説明

光電子増倍装置

【課題】温度変化に対応して利得率を簡易に安定させること。
【解決手段】SPECT装置のガンマカメラをSiPMにて構成する場合、SiPMが有する全APD14cを所定数のAPD14cからなるAPDアレイ14dに分割し、各APDアレイ14dに対して、周辺温度の上昇に応じて抵抗値が低下し、かつ、周辺温度の低下に応じて抵抗値が上昇する半導体抵抗14eと、半導体抵抗14eと直列に接続され、抵抗値が周辺温度の変化に対して固定である固定抵抗14fとから構成され、さらに、固定抵抗14fがAPDアレイ14dの各APD14cと並列接続される電圧制御機構を設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光電子増倍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガンマカメラ、シングルフォトンエミッションCT装置(SPECT装置)、ポジトロンエミッションCT装置(PET装置)などの核医学イメージング装置は、被検体の生体組織における機能診断を行なうことができる医用画像診断装置として、今日の医療現場において広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、核医学イメージング装置は、生体組織に選択的に取り込まれた同位元素または標識化合物から放射されるガンマ線を検出器により検出し、検出したガンマ線の線量分布を画像化した核医学画像を再構成する装置である。
【0004】
また、近年、核医学イメージング装置と、被検体の生体組織における形態情報を画像化するX線CT(CT;Computed Tomography)装置とが一体化された装置(例えば、PET―CT装置やSPECT―CT装置など)が実用化されている。
【0005】
ここで、核医学イメージング装置の検出器には、一般的に、入射したガンマ線などの放射線を紫外領域にピークを持つ光に変換するシンチレータと、シンチレータからの発光(光電子)を増倍して電気信号に変換する光電子倍増管(PMT:Photomultiplier Tube)とが用いられている(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
具体的には、PMTは、シンチレーション光を受光し光電子を発生させる光電陰極、発生した光電子を加速する電場を与える多段のダイノード、および電子の流れ出し口である陽極から成っている。光電効果により光電陰極から放出された電子は、ダイノードに向って加速されてダイノードの表面に衝突し、複数の電子を叩き出す。この現象が多段のダイノードに渡って繰り返されることにより、なだれ的に電子数が増倍され、陽極での電子数は、約100万にまで達する。かかる例では、PMTの利得率は、100万倍となる。また、なだれ現象を利用した増幅のためにダイノードと陽極との間には、通常1000ボルト以上の電圧が印加される。
【0007】
しかし、PMTは、磁場により電子の運動が影響を受けるためPMTの周りに磁気シールドを設ける必要があった。また、PMTが磁場の影響を受けることから、核磁気共鳴現象を利用して被検体の生体組織における形態情報を画像化するMRI装置と核医学イメージング装置とを一体化した装置は、シンチレーション光を磁場の影響外部に光ファイバーで導きPMTに入力する等の特別な構造をとらない限り、実現することができなかった。
【0008】
ここで、PMTと同等の利得率を有する光電子倍増装置として、半導体素子アレイとしてアバランシェフォトダイオード(APD:Avalanche Photodiode)を用いたシリコンフォトマルチプライアー(SiPM:Silicon Photomultiplier)が知られており、近い将来、広い分野でPMTに取って代わると考えられている。SiPMのAPD素子には、逆電圧が印加されており、このピクセルに、シンチレーション光子がひとつ入射すると、ピクセルは、10から10個の電子による電気パルスを発生する。ここで、前述のPMTと異なり、SiPMには、アンプ回路も必要ない。
【0009】
SiPMの普及が見込まれる要因としては、上述したようにPMTと同等の利得率を有することとともに、「PMTと比較して量子効果が高い」こと、「磁場の影響を受けないことから、磁気シールドを設ける必要がなく、また、MRI装置と核医学イメージング装置とを一体化した装置が実用化可能である」こと、「ピクセル検出が可能である」こと、「必要とされる印加電圧が、例えば、17V〜70Vと、PMTと比較して低く、扱いやすい」こと、「CMOS工程で製造可能なことから低コストの量産化が見込まれる」ことなどが挙げられる。これらの要因により、SiPMは、核医学イメージング装置の検出器だけでなく、X線を検出するX線CT装置の検出器においても、利用されることが期待されている。
【0010】
