作時間が短くなる。したがって、隣接する光量調節羽根62bとの接触を防止することができ且つ高速シャッタを容易に実行することができる。
【0050】
また、NDフィルタ63は、光量調節羽根62aに軸支され、光量調節羽根62aが上下方向に移動することにより軸部材64を中心として回動するので、NDフィルタ63専用の駆動源を設けることなく、簡単な構成で光量を正確に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る光量調節羽根の構成を概略的に示す外観図である。
【図2】図1における光量調節羽根の構成を示す外観図である。
【図3】図2の線分A−Aに沿うシャッタ羽根20と駆動アーム21aとの接合部の断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る光量調節羽根の構成を概略的に示す部分断面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る光量調節羽根を備えるアイリス絞り装置の構成を示す分解斜視図である。
【図6】図5における光量調節羽根の構成を示す部分断面図である。
【図7】図5における光量調節羽根の動作を説明する図であり、(a)は光量調節前の状態を示し、(b)は、光量調節後の状態を示す。
【図8】従来の光量調節羽根の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 フォーカルプレーンシャッタ
13a,13b 一対の軸部材
20 シャッタ羽根
21a,21b 一対の駆動アーム
23a 軸部材
24 孔
24a 鍔部
31 基材
32 カーボン層
34 当接領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光量調節部材と、駆動される駆動部材と、前記光量調節部材を前記駆動部材に軸支する軸部材とを備え、
前記光量調節部材および前記軸部材のいずれか一方がレーザ光透過性樹脂から成ると共に、他方がレーザ光吸収性樹脂から成り、前記駆動部材は少なくともその表面が前記レーザ光透過性樹脂および前記レーザ光吸収性樹脂よりも融点の高い材料で覆われ、
前記光量調節部材と前記軸部材との当接領域にレーザ光を照射することにより、前記光量調節部材と前記軸部材とが互いに融着されることを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記光量調節部材が前記レーザ光吸収性樹脂から成り、前記軸部材が前記レーザ光透過性樹脂から成ることを特徴とする請求項1記載の光量調節装置。
【請求項3】
前記軸部材が前記レーザ光吸収性樹脂から成り、前記光量調節部材が前記レーザ光透過性樹脂から成り、
前記光量調節部材の表面は、前記軸部材との当接領域および前記当接領域の裏側に位置する部分を除いて前記レーザ光透過性樹脂および前記レーザ光吸収性樹脂よりも融点の高い材料で覆われていることを特徴とする請求項1記載の光量調節装置。
【請求項4】
前記レーザ光透過性樹脂は、ポリカーボネートを主成分とする材料から成り、前記レーザ光吸収性樹脂は、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする材料から成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光量調節装置。
【請求項5】
前記駆動部材は、その表面がカーボン材料または金属材料で覆われていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光量調節装置。
【請求項6】
前記駆動部材は、カーボン材料または金属材料で形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光量調節装置。
【請求項7】
光量調節部材と、駆動される駆動部材と、前記光量調節部材を前記駆動部材に軸支する軸部材とを備える光量調節装置の製造方法であって、
前記軸部材をレーザ光吸収性樹脂およびレーザ光透過性樹脂のいずれか一方から作製し、
前記光量調節部材をレーザ光吸収性樹脂およびレーザ光透過性樹脂の他方から作製し、
前記駆動部材の少なくとも表面を前記レーザ光透過性樹脂および前記レーザ光吸収性樹脂よりも融点の高い材料で覆うとともに、
前記光量調節部材と前記軸部材との当接領域にレーザ光を照射し、前記光量調節部材と前記軸部材とを互いに融着することを特徴とする光量調節装置の製造方法。
【請求項8】
前記当接領域におけるレーザ光のスポット径は、前記軸部材の直径より小さいことを特徴とする請求項7記載の光量調節羽根の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−69777(P2009−69777A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240944(P2007−240944)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】