ところで、SiPMの利得率は、敏感な温度依存性および印加電圧依存性を有する。特に、SiPMを核医学イメージング装置やX線CT装置の検出器とした場合、温度変化による利得率の変化を制御して、温度が変動しても利得率を安定させるための制御機構が不可欠となる。
【0011】
かかる制御機構としては、SiPMが組み込まれる装置全体の温度が一定となるよう制御する温度制御機構がある。すなわち、装置に温度制御機構を組み込むことでSiPMおよびSiPM周辺の温度が一定となり、SiPMの利得率は、安定となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−107995号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】(社)日本画像医療システム工業会編集 「医用画像・放射線機器ハンドブック」名古美術印刷株式会社 平成13年、p.183〜184
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、上記した従来の技術は、温度制御機構を実現するために、複雑な装置構造が必要となり、温度変化に対応してSiPMを用いた検出器の利得率を簡易に安定させることができないといった課題があった。
【0015】
なお、上記では、APDに逆電圧を印加して光電子を増倍するSiPMにおいて、温度変化に対応して利得率を簡易に安定させることができないといった課題があったことについて説明した。しかし、APDに順電圧を印加して光電子を増倍する装置においても、APDの特性からSiPMと同様に、温度変化に対応して利得率を簡易に安定させることができないといった課題があった。
【0016】
そこで、この発明は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、温度変化に対応して利得率を簡易に安定させることが可能となる光電子増倍装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1記載の本発明は、入力された光を増幅素子により電気信号として増倍する光電子増倍装置であって、前記増幅素子に印加される印加電圧が、周辺温度の上昇に応じて上昇するように分圧制御し、かつ、前記周辺温度の低下に応じて低下するように分圧制御する電圧制御機構を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、温度変化に対応して利得率を簡易に安定させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本実施例におけるSPECT装置の構成を説明するための図である。
【図2】図2は、本実施例におけるガンマカメラの構成を説明するための図である。
【図3】図3は、SiPMの利得率の特性を説明するための図である。
【図4】図4は、本実施例におけるSiPMの構成を説明するための図である。
【図5】図5は、本実施例におけるSiPMの利得率の特性を説明するための図である。
【図6】図6は、本実施例の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る光電子増倍装置の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下では、本発明に係る光電子増倍装置が核医学イメージング装置であるシングルフォトンエミッションCT装置(SPECT装置)に搭載された場合を、実施例として説明する。
【実施例】
【0021】
まず、本実施例におけるSPECT装置の構成について説明する。図1は、本実施例におけるSPECT装置の構成を説明するための図である。図1に示すように、本実施例におけるSPECT装置は、架台装置10と、コンソール装置20とを有する。
【0022】
架台装置10は、被検体Pに投与され、被検体Pの生体組織に選択的に取り込まれた放射性医薬品から放射されるガンマ線を検出して投影データを収集する装置であり、天板11と、寝台12と、寝台駆動部13と、ガンマカメラ14と、カメラ駆動部15とを有する。なお、架台装置10は、図1に示すように、撮影口となる空洞を有する。
【0023】
天板11は、被検体Pが横臥するベッドであり、寝台12の上に配置される。寝台駆動部13は、後述する寝台制御部23の制御のもと、寝台12を移動することにより、被検体Pを架台装置10の撮影口内に移動させる。
【0024】
ガンマカメラ14は、被検体Pの生体組織に選択的に取り込まれた放射性医薬品の核種(RI:Radio Isotope)から放射されるガンマ線の強度分布を2次元的に検出し、検出した2次元ガンマ線強度分布データを、例えば、増幅処理、A/D変換処理することで投影データを生成する装置であり、生成した投影データを後述するデータ収集部25に送信する。
【0025】
カメラ駆動部15は、後述するカメラ制御部24の制御のもと、ガンマカメラ14を移動させる装置である。例えば、カメラ駆動部15は、ガンマカメラ14を架台装置10の撮影口内に沿って駆動させ、これにより、ガンマカメラ14は、被検体Pの周囲を回転して、360度の方向における投影データを生成する。
【0026】
コンソール装置20は、操作者によるSPECT装置の操作を受け付けるとともに、架台装置10によって収集された投影データから被検体Pに投与した放射性医薬品の体内分布が描出された断層画像である核医学画像(SPECT画像)を再構成する装置である。
【0027】
具体的には、コンソール装置20は、図1に示すように、入力部21と、表示部22と、寝台制御部23と、カメラ制御部24と、データ収集部25と、画像再構成部26と、データ記憶部27と、システム制御部28とを有し、コンソール装置20が有する各部は、内部バスを介して接続される。
【0028】
入力部21は、SPECT装置の操作者が各種指示や各種設定の入力に用いるマウスやキーボードなどを有し、操作者から受け付けた指示や設定の情報を、システム制御部28に転送する。
【0029】
表示部22は、操作者によって参照されるモニタであり、システム制御部28による制御のもと、SPECT画像などを操作者に表示したり、入力部21を介して操作者から各種指示や各種設定などを受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。
【0030】
データ収集部25は、ガンマカメラ14から送信された投影データを収集し、収集した投影データそれぞれに対して、対数変換処理、オフセット補正、感度補正などの補正処理を行なって補正処理済み投影データを生成し、生成した補正処理済み投影データをデータ記憶部27に格納する。
【0031】
画像再構成部26は、データ記憶部27から補正処理済み投影データを読み出し、読み出した補正処理済み投影データ(例えば、360度方向の補正処理済み投影データ)を逆投影処理することで、SPECT画像を再構成する。そして、画像再構成部26は、再構成したSPECT画像をデータ記憶部27に格納する。
【0032】
システム制御部28は、架台装置10およびコンソール装置20の動作を制御することによって、SPECT装置の全体制御を行う。具体的には、システム制御部28は、寝台制御部23およびカメラ制御部24を制御することで、架台装置10における投影データの収集処理を実行させる。また、システム制御部28は、データ収集部25の補正処理と、画像再構成部26の再構成処理を制御することで、コンソール装置20における画像処理全体を制御する。また、システム制御部28は、データ記憶部27が記憶するSPECT画像を、表示部22に表示するように制御する。
【0033】
ここで、本実施例におけるガンマカメラ14は、従来、一般的に用いられていた光電子倍増管(PMT:Photomultiplier Tube)ではなく、入力された光をPMTと同等の利得率で電気信号として増倍する光電子増倍装置により構成される。具体的には、本実施例におけるガンマカメラ14は、磁場の影響を受けないアバランシェフォトダイオード(APD:Avalanche Photodiode)が半導体素子アレイとして用いられたシリコンフォトマルチプライアー(SiPM:Silicon Photomultiplier)により構成される。以下、図2を用いて、本実施例におけるガンマカメラの構成を説明する。なお、図2は、本実施例におけるガンマカメラの構成を説明するための図である。
【0034】
具体的には、本実施例におけるガンマカメラ14は、図2の(A)に示すように、シンチレータ14aとSiPM14bとを有し、シンチレータ14aは、被検体Pの内部組織から放射されたガンマ線を紫外領域にピークを持つ光に変換し、SiPM14bは、PMTと同等の利得率にて、シンチレータ14aから入力された光をAPDにより電気信号として増倍する。
【0035】
これにより、本実施例におけるガンマカメラ14は、検出した2次元ガンマ線強度分布データから投影データを生成して、図2の(A)に示すように、生成した投影データをデータ収集部25に送信する。
【0036】
ここで、SiPM14bは、例えば、図2の(B)に示すように、複数のAPD14cが、2次元アレイ状に配置されることで構成される。
【0037】
しかし、SiPM14bの利得率は、敏感な温度依存性および印加電圧依存性がある。具体的には、SiPM14bの利得率は、図3の(A)に示すように、温度が上昇するに応じて低下する特性を有する。さらに、SiPM14bの利得率は、図3の(A)に示すように、印加電圧が上昇するに応じて上昇する特性を有する。なお、図3は、SiPMの利得率の特性を説明するための図である。
【0038】
そこで、本実施例におけるガンマカメラ14は、以下に説明する電圧制御機構をSiPM14bに設置することで、温度変化に対応して利得率を簡易に安定させることが可能となることに主たる特徴がある。この主たる特徴について、図4および図5を用いて説明する。なお、図4は、本実施例におけるSiPMの構成を説明するための図であり、図5は、本実施例におけるSiPMの利得率の特性を説明するための図である。
【0039】
ここで、本実施例におけるSiPM14bは、図2の(B)で説明したように、2次元アレイ状に配置された複数のAPD14cを有するが、本実施例では、複数のAPD14cが所定数ごとに分割された複数のAPDアレイ14dとされ、各APDアレイ14dに電圧制御機構がそれぞれ設置される。なお、APDアレイ14dに対しては、図4に示すように、APDアレイ14dを構成する各APD14cに印加される印加電圧が、各APD14dが発生する電圧の方向に対して、逆方向の電圧(逆電圧)となる。
【0040】
そして、SiPM14bは、APDアレイ14dへの印加電圧が、周辺温度の上昇に応じて上昇するように分圧制御し、かつ、周辺温度の低下に応じて低下するように分圧制御する電圧制御機構を備える。
【0041】
具体的には、SiPM14bは、図4に示すように、周辺温度の上昇に応じて抵抗値が低下し、かつ、周辺温度の低下に応じて抵抗値が上昇する半導体抵抗14eと、半導体抵抗14eと直列に接続され、抵抗値が周辺温度の変化に対して固定である固定抵抗14fとから構成され、さらに、固定抵抗14fが分圧制御の対象となるAPDアレイ14dの各APD14cと並列接続される電圧制御機構が分圧制御の対象となるAPDアレイ14dごとに設置される。
【0042】
ここで、図4に示すように、固定抵抗14fの抵抗値を「R」とし、温度(t)に依存して変動する半導体抵抗14eの抵抗値を「r(t)」とし、固定抵抗14fおよび半導体抵抗14eに印加される電圧を「V」とし、APDアレイ14dへの印加電圧を「Vinv」とする。
【0043】
かかる場合、「Vinv」は、「V×(R/(R+r(t)))」と表される。上述したように「r(t)」は、周辺温度の上昇に応じて抵抗値が低下し、かつ、周辺温度の低下に応じて抵抗値が上昇することから、「Vinv」は、SiPM14における周辺温度の上昇に応じて上昇し、かつ、SiPM14bにおける周辺温度の低下に応じて低下することとなる。
【0044】
これにより、本実施例におけるSiPM14bの利得率は、図5に示すように、温度変化に対応して、安定した値となる特性を有することとなる。
【0045】
上述したように、本実施例では、SPECT装置に設置されるガンマカメラ14を2次元アレイ状に配置された複数のAPD14cを有するSiPM14bを用いて構成する場合、すべてのAPD14cを所定数のAPD14cからなるAPDアレイ14dに分割し、各APDアレイ14dに対して電圧制御機構が設置される。
【0046】
すなわち、電圧制御機構は、周辺温度の上昇に応じて抵抗値が低下し、かつ、周辺温度の低下に応じて抵抗値が上昇する半導体抵抗14eと、半導体抵抗14eと直列に接続され、抵抗値が周辺温度の変化に対して固定である固定抵抗14fとから構成され、さらに、固定抵抗14fが分圧制御の対象となるAPDアレイ14dの各APD14cと並列接続される。
【0047】
したがって、周辺温度が上昇すると半導体抵抗14eの抵抗値が低下するので、APDアレイ14dの印加電圧が上昇し、その結果、周辺温度の上昇により低下する利得率が、印加電圧の上昇により上昇させることができ、上記した主たる特徴の通り、温度変化に対応して利得率を簡易に安定させることが可能となる。
【0048】
また、APDアレイ14dごとに独立して電圧制御機構を設置することで、ガンマカメラ14の内部で局所的に温度変化が生じた場合であっても、温度変化が生じた箇所のみ、局所的に利得率の温度依存性による変動を緩和することができるので、SPECT装置全体の温度管理をするための複雑な機構の必要性を解消して、SPECT装置に要するコストを大幅に軽減することが可能となる。
【0049】
また、電圧制御機構を設置における独立性のよさにより、ガンマカメラ14の設計自由度を向上させることが可能となる。また、SiPM14bは、CMOS工程により作製可能であるので、ガンマカメラ14に多数のAPD14cを搭載することができ、SPECT画像の有効視野を向上させることが可能となる。また、SiPM14bは、CMOS工程により作製可能であるので、故障したSiPM14bの交換も簡単に行なうことができる。さらに、SiPM14bごとに独立した電圧制御機構をもつために、交換の影響がシステム全体へ及ぶことが少なく、交換後の調整コストも大幅に軽減することができ、 ガンマカメラ14の維持に要するコストも軽減することが可能となる。また、磁気の影響を受けないSiPM14bを用いることで、SPECT装置やPET装置をMRI装置と一体化させた装置を実現することが可能となる。
【0050】
なお、本発明は上述した実施例以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。そこで、以下では、図6を用いて、本実施例における変形例について説明する。なお、図6は、本実施例における変形例を説明するための図である。
【0051】
上記の実施例にて説明したように、半導体抵抗14eと固定抵抗14fとから構成される電圧制御機構は、図6の(A)に示すように、APDアレイ14dに対して設置されるが、APDアレイ14dを構成するAPD14cの個数は、ガンマカメラ14の設計者により、任意に設定される。
【0052】
例えば、APDアレイ14dは、9個からなるAPD14cである場合(図6の(A)の(1)参照)や、25個からなるAPD14cである場合(図6の(A)の(2)参照)であってもよい。あるいは、半導体抵抗14eと固定抵抗14fとから構成される電圧制御機構は、APD14cごとに設置される場合であってもよい(図6の(A)の(3)参照)。
【0053】
また、上記の実施例では、APD14cに対して逆電圧を印加することで、ガイガーモードで使用する光電子増倍装置に電圧制御機構が設置された装置(SiPM14b)をガンマカメラ14としてSPECT装置に搭載する場合について説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、図6の(B)に示すように、APD14cに対して順電圧を印加することで光を倍増する光電子増倍装置に電圧制御機構が設置された装置を、例えば、X線などの放射線を用いた非破壊検査用装置に搭載する場合であってよい。
【0054】
また、上記の実施例では、電圧制御機構が設置されたSiPM14を、SPECT装置に搭載する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、電圧制御機構が設置されたSiPM14bを、ガンマカメラ、ポジトロンエミッションCT装置(PET装置)などのSPECT装置以外の核医学イメージング装置のガンマ線用検出器や、X線CT装置のX線用検出器として搭載する場合であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように、本発明に係る光電子増倍装置は、光を増幅素子により電気信号として増倍する場合に有用であり、特に、温度変化に対応して利得率を簡易に安定させることに適する。
【符号の説明】
【0056】
10 架台装置
11 天板
12 寝台
13 寝台駆動部
14 ガンマカメラ
14a シンチレータ
14b SiPM(シリコンフォトマルチプライアー)
14c APD(アバランシェフォトダイオード)
14d APDアレイ
14e 半導体抵抗
14f 固定抵抗
15 カメラ駆動部
20 コンソール装置
21 入力部
22 表示部
23 寝台制御部
24 カメラ制御部
25 データ収集部
26 画像再構成部
27 データ記憶部
28 システム制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を増幅素子により電気信号として増倍する光電子増倍装置であって、
前記増幅素子に印加される印加電圧が、周辺温度の上昇に応じて上昇するように分圧制御し、かつ、前記周辺温度の低下に応じて低下するように分圧制御する電圧制御機構を備えたことを特徴とする光電子増倍装置。
【請求項2】
前記電圧制御機構は、前記周辺温度の上昇に応じて抵抗値が低下し、かつ、前記周辺温度の低下に応じて抵抗値が上昇する半導体抵抗と、当該半導体抵抗と直列に接続され、抵抗値が周辺温度の変化に対して固定である固定抵抗とから構成され、当該固定抵抗が分圧制御の対象となる増幅素子と並列接続されることを特徴とする請求項1に記載の光電子増倍装置。
【請求項3】
前記電圧制御機構は、分圧制御の対象となる増幅素子ごとに、または、分圧制御の対象となる複数の増幅素子である増幅素子群ごとに設置されることを特徴とする請求項1または2に記載の光電子増倍装置。
【請求項4】
前記印加電圧は、前記増幅素子が発生する電圧の方向に対して、逆方向の電圧であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の光電子増倍装置。
【請求項5】
前記印加電圧は、前記増幅素子が発生する電圧の方向に対して、順方向の電圧であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の光電子増倍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−7693(P2011−7693A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152737(P2009−152737)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】